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JP2020147639A - 多孔性フィルム捲回体、およびその製造方法 - Google Patents

多孔性フィルム捲回体、およびその製造方法 Download PDF

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JP2020147639A JP2019044366A JP2019044366A JP2020147639A JP 2020147639 A JP2020147639 A JP 2020147639A JP 2019044366 A JP2019044366 A JP 2019044366A JP 2019044366 A JP2019044366 A JP 2019044366A JP 2020147639 A JP2020147639 A JP 2020147639A
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Abstract

【課題】 高突刺強度で透気性に優れ、生産性にも優れた、特に電池用セパレータに好適に用いることができる多孔性フィルム捲回体およびその製造方法を提供する。【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂組成物からなる多孔性フィルムがコアに捲回されてなる多孔性フィルム捲回体であって、当該多孔性フィルムの厚み1μm当たりの突刺強度が20gf/μm以上であり、当該多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDと流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDとの比SMD/STDが0.13〜0.80MPaであり、かつ、当該多孔性フィルムの長さが500m以上である多孔性フィルム捲回体である。【選択図】 なし

Description

本発明は、優れた透気性及び機械的強度を備え、電池用、特にリチウムイオン二次電池用セパレータに好適に用いることができる、多孔性フィルム捲回体及びその製造方法に関する。
二次電池は、OA(Office Automation)化やFA(Factory Automation)化に伴って需要が増加し、さらに、家庭用電器や通信機器等のポータブル機器用電源にも広く使用されている。特に、ポータブル機器においては、容積効率に優れ、装填する機器の小型化及び軽量化が図れることから、リチウムイオン二次電池の使用が増加している。
一方、エネルギーや環境関連の分野においては、例えば、ロードレベリング、いわゆるUPS(Uninterruptible Power Supply)等の無停電電源装置、電気自動車等における大型の二次電池の研究開発が進められており、大容量、高出力、高電圧及び優れた長期保存性の観点から、非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の正極と負極との間には、内部短絡の防止の観点から、電池用セパレータが設けられている。この電池用セパレータには、その役割から当然に絶縁性が要求され、さらに、リチウムイオンの通路となるための透気性及び電解液の拡散及び保持機能も要求される。これらの要求を満たすために、電池用セパレータは、微細孔構造である必要があり、多孔性フィルムが使用されている。
さらに、リチウムイオン二次電池用セパレータにおいては、上記のように、透気性を有する多孔性でありながらも、電池の異常により熱暴走を起こした場合においても、破膜や収縮を生じて電極間が短絡し、電池が異常発熱することに起因する発火等の事故を防止できることが要求される。このため、セパレータの安全性を高める上で更に機械的強度が高いもの、具体的には突刺強度が高い多孔性フィルムが求められている。
またリチウムイオン二次電池においては容量増大のためセパレータの厚みは更なる薄膜化が期待されており、薄膜かつ高突刺強度の要求は高まっている。
セパレータの薄膜化により製膜の難度は高くなり、延伸時の破断による生産性の損失も懸念事項となる。
リチウムイオン二次電池用セパレータとして用いられる多孔性フィルムは、一般にポリオレフィン系樹脂を主成分としており、その主な製造方法は、湿式法、乾式一軸延伸法、及び乾式二軸延伸法の3種に大別される。
湿式法は、超高分子量のポリマーを用いることができることから、突刺強度が高い多孔性フィルムが得られるものの、多孔化のために可塑剤を溶剤で抽出する工程が必要であるため製造コストや環境負荷が高いという課題を有していた。
乾式一軸延伸法は、溶剤を使わず製造することができるため湿式法よりも低コストであり環境負荷も低いが、未延伸の原反フィルムを一旦巻き取り、アニール処理した後、冷延伸及び熱延伸を経るため、効率的な連続生産が困難であり、生産性に劣る。
それに対して特許文献1〜4に示されるような乾式二軸延伸法では汎用的な延伸装置を用いるため、生産性は高い。
特開平11−297297号公報 特開2015−4017号公報 特開2012−7156号公報 特開2017−171796号公報
上記特許文献1には乾式二軸延伸法により製造される積層フィルムの突刺強度が高いことが記載されているが、好ましい厚みが15〜50μmであり、更なる薄膜化および機械的強度の高度化については検討されていない。
特許文献2および3にはβ晶活性を有するポリプロピレン系樹脂からなる未延伸膜状物を縦延伸後、横延伸を行う乾式二軸延伸法により多孔性フィルムを得ることが記載されているが、いずれも15gf/μm以下の突刺強度しか得られていない。
特許文献4にはβ晶活性を有するポリプロピレン系樹脂からなる未延伸膜状物を横延伸後、縦延伸を行う乾式二軸延伸法により、高突刺強度を有する多孔性フィルムが得られることが記載されているが、更なる薄膜化については検討されていない。
また特許文献1〜4いずれにおいても多孔性フィルム捲回体の作製に関するトリミング手法については検討されていない。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高突刺強度で透気性に優れ、生産性にも優れた、特に電池用セパレータに好適に用いることができる多孔性フィルム捲回体およびその製造方法であって、連続生産が可能な乾式二軸延伸法の工程条件に着目して検討し、薄膜でありながら、生産性を損ねる延伸破断を抑制できる多孔性フィルム捲回体およびその製造方法の提供を目的とするものである。
