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JP2020048307A - モータ駆動装置、及び操舵システム - Google Patents

モータ駆動装置、及び操舵システム Download PDF

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JP2020048307A JP2018174138A JP2018174138A JP2020048307A JP 2020048307 A JP2020048307 A JP 2020048307A JP 2018174138 A JP2018174138 A JP 2018174138A JP 2018174138 A JP2018174138 A JP 2018174138A JP 2020048307 A JP2020048307 A JP 2020048307A
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Abstract

【課題】モータの電流指令値を適正に制限することが可能なモータ駆動装置を提供することを目的とする。【解決手段】モータ駆動装置80は、モータ電流の指令値である電流指令値を電流制限値以下に制限し、制限後の電流指令値に基づいて、インバータ81を駆動させる制御部60を備える。制御部60は、モータ電流と制限後の電流指令値とに基づいて、電流指令値が制限されても、モータ電流が抑制されない状態であるか否かを推定する。そして、推定結果に基づいて、電流指令値を補正する。【選択図】 図1

Description

モータを駆動させるモータ駆動装置、及びモータ駆動装置を備える操舵システムに関する。
特許文献1には、モータを駆動するモータ駆動装置において、モータに流れるモータ電流を抑制するものが開示されている。具体的には、モータ駆動装置は、モータに流れる電流の指令値である電流指令値を所定の電流制限値に基づいて制限することにより、モータ電流を抑制している。
特開2018−57166号公報
電流指令値の変化に対するモータ電流の追従性が低下する場合がある。電流指令値の変化に対するモータ電流の追従性が悪いと、例えば、モータ電流が制限後の電流指令値により想定される電流を大きく下回る場合があり、この場合、実際にはモータ電流は抑制されていないにも係わらず、電流指令値に対して制限が実施されることとなる。例えば、モータ駆動装置が、電流指令値が制限されたことを履歴情報に記録しておく機能を備えている場合では、モータ電流が抑制されていないにも係わらず、モータ電流が抑制された履歴が記憶されることとなる。そのため、後日、サービスマンがこの履歴を参照することにより、モータ駆動装置の状態を誤って認識してしまうことが懸念される。又、電流指令値が補正されていることを判断し、電流指令値演算や電流に対するフィードバック演算を変更する場合において、実際にはモータ電流は抑制されていないにも係わらず、誤って電流指令値やモータ制御状態が変わることにより、意図しない音や振動が発生し制御性が悪化することが懸念される。
本発明は上記課題に鑑みたものであり、モータの電流指令値を適正に制限することが可能なモータ駆動装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明では、電源からの電力を変換してモータに供給する電力変換部を備えるモータ駆動装置に関する。モータ駆動装置は、前記モータに流れる電流であるモータ電流を検出する電流検出部と、前記モータ電流の指令値である電流指令値を所定の電流制限値に基づいて補正する制限実施部と、前記制限実施部による補正後の前記電流指令値に基づいて、前記電力変換部を駆動させる駆動制御部と、前記モータ電流と補正後の前記電流指令値とに基づいて、前記制限実施部により前記電流指令値が補正されても、前記モータ電流が抑制されない状態であるか否かを推定する推定部と、を備えている。前記制限実施部は、前記推定部による推定結果に基づいて、前記電流指令値を補正する。
上記構成では、モータ電流の指令値である電流指令値が所定の電流制限値に基づいて補正されることにより、モータ電流が抑制される。このとき、モータ電流と制限後の電流指令値とに基づいて、電流指令値が補正されても、モータ電流が抑制されない状態であるか否かが推定される。そして、この推定結果に基づいて、電流指令値が補正される。この場合、電流指令値の変化に対するモータ電流の追従性の悪化の有無に応じて、モータの電流指令値を適正に制限することができる。
操舵システムの構成図。 モータ及びモータ駆動装置の構成図。 電流指令値に対する制限の手順を説明するフローチャート。 電流指令値の増加率と電流閾値との関係を説明する図。 第2実施形態に係る、電流指令値に対する制限の手順を説明するフローチャート。 第3実施形態に係る、電流指令値に対する制限の手順を説明するフローチャート。
(第1実施形態)
実施形態に係る操舵システムを図面に基づいて説明する。操舵システムは、車両に搭載されており、モータの駆動により運転者によるステアリング操作を補助しつつ、このステアリング操作に応じて車輪の向きを変化させる。
図1に示す操舵システム90は、ステアリングホイール91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98を備える。
ステアリングホイール91に連結されたステアリングシャフト92は、先端にピニオンギア96が設けられており、このピニオンギア96はラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、ダイロッド等を介して一対の車輪98が連結されている。そのため、運転者のステアリングホイール91の操作に伴うステアリングシャフト92の回転運動は、ラック軸97の直線運動に変換されることにより、車両の向きを変化させる。
