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JP2018089011A - 有床義歯の製造方法 - Google Patents

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JP2018089011A
JP2018089011A JP2016233483A JP2016233483A JP2018089011A JP 2018089011 A JP2018089011 A JP 2018089011A JP 2016233483 A JP2016233483 A JP 2016233483A JP 2016233483 A JP2016233483 A JP 2016233483A JP 2018089011 A JP2018089011 A JP 2018089011A
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JP2016233483A
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遥 杉田
Haruka Sugita
遥 杉田
長谷川 在
Akira Hasegawa
在 長谷川
桂太郎 平野
Keitaro Hirano
桂太郎 平野
奈緒之 加藤
Naoyuki Kato
奈緒之 加藤
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Mitsui Chemicals Inc
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

【課題】人工歯を義歯床に配置する際に、人工歯の位置調整を精度良く行える有床義歯の製造方法を提供する。【解決手段】複数の人工歯12を義歯床14のソケット部に配置した有床義歯100を準備する。次に矩形状の仮固定材10を、有床義歯の歯肉部分を覆うようにして、歯肉の外側に配置し、人工歯12は義歯床14に仮固定する(仮固定工程)。次に人工歯12を義歯床14に仮固定した状態で、アクリル系レジンが充填された注入器20を用いて、歯肉の内側(舌側)から、アクリル系レジンを義歯床14のソケット部と人工歯12との隙間に注入する。その後、アクリル系レジンを常温(0℃〜35℃)で重合させ、又は、加熱して若しくは光で重合させ、人工歯12を義歯床14に本接着する(本接着工程)。【選択図】図1

Description

本発明は、有床義歯の製造方法に関する。
近年、CAD/CAM(Computer Aided Design and Computer Aided Manufacturing)システムを利用した義歯床及び有床義歯の製造が提案されている。義歯床及び有床義歯の製造においてCAD/CAMシステムを導入することにより、作業の効率化が図られ、品質のバラツキを抑えることが可能となるといったメリットがある。
また、CAD/CAMシステムを利用して有床義歯を作製する際、CAD/CAMシステムにより切削して義歯床を作製し、作製された義歯床に人工歯を接着する工程が存在する。このとき、義歯床の凹部(以下、「ソケット部」とも称する)に接着剤として歯科用義歯床用レジン(以下、単に「レジン」とも称する。)を滴下し、手作業で人工歯をソケット部にはめた後にレジンを重合させて接着する。接着剤として用いられるレジンは、ポリマー粉とモノマー液とを混合させてなり、混合直後は低粘度であるが、室温にて時間経過とともに粘度が高くなり固まるものである。
義歯床に人工歯を接着する技術としては、種々の方法が開示されている。
例えば、レジン床の表面に形成された人工歯配列用の凹部が表面改質され、表面改質された凹部に接着剤を介してレジン歯を接着すること、及び、接着剤(レジン)として自己接着タイプのスーパーボンドを使用することが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、人工歯の基底面にプライマー処理を施した後、プライマー処理された面に即時重合レジンを塗布して接着層を形成し、人工歯と床とを接着することが開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
特開2014−155878号公報 特開2008−289839号公報
特許文献1、2に記載されているレジンは、混合直後は低粘度であるが、時間経過とともに粘度が高くなるため、ソケット部にレジンを滴下して人工歯をソケット部に配置する際にレジンが重合により徐々に硬化してしまい、取り扱いが容易ではない。
さらに、レジンの重合によりソケット部に配置された人工歯が固定されると、人工歯を動かすことができなくなり、また、固定された人工歯を取り外して位置調整を試みると義歯床が損傷してしまう。そのため、人工歯をソケット部に配置して時間が経過すると人工歯の位置修正又は微調整ができないという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされてものであり、人工歯を義歯床に配置する際に、人工歯の位置調整を精度良く行える有床義歯の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮固定材を用いて人工歯を義歯床に仮固定する工程と、
仮固定された前記人工歯を前記義歯床に接着する工程と、
を含む有床義歯の製造方法。
<2> 前記接着する工程は、アクリル系レジンを用いて前記人工歯を前記義歯床に本接着する工程である<1>に記載の有床義歯の製造方法。
<3> 前記接着する工程は、前記人工歯を前記義歯床に予備接着する工程と、
前記仮固定材を除去する工程と、
アクリル系レジンを用いて前記人工歯を前記義歯床に本接着する工程と、
