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JP2019064220A - セラミックシートの製造方法 - Google Patents

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JP2019064220A JP2017194314A JP2017194314A JP2019064220A JP 2019064220 A JP2019064220 A JP 2019064220A JP 2017194314 A JP2017194314 A JP 2017194314A JP 2017194314 A JP2017194314 A JP 2017194314A JP 2019064220 A JP2019064220 A JP 2019064220A
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Norikazu Aikawa
規一 相川
良 西畑
Makoto Nishihata
良 西畑
村上 和久
Kazuhisa Murakami
和久 村上
西川 洋平
Yohei Nishikawa
洋平 西川
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Abstract

【課題】工程の簡略化及びコスト低減が可能な、セラミックシートの製造方法を提供する。【解決手段】本発明のセラミックシートの製造方法は、(I)前記セラミックシートを構成するセラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを基材フィルム上に塗工し、得られた前記原料スラリーの塗膜を乾燥させて前記基材フィルムから剥離することによって、グリーンシートを得る工程と、(II)前記工程(I)で得られた前記グリーンシートの前記基材フィルムと接していた表面を、前記バインダーが溶解性を有する溶剤に接触させる工程と、(III)前記工程(II)で得られた前記グリーンシートを複数用意し、複数の前記グリーンシートを互いに直接的に重ね合わせて積層体とし、当該積層体の状態で前記グリーンシートを焼成する工程と、を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、セラミックシートの製造方法に関する。
セラミックは、耐熱性や耐摩耗性等の機械的性質に加えて電気的、磁気的特性、さらには生体適合性等にも優れたものであることから、多くの分野で広く活用されている。中でもジルコニアを主体とするセラミックは、優れた酸素イオン伝導性を有しているので、固体酸化物形燃料電池の固体電解質として有効に活用することができる。
セラミックシートの製造方法として一般的に実施されているのは、セラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを、ドクターブレード法等によってシート状に成形し、これを乾燥して長尺状のグリーンシートを得、この長尺状のグリーンシートを切断して所定のサイズを有するグリーンシートを作製し、このグリーンシートを焼成する方法である。
グリーンシートを焼成する際には、炉を効率よく使用し、かつ電力コストを抑えて量産化するために、一般に、棚板(セッター)の上に複数のグリーンシートを重ねて配置し、その状態でグリーンシートを焼成する方法が用いられている。
複数のグリーンシートが互いに直接的に接した状態で重ね合わされ、その状態で焼成されると、焼成後にシート同士が強固に付着して剥がれない、又は剥がそうとすると割れてしまうという問題が発生する。特に、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを基材フィルムとして用い、その基材フィルム上に原料スラリーを塗工して成形する方法によって得られたグリーンシートは、その基材フィルムに接していた表面が平滑となる。したがって、グリーンシート同士を、基材フィルムに接していた表面を介して重ね合わせる場合は特に、焼成後のシート同士が強固に付着してしまう。
そこで、例えば特許文献1に記載されているように、従来のセラミックシートの製造方法では、グリーンシート同士を重ね合わせる場合に、グリーンシート同士が直接接触しないように、グリーンシート間に離型粉末として無機粉末を介在させる方法が用いられている。
特開平3−60469号公報
しかし、特許文献1に記載されている方法のように、離型粉末としての無機粉末をグリーンシート間に介在させる場合、焼成後に、無機粉末を除去するためにシートを1枚ずつ洗浄する必要がある。一般的には、付着している粉末を機械的に取り除き、超音波等を用いて水で洗い流したのちに乾燥させる必要があり、そのための装置を用意しなければならない。したがって、このような作業は、手間がかかると同時に、製造するセラミックシートが薄膜シートの場合は当該作業中にシートが割れて歩留りを低下させる要因となっている。
そこで、本発明は、工程の簡略化及びコスト低減が可能な、セラミックシートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、セラミックシートを製造する方法であって、
(I)前記セラミックシートを構成するセラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを基材フィルム上に塗工し、得られた前記原料スラリーの塗膜を乾燥させて前記基材フィルムから剥離することによって、グリーンシートを得る工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前記グリーンシートの前記基材フィルムと接していた表面を、前記バインダーが溶解性を有する溶剤に接触させる工程と、
