ところで、この種の免震支持装置では、鉛プラグを得るべく積層体の中空部に鉛が圧入、充填されるが、圧入、充填されて積層体の剛性層及び弾性層の内周面に取り囲まれた鉛プラグは、弾性層の弾性により部分的に押し戻されることになるが、この押し戻しにより鉛プラグには内圧が発生する。
この発生した鉛プラグの内圧が弾性層の剛性との関連で充分でないと、免震支持装置の免震動作において、鉛プラグの外周面と剛性層及び弾性層の内周面との間に隙間が生じて、鉛プラグで効果的に振動を減衰させることができなくなる虞が生じる。
斯かる問題は、鉛プラグにおいて顕著に生じるのであるが、鉛プラグに限らず、塑性変形で振動エネルギを吸収する鉛、錫又は非鉛系低融点合金等の減衰材料からなる振動減衰体でも生じ得る。
更に、この種の免震支持装置では、積層体の剪断変形に応じた鉛プラグの変形において、鉛プラグを形成する鉛の塑性流動が生じるが、この塑性流動は、積層体の一端の剛性層の内周面と中空部の積層方向の一端を閉塞する閉塞部材の面とで規定された中空部の一端に配された鉛プラグの一端を介して行われる結果、この中空部の一端における鉛プラグの一端での塑性流動を効果的に行わせることが、免震効果を向上させ得る。
斯かる中空部の一端における塑性流動は、塑性変形により積層体の剪断方向の振動エネルギを吸収する鉛プラグの鉛に限らないのであって、塑性流動自体により積層体の剪断方向の振動エネルギを吸収して積層体の剪断方向の振動を減衰させるその他の減衰材料からなる振動減衰体でも生じ得る。
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安定な免震特性を得ることができ、加えて、積層体の弾性層及び振動減衰体の疲労を回避することができ、耐久性及び免震効果並びに製造性に特に優れ、しかも、積層体の剪断方向の振動での振動減衰体の変形において、中空部の一端における振動減衰体の塑性流動を効果的に案内補助することができて、中空部の一端における振動減衰体の塑性流動をより効果的に確保できる結果、免震効果を向上し得る免震支持装置を提供することにある。
本発明による免震支持装置は、交互に積層された弾性層及び剛性層を有する積層体と、この積層体の上端面及び下端面に取付けられた上板及び下板と、積層体の剪断方向の振動エネルギを吸収して積層体の剪断方向の振動を減衰させる振動減衰体と、弾性層及び剛性層の夫々の内周面と協働して中空部を規定すると共にこの中空部に充填された振動減衰体の積層体の剪断方向の振動での変形において中空部の積層方向の一端部における振動減衰体の塑性流動を案内補助するべく、振動減衰体の積層方向の一端部に接触する流動案内凹面を有していると共に中空部の積層方向の一端を閉塞する閉塞部材とを具備しており、上板に加わる積層方向の荷重を積層体及び振動減衰体で支持するようになっており、振動減衰体は、積層体及び振動減衰体で支持する積層方向の荷重に基づく振動減衰体からの閉塞部材への面圧Prと当該荷重に基づく積層体の荷重に対する受圧面での面圧P0との比Pr/P0が1.00以上(比Pr/P0≧1.00)となるように、中空部に配されている。
本発明による免震支持装置は、また、交互に積層された弾性層及び剛性層を有する積層体と、この積層体の上端面及び下端面に取付けられた上板及び下板と、積層体の剪断方向の振動エネルギを吸収して積層体の剪断方向の振動を減衰させる振動減衰体と、弾性層及び剛性層の夫々の内周面と協働して中空部を規定すると共にこの中空部に充填された振動減衰体の積層体の剪断方向の振動での変形において中空部の積層方向の一端部における振動減衰体の塑性流動を案内補助するべく、振動減衰体の積層方向の一端部に接触する流動案内凹面を有していると共に中空部の積層方向の一端を閉塞する閉塞部材とを具備しており、上板に加わる積層方向の荷重を積層体及び振動減衰体で支持すると共に下板に対しての上板の積層方向に直交する方向の振動を振動減衰体の塑性変形で減衰させる一方、下板の積層方向に直交する方向の振動の上板への伝達を積層体の剪断弾性変形で抑制するようになっており、振動減衰体は、積層体及び振動減衰体で支持する積層方向の荷重に基づく振動減衰体からの閉塞部材への面圧Prと当該荷重に基づく積層体の荷重に対する受圧面での面圧P0との比Pr/P0が1.00以上(比Pr/P0≧1.00)となるように、中空部に配されている。
本発明は、支持する構造物から上板に加えられた荷重(鉛直荷重)Wで弾性層が積層方向(鉛直方向)において圧縮されて中空部の高さ(積層方向の長さ)が低くなると、振動減衰体が弾性層の内周面を押圧して部分的に弾性層に積層方向に直交する方向(水平方向、即ち、剪断方向)に張り出し、この張り出し、言い換えると、振動減衰体による弾性層の内周面への押圧に起因する弾性層の弾性反力に基づく振動減衰体に生じる内圧であって振動減衰体からの閉塞部材への面圧Prと当該荷重に基づく積層体の荷重に対する受圧面での面圧P0との比Pr/P0が一定の関係となるように、振動減衰体が中空部に配されてなる免震支持装置では、中空部に配された振動減衰体を所定に隙間なしに拘束し得るという知見に基づいてなされたものである。
斯かる知見に基づく本発明の免震支持装置では、面圧Prと面圧P0との比Pr/P0が1.00以上(比Pr/P0≧1.00)、好ましくは、1.00を超える(比Pr/P0>1.00)ように、より好ましくは、1.09以上(比Pr/P0≧1.09)、更により好ましくは、2.02以上(比Pr/P0≧2.02)、最も好ましくは、2.50以上(比Pr/P0≧2.50)となるように、振動減衰体が中空部に好ましくは密に配されていると、積層方向に直交する方向の積層体の剪断弾性変形においても、中空部に配された振動減衰体を所定に隙間なしに弾性層及び剛性層で拘束し得る結果、安定な免震特性を得ることができ、加えて弾性層及び振動減衰体の疲労を回避することができ、耐久性及び免震効果並びに製造性に特に優れた免震支持装置を提供することができる。