を含む工程である<1>に記載の有床義歯の製造方法。
<4> 前記予備接着する工程は、前記人工歯を、前記義歯床の凹部の少なくとも一部に予備接着する工程である、<3>に記載の有床義歯の製造方法。
<5> 前記仮固定材は、25℃で変形する粘着性材料である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の有床義歯の製造方法。
<6> 前記仮固定する工程の前に、CAD/CAMシステムにより前記義歯床を作製する工程を更に含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載の有床義歯の製造方法。
本発明によれば、人工歯を義歯床に配置する際に、人工歯の位置調整を精度良く行える有床義歯の製造方法を提供することができる。
(a)は仮固定材が配置される前の有床義歯の斜視図であり、(b)は仮固定する工程を説明するための斜視図であり、(c)は本接着する工程を説明するための斜視図である。 (a)は仮固定材が配置される前の有床義歯の斜視図であり、(b)は仮固定する工程を説明するための斜視図であり、(c)は(b)の有床義歯をXの方向から見た状態を示す斜視図であり、(d)は予備接着工程を説明するための(c)のY部分を拡大した拡大概略図を示し、(e)は仮固定材を除去する工程を説明するための斜視図であり、(f)は本接着する工程を説明するための斜視図である。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
〔有床義歯の製造方法〕
本実施形態に係る有床義歯の製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」とも称する)は、仮固定材を用いて人工歯を義歯床に仮固定する工程と、仮固定された人工歯を義歯床に接着する工程と、を含む。また、本実施形態の製造方法において、接着する工程は、アクリル系レジンを用いて、仮固定された人工歯を義歯床に接着する工程であることが好ましい。
本実施形態の製造方法によれば、人工歯を義歯床に配置する際に、人工歯の位置調整を精度良く行える。その理由は以下のように推察される。
本実施形態の製造方法では、人工歯を義歯床に仮固定する工程を経た後に、人工歯を義歯床に接着(つまり本接着)する。これにより、人工歯を義歯床に本接着する前に、歯の配列(位置)を修正すること、及び、形状調整が必要な歯がある場合には、その対象の歯を一旦外して再度同じ位置に配置(仮固定)すること等ができる。
また、人工歯が挿入される義歯床のソケット部は人工歯の外周に対して遊びを有するように形成されているため、通常レジン(例えばアクリル系レジン)を注入した際、レジンの表面張力によって人工歯は浮き上がってしまう。しかし、本実施形態の製造方法では、仮固定材を配置した状態で、又は、仮固定材を配置し、かつ人工歯を義歯床に予備接着した状態で、人工歯を義歯床に本接着するので、本接着でのレジンの注入により、ソケット部内で人工歯が浮き上がりにくくなる。これにより、浮き上がりを抑えた適切な位置で複数の人工歯を接着することができる。
よって、本実施形態の製造方法によれば、人工歯を義歯床に配置する際に、人工歯の位置調整を精度良く行える。このような仮固定材を用いた位置調整は修正精度が高く、特に咬合調整のための歯の高さの調整に有効な方法である。
したがって、本実施形態の製造方法によれば、人工歯の位置が精度良く調整された有床義歯が得られやすく、特に咬合の高さが精度良く調整された有床義歯が得られやすい。
また、本実施形態の製造方法では、上述した効果以外にも、以下の効果を奏することが期待される。その理由は以下のように推察される。
通常、接着後の人工歯の脱落を防ぐため、例えば義歯床のソケット部にアクリル系レジンを多めに滴下することがある。しかし、多めにアクリル系レジンを滴下すると、人工歯をソケット部に配置する際にアクリル系レジンがはみ出てしまい、義歯床が汚染されるという問題が生じ、また、審美性にも問題が生じる。さらに、接着性の点から義歯床及びアクリル系レジンが同じ材料からなることが好ましいが、この場合にはみ出たアクリル系レジンを簡単に除去することができず、技工用エンジンで後処理してはみ出たアクリル系レジンを除去する必要がある。かかる後処理は製造時間の増加をもたらす要因となる。
また、滴下するアクリル系レジンの適量は、ソケット部と人工歯との関係で決まるため、ソケット部ごとに滴下するアクリル系レジンの適量を予め算出することは現実的ではない。
これに対し、本実施形態の製造方法では、上述のように仮固定材を配置した状態で、又は、仮固定材を配置し、かつ人工歯を義歯床に予備接着した状態で、人工歯を義歯床に本接着するので、本接着に用いるレジン(例えばアクリル系レジン)の量が適切に調整されやすく、レジンが人工歯の隙間からはみ出しにくくなる。よって、はみ出されたレジンによる義歯床又は人工歯の汚染が抑制され、例えば上記レジンを除去する後処理が不要になることが多い。
したがって、本実施形態の製造方法によれば、有床義歯の製造時間が短縮されやすい。さらに、上記レジンのはみ出しが抑制されるので、審美性も確保されやすい。
以下、本実施形態の製造方法の各工程について説明する。
<仮固定する工程>
仮固定する工程は、仮固定材を用いて人工歯を義歯床に仮固定する工程(以下、「仮固定工程」とも称する)である。
仮固定とは、人工歯と義歯床との位置関係が維持される程度に、人工歯を義歯床に一時的に固定することをいう。
人工歯を義歯床に仮固定する方法としては特に制限されないが、仮固定材を、例えば人工歯及び義歯床の少なくとも一方を含む部分(例えば歯冠及び歯根の境界部分)を覆うようにして、歯肉の外側(唇側、頬側)又は歯肉の内側(舌側)に配置する方法;例えば仮固定材をヒモ状にして、歯の唇側から舌側にかけてまたぐように配置する方法;等が挙げられる。なお、仮固定材を歯肉の外側に配置した場合、予備接着や本接着に用いるレジンを歯肉の内側から注入できるので、審美性に優れた有床義歯が得られやすい。
