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JP2018154773A - 繊維強化複合樹脂シートおよび成形品 - Google Patents

繊維強化複合樹脂シートおよび成形品 Download PDF

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JP2018154773A JP2017053894A JP2017053894A JP2018154773A JP 2018154773 A JP2018154773 A JP 2018154773A JP 2017053894 A JP2017053894 A JP 2017053894A JP 2017053894 A JP2017053894 A JP 2017053894A JP 2018154773 A JP2018154773 A JP 2018154773A
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理 奥中
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厚 高橋
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Abstract

【課題】 炭素繊維とポリプロピレンとの接着性が良好で、かつ熱安定性に優れた繊維強化複合樹脂シートを得ることができ、また構造材に適応可能な優れた力学特性を有する炭素繊維強化複合材料が求められていた。【解決手段】 マトリクス成分が下記ポリプロピレン(A)であり、強化繊維が炭素繊維(B)である繊維強化複合樹脂シート。ポリプロピレン(A): 酸量が1.0〜5.0%の酸変性ポリプロピレン(A−1)0.3〜9.0質量%と、酸変性されていないポリプロピレン(A−2)91.0〜99.7質量%を含み、酸量が無水マレイン酸換算で0.006〜0.2%である。【選択図】 なし

Description

本発明はポリプロピレンと炭素繊維からなる繊維強化複合樹脂シートおよび成形品に関する。さらに詳しくは、機械特性と熱安定性のバランスに優れ、スタンピング成形に適した繊維強化複合樹脂シートに関する。
炭素繊維強化複合材料の成形方法の1つとして、炭素繊維束や炭素繊維織物などの炭素繊維集合体に熱可塑性樹脂組成物を含浸させてなる、繊維強化複合樹脂シートを用いる手法がある。例えば、繊維強化複合樹脂シートを積層するか、もしくは繊維強化複合樹脂シートを裁断してなるシート片を金型等の上に分散させた後、これを加熱し加圧冷却することにより、炭素繊維とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂組成物を一体化させる。熱可塑性樹脂組成物を用いた炭素繊維強化複合材料は、耐衝撃性が優れ、かつ成形時間が短いため、自動車用部品等に最適である。(特許文献1)
近年、炭素繊維強化複合材料にはより軽量性と経済性が求められるようになり、マトリックス樹脂として軽量なオレフィン系樹脂、とりわけポリプロピレン系樹脂が好んで使用される。
例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレンと酸基を含有しないポリプロピレンを用いた炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグが、離型性に優れる事が開示されている。(特許文献2)
特開平9−155862号公報 特開2014−234509号公報
しかし特許文献5に記載の技術では、強度発現性と離型性は優れるものの、オートクレーブを用いて成形しており、スタンピング成形に適した熱安定性を有しているかについては言及されていない。
本発明は、従来技術を鑑み、スタンピング成形に適した熱安定性と、構造材に適応可能な優れた力学特性を有する繊維強化複合樹脂シートを提供する事を目的とする。
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明者らは、特定の酸変性ポリプロピレン樹脂と、未変性ポリプロピレン樹脂を、ある割合で併用すればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の要旨は以下の[1]〜[7]に存する。
[1] マトリクス成分が下記ポリプロピレン(A)であり、強化繊維が炭素繊維(B) である繊維強化複合樹脂シート。プロピレン(A): 酸量が1.0〜5.0%の酸変性ポリプロピレン(A−1)0.3〜9.0質量%と、酸変性されていないポリプロピレン(A−2)91.0〜99.7質量%を含み、酸量が無水マレイン酸換算で0.006〜0.2%である。
[2] ポリプロピレン(A)35〜75質量%と炭素繊維(B)25〜65質量%からなる、上記[1]に記載の繊維強化複合樹脂シート。
[3] 炭素繊維(B)の繊維長が10mm以上である、上記[1]または[2]に記載の繊維強化複合樹脂シート。