本発明において、振動減衰体からの閉塞部材への面圧Prは、構造物からの荷重の大きさと中空部への振動減衰体の充填の程度と弾性層の弾性率又は剛性率の高低とによって増減し、比Pr/P0が1.00以上である免震支持装置では、中空部を規定する積層体の内周面は、振動減衰体が弾性層に適切に食い込んで、当該弾性層の位置では環状の凹面になり、剛性層の位置では環状の凸面になる。
ところで、比Pr/P0が1.00よりも小さい免震支持装置では、中空部を規定する弾性層及び剛性層の内周面と、これらに接する振動減衰体の外周面との間に隙間が生じ易くなり、したがって免震作動中に、容易に弾性層及び剛性層の内周面と振動減衰体の外周面との間に隙間が生じ、不安定な免震特性を示すことになる。これは、振動減衰体が積層体に少なくとも剪断方向(水平方向)において隙間なく拘束されず、振動減衰体に剪断変形以外の変形を生じることによるものと推測される。
一方、比Pr/P0が一定以上大きい免震支持装置、具体的には、比Pr/P0が5.90よりも大きい免震支持装置では、振動減衰体が大きく弾性層に食い込んで、弾性層の内周面が過度に凹面になり、この部位の近傍での弾性層と剛性層との間の剪断応力が大きくなり過ぎ、弾性層の劣化を早め、弾性層の耐久性が劣ることになり、また、比Pr/P0が斯かる5.90よりも大きい免震支持装置を得るには、振動減衰体の中空部への圧入を極めて大きくしなければならず、免震支持装置の製造が困難であることも判った。
そして、中空部に配された振動減衰体を所定に隙間なしに弾性層及び剛性層で拘束し得て、安定な免震特性を得ることができ、加えて弾性層及び振動減衰体の疲労を回避することができ、耐久性及び免震効果並びに製造性に特に優れた免震支持装置を得ることのできる比Pr/P0は、本発明の免震支持装置で免震支持する建築物及び橋梁での各荷重Wで好ましい範囲が存在するが、該各免震支持装置は、比Pr/P0≧1.00であって、比Pr/P0≦5.90であると、小さな振動入力では、高い剛性を示し、大きな振動入力では、低い剛性を示す機能、いわゆるトリガ機能を得ることができる上に、大振幅の地震動に特に好ましく対応し得、しかも、製造性に極めて優れる。
加えて、本発明の免震支持装置によれば、積層体の剪断方向の振動エネルギを吸収して積層体の剪断方向の振動を減衰させる振動減衰体が充填されている中空部の積層方向の一端を閉塞する閉塞部材が、積層体の剪断方向の振動での振動減衰体の変形において中空部の積層方向の一端部における振動減衰体の塑性流動を案内補助するべく、振動減衰体の積層方向の一端部に接触する流動案内凹面を有しているために、積層体の剪断方向の振動での振動減衰体の変形において、中空部の一端部における振動減衰体の塑性流動を効果的に案内補助することができて、中空部の一端部における振動減衰体の一端部の塑性流動をより効果的に確保できる結果、免震効果をより向上し得る。
本発明の免震支持装置において、流動案内凹面は、積層体の剪断方向の振動での振動減衰体の変形において中空部の積層方向の一端部における振動減衰体の塑性流動を案内補助できれば、いずれの形態であってもよいのであるが、中空部は、好ましい例では、弾性層及び剛性層の内周面で規定された円柱状中空部と、流動案内凹面で規定された半球(本発明では、完全でない球、すなわち球欠又は球台を意味し、好ましくは、完全球の表面積に対して1/2以下の表面積を有した球欠又は完全球を二等分した一方の側における前記表面積(1/2の表面積を除く)を有した球台)状中空部とを具備しており、流動案内凹面は、半凹球面(本発明では、前記半球の表面に相補的な面)を具備しており、他の好ましい例では、中空部は、弾性層及び剛性層の内周面で規定された円柱状中空部と、流動案内凹面で規定された円錐台状中空部とを具備しており、流動案内凹面は、半凹球面と、この半凹球面に連接された平坦面とを具備しており、更に他の好ましい例では、弾性層及び剛性層の内周面で規定された四角柱状中空部と、流動案内凹面で規定された半円柱状中空部とを具備しており、流動案内凹面は、半円筒凹面を具備しており、更に他の好ましい例では、弾性層及び剛性層の内周面で規定された四角柱状中空部と、流動案内凹面で規定された方形台状中空部とを具備しており、流動案内凹面は、一対の半円筒凹面と、この一対の半円筒凹面の夫々に連接された平坦面とを具備している。
本発明の免震支持装置は、積層体の剪断方向の振動での振動減衰体の変形において中空部の積層方向の他端部における振動減衰体の塑性流動を案内補助するべく、振動減衰体の積層方向の他端部に接触する他の流動案内凹面を有していると共に中空部の積層方向の他端を閉塞する他の閉塞部材を更に具備していてもよく、この場合、中空部は、更に他の流動案内凹面で規定されている。
他の流動案内凹面を有した他の閉塞部材を更に具備している本発明の免震支持装置では、積層体の剪断方向の振動での振動減衰体の変形において、中空部の他端部における振動減衰体の他端部の塑性流動をも効果的に案内補助することができて、中空部の他端部における振動減衰体の他端部の塑性流動をより効果的に確保できる結果、免震効果をより向上し得る。
斯かる他の閉塞部材を更に具備している本発明の免震支持装置において、中空部は、好ましい例では、弾性層及び剛性層の内周面で規定された円柱状中空部と、他の流動案内凹面で規定された半球状中空部とを具備しており、他の流動案内凹面は、半凹球面を具備しており、他の好ましい例では、弾性層及び剛性層の内周面で規定された円柱状中空部と、他の流動案内凹面で規定された円錐台状中空部とを具備しており、他の流動案内凹面は、半凹球面と、この半凹球面に連接された平坦面とを具備しており、更に他の好ましい例では、弾性層及び剛性層の内周面で規定された四角柱状中空部と、他の流動案内凹面で規定された半円柱状中空部とを具備しており、他の流動案内凹面は、半円筒凹面を具備しており、更に他の好ましい例では、弾性層及び剛性層の内周面で規定された四角柱状中空部と、他の流動案内凹面で規定された方形台状中空部とを具備しており、他の流動案内凹面は、一対の半円筒凹面と、この一対の半円筒凹面の夫々に連接された平坦面とを具備している。
