以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
キャリアアグリゲーション及びデュアルコネクティビティは、いずれもユーザ端末が複数のセルと同時に接続して通信を行う技術であり、例えばHetNet(Heterogeneous Network)に適用される。ここで、HetNetは、LTE−Aシステムで検討されており、半径数キロメートル程度の広範囲のカバレッジエリアを有するマクロセル内に、半径数十メートル程度の局所的なカバレッジエリアを有するスモールセルが形成される構成である。なお、キャリアアグリゲーションはIntra−eNB CAと呼ばれてもよく、デュアルコネクティビティはInter−eNB CAと呼ばれてもよい。
図1は、キャリアアグリゲーション及びデュアルコネクティビティの模式図である。図1に示す例において、ユーザ端末UEは無線基地局eNB1及びeNB2と通信する。
図1には、物理下り制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)及び物理上り制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)を介して送受信される制御信号がそれぞれ示されている。例えば、PDCCHを介して下りリンク制御情報(DCI:Downlink Control Information)が送信され、PUCCHを介して上りリンク制御情報(UCI:Uplink Control Information)が送信される。なお、PDCCHの代わりに拡張物理下りリンク制御チャネル(EPDCCH:Enhanced PDCCH)を用いてもよい。
図1Aは、キャリアアグリゲーションに係る無線基地局eNB1、eNB2及びユーザ端末UEの通信を示している。図1Aに示す例において、eNB1はマクロセルを形成する無線基地局(以下、マクロ基地局という)であり、eNB2はスモールセルを形成する無線基地局(以下、スモール基地局という)である。
例えばスモール基地局は、マクロ基地局に接続するRRH(Remote Radio Head)のような構成であってもよい。キャリアアグリゲーションが適用される場合、1つのスケジューラ(例えば、マクロ基地局eNB1の有するスケジューラ)が複数セルのスケジューリングを制御する。
マクロ基地局の有するスケジューラが複数セルのスケジューリングを制御する構成では、各基地局間が、例えば光ファイバのような高速回線である理想的バックホール(ideal backhaul)で接続されることが想定される。
図1Bは、デュアルコネクティビティに係る無線基地局eNB1、eNB2及びユーザ端末UEの通信を示している。図1Bに示す例において、eNB1及びeNB2はともにマクロ基地局である。
デュアルコネクティビティが適用される場合、複数のスケジューラが独立して設けられ、当該複数のスケジューラ(例えば、マクロ基地局eNB1の有するスケジューラ及びマクロ基地局eNB2の有するスケジューラ)がそれぞれの管轄する1つ以上のセルのスケジューリングを制御する。
マクロ基地局eNB1の有するスケジューラ及びマクロ基地局eNB2の有するスケジューラがそれぞれの管轄する1つ以上のセルのスケジューリングを制御する構成では、各基地局間が、例えばX2インターフェースのような、遅延の無視できない非理想的バックホール(non-ideal backhaul)で接続されることが想定される。
このため、デュアルコネクティビティでは、キャリアアグリゲーションと同等の密なeNB間の協調制御は行えないと想定されている。したがって、下りリンクL1/L2制御(PDCCH/EPDCCH)、上りリンクL1/L2制御(PUCCH/PUSCHによるUCIフィードバック)は各eNBで独立に行う必要がある。
図2は、キャリアアグリゲーション及びデュアルコネクティビティにおけるセル構成の一例を示す図である。図2において、UEは、5つのセル(C1−C5)に接続している。C1はPCell(Primary Cell)であり、C2−C5はSCell(Secondary Cell)である。
図2Aに示すように、キャリアアグリゲーションでは、上りの制御信号はPCellを介して送信されるため、SCellはPCellの機能を有する必要がない。
一方、図2Bに示すように、デュアルコネクティビティにおいては、各無線基地局が、1つ又は複数のセルから構成されるセルグループ(CG:Cell Group)を設定する。各セルグループは、同一無線基地局が形成する1つ以上のセル又は送信アンテナ装置、送信局などの同一送信ポイントが形成する1つ以上のセルから構成される。
ここで、PCellを含むセルグループはマスタセルグループ(MCG:Master CG)と呼ばれ、MCG以外のセルグループはセカンダリセルグループ(SCG:Secondary CG)と呼ばれる。各セルグループでは、2セル以上のキャリアアグリゲーションを行うことができる。
また、MCGが設定される無線基地局はマスタ基地局(MeNB:Master eNB)と呼ばれ、SCGが設定される無線基地局はセカンダリ基地局(SeNB:Secondary eNB)と呼ばれる。
なお、MCG及びSCGを構成するセルの合計数は、所定値(例えば、5セル)以下となるように設定される。当該所定値は、あらかじめ定められていてもよいし、無線基地局eNB及びユーザ端末UE間で動的に設定されてもよい。また、ユーザ端末UEの実装に応じて、設定可能なMCG及びSCGを構成するセルの合計値及びセルの組み合わせが、無線基地局eNBにユーザ端末能力情報(UE capability information)として通知されてもよい。
デュアルコネクティビティでは、上述のようにeNB間のバックホール遅延が大きいことが想定される。したがって、各eNBが独立にUEとの制御情報の送受信を行うため、SeNBにおいても、PCellと同等の機能(共通サーチスペース、PUCCHなど)を有する特別なセル(Specialセル、PUCCH設定セルなどとも呼ばれる)が必要となる。図2Bの例では、セルC3がそのような特別なセルとして設定されている。
以上のように、デュアルコネクティビティでは、ユーザ端末は複数の無線基地局に対して、それぞれ少なくとも1つの上りサービングセルで接続する必要がある。さらに、各無線基地局に対して、2つ以上の上りサービングセルを用いるUL−CA(上りリンクのキャリアアグリゲーション)を行うことも検討されている。図3は、デュアルコネクティビティにおいて、各無線基地局にUL−CAで接続する場合の一例を示す図である。図3では、ユーザ端末がMeNB及びSeNBそれぞれに対してUL−CAで接続している。
