JP2018119172A - 組み合わせ摺動部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】第1および第2摺動部材の母材をアルミニウム合金で製造し、その摺動面にアルマイト層を形成した場合であっても、アルマイト層の摩滅を低減することにより、耐久性を向上することができる。【解決手段】摺動面の十点平均粗さRzが0.8μm以下のアルミニウム合金に対して、陽極酸化処理により、摺動面に厚さ30μm以上のアルマイト層を形成することで、第1摺動部材を製造する工程と、第2摺動部材の母材として、摺動面の十点平均粗さRzが1.5〜4.0μmのアルミニウム合金に対して、摺動面の突起の先端を削り取ることにより任意の区間における平滑部の表面の長さの合計の割合が、30〜70%となるように、平滑部を形成する工程と、平滑部を形成した第2摺動部材の母材に対して、陽極酸化処理により厚さ1〜5μmのアルマイト層を形成することで、第2摺動部材を製造する。【選択図】図7
Description
本発明は、相互に摺動する第1および第2の摺動部材からなる組み合わせ摺動部材の製造方法に関する。
従来から、オートマチックトランスミッションに内蔵される油圧切替装置のバルブとバルブボディなどには、2つの摺動部材を組み合わせた組み合わせ摺動部材が利用されている。
このような組み合わせ摺動部材として、たとえば、特許文献1には、アルミニウム合金からなる第1摺動部材と、第1摺動部材の摺動面に摺動する、鋼からなる第2摺動部材と、からなる組み合わせ摺動部材の製造方法が開示されている。ここで、摺動部材の耐摩耗性を向上させるために、第1摺動部材には、陽極酸化処理によりアルマイト層が形成され、第2摺動部材には、熱処理により、焼き入れ層が形成されている。
しかしながら、特許文献1に係る組み合わせ摺動部材では、第1および第2摺動部材の材質が異なることから、熱膨張係数の違いがある。このため、熱膨張差により、第1および第2摺動部材の摺動面の間に負荷が作用し、第1摺動部材と第2摺動部材が摩耗することがある。
このような点を鑑みると、第1および第2摺動部材を、アルミニウム合金で製造し、これらの摺動に陽極酸化処理によりアルマイト層を形成することも考えられる。しかしながら、摺動時の摩耗により、いずれか一方の摺動部材のうち、アルマイト層の薄い側のアルミニウム合金の母材が早期に露出してしまい、組み合わせ摺動部材の耐久性が低下してしまう。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、第1および第2摺動部材の母材をアルミニウム合金で製造し、その摺動面にアルマイト層を形成した場合であっても、アルマイト層の摩滅を低減することにより、耐久性を向上することができる組み合わせ摺動部材の製造方法を提供することにある。
前記課題を鑑みて、本発明に係る摺動部材の製造方法は、アルミニウム合金を母材として摺動面にアルマイト層が形成された第1摺動部材と、前記第1摺動部材の摺動面に摺動し、アルミニウム合金を母材として摺動面にアルマイト層が形成された第2摺動部材と、を備えた組み合わせ摺動部材の製造方法であって、摺動面の十点平均粗さRzが0.8μm以下のアルミニウム合金に対して、陽極酸化処理により、摺動面に厚さ30μm以上のアルマイト層を形成することで、前記第1摺動部材を製造する工程と、前記第2摺動部材の母材として、摺動面の十点平均粗さRzが1.5〜4.0μmのアルミニウム合金に対して、摺動面の突起の先端を削り取ることにより平滑部を形成し、かつ、前記第2摺動部材の母材の断面において、任意の区間における平滑部の表面の長さの合計の割合が、30〜70%となるように、前記平滑部を形成する工程と、前記平滑部を形成した前記第2摺動部材の母材に対して、陽極酸化処理により厚さ1〜5μmのアルマイト層を形成することで、前記第2摺動部材を製造する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、第1および第2摺動部材の表面粗さおよび表面形状を最適化した上で、両者の表面にアルマイト層を形成するので、アルマイト層が薄い側の第2摺動部材のアルマイト層が摩滅し、第2摺動部材の母材が露出するまでの時間が長くなる。このような結果、第1摺動部材と第2摺動部材の凝着摩耗の発生を抑制し、組み合わせ摺動部材の耐久性を向上させることができる。
