以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車の座席として構成された車両用シートに本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は、本実施の形態に係る車両用シートの構成ならびに大倒し機能を示す概略側面図であり、図2は、図1に示す車両用シートの要部の骨格構造を示す概略斜視図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態に係る車両用シートの概略的な構成ならびに大倒し機能等について説明する。なお、図1および図2においては、理解を容易とするために、それぞれ一部の構成部品の図示を省略している。
本実施の形態における車両用シートは、着座した乗員が車両前方側を向くこととなるように車両に設置されることが想定されたものであり、シート前後方向は、車両前後方向に一致し、シート上下方向は、車両上下方向に一致し、シート幅方向は、車両幅方向に一致する。また、本実施の形態における車両用シートは、車両左側に設置されることが想定されたものであり、シート左方向は、車両外側方向(すなわち、ドア側の方向)に一致し、シート右方向は、車両内側方向(すなわち、右座席側の方向)に一致する。
図1に示すように、車両用シート1は、シートクッション2と、シートバック3とを備えている。シートクッション2は、乗員の大腿部および臀部が着座する部位を構成しており、シートバック3は、乗員の背部が着座する(すなわち乗員が背凭れする)部位を構成している。
図1および図2に示すように、シートクッション2は、乗員が着座するクッションパッドと、クッションパッドを支持するとともにシートクッション2の骨格をなすクッションフレーム2Fと、クッションフレーム2Fに固定された連結プレート4と、クッションフレーム2Fに接続されたスライドレール5と、スライドレール5に固定されたフロアブラケット6とを有している。
クッションフレーム2Fは、シート前後方向に延在するサイドフレーム2Sを有している。サイドフレーム2Sは、クッションフレーム2Fのシート幅方向の左右の位置に一対設けられている。サイドフレーム2Sは、たとえば鋼板等の金属板をプレス加工したプレス成形品にて構成される。
連結プレート4は、サイドフレーム2Sのシート前後方向の後端に固定されており、サイドフレーム2Sの当該後端からシート上方に向けて延在している。連結プレート4の上端には、後述するリクライナ10が固定されている。連結プレート4は、左右一対のサイドフレーム2Sに対応して一対設けられている。連結プレート4は、たとえば鋼板等の金属板をプレス加工したプレス成形品にて構成される。
スライドレール5は、シート前後方向に沿って延在しており、アッパレールとロアレールと有している。アッパレールは、ロアレールに対してスライド移動可能に設けられている。ロアレールには、フロアブラケット6が固定されており、アッパレールには、リンク機構を介してサイドフレーム2Sが接続されている。スライドレール5は、左右一対のサイドフレーム2Sに対応してその下方に一対設けられている。スライドレール5は、たとえば金属製の部材にて構成される。スライドレール5は、シートクッション2をシート前後方向にスライドさせるための機構であり、リンク機構は、シートクッション2をシート上下方向にリフトさせるための機構である。なお、スライド機構およびリンク機構は、手動および電動のいずれによって駆動されてもよい。
フロアブラケット6は、スライドレール5のシート下方に設けられている。フロアブラケット6は、左右一対のスライドレール5に対応してそれぞれ一対ずつ前後に設けられている。フロアブラケット6は、たとえば鋼板等の金属板をプレス加工したプレス成形品にて構成される。フロアブラケット6は、スライドレール5を車両のフロアに設置するための部材である。
シートバック3は、乗員が着座するバックパッドと、バックパッドを支持するとともにシートバック3の骨格をなすバックフレーム3Fとを有している。シートバック3は、シートクッション2のシート前後方向の後端側からシート上方に向けて立設されている。
バックフレーム3Fは、シート上下方向に延在するサイドフレーム3Sを有している。サイドフレーム3Sのシート上下方向の下端は、後述するリクライナ10に固定されている。サイドフレーム3Sは、バックフレーム3Fのシート幅方向の左右の位置に一対設けられている。サイドフレーム3Sは、たとえば鋼板等の金属板をプレス加工したプレス成形品にて構成される。
リクライナ10は、上述したように連結プレート4とサイドフレーム3Sとの接続を介在することにより、シートクッション2とシートバック3とを連結している。リクライナ10は、シートバック3の背凭れ角度を調節可能にするものであり、手動または電動で駆動されることによって調節された背凭れ角度にてシートバック3を保持するものである。なお、リクライナ10の詳細については、後述することとする。
