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JP2019042958A - 化粧シートおよび化粧板 - Google Patents

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佐川 浩一
Koichi Sagawa
浩一 佐川
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Abstract

【課題】ハロゲン系の難燃剤を使わず、薄膜化による意匠低下も起こさず、無機材料添加量を多くしても、機械物性や生産性が低下する事のない、不燃性能を持ったオレフィン系の化粧シート及び化粧板の提供。【解決手段】無機物含有樹脂層1、模様層2、ポリオレフィン系透明樹脂層3、及び表面保護層4を少なくとも有し、無機物含有樹脂層1が、厚み30〜110μmの範囲内にあり、かつ、無機物60〜85質量%、炭化水素系樹脂1〜39質量%、分散剤0.01〜1質量%の配合からなる混合物であり、製膜方向に1.1〜5.0倍に延伸されてなる化粧シート10。更に、無機物含有樹脂層1が、製膜方向と垂直な方向に1.1〜1.5倍に延伸されている化粧シート。無機物が炭酸カルシウムを主原料とし、副原料として、顔料、二酸化チタンタルク、マイカ、タルク、シリカから選択される1種類以上を含有する方法。【選択図】図1

Description

本発明は、木質系ボード類、無機系ボード類、金属板等の各種化粧基板の表面に接着剤で貼り合わせて化粧版として用いる化粧シートに関し、特にポリオレフィン系樹脂を主に用いた化粧シートに関する。
従来、化粧シートは、各種基材に意匠性を付与する為に貼り合せるものであり、当初は紙製あるいはポリ塩化ビニル樹脂製のものが主に製造・使用されていた。しかし近年の環境問題への関心の高まりから、ポリ塩化ビニル樹脂製の化粧シートは敬遠されており、それに置き換わる形で、ポリオレフィン系樹脂をベースにしたものが好適に使用されてきている。
化粧シートのポリ塩化ビニル樹脂製からポリオレフィン系樹脂製への切り替えに際しては、当初より様々な問題が指摘されていたが、技術の成熟によりその多くは解決されていった。しかし不燃性能に関わる部分では、ポリオレフィン系樹脂製化粧シートでポリ塩化ビニル樹脂製の化粧シートと同等の性能を付与することはこれまで困難であった。それゆえ、ポリオレフィン系樹脂に難燃剤を添加する、薄膜化や無機成分の添加などの手段により、樹脂の使用量を減らす等の方法が検討されている(例えば参考文献1など)。
しかしながら、難燃剤添加は、効果の高い臭素系はハロゲン物質であり、EU(欧州連合)のRoHS指令とREACH規則などに抵触してしまう問題が懸念される。
また薄膜化は、シートの機械物性や意匠性の低下に繋がるという問題がある。そして無機成分の添加量を多くすると、機械物性が低下したり生産が不安定化したりする為、前者であれば配合量を抑制する、後者であれば配合量を抑制する、あるいは生産速度を遅くする、もしくはその両方を組み合わせるなどする必要があった。しかしこのような方法を採用すれば、生産性の著しい低下を招くことになる。
特許第5699703号公報
以上の問題を鑑み、本発明の課題とするところは、従来のオレフィン系化粧シートにおいて起きる制限を解消する事、すなわち、ハロゲン系の難燃剤を使わず、薄膜化による意匠低下も起こさず、無機材料添加量を多くしても、機械物性や生産性が低下する事のない、不燃性能を持ったオレフィン系の化粧シートおよび化粧板を提供することである。
本発明はこの課題を解決するものであり、すなわちその請求項1にかかる発明は、
無機物含有樹脂層、模様層、ポリオレフィン系透明樹脂層、及び表面保護層を少なくとも有する化粧シートにおいて、前記無機物含有樹脂層が、厚み30〜110μmの範囲内にあり、かつ、無機物60〜85質量%、炭化水素系樹脂1〜39質量%、分散剤0.01〜1質量%の配合からなる混合物であり、製膜方向に1.1〜5.0倍に延伸されてなる事を特徴とする化粧シートである。
その請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の前記無機物含有樹脂層が、更に製膜方
向と垂直な方向への延伸により、1.1〜1.5倍に延伸されている事を特徴とする、請求項1に記載の化粧シートである。
その請求項3にかかる発明は、前記無機物が、炭酸カルシウムを主原料とする事を特徴とする、請求項1または2に記載の化粧シートである。
