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JP2019172941A - 脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂及びその製造法 - Google Patents

脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂及びその製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は常温又は適度に高められた温度で十分な成形時間を確保でき、かつ定量的に反応が進行し、透明で優れた物理特性、耐光性、耐熱性等を持つ2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂及びその製造法を提供することである。【解決手段】脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートをジアゾール化合物及び/又はトリアゾール化合物(アゾール化合物)でブロックしたブロックドイソシアネート化合物と脂肪族系及び/又は脂環族系の第1級のポリアミン化合物からなり、常温から90℃で反応可能であることを特徴とする2液の硬化型ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物及び該前駆体組成物を硬化反応させたポリウレタンウレア樹脂及びその製造法。【選択図】なし

Description

本発明は脂肪族系ポリイソシアネート及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのアゾール系ブロックドイソシアネート化合物と脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミンを反応させて得られるポリウレタンウレア樹脂及びその製造法に関するものである。
脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂は優れた物理特性、耐光性、耐熱性等を示すことが知られているが、脂肪族系1級ポリアミンや脂環族系1級ポリアミンは芳香族系イソシアネートに比べて反応性の低い脂肪族系及び脂環族系ポリイソシアネートに対しても非常に高活性であり、常温(15〜25℃)でも秒単位でゲル化するため、脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミンを硬化剤とした脂肪族系及び/又は脂環族系の2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂は実用化されていなかった。
イソシアネートの反応性を低下させ、ポリオールやアミン化合物と共存できるようにした化合物としてブロックドイソシアネート化合物が古くから研究され実用化されている。イソシアネートをフェノール系化合物、メチルエチルケトキシム、マロン酸ジエチル、ε−カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾール等でブロックしたブロックドイソシアネート化合物と水酸基やアミノ基等の活性水素基含有化合物とからなる常温で安定であり、高温加熱により硬化させる1液システムである。溶液塗料、粉体塗料や水性塗料等の広範な塗料用途で使用されている(非特許文献1、非特許文献2)。ブロックドイソシアネート化合物と反応させる活性水素含有化合物としては保存安定性を重視し、専ら水酸基含有のポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等が用いられ、硬化は通常100〜170℃の高温で実施されている。
脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのブロックドイソシアネート化合物と脂肪族系ポリアミンや脂環族系ジアミンとからなる処方が特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示されている。
特許文献1は1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのピラゾールブロックドイソシアネート化合物と液状のポリアミン、例えばポリオキシアルキレンポリアミンからなる常温で安定な組成物に関するものである。該組成物は前記ジイソシアネートのピラゾールブロックドイソシアネート化合物が室温〜50℃でポリオキシアルキレンポリアミンに不溶性で反応しないことを利用した1液型組成物で、硬化反応は高温、例えば120℃/30分で行っている。
特許文献2の実施例1にポリエステルポリオール、イソホロンジイソシアネートおよび鎖伸長剤としてイソホロンジアミンを高希釈下で反応して得られる末端にアミノ基を含有する高分子量ポリウレタン樹脂とイミダゾールでブロックされたイソホロンジイソシアネート化合物からなる樹脂分が30%程度の印刷インキバインダーが開示されている。
当該特許の比較例でイミダゾールブロックドイソシアネート化合物の代わりにイソホロンジイソシアネートを使用すると良好な性能を示すが、常温での貯蔵安定性が悪くなることが示されている。イソホロンジイソシアネートのイミダゾールブロックドイソシアネート化合物は高分子量ポリウレタン樹脂の末端アミンとは常温で反応せず、1液化できるとしている。
特許文献3の実施例4にポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリブチレングリコール、ノニオン性及びアニオン性の親水性基含有活性水素化合物)とイソホロンジイソシアネートからなるイソシアネート末端プレポリマーとイソホロンジアミン及び1,2,4−トリアゾールを反応したブロックされたイソシアネート基含有の部分的に架橋したポリウレタン樹脂と4,4‘−ジアミノジシクロヘキシルメタンからなる固形分40%の後架橋性のポリウレタン水分散物が示されている。該分散物は常温で安定な1液性組成物であり、適用例5において硬化反応は160℃で行っている。
特許文献1、特許文献2及び特許文献3に脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのブロックドイソシアネート化合物と脂肪族系ポリアミン及び/又は脂環族系ポリアミンとからなる組成物が示されているが、何れも常温又は適度に高められた温度では安定な1液性の高温焼付組成物に関するものであり、脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのブロックドイソシアネート化合物と脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミンが常温又は適度に高められた温度、例えば90℃以下で反応が定量的に進行し、優れた物理特性を示す脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂を生成することは知られていなかった。
USP5210169 特許3084870 特許4916048
2015年版機能性ポリウレタン最新技術:(株)シーエムシー刊、17〜19(2015) ブロック型ポリウレタン樹脂塗料の最近の技術展開,熱硬化性樹脂,Vol.13,No.2,47〜60(1992)
本発明の目的は常温又は適度に高められた温度で十分な成形時間を確保でき、かつ定量的に反応が進行し、透明で優れた物理物性、耐光性、耐熱性等を持つ2液硬化型の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂及びその製造法を提供することである。
また、本発明のもう一つの目的はイソシアネートに起因する毒性を軽減した人体や環境に優しいハイソリッド型の2液硬化型の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂及びその製法を提供することである。
上記目的を達成するため、特に常温硬化に必要と思われる2分子求核置換反応着目し、ポリイソシアネート、ブロック剤、ポリアミンの各構造について種々検討し、特定の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのブロックドイソシアネート化合物が脂肪族系ポリアミン及び/又は脂環族系ポリアミンと常温から適度に高められた温度で定量的に進行し、かつ反応が穏やかで十分な成形時間を確保できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[3]に示されるものである。
[1]脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートをジアゾール系化合物及び/又はトリアゾール系化合物(アゾール系化合物)でブロックしたブロックドイソシアネート化合物(A成分)と脂肪族系及び/又は脂環族系1級のポリアミン化合物(B成分)からなり、常温から90℃で反応可能であることを特徴とする2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂及びその製造法。
