以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の態様について説明するが、本発明はそれらの実施の態様に限定されない。
[第1の態様]
図1および図2を参照して、本発明に係る機能性シートおよび機能性シートキットの構成および作用効果について説明する。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の態様について説明するが、本発明はそれらの実施の態様に限定されない。
図1を参照して、本発明に係る機能性シートの構成および作用効果について説明する。
<機能性シート>
本発明に係る機能性シートは、吸収性材料および機能性成分を含有し、少なくとも一部が水と接触した形態で用いられた際に、前記水を吸い上げ、前記水を介した反応により前記機能性成分が機能を発揮する、水吸い上げ型の機能性シートである。前記機能性シートは、水吸い上げ時の前記水の移動が阻害される阻害領域を有することを特徴とする。
図1は、本発明に係る機能性シートの構成の非限定的な例を示す概略図である。図1(a)から(d)は、機能性シートの上面図を示す。図1(d−1)は、図1(d)に示される機能性シートの側面図である。図1(d−2)は、図1(d)および(d−1)に示される機能性シートの変形例の側面図であり、この変形例の機能性シートは立体的に成形されている。
図2は、本発明に係る機能性シートおよび機能性シートキットの使用形態の例を示す側面概略図である。本発明に係る機能性シートキットは、本発明に係る機能性シートと、前記機能性シートの少なくとも一部を水と接触させるための水分を収容する容器と、を含む。機能性シートキットは、使用される際の機能性シートの体勢を維持するために、懸垂や載置のための構成をさらに含んでいてもよい。かかる構成を有するキットによれば、他の用具を必要とすることなしに、機能性シートを設置することができる。
本発明に係る機能性シートは、機能性シートに、水の移動が阻害される阻害領域を設けた構成を有する。以下、本明細書において、阻害領域が設けられる前の機能性シートを、機能性シート基材とも称することとする。
(機能性シート基材)
本発明の機能性シート基材には、例えば吸収性繊維などの吸水性材料と、1つまたは複数の機能性成分と、を含有し、水を吸い上げ、水を介した反応により機能を発揮することのできる任意のシートを用いることができる。
本発明に適用可能な機能性シート基材の1つの例として、炭酸塩/重炭酸塩および酸を機能性成分として含有し、水を介して炭酸塩/重炭酸塩と酸とが反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生シートが挙げられる。また、機能性シート基材の別の例として、炭酸塩/重炭酸塩を機能性成分として含有し、水を介して酸と反応して炭酸ガスを発生する炭酸塩シートが挙げられる。また、機能性シート基材の別の例として、酸を機能性成分として含有し、水を介して炭酸塩/重炭酸塩と反応して炭酸ガスを発生する酸シートが挙げられる。また、機能性シート基材の別の例として、機能性成分が包接されたシクロデキストリンを含有し、水を介する反応により機能性成分を放出する、シクロデキストリン含有シートなどが挙げられる。また、機能性シート基材の別の例として、炭酸ガス発生性の機能性成分と、別の機能性成分が包接されたシクロデキストリンと、を含有するシートが挙げられる。本発明の機能性シート基材に適用可能な炭酸ガス発生シートおよびシクロデキストリン含有シートのそれぞれについては、項目を設けて後述する。
(阻害領域)
本願発明に係る機能性シートは、機能性シート基材に阻害領域が設けられた構成を有する。本発明における阻害領域とは、周囲の領域と比べた際に、相対的に、水吸い上げ時の水の移動が阻害される領域をいう。
1つの態様の阻害領域は、機能性シートに形成された部分的な空間であることができる。阻害領域は、例えば図1(a)、(b)および(d−1)に例示するように、複数の孔や切り欠きなどであることができ、かかる領域において水分は伝わることができない。
1つの態様の阻害領域は、機能性シートにおいて阻害領域の周囲よりも密度の高い高密度部分であることができる。阻害領域は、例えば図1(c)に例示するように、エンボス加工やヒートシール加工等により圧縮された部分などであることができ、かかる領域においては水分が通りにくい。
また、図1(d−2)に示される例においては、機能性シートは、水吸い上げ時の水吸い上げ高さに対する水移動距離が長大であるように構成されており、これにより、機能性シート内における水の移動が制限される。
本発明の機能性シートは、阻害領域を有さない構成と比べて、機能性シート内における水の移動が制限されるため、水を介した反応が開始される時間に機能性シート内で幅が生じ、機能性シート全体としての機能発揮の持続時間が長くなる。こういった形状に加工するためには、一定以上の剛性が必要であり、形状によって水移動距離が長大であるように設計するためには、JIS P 8125 紙および板紙 テーバーこわさ試験機法に準じて測定したシートのテーバー剛性度が0.8mN・m以上であることが好ましく、1.0mN・m以上であることがより好ましく1.5mN・mであることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、充分な剛性を有するため、上記形状を維持することが可能となる。
(機能および機能性成分)
本発明に係る機能性シートは、機能性成分を含有し、水を介した反応により、機能を発揮する。本発明に係る機能性シートの機能は、機能性成分を選択することにより、用途および目的に応じて任意に設定することができる。機能性成分としては、水分を介した反応により機能を発揮する成分であれば何を使用してもよい。
例えば、機能性成分は、水分と接触することにより単独で機能を発現するものであってもよい。また、機能性成分は、水の媒介により他の1つまたは複数の機能性成分と接触し、これによって生じる反応により機能を発現する、いわゆる二剤(多剤)反応型の材料であってもよい。すなわち、本発明に係る機能性シートは、1つまたは複数の機能性成分を含有していることができる。
水分と接触することにより単独で機能を発現するものの例としては、例えば、水分と接触した際にアルカリ性を呈する粉末が挙げられる。水分と接触した際にアルカリ性を呈する粉末としては、炭酸塩または重炭酸塩のようなアルカリ無機塩を使用することができる。アルカリ無機塩としては、化粧料で使用できるグレードのものであれば特段の限定無く使用でき、人体等に触れず環境に対して問題のない用途で使用する場合は、特段グレードを規定しない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウムもしくはその誘導体等を用いることができる。炭酸塩および/または重炭酸塩は2種以上を併用しても構わない。特に、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムの一方もしくは両方を好ましく使用することができる。アルカリ無機塩は、固体状の組成物であり、例えば粒子の形態であることが好ましい。アルカリ無機塩は、例えばシリカ等の担持体に担持させた形態であってもよい。また、アルカリ無機塩は結晶水として水を含んでいてもよい。結晶水を含むと水への溶解度が高くなり、反応性が向上する。ただし、保存安定性の観点から、水分と接触した際にアルカリ性を呈する粉末を含む機能性シートは、加水分解や酸との反応が開始される等の変質の原因となる水分を含まないことが好ましい。水分と接触した際にアルカリ性を呈する粉末としては、この他に水酸化カルシウムや水酸化ナトリウムなどの金属酸化物や金属水酸化物、リン酸塩やケイ酸塩などを使用することができる。本発明に使用する水分と接触した際にアルカリ性を呈する粉末としては、平均粒子径5〜5000μmの粒子が好ましい。平均粒子径5〜5000μmであれば、粒子の脱落が少ない。平均粒子径を小さくすると溶解速度が速くなり、水に濡らしてすぐに反応が進む。一方、平均粒子径を大きくすると、水と接触した際、溶解が徐々に進む。そのため、機能発揮の持続時間を延長する効果がある。また、平均粒子径を大きくすることで粒子脱落を少なくする効果がある。
また、水で溶解することにより単独で機能を発現するものの別の例としては、例えば、水分と接触した際に酸性を呈する粉末が挙げられる。水分と接触した際に酸性を呈する粉末としては、化粧料で使用できるグレードの酸であれば特段の限定無く使用でき、人体等に触れず環境に対して影響のない用途で使用する場合は、特段グレードを規定しない。例えば、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、ヒアルロン酸、リン酸二水素ナトリウムもしくはその誘導体、加水分解されて酸を生じる物質等を用いることができる。酸は2種以上を併用しても構わない。酸は、固体状の組成物であり、例えば粒子の形態であることが好ましい。以下、本明細書において、水分と接触した際に酸性を呈する粉末を、単に、酸粒子ともいう。また、酸は結晶水として水を含んでいてもよい。結晶水を含むと水への溶解度が高くなり、反応性が向上する。ただし、保存安定性の観点から、酸性層は、加水分解や炭酸塩および/または重炭酸塩との反応が開始される等、変質の原因となる水分を含まないことが好ましい。
本発明に使用する酸としては、平均粒子径5〜5000μmの粒子が好ましい。平均粒子径5〜5000μmであれば、粒子の脱落が少ない。平均粒子径を小さくすると溶解速度が速くなり、水に濡らしてすぐに反応が進む。一方、平均粒子径を大きくすると、水と接触した際、溶解が徐々に進む。そのため、機能発揮の持続時間を延長する効果がある。また、平均粒子径を大きくすることで粒子脱落を少なくする効果がある。
二剤反応型の機能性成分の例としては、例えばアルカリ性物質と酸性物質とを挙げることができる。水を介してこれらが合わさることによって、発泡が生じる。アルカリ性物質としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩およびこれらの混合物を挙げることができ、上述した、水分と接触した際にアルカリ性を呈する粉末は、好適に使用されることができる。酸性物質としては、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、酪酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、グリコン酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸およびこれらを組み合わせて使用することができ、上述した、水分と接触した際に酸性を呈する粉末は、好適に使用されることができる。また、機能性成分は、他の材料により少なくとも一部が被覆された形態で機能性シートに含有されていて、水と当該他の材料との反応により、被覆状態から解放(放出、溶出等)されることにより、機能を発揮するものであってもよい。そのような機能性成分の例としては、シクロデキストリンに包接された形態の機能性成分や、水溶性材料により被覆された形態の機能性成分が挙げられる。水溶性材料による被覆には、例えば、水溶性材料によるコーティングや、水溶性材料で形成されたカプセルによる封入(カプセル化)が挙げられる。機能性材料を水溶性材料を用いて被覆する方法としては、例えば、懸濁重合法や滴下法によるマイクロカプセル化や、機能性材料を水溶性材料を溶解させた溶液内に添加し、噴霧乾燥する方法などが挙げられる。本明細書では、水溶性材料により少なくとも一部が被覆された形態の機能性成分を、単に機能性成分と称する場合がある。
本発明に用いられる水溶性材料は、一般に糖類、水溶性高分子、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲンペプチド、およびでんぷん等として分類される材料から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。これらの材料を使用することによって、本発明の機能性成分を、その少なくとも一部が覆われた形態となるように被覆することができる。
本発明に用いられる上記糖類としては、特に限定されない。例えば、単糖類としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトースが挙げられる。二糖類としては、ショ糖、麦芽糖、乳糖、セロビオース、トレハロース、パラチノースが挙げられる。多糖類としては、アミロース、セルロースなどや、水あめ、三温糖、黒砂糖が挙げられる。糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、還元水飴が挙げられる。オリゴ糖としては、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖等が挙げられる。
上記水溶性高分子としては、ポリアクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、ポリアクリル酸メタクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カーボポール、結晶セルロース、セルロース、プルラン、カゼイン、ぺクチン、デンプン、アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、アラビアガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸およびその塩、グルコサミンなどが挙げられる。
上記ゼラチン、コラーゲンおよびコラーゲンペプチドとしては、それぞれ牛、豚、魚由来のゼラチン、コラーゲンまたはコラーゲンペプチドが用いられる。
上記でんぷんとしては、ジャガイモデンプン、甘藷デンプン、タピオカデンプン、米デンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、大麦デンプンが挙げられる。
本発明で用いることのできる機能性成分としては、例えば、発泡性成分(アルカリ性物質、酸性物質)、ワサビ成分、マスタード成分、唐辛子成分、ジンジャー成分、レモン成分、オレンジ成分、グレープフルーツ成分、ユズ成分、ウメ成分、抹茶成分、アーモンド成分、天然ミートフレーバー、ローズ、ハーブなどの抽出成分、植物抽出エキス、茶抽出物等の天然物系抗菌剤もしくは香料、l-メントール成分等の天然系または有機系揮発性抗菌剤もしくは香料、コエンザイムQ10やイソフラボン等の化粧品原料等の他、水と接触することで発酵を開始する酵母や粉末化した乳酸菌などの菌類等が挙げられる。
上述のもの以外にも、機能性成分としては、例えば:薬用成分、保湿剤、感触向上剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、香料、色素、着色剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、止痒剤、角質軟化剥離剤、防腐殺菌剤、脂溶性物質、消臭成分等の公知の化合物を、用途および目的に応じて任意に選択することができる。
また、機能性成分のさらなる例として、一般に効果促進剤と呼ばれる材料が挙げられる。本発明の機能性シートには、その用途に応じて、1つまたは複数の効果促進剤を配合することができる。効果促進剤としては、例えば:油性基剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤、噴射剤、無機塩、酵素、核酸、染料、顔料、金属含有化合物、不飽和単量体、多価アルコール、高分子添加剤、粘着付与物質、油性原料、紫外線遮断剤、抗酸化物質、液状マトリックス、高分子カルボン酸塩、添加剤、金属セッケン等、が挙げられる。
(吸水性材料および撥水性材料)
本発明の1つの態様に係る機能性シートは、前記機能性シートの全質量を基準にして、吸水性材料を5質量%以上の量で含み、撥水性材料を5質量%以上の量で含む。撥水性材料の量を10質量%、20質量%、30質量%等と増やしていくと、機能発揮の持続時間の延長効果が奏される。配合される撥水性材料の量として適切な量を選択することにより、持続時間の長さを制御することができる。
本態様においては、吸水性材料および撥水性材料の物性に基づき、その種類や配合比率を適宜設定することによって、機能発揮の持続時間の長短を制御することができる。
(吸水性材料)
吸水性材料は、水分を吸収し保持する性質を有する材料である。そのため、機能性シートの一部に接触した水の機能性シートの内部への浸入および浸透を促進することができる。
吸水性材料としては、パルプ、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリ乳酸、ナイロン等の合成繊維を用いることができる。吸水性材料は、例えば解繊チョップドファイバーの形態で用いることができる。吸水性材料は、2種以上を併用しても構わない。また、吸水性材料として、吸水性樹脂粒子等の粒子の形態の助剤を用いることもできる。吸水性樹脂粒子の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールや高分子吸収体(SAP)などが挙げられる。
(撥水性材料)
撥水性材料は、水をはじく性質を有する材料である。そのため、一般に、機能性シートの一部に接触した水の機能性シートの内部への浸入および浸透に寄与しない。本態様の構成によれば、その少なくとも一部を水と接触させた形態で用いられた際に機能性シートが吸い上げる水の量や速度は、撥水性材料の存在により制限され、機能性シート内における水を介した反応の開始時間に幅をもたせることができる。その結果、機能性シート全体としてみたときに、機能発揮の持続時間が長くなる。