その請求項4にかかる発明は、前記無機物が、炭酸カルシウムを主原料とし、副原料として、顔料、二酸化チタン、タルク、マイカ、シリカからなる群の中から選ばれる1種類以上を含有する事を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シートである。
その請求項5にかかる発明は、前記無機物含有樹脂層と前記模様層の間に、更に受容層が設けられている事を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シートである。
その請求項6にかかる発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シートを、不燃板に貼り合わせた事により得られる化粧板である。
本発明はその請求項1記載の発明により、無機分を多く含有しながらも、機械物性及び生産性に優れた化粧シートを得る事ができる。無機物含有樹脂層に延伸処理を行う事で、例えば製膜直後のスピードが遅く、また厚膜になっていたとしても、その後の延伸によりシートが引き延ばされるので、最終的な生産速度は、その延伸倍率分だけ高速になり、厚みも同じく延伸倍率分だけ薄くなる。また延伸する事によって、樹脂の結晶化が促進する為に機械物性が向上する。更には、延伸時に樹脂と無機物との界面で発生する微小な亀裂(クレーズ)が光を乱反射させる為、不透明になることにより隠蔽性も付与できる。
ここで延伸倍率とは、延伸処理前のシートの長さを1として、延伸処理後のシートの長さを倍率で表した値である。この延伸倍率としては、1.1〜5.0倍の範囲内が望ましく、更に望ましくは1.5〜3.0倍の範囲内であり、更に望ましくは1.8〜2.5倍の範囲内である。1.1倍以上の延伸をする事で、上記の効果が有効に発揮され、5.0倍以下にする事で、延伸中の膜切れ・面荒れなどを起こさないシートが得られる。
延伸後の厚みは30〜110μmの範囲内が望ましい。30μm以上とすることで、実用上充分な機械物性を保持できると共に、必要な隠蔽性を得る事もできる。110μm以下とする事で、不燃化粧板用のシートとして充分な量まで樹脂分を減らす事ができる。逆に110μm以上の厚みでは、使用される樹脂量が従来の化粧シート用着色原反中の樹脂量と変わらなくなり、コストが上昇して工業的な価値が低下してしまう。
本発明はその請求項2記載の発明により、引き裂き性を向上させる事が可能になる。ロールの周速比だけで延伸した、所謂1軸延伸シートは、延伸方向の引張や引裂きに対しては強い機械強度を有するが、延伸方向に垂直な方向の引張や引裂きの負荷に対しては、裂け易いという性質を持ってしまう。これを補う為に、横方法への延伸が好適である。横方向の延伸は、最低限の機械強度付与が主目的の為、あまり延伸倍率を上げる必要はなく、1.1〜1.5倍の範囲内が好適である。延伸倍率が1.1倍を超える事で、機械物性向上効果が見られ、1.5倍以下にする事で、後工程での熱収縮を抑制する事ができる。
後工程での熱収縮は、具体的には、印刷後の乾燥工程、ポリオレフィン系透明樹脂層の積層工程、積層完了後の養生工程などが挙げられる。特に、ポリオレフィン系透明樹脂層の積層を押出ラミネーション法により行なおうとする場合には、熱収縮は顕著に起きやすいが、延伸倍率を1.1〜1.5倍の範囲内にしておけば、その問題を防ぐ事が可能となる。
本発明はその請求項3記載の発明により、経済的に安価、且つ樹脂成形に大きな影響を与える事なく無機分の割合の高い無機物含有樹脂層を得る事ができる。その理由としては、炭酸カルシウムを主原料とすることで、粉砕工程で形状の自由度を高められ、粒径、表面の平滑性、粒の球状感を向上させる事ができる為である。
平均粒径は粒度分布の50%平均(D50)が0.5〜10μmの範囲内にあるのが好適で、特に1.0〜5μmの範囲内にあればより望ましく、2.0〜5μmの範囲内にあると、更に望ましい。0.5μm以上であれば、品質に影響を与えるレベルの凝集を起こしにくく、10μm以下であれば、確率的に発生する粒径の大きな炭酸カルシウムがメッシュを詰まらせたり、押出機内部を傷つけたりする危険性を回避できる。表面の平滑性は高いほど、粒の球状感は高い(球に近い)程、高含有が可能になる。
本発明はその請求項4記載の発明により、更なる付加価値を付与する事ができる。顔料を添加する事で化粧シートにした場合の意匠性向上ができ、二酸化チタンを添加する事で、隠蔽性を更に向上させると共に、白度を向上させる効果も同時に発現させる事ができる。タルク、マイカ(雲母)などを添加する事で、シートの機械強度を更に向上させる事ができる。
