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JP2020075948A - 樹脂組成物および製造方法ならびにその成形体 - Google Patents

樹脂組成物および製造方法ならびにその成形体 Download PDF

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JP2020075948A JP2018208016A JP2018208016A JP2020075948A JP 2020075948 A JP2020075948 A JP 2020075948A JP 2018208016 A JP2018208016 A JP 2018208016A JP 2018208016 A JP2018208016 A JP 2018208016A JP 2020075948 A JP2020075948 A JP 2020075948A
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厚 竹島
Atsushi Takeshima
厚 竹島
悠人 吉田
Yuto Yoshida
悠人 吉田
照文 鈴木
Terufumi Suzuki
照文 鈴木
幸治 松永
Koji Matsunaga
幸治 松永
邦昭 川辺
Kuniaki Kawabe
邦昭 川辺
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Abstract

【解決手段】熱可塑性樹脂(A)25〜99.99質量%と、下記の要件(b−1)〜(b−4)を満たすα−オレフィン(共)重合体(B)0.01〜3.8質量%とを含有することを特徴とする樹脂組成物。(b−1)1H−NMRから測定されるメチル基指標が25〜60%である。(ここで、当該メチル基指標とは、上記α−オレフィン(共)重合体を重クロロホルム中に溶解させて1H−NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.24ppmに現れる溶媒ピークをリファレンスとしたときにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)(b−2)示差走査熱量分析(DSC)において融点が観測されない。(b−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000である。(b−4)ピクノメータ法により測定される密度が810〜870kg/m3である。【効果】本発明によれば、熱可塑性樹脂の押出成形時に、押出機内での滑り発生による成形性低下を引き起こすことなく成形性を改善し、力学物性が損なわれることがない樹脂組成物、その製造方法、および該樹脂組成物より得られる成形体を提供することができる【選択図】なし

Description

本発明は、押出成形時に良好な成形性を示す樹脂組成物およびその製造方法、および該成形方法により得られる成形体に関する。
従来より、熱可塑性樹脂は、押出成形により、フィルム、シート、繊維等の成形体として様々な用途に用いられている。押出成形にて良好な機械物性を持つ成形体を得るためには、MFRの低い樹脂を使用することが一般的であるが、MFRの低い樹脂は、押出機内で、スクリューへの噛み込み不良や、樹脂の溶融不良、高押出トルクを原因とした吐出量の不安定化や押出速度の制限など、成形性に多くの問題を引き起こす。また、上記問題は樹脂の物性や形状のばらつき、押出機の仕様等にも応じて発生するため、近年、このような問題を解決するべく、成形性向上がより一層強く求められるようになっている。
押出成形などの際の成形性を改善する一般的な方法としては、樹脂に成形助剤を添加して成形する方法が知られている。例えば、成形する熱可塑性樹脂に対して、オイル、ポリエチレンワックス等の成形助剤を適用して成形する方法が検討されている(例えば、特許文献1、および2)。
しかしながら、従来の成形助剤を用いてポリプロピレン等の樹脂を押出成形したとしても、成形性自体は改善される傾向にあるものの、得られる成形体の力学物性が通常は低下するので、従来の成形助剤を用いた押出成形により得られた成形体をフィルム、シート、繊維等の成形体として使用しようとしても、用途によっては問題となる場合があった。
また、従来の成形助剤を添加する際に熱可塑性樹脂と共にホッパーより押出機に投入すると、押出機内にて成形助剤による滑りが発生することで、熱可塑性樹脂の溶融阻害が引き起こされ、逆に成形性が低下する場合もあった。
特公平5−80492号公報 特表2003−528948号公報
本発明の目的は、押出成形時に、押出機内での滑り発生による成形性低下を引き起こすことなく、優れた成形性を有し、さらに押出成形により得られた成形体の力学物性が損なわれることがない樹脂組成物、その製造方法、および該樹脂組成物より得られる成形体を提供することにある。
本発明は、次の〔1〕〜〔6〕の事項に関する。
〔1〕ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が5,000以上である熱可塑性樹脂(A)25〜99.99質量%と、下記の要件(b−1)〜(b−4)を満たすα−オレフィン(共)重合体(B)0.01〜3.8質量%とを含有する樹脂組成物。
(b−1)1H−NMRから測定されるメチル基指標が25〜60%である。(ここで、当該メチル基指標とは、上記α−オレフィン(共)重合体を重クロロホルム中に溶解させて1H−NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.24ppmに現れる溶媒ピークをリファレンスとしたときにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)
(b−2)示差走査熱量分析(DSC)において融点が観測されない。
(b−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000である。
(b−4)ピクノメータ法により測定される密度が810〜870kg/m3である。
〔2〕上記熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕上記熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレンである〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量5,000未満の成分の割合が全成分に対して0.7〜4.5質量%の範囲である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔5〕上記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して上記α−オレフィン(共)重合体(B)0.1〜100質量部を混練してマスターバッチを得る工程と、上記熱可塑性樹脂(A)と該マスターバッチとを押出機中で混練する工程とを含む〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
〔6〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形体。
本発明によれば、熱可塑性樹脂の押出成形時に、押出機内での滑り発生による成形性低下を引き起こすことなく、優れた成形性を有し、さらに押出成形により得られた成形体の力学物性が損なわれることがない樹脂組成物、その製造方法、および該樹脂組成物より得られる成形体を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の説明において、数値範囲「N1以上N2以下」(N1およびN2は、それぞれ該数値範囲の下限値および上限値を示す)を、単に「N1〜N2」と記載することもある。例えば、炭素数3以上20以下のα−オレフィンを、「炭素数3〜20のα−オレフィン」と記載することもある。
本発明に係る樹脂組成物は、特定の物性を有する熱可塑性樹脂(A)25〜99.99質量%と、特定の物性を有するα−オレフィン(共)重合体(B)0.01〜3.8質量%とを含有する。
熱可塑性樹脂(A)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が5,000以上の熱可塑性の重合体、またはそれらのブレンド物である。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A) には特に制限はなく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、環状オレフィン重合体、エチレン−プロピレン共重合体、環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル− ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのスチレン系重合体およびその水素添加物;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルなどのビニルカルボン酸重合体およびビニルカルボン酸エステル重合体;エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、;ポリカーボネート、ポリメタクリレート;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロンM XD6、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミドなどのポリアミド;ポリアセタール、およびこれら樹脂のブレンド物などが挙げられる。
