JP2020075948A - 樹脂組成物および製造方法ならびにその成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が5,000以上である熱可塑性樹脂(A)25〜99.99質量%と、下記の要件(b−1)〜(b−4)を満たすα−オレフィン(共)重合体(B)0.01〜3.8質量%とを含有する樹脂組成物。
(b−1)1H−NMRから測定されるメチル基指標が25〜60%である。(ここで、当該メチル基指標とは、上記α−オレフィン(共)重合体を重クロロホルム中に溶解させて1H−NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.24ppmに現れる溶媒ピークをリファレンスとしたときにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)
(b−2)示差走査熱量分析(DSC)において融点が観測されない。
(b−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000である。
(b−4)ピクノメータ法により測定される密度が810〜870kg/m3である。
〔2〕上記熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕上記熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレンである〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量5,000未満の成分の割合が全成分に対して0.7〜4.5質量%の範囲である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔5〕上記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して上記α−オレフィン(共)重合体(B)0.1〜100質量部を混練してマスターバッチを得る工程と、上記熱可塑性樹脂(A)と該マスターバッチとを押出機中で混練する工程とを含む〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
〔6〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形体。
なお、以下の説明において、数値範囲「N1以上N2以下」(N1およびN2は、それぞれ該数値範囲の下限値および上限値を示す)を、単に「N1〜N2」と記載することもある。例えば、炭素数3以上20以下のα−オレフィンを、「炭素数3〜20のα−オレフィン」と記載することもある。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が5,000以上の熱可塑性の重合体、またはそれらのブレンド物である。
ポリプロピレンのMFR が上記範囲にある場合には、機械物性、耐熱性、耐薬品性などに優れた成形体を得ることができる。
本発明の樹脂組成物全体における熱可塑性樹脂(A)の含有量は、25〜99.99質量%、好ましくは90〜99.99質量%、さらに好ましくは96.2〜99.8質量%、特に好ましくは97〜99.4質量%、より好ましくは98〜99.4質量%である。
本発明に用いられるα−オレフィン(共)重合体(B)は後述する要件(b−1)〜(b−4)を満たす。本発明においてα−オレフィン(共)重合体は、好ましくは炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体あるいは二種以上のα−オレフィンの共重合体である。
1H−NMRから測定されるメチル基指標が25〜60%である(ここで、当該メチル基指標とは、上記α−オレフィン(共)重合体(B)を重クロロホルム中に溶解させて1H−NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.24ppmに現れる溶媒ピークをリファレンスとしたときにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)
示差走査熱量分析(DSC)において融点が観測されない。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が観測されないことを特徴とする。ここで、融点(Tm)が観測されないとは、示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔH)(単位:J/g)が実質的に計測されないことをいう。融解熱量(ΔH)が実質的に計測されないとは、示差走査熱量計(DSC)測定においてピークが観測されないか、あるいは観測された融解熱量が1J/g以下であることである。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000である。
ピクノメータ法により測定される密度が810〜870kg/m3である。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、密度が810〜870kg/m3であり、好ましくは820〜855kg/m3であり、より好ましくは830〜850kg/m3であり、特に好ましくは840〜850kg/m3である。α−オレフィン(共)重合体(B)の密度が上記範囲内にあると、α−オレフィン(共)重合体(B)は熱可塑性樹脂(A)との相容性が良好であり、樹脂組成物の機械物性を保持することができる。特に熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである場合、その非晶部とα−オレフィン(共)重合体(B)が優れた相容性を示すことから、樹脂組成物のブリードアウトを防ぐとともに、機械物性や外観を良好に保持することができる。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)の好ましい一態様は、1種以上の炭素原子数6〜20のα−オレフィンからなる単量体の(共)重合体である。ここでいう、1種以上の炭素原子数6〜20のα−オレフィンからなる単量体の(共)重合体とは、炭素原子数6〜20のα−オレフィン単独重合体、または、炭素原子数6〜20のα−オレフィンに対応する構成単位を1種以上含む炭素原子数6〜20のα−オレフィン共重合体である。本明細書において、このようなα−オレフィン(共)重合体を、便宜上「高級α−オレフィン(共)重合体」と呼ぶ場合がある。更に、このようなα−オレフィン(共)重合体には、必要に応じて50モル%を超えない範囲で、エチレン及び/または炭素原子数3〜5のα−オレフィンを共重合成分として導入することもできる。このような高級α−オレフィン(共)重合体は一般的にPAOと総称される。
