JP2019183211A - 浸炭部品 - Google Patents
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Abstract
Description
軸部のうち、硬化層を除く芯部の化学組成は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.30〜1.40%、P:0.030%未満、S:0.030%未満、Cr:0.50〜2.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.001〜0.030%、Mo:0〜0.80%、Ni:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ti:0〜0.10%、及び、Nb:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。
軸部の表面のC濃度は0.50〜0.70%である。
軸部において、ノッチの最大外径をD(mm)、ノッチのノッチ底の曲率半径をr(mm)、表面から0.15mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.15、表面から0.40mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.40と定義したとき、式(1)〜式(5)を満たす。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
−900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280 (5)
初めに、本実施形態の対象となる、浸炭部品について説明する。図1は、本実施形態による浸炭部品1の一例を示す側面図である。浸炭部品1は、後述の化学組成を有する鋼材を浸炭処理して製造される。本実施形態の浸炭部品1は、摺動部2と、軸部3とを備える。
通常、機械部品の強度を高めるためには、焼入れ性を高め、芯部の硬さを高めることが有効である。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
−900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280 (5)
軸部のうち、硬化層を除く芯部の化学組成は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.30〜1.40%、P:0.030%未満、S:0.030%未満、Cr:0.50〜2.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.001〜0.030%、Mo:0〜0.80%、Ni:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ti:0〜0.10%、及び、Nb:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。
軸部の表面のC濃度は0.50〜0.70%である。
軸部において、ノッチの最大外径をD(mm)、ノッチのノッチ底の曲率半径をr(mm)、表面から0.15mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.15、表面から0.40mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.40と定義したとき、式(1)〜式(5)を満たす。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
−900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280 (5)
本実施形態による浸炭部品1は、図1に示すとおり、摺動部2と、軸部3とを備える。浸炭部品の軸部3のうち、硬化層を除く芯部の化学組成は、次の元素を含有する。ここで、芯部の化学組成とは、浸炭部品の軸部において、表面から2.0mm深さ位置よりも深い位置での採取されたサンプルにおいて、JIS G 0321(2010)に準拠した製品分析により得られる化学組成を意味する。以下、元素の含有量に関する「%」は、質量%を意味する。
炭素(C)は、鋼の焼入れ性を高める。これにより、浸炭部品の硬さが高まり、耐摩耗性が高まる。C含有量が0.10%未満であれば、この効果が得られない。一方、C含有量が0.30%を超えれば、鋼の被削性及び冷間鍛造性が低下する可能性がある。したがって、C含有量は0.10〜0.30%である。C含有量の好ましい下限は0.15%であり、さらに好ましくは0.18%である。C含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.23%である。
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。Siはさらに、鋼の焼戻し軟化抵抗を高める。これにより、浸炭部品の耐摩耗性が高まる。しかしながら、Si含有量が0.50%未満であれば、上記効果は十分に得られず、浸炭部品の耐摩耗性が低下する。一方、Si含有量が1.50%を超えれば、鋼の浸炭を阻害する。この場合、浸炭部品の耐摩耗性が低下する。したがって、Si含有量は0.50〜1.50%である。Si含有量の好ましい下限は0.52%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.80%である。Si含有量の好ましい上限は1.30%であり、さらに好ましくは1.20%である。
マンガン(Mn)は鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼の焼入れ性及び強度を高める。Mnはさらに、鋼の軟化抵抗を高める。その結果、浸炭部品の耐摩耗性が高まる。Mn含有量が0.30%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が1.40%を超えれば、Pとの共偏析が顕著になり、粒界脆化が発生する。その結果、浸炭部品の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Mn含有量は0.30〜1.40%である。Mn含有量の好ましい下限は0.50%であり、さらに好ましくは0.70%である。Mn含有量の好ましい上限は1.20%であり、さらに好ましくは1.00%である。