バックフレーム3Fには、大倒し機構20Aが組付けられている。大倒し機構20Aは、上述したリクライナ10による背凭れ角度の調節とは異なり、シートバック3を背凭れ不能な程度にまで傾倒させるものである。大倒し機構20Aは、代表的にはウォークイン機能に利用されるものである。大倒し機構20Aは、リクライナ10よりもシート上方の空間に当該リクライナ10に隣接して設置されている。なお、大倒し機構20Aの詳細については、後述することとする。
シートバック3のシート上下方向の上部の位置には、大倒し機構20Aを操作するための操作レバー30が設けている。操作レバー30は、シートバック3にたとえばヒンジを介して回動可能に組付けられている。
図1を参照して、操作レバー30を図中に示す矢印方向に乗員が操作することにより、シートバック3は、図中に示す矢印DR1方向に向けて傾倒する。ここで、シートバック3と連結プレート4との間に図示しない付勢バネを設け、当該付勢バネの付勢力がシートバック3をシート前方に傾倒させる方向に付勢されるように構成しておくこととすれば、上述した操作レバー30の操作により、当該付勢バネの付勢力によってシートバック3が前方に向けて傾倒することになる。
ここで、ウォークイン機能は、車両用シート1のシート後方への乗降スペースを拡大させる機能であり、上述したように車両用シート1のシートバック3を前傾させるとともに、通常は上述したスライド機構が連動して車両用シート1をシート前方へ移動させる機能である。
なお、図1においては、シートバック3が、シート前方に向けての傾倒範囲の途中位置に配置された状態を二点鎖線にて示しているが、本実施の形態においては、図中に示す矢印DR2方向にシートバック3がさらに倒れ込み、シートバック3が実質的にシートクッション2に重なった状態となる。
操作レバー30が操作されることによって前傾したシートバック3は、当該シートバック3を乗員が引き起こす操作を行なうことによって元の位置に復帰する。
図3は、図1に示す車両用シートにおけるリクライナおよび大倒し機構のシートバックのサイドフレームに対する組付構造を示す分解図である。図4(A)は、図3に示すIVA−IVA線に沿ったシートバックのサイドフレームの模式断面図であり、図4(B)ないし図4(D)は、当該サイドフレームの他の構成例を示す模式断面図である。次に、本実施の形態に係る車両用シートにおけるリクライナおよび大倒し機構の詳細な構成を説明するに先立って、これら図3および図4を参照して、当該リクライナおよび大倒し機構のシートバックのサイドフレームに対する組付構造について説明する。
図3に示すように、リクライナ10および大倒し機構20Aは、その主要部がユニット化された状態でシートバック3のサイドフレーム3Sに組付けられる。具体的には、リクライナ10は、その構成部品であるラチェット11、ガイド12、外周リング13、回転カム14(図6参照)、ヒンジカム15(図6参照)、スプリング16(図6参照)およびスプリングカバー17等が予め組立てられた状態で大倒し機構20Aのベースプレート21に組付けられており、大倒し機構20Aは、その構成部品であるベースプレート21に、同じくその構成部品であるカム23、第1フックプレート24A、第2フックプレート24Bおよびカバープレート25等が組付けられた状態とされ、これによりリクライナ10および大倒し機構20Aの主要部がユニット化されている。なお、連結プレート4は、当該ユニットがサイドフレーム3Sに組付けられるに先立ってリクライナ10に組付けられることにより、上述したリクライナ10および大倒し機構20Aの主要部が一体化されてなるユニットに固定されてもよいし、当該ユニットがサイドフレーム3Sに組付けられた後にリクライナ10に固定されてもよい。
図3および図4(A)に示すように、サイドフレーム3Sは、シート幅方向の外側に位置しかつシート上下方向に延在する外側壁部3Saと、シート幅方向の内側に位置しかつシート上下方向に延在する内側壁部3Sbと、シート前後方向の前側に位置しかつシート上下方向に延在する前側壁部3Scと、シート前後方向の後側に位置しかつシート上下方向に延在する後側壁部3Sdとを有している。これにより、サイドフレーム3Sは、外側壁部3Sa、内側壁部3Sb、前側壁部3Scおよび後側壁部3Sdによって規定される内部空間3S1を有している。
サイドフレーム3Sのシート上下方向の下端は、外部に対して開放されており、これにより上述した内部空間3S1は、当該下端を介して外部に露出している。上述したリクライナ10および大倒し機構20Aの主要部が一体化されてなるユニットは、このサイドフレーム3Sの下端からサイドフレーム3Sの内部空間3S1に挿入される。
ここで、サイドフレーム3Sの外側壁部3Saおよび内側壁部3Sbの所定位置には、貫通孔3a,3b,3cが設けられており、上述したユニットが内部空間3S1に挿入されて位置決めされた状態において、これら貫通孔3a,3b,3cならびに大倒し機構20Aに設けられた貫通孔に挿通するようにそれぞれ第1ピン26A、第2ピン27Aおよび第3ピン28Aが組付けられることにより、上述したユニットがサイドフレーム3Sに組付けられる。