(III)前記工程(II)で得られた前記グリーンシートを複数用意し、複数の前記グリーンシートを互いに直接的に重ね合わせて積層体とし、当該積層体の状態で前記グリーンシートを焼成する工程と、
を含む。
本発明のセラミックシートの製造方法によれば、工程の簡略化及びコスト低減を実現できる。
本発明のセラミックシートの製造方法の一実施形態において、工程(I)で得られたグリーンシートの一例の断面図を示す。 本発明のセラミックシートの製造方法の一実施形態において、工程(II)の一例として、溶剤を染み込ませた紙をグリーンシートの表面に押し当てる様子を示す断面図である。 本発明のセラミックシートの製造方法の一実施形態において、工程(III)の一例として、10枚のグリーンシートを直接的に重ね合わせることによって形成された積層体がセッター上に配置されている様子を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
本実施形態のセラミックシートの製造方法は、
(I)前記セラミックシートを構成するセラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを基材フィルム上に塗工し、得られた前記原料スラリーの塗膜を乾燥させて前記基材フィルムから剥離することによって、グリーンシートを得る工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前記グリーンシートの前記基材フィルムと接していた表面を、前記バインダーが溶解性を有する溶剤に接触させる工程と、
(III)前記工程(II)で得られた前記グリーンシートを複数用意し、複数の前記グリーンシートを互いに直接的に重ね合わせて積層体とし、当該積層体の状態で前記グリーンシートを焼成する工程と、
を含む。
本実施形態のセラミックシートの製造方法では、焼成時に重ね合わされるグリーンシートの表面のうち少なくとも基材フィルムと接していた表面に対し、焼成前に、溶剤と接触させる処理が施される(上記工程(II))。この処理により、複数のグリーンシートが互いに直接的に重ね合わされた状態で焼成されても、焼成後にシート同士が強固に付着して剥がせない、又は、剥がす際にシートが破損するという問題が生じない。さらに、焼成時には、グリーンシート同士は直接的に重ね合わされて、間に無機粉末等が介在しないため、焼成後に無機粉末を除去する作業が不要となり、当然にその作業のための装置も不要となる。また、本実施形態の製造方法は、グリーンシートの表面を溶剤に接触させるという、非常に簡単な処理を実施するだけであり、この処理によって得られるセラミックシートの特性が大きく変化することもない。したがって、本実施形態の製造方法は、従来の製造方法で得られるセラミックシートの特性を大きく変化させることなく、工程の簡略化及びコスト低減を実現できる。
以下に、本実施形態の製造方法について、より詳しく説明する。
工程(I)では、まず原料スラリーが準備される。原料スラリーは、製造しようとするセラミックシートを構成するセラミック原料粉末と、バインダーとを含む。原料スラリーは、例えば、セラミック原料粉末及びバインダーを、溶剤と混合することによって作製できる。
セラミック原料粉末は、製造目的のセラミックシートに応じて適宜選択することができる。例えば、ジルコニア、アルミナ、セリア、チタニア、シリカ、ムライト、コージェライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルシアン、エンスタタイト、窒化アルミニウム及び窒化珪素等の種々のセラミックが使用できる。
製造目的のセラミックシートが、例えば固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と記載する。)の固体電解質として用いられる電解質シートである場合は、セラミック原料粉末には、電解質シートを構成する固体電解質材料の原料が用いられる。この場合、例えば、ジルコニア系セラミックを原料として用いることが好ましい。具体的には、MgO、CaO、SrO及びBaO等のアルカリ土類金属酸化物;Sc23、Y23、La23、CeO2、Pr23、Nd23、Sm23、Eu23、Gd23、Tb23、Dy23、Ho23、Er23及びYb23等の希土類元素酸化物;並びに、Bi23及びIn23等の酸化物、から選択される少なくともいずれか1種を安定化剤として含有するジルコニアが例示できる。さらに、その他の添加剤として、SiO2、Ge23、B23、SnO2、Ta25及びNb25から選択されるいずれかの酸化物が含まれていてもよい。これらの中でも、より高レベルの酸素イオン伝導性、強度及び靭性を確保する上で好ましいのは、スカンジウム、イットリウム、セリウム、ガドリニウム及びイッテルビウムからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種の希土類元素を、酸化物換算の合計量で8〜15モル%の割合で含む安定化ジルコニアである。
この他、固体電解質材料の原料として、CeO2又はBi23に、CaO、SrO、BaO、Y23、La23、Ce23、Pr23、Nd23、Sm23、Eu23、Gd23、Tb23、Dr23、Ho23、Er23、Yb23、PbO、WO3、MoO3、V25、Ta25及びNb25等から選択される少なくともいずれか1種を添加した、セリア系又はビスマス系の酸化物を用いることもできる。また、LaGaO3等のガレート系の酸化物を用いることもできる。
グリーンシートの作製に用いられるバインダーの種類には制限がなく、従来のセラミックシートの製造方法で公知となっている有機バインダー及び無機バインダーの中から適宜選択できる。
