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JP2019183211A - 浸炭部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐水素脆化特性を有し、十分な耐摩耗性及び疲労強度を有する浸炭部品を提供する。【解決手段】浸炭部品の芯部の化学組成は、質量%でC:0.10〜0.30%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.30〜1.40%、P:0.030%未満、S:0.030%未満、Cr:0.50〜2.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.001〜0.030%を含有し、表面のC濃度が0.50〜0.70%である。軸部のノッチの最大外径をD(mm)、ノッチ底の曲率半径をr(mm)、表面から0.15mm深さ、0.40mm深さでのビッカース硬さをHV0.15、HV0.40と定義したとき次式を満たす。1.0<fn1=3×r×D<60.0、0.010<r/D、580+fn1≦HV0.15≦730+fn1、430+fn1≦HV0.40≦630+fn1、−900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280【選択図】図2

Description

本発明は、浸炭部品に関する。
自動車や産業機械のエンジン等の動力源及び動力伝達機構に用いられる機械部品には、衝撃的に付与される負荷や摺動により、摩耗が発生する。さらに、使用中に曲げ応力を受ける。したがって、これらの用途の機械部品には、耐摩耗性及び高い曲げ疲労強度が求められる。十分な耐摩耗性及び高い曲げ疲労強度を得るために、これらの用途に用いられる機械部品には、浸炭部品が用いられることが多い。浸炭部品は、鋼材を浸炭処理して得られる。浸炭処理により、浸炭部品の表面には硬化層が形成されている。この硬化層により、耐摩耗性及び高い曲げ疲労強度が得られる。
ところで、浸炭部品を製造する浸炭処理では通常、雰囲気ガスとして、炭化水素ガスが用いられる。浸炭処理中において、炭化水素ガスが分解されて水素が発生する。浸炭処理中に発生した水素は、浸炭部品内に吸収される場合がある。そのため、浸炭部品では、浸炭処理中に鋼中に吸収された水素に起因した水素脆化割れが発生する場合がある。したがって、浸炭部品には、耐摩耗性及び高い曲げ疲労強度だけでなく、優れた耐水素脆化特性も求められる。
浸炭部品の耐水素脆化特性を高める技術が、特開平9−217148号公報(特許文献1)、特開2014−19920号公報(特許文献2)及び特開2012−36475号公報(特許文献3)に提案されている。
特許文献1に記載された高強度肌焼鋼は、重量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.1%以下、Mn:0.30〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.005〜0.020%、Ni:0.30〜2.00%、Cr:0.40〜1.50%、Mo:0.30〜0.45%、Al:0.015〜0.030%、N:0.0100〜0.0180%、O:0.0015%以下を含有し、残部Fe並びに不可避的不純物元素からなり、高周波加熱による焼きなましをして硬さHv420以下を有する。
特許文献2に記載された浸炭又は浸炭窒化部品用鋼材は、質量%で、C:0.15〜0.40%、Si:0.15〜0.40%、Mn:0.5〜1.5%、S:0.003〜0.050%、Cr:0.7〜1.5%、Cu:0.30〜0.80%、Ni:0.15〜1.0%、N:0.003〜0.020%、及び、Al:0.005〜0.050%、を含有し、残部はFe及び不純物からなる。不純物中のP及びOはそれぞれ、P:0.025%以下、O:0.0020%以下であり、式(1):2Ni−Cu≧0、及び、式(2):6C−7.5Si+1.6Mn+4Cr−Cu−1.6Ni≧4.0を満たす。これにより、浸炭又は浸炭窒化部品の使用中に、潤滑剤及び外部から混入した水分から発生する水素が鋼中へ侵入する量を低く抑えることができ、水素脆化への感受性を抑制できる、と特許文献2には記載されている。
特許文献3に記載された転動部品もしくは歯車は、質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.10〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.035%以下、Cr:1.30〜3.50%、Al:0.003〜0.10%、N:0.004〜0.050%を含有し、残部がFe及び不可避不純物である鋼材からなる。特許文献3では、浸炭もしくは浸炭窒化処理により、この転動部品もしくは歯車の鋼材表層面中の(C+N)量を0.50〜0.75%とする。
特開平9−217148号公報 特開2014−19920号公報 特開2012−36475号公報
しかしながら、特許文献1の高強度肌焼鋼を用いて製造される浸炭部品では、高温での焼きなましが実施される。そのため、浸炭部品の曲げ疲労強度が低い場合がある。
特許文献2及び3は、浸炭部品の使用中に侵入する水素に対する脆化を抑制する技術を開示する。しかしながら、上述のとおり、浸炭処理時において水素はある程度鋼材に吸収される。そのため、浸炭処理時において吸収された水素に対しても、耐水素脆化特性を高めた方が好ましい。特許文献2には、この点に関する開示がない。
特許文献3では、表面の炭素濃度及び窒素濃度を0.50〜0.75%とすることにより、平滑部における耐水素脆化特性が高まるとしている。しかしながら、浸炭部品において、水素脆化は、ノッチを含む応力集中部で発生しやすい。特許文献3では、応力集中部における耐水素脆化特性を高める点に関する開示がない。
本発明の目的は、優れた耐水素脆化特性を有し、かつ、十分な耐摩耗性及び曲げ疲労強度を有する浸炭部品を提供することである。
本発明の実施の形態による浸炭部品は、摺動部と軸部とを備える。摺動部は、他の部材と接触する摺動面を有する。軸部は、摺動部と繋がっている。軸部は、応力集中部を備える。応力集中部は、軸部の周方向に延びる1又は複数のノッチを含む。
軸部のうち、硬化層を除く芯部の化学組成は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.30〜1.40%、P:0.030%未満、S:0.030%未満、Cr:0.50〜2.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.001〜0.030%、Mo:0〜0.80%、Ni:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ti:0〜0.10%、及び、Nb:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。
軸部の表面のC濃度は0.50〜0.70%である。
軸部において、ノッチの最大外径をD(mm)、ノッチのノッチ底の曲率半径をr(mm)、表面から0.15mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.15、表面から0.40mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.40と定義したとき、式(1)〜式(5)を満たす。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
−900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280 (5)