この組付けに際しては、上述したユニットのうちの主として大倒し機構20Aが、サイドフレーム3Sの内部空間3S1に収容されるようにされ、上述したユニットのうちの主としてリクライナ10は、当該内部空間3S1に収容されずに外部に露出した状態とされる。なお、大倒し機構20Aのシート上下方向の下端寄りの部分は、内部空間3S1に収容されずに外部に露出していてもよく、また、リクライナ10のシート上下方向の上端寄りの部分は、外部に露出することなく内部空間3S1に収容されていてもよい。特に、大倒し機構20Aのうちのベースプレート21は、そのリクライナ10を支持する部分が、内部空間3S1に収容されずに外部に露出するように配置される。
上述したユニットがサイドフレーム3Sに固定された後には、内側壁部3Sbから外側に向けて突出する部分の第1ピン26Aの先端に、大倒し機構20Aの構成部品であるレリーズプレート22が組付けられる。
以上により、大倒し機構20Aを構成する各種の構成部品のうち、ベースプレート21、レリーズプレート22、カム23、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bが、シート幅方向においてサイドフレーム3Sの外側壁部3Saよりもシート内側に配置されることになり、カバープレート25も、その大部分がシート幅方向においてサイドフレーム3Sの外側壁部3Saよりもシート内側に配置されることになる。また、このうち、レリーズプレート22については、これがシート幅方向においてサイドフレーム3Sの内側壁部3Sbよりもさらにシート内側に配置されることになる。
図4(A)に示すように、本実施の形態においては、サイドフレーム3Sが1個のプレス成形品にて構成されている。具体的には、本実施の形態においては、内部空間3S1を取り囲むように折り曲げられた上記プレス成形品の突き当たり面に沿って溶接処理が施されることにより、プレス成形品に溶接部31が設けられ、これによってサイドフレーム3Sが断面視偏平な略角筒状の形状に形成されている。
これに代えて、図4(B)に示すサイドフレーム3S−1または図4(C)に示すサイドフレーム3S−2のように、2個のプレス成形品を組み合わせることでサイドフレームを構成することとしてもよい。その場合には、両端が同じ方向に向けて折り曲げられてなる一対のプレス成形品を準備し、これらの両端に形成された折り曲げ部同士が互いに一部重なり合うように一対のプレス成形品を組み合わせてその重ね合わせ部に沿って溶接処理が施されることにより、これら一対のプレス成形品に溶接部31が設けられ、これによってサイドフレーム3S−1,3S−2を断面視偏平な略角筒状の形状に形成すればよい。なお、このようにサイドフレームを構成した場合には、上述した一対のプレス成形品の溶接に先立って一方のプレス成形品に上述したリクライナ10および大倒し機構20Aの主要部が一体化されてなるユニットを組付け、その後当該ユニットを覆うように他方のプレス成形品を上記一方のプレス成形品に溶接することとしてもよい。
ここではその詳細な説明は省略するが、サイドフレームを3個以上のプレス成形品にて構成することとしてもよいし、場合によっては押出し成形品にてこれを構成することとしてもよい。なお、上述した溶接に代えて締結等によってプレス成形品を接合することとしてもよい。
また、さらにこれらに代えて、図4(D)に示すサイドフレーム3S−3のように、外側壁部3Sa、前側壁部3Scおよび後側壁部3Sdのみからなる(すなわち内側壁部3Sbを具備していない)部材にてサイドフレームを構成することも可能である。その場合には、上述したリクライナ10および大倒し機構20Aの主要部が一体化されてなるユニットのより多くの部分が、外側壁部3Sa、前側壁部3Scおよび後側壁部3Sdによって規定される空間3S2に配置されることが好ましい。
図5は、図1に示す車両用シートのリクライナおよび大倒し機構の概略側面図であり、図6は、図5に示すVI−VI線に沿った模式断面図である。図7は、図5に示すカムをシート幅方向に沿って内側から見た平面図である。また、図8は、図5に示すVIII−VIII線に沿った模式断面図である。次に、これら図5ないし図8を参照して、本実施の形態に係る車両用シートのリクライナおよび大倒し機構の詳細な構成について説明する。ここで、図5、図6および図8においては、車両用シートのシートバックが背凭れ可能な第1状態に保持された場合を表わしている。また、図5、図6および図8においては、理解を容易とするために、それぞれ一部の構成部品の図示を省略している。