リン(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。Pは浸炭時にオーステナイト粒界に偏析して、浸炭層の粒界強度を低下する。浸炭層の粒界強度が低下すれば、耐水素脆化特性が低下する。P含有量が0.030%未満であれば、芯部だけでなく表層のP含有量も低い。このため、表層の靱性が高まり、粒界き裂の発生が抑制される。その結果、耐水素脆化特性が高まる。したがって、P含有量は0.030%未満である。P含有量の好ましい上限は0.015%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、製鋼工程においてP含有量を極度に低減すれば製造コストが掛かり、生産性も低下する。したがって、好ましいP含有量の下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは結晶粒界に残存して浸炭層の粒界強度を低下する。Sはさらに、粒界に粗大なMnSを形成して残留応力の集中する点となる。その結果、浸炭部品の耐水素脆化特性が低下する。したがって、S含有量は0.030%未満である。S含有量の好ましい上限は0.015%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、製鋼工程においてS含有量を極度に低減すれば製造コストが掛かり、生産性も低下する。したがって、好ましいS含有量の下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性を高めて芯部の硬さを高める。Crはさらに、焼戻し軟化抵抗を高める。その結果、浸炭部品の耐摩耗性が高まる。Cr含有量が0.50%未満であれば、この効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が2.00%を超えれば、冷間加工性が低下する。したがって、Cr含有量は0.50〜2.00%である。Cr含有量の好ましい下限は0.60%であり、さらに好ましくは0.80%である。Cr含有量の好ましい上限は1.85%であり、さらに好ましくは1.70%である。
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Alはさらに、鋼中のNと結合してAlNを形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。その結果、浸炭部品の耐水素脆化特性が高まる。Al含有量が0.010%未満であればこの効果が得られない。一方、Al含有量が0.100%を超えれば、上記効果が飽和する。したがって、Al含有量は0.010〜0.100%である。Al含有量の好ましい下限は0.020%であり、さらに好ましくは0.025%である。Al含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.065%である。本実施形態の浸炭部品の芯部の化学組成において、Al含有量は、鋼材中に含有する全Al量を意味する。
窒素(N)は、鋼中でTi、Al、V及びNbと結合して窒化物や炭窒化物を形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。これにより、浸炭部品の耐水素脆化特性が高まる。N含有量が0.001%未満であれば、十分な粗大化抑制効果は得られない。一方、N含有量が0.030%を超えれば、上記効果が飽和する。したがって、N含有量は0.001〜0.030%である。N含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.008%である。N含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.020%である。
本実施形態の浸炭部品の軸部の芯部の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Mo、Ni及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素は任意元素であり、いずれも、鋼の焼入れ性を高める。
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mo含有量は0%であってもよい。含有される場合、Moは、浸炭部品の焼戻し軟化抵抗を高めて、浸炭部品の耐摩耗性を高める。Moが少しでも含有されれば、これらの効果が得られる。しかしながら、Mo含有量が0.80%を超えれば、これらの効果は飽和し、原料コストが高くなる。したがって、Mo含有量は0〜0.80%である。上記効果を安定して得るためのMo含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.10%である。Mo含有量の好ましい上限は0.60%であり、さらに好ましくは0.40%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ni含有量は0%であってもよい。含有される場合、Niは、鋼の焼入れ性を高めて浸炭部品の強度を高める。Niが少しでも含有されれば、これらの効果が得られる。しかしながら、Ni含有量が0.50%を超えれば、残留オーステナイト量が増大して加工性が低下する。したがって、Ni含有量は0〜0.50%である。上記効果を安定して得るためのNi含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Ni含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。含有される場合、Cuは鋼の焼入れ性を高めて浸炭部品の強度を高める。Cuが少しでも含有されればこの効果が得られる。