ここで、上り信号の送信タイミングは、MeNB及びSeNBでそれぞれ独立に制御される。また、上り信号の送信電力制御も、MeNB及びSeNBでそれぞれ独立に行われる。したがって、MeNB及びSeNBに対する上り信号の送信がオーバーラップするタイミングでは、ユーザ端末の許容最大電力(Pcmax)を超える上り信号の送信が要求される場合がある。以下では、ユーザ端末の許容最大電力を超える上り信号の送信が要求された結果送信電力が制限されることを、パワーリミテッド(Power−limited)とも表す。
このとき、ユーザ端末は何らかのルールに基づき、送信電力を減らしたり送信信号をドロップしたりすることで、許容最大電力以下となるまで送信電力を減らさなければならない。ここで、LTE Rel.11のUL−CAでは、1つの無線基地局に送信する複数種類の上り信号について優先度を設定しており、ユーザ端末は当該優先度に従って、各CCの総送信電力が許容最大電力以下となるように送信電力を調節することが定められている。
図4は、LTE Rel.11のUL−CAにおける上り信号の優先度を示す図である。図4に示すように、Rel.11では、PRACHが最も優先度が高く、続いてPUCCH、PUSCH w/ UCI(UCIを含むPUSCH)、PUSCH w/o UCI(UCIを含まないPUSCH)、SRSの順に優先度が低くなっている。なお、図4中の各チャネルは、各チャネルを介して送信する信号を表しており、以下でも同様に表現する。
LTE Rel.11のUL−CAでは、優先度の異なる信号の送信期間が重複してパワーリミテッド状態となった場合、優先度の低い方の信号をパワースケーリングするか、送信しない(ドロッピングする)ように制御を実施する。また、同一優先度の信号が重複してパワーリミテッド状態となった場合、両方の信号に対して同じ比率でパワースケーリングを適用するように制御を実施する。
しかしながら、LTE Rel.12のデュアルコネクティビティでは、CG/eNB間の優先度については何ら規定されていない。このため、ユーザ端末が各CG/eNBへの上り信号の送信電力を操作することによって、無線基地局が意図しない上り信号の品質劣化を招き、再送増加やスループット低下を引き起こす恐れがある。
この課題を解決するため、本発明者らは、デュアルコネクティビティを適用する場合において、MeNB及びSeNBに対する上りリンク信号の送信優先度を適切に設定することを検討した。その結果、本発明者らは、MeNBの所定の上り信号の送信を、SeNBの同じ所定の上り信号の送信より優先するように設定することを着想した。この構成によれば、ユーザ端末は、重要な制御信号の優先度を高くすることで、許容最大電力による制限の影響を低減することが可能となる。
また、本発明者らは、複数の無線基地局で上り信号の送信タイミングが同期していない場合に、上記の優先度を考慮して適切に電力制御を行うことを着想した。
以下、本発明に係る実施の形態について、詳細に説明する。なお、以下では簡単のため、ユーザ端末は2つの無線基地局(MeNB、SeNB)とデュアルコネクティビティで接続する例を説明するが、これに限られない。例えば、ユーザ端末が、独立のスケジューラにより制御を行う3つ以上の無線基地局と接続して通信する場合にも、本発明を適用することができる。また、無線基地局の代わりにセルグループと接続する構成であってもよく、以下では、無線基地局又はセルグループをeNB/CGとも表記する。
また、以下では、各eNB/CG内の優先度は、図5に示す優先度順(優先度ルール)を維持するように設定するものとする。図5は、各eNB/CG内の上り信号の優先度の一例を示す図である。図5Aは、MeNB/MCG内の優先度の一例を、図5Bは、SeNB/SCG内の優先度の一例を示している。これらの優先度は、図4で示したRel.11のUL−CAと同じ優先度順(PRACH、PUCCH、PUSCH w/ UCI、PUSCH w/o UCI、SRSの順)となっている。このように構成することで、Rel.11の場合と統一的にユーザ端末の処理を行うことができ、実装コストを低減することができる。なお、各eNB/CG内の優先度は、図5の優先度順に限られず、他の優先度順を用いてもよい。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、MCG/MeNBへの各上り信号について、当該上り信号と同一種類のSCG/SeNBへの上り信号より優先度を高く設定する。
第1の実施形態の一実施例では、MeNB/MCGの全ての上り信号を、SeNB/SCGの全ての上り信号より優先するように、優先度ルールを設定する。図6は、第1の実施形態に係るデュアルコネクティビティにおける、上り信号の優先度の一例を示す図である。図6に示すように、この優先度ルールは、MeNB/MCG内のUL−CA優先度(図5A)を、SeNB/SCG内のUL−CA優先度(図5B)より高く設定したものである。
この優先度ルールに従うことで、パワーリミテッドによるMCG/MeNBの劣化が生じないようにすることができ、マクロセルカバレッジを劣化させずにデュアルコネクティビティを適用することができる。
なお、上記実施例で、SRSやPUSCH w/o UCIについては、例外的に上記の優先度ルールに基づかず、MeNB/SeNB両方で優先度を大きく引き下げてもよい。例えば、図6において、MeNBのPUSCH w/o UCI及びSRSを、SeNBのPUSCH w/ UCIより低い優先度としてもよい。これにより、優先度の低いMeNBのチャネルが電力を消費し、SeNBのPRACHやPUCCHなどの、SeNBの接続性・遅延に大きく関わる信号が電力を得られないことによる悪影響を、さらに低減することができる。
また、上記実施例で、PRACHやPUCCHについては、例外的に上記の優先度ルールに基づかず、MeNB/SeNB両方で優先度を大きく引き上げてもよい。例えば、図6において、SeNBのPRACH及びPUCCHを、MeNBのPUSCH w/ UCIより高い優先度としてもよい。これにより、優先度の低いMeNBのチャネルが電力を消費し、SeNBのPRACHやPUCCH等、SeNBの接続性・遅延に大きくかかわる信号が電力を得られないことによる悪影響を、さらに低減することができる。