本実施形態の浸炭部品は、優れた耐水素脆化特性を有し、かつ、十分な耐摩耗性及び曲げ疲労強度を有する。
図1は、本実施形態による浸炭部品の一例を示す側面図である。 図2は、浸炭部品の断面における、残留応力分布を模式的に示す図である。 図3は、図2と異なる、浸炭部品の断面における、残留応力分布を模式的に示す図である。 図4は、ガス浸炭工程及び焼入れ工程のヒートパターンの一例を示す図である。 図5は、図4と異なる、ガス浸炭工程及び焼入れ工程のヒートパターンの一例を示す図である。 図6は、実施例で作製した耐水素脆化特性評価試験片の断面図である。 図7は、実施例で作製したローラーピッチング試験片の平面図である。 図8は、実施例で作製した4点曲げ試験片の模式図である。 図9は、ローラーピッチング試験の模式図である。
以下、本実施形態による浸炭部品について説明する。
[本実施形態の浸炭部品について]
初めに、本実施形態の対象となる、浸炭部品について説明する。図1は、本実施形態による浸炭部品1の一例を示す側面図である。浸炭部品1は、後述の化学組成を有する鋼材を浸炭処理して製造される。本実施形態の浸炭部品1は、摺動部2と、軸部3とを備える。
摺動部2は、摺動面を有する。摺動面は、他の部材と接触して、他の部材が摺動面に対して摺動する面である。他の部材はたとえば、機械部品である。他の部材である機械部品が浸炭部品であってもよい。摺動面はたとえば、かさ歯車やピニオン等の歯車の歯面や、プーリーにおけるベルトとの接触面である。
軸部3は、摺動部2と繋がっている。軸部3は、長手方向に延びる棒状の形状を有する。軸部3は、応力集中部4を備える。応力集中部4は、軸部3の周方向に延びる1又は複数のノッチ5を含む。ノッチ5は、軸部3の周方向に平行に延びていてもよいし、周方向に対して±10°の範囲で傾いていてもよい。ノッチ5はリング状に形成されていてもよいし、螺旋状に形成されていてもよい。
このような浸炭部品1は、たとえば、自動車や産業機械のエンジン等の駆動源及び伝達機構に用いられる。浸炭部品1はたとえば、プーリーや、ピニオンギア等である。浸炭部品1がピニオンギアである場合、摺動部2がピニオン部に相当し、軸部3がピニオンシャフト部に相当する。
上述の構成を有する本実施形態の浸炭部品1は、硬化層と、芯部とを備える。硬化層は、浸炭部品の表面を含む表層に形成されている。芯部は、硬化層よりも内部の領域である。浸炭部品1の表面から0.15mm深さ位置は硬化層に相当する。浸炭部品1の表面から0.15mm深さ位置でのビッカース硬さを、ビッカース硬さHV0.15と定義する。浸炭部品1の表面から0.40mm深さ位置は、芯部に相当する。浸炭部品1の表面から0.40mm深さ位置でのビッカース硬さを、ビッカース硬さHV0.40と定義する。本実施形態の浸炭部品において、ビッカース硬さHV0.15はビッカース硬さHV0.40よりも高い。
[本実施形態の浸炭部品を想到するまでの技術思想]
通常、機械部品の強度を高めるためには、焼入れ性を高め、芯部の硬さを高めることが有効である。
しかしながら、上述のような応力集中部を含む浸炭部品において、芯部の硬さが高い場合、応力集中部での耐水素脆化特性が低くなる。そのため、本発明者らは、動力伝達用の機械部品として必要な耐摩耗性及び高い曲げ疲労強度を有しつつ、応力集中部の耐水素脆化特性を高める方法を検討した。その結果、以下の知見を得た。
鋼材に対して浸炭処理を実施して浸炭部品を製造した場合、浸炭部品の表層には圧縮残留応力が発生する。この理由は次のとおりである。浸炭処理を実施すると、鋼材の表層のC濃度は、芯部のC濃度よりも高くなる。そのため、表層のマルテンサイト変態開始温度(Ms点)は、芯部のMs点よりも低くなる。その結果、浸炭処理中において、表層よりも先に芯部がマルテンサイト変態を開始する。表層部は、芯部よりも後にマルテンサイト変態するため、表層においては、圧縮残留応力が発生する。
本発明者らは、上記の浸炭処理により発生する圧縮残留応力に着目した。具体的には、浸炭部品の応力集中部の表面の圧縮残留応力を高めれば、耐水素脆化特性が高まると考えた。
そこで、本発明者らはさらに、表面の圧縮残留応力を高める方法について検討した。図2は、浸炭部品の断面における、残留応力分布を模式的に示す図である。図2の横軸は、浸炭部品の断面における表面からの距離を示し、図2の横軸の左端及び右端が表面に相当する。図2の縦軸は残留応力を示す。プラス(+)が引張残留応力を意味し、マイナス(−)が圧縮残留応力を意味する。
図2の曲線C1は、浸炭部品の断面における残留応力分布を示す。図2を参照して、浸炭部品では、両表面から所定深さH1に至るまでの領域では、圧縮残留応力が掛かっており、表面では、圧縮残留応力YC1が掛かっている。そして、深さH1よりも内部の領域では、引張残留応力が掛かっている。浸炭部品内の残留応力はつり合っているため、曲線C1において、引張残留応力の領域A1の面積は、圧縮残留応力の領域A2の面積と、圧縮残留応力の領域A3の面積との和に相当する。
圧縮残留応力が掛かる領域(深さ方向において、表面から深さH1に至るまでの領域)は、硬化層の深さに依存する。そこで、図3に示すとおり、浸炭処理を調整して硬化層を図2よりも浅くして、圧縮残留応力が掛かる深さを深さH1よりも浅いH2にしたと仮定する。
この場合、引張残留応力の領域A1の面積と、圧縮残留応力の領域A2及び領域A3の総面積とを一致させるために、残留応力分布は曲線C2のようになる。具体的には、圧縮残留応力の領域A2及び領域A3において、表面からの深さ方向における残留応力の勾配(残留応力勾配)が急峻になる。その結果、表面での圧縮残留応力が、YC1よりも大きいYC2になる。
以上のとおり、浸炭部品の応力集中部での表面での割れの発生を抑制するために、表面での圧縮残留応力を高めるためには、深さ方向における圧縮応力の掛かる領域を狭くすればよい(深さH1→H2)。浸炭部品の応力集中部の表面での圧縮残留応力が高まれば、ノッチ底に生じる引張残留応力が緩和され、表面での割れが発生しにくくなる。その結果、浸炭部品の応力集中部での耐水素脆化特性が高まる。
以上の考え方に基づいて、本発明者らは、応力集中部の形状と、応力集中部の表層部での硬さと、芯部での硬さとについて検討を行った。
図1に示すとおり、応力集中部4のノッチ5の最大外径をD(mm)と定義する。また、ノッチ5のノッチ底の曲率半径をr(mm)と定義する。応力集中部4の軸方向にノッチ5が複数配列されている場合、各ノッチ5の最大外径の平均をD(mm)と定義し、各ノッチ5のノッチ底の曲率半径の平均をr(mm)と定義する。
さらに、上述のとおり、軸部3の任意の表面から0.15mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.15と定義し、軸部3の任意の表面から0.40mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.40と定義する。
上記のとおり定義された最大外径D、曲率半径r、ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40が次の式(1)〜式(5)を満たせば、浸炭部品の表面からの深さ方向において、圧縮残留応力が掛かる領域が十分に狭まり、表面において十分な圧縮残留応力を掛けることができる。その結果、十分な耐水素脆化特性が得られることが分かった。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
−900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280 (5)