ステアリングシャフト92には、トルクセンサ94と、操舵角センサ95とが設けられている。トルクセンサ94は、運転者によるステアリングホイール91の操作に伴う操舵トルクTsを検出する。操舵角センサ95は、運転者によるステアリングホイール91の操作角、及び操舵速度Vsを検出する。
操舵システム90は、更に、モータ10、モータ駆動装置80、及び減速ギア99を備えている。
モータ10は、運転者の操舵を補助するための操舵アシストトルクをステアリングシャフト92に発生させる。モータ10の回転軸は、減速ギア99を介してステアリングシャフト92に連結されており、モータ10の回転が減速ギア99を介してステアリングシャフト92に伝達することにより操舵アシストトルクが生じる。本実施形態では、モータ10は、U,V,Wの三相コイルを備える交流モータである。
モータ駆動装置80は、モータ10の回転に伴い発生する操舵アシストトルクを制御する。モータ駆動装置80には、トルクセンサ94により検出された操舵トルクTs、操舵角センサ95により検出された操舵速度Vs、及び車速センサ93により検出された自車の車速Vcが入力される。モータ駆動装置80は、操舵トルクTs、操舵速度Vs及び車速Vcの各値に応じて、モータ10の回転を制御することにより所望の操舵アシストトルクを発生させる。
図2は、モータ10と、モータ駆動装置80とを示している。モータ駆動装置80は、モータ10に3相交流電力を供給するインバータ81と、モータ10の各相(U,V、W)に流れる電流を検出する電流検出部70と、モータ駆動装置80の駆動を制御する制御部60と、を備えている。本実施形態では、インバータ81が電力変換部に相当する。
インバータ81は、電力入力線14を介してバッテリ200に接続されており、バッテリ200から供給される直流電力をU,V、Wの各相交流電力に変換して、モータ10に供給する。本実施形態では、インバータ81は、1組のスイッチング素子の直列接続体を、U,V,Wの相毎に備えるフルブリッジ回路により構成されている。各スイッチング素子は、制御部60から出力される操作信号により、オン状態とオフ状態とに操作される。例えば、スイッチング素子はMOSFETにより構成されている。
電流検出部70は、インバータ81と、モータ10の各相コイル10a,10b,10cとを接続する各動力線に設けられた各相検出部71,72,73を含んでいる。U相検出部71は、インバータ81とモータ10のU相コイル10aとを接続する動力線に設けられており、U相コイル10aに流れる電流をU相モータ電流Iuとして検出する。V相検出部72は、インバータ81とモータ10のV相コイル10bとを接続する動力線に設けられており、V相コイル10bに流れる電流をV相モータ電流Ivとして検出する。W相検出部73は、インバータ81とモータ10のW相コイル10cとを接続する動力線に設けられており、W相コイルに流れる電流をW相モータ電流Iwとして検出する。本実施形態では、各相検出部71〜73は、例えばシャント抵抗により構成されている。なお、各相検出部71〜73をホールICにより構成してもよい。
バッテリ200とインバータ81とを接続する電力入力線14には、バッテリ200からインバータ81への電力供給を供給状態と遮断状態との間で切替え可能な電源リレー13が設けられている。また、電力入力線14において電源リレー13よりもバッテリ200側には、バッテリ200からインバータ81に入力される入力電圧Vinを検出する電圧検出部12が設けられている。
モータ10には、モータ10の回転角θを検出する回転角センサ11が設けられている。回転角センサ11は、例えば、レゾルバにより構成されている。また、回転角センサ11は、回転角θに基づいて、モータ10の回転角速度ωを算出可能である。
制御部60は、CPU、ROM、RAM及びI/OIFを備える周知のマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御部60の各機能は、ROMに予め記憶されたプログラムをCPUで実行することにより機能的に実現されてもよいし、専用のハードウェアにより実現されてもよい。
制御部60は、操舵トルクTs、操舵速度Vs、車速Vc、及び回転角θに基づき、所望の操舵アシストトルクに応じた操作信号をインバータ81の各スイッチング素子に出力する。本実施形態では、制御部60は、電流検出部70により検出されたモータ電流Iu、Iv、Iwが、後述の電流指令値に制御されるように、操作信号のデューティ比を操作量とするフィードバック制御を実施する。
制御部60は、操舵アシストトルクを生成する機能として、3相2相座標変換部61と、制限値算出部62と、指令値算出部63と、電流制限部64と、電流偏差算出部65a,65bと、PI制御部66a,66bと、2相3相座標変換部67と、PWM制御部68とを備えている。
電流検出部70により検出されたモータ電流Iu、Iv,Iwは、A/D変換部69a,69b,69cによりアナログ値からデジタル値に変換された後、3相2相座標変換部61に出力される。
3相2相座標変換部61は、モータ10の回転角θに基づいて、デジタル値に変換されたモータ電流Iu、Iv、Iwをdq座標上の値であるd軸電流Idr、及びq軸電流Iqrに変換する。ここで、dq座標を規定する各軸のうち、d軸は、無効電流成分、即ち、モータ10の回転に伴う回転磁界に寄与する電流である励磁電流成分の軸である。また、q軸は、有効電流成分、即ち、モータ10のトルクに寄与する電流であるトルク電流成分の軸である。
制限値算出部62は、d,q軸電流Idr,Iqr、及び後述するd軸デューティ比Dd、q軸デューティ比Dqに基づいて、モータ電流Iu,Iv,Iwを抑制するための電流制限値である各軸制限値LId,LIqを算出する。本実施形態では、制限値算出部62は、インバータ81に流れるインバータ電流の目標値を示す目標電流Itに基づいて、各軸制限値LId,LIqを算出する。インバータ電流の目標電流Itは、例えば、インバータ81に供給される入力電圧Vinや、インバータ81の温度に応じてその値が定められる。