また、第1の実施形態の別の実施例では、同一種類の上り信号毎に、MeNB/MCGがSeNB/SCG以上の優先度となるようにしつつ、それらの優先度が隣接するように設定する。ここで、「隣接」とは、言い換えると、同一種類の信号の優先度の間に、他の種類の信号の優先度を設定しないことをいう。
図7は、第1の実施形態に係るデュアルコネクティビティにおける、上り信号の優先度の一例を示す図である。図7では、各eNB/CG内の優先度をRel.11のUL−CAと同様にするように、優先度ルールを設定している。この優先度ルールは、各信号について、MeNB/MCGをSeNB/SCGより高い優先度に設定したものである。つまり、本実施例は、同一種類の上り信号の優先度をまとめて考えると、各eNB/CG内の優先度ルールと同じになるように設定している。
この優先度ルールに従うことで、eNB/CGに関わらず、優先度の高い信号に対して優先的に電力を振り分けることができる。特に、帯域幅が広くなりやすくパワーリミテッドの原因となる可能性が高いPUSCHの優先度を比較的低くすることができるため、PRACHやPUCCHなどの重要な制御信号に対する影響を低減することができる。
なお、所定の信号について、MeNB/MCGとSeNB/SCGとで同じ優先度とする構成としてもよい。つまり、同一種類の上り信号毎に、MeNB/MCGへの優先度を、SeNB/SCGへの優先度と同等に設定する構成としてもよい。この場合、同じ優先度の信号は、パワーリミテッドとなる際に、等電力又は等比率でスケーリングしてもよいし、同時にドロッピングしてもよい。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、デュアルコネクティビティにおいても、優先度の高い信号の送信電力を確保することができ、上りリンクのスループットの低下を抑制することができる。
なお、ユーザ端末は、複数の優先度ルールを保持している場合には、無線基地局からの下り制御情報(DCI)、上位レイヤシグナリング(例えば、RRCシグナリング)、報知信号(例えば、SIB)などにより通知された優先度ルールに関する情報に基づいて、適用する優先度ルールを決定してもよい。例えば、通知された情報に基づいて、図6及び図7の優先度ルールを切り替えて適用する構成とすることができる。
(第2の実施形態)
デュアルコネクティビティで接続する複数のeNB/CGで、上り信号の送信タイミングが同期していない場合(以下、非同期デュアルコネクティビティともいう)には、第1の実施形態で述べたような上り信号の優先度ルールを遵守することが困難となることがある。
図8を参照して、この問題を具体的に説明する。図8は、サブフレームの途中でパワーリミテッドとなる場合の一例を示す図である。図8の横軸は時間を示し、縦方向は送信信号に割り当てられる電力を示している。また、ユーザ端末の許容最大電力はPcmaxであり、図示される期間において一定である。
図8の例では、まずユーザ端末は、SeNB/SCGでPUSCH w/o UCIの送信処理を開始する。このとき、MeNB/MCGでは何も上り信号を送信していないため、ユーザ端末はSeNBが要求する送信電力で信号を送信することができる。
次に、SeNB/SCGでPUSCH w/o UCIの送信中に、MeNB/MCGでPUSCH w/ UCIの送信が開始される。この際、パワーリミテッドとなる恐れがある。図6又は図7の優先度ルールに従うと、MeNB/MCGにおけるPUSCH w/ UCIの優先度はSeNB/SCGにおけるPUSCH w/o UCIより高いため、後者の送信電力をサブフレームの途中で下げて、総送信電力がPcmaxに収まるように制御することが求められる。
また、SeNB/SCGで、PUSCH w/o UCIの送信完了後に、PUCCHの送信が開始される。この際、パワーリミテッドとなる恐れがある。例えば、図7の優先度ルールに従う場合、SeNB/SCGにおけるPUCCHの優先度はMeNB/MCGにおけるPUSCH w/ UCIより高いため、後者の送信電力をサブフレームの途中で下げて、総送信電力がPcmaxに収まるように制御することが求められる。
しかしながら、サブフレームの途中で送信中の信号の電力を変える動作は好ましくないとされている。そのような動作を許容すると、例えば、チャネル推定用の参照信号とデータ信号との電力に差分ができ、チャネル推定に基づいて復調することが困難になる、直交符号の振幅が符号系列の途中で変わってしまい、他UEと多重している場合に直交性が減少して分離することが困難になる、などの問題が発生する恐れがある。
したがって、図6に示した優先度ルールを採用した場合、サブフレームの途中でMeNB/MCGの送信が発生したときに、SeNB/SCGで送信中の信号の電力を変える対応は好ましくない。また、図7に示した優先度ルールを採用した場合、サブフレームの途中でさらに高優先度の信号が発生したときに、現在送信中の信号の電力を変える対応は好ましくない。このように、非同期デュアルコネクティビティでは電力配分の優先度を必ずしも遵守することができず、送信電力をどのように決定するかが不明確となる場合がある。
そこで、本発明の第2の実施形態では、非同期デュアルコネクティビティにおいて、上りサブフレーム(ULサブフレーム)の途中で信号の送信電力を変更せずに、第1の実施形態で述べたような優先度を守るように制御を行う。具体的には、本実施の形態に係るデュアルコネクティビティでは、eNB/CG間の同期、非同期に関わらず、将来の上り送信信号も考慮して、パワーリミテッドの検出及び検出時のパワースケーリング/ドロッピングを適用する。
まず、あるeNB/CGに対して所定のULサブフレームの送信電力を決定する前に、そのULサブフレームと部分的又は全体的に同時送信区間を有する別eNB/CGの全てのULサブフレームの送信電力を調べる。この際、当該ULサブフレームと、その前後で重複するULサブフレームと、の送信を指示するULグラント/DLアサインメントの検出及び復調を行って、UL送信状況(帯域幅、変調方式、これらに基づき要求されるUL送信電力など)を調査する。
次に、上記のUL送信状況の調査結果に基づき、当該ULサブフレームの送信タイミングでパワーリミテッドとなる部分があるかどうかを計算する。ここで、パワーリミテッドとなる部分がある場合、当該部分の信号優先度を比較する。例えば、図6や、図7の優先度を用いることができる。