(仮固定材)
仮固定材は、人工歯及び義歯床との粘着性を有し、25℃(常温)で変形するものであれば特に制限なく適用できる。
すなわち、仮固定材は、25℃で変形する粘着性材料であることが好ましい。
上記粘着性材料としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルアルキルエーテル系樹脂、アクリルアミド系樹脂等の樹脂;天然ゴム、シリコーン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等のゴム;が挙げられる。
また、上記粘着性材料としては、例えば、パテ(例えば模型製作用パテ、歯科用パテ)、タックラベル、小麦粉粘土、金属箔テープを用いてもよい。
パテとは、窪み、割れ、穴等を充填するために用いられる材料のことをいう。パテは、一般に顔料、樹脂(不揮発性展色剤)、揮発性物質を含む。
パテとしては、エポキシパテ、ポリエステルパテ、シリコーンパテ又はこれらの変性パテ等の1成分型(1液性)若しくは多成分型(2液性等)のパテ;ラッカーパテ;瞬間接着パテ;石膏パテ;炭酸カルシウムパテ;光硬化型パテ;等が挙げられる。
タックラベルとは、基材の裏面に粘着性材料が設けられたラベルをいい、その粘着性材料の側が仮固定される部位(例えば歯冠及び歯根の境界付近)に配置されて用いられる。
基材の材質は特に制限されない。基材の裏面に設けられる粘着性材料としては、例えば上記樹脂、上記ゴムが挙げられる。
また、金属箔テープとしては、公知の粘着性金属箔テープを用いることができる。
粘着性材料の中でも、仮固定材除去後の有床義歯への残付着が少ない観点から、パテが好ましく、歯科用パテがより好ましく、歯科用シリコーンパテがさらに好ましい。特に、歯科用パテ(好ましくは歯科用シリコーンパテ)を用いると、変形時の戻りが少ないので、人工歯の位置調整が容易に行える。また、仮固定時における人工歯と義歯床との位置関係が保持されやすい。
上記粘着性材料は、1種単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
仮固定材の形状としては、人工歯を義歯床に仮固定できる形状であれば特に制限されず、種々の形状が採用され得る。
(義歯床)
本実施形態の製造方法に用いる義歯床の材質としては、特に限定されないが、CAD/CAMシステムに適している点及び市販のアクリル系樹脂製のレジン歯との接着性に優れる点から、アクリル系樹脂が好ましい。
ここで、アクリル系樹脂とは、アクリル酸に由来する構造単位、メタクリル酸に由来する構造単位、アクリル酸エステルに由来する構造単位、及びメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体を指す。
即ち、本明細書中におけるアクリル系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「アクリル系単量体」とも称する)を含む単量体成分を重合して得られた重合体である。
アクリル系樹脂の原料の少なくとも一部であるアクリル系単量体は、単官能アクリル系単量体であってもよいし、多官能アクリル系単量体であってもよい。
単官能アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、一分子中にアクリロイル基を1つ含むアクリル酸エステル、一分子中にメタクリロイル基を1つ含むメタクリル酸エステル、等が挙げられる。
多官能アクリル系単量体としては、一分子中にアクリロイル基を2つ以上含むアクリル酸エステル、一分子中にメタクリロイル基を2つ以上含むメタクリル酸エステル、等が挙げられる。
上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。中でも、アルキルエステルの部位に含まれるアルキル基の炭素数が1〜4であるアクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが更に好ましく、アクリル酸メチルが特に好ましい。
上記メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。中でも、アルキルエステルの部位に含まれるアルキル基の炭素数が1〜4であるメタクリル酸アルキルエステルがより好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが更に好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
また、アクリル系樹脂は、反応性や生産性の観点から、単官能アクリル系単量体を含む単量体成分を重合して得られた重合体であることが好ましい。
アクリル系樹脂は、単官能アクリル系単量体を50質量%以上(好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上)含む単量体成分を重合して得られた重合体であることがより好ましい。
上記アクリル系樹脂として、特に好ましくは、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含む重合体であり、最も好ましくはメタクリル酸メチルの単独重合体(ポリメタクリル酸メチル、即ち、ポリメチルメタクリレート(PMMA))である。
上記アクリル系樹脂は、耐衝撃性の観点から、ゴムを含んでいてもよい。
ゴムの種類としては、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、ブタジエン−アクリル系ゴム、ブタジエン−スチレン系ゴム、シリコーン系ゴム、等が挙げられる。
