JP2018173005A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒の酸素吸蔵能力の推定の精度の一層の向上を図る。【解決手段】内燃機関の排気通路における触媒の下流に設置した空燃比センサの出力信号の大きさをリーン判定値と比較することで触媒の下流側の空燃比がリッチからリーンに切り替わったと判定し、かつ同空燃比センサの出力信号の大きさをリッチ判定値と比較することで触媒の下流側の空燃比がリーンからリッチに切り替わったと判定し、触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから触媒の下流側の空燃比の判定が切り替わるまでの期間を触媒の酸素吸蔵能力の推定期間とし、前記空燃比センサの応答性の低下の度合いが小さい場合、空燃比センサの応答性の低下の度合いが大きい場合と比較して、前記リーン判定値及び前記リッチ判定値を、触媒の下流側の空燃比が理論空燃比に略等しいときの当該空燃比センサの出力信号の値からより遠ざける内燃機関の制御装置を構成した。【選択図】図3
Description
本発明は、内燃機関における燃料噴射量を調整して空燃比を制御する制御装置に関する。
一般に、内燃機関の排気通路には、内燃機関の気筒から排出される排気ガス中に含まれる有害物質HC、CO、NOxを酸化/還元して無害化する三元触媒が装着されている。
触媒の酸素吸蔵能力(OSC:O2 Storage Capacity)は、経年劣化により減退する。触媒による排気ガスの浄化率は、触媒内に吸着できる酸素量に依存する。触媒の劣化が進行すると、排出される有害物質の量も増大する。一方で、触媒の劣化は、車両自体の運転性能にはほとんど影響を与えない。それ故、異常な排出ガス車が長期間、無意識に使用され続けるおそれがある。
そのような事象に対処するべく、触媒の経年劣化の度合いを自己診断するダイアグノーシス機能を車両に実装することも通例となっている(例えば、下記特許文献を参照)。具体的には、触媒から酸素を完全に放出した状態で、触媒に流入するガスの空燃比を強制的にリーンに操作し、触媒の上流に設置した空燃比センサの出力信号がリーンに切り替わってから触媒の下流に設置した空燃比センサの出力信号がリーンに切り替わるまでの期間に、触媒に吸蔵した酸素量を推計する。触媒の下流の空燃比センサの出力がリーンに反転した時点での酸素吸蔵量が、当該触媒の最大酸素吸蔵能力となる。
あるいは、触媒に酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵した状態で、触媒に流入するガスの空燃比を強制的にリッチに操作し、触媒の上流の空燃比センサの出力信号がリッチに切り替わってから触媒の下流の空燃比センサの出力信号がリッチに切り替わるまでの期間に、触媒が放出した酸素の量を推計することもできる。触媒の下流の空燃比センサの出力がリッチに反転した時点の酸素放出量が、当該触媒の最大酸素放出能力、換言すれば最大酸素吸蔵能力ということになる。
触媒のダイアグノーシスにおいては、最大酸素吸蔵能力の推算値を判定閾値と比較し、前者が後者を下回ったならば触媒が劣化したと判断する。そして、触媒が劣化した旨を運転者に報知して、触媒の交換を促す。
触媒の下流側のガスの空燃比の切り替わりのタイミングは、触媒の下流の空燃比センサの出力信号とリーン判定値及びリッチ判定値との比較を通じて知得する。即ち、空燃比センサの出力信号がリーン判定値を跨いで変化したときに触媒の下流側の空燃比がリッチからリーンに切り替わったと判定し、並びに、空燃比センサの出力信号がリッチ判定値を跨いで変化したときに触媒の下流側の空燃比がリーンからリッチに切り替わったと判定する。
空燃比センサの応答性(より具体的には、当該空燃比センサに接触するガスの空燃比が一定量変化したときの空燃比センサの出力信号の大きさの変化量、及び/または、ガスの空燃比の変化に対する空燃比センサの出力信号の変化の遅延)には、個体差が存在する。加えて、温度や経年変化の影響を受けて、空燃比センサの応答性が低下することも間々ある。
触媒の下流の空燃比センサの応答性が低下している場合、既に触媒内に酸素が充満しているにもかかわらず空燃比センサの出力信号がリーン判定値を超えない、または既に触媒内の酸素が欠乏しているにもかかわらず空燃比センサの出力信号がリッチ判定値を超えないといったことが起こり得る。さすれば、触媒の酸素吸蔵能力を正しく見積もることができなくなり、劣化した触媒を看過してしまうおそれがある。そこで、従来は、空燃比センサの応答性の低下を予め考慮に入れて、リーン判定値及びリッチ判定値をそれぞれ、空燃比センサが理論空燃比に略等しい空燃比のガスに接触したときに出力する信号値に近い値に設定するようにしている。
しかしながら、空燃比センサの応答性が高く保たれている場合には、リーン判定値及びリッチ判定値の各々を理論空燃比近傍の値に設定することにより、触媒の酸素吸蔵量または酸素放出量を計数する期間の長さが不必要に短縮され、その結果として触媒の最大酸素吸蔵能力を過小評価することになってしまう。
以上の問題に初めて着目してなされた本発明は、触媒の酸素吸蔵能力の推定の精度の向上を図ることを所期の目的としている。
