JP2020147639A - 多孔性フィルム捲回体、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、エネルギーや環境関連の分野においては、例えば、ロードレベリング、いわゆるUPS(Uninterruptible Power Supply)等の無停電電源装置、電気自動車等における大型の二次電池の研究開発が進められており、大容量、高出力、高電圧及び優れた長期保存性の観点から、非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
セパレータの薄膜化により製膜の難度は高くなり、延伸時の破断による生産性の損失も懸念事項となる。
特許文献2および3にはβ晶活性を有するポリプロピレン系樹脂からなる未延伸膜状物を縦延伸後、横延伸を行う乾式二軸延伸法により多孔性フィルムを得ることが記載されているが、いずれも15gf/μm以下の突刺強度しか得られていない。
特許文献4にはβ晶活性を有するポリプロピレン系樹脂からなる未延伸膜状物を横延伸後、縦延伸を行う乾式二軸延伸法により、高突刺強度を有する多孔性フィルムが得られることが記載されているが、更なる薄膜化については検討されていない。
また特許文献1〜4いずれにおいても多孔性フィルム捲回体の作製に関するトリミング手法については検討されていない。
当該膜状物を流れ方向に直行する垂直方向(TD)へ延伸して得られたシートの端部を取り除く工程(1回目のトリミング工程)と、
当該1回目のトリミングを施したシートを流れ方向(MD)への延伸を行って得られたシートの端部を再度取り除く工程(2回目のトリミング工程)と、
当該2回目のトリミングを施したシート(多孔性フィルム)をコアに捲回される巻取工程とを有する多孔性フィルム捲回体の製造方法である。
また、本発明の製造方法によれば、前記多孔性フィルム捲回体を、簡便かつ効率的に製造することができる。
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、及びプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体の構成単位の由来成分であるプロピレン以外のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体においては、前記α−オレフィンに由来する構成単位の含有量(α−オレフィン含有量)は、延伸によりポリプロピレン系樹脂を多孔化させやすくする観点から、10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。同様の理由で、前記各共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の含有量は90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上である。
ここで、「アイソタクチックペンタッド分率」とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同じ方向に位置する立体構造の割合を意味する。13C−NMRスペクトルのメチル基領域のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位から求められる。なお、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli, et al.,“Macromolecules”Volume 8, Issue 5, pp.687-689 (1975)に記載の方法に準拠するものとする。
同様の観点から、分子量分布を示すパラメーターである重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが1.5〜10.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0、さらに好ましくは2.0〜6.0である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC法によって求められ、Mw/Mnが1に近いほど分子量分布の幅が狭いことを意味する。
なお、前記MFRは、JIS K 7210−1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
また、成形加工性や生産性、多孔性フィルムの諸物性の改善や調整等の観点から、本発明の効果を損なわない範囲において、トリミングロス等により生じるリサイクル樹脂、シリカ、タルク、カオリン及び炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合、ΔHmβは、主に145℃以上160℃未満の温度範囲にて検出され、ΔHmαは、主に160〜170℃の温度範囲にて検出される。このΔHmαとΔHmβから、ホモポリプロピレンのβ晶活性度を算出することができる。
また、例えば、ポリプロピレン系樹脂がエチレンを1〜4モル%含有するランダム共重合体である場合は、ΔHmβは、主に120℃以上140℃未満の温度範囲にて検出され、ΔHmαは、主に140〜165℃の温度範囲にて検出される。このΔHmαとΔHmβから、前記ランダム共重合体のβ晶活性度を算出することができる。
β晶核剤は、上述したように、β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂を得るために配合されるものである。ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成及び成長を促進することができるものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。
