JP2018035411A - 冷間鍛造用鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献3および特許文献4に開示された技術においては、粗大な硫化物が存在した場合には、粒子間距離が小さいと、かえって冷間鍛造時の割れが発生しやすく、冷間鍛造性が低下することがある。
λ∝(D×σ×ΔT)0.25 ・・・(A)
ここで、λ:デンドライトの1次アーム間隔(μm)、D:拡散係数(m2/s)、σ:固液界面エネルギー(J/m2)、ΔT:凝固温度範囲(℃)である。
C:0.05〜0.30%、
Si:0.05〜1.00%、
Mn:0.40〜2.00%、
S:0.008〜0.040%未満、
Cr:0.01〜3.00%、
Al:0.010〜0.100%、
N:0.0250%以下および
Bi:0.0001〜0.0050%
を含有し、更に
Sb:0.0001〜0.0050%
Sn:0.0001〜0.0050%および
Pb:0.0001〜0.0050%
からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、
Bi、Sb、SnおよびPbの合計含有量を0.0050%以下とし、
残部がFeおよび不純物からなり、
更に、PおよびOがそれぞれ、
P:0.050%以下および
O:0.0020%以下であり、
下記式(1)および下記式(2)を満たし、
鋼中の硫化物間の平均距離が30.0μm未満であることを特徴とする冷間鍛造用鋼。
d+3σ<10.0μm ・・・(1)
SA/SB<0.30 ・・・(2)
式(1)におけるdは円相当径1μm以上の硫化物の平均円相当径であり、σは円相当径1μm以上の硫化物の円相当径の標準偏差であり、式(2)におけるSAは円相当径で1μm以上3μm未満の硫化物の個数であり、SBは円相当径で1μm以上の硫化物の個数である。
(2) Feの一部に代えて、質量%で、
Mo:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
V:0.30%以下、
B:0.0200%以下および
Mg:0.0035%以下
からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の冷間鍛造用鋼。
(3) Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.060%以下および
Nb:0.080%以下
からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の冷間鍛造用鋼。
本発明では、所定の化学成分を有する鋳片を鋳造することで、硫化物の晶出核となるデンドライト組織を微細化させて、鋼中の硫化物を微細分散させることができる。これにより、歯車、シャフト、プーリーなどの鋼製部品の素材となる、冷間鍛造後の被削性、つまり、浸炭、浸炭窒化または窒化前の被削性を高めることができる。
以上のように、本発明の冷間鍛造用鋼は、焼鈍後の冷間鍛造による粗成形品を直接に、または、必要に応じて焼きならしを行ってから、切削加工を施す際の被削性に優れている。このため、自動車、産業機械用の歯車、シャフト、プーリーなどの鋼製部品の製造費用に占める切削加工コストの割合を低減でき、また部品の品質を向上することができる。
肌焼鋼を歯車などの部品形状に加工するには、連続鋳造した鋳片を圧延した後、熱間鍛造または冷間鍛造を行い、次いで切削し、更に浸炭焼き入れ等の表面硬化処理を実施する。鋼中の硫化物は、冷間鍛造性を低下させるが、切削性の向上に極めて有効である。すなわち、被削材である肌焼鋼中の硫化物は、切削工具の摩耗による工具変化を抑制し、いわゆる工具寿命を延ばす効果を発現する。
炭素(C)は、鋼の引張強度および疲労強度を高める。一方、C含有量が多すぎれば、鋼の冷間鍛造性が低下し、被削性も低下する。したがって、C含有量は、0.05〜0.30%である。好ましいC含有量は、0.10〜0.28%であり、より好ましくは、0.15〜0.25%である。
シリコン(Si)は、鋼中のフェライトに固溶して、鋼の引張強度を高める。一方、Si含有量が多すぎれば、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Si含有量は、0.05〜1.00%である。好ましいSi含有量は、0.15〜0.70%であり、より好ましくは0.20〜0.35%である。
マンガン(Mn)は、鋼に固溶して鋼の引張強度および疲労強度を高め、鋼の焼入れ性を高める。Mnは、さらに、鋼中の硫黄(S)と結合してMn硫化物を形成し、鋼の被削性を高める。一方、Mn含有量が多すぎれば、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.40〜2.00%である。鋼の引張強度、疲労強度および焼入れ性を高める場合、好ましいMn含有量の下限は、0.60%であり、より好ましくは0.75%である。鋼の冷間鍛造性をさらに高める場合、好ましいMn含有量の上限は、1.50%であり、より好ましくは1.20%である。