有機バインダーとしては、エチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エチルセルロース等のセルロース類及びワックス類等が例示される。これらの中でもグリーンシートの成形性や強度、特に量産のために大量焼成するときの熱分解性などの点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の炭素数10以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等の炭素数20以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレート又はヒドロキシアルキルメタクリレート類;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルアクリレート又はアミノアルキルメタクリレート類;アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、モノイソプロピルマレート等のマレイン酸半エステル等のカルボキシル基含有モノマー等の中から少なくとも1種を重合又は共重合させることによって得られる、数平均分子量が20,000〜200,000、より好ましくは50,000〜100,000のアクリレート系及びメタクリレート系共重合体が好ましいものとして推奨される。これらの有機バインダーは、単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に好ましいのは、イソブチルメタクリレート及び/又は2−エチルヘキシルメタクリレートを60質量%以上含むモノマーの共重合体である。
無機バインダーとしては、例えば、ジルコニアゾル、シリカゾル、アルミナゾル及びチタニアゾル等から選択される少なくともいずれか1種を使用することができる。
原料スラリーにおけるセラミック原料粉末とバインダーとの質量比は、特には限定されない。セラミック原料粉末100質量部に対して、例えばバインダーは5〜30質量部であってよく、10〜20質量部であってもよい。バインダー量は、原料粉末の粒子径や、製造目的のセラミックシートに要求される強度及び柔軟性等を考慮して、適宜選択することができる。
原料スラリーに用いられる溶剤の種類には制限がなく、従来のセラミックシートの製造方法で公知となっている溶剤の中から適宜選択できる。例えば、水;エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、等の中から適宜選択した溶剤を、単独で使用してもよいし、2種以上を適宜混合して使用してもよい。溶剤の使用量は、グリーンシート成形時における原料スラリーの粘度を考慮して適宜調節すればよく、例えばスラリー粘度が1〜20Pa・s(10〜200ポイズ)、好ましくは1〜5Pa・s(10〜50ポイズ)の範囲となるように調整するのがよい。
原料スラリーには、必要に応じて、分散剤、可塑剤、潤滑剤、界面活性剤及び/又は消泡剤等がさらに添加されてもよい。例えば分散剤は、セラミック原料粉末の解膠や分散を促進するために添加される。分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解質;クエン酸、酒石酸等の有機酸;イソブチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体及びそのアンモニウム塩あるいはアミン塩;ブタジエンと無水マレイン酸との共重合体及びそのアンモニウム塩、等が例示される。例えば可塑剤は、グリーンシートに柔軟性を付与するために添加される。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類;フタル酸ポリエステル類;プロピレングリコール等のグリコール類;グリコールエーテル類、等が例示される。
セラミック原料粉末、バインダー及び溶剤等を混合して作製された原料スラリーを、通常の方法、例えばドクターブレード法、押出成形法又はカレンダーロール法等により、基材フィルム上に塗工し、乾燥させて長尺状のグリーンシートを作製する。この長尺状のグリーンシートを所定のサイズに切断して、所定のサイズを有するグリーンシートを作製する。グリーンシートのサイズ及び厚さは、製造目的のセラミックシートのサイズ及び厚さと、焼成による収縮率とから求められ得る。本実施形態の製造方法で用いられるグリーンシートは、例えば、最終的に得られるセラミックシートが5〜200cm2の面積を有し、かつ50〜300μmの厚さを有するように、その大きさ及び厚さを決定してもよい。
後述の工程(II)の処理、すなわち、グリーンシートの基材フィルムと接していた表面を、グリーンシートに含まれるバインダーが溶解性を有する溶剤に接触させる処理は、長尺状のグリーンシートのままで行ってもよいし、長尺状のグリーンシートを所定サイズに切断したあと1枚ずつに施してもよい。
グリーンシートの塗工に用いられる基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムが用いられる。
工程(II)では、工程(I)で得られたグリーンシートの基材フィルムと接していた表面を、グリーンシートに含まれるバインダーが溶解性を有する溶剤に接触させる。以下、グリーンシートにおいて、工程(I)で基材フィルムと接していた表面を、グリーンシートの「第1表面」ということがある。また、グリーンシートにおいて、工程(I)で基材フィルムと接していた表面と反対側の表面を、グリーンシートの「第2表面」ということがある。図1は、工程(I)で得られたグリーンシートの一例である、グリーンシート1の断面図を示している。図1において、符号1aはグリーンシート1において、工程(I)で基材フィルムと接していた第1表面を示しており、符号1bはグリーンシート1において、工程(I)で基材フィルムと接していた表面と反対側の第2表面を示している。