上記のような高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)は、米国特許第3,382,291号公報、米国特許第3,763,244号公報、米国特許第5,171,908号公報、米国特許第3,780,128号公報、米国特許第4,032,591号公報、特開平1−163136号公報、米国特許第4,967,032号公報、米国特許4,926,004号公報に記載のように三フッ化ホウ素、クロム酸触媒等の酸触媒によるオリゴメリゼーションにより得ることがきる。また、特開昭63−037102号公報、特開2005−200447号公報、特開2005−200448号公報、特開2009−503147号公報、特開2009−501836号公報に記載のようなメタロセン化合物を含むジルコニウム、チタン、ハフニウム等の遷移金属錯体を用いた触媒系を用いる方法等によっても得ることができる。高級α−オレフィン(共)重合体(PAO)の製造方法としては、製造方法の汎用性、得られるα−オレフィン(共)重合体(PAO)の入手容易性の観点で、酸触媒によるオリゴメリゼーションが好ましい。低規則性構造が得られる点で、酸触媒のうちでは三フッ化ホウ素が特に好ましい。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)の好ましい別の一態様は、エチレンと炭素原子数3以上のα−オレフィンとの共重合体(以下、「エチレン・α−オレフィン共重合体」とも呼ぶ。)である。エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、エチレン以外のα−オレフィンが挙げられ、典型例として、プロピレン,1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどの炭素数3〜20の直鎖状α−オレフィンや、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、8−メチル−1−ノネン、7−メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの炭素数3〜20の分岐を有するα−オレフィンなどを例示することができる。エチレン・α−オレフィン共重合体中には、これらα−オレフィンを1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上併用してもよい。ただし、本発明では、上記「高級α−オレフィン(共)重合体」との区別のため、エチレン・α−オレフィン共重合体における、炭素原子数6〜20のα−オレフィンに対応する構成単位の含量は50モル%未満とする。これらのα−オレフィンの内では、効果的に結晶性を低下させて樹脂組成物を液状にし、流動性を改良する効果および、α−オレフィン(共)重合体(B)と熱可塑性樹脂(A)との相容性を改善する効果の点で、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、非変性体であってもよいし、あるいは、グラフト変性によって何らかの極性基を付与されたものであってもよい。変性に利用される極性基を有するビニル化合物には、酸、酸無水物、エステル、アルコール、エポキシ、エーテル等の酸素含有基を有するビニル化合物、イソシアネート、アミド等の窒素含有基を有するビニル化合物、ビニルシラン等のケイ素含有基を有するビニル化合物などを使用することができる。
なお、上記の極性基を有するビニル化合物又はその誘導体が、α−オレフィン(共)重合体(B)にグラフトする位置は特に制限されず、このα−オレフィン(共)重合体(B)の任意の炭素原子に不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合していればよい。
(1)上記α−オレフィン(共)重合体(B)を押出機、バッチ式反応機などで混合させて、極性基を有するビニル化合物又はその誘導体などを添加してグラフト共重合させる方法。
(2)上記α−オレフィン(共)重合体(B)を溶媒に溶解させて、極性基を有するビニル化合物又はその誘導体などを添加してグラフト共重合させる方法。
本発明の樹脂組成物全体におけるα−オレフィン(共)重合体(B)の含有量は、0.01〜3.8質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.6〜3質量%、特に好ましくは0.6〜2質量%である。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、金属石鹸、充填剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。
上記安定剤としては、フィンダードフェノール系化合物、フォスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などの酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などの紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤が挙げられる。