硫黄(S)は、鋼中のMnと結合してMn硫化物を形成し、鋼の被削性を高める。一方、Sを過剰に含有すれば、鋼の冷間鍛造性や疲労強度が低下する。したがって、S含有量は、0.008%以上0.040%未満である。鋼の被削性を高める場合、好ましいS含有量の下限は、0.010%であり、より好ましくは、0.015%である。鋼の冷間鍛造性をさらに高める場合、好ましいS含有量の上限は、0.030%未満であり、より好ましくは、0.025%未満である。
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性および引張強度を高める。本実施の形態による冷間鍛造用鋼により製造される機械部品は、浸炭処理や高周波焼入れにより鋼の表面を硬化する場合がある。Crは、鋼の焼入れ性を高め、浸炭処理や高周波焼入れ後の鋼の表面硬度を高める。一方、Cr含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性や疲労強度が低下する。したがって、Cr含有量は、0.01〜3.00%である。鋼の焼入れ性および引張強度を高める場合、好ましいCr含有量の下限は、0.03%であり、より好ましくは、0.10%である。冷間鍛造性および疲労強度をさらに高める場合、好ましいCr含有量の上限は2.00%であり、より好ましくは1.50%であり、さらに好ましくは、1.20%である。
Alは、脱酸作用を有すると同時に、Nと結合してAlNを形成しやすく、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化防止に有効な元素である。しかし、Al含有量が0.010%未満では、安定してオーステナイト粒の粗大化を防止できず、粗大化した場合は、曲げ疲労強度が低下する。一方、Al含有量が0.100%を超えると、粗大な酸化物を形成しやすくなり、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Al含有量を0.010〜0.100%とした。Al含有量の好ましい下限は0.03%であり、Al含有量の好ましい上限は0.06%である。
窒素(N)は、不純物として含有される。鋼中に固溶するNは、鋼の冷間鍛造時の変形抵抗を大きくし、また冷間鍛造性を低下する。また、Bを含有させる場合には、Nの含有量が多いとBNが生成され、Bの焼入れ性向上効果を低下させてしまう。したがって、Bを含む場合、TiやNbを含まない場合は、N含有量はより少ないことが好ましい。したがって、N含有量を0.0250%以下とした。好ましいN含有量は、0.0180%以下であり、より好ましくは、0.0150%以下である。一方、NをTiやNbとともに含有させると、窒化物や炭窒化物を生成することにより、オーステナイト結晶粒が微細化され、鋼の冷間鍛造性や疲労強度を高める。Bを含まず、かつTiやNbを含有して窒化物や炭窒化物を積極的に生成する場合には、N含有量は、0.0060%以上であることが好ましい。
Biは、本発明において重要な元素である。微量のBiを含有することによって、鋼の凝固組織が微細化に伴い、硫化物が微細分散する。Mn硫化物の微細分散化効果を得るには、Bi含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかし、Bi含有量が0.0050%を超えると、デンドライト組織の微細分散化効果が飽和し、かつ鋼の熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難となる。これらのことから、本発明では、Bi含有量を0.0001%以上0.0050%以下とする。被削性をさらに向上させるには、Bi含有量の下限を0.0010%とすることが好ましい。また、Bi含有量の上限を0.0048%とすることが好ましい。
本発明では、微量のBiに加えてSb、SnおよびPbからなる群から選択される1種または2種以上を含有することが特徴である。これらの元素を微量含有することで鋼の凝固組織が微細化に伴い、MnSを代表とする硫化物が微細分散する。硫化物の微細分散化効果を得るには、Bi含有量を0.0001%以上とすることに加えて、Sb、SnおよびPbからなる群から選択される1種または2種以上を0.0001%以上含有する必要がある。しかし、Bi、Sb、SnおよびPbの合計含有量が0.0050%を超えると、デンドライト組織の微細分散化効果が飽和し、かつ鋼の熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難となる。これらのことから、本発明では、Bi、Sb、SnおよびPbの合計含有量を0.0050%以下とする必要がある。被削性をさらに向上させるには、Bi、Sb、SnおよびPbの合計含有量を0.0010%以上とすることが好ましい。また、Bi、Sb、SnおよびPbの合計含有量の上限を0.0048%とすることが好ましい。