上記アクリル系樹脂がゴムを含む場合、ゴムの種類は、適宜物性を考慮して選択すればよいが、硬度、耐衝撃性等の諸物性のバランスを考慮すると、ブタジエン系ゴム又はブタジエン−アクリル系ゴムが好ましい。
義歯床は、審美性の観点から、歯肉に近い色調に着色されていてもよい。義歯床の着色には、例えば、顔料、染料、色素などを使用すればよい。
義歯床は、全部床義歯(いわゆる総入れ歯)用の義歯床であってもよいし、局部床義歯(いわゆる部分入れ歯)用の義歯床であってもよい。
また、義歯床は、上顎用義歯の義歯床であってもよいし、下顎用義歯の義歯床であってもよいし、上顎用義歯床と下顎用義歯床とのセットであってもよい。
また、義歯床としては、後述する作製工程にて作製した義歯床を用いてもよく、CAD/CAMシステムにより作製された義歯床を入手して、その義歯床を用いてもよい。
また、3Dプリンターによって製造した義歯床を用いてもよい。
(人工歯)
人工歯としては、例えば、アクリル系樹脂製のレジン歯、硬質レジン歯などが挙げられる。また、人工歯は、充填剤等を含有していてもよい。
次に、本実施形態の製造方法における接着する工程について説明する。
<接着する工程>
接着する工程は、仮固定された人工歯を義歯床に接着する工程である(以下、「接着工程」とも称する)。人工歯を義歯床に接着するための接着剤(レジン)としては特に制限されないが、アクリル系レジンを用いることが好ましい。アクリル系レジンについては後述する。
すなわち、接着工程は、アクリル系レジンを用いて人工歯を義歯床に本接着する工程(以下、「本接着工程」とも称する)であることが好ましい。
なお、本明細書において、義歯床と人工歯との本接着とは、有床義歯としての使用が可能な程度に人工歯が義歯床に固定されていることをいう。
(本接着工程)
本接着工程は、アクリル系レジンを用いて人工歯を義歯床に本接着する工程である。
人工歯を義歯床に本接着する方法としては、例えばアクリル系レジンを用いて、義歯床の凹部(ソケット部)と人工歯との隙間にアクリル系レジンを注入し、注入されたアクリル系レジンを常温(0℃〜35℃)で重合させる、加熱して重合させる、又は光(例えば可視光)で重合させる方法が挙げられる。
ここで、義歯床の凹部とは、義歯床における人工歯が接着される窪み部分をいい、義歯床のソケット部ともいう。
(アクリル系レジン)
義歯床と人工歯との本接着に用いるアクリル系レジンとしては、義歯床と人工歯との本接着が可能なものであれば特に限定されず、市販品を用いてもよい。
アクリル系レジンとしては、例えば常温(0℃〜35℃)で重合するレジン、熱を加えて重合するレジン、光で重合するレジンが挙げられる。常温(0℃〜35℃)で重合するレジン又は熱を加えて重合するレジンとしては、例えば、比較的低い温度(好ましくは0℃〜70℃)で重合が進行するアクリル系レジン、70℃以上で重合が進行するアクリル系レジンが挙げられる。なお、以下において比較的低い温度(好ましくは0℃〜70℃)で重合が進行するアクリル系レジンを「特定アクリル系レジン」と称する。
アクリル系レジンとしては、ポリマー粉とモノマー液とを混合させたものを用いてもよく、ソケット部と人工歯との隙間にアクリル系レジンを注入する場合、混合直後の低粘度のアクリル系レジンを用いることが好ましい。ポリマー粉としては、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂が挙げられ、モノマー液としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステルが挙げられる。また、アクリル系レジンは、他の成分として、4−META(4−メタクリルオキシエチルトリメリット酸無水物)などの拡散促進モノマー、TBB(トリ−n−ブチルボラン)などの常温重合開始剤(あるいは、熱重合開始剤)、重合禁止剤、着色剤などを含んでいてもよい。
また、市販のアクリル系レジンとしては、例えば、アクロン(株式会社ジーシー製)、パラエクスプレスウルトラ(ヘレウスクルツァー社製)、山八歯科工業株式会社製リファインブライトなどが挙げられる。
−予備接着する工程−
本実施形態の製造方法において、接着工程は、人工歯を義歯床に予備接着する工程(以下、「予備接着工程」とも称する)を含んでもよい。
なお、本明細書において、予備接着とは、予備接着後に、人工歯と義歯床との位置関係が維持される程度に人工歯が義歯床に固定されていることをいう。
人工歯を義歯床に予備接着する方法としては、例えば、歯科用複合レジン又はアクリル系レジンを用いて、義歯床の凹部の少なくとも一部に上記レジン(歯科用複合レジン又はアクリル系レジン)を注入し、注入された上記レジンを常温(0℃〜35℃)で重合させる、加熱して重合させる、又は光(例えば可視光)で重合させる方法が挙げられる。
予備接着工程で用いるレジンとしては、歯科用複合レジン又はアクリル系レジンが挙げられる。
予備接着工程で用いるアクリル系レジンとしては、本接着工程で用いるアクリル系レジンと同様のものが挙げられるが、中でも、特定アクリル系レジン(比較的低い温度(好ましくは0℃〜70℃)で重合が進行するアクリル系レジン)が好ましい。歯科用複合レジンについては後述する。
接着工程が予備接着工程を有することにより、予備接着に用いるレジンの重合が進行するまで(例えば光重合性レジンの場合には光硬化後まで)歯の配列の修正や、形状調整が必要な歯がある場合には、その対象の歯の取り外し等を行うことができる。
また、予備接着工程は、本接着に用いるレジンの量をより適切に調整する観点から、人工歯を、義歯床の凹部(ソケット部)の少なくとも一部に予備接着する工程であることが好ましい。
(歯科用複合レジン)
