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JP2018088735A - ブレーキ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回生制動によってスリップが発生したときに車両挙動を安定に保つことができるブレーキ制御装置を提供する。【解決手段】第1のECU27は、モータ・ジェネレータ55による回生制動中に、スリップ量検出器56の検出値に基づいて前輪2L,2Rがスリップしていることが検出されている間、モータ・ジェネレータ55の回生制動量を所定量減少させたのち、その回生制動量を所定時間保持するスリップ抑制制御を繰り返して行う回生スリップ制御手段を有している。回生スリップ制御手段は、前輪2L,2Rがスリップしていることが検出されたときの回生制動の所定減少量を、その後のスリップ抑制制御での回生制動の所定減少量よりも大きく、かつ、旋回量検出器57により検出された前輪2L,2Rの旋回量に応じて変化させて設定している。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば自動車等の車両に好適に用いられるブレーキ制御装置に関する。
例えば電気自動車やハイブリッド自動車等、走行用(駆動用)の回生電動機(モータ・ジェネレータ、発電電動機)が搭載された車両では、摩擦ライニングによる摩擦制動力と回生電動機による回生制動力との配分を制御し、車両全体で所望の制動力を得るように構成している(例えば、特許文献1参照)。
特開2015−146657号公報
特許文献1による従来技術では、車体速と駆動輪の車輪速とからスリップを検知して、スリップが発生した場合には予め設定された回生制動量を減少させている。この場合、直進制動時にスリップが発生すると予め設定された回生制動量を減少させている。しかし、直進制動時に比較して、例えば旋回制動時にスリップが発生した場合には、旋回制動時に発生する横力分だけスリップの収束が遅くなり、車両挙動が不安定となったり、制動距離が増加したりする虞がある。
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、旋回時のスリップの収束を速やかに行うことができるブレーキ制御装置を提供する。
上述した課題を解決するため、本発明は、車両に設けられる回生電動機の回生制動量を制御するとともに、各車輪に設けられ液圧を受けて移動する摩擦部材を有する摩擦制動装置を制御することにより前記車両を制動するブレーキ制御装置であって、前記車輪のスリップ量を検出するスリップ量検出手段と、前記回生電動機による回生制動中に、前記スリップ量検出手段の検出値がスリップ閾値を超えたときに、前記車輪がスリップしていると判断し、前記回生制動量を所定量減少させたのち、減少させた回生制動量を所定時間保持するスリップ抑制制御を繰り返して行う回生スリップ制御手段と、を有し、該回生スリップ制御手段は、前記車輪がスリップしていることが検出されたときの第1の回生制動の所定減少量を、その後の所定保持時間経過時の前記スリップ抑制制御での第2の回生制動の所定減少量よりも大きく、かつ、前記車両の旋回量に応じて変化させて設定することを特徴としている。
本発明によれば、旋回量に応じて回生制動の減少量が増加するので、スリップの収束を速やかに行うことができ、車両挙動を安定に保つと共に制動距離を短くすることができる。
第1の実施の形態によるブレーキ制御装置が搭載された車両の概念図である。 図1中の電動倍力装置、液圧供給装置等を示す構成図である。 直進制動時、旋回制動時に駆動輪にかかる制動力とグリップ限界を示す説明図である。 ブレーキ制御装置による制御処理を示す流れ図である。 旋回量に対する回生制動量の減少量の一例を示す特性線図である。 第1の実施の形態による駆動輪回生制動量と駆動輪スリップ量の時間変化の一例を示す特性線図である。 第2の実施の形態による回生制動量の保持時間を可変とした場合の駆動輪回生制動量と駆動輪スリップ量の時間変化の一例を示す特性線図である。
以下、本発明の実施の形態によるブレーキ制御装置を、電気自動車やハイブリッド自動車等の回生電動機(モータ・ジェネレータ)が搭載された4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図6は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、例えば左,右の前輪2L,2Rと左,右の後輪3L,3Rとが設けられている。左,右の前輪2L,2Rには、それぞれ前輪側ホイールシリンダ4L,4Rが設けられ、左,右の後輪3L,3Rには、それぞれ後輪側ホイールシリンダ5L,5Rが設けられている。
これらのホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rは、液圧式のディスクブレーキまたはドラムブレーキのシリンダを構成し、夫々の車輪(前輪2L,2Rおよび後輪3L,3R)毎に制動力を付与するものである。即ち、ホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rは、液圧を受けて移動する摩擦ライニング(摩擦パッドまたはブレーキシュー)と共に摩擦制動装置6(例えば、ディスクブレーキ、ドラムブレーキ)を構成するものである。摩擦制動装置6は、各車輪2L,2R,3L,3Rに設けられ、ホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rにより摩擦ライニングを車輪2L,2R,3L,3Rと共に回転する回転部材(ディスクまたはドラム)に押付けることにより、摩擦ライニングと回転部材との摩擦による車両の制動を行うことができる。
車体1のフロントボード側にはブレーキペダル7が設けられている。ブレーキペダル7は、車両のブレーキ操作時に運転者(ドライバ)によって図1および図2中の矢示A方向に踏込み操作される。ブレーキペダル7には、ブレーキスイッチ7Aと操作量検出センサ8が設けられ、ブレーキスイッチ7Aは、車両のブレーキ操作の有無を検出して、例えばブレーキランプ(図示せず)を点灯,消灯させるものである。また、操作量検出センサ8は、ブレーキペダル7の踏込み操作量(ストローク量)または踏力を検出し、その検出信号を後述のECU27,35、車両データバス29等に出力する。ブレーキペダル7が踏込み操作されると、マスタシリンダ9には後述の電動倍力装置17を介してブレーキ液圧が発生する。
図2に示すように、マスタシリンダ9は、一側が開口端となり他側が底部となって閉塞された有底筒状のシリンダ本体10を有している。このシリンダ本体10には、後述のリザーバ15内に連通する第1,第2のサプライポート10A,10Bが設けられ、第1のサプライポート10Aは、後述するブースタピストン19の摺動変位により第1の液圧室12Aに対して連通,遮断される。一方、第2のサプライポート10Bは、後述する第2のピストン11により第2の液圧室12Bに対して連通,遮断される。
シリンダ本体10は、その開口端側が後述する電動倍力装置17のブースタハウジング18に複数の取付ボルト(図示せず)等を用いて着脱可能に固着されている。マスタシリンダ9は、シリンダ本体10と、第1のピストン(後述のブースタピストン19と入力ロッド20)および第2のピストン11と、第1の液圧室12Aと、第2の液圧室12Bと、第1の戻しばね13と、第2の戻しばね14とを含んで構成されている。ここで、図2においては、電気回路の信号線を途中に2本の斜め線を付した細線で示しており、また、電気回路の電源線を途中に2本の斜め線を付した太線で示しており、液圧配管を途中に2本の斜め線を付していない細線で示している。
この場合、マスタシリンダ9は、前記第1のピストンが後述のブースタピストン19と入力ロッド20とにより構成され、シリンダ本体10内に形成される第1の液圧室12Aは、第2のピストン11とブースタピストン19(および入力ロッド20)との間に画成されている。第2の液圧室12Bは、シリンダ本体10の底部と第2のピストン11との間でシリンダ本体10内に画成されている。
第1の戻しばね13は、第1の液圧室12A内に位置してブースタピストン19と第2のピストン11との間に配設され、ブースタピストン19をシリンダ本体10の開口端側に向けて付勢している。第2の戻しばね14は、第2の液圧室12B内に位置してシリンダ本体10の底部と第2のピストン11との間に配設され、第2のピストン11を第1の液圧室12A側に向けて付勢している。
マスタシリンダ9のシリンダ本体10は、ブレーキペダル7の踏込み操作に応じてブースタピストン19(入力ロッド20)と第2のピストン11とがシリンダ本体10の底部に向かって変位し、第1,第2のサプライポート10A,10Bを遮断したときに、第1,第2の液圧室12A,12B内のブレーキ液によりブレーキ液圧を発生させる。一方、ブレーキペダル7の操作を解除した場合には、ブースタピストン19(および入力ロッド20)と第2のピストン11とが第1,第2の戻しばね13,14によりシリンダ本体10の開口部に向かって矢示B方向に変位していくときに、リザーバ15からブレーキ液の補給を受けながら第1,第2の液圧室12A,12B内の液圧を解除していく。
マスタシリンダ9のシリンダ本体10には、内部にブレーキ液が収容されている作動液タンクとしてのリザーバ15が設けられ、該リザーバ15は、シリンダ本体10内の液圧室12A,12Bにブレーキ液を給排する。即ち、第1のサプライポート10Aがブースタピストン19により第1の液圧室12Aに連通され、第2のサプライポート10Bが第2のピストン11により第2の液圧室12Bに連通している間は、これらの液圧室12A,12B内にリザーバ15内のブレーキ液が給排される。