以上の知見に基づいて完成した本発明の実施の形態による浸炭部品は、摺動部と軸部とを備える。摺動部は、他の部材と接触する摺動面を有する。軸部は、摺動部と繋がっている。軸部は、応力集中部を備える。応力集中部は、軸部の周方向に延びる1又は複数のノッチを含む。
軸部のうち、硬化層を除く芯部の化学組成は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.30〜1.40%、P:0.030%未満、S:0.030%未満、Cr:0.50〜2.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.001〜0.030%、Mo:0〜0.80%、Ni:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ti:0〜0.10%、及び、Nb:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。
軸部の表面のC濃度は0.50〜0.70%である。
軸部において、ノッチの最大外径をD(mm)、ノッチのノッチ底の曲率半径をr(mm)、表面から0.15mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.15、表面から0.40mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.40と定義したとき、式(1)〜式(5)を満たす。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
−900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280 (5)
上記化学組成は、Mo:0.01〜0.80%、Ni:0.05〜0.50%、及び、Cu:0.10〜0.50%からなる群から選ばれる1種以上を含有してもよい。
上記化学組成は、Ti:0.05〜0.10%、及び、Nb:0.01〜0.10%からなる群から選ばれる1種以上を含有してもよい。
以下、本発明の実施の形態による浸炭部品について詳述する。
[浸炭部品の軸部の芯部の化学組成]
本実施形態による浸炭部品1は、図1に示すとおり、摺動部2と、軸部3とを備える。浸炭部品の軸部3のうち、硬化層を除く芯部の化学組成は、次の元素を含有する。ここで、芯部の化学組成とは、浸炭部品の軸部において、表面から2.0mm深さ位置よりも深い位置での採取されたサンプルにおいて、JIS G 0321(2010)に準拠した製品分析により得られる化学組成を意味する。以下、元素の含有量に関する「%」は、質量%を意味する。
C:0.10〜0.30%
炭素(C)は、鋼の焼入れ性を高める。これにより、浸炭部品の硬さが高まり、耐摩耗性が高まる。C含有量が0.10%未満であれば、この効果が得られない。一方、C含有量が0.30%を超えれば、鋼の被削性及び冷間鍛造性が低下する可能性がある。したがって、C含有量は0.10〜0.30%である。C含有量の好ましい下限は0.15%であり、さらに好ましくは0.18%である。C含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.23%である。
Si:0.50〜1.50%
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。Siはさらに、鋼の焼戻し軟化抵抗を高める。これにより、浸炭部品の耐摩耗性が高まる。しかしながら、Si含有量が0.50%未満であれば、上記効果は十分に得られず、浸炭部品の耐摩耗性が低下する。一方、Si含有量が1.50%を超えれば、鋼の浸炭を阻害する。この場合、浸炭部品の耐摩耗性が低下する。したがって、Si含有量は0.50〜1.50%である。Si含有量の好ましい下限は0.52%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.80%である。Si含有量の好ましい上限は1.30%であり、さらに好ましくは1.20%である。
Mn:0.30〜1.40%
マンガン(Mn)は鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼の焼入れ性及び強度を高める。Mnはさらに、鋼の軟化抵抗を高める。その結果、浸炭部品の耐摩耗性が高まる。Mn含有量が0.30%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が1.40%を超えれば、Pとの共偏析が顕著になり、粒界脆化が発生する。その結果、浸炭部品の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Mn含有量は0.30〜1.40%である。Mn含有量の好ましい下限は0.50%であり、さらに好ましくは0.70%である。Mn含有量の好ましい上限は1.20%であり、さらに好ましくは1.00%である。
P:0.030%未満
リン(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。Pは浸炭時にオーステナイト粒界に偏析して、浸炭層の粒界強度を低下する。浸炭層の粒界強度が低下すれば、耐水素脆化特性が低下する。P含有量が0.030%未満であれば、芯部だけでなく表層のP含有量も低い。このため、表層の靱性が高まり、粒界き裂の発生が抑制される。その結果、耐水素脆化特性が高まる。したがって、P含有量は0.030%未満である。P含有量の好ましい上限は0.015%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、製鋼工程においてP含有量を極度に低減すれば製造コストが掛かり、生産性も低下する。したがって、好ましいP含有量の下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
S:0.030%未満
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは結晶粒界に残存して浸炭層の粒界強度を低下する。Sはさらに、粒界に粗大なMnSを形成して残留応力の集中する点となる。その結果、浸炭部品の耐水素脆化特性が低下する。したがって、S含有量は0.030%未満である。S含有量の好ましい上限は0.015%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、製鋼工程においてS含有量を極度に低減すれば製造コストが掛かり、生産性も低下する。したがって、好ましいS含有量の下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
Cr:0.50〜2.00%
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性を高めて芯部の硬さを高める。Crはさらに、焼戻し軟化抵抗を高める。その結果、浸炭部品の耐摩耗性が高まる。Cr含有量が0.50%未満であれば、この効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が2.00%を超えれば、冷間加工性が低下する。したがって、Cr含有量は0.50〜2.00%である。Cr含有量の好ましい下限は0.60%であり、さらに好ましくは0.80%である。Cr含有量の好ましい上限は1.85%であり、さらに好ましくは1.70%である。
Al:0.010〜0.100%
