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JP2019503387A - 抗pd−1抗体および別の抗癌剤の組合せを用いる肺癌の処置法 - Google Patents

抗pd−1抗体および別の抗癌剤の組合せを用いる肺癌の処置法 Download PDF

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Abstract

本発明は、肺癌に罹患している対象を処置するための方法を提供し、該方法は、治療的有効量の(a)プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤(60分未満の間、点滴により投与され得る);および、場合により、(b)別の抗癌剤(90分未満の間、点滴により投与される)を、該対象に投与することを含む。他の抗癌剤は、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)抗体であり得る。

Description

発明の分野
本発明は、抗プログラム細胞死−1(PD−1)抗体である抗癌剤と、場合によって、別の抗癌剤との組合せを対象に投与することを含む、該対象における肺癌の処置法に関する。
発明の背景
ヒト癌は、免疫系によって認識され得る可能性のある新抗原(neoantigen)を生じる、多くのジェネティック変異およびエピジェネティック変異を有する(Sjoblom et al., 2006)。Tリンパ球およびBリンパ球からなる獲得免疫系は、多様な腫瘍抗原に応答する広範な能力および優れた特異性を有する強力な抗癌剤としての可能性を有する。さらに、免疫系はかなりの可塑性および記憶的要素を示す。獲得免疫系のこれらの全ての特性をうまく利用することは、すべての癌処置法の中で免疫療法を比類のないものとするであろう。
最近まで、癌免疫療法は、活性化エフェクター細胞の養子移入、関連抗原に対する免疫化、またはサイトカインなどの非特異的免疫刺激剤の提供による抗腫瘍免疫応答を増強するアプローチに実質的に取り組んでいた。しかしながら、過去10年間における、特定の免疫チェックポイント経路阻害剤を開発するための集中的な努力が、癌を処置するための新たな免疫療法アプローチを提供し始めており、それには、進行黒色腫患者の処置のためのCTLA−4に結合し、その活性を阻害する抗体(antibody)であるイピリムマブ(YERVOY(登録商標))の開発(Hodi et al., 2010)およびプログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1/PD−1リガンド経路を阻害する、ニボルマブおよびペンブロリズマブ(以前は、ラムブロリズマブ;USAN Council Statement、2013)などの抗体の開発(Topalian et al., 2012a, b;Topalian et al., 2014;Hamid et al., 2013;Hamid and Carvajal, 2013;McDermott and Atkins, 2013)が含まれる。
PD−1は、活性化されたT細胞およびB細胞によって発現され、免疫抑制を仲介する、重要な免疫チェックポイント受容体である。PD−1は、CD28、CTLA−4、ICOS、PD−1およびBTLAを含むCD28受容体ファミリーのメンバーである。PD−1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドである、プログラム細胞死リガンド−1(PD−L1)およびプログラム細胞死リガンド−2(PD−L2)が同定されており、それらは、抗原提示細胞上ならびに多くのヒト癌で発現され、PD−1への結合により、T細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御することが示されている。PD−1/PD−L1相互作用の阻害は、前臨床モデルにおける強力な抗腫瘍活性を媒介し(米国特許第8,008,449号および同第7,943,743号)、癌を処置するためのPD−1/PD−L1相互作用の抗体阻害剤の使用は、臨床治験に入っている(Brahmer et al., 2010;Topalian et al., 2012a;Topalian et al., 2014;Hamid et al., 2013;Brahmer et al., 2012;Flies et al., 2011;Pardoll, 2012;Hamid and Carvajal, 2013)。
ニボルマブ(以前は、5C4、BMS−936558、MDX−1106またはONO−4538と称された)は、PD−1リガンド(PD−L1およびPD−L2)との相互作用を選択的に阻止し、それにより抗腫瘍T細胞機能の下方制御を阻止する、完全ヒトIgG4(S228P)PD−1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許第8,008,449号;Wang et al., 2014)。ニボルマブは、腎細胞癌腫(腎腺癌腫または副腎腫)、黒色腫、および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む種々の進行固形腫瘍における活性が示されている(Topalian et al., 2012a;Topalian et al., 2014;Drake et al., 2013;WO 2013/173223)。
イピリムマブ(YERVOY(登録商標))は、CTLA−4のそのB7リガンドへの結合を阻止し、それによりT細胞活性化を刺激し、進行黒色腫患者における全生存期間(OS)を改善する、完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である(Hodi et al. (2010))。第1相臨床治験でニボルマブとイピリムマブを同時に投与すると、進行黒色腫患者のかなりの割合で迅速かつ顕著に腫瘍が退縮し、いずれかの抗体単独よりも有意により有効であった(Wolchok et al. 2013; WO2013/173223)。しかしながら、この免疫調節抗体の組合せが他の腫瘍タイプにおいて同様に有効であるかどうかはこれまで知られていなかった。
NSCLCは、米国および世界中で癌による死亡の主要な原因である(NCCN GUIDELINES(登録商標)、2013−非小細胞肺癌)。NSCLCは、化学療法に対して比較的感受性が低いが、ステージIV病態の患者で、白金剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン剤(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル)、ビノレルビン、ビンブラスチン、エトポシド、ペメトレキセドおよびゲムシタビン、ならびにこれらの薬物の種々の組合せを含む化学療法剤による処置で良好なパフォーマンスステータス(PS)の利益を示す。
発明の概要
本発明は、肺癌に罹患している対象を処置する方法であって、該対象に治療的有効量の:(a)PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分;および、要すれば、(b)CTLA−4に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分、を投与することを含む、方法を提供する。ある態様において、プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤は、60分未満の間(例えば、約30分)、点滴により投与される。ある態様において、別の抗癌剤は、90分未満の間(例えば、約60分または約30分)、点滴により投与される。好ましい態様において、肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。本明細書に記載の治療法のいずれかの特定の好ましい態様において、抗PD−1抗体はニボルマブである。他の態様において、抗PD−1抗体はペンブロリズマブである。本明細書に記載の治療法のいずれかの特定の他の好ましい態様において、抗CTLA−4抗体はイピリムマブである。他の態様において、抗CTLA−4抗体はトレメリムマブである。
特定の態様において、対象は、肺癌を予め処置されている。他の態様において、肺癌は、進行性の転移性および/または難治性の癌である。好ましい態様において、抗体またはその抗原結合部分および別の抗癌剤の組合せの投与により、対象における持続的な臨床応答が誘導される。
本発明はまた、肺癌に罹患している対象を処置するためのキットであって、以下を含むキットを提供する:(a)体重1kg当たり、0.1〜10mgの範囲の投与量の、PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤;(b)体重1kg当たり0.1〜10mgの範囲の投与量の、CTLA−4に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である別の抗癌剤;および、(c)該抗PD−1抗体および別の抗癌剤を対象の処置のために使用するための指示書。
本発明はまた、肺癌に罹患している対象を処置するための方法であって、該対象に、一定用量(flat dose)の治療的有効量の、プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤を投与することを含む方法を含む。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分の一定用量とは、240mgを超える用量である。他の態様において、一定用量は、2週間毎に投与される。特定の態様において、一定用量は、少なくとも約480mgである。ある態様において、一定用量は、4週間毎に投与される。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および実施例から明らかであるが、これらの実施例は限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書中で引用される、科学文献、新聞レポート、GenBank登録内容、特許および特許出願を含む全ての文献の内容は、引用により本明細書中に明示的に包含させる。
態様
E1.肺癌に罹患している対象の処置のための方法であって、該対象に治療的有効量の:
(a)プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤(60分未満の間、点滴により投与される);および
(b)要すれば、別の抗癌剤(90分未満の間、点滴により投与される)
を投与することを含む、方法。
E2.肺癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、態様E1に記載の方法。
E3.NSCLCが扁平上皮組織を有する、態様E2に記載の方法。
E4.NSCLCが非扁平上皮組織を有する、態様E2に記載の方法。
E5.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する、態様E1からE4のいずれか1つに記載の方法。
E6.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体もしくはその一部分である、態様E1からE5のいずれか1つに記載の方法。
E7.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む、態様E1からE5のいずれか1つに記載の方法。
E8.抗PD−1抗体がニボルマブである、態様E1からE7のいずれか1つに記載の方法。
E9.抗PD−1抗体がペンブロリズマブである、態様E1からE7のいずれか1つに記載の方法。
E10.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、2週間毎または3週間毎に1回、体重1kg当たり、0.1〜10mgの範囲の用量で投与される、態様E1からE9のいずれか1つに記載の方法。
E11.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、2週間毎または3週間毎に1回、体重1kg当たり、1または3mgの用量で投与される、態様E10に記載の方法。
E12.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、3週間毎に1回、体重1kg当たり、1mgの用量で投与される、態様E11に記載の方法。
E13.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、2週間毎に1回、体重1kg当たり、3mgの用量で投与される、態様E11に記載の方法。
E14.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、臨床的利益が観察される限り、または管理不可能な毒性もしくは病勢進行が生じるまで投与される、態様E1からE13のいずれか1つに記載の方法。
E15.別の抗癌剤が、細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である、態様E1からE14のいずれか1つに記載の方法。
E16.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブと交差競合する、態様E15に記載の方法。
E17.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体もしくはその一部分である、態様E15に記載の方法。
E18.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖定常領域を含む、態様E15からE17のいずれか1つに記載の方法。
E19.抗CTLA−4抗体がイピリムマブである、態様E15からE18のいずれか1つに記載の方法。
E20.抗CTLA−4抗体がトレメリムマブである、態様E15からE18のいずれか1つに記載の方法。
E21.(a)抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体またはそれらの抗原結合部分がそれぞれ、少なくとも2、3または4週間毎に1回、体重1kg当たり、0.1〜10.0mgの範囲の用量で、2、4、6、8または10用量を組み合わせて投与される、導入期;その後の、
(b)抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は投与されず、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、少なくとも2、3または4週間毎に1回、体重1kg当たり、0.1〜10.0mgの範囲の用量で反復投与される、維持期
を含む、態様E15からE20のいずれか1つに記載の方法。
E22.(a)導入期が、3週間隔で投与される組み合わせ用量であって、以下:
(i)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、体重1kg当たり、3mg投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、体重1kg当たり、1mg投与される;
(ii)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、体重1kg当たり、1mg投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、体重1kg当たり、3mg投与される;
(iii)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、体重1kg当たり、1mg投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、体重1kg当たり、1mg投与される;あるいは、
(iv)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、体重1kg当たり、3mg投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、体重1kg当たり、3mg投与される
を含み;および
(b)維持期が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を、臨床的利益が観察される限り、または管理不可能な毒性もしくは病勢進行が生じるまで、2週間毎に、体重1kg当たり、3mgの用量で反復投与することを含む、
態様E21に記載の方法。
E23.抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体が、静脈内投与用に製剤される、態様E15からE23のいずれか1つに記載の方法。
E24.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、導入期に、対象に連続して投与される、態様E22に記載の方法。
E25.抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体が、互いに30分以内に投与される、態様E24に記載の方法。
E26.(a)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分の前に投与されるか;または
(b)抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分の前に投与される、態様E25に記載の方法。
E27.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、別個の組成物として同時に投与される、態様E15からE26のいずれか1つに記載の方法。
E28.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、単一の組成物として同時に投与される、態様E15からE26のいずれか1つに記載の方法。
E29.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、治療用量以下の用量で投与される、態様E1からE28のいずれか1つに記載の方法。
E30.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、治療用量以下の用量で投与される、態様E15からE29のいずれか1つに記載の方法。
E31.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分がそれぞれ、治療用量以下の用量で投与される、態様E15からE29のいずれか1つに記載の方法。
E32.維持期における抗PD−1抗体の投与が、臨床的利益が観察される限り、または管理不可能な毒性もしくは病勢進行が生じるまで継続される、態様E21からE31のいずれか1つに記載の方法。
E33.対象が、PD−L1+腫瘍を有する、態様E1からE32のいずれか1つに記載の方法。
E34.対象が、PD−L1−腫瘍を有する、態様E1からE32のいずれか1つに記載の方法。
E35.対象が、EGFR変異またはALK転座を有しない、態様E1からE34のいずれか1つに記載の方法。
E36.第二選択療法として投与される、態様E1からE35のいずれか1つに記載の方法であって、ここで、対象が白金ベースの化学療法中または化学療法を受けた後に進行を有する、方法。
E37.プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤が、約30分間、点滴により投与される、態様E1からE36のいずれか1つに記載の方法。
E38.別の抗癌剤が、約30分間、点滴により投与される、態様E1からE37のいずれか1つに記載の方法。
E39.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が一定用量で投与される、態様E1からE9、E14からE20またはE23からE38のいずれか1つに記載の方法。
E40.一定用量が、少なくとも約240mgである、態様E39に記載の方法。
E41.一定用量が、2週間毎に投与される、態様E39またはE40に記載の方法。
E42.一定用量が、少なくとも約480mgである、態様E39に記載の方法。
E43.一定用量が、4週間毎に投与される、態様E39またはE42に記載の方法。
E44.肺癌に罹患している対象の処置のための方法であって、該対象に、一定用量の治療的有効量の、プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤を投与することを含む、方法。
E45.一定用量が240mgを超える用量である、態様E44に記載の方法。
E46.一定用量が、2週間毎に投与される、態様E44またはE45に記載の方法。
E47.一定用量が、少なくとも約480mgである、態様E44に記載の方法。
E48.一定用量が、4週間毎に投与される、態様E44またはE47に記載の方法。
E49.肺癌に罹患している対象の処置のためのキットであって、
(a)240mgを超える一定用量の、PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分;および
(b)該抗PD−1抗体を態様E39からE48のいずれか1つに記載の方法において使用するための指示書
を含む、キット。
E50.肺癌に罹患している対象の処置のためのキットであって、
(a)PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤の体重1kg当たり0.1〜10mgの範囲の投与量;
(b)CTLA−4に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である別の抗癌剤の体重1kg当たり0.1〜10mgの範囲の投与量;および、
(c)該抗PD−1抗体および別の抗癌剤を態様E1からE38のいずれか1つに記載の方法において使用するための指示書
を含む、キット
図1は、化学療法未施行のステージIVまたは再発性非小細胞肺癌(NSCLC)の対象における、ニボラマブ対白金併用化学療法およびニボルマブ+イピリムマブ対白金併用化学療法の、オープンラベル、無作為化第3相試験の治験デザイン図を示す。 図2は、投与頻度の最適化に関する治験デザイン図であり、体重1kg当たり、3mgのニボルマブを4カ月または2週間毎に240mgのニボルマブを受容した進行性または転移性非小細胞肺癌を有する対象における、2週間毎(Q2W)に240mgのニボルマブ対4週間毎(Q4W)に480mgのニボルマブの、第IIIb/IV相試験の治験デザイン図を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、抗PD−1抗体および別の抗癌剤の組合せを患者に投与することを含む、肺癌患者の処置のための方法に関する。
用語
本明細書の記載がより容易に理解され得るように、いくつかの用語を最初に定義する。本明細書で特に別の定義が明記されている場合を除いて、本明細書で用いるとき、以下の用語はそれぞれ、以下に記載の意味を有するものとする。さらなる定義が、本明細書を通して記載される。
“投与する”とは、当業者に知られる種々の方法および送達システムの何れかを用いる、対象への治療剤を含む組成物の物理的導入を意味する。抗PD−1抗体の好ましい投与経路には、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮下、腹腔内、脊髄または例えば注射もしくは点滴による他の非経腸投与経路が含まれる。本明細書で用いる用語“非経腸投与”とは、経腸投与および局所投与以外の投与方法を意味し、通常、注射による投与であり、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、胸腔内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下(subcuticular)、関節内、被膜下、くも膜下腔内、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および点滴、ならびにインビボエレクトロポレーションが含まれるが、これらに限定されない。TKI(チロシンキナーゼ阻害剤)は、一般的に、非々経腸経路(non−parenteral)投与され、好ましくは経口投与される。他の非々経腸経路には、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下または局所的投与が含まれる。投与はまた、例えば1回、複数回、および/または長期間にわたって1または複数回行われ得る。
本明細書で用いる“有害事象”(AE)とは、医学的処置の使用に関連する好ましくない、かつ一般に意図されていないまたは望ましくない兆候(異常な検査所見を含む)、症状または疾患である。例えば、有害事象は、処置に応答して、免疫系の活性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)の増殖と関連し得る。医療処置は、1または複数の関連するAEを有し得て、それぞれのAEは、同じかまたは異なるレベルの重篤度を有し得る。“有害事象を変更する”ことのできる方法の言及は、異なる処置レジメンの使用に関連する1以上のAEの発生率および/または重篤度を低下させる処置レジメンを意味する。
“抗体”(Ab)には、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質免疫グロブリン、またはその抗原結合部分が含まれるが、これに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書中、Vと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中、Vと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメイン、Cを含む。VおよびV領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に分けられる。各VおよびVは、3つのCDRおよび4つのFRを含み、以下の順でアミノ末端からカルボキシ末端に配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
免疫グロブリンは、IgA、分泌性IgA、IgGおよびIgMを含むが、これに限定されない、一般的に知られているアイソタイプの何れかに由来し得る。IgGサブクラスはまた、当業者によく知られており、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が含まれるが、これらに限定されない。“アイソタイプ”とは、重鎖定常領域によってコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)を意味する。用語“抗体”は、例として、天然に存在する抗体および天然に存在しない抗体の両方;モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラ抗体およびヒト化抗体;ヒトまたは非ヒト抗体;全合成抗体;ならびに、一本鎖抗体を含むが、これに限定されない。非ヒト抗体は、ヒトにおいてその免疫原性を低減させるための組換え法によってヒト化され得る。明示的に記載されていない限り、および文脈上他の意味が記載されない限り、用語“抗体”にはまた、上記の免疫グロブリンのいずれかの抗原結合断片または抗原結合部分も含まれ、また、一価および二価の断片または部分および一本鎖抗体が含まれる。
“単離された抗体”とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、PD−1に特異的に結合する単離された抗体は、PD−1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、PD−1に特異的に結合する単離された抗体は、異なる種由来のPD−1分子のような他の抗原に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない。
用語“モノクローナル抗体”(“mAb”)は、単一分子組成の抗体分子、すなわち、一次配列が本質的に同一である抗体分子の天然に存在しない調製物であり、それは、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。モノクローナル抗体は、単離された抗体の一例である。mAbは、当業者に公知のハイブリドーマ技術、組換え技術、トランスジェニック技術または他の技術によって産生され得る。
“ヒト”抗体(HuMAb)とは、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を意味する。さらに、抗体が定常領域を含むとき、該定常領域もまたヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で用いる用語“ヒト抗体”は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図するものではない。用語“ヒト”抗体および“完全ヒト”抗体は、同義語として使用される。
“ヒト化抗体”とは、非ヒト抗体のCDRドメインの外側のアミノ酸のいくつか、ほとんどまたは全てが、ヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸で置換されている抗体を意味する。抗体のヒト化形態の一態様において、CDRドメインの外側のアミノ酸のいくつか、ほとんどまたは全ては、ヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置換されているが、一方、1以上のCDR領域内のいくつか、ほとんどまたは全てのアミノ酸は不変である。アミノ酸の僅かな付加、欠失、挿入、置換または修飾は、それらが特定の抗原に対する抗体の結合能を消失させない限り許容される。“ヒト化”抗体は、元の抗体と同様の抗原結合特異性を保持する。
“キメラ抗体”とは、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域がマウス抗体由来であり、定常領域がヒト抗体由来である抗体を意味する。
“抗抗原(anti−antigen)”抗体とは、抗原に特異的に結合する抗体を意味する。例えば、抗PD−1抗体はPD−1に特異的に結合し、抗CTLA−4抗体はCTLA−4に特異的に結合する。
抗体の“抗原結合部分”(“抗原結合断片”とも言う)は、全長抗体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片を意味する。
“癌”とは、体内の異常な細胞の無制御の増殖を特徴とする種々の疾患の広範な群を意味する。無秩序な細胞分裂および増殖分裂および増殖は、結果として、隣接する組織に浸潤し、そしてリンパ系または血流を通じて身体の離れた場所に転移することもできる悪性腫瘍の形成をもたらす。
“細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)”とは、CD28ファミリーに属する免疫阻害受容体を意味する。CTLA−4は、インビボにてT細胞でのみ発現され、2つのリガンドCD80およびCD86(それぞれB7−1およびB7−2とも言う)に結合する。本明細書で用いる用語“CTLA−4”には、ヒトCTLA−4(hCTLA−4)、その変異体、イソ型および種ホモログ、ならびにhCTLA−4と少なくとも1つの共通するエピトープを有する類縁体が含まれる。完全なhCTLA−4配列は、GenBank受託番号AAB59385に見出すことができる。
用語“免疫療法”とは、免疫応答を誘導、増強、抑制またはその他改変することを含む方法によって、疾患に罹患しているか、または疾患の発症もしくは再発のリスクを有する対象の処置を意味する。対象の“処置”または“治療”は、症状、合併症または病状、あるいは疾患と関連する生化学的徴候の、発症、進行、発展、重篤化または再発を、回復、緩和、改善、阻害、遅延もしくは阻止する目的で、対象に対して行われる何らかの治療介入(intervention)または方法、あるいは対象への有効成分の投与などを意味する。
“プログラム細胞死−1(PD−1)”は、CD28ファミリーに属する免疫阻害受容体を意味する。PD−1は、インビボで予め活性化されているT細胞上で主に発現され、2つのリガンドPD−L1およびPD−L2に結合する。本明細書で用いる用語“PD−1”は、ヒトPD−1(hPD−1)、hPD−1の変異体、イソ型および種ホモログ、ならびにhPD−1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類縁体を含む。完全なhPD−1配列は、GenBank受託番号U64863に見いださすことができる。
“プログラム細胞死リガンド−1(PD−L1)”は、PD−1への結合時にT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御するPD−1の2つの細胞表面糖たんぱく質リガンドの1つである(他は、PD−L2である)。本明細書で用いる用語“PD−L1”は、ヒトPD−L1(hPD−L1)、hPD−L1の変異体、イソ型および種ホモログ、ならびにhPD−L1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類縁体を含む。完全なhPD−L1配列は、GenBank受託番号Q9NZQ7に見出すことができる。
“対象”には、ヒトまたは非ヒト動物が含まれる。用語“非ヒト動物”には、非ヒト霊長動物、ヒツジ、イヌなどの脊椎動物、ならびにマウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯動物が含まれるが、これらに限定されない。好ましい態様において、対象はヒトである。用語“対象”および“患者”は、本明細書中、互換的に用いられる。
本発明の方法および投与量に関して、用語“一定用量”の使用は、患者の体重または体表面積(BSA)に関わらず、患者に投与される用量を意味する。従って、一定用量は、mg/kg 用量としてではなく、薬物(例えば、抗PD−1抗体)の絶対量として提供される。例えば、60kgのヒトおよび100kgのヒトは、同じ用量の抗体(例えば、240mgの抗PD1抗体)を受容し得る。
本明細書で用いる用語“体重に基づく用量”とは、患者に投与される用量が該患者の体重に基づいて計算されることを意味する。例えば、体重60kgの患者が3mg/kgの抗PD−1抗体を必要とするとき、投与のために適切な量の抗PD−1抗体を計算して(すなわち、180mg)、使用することができる。
薬物または治療剤の“治療的有効量”または“治療的有効投与量”とは、単独でまたは別の治療剤と組み合わせて用いられるとき、疾患の発症から対象を保護するか、または疾患症状の重篤度の低下、疾患の無症状期間の頻度および持続期間の増加、もしくは疾患の苦痛による機能障害(impairment)もしくは能力障害(disability)の予防によって証明される疾患退行(regression)を促進する薬物の量である。疾患の退行を促進する治療剤の能力は、臨床治験中のヒト対象、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系、またはインビトロアッセイにおける薬物の活性のアッセイなどの当業者に知られている種々の方法を用いて評価することができる。
一例として、“抗癌剤”は、対象における癌の退行を促進する。好ましい態様において、薬物の治療的有効量は、癌の退行を、癌を排除する点まで促進する。“癌の退行の促進”とは、有効量の薬物を、単独でまたは抗腫瘍剤と組み合わせて投与すると、結果として、腫瘍増殖またはサイズの低減、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重篤度の低下、疾患の無症状期間の頻度および期間の増加、あるいは疾患の苦痛に起因する機能障害または能力障害の予防がもたらされることを意味する。加えて、処置に関する用語“有効”および“有効性”には、薬理学的有効性および生理的安全性の両方が含まれる。薬理学的有効性とは、患者の癌の退行を促進する薬物の能力を意味する。生理的安全性とは、薬物の投与によって生じる、細胞、臓器および/または生物レベルでの毒性レベルまたは他の有害な生理学的作用(副作用)のレベルを意味する。
腫瘍の処置の例として、治療的有効量の抗癌剤は、好ましくは、未処置の対象と比べて、細胞増殖または腫瘍増殖を少なくとも約20%、より好ましくは、少なくとも約40%、さらにより好ましくは、少なくとも約60%、およびさらにより好ましくは少なくとも約80%阻害することができる。本発明の他の好ましい態様において、腫瘍の退行が観察され得て、それは少なくとも約20日間、より好ましくは少なくとも約40日間、またはさらにより好ましくは少なくとも約60日間継続する。治療効果のこれらの最終的な計測とは別に、免疫療法薬の評価は、“免疫関連”応答パターンも考慮しなければならない。
“免疫関連”応答パターンとは、癌特異的免疫応答を誘導するか、または天然の免疫プロセスを改変することにより、抗腫瘍効果を生じる免疫療法剤で処置された癌患者においてしばしば観察される臨床応答パターンを意味する。この応答パターンは、従来の化学療法剤の評価において病勢進行(disease progression)として分類され、薬物無効(drug failure)と同義であり得る、腫瘍量の初期増加または新たな病変の出現の後に見られる有益な治療効果を特徴とする。従って、免疫療法剤の適切な評価は、標的疾患に対するこれらの薬物の効果の長期的モニタリングを必要とし得る。
薬物の治療的有効量は、“予防的有効量”を含み、それは、癌を発症するリスクのある対象または癌を再発するリスクを有する対象(例えば、前悪性状態を有する対象)に単独で、または抗腫瘍剤と組み合わせて投与されるとき、癌の発生または再発を阻害する薬物の量である。好ましい態様において、予防的有効量は、癌の発生または再発を完全に阻止する。癌の発生または再発を“阻害する”とは、癌の発生または再発の可能性を軽減するか、または癌の発生または再発を完全に阻止することのいずれかを意味する。
代替語(例えば、“または”)の使用は、代替物の一方、両方、またはそれらの組合せの何れかを意味すると理解されるべきである。本明細書で用いる、不定冠詞“1つ(a)”または“1つ(an)”は、“1以上”の任意の記載または列挙された構成要素を意味することが理解されるべきである。
用語“約”または“〜を本質的に含む”とは、当業者によって決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内にある値または組成を意味し、それは、どのように該値または組成が測定または決定されるか、すなわち測定システムの限界に一部依存し得る。例えば、“約”または“〜を本質的に含む”は、当技術分野における慣行につき、1以内または1より大きい標準偏差を意味し得る。あるいは、“約”または“〜を本質的に含む”は、20%までの範囲を意味し得る。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、これらの用語は、ある値の1桁倍までまたは5倍までを意味し得る。特定の値または組成が本出願および特許請求の範囲に記載されているとき、他に特に明記されない限り、“約”または“〜を本質的に含む”の意味は、その特定の値または組成の許容される誤差範囲内であると見なされるべきである。
本明細書に記載されている、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、他にこれと異なる記載がない限り、列挙された範囲内の全ての整数の値も、および適当な場合には、それらの分数(例えば、ある整数の10分の1および100分の1)も含むことが理解されるべきである。
略語のリストを表1に示す。



本発明の種々の側面は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
抗PD−1抗体
高親和性でPD−1に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は、米国特許第8,008,449号に記載されている。他の抗PD−1モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第6,808,710号、同第7,488,802号、同第8,168,757号および同第8,354,509号、ならびにPCT公開番号WO2012/145493に記載されている。米国特許第8,008,449号に記載された抗PD−1ヒトモノクローナル抗体はそれぞれ、以下の特性の1以上を示すことが実証されている:(a)Biacoreバイオセンサーシステムを用いた表面プラズモン共鳴によって決定されるように、1×10−7M以下のKでヒトPD−1に結合する;(b)ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ産生を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL−2分泌を増加させる;(f)ヒトPD−1およびカニクイザルPD−1に結合する;(g)PD−L1および/またはPD−L2のPD−1への結合を阻害する;(h)抗原特異的記憶応答を刺激する;(i)抗体応答を刺激する;ならびに、(j)インビボでの腫瘍細胞増殖を阻害する。本発明において使用可能な抗PD−1抗体には、ヒトPD−1に特異的に結合し、上記の特性の、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つを示すモノクローナル抗体が含まれる。好ましい抗PD−1抗体はニボルマブである。別の好ましい抗PD−1抗体はペムブロリズマブである。