以下に本発明の実施形態に係る組み合わせ摺動部材の製造方法について説明する。
本実施形態で製造される組み合わせ摺動部材は、アルミニウム合金を母材として摺動面にアルマイト層が形成された第1摺動部材と、第1摺動部材の摺動面に摺動し、アルミニウム合金を母材として摺動面にアルマイト層が形成された第2摺動部材と、を備えた組み合わせ摺動部材である。
本実施形態で製造される組み合わせ摺動部材は、アルミニウム合金を母材として摺動面にアルマイト層が形成された第1摺動部材と、第1摺動部材の摺動面に摺動し、アルミニウム合金を母材として摺動面にアルマイト層が形成された第2摺動部材と、を備えた組み合わせ摺動部材である。
まず、第1摺動部材を製造する際に、摺動面の十点平均粗さRzが0.8μm以下のアルミニウム合金の母材を準備し、この母材に対して、陽極酸化処理により、厚さ30μm以上のアルマイト層を形成する。ここで、第1摺動部材の摺動面の十点平均粗さRzが0.8μmを超えた場合には、第1摺動部材の相手攻撃性が増し、第2摺動部材の摩耗が促進される。また、より好ましくは、第1摺動部材の摺動面の十点平均粗さRzは0.5μm以上である。これにより、第1摺動部材の表面に潤滑油の油溜まりを確保しやすい。なお、本明細書でいう十点平均粗さRzは、JIS B 0601−1994に準拠して測定した値である。
次に、第2摺動部材を製造する際に、摺動面の十点平均粗さRzが1.5〜4.0μmのアルミニウム合金の母材を準備する。この母材に対して、平板状の砥石を押し当てながら研磨加工することにより、摺動面の突起の先端を削り取る。これにより、第2摺動部材の摺動面に平滑部を形成する。第2摺動部材の母材の断面において、平滑部は、頂部が平坦な台形状の断面となる。
具体的には、第2摺動部材の母材の断面において、任意の区間における平滑部の表面の長さの合計の割合(平滑部率)が、30〜70%となるように、平滑部を形成する。この平滑部率は、後述の図6に示すように、表面粗さ計により、第2摺動部材の摺動面の任意の区間Lを測定し、平滑部の表面の長さの合計(l1+l2+l3+l4+l5)を区間Lの長さで除算し、100を乗算することにより、求めることができる。次に、平滑部を形成した第2摺動部材の母材に対して、陽極酸化処理により厚さ1〜5μmのアルマイト層を形成することで、第2摺動部材を製造する。
ここで、第2摺動部材の摺動面の十点平均粗さRzが1.5μm未満の場合また平滑部率が70%を超えた場合には、第2摺動部材の摺動面に潤滑油の油溜まりが確保され難くなる。一方、第2摺動部材の摺動面の十点平均粗さRzが4.0μmを超えた場合または平滑部率が30%未満の場合には、第2摺動部材の摺動面の突起の先端の当たりが強くなるため、第2摺動部材が摩耗しやすく、第2摺動部材の母材が露出しやすくなる。
このように、第1および第2摺動部材の表面粗さおよび表面形状を上述した如く最適化した上で、両者の表面にアルマイト層を形成するので、アルマイト層が薄い側の第2摺動部材のアルマイト層が摩滅し、第2摺動部材の母材が露出するまでの時間が長くなる。このような結果、第1摺動部材と第2摺動部材の凝着摩耗の発生を抑制し、組み合わせ摺動部材の耐久性を向上させることができる。
本実施形態に係る組み合わせ摺動部材は、ピストンとシリンダとで構成される装置や、バルブとバルブボディとで構成される装置に、好適に使用することができる。たとえば、本実施形態に係る組み合わせ摺動部材を、オートマチックトランスミッションに内蔵される油圧切替装置に適用する際には、第1摺動部材を、バルブ(弁体)に用い、第2摺動部材を、そのバルブが摺動するバルブボディに用いることが好ましい。