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、かかる課題を解決することに着目し本発明を完成するに至った。すなわち、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる多孔性フィルムがコアに捲回されてなる多孔性フィルム捲回体であって、当該多孔性フィルムの厚み1μm当たりの突刺強度が20gf/μm以上であり、当該多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDと流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDとの比SMD/STDが0.13〜0.80MPaであり、かつ、当該多孔性フィルムの長さが500m以上である多孔性フィルム捲回体である。
また、ポリプロピレン系樹脂組成物が押出機で溶融混練されて膜状物に押し出されて冷却固化される成形工程と、
当該膜状物を流れ方向に直行する垂直方向(TD)へ延伸して得られたシートの端部を取り除く工程(1回目のトリミング工程)と、
当該1回目のトリミングを施したシートを流れ方向(MD)への延伸を行って得られたシートの端部を再度取り除く工程(2回目のトリミング工程)と、
当該2回目のトリミングを施したシート(多孔性フィルム)をコアに捲回される巻取工程とを有する多孔性フィルム捲回体の製造方法である。
本発明で製造できる多孔性フィルム捲回体は、薄膜かつ高突刺強度を有しており、透気性に優れ、生産性にも優れている。このため、多孔性フィルム捲回体は、電池用セパレータに好適に用いることができ、電池の容量ならびに安全性の向上に寄与し得る。
また、本発明の製造方法によれば、前記多孔性フィルム捲回体を、簡便かつ効率的に製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[多孔性フィルム]
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、及びプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体の構成単位の由来成分であるプロピレン以外のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体においては、前記α−オレフィンに由来する構成単位の含有量(α−オレフィン含有量)は、延伸によりポリプロピレン系樹脂を多孔化させやすくする観点から、10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。同様の理由で、前記各共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の含有量は90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上である。
ポリプロピレン系樹脂は、機械的強度や耐熱性の維持等の観点から、ホモポリプロピレンであることが好ましい。この場合、機械的強度の観点から、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85〜99%、さらに好ましくは90〜99%である。
ここで、「アイソタクチックペンタッド分率」とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同じ方向に位置する立体構造の割合を意味する。13C−NMRスペクトルのメチル基領域のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位から求められる。なお、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli, et al.,“Macromolecules”Volume 8, Issue 5, pp.687-689 (1975)に記載の方法に準拠するものとする。
ポリプロピレン系樹脂の分子量は、製膜安定性や生産性、フィルムの機械的強度等の観点から、高温ゲル浸透クロマトグラフィー(高温SEC法)により測定される重量平均分子量(Mw)が100,000〜3,000,000であることが好ましく、より好ましくは100,000〜1,000,000である。
同様の観点から、分子量分布を示すパラメーターである重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが1.5〜10.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0、さらに好ましくは2.0〜6.0である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC法によって求められ、Mw/Mnが1に近いほど分子量分布の幅が狭いことを意味する。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されるものではないが、0.5〜15g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10g/10分である。0.5g/10分以上であれば、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、良好な生産性を確保することができる。また、15g/10分以下であれば、フィルムの機械的強度を十分に保持することができる。
なお、前記MFRは、JIS K 7210−1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合触媒を用いた重合方法を用いればよく、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等を用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、市販品では、例えば、「ノバテックPP」、「ウィンテック」「ウェイマックス」(日本ポリプロ株式会社製);「ノティオ」、「タフマーXR」(三井化学株式会社製);「ゼラス」、「サーモラン」(三菱化学株式会社製);「住友ノーブレン」、「タフセレン」(住友化学株式会社製);「プライムポリプロ」「プライムTPO」(株式会社プライムポリマー製);「アドフレックス」、「アドシル」、「HMS−PP(PF−814)」(サンアロマー株式会社製);「インスパイア」、「バーシファイ」(ダウ・ケミカル社製)等を使用することができる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、多孔化促進や成形加工性の付与の観点から、本発明の効果を損なわない範囲において、2種以上のポリプロピレン系樹脂の併用のほか、変性ポリオレフィン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂もしくはその変性体、エチレン系共重合体、低分子量ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等が添加されていてもよい。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル系、アイオノマー等が挙げられる。