[2]前記のA成分とB成分の反応において、ブロックされたイソシアネート基に対するアミノ基の当量が0.85〜1.15であり、かつブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対するブロックされたイソシアネート基濃度が30〜280ミリグラム当量/100gであることが好適である。
[3]前記ブロックドイソシアネート化合物(A成分)が脂肪族系及び/又は脂環族系イソシアネートモノマーとポリオールから成るイソシアネート末端プレポリマーをイミダゾール系化合物及び/又はトリアゾール系化合物でブロックしたものが好適である。
脂肪族系ポリアミンや脂環族系ポリアミンは脂肪族系や脂環族系ポリイソシアネートに対して非常に高活性であり、衝突混合方式スプレーのような特殊成形機を用い、かつイソシアネート基に対して少量使う以外は均一に混合できず、成形できなかった。
本発明は第1に脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのブロックドイソシアネート化合物(A成分)と脂肪族及び/又は脂環族系1級ポリアミン(B成分)とからなり、反応が常温から適度に高められた温度で定量的に進行し、優れた物理特性、耐光性、透明性、耐熱性等を持つポリウレタンウレア樹脂を生成することを特徴とする2液硬化型ポリウレタンポリウレア樹脂である。
第2に本発明のブロックドイソシアネート化合物は常温もしくは適度に高められた温度で水よりもポリアミンと選択的に反応するため、高温高湿下でも発泡の抑制された硬化システムである。
第3に本発明は脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのブロックドイソシアネート化合物は吸入により特に危険な揮発性のイソシアネートモノマーはもとよりイソシアネート基含有化合物を全く含まず、かつ硬化を常温もしくは適度に高められた温度で実施できるため、ブロックドイソシアネート化合物が解離しイソシアネート化合物を再生・飛散する可能性の低い人体に非常に優しいシステムである。
第4に本発明はハイソリッド化が可能な2液硬化システムであり、通常の溶剤系の塗料やコーティング剤に比べて揮発性溶剤の含有率を低くすることができ、環境に優しいシステムである。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂は脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネート、アゾール系ブロック剤及び脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミンとからなっている。
脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートとして脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートモノマー、脂肪族系及び/又は脂環族系イソシアネートモノマーとポリオールを反応して得られるイソシアネート末端プレポリマー及び脂肪族系及び/又は脂環族系イソシアネートモノマーの変成体(アロファネート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、及びイソシアヌレート変性体等)が挙げられる。
脂肪族系ポリイソシアネートモノマーとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族系ポリイソシアネートモノマーとしては1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、2,5−又は2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)等が挙げられる。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系イソシアネート末端プレポリマーは前記脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートモノマーと後記の高分子量ポリオールから選ばれた1種以上を主成分とし、必要により低分子量ポリオールを併用して製造できる。
脂肪族系及び/又は脂環族系イソシアネート末端プレポリマーの製造は公知の方法で前記脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートモノマーとポリオールを窒素ガス雰囲気下で、必要により溶剤やジオクチルチンジラウレート等の公知の触媒の存在下、60〜100℃で行う。反応におけるイソシアネート基/水酸基当量比は通常1.5〜2.5/1.0で行う。イソシアネート基/水酸基当量比は通常イソシアネートモノマーを低減させるため、好ましくは2.0以下で行うが、本発明では次工程でイソシアネートモノマーを含めアゾール系化合物と反応し、揮発しにくくするため、イソシアネート末端プレポリマーの性状、硬化物の物性に応じ、イソシアネート基/水酸基当量比を2.0以上に設定してもよい。
低分子量ポリオールとして、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400未満の化合物であって、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、アルカン−1,2−ジオール(C17〜20)、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−、3,8−ジオール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール等が挙げられる。
また、これらを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られる、数平均分子量400未満のポリアルキレンオキサイド(2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)も、低分子量ポリオールに含まれる。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンポリオールは、前記低分子量ポリオールを開始剤とする、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの付加重合物であり、具体的には数平均分子量400〜5,000、更に好ましくは、400〜3,000であるポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)等が挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルグリコール類としては、カチオン開環重合によるテトラヒドロフランのホモ重合ジオールである数平均分子量400〜5000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量500〜3000のテトラヒドロフランと3−アルキルテトラヒドロフランのカチオン開環共重合やテトラヒドロフランと2価アルコールをヘテロポリ酸等の触媒下で共重合した常温液状の非晶性ポリテトラメチレンエーテル系共重合グリコール類が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、前記した低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、メチルヘキサン二酸、シトラコン酸、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸等のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、酸ハライド、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