グリーンシートの第1表面に溶剤を接触させる方法は、特には限定されない。例えば、(1)溶剤を染み込ませた紙、スポンジ又は布等を、グリーンシートの第1表面に押し当てる方法、(2)溶剤を刷毛でグリーンシートの第1表面に塗布する方法、(3)エアスプレー等の噴霧器を用いて溶剤をグリーンシートの第1表面に吹き付ける方法、及び、(4)溶剤を染み込ませたローラーをグリーンシートの第1表面に押し当てる方法、等を用いることができる。図2は、これらの方法のうち上記(1)の方法を示しており、溶剤を染み込ませた紙2をグリーンシート1の第1表面1aに押し当てる様子を示している。
グリーンシートの第1表面に溶剤を接触させることにより、グリーンシートの第1表面におけるバインダーの一部が溶解し、第1表面が適度に粗化される。第1表面は基材フィルムに接していた面であり、非常に平滑である。したがって、第1表面に溶剤を接触させることなく、その第1表面を介して他のグリーンシートと重ね合わせてグリーンシートを焼成した場合、焼成後のシート同士が強固に付着しやすくなる。これに対し、本実施形態では、グリーンシートの第1表面を溶剤に接触させて適度に粗化しているので、複数のグリーンシートを、第1表面を介して互いに直接的に重ね合わせた状態で焼成しても、焼成後のシート同士が強固に付着しすぎるという問題が生じにくい。したがって、本実施形態の製造方法の工程(II)を実施することにより、焼成後にシート同士が強固に付着して剥がせない、又は、剥がす際にシートが破損する、という問題の発生を抑えることができる。なお、グリーンシートの第1表面に溶剤を接触させる際に、グリーンシートの第1表面を溶剤に浸漬させた場合、第1表面におけるバインダーが溶剤に溶けすぎて第1表面が粗化されすぎてしまう場合がある。したがって、グリーンシートの第1表面に溶剤を接触させる方法としては、上記に例示した(1)〜(4)の方法が、第1表面の適度な粗化を実現できるので好ましい。
グリーンシートの第1表面の粗化の程度は、製造目的のセラミックシートに求められる表面粗さRa等を考慮して、適宜決定され得る。例えば、製造目的のセラミックシートがSOFC用の固体電解質として用いられる電解質シートである場合、得られるセラミックシートの表面粗さRaは、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.4μm以下である。したがって、このような表面粗さRaを満たすセラミックシートが得られるように、グリーンシートの表面の粗化の程度が調整されるとよい。なお、ここでいう表面粗さRaとは、JIS B0601:2001に準拠して測定される表面粗さ(Ra)のことである。以下、本明細書において特定される表面粗さRaも同様である。
第1表面に塗布する溶剤の量は特には限定されず、用いられる溶剤の種類等に応じて適宜調整可能である。第1表面に塗布する溶剤の単位面積当たりの量は、例えば0.01〜10mg/cm2であってもよい。
グリーンシートの第1表面を溶剤に接触させた後、第1表面上の溶剤を乾燥させる。乾燥方法は、特には限定されない。例えば、風乾及び熱風乾燥等の方法を用いることができる。溶剤を適宜選択して、簡便な方法である風乾を用いることが好ましい。
グリーンシートの第1表面に接触させる溶剤は、グリーンシートに含まれるバインダーがその溶剤に対して溶解性を有するものであれば、特には限定されない。例えばグリーンシートの作製に用いられ得る、上記に例示したバインダーを考慮すると、それらのバインダーが溶解し得る溶剤として、溶解度パラメータが9以上の溶剤が好ましく、10以上である溶剤がより好ましい。また、同様の理由から、溶解度パラメータが20以下の溶剤が好ましく、16以下の溶剤がより好ましい。
また、上述のとおり、風乾にて乾燥させることができる溶剤を用いることが好ましい。したがって、蒸発速度指数が40以上の溶剤が好ましく、300以上の溶剤がより好ましい。一方、蒸発速度指数が高すぎると、グリーンシートの第1表面に接触させた溶剤がすぐに乾燥してしまい、第1表面を粗化する効果が十分に得られない場合がある。したがって、第1表面を粗化する効果を得やすくするために、蒸発速度指数が800以下の溶剤を用いることが好ましい。本願明細書において、「蒸発速度指数」とは、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした時の酢酸ブチルに対する溶剤の蒸発速度比であり、「溶剤の蒸発速度指数」とは、溶剤が1つの組成からなる場合は当該1つの組成の蒸発速度指数のことであり、溶剤が複数の組成を含む混合溶剤である場合は当該複数の組成のモル比に対する蒸発速度指数の和のことである。
以上の点を考慮すると、好ましい溶剤は、低級アルコール類、ケトン類及有機酸のエステル類から選択される少なくともいずれか1種であり、特に、低級アルコール類が好ましい。
溶剤として、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチルプロパノール、エチレングリコール、アセトン、2−ブタノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等が例示される。
工程(II)において、グリーンシートの第1表面を溶剤に接触させながら、又は、グリーンシートの第1表面を溶剤に接触させた後であって、かつ溶剤が完全に乾燥除去されるよりも前に、グリーンシートの第1表面を、プレスシートを介して加圧してもよい。すなわち、例えば、グリーンシートの第1表面にプレスシートに染み込ませた溶剤を接触させながら、同時にそのプレスシートを介して第1表面を加圧してもよいし、グリーンシートの第1表面に上記に例示した(1)〜(4)のような方法で溶剤を接触させた後、溶剤が完全に乾燥してしまう前に、プレスシートを介して第1表面を加圧してもよい。なお、図2には、上記に例示した(1)の方法で溶剤をグリーンシート1の第1表面1aに接触させるのと同時に、加圧を行う様子が示されている。すなわち、図2に示す例では、溶剤を染み込ませた紙2がプレスシートとしても用いられている。