本発明では、内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間に触媒の酸素吸蔵能力の推定を行うものであって、排気通路における触媒の下流に設置した空燃比センサの出力信号の大きさをリーン判定値と比較することで触媒の下流側の空燃比がリッチからリーンに切り替わったと判定し、かつ同空燃比センサの出力信号の大きさをリッチ判定値と比較することで触媒の下流側の空燃比がリーンからリッチに切り替わったと判定し、触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから触媒の下流側の空燃比の判定が切り替わるまでの期間を触媒の酸素吸蔵能力の推定期間とし、前記空燃比センサの応答性の低下の度合いが小さい場合、空燃比センサの応答性の低下の度合いが大きい場合と比較して、前記リーン判定値及び前記リッチ判定値を、触媒の下流側の空燃比が理論空燃比に略等しいときの当該空燃比センサの出力信号の値からより遠ざける内燃機関の制御装置を構成した。
本発明によれば、触媒の酸素吸蔵能力の推定の精度の一層の向上を図り得る。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで生じる排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
排気通路4における触媒41の上流及び下流には、排気通路を流通する排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ43、44を設置する。空燃比センサ43、44はそれぞれ、排気ガスの空燃比に比例した出力特性を有するリニアA/Fセンサであってもよいし、排気ガスの空燃比に対して非線形な出力特性を有するO2センサであってもよい。本実施形態では、触媒41の上流の空燃比センサ43及び下流の空燃比センサ44として、リニアA/Fセンサを想定している。
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものであり、排気通路4における触媒41の上流側と吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流側とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における排気マニホルド42またはその下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、具体的にはサージタンク33に接続している。
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサ(エンジン回転センサ)から出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の温度を示唆する冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、触媒41の上流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ43から出力される空燃比信号f、触媒41の下流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ44から出力される空燃比信号g、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号h等が入力される。
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l等を出力する。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、要求EGR量(または、EGR率)等といった運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
本実施形態のECU0は、気筒1に充填される混合気の空燃比、ひいては気筒1から排出され触媒41へと導かれる排気ガスの空燃比をフィードバック制御する。ECU0は、まず、吸気圧及び吸気温、エンジン回転数、要求EGR率等から、気筒1に充填される新気の量を算出し、これに見合った基本噴射量TPを決定する。
次いで、この基本噴射量TPを、触媒41の上流側及び/または下流側の空燃比に応じて定まるフィードバック補正係数FAFで補正する。一般に、フィードバック補正係数FAFは、空燃比センサ43、44を介して実測されるガスの空燃比と目標空燃比(平常時は理論空燃比14.6の近傍)との偏差に応じて調整され、実測空燃比が目標空燃比に対してリーンであるときには増加し、実測空燃比が目標空燃比に対してリッチであるときには減少する。
そして、内燃機関の状況に応じて定まる各種補正係数Kや、インジェクタ11の無効噴射時間TAUVをも加味して、最終的な燃料噴射時間(インジェクタ11に対する通電時間)Tを算定する。燃料噴射時間Tは、
T=TP×FAF×K+TAUV
となる。しかして、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを入力、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
T=TP×FAF×K+TAUV
となる。しかして、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを入力、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
触媒41の上流側及び/または下流側の空燃比信号f、gを参照したフィードバック制御は、例えば、内燃機関の冷却水温が所定温度以上であり、燃料カット中でなく、パワー増量中でなく、内燃機関の始動から所定時間が経過し、空燃比センサ43、43が活性中、吸気圧が正常である、等の諸条件が全て成立している場合に行う。