本明細書に記載の方法において使用可能な抗PD−1抗体にはまた、ヒトPD−1に特異的に結合し、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する、単離された抗体も含まれる(例えば、米国特許第8,008,449号;WO2013/173223を参照のこと)。抗原への結合で交差競合する抗体の能力は、これらの抗体が抗原の同じエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域に対する他の交差競合する抗体の結合を立体的に阻害することを示す。これらの交差競合抗体は、PD−1の同じエピトープへのそれらの結合のために、ニボルマブの機能的特性と同様の特性を有することが予期される。交差競合抗体は、Biacore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなどの標準的PD−1結合アッセイにおいて、ニボルマブと交差競合する能力に基づいて容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223を参照のこと)。
特定の態様において、ヒトPD−1への結合で交差競合するか、またはヒトPD−1抗体であるニボルマブと同じエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体であるか、またはより好ましくはヒト化抗体もしくはヒト抗体である。そのようなキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体は、当技術分野で周知の方法によって調製および単離され得る。
本明細書に記載の方法において使用可能な抗PD−1抗体にはまた、上記の抗体の抗原結合部分が含まれる。抗体の抗原結合機能が全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが十分に証明されている。抗体の“抗原結合部分”との用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントである、F(ab’)フラグメント;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;ならびに、(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメントが含まれる。
抗CTLA−4抗体
本発明の抗CTLA−4抗体は、CTLA−4とヒトB7受容体との相互作用を阻止するようにヒトCTLA−4に結合する。CTLA−4とB7との相互作用は、CTLA−4受容体を有するT細胞の不活性化に繋がるシグナルを伝達するため、相互作用の阻止は、そのようなT細胞の活性化を効果的に誘導、増強または延長し、それ故に、免疫応答を誘導、増強または延長する。
高親和性でCTLA−4に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は、米国特許第6,984,720号および同第7,605,238号に記載されている。他の抗CTLA−4モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第5,977,318号、同第6,051,227号、同第6,682,736号、および同第7,034,121号に記載されている。米国特許第第6,984,720号および同第7,605,238号に記載の抗CTLA−4ヒトモノクローナル抗体は、以下の特徴の1以上を示すことが証明されている:(a)Biacore分析によって決定される、少なくとも約10−1、約10−1または約1010−1から1011−1またはそれ以上の平衡結合定数(K)によって反映される結合親和性でヒトCTLA−4に特異的に結合する;(b)少なくとも約10、約10、または約10−1−1の結合速度定数(k);(c)少なくとも約10、約10、または約10−1−1の解離速度定数(k);ならびに、(d)B7−1(CD80)およびB7−2(CD86)へのCTLA−4の結合を阻害する。本発明において使用可能な抗CTLA−4抗体には、ヒトCTLA−4に特異的に結合し、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも3つの上記の特性を示す、モノクローナル抗体が含まれる。臨床的抗CTLA−4抗体の一例は、米国特許第6,984,720号に記載のヒトモノクローナル抗体10D1である(現在、イピリムマブとして公知、YERVOY(登録商標)として市販)。イピリムマブは、本明細書に記載の方法における使用のための抗CTLA−4抗体である。本発明の方法において使用可能な別の抗CTLA−4抗体は、トレメリムマブである。
本明細書に記載の方法において使用可能な抗CTLA−4抗体にはまた、ヒトCTLA−4に特異的に結合して、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブもしくはトレメリムマブと交差競合するか、またはイピリムマブもしくはトレメリムマブと同じヒトCTLA−4のエピトープ領域に結合する、単離された抗体も含まれる。ある好ましい態様において、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブもしくはトレメリムマブと交差競合するか、またはイピリムマブもしくはトレメリムマブと同じヒトCTLA−4のエピトープ領域に結合する抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖を含む抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、好ましくは、キメラ抗体であるか、またはより好ましくは、ヒト化抗体もしくはヒト抗体である。使用可能な抗CTLA−4抗体にはまた、Fab、F(ab’)、FdまたはFvフラグメントのような上記抗体の抗原結合部分も含まれる。
肺癌の標準療法
種々のタイプの癌の標準療法が、当業者によく知られている。例えば、米国の21の主要な癌センターの連合である全米総合癌センターネットワーク(NCCN)は、種々の癌の標準療法の詳細な最新情報を提供するNCCN腫瘍学臨床診療ガイドライン(NCCNガイドライン(登録商標))を発行している(NCCNガイドライン(登録商標)(2014)を参照のこと)。
NSCLCは、米国および全世界で、乳癌、結腸癌および前立腺癌を合わせた数を超える、癌による死亡の主要な原因である。米国において、肺および気管支の新たな症例が228,190例診断され、この疾患のために約159,480名が死亡している(Siegel et al., 2013;Siegel et al. (2014) CA Cancer J Clin 64(1):9−29)。患者の大多数(約78%)は、病勢進行/再発または転移と診断される。肺癌から副腎への転移が一般的であり、全転移患者の約33%がそのような転移を有する。NSCLC療法は、徐々に改善されたOSを示しているが、有益度はプラトーに達している(末期患者の平均OSは、ちょうど1年である)。これらの対象のほぼ全てにおいて第一選択療法(1L therapy)後に進行が起こり、5年生存率は、難治性群で僅か3.6%である。2005年から2009年の間、米国における肺癌の相対的5年生存率は、15.9%であった(NCCNガイドライン(登録商標)、バージョン3.2014−非小細胞肺癌、www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/nscl.pdfで利用可能、最終アクセス2014年5月14日)。
外科手術、放射線療法(RT)および化学療法は、NSCLC患者を処置するために一般的に用いられる3つの療法である。クラスとして、NSCLCは、小細胞癌腫と比べて、化学療法およびRTに対して比較的非感受性である。一般的に、ステージIまたはII疾患の患者では、外科的切除が治癒の最良の機会を提供し、術前および術後の両方で化学療法の使用が増加している。RTはまた、切除可能なNSCLCを有する患者のための補助療法、第一次局所治療として、または難治性NSCLC患者の緩和療法としても使用できる。
良好な全身状態(PS)を有するステージIV疾患患者は、化学療法の利益を受ける。白金製剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン剤(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル)、ビノレルビン、ビンブラスチン、エトポシド、ペメトレキセドおよびゲムシタビンを含む多くの薬物が、ステージIVのNSCLCに有用である。これらの薬物の多くを用いる組み合わせは、30%から40%の1年生存率をもたらし、単一薬物よりも優れている。進行した肺癌の処置のための特定の標的化療法もまた開発されている。例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))は、血管内皮細胞増殖因子A(VEGF−A)を阻害するモノクローナル抗体である。エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の小分子TKIである。クリゾチニブ(Crizotinib)(XALKORI(登録商標))は、ALKおよびMETを標的とする小分子TKIであり、変異したALK融合遺伝子を担持する患者においてNSCLCを処置するために用いられる。セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))は、EGFRを標的とするモノクローナル抗体である。
第一選択(1L)療法後の治療選択肢が少ないため、扁平細胞NSCLC(全NSCLCの25%までを占める)を有する患者には、特に満たされていないニーズがある。白金系製剤をベースにした併用療法(Pt−doublet)での進行後の、単剤化学療法が標準療法であり、その結果、OS中央値は約7ヶ月となる。ドセタキセルは、未だこの治療法のベンチマーク治療薬であるが、エルロチニブもまた、低頻度で使用可能である。ペメトレキセドもまた、臨床的に同等の有効性の結果をもたらし、進行NSCLC患者の第2選択(2L)療法において、ドセタキセルと比較して副作用が有意に少ないことが示されている(Hanna et al., J Clin Oncol 22:1589−97 2004)。現在のところ、第3選択(3L)療法以降の肺癌での使用が承認されている治療剤はない。ペメトレキセドおよびベバシズマブは、扁平NSCLCでは承認されておらず、分子標的療法は適用が限られている。OncothyreonおよびMerck KgaAのSTIMUVAX(登録商標)が第3相治験でOSを改善できなかったこと、ArQuleおよび第一三共株式会社のc−Metキナーゼ阻害剤であるチバンチニブ(tivantinib)の生存エンドポイントの達成不可能、Eli LillyのALIMTA(登録商標)とRocheのAVASTIN(登録商標)の組合せ剤が末期(late−stage)試験においてOSを改善できなかったこと、ならびにAmgenおよび武田薬品が、末期治験において、小分子VEGF−Rアンタゴニストであるモテサニブにより臨床エンドポイントの達成ができなかったことによる、最近の開発不成功により、進行した肺癌における満たされないニーズが形成されている。
肺癌の免疫療法
標的化療法の複数の選択療法で進行した患者のための有効な薬物、ならびに現在の標準療法を超えてより長い期間に生存を延長する療法が明らかに必要とされている。免疫療法を伴う新規のアプローチ、とりわけCTLA−4、PD−1およびPD−L1阻害経路を含む免疫チェックポイントの阻害は、最近、効果を発揮している(Creelan et al., 2014)。従って、化学療法と組み合わせたイピリムマブは、小細胞肺癌および非小細胞肺癌の両方において有望な結果が示されている。モノクローナル抗体ニボルマブ、ペンブロリズマブ、BMS−936559、MEDI4736およびMPDL3280Aの臨床治験は、肺癌における20%〜25%の範囲で永続的な全体的な奏効率を画像判定により証明している(Topalian et al, 2012a;Pardoll, 2012;WO 2013/173223;Creelan et al., 2014)。この例外的な活性には、歴史的に顕著な治療上の進歩がない集団である扁平上皮肺癌が含まれている。
加えて、抗PD−1および抗CTLA−4を組み合わせたものなどの併用免疫チェックポイント阻害戦略(dual checkpoint blockade strategy)は、黒色腫の処置において高度に有効であることが証明されており(Wolchok et al, 2013;WO 2013/173223)、抗PD−L1、抗LAG−3または抗KIRを含む他の組合せ剤が、腫瘍応答率および持続性を増加するために試験されている。黒色腫と同様に、NSCLC患者は、異なる免疫療法薬の組合せあるいはそのような薬物と標的薬物または外科手術、放射線、標準的な癌化学療法もしくはワクチンを含む他の療法との組み合わせのいずれかで利益を得ることができる。しかしながら、免疫療法剤が他の抗癌剤と組み合わされたとき、驚くべき予期せぬ合併症が観察されることがあった。したがって、免疫療法剤(抗CTLA−4抗体または抗PD−1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤を含む)と他の抗癌剤との組み合わせは予測不可能であり、安全性ならびに臨床上の有効性について慎重に評価されなければならない。ニボルマブとイピリムマブとの併用は、黒色腫を管理可能な毒性で処置するのに特に有用であることが証明されている(Wolchok et al., 2013)が、この組み合わせが、ヒト対象において、個々の薬物によるNSCLCおよび他の癌の治療よりも有意に有効であるかどうかは、これまで知られていなかった。
医薬組成物および投与量
本発明の治療剤は、組成物、例えば、抗体またはTKIおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に構成され得る。本明細書で用いる“薬学的に許容される担体”には、生理学的に適合する任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、抗体を含む組成物のための担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または点滴による投与)に適するが、一方、TKIを含む組成物のための担体は、非経腸投与、例えば経口投与に適する。本発明の医薬組成物は、1以上の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性および非水性担体、ならびに/または防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含み得る。
投与量レジメンは、所望の応答、例えば最大の治療応答および/または最小の有害作用をもたらすために調整される。ある態様において、抗PD−1抗体は、体重ベースの用量で投与される。とりわけ別の抗癌剤と組み合わせた、抗PD−1抗体の投与のために、投与量は、対象の体重1kgあたり、約0.01から約20mg、約0.1から約10mg、約0.01から約5mg、約1から約5mg、約2から約5mg、約1から約3mg、約7.5から約12.5mg、または約0.1から約30mgの範囲であり得る。例えば、投与量は、体重1kgあたり、約0.1mg、約0.3mg、約1mg、約2mg、約3mg、約5mgまたは約10mgであってよく、より好ましくは、体重1kgあたり、0.3mg、1mg、2mg、3mgまたは5mgである。特定の態様において、抗PD−1抗体の投与量は、体重1kgあたり3mgである。
一態様において、本発明の抗PD−1抗体の投与量レジメンは、静脈内投与により、体重1kgあたり、約0.3〜1mg、約5mg、1〜5mg、または約1〜約3mgを含み、抗体は、完全奏効まで、または病勢進行が確認されるまで、約6週間または約12週間までのサイクルで約14〜21日毎に投与される。ある態様において、本明細書に記載の抗体処置または任意の併用療法は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約24ヶ月、少なくとも約3年、少なくとも約5年、または少なくとも約10年続けられる。
投薬スケジュールは、一般的に、抗体の一般的な薬物動態特性に基づいて持続的な受容体占有(RO)をもたらす曝露を達成するように設計される。処置レジメンの一例は、1週間毎に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、1ヶ月に1回、3から6ヶ月毎に1回またはそれより長い間に1回投与することを伴う。任意の好ましい態様において、2週間毎に1回、ニボルマブのような抗PD−1抗体を対象に投与する。他の好ましい態様において、抗体は3週間毎に1回投与される。抗PD−1抗体は、少なくとも2用量を投与され得て、各用量は、該2用量間が2週間の投与間隔で、約0.01mg/kgから約5mg/kg、例えば3mg/kgの量である。ある態様において、抗PD−1抗体は、少なくとも3、4、5、6または7用量(すなわち、複数用量)で投与され、各用量は、2つの連続する所定の用量が2週間の投与間隔で、約0.01mg/kgから約5mg/kg、例えば3mg/kgの量である。投与量および投薬スケジュールは、治療経過中に変わり得る。例えば、抗PD−1単剤療法のための投薬スケジュールは、抗体を、(i)6週間のサイクル中、2週間毎に;(ii)6投与量を4週間毎に、その後、3カ月ごとに;(iii)3週間毎に;または、(iv)2〜3週間毎に1回、3−10mg/kg、次いで、1mg/kg、投与することを含み得る。IgG4抗体が一般的に2〜3週間の半減期を有することを考慮すると、本発明の抗PD−1抗体の好ましい投与量レジメンは、静脈内投与による、体重1kg当たり、0.3−10mg、好ましくは1−5mg、より好ましくは、1−3mgを含み、抗体は、完全奏効まで、または病勢進行が確認されるまで、約6週間または約12週間までのサイクルで約14〜21日毎に投与される。
特定の態様において、抗PD−1抗体は、一定用量で投与される。ある態様において、抗PD−1抗体は、単剤療法として一定用量で投与される。ある態様において、抗PD−1抗体は、本明細書に記載の他の療法剤と組み合わせて一定用量で投与される。ある態様において、抗PD−1抗体の一定用量は、少なくとも約100−600mgの用量、例えば少なくとも約200−300mg、少なくとも約400−500mg、または少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mg、例えば少なくとも約60mg、少なくとも約80mg、少なくとも約100mg、少なくとも約120mg、少なくとも約140mg、少なくとも約160mg、少なくとも約180mg、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約320mg、少なくとも約360mg、少なくとも約400mg、少なくとも約440mg、少なくとも約480mg、少なくとも約520mg、少なくとも約560mg、少なくとも約600mg、または少なくとも約660mg、または少なくとも約720mgの用量である。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約2または4週間毎に1回、少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mgの用量で投与される。他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、240mgよりも高用量で、すなわち少なくとも約240mgの用量で投与される。他の抗癌剤と組み合わせて用いるとき、抗PD−1抗体の投与量は、単剤療法の用量に比べて低くてよい。一般的な3mg/kgを3週間毎、例えば0.1mg/kg以下をまたは4週間毎より顕著に低いニボルマブの投与量は、治療量以下であると見なされる。0.3mg/kgから10mg/kgのニボルマブ投与を受けた15名の対象からの受容体占有率データは、この用量範囲においてPD−1占有率が用量依存的でないようであることを示している。全ての用量で、平均占有率は85%であって(70%から97%の範囲)、72%の平均プラトー占有率(59%から81%の範囲)であった(Brahmer et al., J Clin Oncol 28:3167−75 2010)。従って、0.3mg/kgの投薬は、最大の生物学的活性をもたらすのに十分な曝露を可能にする。
2週間毎に最高10mg/kgのニボルマブ単剤療法が、最大耐容量(MTD)に達することなく達成されたが、チェックポイント阻害剤と抗血管形成療法剤の他の治験で報告された顕著な毒性(例えば、Johnson et al., 2013;Rini et al., 2011参照)は、10mg/kg未満のニボルマブ用量の選択を支持する。
イピリムマブ(YERVOY(登録商標))は、黒色腫の処置のために、3mg/kgを静脈内投与にて、3週間毎に1回、4用量投与されることが承認されている。従って、好ましい態様において、3mg/kgは、抗PD−1抗体と組み合わせて用いられるイピリムマブの最高投与量であるが、特定の態様において、イピリムマブなどの抗CTLA−4抗体は、ニボルマブと組み合わせるとき、体重1kgあたり、約0.3から約10mg/kgの範囲内の用量で、2週間毎または3週間毎に投与され得る。承認された3mg/kg 3週間毎より顕著に低い、例えば0.3mg/kg未満 3または4週間毎のイピリムマブの投与量は、治療量以下であると見なされる。3mg/kgのニボルマブおよび3mg/kgのイピリムマブの併用投与は、黒色腫集団において最大耐用量(MTD)を超えているが、一方で、1mg/kgのニボルマブ+3mg/kgのイピリムマブの組合せまたは3mg/kgニボルマブ+1mg/kgのイピリムマブの組合せは、黒色腫患者において許容可能であることが見いだされたことが示されている(Wolchok et al., 2013)。従って、ニボルマブは、2週間毎に静脈内投与により供される10mg/kgまでは耐容性であるが、好ましい態様において、抗PD−1抗体の用量は、イピリムマブと組み合わせるとき、約3mg/kgを超えない。特定の態様において、用いられる投与量は、リスク−ベネフィットおよびPK−PD評価に基づいて、1mg/kgのニボルマブ+3mg/kgのイピリムマブ、3mg/kgのニボルマブ+1mg/kgのイピリムマブ、または3mg/kgのニボルムマブ+3mg/kgのイピリムマブの組み合わせを含み、それぞれ、2〜4週間毎に1回、好ましくは3週間毎に1回の投与頻度で投与される。特定の他の態様において、ニボルマブは、0.1、0.3、1、2、3または5mg/kgの投与量で投与されるイピリムマブと組み合わせて、0.1、0.3、1、2、3または5mg/kgの投与量で、2週間毎に1回、3週間毎に1回、または4週間毎に1回、投与される。
特定の態様において、抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体の組合せは、2、3または4回の投与について、2または3週間毎に、導入期に、対象に静脈内投与される。特定の好ましい態様において、ニボルマブおよびイピリムマブの組合せは、4回の投与について、3週間毎に、導入期に、静脈内投与される。導入期の後に維持期が続き、その間、抗PD−1抗体のみが、処置が効果的であることが判明しているか、または管理不能な毒性もしくは疾患の進行が生じるまで、2または3週間毎に、0.1、0.3、1、2、3、5または10mg/kgの投与量で対象に投与される。任意の好ましい態様において、ニボルマブは、2週間毎に、体重1kg当たり3mgの用量で維持期に投与される。
ニボルマブと他の抗癌剤との併用のために、これらの薬物は、好ましくは、それらの承認された投与量で投与される。臨床的利益が観察されるか、許容できない毒性または疾患の進行が生じるまで、治療は継続される。それにもかかわらず、特定の態様において、投与されるこれらの抗癌剤の投与量は、承認された投与量よりも顕著に低い、すなわち、該薬物の治療量以下の投与量が、抗PD−1抗体と組み合わせて投与される。抗PD−1抗体は、臨床治験において単剤療法剤として最高の有効性を生じる用量で、例えば3週間毎に1回投与される約3mg/kgのニボルマブを投与され得る(Topalian et al., 2012a;Topalian et al., 2012)か、または顕著に低い用量で、すなわち、治療量以下で投与され得る。
投与量および頻度は、対象における抗体の半減期に依存して変わる。一般的に、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、次いでヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体と続く。投与量および投与頻度は、処置が予防であるか、または治療であるかによって変わる。予防適用において、比較的低い投与量が、一般的に、長い間隔で長期間に亘って投与される。ある患者は、残りの寿命のために治療を受け続けている。治療適用においては、病勢進行が低下または停止するまで、または好ましくは患者が疾患症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要とされることが多い。その後、患者は予防レジメンを投与され得る。
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に過度に有毒ではなく、特定の患者、組成物および投与方法について所望の治療応答を達成するのに有効な量の活性成分が得られるように変えることができる。選択された投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出速度、処置の期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態および以前の病歴、ならびに医学分野において周知の因子などによって変わり得る。本発明の組成物は、当技術分野で周知の種々の方法のうちの1以上を用いて、1以上の投与経路によって投与され得る。当業者には理解され得るように、投与の経路および/または方法は、所望の結果によって変わり得る。
本発明の方法
本発明は、肺癌に罹患している対象の処置方法であって、該対象に治療的有効量の以下の組合せを投与することを含む方法を提供する:(a)PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤;および(b)別の抗癌剤。NSCLCは、肺癌のうち85%を超えるため、好ましい態様において、肺癌とはNSCLCである。他の好ましい態様において、対象はヒト患者である。特定の態様において、対象は、化学療法未施行患者(例えば、以前に化学療法を受けていない患者)である。他の態様において、対象は、別の癌療法(例えば、化学療法)を受けているが、そのような別の癌療法に対して耐性または難治性である。ある特定の態様において、対象は、EGFRまたはKRAS遺伝子の突然変異形態を発現する癌細胞を有する。
特定の態様において、本発明の併用療法(例えば、抗PD−1抗体および別の抗癌剤の投与)は、対象の生存期間を有効に延長する。例えば、対象の生存期間は、1つのみの療法剤(抗PD−1抗体または別の抗癌剤)で処置された別の対象と比較したとき、少なくとも約2か月延長される。特定の態様において、本発明の併用療法(例えば、抗PD−1抗体および別の抗癌剤の投与)は、対象の無増悪生存期間を有効に延長させる。例えば、対象の無増悪生存期間は、1つのみの療法剤(抗PD−1抗体または別の抗癌剤)で処置された別の対象と比較したとき、少なくとも約2か月延長される。特定の態様において、本発明の併用療法(例えば、抗PD−1抗体および別の抗癌剤の投与)は、対象群の奏効率を有効に増加させる。例えば、対象群の奏効率は、1つのみの療法剤(抗PD−1抗体または別の抗癌剤)で処置された別の対象群と比較したとき、少なくとも2%増加する。
本明細書に記載の方法における使用に適する抗PD−1および抗PD−L1抗体
本明細書に記載の方法または組成物における使用に適する抗PD−1抗体は、高い特異性および親和性でPD−1に結合し、PD−L1および/またはPD−L2の結合を阻止し、そしてPD−1シグナル伝達経路の免疫抑制作用を阻害する抗体である。本明細書に記載の治療方法のいずれかにおいて、抗PD−1“抗体”または抗CTLA−4“抗体”には、PD−1受容体またはCTLA−4受容体に結合し、リガンド結合を阻害し、免疫系を上方制御する際の抗体全体の機能的特性と同様の特性を示す、抗原結合部分またはフラグメントが含まれる。特定の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する。他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体またはそれらの一部分である。ヒト対象を処置するための任意の好ましい態様において、抗体はヒト化抗体である。ヒト対象を処置するための他の好ましい態様において、抗体はヒト抗体である。IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの抗体を使用することができる。
特定の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。特定の他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分のIgG4重鎖定常領域の配列は、ヒンジ領域中のセリン残基を、IgG1アイソタイプ抗体の対応する部位に通常見いだされるプロリン残基で置換する、S228P変異を含む。ニボルマブに存在するこの変異は、野生型IgG4抗体に関連するFc受容体を活性化するための低親和性を維持しながら、内因性IgG4抗体とのFabアーム交換を阻止する(Wang et al., 2014)。さらに他の態様において、抗体は、ヒトκまたはλ定常領域である軽鎖定常領域を含む。他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、モノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。抗PD−1抗体の投与を含む本明細書に記載の治療方法のいずれかの特定の好ましい態様において、抗PD−1抗体はニボルマブである。他の好ましい態様において、抗PD−1抗体は、ペムブロリズマブである。他の態様において、抗PD−1抗体は、米国特許第8,008,449に記載のヒト抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4から選択される。
抗PD−1および抗PD−L1抗体は同じシグナル伝達経路を標的とし、RCCを含む種々の癌において同様のレベルの有効性を示すことが臨床治験で示されているため(Brahmer et al., 2012;Topalian et al., 2012a;WO2013/173223参照)、抗PD−L1抗体を、本明細書に記載の治療方法のいずれかにおいて抗PD−1抗体の代わりに用いることができる。特定の好ましい態様において、抗PD−L1抗体はBMS−936559である(以前の12A4またはMDX−1105)(例えば、米国特許第7,943,743号;WO2013/173223参照)。他の好ましい態様において、抗PD−L1抗体はMPDL3280A(RG7446としても公知)(例えば、Herbst et al. 2013;米国特許第8,217,149号参照)またはMEDI4736である(Khleif、2013)。
NSCLCを処置するための抗PD−1抗体と抗CTLA−4抗体の組合せ
本発明はまた、NSCLCを処置するための併用療法であって、ここで、抗PD−1抗体が、CTLA−4に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である別の抗癌剤と組み合わせられる、併用療法も提供する。抗PD−1抗体であるニボルマブおよび抗CTLA−4抗体であるイピリムマブの組合せは、本明細書中、NSCLC患者において、早期の、永続的な抗腫瘍活性を生じることが実証されている(実施例4参照のこと)。従って、特定の好ましい態様において、抗PD−1抗体と組み合わせて用いられる抗CTLA−4抗体はイピリムマブである。好ましい態様において、抗CTLA−4抗体はトレメリムマブである。他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブと交差競合する抗体またはその抗原結合部分である。特定の他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体もしくはそれらの一部分である。さらに他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。好ましい態様において、抗CTLA−4抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖定常領域を含む。
抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体の組合せについて、投与レジメンは、導入期(本明細書中では導入相とも呼ばれる)を含み、その間に1以上、好ましくは約4つの抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体の組合せの用量を患者に投与し、次いで、抗PD−1抗体単独、すなわち抗CTLA−4抗体を含まない投与を含む維持期または維持相を含む。特定の態様において、この方法は、(a)抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体またはそれらの抗原結合部分が、2、4、6、8または10用量で組み合わせて投与される導入期(各用量は、少なくとも2週間毎に1回、3週間毎に1回、または4週間毎に1回、0.1から10.0mg/kg体重の範囲で投与される)、次いで(b)抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を投与せず、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を、少なくとも2週間毎に1回、3週間毎に1回、または4週間毎に1回、0.1から10mg/kgの範囲の用量で反復投与する維持期、を含む。
特定の態様において、(a)導入期は、3週間間隔で投与される少なくとも4用量を含み、ここで、抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体は、以下の投与量で投与される:(i)0.1mg/kgの抗PD−1抗体および3mg/kgの抗CTLA−4抗体;(ii)0.3mg/kgの抗PD−1抗体および3mg/kgの抗CTLA−4抗体;(iii)1mg/kgの抗PD−1抗体および3mg/kgの抗CTLA−4抗体;(iv)3mg/kgの抗PD−1抗体および3mg/kgの抗CTLA−4抗体;(v)5mg/kgの抗PD−1抗体および3mg/kgの抗CTLA−4抗体;(vi)10mg/kgの抗PD−1抗体および3mg/kgの抗CTLA−4抗体;(vii)0.1mg/kgの抗PD−1抗体および1mg/kgの抗CTLA−4抗体;(viii)0.3mg/kgの抗PD−1抗体および1mg/kgの抗CTLA−4抗体;(ix)1mg/kgの抗PD−1抗体および1mg/kgの抗CTLA−4抗体;(x)3mg/kgの抗PD−1抗体および1mg/kgの抗CTLA−4抗体;(xi)5mg/kgの抗PD−1抗体および1mg/kgの抗CTLA−4抗体;または、(xii)10mg/kgの抗PD−1抗体および1mg/kgの抗CTLA−4抗体、ならびに(b)維持期は、2週間毎に、3mg/kgの用量で抗PD−1抗体を反復投与することを含む。
免疫チェックポイントの阻害による免疫療法で以前に示された臨床効果の永続性のために(例えば、国際公開第2013/173223号参照)、維持相は、別の態様では、有限の投薬回数、例えば、1−10用量を含み得るか、または長い間隔で、例えば、約3−6ヶ月毎に1回または約1−2年もしくはそれより長い間隔毎に1回、投与され得る。維持相は、臨床的有用性が観察される限り、または管理不能な毒性もしくは疾患の進行が生じるまで継続され得る。
過去12週に投与されたイピリムマブが黒色腫の臨床的利益に寄与するかどうか、ならびに米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品局(EMA)がYERVOY(登録商標)に承認したスケジュールが3週毎に全4用量である事実を考慮して、好ましい態様において、抗CTLA−4抗体は、導入期に、3週間毎に1回、合計4用量投与される。従って、任意の好ましい態様において、この方法は、(a)3週間間隔で投与される4つの組合せ用量からなる導入期を含み、ここで、(i)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、3mg/kg体重で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、1mg/kg体重で投与される;(ii)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、1mg/kg体重で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、3mg/kg体重で投与される;(iii)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、1mg/kg体重で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、1mg/kg体重で投与される;または、(iv)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、3mg/kg体重で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、3mg/kg体重で投与される;ならびに、(b)2週間毎に、3mg/kgの用量で抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を反復投与する維持期を含む。これらの方法のさらなる態様において、維持期は、臨床的利益が観察されるか、または許容できないもしくは管理不能な毒性もしくは疾患の進行が生じるまで、継続される。
本発明の方法の任意の好ましい態様において、抗PD−1抗体はニボルマブである。他の好ましい態様において、それはペンブロリズマブである。さらに他の好ましい態様において、抗CTLA−4抗体はイピリムマブである。さらなる態様において、抗CTLA−4抗体はトレメリムマブである。一般的に、抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体は、静脈内投与用に製剤される。特定の態様において、抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体は、組み合わせて投与され、それらは互いに30分以内に投与される。何れかの抗体が初めに投与されてよく、すなわち、特定の態様において、抗PD−1抗体は、抗CTLA−4抗体の前に投与され、一方、他の態様において、抗CTLA−4抗体は、抗PD−1抗体の前に投与される。ある態様において、各抗体は、60分または30分間に亘って静脈内点滴により投与される。ある態様において、各抗体は、90分未満または60分未満にわたって、例えば、約15−59分間に亘って、約15−55分間に亘って、約15−50分間に亘って、約15−45分間に亘って、約15−40分間に亘って、約15−35分間に亘って、約15−30分間に亘って、約20−35分間に亘って、または約20−30分間に亘って、静脈内点滴により投与される。ある態様において、ニボルマブは、60分未満に亘って、例えば、約15−59分間に亘って、約15−55分間に亘って、約15−50分間に亘って、約15−45分間に亘って、約15−40分間に亘って、約15−35分間に亘って、約15−30分間に亘って、約20−35分間に亘って、または約20−30分間に亘って、静脈内点滴により投与される。ある態様において、イピリムマブは、90分未満または60分未満に亘って、例えば、約15−59分間に亘って、約15−55分間に亘って、約15−50分間に亘って、約15−45分間に亘って、約15−40分間に亘って、約15−35分間に亘って、約15−30分間に亘って、約20−35分間に亘って、または約20−30分間に亘って、静脈内点滴により投与される。特定の態様において、抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体は、併用投与のための薬学的に許容される製剤中の単一の組成物として混合して、または薬学的に許容される製剤中の各抗体を含む別個の組成物として同時に、併用投与される。