これら熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィンが好ましく、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体がより好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
熱可塑性樹脂(A)が上記ポリオレフィンである場合には、熱可塑性樹脂(A)と後述するα−オレフィン(共)重合体(B)との相容性に特に優れ、機械物性の低下や表面へのブリードアウト等の無い、良好な樹脂組成物が得られる。
上記ポリプロピレンのMFR(JIS K 7210;230℃ 試験荷重2.16kgf)としては0.1〜60g/10分の範囲が好ましく、0.3〜20g/10分の範囲がより好ましく、0.3〜10g/10分の範囲が特に好ましい。
ポリプロピレンのMFR が上記範囲にある場合には、機械物性、耐熱性、耐薬品性などに優れた成形体を得ることができる。
〈熱可塑性樹脂(A)の含有量〉
本発明の樹脂組成物全体における熱可塑性樹脂(A)の含有量は、25〜99.99質量%、好ましくは90〜99.99質量%、さらに好ましくは96.2〜99.8質量%、特に好ましくは97〜99.4質量%、より好ましくは98〜99.4質量%である。
上記樹脂組成物全体における熱可塑性樹脂(A)の含有量が、上記下限値未満であると、熱可塑性樹脂(A)の特性が損なわれ、機械物性、耐熱性、耐薬品性などに優れた成形体が得られない場合がある。一方、上記樹脂組成物全体における熱可塑性樹脂(A)の含有量が、上記上限値を超えると、成形性が悪くなり、吐出量が不安定化する、押出速度が制限されるなどの問題が発生する場合がある。
α−オレフィン(共)重合体(B)
本発明に用いられるα−オレフィン(共)重合体(B)は後述する要件(b−1)〜(b−4)を満たす。本発明においてα−オレフィン(共)重合体は、好ましくは炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体あるいは二種以上のα−オレフィンの共重合体である。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)を構成する炭素原子数2〜20のα−オレフィンの例として、エチレン、プロピレン,1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどの直鎖状α−オレフィンや、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、8−メチル−1−ノネン、7−メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの分岐を有するα−オレフィンを挙げることができる。これらのα−オレフィンは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
要件(b−1)
1H−NMRから測定されるメチル基指標が25〜60%である(ここで、当該メチル基指標とは、上記α−オレフィン(共)重合体(B)を重クロロホルム中に溶解させて1H−NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.24ppmに現れる溶媒ピークをリファレンスとしたときにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、全プロトン中に占めるメチル基の割合がある一定の範囲内にあることを特徴とする。一般的にメチル基のプロトンは1H−NMR測定において高磁場側にピークが観測されることが知られている(「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163〜170))。このため、本願では1H−NMRで測定したときに観測される高磁場側のピークの割合をメチル基の指標として用いた。具体的にはα−オレフィン(共)重合体(B)を重クロロホルム中に溶解させて1H−NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒ピークをリファレンス(7.24ppm)としたときにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をメチル基指標とした。ここで、0.50〜2.20ppmの範囲内にはα−オレフィン(共)重合体に基づくピークがほぼ含まれる。この範囲のうち、メチル基に基づくピークは、0.50〜1.15ppmの範囲内に含まれる可能性が高い。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)はメチル基指標が25〜60%であり、その中でも好ましい一態様は25〜40%であり、別の好ましい一態様は40〜60%である。メチル基指標が上記の範囲内にあると、α−オレフィン(共)重合体(B)と熱可塑性樹脂(A)との相容性が良好であり、樹脂組成物の機械物性を保持することができる。特に熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである場合、構造の類似性から相容性に優れ、特にその非晶部とα−オレフィン(共)重合体(B)とが優れた相容性を示すことから、ブリードアウトを防ぐとともに、機械物性や外観を良好に保持することができる。これは、メチル基指標はα−オレフィン(共)重合体(B)中の分岐の割合を示す指標であり、α−オレフィン(共)重合体(B)のメチル基指標が上記範囲に入ると、一定量存在する分岐が、α−オレフィン(共)重合体(B)の分子間力の低減に寄与することにより、ポリオレフィンの非晶部へ良好に拡散(相容)できるためであると推測される。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)におけるメチル基指標は、適切なα−オレフィンを選定し重合することで制御可能である。例えば、プロピレンやブテン、イソブテン等の炭素数3〜5のα−オレフィンの単独重合体はモノマーに対するメチル基の割合が高くなりすぎてしまうので、メチル基指標を上記範囲内に調整することが困難である。単独重合体によって上記範囲内のメチル基指標を達成しようとする場合、α−オレフィンとして炭素数6〜20のα−オレフィンを選定する必要がある。このような要件を満たす重合体は、本発明においてα−オレフィン(共)重合体の好ましい一態様である高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)である。当該高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)の詳細については後述する。また例えば、エチレンの単独重合体はメチル基を有さないため、炭素数3〜20のα−オレフィンを適切に共重合させ、メチル基の割合を高める必要性がある。このような要件を満たす重合体は、本発明においてα−オレフィン(共)重合体の好ましい別の一態様であるエチレン・α−オレフィン共重合体である。その詳細については後述する。
要件(b−2)
示差走査熱量分析(DSC)において融点が観測されない。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が観測されないことを特徴とする。ここで、融点(Tm)が観測されないとは、示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔH)(単位:J/g)が実質的に計測されないことをいう。融解熱量(ΔH)が実質的に計測されないとは、示差走査熱量計(DSC)測定においてピークが観測されないか、あるいは観測された融解熱量が1J/g以下であることである。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)の融点(Tm)および融解熱量(ΔH)は、示差走査熱量計(DSC)測定を行い、−100℃まで冷却してから昇温速度10℃/minで150℃まで昇温したときにDSC曲線をJIS K7121を参考に解析して求める。α−オレフィン(共)重合体(B)は、融点が観測されないと、常温で液状となり易く、良好な流動性改良効果が得られる。また、α−オレフィン(共)重合体(B)を、事前に、上記熱可塑性樹脂(A)と溶融混練して得られるマスターバッチとして使用する場合、α−オレフィン(共)重合体(B)は、融点が観察されないことで、マスターバッチに含有される熱可塑性樹脂(A)を軟化および溶融させ易く、良好な流動性改良効果が得られ易い。
また、熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである場合、α−オレフィン(共)重合体(B)が融点を持たないと、α−オレフィン(共)重合体(B)は、熱可塑性樹脂(A)の非晶部分と良好な相容性を示し、ブリードアウトや機械物性の低下を防止するだけでなく、α−オレフィン(共)重合体(B)の柔軟性により、熱可塑性樹脂(A)に良好な引張破断伸びを与える効果を発現することが期待できる。