図5および図6に示すように、車両用シート1においては、シートバック3の骨格をなすバックフレーム3Fのサイドフレーム3Sが、シート幅方向に沿って延在する回転軸Oを回転中心として、支持部としてのリクライナ10および連結プレート4によって回転可能に支持されている。より詳細には、サイドフレーム3Sの下端寄りの部分には、上述した第1ピン26A、第2ピン27Aおよび第3ピン28Aによって大倒し機構20Aのベースプレート21が固定されており、当該ベースプレート21がリクライナ10および連結プレート4によって回転可能に支持されている。ここで、当該回転軸Oは、リクライナ10の後述するヒンジピン18によって規定されている。
リクライナ10は、ラチェット11と、ガイド12と、外周リング13と、回転カム14と、ヒンジカム15と、スプリング16と、スプリングカバー17と、ヒンジピン18とを有している。ラチェット11およびガイド12は、いずれも略円盤形状に構成されており、互いに相対的に回転可能な状態で組付けられている。外周リング13は、これらラチェット11およびガイド12が軸方向に沿って脱落しないようにこれらを軸方向に挟み込んで保持している。ラチェット11は、ベースプレート21に溶接等によって一体に固定されており、ガイド12は、連結プレート4に溶接等によって一体に固定されている。回転カム14、ヒンジカム15およびスプリング16は、ヒンジピン18の回転動作に連動して協働することにより、ラチェット11およびガイド12の係止状態および被係止状態を切り替え、これによりラチェット11とガイド12との回転軸Oを回転中心とした相対的な位置の変更を行なう。なお、ヒンジピン18は、シート幅方向に沿って延在するロッド19(図2もあわせて参照)に連結されており、これによりシート幅方向の他方端に設けられたリクライナを同期的に動作させる。
ここで、ラチェット11のシート幅方向の内側に位置する内側壁面の外周部の所定位置には、シート内方に向けてストッパピン11aが設けられている。当該ストッパピン11aは、シートバック3の前方に向けての傾倒範囲を規定するものであり、ベースプレート21に設けられた突き当たり面21aに当接することでシートバック3のさらなる回転を制限する。
また、ラチェット11のシート上方側の外周面は、シート幅方向において段差が生じるように段形状に構成されており、当該部分の外周面には、一対の第1被係合凹部11bおよび一対の第2被係合凹部11cが設けられている。より詳細には、ラチェット11の外周面のうちのシート外側寄りの部分は、回転軸Oからより遠い位置に配置されており、当該部分の外周面に周方向に沿って並ぶように一対の第1被係合凹部11bが設けられている。また、ラチェット11の外周面のうちのシート内側寄りの部分は、回転軸Oからより近い位置に配置されており、当該部分の外周面に周方向に沿って並ぶように一対の第2被係合凹部11cが設けられている。これら一対の第1被係合凹部11bおよび一対の第2被係合凹部11cは、支持部に設けられた被係合部に該当する。
図5、図6および図8に示すように、大倒し機構20Aは、ベースプレート21と、レリーズプレート22と、カム23と、第1フックプレート24Aと、第2フックプレート24Bと、カバープレート25と、第1ピン26Aと、第1スリーブ26Bと、第2ピン27Aと、第2スリーブ27Bと、第3ピン28Aとを備えている。上述したように、大倒し機構20Aは、その大部分がサイドフレーム3Sの内部空間3S1に収容されている。
ベースプレート21、カム23、第1フックプレート24A、第2フックプレート24Bおよびカバープレート25は、シート幅方向において互いにその一部が重なり合うように積み重ねられて配置されている。より詳細には、ベースプレート21およびカバープレート25は、シート幅方向において所定の距離をもって対向配置されており、これらの間の空間に、カム23、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bが配置されている。このうち、カム23と第1フックプレート24Aは、シート上下方向に沿って隣接して配置されており、第1フックプレート24Aと第2フックプレート24Bとは、第1フックプレート24Aが外側壁部3Sa側に位置するとともに第2フックプレート24Bが内側壁部3Sb側に位置するように、シート幅方向において重ね合わされて一体化されている。これらベースプレート21、カム23、第1フックプレート24A、第2フックプレート24Bおよびカバープレート25は、たとえば鋼板等の金属板をプレス加工したプレス成形品にて構成される。ベースプレート21およびカバープレート25は、サイドフレーム3Sの内部空間3S1に収容されて対向配置された第1板状部材および第2板状部材にそれぞれ該当する。
レリーズプレート22は、折り曲げられた細長板状の形状を有しており、サイドフレーム3Sの内側壁部3Sbに宛がわれるように内部空間3S1の外部に配置されている。レリーズプレート22は、たとえば鋼板等の金属板をプレス加工したプレス成形品にて構成される。レリーズプレート22には、上述した操作レバー30に接続されたケーブル29が接続されている。