中空部が円柱状中空部と半球状中空部又は円錐台状中空部とを具備している本発明の免震支持装置の場合には、種々の剪断方向の積層体の変形に対応して中空部の一端又は他端における振動減衰体の塑性流動をより効果的に確保できる一方、中空部が四角柱状中空部と半円柱状中空部又は方形台状中空部とを具備している本発明の免震支持装置の場合には、半円柱状中空部又は方形台状中空部を規定する円筒凹面の中心線に直交する剪断方向の積層体の変形に対応して中空部の一端又は他端における振動減衰体の塑性流動をより効果的に確保でき、而して、前者の場合には、積層体の剪断変形に関して無方向性をもった免震支持装置を提供でき、後者の場合には、積層体の剪断変形に関して方向性をもった免震支持装置を提供できる。
本発明の免震支持装置において、振動減衰体は、好ましい例では、塑性変形を含む変形で振動エネルギの吸収を行う減衰材料からなり、斯かる減衰材料は、鉛、錫、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケル又はこれらの合金からなっていても、鉛、錫、非鉛系低融点合金(例えば、錫−亜鉛系合金、錫−ビスマス系合金及び錫−インジウム系合金より選ばれる錫含有合金であって、具体的には、錫42〜43重量%及びビスマス57〜58重量%を含む錫−ビスマス合金等)からなっていても、亜鉛・アルミニウム合金等の超塑性合金からなっていてもよく、斯かる減衰材料からなる振動減衰体は、単一塊状体の形態を有していても、これに代えて、積層方向において分割積層された分割積層体等の形態を有していてもよい。
本発明において上板及び下板は、円形若しくは楕円形の外縁を有していても、これに代えて、矩形若しくは方形の外縁を有していてもよい。
本発明の免震支持装置において弾性層の素材としては、天然ゴム、シリコーンゴム、高減衰ゴム、ウレタンゴム又はクロロプレンゴム等のゴムを挙げることができるが、好ましくは天然ゴムであり、斯かるゴムからなるゴム板等の弾性層の各層は、好ましくは、無負荷状態(支持する積層方向の荷重が上板に加えられていない状態)において1mm〜30mm程度の厚みを有しているが、これに限定されず、また、剛性層としては、鋼板、炭素繊維、ガラス繊維若しくはアラミド繊維等の繊維補強合成樹脂板又は繊維補強硬質ゴム板等を好ましい例として挙げることができ、剛性層の各層は、1mm〜6mm程度の厚みを有していても、また、積層方向における最上位及び最下位の剛性層は、最上位及び最下位の剛性層以外の最上位及び最下位の剛性層間に配される剛性層の厚みよりも厚い、例えば10mm〜50mm程度の厚みを有していてもよいが、これらに限定されず、加えて、弾性層及び剛性層は、その層数においても特に限定されず、免震対象物の荷重、剪断変形量(水平方向歪量)、弾性層の弾性率、予測される免震対象物への振動加速度の大きさの観点から、安定な免震特性を得るべく、弾性層及び剛性層の層数を決定すればよい。
本発明では、弾性層及び剛性層は、円環状であって、振動減衰体は、円柱状であることが好ましいが、他の形状のもの、例えば楕円状若しくは方形状及び楕円柱状若しくは方形柱状体であってもよく、弾性層及び剛性層の夫々の内周面で規定された中空部は、一つでもよいが、これに代えて、複数個でもよく、この複数個の中空部の夫々に振動減衰体を配し、複数個の中空部の全て又は一部を弾性層及び剛性層の夫々の内周面と流動案内凹面とで規定して、これらの内周面と流動案内凹面とで振動減衰体を拘束した免震支持装置を構成してもよい。なお、これら複数の中空部の夫々に関して、比Pr/P0が同一である必要はなく、比Pr/P0がそれぞれ異なっていてもよく、また、これら複数の中空部の夫々に関して比Pr/P0が1.00以上であることが好ましいが、複数の中空部の一部に関してのみ比Pr/P0が1.00以上であってもよい。
本発明によれば、安定な免震特性を得ることができ、加えて、積層体の弾性層及び振動減衰体の疲労を回避することができ、耐久性及び免震効果並びに製造性に特に優れ、しかも、積層体の剪断方向の振動での振動減衰体の変形において、中空部の一端における振動減衰体の塑性流動を効果的に案内補助することができて、中空部の一端における振動減衰体の塑性流動をより効果的に確保できる結果、免震効果を向上し得る免震支持装置を提供することができる。
次に本発明の実施の形態を図に示す好ましい具体例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
図1から図4において、本例の免震支持装置1は、交互に積層された弾性層としての円環状の複数枚のゴム板2及び剛性層としての円環状の複数枚の鋼板3に加えて、ゴム板2及び鋼板3の円環状の外周面4及び5を被覆していると共にゴム板2と同一のゴム材料からなる円筒状の被覆層6を有する円筒状の積層体7と、積層体7の積層方向(本例では、鉛直方向でもある)Aの円環状の上端面8及び下端面9に複数の螺子10及び11を介して取付けられた取付板としての円環状の上板12及び下板13と、積層方向Aに直交する剪断方向Bの変形により積層体7の剪断方向Bの振動エネルギを吸収して積層体7の剪断方向Bの振動を減衰させる振動減衰体としての鉛プラグ14と、ゴム板2及び鋼板3の夫々の内周面15及び16と協働して中空部17を規定すると共に中空部17に充填された鉛プラグ14の積層体7の剪断方向Bの振動での鉛プラグ14の当該剪断方向Bの変形において中空部17の積層方向Aの一端部18における鉛プラグ14の塑性流動を案内補助するべく、鉛プラグ14の積層方向Aの一端部19に接触する流動案内凹面としての半凹球面20を有していると共に中空部17の積層方向Aの半凸球面からなる一端21を当該半凹球面20で閉塞する閉塞部材としての蓋部材22と、ゴム板2及び鋼板3の夫々の内周面15及び16並びに半凹球面20と協働して中空部17を規定すると共に積層体7の剪断方向Bの振動での鉛プラグ14の当該剪断方向Bの変形において中空部17の積層方向Aの他端部23における鉛プラグ14の塑性流動を案内補助するべく、鉛プラグ14の積層方向Aの他端部24に接触する流動案内凹面としての半凹球面25を有していると共に中空部17の積層方向Aの半凸球面からなる他端26を当該半凹球面25で閉塞する閉塞部材としての蓋部材27とを具備している。