指令値算出部63は、操舵トルクTs、操舵速度Vs、及び車速Vcに基づいて、d軸電流指令値Id*、及びq軸電流指令値Iq*を算出する。本実施形態では、指令値算出部63は、操舵トルクTs、操舵速度Vs、及び車速Vcが小さいほど、電流指令値Id*,Iq*を大きな値に算出する。本実施形態では、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*が電流指令値に相当する。
電流制限部64は、指令値算出部63により算出された電流指令Id*、Iq*を制限値算出部62により算出された各軸制限値LId,LIqに基づいて補正する。本実施形態では、電流制限部64は、正のd軸電流指令値Id*に対しては、d軸電流指令値Id*がd軸制限値LIdよりも大きければ、d軸電流指令値Id*をd軸制限値LIdに補正し、d軸電流指令値Id*がd軸制限値LId以下であれば、d軸電流指令値Id*をそのまま採用する。一方、電流制限部64は、負のd軸電流指令値Id*に対しては、d軸電流指令値Id*がd軸制限値LIdよりも小さければ、d軸電流指令値Id*をd軸制限値LIdに補正し、d軸電流指令値Id*がd軸制限値LId以上であれば、d軸電流指令値Id*をそのまま採用する。電流制限部64は、正のq軸電流指令値Iq*に対しては、q軸電流指令値Iq*がq軸制限値LIqよりも大きければ、q軸電流指令値Iq*をq軸制限値LIqに補正し、q軸電流指令値Iq*がq軸制限値LIq以下であれば、q軸電流指令値Iq*をそのまま採用する。電流制限部64は、負のq軸電流指令値Iq*に対しては、q軸電流指令値Iq*がq軸制限値LIqよりも小さければ、q軸電流指令値Iq*をq軸制限値LIqに補正し、q軸電流指令値Iq*がq軸制限値LIq以上であれば、q軸電流指令値Iq*をそのまま採用する。
以下では、電流制限部64から出力されたd軸電流指令値を、d軸電流指令値Id**と記載し、電流制限部64から出力されたq軸電流指令値を、q軸電流指令値Iq**と記載する。d軸電流指令値Id**は、d軸電流指令値Id*がd軸制限値LIdに制限されたもの、及びd軸制限値LIdに制限されないものが含まれる。q軸電流指令値Iq**には、q軸電流指令値Iq*がq軸制限値LIqに制限されたもの、及びq軸制限値LIqに制限されないものが含まれる。
電流偏差算出部65aは、q軸電流指令値Iq**から、q軸電流Iqrを引いた値であるq軸偏差ΔIqを算出する。電流偏差算出部65bは、d軸電流指令値Id**からd軸電流Idrを引いた値であるd軸偏差ΔIdを算出する。
PI制御部66aは、q軸偏差ΔIqがゼロに近づくようにPI制御を行い、q軸電圧を設定するためのq軸デューティ比Dqを算出する。PI制御部66bは、d軸偏差ΔIdがゼロに近づくようにPI制御を行い、d軸電圧を設定するためのd軸デューティ比Ddを算出する。
2相3相座標変換部67は、回転角θに基づき、d,q軸デューティ比Dd、DqをU,V,Wの各相電圧デューティ比Du、Dv、Dwに変換して出力する。
PWM制御部68は、インバータ81の各スイッチを各相電圧デューティ比Du、Dv、Dwに応じてオン操作する操作信号を出力する。この操作信号に基づいて、インバータ81の各スイッチング素子がオンオフ操作されることによりモータ10が駆動し、モータ10はステアリングシャフト92に操舵アシストトルクを発生させる。本実施形態では、電流偏差算出部65a,65bと、PI制御部66a,66bと、2相3相座標変換部67と、PWM制御部68とが駆動制御部に相当する。
次に、制限値算出部62により算出されるd軸制限値LId及びq軸制限値LIqの算出手順を説明する。まず、インバータ81からモータ10への実際の供給電力Winvは、各軸電流Idr,Iqr、各軸デューティ比Dd,Dq、及びバッテリ200からインバータ81に供給される入力電圧Vinより下記式(1)に基づいて算出することができる。
Winv=(Dd/Kd×Idr+Dq/Kq×Iqr)×Vin … (1)
なお、Kdは、「d軸電圧Vd=Dd/Kd×Vin」を満たす値であり、Kqは、「q軸電圧Vq=Dq/Kq×Vin」を満たす値である。
バッテリ200からの入力電圧Vinによりインバータ81に目標電流Itが流れる場合、供給電力Winvは下記式(2)により算出することができる。
Winv=It×Vin … (2)
なお、本実施形態では、バッテリ200からインバータ81への損失がないものとして、上記式(2)を用いている。
上記式(1),(2)から、下記式(3)を導出することができる。
It=Winv/Vin=(Dd/Kd×Idr+Dq/Kq×Iqr) … (3)
上記式(3)より、インバータ81に目標電流Itを流す場合のd,q軸電流Idr,Iqrを、各軸制限値LId,LIqと見なすことができる。そのため、d軸制限値LIdは、上記式(3)に基づいて、下記式(4)により算出することができ、q軸制限値LIqは、上記式(3)に基づいて、下記式(5)により算出することができる。
LId=Idr=(It−Dq/Kq×Iqr)×Kd/Dd … (4)
LIq=Iqr=(It−Dd/Kd×Idr)×Kq/Dq … (5)
制限値算出部62は、上記式(4),(5)に基づいて算出される各軸制限値LId,LIqを用いて電流指令値Id*,Iq*を制限することにより、モータ電流Iu,Iv,Iwを抑制することが可能となる。なお、各軸電流Idr,Iqrが負の値である場合、目標電流Itの符号は負となる。
ここで、操舵トルクTsの変化に応じて電流指令値Id*,Iq*が変化する場面では、変化後の電流指令値Id*,Iq*に対してモータ電流Iu,Iv,Iwの追従性が悪くなる場合がある。特に、操舵速度Vsが所定値よりも大きな値となる高速操舵時では、各電流指令値Id*,Iq*の増加速度が大きくなるため、モータ電流Iu,Iv,Iwの追従性も悪くなり易い。加えて、モータ電流Iu,Iv,Iwの追従性の悪化に伴い、運転者が操舵トルクTsを増加させるように操舵を行うことにより、モータ電流Iu,Iv,Iwの追従性がより悪化する場合がある。モータ電流Iu,Iv,Iwの追従性が悪いと、モータ電流Iu,Iv,Iwが各電流指令値Id**,Iq**により規定される値から過度に乖離し、実際にはモータ電流Iu,Iv,Iwは抑制されていないにも係わらず、電流指令値Id*,Iqに対して制限が実施される場合がある。