また、成形加工性や生産性、多孔性フィルムの諸物性の改善や調整等の観点から、本発明の効果を損なわない範囲において、トリミングロス等により生じるリサイクル樹脂、シリカ、タルク、カオリン及び炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
本発明の多孔性フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、β晶活性を有していることが好ましい。β晶活性を有しているということは、フィルムを多孔化する前のポリプロピレン系樹脂の膜状物がβ晶を生成していたことを示していると言える。前記膜状物中にβ晶が生成されていれば、多孔化する延伸工程において、好適な微細孔が形成されやすく、透気性に優れた多孔性フィルムが得られる。
ポリプロピレン系樹脂がβ晶活性を有していることは、示差走査型熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)において、β晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出されることにより判断することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により判断することができる。
また、β晶活性を有していることは、広角X線回折測定により得られる回折プロファイルにおいて、回折ピークが検出されることによっても判断することができる。具体的には、フィルムをポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピーク温度を超える温度である170〜190℃で熱処理し、徐冷した後、広角X線測定を行い、β晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性を有しているものと判断される(“Macromolecular Chemistry and Physics” Volume 187, Issue 3, pp.643-652 (1986)、“Progress in Polymer Science” Volume 16, Issues 2-3, pp.361-404 (1991)、“Macromolecular Symposia” Volume 89, Issue 1, pp.499-511 (1995)、“Macromolecular Chemistry and Physics” Volume 75, Issue 1, pp.134-158, (1964)参照)。
前記多孔性フィルムにおけるβ晶活性の程度であるβ晶活性度は、20%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上である。β晶活性度が高いほど、フィルムを多孔化する前のポリプロピレン系樹脂の膜状物中でβ晶が多く生成されていると言え、多孔化する延伸工程において、均一な微細孔が多く形成されやすく、透気性に優れ、かつ、機械的強度が高い多孔性フィルムが得られる。β晶活性度の上限値は、特に限定されるものではないが、100%に近いほど好ましい。
なお、β晶活性度は、検出されるα晶由来の結晶融解熱量ΔHmαとβ晶由来の結晶融解熱量ΔHmβの合計のうちのΔHmβの割合として求められる。
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合、ΔHmβは、主に145℃以上160℃未満の温度範囲にて検出され、ΔHmαは、主に160〜170℃の温度範囲にて検出される。このΔHmαとΔHmβから、ホモポリプロピレンのβ晶活性度を算出することができる。
また、例えば、ポリプロピレン系樹脂がエチレンを1〜4モル%含有するランダム共重合体である場合は、ΔHmβは、主に120℃以上140℃未満の温度範囲にて検出され、ΔHmαは、主に140〜165℃の温度範囲にて検出される。このΔHmαとΔHmβから、前記ランダム共重合体のβ晶活性度を算出することができる。
β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂を得る方法としては、ポリプロピレン系樹脂にα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレン系樹脂を添加する方法(特許第3739481号公報参照)、樹脂組成物にβ晶核剤を添加する方法等が挙げられる。これらのうち、β晶活性を効率的に発現させる観点から、β晶核剤を添加する方法により得ることが好ましい。
<β晶核剤>
β晶核剤は、上述したように、β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂を得るために配合されるものである。ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成及び成長を促進することができるものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。
例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノサイズの酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等のカルボン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸化合物;二塩基又は三塩基カルボン酸のジ又はトリエステル類;フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと第2族元素金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる2成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物等が挙げられる。その他、特開2003−306585号公報、特開平8−144122号公報又は特開平9−194650号公報に具体的に記載されている物質を用いることもできる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