第1ピン26A、第2ピン27Aおよび第3ピン28Aは、上述したようにサイドフレーム3Sの外側壁部3Saおよび内側壁部3Sbを貫通するように設けられており、これにより第1ピン26A、第2ピン27Aおよび第3ピン28Aは、サイドフレーム3Sの内部空間3S1を挿通している。これら第1ピン26A、第2ピン27Aおよび第3ピン28Aは、リクライナ10および大倒し機構20Aの主要部が一体化されてなるユニットをサイドフレーム3Sに固定するとともに、大倒し機構20Aに含まれるベースプレート21、カム23、第1フックプレート24A、第2フックプレート24Bおよびカバープレート25を個別に回転可能または回転不能にサイドフレーム3Sに組付けている。
図6に示すように、第1ピン26Aは、サイドフレーム3Sによって回転可能に支持されており、当該第1ピン26Aは、サイドフレーム3Sの内部空間3S1に収容されるとともに、ベースプレート21に溶接部33によって接合された第1スリーブ26Bに挿通している。また、第1ピン26Aは、当該内部空間3S1においてベースプレート21、カム23およびカバープレート25に設けられた貫通孔に挿通しており、当該内部空間3S1の外部においてさらにレリーズプレート22に設けられた貫通孔に挿通している。なお、ベースプレート21に設けられた貫通孔には、第1スリーブ26Bが挿通されており、第1ピン26Aは、当該第1スリーブ26Bを介してベースプレート21に設けられた貫通孔に挿通している。
ここで、図7に示すように、カム23に設けられた貫通孔23bは、当該貫通孔23bの軸方向と直交する平面形状が非正円形状(具体的には、相対する1組の辺が外側に向けて湾曲状に膨出した略矩形状の形状)に構成されている。一方、図2および図6に示すように、第1ピン26Aの貫通孔23bに挿通される部分26aは、当該第1ピン26Aの軸方向と直交する平面形状がカム23の貫通孔23bの平面形状に合致した形状に構成されている。これにより、カム23は、第1ピン26Aに噛み合わされており、第1ピン26Aの回転に伴って当該第1ピン26Aと共回りする。
また、レリーズプレート22は、第1ピン26Aに溶接部32によって接合されている。これにより、レリーズプレート22は、第1ピン26Aに固定されており、第1ピン26Aの回転に伴って当該第1ピン26Aと共回りする。
これに対し、第1ピン26Aは、サイドフレーム3Sに設けられた一対の貫通孔3aおよびカバープレート25に設けられた貫通孔ならびに第1スリーブ26Bに対して遊嵌されている。これにより、サイドフレーム3S、カバープレート25および第1スリーブ26Bは、第1ピン26Aと共回りすることなく、第1ピン26Aは、これら部材に摺接して回転可能に支持されている。
なお、図7に示すように、内側壁部3Sb側に位置するカム23の表面には、貫通孔23bの周縁に沿うように平面視円形状の凹部23cが設けられている。当該凹部23cには、第1スリーブ26Bの軸方向の一端が挿入されている。これらカム23の凹部23cおよび第1スリーブ26Bの軸方向の一端は、リクライナ10および大倒し機構20Aの主要部が一体化されてなるユニットをサイドフレーム3Sに組付ける前の状態において、カム23の位置決めに利用される部位である。
図8に示すように、第2ピン27Aは、その先端が外側壁部3Saに溶接部34によって接合されることにより、サイドフレーム3Sによって回転不能に支持されている。第2ピン27Aは、サイドフレーム3Sの内部空間3S1に収容された第2スリーブ27Bに挿通している。また、第2ピン27Aは、当該内部空間3S1においてベースプレート21、第1フックプレート24A、第2フックプレート24Bおよびカバープレート25に設けられた貫通孔に挿通している。なお、ベースプレート21、第1フックプレート24A、第2フックプレート24Bおよびカバープレート25に設けられた貫通孔には、いずれも第2スリーブ27Bが挿通されており、第2ピン27Aは、当該第2スリーブ27Bを介してこれら貫通孔に挿通している。
ここで、第2スリーブ27Bは、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bに設けられた貫通孔に対して遊嵌されている。これにより、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bは、第2スリーブ27Bに摺接して回転可能に支持されている。
図6を参照して、第3ピン28Aは、その先端が外側壁部3Saに溶接等によって接合されることにより、サイドフレーム3Sによって回転不能に支持されている。第3ピン28Aは、サイドフレーム3Sの内部空間3S1においてベースプレート21およびカバープレート25に設けられた貫通孔に挿通している。当該第3ピン28Aは、内部空間3S1に収容されたベースプレート21およびカバープレート25をサイドフレーム3Sに対して位置決めして固定するためのものである。