本発明の方法の任意の好ましい態様は、(a)静脈内点滴によるニボルマブの投与、次いで4併用用量の、3週間毎の静脈内点滴によるイピリムマブの投与からなる導入期、その後の(b)誘導療法の4回目の投与の3週間後または誘導療法の4回目の投与の113日後に開始する、2週間毎の静脈内点滴投与による、ニボルマブの維持投与、を含む。
特定の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、治療用量以下の用量で投与される。特定の他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、治療量以下の用量で投与される。さらなる態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分の両方がそれぞれ、治療量以下の用量で投与される。
特定の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、一定用量で、例えば、少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mgを、2週間毎または4週間毎に、別の抗癌剤、例えばCTLA−4に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分”)と組み合わせて投与される。ある態様において、比は、抗PD−1抗体(mg)対抗CTLA−4抗体(mg)が、少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1または約2:1である。
キット
治療用途のための抗PD−1抗体および別の抗癌剤を含むキットもまた、本発明の範囲内である。キットは、一般的に、キットの内容物の意図された使用を示すラベルおよび使用説明書を含む。ラベルという用語には、キットに添付されているまたは含まれる、あるいはそれ以外の方法でキットに包含される、文書または記録された資料が含まれる。従って、本発明は、肺癌に罹患している対象の処置のためのキットを提供し、該キットには、(a)体重1kg当たり0.1〜10mgの範囲の投与量の、PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤;(b)体重1kg当たり0.1〜10mgの範囲の投与量の、CTLA−4に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である別の抗癌剤;ならびに、(c)本明細書に記載の併用療法のいずれかにおける、抗PD−1抗体および別の抗癌剤の使用のための指示書が含まれる。特定の態様において、抗PD−1抗体、抗CTLA−4抗体および/またはTKIは、単位投与量形態で共パッケージされ得る。ヒト患者を処置するための特定の好ましい態様において、キットは、本明細書に記載の抗ヒトPD−1抗体、例えばニボルマブまたはペムブロリズマブを含む。他の好ましい態様において、キットは、本明細書に記載の抗ヒトCTLA−4抗体、例えばイピリムマブまたはトレメリムマブを含む。
臨床プロトコールCA209227
化学療法未施行ステージIV対象または再発性非小細胞肺癌(NSCLC)対象における、ニボルマブ 対 白金併用化学療法およびニボルマブ+イピリムマブ 対 白金併用化学療法の第3相オープンラベル無作為化フェーズ3治験を、本明細書中に詳細に記載する。
試験された製品には、1)進行、許容できない毒性、またはプロトコールに規定された他の理由があるまで、2週間毎に、240mgで、30分間にわたってIV投与される、ニボルマブ(BMS−936558)単剤療法、または2)進行、許容できない毒性、またはプロトコールに規定された他の理由があるまで、4用量を、3週間毎に、1mg/kgで、30分間に亘りIV投与されるイピリムマブと併用した、1mg/kgで、30分間に亘ってIV投与されるニボルマブ、その後の、2週間毎に、3mg/kgで、30分間に亘りIV投与されるニボルマブ、または3)進行、許容できない毒性、またはプロトコールに規定された他の理由があるまで、6週間毎に、1mg/kgで、30分間に亘りIV投与されるイピリムマブと併用した、2週間毎に、3mg/kgで、30分間に亘りIV投与されるニボルマブ、または4)腫瘍組織学に基づいて、以下のように6用量までの、白金併用化学療法:扁平上皮組織を有する対象は、シスプラチン(75mg/m)を含むゲムシタビン(1250mg/m)またはカルボプラチン(AUC5)を含むゲムシタビン(1000mg/m)のいずれかを受容し得る;非扁平上皮組織を有する対象は、シスプラチン(75mg/m)またはカルボプラチン(AUC6)のいずれかを含むペメトレキセド(500mg/m)を受容し得る;非扁平上皮組織を有する対象は、疾患進行または許容できない毒性まで、ペメトレキセド単独で任意の継続維持療法を受け得る、が含まれる。
治験は、表2に記載される、治験薬[医薬品]製品(IP/IMP)および非治験薬[医薬品]製品(Non−IP/Non−IMP)の両方を含む。
治験評価には、例えば、主要エンドポイントとして全生存期間(OS)が含まれる。全生存期間は、無作為化から死亡日までの期間として定義される。対象は、無作為化後6週間(±7日)に開始して、48週目まで6週間(±7日間)毎に、続いて進行または治療中止のいずれか遅いほうまで、12週間(±7日)毎に、CTまたはMRIによる応答を評価される。腫瘍評価は、RECIST 1.1で進行が評価されるまで、プロトコール毎に継続する。死亡しなかった対象を、最後に知られた生存日に打ち切った。OSを、対象が治験薬を受容中および3ヶ月毎に継続して追跡する。全ての無作為化された対象を評価する。
治験検討事項
非小細胞肺癌(NSCLC)は、世界中の癌関連死の主要な原因であり、癌による死亡の全体のおよそ18%を占めている(Jemal A, et al. Global Cancer Statistics CA Cancer J Clin 2011;61:69−90)。白金ベースの化学療法による処置にも関わらず、転移性NSCLC患者の第一選択療法の標準療法は、約10か月の生存中央値を有し、5年生存率は5%未満である(NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Non−small cell lung cancer. v.3.2014. www.nccn.org.)。
免疫療法アプローチは、最近、黒色腫およびホルモン不応性前立腺癌を含むいくつかの癌タイプにおいて臨床的有効性を実証されている(Mellman et al. Nature 2011 Dec 22;29 4 8 0:480−89)。腫瘍は、腫瘍特異的抗原の発現および提示の下方制御、抗炎症性サイトカインの分泌、および阻害性リガンドの上方制御を含む、多くの機序を介して、宿主の免疫応答を調節および回避することができる。CTLA−4およびプログラム細胞死−1(PD−1、CD279)のようなT細胞チェックポイント調節因子は、それらの内在性リガンドが結合すると、T細胞活性化および増殖を下方制御するシグナル伝達カスケードを誘導する細胞表面分子である。治療的T細胞チェックポイント阻害剤が抗腫瘍活性を誘導する1つの提案されたモデルは、腫瘍細胞抗原に対する免疫寛容の破壊によるものである。
ニボルマブ(BMS−936558)は、活性化免疫細胞上のPD−1に結合し、該受容体とそのリガンドであるPD−L1(B7−H1/CD274)およびPD−L2(B7−DC/CD273)との結合を破壊し、それにより阻害シグナルを阻止して、宿主抗腫瘍応答を増強させる、完全ヒトIgG4(カッパ)アイソタイプモノクローナル抗体である。初期の臨床治験において、ニボルマブは、黒色腫、腎細胞癌(RCC)およびNSCLCを含むいくつかの腫瘍タイプにおいて活性を実証されている(Brahmer et al. J Clin Oncol 2010;28:3167−3175)。特に、以前に処置されたNSCLC対象では、客観的奏効率が25%に近づき、無増悪生存期間(PFS)が24週で45%に達する実質的な活性が認められ、扁平上皮組織と非扁平上皮組織との間に明確な違いはなかった(Nivolumab(BMS−936558) Investigator Brochure, version 13, 2014)。
ニボルマブ(Opdivo(登録商標))は、最近、白金ベースの化学療法中または療法後の進行を伴う転移性扁平上皮NSCLCを有する患者を処置するために承認された(Opdivo Prescribing Information, 2015)。承認は、272名の患者の無作為化治験であるCA209017の結果に基づき、うち135名がニボルマブを受容し、137名がドセタキセルを受容した。ニボルマブ群の患者の生存期間(OS)中央値は、ドセタキセル群では6か月であったのに対して、9.6か月であった(HR=0.59)。白金ベースの化学療法と少なくとも1つの追加の全身レジメン後に進行した転移性扁平上皮NSCLC患者117名の単群治験(CA209063)は、15%の全奏効率(ORR)を示し、うち59%は、6か月以上の応答持続期間を有した(Rizvi et al. Lancet Oncol 2015;Published online February 20, 2015)。
一般的に、ニボルマブはまた、免疫賦活作用メカニズムに基づいて予想される毒性と比較して好ましい安全性プロファイルで、これまで十分に耐容性であった(Amos et al. Autoimmunity associated with immunotherapy of cancer. Blood 2011;118:499−509)。
異なる作用機序を有する免疫療法剤を組み合わせることは、相乗的応答の可能性を提供する。PD−1およびCTLA−4は両方とも、共阻害分子であるが、T細胞活性化を制限するために異なるメカニズムを使用することが証拠により示唆されている。末梢T細胞評価からの予備的間接データは、所与のT細胞チェックポイント阻害剤が、may宿主免疫細胞表現型を調節して、別のチェックポイント阻害剤に対してより感受性になり、それにより抗腫瘍活性を増強することを示唆する。
進行黒色腫におけるニボルマブ+イピリムマブの組み合わせの第1相治験(CA209004)において、17%の完全奏効率(CR)を含む、41%の奏効率であった。NSCLC患者の第1相治験(CA209012)において、ニボルマブ+イピリムマブの組合せが評価されている。有効性データは、ニボルマブ単剤療法で観察されたものと同等か、またはそれより優れているようである。
ニボルマブ単剤療法(A群)
PD−1は、活性化T細胞、B細胞、骨髄細胞および抗原提示細胞(APC)上で主に発現される、55kDのI型膜貫通タンパク質である(Keir M E, et al. Annu. Rev. Immunol. 2008;26:677−704)。PD−1のPD−L1およびPD−L2への結合は、マウスおよびヒト系の療法においてT細胞活性化を下方制御することが示されている(Freeman GJ, et al. J Exp Med. 2000;192:1027−34;Latchmanet al. Nat Immunol. 2001;2:261−8;Carteret al. Eur J Immunol. 2002;32:634−43;および、Barber et al. Nature 2006;439:682−7)。特に、PD−L1は、NSCLCを含むいくつかの癌タイプで上方制御されていることが示されており、ある場合に、ネガティブな予後と関連している(Dong H, Chen L. J Mol Med. 2003;81:281−7;Konishi et al. Clin Cancer Res. 2004;10:5094−10;Thompson et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2004;101:17174−9;Mu et al. Med Oncol. 2011;28:682−688;および、Hamanishi et al. PNAS 2007;104:3360−65)。PD−1/PD−L1相互作用はまた、T細胞/APC相互作用を介して腫瘍抗原に対する応答を間接的に調節し得る。
従って、PD−1の結合(engagement)は、免疫監視および排出(クリアランス)を回避する1つの手段を表し得る(Pardoll DM. Nature 2012;12:252−64)。ニボルマブによるPD−1経路の遮断は、種々の前臨床的インビトロアッセイにおいて試験されており、ニボルマブのマウス類縁体を用いた抗腫瘍活性が、多くの腫瘍免疫能のある(immunocompetent)マウス癌モデルで示されている(Nivolumab (BMS−936558) Investigator Brochure, version 12, 2013)。これらおよび他の前臨床データに基づいて、ニボルマブによるPD−1の遮断は、NSCLCを含むいくつかの腫瘍型において、免疫寛容を逆転させ、T細胞エフェクター機能を増強する有望な治療戦略として追求されてきた。
実質的な単剤療法による、ニボルマブ(CA209003)の進行中の第1相多回投与用量漸増治験でセカンドラインのNSCLC対象(n=129)の処置以上の、またはそれと同等の臨床活性が観察されている(Nivolumab (BMS−936558) Investigator Brochure, version 12, 2013)。この治験は、3mg/kgの用量で22%(扁平上皮)から26%(非扁平上皮)の客観的奏効率(ORR)を示し、これは、第二選択療法のドセタキセルの歴史的なORR(約8−10%)以上であり(Shepherd et al. J Clin Oncol. 2000;18:2095−2103;Fossella et al. J Clin Oncol. 2000;18:2354−62;Hanna et al. J Clin Oncol. 2004;22:1589−97)、第一選択白金併用化学療法のそれと同等である(約25−30%)(Belani et al. J Clin Oncol 2008;26: 468−73)。加えて、3mg/kg用量で処置したNSCLC対象の24週間のPFS率は、42%(非扁平上皮)から45%(扁平上皮)であった(Nivolumab (BMS−936558) Investigator Brochure, version 12, 2013)。比較すると、セカンドラインのドセタキセルの歴史的なPFSの中央値は、約3ヶ月であり(Fossella et al. J Clin Oncol. 2000;18:2354−62;Hanna et al. J Clin Oncol. 2004;22:1589−97)、第一選択白金併用化学療法のPFSの中央値は、約4から5.5か月である(Belani et al. J Clin Oncol 2008;26: 468−73;Scagliotti et al. J Clin Oncol 2008;26: 3543−51)。応答を有する全てのNSCLC対象において、応答期間の中央値は、74週間であった。さらに、ニボルマブの有害事象プロファイルは、血液毒性が現在のところ稀であり、非血液毒性の大部分が低悪性度であり、かつ管理が容易であるため、白金併用化学療法よりも好ましいことが明らかである。上記の通り、白金ベースの化学療法および少なくとも1つの追加の全身レジメン後に進行した転移性の扁平上皮NSCLC患者117名の単群治験であるCA209063は、15%のORRを示し、59%の6か月以上続く応答持続期間を示した(Rizvi et al. Lancet Oncol 2015;Published online February 20, 2015)。CA209017は、272名の患者の無作為化治験であった;135名は、ニボルマブに無作為化され、137名はドセタキセルに無作為化された。ニボルマブ群の患者の生存期間(OS)中央値は、ドセタキセル群が6か月であったのに対して、9.6か月であった。ニボルマブ群の9名(6.9%)の患者と比較して、ドセタキセル群の患者の57%(74/129)が、3名の死亡を含む、グレード3−5の処置関連事象を経験したが、グレード5の事象を有した者はいなかった。
2週間毎に3mg/kgのニボルマブ単剤療法は、治験CA209012において進行NSCLCを有する化学療法未施行患者の幾つかのコホートの1つで評価されている。扁平上皮癌を有する13名の対象および非扁平上皮癌を有する39名の対象を含む、このコホート(n=52)の結果は、23%の完全奏効率(ORR)および50%の疾患制御率(DCR)を示す。24週間のPFS率は41%であり、PFSの中央値は16週間である。12か月でのOS率は74%であり、生存期間(OS)中央値は、22.6か月である。応答の大部分は永続的であり、応答期間中央値に達していない。対照的に、白金併用化学療法を受ける非扁平上皮癌を有する患者のOS中央値は、13か月であり、扁平上皮癌を有する患者のOS中央値は10か月である(Ellis et al. J Clin Oncol (2014) 32:1277−1280)。
ニボルマブ単剤療法の一定用量投与
ニボルマブ単剤療法は、体重により正規化した投与量(mg/kg)を用いる、治験CA209003、CA209063、CA209017およびCA209057のNSCLC患者集団において試験されている。これらの治験におけるニボルマブ薬物動態(PK)および対象の暴露は、固形腫瘍におけるニボルマブ単剤療法のいくつかの第1、第2および第3相臨床治験からのPKデータと共に、これらの試験から集めたデータの集団薬物動態(PPK)分析によって特徴づけられている。ニボルマブPKは、0.1から10mg/kgの用量範囲にわたる用量比例暴露(dose proportional exposure)で線形性が認められた。ニボルマブクリアランスおよび分布量は、体重の増加と共に増加することが判明したが、その増加は比例よりも小さく、このことは、mg/kgの用量が、ニボルマブPKに対する体重の影響に対して過調整を示すことを示唆している。逆に、ニボルマブPKと体重との関係を考慮して、より重篤度の軽い患者の暴露と比較して、より重篤な患者では、一定用量は暴露の低下をもたらすことが予期される。
表3は、3mg/kgを受容したNSCLC対象における推定ニボルマブ定常状態トラフ、ピークおよび時間平均濃度(それぞれ、Cminss、CmaxssおよびCavgss)の概要統計値を、240mgの一定用量のニボルマブについて予測された暴露の対応する統計値と共に示す。240mg用量のニボルマブは、NSCLC患者におけるニボルマブ単剤療法の3つのフェーズ2および3臨床治験(CA209017、CA209057およびCA209063)でのNSCLC対象の体重のほぼ中央値である、体重80kgの対象に対して3mg/kgの用量と同一であることが理解されるべきである。表3に示すデータから明らかなように、一定用量の投与でのCminss、CmaxssおよびCavgssの幾何平均値は、3mg/kg用量で産生されたものよりも僅かに(<15%)高く、これらの暴露測定値における変動係数(cv%)は、3mg/kg用量の投与のそれよりわずかに(<10%)大きいだけである。
ニボルマブは、10mg/kgの用量レベルまで安全であり、耐容性が良好であることが示されており、3mg/kgでもたらされたニボルマブ暴露と有効性との関係は、比較的釣り合っていることが分かっている。まとめると、PK、安全性および有効性のデータは、240mgのニボルマブの安全性および有効性プロファイルが、3mg/kgのニボルマブのものと同様であることを示している。
ニボルマブのPKおよび安全性は、アジア人集団において評価されている。全世界および日本の対象におけるPKパラメーターの比較は、ニボルマブのPKがこれらの集団において同様であることを示唆している。ニボルマブは、日本の対象において安全性および良好な耐容性が示されている。全世界および日本の対象間のニボルマブの同様のPKおよび安全性プロファイルは、国際的な臨床治験で用いられているようなアジア人集団における同様の投与の使用を支持する。
CA209227中の実験群の1つは、未処置のステージIVまたは再発性NSCLCを有する対象に対する、2週間毎の、240mgのニボルマブ単独療法であり得る。
ニボルマブとイピリムマブとの併用(B群およびC群)
前臨床データは、PD−1受容体およびCTLA−4受容体の阻害の組合せが、抗腫瘍活性を改善し得ることを示す。ニボルマブ+イピリムマブのインビトロでの組合せは、混合リンパ球反応において、いずれかの薬物単独よりもIFN−γ産生を2〜7倍増加させる。組合せ剤の増加した抗腫瘍活性はまた、5つの同系マウス腫瘍モデルのうち3つでも観察された。マウス黒色腫ワクチンモデルにおいて、CTLA−4抗体またはPD−1抗体を用いた阻害は、いずれかの薬物単独と比較して、CTLA−4およびPD−1を発現するCD4/CD8腫瘍浸潤Tエフェクター細胞の割合を増加させ、Tエフェクター細胞の腫瘍浸潤の増加および腫瘍内T調節細胞の減少を二重に阻害した(Curran et al. PNAS 2010;107: 4275−80)。
臨床的には、イピリムマブは、肺癌において活性を有することが示されている。NSCLCまたは小細胞肺癌(SCLC)の対象における第2相治験(CA184041)は、2つの異なる(同時および段階的)スケジュールを用いてカルボプラチンおよびパクリタキセルにイピリムマブを添加することを調べた。段階的スケジュールは、NSCLCおよびSCLCの両方において、化学療法剤単独と比較して、免疫関連無憎悪生存(irPFS)活性の顕著な改善を示した(イピリムマブ (BMS−734016) Investigator Brochure, version 17, 2014.)。
ニボルマブとイピリムマブの組合せは、現在、未処置のおよび以前に処置された進行黒色腫を有する対象における、フェーズ1bの複数の漸増用量(ascending dose)試験であるCA209004(MDX1106−04)で評価されている。ニボルマブおよびイピリムマブの両方を、4用量について3週間毎のスケジュールで投与し、その後、ニボルマブのみを3週間毎に4用量投与した。併用療法を12週間毎に8用量まで投与する維持期間も評価した。処置コホートは以下のとおりである:コホート1(n=14):ニボルマブ 0.3mg/kg+イピリムマブ 3mg/kg;コホート2(n=17):ニボルマブ 1mg/kg+イピリムマブ 3mg/kg;コホート2a(n=16):ニボルマブ 3mg/kg+イピリムマブ 1mg/kg;および、コホート3(n=6):ニボルマブ 3mg/kg+イピリムマブ3mg/kg。
有効性および安全性の結果が報告されている(Wolchok et al. New Engl J Med 2013;369: 122−33)。データは、コホート3において、6名の対象のうち3名においてDLT(用量制限毒性)が観察されたことを示す(グレード3/4 アミラーゼ/リパーゼを3週間以上)。コホート2における用量は、許容されるレベルの有害事象(1名の対象におけるグレード3のブドウ膜炎および1名の対象におけるグレード3のASTおよびALT上昇)と関連する最大用量と同定された。応答が評価された52名の対象のうち、21名の対象(40%)は、修正されたWHO(mWHO)基準によって客観的な応答が確認された。さらに4名の対象(8%)が、免疫関連基準に従って客観的応答を示した。全16名の対象(31%)が、12週間で80%以上の腫瘍退縮を示し、うち5名の対象は完全奏効(CR)を示した。応答を有した19または21名の対象において、応答は、データ分析時に6.1〜72.1週間の範囲で継続していた。CA209004からのこれらの結果は、ニボルマブとイピリムマブの組合せが、進行黒色腫におけるいずれかの薬物単独よりも優れた臨床活性を有するが、毒性が増加する可能性があることを示唆している。
ニボルマブ+イピリムマブの組合せはまた、単剤療法として、および種々の薬物との組合せとして、実施中のニボルマブの第1相治験CA209012における進行NSCLC患者の第1選択療法として、いくつかの異なる用量およびスケジュールで評価されている。早期コホートでは、2つの異なる投与スケジュールを評価した:ニボルマブ 1mg/kg+イピリムマブ 3mg/kg、導入期として4サイクルについて3週間毎、その後、ニボルマブ 3mg/kg 2週間毎;または、ニボルマブ 3mg/kg+イピリムマブ 1mg/kg、導入期として4サイクルについて3週間毎、その後、ニボルマブ 3mg/kg 2週間毎。
これらのレジメンは、有意な毒性をもたらし、37%の患者が治療関連有害事象(AE)により処置を中止した。従って、第3の組合せコホートが開始された:ニボルマブ 1mg/kg+イピリムマブ 1mg/kg 導入期として4サイクルについて3週間毎(“1+1”)、その後、ニボルマブ 3mg/kg 維持期として2週間毎。この投与レジメンは、治療関連AEを経験した対象の13%のみが中止に至ることにより、より良好な耐容性を有する。有効性データは、ニボルマブ単剤療法で観察されたデータと同様かまたはそれより優れていることを示す。ORRは16%であり、DCRは58%である。24週でのPFS率は55%であり、PFS中央値は46.1週である。12か月でのOS率は63%であり、OS中央値は、達成していない。PD−L1陽性(PD−L1+)およびPD−L1陰性(PD−L1−)腫瘍の両方を有する患者において、活性が観察されている。
現在、CA209012は、ニボルマブ/イピリムマブの組合せの3つのさらなるコホートを登録している。これらは、イピリムマブの用量および頻度を低下させることによって安全性が改善され、2週間毎にニボルマブを投与することによって効果が増加し得るという仮説を試験するために設計されており、ニボルマブを組合せの“ベース”とすることができる。予備データは、早期コホートと比較して改善された安全性プロファイルを確認し、より新しいコホートにおける治療関連AEに起因する処置の中断は、5〜11%の範囲である。奏効率は15−30%の範囲であり、疾患コントロール率は8−51%の範囲である。
CA209227は、2つのニボルマブ+イピリムマブ処置群を有する。1つは、“1+1”スケジュールを評価する;もう1つの群は、進行または許容できない毒性まで、ニボルマブ 3mg/kg 2週間毎+イピリムマブ 1mg/kg、6週間毎を評価する。異なる投与スケジュールは、有効性および安全性に対する2つの抗体の異なる頻度および用量強度の影響を評価する。前者のスケジュールにおいて、ニボルマブの用量はより低く、投与は、導入期中3週間毎であるため、イピリムマブをより頻繁に投与することができるが、期間はより短期間である。後者のスケジュールでは、ニボルマブはより頻繁に、より高用量で投与されるため、ニビルマブは組み合わせのバックボーンになり、イピリムマブはスケジュール全体を通して連続的に投与されるが、より低用量で投与される。
ニボルマブおよびイピリムマブのより短い注入時間
長時間の注入は、とりわけ複数の薬物を個体へ順次投与するとき、患者および処置施設に負担をかける。ニボルマブおよびイピリムマブは、対象におけるニボルマブおよびイピリムマブの30分間のより短い注入時間を用いて安全に投与することができる方法の確立は、安全性プロファイルに変化を与えることなく負担は軽減され得る。
ニボルマブ単剤療法およびイピリムマブ単剤療法ならびにニボルマブとイピリムマブの組合せ剤の以前の臨床治験は、ニボルマブについて60分間の注入時間、イピリムマブについて90分間の注入時間を用いていた(両方とも、1−3mg/kg投与)。しかしながら、ニボルマブとイピリムマブの両方を同じ注入時間で10mg/kgまで投与した:ニボルマブは、長い処置期間にわたって安全に10mg/kgまでの範囲の用量で60分間にわたって安全に投与されている。治験CA209010(進行/転移クリアセルRCCを有する対象におけるニボルマブの、第2相、無作為化、二重盲検、用量−線量治験)において、注入部位反応および過敏反応が用量と関連して観察された(0.3mg/kgで1.7%、2mg/kgで3.7%および10mg/kgで18.5%)。全ての事象は、グレード1−2であり、管理可能であった。
3mg/kg ニボルマブ(10mg/kgで提供される用量の30%)についての30分間の注入時間は、60分間かけて注入された10mg/kg ニボルマブ用量での以前の結果と比較して、安全上の懸念があるとは言えない。
同様に、10mg/kgのイピリムマブは、90分間かけて安全に投与されている。イピリムマブを10mg/kgの用量まで投与したCA184022治験において、治験薬関連の過敏性事象(グレード1−2)が、0.3mg/kg群において1名(1.4%)および10mg/kg群において2名(2.8%)の対象で報告された。3mg/kg群では、薬物関連の過敏性事象は報告されなかった。3つの処置群のいずれでも、グレード3−4の薬物関連過敏性事象は報告されず、輸液反応(infusion reaction)も報告されなかった。イピリムマブ 10mg/kg 単剤療法はまた、前立腺癌(CA184043)における大規模第3相治験における90分間の注入として、およびステージ3黒色腫(CA184029)におけるアジュバント療法として安全に投与されたが、対象における輸液反応を伴った。1mg/kgのイピリムマブの投与は、10mg/kgの用量の10分の1を表す。
全体として、高悪性度の過敏反応を含む輸液反応は、ニボルマブもしくはイピリムマブの臨床治験またはニボルマブおよびイピリムマブの組合せではほとんど起こらなかった。さらに、組合せコホートの最初の注入後30分間の中断は、2回目の注入の開始前に適切な安全監視を可能にした。全体として、安全プロファイルの変化は、ニボルマブ、イピリムマブまたは組み合わせの30分間の注入では予期されなかった。
ある態様において、プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤、例えば、ニボルマブは、60分未満(例えば、約30分)の注入によって投与される。ある態様において、別の抗癌剤、例えば、イピリムマブは、90分未満(例えば、約60分または約30分)の注入によって投与される。
比較群(D群)における白金併用化学療法
進行NSCLCの第1選択処置は、組織特異的である。例えば、ペメトレキセドは、局所進行性または転移性の非扁平NSCLCのためにシスプラチンと組み合わせて第1選択療法で承認されている。この承認は、ゲムシタビンとシスプラチンの併用と比較して、非扁平上皮癌患者におけるシスプラチンと組み合わせたペメトレキセドの改善された生存率および毒性の低下を示した第III相無作為化治験に基づいている(Scagliotti GV et al. J Clin Oncol 2008;26: 3543−51)。
ペメトレキセドはまた、第1選択療法ペメトレキセド/白金レジメンの4サイクル後に疾患の進行を有していない、非扁平上皮癌患者の継続維持療法として承認されている。対照的に、ゲムシタビンとシスプラチンの併用は、扁平上皮NSCLC患者におけるペメトレキセド/シスプラチンと比較して全生存期間が改善されることが実証されている。
全部ではないが幾つかのメタ分析および無作為化治験は、シスプラチンベースのレジメンが、カルボプラチンベースのレジメンと比較して改善された生存率をもたらし得ることを実証しているが、多くの対象にとって、毒性が高いためにシスプラチンは理想的な候補ではない(Azzoli et al. J Clin Oncol 2009;27: 6251−66)。
この治験において扁平上皮癌および非扁平上皮癌の両方の対象を受け入れるために、比較群(D群)に無作為化された扁平上皮癌を有する対象は、以下の白金レジメンのいずれかを受容する:ゲムシタビン/シスプラチン(6サイクルまで)またはゲムシタビン/カルボプラチン(6サイクルまで)。
比較群(D群)に無作為化された非扁平上皮癌を有する対象は、以下のペメトレキセド/白金レジメンのいずれを受容してもよく、維持療法として、ペメトレキセドを継続する選択肢を有する:ペメトレキセド/シスプラチン(6サイクルまで)、ペメトレキセド/カルボプラチン(6サイクルまで)、ペメトレキセド/シスプラチン(4サイクル)、その後、ペメトレキセド維持療法、またはペメトレキセド/カルボプラチン(4サイクル)、その後ペメトレキセド維持療法。
予測バイオマーカーとしてのPD−L1発現の評価
PD−L1は、多くの腫瘍タイプに発現され、その発現は、免疫系機能の低下および臨床予後の悪化と相関することが理解されている。腫瘍微小環境内での、腫瘍細胞、マクロファージまたはリンパ球上のいずれかでのPD−L1発現は、免疫系の検出および破壊を回避する手段であるという仮説が立てられている。さらに、腫瘍細胞上のPD−L1発現は、隣接する活性化T細胞からのインターフェロン−γ放出を置き換えるものであり、それ故に、免疫療法剤、特に、PD−1/PD−L1軸を標的とする薬物にとり良い予後の前兆である。
腫瘍生検内のPD−L1状態の前向き評価を行う。PD−L1発現が予後因子および予測因子の両方であり得ることを示唆する証拠がある。従って、潜在的な予後バイアスを減少させ、また、ニボルマブへの応答に対するPD−L1の予測効果を評価する能力を高めるための、階層化因子の1つはPD−L1発現である。
対象における腫瘍のPD−L1状態は、任意の組成物を投与する前に、または本明細書に記載の任意の方法を利用して、測定することができる。PD−L1発現は、当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。
PD−L1発現を評価するために、一態様において、試験組織サンプルを治療を必要とする患者から得ることができる。別の態様において、PD−L1発現の評価は、試験組織サンプルを得ることなく達成することができる。ある態様において、好適な患者を選択することは、(i)要すれば、腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤炎症細胞を含む、組織の癌を有する患者から得られた試験組織サンプルを提供すること;および(ii)細胞の表面上でPD−L1を発現する試験組織サンプル中の細胞の割合を、細胞の表面上でPD−L1を発現する試験組織サンプル中の細胞の割合が所定の閾値レベルよりも高いという評価に基づき、評価すること、を含む。
しかしながら、試験組織サンプル中のPD−L1発現の測定を含む方法のいずれにおいても、患者から得られた試験組織サンプルの提供を含む工程は、任意の工程であると理解されるべきである。特定の態様において、細胞表面上のPD−L1を発現する試験組織サンプル中の細胞を、同定するか、またはその数もしくは割合を決定するための“測定”または“評価”工程は、例えば逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイまたはIHCアッセイを実施することにより、PD−L1発現をアッセイする形質転換方法によって行われることも理解されるべきである。特定の他の態様において、形質転換工程は行わず、PD−L1発現は、例えば、研究室からの試験結果の報告を検討することにより評価される。特定の態様において、PD−L1発現を評価するまでの、およびそれを含む方法の工程は、抗PD−1抗体療法または抗PD−L1抗体療法の適当な候補を選択する際に用いるために医師または他の医療提供者に提供され得る中間結果を提供する。特定の態様において、中間結果を提供する工程は、医師または医師の指示で行動する用員によって実行される。他の態様において、これらの工程は、独立した研究室によって、または研究技術員のような独立した用員によって行われる。
本発明の方法のいずれかの特定の態様において、PD−L1 RNAの存在を決定するためのアッセイを行うことにより、PD−L1を発現する細胞の割合を評価する。さらなる態様において、PD−L1 RNAの存在を、RT−PCR、インサイチュウハイブリダイゼーションまたはRNase保護法によって決定する。他の態様において、PD−L1を発現する細胞の割合を、PD−L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイを行うことにより評価する。さらなる態様において、PD−Lポリペプチドの存在を、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、インビボイメージングまたはフローサイトメトリーによって決定する。ある態様において、PD−L1発現をIHCによりアッセイする。これらの方法の全ての他の態様において、PD−L1の細胞表面発現は、例えば、IHCまたはインビボイメージングを用いてアッセイされる。
イメージング技術は、癌研究および処置における重要なツールを提供してきた。陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放出断層撮影(SPECT)、蛍光反射イメージング(FRI)、蛍光媒介トモグラフィー(FMT)、生物発光イメージング(BLI)、レーザー走査共焦点顕微鏡(LSCM)および多光子顕微鏡(MPM)を含む分子イメージングシステムの最近の発展は、癌研究におけるこれらの技術のさらに多くの活用を予示し得る。これらの分子イメージングシステムのいくつかは、臨床医が、腫瘍が体内のどこに位置しているかを見るだけでなく、特定の分子、細胞ならびに腫瘍動態および/または治療薬に対する応答性に影響を及ぼす生物学的プロセスの発現および活性を視覚化するのを可能にする(Condeelis and Weissleder, “In vivo imaging in cancer”, Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 2(12):a003848 (2010))。抗体特異性は、PETの感度および分解能と相まって、免疫PETイメージングを、組織サンプル中の抗原の発現をモニタリングし、アッセイするのに特に有用にする(McCabe and Wu, “Positive progress in immunoPET−not just a coincidence”, Cancer Biother. Radiopharm. 25(3):253−61 (2010); Olafsen et al., “ImmunoPET imaging of B−cell lymphoma using 124I−抗CD20 scFv dimers (diabodies)”, Protein Eng. Des. Sel. 23(4):243−9 (2010))。本発明の方法のいずれかの特定の態様において、PD−L1発現は、免疫PETイメージングによってアッセイされる。本発明の方法の特定の態様において、試験組織サンプル中のPD−L1を発現する細胞の割合は、試験組織サンプル中の細胞表面上のPD−L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイを行うことにより評価される。特定の態様において、試験組織サンプルは、FFPE組織サンプルである。他の態様において、PD−L1ポリペプチドの存在は、IHCアッセイにより決定される。さらなる態様において、IHCアッセイは、自動化プロセスを用いて実施される。ある態様において、IHCアッセイは、PD−L1ポリペプチドに結合する抗PD−L1モノクローナル抗体を用いて実施される。
本発明の方法の一態様において、自動化IHC法を用いて、FFPE組織標本中の細胞の表面上のPD−L1の発現をアッセイする。本発明は、試験組織サンプル中のヒトPD−L1抗原の存在を検出するか、または該サンプル中のヒトPD−L1抗原のレベルもしくは抗原を発現する細胞の割合を定量する方法を提供し、該方法は、試験サンプル、および陰性対照サンプルを、抗体またはその一部分とヒトPD−L1との複合体の形成を可能にする条件下で、ヒトPD−L1に特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させることを含む。特定の態様において、試験サンプルおよび対照組織サンプルは、FFPEサンプルである。その後、試験サンプルと陰性対照サンプルとの間の複合体形成における差異がサンプル中のヒトPD−L1抗原の存在を示す、複合体の形成が検出される。種々の方法を用いて、PD−L1発現を定量する。
特定の態様において、自動化IHC法は以下の工程を含む:(a)オートステイナーにマウントされた組織切片を脱パラフィン化および再水和すること;(b)抗原賦活化装置(decloaking chamber)およびpH6のバッファーを用いて、110℃まで10分間加熱して、抗原を回収すること;(c)自動ステイナー上に試薬をセットすること;および、(d)組織試料中の内因性のペルオキシダーゼを中和し;スライド上の非特異的タンパク質結合部位をブロッキングし;スライドを一次抗体と共にインキュベートし;ポスト一次ブロッキング剤と共にインキュベートし;NovoLink Polymerと共にインキュベートし;色素原基質を添加して発色させ;そして、ヘマトキシリンによる対比染色を行う工程を含むようにオートステイナーを作動させること。
