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JP2019171234A - 硫化水素分離用ゼオライト膜の再生方法 - Google Patents

硫化水素分離用ゼオライト膜の再生方法 Download PDF

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篤 摩庭
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雅人 内田
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Abstract

【課題】硫化水素を同伴した炭化水素ガスから硫化水素を高選択分離に行うためのゼオライト膜を再生する方法であって、ゼオライト中の硫黄分を除去することでゼオライト膜の硫化水素分離性能を再生する方法を提供する。【解決手段】硫黄分を含有するゼオライト膜を真空下で30℃以上500℃以下の温度で加熱処理する加熱処理工程を備えた、硫化水素分離用ゼオライト膜の再生方法。加熱工程を0.01Pa以上100kPa以下で行うことが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、硫化水素等の硫黄化合物により分離性能が低下した硫化水素分離用ゼオライト膜の再生方法に関する。
天然ガスの精製プラントでは液化工程での配管閉塞を回避するために、天然ガス中に含まれる硫化水素や有機硫黄化合物の分離が必要である。これまではアミンなどの塩基を用いた化学吸収法が用いられてきたが、吸収した硫化水素を脱離するためのエネルギーが大きく、硫化水素の分離に莫大なエネルギーが必要であったため、省エネルギーかつ簡素化が可能な分離膜による硫化水素分離方法の確立が望まれていた。
近年、無機多孔質支持体表面に形成させたゼオライト膜を用いた硫化水素分離方法が報告されている。ゼオライトからなる膜は、分子のサイズや形状の違いにより選択的に分子を通過させる性質を有するため、分子ふるいとして広く利用されている。特許文献1ではFAU型、DDR型、LTA型、LTL型、MOR型、MFI型、SOD型、及びBEA型ゼオライト膜が硫化水素分離膜として提案されている。
特開2012−236142号公報 特公昭62−020848号公報 特許5706126号公報
特許文献1に記載の方法は、従来知られていたゼオライト吸着剤による吸着とは異なり、ゼオライトの分子篩い機能と、膜の透過前後の差圧を利用して、分子径の異なる成分を分離する方法である。しかしながら、硫化水素や有機硫黄化合物はゼオライトと反応し、細孔内に硫黄成分が生成するため、ゼオライト膜の分離性能が低下する課題がある。特許文献2に記載された吸着剤の再生方法では、ジメチルスルホキシドを含有する炭化水素を流通させ飽和させたタイプ13X分子ふるいに対して、高純度水素流通下で段階的に加熱を行っている。特許文献3に記載された吸着剤の再生方法では、メルカプタンを含むNaX型ゼオライトに対して、被処理ガス流通下で段階的に加熱を行っている。
本発明の目的は、分離性能の低下した硫化水素分離用ゼオライト膜を再生させる方法を提供するものである。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、真空下で加熱処理をすることでゼオライト膜の炭化水素−硫化水素の分離性能を回復できることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、硫黄分を含有するゼオライト膜を真空下で30℃以上500℃以下の温度で加熱処理する加熱工程を備えた、硫化水素分離用ゼオライト膜の再生方法である。
以下、本発明で再生するゼオライト膜について説明する。
本発明で用いるゼオライト膜は、Y型ゼオライトであることが好ましい。これにより炭化水素と硫化水素を効率的に分離することができる。
多孔質支持体表面に形成されたゼオライト膜の結晶相は、X線回折法などにより確認することができる。