優先度を比較した結果、優先度の低い(非優先の)ULサブフレームは、優先度の高い(優先の)ULサブフレームに要求された電力を適切に配分できるような値にまで、電力割り当てを減らす(スケーリング又はドロッピングする)。
図9は、第2の実施形態の送信電力制御を説明する概念図である。図9では、MeNBで信号を送信する1つのULサブフレームが、SeNBで信号を送信する2つのULサブフレームと部分的に同時送信区間を有している。
ユーザ端末は、MeNBのULサブフレームの送信電力を決定する前に、受信しているULグラント/DLアサインメントの情報に基づいて、当該ULサブフレームと重複する2つのSeNBのULサブフレームにおけるUL送信電力を調査し、パワーリミテッドとなる部分があることを認識する。そして、当該部分において各信号の優先度を比較し、優先度の低い信号を送信するULサブフレームの送信電力を調整することで、優先する信号に十分な電力を割り当てるようにする。
図8の例で、第2の実施形態に係る送信電力制御を適用する場合を例に説明する。ここで、優先度ルールとして図7を適用するものとする。まずユーザ端末は、SeNB/SCGのPUSCH w/o UCIの送信前に、当該サブフレームと重複するサブフレームにおけるMeNB/MCGのPUSCH w/ UCIのUL送信状況を調査する。図7によれば、SeNB/SCGのPUSCH w/o UCIは、他の信号より優先度が低いため、送信電力を低減して送信する。
次に、MeNB/MCGのPUSCH w/ UCIの送信前に、重複するサブフレームにおけるSeNB/SCGのPUSCH w/o UCIとPUCCHとのUL送信状況を調査する。図7によれば、MeNB/MCGのPUSCH w/ UCIは、SeNB/SCGのPUSCH w/o UCIより優先度が高いが、SeNB/SCGのPUCCHより優先度が低いため、送信電力を低減して送信する。
次に、SeNB/SCGのPUCCHの送信前に、重複するサブフレームにおけるMeNB/MCGのPUSCH w/ UCIのUL送信状況を調査する。図7によれば、SeNB/SCGのPUCCHは、MeNB/MCGのPUSCH w/ UCIより優先度が高いため、SeNBに要求された送信電力で送信する。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、現在送信中の上り信号だけでなく将来送信予定の上り信号も考慮して送信電力制御を行うことで、デュアルコネクティビティにおいても、サブフレームの途中で送信電力を変動させることなく優先度の高い信号の送信電力を確保することができ、上りリンク/下りリンクのスループットの低下を抑制することができる。
(変形例1)
なお、上記第2の実施形態の例では、あるeNB/CGに対する所定のULサブフレームの送信電力を、当該ULサブフレームと部分的又は全体的に同時送信区間を有する別eNB/CGの全てのULサブフレームの送信電力を考慮して決定したが、さらなるULサブフレームを考慮してもよい。具体的には、当該ULサブフレームと同時送信区間を有しないULサブフレームの送信電力を考慮してもよい。例えば、当該ULサブフレームのさらに後続のULサブフレームを考慮してもよい。また、当該ULサブフレームと部分的又は全体的に同時送信区間を有する別eNB/CGのULサブフレームのさらに後続のULサブフレームを考慮してもよい。例えば、図8の例で、SeNB/SCGでPUSCH w/o UCIの送信電力を決定する際に、MeNB/MCGのPUSCH w/ UCIに加えて、SeNB/SCGのPUCCHのUL送信状況を考慮してもよい。これにより、さらに将来の信号の優先度及びパワーリミテッド状態を考慮して、好適に電力制御を行うことができる。
(変形例2)
また、非同期デュアルコネクティビティにおいて、サブフレーム内で送信電力が一定となるようにしつつ、上り信号の送信優先度を守るためには、第2の実施形態で示したように、ユーザ端末が将来の送信信号に対するULグラント/DLアサインメントを読んで送信電力を計算し、パワーリミテッドか否か、そしてパワーリミテッドだとしたらどれくらい過剰な電力が要求されているのか、を知る必要がある。このような処理は、ユーザ端末に新規の動作を要求することとなり、端末実装の負担が大きくなる可能性が出てくることを意味する。
そこで、デュアルコネクティビティを利用するシステムでは、以下のようにユーザ端末能力情報(UE capability information)を規定してもよい。例えば、非同期デュアルコネクティビティのサポート可否を表すユーザ端末能力情報を規定してもよい。また、事前に将来の送信信号の送信電力を計算できるか否かを示すユーザ端末能力情報を規定してもよい。また、eNB/CG間で送信電力を動的にシェア可能か否かを表すユーザ端末能力情報を規定してもよい。これらは、デュアルコネクティビティを設定する前段階で、ユーザ端末から無線基地局に通知される。無線基地局は、当該ユーザ端末能力情報に基づき、ユーザ端末が適切な送信電力制御を行えるように通信を実施する。
ここで、無線基地局は、これらいずれかの能力を有しているユーザ端末であれば、第2の実施形態に係る送信電力制御を適用できると判断してもよい。また、ユーザ端末が第2の実施形態に係る送信電力制御を適用できないと判断した場合、eNB/CG毎に準静的(semi-static)に予め電力を配分しておくことが望ましく、そのように構成してもよい。
(変形例3)
本発明に係る上述の実施形態では、同時送信となる信号の優先度の差分に基づいて、電力配分を決定する構成としてもよい。例えば、図7においてMeNB/MCGのPRACHの優先度を1として、SeNB/SCGのSRSの優先度を10とする1刻みの優先度を設定すると、送信信号間(サブフレーム間)の優先度の差分を−9〜+9の範囲で算出することができる。
図10は、同時送信となる信号の優先度の差分に基づく電力配分決定のフローチャートの一例を示す図である。なお、パワースケーリングを行う処理では、代わりにパワードロッピングを行ってもよい。
まず、ユーザ端末は、所定のeNB/CGでの上り信号を所定のサブフレームで送信する前に、サブフレーム間の優先度の差分Δ1及びΔ2を算出する(ステップS10)。ここで、Δ1はサブフレームiの優先度からサブフレームi−1の優先度を減算したものであり、Δ2はサブフレームi+1の優先度からサブフレームiの優先度を減算したものである。なお、上記所定のサブフレームをサブフレームiとし、サブフレームiと重複しサブフレームiより早く送信される別eNB/CGのサブフレームをサブフレームi−1、サブフレームiと重複しサブフレームiより遅く送信される別eNB/CGのサブフレームをサブフレームi+1としている。