腫瘍組織サンプル中のPD−L1発現を評価するために、病理担当者が、顕微鏡下で各フィールド内の膜PD−L1腫瘍細胞数を調べ、陽性である細胞の割合を推定し、その後、それらを平均して最終的な割合を導き出す。異なる染色強度は、0/陰性、l+/弱染色、2+/中等度染色、および3+/強染色と定義される。一般的に、割合の値は、最初に0および3+バケットに割り当てられ、次に中間の1+および2+の強度が考慮される。高度に異種の組織の場合、試料はゾーンに分けられ、各ゾーンは別々に採点され、そして単一セットのパーセンテージ値にまとめられる。異なる染色強度に対する陰性細胞および陽性細胞の割合は、各領域から決定され、中央値が各ゾーンに与えられる。最終的なパーセンテージ値が、組織に、各染色強度カテゴリー:陰性、1+、2+、および3+について与えられる。すべての染色強度の合計は100%である必要がある。一態様において、PD−L1陽性である必要がある細胞の閾値数は、少なくとも約100個、少なくとも約125個、少なくとも約150個、少なくとも約175個、または少なくとも約200個の細胞である。特定の態様において、PD−L1陽性である必要がある細胞の閾値数は、少なくとも約100個の細胞である。
染色はまた、マクロファージおよびリンパ球などの腫瘍浸潤性炎症細胞においても評価される。大部分の場合、多くのマクロファージにおいて染色が観察されるため、マクロファージは内部陽性対照として用いられる。3+強染色で染色される必要はないが、技術的な失敗を除外するために、マクロファージの染色の欠如が考慮されるべきである。マクロファージおよびリンパ球は細胞膜染色について評価され、各細胞カテゴリーについて陽性または陰性であるとしてすべてのサンプルについてのみ記録される。染色はまた、外/内腫瘍免疫細胞指向に従って特徴付けられる。“内部”とは、免疫細胞が、腫瘍細胞間に物理的にインターカレートされることなく、腫瘍組織内および/または腫瘍領域の境界上にあることを意味する。“外部”とは、腫瘍と物理的な関連がなく、結合組織または関連する隣接組織に関連する末梢組織に見いだされる免疫細胞を意味する。
これらのスコアリング方法の特定の態様において、サンプルは、独立して作業する2人の病理担当者によってスコアリングされ、その後スコアを統合される。特定の他の態様において、陽性および陰性細胞の同定は、適当なソフトウェアを用いてスコアリングされる。
IHCデータのより定量的な尺度としてヒストスコア(histoscore)が用いられる。ヒストスコアは、以下のように計算される:
ヒストスコア=[(%腫瘍×1(低強度))+(%腫瘍×2(中等度強度))+(%腫瘍×3(高強度)]。
ヒストスコアを決定するために、病理学者は、検体内の各強度カテゴリーにおける染色細胞の割合を概算する。ほとんどのバイオマーカーの発現が不均一であるため、ヒストスコアは、全体的な発現のより真正な表示である。最終的なヒストスコア範囲は、0(発現なし)から300(最大発現)である。
試験組織サンプルIHCにおけるPD−L1発現を定量化するための別の手段は、腫瘍浸潤性炎症細胞によるPD−L1発現の百分率に炎症の密度を乗じたものとして定義される調節された炎症スコア(AIS)を決定することである(Taube et al., “Colocalization of inflammatory response with B7−h1 expression in human melanocytic lesions supports an adaptive resistance mechanism of immune escape,” Sci. Transl. Med. 4(127):127ra37 (2012))。
一態様において、腫瘍のPD−L1発現レベルは、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。別の態様において、腫瘍のPD−L1状態(status)は、少なくとも約1%である。他の態様において、対象のPD−L1状態は、少なくとも約5%である。特定の態様において、腫瘍のPD−L1状態は、少なくとも約10%である。一態様において、腫瘍のPD−L1状態は、少なくとも約25%である。特定の態様において、腫瘍のPD−L1状態は、少なくとも約50%である。
ある態様において、本発明は、MSI−高(MSI−H)腫瘍、MSI安定腫瘍、またはMSI低(MSI−L)腫瘍、例えば、結腸直腸癌を処置する方法を含み、該方法は、PD−L1を発現する腫瘍またはPD−L1陽性腫瘍を有する対象への抗PD−1抗体および抗CD27抗体の併用療法を投与することを含む。特定の態様において、本発明は、腫瘍、例えば結腸直腸癌を処置する方法であって、(i)MSI−高(MSI−H)腫瘍、MSI安定腫瘍、またはMSI低(LSI−L)腫瘍を有する対象を同定すること;(ii)腫瘍がPD−L1を発現するかどうかを評価すること;および、(iii)有効量の抗PD−1抗体および有効量の抗CD27抗体を該対象に投与すること、を含む方法に関する。特定の態様において、対象は、1%以上のPD−L1発現、5%以上のPD−L1発現、10%以上のPD−L1発現、25%以上のPD−L1発現、または50%以上のPD−L1発現を有する腫瘍を有する。
別の態様において、本発明は、腫瘍、例えば結腸直腸癌を処置する方法であって、(i)MSI−高(MSI−H)腫瘍、MSI安定腫瘍、またはMSI低(LSI−L)腫瘍を有する対象を同定すること;(ii)腫瘍がPD−L1陽性であるかどうかを評価すること;および(iii)有効量の抗PD−1抗体および有効量の抗CD27抗体を該対象に投与すること、を含む方法を提供する。
本明細書で用いる“PD−L1陽性”は、“少なくとも約1%のPD−L1発現”と互換的に用いられ得る。従って、一態様において、PD−L1陽性腫瘍は、自動化IHCによって測定して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%のPD−L1を発現する腫瘍細胞を有し得る。ある態様において、“PD−L1陽性”は、細胞の表面上にPD−L1を発現する少なくとも100個の細胞が存在することを意味する。
PD−L1陽性および陰性腫瘍の包含
CA209012における対象の保存標本に基づく分析は、PD−L1+腫瘍(IHCが5%より大きいか、または5%)およびPD−L1腫瘍の両方を有する対象が、ニボルマブによる処置で利益を得うることを示している。ニボルマブ単剤療法を受けたPD−L1+腫瘍を有する対象(n=26)の全奏効率(ORR)は、31%であったが、PD−L1−腫瘍を有する対象(n=20)の奏効率は15%であった。しかしながら、疾患コントロール率(DCR、CR+PR+SD)は、PD−L1+腫瘍を有する対象では54%であり、PD−L1−腫瘍を有する対象では50%であった。ニボルマブ+イピリムマブの組合せを受容した全ての対象の集めたデータは、PD−L1+腫瘍を有する対象(n=30)の23%で、およびPD−L1−腫瘍を有する対象(n=37)の11%でORRを示した。また、2つの群間のDCRにおける差異は少なかった:PD−L1+腫瘍を有する対象の53%およびPD−L1−腫瘍を有する対象の51%。ニボルマブ単剤療法を受けている対象では、24週間のPFS率は40%であり、それぞれPD−L1+腫瘍およびPD−L1−腫瘍を有する患者では45%であった;PD−L1+腫瘍を有する対象ではOS中央値は19.1か月であり、PD−L1−腫瘍を有する対象では達しなかった。ニボルマブ+イピリムマブを受けている対象では、PFS中央値は、PD−L1+腫瘍およびPD−L1−腫瘍を有する対象においてそれぞれ、21.7週および12.4週であった;OS中央値は、PD−L1+腫瘍を有する対象において21.5か月であって、PD−L1−腫瘍を有する対象において19.4か月であった。
従って、PD−L1+およびPD−L1−腫瘍を有する対象は、CA209227に参加する資格がある。
EGFR変異またはALK転座を有する対象の除外
EGFR変異およびALK転座を有する対象の第1選択標準療法は、化学療法ではなく標的療法であるので、これらの異常を有することが知られている対象はこの治験から除外される。
さらに、EGFR変異を有する患者は、EGFR阻害剤療法の非存在下でさえ、より良好な予後を有し(Eberhard, DA, et al. J Clin Onc. 2005;2: 5900−5909)、EGFR変異を有さない患者と比較して、化学療法剤に対して改善された応答を有し得る(Mok TS, et al. N Engl J Med 2009;361−947−57)。化学療法で処置されるALK転座を有する患者は、化学療法で処置されるALK転座を伴わない患者と同様のPFSを有することが明らかである(Shaw AT, et al. Annals of Oncology 2013;24: 59−66)。これらの異常を有する対象を場外することは、これらの異常が治験のエンドポイントに対する可能性のある交絡因を減らすのに役立つ。
比較群における全生存率
白金併用化学療法の以前の第3相無作為化治験は、9−11か月のOS中央値を証明している。非扁平NSCLC患者におけるベバシズマブまたはペメトレキセドを用いた維持療法での最近の無作為化治験では、OS中央値が〜13.9か月にさらに改善した。この治験は、組織学に関わらずNSCLC患者を登録するため、約80%の対象が非扁平上皮癌を有し、これらの対象の約半数が継続維持療法を受けると予想される。
また、ニボルマブは、白金ベースの化学療法中またはその後に進行した転移扁平上皮NSCLC患者の第2選択療法として米国で承認されている。それは、この治験の実施中に他国で承認され得る。進行後にニボルマブ療法を受ける対象の数は、各国で承認が得られるかどうか、またいつ承認されるかによって異なる。白金併用化学療法群に無作為化された対象の約30%は、進行後の第2選択療法として免疫療法(例えば、ニボルマブ)を受けることが予期され、この群におけるOS中央値をさらに改善し得ると推定される。これらの理由から、OS中央値は、比較群(D群)について13か月と推定される。
オープンラベルデザイン
この治験は、オープンラベルデザインを用いる。化学療法および免疫療法に関連する毒性の違い、組織依存的化学療法の選択肢、処置群における治療スケジュールおよび継続期間の違い、群当りの異なる投薬延期ルールを含む安全管理のための異なる用量改変ルール、および化学療法に基づく前投薬の必要性の差異を明らかにするために、オープンラベルデザインが適切である。オープンラベルデザインはまた、免疫療法を受けている対象の免疫関連毒性を迅速に特定し、管理するのにも役立つ。
この治験はオープンラベルであるため、全ての無作為化対象の腫瘍画像を検討して、全ての応答関連エンドポイントを決定するために、盲検下独立中央評価(BICR)を用い得る。
進行疾患の選択症例における継続治療
臨床的な証拠が蓄積すると、免疫系刺激剤で処置された数名の対象は、臨床的腫瘍縮小効果(clinical objective responses)および/または安定疾患を実証する前に、疾患の進行(従来の応答基準により)が起こり得ることが示される。この現象は、ニボルマブの第1相治験およびイピリムマブ単剤療法でも、対象の約10%で観察された(Wolchok JD, et al. Clin Cancer Res. 2009;15:7412−20)。理論はともかく、この現象を説明するために2つの仮説が示されている。第1に、腫瘍内の増強された炎症が、拡大した高度異型病変として、および新たに可視化した小さな低異型度病変として現れ得る、腫瘍サイズの増加に繋がり得る。その後、時間が経つにつれて、塊の悪性部分および炎症部分の両方が減少し、臨床的改善の顕著な徴候に至ることがある。あるいは、数名の個体において、腫瘍増殖の動態は、抗腫瘍免疫活性を上回り得る。十分な時間を置いて、抗腫瘍活性が優勢になり、臨床的に明らかになる。従って、A群、B群およびC群について、対象は、臨床的利益を導き、治験薬に許容性であると評価された場合に、最初の治験担当者が評価したRECIST 1.1定義の進行後に治験を継続することが許可され得る。そのような対象は、さらなる進行の証拠に基づいて治験を中止しなければならない。
RECIST 1.1 ガイドライン
病変の評価
ベースライン時、腫瘍病変/リンパ節は、以下のように測定可能または測定不可能に分類される:
測定可能な腫瘍病変:以下の最小寸法の少なくとも1つの寸法(測定平面の最も長い直径が記録される)で正確に測定されなければならない:
1.CTスキャンで10mm(CTスキャンスライス厚は、5mm以下)
2.臨床治験による10mmキャリパー測定(キャリパーで正確に測定できない病変は、測定不能として記録される必要がある)
3.胸部x線による20mm。
測定可能な悪性リンパ節:病理学的に拡大して測定可能であると見なされるために、CTスキャンによって評価されるとき、リンパ節は短軸で15mm以上でなければならない(CTスキャンスライス厚は、5mm以下とすることが推奨される)。
測定可能なリンパ節は、腫瘍に関与していなくても造影によって視認可能な正常な解剖学的構造であるため、特筆に値する。測定可能と定義され、標的病変として同定され得る病理学的リンパ節は、CTスキャンによって15mm以上の短軸の基準を満たさなければならない。これらの節の短軸のみがベースライン合計に寄与し得る。このリンパ節の短軸は、リンパ節が固形腫瘍に関与しているかどうかを判断するために放射線医によって通常使用される直径である。リンパ節の大きさは、通常、画像が得られる平面内で2次元として報告される(CTスキャンの場合、これはほぼ常に軸平面である;MRIの場合、取得面は、軸方向、矢状断面または冠状面であり得る)。これらの測定値のうち小さい方が短軸である。例えば、20mm x 30mmと報告されている腹部リンパ節は、20mmの短軸を有し、悪性の測定可能な節として認められる。この例では、節測定値として20mmを記録すべきである。他の全ての病理学的リンパ節(短軸が10mm以上15mm未満のもの)は、非標的病変とみなされるべきである。短軸が10mm未満の節は、病理学的でないとみなされ、記録または追跡すべきではない。
小さな病変(10mm未満の長さの直径または病理学的リンパ節の短軸が10mm以上15mm未満)ならびに真に測定不可な病変を含む、全ての他の病変は、測定不能とみなされる。真に測定不可能とみなされる病変には、軟髄膜疾患、腹水、胸水または心嚢液の滲出、炎症性乳房疾患、皮膚または肺のリンパ管の関与、再現性のあるイメージング技術によって測定できない、診察によって同定された腹部腫瘤/腹部臓器肥大症などが挙げられる。
2以上の測定可能な病変がベースラインに存在するとき、全ての関与する臓器を代表する最大5つの病変(および、臓器あたり最大2つの病変)の全ての病変が、標的病変として同定され、記録され、ベースラインとして測定される(これは、患者が1つまたは2つのみの臓器部位を有する場合、それぞれ最大2つおよび4つの病変が記録されることを意味する)。
標的病変は、それらのサイズ(最も長い直径を有する病変)に基づいて選択されるべきであり、全ての関与する臓器を代表するものであるべきであるが、加えて、再現性のある繰り返し測定に適するものでなければならない。場合によっては、最大の病変が再現性のある測定に適していない場合があり、この状況で再現性よく測定できる次に大きな病変を選択すべきである場合がある。
全ての標的病変についての直径の合計(非リンパ節病変で最も長く、リンパ節病変では短軸である)が計算され、ベースライン総直径として報告される。リンパ節を合計に含める場合、上記のように、短軸のみが合計に加算される。ベースライン総直径は、疾患の測定可能な寸法における任意の客観的な腫瘍退縮をさらに特徴付けるための基準として用いられる。
病理学的リンパ節を含むすべての他の病変(または疾患部位)は、非標的病変として同定されるべきであり、ベースラインでも記録されるべきである。測定は必要ではなく、これらの病変は、‘存在’、‘不存在’、またはまれに‘明らかな増悪(unequivocal progression)’として追跡されるべきである(以下により詳述)。さらに、単一の項目として同じ臓器を含む複数の非標的病変を症例記録形態(例えば、‘複数の拡大骨盤リンパ節’または‘複数の肝転移’)に記録することが可能である。
標的病変の評価
完全奏効(CR):すべての標的病変の消失。任意の病理学的リンパ節(標的であろうと非標的であろうと)は、短軸が10mm未満と短くなければならない。
部分奏効(PR):標的病変部の直径の合計が、ベースライン総直径を基準として、少なくとも30%減少。
進行(PD):標的病変部の直径の合計が、治験の最小合計を基準として、少なくとも20%増加(これは、治験において最も小さい場合はベースライン合計を含む)。20%の相対的な増加に加えて、合計はまた、少なくとも5mmの絶対的増加を示さなければならない(注:1または複数の新しい病変の出現もまた、進行と見なされる)。
安定(SD):治験中の最小総直径を基準として、PRに適格であるのに十分な収縮も、PDに適格であるのに十分な増加もない。
リンパ節
標的病変として同定されたリンパ節は、治験中に10mm未満に至る場合であっても、実際の短軸測定値を常に記録すべきである(ベースライン検査と同じ解剖学的平面で測定される)。このことは、正常なリンパ節が10mm未満の短軸を有すると定義されているため、リンパ節が標的病変として含まれるとき、完全奏効基準が満たされても、病変の‘合計’はゼロでないことがあることを意味する。従って、症例報告書または他のデータ収集方法は、CRに適格にするために、各リンパ節が10mm未満の短軸を達成しなければならないとき、別のセクションに記録される標的リンパ節病変を有するように設計され得る。PR、SDおよびPDについて、リンパ節の実際の短軸測定は、標的病変の合計に含まれるべきである。
‘測定するには小さすぎる’標的病変
治験中、ベースラインで記録された全ての病変(リンパ節および非リンパ節)は、たとえ極小さいとき(例えば、2mm)でも、その後の各評価で記録される実際の測定値を有すべきである。しかしながら、ベースライン時に標的病変として記録される病変またはリンパ節が、CTスキャンでとても小さくなり、放射線科医が正確な測定値を決定するのが適当でない場合があり、‘測定するには小さすぎる’と報告することがある。この場合、症例報告書に値を記録することが重要である。病変が消滅している可能性があると放射線科医が判断した場合、測定値は、0mmと記録する必要がある。病変が存在していると考えられ、わずかに見えるが測定するには小さすぎる場合は、5mmのデフォルト値が与えられるべきである(注:リンパ節は、通常、正常なとき定義可能なサイズであり、後腹膜のように脂肪で囲まれることが多いため、それらにはこのルールが用いられる可能性は低い;しかしながら、リンパ節が存在すると考えられ、わずかに見えるが測定するには小さすぎる場合、この状況では5mmのデフォルト値を与える必要がある)。このデフォルト値は、5mm CTスライス厚から導き出される(ただし、CTスライス厚を変えて変更すべきではない)。これらの病変の測定は、再現できない可能性があり、それ故に、このデフォルト値を提供することは、測定誤差に基づく誤った応答または進行を防止する。しかしながら、繰り返すが、放射線科医が実際の測定値を提供できる場合は、5mm未満であっても記録する必要がある。
処置で断片化(split)または融合する病変
リンパ節外性病変‘断片’のとき、標的病変の合計を計算するために、断片化された部分の最長の直径を合計する必要がある。同様に、病変が融合すると、各個々の病変の最大直径測定値を得るのを助けるように、それらの間の平面が維持され得る。病変がもはや分離できなくなるように真に融合した場合、この例における最も長い直径のベクトルは、‘融合病変’の最長直径であるべきである。
非標的病変の評価
このセクションは、非標的病変群の腫瘍応答を決定するために用いられる基準の定義を提供する。いくつかの非標的病変は実際に測定可能であり得るが、それらを測定する必要はなく、代わりに、プロトコールに記載された時点でのみ定性的に評価されるべきである。
完全奏効(CR):すべての標的病変の消失および腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節は、非病理学的サイズ(短軸が10mm未満)でなければならない。
非CR/非PD:1以上の非標的病変の持続および/または正常な限度を超える腫瘍マーカーレベルの維持。
進行(PD): 既存の非標的病変の明らかな増悪(以下のコメントを参照)(注:1または複数の新しい病変の出現もまた、進行と見なされる)。
非標的疾患の進行の評価
非標的疾患の進行の概念は、以下のようなさらなる説明を必要とする:
患者が測定可能な疾患も有するとき、非標的疾患に基づいて‘明らかな増悪’とするためには、非標的疾患において全体的なレベルの実質的な悪化がなければならず、その結果、標的疾患におけるSDまたはPRの存在は、全体的な腫瘍量(overall tumour burden)の増加として治療を中止するのに十分値する(添付物2の例および以下の詳細を参照のこと)。1以上の非標的病変のサイズが若干‘増大’しても、通常は、明らかな増悪と判定するのに十分ではない。したがって、標的疾患の結果がSDまたはPRのときに、非標的疾患の変化のみに基づいて全体の結果を憎悪と判定することは、きわめて稀である。
患者が測定不能病変のみを有するとき、測定可能病変を有することが適格条件(criterion of study entry)ではないときに、いくつかの治験においてこのような状況が生じる。上記と同じ一般的概念が適用されるが、この場合、測定可能病変の評価を、測定不能病変の腫瘍量増大の解釈に加えることができない。(すべての病変が真に測定不能であれば定義上自明のこととして)非標的病変の増悪の定量的評価は容易ではないため、患者を‘明らかな増悪’と評価するとき適用され得る有用な方法として、測定不能病変の変化に基づく全体の腫瘍量の増加の程度が、測定可能病変のPDを判定する際に必要とされる増加量に匹敵するかどうかを判断するという方法があり得る。すなわち、腫瘍量の増加が‘体積’として73%の増加に相当するかどうかを判断する(これは、測定可能病変では直径の20%増加と同等である)。例としては、胸水量の‘微量’から‘大量’への増加、限局していたリンパ管症の広範な拡大などがあり、また、プロトコールに‘治療の変更を要するに十分な増悪’と記載しておくことも挙げられる。‘明らかな増悪’が認められた場合、患者は、その時点で総合的なPDとみなされるべきである。測定不能病変に適用する客観的な規準を定めることが理想ではあるが、病変の性質上それは不可能であり、それ故に、その増大とは‘顕著な(substantial)ものでなければならない’。
新しい病変
新しい悪性病変の出現は、疾患の増悪を示すため、新しい病変の検出に関して言及しておくことは重要である。放射線画像での新しい病変の同定に関する特別な定義はないが、新しい病変の所見は、明らかな(unequivocal)ものでなければならない:すなわち、スキャン技術の相違、画像診断法における変化や、腫瘍以外の何かを示すと考えられる所見の違いに起因しない(例えば、いくつかの‘新しい’骨病変は、既存の病変の治癒またはフレア現象に過ぎないものがあり得る)。このことは、患者のベースライン病変が部分奏効または完全奏効を示しているときに、特に重要である。例えば、肝病変の壊死が、実際には新病変ではないのにCTスキャンで‘新しい’嚢胞性病変として報告されることもあり得る。
ベースラインでは撮影されなかった解剖学的部位において、フォローアップ検査で同定された病変は、新しい病変とみなされ、進行(増悪)と判定される。このような例として、ベースラインでは内臓の病変が認められた患者において、治験中に脳のCTまたはMRIを実施し、転移が認められた場合がある。この患者の脳転移は、たとえベースラインでの脳画像がない場合でもPDの証拠とみなされる。
例えばサイズが小さいために、新病変が明確ではない場合、治療を継続してフォローアプ評価を行うことで、真に新しい病変であることが明らかになることがある。スキャンを反復した後に新病変と判定された場合、最初のスキャンの日付をもって増悪とすべきである。FDG−PET応答評価は、さらなる検証が必要であるが、増悪の評価(特に‘新’病変の可能性があるとき)においてCTスキャンを補完するためにFDG−PETスキャンを併用することが妥当とされる場合もある。FDG−PETイメージングに基づく新病変を、以下のアルゴリズムに従って同定することができる:
1.ベースラインでFDG−PETが陰性、かつフォローアップ時のFDG−PETが陽性となったとき、新病変に基づくPDとする。
2.ベースラインでFDG−PETを行わず、フォローアップ時のFDG−PETが陽性であるとき:フォローアップ時のFDG−PET陽性がCTで確認された新病変に対応するとき、これをPDとする。フォローアップ時のFDG−PET陽性が、CTで新病変と確認されない場合、当該部位で真の増悪か否かを判定するために、さらにフォローアップ後のCTスキャンが必要である(真に増悪だった場合、PD判定日は、FDG−PETスキャンが最初に陽性を示した日とする)。CTの形態画像上は増悪と判断されなかった既存の病変部で、FDG−PETが陽性であってもそれはPDとしない。
応答評価
最良総合効果(best overall response)とは、確定のための要件をすべて考慮にいれた上で、治験開始から治験終了までの間に記録された最良の腫瘍縮小効果である。患者の最良総合効果判定は、標的病変および非標的病変の両方の所見に基づくものであり、また新病変出現の有無も考慮される。さらに、治験の性質やプロトコールの規定によっては、効果の確認のための検査が必要となり得る。
各時点での応答
応答(効果)の判定は、各プロトコールで定められた時点ごとに行われることが想定されている。表4は、ベースラインで測定可能病変を有する患者について、各時点での総合的な応答状態の測定をまとめたものである。患者が、測定不能病変(すなわち非標的病変)のみを有するとき、表5を用いる。
完全奏効または部分奏効の最良総合効果の判定には、以下の確定を要する:
完全奏効または部分奏効は、4週間以上後または4週間後の次の評価時点においても、それぞれの規準が満たされた場合にのみ判定することができる。この状況において、最良総合的な応答は、表6のように決められる。
リンパ節病変が標的病変の径和に含められるが、そのリンパ節が‘正常’サイズ(10mm未満)まで縮小したとき、スキャン上の測定値が報告されることがある。リンパ節のサイズが増大した際に過大評価して増悪(進行)としないために、リンパ節が正常化した場合でもその測定値を記録すべきである。上記のとおり、これはCRを有する患者の場合にも症例報告書(CRF)に記載された径和が‘0’にはならない場合があることを意味する。
確定スキャン
効果の確認:CRまたはPRの状態を割り当てるため、応答の基準が最初に満たされてから28日以上経過して実行されるべき連続反復評価によって腫瘍測定値の変化を確認しなければならない。この治験のため、次に予定されている腫瘍評価はこの要件を満たし得る。
進行(憎悪)の確認:疾患の進行は、進行が不明確である場合に確認されるべきである。反復スキャンでPDが確認された場合は、最初のスキャンの日付を用いて進行を宣言する必要がある。反復スキャンがPDを確認しない場合、対象は進行していないとみなされる。
治験の目的
ある態様は、以前に処置を受けていないステージIVまたは再発NSCLCを有する対象における、ニボルマブ単剤療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法の全生存率(OS)の白金併用化学療法との比較に関する。
ある態様は、以前に処置を受けていないステージIVまたは再発NSCLCを有する対象における、ニボルマブ単剤療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法のBICR評価に基づく無憎悪生存期間(PFS)の白金併用化学療法との比較に関する。
ある態様は、以前に処置を受けていないステージIVまたは再発NSCLCを有する対象における、ニボルマブおよびニボルマブとイピリムマブの併用のBICR評価に基づく客観的奏効率(ORR)の白金併用化学療法との比較に関する。
ある態様は、実験群間のOSのペアワイズ比較に関する。
ある態様は、ステージIVまたは再発NSCLCを有する対象における、ニボルマブとイピリムマブの併用療法およびニボルマブ単剤療法の間のPFSおよびORRの差異に関する。
ある態様は、OSまたはPFSの予測バイオマーカーとしてのPD−L1発現に関する。
ある態様は、肺癌症状スコア(LCSS)を用いて測定した12週間までに疾患関連症状の改善を示す患者、例えば、ニボルマブ単剤療法、ニボルマブとイピリムマブの併用療法または白金併用化学療法を受けている対象を、処置する方法に関する。
ある態様は、白金併用化学療法と比較して、ニボルマブおよびニボルマブとイピリムマブの併用の安全性および耐容性に関する。
ある態様は、ニボルマブとイピリムマブの併用療法の薬物動態ならびに暴露安全性および暴露有効性の関係を対象とする。
ある態様は、ニボルマブとイピリムマブの併用療法の免疫原性に関する。
ある態様は、ニボルマブ、ニボルマブとイピリムマブの併用療法および白金併用化学療法の免疫学的関係に関する。
ある態様は、ニボルマブおよびニボルマブとイピリムマブの併用に対する臨床反応の予測腫瘍および末梢バイオマーカーに関する。
ある態様は、ニボルマブとイピリムマブの併用療法で処置された対象および白金併用化学療法で処置された対象における、EQ−5Dインデックスおよび視覚的アナログスケールを用いる全体的な健康状態の比較に関する。
ニボルマブの作用機序
癌免疫療法は、腫瘍が自己ではなく外来(非自己)として認識され、活性化された免疫系によって効果的に攻撃され得るという前提に基づいている。この状況における効果的な免疫応答は、最終的に適応免疫応答および癌細胞死をもたらす、癌細胞上に発現される腫瘍抗原の免疫監視機構に依拠すると考えられている。一方で、腫瘍の進行は、癌細胞が免疫監視機構を回避し、効果的な自然免疫応答および適応免疫応答を逃れることを可能にする形質の獲得よって変わり得る(Pardoll DM, Nature 2012;12:252−64;Zitvogel L, Tesniere A, Kroemer G. Nat Rev Immunol. 2006;6:715−27;および、Dunn GP, et al. Nat Immunol. 2002;3:991−8)。
外科的切除標本における腫瘍浸潤リンパ球と無再発生存率の間の相関を実証する遡及的分析(retrospective analyses)において、NSCLCにおける免疫監視機構の役割の支持が示唆されている(Horne ZD et al. J Surg Res. 2011;171:1−5;Al−Shibli KI et al. Clin Cancer Res. 2008;14:5220−7;および、Ruffini E et al. Ann Thorac Surg. 2009;87:365−72)。現在の免疫療法の努力は、治療用ワクチン接種による癌抗原の導入または免疫系の制御チェックポイントの調節のいずれかによって、腫瘍細胞および抗原に対する免疫系の明らかな抵抗性を壊すことを試みている。
T細胞刺激は、T細胞受容体(TCR)による抗原認識に加えて、多数の陽性ならびに陰性の共刺激シグナルの組み込みを伴う複雑なプロセスである(Greenwald RJ, Freeman GH, Sharpe AH. Annu Rev Immunol. 2004;23:515−48)。
まとめると、これらのシグナルは、T細胞活性化と抗原に対する抵抗性との間の均衡に影響を与える。PD−1は、CD28、CTLA−4、ICOSおよびBTLA.40も含む、T細胞共刺激受容体のCD28ファミリーのメンバーである。PD−1シグナル伝達は、CD28介在性の、IL−2、IL−10、IL−13、インターフェロン−γ(IFN−γ)およびBcl−xLの上方制御を阻害することが示されている。PD−1発現はまた、T細胞活性化、および以前に活性化された細胞の増殖を阻害することが記載されている。PD−1の負の調節役割の証拠は、様々な自己免疫表現型を発現するPD−1欠損マウスの研究から得られている。これらの結果は、抗自己T細胞応答を活性化する可能性を有していることを示唆しているが、これらの応答は変わりやすく、種々の宿主遺伝因子に依存する。従って、PD−1欠損または阻害は、自己抗原に対する抵抗性の不変的な喪失を伴わない
インビトロにおいて、ニボルマブは、高親和性(EC50 0.39−2.62nM)でPD−1に結合し、そのリガンドであるPD−L1およびPD−L2へのPD−1の結合を阻害する(IC50±1nM)。BMS−936558は、PD−1に特異的に結合するが、CD28、ICOS、CTLA−4およびBTLAなどのCD28ファミリーの関連メンバーには結合しない。ニボルマブによるPD−1経路の遮断は、結果として、混合リンパ球反応 (MLR)における増殖およびIFN−γ放出の両方の再現性のある増強をもたらす。ヒトPBMCを用いたCMV再刺激アッセイを用いて、抗原特異的再刺激反応(recall response)に対するニボルマブの効果は、ニボルマブが、アイソタイプ適合対照に対して、CMV特異的記憶T細胞からのIFN−γ分泌を用量依存的に増大させることを示している。ニボルマブのマウス類縁体によるPD−1のインビボでの遮断は、抗腫瘍免疫応答を増強させ、結果として、いくつかの免疫応答性マウス腫瘍モデル(MC38、SA1/NおよびPAN02)において腫瘍拒絶をもたらす(Topalian SL et al. N Eng J Med 2012;366: 2443−54)。
細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)およびイピリムマブ
活性化誘導性T細胞表面分子であるCTLA−4は、B7についてCD28と競合するCD28:B7免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA−4介在性シグナルは、阻害性であり、T細胞依存性免疫応答を停止させる(Alegre ML et al. J Immunol 1996;157:4762−70;Postow MA, Harding J, Wolchok JD. Caner J 2012;18:153−159)。
イピリムマブは、ヒトおよび非ヒト哺乳動物由来のT細胞サブセットで発現されるCTLA−4抗原に結合する、完全ヒトモノクローナルIgG1κである。イピリムマブについて提案された作用機序は、CTLA−4とAPC上のB7分子との相互作用の妨害、その後の、CTLA−4/B7相互作用によって促進されるT細胞活性化の阻害調節の遮断を伴う。
非小細胞肺癌(NSCLC)
肺癌は、2012年において、世界で180万人の新規症例および160万人の死亡を占める、癌および癌関連死の主な原因である(Ferlay J, et al. GLOBOCAN 2012 v1.0, Cancer Incidence and Mortality Worldwide: IARC CancerBase No. 11 [Internet]. Lyon, France: International Agency for Research on Cancer;2013)。2004年から2010年の間の、SEERデータベースによると、全体の5年生存率は21.4%であった(2013年11月の提出に基づいて、2014年4月に公開された、Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Program Research Data (1973−2011), National Cancer Institute, DCCPS, Surveillance Research Program, Surveillance Systems Branch)。対象の多くは、進行性または転移性の疾患と診断された。これらの患者の予後は絶望的であり、5年生存率は5%未満である。肺癌の約85%がNSCLCであり、これらのうち、約80%が非扁平上皮癌であり、20%が扁平上皮癌である。
6サイクルまで与えられた白金ベースの併用化学療法の使用は、EGFR変異またはALK転座を有していない、新たに診断された進行性または転移性NSCLC患者の標準療法である。現在の第1選択併用化学療法には、シスプラチンまたはカルボプラチンと、抗微小管剤、ゲムシタビンまたはペメトレキセドとの併用が含まれる。
これらの白金併用療法による全奏効率は、およそ25%である。無憎悪生存期間(PFS)は、約4から5.5か月のままであり、全生存期間(OS)は、約9から11か月であった(Belani CP et al. J Clin Oncol 2008;26: 468−73;Scagliotti GV et al. J Clin Oncol 2008;26: 3543−51)。
処置後の応答および結果は、組織学的サブタイプによって変化し得る。ペメトレキセド/シスプラチンの白金併用療法は、非扁平上皮NSCLCを有する対象において、ゲムシタビン/シスプラチンと比較して、PFSおよびOSを改善する;ゲムシタビン/シスプラチンは、扁平細胞組織を有する対象において、ペメトレキセド/シスプラチンと比較して、OSを改善する(Scagliotti GV, et al. 2008)。PARAMOUNT治験において、ペメトレキセドは、ペメトレキセド/シスプラチンによる誘導処置の完了後、進行しながった非扁平NSCLC患において維持療法として継続されたとき、PFSおよびOSを改善することが実証された(Paz−Ares LG et al. J Clin Oncol 2013)。しかしながら、長期的な生存には実質的な改善はなく、NSCLCは未だ満たされていない医療ニーズの永続的な領域になっている。
白金併用化学療法レジメンに関係する主な有害事象は、主として血液に関するものである。例えば、ゲムシタビン/シスプラチンでは、グレード3/4の好中球減少症の割合は27%であり、グレード3/4の貧血の割合は10%であり、グレード3/4の血小板減少症の割合は13%である。ペメトレキセド/シスプラチンでは、グレード3/4の好中球減少症の割合は15%であり、グレード3/4の貧血の割合は6%であり、グレード3/4の血小板減少症の割合は4%である(Scagliotti GV, et al. 2008)。
非血液学的有害事象は、特定の白金併用化学療法によって変わる。例えば、ゲムシタビン/シスプラチンに関連するものとしては、脱毛症(21%、全グレード)、嘔吐(6%、グレード3/4)、疲労(5%、グレード3/4)、および発熱性好中球減少症(4%、グレード3/4)が挙げられる。パクリタキセル/カルボプラチンに関連する非血液学的有害事象としては、ニューロパシー(18%、グレード2/3)、関節痛(6%、グレード3/4)、疲労(5%、グレード3/4)および発熱性好中球減少症(3%、グレード3/4)が挙げられる(Belani CP et al. J Clin Oncol 2008;26: 468−73)。組織学のほかに、個々のNSCLC患者のための白金併用療法の選択は、異なる併用療法に関連する毒性により変わり得る。
シスプラチン
シスプラチンは、NSCLCに用いられる白金系製剤である。シスプラチンは、75mg/mの用量で、ゲムシタビン後30〜120分かけて、またはペメトレキセド後120分かけて静脈内投与される。シスプラチンを受容している対象は、骨髄抑制に加えて、腎毒性、聴神経障害およびニューロパシーについてモニタリングされなければならない。悪心、嘔吐および脱水の場合は注意が必要である。
カルボプラチン
カルボプラチンは、NSCLCの処置のためにタキサン、ゲムシタビンまたはペメトレキセドと組み合わせて用いられる白金系製剤である。カルボプラチンは、AUC 6mg/mL*分(カルバート式より算出)の用量で、パクリタキセルまたはペメトレキセドの使用後15〜30分かけて静脈内投与される(Patel JD, et al. J Clin Oncol 2013;34: 4349−57)。カルボプラチンはまた、AUC 5mg/mL*分(カルバート式より算出)の用量でゲムシタビンと共に投与されてよい(Rosell R, et al. Lancet Oncol 2012;13:239−46)。カルボプラチンを受容している対象は、骨髄抑制およびアナフィラキシーのモニタリングが必要である。
ゲムシタビン
ゲムシタビンは、手術不能な、局所進行性(ステージIIIAまたはIIIB)または転移性(ステージIV)NSCLCの第1選択療法においてシスプラチンとの組合せで示される。3週間のスケジュールを用いて、ゲムシタビンを各21日サイクルの1日目および8日目に1,250mg/mの用量で30分間にわたって静脈内投与する。シスプラチンは、75mg/mの用量で、1日目のみに、ゲムシタビン後30分かけて投与すべきである。