β晶核剤の市販品としては、「エヌジェスターNU−100」(新日本理化株式会社製)、また、β晶核剤が配合されたポリプロピレン系樹脂の市販品としては、ポリプロピレン「Bepol B−022SP」(Aristech社製)、ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」(Borealis社製)、ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」(Mayzo社製)等が挙げられる。
β晶核剤の配合量は、β晶核剤の種類やポリプロピレン系樹脂の組成等により適宜調整されるが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001〜5質量部の割合で配合されることが好ましい。より好ましくは0.001〜3質量部、さらに好ましくは0.01〜2質量部である。β晶核剤の配合割合が0.0001質量部以上であれば、β晶の生成及び成長を促進し、多孔性フィルムにおいて十分なβ晶活性を有するものとすることができる。また、5質量部以下であれば、多孔性フィルム表面へのβ晶核剤のブリードが抑制され、かつ、コスト面からも好ましい。
(厚み)
本発明の多孔性フィルムの厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。前記厚みが10μm以下であれば、電池用セパレータとして使用した際に、多孔性フィルム自体の電気抵抗が小さくでき、十分な電池容量が確保される。一方、厚みの下限は特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。前記厚みが1μm以上であれば、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、十分な電気絶縁性が得られ、短絡が生じにくく、電池の十分な安全性が確保される。
なお厚みは、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
(空孔率)
本発明の多孔性フィルムの空孔率は、20〜80%であることが好ましく、より好ましくは25〜70%であり、さらに好ましくは30〜60%である。空孔率が上記範囲であることによって、高い突刺強度と透気性のバランスがとれた多孔性フィルムを得ることができる。
なお空孔率は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
(透気抵抗度)
本発明の多孔性フィルムは、十分な透気性を有するものであり、厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/(dL・μm)以下である。
本発明でいう透気抵抗度は、JIS P 8117:2009に準拠して、ガーレー法により測定された、空気1dL(100mL)が厚み方向に通過するのに要する時間を表している。したがって、数値が小さいほど空気が通過しやすいことを示している。
前記厚み1μm当たりの透気抵抗度が10秒/(dL・μm)未満の場合、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、内部短絡等の事故を生じるおそれがあり、十分な安全性が得られない。15秒/(dL・μm)以上であることが好ましく、より好ましくは20秒/(dL・μm)以上である。一方、厚み1μm当たりの透気抵抗度が1000秒/(dL・μm)を超えると、該多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した際に、電気抵抗が高くなり、電池性能が低下するため好ましくない。500秒/(dL・μm)以下であることが好ましく、より好ましくは200秒/(dL・μm)以下である。
なお透気抵抗度は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
(突刺強度)
本発明の多孔性フィルムの厚み1μm当たりの突刺強度は20gf/μm以上であり、好ましくは21gf/μm以上である。厚み1μm当たりの突刺強度が20gf/μm以上であれば、該多孔性フィルムは、10μm以下の薄膜であっても十分な突刺強度を有していると言える。一方、前記突刺強度の上限は、特に限定されるものではないが、他のフィルム物性とのバランスを考慮して、35gf/μm以下であることが好ましい。
なお突刺強度は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
(引張破断応力)
本発明の多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDは1〜200MPaであることが好ましく、より好ましくは5〜150MPa、さらに好ましくは10〜100MPaである。MDの引張破断応力SMDが1MPa以上であることにより、多孔性フィルムは十分な機械的強度を有することを示唆され、電池用セパレータとして用いた場合、電池の内部短絡を抑制することができる。一方、MDの引張破断応力SMDが200MPa以下であることにより、TDにも十分な引張破断応力を有することができる。
本発明の多孔性フィルムの流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDは10〜300MPaであることが好ましく、より好ましくは30〜250MPa、さらに好ましくは50〜200MPaである。TDの引張破断応力STDが10MPa以上であることにより、多孔性フィルムは十分な機械的強度を有することが示唆され、電池用セパレータとして用いた場合、電池の内部短絡を抑制することができる。一方、TDの引張破断応力STDが300MPa以下であることにより、多孔性フィルムに十分な透気性をもたせることができる。
引張破断応力SMDと引張破断応力STDとの比SMD/STDは0.13〜0.80であり、好ましくは0.20〜0.75である。SMD/STDが0.13未満である場合、多孔性フィルムの空孔率が低く、十分な透気性が得られない。一方、0.80を超える場合は、十分な突刺強度を有する多孔性フィルムが得られない。
また、引張破断応力SMDと引張破断応力STDの和SMD+STDは170〜400MPaであることが好ましく、より好ましくは200〜350MPaである。SMD+STDが170MPa以上であることにより、十分な突刺強度を有する多孔性フィルムが得られる。一方、400MPa以下であることにより、多孔性フィルムに十分な透気性をもたせることができる。
なお引張破断応力は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定される。
(積層構成)