一方、第1のサプライポート10Aがブースタピストン19により第1の液圧室12Aから遮断され、第2のサプライポート10Bが第2のピストン11により第2の液圧室12Bから遮断されたときは、これらの液圧室12A,12B内に対するリザーバ15内のブレーキ液の給排が断たれる。このため、マスタシリンダ9の第1,第2の液圧室12A,12B内には、ブレーキ操作に伴ってブレーキ液圧が発生し、このブレーキ液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管16A,16Bを介して後述の液圧供給装置33(即ち、ESC33)に送られる。
車両のブレーキペダル7とマスタシリンダ9との間には、ブレーキペダル7の操作力を増大させるブースタとして、または、ブレーキ装置としての電動倍力装置17が設けられている。この電動倍力装置17は、操作量検出センサ8の出力に基づいて後述の電動アクチュエータ21(の電動モータ22)を駆動制御することにより、マスタシリンダ9内に発生するブレーキ液圧を可変に制御するものである。
電動倍力装置17は、車体のフロントボードである車室前壁に固定して設けられるブースタハウジング18と、該ブースタハウジング18に移動可能に設けられ後述の入力ロッド20に対して相対移動可能なピストンとしてのブースタピストン19と、該ブースタピストン19をマスタシリンダ9の軸方向に進退移動させ当該ブースタピストン19にブースタ推力を付与するアクチュエータとしての後述の電動アクチュエータ21とを含んで構成されている。
ブースタピストン19は、マスタシリンダ9のシリンダ本体10内に開口端側から軸方向に摺動可能に挿嵌された筒状部材により構成されている。ブースタピストン19の内周側には、ブレーキペダル7の操作に従って直接的に押動され、マスタシリンダ9の軸方向(即ち、矢示A,B方向)に進退移動する入力部材としての入力ロッド(入力ピストン)20が摺動可能に挿嵌されている。入力ロッド20は、ブースタピストン19と一緒にマスタシリンダ9の第1のピストンを構成し、入力ロッド20の後側(一側)端部には、ブレーキペダル7が連結されている。シリンダ本体10内は、第2のピストン11とブースタピストン19および入力ロッド20との間に第1の液圧室12Aが画成されている。
ブースタハウジング18は、後述の減速機構24等を内部に収容する筒状の減速機ケース18Aと、該減速機ケース18Aとマスタシリンダ9のシリンダ本体10との間に設けられブースタピストン19を軸方向に摺動変位可能に支持した筒状の支持ケース18Bと、減速機ケース18Aを挟んで支持ケース18Bとは軸方向の反対側(軸方向一側)に配置され減速機ケース18Aの軸方向一側の開口を閉塞する段付筒状の蓋体18Cとにより構成されている。減速機ケース18Aの外周側には、後述の電動モータ22を固定的に支持するための支持板18Dが設けられている。
入力ロッド20は、蓋体18C側からブースタハウジング18内に挿入され、ブースタピストン19内を第1の液圧室12Aに向けて軸方向に延びている。ブースタピストン19と入力ロッド20との間には、一対の中立ばね20A,20Bが介装されている。ブースタピストン19および入力ロッド20は、中立ばね20A,20Bのばね力によって中立位置に弾性的に保持され、これらの軸方向の相対変位に対して中立ばね20A,20Bのばね力が作用する構成となっている。
入力ロッド20の先端側(軸方向他側)端面は、ブレーキ操作時に第1の液圧室12A内に発生する液圧をブレーキ反力として受圧し、入力ロッド20はこれをブレーキペダル7に伝達する。これにより、車両の運転者にはブレーキペダル7を介して適正な踏み応えが与えられ、良好なペダルフィーリング(ブレーキの効き)を得ることができる。この結果、ブレーキペダル7の操作感を向上することができ、ペダルフィーリング(踏み応え)を良好に保つことができる。また、入力ロッド20は、ブースタピストン19に対して所定量前進したときに、該ブースタピストン19に当接してブースタピストン19を前進させることができる構造となっている。この構造により、後述する電動アクチュエータ21や第1のECU27が失陥した場合に、ブレーキペダル7への踏力によりブースタピストン19を前進させてマスタシリンダ9に液圧を発生させることが可能となっている。
電動倍力装置17の電動アクチュエータ21は、ブースタハウジング18の減速機ケース18Aに支持板18Dを介して設けられた電動モータ22と、該電動モータ22の回転を減速して減速機ケース18A内の筒状回転体23に伝えるベルト等の減速機構24と、筒状回転体23の回転をブースタピストン19の軸方向変位(進退移動)に変換するボールネジ等の直動機構25とにより構成されている。ブースタピストン19と入力ロッド20は、それぞれの前端部(軸方向他側の端部)をマスタシリンダ9の第1の液圧室12Aに臨ませ、ブレーキペダル7から入力ロッド20に伝わる踏力(推力)と電動アクチュエータ21からブースタピストン19に伝わるブースタ推力とにより、マスタシリンダ9内にブレーキ液圧を発生させる。