低分子量ポリオールと多塩基酸との重縮合物として、具体的には、ポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンプロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(プロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンヘキサンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(ヘキサンアジペート)ポリオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)ポリオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンアゼレート)ポリオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンイソフタレート)ポリオール、等が挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリオール等が挙げられる。なお、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは、500〜4000、更に好ましくは、800〜3000である。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の2価アルコールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートやジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとの縮合反応により得られるポリカーボネートジオール等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは、500〜3000、更に好ましくは、800〜2000である。
好ましい高分子量ポリオールは物理特性の優れたポリテトラメチレンエーテルグリコール、グリコールを共重合したアジピン酸系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールである。また、本発明のブロックされたイソシアネート基とポリアミンとの反応は反応基同士が衝突できる状態で進行するため、より好ましいポリオールは常温で液状の非晶性ポリテトラメチレンエーテル系共重合グリコール、ポリエステル系ポリオール及びポリカーボネート系ポリオールである。
本発明で好ましい脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートは脂環族系イソシアネートモノマー、脂環族系イソシアネートモノマーの変成体及び脂環族系イソシアネートモノマーとポリオールとからなる脂環族系イソシアネート末端プレポリマーである。
本発明で好ましい脂環族系イソシアネートモノマーとしてはイソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられ、単独での使用でも2種以上の併用でもよい。併用の場合には1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートモノマーを一部併用してもよい。
本発明でより好ましい脂環族系ポリイソシアネートは脂環族系イソシアネートモノマーと常温で液状の非晶性ポリテトラメチレンエーテル系共重合グリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールから選ばれた1種以上を主成分とし、必要により低分子量ポリオールを併用したイソシアネート末端プレポリマーである。
本発明のブロック剤であるアゾール系化合物は窒素原子を2〜3個含有する芳香族性の複素5員環化合物であり、イミダゾール(1,3−ジアゾール)系化合物、ピラゾール(1,2−ジアゾール)系化合物及びトリアゾール系化合物である。
イミダゾール系化合物の具体例としてイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンゾイミダゾール、5−メチルベンゾイミダゾール、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール類が挙げられる。
ピラゾール系化合物類の具体例として3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジ−ターシャリーブチルピラゾール等が挙げられる。
トリアゾール系化合物類の具体例として、1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−エチル−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
脂肪族系及び/又は脂環族系ブロックドイソシアネート化合物と脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミンとの反応性、硬化物の物性に対してブロック剤の影響は大きく、本発明で特に好ましいアゾール系化合物は常温で反応性の高いイミダゾール系化合物及びトリアゾール系化合物であり、具体的化合物としてイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。ピラゾール系化合物でブロックしたイソシアネート基は前記ポリアミンと常温では反応せず、硬化には高温、例えば70〜90℃での成形温度が必要である。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族ポリイソシアネートのアゾール系ブロックドイソシアネート化合物は前記脂肪族系ポリイソシアネート及び/又は脂環族系ポリイソシアネートに粉末状のアゾール系化合物を添加し、窒素ガス雰囲気下、60〜90℃で反応して得られる。アゾール系化合物を予めN−メチルピロリドン等に溶解して添加・反応してもよい。反応の進行は赤外吸収スペクトルのイソシアネート基(2270cm−1 付近)の吸収強度により確認し、消失した時終点とした。反応はブロックドイソシアネート化合物の粘度や目的に応じて溶剤や可塑剤を添加して実施することができる。
アゾール基/イソシアネート基当量比は0.90〜1.20であり、好ましくは0.95〜1.05である。0.90以下では残存するイソシアネート基がポリアミンと瞬時に反応し増粘するため好ましくない。また、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物及びピラゾール系化合物はいずれもイソシアネート基に対し高反応性であり容易にブロックできるため、1.20以上は必要でない。
本発明のブロックドイソシアネート化合物と反応するポリアミン化合物は脂肪族系及び/又は脂環族系の1級ポリアミンである。
脂肪族系1級ポリアミンとしては、1,2−ジアミノエタン(エチレンジアミン)、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン(1,4−テトラメチレンジアミン)、1,5−ジアミノペンタン(1,5−ペンタメチレンジアミン)、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−ヘキサメチレンジアミン)、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、トリアミノヘキサン、トリアミノノナン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタン、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、3−アミノメチル−1,6−ジアミノヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。
脂肪族系1級ポリアミンとしてポリエーテルポリアミンが含まれる。具体的にはα,ω−ビス(2−アミノプロピルエ−テル)ポリ(プロピレングリコール)、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリ(オキシテトラメチレン)等が挙げられる。
脂環族系1級ポリアミンとしては、ジアミノシクロブタン、イソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、メチル−2,4−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,6−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、トリアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
本発明の特に好ましいポリアミン化合物は脂環族系1級ジアミンであり、具体例として4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミンに脂肪族系及び/又は脂環族系2級ポリアミン、脂肪族系のアミノアルコール化合物及び/又はアミノシラン化合物をブロックされたイソシアネート基に対し、5当量%以下で使用することができる。