[4] 炭素繊維(B)が一方向に引き揃えられた炭素繊維である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維強化複合樹脂シート。
[5] ポリプロピレン(A)及び一方向に引き揃えられた 炭素繊維(B)を含む層を2層以上積層する上記[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維強化複合樹脂シート。
[6] 窒素雰囲気下で300℃1時間加熱した場合の重量減少が1%以下である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維強化複合樹脂シート。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維強化複合樹脂シートをプレス成形して得られる成形品。
本発明によれば、炭素繊維とポリプロピレンとの接着性が良好で、かつ熱安定性に優れた繊維強化複合樹脂シートを得ることができ、また構造材に適応可能な優れた力学特性を有する炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の繊維強化複合樹脂シートは、マトリクス成分がポリプロピレン(A)であり、強化繊維が炭素繊維(B)である。マトリクス成分がポリプロピレンである事により、成形性と優れた耐薬品性を実現する。また、強化繊維が炭素繊維である事により、優れた機械特性を実現する。
ポリプロピレン(A)は、酸変性ポリプロピレン(A−1)と、酸変性されていないポリプロピレン(A−2)を含む。酸変性ポリプロピレン(A−1)により、ポリプロピレン(A)と炭素繊維(B)の界面強度を高くする事が可能であり、優れた機械特性を発現する。また、酸変性されていないポリプロピレン(A−2)を含むことで、ポリプロピレンの優れた機械特性を損なう事が無い。
本発明に用いる酸変性ポリプロピレン(A−1)に含まれる酸成分は、特に限定が無いが、無水カルボン酸、不飽和スルホン酸類、不飽和リン酸類等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。酸変性ポリプロピレン(A−1)の酸量は1.0〜5.0%であり、1.5〜4.0%が好ましく、2.0〜3.0%がさらに好ましい。なお、成分(A−1)として複数種の樹脂を使用する場合は、これらの加重平均で求められる平均の含有量が上記の範囲内であることが好ましい。
酸変性ポリプロピレン(A−1)の酸量が1.0%以上にある事で、炭素繊維(B)と十分な接着性が得られ、後述する成形体とした際に良好な機械物性が得られる。一方、極端に酸量を大きくすると、加工性を損ねる上、ポリプロピレンとしての特徴を失われる傾向があるが、酸量が5.0%以下とすることで、ポリプロピレンとしての特徴を損なうことなく、すなわちこれを用いて製造される成形品の耐熱性、強度・耐衝撃性、耐薬品性等を維持し、また低分子量成分の増加に伴う揮発成分の増加を招くことなく取り扱うことができる。
酸変性ポリプロピレン(A−1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、分子中にプロピレン又は酸成分以外の部分構造を含んでいてもよい。当該部分構造を構成するモノマーとしては、例えばα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどが挙げられる。
α−オレフィンとしては、例えばエチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィン等が挙げられ、共役ジエン及び非共役ジエンとしては、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは、1種類または2種類以上を選択することができる。
または(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、エポキシ基含有ビニル類、イソシアナート基含有ビニル類、芳香族ビニル類、アミド類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類等を含有していてもよい。
酸変性ポリプロピレン(A−1)の重量平均分子量は通常1,000〜500,000であり、好ましくは20,000〜80,000である。
成分(A−1)は公知の手法で製造することができ、例えば、J. Appl. Polym. Sci., 53, 239 (1994)に記載されているように、有機溶剤中で、プロピレン系樹脂と無水マレイン酸および有機過酸化物を加熱混合することで得られる。
成分(A−1)の酸含有量は、JIS K 0070に記載の方法で求めた酸価から算出する事ができる。
酸変性されていないポリプロピレン(A−2)は、例えばプロピレンの単独重合体や、プロピレンと少なくとも1種のα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエン等とのブロックもしくはランダム共重合体等が挙げられる。