上記充填剤としては、ガラス繊維、シリカ繊維、金属繊維(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)、天然繊維(木粉、木質繊維、竹、竹繊維、綿花、セルロース、ナノセルロース、羊毛、麦わら、麻、亜麻、ケナフ、カポック、ジュート、ラミー、サイザル麻、ヘネッケン、トウモロコシ、木の実の殻、木材パルプ、レーヨン、コットン等)、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン、カーボン繊維、シリカ、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ等)、金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸バリウム等)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)及び各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、ガラスフレーク、軽石粉、軽石バルン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、チタン酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、アスベスト、モンモリロナイト、ベントナイト、硫化モリブデン、有機充填剤(リグニン、スターチなど)、及びその含有製品等が挙げられる。特にガラス繊維、シリカ繊維、金属繊維、天然繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボン繊維などの構造に異方性を有する充填剤は、混練時の剪断により充填剤が破断することで、異方性が低下し、その特徴が損なわれ易いが、α−オレフィン(共)重合体(B)は、流動性改良効果にて混錬時の剪断を低減し、異方性を維持し易くするため有用である。
上記添加剤は、本発明の効果を損ない範囲で任意の割合および任意の添加方法にて使用できる。
本発明にかかる樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)およびα−オレフィン(共)重合体(B)を必須成分とすることを特徴とする。また、発明の効果を損なわない範囲にて、上述のその他成分を含有することができる。
本発明に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)、α−オレフィン(共)重合体(B)及び必要に応じた添加剤を溶融混練することによって製造される。溶融混練する方法としては、1軸押出機や2軸押出機などを使用することができる。
本発明に係る樹脂組成物の製造方法としては、α−オレフィン(共)重合体(B)を、熱可塑性樹脂(A)と溶融混練してα−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを製造し、該α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチにさらに熱可塑性樹脂(A)を加えて、両者を溶融混練して、樹脂組成物を製造する方法が特に好ましい。
本発明の成形体は、上記樹脂組成物を含む成形体である。本発明の成形体は、例えば、上記熱可塑性樹脂(A)とα−オレフィン(共)重合体(B)とを溶融混練することにより得られる。この際、前述したように、α−オレフィン(共)重合体(B)含有マスターバッチを製造して、該マスターバッチにさらに熱可塑性樹脂(A)を加えて、溶融混練してもよい。また、上記樹脂組成物を溶融混練した後、直ちに成形して成形体を得てもよい。
例えば、熱可塑性樹脂(A)としてポリプロピレンを用いてTダイ押出成形等により、押出シートまたはフィルムを成形する場合には、通常170〜300℃、好ましくは180〜270℃、より好ましくは190〜250℃の範囲で押出成形することにより成形体が得られる。また押出機より押出したフィルムを、例えばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法により延伸することにより、延伸フィルムが得られる。
以下の実施例および比較例において、各物性は、以下の方法により測定あるいは評価した。
日本電子(株)製EX270型核磁気共鳴装置を用い、溶媒として重クロロホルム,試料濃度として55mg/0.6mL、測定温度として室温、観測核として1H(270MHz)、シーケンスとしてシングルパルス、パルス幅として6.5μ秒(45°パルス)、繰り返し時間として5.5秒、積算回数としては16回、ケミカルシフトの基準値として重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒ピークの7.24ppmを用いて測定した。
融点は、セイコーインスツルメント社製X−DSC−7000を用いて測定した。簡易密閉できるアルミサンプルパンに約8mgのサンプルを入れてDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて室温から、150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却した(降温過程)。次いで、−100℃で5分間保持した後、10℃/分で150℃まで昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線が極大値を示す温度を融点(Tm)とし、融解に伴う吸熱量の総和を融解熱量(ΔH)とした。ピークが観測されないか、融解熱量(ΔH)の値が1J/g以下の場合、融点(Tm)は観測されないとみなした。融点(Tm)、および融解熱量(ΔH)の求め方はJIS K7121に基づいて行った。
α―オレフィン(共)重合体(B)の分子量は、下記の高速GPC測定装置を用い測定を行った。標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用い校正を行った。
測定装置:東ソー社製HLC8320GPC
移動相:THF(和光純薬工業社製、安定剤不含有、液体クロマトグラフィー用グレード)
カラム:東ソー社製TSKgel Super MultiporeHZ−M 2本を直列連結した。
サンプル濃度:5mg/mL
移動相流速:0.35mL/分
測定温度:40℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製PStQuick MP−M
また、比較例で用いたポリエチレンワックスの分子量は、下記の測定装置を用い測定を行った。標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用い校正を行った。
測定装置:東ソー社製HLC―8321GPC/HT型
移動相:o―ジクロロベンゼン
カラム:東ソー社製TSKgel GMH6−HTを2本、TSKgel GMH6−HTLを2本直列に接続
サンプル濃度:0.1mg/mL
移動相流速:1.0mL/分
測定温度:140℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製単分散ポリスチレン #3 std set