一方で、ECU0は、所定の燃料カット条件が成立したときに、気筒1への燃料供給を中断する燃料カットを実行する。ECU0は、少なくとも、アクセル開度が0または0に近い閾値以下となり、かつエンジン回転数が燃料カット許可回転数以上あることを以て、燃料カット条件が成立したものと判断する。
因みに、燃料カット条件が成立したとしても、即時にインジェクタ11からの燃料噴射(及び、点火)を停止するとは限らない。エンジントルクが比較的大きい段階で、急に燃料供給を遮断すると、エンジン回転数や車速がステップ的に急落するトルクショックが発生し、運転者を含む搭乗者に衝撃を感じさせる。このトルクショックを軽減するべく、燃料カット条件が成立した後、遅延時間の経過を待ってから、はじめて燃料噴射を停止する。この遅延時間中には、点火タイミングを遅角補正し、エンジントルクを積極的に低下させる。
燃料カットの開始後、所定の燃料カット終了条件が成立したときには、燃料カットを終了、燃料噴射(及び、点火)を再開する。ECU0は、アクセル開度が閾値を上回った、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数を下回るまで低下した等のうちの何れかを以て、燃料カット終了条件が成立したものと判断する。
燃料カット中は、燃焼ガスを含まない新気が気筒1及び排気通路4を通じて触媒41に流入する。そして、触媒41の最大酸素吸蔵能力まで酸素が触媒41内に吸蔵されると、排気通路4における触媒41の下流側に余剰の酸素が流出する状態となる。このことを利用して、本実施形態のECU0は、燃料カットの実行中に、触媒41の下流に設置した空燃比センサ44の応答性の低下の度合いを推測する。
具体的には、図2に示すように、燃料カットの開始時点以後、変動する空燃比センサ44の出力信号(出力電流または出力電圧)gを監視し、その大きさが変化を始めてから所定値(空燃比センサ44の応答性の低下がないと仮定した場合における所定のリーン空燃比に相当する値)に到達するまでの所要時間ΔTを計数する。なお、空燃比フィードバック制御により、燃料カットの開始時点における空燃比センサ44の出力信号gの大きさは、理論空燃比またはその近傍に相当する値となっている。
あるいは、燃料カットの開始後一定の時間が経過した時点における空燃比センサ44の出力信号gの値と、燃料カットの開始時点若しくは出力信号gの大きさが変化を始めた時点における空燃比センサ44の出力信号gの値との差分ΔIを計数する。
しかして、計数した所要時間ΔTの長さ、及び/または、出力信号gの変化分ΔIに基づき、触媒41の下流の空燃比センサ44の応答性の低下の度合いを推測する。空燃比センサ44の応答性の低下の度合いは、ΔTが長いほど大きく、及び/または、ΔIが小さいほど大きいと考えられる。
本実施形態のECU0は、触媒41の最大酸素吸蔵能力を推定するとともに、推定した最大酸素吸蔵能力値を劣化判定値と比較して、当該触媒41が正常であるか異常であるかを判定するダイアグノーシスを行う。
触媒41の酸素吸蔵能力は既知の任意の手法を採用して推算することができるが、ここではその一典型例を示す。内燃機関の気筒1に空燃比リーンの混合気を供給して触媒41の酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵している状態から、気筒1に供給する混合気を意図的に空燃比リッチに操作するアクティブ制御を実行する。すると、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号(出力電流または出力電圧)fは即座に空燃比リッチを示す。これに対し、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gは、上流の空燃比センサ43の出力信号fに遅れて空燃比リッチを示す。触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リッチを示してから(または、混合気を空燃比リッチに操作してから)下流の空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示すまでの間、触媒41に吸蔵していた酸素が放出されて酸素の不足が補われるためである。
触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リッチを示してから、下流の空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示すまでの間に経過した時間をTRとおき、このTRの間に供給した燃料の総重量をGF、理論空燃比とリッチ時の空燃比との差分をΔA/FRとおくと、TRの間に触媒41中で不足した酸素量は、
(α・ΔA/FR・GF)
となる。αは、空気中に占める酸素の重量割合(≒0.23)である。
(α・ΔA/FR・GF)
となる。αは、空気中に占める酸素の重量割合(≒0.23)である。
上式は、TRの時点までに触媒41が放出した酸素の量を表している。供給した燃料の総重量GFは、ECU0において演算することができる。即ち、一回の燃料噴射機会における燃料噴射量は、空燃比を理論空燃比よりもリッチな(14.6よりも小さい)所定値とするために必要な量であり、その噴射量に単位時間当たりの膨張行程回数(エンジン回転数に比例)を乗じれば、単位時間当たりの燃料供給量となる。そして、単位時間当たりの燃料供給量に経過時間TRを乗じれば、供給した燃料の総重量GFとなる。要するに、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示した時点での経過時間TRに基づいて、触媒41の最大酸素放出能力を算出することが可能である。この最大酸素放出能力は、最大酸素吸蔵能力と同義である。