加圧に用いられるプレスシートは、特には限定されないが、グリーンシートの第1表面を適度に粗化することが可能な表面を有するシートが好ましい。例えば、紙、粗化紙、布、スポンジ、樹脂シート及びメッシュ状のシート等が用いられ得る。プレスシートにおいて、加圧時にグリーンシートの表面と接するプレス面の表面粗さRaは、製造目的のセラミックシートに求められる表面粗さRa等を考慮して、適宜決定されるとよい。プレスシートのプレス面は、グリーンシートの第1表面を粗化しすぎないように、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下の表面粗さRaを有する。グリーンシートの第1表面を粗化しやすくするために、プレスシートのプレス面は、例えば0.3μm以上の表面粗さRaを有することが好ましい。
加圧の手段は、特には限定されず、例えばプレス機、スタンプ及びローラー等を使用できる。
加圧の圧力は、プレスシート表面の粗さや、溶剤の乾き具合等を考慮して、調整されることが望ましい。例えば、加圧の圧力は、グリーンシートの第1表面を粗化しすぎないように、例えば20MPa以下、好ましくは15MPa以下、より好ましくは5MPa以下とする。加圧の圧力は、0.01MPa以上が好ましい。
なお、上記の説明では、工程(II)においてグリーンシートの第1表面のみが処理される(溶剤に接触させる、さらに必要に応じて加圧される)例について説明したが、第2表面に対して同様の処理を行うことも可能である。すなわち、工程(II)では、グリーンシートの片面(第1表面のみ)が処理されてもよいし、両面(第1表面及び第2表面)が処理されてもよい。
工程(II)で実施されるグリーンシートの表面処理の条件(例えば、グリーンシートに接触させる溶剤の量や、加圧の圧力等)を適宜調整することにより、得られるシートの強度特性を向上させることが可能である。したがって、本実施形態の製造方法によっても、従来の製造方法で得られたセラミックシートと同程度の強度特性を有するシートを得ることが可能である。
工程(III)では、工程(II)で得られたグリーンシートを複数用意し、それら複数のグリーンシートを互いに直接的に重ね合わせて積層体とし、当該積層体の状態で各グリーンシートを焼成する。すなわち、本実施形態の製造方法では、グリーンシート間に、焼成後のシート同士の付着を避けるための無機粉末を介在させる必要はない。
一方、グリーンシートのハンドリング中あるいは焼成過程において、グリーンシートがやわらかくなる温度域で、重ねたグリーンシート同士が付着しないように、グリーンシート間に有機粉末を介在させることが好ましい。なお、有機粉末は焼成により消失するので、無機粉末を介在させたときのような焼成後の除去工程は不要である。有機粉末は、焼結条件下で焼失するものであれば、その種類の如何は問わない。有機粉末として、例えば、天然有機質粉末、もしくは、アクリル樹脂粉末及びメラミンシアヌレートなどの昇華性樹脂粉末などの合成有機樹脂粉末等を使用できる。中でも特に好ましいのは、小麦粉、トウモロコシ澱粉(コーンスターチ)、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉質粉末、または、アクリル樹脂粉末である。好ましい有機粉末の使用量は、グリーンシート面積に対して、0.005〜2mg/cm2程度である。
グリーンシート同士を重ね合わせる際に、グリーンシートの向きは特には限定されない。すなわち、第1表面同士及び第2表面同士のように、同じ表面同士が互いに隣接するようにグリーンシートを重ね合わせてもよいし、第1表面と第2表面とが互いに隣接するようにグリーンシートを重ね合わせてもよい。
積層体は、例えばセッター上に、グリーンシートの第1表面及び第2表面がセッターの表面に沿う向きに配置される。積層体において重ね合わされるグリーンシートの枚数は、特に限定されないが、例えば2〜40枚であり、好ましくは3〜20枚である。図3は、一例として、10枚のグリーンシート1を直接的に重ね合わせることによって形成された積層体3が、セッター4上に配置されている様子が示されている。なお、セッターには、セラミックシートを作製する際に用いられる公知のセラミックセッターが使用できる。
グリーンシートの焼成は、積層体の配置状態を維持したままで行われる。具体的な焼成の条件は特には制限されず、グリーンシートを焼成する公知の方法を用いることが可能である。すなわち、グリーンシートに用いられている原料に応じて適切な温度条件及び時間条件を選択して、目的とする結晶構造を有する焼結体が得られるように加熱焼成すればよい。一例として、グリーンシートからバインダー及び溶剤等の有機成分を除去するために、150〜600℃、好ましくは250〜500℃で5〜80時間程度処理し、次いで、空気雰囲気下もしくは低酸素濃度雰囲気下で1000〜1800℃、好ましくは1200〜1600℃で2〜10時間保持してグリーンシートを焼成してもよい。
焼成後の積層体からセラミックシートを1枚ずつ剥がすことにより、セラミックシートが得られる。本実施形態の製造方法によれば、セラミックシートを破損させることなく、1枚ずつのシートに分けることが可能である。なお、上記のとおり、焼成時にグリーンシート間に無機粉末を介在させていないため、無機粉末を排除するために焼成後のシートを洗浄する必要がない。
以上のとおり、本実施の形態の製造方法は、グリーンシートの少なくとも第1表面を溶剤に接触させるという簡単な工程を実施するだけであるため、従来の方法で製造されるセラミックシートから特性を大きく変化させることなく、工程の簡略化及びコスト低減を実現できる。
以下では、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