例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノサイズの酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等のカルボン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸化合物;二塩基又は三塩基カルボン酸のジ又はトリエステル類;フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと第2族元素金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる2成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物等が挙げられる。その他、特開2003−306585号公報、特開平8−144122号公報又は特開平9−194650号公報に具体的に記載されている物質を用いることもできる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の多孔性フィルムの厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。前記厚みが10μm以下であれば、電池用セパレータとして使用した際に、多孔性フィルム自体の電気抵抗が小さくでき、十分な電池容量が確保される。一方、厚みの下限は特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。前記厚みが1μm以上であれば、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、十分な電気絶縁性が得られ、短絡が生じにくく、電池の十分な安全性が確保される。
なお厚みは、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の多孔性フィルムの空孔率は、20〜80%であることが好ましく、より好ましくは25〜70%であり、さらに好ましくは30〜60%である。空孔率が上記範囲であることによって、高い突刺強度と透気性のバランスがとれた多孔性フィルムを得ることができる。
なお空孔率は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の多孔性フィルムは、十分な透気性を有するものであり、厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/(dL・μm)以下である。
本発明でいう透気抵抗度は、JIS P 8117:2009に準拠して、ガーレー法により測定された、空気1dL(100mL)が厚み方向に通過するのに要する時間を表している。したがって、数値が小さいほど空気が通過しやすいことを示している。
前記厚み1μm当たりの透気抵抗度が10秒/(dL・μm)未満の場合、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、内部短絡等の事故を生じるおそれがあり、十分な安全性が得られない。15秒/(dL・μm)以上であることが好ましく、より好ましくは20秒/(dL・μm)以上である。一方、厚み1μm当たりの透気抵抗度が1000秒/(dL・μm)を超えると、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、電気抵抗が高くなり、電池性能が低下するため好ましくない。500秒/(dL・μm)以下であることが好ましく、より好ましくは200秒/(dL・μm)以下である。
なお透気抵抗度は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の多孔性フィルムの厚み1μm当たりの突刺強度は20gf/μm以上であり、好ましくは21gf/μm以上である。厚み1μm当たりの突刺強度が20gf/μm以上であれば、該多孔性フィルムは、10μm以下の薄膜であっても十分な突刺強度を有していると言える。一方、前記突刺強度の上限は、特に限定されるものではないが、他のフィルム物性とのバランスを考慮して、35gf/μm以下であることが好ましい。
なお突刺強度は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDは1〜200MPaであることが好ましく、より好ましくは5〜150MPa、さらに好ましくは10〜100MPaである。MDの引張破断応力SMDが1MPa以上であることにより、多孔性フィルムは十分な機械的強度を有することを示唆され、電池用セパレータとして用いた場合、電池の内部短絡を抑制することができる。一方、MDの引張破断応力SMDが200MPa以下であることにより、TDにも十分な引張破断応力を有することができる。
また、引張破断応力SMDと引張破断応力STDの和SMD+STDは170〜400MPaであることが好ましく、より好ましくは200〜350MPaである。SMD+STDが170MPa以上であることにより、十分な突刺強度を有する多孔性フィルムが得られる。一方、400MPa以下であることにより、多孔性フィルムに十分な透気性をもたせることができる。
なお引張破断応力は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の多孔性フィルムは、単層でも優れた透気性かつ高い突刺強度を有するものであるが、該多孔性フィルムの機能を妨げない範囲において、他の層を積層させて用いてもよい。例えば、高融解温度樹脂層や、耐熱性粒子及び結着剤等からなる塗布層等による耐熱層、あるいはまた、低融解温度樹脂層によるシャットダウン層等を積層させた構成とすることができる。
積層構成とする場合の層数は、該フィルムの用途及び使用目的等に応じて適宜選択することができ、2〜7層であることが好ましく、生産性やコスト等の観点から、より好ましくは2層又は3層である。各層の厚み及び繰り返し積層数等も、該フィルムの用途及び使用目的等に応じて適宜調整することができる。
本発明の多孔性フィルム捲回体は、上述の多孔性フィルムがコアに捲回されて得られるものである。
本発明の多孔性フィルム捲回体において、多孔性フィルムの長さが500m以上である。前記長さが500m以上であることによって、例えば電池用セパレータとして用いる際に、正極と負極との間に多孔性フィルムを重ねた電池部材を連続して生産することが十分可能である。なお、前記長さの上限は特に限定はされないが、10000m以下が好ましい。