厳密には、TRの期間において、運転者のアクセル操作等に起因して単位時間当たりの燃料供給量(または、一回の噴射量)は増減し得る。故に、TRの期間中の供給燃料の総重量GFは、単位時間当たりの供給量gF(t)をTRの範囲で時間積分して求めることが好ましい。また、本実施形態では、触媒41の上流にリニアA/Fセンサを配しており、触媒41に流入するガスの空燃比を実時間で計測することが可能である。よって、ΔA/FR(t)を理論空燃比とA/Fセンサ43を介して計測した実測空燃比との差分として、触媒41の最大酸素吸蔵能力を、TRの期間の時間積分として求めることができる。即ち;
α∫{ΔA/FR(t)・gF(t)}dt
あるいは、内燃機関の気筒1に空燃比リッチの混合気を供給して触媒41に酸素を全く吸蔵していない状態から、気筒1に供給する混合気を意図的に空燃比リーンに操作するアクティブ制御を実行する。すると、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fは即座に空燃比リーンを示す。これに対し、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gは、上流の空燃比センサ43の出力信号fに遅れて空燃比リーンを示す。触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リーンを示してから(または、混合気を空燃比リーンに操作してから)下流の空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示すまでの間、過剰な酸素が触媒41に吸着するためである。
α∫{ΔA/FR(t)・gF(t)}dt
あるいは、内燃機関の気筒1に空燃比リッチの混合気を供給して触媒41に酸素を全く吸蔵していない状態から、気筒1に供給する混合気を意図的に空燃比リーンに操作するアクティブ制御を実行する。すると、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fは即座に空燃比リーンを示す。これに対し、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gは、上流の空燃比センサ43の出力信号fに遅れて空燃比リーンを示す。触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リーンを示してから(または、混合気を空燃比リーンに操作してから)下流の空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示すまでの間、過剰な酸素が触媒41に吸着するためである。
触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リーンを示してから、下流の空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示すまでの間に経過した時間をTLとおき、このTLの間に供給した燃料の総重量をGF、リーン時の空燃比と理論空燃比との差分をΔA/FLとおくと、TLの間に触媒41中で過剰となった酸素量は、
(α・ΔA/FL・GF)
となる。
(α・ΔA/FL・GF)
となる。
上式は、TLの時点で触媒41が吸蔵している酸素の量を表している。供給した燃料の総重量GFはやはり、ECU0において演算することができる。即ち、一回の燃料噴射機会における燃料噴射量は、空燃比を理論空燃比よりもリーンな(14.6よりも大きい)所定値とするために必要な量であり、その噴射量に単位時間当たりの膨張行程回数を乗じれば単位時間当たりの燃料供給量となる。そして、単位時間当たりの燃料供給量に経過時間TLを乗じれば、供給した燃料の総重量GFとなる。要するに、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号が空燃比リーンを示した時点での経過時間TLに基づいて、触媒41の最大酸素吸蔵能力を算出することが可能である。
厳密には、TLの期間において、運転者のアクセル操作等に起因して単位時間当たりの燃料供給量(または、一回の噴射量)は増減し得る。故に、TLの期間中の供給燃料の総重量GFは、単位時間当たりの供給量gF(t)をTLの範囲で時間積分して求めることが好ましい。ΔA/FL(t)を理論空燃比とA/Fセンサ43を介して計測した実測空燃比との差分とすれば、触媒41の最大酸素吸蔵能力を、TLの期間の時間積分として求めることができる。即ち;
α∫{ΔA/FL(t)・gF(t)}dt
触媒41のダイアグノーシスは、触媒41の劣化の兆候を感知したことを契機として実施する。その兆候の例としては、内燃機関の運転中に刻々と変動する触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gの振動の周波数が閾値よりも高く(または、振動の周期が閾値よりも短く)なったことや、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fの変動と下流の空燃比センサ44の出力信号gの変動との時間差が閾値よりも短くなったこと等が挙げられる。