そこで、制御部60の制限値算出部62は、電流指令値Id*,Iq*が補正された場合でもモータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であるか否かを推定する。ここで、電流指令値Id**,Iq**に対するモータ電流Iu,Iv,Iwの追従性が悪い場合、このモータ電流Iu,Iv,Iwに基づいて算出されるd,q軸電流Idr,Iqrが電流指令値Id**,Iq**から過度に乖離することとなる。そこで、制限値算出部62は、各軸電流Idr,Iqrが電流指令値Id**,Iq**から過度に乖離するか否かの判定により、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であるか否かを推定している。
電流制限部64は、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態であると推定された場合に、電流指令値Id*,Iq*に対して制限を実施し、モータ電流Iu,Iv,Iwが制限されない状態であると推定された場合に、電流指令値Id*,Iq*に対して制限を実施しない。本実施形態では、制限値算出部62が推定部に相当する。
図3は、本実施形態に係る電流指令値に対する制限の手順を説明するフローチャートである。図3に示す処理は、制御部60により所定周期で繰り返し実施される。
ステップS11では、操舵トルクTs、操舵速度Vs、及び車速Vcに基づいて、電流指令値Iq*,Id*を算出する。ステップS12では、モータ電流Iu,Iv,Iwに基づいて、d軸電流Idr及びq軸電流Iqrを算出する。
ステップS13では、各軸電流Idr,Iqrに基づいて、各軸制限値LId,LIqを算出する。本実施形態では、上記式(4),(5)により、各軸制限値LId,LIqを算出する。
ステップS14では、ステップS13で算出したq軸制限値LIqに基づいて、q軸電流指令値Iq*を補正することにより制限し、ステップS13で算出したd軸制限値LIdに基づいて、d軸電流指令値Id*を補正することにより制限する。ステップS15では、q軸電流指令値Iq**からq軸電流Iqrを引いた値の絶対値を、q軸電流指令値Iq**に対するq軸電流Iqrの乖離幅Biqとして算出する。また、d軸電流指令値Id**からd軸電流Idrを引いた値の絶対値を、d軸電流指令値Id**に対するd軸電流Idrの乖離幅Bidとして算出する。
ステップS16では、電流閾値THd,THqを設定する。電流閾値THdは、d軸電流Idrがd軸電流指令値Id**から過度に乖離することにより、d軸電流指令値Id**に対してd軸電流Idrの追従性が悪い状態を判定する値である。電流閾値THqは、q軸電流Iqrがq軸電流指令値Iq**から過度に乖離することにより、q軸電流指令値Iq**に対してq軸電流Iqrの追従性が悪い状態を判定する値である。ここで、操舵トルクTsの増加に伴うd,q軸電流指令値Id*,Iq*の増加率(増加速度)が大きいほど、モータ電流Iu,Iv,Iwの電流指令値Id*,Iq*に対する追従性が悪くなる。そこで、本実施形態では、d,q軸電流指令値Id*,Iq*の増加率Rd,Rqを算出し、算出した増加率Rd,Rqが大きいほど、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定され易くしている。本実施形態では、図4(a)に示すように、q軸電流指令値Iq*の増加率Rqが大きいほど、電流閾値THqを小さい値に設定することにより、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定され易くしている。また、図4(b)に示すように、d軸電流指令値Id*の増加率Rdが大きいほど、電流閾値THdを小さい値に設定することにより、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定され易くしている。
図3に戻り、ステップS17では、q軸電流指令値Iq**に対するq軸電流Iqrの追従性が悪い状態であるか否かを推定する。具体的には、q軸電流Iqrの絶対値がq軸電流指令値Iq**の絶対値よりも小さく、かつステップS15で算出した乖離幅Biqが電流閾値THqより大きいか否かを判定する。言い換えると、q軸電流Iqrとq軸電流指令値Iq**とが共に正の値であれば、q軸電流Iqrがq軸電流指令値Iq**よりも小さく、かつ乖離幅Biqが電流閾値THqよりも大きい場合に、q軸電流Iqrがq軸電流指令値Iq**を過度に下回っている状態(乖離している状態)となる。一方、q軸電流Iqrとq軸電流指令値Iq**とが共に負の値であれば、q軸電流Iqrがq軸電流指令値Iq**よりも大きく、かつ乖離幅Biqが電流閾値THqよりも大きい場合に、q軸電流Iqrがq軸電流指令値Iq**を過度に上回っている状態(乖離している状態)となる。そのため、ステップS17では、乖離幅Biqの判定に加えて、q軸電流Iqrの絶対値とq軸電流指令値Iq**の絶対値との比較を行っている。
ステップS17において否定判定した場合、ステップS19に進む。一方、ステップS17において肯定判定した場合、ステップS18に進む。ステップS18では、q軸制限値LIqをq軸制限上限値MAXqに設定する。本実施形態では、q軸制限値LIqが正の値であれば、q軸制限上限値MAXqは、q軸電流指令値Iq*が取り得る最大値以上の値に定められており、q軸制限値LIqが負の値であれば、q軸制限上限値MAXqは、q軸電流指令値Iq*が取り得る最小値以下の値に定められている。なお、これ以外にも、q軸制限上限値MAXqを、q軸電流Iqrが取り得る最大値以上の値及び最小値以下の値に定めてもよい。
ステップS19では、d軸電流指令値Id**に対するd軸電流Idrの追従性が悪い状態であるか否かを推定する。具体的には、d軸電流Idrの絶対値がd軸電流指令値Id**の絶対値よりも小さく、かつステップS15で算出した乖離幅Bidが電流閾値THdより大きいか否かを判定する。