これにより、たとえば、バルブを付勢するスプリングの座屈に起因して、バルブがバルブボディに対して傾いてバルブボディに局所的に強く当接したり、潤滑油回路の油圧によってバルブが側圧を受けて、バルブの同じ側面がバルブボディに当接したりしても、この当接した部分の摩耗を抑制することができる。このような結果、バルブとバルブボディとの隙間が摩耗により大きくなることが無く、これらの間に異物が噛み込み難くなる。
本発明の実施例を以下に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
〔参考例1〜6:第2摺動部材の最適表面粗さについて〕
表1に示すように、参考例1〜6に係る、第1摺動部材と第2摺動部材とからなる組み合わせ摺動部材を準備した。まず、参考例1〜6では、第1摺動部材の母材に相当するアルミニウム合金(JIS規格:AC1C)からなる円柱試験片(外径10mm×長さ15mm)と、第2摺動部材の母材に相当するアルミニウム合金(JIS規格:ADC12)からなる平板試験片(40mm×60mm×厚さ4mm)と、を準備した。準備した参考例1〜6に係る円柱試験片の十点平均粗さRzは0.5μmであり、平板試験片の十点平均粗さRzは表1に示した値である。
表1に示すように、参考例1〜6に係る、第1摺動部材と第2摺動部材とからなる組み合わせ摺動部材を準備した。まず、参考例1〜6では、第1摺動部材の母材に相当するアルミニウム合金(JIS規格:AC1C)からなる円柱試験片(外径10mm×長さ15mm)と、第2摺動部材の母材に相当するアルミニウム合金(JIS規格:ADC12)からなる平板試験片(40mm×60mm×厚さ4mm)と、を準備した。準備した参考例1〜6に係る円柱試験片の十点平均粗さRzは0.5μmであり、平板試験片の十点平均粗さRzは表1に示した値である。
次に、参考例1〜6に係る円柱試験片および平板試験片に対して陽極酸化処理を行った。これにより、円柱試験片の摺動面(外周面)に、厚さ30μm、ビッカース硬さHV500のアルマイト層を形成し、平板試験片の摺動面(40mm×60mm)に、厚さ3μm、ビッカース硬さHV350のアルマイト層を形成した。
(摩耗試験)
参考例1〜6に係る円柱試験片と平板試験片とを用いて摩耗試験を行った。具体的には、それぞれの円柱試験片と平板試験片を摩耗試験機にセットし、円柱試験片の外周面(摺動面)と平板試験片40mm×60mmの摺動面とを接触させ、円柱試験片を軸方向に沿って摺動させて、摩耗試験を実施した。なお、この摩耗試験では、油温80℃の潤滑油(ATF)中において、円柱試験片から平板試験片へ100Nの荷重を付加し、円柱試験片を平板試験片に対して、周波数5Hz、ストローク10mmで摺動させた。
参考例1〜6に係る円柱試験片と平板試験片とを用いて摩耗試験を行った。具体的には、それぞれの円柱試験片と平板試験片を摩耗試験機にセットし、円柱試験片の外周面(摺動面)と平板試験片40mm×60mmの摺動面とを接触させ、円柱試験片を軸方向に沿って摺動させて、摩耗試験を実施した。なお、この摩耗試験では、油温80℃の潤滑油(ATF)中において、円柱試験片から平板試験片へ100Nの荷重を付加し、円柱試験片を平板試験片に対して、周波数5Hz、ストローク10mmで摺動させた。
この摩耗試験の結果を図1に示す。図1の縦軸は、平板試験片のアルマイト層がなくなるまでの時間であり、図1の横軸は、参考例1〜6に係る平板試験片の十点平均粗さRzである。ここで、摩耗試験中に平板試験片のアルマイト層が摩耗してなくなると、平板試験片のアルミニウム合金の母材が露出する。平板試験片の露出した母材のアルミニウム合金が、円柱試験片の表面の一部に露出した母材(アルミニウム合金)に凝着する。この凝着により、円柱試験片と平板試験片との摩耗係数が大きく変動するため、この時間を、平板試験片のアルマイト層がなくなるまでの時間とした。
[結果1および考察1]