要件(b−3)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000である。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000の範囲であり、好ましくは1,500〜15,000であり、より好ましくは2,000〜9,000であり、特に好ましくは2,000〜5,500の範囲である。重量平均分子量が上記下限値より小さいと、α−オレフィン(共)重合体(B)の樹脂組成物中での運動性が高くなるためブリードアウトが起こり易い。一方、α−オレフィン(共)重合体(B)の重量平均分子量が上記上限値より大きくなると、十分な流動性改良効果を得られず、成形性が向上しない場合や、熱可塑性樹脂(A)との相容性が悪く、機械物性の低下やブリードアウトの原因となる場合がある。
また、本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されるものではないが、通常3以下であり、好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下である。また分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0以上であり、好ましくは1.2以上である。α−オレフィン(共)重合体の分子量分布が広く(Mw/Mnが大きく)なると、ブリードアウトや機械物性の低下の原因となり得る低分子量または高分子量の成分を多く含むことになり、好ましくない。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)の重量平均分子量、および分子量分布は分子量既知の標準物質(単分散ポリスチレン)を用いて較正されたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
要件(b−4)
ピクノメータ法により測定される密度が810〜870kg/m3である。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、密度が810〜870kg/m3であり、好ましくは820〜855kg/m3であり、より好ましくは830〜850kg/m3であり、特に好ましくは840〜850kg/m3である。α−オレフィン(共)重合体(B)の密度が上記範囲内にあると、α−オレフィン(共)重合体(B)は熱可塑性樹脂(A)との相容性が良好であり、樹脂組成物の機械物性を保持することができる。特に熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである場合、その非晶部とα−オレフィン(共)重合体(B)が優れた相容性を示すことから、樹脂組成物のブリードアウトを防ぐとともに、機械物性や外観を良好に保持することができる。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)の密度(Dbとする)は、熱可塑性樹脂(A)の密度(Daとする)との差(Da−Db)が10〜160kg/m3となる範囲にあることが好ましく、35〜140kg/m3となる範囲にあることがより好ましく、40〜110kg/m3となる範囲にあることがさらに好ましく、50〜80kg/m3となる範囲にあることが特に好ましい。
α−オレフィン(共)重合体(B)の密度が、上記範囲の上限値より大きいと、α−オレフィン(共)重合体(B)は、熱可塑性樹脂(A)との相容性が悪く、樹脂組成物の機械強度の低下やブリードアウトを起こす場合があるため、好ましくない。一方、α−オレフィン(共)重合体(B)の密度が、上記範囲の下限値より小さいと、α−オレフィン(共)重合体(B)が示す流動開始温度の低温性や高流動性が、熱可塑性樹脂(A)と比べて十分な差を持たなくなり、α−オレフィン(共)重合体(B)による良好な流動性改良効果が得られない場合があるため、好ましくない。言い換えると、α−オレフィン(共)重合体(B)の密度が上記範囲内にあると、相容性と流動性改良効果のバランスに優れ、機械物性等の低下が小さく、成形性に優れる樹脂組成物が得られるため好ましい。特に、熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである場合、α―オレフィン(共)重合体(B)の密度が上記範囲内にあると、α―オレフィン(共)重合体(B)は、熱可塑性樹脂(A)の非晶部と良好な相容性を示しやすく、α−オレフィン(共)重合体(B)のブリードアウトや樹脂組成物の機械物性の低下を抑えることができるため好ましい。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)の密度は、JIS K2249−3に従いピクノメータ法により求めた値である。また、熱可塑性樹脂(A)の密度は、JIS K7112の密度勾配管法に従って測定した値である。
〈高級α−オレフィン(共)重合体〉
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)の好ましい一態様は、1種以上の炭素原子数6〜20のα−オレフィンからなる単量体の(共)重合体である。ここでいう、1種以上の炭素原子数6〜20のα−オレフィンからなる単量体の(共)重合体とは、炭素原子数6〜20のα−オレフィン単独重合体、または、炭素原子数6〜20のα−オレフィンに対応する構成単位を1種以上含む炭素原子数6〜20のα−オレフィン共重合体である。本明細書において、このようなα−オレフィン(共)重合体を、便宜上「高級α−オレフィン(共)重合体」と呼ぶ場合がある。更に、このようなα−オレフィン(共)重合体には、必要に応じて50モル%を超えない範囲で、エチレン及び/または炭素原子数3〜5のα−オレフィンを共重合成分として導入することもできる。このような高級α−オレフィン(共)重合体は一般的にPAOと総称される。
なお、本明細書において、ある(共)重合体を構成するオレフィンをAとしたときに、「Aから導かれる構成単位」なる表現が用いられることがあるが、これは「Aに対応する構成単位」、すなわち、Aの二重結合を構成するπ結合が開くことにより形成される、一対の結合手を有する構成単位をいう。
高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)の製造に用いられる炭素原子数6〜20のα−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどの直鎖状α−オレフィンや、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、8−メチル−1−ノネン、7−メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの分岐を有するα−オレフィンを挙げることができるが、好ましくは炭素原子数8〜12の直鎖状α−オレフィンであり、特に好ましくは1−オクテン、1−デセンである。
本発明において高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)を構成する炭素原子数6〜20のα−オレフィンからなる単量体から導かれる構成単位の含有率は50〜100モル%の範囲であり、好ましくは55〜100モル%、更に好ましくは60〜100モル%である。
また、本発明において高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)を構成するエチレンから導かれる構成単位の含有率は0〜50モル%の範囲であり、好ましくは0〜45モル%、さらに好ましくは0〜40モル%の範囲である。
更に、必要に応じて、高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)に炭素数3〜5のα−オレフィンから導かれる構成単位を0〜30モル%の割合で含有させることもできる。この様な炭素原子数3〜5のα−オレフィンとしてはプロピレン,1−ブテン、1−ペンテンなどの直鎖状α−オレフィンや、3−メチル−1−ブテンなどの分岐を有するα−オレフィンを挙げることができる。これらの炭素数3〜5のα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)のメチル基指標は25〜60%の範囲内であれば特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂(A)と良好な相容性を保つためには25〜40%が好ましく、25〜35%がより好ましい。
これらのα−オレフィンは1種単独でまたは2種以上組合せて用いることができる。
上記のような高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)は、米国特許第3,382,291号公報、米国特許第3,763,244号公報、米国特許第5,171,908号公報、米国特許第3,780,128号公報、米国特許第4,032,591号公報、特開平1−163136号公報、米国特許第4,967,032号公報、米国特許4,926,004号公報に記載のように三フッ化ホウ素、クロム酸触媒等の酸触媒によるオリゴメリゼーションにより得ることがきる。また、特開昭63−037102号公報、特開2005−200447号公報、特開2005−200448号公報、特開2009−503147号公報、特開2009−501836号公報に記載のようなメタロセン化合物を含むジルコニウム、チタン、ハフニウム等の遷移金属錯体を用いた触媒系を用いる方法等によっても得ることができる。高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)の製造方法としては、製造方法の汎用性、得られるα−オレフィン(共)重合体(PAO)の入手容易性の観点で、酸触媒によるオリゴメリゼーションが好ましい。低規則性構造が得られる点で、酸触媒のうちでは三フッ化ホウ素が特に好ましい。