まず、以下に示す実施例及び比較例で用いられたグリーンシートの作製方法、さらに実施例及び比較例で作製されたジルコニアシートの評価方法について説明する。
[グリーンシートの第1例の作製方法]
原料粉末として、10モル%酸化スカンジウム1モル%酸化セリウムを固溶した安定化ジルコニア粉末(第一稀元素化学工業社製、商品名「10Sc1CeSZ」、d50;約0.5μm)を用いた。この原料粉末100質量部に対し、メタクリル系共重合体からなるバインダー(数平均分子量;100,000、ガラス転移温度;0℃)を固形分換算で18質量部と、分散剤として市販のポリカルボン酸エステル型高分子分散剤2質量部と、可塑剤としてジブチルフタレート3質量部と、溶剤としてトルエン/酢酸エチル(質量比=1/1)の混合溶剤50質量部とを、ジルコニアボールが装入されたナイロンミルに入れ、40時間ミリングしてスラリーを調製した。得られたスラリーを、碇型の攪拌機を備えたジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、攪拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度:40℃で減圧下に濃縮脱泡し、25℃での粘度を3Pa・sに調整して、塗工用の原料スラリーとした。この原料スラリーを、塗工装置内で、基材フィルムとしてのPETフィルム上に、ドクターブレード法により連続的に塗工した。同じ塗工装置内で、PETフィルム上の塗膜を100℃で約1時間乾燥して、厚さ約0.25mm、長尺状の固体電解質用グリーンシートを得た。この長尺状のグリーンシートをPETフィルムから剥離したのち、金型を用いた切断により、一辺約160mmの略正方形のグリーンシートを得た。このようにして得られたグリーンシートを、グリーンシートの第1例とする。なお、以下、第1例のグリーンシートにおいて、基材フィルムであるPETフィルムに接していた面、すなわちグリーンシートの第1表面を「PET面」、PET面と反対側の、基材フィルムと接していなかった面、すなわちグリーンシートの第2表面を「Air面」と記載することがある。
[グリーンシートの第2例の作製方法]
原料粉末として、10モル%酸化スカンジウム1モル%酸化セリウムを固溶した安定化ジルコニア粉末(第一稀元素化学工業社製、商品名「10Sc1CeSZ」、d50;約0.5μm)を用いた。この原料粉末100質量部に対し、後述のバインダー溶液117部と、分散剤として市販のポリカルボン酸エステル型高分子分散剤3質量部と、可塑剤としてジブチルフタレート6質量部とを、ジルコニアボールが装入されたナイロンミルに入れ、40時間ミリングしてスラリーを調製した。得られたスラリーを、碇型の攪拌機を備えたジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、攪拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度:40℃で減圧下に濃縮脱泡し、25℃での粘度を2Pa・sに調整して、塗工用の原料スラリーとした。この原料スラリーを、塗工装置内で、基材フィルムとしてのPETフィルム上に連続的に塗工した。同じ塗工装置内で、PETフィルム上の塗膜を100℃で約1時間乾燥して、厚さ約0.2mm、長尺状の固体電解質用グリーンシートを得た。この長尺状のグリーンシートをPETフィルムから剥離したのち、金型を用いた切断により、一辺約160mmの略正方形のグリーンシートを得た。このようにして得られたグリーンシートを、グリーンシートの第2例とする。なお、上記のバインダー溶液は、トルエン40質量部及び2−ブタノン60質量部で構成された混合溶液を室温にて攪拌しながら、この混合溶液にポリビニルブチラール系樹脂(積水化学工業社製 BL1)17質量部を徐々に加えることによって、調製された。なお、以下、第2例のグリーンシートにおいて、基材フィルムであるPETフィルムに接していた面、すなわちグリーンシートの第1表面を「PET面」、PET面と反対側の、基材フィルムと接していなかった面、すなわちグリーンシートの第2表面を「Air面」と記載することがある。
[評価方法]
(剥がれやすさ)
10枚が重なっている焼成後のジルコニアシートを手で剥がして、シート同士の剥がれやすさ(剥離性)を以下の3段階で評価した。
◎:シート同士が付着しておらず、剥離性に優れている。
○:シート同士は付着していたが容易にシートを剥がすことができ、剥離性が良好である。
×:シート同士が強固に付着しており、シートを剥がせない又は剥がす作業中にシートが割れてしまい、剥離性が劣っている。
(粉の飛散及び拡散)
「剥がれやすさ」の評価後に、粉の飛散及び拡散の有無を目視にて確認した。なお、粉の飛散や拡散がある場合は、粉の洗浄が必要となる。
(表面粗さRa)
焼成後のジルコニアシートについて、グリーンシートの際に処理した表面、すなわちグリーンシートのPET面に相当する表面の表面粗さRaを、触針式表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製「サーフテスト SJ−201」、規格:JIS B0601:2001)を用いて測定した。なお、グリーンシートの際に表面を処理しなかった比較例1及び2のジルコニアシートについては、グリーンシートのPET面に相当する側の表面の表面粗さRaを測定した。
(曲げ強度)
焼成後のジルコニアシートを、高速ダイヤモンドカッターにより5mm幅、30mm長さの短冊に切り出して測定サンプルとした。この測定サンプルについて、JIS R1601:1995に準じて4点曲げ強度を測定した。すなわち、測定サンプルを、グリーンシートのAir面に相当する面を上にして、スパン30mmで配置された2本の下部支柱上に載置し、室温にて、スパン20mmで配置された2本の上部支柱から、クロスヘッド速度0.5mm/minで荷重を加えたときの、破断に至る最大応力を測定し、同JISに記載の「曲げ強さの計算」の式にしたがって求めた。