ステップS19において否定判定した場合、ステップS21に進む。一方、ステップS19において肯定判定した場合、ステップS20に進む。ステップS20では、d軸制限値LIdをd軸制限上限値MAXdに設定する。本実施形態では、d軸制限値LIdが正の値であれば、d軸制限上限値MAXdは、d軸電流指令値Id*が取り得る最大値以上の値に定められており、d軸制限値LIdが負の値であれば、d軸制限上限値MAXdは、d軸電流指令値Id*が取り得る最小値以下の値に定められている。なお、これ以外にも、d軸制限上限値MAXdを、d軸電流Idrが取り得る最大値以上の値及び最小値以下の値に定めてもよい。
ここで、電流指令値Id**,Iq**に対するd,q軸電流Idr,Iqrの追従性が悪く、電流指令値Id**,Iq**と、d,q軸電流Idr,Iqrとの符号が異なる場合がある。そこで、ステップS17において、q軸電流指令値Iq**と、q軸電流Iqrとの符号が不一致の場合を想定し、q軸電流指令値Iq**にq軸電流Iqrを掛け算した値が負となる場合にも、ステップS17を否定判定するものであってもよい。また、ステップS19において、d軸電流指令値Id**と、d軸電流Idrとの符号が不一致の場合を想定し、d軸電流指令値Id**にd軸電流Idrを掛け算した値が負となる場合にも、ステップS19を否定判定するものであってもよい。
ステップS21では、d軸電流指令値Id*の絶対値がd軸制限値LIdの絶対値よりも大きいか否か、及びq軸電流指令値Iq*の絶対値がq軸制限値LIqの絶対値よりも大きいか否かを判定する。そして、d軸電流指令値Id*の絶対値がd軸制限値LIdの絶対値よりも大きい場合、q軸電流指令値Iq*の絶対値がq軸制限値LIqの絶対値よりも大きい場合の少なくとも一方の条件を満たす場合、ステップS22に進む。一方、ステップS21を否定判定する場合、図3の処理を一旦終了する。
ステップS22では、その絶対値が各軸制限値LId,LIqの絶対値よりも大きいと判定した電流指令値Id*,Iq*に対して、各軸制限値LId,LIqに基づいて制限を加える。ステップS18又はステップS20を経由して、ステップS21に進む場合、各電流指令値Id*,Iq*の絶対値がd軸制限値LId(=MAXd)の絶対値、及びq軸制限値LIq(=MAXq)の絶対値よりも大きくなることはないため、ステップS21を否定判定して、図3の処理を一旦終了する。即ち、電流指令値Id*,Iq*に対して制限が実施されない。ステップS18,S20,S21が制限実施部に相当する。
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏する。
・モータ駆動装置80は、モータ電流の指令値である電流指令値Id*,Iq*を各軸制限値LId,LIqに基づいて補正することにより、モータ電流を抑制する。また、制御部60は、モータ電流と制限後の電流指令値Id*,Iq*とに基づいて、電流指令値Id*,Iq*が補正されても、モータ電流が抑制されない状態であるか否かを推定する。そして、推定結果に基づいて、電流指令値Id*,Iq*を変更する。本実施形態では、モータ電流が抑制される状態であると推定した場合に、電流指令値Id*,Iq*に対する補正を実施し、モータ電流が抑制されない状態であると推定した場合に、電流指令値Id*,Iq*に対する補正を実施しない。この場合、電流指令値Id*,Iq*の変化に対するモータ電流の追従性の悪化の有無に応じて、電流指令値Id*,Iq*を適正に抑制することができる。
・制御部60は、各電流指令値Id**,Iq**を基準とするd,q軸電流Idr,Iqrの乖離幅Bid,Biqに基づいて、モータ電流が抑制されない状態であるか否かを推定する。上記構成では、モータ電流が抑制されない状態を容易に推定することができる。
・電流指令値Id*,Iq*の増加率が大きいほど、モータ電流の電流指令値Id*,Iq*に対する追従性が悪くなる。この点上記構成では、制御部60は、q軸電流指令値Iq*の増加率Rqが大きいほど、モータ電流が抑制されない状態であると推定され易くすることとした。この場合、電流指令値Id*,Iq*に対する追従性が悪化し易いと推定される場面では、電流指令値Id*,Iq*に対する制限を実施しにくくすることにより、電流指令値Id*,Iq*をいっそう適正に制限することができる。
(第1実施形態の変形例)
・運転者のステアリング操作に応じた操舵量の変化加速度が大きいほど、モータ電流Iの電流指令値Id*,Iq*に対する追従性が悪くなる。そこで、操舵量の変化加速度、又はモータ10の回転角の角加速度が大きいほど、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定され易くしてもよい。この場合、ステップS16において、操舵速度Vsの微分値から操舵量の変化加速度を算出し、算出した変化加速度が大きいほど電流閾値THd,THqを小さな値に設定すればよい。同様に、ステップS16において、モータ10の回転角の角加速度を算出し、算出した回転角の角加速度が大きいほど電流閾値THd,THqを小さな値に設定すればよい。制御部60は、電流指令値Id*,Iq*の増加率、モータ回転角の角速度、モータ回転角の角加速度、又はそれらの組合せに応じて、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態に対する推定され易さを変更してもよい。
・q軸電流Iqrは操舵アシストトルクに対する寄与が大きいため、q軸電流指令値Iq**に対するq軸電流Iqrの乖離幅Biqに基づいて、モータ電流が抑制されない状態であるか否かを推定してもよい。この場合、ステップS17において、肯定判定した場合に、ステップS18,S20をそれぞれ実施すればよい。この場合、ステップS19の判定は実施されない。
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第2実施形態と第1実施形態とで同じ箇所には、同一の符号を付しており、その説明は繰り返さない。