熱可塑性樹脂(A)および比較例で用いたポリエチレンワックスの密度は、JIS K7112に従い、密度勾配管法により求めた。
また、α−オレフィン(共)重合体(B)の密度は、JIS K2249−3に従い、ピクノメータ法により求めた。
熱可塑性樹脂(A)のMFRは、JIS K 7210に準拠し、230℃、 試験荷重2.16kgfの条件にて測定した。
以下の実施例および比較例において、原料としては次のものを用いた。
〔熱可塑性樹脂(A)の製造例〕
充分窒素置換した容量10リットルの連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン6000mlを張り、トリエチルアルミニウム100mmol、及び特開昭58−38006号公報の実施例1の方法に準じて調製した固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で10mmol装入した後、プロピレンを全体でチタン成分10gに対し50gとなるように1時間連続的に反応器に供給した。なおこの間温度は10℃に保持した。1時間後プロピレンの導入を停止し、反応器を窒素で充分に置換した。得られたスラリーの固体部分を精製ヘキサンで5回洗浄し、チタン含有ポリプロピレンを得た。次に、充分窒素置換した容量2000リットルの連続重合反応器に、プロピレン500kg、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.173mol、水素10Lを装入した後、重合器の内温を65℃に昇温した。続いて、先程得たチタン含有ポリプロピレンをチタン原子で0.00650mol装入し、重合器の内温を70℃まで昇温して、1時間のプロピレン重合を行なった。1時間後プロピレンの導入を停止し、反応器を窒素で充分に置換して白色顆粒状の重合体を得た。得られた重合体は、70℃で減圧乾燥を行なった後、スクリュー径65mmの押出造粒機を用いて230℃で押し出し、ペレットを造粒することで、熱可塑性樹脂(A)であるポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを熱可塑性樹脂(a)とした。得られた熱可塑性樹脂(a)は重量平均分子量(Mw):609000、MFR:3.0g/10min、密度:910kg/m3であった。
〔α−オレフィン(共)重合体(B)の製造例〕
充分窒素置換した容量2リットルの攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1リットルを張り、96mmol/Lに調整した、エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を500ml/hの量で連続的に1時間供給した後、更に触媒として16mmol/Lに調整したVO(OC2H5)Cl2のヘキサン溶液を500ml/hの量で、ヘキサンを500ml/hの量で連続的に供給した。一方重合器上部から、重合液器内の重合液が常に1リットルになるように重合液を連続的に抜き出した。次にバブリング管を用いてエチレンガスを35L/hの量で、プロピレンガスを35L/hの量で、水素ガスを80L/hの量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより35℃で行った。これにより、エチレン・プロピレン共重合体を含む重合溶液が得られた。得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、大量のメタノールに投入して、エチレン・プロピレン共重合体を析出させた後、130℃で24時間減圧乾燥を行い、α−オレフィン(共)重合体(B)であるα−オレフィン(共)重合体を得た。得られたα−オレフィン(共)重合体をα−オレフィン(共)重合体(b)とした。得られたα−オレフィン(共)重合体(b)は、メチル基指標:47.6%、重量平均分子量(Mw):4170、分子量分布(Mw/Mn):1.7、密度:843kg/m3であり、融点は観測されなかった。
〔ポリエチレンワックスの製造例〕
1.触媒の調製
内容積1.5リットルのガラス製オートクレーブにおいて、市販の無水塩化マグネシウム 25gをヘキサン500mlで懸濁させた。これを30℃に保ち撹拌しながらエタノール 92mlを1時間で滴下し、さらに1時間反応させた。反応終了後、ジエチルアルミニウムモノクロリド93mlを1時間で滴下し、さらに1時間反応させた。反応終了後、四塩化チタン90mlを滴下し、反応容器を80℃に昇温して1時間反応させた。反応終了後、固体部をデカンテーションにより遊離のチタンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。このものをヘキサン懸濁液としてチタン濃度を滴定により定量し、以下の実験に供した。
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン930mlおよびプロピレン70mlを装入し、水素を0.1MPa(ゲージ圧)となるまで導入した。次いで、系内の温度を170℃に昇温した後、トリエチルアルミニウム0.1ミリモル、エチルアルミニウムセスキクロリド0.4ミリモル、上記得られた固体のヘキサン懸濁液を、チタン成分の量が原子換算で0.008ミリモルとなるようにエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を2.9MPa(ゲージ圧)に保ち、170℃で40分間重合を行った。
[マスターバッチ(1)の作製]
15mmφ二軸押出機にて、ホッパー部より熱可塑性樹脂(a)を、C5ベント部よりα―オレフィン(共)重合体(b)を、それぞれ表1に示した割合にて添加し、溶融混練した後、ペレタイザーを用いてペレット状に成形することで、マスターバッチ(1)を作製した。
20mmφ単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、D2020)に、ダイス幅150mmのTダイを取り付け、回転数25rpm、シリンダー温度、ダイス温度を205℃に設定して、表2に示す配合で熱可塑性樹脂(a)およびマスターバッチ(1)をドライブレンドして得られた樹脂組成物をホッパーより投入することで、押出フィルム成形を行い、50μm厚のフィルムを得た。
Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびマスターバッチ(1)の配合割合を表2に示す割合とした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。
[マスターバッチ(2)の製造]
熱可塑性樹脂(a)およびα―オレフィン(共)重合体(b)の配合割合を表1に示す割合とした以外は、実施例1と同様の方法にてマスターバッチ(2)を得た。
マスターバッチ(1)の代わりにマスターバッチ(2)を用い、Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびマスターバッチ(2)の配合割合を表2に示す割合とした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。
Tダイフィルム成形において、マスターバッチを用いずに熱可塑性樹脂(a)のみを使用した点以外は、実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。
Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびマスターバッチ(2)の配合割合を表2に示す割合とした以外は、実施例3と同様の方法にてフィルムを得た。
マスターバッチ(1)の代わりに上記ポリエチレンワックスを用い、Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびポリエチレンワックスの配合割合を表2に示す割合とした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。
Tダイフィルム成形時の熱可塑性樹脂(a)およびポリエチレンワックスの配合割合を表2に示す割合とした以外は比較例3と同様の方法にてフィルムを得た。
Tダイフィルム成形時の成形性および得られたフィルムの物性について次の項目の評価を行った。結果を表2に示した。
ホッパーより樹脂を投入し、押出機を上記の成形条件に設定してから10分後より1分間、押出機が示すトルクの値を計測し、その平均値より求めた。本値が小さいと、成形時に押出トルクが増加側に振れた際も、装置能力の上限値に達し難くなるため、成形時の吐出量のムラを軽減し易くなる。また、本値が小さいと、押出機のスクリュー回転数を上げた際に装置能力の上限値に達し難くなるため、吐出量の調整が容易になる。
ホッパーより樹脂を投入し、押出機を上記の成形条件に設定してから10分後より1分間に成形されたフィルムの質量を計量し、その値より1時間あたりの吐出量を求めた。
JIS K7127に準じて、フィルムの機械方向について測定を行い、フィルムが破断した強度および伸びの値を求め、それぞれ引張破壊強度、引張破壊伸びとした。また、引張破壊強度および引張破壊伸びの積の値を引張抗張積とした。この値が大きい程、得られたフィルムが破断し難いことを表し、特にこの値が30,000MPa・%以上であると、破断に強いフィルムであることを表す。
得られたフィルムに含まれる成分の分子量を、下記の測定装置を用いて測定を行い、ピーク全体の面積に対する、分子量5,000未満の成分のピークの面積の割合より、分子量5,000未満の成分の割合を求めた。標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用い校正を行った。
測定装置:東ソー社製HLC―8321GPC/HT型
移動相:o―ジクロロベンゼン
カラム:東ソー社製TSKgel GMH6−HTを2本、TSKgel GMH6−HTLを2本直列に接続
サンプル濃度:0.1mg/mL
移動相流速:1.0mL/分
測定温度:140℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製単分散ポリスチレン #3 std set
Claims (6)
- ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が5,000以上である熱可塑性樹脂(A)25〜99.99質量%と、下記の要件(b−1)〜(b−4)を満たすα−オレフィン(共)重合体(B)0.01〜3.8質量%とを含有する樹脂組成物。
(b−1)1H−NMRから測定されるメチル基指標が25〜60%である。(ここで、当該メチル基指標とは、上記α−オレフィン(共)重合体を重クロロホルム中に溶解させて1H−NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.24ppmに現れる溶媒ピークをリファレンスとしたときにおける、0.50〜2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50〜1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)
(b−2)示差走査熱量分析(DSC)において融点が観測されない。
(b−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000である。
(b−4)ピクノメータ法により測定される密度が810〜870kg/m3である。 - 上記熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィンである請求項1に記載の樹脂組成物。
- 上記熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレンである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量が5,000未満の成分の割合が全成分に対して0.7〜4.5質量%の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 上記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して上記α−オレフィン(共)重合体(B)0.1〜100質量部を混練してマスターバッチを得る工程と、上記熱可塑性樹脂(A)と該マスターバッチとを押出機中で混練する工程とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形体。
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