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Alはさらに、鋼中のNと結合してAlNを形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。その結果、浸炭部品の耐水素脆化特性が高まる。Al含有量が0.010%未満であればこの効果が得られない。一方、Al含有量が0.100%を超えれば、上記効果が飽和する。したがって、Al含有量は0.010〜0.100%である。Al含有量の好ましい下限は0.020%であり、さらに好ましくは0.025%である。Al含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.065%である。本実施形態の浸炭部品の芯部の化学組成において、Al含有量は、鋼材中に含有する全Al量を意味する。
N:0.001〜0.030%
窒素(N)は、鋼中でTi、Al、V及びNbと結合して窒化物や炭窒化物を形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。これにより、浸炭部品の耐水素脆化特性が高まる。N含有量が0.001%未満であれば、十分な粗大化抑制効果は得られない。一方、N含有量が0.030%を超えれば、上記効果が飽和する。したがって、N含有量は0.001〜0.030%である。N含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.008%である。N含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.020%である。
本実施形態による浸炭部品の芯部の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、浸炭部品を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の浸炭部品に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
本実施形態の浸炭部品の軸部の芯部の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Mo、Ni及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素は任意元素であり、いずれも、鋼の焼入れ性を高める。
Mo:0〜0.80%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mo含有量は0%であってもよい。含有される場合、Moは、浸炭部品の焼戻し軟化抵抗を高めて、浸炭部品の耐摩耗性を高める。Moが少しでも含有されれば、これらの効果が得られる。しかしながら、Mo含有量が0.80%を超えれば、これらの効果は飽和し、原料コストが高くなる。したがって、Mo含有量は0〜0.80%である。上記効果を安定して得るためのMo含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.10%である。Mo含有量の好ましい上限は0.60%であり、さらに好ましくは0.40%である。
Ni:0〜0.50%
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ni含有量は0%であってもよい。含有される場合、Niは、鋼の焼入れ性を高めて浸炭部品の強度を高める。Niが少しでも含有されれば、これらの効果が得られる。しかしながら、Ni含有量が0.50%を超えれば、残留オーステナイト量が増大して加工性が低下する。したがって、Ni含有量は0〜0.50%である。上記効果を安定して得るためのNi含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Ni含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
Cu:0〜0.50%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。含有される場合、Cuは鋼の焼入れ性を高めて浸炭部品の強度を高める。Cuが少しでも含有されればこの効果が得られる。一方、Cu含有量が0.50%を超えれば、熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜0.50%である。上記効果を安定して得るためのCu含有量の好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Cu含有量の好ましい上限は0.35%であり、さらに好ましくは0.25%である。
本実施形態の浸炭部品の芯部はさらに、Feの一部に代えて、Ti及びNbからなる群から選択される1種又は2種を含有してもよい。これらの元素は任意元素であり、いずれも、結晶粒の粗大化を抑制する。
Ti:0〜0.10%
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは鋼中のC及びSと結合して微細なTiC及びTiSを形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。これにより、浸炭部品の耐水素脆化特性が高まる。Tiが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Ti含有量が0.10%を超えれば、TiCが粗大化して鋼の靱性が低下する。この場合、浸炭部品の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Ti含有量は0〜0.10%である。上記効果を安定して得るためのTi含有量の好ましい下限は0.05%である。Ti含有量の好ましい上限は0.08%であり、さらに好ましくは0.07%である。
Nb:0〜0.10%
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Nb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Nbは鋼中のC及びNと結合してNb炭窒化物(Nb(CN))を形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。これにより、浸炭部品の耐水素脆化特性が高まる。Nbが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Nb含有量が0.10%を超えれば、浸炭性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.10%である。上記効果を安定して得るためのNb含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Nb含有量の好ましい上限は0.07%であり、さらに好ましくは0.05%である。
[浸炭部品の軸部の表面のC濃度:0.50〜0.70%]
浸炭部品の軸部の表面のC濃度(以下、表面C濃度)は、質量%で0.50〜0.70%である。表面C濃度が0.50%未満であれば、浸炭部品の表面硬さが低すぎ、耐摩耗性が低下する。一方、表面C濃度が0.70%を超えれば、浸炭層の靱性が低くなるため、耐水素脆化特性が低下する。そのため、表面C濃度は0.50〜0.70%である。表面C濃度の好ましい下限は0.54%であり、さらに好ましくは0.56%である。表面C濃度の好ましい上限は0.66%であり、さらに好ましくは0.64%である。
浸炭部品の表面C濃度は次の方法で測定される。浸炭部品の表面のうち、任意の5箇所の測定位置を選定する。選定された測定位置のC濃度(質量%)を、EPMA(電子線マイクロアナライザ)により分析する。EPMAにより得られた5箇所のC濃度の平均を、浸炭部品の表面C濃度(質量%)と定義する。
[式(1)及び式(2)について]
上述のとおり、浸炭部品の軸部の応力集中部において、ノッチの最大外径をD(mm)、ノッチのノッチ底の曲率半径をr(mm)と定義した場合、本実施形態の浸炭部品は、式(1)及び式(2)を満たす。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