本実施形態では、インバータ81からモータ10への実際の供給電力Winvが、インバータ81の目標電力Twを下回る量に基づいて、電流指令値Id*,Iq*に対する制限によってもモータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態を推定する。
図5は、本実施形態に係る電流指令値に対する制限処理の手順を説明するフローチャートである。図5に示す処理は、制御部60により所定周期で繰り返し実施される。
ステップS13において各軸制限値LId,LIqを算出した後、ステップS30では、インバータ81の供給電力Winvを算出する。本実施形態では、上記式(1)により、インバータ81の供給電力Winvを算出する。ステップS30が供給電力算出部に相当する。
ステップS31では、電流指令値Id*,Iq*に基づいて、インバータ81が供給する電力の目標値である目標電力Twを算出する。本実施形態では、目標電力Twを、電流指令値Id*,Iq*、各軸デューティ比Dd,Dq、及び入力電圧Vinを用いた下記式(6)により算出する。
Tw=(Dd/Kd×|Id*|+Dq/Kq×|Iq*|)×Vin … (6)
ステップS31が目標電力算出部に相当する。
ステップS32では、目標電力Twから供給電力Winvを引いた値の絶対値を、供給電力Winvが目標電力Twを下回る量Bwとして算出する。
ステップS33では、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であるか否かを判定するための電力閾値TH2を設定する。本実施形態では、電力閾値TH2を、供給電力Winvが目標電力Twを過度に下回ることにより、電流指令値Id**,Iq**に対して各軸電流Idr,Iqrの追従性が悪い状態を判定する値として定めている。
本実施形態においても、q軸電流指令値Iq*の増加率Rqが小さいほど、電力閾値TH2を大きくすることにより、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態であると推定され易くしている。
ステップS34では、供給電力Winvが目標電力Twを下回る量Bwが、電力閾値TH2よりも大きいか否かを判定する。具体的には、供給電力Winvが目標電力Twよりも小さく、かつ供給電力Winvが目標電力Twを下回る量Bwが電力閾値TH2よりも大きい場合に、ステップS34を肯定判定する。ステップS34を肯定判定した場合に、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定し、ステップS18に進む。ステップS18では、d軸制限値LIdをd軸制限上限値MAXdに設定し、q軸制限値LIqをq軸制限上限値MAXqに設定する。
ステップS33を否定判定する場合、各制限値LId,LIqを変更することなくステップS19に進む。ステップS18からステップS19に進む場合、電流指令値Id*,Iq*が制限されることなく、図5の処理を一旦終了する。
・以上説明した本実施形態では、制御部60は、モータ電流に基づいて、インバータ81の供給電力Winvを算出し、電流指令値Id*,Iq*に基づいて、インバータ81の目標電力Twを算出する。算出した供給電力Winvが算出した目標電力Twを下回る量Bwが所定の電力閾値TH2よりも大きい場合に、モータ電流が抑制されない状態であると推定する。上記構成では、インバータ81からモータ10への供給電力Winvが目標電力Twを下回る量に基づいて、電流指令値Id*,Iq*に対する制限によってもモータ電流が抑制されない状態を容易に推定することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第3実施形態と第1実施形態とで同じ箇所には、同一の符号を付しており、その説明は繰り返さない。
モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態から、モータ電流Iu,Iv,Iwの追従性が改善さることによりモータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態となった際に、各軸制限値LId,LIqの値に応じて、電流指令値Id*,Iq*に対して大きな制限が加えられる場合がある。このような場合に、電流指令値Id*,Iq*に対する制限の実施前と実施後で電流指令値Id*,Iq*の変化が大きくなることで、モータ10の動作に悪影響を及ぼすことが懸念される。
そこで、本実施形態では、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定された後に、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態であると推定された場合に、現在算出している各軸制限値LId,LIqと、モータ10の実電流とのうち、絶対値が大きい方の値に基づいて各軸制限値LId,LIqを設定することとした。
図6は、本実施形態に係る電流指令値に対する制限処理の手順を説明するフローチャートである。図6に示す処理は、制御部60により所定周期で繰り返し実施される。本実施形態では、ステップS17において、操舵アシストトルクに対する寄与が大きいq軸電流Iqrが、q軸電流指令値Iq**から乖離する量を示す乖離幅Biqに基づいて、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であるか否かを推定している。
モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定されることにより、ステップS40に進むと、ステップS40では、各軸制限値LId,LIqを、制限上限値(MAXd,MAXq)に変更する。そして、ステップS41に進み、制限不実施フラグFをハイ(Hi)に変化させる。制限不実施フラグFは、各軸制限値LId,LIqを制限上限値(MAXd,MAXq)に変更したことを示すフラグである。そして、ステップS21,S22の処理を実施した後、図6の処理を一旦終了する。