具体的化合物としてはビス(4−sec−ブチルアミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−sec−ブチルアミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N,N‘−ジイソプロピルイソホロンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂は脂肪族系ポリイソシアネート及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのアゾール系ブロックドイソシアネート化合物(A成分)と脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミン(B成分)をブロックされたイソシアネート基に対するポリアミンの当量比(NH2/ブロックされたイソシアネート)を0.85〜1.15、好ましくは0.90〜1.05となる割合で混合し、常温又は適度に高められた温度で反応し硬化させる。
ブロックされたイソシアネート基に対するポリアミンの当量比が0.85以下では強度低下し、1.15以上では強度低下とともに着色や加水分解が引き起こされ易くなるため好ましくない。
前記のA成分とB成分の反応におけるブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対するブロックされたイソシアネート基濃度は30〜280ミリグラム当量/100gである。30ミリグラム当量以下ではブロックドイソシアネート化合物及び/又はポリアミン化合物が高粘度になり樹脂濃度を50%以下に溶剤で希釈する必要があり、好ましくない。また、280ミリグラム当量以上ではブロック剤量が増大し、ポリウレタンウレア樹脂が本来持つ弾性や強靱性に欠けるため好ましくない。なお、ブロックされたイソシアネート基の濃度はポリイソシアネート成分、ブロック剤及びポリアミンの合計量に対するものとし、溶剤や可塑剤等の添加剤は含めないものとする。
本発明のブロック剤であるアゾール化合物は脂肪族系及び/又は脂環族系のブロックされたイソシアネート基と脂肪族系及び/又は脂環族系の1級ポリアミンとの反応により遊離するが、脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂との相溶性に優れた可塑剤として作用し、非常に透明で優れた物理特性を持つポリウレタンウレア樹脂を生成する。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ブロックドイソシアネート化合物(A成分)とポリアミン化合物(B成分)を常温で硬化後に加熱養生してもよい。加熱することにより硬化の促進とともに、溶剤使用時には溶剤の除去に効果的である。
本発明の成形は2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂で通常使用される成形機(混合機)を使用して実施することができる。本発明のブロックされたイソシアネート基は選択的にポリアミン化合物と反応し、水と反応しないため発泡は起こらない。
反応射出成形装置による成形等ではA成分及びB成分を予め減圧下で吸引や遠心分離により溶存空気を脱気することにより、硬化物の泡をより低減することができる。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂において、ポリウレタン樹脂分野において公知の溶剤を使用することができる。例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピレンジエチルエーテル、ジイソピレングリコールジメチルエーテル等のグライム類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類、等が挙げられる。これらの溶剤は、単独、又は2種以上を組合せて用いることができる。
本発明のブロックドイソシアネート化合物(A成分)及び/又はポリアミン化合物(B成分)の粘度低下のため、A成分とB成分の合計重量に対し、好ましくは0〜50%の溶剤を添加して実施することができる。用途等により必要な場合には50%以上の溶剤を添加しても硬化上問題ない。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂において、ポリウレタン樹脂分野において公知の可塑剤を使用することができる。フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、トリメリット酸トリス−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリスイソノニル等のトリメリット酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジイソノニル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、その他多官能ポリエーテルの末端エステル化物、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルの酢酸エステル化物等が挙げられる。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂に当該分野で公知の顔料や染料等の着色剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、炭酸カルシウムやタルク等の無機充填材、湿潤分散剤、沈降防止剤等を添加することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例に記載の%、部はそれぞれ重量%、重量部を示す。
実施例及び比較例において用いた各成分及び評価方法を以下にしめす。なお、入手した各成分は精製や蒸留を行わずそのまま使用した。
<ジイソシアネートモノマー>
HDI:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、M.W.168.2[東ソー(株)製のHDI]
IPDI:3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、M.W.222.3[エボニックジャパン製のVESTANAT IPDI]
H12−MDI:4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、M.W.262.4[住化コベストロウレタン(株)製のDesmodur W]
<ジイソシアネートモノマー変成体>
C−HX:HDIのイソシアヌレート変成体[東ソー(株)製のコロネートHX]
C−2770:HDIのアロファネート変成体[東ソー(株)製のコロネート2770]
<ポリオール>
P−1010:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートジオール、数平均分子量1,000[(株)クラレ製のクラレポリオールP−1010]
P−2010:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートジオール、数平均分子量2,000[(株)クラレ製のクラレポリオールP−2010:]
P−3010:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートジオール、数平均分子量3,000[(株)クラレ製のクラレポリオールP−2010]
F−2010:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートトリオール、数平均分子量2,000[(株)クラレ製のクラレポリオールF−2010]
C−1090:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10)共重合カーボネートジオール、数平均分子量1,000[(株)クラレ製のクラレポリオールC−1090]
C−2090:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10)共重合カーボネートジオール、数平均分子量2,000[(株)クラレ製のクラレポリオールC−2090]
C−2050:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50)共重合カーボネートジオール、数平均分子量2,000[(株)クラレ製のクラレポリオールC−2050]
PTG−L1000:テトラヒドロフラン/3−メチルテトラヒドロフランからなる共重合ポリエーテルジオール、数平均分子量が1,000[保土谷化学工業(株)製のPTG−L1000]
PTG−L2000:テトラヒドロフラン/3−メチルテトラヒドロフランからなる共重合ポリエーテルジオール、数平均分子量が2,000[保土谷化学工業(株)製のPTG−L2000]
D−2000:ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量が2,000[三井化学(株)製のアクトコールD−2000]
T−3000:ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量が3,000[三井化学(株)製のアクトコールT−3000]