燐(P)は、不純物である。Pは、鋼の冷間鍛造性や熱間加工性を低下する。したがって、P含有量は少ないことが好ましい。P含有量は0.050%以下である。好ましいP含有量は0.035%以下であり、より好ましくは、0.020%以下である。
Oは、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、O含有量が0.0020%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、O含有量を0.0020%以下とした。なお、不純物元素としてのO含有量は0.0010%以下とすることが好ましく、製鋼工程でのコスト上昇をきたさない範囲で、できる限り少なくすることがさらに望ましい。
本実施の形態による冷間鍛造用鋼はさらに、Mo、Ni、V、BおよびMgからなる群から選択される1種または2種以上を含有してもよい。Mo、Ni、V、BおよびMgはいずれも、鋼の疲労強度を高める。
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の疲労強度を高める。また、Moは、浸炭処理において、不完全焼入れ層を抑制する。Moを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Mo含有量が多すぎれば、鋼の被削性が低下する。さらに、鋼の製造コストも高くなる。したがって、Mo含有量は、1.00%以下であることが好ましい。Mo含有量が0.02%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。より好ましいMo含有量は0.05〜0.50%であり、さらに好ましいMo含有量は、0.10〜0.30%である。
ニッケル(Ni)は、焼入れ性を高める効果があり、より疲労強度を高めるために有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が1.00%を超えると、焼入れ性の向上による疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなり冷間鍛造性の低下が顕著となる。そのため、Ni含有量は1.00%以下であることが好ましい。Ni含有量は0.80%以下であることがより好ましい。さらに、Niの焼入れ性向上による疲労強度を高める効果を安定して得るためには、Ni含有量は0.10%以上であることが好ましい。
バナジウム(V)は、鋼中で炭化物を形成し、鋼の疲労強度を高める。バナジウム炭化物は、フェライト中に析出して鋼の芯部(表層以外の部分)の強度を高める。Vを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、V含有量が多すぎれば、鋼の冷間鍛造性および疲労強度が低下する。したがって、V含有量は0.30%以下であることが好ましい。V含有量が0.03%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。より好ましいV含有量は0.04〜0.20%であり、さらに好ましいV含有量は、0.05〜0.10%である。
ボロン(B)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の疲労強度を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。B含有量が0.0200%を超えると、その効果は飽和する。したがって、B含有量は0.0200%以下であることが好ましい。B含有量が0.0005%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。より好ましいB含有量は、0.0010〜0.0120%であり、さらに好ましいB含有量は、0.0020〜0.0100%である。
マグネシウム(Mg)は、Alと同様に、鋼を脱酸し、鋼中の酸化物を微細化する。鋼中の酸化物が微細化することにより、粗大酸化物を破壊起点とする確率が低下し、鋼の疲労強度が高まる。Mgを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Mg含有量が多すぎれば、上記効果は飽和し、かつ、鋼の被削性が低下する。したがって、Mg含有量は0.0035%以下であることが好ましい。Mg含有量が0.0001%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。より好ましいMg含有量は0.0003〜0.0030%であり、さらに好ましいMg含有量は、0.0005〜0.0025%である。