次の演算周期でのステップS17において、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態であると推定すると、ステップS42に進み、制限不実施フラグFがハイであるか否かを判定する。制限不実施フラグFがハイであると判定すると、ステップS43に進み、各軸制限値LId,LIqを徐々に減少させるための制限値減少処理の成立条件が成立しているか否かを判定する。本実施形態では、後述するステップS44で算出する各軸制限値LId,LIqがステップS13で算出している現在の各軸制限値LId,LIqよりも大きい場合にステップS43の成立条件が成立していると判定する。なお、ステップS42を否定判定する場合、図6の処理を一旦終了する。
ステップS43を肯定判定した場合、ステップS44では、現在の各軸電流Idr,Iqr及び現在算出している各軸制限値LId,LIqのうち、絶対値が大きい方の値に基づいて、各軸制限値LId,LIqを設定する。具体的には、今回の演算周期においてステップS12で算出しているd軸電流Idrと、ステップS13で算出しているd軸制限値LIdとのうち絶対値が大きい方の値を今回のd軸制限値LIdに設定する。また、今回の演算周期においてステップS12で算出しているq軸電流Iqrと、ステップS13で算出しているq軸制限値LIqとのうち絶対値が大きい方の値を今回のq軸制限値LIqに設定する。
本実施形態では、ステップS44の処理が実施される毎に、このステップS44で設定した各軸制限値LId,LIqの絶対値が徐々に小さくなるように、各軸制限値LId,LIqを変更する。本実施形態では、各軸制限値LId,LIqを、現在、ステップS13で算出している各軸制限値LId,LIqまで徐々に変更する。具体的には、各演算周期でステップS44を実施するごとに、各軸制限値LId,LIqから変更する変更量を変化させることにより、各軸制限値LId,LIqを徐々に現在の値に変更する。例えば、周知のLPFを用いることにより、各軸制限値LId,LIqを変更させることができる。そして、ステップS21に進み、ステップS21を肯定判定すれば、ステップS22において、電流指令値Id*,Iq*に対して制限を行う。
その後もステップS17においてモータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態であると推定されることで、ステップS44に進む場合、各軸制限値LId,LIqが徐々に変更されていく。そして、各軸制限値LId,LIqの絶対値が、ステップS13で現在算出している各制限値LId,LIqの絶対値以下となると、ステップS43において、成立条件が不成立であると判定し、ステップS45では、各軸制限値LId,LIqをステップS13で算出している値に設定する。ステップS46では、制限不実施フラグFをローに変化させて、ステップS21に進む。そのため、ステップS21では、電流指令値Id*,Iq*を、ステップS13で算出している各軸制限値LId,LIqと比較する。
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏することができる。
・制御部60は、モータ電流が抑制されない状態であると推定した後に、モータ電流が抑制される状態であると推定した場合に、現在算出している各軸制限値LId,LIqと電流指令値Id*,Iq*とのうち、絶対値が大きい方の値に基づいて、各軸制限値LId,LIqを設定する。この場合、電流指令値Id*,Iq*の過度の変化が抑制されることにより、モータ10の動作に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
・制御部60は、各軸制限値LId,LIqと電流指令値Id*,Iq*とのうち、絶対値が大きい方の値に基づいて、各軸制限値LId,LIqを設定した後、各軸制限値LId,LIqの絶対値が徐々に小さくなるように各軸制限値LId,LIqを変更する。この場合、電流指令値Id*,Iq*の過度の変化を抑制しつつ、モータ10に流れる電流を適正に抑制することができる。
(第3実施形態の変形例)
各軸電流Idr,Iqrに対して個別に、モータ電流が抑制されない状態であるか否かの判定を行っている場合に、各軸電流Idr,Iqrに対して個別にステップS42〜S45の処理を実施してもよい。
(その他の実施形態)
・制御部60は、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態であると推定した場合に電流指令値Id*,Iq*を制限するため、この制限によりモータ電流Iu,Iv,Iwが確実に抑制される可能性が高くなる。そこで、制御部60は、電流指令値Id*,Iq*を制限した場合に、電流指令値Id*,Iq*を制限したことを履歴情報として記憶してもよい。この場合、制御部60は、ステップS17又はステップS19を否定判定することにより、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態であると推定した場合に、電流指令値Id*,Iq*に対する制限を履歴情報として記憶すればよい。本実施形態では、制御部60が記憶部に相当する。
・制御部60は、トルクセンサ94により検出された操舵トルクTsと電流指令値Id*,Iq*との間で操舵システム90を安定化するための補償演算を実施してもよい。この場合において、制御部60は、電流制限値に応じて電流指令値Id*,Iq*を制限する事に加え、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制される状態であると推定した場合において、補償演算を実施しない構成としてもよい。又、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定した場合において補償演算を実施する場合でも、電流指令値に対する演算方法を切り替える構成としてもよい。これにより、操舵トルクの指令から演算した電流指令値通りに電流が流れない場合に、モータ10の制御性が悪化することを防止することができる。