即ち、電動倍力装置17のブースタピストン19は、操作量検出センサ8の出力(即ち、制御指令)に基づいて電動アクチュエータ21により駆動され、マスタシリンダ9内にブレーキ液圧(マスタシリンダ圧)を発生させるポンプ機構を構成している。また、ブースタハウジング18の支持ケース18B内には、ブースタピストン19を制動解除方向(図1および図2中の矢示B方向)に常時付勢する戻しばね26が設けられている。ブースタピストン19は、ブレーキ操作の解除時に電動モータ22が逆向きに回転されると共に、戻しばね26の付勢力により図2に示す初期位置まで矢示B方向に戻されるものである。
電動モータ22は、例えばDCブラシレスモータを用いて構成され、電動モータ22には、レゾルバと呼ばれる回転センサ22Aと、モータ電流を検出する電流センサ(図示せず)とが設けられている。回転センサ22Aは、電動モータ22(モータ軸)の回転位置(回転角)を検出し、その検出信号を第1の制御回路であるコントロールユニット(以下、第1のECU27という)に出力する。第1のECU27は、この回転位置信号により、フィードバック制御を行う。また、回転センサ22Aは、検出した電動モータ22の回転位置に基づいて車体に対するブースタピストン19の絶対変位を検出する回転検出手段としての機能を備えている。
さらに、回転センサ22Aは、操作量検出センサ8と共に、ブースタピストン19と入力ロッド20との相対変位量を検出する変位検出手段を構成し、これらの検出信号は、第1のECU27に送出される。なお、前記回転検出手段としては、レゾルバ等の回転センサ22Aに限らず、絶対変位(角度)を検出できる回転型のポテンショメータ等により構成してもよい。減速機構24は、ベルト等に限らず、例えば歯車減速機構等を用いて構成してもよい。また、回転運動を直線運動に変化する直動機構25は、例えばラック・ピニオン機構等で構成することもできる。さらに、減速機構24は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、筒状回転体23にモータ軸を一体に設け、電動モータのステータを筒状回転体23の周囲に配置して、電動モータにより直接、筒状回転体23を回転させるようにしてもよい。
第1のECU27は、例えばマイクロコンピュータ等からなっており、電動倍力装置17の一部を構成している。第1のECU27は、後述する第2のECU35と共に摩擦制動装置6を制御する制御手段(摩擦制動制御手段)となるものである。具体的には、第1のECU27は、電動倍力装置17の電動アクチュエータ21(電動モータ22)を電気的に駆動制御する第1の制御回路(電動倍力装置用コントローラ)を構成している。
第1のECU27の入力側は、ブレーキペダル7の操作の有無を検出するブレーキスイッチ7Aと、ブレーキペダル7の操作量または踏力を検出する操作量検出センサ8と、電動モータ22の回転センサ22Aおよび前記電流センサと、例えばL−CANと呼ばれる通信が可能な車載の信号線28と、他の車両機器のECU(例えば後述する第3のECU54)からの信号の授受を行う車両データバス29等とに接続されている。車両データバス29は、車両に搭載されたV−CANと呼ばれるシリアル通信部であり、車載向けの多重通信を行うものである。また、第1のECU27は、電源ライン30と接続され、該電源ライン30を通じてバッテリ31(図1参照)からの電力が給電される。
マスタシリンダ9のブレーキ液圧を検出する液圧検出手段としての液圧センサ32は、例えばシリンダ側液圧配管16A内の液圧を検出するもので、マスタシリンダ9からシリンダ側液圧配管16Aを介して後述のESC33に供給されるブレーキ液圧を検出する。本実施の形態において、液圧センサ32は、後述の第2のECU35に電気的に接続されると共に、液圧センサ32による検出信号は、第2のECU35から信号線28を介して第1のECU27にも通信により送られる。なお、液圧センサ32は、マスタシリンダ9のブレーキ液圧を検出することができれば、マスタシリンダ9に直接取付けられるようにしてもよく、また、第2のECU35を介さずに検出信号を直接第1のECU27に入力されるように構成してもよい。
第1のECU27の出力側は、電動モータ22、車載の信号線28、車両データバス29等に接続されている。そして、第1のECU27は、操作量検出センサ8や液圧センサ32からの検出信号等に従って電動アクチュエータ21によりマスタシリンダ9内に発生させるブレーキ液圧を可変に制御すると共に、電動倍力装置17が正常に動作しているか否か等を判別する機能も有している。
ここで、電動倍力装置17においては、ブレーキペダル7が踏込み操作されると、マスタシリンダ9のシリンダ本体10内に向けて入力ロッド20が前進し、このときの動きが操作量検出センサ8によって検出される。第1のECU27は、操作量検出センサ8からの検出信号により電動モータ22に起動指令を出力して電動モータ22を回転駆動し、その回転が減速機構24を介して筒状回転体23に伝えられると共に、筒状回転体23の回転は、直動機構25によりブースタピストン19の軸方向変位に変換される。