本発明の多孔性フィルムは、単層でも優れた透気性かつ高い突刺強度を有するものであるが、該多孔性フィルムの機能を妨げない範囲において、他の層を積層させて用いてもよい。例えば、高融解温度樹脂層や、耐熱性粒子及び結着剤等からなる塗布層等による耐熱層、あるいはまた、低融解温度樹脂層によるシャットダウン層等を積層させた構成とすることができる。
積層構成とする場合の層数は、該フィルムの用途及び使用目的等に応じて適宜選択することができ、2〜7層であることが好ましく、生産性やコスト等の観点から、より好ましくは2層又は3層である。各層の厚み及び繰り返し積層数等も、該フィルムの用途及び使用目的等に応じて適宜調整することができる。
[多孔性フィルム捲回体]
本発明の多孔性フィルム捲回体は、上述の多孔性フィルムがコアに捲回されて得られるものである。
本発明の多孔性フィルム捲回体において、多孔性フィルムの長さが500m以上である。前記長さが500m以上であることによって、例えば電池用セパレータとして用いる際に、正極と負極との間に多孔性フィルムを重ねた電池部材を連続して生産することが十分可能である。なお、前記長さの上限は特に限定はされないが、10000m以下が好ましい。
(コア)
コアとは、多孔性フィルムの巻き取りに用いられる円柱形状の巻芯をいう。コアは、例えば、紙、樹脂含浸紙、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、FRP、フェノール樹脂、無機物含有樹脂、接着剤等で形成されることができる。
コアの素材としては、特に限定されないが、熱膨張係数が小さく、剛性が高く、湿度に対する膨潤性が低く、かつ捲回性に優れるという観点から、プラスチック、熱硬化性樹脂等が好ましい。
コアの素材が紙である場合、特に樹脂等でその表面をコートすることで、所望の特性が得られやすい。さらに、コアは、表面平滑性の観点から、樹脂含浸紙の管であることも好ましい。また、コアの素材が樹脂である場合、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、FRP、フェノール樹脂、無機物含有樹脂等で形成されることができる。
コアの外径は、多孔性フィルムの捲回後の巻き締まりを緩和する観点から、好ましくは5インチ以上(約12.7cm以上)であり、より好ましくは6インチ以上であり、さらに好ましくは8インチ以上であり、特に好ましくは9インチ以上である。コアの外径の上限値は、特に制限されないが、ハンドリングの観点からは、好ましくは20インチ以下であり、より好ましくは15インチ以下である。
コアの幅は、好ましくは10mm以上2,000mm以下、より好ましくは15mm以上1,900mm以下、さらに好ましくは20mm以上1,700mm以下である。コアの幅が10mm以上であることにより、多孔性フィルムがコアの品質による影響を受け易いため、本実施の形態では特に有用である。
[多孔性フィルム捲回体の製造方法]
上記のような多孔性フィルム捲回体の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂組成物が押出機で溶融混練されて膜状物に押し出されて冷却固化される成形工程と、当該膜状物を流れ方向に直行する垂直方向(TD)へ延伸して得られたシートの端部を取り除く工程(1回目のトリミング工程)と、当該1回目のトリミングを施したシートを流れ方向(MD)への延伸を行って得られたシートの端部を再度取り除く工程(2回目のトリミング工程)と、2回目のトリミングを施したシート(多孔性フィルム)をコアに捲回される巻取工程とを有する。
このような製造方法によれば、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルム捲回体を延伸破断することなく、生産性よく製造することができる。
以下、上記製造方法を各工程順に説明する。
(成形工程)
まず、成形工程においては、β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練して、冷却固化されることで膜状物を成形する。
前記溶融混練及び成形は、公知の方法を用いることができる。例えば、押出機を用いてβ晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化する押出成形による方法、また、チューブラー法で製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法等が挙げられる。これらのうち、押出成形による方法がより好ましい。具体的には、以下のような方法で行うことが好ましい。
溶融混練は、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、及び必要に応じて添加される添加剤等を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーもしくはタンブラー型ミキサー等を用いて、又は袋に収容してハンドブレンドにて混合した後、一軸又は二軸押出機、ニーダー等にて行い、樹脂組成物をペレット化することが好ましい。
ペレット化の混練温度は、β晶核剤の種類や配合量にもよるが、β晶核剤の分散性及びポリプロピレン系樹脂の加熱による劣化等の観点から、230〜380℃であることが好ましく、より好ましくは240〜350℃である。高温のポリプロピレン系樹脂に対して溶解し得るβ晶核剤を用いる場合は、β晶核剤の分散性の観点から、完全に溶解する温度で溶融混練することが好ましい。
溶融混練後に得られた樹脂組成物のペレットを加熱した押出機に投入して溶融させ、Tダイから押出して膜状物を成形する。膜状物を成形する際の押出機は特に限定されないが、高温のポリプロピレン系樹脂に対して溶解し得るβ晶核剤を用いる場合は、溶融樹脂温度を比較的低くできる単軸押出機を用いることが好ましい。
Tダイから押出して膜状物を成形する場合、Tダイのリップギャップは、所望の多孔性フィルムの厚みや、延伸条件、ドラフト率等の各種条件から決定されるが、生産性や製膜安定性等の観点から、一般的には0.1〜3.0mmであり、好ましくは0.3〜2.5mmである。
製膜の押出温度は、樹脂組成物の流動性や成形性等に応じて適宜調整されるが、生産性や製膜安定性、ポリプロピレン系樹脂の加熱による劣化等の観点から、160〜380℃であることが好ましく、より好ましくは165〜350℃、さらに好ましくは170〜300℃である。
キャストロールによる冷却固化温度は、膜状物中のβ晶の比率を十分に高くするため、また、製膜安定性等の観点から、80〜150℃であることが好ましく、より好ましくは90〜140℃、さらに好ましくは100〜135℃である。
(横延伸工程)