チタン(Ti)は、微細な炭化物や窒化物、炭窒化物を生成し、ピン止め効果によりオーステナイト結晶粒を微細化する。オーステナイト結晶粒が微細化されることにより、鋼の冷間鍛造性や疲労強度が高まる。Tiが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Ti含有量が多すぎれば、鋼の被削性および冷間鍛造性が低下する。したがって、Ti含有量は0.060%以下であることが好ましい。Ti含有量が0.002%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。より好ましいTi含有量は0.005〜0.040%であり、さらに好ましいTi含有量は、0.010〜0.030%である。
ニオブ(Nb)は、Tiと同様に、微細な炭化物や窒化物、炭窒化物を生成してオーステナイト結晶粒を微細化し、鋼の冷間鍛造性および疲労強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Nb含有量が多すぎれば、上記効果は飽和し、かつ、鋼の被削性が低下する。したがって、Nb含有量は0.080%以下であることが好ましい。Nb含有量が0.010%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。より好ましいNb含有量は0.015〜0.050%であり、さらに好ましいNb含有量は、0.020〜0.040%である。
連続鋳造鋳片の凝固組織は、通常はデンドライト形態を呈している。鋼材中の硫化物は、凝固前(溶鋼中)、または凝固時に晶出することが多く、デンドライト1次アーム間隔に大きく影響を受ける。すなわち、デンドライト1次アーム間隔が小さければ、樹間に晶出する硫化物は小さくなる。本実施形態の冷間鍛造用鋼は、鋳片の段階におけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満であることが望ましい。
硫化物は、切削性の向上に有用であるため、その個数密度を確保することが必要である。S量を増加すると被削性は向上するが、粗大な硫化物が増加する。熱間圧延等によって延伸した粗大な硫化物は、冷間鍛造性を損なうため、サイズおよび形状を制御することが必要である。さらに、被削時の切りくず処理性を向上するには、硫化物を微細に分散することが必要である。すなわち、硫化物同士の間隔を小さくすることが重要である。
なお、介在物が硫化物であることは、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)によって確認すればよい。
SA/SB<0.30 ・・・(2)
なお、硫化物の円相当径は、硫化物の面積と等しい面積を有する円の直径であり、画像解析によって求めることができる。同様に、硫化物の個数は、画像解析によって求めることができる。
上述の通り、鋼の鋳片のデンドライト1次アーム間隔を低減して、デンドライト樹間から晶出した微細な硫化物の割合を増やし、10μmを超える硫化物を無くせば、鋼の冷間鍛造性が向上する。観察視野9mm2当りに検出される硫化物の円相当径のばらつきを標準偏差σとして算出し、この標準偏差の3σに平均円相当径dを加えた値を上記式(1)の左辺(F1)とし、F1を次のとおり定義した。
一方で、観察される硫化物のうち、円相当径が1μm以上3μm未満の硫化物の個数を、円相当径が1μm以上の硫化物の個数で除した個数密度が0.30以上の場合に、切りくず処理性が低下する。この個数密度を上記式(2)の左辺(F2)とし、F2を次の通り定義した。
本発明の一実施形態による冷間鍛造用鋼の製造方法を説明する。本実施形態の冷間鍛造用鋼の製造方法は、上記の化学成分を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を連続鋳造し、この鋳片を熱間加工し、更に焼鈍することによって製造される。熱間加工は、熱間圧延を含んでもよい。また、焼鈍は球状化焼鈍が好ましい。
上記化学組成および上記式(1)を満たす鋼の鋳片を連続鋳造法により製造する。造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。鋳造条件は、例えば、220mm×220mm角の鋳型を用いて、タンディッシュ内の溶鋼のスーパーヒートを10〜50℃とし、鋳込み速度を1.0〜1.5m/分とする条件を例示できる。
次に、製造された中間品に対して、必要に応じて機械加工によって所定の形状に切削し、さらに周知の条件で、表面硬化処理を実施する。表面硬化処理は、例えば、浸炭処理や窒化処理、高周波焼入れである。また、表面硬化処理を実施しなくてもよい。
表面硬化処理後の中間品を機械加工により所定の形状に切削する。このようにして、冷間鍛造用鋼からなる機械部品が得られる。
凝固組織は、上記の鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から深さ方向に15mm位置を鋳込み方向に5mmピッチでデンドライト1次アーム間隔および2次アーム間隔を100点測定し、平均値を求めた。