コアとは、多孔性フィルムの巻き取りに用いられる円柱形状の巻芯をいう。コアは、例えば、紙、樹脂含浸紙、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、FRP、フェノール樹脂、無機物含有樹脂、接着剤等で形成されることができる。
コアの素材が紙である場合、特に樹脂等でその表面をコートすることで、所望の特性が得られやすい。さらに、コアは、表面平滑性の観点から、樹脂含浸紙の管であることも好ましい。また、コアの素材が樹脂である場合、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、FRP、フェノール樹脂、無機物含有樹脂等で形成されることができる。
上記のような多孔性フィルム捲回体の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂組成物が押出機で溶融混練されて膜状物に押し出されて冷却固化される成形工程と、当該膜状物を流れ方向に直行する垂直方向(TD)へ延伸して得られたシートの端部を取り除く工程(1回目のトリミング工程)と、当該1回目のトリミングを施したシートを流れ方向(MD)への延伸を行って得られたシートの端部を再度取り除く工程(2回目のトリミング工程)と、2回目のトリミングを施したシート(多孔性フィルム)をコアに捲回される巻取工程とを有する。
このような製造方法によれば、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルム捲回体を延伸破断することなく、生産性よく製造することができる。
以下、上記製造方法を各工程順に説明する。
まず、成形工程においては、β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練して、冷却固化されることで膜状物を成形する。
Tダイから押出して膜状物を成形する場合、Tダイのリップギャップは、所望の多孔性フィルムの厚みや、延伸条件、ドラフト率等の各種条件から決定されるが、生産性や製膜安定性等の観点から、一般的には0.1〜3.0mmであり、好ましくは0.3〜2.5mmである。
次に、前記成形工程で得られたポリプロピレン系樹脂組成物からなる膜状物を延伸することにより、微細孔が多数形成され、厚み方向に連通性を有する多孔性フィルムを得ることができる。
前記逐次二軸延伸法においては、前記膜状物をまずテンター延伸法によりTDへ延伸(横延伸)し、横延伸シートを得た後に、ロール延伸法によりMDへ延伸(縦延伸)を行うことで多孔性フィルムを得ることが好ましい。
横延伸での延伸温度は、良好な延伸性及び効率的な多孔化の観点から、60〜140℃であることが好ましく、より好ましくは70〜130℃である。
また、横延伸倍率は、高い突刺強度および良好な厚み精度を有する多孔性フィルムを得るために、5.0〜12倍であることが好ましく、より好ましくは5.5〜11倍、さらに好ましくは6.0〜10倍である。
横延伸をして得られたシートは、クリップにて挟まれていることで拘束された状態であることから端部の厚みが厚く、またクリップの機械油や挟み痕がついていることがしばしばある。したがって、シートをそのままMDに延伸すると、クリップの挟み痕から破断に至るケースがあるため、一旦端部をトリミングして取り除くことが望ましい。これを1回目のトリミング工程とする。
横延伸をして得られたシートは、TDに配向しているためにTDに裂けやすく、1回目のトリミング工程でシートが裂けてしまうケースや、トリミングにより入ったノッチを起点として後述する縦延伸工程で破膜を起こすおそれがある。
前記1回目のトリミング工程で端部を取り除いた後に、ロール延伸法によりMDへ延伸(縦延伸)を行う。このような延伸工程は各延伸で得られたシートの巻き替えを行う必要がなく、連続的に行うことができるため、生産性に優れている。
縦延伸倍率は、延伸時の破断を抑制しつつ、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得る観点から、1.1〜4.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.5倍である。
縦延伸をロール延伸法で行う場合、温度調節機能、タッチロール(ニップロール)、および駆動機能を備えた2本以上のロールを有する設備でロールの速度差をつけることによって行われる。この時、縦延伸は1段で行っても2段以上で行ってもよい。なお、縦延伸を2段以上で行う場合は、それぞれの延伸倍率の積が縦延伸倍率となる。
[横延伸倍率/縦延伸倍率]の比が3.0以上とすることで、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得ることができる。
さらに、本発明の多孔性フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、用途及び使用目的等に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工や、ミシン目加工等を施してもよい。
縦延伸をして得られたシート(多孔性フィルム)は、縦延伸により端部がネックインを起こして中央部よりも厚みが大きくなっているため、巻取機でコア等に巻き取る際に、端部がせり上がってしまい、巻き皺などが発生するおそれがある。したがって、前記多孔性フィルムの端部を改めてトリミングして取り除くことが望ましい。これを2回目のトリミング工程とする。2回目のトリミング工程での刃の位置は任意であるが、前記多孔性フィルムの中央部の厚みと同等の部分をできるだけ幅広く採取できる位置で、端部を取り除くことが生産性の観点から好ましい。
続いて巻取工程で、前記第2のトリミング工程を経て得られた多孔性フィルムをコアに捲回することにより、多孔性フィルム捲回体を得ることができる。なお、巻取工程において、特に条件は限定されない。
下記実施例及び比較例で製造した各多孔性フィルム捲回体に関し、以下に示す方法により、各種物性評価及び測定を行った。