次に、前記成形工程で得られたポリプロピレン系樹脂組成物からなる膜状物を延伸することにより、微細孔が多数形成され、厚み方向に連通性を有する多孔性フィルムを得ることができる。
延伸方法としては、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法等の手法があるが、本発明に係る製造方法においては、逐次二軸延伸法を用いる。
前記逐次二軸延伸法においては、前記膜状物をまずテンター延伸法によりTDへ延伸(横延伸)し、横延伸シートを得た後に、ロール延伸法によりMDへ延伸(縦延伸)を行うことで多孔性フィルムを得ることが好ましい。
ここで、流れ方向に直行する垂直方向(TD)への延伸を「横延伸」とする。
横延伸での延伸温度は、良好な延伸性及び効率的な多孔化の観点から、60〜140℃であることが好ましく、より好ましくは70〜130℃である。
また、横延伸倍率は、高い突刺強度および良好な厚み精度を有する多孔性フィルムを得るために、5.0〜12倍であることが好ましく、より好ましくは5.5〜11倍、さらに好ましくは6.0〜10倍である。
横延伸の歪み速度は、後述する多孔性フィルムの透気性及び引張破断応力の調整容易性等の観点から、10〜12000%/分であることが好ましく、より好ましくは50〜10000%/分、さらに好ましくは100〜8000%/分である。
(1回目のトリミング工程)
横延伸をして得られたシートは、クリップにて挟まれていることで拘束された状態であることから端部の厚みが厚く、またクリップの機械油や挟み痕がついていることがしばしばある。したがって、シートをそのままMDに延伸すると、クリップの挟み痕から破断に至るケースがあるため、一旦端部をトリミングして取り除くことが望ましい。これを1回目のトリミング工程とする。
横延伸をして得られたシートは、TDに配向しているためにTDに裂けやすく、1回目のトリミング工程でシートが裂けてしまうケースや、トリミングにより入ったノッチを起点として後述する縦延伸工程で破膜を起こすおそれがある。
したがって、シートの端部のトリミングを行う際の刃の位置は、前記シート中央部の厚みの2倍以上の厚みを有する部分であることが好ましく、より好ましくは3倍以上の厚みを有する部分であり、さらに好ましくは4倍以上の厚みを有する部分である。前記シート中央部の厚みの2倍以上の厚みを有する部分であれば、前記シートのTDへの配向が比較的小さいためトリミングによる裂けや、後述する縦延伸工程での破膜要因となるノッチを抑制できる。
1回目のトリミングの手法としては、丸刃によるロール上での押し切り、溝切りロールでのシェアカット、フェザー刃等による空中切りなどが挙げられる。いずれを用いてもよいが、厚い部分をトリミングする場合には丸刃による押し切り或いはシェアカットが好ましい。
(縦延伸工程)
前記1回目のトリミング工程で端部を取り除いた後に、ロール延伸法によりMDへ延伸(縦延伸)を行う。このような延伸工程は各延伸で得られたシートの巻き替えを行う必要がなく、連続的に行うことができるため、生産性に優れている。
ここで、流れ方向(MD)への延伸を「縦延伸」とする。
縦延伸倍率は、延伸時の破断を抑制しつつ、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得る観点から、1.1〜4.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.5倍である。
縦延伸をロール延伸法で行う場合、温度調節機能、タッチロール(ニップロール)、および駆動機能を備えた2本以上のロールを有する設備でロールの速度差をつけることによって行われる。この時、縦延伸は1段で行っても2段以上で行ってもよい。なお、縦延伸を2段以上で行う場合は、それぞれの延伸倍率の積が縦延伸倍率となる。
縦延伸での延伸温度は、フィルムを破断することなく、均一な延伸を行う観点から、また、ポリプロピレン系樹脂が溶融することなく、効率的に空孔を拡大させる観点から、60〜160℃であることが好ましく、より好ましくは70〜155℃、さらに好ましくは80〜150℃である。
前記縦延伸の倍率に対する前記横延伸の倍率の比[横延伸倍率/縦延伸倍率]は、3.0以上とするのが好ましい。すなわち、先に行う横延伸の倍率を後に行う縦延伸の倍率よりも大きくし、[横延伸倍率/縦延伸倍率]の比を3.0以上として横延伸、縦延伸の順に行うのが好ましい。
[横延伸倍率/縦延伸倍率]の比が3.0以上とすることで、透気性に優れ、かつ、高い突刺強度を有する多孔性フィルムを得ることができる。
なお、横延伸工程及び縦延伸工程のいずれか或いは両方においては、延伸前の予熱工程を有していてもよい。延伸工程は一段延伸で行っても多段延伸で行ってもよい。また、その後に熱固定工程や熱弛緩工程を有していてもよい。
寸法安定性の改善等の観点から、横延伸及び縦延伸のいずれか或いは両方の後、熱処理を実施する場合、熱処理温度は100〜170℃であることが好ましく、より好ましくは120〜165℃である。熱処理時間は、1〜120秒間であることが好ましく、より好ましくは3〜90秒間である。
さらに、本発明の多孔性フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、用途及び使用目的等に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工や、ミシン目加工等を施してもよい。
(2回目のトリミング工程)
縦延伸をして得られたシート(多孔性フィルム)は、縦延伸により端部がネックインを起こして中央部よりも厚みが大きくなっているため、巻取機でコア等に巻き取る際に、端部がせり上がってしまい、巻き皺などが発生するおそれがある。したがって、前記多孔性フィルムの端部を改めてトリミングして取り除くことが望ましい。これを2回目のトリミング工程とする。2回目のトリミング工程での刃の位置は任意であるが、前記多孔性フィルムの中央部の厚みと同等の部分をできるだけ幅広く採取できる位置で、端部を取り除くことが生産性の観点から好ましい。
またトリミングの手法としては丸刃によるロール上での押し切り、溝切りロールでのシェアカット、フェザー刃等による空中切りなどが挙げられる。いずれを用いてもよいが、薄い部分をトリミングする観点からフェザー刃等による空中切りを行うことが好ましい。
(巻取工程)
続いて巻取工程で、前記第2のトリミング工程を経て得られた多孔性フィルムをコアに捲回することにより、多孔性フィルム捲回体を得ることができる。なお、巻取工程において、特に条件は限定されない。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[物性評価及び測定]
下記実施例及び比較例で製造した各多孔性フィルム捲回体に関し、以下に示す方法により、各種物性評価及び測定を行った。