TMP:トリメチロールプロパン、M.W.134.2[東京化成工業(株)製]
1,4−BD:1,4−ブタンジオール、M.W.90.1[東京化成工業(株)製]
<ブロック剤>
イミダゾール:M.W.68.1[東京化成工業(株)製]
4−メチルイミダゾール:M.W.82.1[東京化成工業(株)製]
1,2,4−トリアゾール:M.W.69.1[東京化成工業(株)製]
3,5−ジメチルピラゾール:M.W.96.1[東京化成工業(株)製]
マロン酸ジエチル:M.W.160.2[東京化成工業(株)製]
メチルエチルケトキシム:M.W.87.1[東京化成工業(株)製]
ε−カプロラクタム:M.W.113.2[東京化成工業(株)製]
<脂肪族系及び脂環族系ジアミン>
H12−MDA:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、M.W.210.4[エアープロダクツジャパン(株)製のAmicure PACM]
4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン):M.W.238.4[東京化成工業(株)製]
IPDA:1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、M.W.170.3[エボニック ジャパン製のVestanat IPD]
1,3−BAC:1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのシス,トランス混合物、M.W.142.2[東京化成工業(株)製]
ジエチレントリアミン:M.W.103.2[東京化成工業(株)製]
2−メチル−1,5−ジアミノペンタン:2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、M.W.116.2[東京化成工業(株)製]
<溶剤>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン[東京化成工業(株)製]
ジグライム:ジエチレングリコールジメチルエーテル[東京化成工業(株)製]
DPDM:ジプロピレングリコールジメチルエーテルの異性体混合物[東京化成工業(株)製]
<実施例や比較例で使用するイソシアネート末端プレポリマーの合成例>
プレポリマーA:
撹拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコの内部を窒素雰囲気にし、室温でクラレポリオールP−2010を346.9g、TMPを4.0g、イソホロンジイソシアネートを99.1g、ジグライムを50g仕込み徐々に昇温し、90℃で5時間反応した。NCO分析により理論イソシアネート含有率に到達しており、反応を終了した。得られたプレポリマーAの樹脂濃度は90%、NCO含量は3.62%、粘度は9,800mPa・s/25℃であった。
プレポリマーB〜R:
プレポリマーAと同様にしてポリオールの種類及び平均分子量、イソシアネートモノマーの種類を変えた18種類のプレポリマーを合成した。仕込み組成及び得られたプレポリマーのNCO含有率、粘度、他をプレポリマーAと纏めて表1に示す。
〈イソシアネート含有率の測定〉
プレポリマー合成時のイソシアネート含有率の測定はJISK7301のジノルマルブチルアミンの塩酸逆滴定法に準じて行った。
〈イソシアネート基のIR分析〉
ポリイソシアネート化合物とブロック剤の反応終点は日本分光(株)製のフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(商品名:FT/IR−300)により、2270cm−1付近のNCO吸収が消失した点とした。
〈粘度の測定〉
芝浦システム株式会社製のビスメトロン粘度計(型式VDA2型)を用いて25℃で測定した。
〈A成分とB成分の混合〉
調製したA成分とB成分を、所定の混合比でPP製100mlのディスポ容器に秤量し、株式会社シンキー製の自転/公転ミキサー「あわとり練太郎AR−100」(装置仕様:自転800rpm、公転2000rpm)を用いて、25℃で攪拌モード30秒、脱泡モード30秒で混合した。
〈フィルム作製〉
25℃のA成分とB成分を前記混合条件で混合し、PP板上にアプリケーター方式で約400ミクロン厚に流延し、25℃で硬化しフィルムを作製した。フィルムは25℃で1日後にPP板から剥離し、25℃で10日後に引張試験に供した。なお、80℃硬化の場合は実施例毎に条件を記載する。
Figure 2019172941
〈25℃流動性試験〉
25℃のA成分とB成分を所定の混合比で15gとなるようPP製100mlのディスポ容器に秤量し、前記「あわとり練太郎AR−100」の混合条件で混合した。混合開始からディスポ容器を逆さにし、液の壁面の流動距離が10cm/10秒以下になる迄の25℃での時間(分)を25℃流動時間とした。
〈25℃成形性〉
25℃での流動時間が5分以上の場合:○、5分以下の場合:×とした。25℃で硬化しない場合も○とした。
〈25℃硬化性試験〉
前記条件で作製したフィルムの25℃、1日後の状態(表面タックや脱型できるかどうか)で硬化性を判定した。フィルムがタックなく脱型できた場合:◎、ややタックはあるが脱型できた場合:○、硬化が不十分で脱型できない場合:×とした。
〈80℃硬化性試験〉
80℃に加温したA成分とB成分を前記混合条件で混合し、85℃に加温したPP板上にアプリケーター方式で約400ミクロン厚に流延し、80℃で1時間加熱キュアーした。フィルムが脱型できた場合:○、脱型できない場合:×とした。なお、25℃硬化性が良好な場合、80℃硬化性試験は実施しなかった。
〈引張試験〉
JIS K−7312(熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物理試験方法)に準じて引張試験を行った。前記方法で作製し25℃で10日間養生したフィルムからJIS−3号ダンベルを打ち抜き、引張試験機(株式会社東洋精機製作所のストログラフVE10D型)を用い、標線間20mm、引張速度500mm/分の条件で測定した。
実施例1
撹拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコの内部を窒素雰囲気にし、プレポリマーB(P−2010/IPDIプレポリマー)を71.87g、粉末状のイミダゾールを3.71g(イソシアネート基に対し1.05倍当量)仕込み、徐々に昇温し、80℃で1時間反応した。IRスペクトルより2270cm−1のイソシアネート基の吸収は消滅していた。次いで50℃に冷却後、ジグライムを24.42g(B成分と反応時に樹脂分が70%になる量)仕込み30分間攪拌し、A成分とした。A成分のブロックされたイソシアネート基はイソシアネート換算で2.18%、粘度は1,750mPa・s/25℃であった。
PP製100mlのディスポ容器に25℃のA成分を28.48g、B成分のH12−MDAを1.52g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、前記方法で25℃成形性(流動性)試験、フィルム作製、25℃硬化性試験及び25℃/10日後の引張試験を行った。25℃成形性(流動時間65分)及び25℃/1日後の硬化性、25℃/10日後のフィルムの透明性及び引張物性は良好であった。破断時の伸び率:550%、100%モジュラス:4.1N/mm2、300%モジュラス:6.7N/mm2引張強度:58.0N/mm2であった。なお、A成分とB成分の反応時におけるブロックされたイソシアネート基濃度はブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対し68ミリグラム当量/100gである。処方及び試験結果を表2に示す。
実施例2〜5(ブロックされたイソシアネート/アミン当量比)
実施例1のブロックされたイソシアネート当量に対するH12−MDAのアミン当量比は0.98であるが、実施例1のA成分を用い、ブロックされたソアネート当量に対するH12−MDAのアミン当量比を0.90〜1.05の範囲で変化させた実施例2〜5の結果を表2に示す。
表2の実施例1〜6の結果より、ブロックされたイソシアネート当量に対するH12−MDAのアミン当量比が0.95〜1.05の範囲で、成形性(流動性)及び25℃硬化性に大きな変化はなく良好であった。これに対し、引張強度はブロックドイソシアネート当量に対するH12−MDAのアミン当量比が0.98〜1.00で極大となり、その前後ではかなり低下することが判明した。
本発明のブロックドイソシアネート化合物とポリアミンの反応はブロックされたイソシアネート基とアミノ基の当量比が1:1で引張強度が極大になることより、定量的に進行していると考えられ、以降の実施例ではA成分とB成分の反応をNH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比で行う。
実施例6〜17(ポリエステルポリオール系でのイソシアネートモノマー、ブロック剤、ポリアミン化合物の影響)