多孔性フィルム捲回体から直径40mmの試料片を切り出し、目量1/1000mmのダイヤルゲージにて、フィルム面内の任意の5箇所で厚みを測定し、その平均値を求めた。
厚み測定で作製した試料片について測定した実質量W1と、樹脂組成物の原材料から算出した密度と厚みから算出した空孔率0%の場合の質量W0から以下式1にて空孔率(%)を算出した。
厚み測定で作製した試料片を用いて、JIS P 8117:2009に準拠して、ガーレー法により透気抵抗度(秒/dL)を測定し、厚み1μm当たりに換算した。
厚み測定で作製した試料片をホルダー(測定部:直径10mmの円形)に固定し、直径1mm、先端曲率半径0.5mmの金属(SUS440C)製針を厚み方向に300mm/分の速さで突き刺し、穴が開口する最大荷重を測定し、厚み1μm当たりに換算した。
多孔性フィルムから、MDならびにTDが長辺方向になるようにそれぞれ短冊状(長辺80mm、短辺15mmの寸法)の試料片をそれぞれ5枚ずつ切り出した。チャック間距離を40mmとし、引張試験機(インテスコ社製)にて200mm/秒の歪み速度で引張破断を起こした際の荷重を測定した。
試験片の厚みをt(μm)、引張破断を起こした際の最大荷重をF(N)としたとき、以下式2にて引張破断応力(MPa)を算出した。
多孔性フィルム10mgを秤量して試料とし、示差走査型熱量計(DSC−7、株式会社パーキンエルマージャパン製;以下、同様。)にて、窒素ガス雰囲気下で、25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持した後、200℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、さらに25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で再昇温した。再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度Tmβである145〜160℃にピークが検出された場合を、「β晶活性を有している」とした。
下記実施例及び比較例の多孔性フィルムは、いずれもβ晶活性を有していることが確認された。
延伸前の膜状物について、10mgを秤量して試料とし、示差走査型熱量計にて、窒素ガス雰囲気下で、25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温した。昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度Tmβである145〜160℃にピークが検出されることにより、「β晶活性を有している」ことを確認した。
膜状物のβ晶活性度を、DSCにて検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量ΔHmα及びβ晶由来の結晶融解熱量ΔHmβから以下式3にて算出した。
成形工程、延伸工程およびトリミング工程、巻取工程を連続で行うことで捲回体を製造する際、延伸破断なく巻取採取できた多孔性フィルムの巻き長さを記録した。すなわち巻長さが大きいことが連続生産性に優れていることを意味する。
実施例及び比較例の多孔性フィルム捲回体の製造に用いた原材料は、以下のとおりである。
・ホモポリプロピレン、MFR=2.4g/10分(230℃、2.16kg荷重)、アイソタクチックペンタッド分率=98%、Mw=470,000、Mw/Mn=4.0
<β晶核剤>
・3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
<酸化防止剤>
・「IRGANOX B 225」(BASFジャパン株式会社製)
ポリプロピレン100質量部に対して、β晶核剤0.2質量部、及び酸化防止剤0.1質量部を配合し、同方向二軸押出機(口径40mm、スクリュの有効長Lと外径Dの比L/D=32)に投入し、シリンダー温度280℃で溶融混練した。ストランドダイから押出されたストランドを水槽で急速に冷却して固化させ、ペレタイザーでカットし、ペレット原料Aを作製した。
ペレット原料Aを、単軸押出機(口径40mm、スクリュの有効長Lと外径Dの比L/D=26.5、圧縮比=2.7)を用いて、200℃に温調して溶融混練後、ギャップ0.5mm、200℃のTダイより押出した溶融樹脂シートを129℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約35μmの膜状物を得た。この膜状物のβ晶活性度は67%であった。
得られた膜状物をフィルムテンター設備(京都機械株式会社製)に通して、110℃で加熱しながら、歪み速度280%/分で7.0倍に横延伸し、155℃で60秒間熱処理を行い徐冷した。得られたシートの中央部の厚みは7.2μm、空孔率は16.2%、透気抵抗度は12400秒/dLであった。
続いて、1回目のトリミング工程として、このシートをトリミング用の駆動ロール上へ通し、厚みが23〜40μm(シート中央部の厚みの3.2〜5.6倍)であるシート端部に回転丸刃を押し当てて、シートの両端を取り除いた。
続いて、1回目のトリミング工程を施したシートをロール延伸機に通し、142℃で加熱しながら1.4倍で縦延伸をして多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの厚みは6.6μm、空孔率は35%、1μmあたりの透気抵抗度は21.3秒/(dL・μm)、1μmあたりの突刺強度は21.5gf/μm、MDの引張破断強度SMDは31MPa、TDの引張破断強度STDは133MPa、MDの引張破断強度SMDとTDの引張破断強度STDとの比SMD/STDは0.23であった。
続いて、2回目のトリミング工程として、この多孔性フィルムの中央部に比べて厚みが大きい端部をフェザー刃による空中切りで取り除いた後、巻取機にて巻き取ることで、長さが500mの多孔性フィルム捲回体を得た。(破膜は起こさずに500mで巻き取りを完了した時点で、十分な長さが得られたと判断して終了した。)