ゲムシタビンはまた、進行したNSCLCの第1選択療法として、AUC 5mg/mL*分(カルバート式より算出)で、カルボプラチンと併用して、各21日サイクルの1日目および8日目に1000mg/mの用量で30分間にわたって投与されてよい。
ゲムシタビンおよびシスプラチンについて(個々に)、血液毒性の用量調整が必要とされ得る。ゲムシタビン投与量は、処置当日の顆粒球数および血小板数に基づく血液毒性に対して調整される。ゲムシタビンを受容している対象は、全血球計数(CBC)を用いて各投与前にモニタリングされるべきである。骨髄抑制が認められれば、用量の変更を行うことができる。脱毛および悪心以外の非血液毒性については、ゲムシタビンおよびシスプラチンの両方について用量変更を考慮する必要がある。
ペメトレキセド
ペメトレキセドは、シスプラチンと組み合わせた局所進行性または転移性非扁平上皮NSCLCの初期療法として示された葉酸類縁代謝阻害剤である。ペメトレキセドはまた、白金ベースの第1選択化学療法後に疾患が進行していない、局所進行性または転移性非扁平上皮NSCLC患者の維持療法としても示されている。ペメトレキセドは、各21日サイクルの1日目に500mg/mの用量で静脈内投与される。シスプラチンは、75mg/mの用量で、ペメトレキセド後に30分に亘って投与され得る。
ペメトレキセドの前投薬レジメンには、皮膚反応を減少させるための、葉酸およびビタミンB12ならびにデキサメサゾンまたは同等物が含まれる。ペメトレキセドを受容している対象は、CBCおよび腎機能検査を用いて、各投与前にモニタリングされるべきである。骨髄抑制が認められれば、用量の変更を行うことができる。腎毒性については、ペメトレキセドは、クレアチニンクリアランス(CrCl)が45mL/分未満のとき、保持されるべきである。非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)を受容している対象間、および軽度から中等度の腎不全(CrCl 45から79mL/分の間)を有する対象間で注意が必要である。腎毒性薬をペメトレキセドと共に投与するときも注意が必要である。
イピリムマブと組み合わせたニボルマブ
CA209012において、ニボルマブおよびイピリムマブの組合せは、いくつかの異なる用量およびスケジュールで、これまでに処置を受けていないステージIVまたは再発性NSCLCを有する対象の第1選択療法として試験されてきた。2015年3月17日現在、80名の患者が、元の5つのコホートにおいてこの組み合わせで処置されている。さらに111名の患者が、新たな3つのコホートにおいて処置されている。少なくとも1つのAEが、因果関係にかかわらず、元のコホートにおいて処置された対象の100%で報告され、新たなコホートにおいて、対象の80%で報告されている。元のコホートにおいて、最も一般的な(15%未満の発生率と報告されている)処置関連AE(任意のグレード%;グレード3−4 %:82;43)は、疲労(40;4)、下痢(30;6)、発疹(28;8)、食欲低下(19;0)、リパーゼ増加(15;8)、および悪心(15;1)である。新たなコホートにおいて、最も一般的な(10%未満の発生率と報告されている)処置関連AE(任意のグレード%;グレード3−4%:59;26)は、下痢(14;3)、発疹(14;4)、および疲労(12;1)である。
元のコホートにおいて、(因果関係にかかわらず)中止に至るAEの大部分は、グレード3または4(80名の対象のうち17名に報告された、21%)であった。グレード3の事象には、肺炎、ALT増加、AST増加、大腸炎、下痢、潰瘍性大腸炎、胃内容排出遅延、ラーフィッシャー症候群、アレルギー性腎炎および発疹が含まれた。1名の対象が、ALT増加のグレード4事象のために中止され、2名の対象が、AST増加のために中止された。1名の患者が肺出血により死亡した。
“1+1”コホートにおいて、最も一般的な(10%未満の発生率と報告されている)処置関連AE(任意のグレード%;グレード3−4%)は、疲労(29;0)、発疹(29;13)、下痢(19;0)、リパーゼ増加(13;7)、掻痒(16;0)であった。このコホート内の4名の患者のみ(13%)が、肺炎(1)、AST増加(1)、筋肉痛(1)および発疹(1)の、治験処置の中止に至るAEを報告した。処置関連死はなかった。
このコホートからの有効性データは、相当レベルの臨床活性を示す。50週のフォローアップ(追跡期間)中央値では、全生存期間中央値に達していなかった。PFS中央値は、白金系化学療法剤の約4.5か月と比較して、34週(8.5か月)である。これは、白金系化学療法剤で観察された25−30%と比較して、全奏効率が16%と低いにもかかわらずである。活性は、PD−L1+およびPD−L1−腫瘍の両方で観察される。
新たなコホートにおいて、最も一般的な(10%未満の発生率と報告されている)処置関連AE(任意のグレード%;グレード3−4%)は、下痢(14;3)、発疹(14;4)、および疲労(12;1)である。8名の患者(7%)が、治験処置の中止に至るAEを報告した:自己免疫性肝炎(2名)および大腸炎、脳症、顔面神経障害、注射に伴う反応(infusion related reaction)、肺炎、発疹およびトランスアミナーゼ増加が各1名。処置関連死はなかった。
ニボルマブ 3mg/kg 2週間毎は、以前に処置されたNSCLCを有する対象において最も有効なニボルマブ用量であるようであり(Brahmer JR, et al. 非小細胞肺癌(NSCLC)患者における、ニボルマブ(抗PD−1;BMS−936558;ONO−4538):第1相治験における全生存率および長期間の安全性。肺癌についての2013年の世界会議で発表)、およびそれは、ステージIVまたは再発性PD−L1+ NSCLCの第1選択療法として治験医に選択された化学療法と比較して、ニボルマブ単剤療法のオープンラベル試験であるCA209026で評価される用量である。従って、CA209227について、2回目のニボルマブ/イピリムマブ投薬スケジュールでは、この用量のニボルマブと、イピリムマブ 1mg/kg、6週間毎を組み合わせて用い得る。より少ない頻度でイピリムマブを投与することにより併用の安全性を高めることができ、4回の誘導用量のみではなく、処置過程中の連続投与によって効果を増強することが想定される。
全体的なリスク/ベネフィット評価
新たに診断された転移性または再発性NSCLCを有する対象は、まだ対処されていない大きな要求を示す。NSCLCにおけるニボルマブおよびニボルマブ+イピリムマブは、改善された臨床結果の可能性を有している。予備データは、PD−L1陰性腫瘍ならびにPD−L1陽性腫瘍が、ニボルマブまたはニボルマブ+イピリムマブの組合せに対して応答し得ることを示唆している。標準療法である白金ベースの第1選択化学療法に対する、ニボルマブまたはニボルマブ+イピリムマブの併用療法の利点は、CA209227で試験されている。白金ベースの化学療法レジメンは、同様の臨床活性、ならびに骨髄抑制および末梢神経障害、悪心/嘔吐および腎障害などの他のレジメン特有の非血液毒性により特徴付けられる、十分に記載された安全性プロファイルを有する。ニボルマブおよびニボルマブ+イピリムマブの安全性プロファイルは、下痢、発疹、肺炎、肝臓毒性および内分泌障害などの免疫関連毒性によって特徴付けられる。組合せにおけるこれらの事象の頻度および強度は、可変であり、使用される特定の用量およびスケジュールに依存する。選択された2つの投薬スケジュールでは、これらの事象は、主に低グレードであり、コルチコステロイドの使用により管理可能であった。
標準療法である白金ベースの第1選択化学療法と比較して、PD−L1陽性および陰性の進行性NSCLC患者の処置におけるニボルマブ単剤療法およびニボルマブ+イピリムマブの潜在的利益を評価するため、および処置レジメンに対するイピリムマブの貢献を評価するために、ステージIVまたは再発性PD−L1陽性および陰性NSCLCを有する対象において、白金併用化学療法とニボルマブおよびニボルマブ+イピリムマブとを比較する無作為化治験を、本明細書に記載の通りに行う。
治験デザインおよび期間
治験デザインの概略を図1に示す。
スクリーニング段階は、対象の最初の適格性およびインフォームドコンセント書類(ICF)への署名を持って開始する。対象は、対話型音声応答システム(IVRS)を用いて登録される。PD−L1状態の決定のために、腫瘍組織(保存または最近の腫瘍生検)を提出する。対象は、治験適格性について評価される。全てのスクリーニング評価および手順は、無作為化の28日前までに行わなければならない。
処置段階は、無作為化が粉われる時に開始する。対象は、4つの処置群のうち1つに無作為に割り当てられる。治験処置は、無作為化から3営業日以内に開始する必要がある。
登録の開始からプライマリOSエンドポイントの解析までの治験期間は約48か月であると予想される。生存分析が完了すると、治験は終了する。
治験の終了時に、臨床的利益を証明し続けている対象は、責任ある保健当局による治験薬の承認後12か月までの間、または治験薬が国内で市販されるようになるまでのいずれか早い方で、治験薬(ニボルマブおよび/またはイピリムマブ)を受容する資格がある。治験薬(ニボルマブおよび/またはイピリムマブ)は、治験の延長、責任ある保健当局および倫理委員会による承認を必要とするロールオーバー試験、または別の機序を介して提供される。
標的集団
標的集団選択基準は以下を含む:
a)ECOGパフォーマンスステータス(Performance Status:PS)が1以下(表7参照);
b)組織学的に確認されたステージIVまたは再発性NSCLC(第7回 肺癌分類学研究会(IASLC)の国際学会)扁平上皮または非扁平上皮組織を有し、進行性または転移性疾患の一次療法で事前の全身抗癌療法(EGFRおよびALK阻害剤を含む)を受けていない、対象。事前のアジュバントまたはネオアジュバント化学療法は、予備的レジメンの最後の投与が登録前少なくとも6か月で行われる限り許可される。局所進行性疾患の事前確定化学放射線療法も、化学療法または放射線療法の最後の投与(最後に与えられたもの)が、登録前少なくとも6か月で行われる限り許可される;
c)無作為化の28日以内に行われたRECIST 1.1基準およびX線腫瘍評価によるCTまたはMRIにより測定可能な疾患。放射線療法の完了後にその部位において進行が(X線写真に)記録されていれば、標的病変は以前に照射されたフィールドに位置し得る。
d)対象は、PD−L1 IHC検査を受け得る。ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)組織塊または未染色腫瘍組織切片のいずれかを、関連する病理学的報告とともに、無作為化の前にバイオマーカー評価のために提出しなければならない。腫瘍組織サンプルは、登録前6か月以内に得られた場合、新鮮または保存用であってよく、サンプルが得られた後に与えられる全身療法(例えば、アジュバントまたはネオアジュバント化学療法)はなかった可能性がある。組織は、コア針生検、切除または切開生検であり得る。細い針生検またはサイトスピンによる胸水のドレナージ(drainage)は、バイオマーカーのレビューおよび無作為化には適切でないと考えられる。軟部組織成分または脱灰石骨腫瘍サンプルを有さない骨病変の生検も許容されない。
e)非CNS病変に対する事前の緩和的放射線療法は、無作為化の少なくとも2週間前に完了していなければならない。無作為化の4週間以内に緩和的放射線療法を必要とするかもしれないベースライン時の症候性腫瘍病変を有する対象は、無作為化の前に緩和的放射線療法を受けることが強く推奨される。
f)スクリーニング臨床検査値は、(CTCAE v4を用いて)以下の基準を満たさなければならない:i)WBC 2000μL以上、ii)好中球 1500/μL以上、iii)血小板 100x10/μL以上、iv)ヘモグロビン 9.0g/dL以上、v)血清クレアチニン 1.5xULN以下、またはクレアチニンクリアランス計算値 50mL/分以上(Cockcroft Gault式を用いて)[女性 CrCl=((140 − 年齢) x 体重(kg) x 0.85) / (72 x 血清クレアチニン(mg/dL))]および[男性 CrCl= ((140 − 年齢) x 体重(kg) x 1.00) / (72 x 血清クレアチニン(mg/dL))]、vi) AST/ALT 3.0 x ULN以下、vii)総ビリルビン 3.0mg/dL未満の総ビリルビンレベルを有するはずであるギルバート症候群の対象を除き、1.5 x ULN以下)。
本治験は、前処置に失敗して治験を中止した対象(すなわち、無作為化されていない/処置されていない対象)の再登録を可能にする。
年齢および生殖状態
年齢および生殖状態の基準は以下を含む。a)18歳以上の男女;b)妊娠する可能性がある女性(WOCBP)は、治験薬投与開始前24時間以内の血清または尿妊娠検査(最小感度25IU/LまたはHCGの同等単位)が陰性でなければならない;c)女性では、授乳中であってはならない;d)WOCBPは、(A群、B群およびC群において処置された対象について)治験期間の登録時からニボルマブの消失半減期(〜25日)の5倍+30日間(排卵周期)の治験薬最終投与後少なくとも23週間までの避妊法の指示に従うことに同意しなければならない;e)WOCBPと性交渉する男性は、(A群、B群およびC群において処置された対象について)ニボルマブ処置期間中およびニボルマブの消失半減期の5倍+90日(精子のターンオーバー期間)の治験薬最終投与後の合計31週間、避妊法に関する指示に従わなければならない。
除外基準
標的疾患の例外:
a)利用可能な標的インヒビター療法(エクソン19の欠失変異とエクソン21の、[L858R]置換突然変異を含むが、これに限定されない)に感受性である既知のEGFR突然変異を有する対象は除外する。非扁平上皮癌を有する全ての対象は、EGFR変異状態について試験されなければならない。非扁平上皮癌および未知のもしくは不確定なEGFR変異状態を有する対象は除外される。
b)利用可能な標的化インヒビター療法に感受性である既知のALK転座を有する対象は、除外される。テストされるとき、FDA承認テストの使用を強く推奨する。未知のまたは未確定のALK状態を有する対象は登録され得る。
c)未処置のCNS転移を有する対象は除外される。対象は、CNS転移が適切に処置され、対象が無作為化前の少なくとも2週間、ベースラインに神経学的に戻されるとき(CNS処置に関連する残存徴候または症状を除く)、適格である。加えて、対象は、無作為化前の少なくとも2週間、コルチコステロイド投与を止めるか、あるいは1日当たり10mg以下の安定用量または漸減用量のプレドニゾン(または相当量)を投与されなければならない、
d)癌性髄膜炎を有する対象。
病歴および併存疾患:
a)対象は、無作為化の少なくとも14日前には、大手術または重大な外傷性傷害の影響から回復していなければならない。
b)以前に悪性腫瘍(非メラノーマ皮膚癌、および以下の上皮内癌(in situ cancer): 膀胱癌、胃癌、結腸癌、子宮頚部癌/異型性、黒色腫または乳癌、を除く)を有した対象は、無作為化の少なくとも2年前までに完全寛解が達成され、かつ治験期間中に追加の治療が必要とされるか、または必要とされると予期される限り、除外される。
c)同時介入を必要とする他の活動性悪性腫瘍。
d)活動性の、既知のまたは予期される自己免疫疾患を有する対象。I型真性糖尿病、ホルモン補充のみを必要とする甲状腺機能低下症、全身的治療を必要としない皮膚障害(例えば、白斑症、乾癬または脱毛症)、または外部トリガーなしで再発することが予想されない症状を有する対象は、登録され得る。
e)無作為化の14日以内にコルチコステロイド(1日当たり>10mgのプレドニゾン相当量)または他の免疫抑制剤のいずれかによる全身処置を必要とする状態の対象。活動性の自己免疫疾患がないとき、吸入および局所ステロイド、ならびに副腎代替ステロイド 1日当たり>10mgのプレドニゾン相当量は許可される。
f)症候性であるか、または疑わしい薬物関連肺毒性の検出または管理を妨げる可能性のある間質性肺疾患を有する対象。
g)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または既知の後天性免疫不全症候群(AIDS)について陽性であることが判明している既知の病歴。
物理的および実験的検査所見:
a)急性または慢性感染症を示すB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスの陽性試験、またはb)グレード2以上の末梢ニューロパシーを有する対象。
アレルギーおよび有害な薬物反応:
アレルギーあるいは白金含有化合物または他の治験薬に対する過敏症の病歴
禁止された、および/または制限された処置:
以下の強力なCYP3A4阻害剤は、治験中に避けるべきである。これらには、ケトコナゾール、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、ネファゾドン、テスロマイシン、およびボリコンゾールが含まれるが、これらに限定されない。
治験中、以下の薬物は禁止される(薬物関連の有害事象を処置するために利用されない限り):免疫抑制剤;全身性コルチコステロイドの免疫抑制用量(本出願の他の場合を除く);全ての同時抗腫瘍療法(すなわち、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、広範な非緩和的放射線療法またはNSCLCの処置のための標準薬もしくは治験薬)。
その他の制限事項および注意事項:
無作為化の14日以内に、コルチコステロイド(1日当たり>10mgのプレドニゾン相当量)または他の免疫抑制剤のいずれかで全身処置を必要とする状態を有する対象は除外する。吸入または局所ステロイド剤、および副腎代替ステロイド 1日当たり>10mg用量のプレドニゾン相当量は、活動性の自己免疫疾患がない場合、許容される。
腎不全を有する対象は、造影剤(contrast)を使用すべきか否かについて評価され、受ける必要があれば、どのタイプおよび用量の造影剤が適切であるかを評価されるべきである。MRIに特異的で、重篤な腎不全(すなわち、推定糸球体濾過率(eGFR) < 30mL/分/1.73m)を有する対象は、腎臓全身性線維症のリスクが高い。この対象集団にMRIのコントラストを与えるべきではない。さらに、対象は、入れ墨、金属製のインプラント、ペースメーカーなどを有する場合、MRIから除外される。この治験において個々の対象でMRIを実施する最終的な決定は、現場の放射線医師、治験医および地域の倫理委員会が行う。
許可された療法:
対象は、(全身吸収を最小にしつつ)局所、眼、関節内、鼻腔内および吸入コルチコステロイドの使用が可能である。副腎代替ステロイド、1日当たり>10mg用量のプレドニゾンが認められる。予防(例えば、造影剤アレルギー)または非自己免疫状態の処置(例えば、接触アレルゲンによって引き起こされる遅延型過敏症反応)のための短期間(3週間未満)のコルチコステロイドは許容される。
治験処置の初回投与前に開始した場合、疾患関連症状のための付随的な緩和的かつ支持的治療(ビスホスホネートおよびRANK−L阻害剤を含む)が可能である。事前の緩和的放射線療法は、無作為化の少なくとも2週間前に完了していなければならない。
緩和的局所療法:
症状のない非標的骨病変、皮膚病変またはCNS病変に対する、緩和的放射線療法および緩和的外科的切除を含む緩和的局所療法は、RECIST 1.1に基づく全臨床またはX線写真による進行の証拠を有さない対象に対する治験処置の中止の前に許可される。喀血を引き起こす病変に対する緩和的療法もまた、緩和局所治療を受けている病変が測定可能な疾患の唯一の部位ではなく、このケースが医療モニターと協議されて承認される場合、RECIST 1.1に基づく全臨床またはX線写真による進行の証拠を有さない対象に対する治験処置の中止の前に許可され得る。
現在、放射線療法およびニボルマブ/イピリムマブの重複する毒性の可能性は分かっていない。しかしながら、症例データはそれが耐容性であることを示唆している。同時の放射線療法およびニボルマブ/イピリムマブは、正式に評価されていないため、緩和的放射線療法が腫瘍病変に必要な場合は、放射線治療の前後の少なくとも1週間および放射線療法中の、ニボルマブ/イピリムマブは控えるべきである。対象は、放射線療法中およびその後の潜在的な毒性を厳密に監視され、AEは、ニボルマブを再開する前に、1以下のグレードに解決されるべきである。
治験薬治験後のフォローアップ
本治験において、全生存率が重要なエンドポイントである。治験後のフォローアップは、極めて重要であり、対象の安全性を確保し、完全な治験を行うために必須である。フォローアップ外来1は、治験薬の最終投与から35日(±7日)または治験薬投与の中止の日が最終投与日から42日を超えている場合、治験薬投与を中止した日と同日(±7日)である。フォローアップ外来2は、フォローアップ外来1から80日(±7日)に行われる。生存フォローアップフォローアップ外来は、フォローアップ外来2から約3ヶ月毎に行われる。
CA209227の治験薬
本明細書に記載の治験に用いた薬物を表8に示す。
CA209227プロトコールにおいて、治験薬は、BMS−936558(ニボルマブ)、イピリムマブ、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチンおよびペメトレキセドである。
貯蔵および調剤
ニボルマブは、3つのニボルマブ含有群において、約30分間の静脈内点滴により投与されるべきである。点滴の最後に、十分な量の生理食塩水またはデキストロース溶液でラインを洗い流す(フラッシュする)。イピリムマブは、約30分間の静脈内点滴により投与されるべきである。点滴の最後に、十分な量の生理食塩水または5%デキストロース溶液でラインをフラッシュする。両治験薬が同日に投与されるべきとき、別個の点滴バッグおよびフィルターを各点滴に用いなければならない。ニボルマブを最初に投与する。点滴開始前に、ニボルマブのラインを生理食塩水でフラッシュしてから直ちに、ニボルマブの点滴を行う必要がある。2回目の点滴は、常に、イピリムマブであり、ニボルマブの点滴の完了後少なくとも30分後に開始される。
各対象の選択および投与のタイミング
投与スケジュールを表16に詳述する(以下の実施例1)。
A群の投薬(ニボルマブ単剤療法):A群に無作為化された対象は、2週間毎に各処置サイクルの1日目に、30分間の静脈内点滴として240mgの用量で、ニボルマブによる処置を、進行、許容できない毒性、同意の撤回、または治験の終了のいずれか早い方が起こるまで、受ける。
B群の投薬(ニボルマブ+イピリムマブ):B群に無作為化された対象は、3週間毎に各処置サイクルの1日目に、30分間の点滴として1mg/kgのニボルマブおよび1mg/kgのイピリムマブを、4サイクル受け、その後、2週間毎に30分間の点滴として3mg/kgのニボルマブを受ける。処置を、進行、許容できない毒性、同意の撤回、または治験の終了のいずれか早い方が起こるまで行う。ニボルマブおよびイピリムマブが同日に投与されるべきとき、別個の点滴バッグおよびフィルターを各点滴に用いなければならない。ニボルマブが最初に投与される。2回目の点滴は、常に、イピリムマブであり、ニボルマブの点滴の完了後少なくとも30分以内に開始される。ニボルマブおよびイピリムマブは、0.9%塩化ナトリウム溶液または5%デキストロース溶液で希釈され得る。
用量計算は体重に基づくべきである。対象の体重が以前の用量を計算するために用いた体重の10%以内であれば、用量を再計算する必要はないが、標準療法となることがある。全ての用量は、最も近いミリグラム単位に合わせられるべきである。用量の変更は許されない。対象は、以前の投薬から12日以上を経て投与され得る。前投薬は推奨されていない。ニボルマブおよび/またはイピリムマブの用量は、対象がどれほど良好に治療に耐えるかによって、中断、延期、または中止することができる。
C群の投薬(ニボルマブ+イピリムマブ):C群に無作為化された対象は、進行、許容できない毒性、同意の撤回または治験の終了のいずれか早い方が起こるまで、1日目に、2週間毎に30分間の点滴で3mg/kgのニボルマブ、および6週間毎に30分間の点滴で1mg/kgのイピリムマブを投与される。ニボルマブおよびイピリムマブが同日に投与されるべきとき、別個の点滴バッグおよびフィルターを各点滴に用いなければならない。ニボルマブが最初に投与される。2回目の点滴は、常に、イピリムマブであり、ニボルマブの点滴の完了後少なくとも30分以内に開始される。ニボルマブおよびイピリムマブは、0.9%塩化ナトリウム溶液または5%デキストロース溶液で希釈され得る。
投薬計算は体重に基づくべきである。対象の体重が以前の用量を計算するために用いた体重の10%を超えて異なる場合は、用量を再計算する必要がある。全ての用量は、最も近いミリグラム単位に合わせられるべきである。用量の変更は許されない。対象は、以前の投薬から12日以上を経てニボルマブを投与され得る。前投薬は推奨されていない。ニボルマブおよび/またはイピリムマブの用量は、対象がどれほど良好に治療に耐えるかによって、中断、延期、または中止することができる。
D群の投薬(白金併用化学療法):
扁平上皮癌の化学療法オプション
D群に無作為化された扁平上皮癌を有する対象は、以下のゲムシタビン/白金レジメンのいずれかを受け得る:
1)ゲムシタビン/シスプラチン:対象は、3週間毎の、1日目および8日目に30分の静脈内点滴で1250mg/m用量のゲムシタビンと、1日目に30〜120分の静脈内点滴で75mg/m用量のシスプラチンを、6サイクルまで受ける。治験医の裁量および地域の標準治療に従い、ゲムシタビン/シスプラチンは、さらなる白金併用化学療法の利益を受ける可能性が低いと治験医により考えられる疾患を有する対象において、サイクル4後に中止することもできる。投薬計算は体表面積の計算に基づくべきである。対象の体重がベースライン体重または以前の体重の10%以内であれば、用量は同じままでよい。
シスプラチンは、ゲムシタビン点滴の終了後に患者に投与される。シスプラチンの前処理用輸液は、地域の標準治療に従うか、またはシスプラチン点滴前に8〜12時間静脈内点滴された1〜2リットルの液体(地域基準に従う)が推奨される。シスプラチン投与後少なくとも24時間、十分な水分補給と尿中排泄が維持されなければならない。投与およびモニタリングは、地域基準に従って行われるべきである。シスプラチン点滴後のマンニトールの使用もまた、地域基準に従って行われるべきである。
前投薬:制吐薬の前投薬を、地域基準に従って行う。推奨される制吐薬は、デキサメサゾン(地域基準に従って投薬;別のコルチコステロイドの同用量で置き換えられてもよい)および5−HT3受容体アンタゴニスト(治験医の裁量および地域の標準治療毎のタイプ)である。制吐薬の前投薬の追加投与は、治験医の裁量により可能である。
ゲムシタビンおよび/またはシスプラチンの用量は、対象がどれほど良好に治療に耐えるかによって、中断、延期、低減または中止することができる。
シスプラチンを投与される全ての対象は、治療の開始前およびその後のシスプラチンの投与前に、または地域の標準治療に従って実施される聴力検査を有すべきである。
シスプラチン単独投与を中止する対象は、治験医の裁量で、白金併用サイクルの残りの期間(合計6サイクルまで)ゲムシタビン/カルボプラチンに切り替えることができる。このような対象に対するゲムシタビン/カルボプラチンの投与は、本明細書中のゲムシタビン/カルボプラチンの部分に記載の投与に従うべきである。
2)ゲムシタビン/カルボプラチン:対象は、3週間サイクルの、1日目および8日目に30分の静脈内点滴で1000mg/m用量のゲムシタビンと、1日目に30分の静脈内点滴でAUC 5用量のカルボプラチンを、6サイクルまで受ける。治験医の裁量および地域の標準治療に従い、ゲムシタビン/カルボプラチンは、さらなる白金併用化学療法の利益を受ける可能性が低いと治験医により考えられる疾患を有する対象において、サイクル4後に中止することもできる。ゲムシタビンの投薬計算は体表面積の計算に基づくべきである。対象の体重がベースライン体重または以前の体重の10%以内であれば、用量は同じままでよい。
カルボプラチンは、各サイクルの1日目のゲムシタビン点滴後に投与されるべきであり、カルボプラチン用量は、以下のCalvert式を用いて計算される:カルボプラチン用量(mg)=標的AUC x [CrCl(ml/分)+25]。クレアチニンクリアランス(CrCl)計算は、Cockroft−Gault式に基づいて計算され、最新の血清クレアチニンおよび最新の体重を含める必要がある。Cockroft−Gault式によるCrClの計算により、>125mL/分の結果が得られた場合、CrClは、施設基準別の式で計算するか、125mL/分を上限値として計算すべきである。
前投薬:経口制吐薬の前投薬を、地域基準に従って行う。推奨される制吐薬は、デキサメサゾン(地域基準に従って投薬;別のコルチコステロイドの同用量で置き換えられてもよい)および5−HT3受容体アンタゴニスト(治験医の裁量および地域の標準治療毎のタイプ)である。制吐薬の前投薬の追加投与は、治験医の裁量により可能である。
ゲムシタビンおよび/またはカルボプラチンの用量は、対象がどれほど良好に治療に耐えるかによって、中断、延期、低減または中止することができる。
非扁平上皮癌の化学療法オプション
D群に無作為化された非扁平上皮癌を有する対象は、ペメトレキセド継続維持療法の有無にかかわらず、以下のペメトレキセド/白金レジメンの1つを受け得る:
1)メトレキセド継続維持療法の有無にかかわらない、ペメトレキセド/シスプラチン:対象は、3週間の処置サイクルの1日目に10分間の静脈内点滴により500mg/m用量のペメトレキセドと、1日目に120分間の静脈内点滴により75mg/m用量のシスプラチンを、6サイクルまで受ける。治験医の裁量および地域の標準治療に従い、ペメトレキセド/シスプラチンは、さらなる白金併用化学療法の利益を受ける可能性が低いと治験医により考えられる疾患を有する対象において、サイクル4後に中止することもできる。サイクル4後、疾患の安定または応答を有する対象は、シスプラチンを中止し、進行、許容できない毒性または同意の撤回のいずれかまで、同じ用量およびスケジュールでペメトレキセドを継続することもできる。ペメトレキセド/シスプラチン併用サイクル中に毒性によるペメトレキセド用量の低下が必要となった対象において、該毒性が主にシスプラチンに関係すると思われた場合、ペメトレキセドの用量は、治験医の裁量で、および地域基準に従って、シスプラチンの中止後500mg/mに増やされる。投薬計算は体表面積の計算に基づくべきであり、地域基準に従って制限され得る。対象の体重がベースライン体重または以前の体重の10%以内であれば、用量は同じままでよい。
シスプラチンは、ペメトレキセド点滴の終了後少なくとも30分以内に対象に投与される。シスプラチンの前処置用輸液は、地域の標準治療に従うか、またはシスプラチン点滴前に8〜12時間静脈内点滴された1〜2リットルの液体(地域基準に従う)が推奨される。シスプラチン投与後少なくとも24時間、十分な水分補給と尿中排泄が維持されなければならない。投与およびモニタリングは、地域基準に従って行われるべきである。シスプラチン点滴後のマンニトールの使用もまた、地域基準に従って行われるべきである。
ペメトレキセドとの併用のための前投薬:ペメトレキセド投与の前日、当日および翌日に、デキサメサゾン 4mg BIDに相当する用量で経口コルチコステロイドを地域基準に従って投与すべきである。経口葉酸 1日当たり350から1000mcgを、ペメトレキセドの初回投与の1週間前に投与開始し、初回投与の7日前に少なくとも5回、葉酸を投与する。経口葉酸は、ペメトレキセドで処置中およびペメトレキセドの最終投与後21日間、毎日継続されなければならない。ビタミンB12 1000mcgの筋肉内注射は、ペメトレキセドの最初の投与の約1週間前に行われ、ペメトレキセド処置中に3サイクル毎に繰り返されるべきである。ビタミンB12のその後の注射は、ペメトレキセドと同日に投与されてよい(非扁平上皮癌を有する対象は、D群に無作為化されるべきとき、ペメトレキセドを予期して、無作為化する前に葉酸およびビタミンB12を開始してよい)。
ペメトレキセド/シスプラチンと共に使用するための前投薬:制吐前投薬は、地域基準に従って投与される。推奨される制吐薬は、デキサメサゾン(地域基準に従った投薬;同用量の別のコルチコステロイドと置き換えてもよい)および5−HT3受容体アンタゴニスト(治験医の裁量および地域基準療法毎のタイプ)である。治験医の裁量により、制吐前投薬を追加投与することができる。
ペメトレキセドおよび/またはシスプラチンの投与は、対象がどれほど良好に処置へ耐容性を示すかによって、中断、延期または中止され得る。
シスプラチンを投与され得る全ての対象は、治療の開始前およびその後のシスプラチンの投与の前に、または地域の標準治療に従って実施される聴力検査を有すべきである。
シスプラチン単独を中止する対象は、治験医の裁量で、白金併用サイクルの残りの期間(合計6サイクルまで)、ペメトレキセド/カルボプラチンに切り替えることができる。そのような対象のためのペメトレキセド/カルボプラチンの投与は、以下のペメトレキセド継続維持の有無にかかわらずペメトレキセド/カルボプラチンの部分の記載に従うべきである。
2)ペメトレキセド継続維持の有無にかかわらないペメトレキセド/カルボプラチン:対象は、6サイクルまで、3週間の処置サイクルの1日目に、10分間の静脈内注射として500mg/mの用量でペメトレキセドを受容し、その後、1日目に、30分間の静脈内注射としてAUC 6の用量でカルボプラチンを投与される。
治験医の裁量で、および地域的な標準療法に従って、ペメトレキセド/カルボプラチンはまた、追加の白金併用化学療法の利益を受ける可能性がないと、治験医によって判断される疾患を有する対象において、サイクル4の後に中止されてもよい。
サイクル4後、疾患の安定または応答を有する対象は、カルボプラチンを中止し、同じ用量でペメトレキセドを継続し、そして進行、許容できない毒性または同意の撤回まで、継続維持として計画することもできる。ペメトレキセド/カルボプラチンの併用サイクル中に毒性によるペメトレキセドの用量の低減が必要な対象では、ペメトレキセドの用量は、該毒性が主にカルボプラチンに関連すると考えられた場合、治験医の裁量で、および地域基準に従って、カルボプラチンの中止後に500mg/mに増やされ得る。
ペメトレキセドの投薬計算は体表面積の計算に基づくべきである。対象の体重が以前の投与量を計算するために用いられた体重の10%以内であれば、用量は同じままでよい。
カルボプラチン用量は、以下のようにCalvert式を用いて計算される:カルボプラチン用量(mg)=標的AUC × [CrCl(ml/分)+25]。クレアチニンクリアランス(CrCl)計算は、Cockroft−Gault式に基づいて計算され、最新の血清クレアチニンおよび最新の体重を含める必要がある。Cockroft−Gault式によるCrClの計算により、>125mL/分の結果が得られた場合、CrClは、施設基準別の式で計算するか、125mL/分を上限値として計算すべきである。
ペメトレキセドと併用するための前投薬:ペメトレキセドの投与の前日、投与の日および投与の翌日に、デキサメサゾン 4mg BIDに相当する用量で地域基準に従って、経口コルチコステロイドを投与すべきである。1日当たり350から1000mcgの経口葉酸を、ペメトレキセドの初回投与の1週間前から始めて、初回投与前の7日間に少なくとも5用量の葉酸を投与すべきである。経口葉酸は、ペメトレキセド処置中およびペメトレキセドの最終投与後21日間、毎日継続されなければならない。ビタミンB12 1000mcgの筋肉内注射は、ペメトレキセドの最初の投与の約1週間前に行われ、ペメトレキセド処置中に3サイクル毎に繰り返されるべきである。ビタミンB12のその後の注射は、ペメトレキセドと同日に投与されてよい(非扁平上皮癌を有する対象は、D群に無作為化されるべきとき、ペメトレキセドを予期して、無作為化する前に葉酸およびビタミンB12を開始してよい)。
ペメトレキセド/シスプラチンと共に使用するための前投薬:制吐前投薬は、地域基準に従って投与される。推奨される制吐薬は、デキサメサゾン(地域基準に従った投薬;同用量の別のコルチコステロイドと置き換えてもよい)および5−HT3受容体アンタゴニスト(治験医の裁量および地域基準療法毎のタイプ)である。治験医の裁量により、制吐前投薬を追加投与することができる。
ペメトレキセドおよび/またはシスプラチンの投与は、対象がどれほど良好に処置へ耐容性を示すかによって、中断、延期または中止され得る。
A群の投薬延期(ニボルマブ単剤療法)
ニボルマブ投与は、以下の理由により延期されるべきである:
疲労および検査値異常を除く、グレード2以上の非皮膚の薬物関連有害事象(AE);グレード3以上の皮膚の薬物関連AE;リンパ球減少症、AST、ALT、または総ビリルビンまたは無症候性アミラーゼもしくはリパーゼを除く、グレード3以上の薬物関連の検査値異常。グレード3のリンパ球減少症は、対象が、正常限度内のベースラインAST、ALTまたは総ビリルビンを有し、グレード2以上の薬物関連毒性による投薬延期を有する場合、対象が、グレード1の毒性範囲内のベースラインAST、ALTまたは総ビリルビンを有し、グレード3以上の薬物関連毒性による投薬延期を有する場合、投薬延期を必要としない。グレード3以上の、膵炎の症状や臨床症状に関連しない薬物関連アミラーゼまたはリパーゼ異常は、投薬延期を必要としない。グレード3以上のアミラーゼまたはリパーゼ異常については、BMS医療モニターに相談する必要がある。治験医の判断により、全てのAE、検査値異常または併発疾患は、治験薬の投与を延期することができる。
B群およびC群の投薬延期(ニボルマブ+イピリムマブ)
ニボルマブおよびイピリムマブ投与は、以下の理由により延期されるべきである:
疲労および検査値異常を除く、グレード2以上の非皮膚の薬物関連有害事象(AE);グレード3以上の皮膚の薬物関連AE;リンパ球減少症、AST、ALT、または総ビリルビンまたは無症候性アミラーゼもしくはリパーゼを除く、グレード3以上の薬物関連の検査値異常。グレード3のリンパ球減少症は、対象が、正常限度内のベースラインAST、ALTまたは総ビリルビンを有し、グレード2以上の薬物関連毒性による投薬延期を有する場合、対象が、グレード1の毒性範囲内のベースラインAST、ALTまたは総ビリルビンを有し、グレード3以上の薬物関連毒性による投薬延期を有する場合、投薬延期を必要としない。グレード3以上の、膵炎の症状や臨床症状に関連しない薬物関連アミラーゼまたはリパーゼ異常は、投薬延期を必要としない。グレード3以上のアミラーゼまたはリパーゼ異常については、BMS医療モニターに相談する必要がある。治験医の判断により、全てのAE、検査値異常または併発疾患は、治験薬の投与を延期することができる。
投薬延期の基準を満たす薬物関連毒性を有する、イピリムマブとニボルマブの組み合わせを受容する対象は、再処置基準が満たされるまで両薬物(イピリムマブおよびニボルマブ)を延期すべきである(膵炎の症状や臨床症状に関連せず、イピリムマブにのみ起因する、グレード3以上のアミラーゼおよびリパーゼ異常に対するイピリムマブおよびニボルマブの投薬延期後の再処置基準には例外が適用される)。
C群では、次のイピリムマブ用量が12日以内に予定される場合、次の計画されたイピリムマブ投与までニボルムマブを延期してよい。これにより、周期的なイピリムマブ投薬を、ニボルマブ投薬と同期させることが可能になる。
C群では、イピリムマブは、介入するニボルマブ投与の延期にかかわらず、指定された間隔で投与されるべきである。しかしながら、イピリムマブおよびニボルマブの定期的な同時投与を維持するために、ニボルマブおよびイピリムマブの投与日は、連続したニボルモル投薬が少なくとも12日間の間隔をあけて行われる限り、許容される±5日の範囲内で調整することができる。イピリムマブは、必要に応じて、次のニボルマブ投与と同期するために5日間を超えて延期されることがある。
C群において、イピリムマブ投与が、以前のイピリムマブ投与から6週間を超えて延期される場合、その後のイピリムマブ投与は、連続するイピリムマブ投与間の6週間の間隔を維持するように再計画されるべきである。C群では、イピリムマブの投薬延期は、イピリムマブを12週間以上投与しない結果、イピリムマブの中止を必要とする。
D群の投薬延期基準(白金併用化学療法)
D群では、選択された白金併用化学療法レジメンにおける両薬物の投与は、各サイクルの第1日における以下のいずれかにより延期されるべきである:絶対好中球数(ANC)<1,500/mm、血小板<100,000/mm;グレード2以上の、非皮膚、非血液の血液関連有害事象(グレード2の脱毛症、グレード2の疲労、およびグレード2の検査所見異常を除く);グレード3以上の皮膚の薬物関連有害事象;リンパ球減少症、AST、ALTまたは総ビリルビンを除く、グレード3以上の薬物関連毒性による投薬遅延、検査値異常。グレード3のリンパ球減少症は、対象が、正常限度内のベースラインAST、ALTまたは総ビリルビンを有し、グレード2以上の薬物関連毒性による投薬延期を有する場合、対象が、グレード1の毒性範囲内のベースラインAST、ALTまたは総ビリルビンを有し、グレード3以上の薬物関連毒性による投薬延期を有する場合、投薬延期を必要としない。治験医の判断により、全ての有害事象、検査値異常または併発疾患は、治験薬の投与を延期することができる。