本発明の撥水性材料として使用可能な材料の例は、撥水繊維および撥水パルプを含む。
(撥水繊維)
本発明で使用される撥水繊維は、合成繊維の表面に撥水機能を持つ薬品が添加された材料や合成繊維に撥水剤を練りこんだ材料を使用することができる。また、各種有機物由来の繊維であってもよく、吸水性を持つ有機物由来の繊維に撥水性を付与した繊維であってもよい。
合成繊維の表面に撥水機能を付与する方法としては、繊維を製造する工程で塗布する油剤の中に撥水剤を添加する方法が知られている。
合成繊維に撥水剤を練りこむ方法としては、繊維の材料となるマスターバッチとなる樹脂に粉体状の撥水剤を練りこむ方法等が知られている。
油剤に添加される撥水剤としては、公知のものであれば限定されない。例えば、フッ素化合物、シリコーン化合物、ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸無水物、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルなどのポリオレフィン系樹脂、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスやマレイン化石油樹脂などのワックス系撥水剤、アクリルアミド、メタアクリルアミドなどのモノマーを重合したポリマーやアクリル系ポリマーにイオン性モノマー、疎水性モノマー、親水性モノマー、分岐構造を付与できるモノマー、架橋構造を付与できる多官能性モノマーなどを共重合したポリアクリルアミド系高分子、スチレンアクリル系樹脂などが知られている。
撥水性を持つ有機物由来の繊維としては、脱脂処理を施していない綿や羊毛などの繊維が知られている。
(撥水パルプ)
有機物由来の親水性繊維で撥水性を付与された材料としては、以下に記載する撥水パルプなどを用いることができる。パルプに限らず、レーヨンやケナフなど他の親水性繊維についても同様に撥水性を付与することが可能である。
本発明で用いる撥水パルプは、パルプ繊維と撥水剤が直接的もしくは、間接的に強固に結合した状態であり、機械的シェアが加わった際にパルプ繊維と撥水剤が分離しにくく、また、水と接触した際にパルプ繊維と撥水剤が分離しないことを特徴とするものであり、具体的には、下記の(1)を満たす:
(1)JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験において、沈降開始時間が30秒以上である。
より具体的には、JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験(沈降法)に準じて測定を行う。20℃±2℃の水を入れた水槽中に試料を浮かべた後、試料が湿潤して水中に沈降し始めるまでの時間(沈降開始時間)を測定する。
本発明において、撥水パルプは、沈降開始時間が30秒以上であり、60秒以上であることが好ましい。
本撥水パルプを含有させることで吸水速度をコントロールすることができる。
また、前記撥水パルプは、下記の(2)〜(5)の少なくともいずれかを満たすことが好ましい:
(2)保水試験でのパルプ保水量が15g以下である、
(3)液流れ試験での液流れ量が35g以上である、
(4)顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率が20%以下である、
(5)ティーバッグ試験での吸水量が10(g/g)以下である。
以下、上記(2)〜(5)について詳述する。
(2)保水試験でのパルプ保水量が15g以下である
本試験は、40cc(40g)の水のうち、どの程度の水をパルプが保水できたのかを測定するものであり、パルプ保水量が多いほど、吸水性が高いことを意味する。具体的には、以下の方法により測定する。
縦横10cm、高さ6cmのアクリル製の枠(中空の四角柱状)に、内径がぴったりと密着するアクリル製底面を設置する。密着度合いは、底面を設置した枠の中に水を入れると、わずかに水が染み出る程度とする。
別途、秤量したろ紙(40ccの水を吸収するに十分なろ紙)を底面を設置した枠の下に敷く。この枠の中に、パルプ繊維2gを均一に入れ、水40ccを全体に投入し、1分後に、枠の内径とほぼ同寸法のアクリル製おもり700gfを載せ、静かにパルプ繊維に荷重をかける。1分後、枠の下のろ紙質量を測定し、枠から下に染み出した水の量を測定し、投入した水40gとの差分をパルプ保水量(g)とする。すなわち、パルプ保水量は、以下の式(a)で表される。
パルプ保水量(g)=40(g)−染み出した水の量(g) 式(a)
なお、染み出した水の量は、試験前に測定したろ紙の質量と、試験後の吸水したろ紙の質量との差から測定される。
撥水パルプの上記パルプ保水量は、好ましくは12.5g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは7.5g以下、より更に好ましくは5g以下である。
(3)液流れ試験での液流れ量が35g以上である
金網上に、孔径3mmの排水口を底面に5個、十字状に有する内径3cmのアクリル製シリンダーを載せ、パルプ繊維1gを高さ4cm(密度0.035g/cm3)となるように圧縮した後、水50ccを一度に投入し、排出された水量を計量して液流れ量とする。
液流れ量が多い程、吸水性が低く、撥水性に優れることを意味する。
撥水パルプの上記液流れ量は、好ましくは37.5g以上、より好ましくは40g以上、更に好ましくは42.5g以上、より更に好ましくは45g以上である。
(4)顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率が20%以下である
顕微鏡下において、撥水パルプに水を滴下した場合の膨潤率は20%以下である。膨潤率は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、より更に好ましくは3%以下、より更に好ましくは0%以下である。
上記膨潤率は、以下の方法により測定される。具体的には、パルプ繊維を、プレパラート上に3〜5mg載せ、スポイトで約0.1mlの水をたらす。5分程度放置後、プレパラートを傾け、更に、キムワイプなどでパルプ繊維に吸収されていない水分を除去する。水を滴下前後の顕微鏡写真から、パルプ繊維の繊維径を測定し、膨潤率を下記式により算出する。
膨潤率={水滴下後のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)−水滴下前のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)}÷水滴下前のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)×100(%)
ここで、膨潤率が0%の状態とは、水とパルプ繊維がなじまず、水は表面張力により球体のままであり、繊維が水滴の上に載っている状態、又は繊維に球状の水滴が付着している状態を意味する。
(5)ティーバッグ試験での吸水量が10(g/g)以下である
撥水パルプをティーバッグ試験に供した場合の吸水量は、好ましくは10(g/g)以下、より好ましくは7.5(g/g)以下、更に好ましくは5(g/g)以下、より更に好ましくは3(g/g)以下である。
上記吸水量は、以下のティーバッグ試験により測定される。具体的には、パルプ繊維をティーバッグ(9.5cm×7cm、ポリエステルを主要繊維素材とした不織布、トキワのお茶バッグM、(株)トキワ工業製)に入れ、ティーバッグの先端に、ひもでおもり(500g)をくくりつける。おもりのついたティーバッグを、水を入れたビーカーに入れる。水は、ティーバッグ全体が完全に水面下に沈む高さまで入れる。5分間ティーバッグを浸漬した後、水から取り出し、空中にて5分間吊り下げて水を切る。水切り後のティーバッグ(パルプ繊維入り)の質量を測定し、吸水量を下記式により算出する。ここで、ティーバッグ自体への吸水量は微量であるため考慮しなくてよい。
吸水量(g/g)=(水切り後のパルプ繊維入りティーバッグの質量−水に浸漬する前のパルプ繊維入りティーバッグの質量)÷試験前のパルプ繊維質量
ここで、吸水量が1倍の状態とは、水とパルプ繊維がなじまず、水は表面張力により球体のままであり、繊維が水滴の上に載っている状態、又は繊維に球状の水滴が付着している状態を意味する。
本発明において、撥水パルプは、上記(1)を満たし、更に、(2)〜(5)の少なくともいずれか1つを満たすことが好ましい。
撥水パルプは、少なくとも(1)を満たすことが好ましく、少なくとも(1)及び(2)を満たすことがより好ましく、少なくとも(1)、(2)及び(3)を満たすことが更に好ましく、(1)〜(5)の全てを満たすことがより更に好ましい。
撥水パルプは、パルプ繊維を含有し、直接的又は間接的に撥水剤で処理されていてもよく、また、パルプ繊維の原料を選択することによって、撥水性を有するものであってもよい。パルプ繊維は、不規則に屈曲した形状を有し、捲縮状の形態を有する繊維であるとともに、植物細胞の原形質が占めていた空孔(ルーメン)を有する中空管状の形態を有する繊維でもある。撥水パルプを使用することにより、優れた吸音性が得られ、更に環境負荷が低減できる観点で好ましい。
パルプ繊維としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、ラグパルプ、リンターパルプ、リネンパルプ、楮・三椏・雁皮パルプなどの非木材パルプ、古紙パルプなどのパルプ;これらのパルプを原料パルプとし、該原料パルプを機械的処理により繊維状に解繊したフラッフパルプ;が挙げられる。
原料パルプとしては、吸音性の観点からは、細い繊維のパルプが好ましいが、高密度とすると吸音性に劣る場合がある。また、撥水性に優れた不織布が得られやすい点からは、原料パルプとして、ユーカリ等のアルカン含有量の多い木材や、パラフィン含有量の多い木材を用いることも好ましい。
本発明において、撥水パルプは、上述した繊維パルプを撥水剤により処理したものであってもよい。撥水剤としては、特に限定されず、例えば各種ワックス;高級脂肪酸誘導体;ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂等の合成樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリメチル水素シロキサン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、クロム酸塩;ジルコニウム塩;等を挙げることができる。また、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、スチレン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー等も、本発明において、撥水剤として使用可能である。
撥水剤として、具体的には、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、オイルシェルより抽出されたワックス等の鉱物系ワックス、及びパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油系ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスのほかに、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の高級脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックスも使用できる。更に、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子が挙げられる。
撥水パルプの含有量は、求められる機能性シートの持続時間によって適宜変更されるが、延長時間をより長くするためには、機能性シートの全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、35質量%以上であることが特に好ましい。また、撥水パルプの含有量は、95質量%以下であることが好ましい。撥水パルプの含有量を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用シートの撥水性を効果的に高めることができる。また、成形体の強度を高めることもできる。
撥水パルプの質量平均繊維長は、0.1mm以上15mm以下であることが好ましく、0.5mm以上10mm以下であることがより好ましく、1mm以上5mm以下であることがさらに好ましい。撥水パルプの繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用シートから撥水パルプが脱落することを抑制することができ、繊維強化プラスチック成形体用シートの撥水性を効果的に高めることができる。また、繊維強化プラスチック成形体用シートから強度に優れた成形体を形成することができる。なお、本明細書において、質量平均繊維長は、100本の繊維について測定した繊維長の平均値である。
以下に、本発明に適用可能な機能性シート基材の例を説明する。
I.機能性シート基材の第1の例[炭酸ガス発生シート]
以下、図3および図4を参照して、本発明の機能性シートを構成する機能性シート基材として適用可能な炭酸ガス発生シートについて説明する。
[第1の態様]
本発明の機能性シート基材に適用することのできる炭酸ガス発生シートは、炭酸塩層および酸層を備える積層体であって、炭酸塩層と酸層との間に吸水性シートを備え、前記炭酸塩層および前記酸層は、前記吸水性シートの表面に炭酸塩粒子または酸粒子と熱融着性樹脂との混合物を配置して熱により前記熱融着性樹脂を溶融することにより得られたものであることを特徴とする。炭酸塩層において、炭酸塩粒子は、一部が熱融着性樹脂により被覆された状態で固着されている。同様に、酸層において、酸粒子は、一部が熱融着性樹脂により被覆された状態で固着されている。本発明の炭酸ガス発生シートは、製造工程中における炭酸塩と酸との間の反応を防止するために、乾式法で製造される。
(層構成および作用効果)
図3は、本発明の第1の態様に係る炭酸ガス発生シートの構成を限定目的ではなく例示目的で示す図である。図中において、同一の符号は同一の構成要素を示す。同一の構成要素に関しては、重複する説明を割愛する場合がある。
図3(a)に示す本発明の第1の態様に係る炭酸ガス発生シートは、吸水性シート300と、炭酸塩層130と、吸水性シート300と、酸層230と、吸水性シート300と、を順に積層した構成を有する。炭酸塩層130は、炭酸塩粒子13および熱融着性樹脂16の混合物を吸水性シート300の表面に配置して、熱融着性樹脂16を熱溶融させる工程を経て形成された層である。また、酸層230は、炭酸塩粒子23および熱融着性樹脂16の混合物を吸水性シート300の表面に配置して、熱融着性樹脂16を熱溶融させる工程を経て形成された層である。
図3(a)の構成においては、炭酸塩層130中で、炭酸塩粒子13はその一部が熱融着性樹脂により被覆された状態で固定されている。そのため、炭酸塩粒子13は炭酸ガス発生シートから粉落ちし難く、また、炭酸ガス発生シートの使用時に、水分は炭酸塩と接触することができる。熱融着性樹脂と炭酸塩粒子が均一に分散しているため、炭酸塩粒子を面内で均一に配置することが可能となる。
同様に、酸層230中で、酸粒子23はその一部が熱融着性樹脂により被覆された状態で固定されている。そのため、酸粒子23は炭酸ガス発生シートから粉落ちし難く、また、炭酸ガス発生シートの使用時に、水分は酸と接触することができる。熱融着性樹脂と酸粒子が均一に分散しているため、酸粒子を面内で均一に配置することが可能となる。
また、炭酸塩層130および酸層230の上面を覆って吸水性シート300が設けられていることから、炭酸ガス発生シートからの炭酸塩または酸の粉落ちの可能性を、さらに低減させることができる。なお、炭酸ガス発生シートの外層に相当する吸水性シート300は、本発明に必須の要素ではない。
図3(b)に示す炭酸ガス発生シートは、図3(a)に示す構成のうち、炭酸塩層130および酸層230の上面を覆って設けられた吸水性シート300のうちの一方を、相対的に通気性の低いフィルム400で置き換えた構成を示す。片面に通気性の低いフィルム400を有する構成では、図3(a)に示す構成と同様の効果に加え、使用時に発生した炭酸ガスがフィルム配置側の面から放出されることを防止または抑制するという効果を奏することができる。そのため、フィルム配置側の面とは反対側の面を皮膚に適用することにより、皮膚に対し炭酸ガスを指向性を持たせて集中的におよび/または長時間にわたって適用することが可能になる。
また、例えば、炭酸塩層130および酸層230のうちの一方または両方は、さらに吸水性材料を含んでいてもよい。
図3(c)に示す炭酸ガス発生シートは、吸水性シート300と、吸水性材料を含む炭酸塩層100と、吸水性シート300と、酸層230と、吸水性シート300と、を順に積層した構成を有する。吸水性材料を含む炭酸塩層100は、炭酸塩粒子13および熱融着性樹脂16の混合物に加えて吸収性材料を吸水性シート300の表面に配置して、熱融着性樹脂16を熱溶融させる工程を経て形成された層である。吸水性材料を含む炭酸塩層100において、炭酸塩粒子13および吸収性材料は、熱融着性樹脂16により一部が被覆された状態で固定されている。
図3(d)に示す炭酸ガス発生シートは、吸水性シート300と、吸水性材料を含む酸層200と、吸水性シート300と、炭酸塩層130と、吸水性シート300と比べて相対的に通気性の低いフィルム400と、を順に積層した構成を有する。吸水性材料を含む酸層200は、酸粒子23および熱融着性樹脂16の混合物に加えて吸収性材料を吸水性シート300の表面に配置して、熱融着性樹脂16を熱溶融させる工程を経て形成された層である。吸水性材料を含む酸層200において、酸粒子23および吸収性材料は、熱融着性樹脂16により一部が被覆された状態で固定されている。