該α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等の、プロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィンが挙げられる。共役ジエン、及び非共役ジエンとしてはブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。これらプロピレン以外の単量体は、1種類のみ使用しても、2種類以上を用いても良い。
成分(A−2)の重量平均分子量は通常30,000〜500,000であり、好ましくは150,000〜500,000である。
ポリプロピレン(A)は、酸変性ポリプロピレン(A−1)0.3〜9.0質量%と酸変性されていないポリプロピレン(A−2)91.0〜99.7質量%を含み、(A−1)0.6〜6.0質量%と(A−2)94.0〜99.4質量%を含む事が好ましく、(A−1)0.8〜3.0質量%と(A−2)97.0〜99.2質量%を含む事がさらに好ましい。 酸変性ポリプロピレン(A−1)が0.3質量%以上である事で、炭素繊維(B)と十分な接着性が得られ、後述する成形体とした際に良好な機械物性が得られる。一方、極端に酸変性ポリプロピレン量を大きくすると、加工性を損ねる上、ポリプロピレンとしての特徴を失われる傾向があるが、(A−1)が9.0質量%以下とすることで、ポリプロピレンとしての特徴を損なうことなく、すなわちこれを用いて製造される成形品の耐熱性、強度・耐衝撃性、耐薬品性等を維持し、また低分子量成分の増加に伴う揮発成分の増加を招くことなく取り扱うことができる。
ポリプロピレン(A)の酸量は、無水マレイン酸換算で0.006〜0.2%である。0.01〜0.15%が好ましく、0.02〜0.05%がさらに好ましい。
ポリプロピレン(A)の酸量が0.006質量%以上である事で、炭素繊維(B)と十分な接着性が得られ、後述する成形体とした際に良好な機械物性が得られる。一方、極端に酸量を大きくすると、加工性を損ねる上、ポリプロピレンとしての特徴を失われる傾向があるが、(A)の酸量が0.2%以下とすることで、ポリプロピレンとしての特徴を損なうことなく、すなわちこれを用いて製造される成形品の耐熱性、強度・耐衝撃性、耐薬品性等を維持し、また低分子量成分の増加に伴う揮発成分の増加を招くことなく取り扱うことができる。
ポリプロピレン(A)は他の成分を含有していても良い。任意の他成分としては、例えば無機充填材、難燃剤、伝導性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、振動剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤等が挙げられる。
本発明に用いる炭素繊維(B)に特に制限は無く、公知のものの中から適宜選択すれば良い。炭素繊維の種類としては、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維が挙げられるが、強度と弾性率のバランスからPAN系炭素繊維が好ましい。炭素繊維を構成する単繊維の平均単繊維繊度としては、0.30dtex以上、2.4dtex以下が好ましく、より好ましくは1.0dtex以上、2.4dtex以下である。平均単繊維繊度を1.0dtex以上とすることで、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面面積の減少により、より少ないマトリックス樹脂の酸含有量で良好な接着強度と離型性を両立することができる。また2.4dtex以下とすることで、適度な耐炎化時間でも炭素繊維の断面の焼成斑を抑制でき、ストランド強度・弾性率の低下が無く、炭素繊維強化複合材料の機械物性が低下することもないので好ましい。
本発明の繊維強化複合樹脂シートは、後述するように、炭素繊維束や炭素繊維織物などの炭素繊維集合体にマトリックス樹脂を含浸させて製造することが好ましい。炭素繊維集合体としては、炭素繊維束の他に、当該炭素繊維束を用いて作製された平織、綾織、朱子織などの織物、繊維束を一方向、あるいは角度を変えて積層したような状態のものをほぐれないようにステッチしたノン・クリンプト・ファブリックのようなステッチングシート、あるいは不織布、マット状物、更には強化繊維束を一方向に引きそろえた一方向材、等が挙げられる。
炭素繊維(B)が炭素繊維束である場合、これを構成する炭素繊維(B)のフィラメント数は特に限定しないが、望ましくは1000本以上、100000本以下であり、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明の繊維強化複合樹脂シートを製造する方法に、特に制限はないが、例えば、
1)押出機中でポリプロピレン(A)を加熱・溶融し、ここに炭素繊維集合体を開繊させたものを配合して含浸させる方法、
2)予め調製したポリプロピレン(A)を粉末化し、これを炭素繊維集合体表面に分散し、溶融させる方法、