〈エチレン・α−オレフィン共重合体〉
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)の好ましい別の一態様は、エチレンと炭素原子数3以上のα−オレフィンとの共重合体(以下、「エチレン・α−オレフィン共重合体」とも呼ぶ。)である。エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、エチレン以外のα−オレフィンが挙げられ、典型例として、プロピレン,1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどの炭素数3〜20の直鎖状α−オレフィンや、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、8−メチル−1−ノネン、7−メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの炭素数3〜20の分岐を有するα−オレフィンなどを例示することができる。エチレン・α−オレフィン共重合体中には、これらα−オレフィンを1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上併用してもよい。ただし、本発明では、上記「高級α−オレフィン(共)重合体」との区別のため、エチレン・α−オレフィン共重合体における、炭素原子数6〜20のα−オレフィンに対応する構成単位の含量は50モル%未満とする。これらのα−オレフィンの内では、効果的に結晶性を低下させて樹脂組成物を液状にし、流動性を改良する効果および、α−オレフィン(共)重合体(B)と熱可塑性樹脂(A)との相容性を改善する効果の点で、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体は、好ましくはエチレン構造単位含有率が30〜80モル%、より好ましくは40〜75モル%、さらに好ましくは40〜60モル%、特に好ましくは40〜55モル%、最も好ましくは40〜48モル%である。エチレン構造単位含有率が多すぎる、または少なすぎると、結晶性が高くなり相容性が悪化し、機械物性や流動性改良効果が低下する場合がある。反対に、エチレン構造単位含有率が上記範囲であると、結晶性を持たなくなり、機械物性の保持や良好な流動性改良効果、引張破断伸びの向上効果を得ることができる。
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン含量は、13C−NMR法で測定することができ、例えば後述する方法および「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163〜170)に記載の方法に従ってピークの同定と定量とを行うことで測定することができる。
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体は、NMRで測定したブロックネス(B値)が、通常0.9以上、好ましくは1.0以上であることが好ましい。B値は共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータであり、B値が小さくなると、結晶性が高くなり、機械物性や流動性改良効果が低下する場合がある。
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体のメチル基指標は20〜60%の範囲内であれば特に限定されるものではないが、良好な相容性を保つためには40〜60%が好ましく、40〜55%がより好ましく、45〜52%がさらに好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法は特に限定されないが、特公平2−1163号公報、特公平2−7998号公報に記載されているようなバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる方法が挙げられる。また、高い重合活性で共重合体を製造する方法として特開昭61−221207号、特公平7−121969号公報、特許第2796376号公報に記載されているようなジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)からなる触媒系を用いる方法等を用いてもよく、この方法は、得られる共重合体の塩素含量、およびα−オレフィンの2,1−挿入が低減できるため、より好ましい。
バナジウム系触媒を用いる方法では、メタロセン系触媒を用いる方法に比較し、助触媒に塩素化合物をより多く使用するため、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中(B)に微量の塩素が残存する可能性が高い。一方、メタロセン系触媒を用いる方法では、実質的に塩素を残存させないため、塩素による樹脂組成物の劣化を防止できる点で好ましい。塩素含量は100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることがさらに好ましく、5ppm以下であることが特に好ましい。塩素含量は種々の公知の方法で定量することができる。例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社ICS−1600を用い、エチレン・α−オレフィン共重合体を、試料ボートに入れてAr/O2気流中、燃焼炉設定温度900℃にて燃焼分解し、このときの発生ガスを吸収液に吸収させ、イオンクロマトグラフ法にて定量する方法などがある。
また、α−オレフィンの2,1−挿入低減は、共重合体分子内のエチレン連鎖をより低減することを可能にし、エチレンの分子内結晶性を抑制できることから、熱可塑性樹脂(A)との相容性を向上させ、機械物性の低下やブリードアウトを抑制できる。α−オレフィンの2,1−挿入量は、特開平7−145212号公報に記載された方法に従って13C−NMR測定の解析によって求められ、好ましくは1%未満、さらに好ましくは0〜0.5%、より好ましくは0〜0.1%である。13C−NMR測定において15.0〜17.5ppmの範囲にピークが観察されないものが特に好ましい。
〈その他の態様〉
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、非変性体であってもよいし、あるいは、グラフト変性によって何らかの極性基を付与されたものであってもよい。変性に利用される極性基を有するビニル化合物には、酸、酸無水物、エステル、アルコール、エポキシ、エーテル等の酸素含有基を有するビニル化合物、イソシアネート、アミド等の窒素含有基を有するビニル化合物、ビニルシラン等のケイ素含有基を有するビニル化合物などを使用することができる。
この中でも、酸素含有基を有するビニル化合物が好ましく、具体的には、不飽和エポキシ単量体、不飽和カルボン酸及びその誘導体などが好ましい。不飽和エポキシ単量体としては、不飽和グリシジルエーテル、不飽和グリシジルエステル(例えば、グリシジルメタクリレート)などがある。上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)などがある。
また、上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記不飽和カルボン酸の酸ハライド化合物、アミド化合物、イミド化合物、酸無水物、及びエステル化合物などを挙げることができる。具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどがある。
これらの中では、不飽和ジカルボン酸及びその酸無水物がより好ましく、特にマレイン酸、ナジック酸TM及びこれらの酸無水物が特に好ましく用いられる。
なお、上記の極性基を有するビニル化合物又はその誘導体が、α−オレフィン(共)重合体(B)にグラフトする位置は特に制限されず、このα−オレフィン(共)重合体(B)の任意の炭素原子に不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合していればよい。
熱可塑性樹脂(A)が極性基を有する場合、α−オレフィン(共)重合体(B)に上記極性基を付与することで、α−オレフィン(共)重合体(B)と熱可塑性樹脂(A)との良好な相容性が得られ、樹脂組成物の機械物性の低下やブリードアウトを抑制できる。
上記のようなα−オレフィン(共)重合体(B)の変性物(変性α−オレフィン(共)重合体)は、従来公知の種々の方法、例えば、次のような方法を用いて調製できる。
(1)上記α−オレフィン(共)重合体(B)を押出機、バッチ式反応機などで混合させて、極性基を有するビニル化合物又はその誘導体などを添加してグラフト共重合させる方法。
(2)上記α−オレフィン(共)重合体(B)を溶媒に溶解させて、極性基を有するビニル化合物又はその誘導体などを添加してグラフト共重合させる方法。
上記いずれの方法も、上記極性基を有するビニル化合物又はその誘導体のグラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させるために、ラジカル開始剤の存在下でグラフト反応を行うことが好ましい。
上記ラジカル開始剤として、例えば、有機ペルオキシド、アゾ化合物などが使用される。上記有機ペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシドなどが挙げられ、上記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどがある。