本発明で用いるゼオライト膜は、1.5より大きく3.0以下のSi/Alモル比を有し、かつ、FAU型の結晶相を有する。これにより、ゼオライト膜が高い耐熱性を有し、かつ、選択的に硫化水素を透過させる。ここで、膜部分のSi/Alモル比は、X線回折方により格子定数を算出し、それに基づき評価を行った。
本発明で用いるゼオライト膜は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類からなる群の少なくとも1種を含有することが好ましく、さらに好ましくはナトリウム(Na)を含有する。
本発明で用いるゼオライト膜の硫黄含有量は、4wt%以上の時に再生の効果が著しい。ここで、硫黄含有量は、イオンクロマト法やEDS等の一般的な組成分析法により測定することができる。イオンクロマト法を用いる場合、粉砕した試料を燃焼し、燃焼ガスをSO分として吸収液に吹き込むことでSO濃度をイオンクロマト法により定量することができる。
本発明で用いるゼオライト膜の膜厚は100μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましい。これにより硫化水素をより透過させる。また、ゼオライト膜の膜厚は0.1μm以上が好ましく、1μm以上がさらに好ましい。これにより、膜の強度がより高く、かつ、より選択的に硫化水素を透過させる。
本発明で用いるゼオライト膜は、膜表面をシリル化剤等で修飾していても良い。
本発明で用いるゼオライト膜は、多孔質支持体上に形成されていることが好ましい。多孔質支持体としては、圧力差に耐える強度や、耐熱性を有するもの、更に硫化水素に対する耐腐食性があれば特に限定するものではなく、例えば、無機系多孔質支持体、又は無機有機ハイブリッド多孔質支持体等が挙げられる。
無機系多孔質支持体としては、多孔質であれば特に制限されるものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、もしくは炭化珪素などのセラミックス焼結体、もしくはステンレスなどの焼結金属、ガラス、カーボン成形体等を用いることができる。
多孔質支持体表面層の細孔径は、0.05μm以上1.5μm以下、さらに0.10μm以上1.5μm以下の範囲であることが好ましい。当該支持体の細孔径の評価は、バブルポイント法や水銀圧入法などで行うことができる。尚、多孔質支持体表面層とは、ゼオライト膜を形成する支持体表面部分を指す。また、ゼオライト膜を形成する支持体表面層以外の部分の細孔径は特に制限されないが、0.05μm以上1.5μm以下、さらに0.30μm以上0.80μm以下であることが例示できる。また、支持体の気孔率は硫化水素を透過させる際の透過流量を左右するため、20%以上60%以下の気孔率を有するものが好ましい。
多孔質支持体の形状は、気体混合物を有効に分離できる形状であれば制限されるものではなく、例えば、平板状、波板状、管状、円柱状、円錐状、円錐台状、円筒状、角柱状、角筒状、角錐状、角錐台状、又は円柱状、若しくは角柱状の孔が多数存在するハニカム状などが挙げられる。波板状、管状、円柱状、円錐状、円錐台状、円筒状、角柱状、角筒状、角錐状、角錐台状、又は円柱状の多孔質支持体については、中心がくり抜かれた筒状のものが好ましく、筒は貫通しているものでもよいし、試験管状の貫通していないものであってもよい。
本発明の再生方法の対象となるゼオライト膜は、炭化水素と硫化水素との分離に使用したものである。分離は、ゼオライト膜に炭化水素と硫化水素を含むガスを接触させて行う。より詳細には、少なくとも一方の表面がFAU型ゼオライト膜で被覆された多孔質支持体からなる分離膜2つの表面のうち一方の表面に硫化水素/炭化水素混合ガスを接触させることによって行われる。硫化水素の分離は、ゼオライト膜の温度を−60℃以上110℃以下に保持して行う。硫化水素/炭化水素混合ガスにおける炭化水素は、少なくともメタンを含む。メタンは天然ガス等の主成分であることから、本発明の分離方法を工業的に実施することが可能となる。炭化水素は特に限定するものではなく、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、プロパジエン、ブテン、ブタジエンからなる群の少なくとも1種が挙げられ、2種以上を含んでいてもよい。また、硫化水素/炭化水素混合ガスは、前記ガスのほか、二酸化炭素、水、窒素、酸素、希ガス等の第三成分を含んでいてもよい。