次に、Δ1の絶対値(|Δ1|)がΔ2の絶対値(|Δ2|)より大きいか否かを判定する(ステップS20)。|Δ1|が|Δ2|より大きい場合(ステップS20−YES)、サブフレームiをパワースケーリングする(ステップS21)。
一方、|Δ1|が|Δ2|より大きくない場合(ステップS20−NO)、さらに|Δ1|と|Δ2|が等しいか否かを判定する(ステップS22)。|Δ1|と|Δ2|が等しい場合(ステップS22−YES)、SeNBのサブフレームをパワースケーリングする(ステップS23)。また、|Δ1|と|Δ2|が等しくない場合(ステップS22−NO)、サブフレームi+1及びサブフレームi−1をパワースケーリングする(ステップS24)。
図11は、同時送信となる信号の優先度の差分に基づく電力配分決定の一例を示す図である。図11の上部は本実施の形態に係る電力配分前、下部は電力配分後を示している。図11においては、サブフレームi−1、i、i+1の優先度はそれぞれ、1、2、7である。したがって、Δ1=1及びΔ2=5となる。
図11の電力配分前において、サブフレームiの送信区間ではパワーリミテッドとなっている。図10のフローチャートに従うと、ステップS24の処理が実施されることになり、サブフレームi−1及びi+1がパワースケーリングされる。この結果、図11の下部のように、MeNB/MCGの電力が維持される。
|Δ1|が|Δ2|より大きい場合は、サブフレームi−1の優先度が、サブフレームi及びサブフレームi+1に対して相対的に大きい場合に相当する。このような場合にサブフレームiに対してパワースケーリングを行うことにより、比較的優先度の高いサブフレームi−1の送信電力を確保し、品質を保持することができる。また、|Δ1|が|Δ2|に等しい場合は、SeNBのサブフレームをパワースケーリングすることにより、ユーザ端末とネットワークの接続を確保するうえで重要なMeNBのサブフレームの送信電力を変えないよう制御することができる。さらに|Δ1|が|Δ2|より小さい場合は、サブフレームi−1とサブフレームiの優先度が相対的にほぼ同等であり、サブフレームi+1の優先度が低いことを意味している。このような条件ではサブフレームi−1およびサブフレームi+1に対してパワースケーリングを行うことにより、サブフレームiが電力を確保する機会を設けることができる。
なお、図10は、電力配分決定方法の一例であり、これに限られない。例えば、Δ1<0かつΔ2<0の場合(例えば、サブフレームi−1、i、i+1の優先度がそれぞれ、7、2、1の場合)には、図10のステップS21及びS24を入れ替えたフローチャートを用いてもよい。また、Δ1Δ2<0の場合(例えば、サブフレームi−1、i、i+1の優先度がそれぞれ、5、7、4の場合)には、図10のステップS20で代わりにΔ1がΔ2より大きいか否かを判定するとしたフローチャートを用いてもよい。
(変形例4)
また、上述の実施形態では、パワースケーリング/ドロッピングを適宜実施する。具体的には、以下の2通りの実現方法が選択可能である。1つ目の実現方法は、1ステップでパワースケーリング/ドロッピングを行う方法である。この場合、ユーザ端末は、あるULサブフレームの送信時に、両CGの全てのCCの合計送信電力がPcmaxを超えるか否かを判定する。この結果、超えると判定した場合、第2の実施形態における優先度ルールに従ってパワースケーリング/ドロッピングを適用する。この構成によれば、CGの違いを考慮せず、全体の優先度に従って、全体最適なパワースケーリング/ドロッピングを行うことができる。
また、別の実現方法は、2ステップでパワースケーリング/ドロッピングを行う方法である。ユーザ端末は、あるULサブフレームの送信時に、まず、eNB/CGあたりの合計送信電力が所定値(例えば、CGあたりの最大送信電力)を超えるか否かをそれぞれ判定する。この結果、いずれかのeNB/CGで合計送信電力が所定値を超える場合、該当のCG内でパワースケーリング/ドロッピングを適用し、eNB/CG毎に送信電力を所定値に収める。なお、このUE動作および優先度ルールは、Rel.11 UL−CAと同じとする。その後、各eNB/CGの合計送信電力がPcmaxを超えるか否かを判定して、超えると判定された場合、第2の実施形態で述べたようなeNB/CG間の優先度ルールに従ってパワースケーリング/ドロッピングを適用する。この構成によれば、1ステップ目(eNB/CGあたりの判定)で、既存の処理によりある程度のパワースケーリングを実施することができる。CG間で優先度を比較する処理を減らすことができるため、端末処理の簡易化・回路構成のコスト低減を実現できる。
(変形例5)
また、上述の実施形態では、パワーリミテッドか否かの判定結果に応じて、各CCで各チャネル(信号)の送信電力がパワースケーリング/ドロッピングされる。パワースケーリング/ドロッピングはパワーリミテッドの結果として生じるものであり、本来PHR(Power Headroom Report)で報告すべき「UEの最大送信電力とeNBによる要求送信電力の差分」を報告することができない恐れがある。
そこで、デュアルコネクティビティにおけるeNB/CG毎のPHRの計算は、パワーリミテッドの結果行うパワースケーリング/ドロッピングを適用する前の値を用いて行う。すなわち、最初に各eNBが要求する送信電力の値と、各eNB/CGの最大送信電力の差分を、PHとして計算し、PHRを報告する。なお、各eNB/CGの最大送信電力が設定されていない場合、CC毎の最大送信電力又はユーザ端末あたりの最大送信電力を用いてPHを計算しても良い。この構成によれば、eNBが指示した送信電力に対してどれだけ余剰電力があるかを適切に報告することができる。
(無線通信システムの構成)
以下、本発明の一実施の形態に係る無線通信システムの構成について説明する。この無線通信システムでは、上記各実施の形態又は変形例に係る無線通信方法が適用される。