図5に示すように、レリーズプレート22には、上述したように操作レバー30に接続されたケーブル29が接続されている。レリーズプレート22は、第1ピン26Aによって規定される第1連結軸O1を回転中心として回転可能に構成されている。
カム23は、第1ピン26Aによって規定される第1連結軸O1を回転中心として回転可能に構成されている。カム23のシート幅方向の下端には、所定の形状の係合解除突起23aが設けられている。当該係合解除突起23aは、第1フックプレート24Aを所定の方向に向けて押圧するための部位である。
レリーズプレート22は、ケーブル29によって牽引された場合に回転する。これにより、カム23は、レリーズプレート22と共に回転し、カム23に設けられた係合解除突起23aが回転方向に移動することになる。これらレリーズプレート22およびカム23は、後述する保持機構によるシートバック3の保持を解除する解除機構に該当し、このうちのレリーズプレート22は、外部からの入力を受けることで回転する被入力部材に該当し、カム23は、被入力部材からの動力の伝達を受けて回転する部材に該当する。
第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bは、第2ピン27Aによって規定される第2連結軸O2を回転中心として回転可能に構成されている。上述したように第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bは一体化されているため、当該第2連結軸O2を回転中心として共回りする。
第1フックプレート24Aのシート上下方向の上端には、所定の形状の係合解除凹部24aが設けられている。当該係合解除凹部24aは、上述したカム23に設けられた係合解除突起23aによって押圧されるための部位である。また、第1フックプレート24Aのシート上下方向の下端には、一対の第1係合突起24bが設けられている。一対の第1係合突起24bは、第1フックプレート24Aの外周面に沿って並んで設けられている。当該一対の第1係合突起24bは、上述したリクライナ10のラチェット11に設けられた一対の第1被係合凹部11bに係合可能な部位である。
第2フックプレート24Bは、シート幅方向に沿って見た場合に第1フックプレート24Aよりも大きい外形を有している。第2フックプレート24Bのシート上下方向の下端には、一対の第2係合突起24cが設けられている。一対の第2係合突起24cは、第2フックプレート24Bの外周面に沿って並んで設けられている。当該一対の第2係合突起24cは、上述したリクライナ10のラチェット11に設けられた一対の第2被係合凹部11cに係合可能な部位である。
第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bは、シートバック3を背凭れ可能な第1状態に保持する保持機構の係合部材に該当し、上述した一対の第1係合突起24bおよび一対の第2係合突起24cは、係合部材に設けられた係合部に該当する。
ここで、係合部としての一対の第1係合突起24bおよび一対の第2係合突起24cが、被係合部としての一対の第1被係合凹部11bおよび一対の第2被係合凹部11cに係合した係合状態においては、大倒し機構20Aとリクライナ10とが係合した状態にあり、これによりシートバック3の姿勢が保持されることによって上述した背凭れ可能な第1状態に維持されることになる。
図9は、本実施の形態に係る車両用シートにおいて、大倒し機構とリクライナとの係合が解除された状態を示す概略側面図であり、図10は、シートバックが大倒しされた状態を示す概略斜視図である。次に、これら図9および図10と前述の図5とを参照して、本実施の形態に係る車両用シートにおける大倒し動作について説明する。ここで、図9および図10においては、車両用シートのシートバックの保持が解除された第2状態を表わしている。また、図9および図10においては、理解を容易とするために、それぞれ一部の構成部品の図示を省略している。
図5に示す状態において、乗員が操作レバー30を操作した場合には、図9に示すように、ケーブル29によってレリーズプレート22が第1連結軸O1を回転中心として側面視時計回りに回転する。これに伴い、カム23も第1連結軸O1を回転中心として側面視時計回りに回転し、カム23の係合解除突起23aが第1フックプレート24Aの係合解除凹部24aに接触してこれを押圧する。
係合解除凹部24aが係合解除突起23aによって押圧されることにより、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bが第2連結軸O2を回転中心として側面視反時計回りに回転し、第1フックプレート24Aの一対の第1係合突起24bが、ラチェット11の一対の第1被係合凹部11bから外れるとともに、第2フックプレート24Bの一対の第2係合突起24cが、ラチェット11の一対の第2被係合凹部11cから外れる。