さらに、ペメトレキセドまたはゲムシタビンと共にシスプラチンを投与されている対象は、計算されたクレアチニンクリアランスが50mL/分未満に減少する場合(Cockroft Gault式に基づいて)、シスプラチンを中止しなければならない。対象が再治療基準を満たしたとき、他の薬物(ペメトレキセドまたはゲムシタビン)を継続してもよく、白金薬物は、治験医の裁量で、白金併用サイクルの残りの期間(合計6サイクルまで)カルボプラチンに切り替えることができる。
シスプラチンまたはカルボプラチンと共にゲムシタビンを投与されている対象は、いずれかのサイクルの第8日に以下の何れかの理由によりゲムシタビン投与をなくすべきである: ANC<1,000/mm;血小板<75,000/mm
上記の投薬延期基準を満たす非血液学液有害事象が、白金併用化学療法レジメンにおける1つの特定の薬物にのみ関連すると考えられる場合、その薬物のみをそのサイクルでは省略し、他の薬物を投与してもよい。レジメンの同期投薬を維持するために、省略された薬物は、AEが改善され、再治療基準が満たされると、次に計画されたサイクルで再開されるべきである。
白金併用化学療法レジメンにおいて両薬物が延期されている場合、対象は、再治療基準が満たされるまで臨床的に指示される場合には、毎週、またはより頻繁に再評価されるべきである。
用量低減
ニボルマブまたはイピリムマブの用量の低減はない。
白金併用化学療法の用量低減が必要とされ得る。化学療法剤の用量の低減は永続的である。いずれかの化学療法剤の用量が低減されると、ペメトレキセド維持療法の開始時に記載されている場合を除き、その後のサイクルで再度増加されない可能性がある。白金併用化学療法レジメンにおける各薬物の用量低減は関連せず、以下にまとめるように独立して調整することができる。
化学療法剤の可能な用量変更を表9に示す。
3回目のの用量低減を必要とする毒性を経験し、1つの薬物について3回以前の用量低減を経験した対象は、その薬物を中止されなければならない。
血液学的毒性による用量変更(CTCAEバージョン4に従う)を表10にまとめる。用量調整は、先行する薬物投与による最低血中濃度(地域基準に従って評価)に基づく。白金併用化学療法用の用量レベル調整は、先行する投与の用量レベルと相関する。一般的に、白金併用化学療法レジメンにおける両化学療法剤は、血液学的毒性に関して共に用量を減らすべきである。最初のサイクル後、増殖因子を用いて血液学的回復を補助することができる。これらの対症療法の使用には地域基準を用いる。さらに、予防的抗生物質を、地域の標準治療に従って用いることができる。eCRFに抗生物質または増殖因子の使用を報告してください。
処置中の非血液学的毒性による白金併用化学療法の用量変更を表11にまとめる。全ての用量低減は、最悪のグレードの毒性に基づいて行うべきである。先行するサイクル中で表10に記載の何れかの毒性を経験している対象は、再治療基準が満たされるまでその化学療法を延期し、その後の全てのサイクルで1用量レベルを減らすか、または必要に応じて中止すべきである。白金併用化学療法レジメンにおける2つの薬物の用量レベルは、以下の表にまとめるように、関連せず、独立して減らされ得る。
ニボルマブ投与を再開する基準
対象は、薬物関連AE(複数可)がグレード1未満もしくは1まで、またはベースラインまで解消したとき、以下の例外を除いて、ニボルマブでの処置を再開し得る:対象は、グレード2の疲労の存在下で処置を再開し得る;グレード3の薬物関連皮膚AEを経験していない対象は、グレード2の皮膚毒性の存在下で処置を再開し得る;AST/ALTもしくは総ビリルビンの2段階のグレード変化以外の理由で投与を延期する必要のある、ベースライングレード1のAST/ALTもしくは総ビリルビンを有する対象は、グレード2のAST/ALTもしくは総ビリルビンの存在下で処置を再開し得る。中止パラメーターに合致するグレード2のAST/ALTおよび総ビリルビン値を有する対象は、処置を永久に中止すべきである。
薬物関連肺毒性、下痢または大腸炎は、処置が再開される前に、ベースラインまで解消されていなければならない。少なくとも1か月間のステロイド漸減の完了後に永続的にグレード1の肺炎を有する対象は、BMS医療モニターと協議し承認されれば、再治療の対象となり得る。
生理的ホルモン補充のみで適切に制御される薬物関連内分泌障害は、BMS医療モニターとの協議の後に治療を再開し得る。
膵炎の症状または臨床症状に関連しない、かつイピリムマブに関連し、ニボルマブに関連しないと治験医によって評価される、グレード3以上のアミラーゼ異常もしくはリパーゼ異常のために治験を延期する対象は、アミラーゼ異常またはリパーゼ異常がグレード3未満になるとニボルマブを再開し得る。6週間を超える処置中断をもたらすニボルマブの投与遅延は、治療中止を必要とする。
イピリムマブ投与を再開する基準
対象は、薬物関連AE(複数可)がグレード1またはベースライン値まで解消したとき、以下の例外を除いて、ニボルマブおよびイピリムマブでの処置を再開し得る:対象は、グレード2の疲労の存在下で処置を再開し得る;グレード3の薬物関連皮膚AEを経験していない対象は、グレード2の皮膚毒性の存在下で処置を再開し得る;AST/ALTもしくは総ビリルビンの2段階のグレード変化以外の理由で投与を延期する必要のある、ベースライングレード1のAST/ALTもしくは総ビリルビンを有する対象は、グレード2のAST/ALTもしくは総ビリルビンの存在下で処置を再開し得る。中止パラメーターに合致するグレード2のAST/ALTおよび総ビリルビン値を有する対象は、処置を永久に中止すべきである。
薬物関連肺毒性、下痢または大腸炎は、処置が再開される前に、ベースラインまで解消されていなければならない。
薬物関連毒性の管理のために全身性コルチコステロイドを受けた対象は、コルチコステロイド投与を中止してはならず、または同等量のプレドニゾン±10mg/日に減量しなければならない。
生理的ホルモン補充のみで適切に制御される薬物関連内分泌障害は、BMS医療モニターとの協議の後に治療を再開し得る。
イピリムマブの投薬延期は、イピリムマブを12週間以上投与しない結果、イピリムマブの中止を必要とする。
C群では、イピリムマブは、以前のイピリムマブ投与後6週間(±5日)より早く再開されないことがある。
C群では、一般に、イピリムマブを再開する基準を満たす対象はまた、ニボルマブを再開する基準も満たしているので、イピリムマブを再開するときに両薬物を同時に投与することが可能であるべきである。これを容易にするために、ニボルマブとイピリムマブの投与日数は、連続したニボルマブ投与が少なくとも12日間の間隔を有する限り、許容される±5日の範囲内で調整することができる。
注意すべき1つの例外は、イピリムマブおよびニボルマブ投与が、膵炎の症状または臨床症状に関連しない、薬物関連のグレード3以上のアミラーゼ異常もしくはリパーゼ異常のために延期されるときである。治験医が、該グレード3以上のアミラーゼ異常もしくはリパーゼ異常がイピリムマブに関連し、ニボルマブに関連しないと評価する場合、ニボルマブは、アミラーゼ異常またはリパーゼ異常がグレード3未満になると再開し得るが、イピリムマブは、アミラーゼ異常またはリパーゼ異常がグレード1またはベースラインまで解消したときのみ再開し得る。
白金併用化学療法の処置を再開する基準
対象は、ANCが1,500/mm以上に戻り、血小板数が100,000/mm以上に戻り、かつ全ての他の薬物関連毒性がベースラインまたはグレード1以下(もしくは、脱毛症および疲労の場合はグレード2以下)ン戻ったとき、白金併用化学療法の処置を再開し得る。
対象が、再治療の基準を満たさない場合、再治療を延期すべきであり、該対象は、臨床的に指示されているように毎週またはより頻繁に再評価されるべきである。最後の投与から6週間以内に白金併用化学療法に起因する毒性がベースラインまたはグレード1以下(グレード2の脱毛症および疲労を除く)まで回復しない対象は、延期の原因となった薬物(複数可)を中止すべきである。
ニボルマブ投与の中止
ニボルマブでの処置は、以下の何れかの理由により永久に中止すべきである:局所療法に応答せず、再治療期間内にグレード1の重症度に改善しないか、または全身治療が必要である、グレード2の薬物関連ブドウ膜炎または眼の痛みまたは視力障害;投薬延期および全身性ステロイドで解消しない(肺の有害事象管理アルゴリズムも参照)、グレード2以上の薬物関連肺炎または間質性肺疾患;期間に関係なく、グレード3の薬物関連の気管支痙攣、過敏症反応または輸液反応;ブドウ膜炎、気管支炎、気管支痙攣、下痢、大腸炎、神経毒性、過敏症反応、輸液反応、内分泌障害および検査値異常を除く、7日以上続くグレード3の非皮膚、薬物関連有害事象;任意の期間続くグレード3の薬物関連ブドウ膜炎、肺炎、気管支痙攣、下痢、大腸炎、神経毒性、過敏症反応または輸液反応は、中止を必要とする;生理的ホルモン補充のみで適切に制御されるグレード3の薬物関連内分泌障害は、中止を必要としない;グレード3の薬物関連検査所見異常は、以下を除いて、処置の中止を必要としない:
7日以上続くか、または出血と関連する、グレード3の薬物関連血小板減少症は中止を必要とする;以下の基準を満たす薬物関連肝機能検査(LFT)異常は、中止を必要とする(肝臓の有害事象管理アルゴリズムも参照):2週間以上の、ASTまたはALT>5〜10xULN、ASTまたはALT>10xULN、総ビリルビン>5xULN、同時にASTまたはALT>3xULNおよび総ビリルビン>2xULN。
以下の事象を除いて、グレード4の薬物関連有害事象または検査所見異常は、中止を必要としない:7日未満のグレード4の好中球減少症;グレード4のリンパ球減少症または白血球減少症;膵炎の症状または臨床症状に関連しておらず、発症の1週間以内にグレード4未満に低下する、孤立性のグレード4のアミラーゼ異常またはリパーゼ異常;臨床的続発症に関連せず、発症の72時間以内の補充/適切な管理で矯正される、孤立性のグレード4の電解質不均衡/異常;生理的ホルモン補充(コルチコステロイド、甲状腺ホルモン)またはグルコース調節剤で解消されるか、または適切に制御される、副腎不全、ACTH欠乏症、甲状腺機能亢進症もしくは甲状腺機能低下症、または耐糖能異常などのグレード4の薬物関連内分泌有害事象はそれぞれ、医療モニターとの議論および承認後に中止を必要としない。
非薬物関連理由によって生じた以前の投与から6週間以上続く投与の延期は、BMS医療モニターによって承認されれば許容され得る。6週間以上続く投与の延期を有する対象において処置を再開する前に、医療モニターに相談しなければならない。投与を延期する場合でも、プロトコールに従って腫瘍の評価を継続すべきである。このような投与の延期の間に臨床的に必要であれば、安全性および臨床検査値を評価するための定期的な来院は、6週間毎またはそれ以上の頻繁で継続すべきである。
有害事象、検査値異常または併発疾患は、治験医の判断で、継続してニボルマブを投与された対象に対する実質的な臨床的リスクを提示する。
ニボルマブの中止の評価は、イピリムマブの中止の評価とは別に行われるべきである。中止の基準に重複はあるが、中止の基準がイピリムマブについては満たされるが、ニボルマブについては満たされない場合、イピリムマブが中止されるとき、ニボルマブでの処置は継続され得る。
B群の対象が、最初の4サイクルの完了前にイピリムマブの中止基準を満たすが、ニボルマブの中止基準を満たさないとき、ニボルマブでの処置は、有害事象が完全に解消されるまで再開されることはなく、対象は、それらが有害事象の処置に必要である場合、ステロイドを中止した。
B群の対象(最初の4サイクル中)またはC群の対象が、中止の基準を満たし、治験医が、該事象が両方のまたは一方の治験薬に関連するか判定できない場合、対象は、ニボルマブおよびイピリムマブの両方を中止し、治験の処置段階から外されるべきである。
イピリムマブ投与の中止
イピリムマブは、以下のいずれかの基準を満たす場合、永久に中止されるべきである:局所療法に応答せず、2週間以内にグレード1の重症度に改善しないか、または全身治療が必要である、グレード2以上の薬物関連ブドウ膜炎または眼の痛みまたは視力障害;グレード3以上の薬物関連の気管支痙攣または他の過敏症反応;検査所見異常、グレード3の悪心および嘔吐、グレード3の好中球減少症および血小板減少症、ならびに(ホルモン補充の有無にかかわらず)症状が改善された内分泌障害を除く、他のグレード3の非皮膚、薬物関連有害事象;以下の基準を満たす薬物関連肝機能検査(LFT)異常は、中止を必要とする:2週間以上の、ASTまたはALT>8xULN、総ビリルビン>5xULN、または同時にASTまたはALT>3xULNおよび総ビリルビン>2xULN;以下の事象を除いて、グレード4の薬物関連有害事象または検査所見異常は、中止を必要としない:7日未満のグレード4の好中球減少症、グレード4のリンパ球減少症または白血球減少症、膵炎の症状または臨床症状に関連していない、孤立性のグレード4のアミラーゼ異常またはリパーゼ異常;臨床的続発症に関連せず、発症の72時間以内の補充/適切な管理で矯正される、孤立性のグレード4の電解質不均衡/異常;生理的ホルモン補充(コルチコステロイド、甲状腺ホルモン)またはグルコース調節剤で解消されるか、または適切に制御される、副腎不全、ACTH欠乏症、甲状腺機能亢進症もしくは甲状腺機能低下症、または耐糖能異常などのグレード4の薬物関連内分泌有害事象はそれぞれ、医療モニターとの議論および承認後に中止を必要としない。
以下の例外を除く、C群において12週間以上の間、イピリムマブを投与しなかった処置の延期:延長されたステロイド漸減のような薬物関連有害事象を管理するための投与延期は許容される。C群において12週間以上持続する投与延期を有する対象において処置を再開する前に、医療モニターに相談する必要がある。腫瘍の評価は、投与が延期されてもプロトコールに従って継続すべきである。
非薬物関連理由によって生じた、C群において12週間以上の間、イピリムマブを投与しなかった処置の延期は、医療モニターによって承認されれば許容され得る。C群において12週間以上続く投与の延期を有する対象において処置を再開する前に、医療モニターに相談しなければならない。投与を延期する場合でも、プロトコールに従って腫瘍の評価を継続すべきである。腫瘍の評価は、投与が延期されてもプロトコールに従って継続すべきである。
イピリムマブの中止の評価は、ニボルマブの中止の評価とは別に行われるべきである。中止の基準に重複はあるが、中止の基準がイピリムマブについては満たされるが、ニボルマブについては満たされない場合、イピリムマブが中止されるとき、ニボルマブでの処置は継続され得る。
B群の対象が、イピリムマブの中止基準を満たすが、ニボルマブの中止基準を満たさないとき、ニボルマブでの処置は、有害事象が完全に解消されるまで再開されることはなく、対象は、それらが有害事象の処置に必要である場合、ステロイドを中止した。イピリムマブとの関連は、原資料で十分に文書化されるべきである。
最初の4サイクル中のB群の対象、またはC群の対象が、中止の基準を満たし、治験医が、該事象が両方のまたは一方の治験薬に関連するか判定できない場合、該対象は、ニボルマブおよびイピリムマブの両方を中止し、治験の処置段階から外されるべきである。
白金併用化学療法剤の投与中止
以下に特定されている場合を除いて、白金併用化学療法レジメンにおける両化学療法剤は、以下のいずれかのために中止すべきである:グレード3以上の末梢ニューロパシー;臨床的に重篤な出血に関連する、グレード3以上の薬物関連血小板減少症;以下の基準を満たす薬物関連肝機能検査(LFT)以上は、中止する必要がある:2週間以上の、ASTまたはALT>5〜10xULN、ASTまたはALT>10xULN、総ビリルビン>5xULN、または同時にASTもしくはALT>3xULNおよび総ビリルビン>2xULN;シスプラチンに関連するクレアチニンクリアランスが<50mL/分に減少する(Cockroft Gault式を使用)と、シスプラチン投与の中止を必要とする;同じ薬物関連有害事象の2回の以前の用量減少後に再発する薬物関連有害事象は、以前に用量を減少されていた薬物(複数可)の中止を要する;グレード3以上の薬物関連過敏症反応または輸液反応は、反応を引き起こすと思われる薬物(複数可)の中止を必要とする。過敏症反応または輸液反応に関与していないと思われる薬物は継続してもよい;治験医が用量減少によって管理されないと判断したグレード4の薬物関連有害事象は、その事象を引き起こしたと思われる薬物(複数可)の中止を必要とする。その事象に関連していないと思われる薬物は継続してもよい;前回の投与から6週間を超えて、任意の治験薬(複数可)の投与の遅延をもたらす事象は、以下の例外を除いて、その薬物(複数可)の中止を必要とする:
BMS医療モニターにより承認されれば、非薬物関連理由によって生じる以前の投与から6週間を超えて継続する投与の延期が許容され得る。6週間以上持続する投与延期を有する対象の処置を再開する前に、BMS医療モニターに相談する必要がある。このような投与の延期中に臨床的に示された場合には、安全性および臨床検査を評価するための定期的な治験来院も6週間毎に、またはそれ以上の頻繁で継続すべきである。
有害事象、検査所見異常、または併発疾患は、治験医の判断で、白金併用化学療法を続けている対象に実質的な臨床的リスクを提示する。治験医は、投与中止に関する追加のガイダンスを得るために、化学療法薬がどの対象に投与されているかについて、地域の使用上の注意(local labeling)を調査すべきである。
シスプラチン単独を中止するゲムシタビン/シスプラチンを受容する対象は、治験医の裁量で、白金併用サイクルの残りの期間(合計6サイクルまで)を、ゲムシタビン/カルボプラチンに切り替えることができることを特記する。シスプラチン単独を中止するペメトレキセド/シスプラチンを受容する対象は、治験医の裁量で、白金併用サイクルの残りの期間(合計6サイクルまで)を、ペメトレキセド/カルボプラチンに切り替えることができる。
疾患進行後の処置(A、BおよびC群)
免疫療法で処置された一部の対象は、当初にPDの証拠があっても、臨床的利益を受け得る。対象は、以下の基準を満たす限り、RECIST 1.1で定義された初めてのPD後の処置のために、A群においてニボルマブを、またはB群およびC群においてニボルマブ+イピリムマブを継続することが許可され得る:治験医により評価された臨床的利益および急性疾患進行なし;対象が治験処置に許容性である;安定したパフォーマンスステータス;進行後の処置が、疾患進行の重大な合併症(例えば、CNS転移)を予防するための緊急介入を遅らせない;ならびに、対象が、合理的に予測可能なリスクもしくは不快感、または他の代替療法選択肢を記載したICFを用いて、追加のニボルマブおよび/またはイピリムマブ処置を受ける前に書面によるインフォームドコンセントを提供する。
フォローアップ調査は、先のPDの6週間±5日以内に実施され、腫瘍サイズの減少、または疾患の進行の継続があったかどうかを決定すべきである。その後の調査は、さらなる進行が決定されるまで、12週間毎に実施されるべきである。
治験医は、対象が処置を継続することにより臨床的利益を達成し続けていると判断しているとき、対象は、治験に留まり、表18−20(実施例1)の時間とイベントのスケジュールに従ってモニタリングを受け続けなければならない。
進行後に治験処置を継続するA、BおよびC群の対象について、さらなる進行は、初めてのPDのときから腫瘍量のさらに10%の増加として定義される。これには、初めてのPDのときと比較して、全ての標的病変の直径の和および/または新たな測定可能な病変の直径の増加が含まれる。ニボルマブおよび/またはイピリムマブ処置は、さらなる進行の記録に基づいて永久に中止されるべきである。
新たな病変は、最も長い直径が少なくとも10mmであるとき(少なくとも15mmの短軸を有さなければならない病理学的リンパ節を除く)、最初の進行時に測定可能であると考えられる。最も長い直径が少なくとも10mmまで増加するとき(少なくとも15mmの短軸を有さなければならない病理学的リンパ節を除く)、最初の進行時に測定不可能であると考えられる新たな病変は、測定可能となる可能性があるため、腫瘍量に含まれる。総腫瘍量の10%の相対的増加が、測定可能な新たな病変の包含によるものである場合、これらの新たな病変は、少なくとも5mmの絶対的増加を示さなければならない。
免疫療法剤の管理アルゴリズム
免疫療法(I−O)剤は、他の治療クラスによって引き起こされるAEとは重症度および期間が異なるAEと関連する。ニボルマブおよびイピリムマブは、このプロトコールにおいて免疫腫瘍剤とみなされている。免疫療法剤に関連するAEの早期認識および管理は、重篤な毒性を軽減する可能性がある。管理アルゴリズムは、AEの以下のグループを評価し、管理するために、治験医を補助するために開発された:消化器;腎臓;肺;肝臓;内分泌;皮膚;および、神経。アルゴリズムは、ニボルマブとイピリムマブの両方の治験薬概要書に記載されている。
ニボルマブまたはイピリムマブの輸液反応の処置
ニボルマブおよびイピリムマブは、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含むため、免疫原性でなく、輸液反応または過敏症反応を引き起こす可能性は低い。しかしながら、このような反応が起きると、発熱、悪寒、硬直、頭痛、発疹、掻痒、関節痛、低血圧または高血圧、気管支痙攣、あるいは他の症状が現れることがある。輸液反応は、NCI CTCAE(Version 4.0)のガイドラインに従って評価されるべきである。
処置の推奨事項は以下に記載されており、必要に応じて地域の処置基準およびガイドラインに基づいて変更されてよい:
グレード1の症状について:(軽度の反応;点滴中断は示されていない;介入は示されていない)、症状が回復するまで、ベッドサイドに留まり、対象をモニタリングする。以下の予防的前投薬:追加のニボルマブまたはイピリムマブ投与の少なくとも30分前に、ジフェンヒドラミン50mg(またはその同等物)および/またはアセトアミノフェン/パラセタモール325〜1000mg、が後の点滴のために推奨される。
グレード2の症状について:(中程度の反応は、治療または点滴の中断を必要とするが、対症療法[例えば、抗ヒスタミン薬、非ステロイド性抗炎症薬、麻薬、コルチコステロイド、気管支拡張剤、IV輸液];24時間以内に示された予防薬、に速やかに応答する)、ニボルマブまたはイピリムマブの点滴を中止し、通常の生理食塩水の静注を開始し、対象をジフェンヒドラミン 50 mg IV (または同等物)および/またはアセトアミノフェン/パラセタモール 325〜1000mgで処置する;症状がなくなるまで、ベッドサイドに留まり、対象をモニタリングする。コルチコステロイドおよび/または気管支拡張剤療法も、適切に投与することができる。点滴を中断した場合、症状が解消されたときに元の速度の50%で点滴を再開する;30分後にさらなる合併症が起こらなければ、その速度は元の点滴速度の100%に増加してもよい。対象を注意深くモニタリングする。症状が再発したとき、その診察時には、さらなるニボルマブまたはイピリムマブは投与されない。ジフェンヒドラミン 50mgをIV投与し、症状がなくなるまで、ベッドサイドに留まり、対象をモニタリングする。
後の点滴のために、以下の予防的前投薬が推奨される:ジフェンヒドラミン 50mg (または同等物)および/またはアセトアミノフェン/パラセタモール 325〜1000mgは、ニボルマブまたはイピリムマブの点滴の少なくとも30分前に投与されるべきである。必要に応じて、コルチコステロイド(SoluCortef25mgまで、または相当量)を使用することができる。
グレード3または4の症状について:(重度の反応、グレード3:長期間の[すなわち、症状改善薬への迅速な応答および/または短時間の点滴の中止のない];初期の改善後の症状の再発;他の臨床後遺症による入院[例えば、腎障害、肺浸潤]。グレード4:生命を脅かす;示される圧または換気補助)、直ちに、ニボルマブまたはイピリムマブの点滴を中止する。通常の生理食塩水のIV点滴を始め、以下のとおりに対象を処置する:推奨される気管支拡張剤エピネフリンの、皮下投与のために1:1000溶液を0.2〜1mgまたはIV投与のためにゆっくり注入した1:10,000溶液を0.1〜0.25mg、および/または、必要に応じて、ジフェンヒドラミン50mg IVと共にメチルプレドニゾロン 100mg IV(または相当量)。対象は、治験医が、症状が再発しないことを確認するまで、モニタリングされるべきである。ニボルマブまたはイピリムマブは永久に中止され得る。
遅発性過敏症状(例えば、処置後1週間以内の、限局性または全身性の掻痒の出現)の場合、対症療法(例えば、経口抗ヒスタミン剤またはコルチコステロイド)を施すことができる。
フォローアップ手順および生存手順を表12に示す。
安全性評価
ベースライン時に、関連する基礎疾患を捉えるために病歴を入手する。ベースライン検査は、体重、身長、ECOGパフォーマンスステータス、血圧(BP)、心拍数(HR)、体温および酸素飽和度(休息時のパルスオキシメトリーによる)(必要に応じて補給酸素の量もモニターする)を含んで、初回投与前の28日以内に行うべきである。ベースラインの徴候および症状は、初回投与前の14日以内に評価されるものである。併用療法は、初回投与前の14日以内から治験期間を通して収集される。
ベースライン地域検査値評価は、初回投与前の14日以内に行われるべきであり、鑑別を伴う/伴わないCBC、LFT(ALT、AST、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ)、BUNまたは血清尿素レベル、クレアチニン、アルブミン、Ca、Mg、Na、K、Cl、リン酸塩、LDH、グルコース、アミラーゼ、リパーゼ、TSH、遊離T4および遊離T3を含む甲状腺機能検査が含まれる。
無作為化前の28日以内に、以下のベースライン地域検査室評価を行うべきである:B型肝炎およびC型肝炎の検査(HBV sAgおよびHCV抗体またはHCV RNA)。
WOCBP(地域的に行われる)の妊娠検査は、ベースラインで1日目前の24時間以内に行われ、その後A群およびC群に割り当てられた対象については4週間(2サイクル)±3日毎に、(B群およびD群に割り当てられた対象については)3週間(各サイクル)±3日毎に行われる。妊娠検査は、各処置サイクルの1日目の24時間前(投与前)以内でなければならない。
治験中、各投与前の3日以内に以下の地域検査値評価を行う:鑑別を伴うCBC、LFT(ALT、AST、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ)、BUNまたは血清尿素レベル、クレアチニン、アルブミン、Ca、Mg、Na、K、Cl、リン酸塩、LDH、グルコース、アミラーゼ、およびリパーゼ。甲状腺機能検査は6週間毎に行うべきである。
対象がいずれかの治験薬を受容した場合、該対象は安全性について評価される。毒性評価は、治療段階中継続する。安全性フォローアップ段階では、毒性評価は直接実施する必要がある。
有害事象およびラボテスト値は、NCI−CTCAEバージョン4.0に従ってグレード分けされる。治験中の体重、ECOGパフォーマンスステータス、およびバイタルサインは、投与前の各治験来院時に評価されるべきである。バイタルサインはまた、点滴前、点滴中および点滴後の実施施設の標準療法に従って取られるべきである。安静時および運動時のパルスオキシメーターによる酸素飽和度(必要に応じて補給酸素の量もモニターする)は、投与前の各治験来院時に評価されるべきである。
処置の際、地域検査値評価は、投与前の72時間以内に完了されなければならない。非臨床治験に必要なラボテストを含む追加の測定は、臨床医判断によって実施するか、地域の規制に従うべきである。全治験薬に関連する毒性が解消し、ベースラインに戻り、もとに戻らないとみなされるまで、サイト/ローカルラボにて、毒性(例えば、予期される薬物誘発性の肝酵素の評価)を追跡調査段階でモニタリングする。
パルスオキシメトリーによる酸素飽和度は、各投薬の前に、および対象が任意の新規または悪化する呼吸器症状を有する時点で、得られるべきである。安静時および運動時の値は、各時点で得られるべきである。運動の程度は、治験医の判断に基づくべきであるが、治験を通して、個々の対象ごとに一貫していなければならない。患者の状態が変化した場合、治験医は医学的判断に基づいて運動の程度を変更することができる。対象が、パルスオキシメトリーまたは他の肺関連徴候(低酸素症、発熱)または可能性のある肺有害事象と一致する症状(例えば、呼吸困難、咳、発熱)を示す場合、患者対象は肺毒性を排除するために直ちに評価されるべきである。肺毒性が疑われる場合の管理アルゴリズムは、ニボルマブの治験薬概要書に記載されている。
このセクションで言及された評価のいくつかは、eCRF内のデータとして捕捉されないかもしれない。それらは、処置する医師による安全監視として使用されることが意図されている。
Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスは、スクリーニング時および各投与来院前の72時間以内に評価され、文書化される(表7参照)。
WOCBPは、妊娠検査を実施する必要がある。WOCBPは、陰性の血清または尿妊娠(各処置サイクルの1日目前の24時間以内に最低感度25IU/Lまたは同等の単位のHCG)を示さなければならない。
甲状腺機能検査が行われる。スクリーニングでは、甲状腺機能検査には、TSH、遊離T3および遊離T4が含まれる。その後の時点で、甲状腺機能検査はTSHのみからなる。しかしながら、TSHが異常である場合には、遊離T3および遊離T4の再検査(reflexive testing)を行うべきである。
予期される内分泌系の有害事象(異常な甲状腺機能を含む)の管理アルゴリズムは、ニボルマブの治験薬概要書に記載されている。
適格基準を満たした全ての対象は、スクリーニング中に12誘導ECGを実施することが要求される。臨床的に必要なときは、追加のECGを治験中に実施することができる。
PO/IV造影剤を用いた造影剤増強CTまたは造影剤増強MRIは、放射線腫瘍造影を評価するための画像診断法である。対象に造影剤に対する既知のアレルギーがあるときは、地域の標準予防策を用いて可能な限り造影剤による評価を行うか、または代替法を用いること。造影剤が厳格に禁忌である場合、非造影剤スキャンでもよい。対象がCT IV造影剤に禁忌である場合、胸部の非造影CTならびに腹部および骨盤の造影剤増強MRIを得ることができる。
PET/CTスキャナのCTコンポーネントの使用:FDG−PET/CTなどのような併用スキャニングは、臨床診療においてますます使用されており、急速な進化を遂げている診断法/技術である。従って、本明細書に記載の推奨事項は、時間の経過と共にかなり急速に変わる可能性がある。現在、併用FDG−PET/CTの低線量または減弱補正CT部分は、解剖学に基づく有効性評価においては使用が制限されているため、それらを解剖上に基づくRECIST測定の専用の診断造影剤増強CTスキャンの代わりに使用すべきではないことが指摘される。しかしながら、FDG−PET/CTの一部として実施されたCTが診断CT(IVおよび経口造影剤)と同一画質であることをサイトが記録できるとき、FDG−PET/CTのCT部分をRECIST 1.1測定のために用いることができる。
活動性転移性疾患を除外するために、スクリーニング時に、脳のMRIが必要とされる。
骨スキャンまたはPETスキャンは、標的病変におけるRECIST 1.1応答の評価には適切ではない。そのような診断法が特定の非標的臓器を評価するために使用される唯一の診断法である選択された状況では、これらの非標的臓器は低い頻度で評価される。例えば、骨スキャンは、標的疾患において完全な応答が同定された場合、または骨における進行が疑われるときにのみ、繰り返される必要があり得る。
スクリーニング評価は、無作為化前28日以内に実施されるべきである。胸部、腹部、骨盤および脳(脳転移を除外するため)に加えて、疾患の既知の部位は全て、ベースライン時に評価されるべきである。その後の評価には、ベースライン時に用いられたのと同じイメージング方法および技術を用いて、胸部、腹部、骨盤および疾患の全ての既知の部位が含まれるべきである。
X線撮影腫瘍応答を、無作為化の日から第6週(±7日)に、その後、最初の12月間(第48週まで)は6週(±7日)毎に、その後は12週(±7日)毎に、疾患の進行が記録されるか、または処置が中止されるまで(いずれか遅い時点まで)、評価する。脳転移の病歴を有する対象は、初回投与日から約12週間毎に、または臨床的に必要なときはより早く、監視MRIを有し得る。
さらに、進行後のニボルマブおよび/またはイピリムマブ処置を受ける対象は、そのような処置が中止されるまで腫瘍評価を継続しなければならない。
腫瘍評価項目は、全ての無作為化された対象における全生存期間(OS)である。この治験の副次評価項目には、すべての無作為化対象において、BICR評価に基づいたPFSおよびORRが含まれる。全ての無作為化対象は、最初の12月間(48週目まで)には6週(±7日)毎、その後は12週(±7日)毎[6週(±7日)の最初の治験中の評価から開始]に、腫瘍サイズの変化を決定するために、X線画像評価によりモニタリングされ得る。RECIST 1.1基準が評価に使用される。
薬物動態評価および免疫原性評価
PK評価および免疫原性評価のためのサンプルは、表13から表15に記載されているように、ニボルマブおよびイピリムマブを投与されている全ての対象から集められる。全ての時点(time point)は、治験薬投与の開始に関連する。全ての処置中の時点は、治験薬が投与された日と整合するように意図されており、異なる日に投与が行われる場合、PKおよび免疫原性のサンプリングは、それに応じて調整されるべきである。
薬物動態および免疫原性サンプルの採取および処理
PK評価および免疫原性評価の詳細なスケジュールを、表13から表15に示す。PKサンプルを、有効なリガンド結合アッセイによりニボルマブ/イピリムマブについて分析する。免疫原性サンプルを、有効な免疫原性アッセイにより抗ニボルマブ抗体/抗イピリムマブ抗体について分析する;サンプルはまた、有効な方法によって中和抗体について分析することもできる。血清サンプルは、技術探索目的で抗薬物抗体を測定する探索的方法によって分析することができる;探索的な結果は報告されない。PKまたはバイオマーカー評価のために指定された血清サンプルを、必要であれば、免疫原性分析にも使用することができる(例えば、完全な免疫原性評価のためには不十分な量または予期される免疫原性に関連するAEのフォローアップ)。
バイオマーカー評価
腫瘍組織標本
登録前6月以内に採取された保存(または新鮮)FFPE腫瘍組織は、分析的に検証されたIHCアッセイを用いてPD−L1状態の決定のために第三者機関に送られなければならない。PD−L1染色組織サンプルは、治験実施者によって同定された中央ラボの病理担当者によって評価され、最低100個の評価可能な腫瘍細胞のうち5%以上の細胞で膜染色が観察された場合、PD−L1+とスコアする。また、これらに限定されないが、PD−L1、PD−L2、PD−1およびTILに関連する他のマーカー(例えば、CD4、CD8、FOXP3)などの免疫調節タンパク質の量を決定するために、IHCにより組織を分析する。これらのデータは、臨床エンドポイントとの関連性について評価される。
FFPETはまた、NSCLCに関連する予後または予測マーカー(例えば、遺伝子変異、増幅または過剰発現)の探索的分析のために、FISH、遺伝子変異検出法、免疫表現型決定法により、および/またはQPCRにより評価することができるか、またはこれらの因子がニボルマブに対する応答に影響を与えるかどうかを決定することができる。
末梢血マーカー
処置前または処置中の全ての対象から採取した末梢血標本において、ニボルマブの免疫調節特性および有効性に影響を及ぼしうる様々な因子を調べる。これらの調査からのデータを、応答、生存および/または安全性(有害事象)データとの関連について評価する。いくつかの分析が完了し、以下で簡単に説明する。
単一ヌクレオチド多型(SNP)
処理の前に全対象から全血を採取して、一塩基多型(SNP)分析のためのゲノムDNAを作製する。これらの分析を、PD1および他の免疫調節シグナル伝達経路に関連する遺伝子内のSNPに焦点を当てて行い、それらの遺伝子内の自然変異がニボルマブに対する応答および/または処置中の有害事象に関連するかどうかを決定する。
血清可溶性因子
循環タンパク質の有病率およびそれらがニボルムブの臨床活性に与える影響を理解するために、サイトカイン、ケモカインおよび他の関連する免疫調節性の血清−可溶性因子(例えば、可溶性PD−L1)のパネルのタンパク質濃度を、ベースライン時および処置中に調べる。
血清マイクロRNA(miRNA)
マイクロRNA(miRNA)は、mRNA転写物の量およびそれらのタンパク質への翻訳を調節する、広範に発現される小さいRNAである。グローバルなmiRNA発現プロファイリングは、癌研究において益々一般的になっており、現在、疾患のステージまたは臨床結果に相関するmiRNAシグネチャは、種々の癌タイプで利用可能になっている。miRNAの発現プロファイリングは、薬物応答の予測および将来の層別化のための分子マーカーの同定にも有用であり得る。興味深いことに、miRNAは血清中で安定であり、腫瘍において過剰発現されるmiRNAを表し、および/または免疫系活性を反映し得る。各処置群に無作為化された対象からベースライン時および処置中に採取した血清を、マイクロアレイまたは同様の方法によってmiRNA含有量について分析する。得られたmiRNAプロファイルは、処置後に生じるmiRNA存在量の変化ならびに応答および生存データとの関連付けについて評価される。最終的に、ユニークな免疫関連および/またはNSCLC関連のmiRNAシグネチャが存在するかどうか、およびそれらがニボルマブ治療に応答する可能性のある(またはそうでない)患者を同定するために有用である可能性があるかどうかを判断することが、最終目標である。
骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)
骨髄由来サプレッサー細胞は、T細胞活性化および増殖を抑制することができる免疫細胞集団である。末梢血中の低い前処置MDSCレベルは、免疫療法剤であるイピリムマブで処置した黒色腫患者における、より良好な全生存期間と関連し得る。MDSCは、薬力学的変化または結果との関連性を評価するために、ベースライン時および処置時に測定される。
末梢血単核細胞(PBMC)
米国およびカナダのみのサイトでは、全血中の末梢血単核細胞が、ベースライン時および処置時に対象から採取され、フローサイトメトリーまたは他の方法(例えば、ELIspot)によって分析されて、免疫細胞活性を評価する。
腫瘍生検遺伝子発現プロファイリング
実行可能であるように、ベースライン時または処置開始後の何れかの時点における任意の新鮮な生検を収集することができる。新鮮な腫瘍組織サンプルまたはFFPE腫瘍組織サンプル内のレーザーキャプチャーマイクロダイセクションによる細胞のいずれかに由来するRNAについて、遺伝子アレイ技術、定量的RT−PCRまたは他のハイスループットプロファイリング技術により遺伝子発現を調べ、腫瘍細胞および/または腫瘍微小環境における免疫関連遺伝子の発現を検出する。
これらのサンプル由来の腫瘍組織または誘導されたRNA/DNAは、NSCLCに関連する予後または予測分子マーカー(例えば、遺伝子変異、増幅または過剰発現)の探索的分析のために、FISH、遺伝子変異検出法、免疫表現型決定により、および/またはQPCRにより評価することができ、またはこれらの因子がニボルマブに対する応答に影響するかどうかを決定することができる。
アウトカムリサーチ評価
健康関連の生活の質(QOL)の評価は、臨床効果のますます重要な局面である。そのようなデータは、対象の視点から処置の影響を理解し、医師の報告を通じて捕らえられない可能性のある患者の経験への洞察を提供する。一般的な健康関連QOLスケールは、健康経済モデルの利用価値を計算する上で必要なデータをさらに提供する。EQ−5Dは、一般的な健康関連QOL(生活の質)に及ぼす治験処置の影響を評価するために収集され、これは、健康経済モデルの投入、費用対効果分析などにも用いられる。
患者が報告した疾患関連症状に対する治験処置の影響を評価するために、肺癌症状スケール(LCSS)を集める。肺癌症状スケールは、疾患関連症状に対する処置の影響を評価するために設計された検証済みの機器である。それは、呼吸困難、咳、疲労、疼痛、喀血ならびに摂食障害+症状苦悩、活動障害および世界的な健康関連QOL(HRQoL)の3つのサマリー項目に関連する6つの症状の具体的な質問からなる。障害の程度は、0〜100のスコアを有する100mmのビジュアルアナログスケールに記録され、0が最高スコアを表す。
一般的な健康状態は、EQ−5Dを用いて測定される。EQ−5Dは、自己報告された健康状態の指標として使用するための標準化された機器である。EQ−5Dは、5つの次元(可動性、セルフケア、日常活動能力、疼痛/不快感および不安)およびビジュアルアナログスケール(VAS)を含む。EQ−5Dから作製されたユーティリティー・データは、推奨されており、費用対効果分析に一般的に使用される。