厚さt1の天然ゴム製のゴム板2の夫々は、積層方向Aにおいて対面する鋼板3の積層方向Aの上面及び下面に加硫接着されている。
鋼板3は、積層方向Aの最上位及び最下位の円環状の厚さt2の鋼板3a及び3bと、積層方向Aにおける鋼板3a及び3b間の複数枚の円環状の厚さt3の鋼板3cとを具備しており、鋼板3a及び3bの夫々は、鋼板3cの夫々の厚みt3よりも大きく且つ互いに同一の厚みt2を有しており、複数枚の鋼板3cの夫々は、鋼板3a及び3bの夫々の厚みt2よりも小さく且つ互いに同一の厚みt3を有しており、鋼板3a及び3bの夫々は、ゴム板2の厚さt1よりも大きい厚みt2を有しており、鋼板3cの夫々は、ゴム板2の厚さt1よりも小さい厚みt3を有している(t2>t1>t3)。
被覆層6の円筒状の外周面29からなる円筒状の外周面を有した積層体7において、ゴム板2、鋼板3及び被覆層6の夫々は、互いに加硫接着されて一体化されている。
一方の構造物である上部構造物31に複数のアンカーボルト32を介して免震支持装置1を取付けるための上板12は、内周面16の径と同一の径をもって内周面16と面一に配された円筒状の内周面33で規定された円形の貫通孔34を有しており、複数の螺子10を介して鋼板3aの上面36に下面37で固定されており、剪断方向Bに関して中央に貫通孔34を有した上板12は、アンカーボルト32及び螺子10の夫々が挿通されると共に円周方向Rに等間隔に配列された複数の貫通孔38及び39を有しており、他方の構造物である下部構造物41に複数のアンカーボルト42を介して免震支持装置1を取付けるための下板13は、内周面16の径と同一の径をもって内周面16と面一に配された内周面43で規定された貫通孔44を有しており、複数の螺子11を介して鋼板3bの下面46に上面47で固定されており、剪断方向Bに関して中央に貫通孔44を有した下板13は、アンカーボルト42及び螺子11の夫々が挿通されると共に円周方向Rに等間隔に配列された複数個の貫通孔48及び49を有している。
中空部17は、ゴム板2の夫々の円環状の内周面15及び鋼板3cの夫々の円環状の内周面16からなる円筒状の内周面51で規定された円柱状中空部52と、積層方向Aにおいて円柱状中空部52の一端面に連接されていると共に半凹球面20で規定された半球状中空部53と、積層方向Aにおいて円柱状中空部52の他端面に連接されていると共に半凹球面25で規定された半球状中空部54とを具備している。
変形で振動エネルギを吸収する減衰材料としての純度99.9%程度の鉛からなる鉛プラグ14は、内周面51に隙間なしに接触した円筒状の外周面61を有していると共に円柱状中空部52に配された円柱状部62と、積層方向Aにおいて円柱状部62の一端面に連接されていると共に半凹球面20に隙間なしに接触した半凸球面63を有して半球状中空部53に配された一端部19としての半球状部64と、積層方向Aにおいて円柱状部62の他端面に連接されていると共に半凹球面25に隙間なしに接触した半凸球面65を有して半球状中空部54に配された他端部24としての半球状部66とを具備している。
積層体7の上端面8は、鋼板3aの円環状の上面36と被覆層6の円環状の上端面68とからなり、積層体7の下端面9は、鋼板3aの円環状の下面46と被覆層6の円環状の下端面69とからなり、上板12は、螺子10を介して上端面8において鋼板3aの上面36に取付けられており、下板13は、螺子11を介して下端面9において鋼板3bの下面46に取付けられている。
なお、鉛プラグ14を形成するための鉛が中空部17に充填される前においては、ゴム板2の夫々の円環状の内周面15は、鋼板3の夫々の円環状の内周面16と同径であって面一に配されているが、鋼板3cの夫々の円環状の内周面16と当該内周面16と同径であって面一に配されたゴム板2の夫々の内周面15とで規定された円柱状中空部52の容積と半球状中空部53及び54の容積とを加算した容積Qよりも大きい体積Vをもって鉛が鉛プラグ14を形成するべく当該円柱状中空部52並びに半球状中空部53及び54に充填されると、ゴム板2の夫々の円環状の内周面15は、当該鉛で剪断方向Bに関して径方向外方向に押されて弾性変形され、図示のように断面円弧凹状となり、従って、円柱状部62の外周面61は、断面円弧凹状の内周面15の夫々に相補的な円環状凸外周面61aと、内周面16の夫々に相補的な円筒状外周面61bとを具備することになり、また、上記のような容積Qよりも大きい体積Vを有しないで、容積Qと同一の体積Vをもって鉛が円柱状中空部52並びに半球状中空部53及び54に充填されても、上部構造物31の積層方向Aの荷重Wが上板12に加わることにより、ゴム板2が積層方向Aに関して圧縮されて弾性変形され、各ゴム板2の厚さt1の減少に伴って積層体7の高さhが低くなると、容積Qの減少が生じて鉛の体積Vが容積Qよりも大きくなる結果、斯かる上部構造物31の積層方向Aの荷重Wが上板12に加わる場合も、ゴム板2の夫々の円環状の内周面15は、当該鉛で剪断方向Bに関して径方向外方向に押されて弾性変形され、図示のように断面円弧凹状となり、従って、円柱状部62の外周面61は、断面円弧状の内周面15の夫々に相補的な円環状凸外周面61aと、内周面16の夫々に相補的な円筒状外周面61bとを具備することになり、而して、容積Q以上の体積Vをもって鉛が円柱状中空部52並びに半球状中空部53及び54に充填されていれば、上部構造物31の積層方向Aの荷重Wが上板12に加われば、円柱状部62の外周面61は、断面円弧状の内周面15の夫々に相補的な円環状凸面61aと、内周面16の夫々に相補的な円筒状外周面61bとを具備することになる。