このとき、その詳細な説明は省略するが、操作レバー30の操作と連動してリクライナ10のロックが解除されるように構成することにより、シートバック3は、支持部としてのリクライナ10および連結プレート4によってもその保持が解除された状態となり、シートバック3は、回転軸Oを回転中心として回転可能になる。
すなわち、操作レバー30の操作により、係合部としての一対の第1係合突起24bおよび一対の第2係合突起24cが、被係合部としての一対の第1被係合凹部11bおよび一対の第2被係合凹部11cに係合していない非係合状態に移行することになり、これにより、大倒し機構20Aとリクライナ10とが係合してない状態が実現されるとともに、さらには、リクライナ10のロックも解除されることになり、シートバック3が傾倒可能な第2状態が実現されることになる。
そのため、図10に示すように、シートバック3と連結プレート4との間に上述した付勢バネが設けられている場合には、その付勢バネの付勢力により、当該付勢バネが設けられていない場合には、乗員のシートバック3の操作により、シートバック3が前方に向けて傾倒することになる。これにより、車両用シート1は、シートバック3に背凭れができない程度の大倒し状態に変更されることになる。
ここで、操作レバー30の操作に連動してリクライナ10のロックが解除されるように構成する方法の一例としては、大倒し機構20Aのレリーズプレート22とリクライナ10のヒンジピン18に接続されたリクライナ10用の操作レバーとをケーブル等にて接続し、これにより操作レバー30の操作に連動してリクライナ10のヒンジピン18が回転操作されるようにすることが想定される。
なお、乗員が操作レバー30の操作を解除した場合には、ケーブル29によるレリーズプレート22の牽引が解除され、図示しない付勢バネ等によってレリーズプレート22が元の位置に復帰する。これにより、カム23も元の位置に復帰し、その際、カム23の係合解除突起23aが第1フックプレート24Aの係合解除凹部24aの他の部分に接触してこれを押圧する。その結果、乗員のシートバック3の回転操作により、係合部としての一対の第1係合突起24bおよび一対の第2係合突起24cが、被係合部としての一対の第1被係合凹部11bおよび一対の第2被係合凹部11cに係合した係合状態に戻り、上述した第1状態に移行する。
以上において説明した本実施の形態に係る車両用シート1においては、上述したように、大倒し機構20Aを構成する各種の構成部品のうち、ベースプレート21、レリーズプレート22、カム23、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bが、シート幅方向においてサイドフレーム3Sの外側壁部3Saよりもシート内側に配置されることになり、カバープレート25も、その大部分がシート幅方向においてサイドフレーム3Sの外側壁部3Saよりもシート内側に配置されることになる。そのため、大倒し機能を実現するために必要となる各種の構成部品のうち、その占有体積が比較的大きい構成部品が、シート幅方向においてシートバック3のサイドフレーム3Sよりも外側に配置されることがなくなるため、シート幅方向の狭小化が実現可能になる。
また、本実施の形態に係る車両用シート1においては、上述したように、大倒し機構20Aを構成する各種の構成部品のうち、ベースプレート21、カム23、第1フックプレート24A、第2フックプレート24Bおよびカバープレート25が、いずれもサイドフレーム3Sの内部空間3S1に収容されている。そのため、大倒し機能を実現するために必要となる各種の構成部品のうち、その占有体積が比較的大きい構成部品が、シート幅方向においてシートバック3のサイドフレーム3Sよりも内側に配置されることがなくなるため、乗員の着座位置にこれら構成部品が近接あるいは重なって配置されることがなくなり、乗り心地を悪化させることなくシート幅方向の狭小化を実現することができる。
また、本実施の形態に係る車両用シート1においては、上述したように、ベースプレート21、カバープレート25、第1ピン26A、第2ピン27Aおよび第3ピン27A等を用いることにより、カム23、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bをサイドフレーム3Sの内部空間3S1に配置することを可能にしている。したがって、当該構成を採用することにより、製造の容易化が図られることになり、低コストに大倒し機能を有する車両用シートを提供することが可能になる。
また、本実施の形態に係る車両用シート1においては、上述したように、内部空間3S1を有するサイドフレーム3Sの外側壁部3Saおよび内側壁部3Sbが、その内部空間3S1において第1ピン26A、第2ピン27Aおよび第3ピン28Aによって連結された構成であるため、サイドフレーム3Sの剛性が向上することになるとともに、カム23、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bがシート幅方向においてサイドフレーム3Sの外側壁部3Saと内側壁部3Sbとによって挟まれることになるため、これらカム23、第1フックプレート24Aおよび第2フックプレート24Bの剛性(特に捩れに対する耐性)も向上することになる。