本発明はその請求項5記載の発明により、模様層の密着性を向上させる事ができる。延伸したシートは、配向がかかる事により、印刷などにより付与された模様層の密着性を低下させてしまう事があるが、受容層を設ける事で模様層の密着性を補完する役割を担わせる事ができる。受容層の材質には特段の制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。また、印刷インキの密着性向上や、印刷後のインキの滲み抑制を目的として、これらの樹脂に炭酸カルシウムやシリカなどを添加する事も好適に行なわれる。
本発明はその請求項6記載の発明により、無機物を多く含んだ化粧シートからなる、ポリオレフィン系の化粧板を得る事ができる。基材に不燃板を用いれば、同じ厚みの従来仕様の化粧シートを貼った場合には不燃性能が得られなかったとしても、本発明の化粧シートを貼った場合には、化粧シートに無機分を多く含有させた分、有機分を減らす事ができる為、不燃性性能が発現される。
本発明の化粧シートの第一実施例の断面の構造を示す説明図である。 本発明の化粧シートの第二実施例の断面の構造を示す説明図である。
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの第一実施例の断面の構造を示す。本発明の化粧シート10は、無機物含有樹脂層1の上に、模様層2、ポリオレフィン系透明樹脂層3、表面保護層4をこの順に積層した積層体からなる。
また、図2は本発明の化粧シートの第二実施例の断面の構造を示す。本発明の化粧板20は、基材とした不燃板12の上に無機物含有樹脂層1を積層し、さらに受容層13、模様層2、ポリオレフィン系透明樹脂層3、表面保護層4をこの順に積層した積層体からなる。
ポリオレフィン系透明樹脂層3に用いるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、具体的にはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリ
デセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどを)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものを使用する事ができる。
無機物含有樹脂層1に用いる無機物としては、特に限定されるものではないが、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、マイカ(雲母)、シリカ、各種顔料などを好適に用いる事ができる。
模様層2は、化粧シートに木目柄、石目柄、砂地柄、抽象柄など意匠性を付与するため、あるいはベタ着色で基材シートを隠蔽するために設けられる。模様層2の形成方法としては、基材シートの表面あるいは裏面あるいはその両方に、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷技法を用いるのが一般的であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
また模様層2に用いられるインキも、公知のもの、すなわちビヒクルに染料または顔料等の着色剤、体質顔剤を添加し、さらに可塑剤、ラジカル捕捉剤、ワックス、グリース、乾燥剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、充填剤等を任意に添加して溶剤、希釈剤等で充分に希釈、攪拌してなるものでよい。
表面保護層4としては、紫外線硬化型、イソシアネート硬化型、電子線硬化型などの樹脂層を設ける方法が一般的であり、それ以外では、熱可塑性の樹脂を積層する方式や、そもそも表面保護層を設けないという方法もあり得る。これらから1種を選ぶか、場合によっては、2種類以上の方式をハイブリッドで使用する方法もある。
表面保護層4の材質は、アクリル系材料が好ましく、耐候性を勘案すると、メタクリレート系が望ましい。その中でも特に、メチルメタクリレートをベースにした樹脂が望ましい。また表面保護層の厚みは、特に規定されるものではないが、3〜20μm程度が好適である。3μm以下では充分な耐傷付き性や耐候性を付与する事が難しく、20μm以上では厚みアップによる耐傷付き性の向上効果は殆どみられない代わりにハンドリングや経済性の面で好ましくない場合がある。