このようなラジカル開始剤としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
これらのラジカル開始剤は、α−オレフィン(共)重合体(B)100質量部に対して、通常は0.001〜1質量部、好ましくは0.003〜0.5質量部、さらに好ましくは0.05〜0.3質量部の量で用いられる。
上記のようなラジカル開始剤を用いたグラフト反応、あるいは、ラジカル開始剤を使用しないで行うグラフト反応における反応温度は、通常60〜350℃、好ましくは120〜300℃の範囲に設定される。
このようにして得られる変性α−オレフィン(共)重合体中の極性基を有するビニル化合物のグラフト量は、変性オレフィン系重合体の質量を100質量%とした場合に、通常0.01〜15質量%、好ましくは0.05〜10質量%である。
〈α−オレフィン(共)重合体(B)の含有量〉
本発明の樹脂組成物全体におけるα−オレフィン(共)重合体(B)の含有量は、0.01〜3.8質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.6〜3質量%、特に好ましくは0.6〜2質量%である。
上記樹脂組成物全体におけるα−オレフィン(共)重合体(B)の含有量が、上記下限値未満であると、α−オレフィン(共)重合体(B)による流動性改良効果が十分に発現されない。一方、上記樹脂組成物全体におけるα−オレフィン(共)重合体(B)の含有量が、上記上限値を超えると、樹脂組成物の機械強度低下やブリードアウトが起こる場合があるため好ましくない。言い換えると、α−オレフィン(共)重合体(B)の含量が、上記範囲内にあると、ブリードアウトがなく、機械強度と成形性に優れた樹脂組成物が得られ易いため好ましい。上記効果は、機械強度に優れる低MFRの熱可塑性樹脂(A)に対して、その特徴である機械強度を維持したまま、成形性を改良できるため、特に有用である。
その他の成分
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、金属石鹸、充填剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。
上記安定剤としては、フィンダードフェノール系化合物、フォスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などの酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などの紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤が挙げられる。
上記金属石鹸としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛などのステアリン酸塩等が挙げられる。
上記充填剤としては、ガラス繊維、シリカ繊維、金属繊維(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)、天然繊維(木粉、木質繊維、竹、竹繊維、綿花、セルロース、ナノセルロース、羊毛、麦わら、麻、亜麻、ケナフ、カポック、ジュート、ラミー、サイザル麻、ヘネッケン、トウモロコシ、木の実の殻、木材パルプ、レーヨン、コットン等)、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン、カーボン繊維、シリカ、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ等)、金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸バリウム等)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)及び各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、ガラスフレーク、軽石粉、軽石バルン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、チタン酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、アスベスト、モンモリロナイト、ベントナイト、硫化モリブデン、有機充填剤(リグニン、スターチなど)、及びその含有製品等が挙げられる。特にガラス繊維、シリカ繊維、金属繊維、天然繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボン繊維などの構造に異方性を有する充填剤は、混練時の剪断により充填剤が破断することで、異方性が低下し、その特徴が損なわれ易いが、α−オレフィン(共)重合体(B)は、流動性改良効果にて混錬時の剪断を低減し、異方性を維持し易くするため有用である。
上記難燃剤としては、デガブロムジフェニルエーテル、オクタブロムジフェニルエーテル等のハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化ポリカーボネートなどのハロゲン化合物;三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ、水酸化アルミニウムなどの無機化合物;リン系化合物などが挙げられる。また、ドリップ防止のため難燃助剤としてはテトラフルオロエチレン等の化合物を添加することができる。
上記抗菌剤、防カビ剤としては、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、ニトリル系化合物、ハロアルキル系化合物、ピリジン系化合物などの有機化合物;銀、銀系化合物、亜鉛系化合物、銅系化合物、チタン系化合物などの無機物質、無機化合物などが挙げられる。
上記顔料としては、合成樹脂の着色に従来から用いられている顔料を使用できる。具体的には、アルミニウム、銀、金などの金属類;炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ZnO、TiO2などの酸化物;Al23・nH2O、Fe23・nH2Oなどの水酸化物;CaSO4、BaSO4などの硫酸塩;Bi(OH)2NO3などの硝酸塩;PbCl2などの塩化物;CaCrO4、BaCrO4などのクロム酸塩;CoCrO4などの亜クロム酸塩、マンガン酸塩および過マンガン酸塩;Cu(BO)2などの硼酸塩;Na227・6H2Oなどのウラン酸塩;K3Co(NO26・3H2Oなどの亜硝酸塩;SiO2などの珪酸塩;CuAsO3・Cu(OH)2などのひ酸塩および亜ひ酸塩;Cu(C2322・Cu(OH)2などの酢酸塩;(NH42MnO2(P272などの燐酸塩;アルミ酸塩、モリブデン酸塩、亜鉛酸塩、アンチモン酸塩、タングステン酸塩セレン化物、チタン酸塩、シアン化鉄塩、フタル酸塩、CaS、ZnS、CdS、黒鉛、カーボンブラックなどの無機顔料、コチニール・レーキ、マダー・レーキなどの天然有機顔料、ナフトール・グリーンY、ナフトール・グリーンBなどのニトロソ顔料;ナフトールエローS、ピグメント・クロリン2Gなどのニトロ顔料;パーマネント・レッド4R;ハンザエロー、ブリリアント・カーミン68、スカーレット2Rなどのアゾ顔料;マラカイン・グリーン、ローダミンBなどの塩基性染料レーキ、アシツド、グリーンレーキ、エオシン・レーキなどの酸性染料レーキ、アリザリン・レーキ、プルプリン・レーキ、などの媒染染料レーキ、チオ・インジゴ・レッドB、インタンスレン・オレンジなどの建染染料顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン顔料などの有機顔料などが挙げられる。
上記添加剤は、本発明の効果を損ない範囲で任意の割合および任意の添加方法にて使用できる。
樹脂組成物
本発明にかかる樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)およびα−オレフィン(共)重合体(B)を必須成分とすることを特徴とする。また、発明の効果を損なわない範囲にて、上述のその他成分を含有することができる。
本発明に係る樹脂組成物の組成や分子量については、本発明を損なわない範囲であれば特に限定されるものではないが、良好な成形性と機械物性を得る観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により観測される分子量が5,000未満の成分の割合が樹脂組成物の成分全体に対して0.7〜4.5%であることが好ましく、1.0〜4.5%であることがより好ましく、1.2〜4.5%であることが更に好ましく、1.3〜3.0%であることが特に好ましい。分子量5,000未満の成分は、樹脂組成物の成形性を改善する反面、機械物性の低下やブリードアウト等の問題を引き起こす原因となり得る。樹脂組成物中の分子量5,000未満の成分の割合が上記範囲内にあると、機械物性の低下やブリードアウト等の問題を抑制したまま、成形性を改善する効果が得られ易いため好ましい。
樹脂組成物の製造方法
本発明に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)、α−オレフィン(共)重合体(B)及び必要に応じた添加剤を溶融混練することによって製造される。溶融混練する方法としては、1軸押出機や2軸押出機などを使用することができる。