図12は、本発明の一実施の形態に係る無線通信システムの一例を示す概略構成図である。図12に示すように、無線通信システム1は、複数の無線基地局10(11及び12)と、各無線基地局10によって形成されるセル内にあり、各無線基地局10と通信可能に構成された複数のユーザ端末20と、を備えている。無線基地局10は、それぞれ上位局装置30に接続され、上位局装置30を介してコアネットワーク40に接続される。
図12において、無線基地局11は、例えば相対的に広いカバレッジを有するマクロ基地局で構成され、マクロセルC1を形成する。無線基地局12は、局所的なカバレッジを有するスモール基地局で構成され、スモールセルC2を形成する。なお、無線基地局11及び12の数は、図12に示す数に限られない。
マクロセルC1及びスモールセルC2では、同一の周波数帯が用いられてもよいし、異なる周波数帯が用いられてもよい。また、無線基地局11及び12は、基地局間インターフェース(例えば、光ファイバ、X2インターフェース)を介して互いに接続される。
なお、マクロ基地局11は、無線基地局、eNodeB(eNB)、送信ポイント(transmission point)などと呼ばれてもよい。スモール基地局12は、ピコ基地局、フェムト基地局、Home eNodeB(HeNB)、送信ポイント、RRH(Remote Radio Head)などと呼ばれてもよい。
ユーザ端末20は、LTE、LTE−Aなどの各種通信方式に対応した端末であり、移動通信端末だけでなく固定通信端末を含んでいてもよい。ユーザ端末20は、無線基地局10を経由して他のユーザ端末20と通信を実行できる。
上位局装置30には、例えば、アクセスゲートウェイ装置、無線ネットワークコントローラ(RNC)、モビリティマネジメントエンティティ(MME)などが含まれるが、これに限定されるものではない。
無線通信システム1では、無線アクセス方式として、下りリンクについてはOFDMA(直交周波数分割多元接続)が適用され、上りリンクについてはSC−FDMA(シングルキャリア−周波数分割多元接続)が適用される。なお、上り及び下りの無線アクセス方式は、これらの組み合わせに限られない。
無線通信システム1では、下りリンクのチャネルとして、各ユーザ端末20で共有される下り共有チャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)、下り制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel、EPDCCH:Enhanced Physical Downlink Control Channel)、報知チャネル(PBCH:Physical Broadcast Channel)などが用いられる。PDSCHにより、ユーザデータや上位レイヤ制御情報、所定のSIB(System Information Block)が伝送される。PDCCH、EPDCCHにより、下り制御情報(DCI:Downlink Control Information)が伝送される。また、PBCHにより、同期信号や、MIB(Master Information Block)などが伝送される。
無線通信システム1では、上りリンクのチャネルとして、各ユーザ端末20で共有される上り共有チャネル(PUSCH:Physical Uplink Shared Channel)、上り制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)などが用いられる。PUSCHにより、ユーザデータや上位レイヤ制御情報が伝送される。
図13は、本実施の形態に係る無線基地局10の全体構成図である。無線基地局10は、MIMO伝送のための複数の送受信アンテナ101と、アンプ部102と、送受信部(受信部)103と、ベースバンド信号処理部104と、呼処理部105と、伝送路インターフェース106とを備えている。なお、送受信部103は、送信部及び受信部から構成される。
下りリンクにより無線基地局10からユーザ端末20に送信されるユーザデータは、上位局装置30から伝送路インターフェース106を介してベースバンド信号処理部104に入力される。
ベースバンド信号処理部104では、ユーザデータに関して、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤの処理、ユーザデータの分割・結合、RLC(Radio Link Control)再送制御などのRLCレイヤの送信処理、MAC(Medium Access Control)再送制御(例えば、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)の送信処理)、スケジューリング、伝送フォーマット選択、チャネル符号化、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理、プリコーディング処理などの送信処理が行われて各送受信部103に転送される。また、下り制御信号に関しても、チャネル符号化や逆高速フーリエ変換などの送信処理が行われて、各送受信部103に転送される。
各送受信部103は、ベースバンド信号処理部104からアンテナ毎にプリコーディングして出力された下り信号を無線周波数帯に変換して送信する。送受信部103で周波数変換された無線周波数信号は、アンプ部102により増幅され、送受信アンテナ101から送信される。
一方、上り信号については、各送受信アンテナ101で受信された無線周波数信号がそれぞれアンプ部102で増幅される。各送受信部103はアンプ部102で増幅された上り信号を受信する。送受信部103は、受信信号をベースバンド信号に周波数変換して、ベースバンド信号処理部104に出力する。
ベースバンド信号処理部104では、入力された上り信号に含まれるユーザデータに対して、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理、逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)処理、誤り訂正復号、MAC再送制御の受信処理、RLCレイヤ、PDCPレイヤの受信処理がなされ、伝送路インターフェース106を介して上位局装置30に転送される。呼処理部105は、通信チャネルの設定や解放などの呼処理や、無線基地局10の状態管理や、無線リソースの管理を行う。
伝送路インターフェース106は、所定のインターフェースを介して、上位局装置30と信号を送受信する。また、伝送路インターフェース106は、基地局間インターフェース(例えば、光ファイバ、X2インターフェース)を介して隣接無線基地局と信号を送受信(バックホールシグナリング)してもよい。