このとき、ブースタピストン19は、マスタシリンダ9のシリンダ本体10内に向けて入力ロッド20と一体的に前進し、ブレーキペダル7から入力ロッド20に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ21からブースタピストン19に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ9の第1,第2の液圧室12A,12B内に発生する。また、車両全体としての制動力を、摩擦制動装置6の摩擦ライニングによる摩擦制動力と後述するモータ・ジェネレータ55(図1参照)による回生制動力とに配分する場合、即ち、摩擦制動力(摩擦ブレーキ)と回生制動力(回生ブレーキ)との両制動力で車両全体の制動力を得る場合は、回生制動力に対応する分、ブレーキ液圧が低くなるように、電動アクチュエータ21によりブースタピストン19を変位させる。
なお、第1のECU27は、液圧センサ32からの検出信号を信号線28から受取ることによりマスタシリンダ9に発生した液圧を監視することができ、電動倍力装置17が正常に動作しているか否かを判別することができる。
次に、車両の各車輪(前輪2L,2Rおよび後輪3L,3R)側に配設されたホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rとマスタシリンダ9との間に設けられた液圧供給装置33(即ち、ESC33)について説明する。
ESC33は、電動倍力装置17によりマスタシリンダ9(第1,第2の液圧室12A,12B)内に発生したブレーキ液圧を、車輪毎のホイールシリンダ圧として可変に制御して各車輪(前輪2L,2R、後輪3L,3R)のホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rに個別に供給するホイールシリンダ圧制御装置を構成している。
即ち、ESC33は、各種のブレーキ制御(例えば、前輪2L,2R、後輪3L,3R毎に制動力を配分する制動力配分制御、アンチロックブレーキ制御、車両安定化制御等)をそれぞれ行う場合に、必要なブレーキ液圧をマスタシリンダ9からシリンダ側液圧配管16A,16B等を介してホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rに供給するものである。
ここで、ESC33は、マスタシリンダ9(第1,第2の液圧室12A,12B)からシリンダ側液圧配管16A,16Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管部34A,34B,34C,34Dを介してホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rに分配、供給する。これにより、前述の如く車輪(前輪2L,2R、後輪3L,3R)毎にそれぞれ独立した制動力が個別に付与される。ESC33は、後述の各制御弁40,40′,41,41′,42,42′,45,45′,46,46′,53,53′と、液圧ポンプ47,47′を駆動する電動モータ48と、液圧制御用リザーバ52,52′とを含んで構成されている。
第2のECU35は、例えばマイクロコンピュータ等からなっており、ESC33の一部を構成している。第2のECU35は、第1のECU27と共に、摩擦制動装置6を制御する制御手段(摩擦制動制御手段)となるものである。具体的には、第2のECU35は、ESC33を電気的に駆動制御する第2の制御回路(液圧供給装置用コントローラ)を構成している。第2のECU35の入力側は、液圧センサ32、信号線28、車両データバス29、後述のスリップ量検出器56等に接続されている。第2のECU35の出力側は、後述の各制御弁40,40′,41,41′,42,42′,45,45′,46,46′,53,53′、電動モータ48、信号線28、車両データバス29等に接続されている。また、第2のECU35は、電源ライン30と接続され、該電源ライン30を通じてバッテリ31(図1参照)からの電力が給電される。
ここで、第2のECU35は、ESC33の各制御弁40,40′,41,41′,42,42′,45,45′,46,46′,53,53′、電動モータ48等を後述の如く個別に駆動制御する。これによって、第2のECU35は、ブレーキ側配管部34A〜34Dからホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rに供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御を、ホイールシリンダ4L,4R、5L,5R毎に個別に行うものである。