蓋部材22は、内周面16の半径と同一の曲率半径を有した半凹球面20に加えて、内周面16の径と同一の径をもった円筒面71と、積層方向Aにおいて半凹球面20に対向していると共に内周面16の径と同一の径をもった円形面72とを具備しており、蓋部材27もまた、内周面16の半径と同一の曲率半径を有した半凹球面25に加えて、内周面16の径と同一の径をもった円筒面73と、積層方向Aにおいて半凹球面25に対向していると共に内周面16の径と同一の径をもった円形面74とを具備している。
蓋部材22は、その円形面72が上板12の円環状の上面81に対して面一をもって、鋼板3aの内周面16で規定された鋼板3aの円形の貫通孔82及び貫通孔82に連通した貫通孔34において隙間なしに鋼板3a及び上板12に嵌装されて、上板12に溶接等により固定されており、蓋部材27は、その円形面74が下板13の円環状の下面85に対して面一をもって、鋼板3bの内周面16で規定された鋼板3bの円形の貫通孔86及び貫通孔86に連通した円形の貫通孔44において鋼板3b及び下板13に嵌装されて、下板13に溶接等により固定されている。
而して、塑性変形で振動エネルギを吸収する減衰材料である鉛からなる鉛プラグ14は、円柱状中空部52並びに半球状中空部53及び54を具備していると共に一端21から他端26にかけて積層方向Aに伸びた中空部17に、半凹球面20、内周面51及び半凹球面25に対して隙間なしに、しかも、上部構造物31からの積層方向Aの荷重(積層方向Aの下向きの力)Wが上板12の上面81及び蓋部材22の円形面72に加えられた状態での鉛プラグ14からの蓋部材22への反力(積層方向Vの上向きの力)Frによる面圧Pr(=Fr/(蓋部材22の円形面72の面積)N/m2、但しNはニュートン、以下、同じ)と当該荷重Wによる積層体7の受圧面である上端面8での面圧P0(=W/(積層体7の荷重Wに対する上端面8の面積)N/m2)との比Pr/P0が1.00以上になるように、中空部17に密に配されている。
面一にされた蓋部材22の円形面72と上板12の上面81とを上部構造物31の下面91に接触させる一方、面一にされた蓋部材27の円形面74と下板13の下面85とを下部構造物41の上面92に接触させると共に、上板12が貫通孔38に挿入されたアンカーボルト32を介して上部構造物31に、下板13が貫通孔48に挿入されたアンカーボルト42を介して下部構造物41に夫々固定されて積層方向Aにおいて上部構造物31及び下部構造物41間に介在される一方、上部構造物31の鉛直荷重であって上板12に加わる積層方向Aの荷重Wを当該上板12及び蓋部材22で受容して当該荷重Wを積層体7及び鉛プラグ14で支持するようになっている以上の免震支持装置1において、支持する積層方向Aの荷重Wに基づくゴム板2の夫々の内周面15の弾性変形に基づく弾性復帰力に起因する鉛プラグ14からの蓋部材22への面圧Prと当該荷重Wに基づく積層体7の荷重Wに対する上端面8での面圧P0との比Pr/P0が1.00以上(比Pr/P0≧1.00)となるように、鉛プラグ14は、円柱状中空部52並びに半球状中空部53及び54に配されており、而して、上板12に加わる積層方向Aの荷重Wを積層体7及び鉛プラグ14で支持すると共に下板13に対しての上板12の積層方向Aに直交する方向である剪断方向Bの振動を鉛プラグ14の塑性変形で減衰させる一方、下板13の剪断方向Bの振動の上板12への伝達を積層体7の剪断弾性変形で抑制するようになっている免震支持装置1では、上部構造物31に対する下部構造物41の地震等の水平方向(剪断方向B)の振動で、図4に示すように、積層体7及び鉛プラグ14が剪断方向Bに剪断変形され、ゴム板2は、その剪断方向Bの剪断変形で下部構造物41の地震等の水平方向の加速度の上部構造物31への伝達を抑制し、鉛プラグ14は、その剪断方向Bの変形で下部構造物41から上部構造物31に伝達された水平方向の振動を減衰させ、而して、免震支持装置1は、下部構造物41に対して上部構造物31を免震支持するようになっている。
免震支持装置1では、積層体7の剪断方向Bの振動エネルギを吸収して積層体7の剪断方向Bの振動を減衰させる鉛プラグ14が隙間なしに充填されている中空部17の積層方向Aの一端21を閉塞する蓋部材22が、積層体7の剪断方向Bの振動での鉛プラグ14の剪断方向Bの変形において中空部17の積層方向Aの一端部18における鉛プラグ14の塑性流動Cを案内補助するべく、鉛プラグ14の積層方向Aの半球状部64からなる一端部19に接触する半凹球面20を有している一方、当該中空部17の積層方向Aの他端26を閉塞する蓋部材27が、積層体7の剪断方向Bの振動での鉛プラグ14の剪断方向Bの変形において中空部17の積層方向Aの他端部23における鉛プラグ14の塑性流動Dを案内補助するべく、鉛プラグ14の積層方向Aの半球状部66からなる他端部24に接触する半凹球面25を有しているために、積層体7の剪断方向Bの振動での鉛プラグ14の剪断方向Bの変形において、当該鉛プラグ14の剪断方向Bの変形に起因する中空部17の一端部18及び他端部23における鉛プラグ14の一端部19及び他端部24の塑性流動C及びDを効果的に案内補助することができて、中空部17の半球状中空部53からなる一端部18及び半球状中空部54からなる他端部23における鉛プラグ14の一端部19及び他端部24の塑性流動C及びDをより効果的に確保できる結果、免震効果をより向上し得る。