なお、応力集中部において、複数のノッチが軸方向に並んで配置されている場合、各ノッチの最大外径の平均値をD(mm)と定義し、各ノッチのノッチ底の曲率半径の平均値をr(mm)と定義する。
式(1)おいて、fn1(ノッチ底の曲率半径rとノッチの最大外径Dとの積)が小さすぎれば、軸部の応力集中部の表面に応力(引張応力)が集中しやすくなり、割れが発生しやすくなる。そのため、耐水素脆化特性が低下する。一方、耐水素脆化特性との関係において、fn1の上限は存在しないが、浸炭部品の形状として、fn1の上限は60.0未満である。したがって、fn1は1.0超〜60.0未満である。fn1の好ましい下限は1.5であり、さらに好ましくは4.0であり、さらに好ましくは8.0である。fn1の好ましい上限は55.0であり、さらに好ましくは50.0であり、さらに好ましくは45.0である。
式(2)において、fn2=r/Dと定義する。fn2が小さすぎる場合、負荷が掛かったときにノッチ底に応力(引張応力)が集中しやすくなる。この場合、耐水素脆化特性が低下する。したがって、fn2は0.010超である。fn2の好ましい下限は0.015であり、さらに好ましくは0.018である。fn2の上限は特に限定されないが、たとえば0.200である。
[式(3)及び式(4)について]
上記の応力集中部において、表面から深さ0.15mm位置でのビッカース硬さHV0.15と、表面から深さ0.40mm位置でのビッカース硬さHV0.40とは、式(3)及び式(4)を満たす。
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
ビッカース硬さHV0.15は、硬化層での硬さの指標であり、ビッカース硬さHV0.40は、芯部での硬さの指標である。式(3)を参照して、ビッカース硬さHV0.15に代表される硬化層の硬さが低すぎれば、浸炭部品の耐摩耗性が低下する。一方、硬化層の硬さが高すぎれば、特にノッチ底において割れが発生しやすくなり、耐水素脆化特性が低下する。HV0.15が式(3)を満たせば、上記化学組成において、式(1)、式(2)、式(4)及び式(5)を満たすことを前提として、優れた耐摩耗性及び耐水素脆化特性が得られる。
fn3=HV0.15−fn1と定義する。fn3の好ましい下限は600であり、さらに好ましくは620である。fn3の好ましい上限は710であり、さらに好ましくは690である。
式(4)を参照して、ビッカース硬さHV0.40に代表される芯部の硬さが低すぎれば、曲げ荷重が負荷された際に塑性変形し、表面における応力が増大し、機械部品としての曲げ疲労強度が低くなる。一方、芯部の硬さが高すぎれば、特にノッチ底において割れが発生しやすくなり、耐水素脆化特性が低下する。HV0.40が式(4)を満たせば、上記化学組成において、式(1)、式(2)、式(3)及び式(5)を満たすことを前提として、優れた疲労強度及び耐水素脆化特性が得られる。
fn4=HV0.40−fn1と定義する。fn4の好ましい下限は450であり、さらに好ましくは470である。fn3の好ましい上限は610であり、さらに好ましくは590である。
[式(5)について]
図2に示すとおり、浸炭部品の表面からの深さ方向において、圧縮残留応力が掛かる領域(A2及びA3)を狭くすることにより、表面に掛かる圧縮残留応力を大きくすることができる。圧縮残留応力の掛かる領域(A2及びA3)を狭くするには、表層の硬さと芯部の硬さとの硬さ差を大きくすればよく、表層と芯部との間の硬さ勾配を急峻にすればよい。
fn5=(HV0.40−HV0.15)/0.25と定義する。fn5は、表面から0.15mm深さ位置と表面から0.40mm深さ位置との間の硬さ勾配を意味する。fn5が−900以下の場合、表層の硬さと芯部の硬さとの硬さ勾配が大きすぎる。この場合、芯部の硬さが低くなりすぎ、部品として曲げ疲労強度が低くなる。一方、fn5が−280以上の場合、表層の硬さと芯部の硬さとの硬さ勾配が小さすぎるため、表面において十分な圧縮残留応力が得られない。この場合、浸炭部品の耐水素脆化特性が低下する。
fn5が−900超〜−280未満であれば、つまり、fn5が式(5)を満たせば、上記化学組成において、式(1)〜式(4)を満たすことを前提として、優れた疲労強度及び耐水素脆化特性が得られる。fn5の好ましい下限は−850であり、さらに好ましくは−800である。fn5の好ましい上限は−330であり、さらに好ましくは−380である。
[ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40の測定方法]
ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40は次の方法で測定できる。浸炭部品の軸部において、表面から0.15mm深さ位置での任意の5点、表面から0.40mm深さ位置での任意の5点で、JIS Z 2244(2009)に準拠したビッカース硬さ試験を実施する。試験力は0.98Nとする。任意の5箇所で得られた値の平均を、それぞれ、ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40と定義する。
[製造工程]
本実施形態による浸炭部品の製造方法の一例を説明する。
上述の化学組成を満たす鋼材を準備する。鋼材はたとえば、次の方法で製造され、準備される。上記化学組成の溶鋼を製造し、溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片(スラブ又はブルーム)を製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴット(鋼塊)を製造してもよい。鋳片又はインゴットを熱間加工して、ビレット(鋼片)を製造する。ビレットを熱間加工して、棒鋼又は線材を製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造でもよい。
製造された鋼材に対して、鍛造を実施する。鍛造方法は熱間でも冷間でもよい。熱間鍛造の場合、熱間鍛造時における鋼材の加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1000〜1300℃である。鍛造後の鋼材に対して必要に応じて切削加工に代表される機械加工を実施して、摺動部及び軸部を備える中間品を製造する。
製造された中間品に対して、浸炭焼入れ処理を実施し、さらに、浸炭焼入れ処理後の中間品に対して焼戻しを実施する。焼入れ後の中間品に対してさらに機械加工(切削加工等)を実施してもよい。以上の製造工程により、浸炭部品が製造される。
浸炭焼入れ処理の条件の一例は次のとおりである。
[浸炭焼入れ処理]
浸炭焼入れ処理は、ガス浸炭工程と、焼入れ(急冷)工程とを含む。本実施形態の浸炭部品で実施される浸炭処理は、ガス浸炭処理である。以下、ガス浸炭工程、焼入れ工程について説明する。
[ガス浸炭工程S10]
図4は、ガス浸炭工程S10及び焼入れ工程S20でのヒートパターンの一例を示す図である。図4の縦軸は浸炭処理時における処理温度(℃)であり、横軸は時間である。図4を参照して、ガス浸炭工程S10は、加熱工程S0と、浸炭工程S1と、拡散工程S2と、均熱工程S3とを含む。
加熱工程S0では、炉内に装入された中間品を浸炭温度Tcまで加熱する。浸炭工程S1では、所定のカーボンポテンシャルCp1の雰囲気中において、浸炭温度Tcで中間品を所定時間(処理時間t1)保持して、浸炭処理を実施する。拡散工程S2では、浸炭工程S1でのカーボンポテンシャルCp1よりも低く、かつ、浸炭部品の表面C濃度と同程度のカーボンポテンシャルCp2の雰囲気中において、浸炭温度Tcで所定時間(処理時間t2)保持する。均熱工程S3は、中間品全体を所定の焼入れ温度に均熱化することを目的とした工程である。均熱工程S3では、浸炭温度Tcよりも低い均熱温度Tsで所定時間(保持時間t3)均熱する。ただし、均熱工程S3は省略してもよい。