一方、Cu含有量が0.50%を超えれば、熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜0.50%である。上記効果を安定して得るためのCu含有量の好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Cu含有量の好ましい上限は0.35%であり、さらに好ましくは0.25%である。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは鋼中のC及びSと結合して微細なTiC及びTiSを形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。これにより、浸炭部品の耐水素脆化特性が高まる。Tiが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Ti含有量が0.10%を超えれば、TiCが粗大化して鋼の靱性が低下する。この場合、浸炭部品の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Ti含有量は0〜0.10%である。上記効果を安定して得るためのTi含有量の好ましい下限は0.05%である。Ti含有量の好ましい上限は0.08%であり、さらに好ましくは0.07%である。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Nb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Nbは鋼中のC及びNと結合してNb炭窒化物(Nb(CN))を形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。これにより、浸炭部品の耐水素脆化特性が高まる。Nbが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、Nb含有量が0.10%を超えれば、浸炭性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.10%である。上記効果を安定して得るためのNb含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Nb含有量の好ましい上限は0.07%であり、さらに好ましくは0.05%である。
浸炭部品の軸部の表面のC濃度(以下、表面C濃度)は、質量%で0.50〜0.70%である。表面C濃度が0.50%未満であれば、浸炭部品の表面硬さが低すぎ、耐摩耗性が低下する。一方、表面C濃度が0.70%を超えれば、浸炭層の靱性が低くなるため、耐水素脆化特性が低下する。そのため、表面C濃度は0.50〜0.70%である。表面C濃度の好ましい下限は0.54%であり、さらに好ましくは0.56%である。表面C濃度の好ましい上限は0.66%であり、さらに好ましくは0.64%である。
上述のとおり、浸炭部品の軸部の応力集中部において、ノッチの最大外径をD(mm)、ノッチのノッチ底の曲率半径をr(mm)と定義した場合、本実施形態の浸炭部品は、式(1)及び式(2)を満たす。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
なお、応力集中部において、複数のノッチが軸方向に並んで配置されている場合、各ノッチの最大外径の平均値をD(mm)と定義し、各ノッチのノッチ底の曲率半径の平均値をr(mm)と定義する。
上記の応力集中部において、表面から深さ0.15mm位置でのビッカース硬さHV0.15と、表面から深さ0.40mm位置でのビッカース硬さHV0.40とは、式(3)及び式(4)を満たす。
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
図2に示すとおり、浸炭部品の表面からの深さ方向において、圧縮残留応力が掛かる領域(A2及びA3)を狭くすることにより、表面に掛かる圧縮残留応力を大きくすることができる。圧縮残留応力の掛かる領域(A2及びA3)を狭くするには、表層の硬さと芯部の硬さとの硬さ差を大きくすればよく、表層と芯部との間の硬さ勾配を急峻にすればよい。
ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40は次の方法で測定できる。浸炭部品の軸部において、表面から0.15mm深さ位置での任意の5点、表面から0.40mm深さ位置での任意の5点で、JIS Z 2244(2009)に準拠したビッカース硬さ試験を実施する。試験力は0.98Nとする。任意の5箇所で得られた値の平均を、それぞれ、ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40と定義する。
本実施形態による浸炭部品の製造方法の一例を説明する。
浸炭焼入れ処理は、ガス浸炭工程と、焼入れ(急冷)工程とを含む。本実施形態の浸炭部品で実施される浸炭処理は、ガス浸炭処理である。以下、ガス浸炭工程、焼入れ工程について説明する。
図4は、ガス浸炭工程S10及び焼入れ工程S20でのヒートパターンの一例を示す図である。図4の縦軸は浸炭処理時における処理温度(℃)であり、横軸は時間である。図4を参照して、ガス浸炭工程S10は、加熱工程S0と、浸炭工程S1と、拡散工程S2と、均熱工程S3とを含む。
ガス浸炭工程S10後の中間品に対して、焼入れ工程S20を実施する。焼入れ工程S20では、ガス浸炭工程後の中間品を急冷して焼入れする。本実施形態では、たとえば、図4に示すとおり、ガス浸炭工程S10中の均熱工程S3において、均熱温度Tsを焼入れ温度として、所定の時間t3均熱した後、急冷を実施してもよい。また、図5に示すとおり、ガス浸炭工程S10後の中間品を常温まで冷却し、その後、焼入れ工程S20を実施してもよい。この場合、焼入れ工程S20では、初めに、中間品を焼入れ温度まで加熱して、所定時間保持した後、急冷する。なお、図5において、ガス浸炭工程S10中の均熱工程S3は省略してもよい。
初めに、各棒鋼に対して、焼準処理を実施した。焼準処理での処理温度は925℃であり、保持時間は1時間であった。保持時間経過後の棒鋼を大気中で放冷した。焼準処理後の棒鋼から、3種類の試験片を作製した。