・制御部60は、電流指令値Id*,Iq*を算出するための入力信号である操舵速度Vs及び車速Vcの少なくともいずれかを変更することにより、各軸制限値LId,LIqに基づく電流指令値Id*,Iq*の補正を実施しないようにしてもよい。例えば、ステップS18,ステップS20において、各軸制限値LId,LIqを変更することに換えて、電流指令値Id*,Iq*を算出するための操舵速度Vs及び車速Vcの少なくともいずれかを変更することにより、電流指令値Id*,Iq*をステップS13で算出した各軸制限値LId,LIqよりも小さな値となるように変更すればよい。この場合は、ステップS21で必ず否定判定されることにより、電流指令値Id*、Iq*は変更されているが、履歴情報は残らないこととなる。
・モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定した場合に、制限値算出部62が算出する各軸制限値LId,LIqを制限上限値MAXd,MAXqに設定することに換えて、電流制限部64が、電流指令値Id*,Iq*を制限しない構成としてもよい。この場合、ステップS17又はステップS19を肯定判定することにより、モータ電流Iu,Iv,Iwが抑制されない状態であると推定した場合に、各軸制限値LId,LIqを制限上限値MAXd,MAXqに変更することなく、図3,図5,図6の処理を終了すればよい。
・操舵システム90は、操舵補助トルクにより運転者の操舵を補助するものに限定されない。具体的には、操舵システム90は、いわゆる自律走行車両に適用され、センサからの入力に基づいて、制御部60が車両の操舵量を制御するものであってもよい。
10…モータ、50…推定部、60…制御部、62…制限値算出部、64…電流制限部、70…電流検出部、80…モータ駆動装置、81…インバータ、90…操舵システム。

Claims (11)

  1. 電源(200)からの電力を変換してモータ(10)に供給する電力変換部(81)を備えるモータ駆動装置(80)であって、
    前記モータに流れる電流であるモータ電流を検出する電流検出部(70)と、
    前記モータ電流の指令値である電流指令値を所定の電流制限値に基づいて補正する制限実施部(62,64)と、
    前記制限実施部による補正後の前記電流指令値に基づいて、前記電力変換部を駆動させる駆動制御部(65,66,67,68)と、
    前記モータ電流と補正後の前記電流指令値とに基づいて、前記制限実施部により前記電流指令値が補正されても、前記モータ電流が抑制されない状態であるか否かを推定する推定部(62)と、を備え、
    前記制限実施部は、前記推定部による推定結果に基づいて、前記電流指令値を補正するモータ駆動装置。
  2. 所定の入力信号に基づいて、前記電流指令値を算出する指令値算出部(63)を備え、
    前記制限実施部は、前記推定部により前記モータ電流が抑制されない状態であると推定された場合に、前記入力信号に対する変更の有無により、前記電流指令値を補正する請求項1に記載のモータ駆動装置。
  3. 前記制限実施部は、前記推定部により前記モータ電流が抑制されない状態であると推定された場合に、前記電流制限値を補正する請求項1に記載のモータ駆動装置。
  4. 前記推定部は、制限後の前記電流指令値からの前記モータ電流の乖離幅に基づいて、前記モータ電流が抑制されない状態であるか否かを推定する請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
  5. 前記モータ電流に基づいて、前記電力変換部が前記モータへ供給する供給電力を算出する供給電力算出部と、
    前記電流指令値に基づいて、前記電力変換部が前記モータへ供給する供給電力の目標値を算出する目標電力算出部と、を備え、
    前記推定部は、算出された前記供給電力が算出された前記目標値を下回る量が所定の電力閾値よりも大きい場合に、前記モータ電流が抑制されない状態であると推定する請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
  6. 前記推定部は、前記電流指令値の増加率、モータ回転角の角速度、モータ回転角の角加速度、又はそれらの組合せに応じて、前記モータ電流が抑制されない状態に対する推定され易さを変更する請求項1〜5のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
  7. 前記制限実施部は、前記推定部により前記モータ電流が抑制されない状態であると推定された後に、前記モータ電流が抑制される状態であると推定された場合に、前記電流制限値と前記モータ電流とのうち絶対値が大きい方の値に基づいて、前記電流制限値を設定する請求項1〜6のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
  8. 前記制限実施部は、前記電流制限値と前記モータ電流とのうち絶対値が大きい方の値に基づいて、前記電流制限値を設定した後、設定した前記電流制限値の絶対値が小さくなるように前記電流制限値を徐々に変更する請求項7に記載のモータ駆動装置。
  9. 前記制限実施部により、前記電流指令値が制限された場合に、前記電流指令値が前記電流制限値に制限されたことを記憶する記憶部を備える請求項1〜8のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の前記モータ駆動装置と、前記モータとを備え、前記モータが生じるトルクにより運転者のステアリング操作を補助する操舵システム。
  11. 前記推定部は、運転者のステアリング操作に応じた操舵量の変化加速度が大きいほど、前記モータ電流が抑制されない状態であると推定され易くする請求項10に記載の操舵システム。
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