3)予め調製したポリプロピレン(A)をフィルム化し、これを炭素繊維集合体にラミネートする方法、
4)予め調製したポリプロピレン(A)を繊維化し、これと炭素繊維を用いて混合糸にする方法、
5)ポリプロピレン(A)と炭素繊維(B)を含む成形材料を賦形してシート化する方法
6)上記1)〜5)の方法で得られたシートを積層する方法
などがある。
上記1)の溶融樹脂を押出機にて含浸させる方法は予め樹脂を加工する必要が無いという利点があるが、品質の安定したシートを製造するのが難しい。
上記2)の粉末樹脂を繊維層に分散する方法は含浸がしやすいという利点があるが、粉末を均一に繊維層に分散させるのが困難である。
上記3)の樹脂をフィルム化してラミネートする方法はフィルム加工する必要があるが、比較的品質の良いものが作られる傾向にあるため好ましい。
上記4)のポリプロピレン繊維を用いる方法は、繊維加工する必要がある。
上記5)のポリプロピレン(A)と炭素繊維(B)を含む成形材料を賦形してシート化する方法では、炭素繊維が短くなり、機械特性が劣る。
上記6)の方法では、積層により異方性を調整する事が可能であり、部材に適した特性に調整し易いため好ましい。またこの場合、複数の異なる方法で製造したシートを積層しても良い。
ポリプロピレン(A)と炭素繊維(B)の比率は、ポリプロピレン(A)35〜75質量%と炭素繊維(B)25〜65質量%からなる事が好ましく、(A)45〜55質量%と(B)45〜55質量%からなる事がさらに好ましい。炭素繊維(B)が多い方が炭素繊維の優れた機械特性を発現する事が可能であるが、多すぎる場合には加工性が劣る場合がある。
炭素繊維(B)の繊維長は、10mm以上が好ましく、さらに好ましくは20mm以上である。上限に特に制限はなく連続繊維でも構わないが、より複雑な形状を成形しやすくなる観点から、不連続繊維が好ましく、50mm以下が好ましく、さらに好ましくは30mm以下である。
炭素繊維(B)は一方向に引き揃えられたものが好ましい。引き揃えられたものを用いる事で、炭素繊維の優れた機械特性を発揮しやすい。
本発明の繊維強化複合樹脂シートは、ポリプロピレン(A)及び炭素繊維(B)を含む層を2層以上積層する事が好ましい。2層以上を異なった方向に積層する事で、機械特性の異方性を小さくする事が可能である。
本発明の繊維強化複合樹脂シートは、窒素雰囲気下で300℃1時間加熱した場合の熱重量減少が1%以下である事が好ましく、0.7%以下がさらに好ましい。熱重量減少がこの範囲内にある事で、繊維強化複合樹脂シートを予熱した際に揮発分が発生し難く、成形不良を発生し難くなる。ここで300℃1時間加熱した場合の熱重量減少は、TG/DTAにより測定する。具体的な装置としては、SIIナノテクノロジー社製 TG/DTA6200等が挙げられる。測定条件は、窒素流量を200ml/minとして不活性ガスの雰囲気を保ち、40℃から300℃まで毎分20℃で昇温し、その後300℃で1時間保持した後の重量変化を測定する。
本発明の成形品は、繊維強化複合樹脂シートをプレス成形して得られる。プレス成形としては、スタンピング成形や加熱冷却プレスが挙げられる。本発明のスタンピング成形とは、繊維強化複合樹脂シートをポリプロピレン(A)の融点以上まで予熱し、これを金型中に配置し、プレス成形する方法である。加熱冷却プレスは、金型中に繊維強化複合樹脂シートを配置し、ポリプロピレン(A)の融点以上で加熱プレス成形し、結晶化温度以下で冷却プレス成形する方法である。予熱温度または加熱プレスの温度としては、180〜320℃が好ましく、230〜280℃がさらに好ましい。またスタンピング成形の金型温度または冷却プレスの温度としては、40〜150℃が好ましく、80〜130℃がさらに好ましい。この範囲内にある事で、良好な成形品を得やすい。
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、
本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
以下の各例で使用した原料、繊維強化複合樹脂シートの製造方法、評価方法を以下に示す。
<原料>
酸変性ポリプロピレン(A−1−1)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン 三洋化成工業株式会社製 ユーメックス1001(酸変性量2.27%、重量平均分子量40,000)
酸変性ポリプロピレン(A−1−2)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン 三菱化学株式会社製 モディックP958V(酸変性量0.14%)
酸変性されていないポリプロピレン(A−2)
日本ポリプロ株式会社製 ノバテックPP MA04A(MFR40g/10min)
炭素繊維(B)
PAN系炭素繊維 三菱レイヨン株式会社製 パイロフィルTR50S15L AD、平均単繊維繊度:0.67dtex、フィラメント数:15,000本、ストランド強度:500kgf/mm2、ストランド弾性率:24.5tonf/mm、サイズ剤:エポキシ樹脂)