その他に、化粧板において化粧シートと不燃板との密着強度を向上させるために、必要であれば化粧シートと不燃板との間にプライマー層(図示せず)を設けてもよい。
次に本発明の化粧シート及び化粧板の実施例を示す。
以下、予備実験例、及び実施例・比較例を元に、効果の説明を行なう。
(予備実験例)
予備実験として、無機物含有樹脂層1に用いるシートを以下のようにして作製した。
本例では無機物の主成分として炭酸カルシウムを用いている。
高密度ポリエチレン樹脂(ハイゼックス550BR、メルトマスフローレイト=0.27g/10分、(株)プライムポリマー製)を29.7質量部と、平均粒子径(D50)が2.2μmの炭酸カルシウム(ソフトン1000、備北粉化工業(株)製)を70質量部、分散剤として12ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(MS−6、日東化成工業(株)製)を0.3質量部使用し、バンバリーミキサーを用いて混練した後、ペレタイザーを用いてホットカット方式でペレットを作成した。
作成したペレットを、Tダイ型単軸押出機を用いて、シート製膜を行なった。条件は、設定温度200℃、冷却はロールニップ方式、リップギャップ1.0mm、エアギャップ110mm、ライン速度10m/min、製膜厚み70μm狙いとした。しかしながら、溶融樹脂のTダイ吐出後から膜切れを起こしてしまい、安定した製膜はできなかった。
改めて製膜厚みを100μmまで上げたところ、Tダイ吐出後の膜切れはなくなり、更に200μmまで厚くしていく事で、厚み精度が公差10μm以内で製膜可能となった。
(実施例1〜8)
予備実験例で作成した無機物含有樹脂層1に用いるシートを、90℃で加熱しながらロールの周速比を用いて延伸し、厚みを70μmまで薄膜化(延伸倍率2.9倍)し、1軸延伸シートA−1を作成した。更に、シート端部をチャッキングし、同じく95℃で横方向に延伸する事で、厚みを60μmまで薄膜化(延伸倍率1.2倍)する事で、2軸延伸シートB−1を作成した。
作成したシートA−1、シートB−1の両面に、イソシアネート硬化型のポリエステルウレタン系プライマーにシリカを30%分散させた溶液を、塗布量2g/mずつ塗工して受容層13を形成し、1軸延伸シートA−2、2軸延伸シートB−2を作成した。
炭酸カルシウム(ソフトン1000、備北粉化工業(株)製)を70質量部のうちの5重量部を、二酸化チタン(タイペークCR−63、石原産業(株)製)に置き換えた他は、予備実験及び実施例の二軸延伸と同じ方法を用いて、酸化チタン入りの2軸延伸シートC−1、及びその両面に上記プライマー溶液を塗布して受容層13を形成した2軸延伸シートC−2を作成した。
炭酸カルシウム(ソフトン1000、備北粉化工業(株)製)を70質量部のうちの5重量部を、タルク(P−8、日本タルク(株)製)に置き換えた他は、予備実験及び実施例の二軸延伸と同じ方法を用いて、タルク入りの2軸延伸シートD−1、及びその両面に上記プライマー溶液を塗布して受容層13を形成した2軸延伸シートD−2を作成した。
グラビアインキ(XS−756;DICグラフィックス株式会社製)にイソシアネート硬化剤を添加し、メチルエチルケトン溶剤で粘度調整を行った塗工液を準備し、前記の通り作製した無機物含有樹脂シートA1〜D1、及びA2〜D2の片面に、グラビア印刷法を用いて模様層2を印刷した。
無機物含有樹脂シートの反対側の面には、前記グラビアインキから顔料成分を抜いたものを準備し、更にシリカを適量添加したものを、グラビアコーターを用いて、塗布量1g/m(ドライ)狙いで塗工した。これは後述の不燃板を貼り合せた場合に、接着剤との密着性を向上させるためのである。
養生後、無機物含有樹脂シートに模様層2を設けた側に、アンカーコート剤(タケラック_A3210:三井化学株式会社製)としてイソシアネート硬化剤を添加し、更に酢酸エチル溶剤で固形分が25%になるように希釈し、バーコーターを用いて、塗布量1g/m(ドライ)狙いで塗工した後、Tダイ2種2層共押出ラミネータを用いて、予め下記表1の通りに樹脂1と樹脂2を配合し、混練したポリプロピレン樹脂を共押出ラミネート
した。ここで、樹脂1は変性ポリプロピレン樹脂を用いており、樹脂2は透明ポリプロピレン樹脂を主成分として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系ラジカル補促剤を少量配合したものを用いた。