図3(c)および図3(d)では、炭酸塩層および酸層のどちらか一方にのみ吸収性材料を配合したが、吸収性材料を両方の層に配合してもよい。このように、炭酸塩層および/または酸層にさらに吸水性材料を配合する構成では、図3(a)または図3(b)に示す構成と同様の効果を奏する上に、炭酸塩および酸は、吸水性材料の存在により層の厚み方向に分散して存在することができる。さらに、吸水性材料は、水分を徐々に浸透させることができる。そのため、炭酸ガス発生シートの使用時において、炭酸塩と酸との間の反応開始の時間に幅を持たせることができ、その結果、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生の持続時間を長くすることができる。
また、吸水性材料を含む層において、特に吸水性材料が繊維状である場合、炭酸塩または酸は、吸水性材料の存在により層内に維持されやすくなる。また、炭酸ガス発生シートは、炭酸塩層および/または酸層に吸水性材料が含まれることにより、形状維持がされやすくなる。そのため、炭酸ガス発生シートの製造時、保管時および使用時において、炭酸塩および/または酸の歩留まりを向上させることができると共に、例えば折り畳まれるなどの変形を受けた場合でも、粉落ちを防止することができる。したがって、炭酸ガス発生剤のロスが防止され、コスト削減に繋がる。また、吸水性材料自体の選択によっても、コスト削減を図ることができる。
以上、図3(a)から(d)を用いて本発明の第1の態様に係る炭酸ガス発生シートの構成を説明した。しかしながらこれらは例示であり、これ以外の構成や各構成の組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
例えば、図3(a)から(d)に示す炭酸ガス発生シートは、それぞれ複数の吸水性シート300の層を含むが、これらの層は必ずしも同一の材料でなくともよい。
例えば、炭酸ガス発生シートの中間層に相当する吸水性シート300は、高い保水性を有し内部の水を徐放可能な吸水性シート500(不図示)であってもよい。炭酸塩層130と酸層230との間にそのような高い保水性を有する吸水性シート500を配置する構成では、使用時に一方の面に付与した化粧水等の水分を、時間をかけて徐々に他方の面へ浸透させることができる。したがって、炭酸塩と酸との反応開始の時間に幅を持たせることができ、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生を持続せることができる。なお、外層の吸水性シート300も、中間層に用いる高い保水性を有する吸水性シート500と同一の素材であってもよい。
(炭酸塩層)
炭酸塩層は、炭酸塩および/または重炭酸塩を含有する層である。
炭酸塩または重炭酸塩としては、化粧料として使用する場合は、化粧料で使用できるグレードのものであれば特段の限定無く使用でき、その他の用途で使用する場合は、特段グレードを規定しない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウムもしくはその誘導体等を用いることができる。炭酸塩および/または重炭酸塩は2種以上を併用しても構わない。炭酸塩および/または重炭酸塩は、固体状の組成物であり、例えば粒子の形態であることが好ましい。炭酸塩および/または重炭酸塩は、例えばシリカ等の担持体に担持させた形態であってもよい。また、炭酸塩および/または重炭酸塩は結晶水として水を含んでいてもよい。結晶水を含むと水への溶解度が高くなり、反応性が向上する。ただし、保存安定性の観点から、炭酸塩層は、加水分解や酸との反応が開始される等、変質の原因となる水分を含まないことが好ましい。本発明に使用する炭酸塩または重炭酸塩としては、平均粒子径5〜5000μmの粒子が好ましい。平均粒子径5〜5000μmであれば、粒子の脱落が少なく、適度な粒状感により、良好な使用感が得られる。
炭酸塩層は、炭酸塩および/または重炭酸塩粒子に加えて、熱融着性樹脂をさらに含有していてもよい。この場合、炭酸塩および/または重炭酸塩粒子は、炭酸塩層中で、その一部が熱融着性樹脂により被覆された状態で固定されている。そのような炭酸塩層は、例えば、炭酸ガス発生シートを構成する他の層の表面に、炭酸塩および/または重炭酸塩粒子と熱融着性樹脂との混合物を配置して、熱により熱融着性樹脂を溶融することにより形成することができる。
(酸層)
酸層は、固体の酸を含有する層である。
酸としては、化粧料として使用する場合は、化粧料で使用できるグレードのものであれば特段の限定無く使用でき、その他の用途で使用する場合は、特段グレードを規定しない。例えば、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、ヒアルロン酸、リン酸二水素ナトリウムもしくはその誘導体、加水分解されて酸を生じる物質等を用いることができる。酸は2種以上を併用しても構わない。酸は、固体状の組成物であり、例えば粒子の形態であることが好ましい。また、酸は結晶水として水を含んでいてもよい。結晶水を含むと水への溶解度が高くなり、反応性が向上する。ただし、保存安定性の観点から、酸層は、加水分解や炭酸塩との反応が開始される等、変質の原因となる水分を含まないことが好ましい。本発明に使用する酸としては、平均粒子径5〜5000μmの粒子が好ましい。平均粒子径5〜5000μmであれば、粒子の脱落が少なく、適度な粒状感により、良好な使用感が得られる。平均粒子径を小さくすると溶解速度が速くなり、水に濡らしてすぐに反応が進むため、使用初期のCO2ガス発生量が多くなる。また、肌に使用する場合は、粒状感を低減することができる。一方、平均粒子径を大きくすると、水と接触した際、溶解が徐々に進むため、炭酸ガス発生の持続時間を延長する効果がある。また、平均粒子径を大きくすることで粒子脱落を少なくする効果がある。
酸層は、酸粒子に加えて、熱融着性樹脂をさらに含有していてもよい。この場合、酸粒子は、酸層中で、その一部が熱融着性樹脂により被覆された状態で固定されている。そのような酸層は、例えば、炭酸ガス発生シートを構成する他の層のうちの1つの表面に、酸粒子と熱融着性樹脂との混合物を配置して、熱により熱融着性樹脂を溶融することにより形成することができる。
(熱融着性樹脂)
本発明における熱融着性樹脂は、炭酸塩層および/または酸層中に、炭酸塩粒子または酸粒子をその一部を被覆した状態で固定するバインダーの役割を果たす。熱融着性樹脂は、例えば、炭酸塩粒子または酸粒子と均一に混合され、炭酸ガス発生シートを構成する他の層のうちの1つ表面に配置され、加熱されて溶融することにより、炭酸塩層および/または酸層中に、炭酸塩粒子または酸粒子をその一部を被覆した状態で固定することができる。熱融着性樹脂は、粒子、繊維、その他の任意の形態であることができる。熱融着性樹脂は、層形成工程における炭酸塩粒子または酸粒子との均一混合の観点からは、粒子状であることが望ましい。また、熱融着性樹脂は、複数の炭酸塩粒子間または複数の酸粒子間を接合する観点からは、繊維状であることが望ましい。熱融着性樹脂は、例えば、ショートカットファイバーの形態であることができる。種々の形状の熱融着性樹脂を併用してもよい。
熱融着性樹脂としては、例えば、融点が95℃〜130℃の低密度ポリエチレン(PE)、融点が120℃〜140℃の高密度ポリエチレン、融点が160℃〜165℃のホモポリマーまたはブロックコポリマーからなるポリプロピレン(PP)、融点が135℃〜150℃のコポリマーからなるポリプロピレン、融点が110〜190℃の低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、融点が100〜130℃の低融点ポリアミド、融点が110℃〜150℃の低融点ポリ乳酸、融点が115℃のポリブチレンサクシネート等が挙げられる。融点が110℃を超える熱可塑性樹脂は、本発明において好ましく使用される。熱融着性樹脂は2種類以上を併用しても構わない。
熱融着性樹脂が繊維状である場合、熱融着性繊維の繊度は1dtex〜120dtexであることが好ましく、1dtex〜85dtexであることがより好ましい。また、熱融着性繊維の平均繊維長は1〜100mmであることが好ましく、1〜60mmであることがより好ましく、2〜30mmであることがさらに好ましい。熱融着性繊維の繊度および平均繊維長が前記範囲であると、ウェブ層の形成が容易であり、均一な結着力や分散状態を得やすい。
熱融着性樹脂が粒子状である場合、熱融着性粒子の平均粒径は、1〜1,000μmであることが好ましく、10〜800μmであることがより好ましい。熱融着性樹脂の平均粒子径は使用する炭酸塩と酸粒子を完全に被覆しない範囲で適宜選択することができる。
(熱融着性樹脂の複合体)
上述の熱融着性樹脂は2成分以上の複合体であってもよい。たとえば、融点の異なる樹脂を複合化した芯鞘繊維、長手方向に垂直な断面で異なる樹脂を使用したサイドバイサイド繊維、コアとシェルとを有するコアシェル粒子等が挙げられる。これらの中でも、異種の樹脂を容易に複合化できることから、芯鞘繊維が好適に用いられる。
芯鞘繊維としては、芯部分の融点よりも鞘部分の融点が低い芯鞘繊維が好適に用いられる。例えば、ポリプロピレン繊維(融点160℃)からなる芯部分と、該芯部分の外周に形成された、ポリエチレン(融点130℃)からなる鞘部分とを備えたPP/PE複合芯鞘繊維が挙げられる。
また、他の芯鞘繊維としては、例えば、PET/低融点PET複合芯鞘繊維、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン複合芯鞘繊維、ポリエチレン/低融点PET複合芯鞘繊維、ポリアミド/低融点ポリアミド複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/低融点ポリ乳酸複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート複合芯鞘繊維等が挙げられる。
一般的な芯鞘繊維は鞘部分の融点が110℃を超えるものが多く、そのような芯鞘繊維は本発明において好ましく使用される。
本発明の炭酸ガス発生シートに芯部分の融点よりも鞘部分の融点が低い芯鞘繊維を用いた場合、鞘部分の融点以上であって芯部分の融点よりも低い温度に加熱されると、鞘部分の樹脂は溶融し、芯部分の樹脂は形状を維持する。これにより、鞘部分の溶融した樹脂は、炭酸塩層中に炭酸塩および/または重炭酸塩を保持し、および/または酸層中に酸を保持するとともに、吸水性材料と芯部分の繊維とにより構成される構造体の構成成分同士を結着する効果を示す。そのため、本発明の炭酸ガス発生シートは、シート内の空隙を確保した上でシート強度を付与し、柔らかで強度に優れたシートを提供することが可能となる。
上述したような2成分以上の複合体は、外部に露出する熱融着性樹脂の存在により、熱融着性を提供することができ、バインダーとして機能することができる。したがって、これらの複合体は、本発明において熱融着性樹脂として配合されることができる。
(吸水性材料)
本発明の第1の態様においては、炭酸塩層および酸層の少なくとも一方に、吸水性材料が含有されていてもよい。吸水性材料としては、パルプ、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリ乳酸、ナイロン等の合成繊維を用いることができる。吸水性材料は、例えば解繊チョップドファイバーの形態で用いることができる。吸水性材料は、2種以上を併用しても構わない。また、吸水性材料として、吸水性樹脂粒子等の粒子の形態の助剤を用いることもできる。吸水性樹脂粒子の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールや高分子吸収体(SAP)などが挙げられる。
炭酸塩または酸は、吸水性材料の存在により、層内で分散して存在することができる。また、本発明の吸収性材料は、炭酸ガス発生シートの使用時に、水および水に溶解した炭酸塩または酸と接触してこれらを吸収し、保持する一方で、徐放することができるので、炭酸ガス発生シート内で、水分を徐々に浸透させることができる。したがって、炭酸ガス発生シートの使用時において、炭酸塩と酸との間の反応開始の時間に幅を持たせることができ、その結果、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生の持続時間を長くすることができる。
(効果促進剤)
本発明の炭酸ガス発生シートには、その用途に応じて、1つまたは複数の効果促進剤を配合することができる。
効果促進剤としては、例えば:油性基剤、保湿剤、感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤、噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、酸、アルカリ、粉体、無機塩、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素、核酸、香料、色素、着色剤、染料、顔料、金属含有化合物、不飽和単量体、多価アルコール、高分子添加剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、増粘剤、粘着付与物質、止痒剤、角質軟化剥離剤、油性原料、紫外線遮断剤、防腐殺菌剤、抗酸化物質、液状マトリックス、脂溶性物質、高分子カルボン酸塩、添加剤、金属セッケン等、が挙げられる。
効果促進剤は、例えば、炭酸塩層および酸層のうちの一方または両方に配合することができる。また、他の層に加えることもできる。
(吸水性シート)
吸水性シート300としては、水分を通す性質(通水性)を有するシート、および水分を吸収する性質(吸水性)を有するシートのうちから任意のシートを用いることができる。水分を通す性質(通水性)を有するシートとしては、水を通しさえすればよく、何ら限定はない。水分を吸収する性質(吸水性)を有するシートとしては、水分を内部に取り込んで保持することができるとともに、内部の水分を放出することができるシートを使用することができる。すなわち、本発明に適用することのできる水分を吸収する性質(吸水性)を有するシートは、水を通す性質(通水性)を有するシートの一種であるといえる。吸水性シート300は、JIS L1907規格に規定される沈降速度の測定方法に準じて測定される吸水速度が60秒以下であり、30秒以下であることがさらに好ましい。もしくは、JIS L1907規格に規定される滴下法による吸水(もしくは通水)速度が60秒以下であり、30秒以下であることがさらに好ましい。吸水性シート300は、吸水性が低いほど水を通す速度が速く、これを用いた炭酸ガス発生シートでは、炭酸塩と酸との反応が迅速に進み、炭酸ガスを短時間に集中的に発生させることができる。また、吸水性シート300は、吸水性(水分の保持力)が高いほど、炭酸塩と酸との反応の開始を遅らせることができるので、炭酸ガス発生シート全体での炭酸ガスの発生の持続時間を長くすることができる。吸水性シート300は、例えば、不織布、布または他のメッシュ構造を有するシートであることができ、例えば、ワリフ(登録商標)などの特殊不織布であることができる。
高い保水性を有する吸水性シート500としては、内部を通る水分または内部に吸収した水分を時間をかけて徐々に放出することが可能な性質を有する任意のシートを用いることができる。
また、意匠性付与や、清掃用品として使用する場合のふき取り性向上を目的として、炭酸ガス発生シートの外層となる吸水性シートの表面には、凹凸などの表面加工を施してもよい。
表面に使用する吸水性シートとして、厚手のシートや密度の低いシートを使用することで、炭酸ガス発生シートの外面に現れる粒状感を低減する効果がある。一方、薄手のシートや通水性、通気性の高いシートを使用すると、炭酸ガス発生シートの表面からの水分の浸入および発生した炭酸ガスの外部への放出が妨げられにくく、炭酸ガス発生の即時効果を得やすい。用途や目的に合わせて、吸水性シートは適宜選択される。
(フィルム)
フィルム400としては、炭酸ガス発生シートを使用時に皮膚や曲面に沿って適用することができるような柔軟性を有し、炭酸ガス発生シートの他の層、特に、吸水性シート300と比べて通気性が相対的に低い、任意のフィルムを用いることができる。
フィルムは、通気性が低いほど、炭酸ガス発生シートの使用時に発生した炭酸ガスのフィルム配置側の面からの放出防止/抑制効果は高くなる。そのため、フィルム配置側の面とは反対側の面を皮膚または、洗浄したい部位等に適用することにより、皮膚や適用部位に対し炭酸ガスを集中的におよび/または長時間にわたって適用することが可能になるという効果を奏する。その一方で、通気性が低いと使用時の蒸れが生じ易くなるため、フィルムは適度な通気性を有していてもよい。例えば、日本工業規格JIS L1096:2010に規定される「織物及び編物の生地試験方法」によって測定される通気度が、好ましくは200cm3/cm2/s以下、より好ましくは150cm3/cm2/s以下のフィルムを用いることができる。この通気度は、所定の圧力を加えた時の単位面積、単位時間あたりのフィルムを透過する空気量であり、値が大きいほど通気性が高いことを示す。炭酸ガス発生シートの他の層、特に、吸水性シートと比べて通気性が相対的に低いフィルムを使用することで、炭酸ガスの透過に指向性を持たせることができる。
フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。
(各成分の含有比率)