次に、各実施例及び比較例について詳細に説明する。
[実施例1]
第1例のグリーンシートを10枚用意した。約5mlの酢酸エチル(溶解度パラメータ:9.1、蒸発速度指数:615)を、一辺約180mmの略正方形に切り出した厚紙全面に垂らし、その上に同寸法の上質紙を載せた。酢酸エチルは、厚紙から上質紙に徐々に浸みだしていた。グリーンシート1枚を、酢酸エチルを染み込ませた上質紙と厚紙とで挟み込み、10tfの力(グリーンシート面積に対して、約3.8MPaとなる)で5秒間プレスした。プレス後、グリーンシートを取り出して風乾した。同様の処理を残り9枚のグリーンシートにも施した。すなわち、実施例1では、グリーンシートのPET面及びAir面の両表面を溶剤である酢酸エチルで処理した。風乾したグリーンシート10枚を、それぞれPET面に、市販の食品用コーンスターチをふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートとしてジルコニアシートを得た。10枚が重なったジルコニアシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表1に示す。
[実施例2]
第1例のグリーンシートを10枚用意した。グリーンシートのAir面が下になるようにグリーンシート1枚をとり、液溜めに2−ブタノン(溶解度パラメータ:9.3、蒸発速度指数:572)を入れた市販の塗装用エアブラシにより、グリーンシートの上面、すなわちグリーンシートのPET面にほぼ均一になるように2−ブタノンを吹き付けた。その直後、2−ブタノンを吹き付けた面の上にグリーンシートと同寸法の上質紙を載せ、200kgfの力(グリーンシート面積に対して、約0.077MPaとなる)で20秒間プレスした。プレス後、グリーンシートを取り出して風乾した。同様の処理を残り9枚のグリーンシートにも施した。すなわち、実施例2では、グリーンシートのPET面のみを溶剤である2−ブタノンで処理した。風乾したグリーンシート10枚を、それぞれPET面に、市販の食品用コーンスターチをふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートとしてジルコニアシートを得た。10枚が重なったジルコニアシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表1に示す。
[実施例3]
第2例のグリーンシートを10枚用意した。グリーンシートのAir面が下になるようにグリーンシート1枚をとり、液溜めにエタノール(溶解度パラメータ:12.7、蒸発速度指数:340)を入れた市販の塗装用エアブラシにより、グリーンシートの上面、すなわちグリーンシートのPET面にほぼ均一になるようにエタノールを吹き付けた。その直後、エタノールを吹き付けた面の上にグリーンシートと同寸法の上質紙を載せ、200kgfの力(グリーンシート面積に対して、約0.077MPaとなる)で20秒間プレスした。プレス後、グリーンシートを取り出して風乾した。同様の処理を残り9枚のグリーンシートにも施した。すなわち、実施例3では、グリーンシートのPET面のみを溶剤であるエタノールで処理した。風乾したグリーンシート10枚を、それぞれPET面に、アクリル樹脂粉末(日本触媒社製 エポスターMA)をふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートとしてジルコニアシートを得た。10枚が重なったジルコニアシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表1に示す。
[実施例4]
第2例のグリーンシートを10枚用意した。グリーンシートのAir面が下になるようにグリーンシート1枚をとり、メタノール(溶解度パラメータ:14.5、蒸発速度指数:610)を染み込ませたゴムローラーを表面に押し当てて、0.02MPaのプレス圧でほぼ均一にロールプレスし、風乾した。同様の処理を残り9枚のグリーンシートにも施した。すなわち、実施例4では、グリーンシートのPET面及びAir面の両表面を溶剤であるエタノールで処理した。風乾したグリーンシート10枚を、それぞれPET面に、アクリル樹脂粉末(日本触媒社製 エポスターMA)をふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートとしてジルコニアシートを得た。10枚が重なったジルコニアシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表1に示す。
[実施例5]
グリーンシートを重ね合わせて積層体を作製する際に、グリーンシートそれぞれのPET面にアクリル樹脂粉末を塗布しなかった以外は、実施例3と同様にしてジルコニアシートを得た。10枚が重なったジルコニアシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表1に示す。
なお、実施例5で得られたジルコニアシートの一部に、実施例3で得られたジルコニアシートに見られなかったしわが発生した。
[比較例1]
第1例のグリーンシートを10枚用意した。このグリーンシート10枚を、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートとしてジルコニアシートを得た。10枚が重なったジルコニアシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表1に示す。
[比較例2]