球状化焼鈍処理後の丸棒のミクロ組織を観察した。丸棒のD/4位置を軸方向に対して垂直に切断し、ミクロ組織観察用の試験片を採取した。試験片の切断面を研磨し、ナイタル腐食液で腐食した。腐食後、400倍の光学顕微鏡で、切断面の中央部のミクロ組織を観察した。各マークの丸棒のミクロ組織はいずれも、フェライトに球状セメンタイトが分散した組織であった。
球状化焼鈍後の丸棒のD/4位置を軸方向に対して垂直に切断し、硫化物観察用の試験片を採取した。試験片を樹脂埋めした後、被検面を鏡面研磨した。被検面は、冷間鍛造用鋼の長手方向と平行である。被検面内の硫化物を走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)により特定した。具体的には、縦10mm×横10mmの研磨試験片を10個作製し、これらの研磨試験片の所定位置を走査型電子顕微鏡にて100倍で写真撮影して、0.9mm2の検査基準面積(領域)の画像を10視野分準備した。硫化物の観察視野は、9mm2である。各観察領域において、走査型電子顕微鏡で観察される反射電子像のコントラストに基づいて、硫化物を特定した。反射電子像では、観察領域をグレースケール画像で表示した。反射電子像内におけるマトリクス(母材)、硫化物、酸化物のコントラストはそれぞれ異なるものとなった。その観察視野(画像)中の円相当径が1μm以上の硫化物の粒径分布を検出した。これらの寸法(直径)は、硫化物の面積と同一の面積を有する円の直径を示す円相当径に換算した。検出した硫化物の粒径分布から、硫化物の平均円相当径および標準偏差を算出した。
球状化焼鈍後の直径30mmの丸棒のR/2位置から、丸棒試験片を作製した。丸棒試験片は、直径30mmの丸棒のR/2位置を中心とした直径10mm、長さ15mmの試験片であり、丸棒試験片の長手方向は、直径30mmの丸棒の鍛伸軸と平行であった。
各鋼について、上記の球状化焼鈍を施した直径30mmの棒鋼の残りを用いて、冷間鍛造の代わりに冷間での引抜きにより歪を与え、その引抜き後の被削性で冷間鍛造後の被削性を評価した。
母材材質:超硬P20種グレード。
コーティング:なし。
<旋削加工条件>
周速:150m/分。
送り:0.2mm/rev。
切り込み:0.4mm。
潤滑:水溶性切削油を使用。
試験番号22〜34は、Bi、Sb、SnおよびPbの合計含有量が規定値の上限を超えている。その結果、上記式(1)を満たし、冷間鍛造性は規定値以上であったものの、上記式(2)を満たさなかった。そのため、円相当径3μm未満の硫化物が多く、切りくず重量が15gを超えた。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0.05〜1.00%、
Mn:0.40〜2.00%、
S:0.008〜0.040%未満、
Cr:0.01〜3.00%、
Al:0.010〜0.100%、
N:0.0250%以下および
Bi:0.0001〜0.0050%
を含有し、更に
Sb:0.0001〜0.0050%
Sn:0.0001〜0.0050%および
Pb:0.0001〜0.0050%
からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、
Bi、Sb、SnおよびPbの合計含有量を0.0050%以下とし、
残部がFeおよび不純物からなり、
更に、PおよびOがそれぞれ、
P:0.050%以下および
O:0.0020%以下であり、
下記式(1)および下記式(2)を満たし、
鋼中の硫化物同士の平均距離が30.0μm未満であることを特徴とする冷間鍛造用鋼。
d+3σ<10.0μm ・・・(1)
SA/SB<0.30 ・・・(2)
式(1)におけるdは円相当径1μm以上の硫化物の平均円相当径であり、σは円相当径1μm以上の硫化物の円相当径の標準偏差であり、式(2)におけるSAは円相当径で1μm以上3μm未満の硫化物の個数であり、SBは円相当径で1μm以上の硫化物の個数である。 - Feの一部に代えて、質量%で、
Mo:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
V:0.30%以下、
B:0.0200%以下および
Mg:0.0035%以下
からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷間鍛造用鋼。 - Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.060%以下および
Nb:0.080%以下
からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷間鍛造用鋼。 - 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の化学成分を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を鋳造し、前記鋳片を熱間加工し、更に焼鈍することを特徴とする冷間鍛造用鋼の製造方法。
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