炭酸ガス発生シートにおける炭酸塩および酸は、コストの観点からは、それぞれ化学当量で使用されることが好ましいが、肌への影響を鑑みると酸を過配合にして、反応後のpHが5程度となるように調整することもできる。また、炭酸塩および酸の粒子径等の要因による溶解性の違いにより、炭酸塩及び酸の好ましい配合比率は異なる場合があり、適宜、調整することができる。
炭酸塩層および酸層のそれぞれにおいて、炭酸塩または酸と熱融着性樹脂との含有比率(質量基準)は、例えば2/98〜98/2であることができ、5/95〜95/5であることができ、10/90〜90/10であることができる。比率が前記範囲にあると、炭酸ガス発生シートの面内方向の炭酸塩および酸が均一に配合でき、粉落ちを抑制することができる。
炭酸塩層および酸層のそれぞれにおいて、さらに吸水性材料が含有されている場合は、炭酸塩または酸と熱融着性樹脂と吸収材料との含有比率(質量基準)は、例えば2/49/49〜96/2/2であることができ、6/47/47〜94/3/3であることができ、10/45/45〜90/5/5であることができる。比率が前記範囲にあると、炭酸塩および酸は、炭酸ガス発生シートの面内方向で均一に配置されることができるとともに、吸水性材料の存在により、層内で分散して存在することができる。また、本発明の吸収性材料は、炭酸ガス発生シートの使用時に、水および水に溶解した炭酸塩または酸と接触してこれらを吸収し、保持する一方で、徐放することができるので、炭酸ガス発生シート内で、水分を徐々に浸透させることができる。したがって、炭酸ガス発生シートの使用時において、炭酸塩と酸との間の反応開始の時間に幅を持たせることができ、その結果、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生の持続時間を長くすることができる。
その他、炭酸塩層、酸層および他の層のうちの1つまたは複数の層に、1つまたは複数の効果促進剤を、適量、配合することができる。
(坪量)
炭酸ガス発生シートの坪量は、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、30〜300g/m2であることが好ましい。
<炭酸ガス発生シートの製造方法>
本発明の第1の態様に係る炭酸ガス発生シートの製造方法として、例えば、ウェブ層を搬送するためのキャリアシート上に、酸粒子または炭酸塩粒子と例えばポリエチレン(PE)のような熱融着性樹脂との均一混合物を配置し、その上に、吸水性シートとなるウェブ層を積層し、さらにその上に、炭酸塩粒子または酸粒子と例えばポリエチレン(PE)のような熱融着性樹脂との均一混合物を配置し、さらにその上にキャリアシートを配置して、熱融着性樹脂を加熱処理により溶融させて接合する方法がある。このとき、キャリアシートに本発明の吸水性シートを用いて、本発明の第1の態様に係る層構成を有する炭酸ガス発生シートを得てもよい。また、キャリアシートの1つに、他の層と比べて通気性が相対的に低い任意のフィルムを用いて、本発明の第1の態様に係る層構成を有する炭酸ガス発生シートを得てもよい。キャリアシートは、本発明において必須ではなく、上記加熱処理後に、形成された積層体から剥がしてもよい。製造時における炭酸塩と酸との反応を防ぐために、本発明において、これらの積層は乾式法にて行う。また、別の実施形態として例えば、エアレイド法を採用するウェブ形成装置を用いる方法がある。
(エアレイド法を採用する炭酸ガス発生シートの製造方法)
エアレイド法を採用する本実施形態の炭酸ガス発生シートの製造方法は、解繊工程と混合工程とウェブ形成工程と結着工程とを有する。
(解繊工程)
解繊工程は、ショートカットファイバーの形態の熱融着性樹脂を、空気流によって解繊して解繊ショートカットファイバーを得る工程である。
ショートカットファイバーの空気流による解繊方法では、ブロアー等によって空気流を形成し、その空気流にショートカットファイバーを供給し、空気流の攪拌効果によって解繊する。
解繊方法としては、旋回する空気流で解繊することが好ましい。旋回する空気流を利用した解繊方法によれば、ショートカットファイバーを充分に解繊することができ、エアレイド法によってエアレイドウェブを形成する際に、解繊ショートカットファイバーの分散性をより高めることができる。
旋回する空気流を利用した解繊方法としては、例えば、ブロアーの中にショートカットファイバーを投入してブロアーにて解繊する方法が挙げられる。また、ブロアーによって円筒容器内に、周方向に沿うように空気を送って旋回流を形成し、その旋回流の中にショートカットファイバーを供給し、攪拌して解繊する方法が挙げられる。
空気流の流速は、ショートカットファイバーの量に応じて適宜選択されるが、通常は、10〜150m/秒の範囲内である。
(混合工程)
混合工程は、解繊ショートカットファイバーの形態の熱融着性樹脂と炭酸塩または酸とを混合してウェブ原料を得る工程である。このとき同時に、任意の他の材料を混合することができる。任意の他の材料の形状は、繊維状でも粒子状でもよい。任意の他の材料の例としては、吸水性樹脂粒子や効果促進剤等の必要に応じて添加される助剤等が挙げられる。これらの材料の添加順に特に限定は無く、また、これらの材料は、混合工程よりも後の工程で、例えば散布等によって添加することもできる。
混合に際しては、解繊ショートカットファイバーの分散性を向上させるために、解繊ショートカットファイバーと炭酸塩または酸とを攪拌することが好ましい。ただし、解繊ショートカットファイバーの破断を防ぐために、機械的剪断力を利用した攪拌ではなく、空気流を用いた攪拌を適用することが好ましい。
混合工程は、解繊工程の後でもよいし、解繊工程と同時でもよい。混合工程を解繊工程と同時とする場合には、解繊工程での空気流を利用して、解繊ショートカットファイバーと炭酸塩または酸とを混合する。また、後述する粒子散布工程で解繊ショートカットファイバーのウェブ形成ラインに炭酸塩または酸の粉体を投入し、混合してもよい。
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、エアレイド法によってウェブ原料からエアレイドウェブを得る工程である。ここで、エアレイド法とは、空気流を利用して繊維を3次元的にランダムに堆積させてウェブを形成する方法である。
(粒子散布工程)
粒子散布工程は、既知の方法よってウェブ原料に粉体を配合する工程である。繊維に粉体を混合してウェブを形成する方式もしくはウェブやキャリアシートの表面に散布する方式のいずれを用いてもよい。
本実施形態におけるウェブ形成工程では、例えば、図3に示すウェブ形成装置1を用いる。このウェブ形成装置1は、コンベア10と透気性無端ベルト20と繊維混合物供給手段30と第1のキャリアシート供給手段40と第2のキャリアシート供給手段50とサクションボックス60と備える。
ここで、コンベア10は、複数のローラー11によって構成されている。透気性無端ベルト20は、コンベア10に装着されて回転するようになっている。繊維混合物供給手段30は、透気性無端ベルト20に繊維混合物を空気流と共に供給するものである。第1のキャリアシート供給手段40は、透気性無端ベルト20に向けて第1のキャリアシート41を供給するものである。第2のキャリアシート供給手段50は、透気性無端ベルト20を通過した第1のキャリアシート41に向けて第2のキャリアシート51を供給するものである。サクションボックス60は、透気性無端ベルト20をその内側から吸引するものである。
ウェブ形成装置1においては、繊維混合物供給手段30は透気性無端ベルト20の上方に設置され、第1のキャリアシート供給手段40は透気性無端ベルト20よりも上流に設置され、第2のキャリアシート供給手段50は透気性無端ベルト20よりも下流に設置されている。
上記ウェブ形成装置1を用いたウェブ形成工程では、各ローラー11を同方向に回転させることによりコンベア10を駆動させて透気性無端ベルト20を回転させる。また、透気性無端ベルト20の上に接触するように、第1のキャリアシート41を第1のキャリアシート供給手段40から繰り出す。
次いで、サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、繊維混合物供給手段30から空気流と共に繊維混合物を下降させ、透気性無端ベルト20上の第1のキャリアシート41上に繊維混合物を落下、堆積させる。これにより、エアレイドウェブAを形成する。
次いで、エアレイドウェブAの上に、第2のキャリアシート51を第2のキャリアシート供給手段50より供給して、エアレイドウェブ含有積層シートを得る。
(結着工程)
結着方式は、水を使わずに結着させる観点から、サーマルボンド方式を使用することが好ましい。サーマルボンド方式による結着工程は、エアレイドウェブを加熱処理して、解繊ショートカットファイバー同士を熱融着性樹脂によって結着させる工程である。
エアレイドウェブの加熱処理としては、熱風処理、赤外線照射処理が挙げられ、装置が低コストである点では、熱風処理が好ましい。
熱風処理としては、エアレイドウェブを、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤに接触させて熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、エアレイドウェブを、ボックスタイプドライヤに通し、エアレイドウェブに熱風を通過させることで熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが挙げられる。
本実施形態のように、エアレイドウェブが第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートに挟まれて積層シートになっている場合には、積層シートのまま熱風処理してもよい。第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートは、熱風処理後にエアレイドウェブから剥離することができる。加熱処理温度は、熱融着性樹脂が溶融する温度とすればよい。例えば、一般的にサーマルボンド方式に使用されるPP、PEなどの材料を使用する場合、加熱温度を115℃以上に設定することが望ましい。
結着工程の後には、炭酸ガス発生シートの厚みおよび密度を微調整する目的で、加熱ロールに通して圧縮処理してもよい。
(作用効果)
上記製造方法では、炭酸塩または酸の粒子と熱融着性樹脂とを均一に配合することができる。そのため、シートの面内方向で均一にガスを発生させることができる。
炭酸塩または酸が熱融着性樹脂と配合されることによって、炭酸ガス発生シート内において炭酸塩または酸が熱融着性樹脂をバインダーとしてしっかりと固定され得るため、粉落ちを防ぐことができる。
[第2の態様]
図4を参照して、本発明の第2の態様に係る炭酸ガス発生シートの層構成および作用効果について説明する。第1の態様と同様の構成については説明を割愛する場合がある。
<炭酸ガス発生シート>
本発明の第2の態様に係る炭酸ガス発生シートは、炭酸塩層および酸層を備える積層体であり、炭酸塩層および酸層は隣接して設けられており、炭酸塩層および酸層のうちの少なくとも一方は吸水性材料を含む層である。本発明の第2の態様に係る炭酸ガス発生シートは、製造工程中における炭酸塩と酸との間の反応を防止するために、乾式法で製造される。
(層構成および作用効果)
図4は、本発明の第2の態様に係る炭酸ガス発生シートの構成を限定目的ではなく例示目的で示す図である。図中において、同一の符号は同一の構成要素を示す。同一の構成要素に関しては、重複する説明を割愛する場合がある。
図4(a)および(b)は、それぞれ、炭酸塩層および酸層のうちの一方が吸水性材料を含む層であり、他方が吸水性材料を含まない層である例である。
詳細には、図4(a)に示す炭酸ガス発生シートは、吸水性材料を含む酸層200と、吸水性材料を含まない炭酸塩層120と、吸水性シート300と、を順に積層した構成を有する。また、図2(b)に示す炭酸ガス発生シートは、吸水性材料を含む炭酸塩層100と、吸水性材料を含まない酸層220と、吸水性シート300と、を順に積層した構成を有する。
図4(a)および(b)の構成においては、炭酸塩層および酸層のうちの一方に吸水性材料を含むため、層の厚み方向における炭酸塩または酸の分布を広げると共に、使用時に水分を徐々に浸透させることができる。したがって、炭酸塩と酸との反応開始の時間に幅を持たせることができる。また、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生を持続せることができる。
図4(a)および(b)の構成においては、吸水性シート300を表面に含む。そのため、使用時に、化粧水等の水を十分に透過させて炭酸塩と酸との反応を促すことができる。また、吸水性シート300は、吸水性材料を含まない層120、220の上面を覆って設けられていることから、炭酸ガス発生シートからの炭酸塩または酸の粉落ちを防止することができる。なお、吸水性シート300は、本発明に必須の要素ではない。
図4(c)は、炭酸塩層100および酸層200の両方が吸水性材料を含む層である例である。炭酸塩層および酸層の両方に吸水性材料を含むため、炭酸塩または酸の厚み方向における分布を広げると共に、使用時に水分を徐々に浸透させることができ、炭酸塩と酸との反応開始の時間に幅を持たせることができる。したがって、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生を持続させることができる。
図4(d)および(e)は、図4(c)に示す構成に対して片面または両面に吸水性シート300をさらに積層した例である。吸水性シート300を表面に含むため、使用時に化粧水等の水を十分に透過させまたは保持して炭酸塩と酸との反応を促すことができる。なお、本発明の炭酸ガス発生シートにおいて吸水性シート300の層が複数含まれる場合、それらは必ずしも同一の材料でなくともよい。表面にシート300を設ける場合、酸もしくは塩基が肌と直接触れるのを防ぐことができるため、酸もしくはアルカリによる刺激を緩衝させる効果がある。
図4(f)に示す炭酸ガス発生シートは、図4(d)に示す構成に対して、吸水性シート300を有さない方の表面に相対的に通気性の低いフィルム400を設けた例である。
図4(f)の構成においては、片面に相対的に通気性の低いフィルム400を有するため、使用時に発生した炭酸ガスがフィルム配置側の面から放出されることを防止または抑制することができる。そのため、フィルム配置側の面とは反対側の面を皮膚に適用することにより、皮膚に対し炭酸ガスを集中的におよび/または長時間にわたって適用することが可能になる。
以上、図4(a)から(f)を用いて本発明の炭酸ガス発生シートの構成を説明した。しかしながらこれらは例示であり、これ以外の構成、例えば図中、炭酸塩と酸との関係が逆の構成例も本発明の範囲に含まれる。
(炭酸塩層)
炭酸塩層は、炭酸塩および/または重炭酸塩を含有する層である。炭酸塩または重炭酸塩としては、化粧料として使用する場合は、化粧料で使用できるグレードのものであれば特段の限定無く使用でき、その他の用途で使用する場合は、特段グレードを規定しない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウムもしくはその誘導体等を用いることができる。炭酸塩および/または重炭酸塩は2種以上を併用しても構わない。炭酸塩および/または重炭酸塩は、固体状の組成物であり、例えば粒子の形態であることが好ましい。炭酸塩および/または重炭酸塩は、例えばシリカ等の担持体に担持させた形態であってもよい。炭酸塩および/または重炭酸塩は結晶水として水を含んでも良い。結晶水を含むと水への溶解度が高くなり、反応性が向上する。ただし、保存安定性の観点から、炭酸塩層は、加水分解や酸との反応が開始される等、変質の原因となる水分を含まないことが好ましい。炭酸塩層には、炭酸塩および/または重炭酸塩の他、熱融着性樹脂や、効果促進剤を含有させることができる。本発明に使用する炭酸塩または重炭酸塩としては、平均粒子径5〜5000μmの粒子が好ましい。平均粒子径5〜5000μmであれば、粒子の脱落が少なく、適度な粒状感により、良好な使用感が得られる。
(酸層)
酸層は、固体の酸を含有する層である。酸としては、化粧料として使用する場合は、化粧料で使用できるグレードのものであれば特段の限定無く使用でき、その他の用途で使用する場合は、特段グレードを規定しない。例えば、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、ヒアルロン酸、リン酸二水素ナトリウムもしくはその誘導体、加水分解されて酸を生じる物質等を用いることができる。酸は2種以上を併用しても構わない。酸は、固体状の組成物であり、例えば粒子の形態であることが好ましい。酸は結晶水として水を含んでいてもよい。結晶水を含むと水への溶解度が高くなり、反応性が向上する。ただし、保存安定性の観点から、酸層は、加水分解や炭酸塩との反応が開始される等、変質の原因となる水分を含まないことが好ましい。酸層には、固体の酸の他、熱融着性樹脂や、効果促進剤を含有させることができる。本発明に使用する酸としては、平均粒子径5〜5000μmの粒子が好ましい。平均粒子径5〜5000μmであれば、粒子の脱落が少なく、適度な粒状感により、良好な使用感が得られる。平均粒子径を小さくすると溶解速度が速くなり、水に濡らしてすぐに反応が進むため、使用初期のCO2ガス発生量が多くなる。また、肌に使用する場合は、粒状感を低減することができる。一方、平均粒子径を大きくすると、水と接触した際、溶解が徐々に進むため、炭酸ガス発生の持続時間を延長する効果がある。また、平均粒子径を大きくすることで粒子脱落を少なくする効果がある。
(吸水性材料を含む層)