焼準処理後の直径50mmの棒鋼に対して機械加工を実施して、図6に示す耐水素脆化特性評価試験片を、各試験番号の棒鋼につき複数作製した。図6中の1.00mmは、試験片のVノッチの深さが1.00mmであることを示す。図6中の「D」は、Vノッチの最大外径(軸の外径)(mm)を示す。図中の「60°」は、Vノッチ角度が60°であることを示す。図中の「r」は、Vノッチ底の曲率半径(mm)を意味する。
焼準処理後の直径50mmの棒鋼に対して機械加工を実施して、図7に示す形状を有するローラーピッチング試験片を作製した。図7中の数値は寸法を示す。ローラーピッチング試験片は円柱状であり、中央に直径26mmの平行部を有していた。ローラーピッチング試験片の平行部以外の直径は22mmであった。ローラーピッチング試験片は、後述するローラーピッチング試験における小ローラーであった。
焼準処理後の直径50mmの棒鋼に対して機械加工を実施して、図8に示す形状の4点曲げ疲労試験片を複数個採取した。4点曲げ疲労試験片は、高さ及び幅が共に13mmであり、長さが100mmであった。4点曲げ疲労試験片の長さ方向中央位置には、断面形状が半円であるノッチを形成した。半円のノッチは、4点曲げ疲労試験片の幅方向に延びていた。半円のノッチの曲率半径rは2mmであった。
製造された各試験番号の浸炭部品に対して、次の評価試験を実施した。
試験前の耐水素脆化特性評価試験片に対して、上述の方法により表面C濃度(%)を測定した。結果を表3及び表4に示す。
試験前の耐水素脆化特性評価試験片を長さ方向に直交する方向に切断した。切断面を測定面として、JIS Z 2244(2009)に準拠したビッカース硬さ試験を実施して、上述の方法に基づいて、ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40を測定した。なお、ビッカース硬さ試験における試験力を0.98Nとした。得られたビッカース硬さHV0.15及びHV0.40を表5及び表6に示す。また、ビッカース硬さHV0.15及びHV0.40から得られるfn5を表5及び表6に示す。
連続チャージ定荷重(定電位)試験法を用いて、試験番号ごとに、試験片に対して種々の濃度の水素を導入した。連続チャージ定荷重試験法は次のとおり実施した。3%塩化ナトリウム水溶液中に試験片を浸漬した。試験片を浸漬した状態で、試験片の表面に、電位1000mAで陰極電位を発生させて水素を試験片内に取り込んだ。
浸炭工程S1での浸炭温度Tc:930℃
浸炭工程S1での処理時間t1:180分
浸炭工程S1でのカーボンポテンシャルCp1:0.8
均熱工程S3での均熱温度:870℃
均熱工程S3での保持時間t3:30分
均熱工程S3でのカーボンポテンシャルCp3:0.8
なお、焼入れ及び焼戻しの条件は、試験番号1と同じであった。
耐摩耗性を評価するため、ローラーピッチング試験を実施した。図9は、ローラーピッチング試験の模式図である。具体的には、コマツエンジニアリング社製ローラーピッチング疲労強度試験機を用いて、以下の条件で試験を実施した。
すべり率:−40%
潤滑剤:オートマチック用オイル
潤滑剤温度:90℃
潤滑剤の流量:2L/分
回転数:1500rpm
面圧:2000MPa
各試験番号の4点曲げ疲労試験片を用いて、4点曲げ疲労試験を実施した。試験にはサーボ型疲労試験機を用いた。4点曲げ疲労試験片は、ノッチを有する面が下面となるように設置した。4点曲げ疲労試験片上の、上部支点間の距離は45mm、下部支点間の距離は80mmとした。最大負荷応力は1150MPaであり、最大負荷応力と最小負荷応力との応力比は0.1であった。周波数は10Hzであった。応力負荷繰り返し回数が1×104回での破断強度を、4点曲げ疲労強度(MPa)と定義した。
表5及び表6に評価結果を示す。
2 摺動部
3 軸部
4 応力集中部
5 ノッチ
100 大ローラー
200 小ローラー
Claims (3)
- 他の部材と接触する摺動面を有する摺動部と、
前記摺動部と繋がっている軸部とを備え、
前記軸部は、前記軸部の周方向に延びる1又は複数のノッチを含む応力集中部を備え、
前記軸部のうち、硬化層を除く芯部の化学組成が、質量%で、
C:0.10〜0.30%、
Si:0.50〜1.50%、
Mn:0.30〜1.40%、
P:0.030%未満、
S:0.030%未満、
Cr:0.50〜2.00%、
Al:0.010〜0.100%、
N:0.001〜0.030%、
Mo:0〜0.80%、
Ni:0〜0.50%、
Cu:0〜0.50%、
Ti:0〜0.10%、及び、
Nb:0〜0.10%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
前記軸部の表面のC濃度が0.50〜0.70%であり、
前記軸部において、前記ノッチの最大外径をD(mm)、前記ノッチのノッチ底の曲率半径をr(mm)、表面から0.15mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.15、表面から0.40mm深さ位置でのビッカース硬さをHV0.40と定義したとき、式(1)〜式(5)を満たす、
浸炭部品。
1.0<fn1=3×r×D<60.0 (1)
0.010<r/D (2)
580+fn1≦HV0.15≦730+fn1 (3)
430+fn1≦HV0.40≦630+fn1 (4)
−900<(HV0.40−HV0.15)/0.25<−280 (5) - 請求項1に記載の浸炭部品であって、
前記化学組成は、
Mo:0.01〜0.80%、
Ni:0.05〜0.50%、及び、
Cu:0.10〜0.50%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、浸炭部品。 - 請求項1又は請求項2に記載の浸炭部品であって、
前記化学組成は、
Ti:0.05〜0.10%、及び、
Nb:0.01〜0.10%からなる群から選択される1種又は2種を含有することを特徴とする、浸炭部品。
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