<評価方法>
(1)熱重量減少
繊維強化複合樹脂シートから10mgのサンプルを切り出し、SIIナノテクノロジー社製 TG/DTA6200を用いて、窒素流量を200ml/min、40℃から300℃まで毎分20℃で昇温し、その後300℃で1時間保持した後の重量変化を測定した。
(2)曲げ強度・曲げ弾性率
表層の繊維と平行方向に長さ100mm、幅25mmに切り出したものを用いて、支点の半径2mm、圧子の半径5mm、支点間距離80mm、試験速度毎分5mmで三点曲げ試験を行い、曲げ強度・曲げ弾性率を測定した。
(3)衝撃強度
表層の繊維と平行方向に長さ80mm、幅10mmに切り出したものを用いて、フラットワイズでJIS K7077に準拠したシャルピー衝撃試験を実施する事で、0°方向の衝撃強度を測定した。また、表層の繊維と直交方向に長さ80mm、幅10mmに切り出したものを用いて同様に実施し、90°方向の衝撃強度を測定した。0°と90°の衝撃強度の差の絶対値を衝撃強度の差として記載した。
(4)スタンピング成形外観
スタンピング成形品の表面を目視で観察し、白い曇りが発生したものを×、発生しなかったものを○として評価した。
(実施例1)
酸変性ポリプロピレン(A−1−1)1質量部と、酸変性されていないポリプロピレン(A−2)95質量部を単軸押出機(IKG(株)社製、製品名:PMS30)に投入し、厚み40μmとなる樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムを、ドラムワインド方式によって繊維目付け100g/m2になる様に引き揃えられた炭素繊維(B)の両面に張り合わせ、両面からリンテック(株)社製離型紙CFP−45の軽面で挟み、加熱ロールで含浸させて、繊維含有率51質量%の一方向性プリプレグを得た。
一方向性プリプレグに繊維長25mmとなるように繊維軸と45°の角度で切込を入れてスリットプリプレグを作成し、一方向性プリプレグの繊維方向が0、45、90、−45、−45、90、45、0、0、45、90、−45、−45、90、45、0°となるように16層重ね、300×300mmのキャビティを有するプレス成形用金型中で、220℃、0.3MPaで10分加熱プレスし、30℃、1MPaで2分冷却プレスする事で、疑似等方性の繊維強化複合樹脂シートを得た。
繊維強化複合樹脂シートを230℃に設定したIRヒーターで10分間予熱し、130℃に設定した310×310mmの平板状金型内にチャージし、加圧力200トンでスタンピング成形を実施した。
(実施例2〜3および比較例1)
ポリプロピレン(A)の配合を表1に記載の通りに変更する点を除いては実施例1と同様に繊維強化複合樹脂シートを作製し評価した。結果を表1に記す。
実施例1〜2の繊維強化複合樹脂シートは、0°と90°の衝撃強度の差が小さく異方性が少ない。また熱重量減少も少ないため、スタンピング成形外観に優れる。
実施例3の繊維強化複合樹脂シートは、比較例1よりも高い曲げ強度・曲げ弾性率を示す。また熱重量減少が少ないため、スタンピング成形外観に優れる。
比較例1は、本発明の範囲外の繊維強化複合樹脂シートであるため、熱重量減少が大きく、スタンピング成形外観が劣る。
<考察>
機械特性と熱安定性のバランスに優れた繊維強化複合樹脂シートであるため、これをスタンピング成形する際に熱分解が起こり難く、幅広い成形条件で良品が得られる。さらに、酸変性ポリプロピレン樹脂(A−1)が少ない場合には、機械特性、特に衝撃強度の異方性が少ない成形品が得られる。その結果、考慮すべきバラつきが小さくなり、より信頼性の高い部品設計が可能になると考えられる。

Claims (7)

  1. マトリクス成分が下記ポリプロピレン(A)であり、強化繊維が炭素繊維(B)である繊維強化複合樹脂シート。
    ポリプロピレン(A): 酸量が1.0〜5.0%の酸変性ポリプロピレン(A−1)0.3〜9.0質量%と、酸変性されていないポリプロピレン(A−2)91.0〜99.7質量%を含み、酸量が無水マレイン酸換算で0.006〜0.2%である。
  2. ポリプロピレン(A)35〜75質量%と炭素繊維(B)25〜65質量%からなる、請求項1記載の繊維強化複合樹脂シート。
  3. 炭素繊維(B)の繊維長が10mm以上である、請求項1または2に記載の繊維強化複合樹脂シート。
  4. 炭素繊維(B)が一方向に引き揃えられた炭素繊維である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化複合樹脂シート。
  5. ポリプロピレン(A)及び炭素繊維(B)を含む層を2層以上積層する請求項1〜4記載の繊維強化複合樹脂シート。
  6. 窒素雰囲気下で300℃1時間加熱した場合の重量減少が1%以下である、請求項1〜5記載の繊維強化複合樹脂シート。
  7. 請求項1〜6の繊維強化複合樹脂シートをプレス成形して得られる成形品。
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