上述の本発明の第1の態様においては、炭酸塩層および酸層の少なくとも一方に、吸水性材料が含有されていてもよいことを説明した。これに対し、本発明の第2の態様においては、炭酸塩層および酸層の少なくともいずれか一方に、吸水性材料を含有させることを必須の構成要件とする。この吸水性材料を含有させた層が、本発明の第2の態様における吸水性材料を含む層となる。
(吸水性材料)
吸水性材料としては、パルプ、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリ乳酸、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)、高分子吸収繊維(SAF)等の合成繊維を用いることができる。吸水性材料は、例えば解繊ショートカットファイバーの形態で用いることができる。吸水性材料は、2種以上を併用しても構わない。また、吸水性材料として、吸水性樹脂粒子等の粒子の形態の助剤を用いることもできる。吸水性樹脂粒子の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールや高分子吸収体(SAP)などが挙げられる。
炭酸塩または酸は、吸水性材料の存在により、層内で分散し、厚み方向において分布が広がって存在することができる。また、本発明の吸収性材料は、炭酸ガス発生シートの使用時に、水および水に溶解した炭酸塩または酸と接触してこれらを吸収し、保持する一方で、徐放することができるので、炭酸ガス発生シート内で、水分を徐々に浸透させることができる。したがって、炭酸ガス発生シートの使用時において、炭酸塩と酸との間の反応開始の時間に幅を持たせることができ、その結果、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生の持続時間を長くすることができる。
(効果促進剤)
本発明の炭酸ガス発生シートには、その用途に応じて、1つまたは複数の効果促進剤を配合することができる。
効果促進剤としては、例えば:油性基剤、保湿剤、感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤、噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、酸、アルカリ、粉体、無機塩、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素、核酸、香料、色素、着色剤、染料、顔料、金属含有化合物、不飽和単量体、多価アルコール、高分子添加剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、増粘剤、粘着付与物質、止痒剤、角質軟化剥離剤、油性原料、紫外線遮断剤、防腐殺菌剤、抗酸化物質、液状マトリックス、脂溶性物質、高分子カルボン酸塩、添加剤、金属セッケン等、が挙げられる。
効果促進剤は、例えば、炭酸塩層および酸層のうちの一方または両方に配合することができる。また、他の層に加えることもできる。
(熱融着性樹脂)
本発明における熱融着性樹脂は、吸水性材料および炭酸塩または酸を結着させるバインダー樹脂となる。また、熱融着性樹脂は、炭酸ガス発生シートにおける強度付与の効果があり、形状が維持されやすくなる。
熱融着性樹脂は繊維状であってもよいし、粒子状であってもよい。強度がより高くなる点からは、熱融着性樹脂は繊維状であることが好ましい。熱融着性樹脂は、例えば、ショートカットファイバーの形態であってもよい。
熱融着性樹脂としては、例えば、融点が95℃〜130℃の低密度ポリエチレン(PE)、融点が120℃〜140℃の高密度ポリエチレン、融点が160℃〜165℃のホモポリマーまたはブロックコポリマーからなるポリプロピレン(PP)、融点が135℃〜150℃のコポリマーからなるポリプロピレン、融点が110〜190℃の低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、融点が100〜130℃の低融点ポリアミド、融点が110℃〜150℃の低融点ポリ乳酸、融点が115℃のポリブチレンサクシネート等が挙げられる。融点が110℃を超える熱可塑性樹脂は、本発明において好ましく使用される。熱融着性樹脂は2種類以上を併用しても構わない。
熱融着性樹脂が繊維状である場合、熱融着性繊維の繊度は1dtex〜120dtexであることが好ましく、1dtex〜85dtexであることがより好ましい。また、熱融着性繊維の平均繊維長は1〜100mmであることが好ましく、1〜60mmであることがより好ましく、2〜30mmであることがさらに好ましい。熱融着性繊維の繊度および平均繊維長が前記範囲であると、ウェブ層の形成が容易であり、均一な結着力や分散状態を得やすい。
熱融着性樹脂が粒子状である場合、熱融着性粒子の平均粒径は、1〜1,000μmであることが好ましく、10〜800μmであることがより好ましい。熱融着性樹脂の平均粒子径は使用する炭酸塩と酸粒子を完全に被覆しない範囲で適宜選択することができる。
(熱融着性樹脂の複合体)
熱融着性樹脂は2成分以上の複合体であってもよい。たとえば、融点の異なる樹脂を複合化した芯鞘繊維、長手方向に垂直な断面で異なる樹脂を使用したサイドバイサイド繊維、コアとシェルとを有するコアシェル粒子等が挙げられる。これらの中でも、異種の樹脂を容易に複合化できることから、芯鞘繊維が好適に用いられる。
芯鞘繊維としては、芯部分の融点よりも鞘部分の融点が低い芯鞘繊維が好適に用いられる。例えば、ポリプロピレン繊維(融点160℃)からなる芯部分と、該芯部分の外周に形成された、ポリエチレン(融点130℃)からなる鞘部分とを備えたPP/PE複合芯鞘繊維が挙げられる。
また、他の芯鞘繊維としては、例えば、PET/低融点PET複合芯鞘繊維、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン複合芯鞘繊維、ポリエチレン/低融点PET複合芯鞘繊維、ポリアミド/低融点ポリアミド複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/低融点ポリ乳酸複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート複合芯鞘繊維等が挙げられる。 一般的な芯鞘繊維は鞘部分の融点が110℃を超えるものが多く、そのような芯鞘繊維は本発明において好ましく使用される。
本発明の炭酸ガス発生シートに芯部分の融点よりも鞘部分の融点が低い芯鞘繊維を用いた場合、鞘部分の融点以上であって芯部分の融点よりも低い温度に加熱されると、鞘部分の樹脂は溶融し、芯部分の樹脂は形状を維持する。これにより、鞘部分の溶融した樹脂は、炭酸塩層中に炭酸塩および/または重炭酸塩を保持し、および/または酸層中に酸を保持するとともに、吸水性材料と芯部分の繊維とにより構成される構造体の構成成分同士を結着する効果を示す。そのため、本発明の炭酸ガス発生シートは、シート内の空隙を確保した上でシート強度を付与し、柔らかで強度に優れたシートを提供することが可能となる。
(吸水性シート)
吸水性シート300としては、水分を通す性質(通水性)を有するシート、および水分を吸収する性質(吸水性)を有するシートのうちから任意のシートを用いることができる。水分を通す性質(通水性)を有するシートとしては、水を通しさえすればよく、何ら限定はない。水分を吸収する性質(吸水性)を有するシートとしては、水分を内部に取り込んで保持することができるとともに、内部の水分を放出することができるシートを使用することができる。すなわち、本発明に適用することのできる水分を吸収する性質(吸水性)を有するシートは、水を通す性質(通水性)を有するシートの一種であるといえる。吸水性シート300は、JIS L1907規格に規定される沈降速度の測定方法に準じて測定される吸水速度が60秒以下であり、30秒以下であることがさらに好ましい。もしくは、JIS L1907規格に規定される滴下法による吸水(もしくは通水)速度が60秒以下であり、30秒以下であることがさらに好ましい。吸水性シート300は、吸水性が低いほど水を通す速度が速く、これを用いた炭酸ガス発生シートでは、炭酸塩と酸との反応が迅速に進み、炭酸ガスを短時間に集中的に発生させることができる。また、吸水性シート300は、吸水性(水分の保持力)が高いほど、炭酸塩と酸との反応の開始を遅らせることができるので、炭酸ガス発生シート全体での炭酸ガスの発生の持続時間を長くすることができる。吸水性シート300は、例えば、不織布、布または他のメッシュ構造を有するシートであることができ、例えば、ワリフ(登録商標)などの特殊不織布であることができる。
また、意匠性付与や、清掃用品として使用する場合のふき取り性向上を目的として、炭酸ガス発生シートの外層となる吸水性シートの表面には、凹凸などの表面加工を施してもよい。 表面に使用する吸水性シートとして、厚手のシートや密度の低いシートを使用することで、炭酸ガス発生シートの外面に現れる粒状感を低減する効果がある。一方、薄手のシートや通水性、通気性の高いシートを使用すると、炭酸ガス発生シートの表面からの水分の浸入および発生した炭酸ガスの外部への放出が妨げられにくく、炭酸ガス発生の即時効果を得やすい。用途や目的に合わせて、吸水性シートは適宜選択される。
(フィルム)
フィルム400としては、炭酸ガス発生シートを使用時に皮膚や曲面に沿って適用することができるような柔軟性を有し、炭酸ガス発生シートの他の層、特に、吸水性シート300と比べて通気性が相対的に低い、任意のフィルムを用いることができる。
フィルムは、通気性が低いほど、炭酸ガス発生シートの使用時に発生した炭酸ガスのフィルム配置側の面からの放出防止/抑制効果は高くなる。そのため、フィルム配置側の面とは反対側の面を皮膚または、洗浄したい部位等に適用することにより、皮膚や適用部位に対し炭酸ガスを集中的におよび/または長時間にわたって適用することが可能になるという効果を奏する。その一方で、通気性が低いと使用時の蒸れが生じ易くなるため、フィルムは適度な通気性を有していてもよい。例えば、日本工業規格JIS L1096:2010に規定される「織物及び編物の生地試験方法」によって測定される通気度が、好ましくは150cm3/cm2/s以下で、より好ましくは200cm3/cm2/s以下フィルムを用いることができる。この通気度は、所定の圧力を加えた時の単位面積、単位時間あたりのフィルムを透過する空気量であり、値が大きいほど通気性が高いことを示す。炭酸ガス発生シートの他の層、特に、吸水性シートと比べて通気性が相対的に低いフィルムを使用することで、炭酸ガスの透過に指向性を持たせることができる。
フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。
(各成分の含有比率)
炭酸ガス発生シートにおける炭酸塩および酸は、コストの観点からは、それぞれ化学当量で使用されることが好ましいが、肌への影響を鑑みると酸を過配合にして、反応後のpHが5程度となるように調整することもできる。また、炭酸塩および酸の粒子径等の要因による溶解性の違いにより、炭酸塩及び酸の好ましい配合比率は異なる場合があり、適宜、調整することができる。
炭酸塩層および酸層のそれぞれにおいて、炭酸塩または酸と熱融着性樹脂との含有比率(質量基準)は、例えば2/98〜98/2であることができ、5/95〜95/5であることができ、10/90〜90/10であることができる。比率が前記範囲にあると、炭酸ガス発生シートの面内方向の炭酸塩および酸が均一に配合でき、粉落ちを抑制することができる。
炭酸塩層および酸層のそれぞれにおいて、さらに吸水性材料が含有されている場合は、炭酸塩または酸と熱融着性樹脂と吸収材料との含有比率(質量基準)は、例えば2/49/49〜96/2/2であることができ、6/47/47〜94/3/3であることができ、10/45/45〜90/5/5であることができる。比率が前記範囲にあると、炭酸塩および酸は、炭酸ガス発生シートの面内方向で均一に配置されることができるとともに、吸水性材料の存在により、層内で分散して存在することができる。また、本発明の吸収性材料は、炭酸ガス発生シートの使用時に、水および水に溶解した炭酸塩または酸と接触してこれらを吸収し、保持する一方で、徐放することができるので、炭酸ガス発生シート内で、水分を徐々に浸透させることができる。したがって、炭酸ガス発生シートの使用時において、炭酸塩と酸との間の反応開始の時間に幅を持たせることができ、その結果、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生の持続時間を長くすることができる。
その他、炭酸塩層、酸層および他の層のうちの1つまたは複数の層に、1つまたは複数の効果促進剤を、適量、配合することができる。
(坪量)
炭酸ガス発生シートの坪量は、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、30〜300g/m2であることが好ましい。
<炭酸ガス発生シートの製造方法>
本発明の第2の態様に係る炭酸ガス発生シートの製造方法として、例えば、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で吸水性材料を含む層を作製し、これに対し他の層を別途積層させる製造方法を用いることができる。そのような方法として、炭酸塩または酸を含有する吸水性材料を含む層の表面に、酸粒子または炭酸塩粒子と例えばポリエチレン(PE)のような融着性バインダー粒子との均一混合物を配置し、融着性バインダーを熱により溶融させて接合する方法がある。あるいはまた、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で吸水性材料を含む層を作製する際に、ウェブ層を搬送するためのキャリアシートに本発明の吸水性シートを用いることによって積層体を形成して、本発明の第2の態様に係る層構成を有する炭酸ガス発生シートを得てもよい。また、別途作製した炭酸ガス発生シートの各層を、エンボス加工やヒートシール加工により接合させてもよい。また、炭酸ガス発生シートの各層の接合面の少なくとも一方に粘着層を設けて、各層を接合させる方法などもある。製造時における炭酸塩と酸との反応を防ぐために、本発明において、これらの積層は乾式法にて行う。
乾式法により積層を行うことにより製造された本発明の炭酸ガス発生シートにおいて、酸粒子および炭酸塩粒子は、それぞれ別個の層の中に粒子の状態で存在していることができる。そのため、本発明の炭酸ガス発生シートは、酸粒子および炭酸塩粒子が同一の層に配合されている構成と比べて、周囲雰囲気中の水分によって両成分が容易に反応することが抑制され、安定性および貯蔵保存性に優れる。
(エアレイド法を採用する炭酸パックシートの製造方法)
エアレイド法を採用する本実施形態の炭酸パックシートの製造方法は、解繊工程と混合工程とウェブ形成工程と結着工程とを有する。
(解繊工程)
解繊工程は、ショートカットファイバーの形態の材料を、空気流によって解繊して解繊ショートカットファイバーを得る工程である。
ショートカットファイバーの空気流による解繊方法では、ブロアー等によって空気流を形成し、その空気流にショートカットファイバーを供給し、空気流の攪拌効果によって解繊する。
解繊方法としては、旋回する空気流で解繊することが好ましい。旋回する空気流を利用した解繊方法によれば、ショートカットファイバーを充分に解繊することができ、エアレイド法によってエアレイドウェブを形成する際に、解繊ショートカットファイバーの分散性をより高めることができる。
旋回する空気流を利用した解繊方法としては、例えば、ブロアーの中にショートカットファイバーを投入してブロアーにて解繊する方法が挙げられる。また、ブロアーによって円筒容器内に、周方向に沿うように空気を送って旋回流を形成し、その旋回流の中にショートカットファイバーを供給し、攪拌して解繊する方法が挙げられる。
空気流の流速は、ショートカットファイバーの量に応じて適宜選択されるが、通常は、10〜150m/秒の範囲内である。
(混合工程)
混合工程は、解繊ショートカットファイバーの形態の吸水性材料と炭酸塩または酸とを混合してウェブ原料を得る工程である。このとき同時に、任意の他の材料を混合することができる。任意の他の材料の形状は、繊維状でも粒子状でもよい。任意の他の材料の例としては、熱融着性樹脂、吸水性樹脂粒子、効果促進剤等の必要に応じて添加される助剤等が挙げられる。これらの材料の添加順に特に限定は無く、また、これらの材料は、混合工程よりも後の工程で、例えば散布等によって添加することもできる。
混合に際しては、解繊ショートカットファイバーの分散性を向上させるために、解繊ショートカットファイバーと他の材料とを攪拌することが好ましい。ただし、解繊ショートカットファイバーの破断を防ぐために、機械的剪断力を利用した攪拌ではなく、空気流を用いた攪拌を適用することが好ましい。
混合工程は、解繊工程の後でもよいし、解繊工程と同時でもよい。混合工程を解繊工程と同時とする場合には、解繊工程での空気流を利用して、解繊ショートカットファイバーと任意の材料を混合する。また、後述する粒子散布工程で解繊ショートカットファイバーのウェブ形成ラインに任意の粒子を投入し、混合してもよい。
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、エアレイド法によってウェブ原料からエアレイドウェブを得る工程である。ここで、エアレイド法とは、空気流を利用して繊維を3次元的にランダムに堆積させてウェブを形成する方法である。
(粒子散布工程)
粒子散布工程は、既知の方法よってウェブ原料に粉体を配合する工程である。繊維に粉体を混合してウェブを形成する方式もしくはウェブの表面もしくはキャリアシート上に散布する方式のいずれを用いてもよい。