図14は、本実施の形態に係る無線基地局10が有するベースバンド信号処理部104の主な機能構成図である。図14に示すように、無線基地局10が有するベースバンド信号処理部104は、制御部301と、送信信号生成部302と、マッピング部303と、デマッピング部304と、受信信号復号部305と、を少なくとも含んで構成されている。
制御部301は、上位局装置30からの指示情報や各ユーザ端末20からのフィードバック情報に基づいて、下りリンク信号及び上りリンク信号に対する無線リソースのスケジューリングの制御(割り当て制御)を行う。つまり、制御部301は、スケジューラとしての機能を有している。なお、他の無線基地局10や上位局装置30が、当該無線基地局10のスケジューラとして機能する場合には、制御部301はスケジューラとして機能しなくてもよい。
具体的には、制御部301は、下り参照信号、PDSCHで送信される下りデータ信号、PDCCH及び/又はEPDCCHで送信される下り制御信号などのスケジューリングを制御する。また、制御部301は、上り参照信号、PUSCHで送信される上りデータ信号、PUCCH及び/又はPUSCHで送信される上り制御信号、PRACHで送信されるRAプリアンブルなどのスケジューリングを制御する。これらの割り当て制御に関する情報は、下り制御情報(DCI)を用いてユーザ端末20に通知される。
制御部301は、無線基地局10に接続するユーザ端末20の上り信号送信電力を調整するために、送信信号生成部302及びマッピング部303を制御する。
具体的には、制御部301は、ユーザ端末20から報告されるPHRやチャネル状態情報(CSI)、上りリンクデータの誤り率、HARQ再送回数などに基づいて、上り信号の送信電力を制御するための送信電力制御(TPC)コマンドを生成するように送信信号生成部302に指示を出し、マッピング部303に当該TPCコマンドを下り制御情報(DCI)に含めてユーザ端末20に通知するように制御する。これにより、無線基地局10はユーザ端末20に要求する上り信号の送信電力を指定することができる。なお、PHRは、MAC CE(Control Element)に含めて通知されてもよい。
ここで、制御部301は、ユーザ端末20から報告されるPHRに基づいて、ユーザ端末20が接続する各無線基地局10への上り送信電力に関する情報を取得する。具体的には、制御部301は、自局に属するセルの送信電力に関する情報については、ユーザ端末20から通知されたPHRに基づいて取得する。なお、制御部301は、自局に属さないセルの送信電力に関する情報について、他の無線基地局10が形成するセルのPUSCH帯域幅、チャネル状態(パスロスなど)、送信電力密度(PSD)、MCSレベル、チャネル品質などを推定してもよい。また、制御部301は、これらの情報から、ユーザ端末20の総余剰送信電力を算出(推定)してもよい。
送信信号生成部302は、制御部301により割り当てが決定された下り制御信号や下りデータ信号、下り参照信号などを生成して、マッピング部303に出力する。具体的には、送信制御信号生成部302は、制御部301からの指示に基づいて、下り信号の割り当て情報を通知するDLアサインメントや上り信号の割り当て情報を通知するULグラントを生成する。また、下りデータ信号には、各ユーザ端末20からのCSIなどに基づいて決定された符号化率、変調方式に従って符号化処理、変調処理が行われる。
マッピング部303は、制御部301からの指示に基づいて、送信信号生成部302で生成された下り信号を無線リソースにマッピングして、送受信部103に出力する。
デマッピング部304は、送受信部103で受信された信号をデマッピングして、分離した信号を受信信号復号部305に出力する。具体的には、デマッピング部304は、ユーザ端末20から送信された上りリンク信号をデマッピングする。
受信信号復号部305は、上り制御チャネル(PRACH、PUCCH)でユーザ端末20から送信された信号(例えば、送達確認信号(HARQ−ACK))、PUSCHで送信されたデータ信号などを復号し、制御部301へ出力する。また、ユーザ端末20から通知されたMAC CEに含まれる情報も、制御部301へ出力する。
図15は、本実施の形態に係るユーザ端末20の全体構成図である。図15に示すように、ユーザ端末20は、MIMO伝送のための複数の送受信アンテナ201と、アンプ部202と、送受信部203と、ベースバンド信号処理部204と、アプリケーション部205と、を備えている。なお、送受信部203は、送信部及び受信部から構成されてもよい。
下りリンクのデータについては、複数の送受信アンテナ201で受信された無線周波数信号がそれぞれアンプ部202で増幅される。各送受信部203はアンプ部202で増幅された下り信号を受信する。送受信部203は、受信信号をベースバンド信号に周波数変換して、ベースバンド信号処理部204に出力する。
ベースバンド信号処理部204は、入力されたベースバンド信号に対して、FFT処理や、誤り訂正復号、再送制御の受信処理などを行う。下りリンクのユーザデータは、アプリケーション部205に転送される。アプリケーション部205は、物理レイヤやMACレイヤより上位のレイヤに関する処理などを行う。また、下りリンクのデータのうち、報知情報もアプリケーション部205に転送される。
一方、上りリンクのユーザデータについては、アプリケーション部205からベースバンド信号処理部204に入力される。ベースバンド信号処理部204では、再送制御の送信処理(例えば、HARQの送信処理)や、チャネル符号化、プリコーディング、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)処理、IFFT処理などが行われて各送受信部203に転送される。送受信部203は、ベースバンド信号処理部204から出力されたベースバンド信号を無線周波数帯に変換して送信する。送受信部203で周波数変換された無線周波数信号は、アンプ部202により増幅され、送受信アンテナ201から送信される。
図16は、ユーザ端末20が有するベースバンド信号処理部204の主な機能構成図である。図16に示すように、ユーザ端末20が有するベースバンド信号処理部204は、制御部401と、送信信号生成部402と、マッピング部403と、デマッピング部404と、受信信号復号部405と、電力制限検出部406と、PH報告生成部411と、を少なくとも含んで構成されている。