即ち、第2のECU35は、ESC33を作動制御することにより、例えば車両の制動時に接地荷重等に応じて各車輪(前輪2L,2Rおよび後輪3L,3R)に適切に制動力を配分する制動力配分制御、制動時に各車輪2L,2R,3L,3Rの制動力を自動的に調整して車輪2L,2R,3L,3Rのロックを防止するアンチロックブレーキ制御、走行中の車輪2L,2R,3L,3Rの横滑りを検知してブレーキペダル7の操作量に拘わらず各車輪2L,2R,3L,3Rに付与する制動力を適宜自動的に制御しつつ、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定化制御、坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御、発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御、先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御、車両前方または後方の障害物との衡突を回避する障害物回避制御等を実行することができる。
ESC33は、マスタシリンダ9の一方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管16A)に接続されて左前輪(FL)側のホイールシリンダ4Lと右後輪(RR)側のホイールシリンダ5Rとに液圧を供給する第1液圧系統36と、他方の出力ポート(即ち、シリンダ側液圧配管16B)に接続されて右前輪(FR)側のホイールシリンダ4Rと左後輪(RL)側のホイールシリンダ5Lとに液圧を供給する第2液圧系統36′との2系統の液圧回路を備えている。ここで、第1液圧系統36と第2液圧系統36′とは、同様な構成を有しているため、以下の説明は第1液圧系統36についてのみ行い、第2液圧系統36′については各構成要素に符号に「′」を付し、それぞれの説明を省略する。
ESC33の第1液圧系統36は、シリンダ側液圧配管16Aの先端側に接続されたブレーキ管路37を有し、ブレーキ管路37は、第1管路部38および第2管路部39の2つに分岐して、ホイールシリンダ4L,5Rにそれぞれ接続されている。ブレーキ管路37および第1管路部38は、ブレーキ側配管部34Aと共にホイールシリンダ4Lに液圧を供給する管路を構成し、ブレーキ管路37および第2管路部39は、ブレーキ側配管部34Dと共にホイールシリンダ5Rに液圧を供給する管路を構成している。
ブレーキ管路37には、ブレーキ液圧の供給制御弁40が設けられ、該供給制御弁40は、ブレーキ管路37を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第1管路部38には増圧制御弁41が設けられ、該増圧制御弁41は、第1管路部38を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。第2管路部39には増圧制御弁42が設けられ、該増圧制御弁42は、第2管路部39を開,閉する常開の電磁切換弁により構成されている。
一方、ESC33の第1液圧系統36は、ホイールシリンダ4L,5R側と液圧制御用リザーバ52とをそれぞれ接続する第1,第2の減圧管路43,44を有し、これらの減圧管路43,44には、それぞれ第1,第2の減圧制御弁45,46が設けられている。第1,第2の減圧制御弁45,46は、減圧管路43,44をそれぞれ開,閉する常閉の電磁切換弁により構成されている。
また、ESC33は、液圧源である液圧発生手段としての液圧ポンプ47を備え、該液圧ポンプ47は電動モータ48により回転駆動される。ここで、電動モータ48は、第2のECU35からの給電により駆動され、給電停止には液圧ポンプ47と一緒に回転停止される。液圧ポンプ47の吐出側は、逆止弁49を介してブレーキ管路37のうち供給制御弁40よりも下流側となる位置(即ち、第1管路部38と第2管路部39とが分岐する位置)に接続されている。液圧ポンプ47の吸込み側は、逆止弁50,51を介して液圧制御用リザーバ52に接続されている。
液圧制御用リザーバ52は、余剰のブレーキ液を一時的に貯留するために設けられ、ブレーキシステム(ESC33)のアンチロックブレーキ制御時に限らず、これ以外のブレーキ制御時にもホイールシリンダ4L,5Rのシリンダ室(図示せず)から流出してくる余剰のブレーキ液を一時的に貯留するものである。また、液圧ポンプ47の吸込み側は、逆止弁50および常閉の電磁切換弁である加圧制御弁53を介してマスタシリンダ9のシリンダ側液圧配管16A(即ち、ブレーキ管路37のうち供給制御弁40よりも上流側となる位置)に接続されている。
ESC33を構成する各制御弁40,40′,41,41′,42,42′,45,45′,46,46′,53,53′、および、液圧ポンプ47,47′を駆動する電動モータ48は、第2のECU35から出力される制御信号に従ってそれぞれの動作制御が予め決められた手順で行われる。
即ち、ESC33の第1液圧系統36は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時において、電動倍力装置17によってマスタシリンダ9で発生した液圧を、ブレーキ管路37および第1,第2管路部38,39を介してホイールシリンダ4L,5Rに直接供給する。例えば、アンチロックブレーキ制御等を実行する場合は、増圧制御弁41,42を閉じてホイールシリンダ4L,5Rの液圧を保持し、ホイールシリンダ4L,5Rの液圧を減圧するときには、減圧制御弁45,46を開いてホイールシリンダ4L,5Rの液圧を液圧制御用リザーバ52に逃がすように排出する。