実施例6〜14にプレポリマーのポリオール成分としてポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートジオールを用い、ジイソシアネートモノマー、ブロック剤、脂肪族系及び脂環族系ジアミンを変えた処方に付き実施例1と同様な操作により検討した。イソシアネート末端プレポリマーとブロック剤との反応はイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールの場合は80℃で、1,2,4−トリアゾールの場合は90℃で行い、IRスペクトルで2270cm−1付近のイソシアネート基の吸収がほぼ消滅するまで行った。処方及び前記方法で行った25℃成形性(流動性)試験、25℃硬化性試験及び25℃/10日後の引張試験の結果を表2に示す。
実施例18〜23(ポリカーボネートポリオール系でのイソシアネートモノマー、ブロック剤、ポリアミン化合物の影響)
実施例18〜23にプレポリマーのポリオール成分としてポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール)共重合カーボネートジオールを用い、ブロック剤、ジイソシアネートモノマー、脂環族系ジアミンを変えた処方に付き実施例1と同様な操作により検討した。処方及び前記方法で行った25℃成形性(流動性)試験、25℃硬化性試験及び25℃/10日後の引張試験の結果を表3に示す。
実施例24〜29(ポリオキシアルキレンポリオール系でのイソシアネートモノマー、ブロック剤、ポリアミン化合物の影響)
実施例24〜29にプレポリマーのポリオール成分としてポリオキシアルキレンポリオールを用い、ブロック剤、イソシアネートモノマー、脂肪族系及び脂環族系ジアミンを変えた処方に付き実施例1と同様な操作により検討した。処方及び前記方法で行った25℃成形性(流動性)試験、25℃硬化性試験及び25℃/10日後の引張試験の結果を表3に示す。
Figure 2019172941
Figure 2019172941
表2及び表3より本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ブロックドイソシアネート化合物と脂肪族系及び/又は脂環族系ポリアミンとの反応において、実施例6〜実施例29の25℃流動時間は23〜180分で成形性は全て良好であった。
本発明の基本となるポリイソシアネート、ブロック剤及びポリアミン成分の25℃の硬化性及び硬化物の引張物性に及ぼす影響については以下のような傾向が認められた。
〈硬化性〉
イソシアネートモノマー:硬化性の差は小さいがH12−MDI>IPDI>HDIの 順に低下する傾向
ブロック剤 :イミダゾール系化合物が最も硬化性に優れ、次いでトリアゾ ール系化合物。ピラゾール系化合物は25℃/1日では硬化 せず、80℃で硬化
ポリアミン :脂肪族系1級ポリアミン及び脂環族系1級ポリアミンの硬化 性はほぼ同等
〈引張物性〉
ポリイソシアネート :H12−MDIとIPDIは略同等、HDIは低強度
ブロック剤 :25℃硬化ではイミダゾール系化合物が最も良く、次いでト リアゾール系化合物
ポリアミン :脂環族系ジアミンが脂肪族系ジアミンに比べて良好
ポリオール :ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、( THF/3−MeTHF)共重合ジオールが良好で、ポリオ キシプロピレンポリオールは低強度
本発明はポリイソシアネート、ブロック剤及びポリアミン成分を選択することにより、硬化性を制御でき、かつ柔軟なエラストマーからハードな塗料まで物性を調整することが可能であり、広範な用途に展開できる。
実施例30(HDI変成体のイミダゾールブロックドイソシアネート)
実施例1と同じ装置を用い、C−HX(NCO当量:199)を13.98g、C−2770(NCO当量:218)を32.61g及びDPDMを37.70g仕込み混合した。次いで発熱に注意しながら粉末状のイミダゾール15.71g(イソシアネート基に対し1.05倍当量)を徐々に添加し80℃で1時間反応し、A成分とした。A成分のブロックされたイソシアネート基はイソシアネート換算で9.23%、粘度は2,900mPa・s/25℃であった。
PP製100mlのディスポ容器に25℃のA成分23.87g及びB成分の4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)を6.13g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、前記方法で25℃成形性(流動性)試験、25℃硬化性試験及び25℃/10日後の引張試験を行った。成形性(流動時間:100分)及び25℃/1日後の硬化性は良好で、25℃/10日後の引張物性は破断時の伸び率:130%、100%モジュラス:8.5N/mm2、引張強度:15.2N/mm2であった。なお、A成分とB成分の反応時におけるブロックされたイソシアネート基濃度はブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対し250ミリグラム当量/100gである。
実施例31(1,2,4−トリアゾールブロックドイソシアネート、ハイソリッドでの80℃硬化)
実施例1と同じ装置を用い、プレポリマーEを85.86g、1,2,4−トリアゾールの60%NMP溶液を14.14g(イソシアネート基に対し1.05倍当量)仕込み、80℃で1時間反応し、A成分とした。A成分のブロックされたイソシアネート基はイソシアネート換算で4.91%である。
PP製100mlのディスポ容器に80℃に加温したA成分26.39g及びB成分の4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)を3.61g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、400ミクロン厚に80℃に加温したPP板上に流延し、80℃で30分間硬化させた。フィルムを脱型し、25℃で7日養生後に引張試験を行った。その結果、伸び率:360%、100%モジュラス:12.3N/mm2、300%モジュラス:33.4N/mm2、引張強度:43.8N/mm2であった。なお、A成分とB成分の反応時におけるブロックされたイソシアネート基濃度はブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対し108ミリグラム当量/100gである。
実施例32(1,2,4−トリアゾールブロックドイソシアネート、無溶剤での80℃硬化)
実施例1と同じ装置を用い、プレポリマーRを94.77g、粉末状のイミダゾールを5.23g(イソシアネート基に対し1.05倍当量)仕込み、80℃で1時間反応し、A成分とした。A成分のブロックされたイソシアネート基はイソシアネート換算で3.07%である。
PP製100mlのディスポ容器に80℃に加温したA成分27.64g及びB成分の4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)を2.36g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、400ミクロン厚に80℃に加温したPP板上に流延し、80℃で30分間硬化させた。フィルムを脱型し、25℃で7日養生後に引張試験を行った。その結果、伸び率:660%、100%モジュラス:1.9N/mm2、300%モジュラス:4.3N/mm2、引張強度:20.2N/mm2であった。なお、A成分とB成分の反応時におけるブロックされたイソシアネート基濃度はブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対し67ミリグラム当量/100gである。
実施例31及び実施例32より、ハイソリッド(樹脂分:95%〜100%)での80℃成形が可能であり、成形サイクルを短縮することができる。
実施例33(3,5−ジメチルピラゾールブロックドイソシアネート、80℃硬化)
実施例1と同じ装置を用いプレポリマーAを92.00g、粉末状の3,5−ジメチルピラゾールを8.00g(イソシアネート基に対し1.05倍当量)を仕込み、徐々に昇温し、90℃で1時間反応しA成分とした。IRスペクトルより2270cm−1のイソシアネート基の吸収はほぼ消滅していた。A成分のブロックされたイソシアネート基はイソシアネート換算で3.33%であった。