図1に示すように、参考例3〜5に係る平板試験片は、参考例1、2、および6のものに比べて、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでの時間が長かった。これは参考例3〜5に係る平板試験片の十点平均粗さRz(表面粗さ)が最適な範囲にあるからであると考えられる。
図1に示すように、参考例3〜5に係る平板試験片は、参考例1、2、および6のものに比べて、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでの時間が長かった。これは参考例3〜5に係る平板試験片の十点平均粗さRz(表面粗さ)が最適な範囲にあるからであると考えられる。
参考例1および2に係る組み合わせ摺動部材では、摺動初期の段階では、図2(a)および図2(b)に示すように、平板試験片の表面粗さが小さいため、摺動時に、平板試験片の表面に、潤滑油の油溜まりが少ない。このため、参考例1および2では、平板試験片の表面に形成される油膜が切れやすく、平板試験片のアルマイト層が脱落し、平板試験片の母材が、円柱試験片の表面に凝着しやすい。
円柱試験片と平板試験片との摺動が継続すると、図2(c)に示すように、平板試験片のアルマイト層がさらに脱落して摩耗粉となり、この摩耗粉が、円柱試験片と平板試験片との間に介在し、平板試験片のアルマイト層のアブレシブ摩耗が促進される。これにより、平板試験片の母材が露出し、平板試験片の母材が、円柱試験片の表面に凝着する。
さらに、円柱試験片と平板試験片との摺動が継続すると、図2(d)に示すように、平板試験片の露出した母材のアルミニウム合金が、円柱試験片の摺動面にさらに移着する。これにより、強い凝着摩耗が発生し、参考例1および2に係る平板試験片のアルマイト層は、参考例3〜5のものよりも、早くなくなった(摩滅した)と考えられる。
また、参考例6に係る組み合わせ摺動部材では、図3(a)および図3(b)に示すように、アルマイト層が形成された平板試験片の表面粗さが大きいため、潤滑油の溜まりは形成されるが、円柱試験片に対する面圧が大きくなる。これにより、平板試験片のアルマイト層および円柱試験片のアルマイト層がアブレシブ摩耗しやすい。
さらに、円柱試験片と平板試験片との摺動が継続すると、図3(c)に示すように、平板試験片の母材のアルミニウム合金が露出し、アルミニウム合金の一部が摩耗粉となって、円柱試験片の摺動面に移着する。これにより、強い凝着摩耗が発生し、参考例6に係る平板試験片のアルマイト層は、参考例3〜5のものよりも、早くなくなったと考えられる。
一方、参考例3〜5に係る組み合わせ摺動部材では、図4(a)および図4(b)に示すように、平板試験片の表面粗さが適度な大きさであるため、摺動時に、参考例1および2のものよりも、平板試験片の表面に、潤滑油の油溜まりが形成されやすく、参考例6のものよりも、円柱試験片に対する面圧が小さくなる。
このような結果、参考例3〜5に係る平板試験片の如く、平板試験片の十点平均粗さRz(表面粗さ)が1.5〜4.0μmの範囲では、これを外れた範囲の平板試験片に比べて、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでに時間が長くかかると考えられる。
〔参考例7〜11:第1摺動部材の最適表面粗さについて〕
参考例1と同じようにして、表2に示す組み合わせ摺動部材を作製した。参考例7〜11が、参考例1と相違する点は、参考例7〜11に係る平板試験片の十点平均粗さRzを2.0μmにし、参考例7〜11に係る円柱試験片の十点平均粗さRzを表2に示す値にした点である。参考例7〜11に係る組み合わせ摺動部材に対して、参考例1と同じように、摩耗試験を行った。この結果を図5に示す。
参考例1と同じようにして、表2に示す組み合わせ摺動部材を作製した。参考例7〜11が、参考例1と相違する点は、参考例7〜11に係る平板試験片の十点平均粗さRzを2.0μmにし、参考例7〜11に係る円柱試験片の十点平均粗さRzを表2に示す値にした点である。参考例7〜11に係る組み合わせ摺動部材に対して、参考例1と同じように、摩耗試験を行った。この結果を図5に示す。