1回目のトリミング工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様の製造方法で多孔性フィルム捲回体の採取を実施した。しかし、縦延伸時で延伸破膜を起こし、280mの巻長さの多孔性フィルム捲回体しか得られなかった。
1回目のトリミング工程で、トリミングの位置が、実施例1よりもシートの中央部寄りで、厚みが約8μm(シート中央部の厚みの約1倍)であるシート端部に回転丸刃を押し当てて、シートの両端を取り除いた以外は実施例1と同様の製造方法で多孔性フィルム捲回体の採取を試みた。しかしながら、1回目のトリミング工程でシートがTDに裂けるなどの破膜を起こしてしまい、多孔性フィルム捲回体は得られなかった。
比較例2に記載のように1回目のトリミング工程で、横延伸によりシートがTDに著しく配向しており、薄膜かつ多孔質であるため、これをMDにトリミングすることは困難である。
一方で実施例1のように1回目のトリミングの刃の位置を、シートの中央部よりも厚みが2倍以上ある端部にすることで、トリミングによる破膜を抑制することができる。これは単純に厚みが大きいために破れにくいということも考えられるが、テンターによる延伸方法の特性上、横延伸後のシートの端部にかかる延伸倍率は、設定された延伸倍率よりも比較的低くなっているため、TDへの配向が相対的に小さく、シートの裂けの伝播が起こりにくいと考えられる。また端部にかかる延伸倍率が比較的小さいことで、部分的に空孔率が低いことが推察され、これも1回目のトリミング工程における破膜を抑制している理由として考えられる。
さらに、使い捨て紙オムツ等の体液吸収用パット、手術衣等の医療用材料、ジャンパー、雨着等の衣料用材料、家屋防水材、断熱材等の建築用材料、乾燥剤、使い捨てカイロ等の包装材料、各種フィルター、工業用ろ過膜等の液体処理材料等の資材等、透気性が要求される種々の用途での幅広い利用が期待される。
Claims (14)
- ポリプロピレン系樹脂組成物からなる多孔性フィルムがコアに捲回されてなる多孔性フィルム捲回体であって、当該多孔性フィルムの厚み1μm当たりの突刺強度が20gf/μm以上であり、当該多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDと流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDとの比SMD/STDが0.13〜0.80MPaであり、かつ、当該多孔性フィルムの長さが500m以上である多孔性フィルム捲回体。
- 前記多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDが1〜200MPaの範囲にある請求項1に記載の多孔性フィルム捲回体。
- 前記多孔性フィルムの流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDが10〜300MPaの範囲にある請求項1または2に記載の多孔性フィルム捲回体。
- 厚みが10μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体。
- 前記多孔性フィルムの厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/(dL・μm)である請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体。
- 前記ポリプロピレン系樹脂組成物がβ晶活性を有する請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体。
- ポリプロピレン系樹脂組成物が押出機で溶融混練されて膜状物に押し出されて冷却固化される成形工程と、
当該膜状物を流れ方向に直行する垂直方向(TD)へ延伸して得られたシートの端部を取り除く工程(1回目のトリミング工程)と、
当該1回目のトリミング工程を施したシートを流れ方向(MD)への延伸を行って得られたシートの端部を再度取り除く工程(2回目のトリミング工程)と、
当該2回目のトリミング工程を施したシート(多孔性フィルム)をコアに捲回される巻取工程とを有する多孔性フィルム捲回体の製造方法。 - 前記1回目のトリミング工程において、トリミングを行う刃の位置が、シート中央部の厚みの2倍以上の厚みを有する部分であることを特徴とする請求項7に記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
- 前記多孔性フィルムの引張破断応力SMDと引張破断応力STDとの比SMD/STDが0.13〜0.80の範囲である請求項7または8に記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
- 前記多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDが1〜200MPaの範囲にある請求項7〜9のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
- 前記多孔性フィルムの流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDが10〜300MPaの範囲にある請求項7〜10のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
- 前記ポリプロピレン系樹脂組成物がβ晶活性を有する請求項7〜11のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
- 前記多孔性フィルムの厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/(dL・μm)である請求項7〜12のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
- 前記ポリプロピレン系樹脂組成物がβ晶活性を有する請求項7〜13のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
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