α∫{ΔA/FL(t)・gF(t)}dt
触媒41のダイアグノーシスは、触媒41の劣化の兆候を感知したことを契機として実施する。その兆候の例としては、内燃機関の運転中に刻々と変動する触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gの振動の周波数が閾値よりも高く(または、振動の周期が閾値よりも短く)なったことや、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fの変動と下流の空燃比センサ44の出力信号gの変動との時間差が閾値よりも短くなったこと等が挙げられる。
但し、触媒41のダイアグノーシスの実施は、内燃機関の冷却水温が所定以上、内燃機関の負荷、気筒1に充填される吸気量、エンジン回転数、空燃比フィードバック制御による補正係数FAF及び触媒41の温度がそれぞれ所定範囲内、等といった諸条件がおしなべて成立していることを前提とする。
また、触媒41のダイアグノーシスは、一トリップ(イグニッションスイッチがONに操作されて内燃機関を始動してから、イグニッションスイッチがOFFに操作されて内燃機関を停止するまでの期間)毎に少なくとも一回実施することが好ましい。
図3に示しているように、アクティブ制御では、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gが所定のリッチ判定値に到達した、即ち出力gがリーンからリッチへと切り替わったタイミングで、制御目標空燃比をリーン側の所定空燃比に設定し、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが当該制御目標に対応した値をとるように燃料噴射量を補正する。これにより、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリーン化する。そして、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが前記制御目標に対応した値に到達してから、下流の空燃比センサ44の出力信号gがリーン判定値に到達するまでの間の経過時間TL、即ち出力gが再度リーンへと切り替わるまでの経過時間TLを計測する。
並びに、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力gがリッチからリーンへと切り替わったタイミングで、制御目標空燃比をリッチ側の所定空燃比に設定し、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが当該制御目標に対応した値をとるように燃料噴射量を補正する。これにより、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリッチ化する。そして、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fが前記制御目標に対応した値に到達してから、下流の空燃比センサ44の出力信号gが所定のリーン判定値に到達するまでの間の経過時間TR、即ち出力gが再度リッチへと切り替わるまでの経過時間TRを計測する。
なお、既に述べた通り、ECU0は、燃料カットの実行中に、触媒41の下流の空燃比センサ44の応答性の低下の度合いを推測している。触媒41のダイアグノーシスにおいては、図3に示しているように、空燃比センサ44の応答性の低下の度合いが小さいほど、リーン判定値及びリッチ判定値を、理論空燃比に相当する値から遠ざける。逆に、空燃比センサ44の応答性の低下の度合いが大きいほど、リーン判定値及びリッチ判定値を、理論空燃比に相当する値に近づける。但し、図3に表している空燃比センサ43、44の出力信号f、g及び触媒41の酸素吸蔵量の推移は、空燃比センサ44の応答性の低下の度合いが小さい場合のものである。空燃比センサ44の応答性の低下の度合いが大きくなると、当該空燃比センサ44の出力信号gの変動が図3に描画しているものよりも緩慢になる。
ECU0は、酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵していた触媒41がその酸素の全てを放出するのに要した時間TR、及び、酸素を吸蔵していない触媒41が酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵するのに要した時間TLをそれぞれ一回以上計測し、計測したTR、TLを基に最大酸素吸蔵能力(α・ΔA/FR・GF)、(α・ΔA/FL・GF)を算出して、それらの平均値を求める。
触媒41が劣化したか否かの判断は、当該触媒41の最大酸素吸蔵能力(の複数回の推算値の平均)を判定閾値と比較することにより行う。即ち、最大酸素吸蔵能力が判定閾値未満であれば、当該触媒41は既に劣化しており十分な性能を発揮できないものと診断される。触媒41が劣化しているとの判断を下したECU0は、触媒41の異常の旨を示す情報(ダイアグノーシスコード)をメモリに記憶保持するとともに、触媒41の異常の旨を運転者の視覚または聴覚に訴えかける態様で出力して報知する。例えば、コックピット内のエンジンチェックランプを点灯させたり、ディスプレイに表示させたり、警告音を発したりして、触媒41の点検及び交換を促す。