加えて、免震支持装置1では、面圧Prと面圧P0との比Pr/P0が1.00以上であるために、中空部17に配された鉛プラグ14を所定に隙間なしにゴム板2及び鋼板3並びに蓋部材22及び27で拘束し得る結果、安定な免震特性を得ることができ、加えてゴム板2及び鉛プラグ14の疲労を回避することができ、特に優れた耐久性及び免震効果並びに製造性を得ることができる。
免震支持装置1を製造する場合には、まず、ゴム板2となる円環状の厚さt1の複数枚のゴム板と最上位及び最下位の鋼板3a間の鋼板3cとなる円環状の厚さt3の複数枚の鋼板とを交互に積層して、その下面及び上面に最上位及び最下位の鋼板3a及び3bとなる円環状の厚さt2の鋼板を配置し、型内における加圧下での加硫接着等によりこれらを相互に固定してなる積層体7を形成し、その後、螺子11を介して下板13を最下位の鋼板3bに固定すると共に蓋部材27を貫通孔44及び86に嵌合して円形面74を下面85に対して面一として当該蓋部材27を下板13に溶接等により固定する一方、螺子10を介して上板12を最上位の鋼板3aに固定する。次に、積層体7並びに蓋部材22及び27に隙間なしに拘束される鉛プラグ14を中空部17に形成すべく、貫通孔34及び82を介して中空部17に鉛を圧入する。中空部17において半球状中空部54及び円柱状中空部52への鉛の圧入は、鉛を貫通孔34及び82を介して中空部17に油圧ラム等により押し込んで行い、半球状中空部54及び円柱状中空部52への鉛の圧入後の半球状中空部53への鉛の圧入は、半球状中空部54及び円柱状中空部52への斯かる鉛の圧入に続いて、半球状中空部53の容積に見合う体積の鉛を鋼板3aの内周面16で規定される貫通孔82に圧入し、この貫通孔82への鉛の圧入後、蓋部材22を、その円形面72が上面81に対して面一となるまで、貫通孔34及び82に油圧ラム等により嵌入し、斯かる嵌入による半球状中空部53への鉛の充填と共に蓋部材22を上板12に溶接等により固定する。
なお、型内における加圧下での加硫接着による積層体7の形成において、ゴム板2及び鋼板3の外周面4及び5を覆って被覆層6となるゴムシートを外周面4及び5に捲き付け、該加硫接着と同時に、ゴム板2及び鋼板3の外周面4及び5に加硫接着された被覆層6を形成してもよい。また斯かる形成において、ゴム板2の内周面15側の一部が流動して、鋼板3の内周面16を覆って、被覆層6の厚さよりも充分に薄い被覆層が形成されてもよい。
製造された免震支持装置1が面圧Prと面圧P0との比Pr/P0が1.00以上であることを確認するために、言い換えると、面圧Prと面圧P0との比Pr/P0が1.00以上である免震支持装置1を製造するために、蓋部材22を、その円形面72が上面81に対して面一となるまで、貫通孔34及び82に油圧ラム等により嵌入して、上板12に本免震支持装置1で支持する予定の荷重Wを加えた状態で油圧ラム等による円形面72が上面81に対して面一となる蓋部材22の貫通孔34及び82への嵌入力を測定して、この測定した嵌入力(反力Frに相当)から面圧Prを検出し、この検出した面圧Prと面圧P0とから比Pr/P0を求め、比Pr/P0が1.00以上である場合には、蓋部材22をその円形面72が上面81に対して面一となるようにして上板12に溶接等により固定し、比Pr/P0が1.00よりも小さい場合には、上板12への本免震支持装置1で支持する予定の荷重Wの負荷を解除して蓋部材22を貫通孔34及び82から取り外し、半球状中空部53に追加の鉛を圧入する。追加の鉛の半球状中空部53への圧入は、追加の鉛を半球状中空部53に蓋部材22を介して油圧ラム等により押し込んで行う。追加の鉛の圧入後、上記と同様にして面圧Prと面圧P0とから比Pr/P0を求め、比Pr/P0が1.00以上である場合には、蓋部材22を溶接等により上板12に固定する一方、比Pr/P0が1.00よりも小さい場合には、比Pr/P0が1.00以上になるまで、以上の追加の鉛の圧入を繰り返す。
なお、比Pr/P0が1.00以上になる場合には、無荷重(W=0)でゴム板2の内周面16が断面円弧凹状に変形しなくてもよい。
上記の免震支持装置1では、中空部17は、円柱状中空部52と半球状中空部53及び54とを具備しているが、これに代えて、図5に示すように、曲率に関して半凹球面20の半径よりも小径の半径をもつと共に全体として円環状である半凹球面101と半凹球面101に連接された円形の平坦面102とからなる全体として円形の流動案内凹面103を具備した閉塞部材としての円板状の蓋部材104を貫通孔82に嵌装し、同じく、曲率に関して半凹球面25の半径よりも小径の半径をもつと共に全体として円環状である半凹球面111と半凹球面111に連接された全体として円形の平坦面112とからなる全体として円形の流動案内凹面113を具備した閉塞部材としての円板状の蓋部材114を貫通孔86に嵌装してもよく、この場合、中空部17は、内周面51で規定された円柱状中空部52と、積層方向Aにおいて円柱状中空部52の一端面に連接されていると共に流動案内凹面103で規定された円錐台状中空部121と、積層方向Aにおいて円柱状中空部52の他端面に連接されていると共に流動案内凹面113で規定された円錐台状中空部122とを具備しており、而して、鉛プラグ14は、円柱状中空部52、円錐台状中空部121及び122の夫々に充填された円柱状部62並びに積層方向Aにおいて円柱状部62の一端面及び他端面に連接されている一端部19及び他端部24としての円錐台部125及び126とを具備している。そして、貫通孔34に代えて上板12の下面37に設けられた凹所に嵌合された剪断キー115と貫通孔44に代えて下板13の上面47に設けられた凹所に嵌合された剪断キー116とを更に有した図5に示す免震支持装置1では、蓋部材104は、その上面で剪断キー115の下面に接触して鋼板3aの貫通孔に嵌合されており、蓋部材114は、その下面で剪断キー116の上面に接触して鋼板3bの貫通孔に嵌合されており、このように、蓋部材104及び114に加えて、剪断キー115及び116を更に具備した免震支持装置1では、図5に示すように、貫通孔34を省いた上板12と蓋部材104との間及び貫通孔44を省いた下板13と蓋部材114との間の夫々に剪断キー115及び116を嵌め込んでもよい。