本実施形態におけるウェブ形成工程では、例えば、図3に示すウェブ形成装置1を用いる。このウェブ形成装置1は、コンベア10と透気性無端ベルト20と繊維混合物供給手段30と第1のキャリアシート供給手段40と第2のキャリアシート供給手段50とサクションボックス60と備える。
ここで、コンベア10は、複数のローラー11によって構成されている。透気性無端ベルト20は、コンベア10に装着されて回転するようになっている。繊維混合物供給手段30は、透気性無端ベルト20に繊維混合物を空気流と共に供給するものである。第1のキャリアシート供給手段40は、透気性無端ベルト20に向けて第1のキャリアシート41を供給するものである。第2のキャリアシート供給手段50は、透気性無端ベルト20を通過した第1のキャリアシート41に向けて第2のキャリアシート51を供給するものである。サクションボックス60は、透気性無端ベルト20をその内側から吸引するものである。
ウェブ形成装置1においては、繊維混合物供給手段30は透気性無端ベルト20の上方に設置され、第1のキャリアシート供給手段40は透気性無端ベルト20よりも上流に設置され、第2のキャリアシート供給手段50は透気性無端ベルト20よりも下流に設置されている。
上記ウェブ形成装置1を用いたウェブ形成工程では、各ローラー11を同方向に回転させることによりコンベア10を駆動させて透気性無端ベルト20を回転させる。また、透気性無端ベルト20の上に接触するように、第1のキャリアシート41を第1のキャリアシート供給手段40から繰り出す。
次いで、サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、繊維混合物供給手段30から空気流と共に繊維混合物を下降させ、透気性無端ベルト20上の第1のキャリアシート41上に繊維混合物を落下、堆積させる。これにより、エアレイドウェブAを形成する。
次いで、エアレイドウェブAの上に、第2のキャリアシート51を第2のキャリアシート供給手段50より供給して、エアレイドウェブ含有積層シートを得る。
(結着工程)
結着方式は、水を使わずに結着させる観点から、サーマルボンド方式を使用することが好ましい。サーマルボンド方式による結着工程は、エアレイドウェブを加熱処理して、解繊ショートカットファイバー同士を熱融着性樹脂によって結着させる工程である。
エアレイドウェブの加熱処理としては、熱風処理、赤外線照射処理が挙げられ、装置が低コストである点では、熱風処理が好ましい。
熱風処理としては、エアレイドウェブを、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤに接触させて熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、エアレイドウェブを、ボックスタイプドライヤに通し、エアレイドウェブに熱風を通過させることで熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが挙げられる。
本実施形態のように、エアレイドウェブが第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートに挟まれて積層シートになっている場合には、積層シートのまま熱風処理してもよい。第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートは、熱風処理後にエアレイドウェブから剥離することができる。加熱処理温度は、熱融着性樹脂が溶融する温度とすればよい。例えば、一般的にサーマルボンド方式に使用されるPP、PEなどの材料を使用する場合、加熱温度を115℃以上に設定することが望ましい。
結着工程の後には、炭酸ガス発生シートの厚みおよび密度を微調整する目的で、加熱ロールに通して圧縮処理してもよい。
(作用効果)
上記製造方法では、粒子と吸水性材料の繊維とを、吸水性材料を含む層中に、効率良く含有させることができる。そのため、材料のロスが少なく、コスト削減が図れる。また、風合いの良いシートを容易に製造できる。
炭酸塩または酸は、吸水性材料を含む層において、吸水性材料の存在により層の厚み方向に分散して存在することができる。吸水性材料は、水分を徐々に浸透させることができ、炭酸ガス発生シートの使用時において、炭酸塩と酸との間の反応開始に幅を持たせることができる。その結果、炭酸ガス発生シート全体としての炭酸ガス発生の持続時間を長くすることができる。
II.機能性シート基材の第2の例[シクロデキストリン含有シート]
以下、図5および図6を参照して、本発明の機能性シートを構成する機能性シート基材として適用可能なシクロデキストリン含有シートについて説明する。
本発明の機能性シート基材に適用することのできるシクロデキストリン含有シートは、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層を備え、前記シクロデキストリン含有層が乾式法で設けられたシートである。
本明細書において、「機能性成分が包接されたシクロデキストリン」という際には、必ずしも、包接性能を有するシクロデキストリンの全量が最大量の機能性成分を包接しているものに限定されない。すなわち、本明細書における「機能性成分が包接されたシクロデキストリン」は、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のいわゆる空のシクロデキストリンを含んでいることができるものとする。
図5を参照して、本発明の範囲に含まれるシクロデキストリン含有シートの構成について説明する。図5は、本発明のシクロデキストリン含有シートの構成を限定目的ではなく例示目的で示す図である。図中において、同一の符号は同一の構成要素を示す。同一の構成要素に関しては、重複する説明を割愛する場合がある。
図5(a)〜(c)は、本発明に係る、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100を備えるシクロデキストリン含有シートを示す。図5(a)は、シクロデキストリン含有層100のみからなるシクロデキストリン含有シートである。図5(b)および(c)は、シクロデキストリン含有層100の片面または両面に他の層300が積層されたシクロデキストリン含有シートである。
本発明のシクロデキストリン含有シートは、このように、単層構造を有していてもよく、2層、3層、または図示しない4層以上の多層構造を有していてもよい。シクロデキストリン含有シートは、シクロデキストリン含有層100を2層以上含んでいてもよい。他の層300は、例えば、シクロデキストリン含有シートの表面を改質する目的や、シクロデキストリン含有シートに強度(剛性)を付与する目的など、シクロデキストリン含有シートに何らかの機能性を付与する目的等で配設することができる。他の層300には、例えば、布、不織布、紙、フィルム等のシートを用いることができる。他の層300には、熱融着性樹脂が含まれていてもよい。シクロデキストリン含有シートが複数の層300を備える場合、これらの層300は、同一材料であっても異なる材料であってもよい。
シクロデキストリン含有層100には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCのみが含まれていることができる。このとき、一種類に限定されず、複数種類の、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCが含まれていることができる。すなわち、機能性成分およびシクロデキストリンのそれぞれが、一種類であってもよく複数種類であってもよい。機能性成分の種類、およびシクロデキストリンの種類については、後述する。
また、シクロデキストリン含有層100には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCに加えて、繊維、熱融着性樹脂、および効果促進剤などが含まれていてもよい。
シクロデキストリン含有シートから機能性成分が包接されたシクロデキストリンCが粉落ちしないための構成の例として、以下の第1の態様から第6の態様に示すような具体的態様を説明する。
(第1の態様)
図5(d)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100が繊維Fを含む例である。繊維Fを含むシクロデキストリン含有層110において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末は、繊維Fによって形成される空隙、すなわち繊維Fが構成する繊維構造物中の空隙に保持されることによって、粉落ちが防止されている。
繊維を含むシクロデキストリン含有層110には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCおよび繊維Fのみが含まれていることができる。また、繊維を含むシクロデキストリン含有層110には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCおよび繊維Fに加えて、熱融着性樹脂、および効果促進剤などが含まれていてもよい。また、繊維F自体が、熱融着性樹脂であってもよい。
本態様において、シクロデキストリン含有シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、繊維Fを含むシクロデキストリン含有層110の片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。
(第2の態様)
図5(e)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100が熱融着性樹脂Aを含む例である。熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120は、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末と熱融着性樹脂Aとを含む混合物中の熱融着性樹脂Aを溶融することにより得られたものである。
熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCは、溶融した熱融着性樹脂Aが固化する際に、一部が被覆された状態で固着されることによって、粉落ちが防止されている。また、熱融着性樹脂Aは、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCの全体を被覆しないような量で配合されており、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCは、熱融着性樹脂Aによって被覆されていない部分を有し、機能性成分を放出する性能が保証されている。
熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCおよび熱融着性樹脂Aのみが含まれていることができる。また、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCおよび熱融着性樹脂Aに加えて、繊維、および効果促進剤などが含有されていてもよい。また、熱融着性樹脂A自体が、繊維状であってもよい。
本態様において、シクロデキストリン含有シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120の片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。
(第3の態様)
図5(f)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100に隣接する層が熱融着性樹脂Bを含む例である。シクロデキストリン含有層に隣接する、熱融着性樹脂Bを含む層200は、シクロデキストリン含有層100の表面に熱融着性樹脂Bを配置して熱により熱融着性樹脂Bを溶融することにより得られたものである。
シクロデキストリン含有層100に含まれる、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCは、これに隣接する熱融着性樹脂Bを含む層200において溶融した熱融着性樹脂Bが固化する際に、一部が被覆されて固着されることによって、粉落ちが防止されている。また、機能性成分が包接されたシクロデキストリンCは、熱融着性樹脂Bによって被覆されていない部分を有し、機能性成分を放出する性能が保証されている。
熱融着性樹脂Bを含む層200には、熱融着性樹脂Bのみが含まれていることができる。また、熱融着性樹脂Bを含む層200には、熱融着性樹脂Bに加えて、繊維、および効果促進剤などが含まれていてもよい。これら他の成分が含まれる場合は、熱融着性樹脂Bを含む層200は、シクロデキストリン含有層100の表面に熱融着性樹脂Bとこれら他の成分との混合物を配置して熱により熱融着性樹脂Bを溶融することにより得ることができる。
図5(f)に示す例のシクロデキストリン含有シートは、詳細には、熱融着性樹脂Bを含む層200と、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末からなるシクロデキストリン含有層100と、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120と、からなる3層構造を有する。この例の場合、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120もまた、中間層として位置付けられたシクロデキストリン含有層100に含まれるシクロデキストリンの粉落ち防止に寄与し得る。また、ここではシクロデキストリン含有層100と熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120とを別々の層として図示および説明したが、この2つの層が一体的に構成されていて1層の熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120を成している構成も、本態様に含まれる。本態様によれば、特に、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120において、シクロデキストリンの粉末が表面側に偏在している場合に、粉落ちを有効に防止することができる。
本態様において、熱融着性樹脂Bを含む層200は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層の両面に設けられていてもよい。
本態様において、シクロデキストリン含有シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、シクロデキストリン含有層および熱融着性樹脂Bを含む層200の積層体の外面のうちの片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。
(第4の態様)
上述の本発明に係るシクロデキストリン含有シートは、ヒートシール加工によって形成されていてもよい。1つの例として、図5(g)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100の両面に熱融着性樹脂を含む他の層300が積層され、四辺がヒートシールされた構成を示す。
(第5の態様)
図5(h)は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100に隣接して接着層が設けられている例である。シクロデキストリン含有層に隣接する、接着層500は、シクロデキストリン含有層の表面に接着層500を配置することにより得られたものである。接着層としては、シクロデキストリン含有層100に含まれるシクロデキストリンの粉落ちが防止されるように粘着機能を示す層であれば特に限定されないが、例えば、ホットメルト接着剤等が挙げられる。
詳細には、図5(h)に示すシクロデキストリン含有シートは、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100と他の層300との間に、例えば熱可塑性樹脂のようなホットメルト接着剤からなる接着層500を介在させて、ホットメルト加工により層間接着された構成を示す。
より詳細には、図5(h)に示す例のシクロデキストリン含有シートは、シクロデキストリン含有層100の、接着層500とは反対側の面に、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120を有する。図5(h)に示す例のシクロデキストリン含有シートにおいても、図5(f)に示す例の場合と同様に、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120は、中間層として位置付けられたシクロデキストリン含有層100に含まれるシクロデキストリンの粉落ち防止に寄与し得る。また、ここではシクロデキストリン含有層100と熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120とを別々の層として図示および説明したが、この2つの層が一体的に構成されていて1層の熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120を成している構成も、本態様に含まれる。本態様によれば、特に、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120において、シクロデキストリンの粉末が表面側に偏在している場合に、粉落ちを有効に防止することができる。
(第6の態様)