免疫原性評価
ニボルマブおよびイピリムマブの免疫原性分析のための血液サンプルを、表13−15に示すスケジュールに従って採取する。各処置群の対象から採取したサンプルを、検定済イムノアッセイにより、ニボルマブ/イピリムマブの抗薬物抗体(ADA)の開発について評価する。ニボルマブ/イピリムマブに対する中和ADA応答についてもサンプルを分析することができる。
有害事象
有害事象(AE)は、治験薬を投与される臨床研究対象におけるあらゆる新たな好ましくない医療上の事象および既存の病状の悪化として定義され、それは必ずしもこの処置と因果関係を有さない。従って、AEは、治験薬に関連するとみなされるか否かにかかわらず、治験薬の使用に一時的に関連する好ましくないかつ意図しない徴候(異常な検査値など)、症状または疾患であり得る。
治験薬に対する因果関係は医師によって決定され、全ての有害事象(AE)が評価するために用いられるべきである。因果関係は以下の何れかであり得る:
関連する:治験薬投与とAEとの間に合理的な因果関係が存在する。
関連しない:治験薬投与とAEとの間に合理的な因果関係がない。
用語“合理的な因果関係”とは、因果関係を示唆する証拠が存在することを意味する。
重篤な有害事象(SAE)は、任意の用量で結果的に死に至る不適切な医学的事象であり、生命を脅かすもの(事象の発生時に対象が死亡するリスクがある事象として定義される;それがより重篤な場合に死を引き起こす可能性のある事象を意味するものではない);入院加療が必要であるか、または入院期間の延長を引き起こすもの;結果的に、永続的または重大な障害/機能不全に陥るもの;先天性異常/先天性欠損症を来すもの;重大な医学的事象であるもの(即座に生命を脅かしたり、死亡もしくは入院には至らなくとも、適切な医学的および科学的判断に基づいて、対象を危機に曝したり、上記の定義に列挙さらた他の重大な結果に至らぬように処置[例えば、医療、外科手術]を必要とし得る医学的事象と定義される)である。そのような事象の例には、救急処置室または家庭でのアレルギー性気管支痙攣の集中治療;血液疾患または入院に至らない痙攣が含まれるが、これに限定されない。可能性のある薬物誘発性肝障害(DILI)もまた、重大な医療事象と考えられている。治験薬を介した感染因子(例えば、病原性または非病原性)の予期される伝播はSAEである。
妊娠、過剰摂取、癌、および可能性のある薬物誘発性肝障害(DILI)は、規制の定義によって常に深刻なものではないが、これらの事象はSAEとして扱われなければならない。
BMS臨床治験では、以下の入院はSAEとはみなされない:入院に至らない、24時間以内の救急処置室または他の病院への外来診(重要な医学的事象または生命にかかわる事象とはみなされない限り);承諾に署名する前に計画された選択的な手術;計画された医療/外科処置のためのプロトコールによる入院;ベースライン/健康状態の傾向(例えば、常套の大腸内視鏡検査)に対する入院を必要とする常套の健康評価;疾患の治癒以外の医療/外科的入院であり、治験に入る前に計画されている入院;健康状態に関係せず、医療/外科的介入を必要としない別の生活環境(例えば、居住施設の不足、経済的貧困、介護者の休息、家族の状況、行政上の理由など)による入院;または、他のSAEが存在しない場合の抗癌療法剤の投与のための入院(腫瘍学のプロトコルに適用)。
可能性のある薬物誘発性肝障害(DILI)
可能性のある薬物誘発性肝障害は以下のように定義される:
1.正常の3倍上限(ULN)を超えるAT(ALTまたはAST)上昇、
2.胆汁うっ滞(血清アルカリホスファターゼの上昇)の初期発見なしの、2倍ULNを超える総ビリルビン、および
3.ウイルス性肝炎、既存の慢性もしくは急性肝疾患、または肝毒性であることが知られている他の薬物の投与を含むが、これに限定されない、AT上昇および高ビリルビン血症の他の即時の明らかな可能性のある原因はない。
サンプルサイズの決定
サンプルサイズは、各比較について0.0167(両側)のタイプIエラーレベルおよび90%検出力で、ニボルマブと白金併用化学療法との間のOSを比較し、ニボルマブとイピリムマブの併用と白金併用化学療法との間のOSを比較して、計算される。事象数および検出力は、白金併用化学療法群における指数分布および各実験処置群における区分的な混合分布を仮定して計算される。表16は、全生存分析の重要なパラメーターをまとめたものである。
転移性黒色腫患者におけるイピリムマブの第III相治験(Hodi FS, et al., N Eng J Med. 2010;363: 711‐723;Robert C, et al., N Eng J Med. 2011;364: 2517‐2526)の結果は、生存曲線の末尾に長く持続するプラトーとして観察されたイピリムマブで処置された患者において、長期生存の利益を実証している。結果はまた、治験の実験群および対照群間の生存曲線に長期間に亘って効果を認める遅延型の効果を示唆した。長期生存および利益の遅発性の両方は、それらの作用機序に基づいて免疫腫瘍薬に特有であり得る。
白金併用化学療法群におけるOSの指数分布仮定は、扁平上皮および非扁平上皮NSCLCの対象の混合の考察に基づいて行われる。加えて、白金併用化学療法群の患者は、進行後に第2選択療法のニボルマブ(または別の抗PD−1剤)を受け入れる可能性についても考慮されている。白金併用群からの対象の約30%が、第2選択療法の抗PD−1療法を受ける可能性があると推定される。実際の確率は、事象数に必要な調整を可能にするために厳密に監視される。
本治験は、白金併用療法群(OS中央値13月)の指数関数的なOS分布およびOS中央値18月を有する実験処置群のそれぞれについて区分混合分布を推定する。パワーカルキュレイションは、Power Analysis & Sample Size Software(登録商標)(PASS)を用いて実行されたシミュレーションによって実行された。パワーカルキュレイションに関する56の追加的詳細は、統計解析計画で文書化される。
約1200名の対象を、1:1:1:1の比で4つの処置群に無作為化する。最終的な分析を、対照群で257のイベントが生じた後に行い、これらのイベントは、DMCを支持する非盲検下独立統計者によりモニターされる。20%のスクリーニング失敗率を仮定すると、1200名の対象を無作為化するために、約1500名の対象が登録されると見積もられる。区分定数受入率(第1〜2月に8名の対象/月、第3〜4月に40名の対象/月、第5〜6月に85名の対象/月、第7〜8月に138名の対象/月、第8月以降に170名の対象/月)を仮定すると、最終的なOS分析率のために必要な死亡数を得るのに約48月かかる(14月の見越しおよび34月の生存フォローアップ)。
エンドポイント
第一の目的は、全ての無作為化された対象においてOSのエンドポイントによって測定される。それは、無作為化日と何らかの原因による死亡日との間の時点として定義される。OSは、対象が生存していることが分かった最後の時点で打ち切られる。対象が、治験薬を投与されている間および治験薬を中止してから3ヶ月毎に、OSを継続して追跡する。
無憎悪生存期間(PFS)は、BICRによって決定される通り、無作為化日と、記録された進行の初日または何らかの原因による死亡のいずれかが最初に起こる時との間の時点として定義される。報告された進行がなく死亡した対象は、死亡した日に進行したとみなされる。進行または死亡しなかった対象は、最後に評価可能な腫瘍評価の日に打ち切られる。治験中に腫瘍評価を受けておらず、死亡しなかった対象は、無作為化の日に打ち切られる。緩和局所療法を有するか、または以前に報告された進行のない抗癌療法を開始した対象は、その後の抗癌療法または緩和局所療法の開始前の最後の評価可能な腫瘍評価の日に打ち切られる。腫瘍評価は、第6週(±7日)に、第48週(±7日)まで6週ごとに、およびそれ以降12週(±7日)毎に、疾患の進行または処置の中止のいずれか遅い時点まで、実施することが予定される。
客観的奏効率(ORR)は、対象の数をCRまたはPRのBORを各処置群の無作為化された対象の数で割った数と定義される。BORは、無作為化日と、BICRにより決定されるRECIST 1.1に基づき客観的に記録された進行日、または緩和局所療法の開始日、またはその後の抗癌療法の日のいずれか早い日との間に記録された、最良の効果の表示として定義される。記録された進行または緩和局所療法もしくはその後の抗癌療法がない対象では、全ての利用可能な応答表示は、BOR判定に寄与する。進行後に投薬を継続している対象では、BORは、RECIST 1.1に定義される初期の進行時に記録された応答指定に基づいて決定されるべきである。
PD−L1タンパク質発現は、確認されたDAKO PD−L1 IHCアッセイを用いて任意の強度の原形質膜PD−L1染色を実証する腫瘍細胞の割合として定義される。
疾患関連症状の12週までの改善率は、無作為化された全ての対象のうち無作為化と第12週との間の任意の時点でLCSSにより測定されるような疾患関連症状改善を有した対象の割合として定義される。LCSSの最初の6つの項目は、スコア0から100までの範囲の症例スケールにまとめられ、0が最高スコアであり、100が最低スコアである。症状改善を定義するのに用いられるLCSSの最小の重要な変化は、視力スケール(VAS)において約10mmの変化であり、その定義は、他の治験でこのNSCLC症状のスケールに用いられている。疾患関連症状の改善は、対象のベースライン平均LCSSスコアと比較して、平均LCSS VASが10mm減少する対象として定義される。LCSSの質問は、治験の最初の6月の間はスケジュールされたサイクルの1日目、その後は残りの治験中6週毎、および最初の2回のフォローアップ外来時に完了する。各群の治験評価の頻度についてはセクション5.1を参照のこと。
安全性および耐容性は、有害事象、重篤事象、死亡および検査値異常の発生率によって測定される。
有害事象評価およびラボテストは、ベースライン時および各後続サイクルの開始時に治験中継続して実施される。
PKは、血清濃度から測定される。サンプルは、ニボルマブの薬物動態を特徴付け、曝露安全性および曝露有効性の関係を探るために、採取される。
3つの主要なOS分析の各々は、多重複度に対処するためにHochbergの手順を用いて、すべての無作為化された対象において、組織およびPD−L1状態により階層化された両側対数ランク検定を用いて行われる。Cox比例ハザードモデルを用いて、治療群を単一の共変量として、上記の因子で層別化して、ハザード比(HR)および対応する両側(1調整α)%信頼区間(CI)を推定する。OS曲線、95%CIのOS中央値、ならびに95%CIの12月および24月でのOS率を、カプラン・マイヤー法を用いて推定する。
OS優位性が少なくとも1つの比較について実証されている場合、重要な第2のエンドポイントのゲートキーピングテストアプローチは、統計的分析プランに記載されているように、追加の実験対対照比較に適用される。第2のエンドポイントのテストのために保持されるαレベルは、正のOS比較に依存し、全体的なタイプIエラーが適切に維持されることを保証する。重要な第2のエンドポイントは、次の階層順で試験される:
1)3つの実験的処置のそれぞれを対照群と比較するために、全ての無作為化された対象において組織およびPD−L1状態によって層別化された両側対数ランク検定を用いて、PFS(BICR評価に基づく)分析を行う。HRおよび対応する両側(1‐調整α) % CIを、Cox比例ハザードモデルを用いて、処置群を単一の共変量として用いて推定し、上記因子によって層別化する。PFS曲線、95% CIを有するPFS中央値、ならびに95% CIを有する6月および12月のPFS率を、カプラン・マイヤー法を用いて推定する。
2)3つの実験的処置のそれぞれを対照群と比較するために、PD−L1状態および組織によって層別化された両側コクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)検定を用いて、ORR(BICR評価に基づく)分析を行う。関連するオッズ比および(1‐調整 α) % CIも計算する。さらに、ORRおよびそれらに対応する95%正確なCIを、4つの処置群のそれぞれについてClopper−Pearson法を用いて計算する。
3)組織およびPD−L1状態によって層別化された両側対数ランク検定を用いて、実験群間のOSのペアワイズ比較を行う。HRおよび対応する両側(1‐調整 α) % CIを、Cox比例ハザードモデルを用いて、処置群を単一の共変量として用いて推定し、上記因子によって層別化する。
ニボルマブ単剤療法群とニボルマブおよびイピリムマブ併用群との相違を評価するために、PFSおよびORRの記述統計を行う。これには、PFSのHRおよび対応する両側95% CIを伴う中央値、ならびに対応する95% CIを伴うORRオッズ比が含まれる。
PD−L1発現の分析を説明する。PD−L1発現の分布を全集団に基づいて調べる。PD−L1発現と有効性(ORR、OS、PFS)との潜在的な関連性を評価する。有意な関連性が示唆される場合、今後の課題としては、PD−L1陽性またはPD−L1陰性として対象を分類するための最適なPD−L1発現カットオフの選択を含む、予測バイオマーカーとしてPD−L1発現を評価する。カットオフの選択および検証は、複数の治験を通じて実行される。
安全性分析を、全ての処置対象において実施する。安全性の記述統計は、米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン4.0を用いて処置群により提示される。全治験中のAE、薬物関連AE、SAEおよび薬物関連SAEは、NCI CTCAE v 4.0基準毎にワーストグレードを用いて、器官別大分類および基本語により、表形式で示す。血液学、凝固、化学、肝機能および腎機能を含む治験中のラボパラメーターを、NCI CTCAE v 4.0基準毎にワーストグレードを用いてまとめる。
この治験で得られたニボルマブ濃度データを、集団PKモデルを開発または精緻化するための臨床開発プログラムにおいて他の治験からのデータと組み合わせ得る。これらのモデルは、個々の暴露量を決定するために、ニボルマブおよびイピリムマブのPKに及ぼす内因性および外因性の共変量の影響を評価するために用い得る。加えて、モデルで決定されたニボルマブおよびイピリムマブの暴露は、有効性および安全性を組み合わせて暴露−応答分析に用いることができる。集団PKおよび暴露−応答分析の結果は、別々に報告される。
探索的バイオマーカー分析のための方法を本明細書に記載する。
アウトカムリサーチ分析を、全ての無作為化された対象に基づいて行う。期待数(すなわち、フォローアップ中の対象数)から実際に受け取ったアンケートの割合として定義されるLCSS案kネート完了率を、計算し、各評価時点でまとめる。
第12週での疾患関連症状改善率およびその対応する95%正確なCIもまた、無作為化された各群のClopper−Pearson法による計算である。ベースラインおよび各評価時点での平均症状負荷スケール指数スコアのベースラインからの変化を、記述統計(N、平均、中央値、SD)を用いて、無作為化した処置群により、まとめる。
EQ−5Dを、対象の全体的な健康状態を評価するために用いる。EQ−5Dは、本質的に、EQ−5D記述システムとEQ視覚的アナログスケール(EQ VAS)の2つのコンポーネントを備える。EQ−5D記述システムは、モビリティ、セルフケア、通常の活動、苦痛/不快感、不安/うつ病の5つの次元から構成されている。各次元には3つのレベルがある:問題なし、問題あり、重大な問題あり。EQ VASは、100ポイントの縦の、視覚的アナログスケール(0=想像できる最悪の健康状態、100=想像できる最良の健康状態)で対象の健康状態を記録する。
各評価時点における視覚的アナログスケール(EQ−VAS)上の対象の全体的な健康状態を無作為化された処置群による記述統計を用いてまとめる。
各評価時点における5つのEQ−5D次元の問題を報告する対象の割合を、問題のレベルおよび無作為化された処置群によりまとめる。パーセンテージは、評価時点で評価された対象の数に基づいている。
集団選考に基づく健康状態ユーティリティースコア(EQ−5D指標)について、要約統計量を計算する。
免疫原性を含む探索的分析のための方法を本明細書に記載する。
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これらの実施例は、さらに限定するものと解釈されるべきではない。本出願を通して引用された全ての文献の内容は、引用により本明細書中に明示的に包含させる。
実施例1
ニボルマブ単剤療法またはニボルマブ+イピリムマブ併用療法 対 白金併用化学療法での、NSCLCの処置
第3相 CA209−227治験において、ニボルマブ単剤療法またはニボルマブとイピリムマブの併用療法での処置は、ステージIVまたは再発性NSCLCを有する化学療法未施行の対象における、白金併用化学療法と比較して全生存期間(OS)の改善があるかどうかを判定するために試験される。実験群間でのOSの形式的なペア対ペア比較が行われる。
本治験はまた、ニボルマブ単剤療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法の盲検独立判定委員会(BICR)の評価に基づく無増悪生存期間(PFS)および客観的奏効率(ORR)を、以前に未処置のステージIVまたは再発性NSCLCを有する対象における白金併用化学療法と比較する。ステージIVまたは再発性NSCLCを有する対象におけるニボルマブとイピリムマブの併用療法およびニボルマブ単剤療法のPFSおよびORRの差異を評価する。
本治験はまた、PD−L1発現がOSまたはPFSの予測バイオマーカーであるかどうかを評価する。また、ニボルマブ単剤療法、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を受ける対象ならびに白金併用化学療法を受ける対象における、肺癌症状スコア(LCSS)で測定された12週間の疾患関連症状の改善を示す処置された患者の割合を評価する。
本治験の他の目的としては、1)白金併用化学療法と比較して、ニボルマブおよびニボルマブとイピリムマブの組合せの全体的な安全性および耐容性を評価すること;2)ニボルマブとイピリムマブの組合せの薬物動態を特徴付け、暴露安全性と暴露有効性の関係を検討すること;3)ニボルマブとイピリムマブの組合せの免疫原性を特徴付けること;4)ニボルマブ、ニボルマブとイピリムマブの組合せ、および白金併用化学療法の免疫相関を特徴付けること;5)ニボルマブおよびニボルマブとイピリムマブの組合せに対する臨床応答の予測腫瘍および末梢バイオマーカーを評価すること;ならびに、6)ニボルマブとイピリムマブの組合せで処置された対象および白金併用化学療法で処置された対象において、EQ−5D指標および視覚的アナログスケールを用いて全体的な健康状態を評価すること、が含まれる。
方法
治験デザイン
本治験は、ステージIVまたは再発性非小細胞肺癌(NSCLC)を有する、PD−L1陽性または陰性の、疾患進行に対して未処置の、成人(18歳以上)の男性対象および女性対象における、オープンラベルの4群、無作為化、第3相治験である。
主要な選択基準には、1)ECOGパフォーマンスステータスが1以上であること(表7参照);2)組織学的に確認されたステージIVまたは再発性NSCLC(第7回 肺癌分類学研究会(IASLC)の国際学会)扁平上皮または非扁平上皮癌を有し、進行性または転移性疾患の一次療法で事前の全身抗癌療法(EGFRおよびALK阻害剤を含む)を受けていない患者であること;および、3)RECIST 1.1基準によるCTまたはMRIにより測定可能な疾患であること、が含まれる。
主要な排除基準には、1)利用可能な標的化インヒビター療法に感受性である既知のEGFR変異を有する対象;2)利用可能な標的化インヒビター療法に感受性である既知のALK転座を有する対象;3)未処置のCNS転移を有する対象;4)活動性の、既知のまたは予期される自己免疫疾患を有する対象(I型真性糖尿病、ホルモン補充のみを必要とする甲状腺機能低下症、全身的治療を必要としない皮膚障害(白斑症、乾癬または脱毛症など)、または外部トリガーなしで再発することが予想されない症状を有する対象は、登録され得る);および、5)無作為化の14日以内にコルチコステロイド(1日当たり>10mgのプレドニゾン相当量)または他の免疫抑制剤のいずれかによる全身処置を必要とする状態を有する対象(活動性の自己免疫疾患がないとき、吸入および局所ステロイド、ならびに副腎代替ステロイド 1日当たり>10mgのプレドニゾン相当量は許可される)、が含まれる。
対象を1:1:1:1に無作為化し、組織学的状態(扁平上皮 対 非扁平上皮)およびPD−L1状態によって層別化する。PD−L1状態を、無作為化前に提出された腫瘍サンプルにおけるPD−L1タンパク質の免疫組織化学(IHC)染色によって決定する。対象は、最低100個の評価可能な腫瘍細胞における5%以上の腫瘍細胞膜染色が観察された場合、PD−L1陽性として、または最低100個の評価可能な腫瘍細胞における5%未満の腫瘍細胞膜染色が観察された場合、PD−L1陰性として同定される。
対象は、4つの治験群のうちの1つからオープンラベル処置を受ける。投与スケジュールを表17に示す。ニボルマブ(B群)および任意のペメトレキセド(D群)の維持スケジュールを表18に示す。
治験中腫瘍評価は、無作為化後の第6週に開始し(±7日)、第48週まで6週毎(±7日)に実施する。第48週後は、腫瘍評価を、進行または処置の中止のいずれか遅い方まで、12週毎(±7日)に行う。治験医がRECIST 1.1に定義される進行と評価後に、ニボルマブまたはニボルマブとイピリムマブを投与された対象はまた、そのような処置が中止されるまで腫瘍評価を継続しなければならない。登録は、約1200名の対象が無作為化された後に終了する。この治験の主なエンドポイントは、全生存期間(OS)である。登録の開始から一次OSエンドポイントの分析までの治験期間は、約48月と予想される。
治験デザイン概略図を図1に示す。
治験群
ニボルマブ単剤療法(A群)
ニボルマブ240mgを、疾患進行、許容できない毒性による中止、同意の撤回または治験の収量まで、2週間毎に、各サイクルの1日目に30分間、静脈内(IV)投与する。治験医がRECIST 1.1に定義される進行と最初に評価後の処置は、対象が、 has 治験医が臨床的に有益であり、処置に耐えられると評価した場合、許容される。投与の完了後、対象は、フォローアップ期に入る。
治験評価を、表19に記載のように集める。


ニボルマブ+イピリムマブ(B群)
ニボルマブ 1mg/kgを、30分かけてIV投与し、これと組み合わせて導入期の4サイクルは、3週間毎に、イピリムマブ 1mg/kgを30分かけてIV投与し、次いで、2週間毎に、ニボルマブ 3mg/kgを30分かけてIV投与する。ニボルマブ 1mg/kgおよびイピリムマブ 1mg/kgを両方とも、4サイクル中、各第3週の処置サイクルの1日目に投与する。4回目の処置サイクル後、ニボルマブ 3mg/kgを、疾患進行、許容できない毒性、同意の撤回、または治験終了まで、2週間毎に投与する。治験医がRECIST 1.1の定義により進行と最初に評価後の処置は、対象が治験医によって臨床的に有益であり、処置に耐えうると評価する場合、許容される。投与が完了すると、対象はフォローアップ期に入る。
治験評価を、表20に概説されるように集める。


ニボルマブ+イピリムマブ(C群)
ニボルマブ 3mg/kgを、2週間毎に30分かけてIV投与し、イピリムマブ 1mg/kgを、6週間毎に30分かけてIV投与し、その後、進行、毒性による中止、同意の撤回または治験の終了まで、ニボルマブを投与する。対象は、1つの治験薬のみを中止し、特定の状況がみたされれば、他の治験薬と共に処置を継続することができる。治験医によりRECIST 1.1定義の進行が最初に評価された後の処置は、該対象が、治験医により臨床的利益を評価され、処置に耐えられる場合に、許容される。投与の完了により、対象はフォローアップ期に入る。
治験評価は、表21に概説されているように集められる。


白金併用化学療法および任意の維持化学療法(continuation maintenance)(D群)
白金併用化学療法は、化学療法の最大6サイクルまでの間、3週間サイクルでIV投与される。化学療法処置は、疾患の進行、許容できない毒性または4−6サイクルの完了までのいずれか早いほうまで続く。白金併用化学療法レジメンは、NSCLC組織学に依存する。混合組織を有する対象は、優勢な組織に従って分類される。
扁平上皮癌を有する対象は、ゲムシタビン(1250mg/mg)とシスプラチン(75mg/m)を併用投与されるか;または、ゲムシタビン(1000mg/mg)とカルボプラチン(AUC5)を併用投与される。ゲムシタビンは、各サイクルの1日目および8日目に投与される。
非扁平上皮癌を有する対象は、各サイクルの1日目に、ペメトレキセド(500mg/m)とシスプラチン(75mg/m)を併用投与されるか;または、各サイクルの1日目に、ペメトレキセド(500mg/m)とカルボプラチン(AUC6)を併用投与される。
サイクル4の後に疾患の安定または応答を有する非扁平上皮癌を有する対象は、疾患の進行または許容できない毒性まで、維持療法としてペメトレキセドの単独投与を継続することができる。化学療法が完了すると、対象はフォローアップ期に入る。
治験評価を、表22に概説されるように集める。



処置後フォローアップ
処置後フォローアップは、対象に対して全ての処置を中止する決定が下されたときに始まる;これには、任意の維持化学療法が含まれる。疾患の進行以外の理由で処置を中止する対象は、進行またはその後の治療の開始のいずれか早い方まで、表23のスケジュールに従って腫瘍評価(臨床的に可能であれば)を継続する。これらの毒性が解消されるか、ベースラインに戻るか、または不可逆的であるとみなされるまで、対象は薬物関連毒性について追跡される。全ての有害事象は、治験薬の最終投与後、最低100日間記録される。最初の2回のフォローアップ外来の完了後、対象は生存について3か月毎に追跡される。治験評価を表23に概説されているように集める。
サンプルサイズ
サンプルサイズは、各比較について0.0167(両側)のタイプIエラーレベルおよび90%の検出力で、ニボルマブと白金併用化学療法との間のOSを比較し、ニボルマブとイピリムマブの併用と白金併用化学療法との間のOSを比較して、計算される。事象数および検出力は、白金併用化学療法群における指数分布および各実験処置群における区分的な混合分布を仮定して計算される。
約1200名の対象を、1:1:1:1の比で4つの処置群に無作為化する。最終的な分析は、対象群で257事象が発生した後に行われ、これらの事象はDMCを支持する無盲検の独立した統計担当者によって監視される。スクリーニング失敗率が20%であると仮定すると、1200名の対象を無作為化するために、約1500名の対象が登録されると推定され、区分定数受入率(第1〜2月中に8名の対象/月、第3〜4月中に40名の対象/月、第5〜6月中に85名の対象/月、第7〜8月中に138名の対象/月、第8月以降に170名の対象/月)を仮定すると、最終的なOS分析率のために必要な死亡数を得るのに約48月かかる(14月の見越しおよび34月の生存フォローアップ期間)。
エンドポイント
OSは、この治験の主要なエンドポイントである。少なくとも1つの比較でOSの優位性が実証される場合、重要な第2のエンドポイントのゲートキーピングテストアプローチが、統計的分析プランで説明されているように、追加の実験対対照比較に適用される。主要な第2のエンドポイントは、BICR評価に基づくPFSおよびORRを含む。
3つの主要なOS分析の各々は、多重複度に対処するためにHochbergの手順を用いて、すべての無作為化された対象において、組織およびPD−L1状態により階層化された両側対数ランク検定を用いて行われる。Cox比例ハザードモデルを用いて、治療群を単一の共変量として、上記の因子で層別化して、ハザード比(HR)および対応する両側(1調整α)%信頼区間(CI)を推定する。OS曲線、95%CIのOS中央値、ならびに95%CIの12月および24月でのOS率を、カプラン・マイヤー法を用いて推定する。少なくとも1つの比較でOSの優位性が実証される場合、重要な第2のエンドポイントのゲートキーピングテストアプローチが、統計的分析プランで説明されているように、追加の実験対対照比較に適用される。主要な第2のエンドポイントは、次の階層順で試験される:
1)3つの実験的処置のそれぞれを対照群と比較するために、全ての無作為化された対象において組織およびPD−L1状態によって層別化された両側対数ランク検定を用いて、PFS(BICR評価に基づく)分析を行う。HRおよび対応する両側(1‐調整α) % CIを、Cox比例ハザードモデルを用いて、処置群を単一の共変量として用いて推定し、上記因子によって層別化する。PFS曲線、95% CIを有するPFS中央値、ならびに95% CIを有する6月および12月のPFS率を、カプラン・マイヤー法を用いて推定する。
2)3つの実験的処置のそれぞれを対照群と比較するために、PD−L1状態および組織によって層別化された両側コクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)検定を用いて、ORR(BICR評価に基づく)分析を行う。関連するオッズ比および(1‐調整 α) % CIも計算する。さらに、ORRおよびそれらに対応する95%正確なCIを、4つの処置群のそれぞれについてClopper−Pearson法を用いて計算する。
3)組織およびPD−L1状態によって層別化された両側対数ランク検定を用いて、実験群間のOSのペアワイズ比較を行う。HRおよび対応する両側(1‐調整 α) % CIを、Cox比例ハザードモデルを用いて、処置群を単一の共変量として用いて推定し、上記因子によって層別化する。
ニボルマブ単剤療法群とニボルマブおよびイピリムマブ併用群との相違を評価するために、PFSおよびORRの記述統計を行う。これには、PFSのHRおよび対応する両側95% CIを伴う中央値、ならびに対応する95% CIを伴うORRオッズ比が含まれる。
分析
PD−L1発現の分析は記述的である。PD−L1発現の分布を全集団に基づいて調べる。PD−L1発現と有効性の指標(ORR、OSおよびPFS)との間の潜在的な関係を評価する。有意な関連性が示唆される場合、PD−L1発現と処置との間の相互作用効果を推定することにより、PD−L1発現を予測バイオマーカーとして探索するためのさらなる評価が行われる。
結果は、ステージIVまたは再発性NSCLCを有する化学療法未施行対象において、ニボルマブの投与またはニボルマブとイピリムマブの併用投与が、白金併用化学療法と比較して全生存期間(OS)を改善するかどうかを示す。
実施例2
3mg/kgまたは240mgのニボルマブを2週間毎に4カ月間投与された、進行性または転移性非小細胞肺癌対象における、 ニボルマブ 240mg 2週間毎 対 ニボルマブ 480mg 4週間毎の、フェーズ3b/4用量頻度最適化試験
目的
本治験の別の目的は、進行/転移(ステージIIIb/IV)NSCLC(非SqおよびSq)対象における、ニボルマブ 240mg 2週間毎(群1)およびニボルマブ 480mg 4週間毎(群2)の、固形腫瘍(RECIST)1.1基準における応答評価基準を用いた治験医により評価された応答により測定した無作為化後6月のPFS率と無作為化後1年のPFS率とを比較することである。
本治験の第2の目的は、1)腫瘍組織による無作為化後1年での群1および2のPFS率と無作為化前の応答によるPSF率を比較すること;2)群1および2において無作為化後2年でのPFS率を比較すること;3)全ての処置対象において、群1および2において、腫瘍組織および作為化前の応答基準によって、無作為化後1年での、および無作為化後5年までの全生存率(OS)を比較すること;ならびに、4)全ての処置対象において、群1および2において、腫瘍組織および無作為化前の応答により、有害事象(AE)の発生率および重症度ならびに特定の検査値異常を測定することで、ニボルマブの安全性および耐容性を評価すること、である。
本治験の探索的目的は、1)ニボルマブ240mgおよび480mgの薬物動態を特徴付け、選択された安全性および有効性のエンドポイントに関する関係を探究すること;および、2)EQ−5D−3Lを用いて健康関連の生活の質(QOL)を評価することである。
調査プラン
治験デザインおよび期間
本治験は、進行/転移性の(ステージIIIb/Iv)NSCLC(非SqおよびSq)の成人患者における、ニボルマブ 480mg 4週間毎 対 240mg 2週間毎の有効性を比較する、オープンラベルの、無作為化、フェーズ3B/4治験である。約620名の患者を、2つの異なるニボルマブの用量レジメン群に1:1に無作為化し、最大5年間服用する。無作為化は、無作為化時に組織学および前治験ニボルマブに対する応答基準により階層化される(CRまたはPR 対 SD)。ニボルマブ 240mgを2週間毎に投与される対象について、各14日の投与期間は1サイクルを構成する。ニボルマブ 480mgを4週間毎に投与される対象について、各28日の投与期間は1サイクルを構成する。調査用製品は無作為に提供される。対象は、最初の無作為化用量から最大5年間、疾患の進行または許容できない毒性があるまで処置を継続する。フォローアップ期間は、対象の治験処置を恒久的に中止する決定が下されたときから始まる(さらなる処置やニボルマブでの再処置は必要ない)。
全ての患者は、約4月間(16週±2週)、ニボルマブ(3mg/kgまたは240mg)を2週間毎に投与され、登録前の2回目の腫瘍評価から明らかなように、ニボルマブ処置に対して、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、または疾患の安定(SD)を達成した。
この前治験期間後、対象は、240mg 2週間毎(群1)または480mg 4週間毎(群2)のいずれかを投与されるように、登録、スクリーニング、および1:1無作為化される。無作為化は、無作為化時に組織学および前治験ニボルマブに対する応答基準により階層化される(CRまたはPR 対 SD)。ニボルマブ 240mgを2週間毎に投与される対象について、各14日の投与期間は1サイクルを構成する。ニボルマブ 480mgを4週間毎に投与される対象について、各28日の投与期間は1サイクルを構成する。調査用製品は無作為に提供される。調査用製品は無作為に提供される。
対象は、登録前に第1および第2の腫瘍評価を既に完了していると予想される。この置換に登録されると、この集団のケア評価の基準に類似する腫瘍評価は8週間毎に継続される。
対象は、最初の無作為化投与から最大5年間の間、疾患の進行または許容できない毒性まで処置を継続する。フォローアップ期間は、対象の治験処置を恒久的に中止する決定が下されたときから始まり(さらなる処置やニボルマブでの再処置は必要ない)、規定の通りに継続される。
治験デザイン図を図2に示す。
各対象の最後の治験来院は、最後の処置来院または無作為化療法の開始後5年の日の前に起こるフォローアップ外来として定義される。この治験は、最後の対象の最初の来院から5年以内に完了する。
治療への治験後アクセス
治験終了時に、臨床的利益を実証し続けている対象は、BMSにより提供される治験薬を受け取る資格を有する。治験薬は、治験の延長、責任ある保健当局および倫理委員会の承認を必要とするロールオーバー治験により、またはBMSの裁量で別の仕組みを介して提供される。BMSは、以下のいずれかが発生した場合、BMS提供の治験薬へのアクセスを終了する権利を留保する:a)マーケティングの適用が責任ある保健当局によって拒否された;b)治験が、安全性の問題のために終了した;c)対象が、政府系の治験実施者または個人健康保険(private health program)から投薬を受け得る;または、d)治療の選択肢が地域の市場で利用可能になる。
治験母集団
重要な組み入れ基準
治験に登録するために、以下の基準が満たされなければならない。
1)署名された書面によるインフォームドコンセント
a)対象は、通常の対象のケアの一部ではないプロトコールに関連する手続を行う前に、規制および制度上のガイドラインに従って、IRB/IECが承認した書面による同意文書に署名に、日付を記入しなければならない。対象がインフォームドコンセントを行うことができない場合、法的に許容される代理人がそれをすることができる。しかしながら、対象が治験中にインフォームドコンセントを作成して意思表示が可能になった場合、対象から同意を得ることがさらに必要である。
b)対象は、予定された来院、処置スケジュール、検査値検査、および治験の他の要件に積極的に従うことが可能でなければならない。
2)標的集団
a)組織学的にまたは細胞学的に記載されたSq−または非SqNSCLCのステージIIIB/ステージIV疾患(国際肺癌学会の胸部腫瘍におけるステージ評価マニュアルのバージョン7による)を有する対象、または集学的治療(放射線治療、外科的切除、または局所進行性疾患の決定的化学放射線療法)後の再発性もしくは進行性の疾患を有する対象。
b)対象は、約4月(16週±2週)の間、2週間毎に、ニボルマブ 3mg/kgまたは240mgを投与され、耐容性である必要がある。対象は、スクリーニング評価の間に、前治験ニボルマブ処置を継続して受けてもよい。
c)対象は、ニボルマブの開始後に少なくとも2回の腫瘍評価を有し、無作為化前28日以内に、最近のスキャンで前治験ニボルマブ処置に対してCR、PRまたはSDを示す必要がある。
d)対象は、前治験ニボルマブ処置の初回投与開始時にRECIST 1.1基準に従ってCTまたはMRIにより測定可能な疾患を有していなければならない。
e)既知の上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の活性化変異または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)転座を有する対象は、白金ベースの化学療法に加えてEGFRまたはALK TKIを受けなければならない。
f)Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のPerformance Status(PS)が0−2である。
g)CNS転移が処置され、対象が治験登録前少なくとも2週間、神経学的にベースラインに戻る場合(CNS処置に関連する残存徴候または症状を除く)、安定したCNS転移を有する対象。さらに、対象は、コルチコステロイドをなしにするか、または1日当たり10mg以下のプレドニゾン(または相当量)の安定したまたは低減用量でなければならない。
h)すべてのベースライン検査値要件が評価され、14日以内に取得されるべきである(特記されない限り)。スクリーニングラボテスト値は、以下の基準を満たしている必要がある:
i)WBC ≧ 2000/μL
ii)好中球 ≧ 1500/μL
iii)血小板 ≧ 100×10/μL
iv)ヘモグロビン ≧ 9.0g/dL
v)血清クレアチニン ≦ 1.5×ULN または クレアチニンクリアランス > 40mL/分 (Cockcroft/Gaultの式を用いる)
女性のCrCl=[(140−年齢)×体重(kg)×0.85]÷72×血清クレアチニン(mg/dL)
男性のCrCl=[(140−年齢)×体重(kg)×1.00]÷72×血清クレアチニン(mg/dL)
vi)AST ≦ 3×ULN
vii)ALT ≦ 3×ULN
viii)総ビリルビン ≦ 1.5×ULN (総ビリルビン<3.0mg/dLを有しなければならないギルバート症候群の対象を除く)
i)緩和的放射線療法は、登録の少なくとも2週間前に完了しなければならない。
j)対象の再登録:この治験は、前処置の失敗として治験を中止した(すなわち、対象が無作為化されていない/処置されていない)対象を再登録することを許可する。再登録した場合は、対象は再同意しなければならない。
3)年齢および生殖状態
a)男性および女性、18歳以上。
b)妊娠可能性のある女性(WOCBP)は、治験薬の開始前24時間以内に陰性の血清または尿の妊娠検査(HCG最小検出感度が25IU/Lまたはそれと同等)を有しなければならない。
c)女性は母乳育児であってはならない。
d)WOCBPは、ニボルマブでの処置期間とニボルマブの5回の半減期を経るのに要する期間(125日)と30日(排卵周期)の合わせて155日間または処置の完了後23週間を避妊方法(複数可)の指示に従うことに同意しなければならない。
e)WOCBPと性的に活発な男性は、ニボルマブの5回の半減期を経るのに要する期間と90日(精子のターンオーバー期間)の合わせて処置の完了後31週間、避妊方法(複数可)の指示に従うことに同意しなければならない。さらに、男性対象は、この期間中に精子提供を控えなければならない。
f)無精子症の男性は避妊要件を免除される。継続的に異性間で性的に活発ではないWOCBPも避妊要件を免除されるが、このセクションで記載した通り、依然として妊娠検査を受けなければならない。