円柱状中空部52並びに円錐台状中空部121及び122を具備していると共に流動案内凹面103から流動案内凹面113にかけて積層方向Aに伸びた中空部17に、流動案内凹面103、内周面51及び流動案内凹面113に対して隙間なしに、しかも、上部構造物31からの積層方向Aの荷重(積層方向Aの下向きの力)Wが上板12の上面81に加えられた状態での鉛プラグ14からの蓋部材104への反力(積層方向Vの上向きの力)Frによる面圧Pr(=Fr/(剪断キー115の下面に接触した蓋部材104の上面の面積)N/m2)と当該荷重Wによる積層体7の受圧面である上端面8での面圧P0(=W/(積層体7の荷重Wに対する上端面8の面積)N/m2)との比Pr/P0が1.00以上になるように、鉛プラグ14が中空部17に密に配されている図5に示す免震支持装置1でも、積層体7の剪断方向Bの振動での鉛プラグ14の剪断方向Bの変形において、中空部17の一端部18及び他端部23における鉛プラグ14の一端部19及び他端部24の塑性流動C及びDを流動案内凹面103及び113で効果的に案内補助することができて、中空部17の一端部18及び他端部23における鉛プラグ14の一端部19及び他端部24の塑性流動C及びDをより効果的に確保できる結果、免震効果をより向上し得る上に、中空部17に配された鉛プラグ14を所定に隙間なしにゴム板2及び鋼板3並びに蓋部材104及び114で拘束し得る結果、安定な免震特性を得ることができ、加えてゴム板2及び鉛プラグ14の疲労を回避することができ、特に優れた耐久性及び免震効果並びに製造性を得ることができる。
上記の免震支持装置1では、振動減衰体としての鉛プラグ14は、円柱状部62と、半球状部64及び66又は円錐台部125及び126とを具備しているが、これに代えて、振動減衰体としての鉛プラグ14は、図6に示すように、四個の長方形の外面131を有した四角柱状部132と、積層方向Aにおいて四角柱状部132の一端面に連接されていると共に半円筒凸面133を有した半円柱状部134と、積層方向Aにおいて四角柱状部132の他端面に連接されていると共に半円筒凸面135を有した半円柱状部136とを具備していてもよく、この場合、閉塞部材としての蓋部材22に対応した蓋部材141は、円形面72に対応した方形面142と、円筒面71に対応した変形角筒面143と、半円筒凸面133に相補的な形状を有して半円筒凸面133にぴったりと接触すると共に流動案内凹面としての半凹球面20に対応した半円筒凹面144とを具備しており、他の閉塞部材としての蓋部材27に対応した蓋部材151は、円形面74に対応した方形面152と、円筒面73に対応した変形角筒面153と、半円筒凸面135に相補的な形状を有して半円筒凸面135にぴったりと接触すると共に流動案内凹面としての半凹球面25に対応した半円筒凹面154とを具備しており、斯かる鉛プラグ14並びに蓋部材141及び151をもった免震支持装置1では、当該鉛プラグ14が充填された中空部17は、ゴム板2の夫々の矩形状の内周面及び鋼板3cの夫々の矩形状の内周面からなる角筒状の内周面(外面131に相補的に対応)で規定されていると共に四角柱状部132が配された四角柱状中空部と、積層方向Aにおいてこの四角柱状中空部の一端面に連接されていると共に半円柱状部134が配されており、且つ、半円筒凹面144で規定された半円柱状中空部と、積層方向Aにおいて該四角柱状中空部の他端面に連接されていると共に半円柱状部136が配されおり、且つ、半円筒凹面154で規定された他の半円柱状中空部とを具備しており、蓋部材141は、円形の貫通孔82及び34に代えて、鋼板3aの矩形状の内周面で規定された矩形の貫通孔82及び上板12の矩形状の内周面33で規定された矩形の貫通孔34に隙間なしに鋼板3a及び上板12に嵌装されており、蓋部材151は、円形の貫通孔86及び44に代えて、鋼板3bの矩形状の内周面で規定された矩形の貫通孔86及び下板13の矩形状の内周面43で規定された矩形の貫通孔44に隙間なしに鋼板3a及び上板12に嵌装されることになる。
円柱状中空部52に相当する四角柱状中空部並びに半球状中空部53及び54に相当する一対の半円柱状中空部を具備していると共に半円筒凹面144から半円筒凹面154にかけて積層方向Aに伸びた中空部17に、この中空部17を規定する面に対して隙間なしに、しかも、上部構造物31からの積層方向Aの荷重(積層方向Aの下向きの力)Wが上板12の上面81及び蓋部材141の方形面142に加えられた状態での鉛プラグ14からの蓋部材141への反力(積層方向Vの上向きの力)Frによる面圧Pr(=Fr/(蓋部材141の方形面142の面積)N/m2)と当該荷重Wによる積層体7の受圧面である上端面8での面圧P0(=W/(積層体7の荷重Wに対する上端面8の面積)N/m2)との比Pr/P0が1.00以上になるように、中空部17に密に配されている図6に示すような鉛プラグ14及び当該鉛プラグ14が隙間なしに充填された中空部17並びに蓋部材141及び151をもった免震支持装置1でも、積層体7の剪断方向Bの振動での鉛プラグ14の剪断方向Bの変形において、中空部17の一端部18及び他端部23における鉛プラグ14の一端部19及び他端部24の塑性流動C及びDを半円筒凹面144及び154で効果的に案内補助することができて、鉛プラグ14の一端部19及び他端部24の半円柱状部134及び136の夫々の塑性流動C及びDをより効果的に確保できる結果、免震効果をより向上し得る上に、中空部17に配された鉛プラグ14を所定に隙間なしにゴム板2及び鋼板3並びに蓋部材141及び151で拘束し得る結果、安定な免震特性を得ることができ、加えてゴム板2及び鉛プラグ14の疲労を回避することができ、特に優れた耐久性及び免震効果並びに製造性を得ることができる。