歯科用複合レジンとしては、人工歯と義歯床との予備接着が可能なものであれば特に限定されず、例えば、成形修復材料、歯冠補綴用材料、歯科用充填剤などのコンポジットレジン(修復材料)、自己接着性セメントなどを用いることができる。
コンポジットレジンは、例えば、マトリックスレジンとしてジメタクリレートを含み、その他に無機フィラー、シランカップリング剤などを含んでいてもよい。ジメタクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート(Bis−GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)が挙げられる。
自己接着性セメントとしては、例えば、マトリックスレジンとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)や前述のジメタクリレートを含み、その他に接着性物質、フィラーなどを含んでいてもよい。
また、コンポジットレジンとしては、低粘度及び低弾性であるフロアブルタイプ、高粘度及び高弾性であるペーストタイプなどが挙げられるが、義歯床の凹部(ソケット部)への注入のしやすさの観点から、低粘度及び低弾性であるフロアブルタイプが好ましい。
また、人工歯の位置調整をより好適に可能とする点から、光重合性のコンポジットレジンを用いることが好ましい。光重合性のコンポジットレジンを用いることにより、義歯床のソケット部に注入されたコンポジットレジンが光照射前にて硬化しないため、取り扱い性に優れ、人工歯の位置調整を精度良く行いやすい。また、光重合性のコンポジットレジンを用いることにより、硬化後の接着(予備接着)は、接着力が比較的弱いため、容易に義歯床からの人工歯の取り外しが可能であり、また、人工歯を取り外した後、義歯床のソケット部にコンポジットレジンを注入して義歯床と人工歯との再度の接着(予備接着)を行いやすい。そのため、人工歯のシェード(色調)を間違えた場合や硬化操作時に人工歯の位置にズレが生じた場合などに、硬化後であっても容易に義歯床からの人工歯の取り外しが可能となるため、再度接着(予備接着)することによる位置調整を行いやすい。
光重合性のコンポジットレジンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどの重合性化合物、無機充填剤、光重合開始剤などを含むものであってもよく、さらに、重合促進剤を含むものであってもよい。
また、市販のコンポジットレジンとしては、例えば、ビューティフィルII(株式会社松風製)、レボテック(株式会社ジーシー製)などが挙げられる。
本実施形態の製造方法において、接着工程が予備接着工程を含む場合、接着工程は、更に仮固定材を除去する工程と、アクリル系レジンを用いて人工歯を義歯床に本接着する工程(本接着工程)と、を含む工程であることが好ましい。
接着工程が上記工程を含むことにより、人工歯を義歯床に本接着する際に、義歯床と人工歯とが予備接着されているため、人工歯の揺動が抑制されるとともに人工歯の浮き上がりが抑制される。
また、人工歯を義歯床に本接着する際に、ソケット部と人工歯との隙間にアクリル系レジンの量を確認しながらアクリル系レジンを注入できるため、上記隙間からアクリル系レジンがはみ出して人工歯や義歯床の周囲が汚染されることが抑制される。
なお、本接着工程は前述の通りである。
−仮固定材を除去する工程−
接着工程が予備接着工程を含む場合、仮固定材を除去する工程は、予備接着工程の後かつ本接着工程の前に実施してもよく、本接着工程の後に実施してもよい。なお、前者の態様は、後述の第2実施形態の接着工程Aに相当する。
特に、接着工程が予備接着工程と、仮固定材を除去する工程と、本接着工程とをこの順に有する工程(接着工程A)である場合、仮固定材を除去してから人工歯を義歯床に本接着するので、人工歯の隙間に注入されるレジンの量を確認しながらレジンを注入しやすい。
したがって、接着工程Aによれば、本接着に用いるレジンの量がより適切に調整されやすく、レジンが人工歯の隙間からさらにはみ出しにくくなる。したがって、接着工程Aを経て得られる有床義歯はより審美性に優れたものになりやすい。
仮固定材を除去する方法としては特に限定されない。例えば手で又は器具を用いて仮固定材を剥がす(除去する)ことができる。
また、除去しきれなかった仮固定材(残余部分)がある場合、かかる残余部分を除去する方法としては、例えば手で又は器具を用いて残余部分をかき出す方法;溶剤を用いて残余部分を溶出させる方法;これらの方法に超音波洗浄機を併用する方法;が挙げられる。
以下、予備接着工程を含む接着工程について具体的に説明する。なお、人工歯を義歯床に予備接着するレジンとして、特定アクリル系レジン(比較的低い温度(好ましくは0℃〜70℃)で重合が進行するアクリル系レジン)を用いた場合について説明する。
特定アクリル系レジンを用いて、人工歯を義歯床に予備接着するには、具体的には、義歯床のソケット部に特定アクリル系レジンを注入し、必要に応じて加熱を行なってもよい。これにより、人工歯は義歯床に接着(予備接着)される。
なお、特定アクリル系レジンを用いて人工歯を義歯床に接着(予備接着)した際に有床義歯としての使用が可能な程度に人工歯が義歯床に固定されていれば、予備接着工程を本接着工程とみなしてもよい。この場合、本接着を行う必要はない。
義歯床のソケット部に注入される特定アクリル系レジンの量は、特に限定されないが、人工歯を義歯床に接着(予備接着)することが可能な量であり、かつソケット部から特定アクリル系レジンがはみ出さない程度の量であることが好ましい。
人工歯を義歯床に予備接着させる態様としては、例えば義歯床の凹部(ソケット部)の少なくとも一部に特定アクリル系レジンを少量(例えば一滴分の量)注入し、人工歯を、義歯床の凹部の少なくとも一部に接着(例えばポイント接着)させる態様が挙げられる。