ここで、本実施の形態に係る車両用シート1とした場合には、サイドフレーム3S、大倒し機構20A、リクライナ10および連結プレート4がシート上下方向に沿ってより直線的に配置されることになる。そのため、車両用シート1に対して上下方向に荷重が加わった場合にも、車両用シート1の骨格に生じる変位を抑制しつつ、当該荷重を外部により効率的に逃がすことが可能になる。
また、本実施の形態に係る車両用シート1においては、上述したように、レリーズプレート22がシート幅方向においてサイドフレーム3Sの外部(すなわち、シート幅方向においてサイドフレーム3Sよりも内側)に配置されることになるため、サイドフレーム3Sの外部に配置された入力手段(たとえば上述した操作レバー30、また場合によってはこれに代えて設けられる駆動モータ等)によって入力される動力が、レリーズプレート22および第1ピン26Aを介してサイドフレーム3Sの内部空間3S1に導入され、当該内部空間3S1に収容されたカム23に効率的に伝達できることになり、装置構成を複雑化させることなく、簡素な構成にて容易に動力伝達の実現が可能になる。
したがって、本実施の形態に係る車両用シート1とすることにより、シートバック3を背凭れ不能な程度にまで傾倒させる大倒し機能を具備させつつ、シート幅方向の狭小化が実現でき、さらには、乗り心地を悪化させることなく高性能でかつ低コストの車両用シートとすることができる。
図11は、第1ピン近傍における他の構成例を示す模式断面図である。以下、この図11を参照して、上述した実施の形態に係る車両用シートの第1ピン近傍における他の構成例について説明する。
上述した実施の形態に係る車両用シート1においては、レリーズプレート22がシート幅方向においてサイドフレーム3Sの内側壁部3Sbよりもシート内側に配置されてなる大倒し機構20Aを例示して説明を行なったが、図11に示すように、当該レリーズプレート22がシート幅方向においてサイドフレーム3Sの外側壁部3Saよりもシート外側に配置されてなる大倒し機構20Bとすることもできる。その場合には、第1ピン26Aのサイドフレーム3Sに対する挿入方向を変更することもできる。
この場合にも、第1ピン26Aは、サイドフレーム3Sによって回転可能に支持されており、当該第1ピン26Aは、サイドフレーム3Sの内部空間3S1に収容されるとともに、ベースプレート21に溶接部33によって接合された第1スリーブ26Bに挿通している。また、第1ピン26Aは、当該内部空間3S1においてベースプレート21、カム23およびカバープレート25に設けられた貫通孔に挿通しており、当該内部空間3S1の外部においてさらにレリーズプレート22に設けられた貫通孔に挿通している。なお、ベースプレート21に設けられた貫通孔には、第1スリーブ26Bが挿通されており、第1ピン26Aは、当該第1スリーブ26Bを介してベースプレート21に設けられた貫通孔に挿通している。
ここで、カム23に設けられた貫通孔23bは、当該貫通孔23bの軸方向と直交する平面形状が非正円形状に構成されている。一方、第1ピン26Aの貫通孔23bに挿通される部分26aは、当該第1ピン26Aの軸方向と直交する平面形状がカム23の貫通孔23bの平面形状に合致した形状に構成されている。これにより、カム23は、第1ピン26Aに噛み合わされており、第1ピン26Aの回転に伴って当該第1ピン26Aと共回りする。
また、レリーズプレート22は、第1ピン26Aに溶接部32によって接合されている。これにより、レリーズプレート22は、第1ピン26Aに固定されており、第1ピン26Aの回転に伴って当該第1ピン26Aと共回りする。
これに対し、第1ピン26Aは、サイドフレーム3Sに設けられた一対の貫通孔3aおよびカバープレート25に設けられた貫通孔ならびに第1スリーブ26Bに対して遊嵌されている。これにより、サイドフレーム3S、カバープレート25および第1スリーブ26Bは、第1ピン26Aと共回りすることなく、第1ピン26Aは、これら部材に摺接して回転可能に支持されている。
なお、内側壁部3Sb側に位置するカム23の表面には、貫通孔23bの周縁に沿うように平面視円形状の凹部23cが設けられている。当該凹部23cには、第1スリーブ26Bの軸方向の一端が挿入されている。これらカム23の凹部23cおよび第1スリーブ26Bの軸方向の一端は、リクライナ10および大倒し機構20Aの主要部が一体化されてなるユニットをサイドフレーム3Sに組付ける前の状態において、カム23の位置決めに利用される部位である。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。