制御部401は、無線基地局10から送信された下り制御信号(PDCCHで送信された信号)及び下りデータ信号(PDSCHで送信された信号)を、受信信号復号部405から取得する。制御部401は、下り制御信号や、下りデータ信号に対する再送制御の可否を判定した結果などに基づいて、上り制御信号(例えば、送達確認信号(HARQ−ACK)など)や上りデータ信号の生成を制御する。具体的には、送信信号生成部402及びマッピング部403の制御を行う。
送信信号生成部402は、制御部401からの指示に基づいて、例えば送達確認信号(HARQ−ACK)やチャネル状態情報(CSI)などの上り制御信号を生成する。また、送信信号生成部402は、制御部401からの指示に基づいて上りデータ信号を生成する。なお、制御部401は、無線基地局から通知される下り制御信号にULグラントが含まれている場合に、送信信号生成部402に上りデータ信号の生成を指示する。
マッピング部403は、制御部401からの指示に基づいて、送信信号生成部402で生成された上り信号を無線リソースにマッピングして、送受信部203へ出力する。
また、制御部401は、ユーザ端末20の上り送信電力を制御する。具体的には、制御部401は、各無線基地局20からのシグナリング(例えば、TPCコマンド)に基づいて、各セル(CC)の送信電力を制御する。ここで、制御部401は、各無線基地局10への上り信号の優先度ルールを保持しており、同じタイミングで複数の上り信号を送信する場合には、当該優先度を参照して各上り信号の送信電力を制御する。
制御部401は、優先度ルールとして、同一種類の上り信号毎に、第1の無線基地局(例えば、MeNB)への優先度を、第2の無線基地局(例えば、SeNB)への優先度より高く設定する。例えば、MeNBへの全てのUL信号の優先度を、SeNBへの全てのUL信号の優先度より高く設定してもよい(第1の実施形態の一実施例)。また、同一種類の上り信号毎に、第1の無線基地局への優先度及び第2の無線基地局への優先度を隣接して設定してもよい。さらに、信号間の優先度の関係が、eNBによらずRel.11のUL−CAと同じ順番を維持するように設定してもよい(第1の実施形態の別の実施例)。なお、eNB/CG内の信号間の優先度は、Rel.11のUL−CAと同じ順番を含むことが好ましく、すなわち高い方から、PRACH、PUCCH、UCIを含むPUSCH、UCIを含まないPUSCH、SRSの優先度順を含むように設定することが好ましい。
なお、制御部401は、複数の優先度ルールが規定されている場合には、無線基地局10からの下り制御チャネル(PDCCH、EPDCCH)による下り制御情報(DCI)、上位レイヤシグナリング(例えば、RRCシグナリング)、報知信号(例えば、SIB)などにより通知された、優先度ルールに関する情報に基づいて、適用する優先度ルールを決定してもよい。
また、制御部401は、上りサブフレーム(ULサブフレーム)の途中で信号の送信電力を変更しないことを担保しつつ、上記の優先度を守るように、電力制限検出部406と協調して送信電力制御を行う。このため、制御部401は、受信したULグラント/DLアサインメントから、UL送信状況(帯域幅、変調方式、これらに基づき要求されるUL送信電力など)を電力制限検出部406に出力する。
電力制限検出部406は、制御部401から入力されたUL送信状況の情報に基づいて、あるeNB/CGへの所定のULサブフレームの送信を予定している期間(送信予定期間)について、当該ULサブフレームと部分的又は全体的に同時送信区間を有する別eNB/CGの全てのULサブフレームの送信電力を調べ、各eNB/CGへの上り信号の総送信電力が許容最大電力(Pcmax)を超えるか否か、を判定して、判定結果を制御部401に出力する(第2の実施形態)。
制御部401は、電力制限検出部406で判定された許容最大電力を超える(パワーリミテッドとなる)部分について、当該部分の信号優先度を比較する。制御部401は、優先度の低い(非優先の)ULサブフレームは、優先度の高い(優先の)ULサブフレームに要求された電力を適切に配分できるような値にまで、電力割り当てを減らす(スケーリング又はドロッピングする)。
また、電力制限検出部406は、上記判定を行う前に、送信予定期間における各eNB/CGについて、それぞれのULサブフレームの送信電力が所定の値(例えば、eNB/CGあたりの最大送信電力)を超えるか否か、を判定して、判定結果を制御部401に出力してもよい(変形例4)。
制御部401は、電力制限検出部406の判定結果から、いずれかのeNB/CGで合計送信電力が上記所定の値を超える場合、当該eNB/CG内でパワースケーリング/ドロッピングを適用し、eNB/CG毎に送信電力を所定の値以下に収める。
なお、送信信号生成部402は、上記のような構成を有することを無線基地局10に通知するためのユーザ端末能力情報(UE capability information)を生成することが好ましい。例えば、非同期デュアルコネクティビティのサポート可否や、将来の送信信号の送信電力の計算可否、eNB/CG間での送信電力の動的シェアの可否などを表すユーザ端末能力情報を生成してもよい(変形例2)。
PH報告生成部411は、制御部401からの指示に基づいて、各eNB/CGに対するPH(Power Headroom)を、当該eNB/CGへの上り信号の最大送信電力と、当該eNB/CGが最初に要求した上り信号の送信電力と、の差分から算出し、PHRを生成して送信信号生成部402に出力する(変形例5)。
デマッピング部404は、送受信部203で受信された信号をデマッピングして、分離した信号を受信信号復号部405に出力する。具体的には、デマッピング部404は、無線基地局10から送信された下りリンク信号をデマッピングする。
受信信号復号部405は、下り制御チャネル(PDCCH)で送信された下り制御信号(PDCCH信号)を復号し、スケジューリング情報(上りリソースへの割り当て情報)、下り制御信号に対して送達確認信号をフィードバックするセルに関する情報、TPCコマンドなどを制御部401へ出力する。
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。例えば、上述の各実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。