[結果2および考察2]
図5に示すように、参考例7および8では、参考例9〜11に比べて、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでの時間が長かった。これは、参考例7および8に係る円柱試験片の十点平均粗さRz(表面粗さ)は、0.8μm以下の範囲にあり、参考例9〜11のものに比べて小さいため、平板試験片に対するアブレッシブ作用が小さいからであると考えられる。これにより、参考例7および8では、参考例9〜11に比べて、円柱試験片に対する平板試験片の相手攻撃性が小さくなり、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでの時間が長かったと考えられる。
図5に示すように、参考例7および8では、参考例9〜11に比べて、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでの時間が長かった。これは、参考例7および8に係る円柱試験片の十点平均粗さRz(表面粗さ)は、0.8μm以下の範囲にあり、参考例9〜11のものに比べて小さいため、平板試験片に対するアブレッシブ作用が小さいからであると考えられる。これにより、参考例7および8では、参考例9〜11に比べて、円柱試験片に対する平板試験片の相手攻撃性が小さくなり、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでの時間が長かったと考えられる。
〔実施例1〜3〕
参考例8と同じようにして、実施例1〜3に係る組み合わせ摺動部材を作製した。実施例1〜3が、参考例8と相違する点は、実施例1〜3では、十点平均粗さRzが3.0μmの平板試験片を準備し、この平板試験片に対してラッピング加工(研磨加工)を施すことにより、平板試験片の平滑部率を表3に示す値にした後に、陽極酸化処理によりアルマイト層を形成した点である。
参考例8と同じようにして、実施例1〜3に係る組み合わせ摺動部材を作製した。実施例1〜3が、参考例8と相違する点は、実施例1〜3では、十点平均粗さRzが3.0μmの平板試験片を準備し、この平板試験片に対してラッピング加工(研磨加工)を施すことにより、平板試験片の平滑部率を表3に示す値にした後に、陽極酸化処理によりアルマイト層を形成した点である。
なお、ここでいう平滑部率は、図6に示すように、表面粗さ計により、平板試験片の表面粗さを測定し、その表面形状から、測定区間の長さLに対する平滑部の合計した長さ(例えば、l1+l2+l3+l4+l5)の割合(百分率)である。
〔比較例1〜5〕
実施例1と同じようにして、比較例1〜5に係る組み合わせ摺動部材を作製した。比較例1〜5が、実施例1と相違する点は、比較例1では、平板試験片に対してラッピング加工を施さず、比較例2〜5では、平板試験片に対してラッピング加工を施すことにより、平板試験片の平滑部率を表3に示す値にした点である。
実施例1と同じようにして、比較例1〜5に係る組み合わせ摺動部材を作製した。比較例1〜5が、実施例1と相違する点は、比較例1では、平板試験片に対してラッピング加工を施さず、比較例2〜5では、平板試験片に対してラッピング加工を施すことにより、平板試験片の平滑部率を表3に示す値にした点である。
実施例1〜3および比較例1〜5に係る組み合わせ摺動部材に対して、参考例1と同じように、摩耗試験を行った。この結果を図7に示す。
[結果3および考察3]
図7に示すように、実施例1〜3では、比較例1〜5に比べて、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでの時間が長かった。これは、図8Bに示すように、実施例1〜3では、平板試験片の平滑部率が30〜70%であるので、アルマイト層のみからなる平滑部で長時間摺動しつつ、潤滑油の適度な油溜まりにより、潤滑効果が得られたからであると考えられる。これにより、実施例1〜3では、比較例1〜3に比べて、平板試験片のアルマイト層がなくなる(摩滅する)までの時間が長い(寿命が長い)と考えられる。