上述の本発明に係るシクロデキストリン含有シートは、エンボス加工によって形成されていてもよい。1つの例として、図5(i)は、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120の両面に層300が積層され、エンボス加工により層間接着された構成を示す。
以上、図5(a)から(i)を用いて本発明のシクロデキストリン含有シートの構成を説明した。しかしながらこれらは例示であり、これ以外の構成、例えば例示した各態様の組み合わせも本発明の範囲に含まれる。例えば、図中で機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100として示した層は、繊維Fを含むシクロデキストリン含有層110、または熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120であってもよく、あるいは、繊維Fおよび熱融着性樹脂Aの両方を含む層であってもよい。同様に、これらの層間で層を置き換えた構成は、本発明の範囲に含まれる。
以下に、本発明に係るシクロデキストリン含有シートの構成要素の詳細について説明する。
(機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層)
本発明の機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層は、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンを含む層である。本発明の機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層には、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のいわゆる空のシクロデキストリンが含まれていてもよい。シクロデキストリンは、粉末(粒子)として含まれる。機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンのみが含まれていることができる。機能性成分が包接されたシクロデキストリンとしては、一種類に限定されず、複数種類が含まれていてもよい。また、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層には、機能性成分が包接されたシクロデキストリンに加えて、繊維、熱融着性樹脂、および効果促進剤などが含有されていてもよい。さらに、本発明において、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層には、機能性成分が包接されたシクロデキストリン(すなわち、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のいわゆる空のシクロデキストリンが含まれていてもよいシクロデキストリン)の他に、機能性成分を包接させていないシクロデキストリン(すなわち、包接性能を有する部位がいわゆる空の状態のシクロデキストリン)がさらに配合されてもよい。
(シクロデキストリン)
本発明で用いられるシクロデキストリンは、サイクロデキストリンまたは環状オリゴ糖とも呼ばれ、ゲストとして種々の分子を空洞に取り込み(包接し)包接錯体を形成する性能、および取り込んだゲスト分子を徐放する性能を有する。シクロデキストリン1分子中に含まれるグルコース基の数が6個のα−シクロデキストリン、7個のβ−シクロデキストリン、8個のγ−シクロデキストリンのいずれも、包接される機能性成分との相性を勘案して使用することができる。シクロデキストリンはメチル化、ヒドロキシル化、アセチル化等の化学修飾がされていてもよい。また、シクロデキストリンは、分岐を有していてもよい。これらのシクロデキストリンは、単独で使用することができ、また、併用することもできる。本発明では、上述のようなシクロデキストリンに、機能性成分を包接させたものを使用する。使用するシクロデキストリンには機能性成分を包接していない空のシクロデキストリンが含まれていてもよい。
(機能性成分)
機能性成分としては、シクロデキストリン含有シートの用途および目的等に応じてさまざまな機能性成分を用いることができる。シクロデキストリン含有シートの用途の例については後述する。
本発明で用いることのできる機能性成分としては、例えば、ワサビ成分、マスタード成分、唐辛子成分、ジンジャー成分、レモン成分、オレンジ成分、グレープフルーツ成分、ユズ成分、ウメ成分、抹茶成分、アーモンド成分、天然ミートフレーバー、ローズ、ハーブなどの抽出成分、植物抽出エキス、茶抽出物等の天然物系抗菌剤もしくは香料、l-メントール成分等の天然系または有機系揮発性抗菌剤もしくは香料、コエンザイムQ10やイソフラボン等の化粧品原料等が挙げられる。
上述のもの以外にも、機能性成分としては、例えば:薬用成分、保湿剤、感触向上剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、香料、色素、着色剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、止痒剤、角質軟化剥離剤、防腐殺菌剤、脂溶性物質、消臭成分等の公知の化合物を、用途および目的に応じて任意に選択することができる。
これらの機能性成分は、シクロデキストリン含有シート中において、単独で使用されることができ、また、併用されることもできる。
(機能性成分が包接されたシクロデキストリン)
本発明において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、粉末(粒子)の形態で用いられる。粉末(粒子)の形態の、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、当技術分野で知られている任意の方法で得ることができる他、メーカーから販売品を購入することができる。例えば、塩水港製糖株式会社製のデキシーエース(サイクロデキストリン利用製品)や株式会社シクロケム製のCAVAMAX(登録商標)などを好適に使用することができる。これらの、粉末(粒子)の形態の、機能性成分が包接されたシクロデキストリンには、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のシクロデキストリンが含まれていてもよい。
(繊維)
繊維としては、パルプ(例えば、針葉樹および/または針葉樹の化学パルプ、セミケミカルパルプ、機械パルプや、古紙パルプ等)、レーヨン、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維等の天然繊維、ポリ乳酸、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)、高分子吸収繊維(SAF)等の合成繊維を用いることができる。これらの繊維は、吸水性を有するため、吸水性材料として配合して、シクロデキストリン含有シートの使用時に機能性成分の放出を促進させることもできる。機能性成分として冷感材料を包接したシクロデキストリンを使用する場合に、繊維としてSAFなど吸水性の高い繊維を使用すると、冷感が強く持続時間の長いシートを提供することが可能となる。また、本発明の繊維として、非吸水性の繊維を用いることもできる。以下に説明する熱融着性樹脂を、繊維の形態で使用してもよい。これらの繊維は、例えば解繊ショートカットファイバーの形態で用いることができる。これらの繊維は、2種以上を併用しても構わない。
(熱融着性樹脂)
本発明における熱融着性樹脂は、構成成分を結着させるバインダー樹脂となる。また、熱融着性樹脂は、シクロデキストリン含有シートにおける強度付与の効果を有し、シクロデキストリン含有シートは熱融着性樹脂を含むことにより形状が維持されやすくなる。
熱融着性樹脂AおよびBは、機能性成分が包接されたシクロデキストリン同士、および他の成分が含まれる場合は機能性成分が包接されたシクロデキストリンおよび他の成分を結着させることができる。熱融着性樹脂AおよびBは、機能性成分が包接されたシクロデキストリンからの機能性成分の放出を妨げないように、溶融され固化する際に、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末(粒子)の全体を被覆しないような量で配合される。
熱融着性樹脂は繊維状であってもよいし、粒子状であってもよい。強度がより高くなる点からは、熱融着性樹脂は繊維状であることが好ましい。熱融着性樹脂は、例えば、ショートカットファイバーの形態であってもよい。
熱融着性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリアミド、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
熱融着性樹脂は、2種類以上の樹脂の複合体であってもよい。例えば、芯部分と鞘部分とからなる芯鞘繊維、長手方向に垂直な断面において片側の半分ともう一方の片側の半分とが異なる樹脂からなるサイドバイサイド繊維、異なる樹脂からなるコアとシェルとを有するコアシェル粒子等が挙げられる。
熱融着性樹脂は2種類以上を併用しても構わない。すなわち、熱融着性樹脂AおよびBは、同一の熱融着性樹脂であってもよく異なる熱融着性樹脂であってもよい。熱融着性樹脂Aおよび熱融着性樹脂Bとして、それぞれ、1種類の熱融着性樹脂を用いてもよく、また、複数種類の熱融着性樹脂を併用してもよい。シクロデキストリン含有シートが、後述する他の層300を含む場合であって、他の層300が熱融着性樹脂を含む場合は、他の層300に含まれる熱融着性樹脂は、熱融着性樹脂AおよびBと同一であってもよく異なっていてもよく、1種類であっても複数種類の併用であってもよい。
(他の層)
本発明のシクロデキストリン含有シートは、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100、110、120に加えて、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、他の層300を含むことができる。
他の層300としては、例えば、不織布、布、紙などの水分を通す性質(通水性)および/または水分を吸収する性質(吸水性)を有する任意のシートを用いることができる。また、任意のフィルムを用いることができる。他の層300は、熱融着性樹脂を含んでいてもよい。シクロデキストリン含有シートの1つの面に通気性が相対的に低いフィルムを用いると、放出された機能性成分がその面から放散することを防止できる。シクロデキストリン含有シートの外層となる他の層300の表面には、凹凸などの表面加工を施してもよい。
(効果促進剤)
本発明のシクロデキストリン含有シートには、その用途に応じて、1つまたは複数の効果促進剤を配合することができる。
効果促進剤としては、例えば:油性基剤、保湿剤、感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤、噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、酸、炭酸塩、アルカリ、粉体、無機塩、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素、核酸、香料、色素、着色剤、染料、顔料、金属含有化合物、不飽和単量体、多価アルコール、高分子添加剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、増粘剤、粘着付与物質、止痒剤、角質軟化剥離剤、油性原料、紫外線遮断剤、防腐殺菌剤、抗酸化物質、液状マトリックス、脂溶性物質、高分子カルボン酸塩、添加剤、金属セッケン、吸水性材料等、が挙げられる。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコールや高分子吸収体(SAP)などの水性樹脂粒子等の粒子を使用すると持続時間の延長や機能性成分の除放効率の向上などの効果がある。
効果促進剤は、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層100、110、120に配合することができる。また、シクロデキストリン含有シートが、シクロデキストリン含有層と他の層とを含む多層構造である場合は、複数の層のうちのいずれか1つまたは複数の層に配合することができる。
例えば、シクロデキストリン含有シートが多層構造である場合、1つの層に酸を配合し、別の1つの層に炭酸塩を配合して、使用時に炭酸ガスが発生するシートとしてもよい。
(ヒートシール)
ヒートシールは、ヒートシーラーなどの加熱手段により熱を加えて層間接着させる方法である。本発明においては、例えば、機能性成分が包接されたシクロデキストリンのみからなる機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層を中間層とし、その両面に、熱融着性樹脂を含む層200を配置して、四隅をヒートシールすることにより、多層構造のシクロデキストリン含有シートを形成することができる。
(接着層)
接着層の形成方法は特に限定されないが、ホットメルト加工によって得られた接着層であることが好ましい。ホットメルト加工は、熱可塑性樹脂を溶かして押し出し、シートとシートを接着する加工方法である。シクロデキストリン含有層と他の層を接合する際の層間接着に用いることができる。
ホットメルト加工に用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などがあり、一般にホットメルト接着剤として知られている樹脂を用いることができる。
(エンボス加工)
エンボス加工は、凸凹模様を彫った押し型で強圧し、熱を加える加工である。この方法もまた、多層構造の層間接着に用いることができる。また、この方法は、単層または多層構造のシクロデキストリン含有シートに凹凸などの表面加工を施すために用いることもできる。
(各成分の含有比率)
シクロデキストリン含有シートにおけるシクロデキストリンの配合量は、シート全量に占める粉末の量が0.01質量%以上が好ましい。0.01質量%以上であれば、シクロデキストリン包接成分を効果的に除放することができる。
(坪量)
シクロデキストリン含有シートの坪量は、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、10〜4000g/m2であることが好ましい。
(乾式法によるシクロデキストリン含有層の形成)
本発明において、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層は、乾式法で設けられた層である。本発明で用いることのできる乾式法には、水を使用しない任意の層形成方法が含まれる。
(シクロデキストリン含有シートの製造方法)
例えば、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層を作製し、他の層が含まれる場合は、シクロデキストリン含有層に対して他の層を別途積層させる製造方法を用いることができる。そのような方法として、機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層の表面に、例えばポリエチレン(PE)のような熱融着性樹脂Bを配置し、熱融着性樹脂Bを熱により溶融させて接合する方法がある。あるいはまた、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で機能性成分が包接されたシクロデキストリン含有層(例えば、熱融着性樹脂Aを含むシクロデキストリン含有層120)を作製する際に、シクロデキストリン含有層120となるウェブ層を搬送するためのキャリアシートに本発明の他の層300を用いることによって、他の層300とシクロデキストリン含有層120との積層体を形成して、本発明に係る層構成を有するシクロデキストリン含有シートを得てもよい。また、別途作製したシクロデキストリン含有シートの各層を、エンボス加工やヒートシール加工により接合させてもよい。また、シクロデキストリン含有シートの各層の接合面の少なくとも一方に熱可塑性樹脂のようなホットメルト接着剤などにより接着層(粘着層)を設けて、ホットメルト加工により各層を接合させる方法などもある。製造時における、機能性成分の放出(流出)や、シクロデキストリンの凝集等を防ぐために、本発明において、これらの積層は乾式法にて行う。
(エアレイド法を採用するシクロデキストリン含有シートの製造方法)
エアレイド法を採用する本実施形態のシクロデキストリン含有シートの製造方法は、解繊工程と混合工程とウェブ形成工程と結着工程とを任意選択的に有する。
(解繊工程)
解繊工程は、ショートカットファイバーの形態の材料を、空気流によって解繊して解繊ショートカットファイバーを得る工程である。
ショートカットファイバーの空気流による解繊方法では、ブロアー等によって空気流を形成し、その空気流にショートカットファイバーを供給し、空気流の攪拌効果によって解繊する。
解繊方法としては、旋回する空気流で解繊することが好ましい。旋回する空気流を利用した解繊方法によれば、ショートカットファイバーを充分に解繊することができ、エアレイド法によってエアレイドウェブを形成する際に、解繊ショートカットファイバーの分散性をより高めることができる。
旋回する空気流を利用した解繊方法としては、例えば、ブロアーの中にショートカットファイバーを投入してブロアーにて解繊する方法が挙げられる。また、ブロアーによって円筒容器内に、周方向に沿うように空気を送って旋回流を形成し、その旋回流の中にショートカットファイバーを供給し、攪拌して解繊する方法が挙げられる。