浸炭工程S1において用いられる浸炭ガスの種類は、ガス浸炭処理に用いられている公知のものを用いることができる。浸炭ガスはたとえば、アセチレン、プロパン、エチレン等の炭化水素ガスである。
好ましい浸炭温度Tcは、900〜1100℃であり、さらに好ましくは920〜1050℃である。浸炭温度Tcが900℃以上であれば、短時間で所定の炭素濃度の浸炭部品が得られる。浸炭温度Tcが1100℃以下であれば、結晶粒が粗大化しにくい。
浸炭工程S1における処理時間t1及び拡散工程S2における処理時間t2は、合計(t1+t2)で、110分以下である。ただし、カーボンポテンシャルCp1及びCp2が後述の好ましい範囲であることを条件とする。浸炭時間が長すぎれば、芯部にまで焼きが入り、芯部の硬さが高まる。この場合、表層部と芯部と間の硬さ勾配fn5が小さくなる。その結果、浸炭部品の耐水素脆化特性が低下する。
カーボンポテンシャルCp1及びCp2が後述の好ましい範囲であることを条件として、浸炭工程S1における処理時間t1の下限は45分である。処理時間t1が短すぎれば、ビッカース硬さHV0.40に代表される芯部の硬さが低下する。浸炭工程S1における処理時間t1のさらに好ましい下限は50分である。処理時間t1の好ましい上限は80分であり、さらに好ましくは70分である。
カーボンポテンシャルCp1及びCp2が後述の好ましい範囲であることを条件として、拡散工程S2における処理時間t2の好ましい下限は25分超である。処理時間t2が短すぎれば、拡散時間が十分で無いため、炭素の拡散が表面寄りになる。つまり、表面と芯部とでの炭素濃度の勾配が大きくなる。その結果、HV0.15に代表される表面の硬さは高まり、HV0.40は低くなる。拡散工程S2における処理時間t2の下限は、さらに好ましくは30分である。処理時間t2の好ましい上限は50分であり、さらに好ましくは45分である。
処理時間t1及びt2の合計の好ましい上限は110分であり、さらに好ましくは100分である。
浸炭工程S1でのカーボンポテンシャルCp1は、0.80〜1.10であるのが好ましい。拡散工程S2でのカーボンポテンシャルCp2:0.55〜0.80であるのが好ましい。カーボンポテンシャルCp1及びCp2が高すぎれば、芯部にまで焼きが入り、芯部の硬さが高まる。この場合、表層部の硬さと芯部の硬さとの硬さ勾配が小さくなる。その結果、耐水素脆化特性が低下する。カーボンポテンシャルCp1の好ましい下限は0.85であり、さらに好ましくは0.90である。カーボンポテンシャルCp1の好ましい上限は1.05であり、さらに好ましくは1.00である。カーボンポテンシャルCp2の好ましい下限は0.60であり、さらに好ましくは0.65である。カーボンポテンシャルCp2の好ましい上限は0.75であり、さらに好ましくは0.70である。
均熱工程S3は実施してもしなくてもよい。均熱工程S3を実施する場合、好ましい均熱温度Tsの上限は浸炭温度Tc−10℃であり、さらに好ましくはTc−50℃である。好ましい均熱温度Tsの下限はTc−100℃であり、さらに好ましくはTc−70℃である。
[焼入れ工程(S20)]
ガス浸炭工程S10後の中間品に対して、焼入れ工程S20を実施する。焼入れ工程S20では、ガス浸炭工程後の中間品を急冷して焼入れする。本実施形態では、たとえば、図4に示すとおり、ガス浸炭工程S10中の均熱工程S3において、均熱温度Tsを焼入れ温度として、所定の時間t3均熱した後、急冷を実施してもよい。また、図5に示すとおり、ガス浸炭工程S10後の中間品を常温まで冷却し、その後、焼入れ工程S20を実施してもよい。この場合、焼入れ工程S20では、初めに、中間品を焼入れ温度まで加熱して、所定時間保持した後、急冷する。なお、図5において、ガス浸炭工程S10中の均熱工程S3は省略してもよい。
焼入れ工程S20における好ましい焼入れ温度は、800〜900℃である。焼入れ温度のさらに好ましい下限は820℃である。焼入れ温度の好ましい上限は880℃である。
焼入れ処理における冷却方法は、油冷である。具体的には、冷却媒体である油を収納した冷却浴に、焼入れ温度に保持された中間品を浸漬して急冷する。冷却媒体である油の温度(油温)は、120〜140℃である。油温が120℃未満であれば、芯部まで焼きが入ってしまい、芯部硬さが高くなりすぎる。この場合、表層と芯部との間の硬さ勾配が小さくなり、fn5が式(5)を満たさなくなる。その結果、耐水素脆化特性が低下する。また、油温が140℃を超えると、表層の硬さHV0.15が低くなりすぎ、耐摩耗性が低下する。したがって、焼入れ時の油温は120〜140℃である。なお、油冷時においては、浴内の油を周知の方法で十分に攪拌する。なお、冷却媒体である油の特性温度は特に限定されないが、たとえば500〜650℃である。
以上の工程により、本実施形態による浸炭部品が製造される。なお、焼入れ処理後に周知の方法で焼戻し処理を実施してもよい。
表1及び表2に示す化学組成を有する溶鋼を製造した。製造された溶鋼を用いて、インゴッ卜を製造した。インゴッ卜を熱間鍛造して、直径50mmの丸棒を製造した。製造された丸棒を用いて、次の評価試験を実施した。
Figure 2019183211
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[試験片の作製]
初めに、各棒鋼に対して、焼準処理を実施した。焼準処理での処理温度は925℃であり、保持時間は1時間であった。保持時間経過後の棒鋼を大気中で放冷した。焼準処理後の棒鋼から、3種類の試験片を作製した。
[耐水素脆化特性評価試験片]
焼準処理後の直径50mmの棒鋼に対して機械加工を実施して、図6に示す耐水素脆化特性評価試験片を、各試験番号の棒鋼につき複数作製した。図6中の1.00mmは、試験片のVノッチの深さが1.00mmであることを示す。図6中の「D」は、Vノッチの最大外径(軸の外径)(mm)を示す。図中の「60°」は、Vノッチ角度が60°であることを示す。図中の「r」は、Vノッチ底の曲率半径(mm)を意味する。
各試験番号の最大外径D及び曲率半径rの寸法は、次のとおりであった。試験番号35では最大外径D:20mm、曲率半径r:0.9mmとした。試験番号36では最大外径D:5mm、曲率半径r:0.072mmとした。試験番号37では最大外径D:20mm、曲率半径r:1.1mmとした。試験番号38では最大外径D:4mm、曲率半径r:0.072mmとした。試験番号39では最大外径D:20mm、曲率半径r:0.3mmとした。試験番号40では最大外径D:20mm、曲率半径r:0.15mmとした。上記以外の試験番号は全て、最大外径D:20mm、曲率半径r:0.36mmとした。
[ローラーピッチング試験片]
焼準処理後の直径50mmの棒鋼に対して機械加工を実施して、図7に示す形状を有するローラーピッチング試験片を作製した。図7中の数値は寸法を示す。ローラーピッチング試験片は円柱状であり、中央に直径26mmの平行部を有していた。ローラーピッチング試験片の平行部以外の直径は22mmであった。ローラーピッチング試験片は、後述するローラーピッチング試験における小ローラーであった。
[4点曲げ疲労試験片の作製]
焼準処理後の直径50mmの棒鋼に対して機械加工を実施して、図8に示す形状の4点曲げ疲労試験片を複数個採取した。4点曲げ疲労試験片は、高さ及び幅が共に13mmであり、長さが100mmであった。4点曲げ疲労試験片の長さ方向中央位置には、断面形状が半円であるノッチを形成した。半円のノッチは、4点曲げ疲労試験片の幅方向に延びていた。半円のノッチの曲率半径rは2mmであった。