人工歯を義歯床に予備接着させた後、人工歯を義歯床に本接着させるためにソケット部と人工歯との隙間にアクリル系レジン(特定アクリル系レジンを含む)を注入する。このとき、義歯床と人工歯とが予備接着して固定されているため、人工歯の揺動が抑制されるとともに人工歯の浮き上がりが抑制される。
また、人工歯を義歯床に本接着する際に、ソケット部と人工歯との隙間にアクリル系レジンの量を確認しながらアクリル系レジンを注入できるため、上記隙間からアクリル系レジンがはみ出して人工歯や義歯床の周囲が汚染されることが抑制される。
アクリル系レジンは、ソケット部からあふれ出ない程度に表面張力で液面が盛り上がるまで、ソケット部と人工歯との隙間に注入されることが好ましい。アクリル系レジンは重合により収縮するため、外見上の問題が生じることが抑制され好ましい。
また、上記隙間に注入されるアクリル系レジンとしては、前述のように、ポリマー粉とモノマー液とを混合した直後の低粘度のアクリル系レジンを用いることが好ましい。
ソケット部と人工歯との隙間にアクリル系レジンを注入させた後、アクリル系レジンを常温(0℃〜35℃)で重合させる、加熱して重合させる、又は光(例えば可視光)重合させる。これにより、人工歯が義歯床に本接着され、有床義歯を製造することができる。
なお、仮固定材の除去は、人工歯が義歯床に予備接着された後に行ってもよく、本接着された後に行ってもよい。
また、人工歯の隙間からはみ出したアクリル系レジンがある場合には、例えば器具を用いてかき出す、削る、研磨する等の公知の方法でアクリル系レジンを除去すればよい。
(義歯床を作製する工程)
本発明に係る有床義歯の製造方法は、仮固定工程の前に、CAD/CAMシステムにより義歯床を作製する工程(以下、「作製工程」とも称する)を更に含んでいてもよい。
作製工程としては、CAD/CAMシステムにより義歯床を作製する公知の方法であってもよく、例えば、人工歯の三次元形状を示す人工歯形状データを取得する工程と、人工歯形状データを用いて有床義歯の三次元モデルを作成する工程と、有床義歯の三次元モデルから人工歯形状データに対応する形状部分を削除することにより、義歯床の三次元形状を示す義歯床形状データを作成する工程と、義歯床形状データに基づいて義歯床を製作する工程と、を含んでいればよい。
さらに、本発明に係る有床義歯の製造方法は、義歯床形状データに基づいてNC(numerical control)データを作成する工程を更に含み、義歯床を製作する工程において、NCデータが入力されたNC工作機械を用いて義歯床を製作することが好ましい。また、義歯床を製作する工程において、義歯床形状データが入力された三次元プリンタを用いて義歯床を製作してもよい。三次元プリンタは、CAD/CAMシステムを用いて作成された形状データに基づいて、一層ずつ材料を積層することにより造形する積層造形装置である。本工程において使用し得る三次元プリンタは、光造形方式、粉末焼結積層方式、熱溶解積層方式およびインクジェット方式のいずれの方式を採用するものであってもよい。
以下、本実施形態に係る有床義歯の製造方法の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態の製造方法は、接着工程が、アクリル系レジンを用いて人工歯を義歯床に本接着する工程(本接着工程)である態様である。
すなわち、第1実施形態の製造方法は、仮固定材を用いて人工歯を義歯床に仮固定する工程と、上記本接着工程と、を含む。
第1実施形態では、義歯床として下顎用義歯の義歯床を用いた例について説明する。
図1(a)に仮固定材が配置される前の有床義歯の斜視図を示し、図1(b)に仮固定する工程を説明するための斜視図を示し、図1(c)に本接着工程を説明するための斜視図を示す。
まず、複数の人工歯12を義歯床14のソケット部(不図示)に配置した有床義歯100を準備する。
次に、図1(b)に示すように、矩形状の仮固定材10を、有床義歯の歯肉部分(歯冠及び歯根の境界部分)を覆うようにして、歯肉の外側(唇側、頬側)に配置する。これにより、人工歯12は義歯床14に仮固定される(仮固定工程)。
次に、図1(c)に示すように、人工歯12を義歯床14に仮固定した状態で、アクリル系レジンが充填された注入器20を用いて、歯肉の内側(舌側)から、アクリル系レジンを義歯床14のソケット部と人工歯12との隙間に注入する。その後、アクリル系レジンを常温(0℃〜35℃)で重合させ、又は、加熱して若しくは光で重合させ、人工歯12を義歯床14に本接着する(本接着工程)。その後、仮固定材10を有床義歯から除去する(仮固定材を除去する工程)。以上のようにして、有床義歯が製造される。
第1実施形態の製造方法では、人工歯12が義歯床14に仮固定された状態(図1(b))で、歯の配列の修正、及び、形状調整が必要な歯がある場合には、その対象の歯を取り外し、再度同じ仮固定材10を用いて形状が調整された歯を同じ位置に固定(仮固定)することができる。
また、第1実施形態の製造方法では、人工歯12を義歯床14に仮固定した状態で本接着を行う。これにより、アクリル系レジンの注入によって、ソケット部内で人工歯の浮き上がりが抑制され、結果、浮き上がりを抑えた適切な位置で人工歯を本接着することができる。
よって、第1実施形態の製造方法によれば、人工歯を義歯床のソケット部に配置する際に、人工歯の位置調整を精度良く行える。
次に、本実施形態に係る有床義歯の製造方法の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第2実施形態)
第2実施形態の製造方法は、接着工程が、人工歯を義歯床に予備接着する工程と、仮固定材を除去する工程と、アクリル系レジンを用いて人工歯を義歯床に本接着する工程と、をこの順に含む工程(以下、「接着工程A」とも称する)である態様である。