PP製100mlのディスポ容器に80℃に加温したA成分を27.73g、B成分のH12−MDAを2.27g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、400ミクロン厚に80℃に加温したPP板上に流延し、80℃で1時間硬化させた。80℃での硬化性は良好でフィルムを脱型し、25℃で7日養生後に引張試験を行った。その結果、伸び率:570%、100%モジュラス:4.6N/mm2、300%モジュラス:6.9N/mm2、引張強度:21.0N/mm2であった。なお、該反応時の溶剤含有率は8.5%であったが、溶剤含有率を25%にし、25℃での硬化性を検討したところ、25℃では10日後も未硬化であり、イミダゾールや1,2,4−トリアゾールに比べて25℃での硬化性は劣っていた。なお、A成分とB成分の反応時におけるブロックされたイソシアネート基濃度はブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対し80ミリグラム当量/100gである。
実施例34(可塑剤:DINP、無機充填剤:炭酸カルシウム添加の例)
実施例1と同様の操作により、プレポリマーAを332.8g、粉末状のイミダゾールを20.5g(イソシアネート基に対し1.05倍当量)仕込み、徐々に昇温し、80℃で1時間反応した。IRスペクトルより2270cm−1のイソシアネート基の吸収は消滅していた。次いで50℃に冷却後、DPDMを46.7g(A成分中の溶剤分が20%になる量)仕込み30分間攪拌し、A成分とした。A成分のブロックされたイソシアネート基はイソシアネート換算で3.01%、粘度は11,500mPa・s/25℃であった。
円筒形開放容器(SUS製)に室温で120gのDINPを仕込み、プライムミクス(株)製のホモディスパー2.5型で撹拌下、33.5g4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、2.4gの添加剤(湿潤剤及び沈降防止剤)、244.1gの炭酸カルシウムを順次仕込んだ。仕込み終了後2,000rpmで30分間撹拌し、B成分とした。
PP(ポリプロピレン樹脂)製100mlのディスポ容器にA成分を40.0g、B成分を40.0g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、PP板上に流延し約2mm厚のシートを作製した。成形性及び25℃、1日後の硬化性は良好で、25℃/10日養生時の物理特性は、硬さ(硬度A):75、破断時の伸び率:630%、100%モジュラス:3.5N/mm2、引張強度:11.1N/mm2、引裂強度:39.4N/mmであった。なお、A成分とB成分の反応時におけるブロックされたイソシアネート基濃度はブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対し81ミリグラム当量/100gである。
実施例6、7、11、16、21、22、23,27で作製し、25℃で10日間硬化したフィルムを100℃で30分間加熱処理し、引張試験を行った。結果を標準物性ともに表4に示す。
表4より標準物性に比べて100℃で熱処理することにより何れも強度アップするが、特に常温で硬化が遅いブロック剤が1,2,4−トリアゾールの場合に有効である。
Figure 2019172941
比較例1
撹拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコの内部を窒素雰囲気にし、プレポリマーCを59.21g、ジグライムを40.79g(B成分と反応時に溶剤分が50%になる量)仕込み、50℃に加温し、30分間攪拌し、A成分とした。イソシアネート含有率は1.85%、粘度は320mPa・s/25℃であった。
PP製100mlのディスポ容器にA成分を28.53g、B成分の4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)を1.47g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡した。その結果、溶剤分を実施例(65%〜100%)に比べて50%に増大したにも係わらず、IPDI系イソシアネート末端プレポリマーと4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)は数秒でゲル化し、不均一な塊状物となった。結果を表5に示す。成形性は×、硬化性は○、引張試験はフィルムが作製できず測定できなかった。
比較例2
比較例1と同じ装置を用い、プレポリマーCを69.07g、ジエチルマロネートを8.66g(イソシアネート基に対し1.05倍当量)及び触媒としてソジウムメトキサイド0.07gを仕込み、徐々に昇温し、80℃で4.5時間反応した。IRスペクトルより2270cm−1のイソシアネート基の吸収はほぼ消滅していた。次いで50℃に冷却後、ジグライムを22.20g(B成分と反応時に溶剤分が34%になる量)仕込み30分間攪拌し、A成分とした。A成分のブロックされたイソシアネート基はイソシアネート換算で2.16%、粘度は2,200mPa・s/25℃であった。
PP製100mlのディスポ容器にA成分を28.30g、B成分の4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)を1.70g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、前記方法で25℃成形性(流動性)試験、フィルム作製、25℃硬化性試験を行った。結果を表5に示す。硬化性は25℃/10日、80℃/1時間共に未硬化であり×、成形性は○、引張試験はフィルムが作製できず測定できなかった。
比較例3
比較例1と同じ装置を用い、プレポリマーCを73.51g、メチルエチルケトキシムを5.01g(イソシアネート基に対し1.05倍当量)仕込み、徐々に昇温し、80℃で5.0時間反応した。IRスペクトルより2270cm−1のイソシアネート基の吸収はほぼ消滅していた。次いで50℃に冷却後、ジグライムを21.48g(B成分と反応時に溶剤分が34%になる量)仕込み30分間攪拌し、A成分とした。A成分のブロックされたイソシアネート基はイソシアネート換算で2.30%、粘度は1,600mPa・s/25℃であった。
PP製100mlのディスポ容器にA成分を28.20g、B成分の4,4‘−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)を1.80g(NH2/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、前記方法で25℃成形性(流動性)試験、フィルム作製、25℃硬化性試験を行った。結果を表5に示す。硬化性は25℃/10日、80℃/1時間共に未硬化であり×、成形性は○、引張試験はフィルムが作製できず測定できなかった。
比較例4
A成分として実施例9のプレポリマーGのイミダゾールブロックドイソシアネート化合物を用い、B成分としてH12−MDAの替わりに1,4−ブタンジオールを用いた。
PP製100mlのディスポ容器に実施例9のA成分を29.23g、B成分の1,4−ブタンジオールを0.77g(OH/ブロックされたイソシアネート=0.98当量比)を秤量し、「あわとり練太郎AR−100」による前記混合条件で攪拌・脱泡し、前記方法で25℃成形性(流動性)試験、フィルム作製、25℃硬化性試験を行った。結果を表5に示す。硬化性は25℃/10日、80℃/1時間共に未硬化であり×、成形性は○、引張試験はフィルムが作製できず測定できなかった。
本発明は常温又は適度に高められた温度で十分な成形時間を確保でき、かつ定量的に反応が進行し、透明で優れた物理特性、耐光性、耐熱性等を持つ2液硬化型の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂であり、従来適用の難しかった脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂系のエラストマー、コーティング剤、ロール、塗料、人工皮革、マイクロセルラーフォーム、接着剤、床材、防水材等の広範な用途へ好適に使用できる。
Figure 2019172941
本発明は脂肪族系ポリイソシアネート及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのアゾール系ブロックドイソシアネート化合物と脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミンからなるポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物及び硬化反応させるポリウレタンウレア樹脂及びその製造法に関するものである。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[5]に示されるものである。
[1]脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートをジアゾール系化合物及び/又はトリアゾール系化合物(アゾール系化合物)でブロックしたブロックドイソシアネート化合物(A成分)と脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミン化合物(B成分)からなり、常温から90℃で反応可能であることを特徴とする2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物