耐水素脆化特性評価試験片、ローラーピッチング試験片及び4点曲げ疲労試験片に対して、浸炭処理及び焼入れ処理を実施して、試験番号1〜試験番号59の浸炭部品を製造した。なお、試験番号35〜試験番号40のローラーピッチング試験及び4点曲げ疲労試験については、試験番号7と同じ評価となると予想し、省略した。
具体的には、各試験番号の耐水素脆化特性評価試験片、ローラーピッチング試験片及び4点曲げ疲労試験片に対して、炉内で試験片を930℃の浸炭温度Tcまで加熱した。炉内にアセチレンガスを導入し、試験片を浸炭処理する浸炭工程S1を実施した。浸炭工程S1でのカーボンポテンシャルCp1及び処理時間t1は表3及び表4に示すとおりであった。
Figure 2019183211
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次に、試験片に侵入した炭素を鋼材中に拡散させる拡散工程S2を行った。拡散工程S2でのカーボンポテンシャルCp2及び処理時間t2は表3及び表4に示すとおりであった。
浸炭工程S1での処理時間t1及び拡散工程S2での処理時間t2の合計時間(t1+t2)は、表3及び表4に示すとおりであった。
その後、試験片を冷却し、焼入れ温度である870℃で冷却を停止した。焼入れ温度(870℃)で10分間均熱した後、油焼入れを実施した。
油焼入れ時の油温は、表3及び表4に示すとおりであった。なお、油の特性温度はいずれの試験番号においても、600℃であった。
油焼入れ後の各試験片に対して、焼戻し温度180℃、焼戻し温度での保持時間120分とする焼戻しを実施した。
以上の製造工程により、試験番号1〜59の浸炭部品(耐水素脆化特性評価試験片、ローラーピッチング試験片及び4点曲げ疲労試験片)を作製した。なお、浸炭部品において、表面から2.0mm深さよりも深い位置からサンプルを採取して、JIS G 0321(2010)に準拠した製品分析を実施した結果、いずれの試験番号においても、表1に示す化学組成であった。
[評価試験]
製造された各試験番号の浸炭部品に対して、次の評価試験を実施した。
[表面C濃度測定]
試験前の耐水素脆化特性評価試験片に対して、上述の方法により表面C濃度(%)を測定した。結果を表3及び表4に示す。
[表層及び芯部の硬さ測定]
試験前の耐水素脆化特性評価試験片を長さ方向に直交する方向に切断した。切断面を測定面として、JIS Z 2244(2009)に準拠したビッカース硬さ試験を実施して、上述の方法に基づいて、ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40を測定した。なお、ビッカース硬さ試験における試験力を0.98Nとした。得られたビッカース硬さHV0.15及びHV0.40を表5及び表6に示す。また、ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40から得られるfn5を表5及び表6に示す。
Figure 2019183211
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[耐水素脆化特性評価試験]
連続チャージ定荷重(定電位)試験法を用いて、試験番号ごとに、試験片に対して種々の濃度の水素を導入した。連続チャージ定荷重試験法は次のとおり実施した。3%塩化ナトリウム水溶液中に試験片を浸漬した。試験片を浸漬した状態で、試験片の表面に、電位1000mAで陰極電位を発生させて水素を試験片内に取り込んだ。
試験片内に水素を導入した後、試験片表面に亜鉛めっき被膜を形成し、試験片中の水素の散逸を防止した。続いて、試験片のVノッチ断面に対して一定加重を負荷する定荷重試験を実施した。200時間経過しても破断しなかった最大の負荷応力(MPa)を求めた。
さらに、JIS G 4053(2016)に規定のSCr420に相当する化学組成を有する鋼を耐水素脆化特性評価試験の基準品として準備した。SCr420は一般的に使用されている浸炭用鋼である。基準品に対して、試験番号1と同様に試験片を作製した。作製した試験片に対して、通常の浸炭条件で浸炭処理を実施した。具体的には、次のとおりの浸炭処理条件とした。
浸炭工程S1での浸炭温度Tc:930℃
浸炭工程S1での処理時間t1:180分
浸炭工程S1でのカーボンポテンシャルCp1:0.8
均熱工程S3での均熱温度:870℃
均熱工程S3での保持時間t3:30分
均熱工程S3でのカーボンポテンシャルCp3:0.8
なお、焼入れ及び焼戻しの条件は、試験番号1と同じであった。
基準品の軸部の表面のC濃度は0.8%であった。基準品のHV0.15は750、HV0.40は700であった。基準品において、200時間経過しても破断しなかった最大の負荷応力(MPa)(基準耐久応力)を求めた。
各試験番号の試験結果において、基準耐久応力に対する最大の負荷応力(MPa)の比が1.6以上であった場合、評価「A」とした。基準耐久応力に対する最大の負荷応力(MPa)の比が1.4〜1.6未満であった場合、評価「B」とした。基準耐久応力に対する最大の負荷応力(MPa)の比が1.2〜1.4未満であった場合、評価「C」とした。基準耐久応力に対する最大の負荷応力(MPa)の比が、1.2未満であった場合、評価「×」とした。評価A〜Cの場合、耐水素脆化特性に優れると判断した。評価×の場合、耐水素脆化特性が低いと判断した。
[耐摩耗性評価試験(ローラーピッチング試験)]
耐摩耗性を評価するため、ローラーピッチング試験を実施した。図9は、ローラーピッチング試験の模式図である。具体的には、コマツエンジニアリング社製ローラーピッチング疲労強度試験機を用いて、以下の条件で試験を実施した。
すべり率:−40%
潤滑剤:オートマチック用オイル
潤滑剤温度:90℃
潤滑剤の流量:2L/分
回転数:1500rpm
面圧:2000MPa
図9に示すとおり、小ローラー200に大ローラー100を上記面圧で押し当てながら小ローラー200を回転させた。小ローラー200は上記試験片の作製で作製したローラーピッチング試験片であった。大ローラー100はJIS G 4053(2016)に規定のSCM420に相当する化学組成を有する鋼を用いて、共析浸炭後に低温焼戻しして表面研磨したものを使用した。大ローラー100の半径は130mmであった。回転数1×10回における各試験片の摩耗深さDwを測定した。摩耗深さDwの測定には、触針式の表面粗さ計を用いた。測定長さは24mmとして、各試験片の軸方向に触針を走査して断面曲線を得た。各試験片において、円周方向に180°毎に2箇所測定を実施し、断面曲線を得た。得られた断面曲線から、各試験片において、大ローラー100が接触していない部分における断面曲線要素の平均高さ、及び、大ローラー100が接触して摩耗した部分における断面曲線要素の平均高さをそれぞれ算出した。そして、大ローラー100が接触していない部分と大ローラー100が接触していた部分との高さの差を算出した。得られた高さの差の上記測定箇所における平均値を、各試験番号の摩耗深さDw(μm)とした。
摩耗深さDwが20μm未満であった試験片を評価「A」とし、20〜40μm未満であった試験片を評価「B」、40〜60μm未満であった試験片を評価「C」、60〜80μm未満であった試験片を評価「D」、80μm以上であった試験片を評価「×」とした。評価A〜Dの場合、耐摩耗性に優れると判断した。評価×の場合、耐摩耗性が低いと判断した。
[曲げ疲労強度評価試験(4点曲げ疲労試験)]