その後コロナ処理を行い、表面保護層4として、アクリレート系コート剤(UCクリヤー_W480E:DICグラフィックス株式会社製)に、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤と、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを適宜添加して、バーコーターを用いて塗布量6±1g/m(ドライ)の範囲内に収まるように塗工した。その後、40℃のオーブン下で3日間の養生を行なった。このようにして、下記表2の通り、実施例1〜8のポリオレフィン系化粧シートを作製した。
(比較例1)
上記実施例5〜8で作成したA2〜D2のシートの代わりに、Tダイ押出機で作製された着色シート(OW、無機分20質量%、厚み60μm、リケンテクノス(株)製)を用いて、他は実施例と同様にして比較例1の化粧シートを作製した。
<性能評価>
(発熱性試験)
このようにして作製した実施例1〜8及び比較例1の化粧シートを、不燃板(ダイライト、大建工業(株)製)に、シアノアクリレート系の接着剤を用いて貼りあわせた後、ISO5660−1:2002に準拠した方法で20分間の発熱性試験を行い、総発熱量を測定した。測定はn=3で行い、数値はその中央値を採用した。結果を表3に示す。
尚、発熱性試験においては、8.0MJ/m以下である事が合格判定基準である。
表3の結果から、実施例1〜8においては発熱量が小さく合格であり、比較例1では基準値を超えて不合格であった。 比較例1は無機分20質量%と無機物含有量が少ないため、不燃性能が劣ると考えられる。
(シートの密着性評価)
実施例1〜8及び比較例1の化粧シートを、アンカーコートを塗工する前の状態で、80℃2時間と−20℃2時間を10サイクル、の各環境下に置いて寒熱繰り返し試験を実施した後、セロハンテープ剥離試験をおこなって、インキの剥離状態を確認した。その結果を表4に示す。
表4の結果では、いずれもインキ密着性は充分と判定された。特に受容層を有する実施例5〜8は受容層のない実施例1〜4と比べてインキ密着性が良好であった。
以上の評価結果から、本発明の化粧シートおよび化粧板はポリオレフィン系樹脂を用いたシートであっても発熱性が低く、薄膜化しても意匠性が低下することのないものが得られることがわかった。
本発明の化粧シート及び化粧板は、無機分を多く含むため、発熱性試験において、燃焼発熱量を抑制する事ができる。従来までは発熱性を抑制する為に、透明ポリオレフィン系
樹脂層を薄膜化する必要があったが、その代わりにエンボス意匠性に乏しい柄しか提供できなかったり、所望の耐候性能を充分に付与できなかったりするなどの不具合が生じていた。しかし本発明の化粧シート及び化粧板では、これらの問題が解決されている。
1…無機物含有樹脂層
2…模様層
3…透明ポリオレフィン系樹脂層
4…表面保護層
10…化粧シート
12…不燃板
13…受容層
20…化粧板

Claims (6)

  1. 無機物含有樹脂層、模様層、ポリオレフィン系透明樹脂層、及び表面保護層を少なくとも有する化粧シートにおいて、前記無機物含有樹脂層が、厚み30〜110μmの範囲内にあり、かつ、無機物60〜85質量%、炭化水素系樹脂1〜39質量%、分散剤0.01〜1質量%の配合からなる混合物であり、製膜方向に1.1〜5.0倍に延伸されてなる事を特徴とする化粧シート。
  2. 前記無機物含有樹脂層が、更に製膜方向と垂直な方向への延伸により、1.1〜1.5倍に延伸されている事を特徴とする、請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記無機物が、炭酸カルシウムを主原料とする事を特徴とする、請求項1または2に記載の化粧シート。
  4. 前記無機物が、炭酸カルシウムを主原料とし、副原料として、顔料、二酸化チタン、タルク、マイカ、シリカからなる群の中から選ばれる1種類以上を含有する事を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
  5. 前記無機物含有樹脂層と前記模様層の間に、更に受容層が設けられている事を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シートを、不燃板に貼り合わせた事により得られる化粧板。
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