<厚み>
多孔性フィルム捲回体から直径40mmの試料片を切り出し、目量1/1000mmのダイヤルゲージにて、フィルム面内の任意の5箇所で厚みを測定し、その平均値を求めた。
<空孔率>
厚み測定で作製した試料片について測定した実質量Wと、樹脂組成物の原材料から算出した密度と厚みから算出した空孔率0%の場合の質量Wから以下式1にて空孔率(%)を算出した。
Figure 2020147639
<透気抵抗度(ガーレー値)>
厚み測定で作製した試料片を用いて、JIS P 8117:2009に準拠して、ガーレー法により透気抵抗度(秒/dL)を測定し、厚み1μm当たりに換算した。
<突刺強度>
厚み測定で作製した試料片をホルダー(測定部:直径10mmの円形)に固定し、直径1mm、先端曲率半径0.5mmの金属(SUS440C)製針を厚み方向に300mm/分の速さで突き刺し、穴が開口する最大荷重を測定し、厚み1μm当たりに換算した。
<引張破断応力>
多孔性フィルムから、MDならびにTDが長辺方向になるようにそれぞれ短冊状(長辺80mm、短辺15mmの寸法)の試料片をそれぞれ5枚ずつ切り出した。チャック間距離を40mmとし、引張試験機(インテスコ社製)にて200mm/秒の歪み速度で引張破断を起こした際の荷重を測定した。
試験片の厚みをt(μm)、引張破断を起こした際の最大荷重をF(N)としたとき、以下式2にて引張破断応力(MPa)を算出した。
Figure 2020147639
<β晶活性の有無(DSC)>
多孔性フィルム10mgを秤量して試料とし、示差走査型熱量計(DSC−7、株式会社パーキンエルマージャパン製;以下、同様。)にて、窒素ガス雰囲気下で、25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持した後、200℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、さらに25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で再昇温した。再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度Tmβである145〜160℃にピークが検出された場合を、「β晶活性を有している」とした。
下記実施例及び比較例の多孔性フィルムは、いずれもβ晶活性を有していることが確認された。
<膜状物のβ晶活性度(DSC)>
延伸前の膜状物について、10mgを秤量して試料とし、示差走査型熱量計にて、窒素ガス雰囲気下で、25℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温した。昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度Tmβである145〜160℃にピークが検出されることにより、「β晶活性を有している」ことを確認した。
膜状物のβ晶活性度を、DSCにて検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量ΔHα及びβ晶由来の結晶融解熱量ΔHβから以下式3にて算出した。
Figure 2020147639
<捲回体の巻長さ>
成形工程、延伸工程およびトリミング工程、巻取工程を連続で行うことで捲回体を製造する際、延伸破断なく巻取採取できた多孔性フィルムの巻き長さを記録した。すなわち巻長さが大きいことが連続生産性に優れていることを意味する。
[多孔性フィルム捲回体の製造]
実施例及び比較例の多孔性フィルム捲回体の製造に用いた原材料は、以下のとおりである。
<ポリプロピレン>
・ホモポリプロピレン、MFR=2.4g/10分(230℃、2.16kg荷重)、アイソタクチックペンタッド分率=98%、Mw=470,000、Mw/Mn=4.0
<β晶核剤>
・3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
<酸化防止剤>
・「IRGANOX B 225」(BASFジャパン株式会社製)
<ペレット原料Aの作製>
ポリプロピレン100質量部に対して、β晶核剤0.2質量部、及び酸化防止剤0.1質量部を配合し、同方向二軸押出機(口径40mm、スクリュの有効長Lと外径Dの比L/D=32)に投入し、シリンダー温度280℃で溶融混練した。ストランドダイから押出されたストランドを水槽で急速に冷却して固化させ、ペレタイザーでカットし、ペレット原料Aを作製した。
(実施例1)
ペレット原料Aを、単軸押出機(口径40mm、スクリュの有効長Lと外径Dの比L/D=26.5、圧縮比=2.7)を用いて、200℃に温調して溶融混練後、ギャップ0.5mm、200℃のTダイより押出した溶融樹脂シートを129℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約35μmの膜状物を得た。この膜状物のβ晶活性度は67%であった。
得られた膜状物をフィルムテンター設備(京都機械株式会社製)に通して、110℃で加熱しながら、歪み速度280%/分で7.0倍に横延伸し、155℃で60秒間熱処理を行い徐冷した。得られたシートの中央部の厚みは7.2μm、空孔率は16.2%、透気抵抗度は12400秒/dLであった。
続いて、1回目のトリミング工程として、このシートをトリミング用の駆動ロール上へ通し、厚みが23〜40μm(シート中央部の厚みの3.2〜5.6倍)であるシート端部に回転丸刃を押し当てて、シートの両端を取り除いた。
続いて、1回目のトリミング工程を施したシートをロール延伸機に通し、142℃で加熱しながら1.4倍で縦延伸をして多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの厚みは6.6μm、空孔率は35%、1μmあたりの透気抵抗度は21.3秒/(dL・μm)、1μmあたりの突刺強度は21.5gf/μm、MDの引張破断強度SMDは31MPa、TDの引張破断強度STDは133MPa、MDの引張破断強度SMDとTDの引張破断強度STDとの比SMD/STDは0.23であった。
続いて、2回目のトリミング工程として、この多孔性フィルムの中央部に比べて厚みが大きい端部をフェザー刃による空中切りで取り除いた後、巻取機にて巻き取ることで、長さが500mの多孔性フィルム捲回体を得た。(破膜は起こさずに500mで巻き取りを完了した時点で、十分な長さが得られたと判断して終了した。)
(比較例1)
1回目のトリミング工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様の製造方法で多孔性フィルム捲回体の採取を実施した。しかし、縦延伸時で延伸破膜を起こし、280mの巻長さの多孔性フィルム捲回体しか得られなかった。