熱可塑性樹脂(A)にα−オレフィン(共)重合体(B)を添加する方法については、発明の効果を損なわない範囲で種々の方法を使用することができる。例えば、熱可塑性樹脂(A)とα−オレフィン(共)重合体(B)とをヘンシェルミキサーなどの高速ミキサーやタンブラーなどを用いてドライブレンドした後に溶融混練する方法や、熱可塑性樹脂(A)を溶融混練している際に、α−オレフィン(共)重合体(B)を開放部から直接添加したり、サイドフィーダーや液体フィードポンプにより挿入したりすることで溶融混練する方法が挙げられる。上記の方法の中でも、熱可塑性樹脂(A)とα−オレフィン(共)重合体(B)とをドライブレンドした後に溶融混練する方法が、熱可塑性樹脂(A)の溶融初期段階からα−オレフィン(共)重合体(B)による流動性改良効果を得ることができるため好ましい。
溶融混練時の温度としては、熱可塑性樹脂(A)等が溶融する温度であれば特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレンである場合には、通常、190〜300℃の範囲、好ましくは200〜250℃の範囲である。
〈α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを使用した製造方法〉
本発明に係る樹脂組成物の製造方法としては、α−オレフィン(共)重合体(B)を、熱可塑性樹脂(A)と溶融混練してα−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを製造し、該α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチにさらに熱可塑性樹脂(A)を加えて、両者を溶融混練して、樹脂組成物を製造する方法が特に好ましい。
α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを使用した場合、α−オレフィン(共)重合体(B)が押出機内で滑りを発生させることによる成形性の低下を防止することができるため好ましい。また、α−オレフィン(共)重合体(B)は、熱可塑性樹脂(A)と溶融混練した場合でも、常温で液状となり易い性質を有することから、溶融混練の初期段階にて早期に熱可塑性樹脂(A)の成分を軟化および溶融する。このため、α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを熱可塑性樹脂(A)と共に押出機にて混練した場合でも、良好な流動性改良効果を示すことができる。
上記α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを使用した製造方法により製造された樹脂組成物においては、マスターバッチの製造に使用された熱可塑性樹脂(A)と、該マスターバッチを製造した後にさらに該マスターバッチに加えられた熱可塑性樹脂(A)との合計が25〜99.99質量%、α−オレフィン(共)重合体(B)が0.01〜3.8質量%含有される。
α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチの製造に使用される熱可塑性樹脂(A)と、該マスターバッチを製造した後にさらに該マスターバッチに加えられる熱可塑性樹脂(A)とは、同じ樹脂であっても、異なる樹脂であっても構わない。
α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチの製造方法は特に制限はないが、例えばα−オレフィン(共)重合体(B)および熱可塑性樹脂(A)および必要に応じて添加剤を、1軸押出機、2軸押出機、プラストミル、ブラベンダー、ニーダー、ロールミキサー、バンバリーミキサーなどで溶融混練して製造する方法が挙げられる。この中でも、大量生産が容易である点、ペレット状のマスターバッチを得やすい点から1軸押出機または2軸押出機を使用する方法が好ましく、α−オレフィン(共)重合体(B)の相容性を高め、ブリードアウトを抑制する観点から2軸押出機を使用する方法が特に好ましい。
マスターバッチ製造における溶融混練時の温度としては、熱可塑性樹脂(A)等が溶融する温度であれば特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレンである場合には、通常、190〜300℃の範囲、好ましくは200〜250℃の範囲である。
本発明で用いられるα−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチ中のα−オレフィン(共)重合体(B)の配合量は、特に制限はないが、α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチに含有される熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.1〜100質量部の範囲、好ましくは0.1〜20質量部の範囲、より好ましくは0.5〜10質量部の範囲、特に好ましくは、3〜10質量部の範囲である。
上記範囲の下限値以上の質量でα−オレフィン(共)重合体(B)を配合すると、α−オレフィン(共)重合体(B)により、熱可塑性樹脂(A)の成分が軟化および溶融し易くなり、α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチと、さらに加えられる熱可塑性樹脂(A)とを押出機にて溶融混練する際に、良好な流動性改良効果が得られるため好ましい。また、上記範囲の上限値以下の質量でα−オレフィン(共)重合体(B)を配合すると、α−オレフィン(共)重合体(B)のブリードアウトを抑制でき、べたつきのないα−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを得ることができるため好ましい。
α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチと、該マスターバッチに加えられる熱可塑性樹脂(A)との溶融混練方法は、特に制限はなく、例えば上述した、α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチの製造方法における溶融混練方法と同様の方法を採用することができる。
α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチと、該マスターバッチに加えられる熱可塑性樹脂(A)との量比としては、該マスターバッチに加えられる熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチ1質量部〜110質量部が好ましく、15質量部〜110質量部がより好ましく、15質量部〜50質量部が特に好ましい。α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチと、該マスターバッチに加えられる熱可塑性樹脂(A)との量比が上記範囲の下限値よりも小さいと、樹脂組成物中のα−オレフィン(共)重合体(B)の含有量が少なくなり、成形性の改善効果が発現し難い場合がある。一方、α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチと、該マスターバッチに加えられる熱可塑性樹脂(A)との量比が上記範囲の上限値よりも大きいと、α−オレフィン(共)重合体(B)の含有量が多くなり、機械物性の低下を引き起こしやすくなる。
成形体
本発明の成形体は、上記樹脂組成物を含む成形体である。本発明の成形体は、例えば、上記熱可塑性樹脂(A)とα−オレフィン(共)重合体(B)とを溶融混練することにより得られる。この際、前述したように、α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを製造して、該マスターバッチにさらに熱可塑性樹脂(A)を加えて、溶融混練してもよい。また、上記樹脂組成物を溶融混練した後、直ちに成形して成形体を得てもよい。
成形方法としては、例えば、Tダイ成形、ブロー成形、射出成形、その他公知の成形方法が挙げられる。
例えば、熱可塑性樹脂(A)としてポリプロピレンを用いてTダイ押出成形等により、押出シートまたはフィルムを成形する場合には、通常170〜300℃、好ましくは180〜270℃、より好ましくは190〜250℃の範囲で押出成形することにより成形体が得られる。また押出機より押出したフィルムを、例えばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法により延伸することにより、延伸フィルムが得られる。
また、熱可塑性樹脂(A)としてポリプロピレンを用いて押出ブロー成形で本発明の成形体を得る場合には、通常樹脂温度170〜240℃の範囲でダイよりチューブ状パリソンとして押出し、次いで付与すべき形状の金型中にパリソンを保持した後、空気を吹き込み通常樹脂温度160〜230℃の範囲で金型に着装し成形体が得られる。また押出ブロー成形する際には適切な倍率に延伸してもよい。
また、熱可塑性樹脂(A)としてポリプロピレンを用いて射出成形する場合には、射出成形時のシリンダー温度は、通常180〜400℃、好ましくは200〜300℃、より好ましくは200〜250℃の範囲であり、射出圧力は通常10〜200MPa、好ましくは20〜150MPaの範囲であり、金型温度は通常20〜200℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃の範囲である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各物性は、以下の方法により測定あるいは評価した。
〔メチル基指標〕