空気流の流速は、ショートカットファイバーの量に応じて適宜選択されるが、通常は、10〜150m/秒の範囲内である。
(混合工程)
混合工程は、機能性成分が包接されたシクロデキストリンの粉末(粒子)と解繊ショートカットファイバーの形態の材料(含まれる場合)とを混合してウェブ原料を得る工程である。このとき同時に、任意の他の材料を混合することができる。任意の他の材料の形状は、繊維状でも粒子状でもよい。任意の他の材料の例としては、熱融着性樹脂、効果促進剤等の必要に応じて添加される助剤等が挙げられる。これらの材料の添加順に特に限定は無く、また、これらの材料は、混合工程よりも後の工程で、例えば散布等によって添加することもできる。
混合に際しては、解繊ショートカットファイバーの分散性を向上させるために、解繊ショートカットファイバーと他の材料とを攪拌することが好ましい。ただし、解繊ショートカットファイバーの破断を防ぐために、機械的剪断力を利用した攪拌ではなく、空気流を用いた攪拌を適用することが好ましい。
混合工程は、解繊工程の後でもよいし、解繊工程と同時でもよい。混合工程を解繊工程と同時とする場合には、解繊工程での空気流を利用して、解繊ショートカットファイバーと任意の材料を混合する。また、後述する粒子散布工程で解繊ショートカットファイバーのウェブ形成ラインにシクロデキストリンの粉末(粒子)および/または任意の粒子を投入し、混合してもよい。
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、エアレイド法によってウェブ原料からエアレイドウェブを得る工程である。ここで、エアレイド法とは、空気流を利用して繊維を3次元的にランダムに堆積させてウェブを形成する方法である。
(粒子散布工程)
粒子散布工程は、既知の方法よってウェブ原料に粉末(粒子)の形態の材料を配合する工程である。繊維に粉末(粒子)の形態の材料を混合してウェブを形成する方式もしくはウェブの表面もしくはキャリアシート上に散布する方式のいずれを用いてもよい。
本実施形態におけるウェブ形成工程では、例えば、図2に示すウェブ形成装置1を用いる。このウェブ形成装置1は、コンベア10と透気性無端ベルト20とウェブ原料供給手段30と第1のキャリアシート供給手段40と第2のキャリアシート供給手段50とサクションボックス60と備える。
ここで、コンベア10は、複数のローラー11によって構成されている。透気性無端ベルト20は、コンベア10に装着されて回転するようになっている。ウェブ原料供給手段30は、透気性無端ベルト20にウェブ原料を空気流と共に供給するものである。第1のキャリアシート供給手段40は、透気性無端ベルト20に向けて第1のキャリアシート41を供給するものである。第2のキャリアシート供給手段50は、透気性無端ベルト20を通過した第1のキャリアシート41に向けて第2のキャリアシート51を供給するものである。サクションボックス60は、透気性無端ベルト20をその内側から吸引するものである。
ウェブ形成装置1においては、ウェブ原料供給手段30は透気性無端ベルト20の上方に設置され、第1のキャリアシート供給手段40は透気性無端ベルト20よりも上流に設置され、第2のキャリアシート供給手段50は透気性無端ベルト20よりも下流に設置されている。
上記ウェブ形成装置1を用いたウェブ形成工程では、各ローラー11を同方向に回転させることによりコンベア10を駆動させて透気性無端ベルト20を回転させる。また、透気性無端ベルト20の上に接触するように、第1のキャリアシート41を第1のキャリアシート供給手段40から繰り出す。
次いで、サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、ウェブ原料供給手段30から空気流と共にウェブ原料を下降させ、透気性無端ベルト20上の第1のキャリアシート41上に繊維混合物を落下、堆積させる。これにより、エアレイドウェブWを形成する。
次いで、エアレイドウェブWの上に、第2のキャリアシート51を第2のキャリアシート供給手段50より供給して、エアレイドウェブ含有積層シートを得る。
(結着工程)
結着方式は、水を使わずに結着させる観点から、サーマルボンド方式を使用することが好ましい。サーマルボンド方式による結着工程は、エアレイドウェブを加熱処理して、解繊ショートカットファイバー同士を熱融着性樹脂によって結着させる工程である。
エアレイドウェブの加熱処理としては、熱風処理、赤外線照射処理が挙げられ、装置が低コストである点では、熱風処理が好ましい。
熱風処理としては、エアレイドウェブを、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤに接触させて熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、エアレイドウェブを、ボックスタイプドライヤに通し、エアレイドウェブに熱風を通過させることで熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが挙げられる。
本実施形態のように、エアレイドウェブが第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートに挟まれて積層シートになっている場合には、積層シートのまま熱風処理してもよい。第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートは、熱風処理後にエアレイドウェブから剥離することができる。加熱処理温度は、熱融着性樹脂が溶融する温度とすればよい。
結着工程の後には、シクロデキストリン含有シートの厚みおよび密度を微調整する目的で、加熱ロールに通して圧縮処理してもよい。
(機能性シートの用途)
以下に、本発明に係る機能性シートの用途を例示する。
機能性シートの用途としては、(1)防護用、(2)医療用、(3)建材・土木用、(4)衛生用、(5)ワイパー用、(6)農業・園芸用、(7)生活資材用、(8)工業資材用、(9)実験資材用などが挙げられる。
(1)防護用としては、例えば、防護用品が挙げられる。前記防護用品の具体的な例としては、マスク等である。
(2)医療用としては、例えば、ガーゼ、マスク、シーツ類、抗菌マット、パップ剤基布、湿布剤基布、過喚起症候群治療剤などが挙げられる。
(3)建材・土木用としては、例えば、遮水シート、保護材、防触材などが挙げられる。
(4)衛生用としては、例えば、おむつ、生理用品、救急用品、清浄用品、おしぼり、マスクなどが挙げられる。前記おむつの具体的な例としては、紙おむつ等である。前記生理用品の具体的な例としては、ナプキン、タンポン等である。前記救急用品の具体的な例としては、ガーゼ、救急絆創膏、綿棒等である。前記清浄用品の具体的な例としては、ウェットティッシュ、化粧綿、母乳パッド、清拭シート、汗吸収シート(顔・脇・首・足等用)、抗菌・除菌シート、抗ウイルス性シート、抗アレルゲンシート、抗菌防臭シート等である。前記マスクの具体的な例としては、使い捨て立体マスク等である。
(5)ワイパー用としては、例えば、ワイパー、ウェットワイパー、油こし用、複写機クリーニング材などが挙げられる。
(6)農業・園芸用としては、例えば、苗床用シート、べたがけシート、防霜シート、防草シート、園芸プランターなどが挙げられる。農業・園芸用として使用する場合、例えば、嫌気環境を作り出し、促成栽培を行うために使用することができる。
(7)生活資材用としては、例えば、包装資材、掃除用品、袋物、食品用、生活雑貨、台所用品、スポーツ用品、美容資材などが挙げられる。前記掃除用品の具体的な例としては、ワイパー、化学雑巾、たわし等である。前記袋物の具体的な例としては、乾燥剤袋等である。前記食品用の具体的な例としては、ティーバッグ、コーヒーバッグ、食品バッグ、鮮度保持材、食品吸水用シート、炭酸注入剤、食品添加物等である。前記生活雑貨の具体的な例としては入浴剤、アイマスク、冷感シート、温感シート、ネックスカーフ、手袋、防臭シート、芳香剤基材等である。前記台所用品の具体的な例としては、水切りシート、消火布等である。前記スポーツ用品の具体的な例としては、疲労回復材料等である。美容資材としては、フェイスマスク、パフ、美容パック、美容手袋等である。
(8)工業資材用としては、例えば、工業資材、電気資材、電池、製品材料、OA機器、AV機器、ロール、機器部材などが挙げられる。
(9)実験資材用としては、例えば、嫌気環境形成材、麻酔剤、虫の誘引剤などが挙げられる。
本発明の機能性シートは、特に、虫誘引剤、嫌気環境形成材、麻酔剤、疲労回復材料、芳香剤基材、虫忌避剤、抗菌・抗ウイルス性シートのような、農業用資材、実験資材、化粧品、医薬部材品、医薬品、清掃用品、雑貨等の分野において好ましく使用されることができる。
(機能性シートの使用形態)
本発明の機能性シートは、少なくとも一部が水と接触した形態で用いられた際に、前記水を介した反応により機能を発揮する機能性シートである。本発明の機能性シートは、特に、水吸い上げ型の機能性シートとして好適に用いられる。
図2に、本発明の機能性シートの使用形態の非制限的な例を示す。
(機能性シートキット)
図2に示されるように、本発明に係る機能性シート1101と、機能性シート1101の少なくとも一部に接触させるための水1106を収容する容器1105と、を合わせて、機能性シートキットとすることができる。
機能性シートと、水を収容する容器と、を備えるキットによれば、他の用具を必要とすることなしに、機能性シートを設置することができる。
かかる容器1105は、水分を供給可能な材料を含む形態であってもよい。水分を供給可能な材料は、例えば、水を含ませたスポンジまたは不織布であることができる。また、かかる容器に収容される水は、液体の水であることができる他、含水ゲルの形態であってもよい。ここで、含水ゲルとは水を含んだ高分子材料をいい、例えば寒天等を使用することができる。含水ゲルもまた、本発明に適用可能な、水分を供給可能な材料である。かかる構成によれば、機能性シートを使用する際に、容器から水が溢れたり液垂れしたりといったことが防止され、周囲を汚すおそれが低減される。
また、二剤反応型の機能性シートキットの場合、持続時間を延長する目的でスポンジまたは不織布、含水ゲルの中に片方の機能成分を添加してもよい。これにより、スポンジまたは不織布、含水ゲルに含まれる水、もしくは水を含ませた際に溶解した機能成分がもう片方の機能成分と接触するまでの時間制御することが可能となる。
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下に示す実施例および比較例では、機能性シートとして、水を介した炭酸塩と酸との反応により炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生シートを採用した。
[実施例1]
<炭酸ガス発生シートの製造>
機能性シートとして、炭酸ガス発生シートを製造した。まず、パルプ(NBKP)およびショートカットの芯鞘型の熱融着性複合繊維(PP/PE複合芯鞘繊維、鞘部融点130℃)を、それぞれ、旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、それぞれの解繊繊維を得た。
次いで、それぞれ解繊繊維の形態のパルプと熱融着性複合繊維とを、70/30の割合(質量比)で空気流により均一に混合して、パルプ/熱融着性複合繊維(PP/PE)の繊維混合物を得た。
クエン酸とポリエチレン(PE)パウダーとを80/20の割合(質量比)で混合し、クエン酸/PEパウダーの粒子混合物を得た。同様に重炭酸水素ナトリウムとPEパウダーとを80/20の割合(質量比)で混合し、重炭酸水素ナトリウム/PEパウダーの粒子混合物を得た。
次いで、キャリアシート上にクエン酸/PEパウダーの粒子混合物を散布した後、図7に示すウェブ形成装置1を用い、繊維混合物からエアレイドウェブを形成した。
具体的には、コンベア10に装着されて走行する透気性無端ベルト20の上に、第1のキャリアシート供給手段40によって、レーヨンスパンレース不織布(坪量28g/m2)からなる第1のキャリアシート41を繰り出した。
サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、その第1のキャリアシート41の上に、クエン酸/PEパウダーの粒子混合物を50g/m2となるように散布し、その上に繊維混合物供給手段30から空気流と共に上記繊維混合物を落下堆積させて、エアレイドウェブを形成した。その際、エアレイドウェブ部分あたりの繊維混合物の坪量が30g/m2となるように、繊維混合物を供給した。
次いで、エアレイドウェブ上に重炭酸水素ナトリウム/PEパウダーの粒子混合物を100g/m2となるよう散布し、堆積させた。その上にレーヨンスパンレース不織布(坪量28g/m2)からなる第2のキャリアシート51を積層して、エアレイドウェブ含有積層シートを得た。
得られた積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、140℃で熱風処理して、炭酸ガス発生シートAを得た。
得られた炭酸ガス発生シートAを、上面からみて横5×縦10cmの長方形となるように切り出した。シートAの一方の長辺から長辺に平行な長方形の仮想中心線に向かって、5mm×2.5cmの矩形の切り込みを、1cmの間隔で複数入れた。これに対して、シートAの他方の長辺から前記仮想中心線に向かって、5mm×2.5cmの矩形の切り込みを、1cmの間隔で、かつ、前記一方の長辺からの切り込みと長辺の長さ方向において交互に配置されるように入れた。
[実施例2]
実施例1において切り込み部分として取り除いた領域を、取り除く代わりにヒートシール処理を施してヒートシール領域とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の炭酸ガス発生シートBを得た。
[比較例1]
切り込みを入れない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の炭酸ガス発生シートを得た。つまり、比較例1は、実施例1の機能性シート(炭酸ガス発生シート)の機能性シート基材に相当する。
<評価試験>
実施例1,2および比較例のシートを、長方形の短辺が下辺となるような向きで、下から1cmの部分が水に浸かるように吊り下げて、目視評価により、炭酸ガスの発生が持続する時間を測定した。
測定結果は、以下の通りであった。
[実施例3]
<におい発生シートの製造>
機能性シートとして、におい発生シートを製造した。ショートカットの芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/低融点PET複合芯鞘繊維、鞘部融点130℃)を旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、解繊ショートカットファイバーを得た。
ジンジャー成分を包接したシクロデキストリンとポリエチレン(PE)パウダーとを80/20の割合(質量比)で混合し、シクロデキストリン/PEパウダーの粒子混合物を得た。
次いで、キャリアシート上に粒子混合物を散布した後、図7に示すウェブ形成装置1を用い、繊維混合物からエアレイドウェブを形成したシートを得た。
具体的には、コンベア10に装着されて走行する透気性無端ベルト20の上に、第1のキャリアシート供給手段40によって、レーヨンスパンレース不織布(坪量28g/m2)からなる第1のキャリアシート41を繰り出した。
サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、その第1のキャリアシート41の上に、粒子混合物を20g/m2となるように散布し、その上に繊維混合物供給手段30から空気流と共に上記解繊ショートカットファイバーを落下堆積させた。その際、エアレイドウェブ部分あたりのショートカットファイバーの坪量が280g/m2となるように、繊維混合物を供給した。
次いで、ウェブ上にレーヨンスパンレース不織布(坪量28g/m2)からなる第2のキャリアシート51を積層して、エアレイドウェブ含有積層シートを得た。
得られた積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、140℃で熱風処理して、ロールプレスでプレスし、坪量356g/m2のにおい発生シートAを得た。JIS P 8125 紙および板紙 テーバーこわさ試験機法に準じて測定したにおい発生シートCのテーバー剛性度は6.5mN・mであった。
得られたにおい発生シートCを蚊取り線香形状に打ち抜き、渦巻き部の長さが50cmの加工品C−1を得た。得られた蚊取り線香形状加工品C-1の端部1cmを、図2(c)に示されるように、先端部のみが水に浸かるようにして、水に浸漬し、1分後、30分後、1時間後、5時間後、24時間後、48時間後のにおいの有無を測定した。
その結果、いずれの測定タイミングでもジンジャーのにおいを感じることができた。また、24時間後の端部液面からの吸水長は、80mmであり、48時間後の吸水長は、100mmであった。
渦巻き形状に加工したことで、設置面積が少なく長時間においを放出する加工品を得ることができた。
[比較例2]
ショートカットの芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/低融点PET複合芯鞘繊維、鞘部融点130℃)とパルプ(NBKP)を20/80の比率となるように配合した繊維混合物を使用した以外は実施例と同様にして、におい発生シートDを得た。JIS P 8125 紙および板紙 テーバーこわさ試験機法に準じて測定したにおい発生シートDのテーバー剛性度は0.5mN・mであった。
におい発生シートDを蚊取り線香形状に打ち抜いたが、形状を維持することができなかった。