g)最低限、対象は、1つの顕著に有効な避妊法を使用することに同意しなければならない。
重要な除外基準
治験に登録するために、以下の基準が満たされてはならない。
1)対象疾患の例外
a)癌性髄膜炎を有する対象。
b)未処置の症候性中枢神経系(CNS)転移を有する対象。
2)病歴および併発疾患
a)症候性であるか、疑わしい薬物関連肺毒性の検出または管理を妨げる可能性のある間質性肺疾患(例えば、サルコイドーシス)を有する対象。治験登録時に疾患が制御されている、慢性閉塞性肺疾患を有する対象は、許容される。
b)活動性、既知または疑いのある自己免疫疾患を有する対象。I型真性糖尿病、ホルモン補充のみを必要とする甲状腺機能低下症、全身的処置を必要としない皮膚障害(白斑症、乾癬または脱毛症など)、または外部トリガーがない場合に再発することが予想されない症状を有する対象は、登録することができる。
c)治験の最初の無作為化の14日以内に、コルチコステロイド(1日当たり10mgを超えるプレドニゾン同等量)または他の免疫抑制剤の何れかでの全身処置を必要とする状態の対象、ただし処置されたか、またはステロイドをひつようとする活動性CNS転移を有する対象は登録され得る。吸入もしくは局所ステロイド剤、および副腎代替ステロイド剤(1日当たり10mg以上のプレドニゾン同等量)は、活動性自己免疫疾患がない場合に許容される。
d)抗CTLA−4、抗PD−L1または抗PD−L2、抗CT137(または、T細胞共刺激経路もしくはチェックポイントを特異的に標的とする他の抗体または薬物、前治験ニボルマブを除く)で予め治療を受けた対象またはニボルマブを投与されている間、他の形態の全身抗腫瘍療法を必要とすると予想される対象。
e)治験医の判断で、対象の治験要件を遵守する能力が制限されるか、対象へのリスクを実質的に増加させるか、または治験結果の解釈可能性に影響を与える、その他の重度または制御不能の医学的障害、活動性感染症、身体検査所見、検査値、変更された精神状態または精神医学的状態。
f)同時介入を必要とする他の活動性悪性腫瘍。
g)以前の悪性腫瘍(非メラノーマ皮膚癌、および以下のインサイチュウの癌を除く:膀胱癌、胃癌、結腸癌、子宮内膜癌、頚部/異形成症候群、黒色腫または乳癌)を有する対象は、治験登録前に少なくとも2年間完全寛解が達成され、抗エストロゲン/アンドロゲン治療またはビスホスホネートを除いて、治験期間中に追加の治療が必要とされない限り、除外される。
h)脱毛症、疲労または末梢性ニューロパシー以外の以前の抗癌療法に起因するすべての毒性は、グレード1(NCI CTCAE バージョン4)または治験薬投与前のベースラインまで解消されていなければならない。
i)対象は、治験処置の最初の投与の少なくとも14日前には大手術または重大な外傷性傷害の影響から回復していなければならない。
3)身体的所見およびラボテスト所見
a)急性または慢性感染症を示すB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスの陽性
b)HIV検査または後天性免疫不全症候群(AIDS)の陽性
4)アレルギーおよび薬物有害反応
a)他のモノクローナル抗体に対する重度の過敏症の病歴
5)その他の除外基準
a)囚人または不本意に投獄された対象(特記:ある特定の状況下では、投獄された人は、対象として継続することが認められているか、または許可されている可能性がある。厳しい条件が適用され、承認が必要である。)
b)精神疾患または身体疾患(例えば、感染症)のいずれかの処置のために強制的に拘束された対象。
併用療法
禁止された、および/または制限された処置
以下の薬物は治験中は禁止される(薬物関連AEを処置するために利用されない限り):1)免疫抑制剤;2)全身性コルチコステロイドの免疫抑制用量(例外:全身吸収が最小限である局所、点眼、関節内、鼻腔内および吸入コルチコステロイドは許容される);および、3)同時抗腫瘍療法(すなわち、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、広範な非緩和的放射線療法、またはNSCLCの処置のための標準薬もしくは治験薬)。
その他の制限事項および注意事項
無作為化の14日以内に、コルチコステロイド(1日当たり10mg以上のプレドニゾン同等量)または他の免疫抑制剤のいずれかで全身処置をひつようとする状態を有する対象は除外する。吸入たは局所ステロイド剤、および副腎代替ステロイド剤(1日当たり10mg以上のプレドニゾン同等量)が、活動性自己免疫疾患がない場合に許容される。
許可された療法
対象は、局所、点眼、関節内、鼻腔内および吸入コルチコステロイド(全身吸収を最小限にする)の使用が許容される。副腎代替ステロイド用量の1日当たり10mgを超えるプレドニゾンが許容される。予防(例えば、造影剤アレルギー)のため、または自己免疫状態(例えば、接触アレルゲンによって引き起こされる遅延型過敏症反応)の処置のための短期間(3週間未満)のコルチコステロイド処置が許容される。
骨転移を有する患者における骨格関連事象の予防または低減のためのビスホスホネートおよびRANK−L阻害剤の恒常的な併用は、治験療法の初回投与前に開始される場合には許容される。以前の緩和的放射線療法は、無作為化の少なくとも2週間前に完了していなければならない。
治験薬による処置後の対象の中止治験薬による処置後の対象の中止
対象は、以下のいずれかの理由により、治験薬製品(および治験医の裁量により非治験薬製品)を中止しなければならない:
1)治験処置を中止するという対象の要求。
2)治験医の意見で、治験への継続的な参加が対象にとって最善の利益ではないことが示される、臨床的有害事象(AE)、検査値異常または併発疾患。
3)Bristol−Myers Squibb (BMS)による治験の終了。
4)精神医学的または身体的(例えば、感染症)の病気の治療のための、監禁またはまたは不本意な監禁による同意を自由に与える能力の喪失。
5)“投与中止基準”に記載されている基準。
6)対象が、正常な健康な女性であり、妊娠した。了解の24時間以内に、治験医は、BMS医療モニター/委任者に妊娠の通知をしなければならない。ほとんどの場合、治験薬は適切な方法で恒久的に中止される(例えば、対象の安全性のために必要ならば、用量を漸減する)。治験医が治験薬の継続を保証する有益な利点/リスク比を決定する場合、治験医とBMS医療モニター/委任者との間で協議しなければならない。
治験薬を中止する全ての対象は、プロトコール指定のフォローアップ手順に従うべきである。この要件の唯一の例外は、対象が治験処置後のフォローアップを含むすべての治験手続の同意を取り消すか、または自由に同意する能力を失う(すなわち、精神医学的または身体的疾患の治療のために監禁されているか、または不本意に監禁されている)ときである。治験薬が対象の治験終了前に中止される場合、中止理由は、対象の医療記録に記録し、適切な症例報告書(CRF)ページに記入する必要がある。
治験薬治験後のフォローアップ
この治験において、PFSは、本治験の重要なエンドポイントである。治験後のフォローアップは非常に重要であり、対象の安全性および治験の完全性を維持するために必須である。治験薬を中止する対象は、死亡または治験の終了まで必要な結果および/または生存フォローアップデータの収集のために追跡調査を継続されなければならない。
同意の撤回
治験薬を中止することを要求する対象は、治験中のままであり、プロトコールに特定されたフォローアップ処置のために追跡され続けなければならない。唯一の例外は、対象がこの情報を提供することを以前に許可された個人または複数人との更なる連絡のための同意を具体的に撤回する場合である。対象は、可能であればいつでも、書面により今後のフォローアップの同意を撤回する決定を治験医に通知しなければならない。同意の撤回は、該撤回が治験薬での更なる処置のみか、または治験手法および/もしくは治験後のフォローアップであるかについて、治験医による医療記録に詳細に説明され、適切なCRFページに入力されるべきである。生存状態(対象が生存しているか死亡したかどうか)が分かっている場合は、公的に入手可能な情報を用いて、地域の法律に従って適切に指示された生存状態を判断すべきである。
フォローアップ不能
対象が自身の進行中の状態を判断し報告するために、すべての合理的な努力がなされなければならない。これには、上記のように対象によって承認された者(複数可)によるフォローアップが含まれる。フォローアップ不能は、少なくとも3つの文書化された通話、ファックスまたは電子メールの後に対象に到達できないこと、ならびに1つの登録されたメールレターへの返信がないことで定義される。全ての試みは、対象の医療記録に記録する必要がある。対象が死亡したと判断される場合、施設(サイト)は、許容される地域の方法を用いて、日付および死因を得る。
治験のフォローアップ部分を支援するための第三の担当者(third−party representative)の治験医による使用が対象のインフォームドコンセントに含まれている場合、治験医は、治験実施者が保有する第三の担当者を用いて、治験のフォローアップ部分を完了するために必要な対象の連絡先情報またはその他の公的な生存状態データを得るために施設のスタッフを支援し得る。施設スタッフおよび担当者は、更新された連絡先情報を入手するために、厚生省登録簿(public health registries)やデータベースなどの公開されている情報源を調べることができる。全ての試みの後、対象がフォローアップ調査不能のままである場合、治験医によって決定された最後の生存日が報告され、対象の医療記録に記録されなければならない。
治験薬
治験薬には、治験用[医薬品]製品(IP/IMP)および非治験用[医薬品]製品(非IP/非IMP)が含まれる。いくつかの地域で治験薬としても知られている治験用製品は、承認された形態とは異なって使用または組合せられる(製剤化またはパッケージングされる)か、または承認されていない表示のために使用されるが販売許可を既に得ている製品、または承認された形態に関する詳細情報を得るために用いられるときを含み、既に臨床試験において臨床治験の対照として試験または使用されている有効成分またはプラセボの医薬品の形態と定義される。特定の診断の標準的ケアの構成要素として、予防的、診断的または治療的理由のための投薬支援または投薬回避として使用される他の薬物は、非治験用製品とみなされ得る(適用できない)。
対象を識別する割り当て方法
これは、無作為化治験である。対象の適格性が確立され、インフォームドコンセントが得られた後、対象は登録され、インタラクティブなウェブベースのレスポンスシステム(IWRS)を介して番号が割り当てられる。IWRSを用いた登録および無作為化手順の具体的な指示は、別の文書/マニュアルで治験施設に提供され得る。すべての適格基準を満たし、治験に無作為化された対象は、2つの処置群のうち1つに割り当てられ、以下の要因によって階層化される:ランダム化(CRまたはPRまたはSD)における組織学および応答。
各対象の用量選択および投与タイミング
対象は、約4か月(16週±2週)のニボルマブ療法を受けた後、CR、PRまたはSDの証拠を有する第2の腫瘍評価を受けた後に登録される。
群1の対象は、進行、許容できない毒性、同意の撤回まで、または対象が最初の治験薬投与から、または治験の終了いずれか早いほうから最大5年に達するまで、各処置サイクルの1日目に、2週間毎に、30分間(±5分間)IV点滴として、240mgのニボルマブを静脈内投与される。この群では、各14日間の投薬期間が1サイクルを構成する。
群2の対象は、進行、許容できない毒性、同意の撤回まで、または対象が最初の治験薬投与から、または治験の終了いずれか早いほうから最大5年に達するまで、各処置サイクルの1日目に、4週間毎に、30分間(±5分間)IV点滴として、480mgのニボルマブを投与される。この群では、各28日間の投薬期間が1サイクルを構成する。
群1の対象は、以前の投与から12日以上を経て投与され得る。群2の対象は、以前の投与から26日以上を経て投与され得る。
ニボルマブの用量漸増または漸減は許容されない。対象に点滴応答が観察されるまで、ニボルマブの推奨される前投薬はない。対象は、ニボルマブ投与中の点滴応答について注意深く監視されるべきである。
投薬延期基準
ニボルマブ投与は、以下の理由により延期されるべきである:
1)以下の例外を除く、グレード≧2の薬物関連AE:
a)グレード2の薬物関連皮膚AE、疲労または検査値異常−処置の延期は必要ない。
2)グレード3の皮膚、薬物関連AE。
3)リンパ球減少症、AST、ALTもしくは総ビリルビンまたは無症候性アミラーゼまたはリパーゼに対する以下の例外を除いて、グレード3の薬物関連検査値異常:
a)グレード3のリンパ球減少症は投与延期を必要としない
b)対象が正常限度内のベースラインAST、ALTまたは総ビリルビンを有する場合、薬物関連グレード≧2の毒性のために投与を遅らせる。
c)対象がグレード1の毒性範囲内のベースラインAST、ALTまたは総ビリルビンを有する場合、薬物関連グレード≧3の毒性による投薬延期。
d)膵炎の症状または臨床症状に関連しないグレード≧3の薬物関連アミラーゼまたはリパーゼ異常は、投薬延期を必要としない。そのようなグレード≧3のアミラーゼまたはリパーゼ異常については、医療モニターに相談する必要がある。
4)治験医の判断で、治験薬の投与量を遅らせる正当な理由を有する、何らかのAE、検査値異常または併発疾患。
ニボルマブの遅延を必要とする対象は、臨床的に必要なときは毎週またはそれ以上頻繁に再評価され、再処置基準が満たされた場合にはニボルモル投与を再開すべきである。
処置を再開する基準
対象は、以下の例外を除いて、薬物関連AEがグレード≦1またはベースラインまで解消されたときに、ニボルマブによる処置を再開することができる:
1)対象は、グレード2の疲労の存在下で処置を再開することができる。
2)グレード3の薬物関連皮膚AEを経験していない対象は、グレード2の皮膚毒性の存在下で処置を再開することができる。
3)AST/ALTまたは総ビリルビンの2段階シフト以外の理由で投与中断を必要とするベースライングレード1のAST/ALTまたは総ビリルビンを有する対象は、グレード2のAST/ALTまたは総ビリルビン値の存在下で処置を再開することができる。
4)中止パラメーター(以下に示す“投与の中止基準”)に合致するグレード2のAST/ALTおよび総ビリルビン値を組合せた対象は、処置を永久に中止すべきである。
5)薬物関連の肺毒性、下痢、または大腸炎は、処置が再開される前にベースラインまで解消されていなければならない。少なくとも1か月以上のステロイドの減量の完了後に永続性のグレード1の肺炎を有する対象は、医療モニターによって議論され承認されれば、再治療の対象となり得る。
6)生理的ホルモン補充のみで適切に管理される薬物関連の内分泌障害は、医療モニターとの協議の後に処置を再開することができる。
6週間を超える処置の中断をもたらすニボルマブの投与中止は、以下の“投与の中止基準”に記載されている例外を除いて、処置の中止を必要とする。ニボルマブの用量を減らすことはない。
投薬中止基準
ニボルマブ処置は、以下の理由により永久に中止されるべきである:
1)局所治療に応答せず、再処置期間内にグレード1の重症度に改善しないか、または全身治療が必要である、グレード2の薬物関連ブドウ膜炎、眼の痛み、または視力障害。
2)検査値異常、薬物関連ブドウ膜炎、肺炎、気管支痙攣、過敏反応、輸液反応および内分泌障害の例外を除く、7日以上続くグレード3の非皮膚の薬物関連AE:
a)任意の期間の、グレード3の薬物関連ブドウ膜炎、肺炎、気管支痙攣、過敏症反応または輸液反応は、中断を要する。
b)生理的ホルモン補充のみで十分に制御されたグレード3の薬物関連内分泌障害は、中断を必要としない。
c)グレード3の薬物関連検査値異常は、以下を除いて処置の中断を必要としない:
i)7日以上の、または出血を伴う、グレード3の薬物関連血小板減少症は、中断を要する。
3)以下の基準を満たす薬物関連肝機能検査(LFT)異常は中止を要する:
a)ASTまたはALT>5−10×ULN 2週間以上
b)ASTまたはALT>10×ULN
c)総ビリルビン>5×ULN
d)同時ASTまたはALT>3×ULNおよび総ビリルビン>2×ULN。
4)中止を要さない以下の事象を除く、グレード4の薬物関連AEまたは検査値異常:
a)7日以内のグレード4の好中球減少症
b)グレード4のリンパ球減少症または白血球減少症
c)膵炎の症状または臨床症状と関連していない、単発性のグレード4のアミラーゼまたはリパーゼ異常。グレード4のアミラーゼまたはリパーゼ異常については、医療モニターに相談する必要がある。
d)臨床後遺症に関連しておらず、発症の72時間以内に補充/適切な管理によって矯正される、単発性のグレード4の電解質不均衡/異常。
e)生理的ホルモン補充(コルチコステロイド、甲状腺ホルモン)またはグルコース調節剤で解消される、または適切に制御される、副腎不全、ACTH欠乏症、甲状腺機能亢進症もしくは甲状腺機能低下症、または耐糖能異常などのグレード4の薬物関連内分泌障害AEは、それぞれ、医療モニターとの議論および承認後に中止を必要としない

5)前回の投与から6週間を超えて投与が中断されるような事象は、以下の例外を除いて、中止を要する:
a)延長されたステロイド投与が薬物関連有害事象を管理するのを可能にするために、投与の中断が許可される。前回の投与から6週間を超えて続く投薬中断を有する対象の処置を再開する前に、医療モニターに相談する必要がある。投薬が中断された場合でも、プロトコール毎に腫瘍評価を継続すべきである。そのような投薬中断時に臨床的に必要なときには、安全性および臨床検査を評価する定期的な治験来院も6週間毎またはそれ以上頻繁に継続すべきである。
b)医療モニターによって承認されれば、非薬物関連の理由で生じる前回の投与から6週間を超えて続く投薬中断を許容することができる。投薬中断を有する対象の処置を再開する前に、医療モニターに相談しなければならない。投薬が中断された場合でも、プロトコール毎に腫瘍評価を継続すべきである。そのような投薬中断時に臨床的に必要なときには、安全性および臨床検査を評価する定期的な治験来院も6週間毎またはそれ以上頻繁に継続すべきである。
6)治験医の判断で、継続してニボルマブを投与された対象に実質的な臨床的リスクを示す、何らかのAE、検査値異常または併発疾患。
ニボルマブに関連する輸液反応の処置
ニボルマブは、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含むため、免疫原性であって、輸液反応または過敏反応を誘発する可能性は低い。しかしながら、そのような反応が起こると、そのような反応が起こると、発熱、悪寒、硬直、頭痛、発疹、掻痒、関節痛、低血圧、高血圧、気管支痙攣または他のアレルギー様反応が現れることがある。全てのグレード3または4の輸液反応は、24時間以内に治験医療モニターに報告され、基準を満たす場合にはSAEとして報告されるべきである。輸液反応は、NCI CTCAE (バージョン4.0)のガイドラインに従って評価する必要がある。
治療推奨は以下に記載されており、必要に応じて地域治療基準およびガイドラインに基づいて変更することができる:
グレード1の症状について:(軽度の反応;点滴中断は指示されていない;介入は指示されていない):
1)症状が回復するまで、ベッドサイドに留まり、対象をモニタリングする。以下の予防的前投薬が後の点滴のために推奨される:追加のニボルマブ投与の少なくとも30分前に、ジフェンヒドラミン50mg(またはその同等物)および/またはアセトアミノフェン/パラセタモール325〜1000mg。
グレード2の症状について:(中程度の反応は、治療または点滴の中断を必要とするが、対症療法(例えば、抗ヒスタミン薬、非ステロイド性抗炎症薬、麻薬、コルチコステロイド、気管支拡張剤、IV輸液)に速やかに応答する;予防薬が24時間以内に示される):
1)ニボルマブの点滴を中止し、通常の生理食塩水のIV点滴を開始し、対象をジフェンヒドラミン 50 mg IV (または同等物)および/またはアセトアミノフェン/パラセタモール 325〜1000mgで処置する;症状がなくなるまで、ベッドサイドに留まり、対象をモニタリングする。コルチコステロイドおよび/または気管支拡張剤療法も、適切に投与することができる。点滴を中断した場合、症状が解消されたときに元の速度の50%で点滴を再開する;30分後にさらなる合併症が起こらなければ、その速度は元の点滴速度の100%に増加してもよい。対象を注意深くモニタリングする。症状が再発したとき、その来院時には、さらなるBMS−936558は投与されない。
2)後の点滴のために、以下の予防的前投薬が推奨される:ジフェンヒドラミン 50mg (または同等物)および/またはアセトアミノフェン/パラセタモール 325〜1000mgは、ニボルマブの点滴の少なくとも30分前に投与されるべきである。必要に応じて、コルチコステロイド(SoluCortef25mgまで、または相当量)を使用することができる。
グレード3または4の症状について:(重度の反応、グレード3:長期間の[すなわち、症状改善薬への迅速な応答および/または短時間の点滴の中止のない];初期の改善後の症状の再発;他の臨床後遺症を示す入院(例えば、腎障害、肺浸潤)。グレード4:生命を脅かす;示される圧または換気補助):
1)直ちに、ニボルマブの点滴を中止する。通常の生理食塩水のIV点滴を始め、以下のとおりに対象を処置する:推奨される気管支拡張剤エピネフリン0.2〜1mgの、皮下投与のための1:1000溶液または0.1〜0.25mgのIV投与のためのゆっくり注入された1:10,000溶液、および/または、必要に応じて、ジフェンヒドラミン50mg IVと共にメチルプレドニゾロン 100mg IV(または相当量)。対象は、治験医が、症状が再発しないことを確認するまで、モニタリングされるべきである。ニボルマブは永久に中止され得る。治験医は、アナフィラキシー治療のための施設ガイドラインに従うべきである。症状が回復するまで、ベッドサイドに留まり、対象をモニタリングする。
遅発性過敏症状(例えば、処置後1週間以内の、限局性または全身性の掻痒の出現)の場合、対症療法(例えば、経口抗ヒスタミン剤またはコルチコステロイド)を施すことができる。
処置の完了
処置の完了は、治験薬管理記録ならびに対象の医療記録およびeCRFによってモニタリングされる。
治験評価および方法
安全性評価
安全性評価は、治験中および治験の最後の投与後100日間に実施される。評価は、サイクル1の1日目から開始して、治験療法の中止まで(特記されない限り)モニタリングされるべきである。
さらなる処置および評価を、標準ケアの一部として実施することができる;しかしながら、これらの評価のためのデータは、患者の医療記録に残すべきであり、特に要求されない限り、BMSに提供すべきではない。NCI CTCAE バージョン4.0は、AEの重篤度を評価するために用いられる基準になる。
この治験に登録された対象の進行中の有利なリスク/利点の評価を確実にするために、独立したデータモニタリング委員会(DMC)を用いて、治験実施中の治療の安全性および活性をモニタリングする。
有効性評価
有効性評価を、表24に従って行い、RECIST 1.1基準に従って、サイクル1の1日目から開始して実施すべきである。
経口もしくはIV造影剤または造影剤強調MRIによる高解像度CTは、放射線照射腫瘍応答を評価するための好ましい画像診断法である。対象が、造影剤に対して既知のアレルギーを有する場合、地域の予防基準を用いて可能な限り造影剤を用いて評価を得るか、代替の診断法を用いてください。造影剤が厳密に禁忌である場合、非造影剤スキャンで十分である。胸部、腹部、骨盤、脳、および既知または疑わしい疾患部位を含むスクリーニング評価は、治験薬の初回投与から28日以内に行われるべきである。脳MRIは、CNS転移の評価が 必要とされるときに好ましい画像法である。胸部および腹部に加えて、全ての既知のまたは疑わしい疾患部位(CNSを含む)は、同じ画像化法および技術を用いるその後の評価で評価されるべきである。複数の方法をスクリーニングで用いる場合は、データの記録時にRECIST 1.1に準拠した最も正確な方法を使用すべきであり、その後のすべての評価にも使用すべきである。骨スキャン、PETスキャンまたは超音波は、標的病変におけるRECIST応答の評価には適切ではない。そのような診断法が特定の非標的臓器を評価するために用いられる唯一の診断法である選択された状況では、これらの非標的臓器の評価頻度は低い。例えば、骨スキャンは、標的疾患において完全な応答が同定された場合、または骨における進行が疑われるときにのみ、繰り返される必要があり得る。以前に処置されたCNS転移は、RECISTの決定された応答の目的のために測定可能な病変とはみなされない。
腫瘍測定は、可能であれば、各評価について同じ治験医または放射線科医によって行われるべきである。進行中の治験処置決定を導くための腫瘍測定値および腫瘍応答の変化は、RECIST 1.1を用いて治験医によって評価されるべきである。
薬物動態評価
薬物動態(PK)評価のためのサンプルは、ニボルマブを投与された全ての対象について集められる。全ての時点は、治験薬投与の開始に関連する。全ての処置中の時点は、治験薬が投与された日と一致するように意図されている。異なる日に投与が行われる場合、PKサンプリングは、それに応じて調整されるべきである。PKサンプルは、検証された免疫アッセイによってニボルマブについて分析される。
アウトカムリサーチ評価
EQ−5D−3Lは、5つの次元(運動性、セルフケア、日常活動能力、苦痛/不快感、および不安)ならびに視覚的アナログ評価目盛を含む。EQ−5D−3Lドメインへの応答は、欧州スコアリングアルゴリズムに基づいた健康状態指標に変換される。
有害事象
有害事象(AE)は、治験薬を投与された臨床治験対象における、新たな不都合な医学的事象または既存の病状の悪化と定義され、この処置との因果関係を必ずしも有さない。従って、AEは、治験薬に関連しているとみなされるか否かにかかわらず、治験薬の使用に一時的に関連する望ましくない意図しない徴候(異常な検査所見など)、症状または疾患であり得る。
治験薬に対する因果関係は医師によって決定され、すべての有害事象(AE)を評価するために使用されるべきである。因果関係は、以下のうちの1つであり得る:
関連性あり:治験薬投与とAEとの間に合理的な因果関係がある。
関連性なし:治験薬投与とAEとの間に合理的な因果関係はない。
用語“合理的因果関係”とは、因果関係を示唆する証拠があることを意味する。
有害事象は、対象の自由回答式質問、調査または評価中に自発的に報告または誘発され得る(報告バイアスを防止するために、対象は、1以上のAEの特定の発生に関して質問されるべきではない)。
BMSは、European Directive 2001/20/ECならびにFederal Regulations 21 CFR の312章および320章のFDAコードを含む、地域の適用法に従って、規制当局および倫理委員会に有害事象を報告する。
予期する、または予期しない重篤な有害反応は、臨床治験医、倫理委員会および保健当局への迅速な報告(以前はESRとして公知)が必要とされる、IMPまたは比較IMPに対する予期せぬ関連する重大な有害事象である。
重篤でない有害事象は、重篤と分類されないAEである。
重篤な有害事象の収集および報告
対象の治験への酸化の書面による同意の後、治験薬に関連するか否かに関わらず全ての重篤な有害事象(SAE)が、プロトコールに記載の手順に関連すると考えられるものを含め、収集されなければならない。スクリーニング期間中および投薬中止後100日以内に発生する全てのSAEが収集される必要がある。
治験医は、これらの期間の後に起こり、治験薬またはプロトコールに記載の手順に関連すると考えられるSAEを報告しなければならない。
SAE報告は、その重篤度に疑義がある全ての事象について完了されなければならない。
治験医が、SAEが治験薬に関連しないが、治験の条件(例えば、以前の治療の撤回または治験手順の合併症)に関連する可能性があると考える場合、その関係は、SAE報告書の説明部分(narrative section)に記載されるべきである。
治験薬に関連するか否かにかかわらず、SAEおよび妊娠は、事象の認識から24時間以内にBMS(または治験依頼者)に報告されなければならない。SAEは、SAE報告書に記録されなければならない。SAEデータ報告収集の好ましい方法は、eCRFによるものである。
進行中のSAEは、治験薬似た対するその強度または関係が変わる場合、または新しい情報が入手可能になった場合、SAE報告は、最初のSAE報告を送信するために用いられたのと同じ手順を用いて、24時間以内にBMS(または治験依頼者)に情報更新および報告されなければならない。
全てのSAEは、解決または安定化されなければならない。
重篤でない有害事象の収集および報告
重篤でない有害事象(AE)情報の収集は、治験薬の開始時に開始されるべきである。重篤でないAE情報もまた、プラセボ導入期間の開始時から、または対象のベースライン状態を確立するために意図された他の観察期間の開始から収集されるべきである。
重篤でないAEは、解決または安定化されるべきであるか、または重篤になった場合SAEとして報告されるべきである。また、治験薬の中断または中止を引き起こす重大でないAEについて、および適切な場合、治験処置の終了時に存在するAEについてもフォローアップが必要である。識別された重大でないAEはすべて、CRFの重大でないAEのページに(紙または電子的)に記録され、記載される必要がある。
統計的考察:
サンプルサイズ決定
主な分析は、約4か月(16週±2週)のニボルマブ 3mg/kgまたは240mg Q2W 処置後の、疾患対照(CR/PR/SD)を有する対象における、無作為化後6か月および12か月のマイルストーンの、ニボルマブ 240mg Q2WのPFS率に対するニボルマブ 480mg Q4WのPFS率の非劣性を評価する。−10%の非劣性誤差をこの治験で選択した。CR、PRまたはSDを達成した患者は、4か月(16週±2週)のニボルマブ処置後に無作為化される。12か月マイルストーンの無作為化後PFS率は、240mg Q2Wで0.384であり、6か月の無作為化後PFS率は0.52であると推定される。
サンプルサイズは、進行分布および中途打切り分布の両方を占める累積ハザード関数に基づいて計算された。累積ハザード関数および生存関数とのその相関を用いて、各群300名の計600名の患者が、2つの群のPFS率が等しいと仮定された場合、12月のマイルストーンで95.3%の片側信頼区間が−10%を下回る場合、および6月で99.1%の信頼区間の下限が−10%を下回る場合に、80%の検出力を提供すると推定される。実験あたりのエラー率は、片側5%レベルで維持される。
無作為化されているが処置を受けていない患者を説明するために、1群当たり310名が無作為化される。15%のスクリーニング失敗率で、約730名の対象がスクリーニングされて、約620名の無作為化された対象が得られる。
分析のための集団
全ての登録対象:インフォームドコンセントフォームに署名し、IWRSに登録された全ての対象。
全ての無作為化対象:240mg 2週間毎または480mg 4週間毎に無作為化された全ての対象。これは、有効性の分析のための母集団である。亜集団分析は、腫瘍組織(Sqまたは非Sq)および無作為化での応答(PRまたはCR 対 SD)により行われる。
全ての処置対象:少なくとも1用量のニボルマブを投与された、全ての無作為化された対象。これは、安全性分析の母集団である。亜集団分析は、腫瘍 組織およびいくつかの安全性変数に対する無作為化の応答によって行われる。
PK対象:利用可能な血清時間濃度データを有する全ての対象。
エンドポイント
一次エンドポイント
この治験の主要評価項目は、無作為化後6月のPFS率および無作為化後1年のPFS率によって評価される。PFSは、無作為化の日から、治験医によって決定された最初に記録された腫瘍進行の日または死亡日のいずれか早い日までの期間として定義される。進行または死亡しなかった対象は、最後に評価可能な腫瘍評価の日に打ち切られる(censored)。6月でのPFS率は、無作為化後6月のカプラン・マイヤー(KM)推定値からの率である。1年のPFS率は、1年間のPFS率は、無作為化後1年間のKM推定値からの率である。
二次エンドポイント(複数可)/目的
この治験の第2の目的は、1)腫瘍組織および応答基準による、無作為化後1年のPFS率;2)無作為化後2年のPFS率;3)群、組織および無作為化での応答状態により、1年目のOS率および5年目までのOS、により評価される。OSは、無作為化の日から死亡日までの期間として定義される。治験の終了までに死亡しなかった対象は、最後に知られている生存日に打ち切られる(censored)。1年目のOS率は、無作為化後1年目に推定されたKM値からの率である。ならびに、4)AEの発生率および重篤度ならびに特定の検査値異常によって測定される、ニボルマブの安全性および耐容性、により評価される。
予備的エンドポイント(複数可)
この治験の予備的目的は、1)240mg Q2Wおよび480mg Q4Wでの選択された安全性および有効性エンドポイントに関するニボルマブの薬物動態の関係;および、2)EQ−5D−3L、により評価される。
分析
人口統計学的属性およびベースライン特性
年齢、性別、人種、民族性、体重、ベースライン疾患診断、および病状を含む人口統計学的属性およびベースライン疾患特性を、用量レジメンによる記述統計を用いてまとめる。
有効性分析
PFSは、KMの積極限法によりまとめられ、ハザード比の信頼区間は、(腫瘍組織および応答カテゴリー別の)層別ハザードモデルから生成される。BrookmeyerおよびCrowleyの方法を用いる片側95% CIを有するPFSの中央値が計算される。PFS KM分析で打ち切られる対象の状態は、各投与レジメンについて集計される。
6月および12月のPFS率の95%片側信頼区間は、各投与レジメンおよび投与レジメン間の差異についてGreenwoodの式で計算される。
6月の分析では、Q2W投与レジメンとQ4Wレジメンとの間のPFS率の差の99.1%片側信頼区間が生成される。信頼区間の下限が−10%を下回る場合、非劣性が主張される。
95.3%の未調整の信頼区間は、12月で用いられる。信頼区間(Q4W−Q2W)の下限が−10%を下回る場合、群2(480mg Q4W)は群1(240mg Q2W)に劣らないと考えられる。
6月および12月のOSおよびOS期間は、PFSおよびPFS率と同じ方法を用いて分析される。
安全性分析
安全性は、各群における死亡、AE、SAE、中止につながるAE、投与延期につながるAE、選択AEおよび特定の検査値異常(最悪グレード)の発生率により、分析される。毒性は、NCI CTCAE バージョン4.0を用いてグレード分けされる。
薬物動態分析
この治験からのニボルマブの血清濃度データを、集団薬物動態モデルにおける他のニボルマブ治験からのデータと組み合わせてもよい。これらのモデルは、内因性および外因性の共変量がニボルマブの薬物動態に与える影響を評価し、個々の暴露の値を決定するために用いられ得る。加えて、モデルにより決定された暴露は、暴露応答分析に用いられ得る。集団薬物動態および曝露−応答分析の結果は別々に報告される。
アウトカムリサーチ分析
EQ−5D−3Lは、対象の全体的な健康状態を評価するために用いられる。EQ−5D−3Lの記述システムは、以下の5つの次元:運動性、セルフケア、日常活動能力、苦痛/不快感、および不安/鬱病、を含む。各次元は、3つのレベルを有する:問題なし、いくつかの問題あり、および重大な問題あり。EQ視覚的アナログスケール(VAS)は、100ポイントの垂直視覚的アナログスケール(0=想像を絶する最悪の健康状態、100=最高の健康状態)で対象自身の健康状態を記録する。
各評価時点での視覚的アナログスケールにおける対象の全体的な健康状態(EQ−VAS)ならびにベースラインからの変化を、無作為化された(平均および95%信頼区間を含む)群による記述統計を用いてまとめる。
各評価時点でのEQ−5D−3L次元の問題を報告する対象の割合は、問題のレベルおよび無作為化された群によりまとめられる。割合は、評価時点で評価された対象の数で評価される。
要約統計量(Summary statistics)は、各評価時の集団による健康状態有用性スコア(EQ−5D−3L指標)ならびに無作為化された処置群による各評価におけるベースラインからの患者の変化について計算される。

Claims (15)

  1. 肺癌に罹患している対象の処置のための方法であって、それを必要とする対象に治療的有効量の:
    (a)プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD−1抗体またはその抗原結合部分”)である抗癌剤(60分未満の間、点滴により投与される)と、場合によって、
    (b)別の抗癌剤(90分未満の間、点滴により投与される)とを組み合わせて、
    投与することを含む、方法。
  2. 該抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、ヒトPD−1への結合でニボルマブまたはペンブロリズマブと交差競合する、請求項1に記載の方法。
  3. 該抗PD−1抗体がニボルマブまたはペンブロリズマブである、請求項1に記載の方法。
  4. 別の抗癌剤が、細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分”)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 該抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブまたはトレメリムマブと交差競合する、請求項4に記載の方法。
  6. 該抗CTLA−4抗体がイピリムマブまたはトレメリムマブである、請求項4に記載の方法。
  7. 該抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および該抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、別個の組成物として同時に投与されるか、または単一の組成物として同時に投与される、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 該抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、一定用量で投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 一定用量が、少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mgである、請求項8に記載の方法。
  10. 一定用量が、2週間毎または4週間毎に投与される、請求項8または9に記載の方法。
  11. 肺癌に罹患している対象の処置のための方法であって、一定用量の治療的有効量の、プログラム細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD−1抗体またはその抗原結合部分”)である抗癌剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
  12. 一定用量が、少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mgである、請求項11に記載の方法。
  13. 一定用量が、2週間毎または4週間毎に投与される、請求項11または12に記載の方法。
  14. 肺癌に罹患している対象を処置するためのキットであって、
    (a)少なくとも約240mgの一定用量の、PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD−1抗体またはその抗原結合部分”);および
    (b)該抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を請求項8から13のいずれか一項に記載の方法において使用するための指示書
    を含む、キット。
  15. 肺癌に罹患している対象を処置するためのキットであって、
    (a)PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD−1抗体またはその抗原結合部分”)である抗癌剤の体重1kg当たり0.1〜10mgの範囲の投与量;
    (b)CTLA−4に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分”)である別の抗癌剤の体重1kg当たり0.1〜10mgの範囲の投与量;および、
    (c)該抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および該抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を請求項1から7のいずれか一項に記載の方法において使用するための指示書
    を含む、キット。
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