次いで、本発明である、ゼオライト膜の再生方法について説明する。
ゼオライト膜が含有している硫黄分を除去することで、低下した硫化水素の分離性能を再生することが可能となり、ゼオライト膜を用いて継続的に硫化水素を高選択的に分離することができる。
加熱工程における温度は30℃以上500℃以下である。短時間で除去できる点で100℃以上が好ましい。ゼオライトの構造を維持する点で400℃以下が好ましい。
加熱工程における昇温速度及び降温速度は、2℃/min以下であることが好ましい。これにより、熱膨張係数に起因する、ゼオライト膜と多孔質支持体のひずみを最小限に抑えることができる。多孔質支持体がアルミナの場合、1℃/min以下であることがさらに好ましい。
加熱工程における保持時間は4時間以上であることが好ましい。
加熱工程における真空下とは、例えば真空ポンプで減圧した開放系を表す。減圧は、短時間で硫黄分を除去できる点で100kPa以下が好ましい。簡便な減圧装置により短時間で加熱工程を行える点で0.01Pa以上が好ましい。
本発明のゼオライト膜の再生方法は、硫化水素を含有する炭化水素ガスから硫化水素を高選択的に透過分離するためのゼオライト膜に関して、その低下した分離性能を回復して再利用する方法を提供することができる。
ゼオライト膜を用いた硫化水素の分離性能評価装置の模式図である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
(X線回折測定)
一般的なXRD装置(装置名:RINT UltimaIII、理学電機製)を使用し、試料のXRD測定を行った。測定条件は以下のとおりとした。
線源 : CuKα線(λ=1.54Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件: 毎分4°
発散スリット: 2/3deg
散乱スリット: 2/3deg
受光スリット: 0.3mm
ステップ幅 : 0.02°
測定範囲 : 2θ=5〜40°
(組成分析)
ゼオライト膜のSi/Alモル比は、XRD法により格子定数を算出し、非特許文献(T.Takaishi,The Journal of Physical Chemistry 99(1995)10982−10987)を参考に評価した。硫黄含有量は、エネルギー分散型X線分光法(EDS)で測定した。測定には一般的なSEM−EDS装置(装置名:JSM−IT100 InTouchScope、日本電子(株)製)を用いた。
(硫化水素の分離評価)
図1に示す分離性能評価装置を用いて、ゼオライト膜の分離性能を評価した。硫化水素/メタンのモル比が20/80の混合ガスとなるように、ゼオライト膜表面へ硫化水素を20mL/min、メタンを80mL/minで供給した。膜を透過したガスをスィープガス(He 50mL/min)により回収し、ガスクロマトグラフィーにより定量分析を実施した。測定には一般的なガスクロマトグラフ装置(装置名:Agilent 7890B、アジレント・テクノロジー(株)製、TCD検出器)を用いた。硫化水素分離性能を示す分離係数は次式により算出した。
分離係数=(透過ガス中の硫化水素濃度/透過ガス中のメタン濃度)
/(供給ガス中の硫化水素濃度/供給ガス中のメタン濃度)
参考例1
非特許文献(H.Kita,K.Fuchida,T.Horita,H.Asamura,and K.Okamoto,Separation and Purification Technology 25(2001)261−268)を参考にしてY型ゼオライト膜を作製した。
<種晶付多孔質支持体の作製>
FAU型ゼオライトとして東ソー(株)製HSZ−360HUA12.5gを50mlの純水に分散させ、ボールミルで24時間かけて粉砕した。得られたスラリーに円筒型多孔質支持体(材質:αアルミナ、平均細孔径:0.7μm(表面側:0.15μm)、気孔率:35〜45%、長さ:3cm、外径:1cm、内径:0.7cm)を浸漬し、これを乾燥させることで支持体外表面に種晶を担持した。
<ゼオライト膜付多孔質支持体の作製>