また、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ホイールシリンダ4L,5Rに供給する液圧を増圧するときには、供給制御弁40を閉弁した状態で電動モータ48により液圧ポンプ47を作動させ、該液圧ポンプ47から吐出したブレーキ液を第1,第2管路部38,39を介してホイールシリンダ4L,5Rに供給する。このとき、加圧制御弁53が開弁されていることにより、マスタシリンダ9側から液圧ポンプ47の吸込み側へとリザーバ15内のブレーキ液が供給される。
このように、第2のECU35は、車両運転情報等に基づいて供給制御弁40、増圧制御弁41,42、減圧制御弁45,46、加圧制御弁53および電動モータ48(即ち、液圧ポンプ47)の作動を制御し、ホイールシリンダ4L,5Rに供給する液圧を適宜に保持したり、減圧または増圧したりする。これによって、前述した制動力分配制御、車両安定化制御、ブレーキアシスト制御、アンチロックブレーキ制御、トラクション制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
一方、電動モータ48(即ち、液圧ポンプ47)を停止した状態で行う通常の制動モードでは、供給制御弁40および増圧制御弁41,42を開弁させ、減圧制御弁45,46および加圧制御弁53を閉弁させる。この状態で、ブレーキペダル7の踏込み操作に応じてマスタシリンダ9の第1のピストン(即ち、ブースタピストン19、入力ロッド20)と第2のピストン11とがシリンダ本体10内を軸方向に変位するときに、第1,第2の液圧室12A,12B内に発生したブレーキ液圧が、シリンダ側液圧配管16A側からESC33の第1液圧系統36、ブレーキ側配管部34A,34Dを介してホイールシリンダ4L,5Rに供給される。第2の液圧室12B内に発生したブレーキ液圧は、シリンダ側液圧配管16B側から第2液圧系統36′、ブレーキ側配管部34B,34Cを介してホイールシリンダ4R,5Lに供給される。
また、電動倍力装置17の失陥によりブースタピストン19を電動モータ22で作動できない場合には、第1,第2の液圧室12A,12B内に発生したブレーキ液圧を第2のECU35に接続された液圧センサ32により検出して、この検出値をブレーキペダル7の操作量としてその検出値に応じたホイールシリンダ圧となるようにホイールシリンダ4L,5Rを増圧するアシスト制御を行う。アシスト制御では、加圧制御弁53と増圧制御弁41,42とを開弁させ、供給制御弁40および減圧制御弁45,46を適宜開,閉弁させる。この状態で、電動モータ48により液圧ポンプ47を作動させ、該液圧ポンプ47から吐出するブレーキ液を第1,第2管路部38,39を介してホイールシリンダ4L,5Rに供給する。これにより、マスタシリンダ9側で発生するブレーキ液圧に基づいて、液圧ポンプ47から吐出するブレーキ液によってホイールシリンダ4L,5Rによる制動力を発生することができる。
なお、液圧ポンプ47としては、例えばプランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の公知の液圧ポンプを用いることができるが、車載性、静粛性、ポンプ効率等を考慮するとギヤポンプとすることが望ましい。電動モータ48としては、例えばDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の公知のモータを用いることができるが、本実施の形態においては、車載性等の観点からDCモータとしている。
また、ESC33の各制御弁40,41,42,45,46,53は、その特性を夫々の使用態様に応じて適宜設定することができるが、このうち供給制御弁40および増圧制御弁41,42を常開弁とし、減圧制御弁45,46および加圧制御弁53を常閉弁とすることにより、第2のECU35からの制御信号がない場合にも、マスタシリンダ9からホイールシリンダ4L〜5Rに液圧を供給することができる。従って、ブレーキシステムのフェイルセーフおよび制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましいものである。
一方、車両に搭載された車両データバス29には、後述するモータ・ジェネレータ55(図1参照)を電気的に駆動制御する第3の制御回路(電力充電用コントローラ、回生協調制御装置)としての第3のECU54が接続されている。第3のECU54は、第1,第2のECU27,35と同様にマイクロコンピュータ等からなり、例えば、モータ・ジェネレータ55の駆動状態(力行、回生)を制御するモータ・ジェネレータ用コントローラ(制御装置)を含んで構成されている。