(比較例2)
1回目のトリミング工程で、トリミングの位置が、実施例1よりもシートの中央部寄りで、厚みが約8μm(シート中央部の厚みの約1倍)であるシート端部に回転丸刃を押し当てて、シートの両端を取り除いた以外は実施例1と同様の製造方法で多孔性フィルム捲回体の採取を試みた。しかしながら、1回目のトリミング工程でシートがTDに裂けるなどの破膜を起こしてしまい、多孔性フィルム捲回体は得られなかった。
比較例1に記載のように1回目のトリミング工程を実施しない場合、シート端部にある延伸クリップの痕跡などを起点として縦延伸時に破膜を起こす場合があり、望ましくない。またテンタークリップには潤滑油が付着している場合があり、縦延伸時に用いるロールを汚染してしまうリスクがある。
比較例2に記載のように1回目のトリミング工程で、横延伸によりシートがTDに著しく配向しており、薄膜かつ多孔質であるため、これをMDにトリミングすることは困難である。
一方で実施例1のように1回目のトリミングの刃の位置を、シートの中央部よりも厚みが2倍以上ある端部にすることで、トリミングによる破膜を抑制することができる。これは単純に厚みが大きいために破れにくいということも考えられるが、テンターによる延伸方法の特性上、横延伸後のシートの端部にかかる延伸倍率は、設定された延伸倍率よりも比較的低くなっているため、TDへの配向が相対的に小さく、シートの裂けの伝播が起こりにくいと考えられる。また端部にかかる延伸倍率が比較的小さいことで、部分的に空孔率が低いことが推察され、これも1回目のトリミング工程における破膜を抑制している理由として考えられる。
本発明で製造できる多孔性フィルム捲回体は、上述したように、薄膜かつ高突刺強度で、優れた透気性をも有するものであり、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の各種蓄電デバイス、中でも、電池用、特にリチウムイオン二次電池用のセパレータ等に好適に用いることができる。
さらに、使い捨て紙オムツ等の体液吸収用パット、手術衣等の医療用材料、ジャンパー、雨着等の衣料用材料、家屋防水材、断熱材等の建築用材料、乾燥剤、使い捨てカイロ等の包装材料、各種フィルター、工業用ろ過膜等の液体処理材料等の資材等、透気性が要求される種々の用途での幅広い利用が期待される。

Claims (14)

  1. ポリプロピレン系樹脂組成物からなる多孔性フィルムがコアに捲回されてなる多孔性フィルム捲回体であって、当該多孔性フィルムの厚み1μm当たりの突刺強度が20gf/μm以上であり、当該多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDと流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDとの比SMD/STDが0.13〜0.80MPaであり、かつ、当該多孔性フィルムの長さが500m以上である多孔性フィルム捲回体。
  2. 前記多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDが1〜200MPaの範囲にある請求項1に記載の多孔性フィルム捲回体。
  3. 前記多孔性フィルムの流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDが10〜300MPaの範囲にある請求項1または2に記載の多孔性フィルム捲回体。
  4. 厚みが10μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体。
  5. 前記多孔性フィルムの厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/(dL・μm)である請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体。
  6. 前記ポリプロピレン系樹脂組成物がβ晶活性を有する請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体。
  7. ポリプロピレン系樹脂組成物が押出機で溶融混練されて膜状物に押し出されて冷却固化される成形工程と、
    当該膜状物を流れ方向に直行する垂直方向(TD)へ延伸して得られたシートの端部を取り除く工程(1回目のトリミング工程)と、
    当該1回目のトリミング工程を施したシートを流れ方向(MD)への延伸を行って得られたシートの端部を再度取り除く工程(2回目のトリミング工程)と、
    当該2回目のトリミング工程を施したシート(多孔性フィルム)をコアに捲回される巻取工程とを有する多孔性フィルム捲回体の製造方法。
  8. 前記1回目のトリミング工程において、トリミングを行う刃の位置が、シート中央部の厚みの2倍以上の厚みを有する部分であることを特徴とする請求項7に記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
  9. 前記多孔性フィルムの引張破断応力SMDと引張破断応力STDとの比SMD/STDが0.13〜0.80の範囲である請求項7または8に記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
  10. 前記多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張破断応力SMDが1〜200MPaの範囲にある請求項7〜9のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
  11. 前記多孔性フィルムの流れ方向に直行する垂直方向(TD)の引張破断応力STDが10〜300MPaの範囲にある請求項7〜10のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
  12. 前記ポリプロピレン系樹脂組成物がβ晶活性を有する請求項7〜11のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
  13. 前記多孔性フィルムの厚み1μm当たりの透気抵抗度が10〜1000秒/(dL・μm)である請求項7〜12のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
  14. 前記ポリプロピレン系樹脂組成物がβ晶活性を有する請求項7〜13のいずれかに記載の多孔性フィルム捲回体の製造方法。
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