本実施形態では、内燃機関の排気通路4に装着される排気ガス浄化用の触媒41の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間に触媒41の酸素吸蔵能力の推定を行うものであって、排気通路4における触媒41の下流に設置した空燃比センサ44の出力信号gの大きさをリーン判定値と比較することで触媒41の下流側の空燃比がリッチからリーンに切り替わったと判定し、かつ同空燃比センサ44の出力信号gの大きさをリッチ判定値と比較することで触媒41の下流側の空燃比がリーンからリッチに切り替わったと判定し、触媒41の上流側の空燃比を強制的に変動させてから触媒41の下流側の空燃比の判定が切り替わるまでの期間を触媒41の酸素吸蔵能力の推定期間とし、前記空燃比センサ44の応答性の低下の度合いが小さい場合、空燃比センサ44の応答性の低下の度合いが大きい場合と比較して、前記リーン判定値及び前記リッチ判定値を、触媒41の下流側の空燃比が理論空燃比に略等しいときの当該空燃比センサ44の出力信号gの値からより遠ざける内燃機関の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、触媒41の酸素吸蔵能力の推定の精度がより一層向上する。即ち、触媒41の下流の空燃比センサ44の応答性の低下の度合いが小さい場合における、触媒41の最大酸素吸蔵能力の過小評価を回避できるとともに、同空燃比センサ44の応答性の低下の度合いが大きい場合においても、触媒41の最大酸素吸蔵能力の推定を適切に遂行することができる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態には限られない。各部の具体的構成や具体的な処理の手順は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両等に搭載される内燃機関の制御に適用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
43…触媒の上流の空燃比センサ
44…触媒の下流の空燃比センサ
f…触媒の上流の空燃比信号
g…触媒の下流の空燃比信号
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
43…触媒の上流の空燃比センサ
44…触媒の下流の空燃比センサ
f…触媒の上流の空燃比信号
g…触媒の下流の空燃比信号
Claims (1)
- 内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間に触媒の酸素吸蔵能力の推定を行うものであって、
排気通路における触媒の下流に設置した空燃比センサの出力信号の大きさをリーン判定値と比較することで触媒の下流側の空燃比がリッチからリーンに切り替わったと判定し、かつ同空燃比センサの出力信号の大きさをリッチ判定値と比較することで触媒の下流側の空燃比がリーンからリッチに切り替わったと判定し、触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから触媒の下流側の空燃比の判定が切り替わるまでの期間を触媒の酸素吸蔵能力の推定期間とし、
前記空燃比センサの応答性の低下の度合いが小さい場合、空燃比センサの応答性の低下の度合いが大きい場合と比較して、前記リーン判定値及び前記リッチ判定値を、触媒の下流側の空燃比が理論空燃比に略等しいときの当該空燃比センサの出力信号の値からより遠ざける内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017070487A JP2018173005A (ja) | 2017-03-31 | 2017-03-31 | 内燃機関の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017070487A JP2018173005A (ja) | 2017-03-31 | 2017-03-31 | 内燃機関の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018173005A true JP2018173005A (ja) | 2018-11-08 |
Family
ID=64106645
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017070487A Pending JP2018173005A (ja) | 2017-03-31 | 2017-03-31 | 内燃機関の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018173005A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021181599A1 (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-16 | ヤマハ発動機株式会社 | 鞍乗型車両 |
-
2017
- 2017-03-31 JP JP2017070487A patent/JP2018173005A/ja active Pending
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WO2021181599A1 (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-16 | ヤマハ発動機株式会社 | 鞍乗型車両 |
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