日本電子(株)製EX270型核磁気共鳴装置を用い、溶媒として重クロロホルム,試料濃度として55mg/0.6mL、測定温度として室温、観測核として1H(270MHz)、シーケンスとしてシングルパルス、パルス幅として6.5μ秒(45°パルス)、繰り返し時間として5.5秒、積算回数としては16回、ケミカルシフトの基準値として重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒ピークの7.24ppmを用いて測定した。
上記のようにして測定された1H−NMRスペクトルから得られたスペクトルにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をメチル基指標とした。ここで、0.50〜2.20ppmの範囲内にはα−オレフィン(共)重合体に基づくピークがほぼ含まれる。この範囲のうち、メチル基に基づくピークは、0.50〜1.15ppmの範囲内に含まれる可能性が高い。
〔融点〕
融点は、セイコーインスツルメント社製X−DSC−7000を用いて測定した。簡易密閉できるアルミサンプルパンに約8mgのサンプルを入れてDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて室温から、150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却した(降温過程)。次いで、−100℃で5分間保持した後、10℃/分で150℃まで昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線が極大値を示す温度を融点(Tm)とし、融解に伴う吸熱量の総和を融解熱量(ΔH)とした。ピークが観測されないか、融解熱量(ΔH)の値が1J/g以下の場合、融点(Tm)は観測されないとみなした。融点(Tm)、および融解熱量(ΔH)の求め方はJIS K7121に基づいて行った。
〔重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)〕
α―オレフィン(共)重合体(B)の分子量は、下記の高速GPC測定装置を用い測定を行った。標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用い校正を行った。
測定装置:東ソー社製HLC8320GPC
移動相:THF(和光純薬工業社製、安定剤不含有、液体クロマトグラフィー用グレード)
カラム:東ソー社製TSKgel Super MultiporeHZ−M 2本を直列連結した。
サンプル濃度:5mg/mL
移動相流速:0.35mL/分
測定温度:40℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製PStQuick MP−M
また、比較例で用いたポリエチレンワックスの分子量は、下記の測定装置を用い測定を行った。標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用い校正を行った。
測定装置:東ソー社製HLC―8321GPC/HT型
移動相:o―ジクロロベンゼン
カラム:東ソー社製TSKgel GMH6−HTを2本、TSKgel GMH6−HTLを2本直列に接続
サンプル濃度:0.1mg/mL
移動相流速:1.0mL/分
測定温度:140℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製単分散ポリスチレン #3 std set
〔密度〕
熱可塑性樹脂(A)および比較例で用いたポリエチレンワックスの密度は、JIS K7112に従い、密度勾配管法により求めた。
また、α−オレフィン(共)重合体(B)の密度は、JIS K2249−3に従い、ピクノメータ法により求めた。
〔MFR〕
熱可塑性樹脂(A)のMFRは、JIS K 7210に準拠し、230℃、 試験荷重2.16kgfの条件にて測定した。
以下の実施例および比較例において、原料としては次のものを用いた。
熱可塑性樹脂(A)
〔熱可塑性樹脂(A)の製造例〕
充分窒素置換した容量10リットルの連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン6000mlを張り、トリエチルアルミニウム100mmol、及び特開昭58−38006号公報の実施例1の方法に準じて調製した固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で10mmol装入した後、プロピレンを全体でチタン成分10gに対し50gとなるように1時間連続的に反応器に供給した。なおこの間温度は10℃に保持した。1時間後プロピレンの導入を停止し、反応器を窒素で充分に置換した。得られたスラリーの固体部分を精製ヘキサンで5回洗浄し、チタン含有ポリプロピレンを得た。次に、充分窒素置換した容量2000リットルの連続重合反応器に、プロピレン500kg、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.173mol、水素10Lを装入した後、重合器の内温を65℃に昇温した。続いて、先程得たチタン含有ポリプロピレンをチタン原子で0.00650mol装入し、重合器の内温を70℃まで昇温して、1時間のプロピレン重合を行なった。1時間後プロピレンの導入を停止し、反応器を窒素で充分に置換して白色顆粒状の重合体を得た。得られた重合体は、70℃で減圧乾燥を行なった後、スクリュー径65mmの押出造粒機を用いて230℃で押し出し、ペレットを造粒することで、熱可塑性樹脂(A)であるポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを熱可塑性樹脂(a)とした。得られた熱可塑性樹脂(a)は重量平均分子量(Mw):609000、MFR:3.0g/10min、密度:910kg/m3であった。
α−オレフィン(共)重合体(B)
〔α−オレフィン(共)重合体(B)の製造例〕
充分窒素置換した容量2リットルの攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1リットルを張り、96mmol/Lに調整した、エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C251.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を500ml/hの量で連続的に1時間供給した後、更に触媒として16mmol/Lに調整したVO(OC25)Cl2のヘキサン溶液を500ml/hの量で、ヘキサンを500ml/hの量で連続的に供給した。一方重合器上部から、重合液器内の重合液が常に1リットルになるように重合液を連続的に抜き出した。次にバブリング管を用いてエチレンガスを35L/hの量で、プロピレンガスを35L/hの量で、水素ガスを80L/hの量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより35℃で行った。これにより、エチレン・プロピレン共重合体を含む重合溶液が得られた。得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、大量のメタノールに投入して、エチレン・プロピレン共重合体を析出させた後、130℃で24時間減圧乾燥を行い、α−オレフィン(共)重合体(B)であるα−オレフィン(共)重合体を得た。得られたα−オレフィン(共)重合体をα−オレフィン(共)重合体(b)とした。得られたα−オレフィン(共)重合体(b)は、メチル基指標:47.6%、重量平均分子量(Mw):4170、分子量分布(Mw/Mn):1.7、密度:843kg/m3であり、融点は観測されなかった。
ポリエチレンワックス
〔ポリエチレンワックスの製造例〕
1.触媒の調製
内容積1.5リットルのガラス製オートクレーブにおいて、市販の無水塩化マグネシウム 25gをヘキサン500mlで懸濁させた。これを30℃に保ち撹拌しながらエタノール 92mlを1時間で滴下し、さらに1時間反応させた。反応終了後、ジエチルアルミニウムモノクロリド93mlを1時間で滴下し、さらに1時間反応させた。反応終了後、四塩化チタン90mlを滴下し、反応容器を80℃に昇温して1時間反応させた。反応終了後、固体部をデカンテーションにより遊離のチタンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。このものをヘキサン懸濁液としてチタン濃度を滴定により定量し、以下の実験に供した。
2.ポリエチレンワックスの製造
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン930mlおよびプロピレン70mlを装入し、水素を0.1MPa(ゲージ圧)となるまで導入した。次いで、系内の温度を170℃に昇温した後、トリエチルアルミニウム0.1ミリモル、エチルアルミニウムセスキクロリド0.4ミリモル、上記得られた固体のヘキサン懸濁液を、チタン成分の量が原子換算で0.008ミリモルとなるようにエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を2.9MPa(ゲージ圧)に保ち、170℃で40分間重合を行った。
少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンおよびプロピレンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥しポリエチレンワックスを得た。得られたポリエチレンワックスは密度926kg/m3、重量平均分子量(Mw):10,270、分子量分布(Mw/Mn):2.8、融点:109℃であった。
〔実施例1〕
[マスターバッチ(1)の作製]