第2例のグリーンシートを10枚用意した。グリーンシートのAir面が下になるようにグリーンシート1枚をとり、その上に約0.2gのアルミナ粉(昭和電工株式会社製「AL15−2」)を落として、刷毛によりほぼ均一に塗布した。すなわち、グリーンシートのPET面に、アルミナ粉を塗布した。同様の処理を残り9枚のグリーンシートにも施した。このグリーンシート10枚を、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートとしてジルコニアシートを得た。10枚が重なったジルコニアシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表1に示す。
Figure 2019064220
表1に示されているように、PET面の片面、又は、PET面及びAir面の両面が溶剤で処理されたグリーンシートを用いた実施例1〜5では、複数のグリーンシートを互いに接した状態で直接重ね合わせて焼成しても、焼成後に、シートを破損させずに剥がすことができた。また、実施例1〜5では、グリーンシート間にアルミナ粉を介在させることなく焼成したので、その後の洗浄工程は不要であった。これに対し、比較例1では、グリーンシートの表面を溶剤で処理せずに重ね合わせて焼成したため、焼成後のシート同士が付着して剥がせない又は剥がす時にシートが割れてしまった。また、比較例2では、グリーンシート間にアルミナ粉を介在させて重ね合わせて焼成したので、剥がれやすさの点では問題なかったものの、粉の飛散及び拡散が生じ、焼成後に洗浄工程が必須であった。
以上のとおり、本発明の製造方法が実施された実施例1〜5では、いずれも焼成後に積層されたシートを剥がせる状態にできるにもかかわらず、その後の洗浄工程が不要であり、工程の簡略化及びコスト低減の効果が期待できる。
本発明によれば、セラミックシートの製造において、工程の簡略化及びコスト低減の効果が期待できる。したがって、本発明は、例えば、SOFC用の固体電解質として用いられる電解質シートの製造コスト削減にも寄与し得る。
1 グリーンシート
1a 第1表面
1b 第2表面
2 溶剤を染み込ませた紙
3 積層体
4 セッター

Claims (11)

  1. セラミックシートを製造する方法であって、
    (I)前記セラミックシートを構成するセラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを基材フィルム上に塗工し、得られた前記原料スラリーの塗膜を乾燥させて前記基材フィルムから剥離することによって、グリーンシートを得る工程と、
    (II)前記工程(I)で得られた前記グリーンシートの前記基材フィルムと接していた表面を、前記バインダーが溶解性を有する溶剤に接触させる工程と、
    (III)前記工程(II)で得られた前記グリーンシートを複数用意し、複数の前記グリーンシートを互いに直接的に重ね合わせて積層体とし、当該積層体の状態で前記グリーンシートを焼成する工程と、
    を含む、セラミックシートの製造方法。
  2. 前記溶剤は、9以上、20以下の溶解度パラメータを有する、
    請求項1に記載のセラミックシートの製造方法。
  3. 前記溶剤は、40以上、800以下の蒸発速度指数を有する、
    請求項1又は2に記載のセラミックシートの製造方法。
    ここで、「蒸発速度指数」とは、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした時の酢酸ブチルに対する溶剤の蒸発速度比であり、「溶剤の蒸発速度指数」とは、溶剤が1つの組成からなる場合は当該1つの組成の蒸発速度指数のことであり、溶剤が複数の組成を含む混合溶剤である場合は当該複数の組成のモル比に対する蒸発速度指数の和のことである。
  4. 前記溶剤は、低級アルコール類、ケトン類及有機酸のエステル類から選択される少なくともいずれか1種である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックシートの製造方法。
  5. 前記溶剤は、低級アルコール類である、
    請求項4に記載のセラミックシートの製造方法。
  6. 前記工程(II)において、前記グリーンシートの前記基材フィルムと接していた前記表面を前記溶剤に接触させながら、又は、前記グリーンシートの前記基材フィルムと接していた前記表面を前記溶剤に接触させた後であって、かつ前記溶剤が完全に乾燥除去されるよりも前に、前記グリーンシートの前記基材フィルムと接していた前記表面を、プレスシートを介して加圧する、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックシートの製造方法。
  7. 前記プレスシートは、0.3μm以上10μm以下の表面粗さRaを有する、
    請求項5に記載のセラミックシートの製造方法。
  8. 前記プレスシートを介して前記グリーンシートの前記表面を加圧する際の圧力が、0.01MPa以上、20MPa以下である、
    請求項6又は7に記載のセラミックシートの製造方法。
  9. 前記セラミックシートが、固体酸化物形燃料電池の固体電解質として用いられる電解質シートであって、
    前記セラミック原料粉末が、前記電解質シートを構成する固体電解質材料の原料である、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミックシートの製造方法。
  10. 前記固体電解質材料が、スカンジウム、イットリウム、セリウム、ガドリニウム及びイッテルビウムからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種の希土類元素を酸化物換算の合計量で8〜15モル%の割合で含む安定化ジルコニアである、
    請求項9に記載のセラミックシートの製造方法。
  11. 前記セラミックシートの厚さが50μm以上、300μm以下である、
    請求項1〜10のいずれか1項に記載のセラミックシートの製造方法。
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