図7に示すように、実施例1〜3では、比較例1〜5に比べて、平板試験片のアルマイト層が摩滅するまでの時間が長かった。これは、図8Bに示すように、実施例1〜3では、平板試験片の平滑部率が30〜70%であるので、アルマイト層のみからなる平滑部で長時間摺動しつつ、潤滑油の適度な油溜まりにより、潤滑効果が得られたからであると考えられる。これにより、実施例1〜3では、比較例1〜3に比べて、平板試験片のアルマイト層がなくなる(摩滅する)までの時間が長い(寿命が長い)と考えられる。
比較例1〜3では、平板試験片の平滑部率が30%未満であるので、図8Aに示すように、摺動初期にアルマイト層の突起の先端が、局所的に当たりが強くなるため、アルマイト層が摩耗し、アルミニウム合金の素地が早期に露出しやすい。これにより、比較例1〜3では、実施例1〜3に比べて、平板試験片のアルマイト層がなくなる(摩滅する)までの時間が短い(寿命が短い)と考えられる。
一方、比較例4および5では、平板試験片の平滑部率が70%を超えているので、潤滑油の油溜まりが少ないため、平板試験片と円柱試験片との間の油膜が切れやすく、凝着摩耗が発生しやすい。これにより、比較例4および5では、実施例1〜3に比べて、平板試験片のアルマイト層がなくなる(摩滅する)までに時間が短い(寿命が短い)と考えられる。
〔実施例4〕
実施例4に係る第1摺動部材と第2摺動部材との組み合わせ摺動部材を作製した。具体的には、この組み合わせ摺動部材を、オートマチックトランスミッションに内蔵される油圧切替装置に適用した。図9は、オートマチックトランスミッションに内蔵される油圧切替装置3の断面図である。油圧切替装置3は、本体であるバルブボディ1と、油圧切替時にバルブボディ1内において摺動するバルブ2とを少なくとも備えている。
実施例4に係る第1摺動部材と第2摺動部材との組み合わせ摺動部材を作製した。具体的には、この組み合わせ摺動部材を、オートマチックトランスミッションに内蔵される油圧切替装置に適用した。図9は、オートマチックトランスミッションに内蔵される油圧切替装置3の断面図である。油圧切替装置3は、本体であるバルブボディ1と、油圧切替時にバルブボディ1内において摺動するバルブ2とを少なくとも備えている。
実施例4では、バルブボディ1に、実施例1に係る平板試験片に相当する材料を適用し、バルブ2に、実施例1に係る円柱試験片に相当する材料を適用した。すなわち、バルブボディ1が第2摺動部材に相当し、バルブ2が第1摺動部材に相当する。
なお、表4に示すように、バルブ2では、アルマイト層の厚さを、30μmにし、アルマイト層の十点平均粗さRzを、0.5μmにした。一方、バルブボディ1では、ラッピング加工を施す前の十点平均粗さRzを、3.0μmにし、ラッピング加工を施すことにより、平滑部率を40%にした後に、陽極酸化処理により、アルマイト層の厚さを4μmにした。
〔比較例6、7〕
実施例4と同じようにして、バルブ2(第1摺動部材)とバルブボディ1(第2摺動部材)とを作製した。比較例6が、実施例4と相違する点は、バルブボディ1を作製する際に、十点平均粗さRzを1.0μmにし、ラッピング加工を施さず、平滑部率を0%とした点である。比較例7が、実施例4と相違する点は、ラッピング加工を施さず、平滑部率を0%とした点である。
実施例4と同じようにして、バルブ2(第1摺動部材)とバルブボディ1(第2摺動部材)とを作製した。比較例6が、実施例4と相違する点は、バルブボディ1を作製する際に、十点平均粗さRzを1.0μmにし、ラッピング加工を施さず、平滑部率を0%とした点である。比較例7が、実施例4と相違する点は、ラッピング加工を施さず、平滑部率を0%とした点である。
(耐久試験)