15mmφ二軸押出機にて、ホッパー部より熱可塑性樹脂(a)を、C5ベント部よりα―オレフィン(共)重合体(b)を、それぞれ表1に示した割合にて添加し、溶融混練した後、ペレタイザーを用いてペレット状に成形することで、マスターバッチ(1)を作製した。
[Tダイフィルム成形]
20mmφ単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、D2020)に、ダイス幅150mmのTダイを取り付け、回転数25rpm、シリンダー温度、ダイス温度を205℃に設定して、表2に示す配合で熱可塑性樹脂(a)およびマスターバッチ(1)をドライブレンドして得られた樹脂組成物をホッパーより投入することで、押出フィルム成形を行い、50μm厚のフィルムを得た。
〔実施例2〕
Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびマスターバッチ(1)の配合割合を表2に示す割合とした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。
〔実施例3〕
[マスターバッチ(2)の製造]
熱可塑性樹脂(a)およびα―オレフィン(共)重合体(b)の配合割合を表1に示す割合とした以外は、実施例1と同様の方法にてマスターバッチ(2)を得た。
[Tダイフィルム成形]
マスターバッチ(1)の代わりにマスターバッチ(2)を用い、Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびマスターバッチ(2)の配合割合を表2に示す割合とした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。
〔比較例1〕
Tダイフィルム成形において、マスターバッチを用いずに熱可塑性樹脂(a)のみを使用した点以外は、実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。
〔比較例2〕
Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびマスターバッチ(2)の配合割合を表2に示す割合とした以外は、実施例3と同様の方法にてフィルムを得た。
〔比較例3〕
マスターバッチ(1)の代わりに上記ポリエチレンワックスを用い、Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびポリエチレンワックスの配合割合を表2に示す割合とした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。
〔比較例4〕
Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびポリエチレンワックスの配合割合を表2に示す割合とした以外は比較例3と同様の方法にてフィルムを得た。
Tダイフィルム成形時の成形性および得られたフィルムの物性について次の項目の評価を行った。結果を表2に示した。
[押出トルク]
ホッパーより樹脂を投入し、押出機を上記の成形条件に設定してから10分後より1分間、押出機が示すトルクの値を計測し、その平均値より求めた。本値が小さいと、成形時に押出トルクが増加側に振れた際も、装置能力の上限値に達し難くなるため、成形時の吐出量のムラを軽減し易くなる。また、本値が小さいと、押出機のスクリュー回転数を上げた際に装置能力の上限値に達し難くなるため、吐出量の調整が容易になる。
[吐出量]
ホッパーより樹脂を投入し、押出機を上記の成形条件に設定してから10分後より1分間に成形されたフィルムの質量を計量し、その値より1時間あたりの吐出量を求めた。
[引張破壊強度・引張破壊伸び・引張抗張積]
JIS K7127に準じて、フィルムの機械方向について測定を行い、フィルムが破断した強度および伸びの値を求め、それぞれ引張破壊強度、引張破壊伸びとした。また、引張破壊強度および引張破壊伸びの積の値を引張抗張積とした。この値が大きい程、得られたフィルムが破断し難いことを表し、特にこの値が30,000MPa・%以上であると、破断に強いフィルムであることを表す。
[分子量5,000未満の成分の割合]
得られたフィルムに含まれる成分の分子量を、下記の測定装置を用いて測定を行い、ピーク全体の面積に対する、分子量5,000未満の成分のピークの面積の割合より、分子量5,000未満の成分の割合を求めた。標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用い校正を行った。
測定装置:東ソー社製HLC―8321GPC/HT型
移動相:o―ジクロロベンゼン
カラム:東ソー社製TSKgel GMH6−HTを2本、TSKgel GMH6−HTLを2本直列に接続
サンプル濃度:0.1mg/mL
移動相流速:1.0mL/分
測定温度:140℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製単分散ポリスチレン #3 std set
Figure 2020075948
Figure 2020075948
表2の結果から、実施例1〜3は、比較例1と比較して、押出トルクが小さく、吐出量は多いことが分かる。これは、熱可塑性樹脂(a)を単体で成形した比較例1に対して、熱可塑性樹脂(a)にα―オレフィン(共)重合体(b)を添加して成形した実施例1〜3では、成形性が改善されたことを示している。
また、実施例1〜3は、比較例1と比較して、引張破壊強度の低下は僅かであるが、引張破壊伸びは大きく向上していることが分かる。これは、α―オレフィン(共)重合体(b)が熱可塑性樹脂(a)の非晶部分に対して良好な相容性を示すためであると考えられる。その結果、実施例1〜3では、引張抗張積は向上しており、より破断し難い成形体が得られている。
一方、実施例1〜3を比較例2と比較すると、実施例1〜3では成形性の改善効果は低いものの、引張抗張積の値は大きく、破断に強いフィルムが得られていることが分かる。これは、比較例2ではα―オレフィン(共)重合体(b)の添加量が多いため、引張破壊強度が大きく低下してしまっているのに対し、実施例1〜3では、α―オレフィン(共)重合体(b)の添加量を適切な範囲にとどめることで、引張破壊強度の低下を抑えることができているためと考えられる。
表2の結果より、実施例1〜3および比較例3〜4を比較例1と比較すると、比較例3〜4では、比較例1に比べて押出トルクが大きく低下しているが、吐出量も大きく低下していることが分かる。これは、押出機内にて成形助剤による滑りが発生し、成形性が低下していることを表している。これに対し、実施例1〜3では、α―オレフィン(共)重合体(b)と熱可塑性樹脂(a)を事前に溶融混練したマスターバッチとして添加することで、滑りの発生を防止できており、押出トルクの低下、吐出量の増加の効果が得られており、良好な成形性が得られている。また、実施例1〜3と比較例3〜4を比較すると、実施例1〜3は、引張破壊強度、引張破壊伸び、引張抗張積共に大きな値を示しており、破断に強い成形体であることを表している。これは、α―オレフィン(共)重合体(b)が、ポリエチレンワックスに比べ相容性に優れるためと考えられる。α―オレフィン(共)重合体(b)は、成形性を改善するだけでなく、破断し難い成形体の製造を可能にすることが特徴である。

Claims (6)

  1. ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が5,000以上である熱可塑性樹脂(A)25〜99.99質量%と、下記の要件(b−1)〜(b−4)を満たすα−オレフィン(共)重合体(B)0.01〜3.8質量%とを含有する樹脂組成物。
    (b−1)1H−NMRから測定されるメチル基指標が25〜60%である。(ここで、当該メチル基指標とは、上記α−オレフィン(共)重合体を重クロロホルム中に溶解させて1H−NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.24ppmに現れる溶媒ピークをリファレンスとしたときにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)
    (b−2)示差走査熱量分析(DSC)において融点が観測されない。
    (b−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000である。
    (b−4)ピクノメータ法により測定される密度が810〜870kg/m3である。
  2. 上記熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 上記熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレンである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量が5,000未満の成分の割合が全成分に対して0.7〜4.5質量%の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 上記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して上記α−オレフィン(共)重合体(B)0.1〜100質量部を混練してマスターバッチを得る工程と、上記熱可塑性樹脂(A)と該マスターバッチとを押出機中で混練する工程とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形体。
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