すなわち、第2実施形態の製造方法は、仮固定材を用いて人工歯を義歯床に仮固定する工程と、上記接着工程Aと、を含む。
第2実施形態では、人工歯を義歯床に予備接着させるための特定アクリル系レジンとして、比較的低い温度(0℃〜70℃)で重合が進行する常温重合型アクリル系レジンを用いた例について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図2(a)に仮固定材が配置される前の有床義歯の斜視図を示し、図2(b)に仮固定する工程を説明するための斜視図を示し、図2(c)に図2(b)の有床義歯をXの方向から見た状態を示す斜視図を示し、図2(d)に予備接着工程を説明するための図2(c)のY部分を拡大した拡大概略図を示し、図2(e)に仮固定材を除去する工程を説明するための斜視図を示し、図2(f)に本接着工程を説明するための斜視図を示す。
まず、第1実施形態の製造方法と同様に、複数の人工歯12を義歯床14のソケット部(不図示)に配置した有床義歯100を準備し(図2(a))、その有床義歯100に仮固定材10を配置し、人工歯12を義歯床14に仮固定する(仮固定工程、図2(b))。
次に、図2(c)、(d)に示すように、人工歯12を義歯床14に仮固定した状態で、特定アクリル系レジン24が充填された注入器22を用いて、歯肉の内側(舌側)から、義歯床14のソケット部(不図示)に特定アクリル系レジン24を注入する。なお、本実施形態では特定アクリル系レジン24をソケット部に一滴流す。その後、特定アクリル系レジン24を必要に応じて加熱する。これにより、人工歯12が義歯床14のソケット部に予備接着される(予備接着工程)。
次に、図2(e)に示すように、仮固定材10を有床義歯から除去する(仮固定材を除去する工程)。その後、人工歯12と義歯床14との位置関係を保持したまま、第1実施形態と同様にして、アクリル系レジンが充填された注入器を用いて、歯肉の内側(舌側)から、義歯床14のソケット部と人工歯12との隙間にアクリル系レジンを注入する。その後、アクリル系レジンを常温(0℃〜35℃)で重合させ、又は、加熱して若しくは光で重合させ、人工歯12を義歯床14に本接着させる(本接着工程)。以上のようにして、有床義歯が製造される。
第2実施形態の製造方法では、人工歯12が義歯床14に仮固定された状態(図2(b))で歯の配列の修正、及び、形状調整が必要な歯がある場合には、その対象の歯を取り外し、再度同じ仮固定材10を用いて形状が調整された歯を同じ位置に固定(仮固定)することができる。また、人工歯12が義歯床14に予備接着された状態(図2(d))でも、特定アクリル系レジン24の重合が進行するまで上記の歯の配列の修正等を行うことができる。よって、人工歯を義歯床のソケット部に配置する際に、人工歯の位置調整を精度良く行える。
また、第2実施形態の製造方法では、人工歯12を義歯床14に予備接着した状態で本接着を行う。これにより、第1実施形態と同様に、浮き上がりを抑えた適切な位置で人工歯を本接着することができる。
さらに、第2実施形態の製造方法では、仮固定材を除去してから本接着を行うので、本接着に用いるレジンの量がより適切に調整されやすくなり、レジンが人工歯の隙間から、よりはみ出しにくくなる。このため、審美性に優れた有床義歯がより得られやすい。
以下、本実施形態の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
シリコーンパテ(タックシステムズ社製、商品名:モデルブロック)を用いて、矩形状の仮固定材(長さ150mm、幅10mm、厚さ4mm)を作製した。
CAD/CAMシステムを用いて作製したアクリル系樹脂製の義歯床の人工歯ソケット部(以下、単に「ソケット部」とも称する)に、人工歯としてアクリル系樹脂製のレジン歯を配置した。その後、上記仮固定材を、義歯床の歯肉部分(歯冠及び歯根の境界部分)を覆うようにして、歯肉の外側に配置し人工歯を義歯床に仮固定することにより、ソケット部と人工歯との位置関係を保持した。
その後、スキャナ(3Shape社製R700)及び画像処理ソフト(WENZEL Prazision GmbH製、Point Master)を用いて人工歯が仮固定された義歯床をスキャンして人工歯の位置調整の有無をチェックした。
上記チェックの結果、人工歯2本の位置修正を行う必要があったため、この状態で歯の角度を調整した。また人工歯4本の形状調整が必要だったため、対象の歯を一度外し、再度、同じ仮固定材を用いて、形状が調整された歯を同じ位置に仮固定した。
次に、アクリル系レジンとしてヘレウスクルツァー社製パラエクスプレスウルトラを用いて、歯肉の内側(舌側)から、人工歯の隙間に注入し、その後、アクリル系レジンを重合用の圧力鍋(東邦歯科産業株式会社製:プレッシャーポットS)を用いて55℃、2気圧の条件で30分重合させて人工歯と義歯床とを本接着させた。その後、仮固定材を除去した。これにより、有床義歯を作製した。なお、アクリル系レジンの注入は、シリンジを用いて行った。
〔実施例2〕
CAD/CAMシステムを用いて作製したアクリル系樹脂製の義歯床のソケット部に、人工歯としてアクリル系樹脂製のレジン歯を配置した。その後、実施例1と同じ仮固定材を、義歯床の歯肉部分(歯冠及び歯根の境界部分)を覆うようにして、歯肉の外側に配置し人工歯を義歯床に仮固定することにより、ソケット部と人工歯との位置関係を保持した。
その後、スキャナ(3Shape社製R700)及び画像処理ソフト(WENZEL Prazision GmbH製、Point Master)を用いて人工歯が仮固定された義歯床をスキャンして人工歯の位置調整の有無をチェックした。