また、蓋部材141において、半円筒凹面144からなる流動案内凹面に代えて、図7に示すように、曲率に関して半円筒凹面144の半径よりも小径の半径をもつと共に全体として矩形である一対の半円筒凹面161と、一対の半円筒凹面161の夫々に連接された全体として矩形である平坦面162とからなる全体として矩形の流動案内凹面163とする一方、蓋部材151において、半円筒凹面154からなる流動案内凹面に代えて、曲率に関して半円筒凹面154の半径よりも小径の半径をもつと共に全体として矩形である一対の半円筒凹面171と、一対の半円筒凹面円171の夫々に連接された全体として矩形である平坦面172とからなる全体として矩形の流動案内凹面173として、四角柱状部132に対応する四角柱状中空部と、蓋部材141の流動案内凹面163で規定された方形台状中空部と、蓋部材151の流動案内凹面173で規定された方形台状中空部とを具備して中空部17を構成してもよく、この場合には、鉛プラグ14は、四角柱状中空部に配された四角柱状部132と、流動案内凹面163で規定された方形台状中空部に配されていると共に流動案内凹面163に相補的な形状の上面181をもった方形台部182と、流動案内凹面173で規定された方形台状中空部に配さていると共に流動案内凹面173に相補的な形状の下面183をもった方形台部184とからなる。
上部構造物31からの積層方向Aの荷重(積層方向Aの下向きの力)Wが上板12の上面81及び蓋部材141の方形面142に加えられた状態での鉛プラグ14からの蓋部材141への反力(積層方向Vの上向きの力)Frによる面圧Pr(=Fr/(蓋部材141の方形面142の面積)N/m2)と当該荷重Wによる積層体7の受圧面である上端面8での面圧P0(=W/(積層体7の荷重Wに対する上端面8の面積)N/m2)との比Pr/P0が1.00以上になるように、鉛プラグ14が隙間なしに充填された中空部17を有した免震支持装置1でも、積層体7の剪断方向Bの振動での鉛プラグ14の剪断方向Bの変形において、中空部17の一端部18及び他端部23における鉛プラグ14の一端部19及び他端部24の塑性流動C及びDを流動案内凹面163及び173で効果的に案内補助することができて、鉛プラグ14の一端部19及び他端部24の方形台部182及び184の夫々の塑性流動C及びDをより効果的に確保できる結果、免震効果をより向上し得る上に、中空部17に配された鉛プラグ14を所定に隙間なしにゴム板2及び鋼板3並びに蓋部材141及び151で拘束し得る結果、安定な免震特性を得ることができ、加えてゴム板2及び鉛プラグ14の疲労を回避することができ、特に優れた耐久性及び免震効果並びに製造性を得ることができる。
図1から5に示すような鉛プラグ14をもった免震支持装置1では、積層体7の剪断方向Bの剪断変形に関して無方向性を有するが、図6又は図7に示すような鉛プラグ14をもった免震支持装置1では、積層体7の剪断方向Bの剪断変形に関して方向性を有することになる。なお、図6又は図7に示す鉛プラグ14において、角部に面取り、例えばR面取りを施してもよい。
また、図7に示す蓋部材141及び151並びに鉛プラグ14及び当該鉛プラグ14が隙間なしに充填された中空部17を、図1から図5に示す蓋部材22及び19並びに鉛プラグ14及び中空部17に代えて、当該図1から図5に示す免震支持装置1に用いてもよい。
実施例1から3の免震支持装置1
図1から図3に示す免震支持装置1において、
ゴム板2:厚さt1=2.5mm、外周面4の径(外径)=250mm、変形前の円筒状の内周面16の径(内径)=50mmであって、せん断弾性率=G4の天然ゴムからなる円環状のゴム板を20枚使用
最上位及び最下位の鋼板3a及び3b:夫々厚さt2=20mm、外周面5の径(外径)=250mm、内周面16の径(内径)=50mmの鋼板を使用
最上位及び最下位の鋼板3間の鋼板3c:厚さt3=1.6mm、外周面5の径(外径)=250mm、内周面16の径(内径)=50mmの鋼板を19枚使用
被覆層6の厚さ=5mm
半凹球面20及び25の径=102mm
斯かる図1から図3に示す免震支持装置1において、支持する荷重W=600kNに対して、実施例1では、比Pr/P0=1.09となるように、実施例2では、比Pr/P0=2.02となるように、そして、実施例3では、比Pr/P0=2.50となるように、中空部17に鉛を充填した。
比較例の免震支持装置
支持する荷重W=600kNに対して、比Pr/P0=0.73となるように中空部17に鉛を充填した以外、実施例1から3と同様の免震支持装置を製造した。
実施例1から3の免震支持装置1と比較例の免震支持装置との夫々の上板12に荷重W=600kNを加えた状態で、最大±5mmの水平変位をもって上板12に対して下板13に水平方向Hに振動を加えた場合の水平変位−水平力(水平応力)の履歴特性を測定した結果を図8から図11に示す。図8から図10に示す履歴特性から明らかであるように、実施例1から3の免震支持装置1では、安定な免震特性を得ることができ、トリガ機能を有し、大振幅の地震に対して好ましく対応し得、また、図11に示す履歴特性から明らかであるように、比較例の免震支持装置では、矢印で示すように凹みが生じて不安定な免震特性となり、トリガ機能を好ましく得ることができないことが判る。なお、比Pr/P0が5.90以下であれば、製造において中空部17への鉛の圧入が容易であり、それほど困難を伴わないことが判明した。また、比Pr/P0が5.90を超えるように、中空部17へ鉛を圧入しようとしたが、ゴム板2の内周面16の損壊なしに、これを行うことは困難であることも判明した。
図8と図11とに示す履歴特性から、比Pr/P0が1.00となるように、鉛プラグ14が中空部17に配されていると、図8に示す履歴特性と同等の履歴特性が得られることも確認した。