水酸化ナトリウム(関東化学製特級)2.6g、蒸留水26g、及びアルミン酸ソーダ(和光純薬工業株式会社製)0.13gを室温で5min撹拌混合した(溶液1)。また、ケイ酸ナトリウム溶液(3号)(キシダ化学株式会社製)14g及び蒸留水26gを室温で5min撹拌混合した(溶液2)。溶液1と溶液2を混合し、80℃で4h撹拌混合した。得られた混合溶液に種晶付多孔質支持体を浸漬し、85℃で24h水熱合成した。次いで、混合溶液から取り出した支持体を蒸留水で洗浄、乾燥してゼオライト膜付多孔質支持体を得た。得られた多孔質支持体のゼオライト膜部分に対して、XRDによって構成相の同定を行い、当該ゼオライト膜部分のSi/Alの比が1.6であり、その結晶相がNaY型ゼオライトであることを確認した。
得られたNaY型ゼオライト膜付多孔質支持体を、図1に示す評価装置の恒温槽内へ取り付け、脱水処理(150℃、30min、He 50mL/min)を実施した。脱水処理後、恒温槽の温度を30℃へ保持した状態で、硫化水素を2h供給した後の硫化水素分離性能評価を実施した。硫化水素透過度、メタン透過度、及び分離係数を表1に示す。
参考例2
参考例1と同様の方法で、NaY型ゼオライト膜付多孔質支持体を作製し、硫化水素の供給時間を6hとした以外は参考例1と同様の方法で硫化水素分離性能評価を実施した。硫化水素透過度、メタン透過度、及び分離係数を表1に示す。ゼオライト膜の硫黄含有量は7wt%であった。
実施例1
参考例1と同様の方法で、NaY型ゼオライト膜付多孔質支持体を作製し、硫化水素を6h供給後、ゼオライト膜の硫黄含有量を評価した。ゼオライト膜の硫黄含有量は7wt%であった。その後、NaY型ゼオライト膜付多孔質支持体を真空加熱用装置内にアルミナボートを用いて設置し、40Paの真空下(開放系)で200℃、6hの条件でゼオライト膜の硫黄分除去処理を実施した。昇温速度及び降温速度は0.5℃/minとした。硫黄分除去処理後の硫黄含有量は3wt%であった。次いで、硫化水素供給時間を1.5hとした以外は参考例1と同様の方法で硫化水素分離性能評価を実施した。硫化水素透過度、メタン透過度、及び分離係数を表1に示す。
比較例1
参考例1と同様の方法で、NaY型ゼオライト膜付多孔質支持体を作製し、硫化水素の供給時間を7.5hとした以外は参考例1と同様の方法で硫化水素分離性能評価を実施した。硫化水素透過度、メタン透過度、及び分離係数を表1に示す。
Figure 2019171234
以上の実施例から、本発明のゼオライト膜の再生方法を用いることにより、硫化水素の分離性能が低下したゼオライト膜の硫黄含有量を低下させることで、硫化水素の分離性能を回復させることが可能であることが分かる。
本発明のゼオライト膜の再生方法は、天然ガス等の硫化水素含有炭化水素ガスに含まれる硫化水素を除去することで硫化水素の分離性能が低下した膜の再生が可能である。天然ガスの他、農業廃棄物、食品廃棄物等の嫌気性発酵により発生するバイオガスに含まれる有機硫黄化合物を除去する際に分離性能が低下したゼオライト膜を再生することが可能である。
1 硫化水素ガス
2 炭化水素ガス
3 ヘリウム
4 マスフローコントローラー
5 マスフローコントローラー
6 マスフローコントローラー
7 恒温槽
8 モジュール
9 ゼオライト膜付多孔質支持体
10 排気
11 ガスクロマトグラフ
12 排気
13 圧力計
14 真空ポンプ
15 排気

Claims (5)

  1. 硫黄分を含有するゼオライト膜を真空下で30℃以上500℃以下の温度で加熱処理する加熱工程を備えた、硫化水素分離用ゼオライト膜の再生方法。
  2. ゼオライト膜がY型ゼオライトの結晶相を有する請求項1に記載のゼオライト膜の再生方法。
  3. ゼオライト膜が硫黄分を4wt%以上含有している請求項1または2に記載のゼオライト膜の再生方法。
  4. ゼオライト膜の多孔質支持体がアルミナである請求項1乃至3いずれか一項に記載のゼオライト膜の再生方法。
  5. 0.01Pa以上100kPa以下で加熱工程を行う請求項1乃至4いずれか一項に記載のゼオライト膜の再生方法。
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