各試験番号の4点曲げ疲労試験片を用いて、4点曲げ疲労試験を実施した。試験にはサーボ型疲労試験機を用いた。4点曲げ疲労試験片は、ノッチを有する面が下面となるように設置した。4点曲げ疲労試験片上の、上部支点間の距離は45mm、下部支点間の距離は80mmとした。最大負荷応力は1150MPaであり、最大負荷応力と最小負荷応力との応力比は0.1であった。周波数は10Hzであった。応力負荷繰り返し回数が1×10回での破断強度を、4点曲げ疲労強度(MPa)と定義した。
4点曲げ疲労強度が850MPa以上であった試験片を評価「A」とし、750〜850MPa未満であった試験片を評価「B」、650〜750MPa未満であった試験片を評価「C」、650MPa未満であった試験片を評価「×」とした。評価A〜Cの場合、曲げ疲労強度に優れると判断した。評価×の場合、曲げ疲労強度が低いと判断した。
[評価結果]
表5及び表6に評価結果を示す。
表1〜表6を参照して、試験番号1〜4、6〜9、12、13、16、17、19、20、22、23、25、26、28、29、31、32、35、36、39、41、42、45、46、49、50及び53〜57では、いずれの試験番号においても、本実施形態で規定する化学組成を有した。さらに、表面C濃度が0.50〜0.70%であった。式(1)〜式(5)を満たした。その結果、優れた耐水素成果特性を示し、かつ、十分な耐摩耗性及び曲げ疲労強度を有した。
一方、試験番号5では、C含有量が高すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号10では、Si含有量が高すぎた。そのため、耐摩耗性が低かった。浸炭が阻害され、表面C濃度が低下したためと考えられる。
試験番号11では、Si含有量が低すぎた。そのため、耐摩耗性が低かった。
試験番号14では、Mn含有量が高すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号15では、Mn含有量が低すぎた。そのため、耐摩耗性が低かった。
試験番号18では、P含有量が高すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号21では、S含有量が高すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号24では、Al含有量が低すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号27では、N含有量が低すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号30では、Cr含有量が低すぎた。そのため、耐摩耗性が低かった。
試験番号33では、表面C濃度が高すぎた。そのため、HV0.15が高すぎた。その結果、耐水素脆化特性が低かった。Cp2が高かったためと考えられる。
試験番号34では、表面C濃度が低すぎた。そのため、耐摩耗性が低かった。Cp2が低かったためと考えられる。
試験番号37では、fn1が高すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号38では、fn1が低すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号40では、fn2が低すぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号43では、HV0.15が高すぎた。その結果、耐水素脆化特性が低かった。油焼入れ時の油温が120℃未満であったため、浸炭部品の硬さが全体的に高めになり、かつ、処理時間t1が長めであったため、表面C濃度が高めになったためと考えられる。
試験番号44では、HV0.15が低すぎた。そのため、耐摩耗性が低かった。油温が140℃を超えたためと考えられる。
試験番号47では、HV0.40が高すぎた。その結果、耐水素脆化特性が低かった。浸炭工程S1における処理時間t1及び拡散工程S2における処理時間t2の合計(t1+t2)が長すぎたためと考えられる。
試験番号48では、HV0.40が低すぎた。そのため、曲げ疲労強度が低かった。浸炭工程S1における処理時間t1が短すぎたためと考えられる。
試験番号51及び58では、油温が120℃未満であった。そのため、硬さ勾配fn5が小さすぎた。そのため、耐水素脆化特性が低かった。
試験番号52では、硬さ勾配fn5が大きすぎた。そのため、曲げ疲労強度が低かった。拡散工程S2における処理時間t2が短すぎたためと考えられる。
試験番号59では、HV0.15及びHV0.40が低すぎた。そのため、耐摩耗性が低かった。浸炭工程S1における処理時間t1及び拡散工程S2における処理時間t2の合計(t1+t2)が長すぎたためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1 浸炭部品
2 摺動部
3 軸部
4 応力集中部
5 ノッチ
100 大ローラー
200 小ローラー

Claims (3)

  1. 他の部材と接触する摺動面を有する摺動部と、
    前記摺動部と繋がっている軸部とを備え、
    前記軸部は、前記軸部の周方向に延びる1又は複数のノッチを含む応力集中部を備え、
    前記軸部のうち、硬化層を除く芯部の化学組成が、質量%で、
    C:0.10〜0.30%、
    Si:0.50〜1.50%、
    Mn:0.30〜1.40%、
    P:0.030%未満、
    S:0.030%未満、
    Cr:0.50〜2.00%、
    Al:0.010〜0.100%、
    N:0.001〜0.030%、
    Mo:0〜0.80%、
    Ni:0〜0.50%、
    Cu:0〜0.50%、
    Ti:0〜0.10%、及び、
    Nb:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    前記軸部の表面のC濃度が0.50〜0.70%であり、
    前記軸部において、前記ノッチの最大外径をD(mm)、前記ノッチのノッチ底の曲率半径をr(mm)、表面から0.15mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.15、表面から0.40mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.40と定義したとき、式(1)〜式(5)を満たす、
    浸炭部品。
    1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
    0.010<r/D (2)
    580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
    430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
    −900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280 (5)
  2. 請求項1に記載の浸炭部品であって、
    前記化学組成は、
    Mo:0.01〜0.80%、
    Ni:0.05〜0.50%、及び、
    Cu:0.10〜0.50%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、浸炭部品。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の浸炭部品であって、
    前記化学組成は、
    Ti:0.05〜0.10%、及び、
    Nb:0.01〜0.10%からなる群から選択される1種又は2種を含有することを特徴とする、浸炭部品。
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