上記チェックの結果、人工歯2本の位置修正を行う必要があったため、この状態で歯の角度を調整した。また人工歯1本の形状調整が必要だったため、対象の歯を一度外し、再度、同じ仮固定材を用いて、形状が調整された歯を同じ位置に仮固定した。
特定アクリル系レジンとして山八歯科工業株式会社製リファインブライト(急速硬化性常温重合レジン)を用いて、ソケット部と人工歯との隙間に特定アクリル系レジンを注入し、その後、常温(25℃)で4分放置することにより特定アクリル系レジンを重合(硬化)させて人工歯をソケット部に予備接着させた。
次に、仮固定材を除去してから、アクリル系レジンとしてヘレウスクルツァー社製パラエクスプレスウルトラを用いて、歯肉の内側(舌側)から、人工歯の隙間に注入し、その後、アクリル系レジンを重合用の圧力鍋(東邦歯科産業株式会社製:プレッシャーポットS)を用いて55℃、2気圧の条件で30分重合させて人工歯と義歯床とを本接着させた。これにより、有床義歯を作製した。なお、特定アクリル系レジンの注入及びアクリル系レジンの注入は、シリンジを用いて行った。
〔比較例1〕
CAD/CAMシステムを用いて作製したアクリル系樹脂製の義歯床のソケット部に、アクリル系レジンとしてヘレウスクルツァー社製パラエクスプレスウルトラを滴下した後、人工歯としてアクリル系樹脂製のレジン歯を、アクリル系レジンが滴下された複数の上記ソケット部に静置した。人工歯が浮き上がるのを防ぐため、接着剤が硬化するまで指で押さえ続け、有床義歯を作製した。
〔人工歯の位置調整〕
実施例1、2と比較例1とを比べることにより、人工歯の位置調整のしやすさを評価した。
実施例1、2に示す手順で有床義歯を作製した場合、仮固定材により人工歯が義歯床に仮固定されるため、歯の位置修正を容易に行うことができた。また、歯の形状調整が必要な場合にはすぐに人工歯を義歯床から取り外し、形状調整された歯を容易に再配列することができた。
したがって、実施例1、2に示す手順で有床義歯を作製すると、人工歯を義歯床ソケット部に配置する際に、人工歯の位置調整を精度良く行えることがわかった。また、実施例1、2に示す手順で得られた有床義歯は咬合の高さが精度良く調整されたものであった。
また、実施例2に示す手順で有床義歯を作製すると、アクリル系レジンが人工歯の隙間からはみ出すことがより抑制された。したがって、人工歯を義歯床に予備接着することにより、より審美性に優れた有床義歯が得られることがわかった。
一方、比較例1に示す手順で有床義歯を作製した場合、義歯床のソケット部からの接着剤のはみ出しが発生したり、指で人工歯を押さえ続けている間に人工歯のズレ(位置のズレ)が生じたりするという問題が生じた。
〔歯の修正時間〕
実施例1、2と比較例1とを比べることにより、歯の修正時間を評価した。
実施例1では、人工歯2本の位置修正及び人工歯4本の形状調整に要した時間は4分(位置修正1分+形状修正3分)であった。また、実施例2では、人工歯2本の位置修正及び人工歯1本の形状調整に要した時間は4分(位置修正1分+形状修正3分)であり、その後、予備接着を行ってもさらに5分(特定アクリル系レジンの注入1分+特定アクリル系レジンの重合4分)を要しただけでであった。
一方、比較例1では、形状調整が必要な人工歯を義歯床から取り外そうと試みたがいすれの歯も取り外すことができなかった。この場合、再度義歯床を作製し人工歯を義歯床に接着する必要があるが、その時間は、ミリング(切削)を含めた時間になるので長くなる。具体的には、1回の修正時間、すなわち再度義歯床を作製し人工歯を義歯床に本接着するまでの時間は約3時間となる。仮に義歯床を2回作製し直す場合には約3時間×2回=約6時間となる。
このように、実施例1では、歯の位置修正及び形状調整に要する時間が数分(4分)であり、実施例2では予備接着を行う時間を含めても上記時間は9分であった。これに対し比較例1では歯の形状調整を行おうとすると数時間も要する。
したがって、実施例1、2の方法で有床義歯を作製することにより、製造時間が短縮されることがわかった。
10 仮固定材、12 人工歯、14 義歯床、20 注入器、22 注入器、24 特定アクリル系レジン、100 有床義歯

Claims (6)

  1. 仮固定材を用いて人工歯を義歯床に仮固定する工程と、
    仮固定された前記人工歯を前記義歯床に接着する工程と、
    を含む有床義歯の製造方法。
  2. 前記接着する工程は、アクリル系レジンを用いて前記人工歯を前記義歯床に本接着する工程である請求項1に記載の有床義歯の製造方法。
  3. 前記接着する工程は、前記人工歯を前記義歯床に予備接着する工程と、
    前記仮固定材を除去する工程と、
    アクリル系レジンを用いて前記人工歯を前記義歯床に本接着する工程と、
    を含む工程である請求項1に記載の有床義歯の製造方法。
  4. 前記予備接着する工程は、前記人工歯を、前記義歯床の凹部の少なくとも一部に予備接着する工程である、請求項3に記載の有床義歯の製造方法。
  5. 前記仮固定材は、25℃で変形する粘着性材料である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有床義歯の製造方法。
  6. 前記仮固定する工程の前に、CAD/CAMシステムにより前記義歯床を作製する工程を更に含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の有床義歯の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023042913A1 (ja) * 2021-09-17 2023-03-23 クラレノリタケデンタル株式会社 義歯の製造方法

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