[2][1]に記載のA成分とB成分の反応において、ブロックされたイソシアネート基に対するアミノ基の当量が0.85〜1.15であり、かつブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対するブロックされたイソシアネート基濃度が30〜280ミリグラム当量/100gであることが好適である2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物。
[3][1]又は[2]に記載のブロックドイソシアネート化合物(A成分)が脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートモノマーとポリオールから成るポリイソシアネート末端プレポリマーをイミダゾール系化合物及び/又はトリアゾール系化合物でブロックしたものが好適である2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載の2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物を硬化反応させることを特徴とするポリウレタンウレア樹脂の製造法。
[5][1]〜[3]のいずれか一項に記載の2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物を硬化反応させたポリウレタンウレア樹脂。
脂肪族系ポリアミンや脂環族系ポリアミンは脂肪族系や脂環族系ポリイソシアネートに対して非常に高活性であり、衝突混合方式スプレーのような特殊成形機を用い、かつイソシアネート基に対して少量使う以外は均一に混合できず、成形できなかった。
本発明は第1に脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートのブロックドイソシアネート化合物(A成分)と脂肪族及び/又は脂環族系1級ポリアミン(B成分)とからなり、反応が常温から適度に高められた温度で定量的に進行し、優れた物理特性、耐光性、透明性、耐熱性等を持つポリウレタンウレア樹脂を生成することを特徴とする2液硬化型ポリウレタンポリウレア樹脂前駆体組成物及び該前駆体組成物を硬化反応させたポリウレタンウレア樹脂及びその製造法である。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物は脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネート、アゾール系ブロック剤及び脂肪族系及び/又は脂環族系1級ポリアミンとからなっている。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物において、ポリウレタン樹脂分野において公知の溶剤を使用することができる。例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピレンジエチルエーテル、ジイソピレングリコールジメチルエーテル等のグライム類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類、等が挙げられる。これらの溶剤は、単独、又は2種以上を組合せて用いることができる。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物において、ポリウレタン樹脂分野において公知の可塑剤を使用することができる。フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、トリメリット酸トリス−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリスイソノニル等のトリメリット酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジイソノニル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、その他多官能ポリエーテルの末端エステル化物、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルの酢酸エステル化物等が挙げられる。
本発明の脂肪族系及び/又は脂環族系ポリウレタンウレア樹脂前駆体組成物に当該分野で公知の顔料や染料等の着色剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、炭酸カルシウムやタルク等の無機充填材、湿潤分散剤、沈降防止剤等を添加することができる。
<ポリオール>
P−1010:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートジオール、数平均分子量1,000[(株)クラレ製のクラレポリオールP−1010]
P−2010:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートジオール、数平均分子量2,000[(株)クラレ製のクラレポリオールP−2010:]
P−3010:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートジオール、数平均分子量3,000[(株)クラレ製のクラレポリオールP−3010
F−2010:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートトリオール、数平均分子量2,000[(株)クラレ製のクラレポリオールF−2010]
C−1090:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10)共重合カーボネートジオール、数平均分子量1,000[(株)クラレ製のクラレポリオールC−1090]
C−2090:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10)共重合カーボネートジオール、数平均分子量2,000[(株)クラレ製のクラレポリオールC−2090]
C−2050:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50)共重合カーボネートジオール、数平均分子量2,000[(株)クラレ製のクラレポリオールC−2050]
PTG−L1000:テトラヒドロフラン/3−メチルテトラヒドロフランからなる共重合ポリエーテルジオール、数平均分子量が1,000[保土谷化学工業(株)製のPTG−L1000]
PTG−L2000:テトラヒドロフラン/3−メチルテトラヒドロフランからなる共重合ポリエーテルジオール、数平均分子量が2,000[保土谷化学工業(株)製のPTG−L2000]
D−2000:ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量が2,000[三井化学(株)製のアクトコールD−2000]
T−3000:ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量が3,000[三井化学(株)製のアクトコールT−3000]
TMP:トリメチロールプロパン、M.W.134.2[東京化成工業(株)製]
1,4−BD:1,4−ブタンジオール、M.W.90.1[東京化成工業(株)製]

Claims (3)

  1. 脂肪族系及び/又は脂環族系ポリイソシアネートをジアゾール系化合物及び/又はトリアゾール系化合物(アゾール系化合物)でブロックしたブロックドイソシアネート化合物(A成分)と脂肪族系及び/又は脂環族系1級のポリアミン化合物(B成分)からなり、常温から90℃で反応可能であることを特徴とする2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂及びその製造法。
  2. 前記のA成分とB成分の反応において、ブロックされたイソシアネート基に対するアミノ基の当量が0.85〜1.15であり、かつブロックドイソシアネート化合物とポリアミン化合物の合計重量に対するブロックされたイソシアネート基濃度が30〜280ミリグラム当量/100gである特許請求の範囲第1項記載の2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂及びその製造法。
  3. 前記ブロックドイソシアネート化合物(A成分)が脂肪族系及び/又は脂環族系イソシアネートモノマーとポリオールからなるイソシアネート末端プレポリマーをイミダゾール系化合物及び/又はトリアゾール系化合物でブロックしたものである特許請求の範囲第1項及び第2項記載の2液硬化型ポリウレタンウレア樹脂及びその製造法。
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