実施例4および比較例6、7に係るバルブボディ1とバルブ2とを組み合わせた油圧切替装置3を、それぞれトランスミッションに取付けて、バルブ2の摺動サイクル90000サイクル(100時間稼働)の条件で、耐久試験を行った。
実施例4および比較例6、7に係るバルブボディ1とバルブ2とを組み合わせた油圧切替装置3を、それぞれトランスミッションに取付けて、バルブ2の摺動サイクル90000サイクル(100時間稼働)の条件で、耐久試験を行った。
実施例4および比較例6、7に係るバルブボディ1とバルブ2の耐久試験後の摩耗深さを摩耗量として測定した。この結果を表4に示す。なお、比較例6では、60000サイクル稼働後に、スティックによりバルブが動作しなくなったので、この時点の摩耗量を測定した。
[結果4および考察4]
比較例6では、上述したように、60000サイクル稼働後に、スティックによりバルブが動作しなくなり、この時点で、比較例6のバルブボディ1とバルブ2の摩耗量は、実施例4のものよりも大きかった。また、比較例7では、スティックによりバルブの動作不良は生じないが、比較例7のバルブボディ1とバルブ2の摩耗量は、実施例4のものよりも大きかった。
比較例6では、上述したように、60000サイクル稼働後に、スティックによりバルブが動作しなくなり、この時点で、比較例6のバルブボディ1とバルブ2の摩耗量は、実施例4のものよりも大きかった。また、比較例7では、スティックによりバルブの動作不良は生じないが、比較例7のバルブボディ1とバルブ2の摩耗量は、実施例4のものよりも大きかった。
実施例4では、スティックが生じず、バルブボディ1とバルブ2の摩耗量が、比較例6、7よりも小さかったのは、十点平均粗さRzが3.0μmのバルブボディ1に、平滑部率が40%となるようにラッピング加工を行った後に、アルマイト層を形成したからであると考えられる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1:バルブボディ
2:バルブ
3:油圧切替装置
2:バルブ
3:油圧切替装置
Claims (1)
- アルミニウム合金を母材として摺動面にアルマイト層が形成された第1摺動部材と、前記第1摺動部材の摺動面に摺動し、アルミニウム合金を母材として摺動面にアルマイト層が形成された第2摺動部材と、を備えた組み合わせ摺動部材の製造方法であって、
摺動面の十点平均粗さRzが0.8μm以下のアルミニウム合金に対して、陽極酸化処理により、摺動面に厚さ30μm以上のアルマイト層を形成することで、前記第1摺動部材を製造する工程と、
前記第2摺動部材の母材として、摺動面の十点平均粗さRzが1.5〜4.0μmのアルミニウム合金に対して、摺動面の突起の先端を削り取ることにより平滑部を形成し、かつ、前記第2摺動部材の母材の断面において、任意の区間における平滑部の表面の長さの合計の割合が、30〜70%となるように、前記平滑部を形成する工程と、
前記平滑部を形成した前記第2摺動部材の母材に対して、陽極酸化処理により厚さ1〜5μmのアルマイト層を形成することで、前記第2摺動部材を製造する工程と、を含むことを特徴とする組み合わせ摺動部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017009731A JP2018119172A (ja) | 2017-01-23 | 2017-01-23 | 組み合わせ摺動部材の製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113446317A (zh) * | 2020-03-26 | 2021-09-28 | 大同金属工业株式会社 | 滑动构件 |
-
2017
- 2017-01-23 JP JP2017009731A patent/JP2018119172A/ja active Pending
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