この場合、第3のECU54は、車両の減速時および制動時等に車輪(本実施の形態の場合は前輪2L,2R)の回転による慣性力を利用して、車両駆動用の回生電動機(電動モータ)であるモータ・ジェネレータ55を制御することにより、運動エネルギを電力として回収(回生)しつつ制動力を得るものである。第3のECU54は、車両データバス29を介して第1のECU27と第2のECU35とに接続され、回生制動量を制御する制御手段(回生制動制御手段)を構成している。また、第3のECU54は、電源ライン30と接続され、該電源ライン30を通じてバッテリ31(図1参照)からの電力が給電される。
第3のECU54に接続された回生制動装置としてのモータ・ジェネレータ(M・G)55は、車両の加速時等に車両を走行させるための駆動を行い、車両の減速時等に車両の慣性力に基づいて発電(回生)を行う電動モータ(発電電動機)として構成されている。即ち、モータ・ジェネレータ55は、例えば車両の蓄電装置(図示せず)に蓄電された電力に基づいて車両を走行するためのトルク(回転力)を発生するモータ(電動機)としての役目と、車両の走行慣性力に基づいて発電を行うジェネレータ(発電機)としての役目とを有するものである。なお、図1では、車両の駆動源としてモータ・ジェネレータ55のみを表しているが、例えば電気自動車であればモータ・ジェネレータ55が走行用の駆動源となり、ハイブリッド自動車であればモータ・ジェネレータ55と図示しないエンジン(内燃機関)とが走行用の駆動源となる。
次に、第3のECU54と第1のECU27とにより行われる回生協調制御について説明する。ここで、回生協調制御とは、減速時および制動時等に、車両の慣性力に基づいてモータ・ジェネレータ55を回転させることにより運動エネルギを電力として回収(回生)すると共に、運転者のブレーキ操作に対し、モータ・ジェネレータ55の回生による制動力(回生制動力)を差引いて摩擦制動装置6の摩擦ライニングによる制動力(摩擦制動力)を調整することにより、これらの両制動力で車両全体として所望の制動力を得るようにするブレーキ制御である。
即ち、ブレーキペダル7が操作されたときに、そのブレーキペダル7の操作量に対する摩擦制動力をそのまま発生させることに加えて、モータ・ジェネレータ55の運動エネルギによる回生制動力を発生させると、車両全体としての制動力が過多になる。そこで、回生協調制御では、ブレーキペダル7の操作量に対する電動倍力装置17(電動モータ22)の制御量を変化させることにより、回生制動力に対応する分だけマスタシリンダ9の液圧を減圧し、摩擦制動分の制動力と回生制動分の制動力とで、ブレーキペダル7の操作に応じた所望の制動力が得られるようにする。
ここで、回生協調制御にて発生させる回生制動の最大値は、電動倍力装置17の電動モータ22の制御量を変化させることで実現可能なマスタシリンダ9の減圧量により規定される。このため、電動モータ22を制御する第1のECU27からモータ・ジェネレータ55を制御する第3のECU54に対し、要求回生制動量が車両データバス29を介して送信される。この要求回生制動量は、第1のECU27にて規定するが、実際にモータ・ジェネレータ55による回生制動力を発生させるのは第3のECU54であるため、要求回生制動量と実際の回生制動量が異なる可能性がある。
仮に実際の回生制動量が要求回生制動量と異なった場合は、液圧による摩擦制動量とモータ・ジェネレータ55による回生制動量との総制動量が小さくなる。このため、減速度抜けまたは減速度の低下が発生するおそれがある。この減速度抜けまたは減速度の低下を抑制するために、実際に発生する回生制動量を、第3のECU54から第1のECU27に対し、実行回生制動量として車両データバス29を介して送信する。第1のECU27は、受信した実行回生制動量に基づいて電動モータ22の駆動に基づいて実施するマスタシリンダ9減圧量を規定し、所望の制動力を発生させる。なお、実行回生制動量は、必ず要求回生制動量よりも小さな値となるようにする。
ところで、回生協調制御を行う車両では、次のような走行シーンが発生することがある。即ち、走行中に運転者がブレーキペダル7を踏込み、回生協調制御が実行されると、上述の通り摩擦制動量が回生制動量分減少するため、駆動輪(本実施の形態の場合は前輪2L,2R)の制動量が、回生協調制御非実施時に比べて大きくなる。このときに、駆動輪のタイヤにかかる力がタイヤにかかる荷重と路面の抵抗とによって決定する摩擦力(グリップ限界)よりも大きくなると、駆動輪にスリップが発生するおそれがある。この場合、回生協調制御非実施時に比べて制動距離の増加、またはESC33によるアンチロックブレーキ制御が早期に開始されてしまう、いわゆるアンチロックブレーキ制御の早期介入が生じてしまうおそれがある。そこで、これらを防止するためには、駆動輪にかかる回生制動量をできる限り短時間に減少させ、タイヤにかかる力をグリップ限界以内とする必要がある。
しかし、回生制動量を急激に変化させると、電動倍力装置17が電動アクチュエータ21を作動させる。この場合、所望の液圧を発生するまでの応答遅れにより、車両にて発生している回生制動量と摩擦制動量の合計が運転者の意図する制動力よりも減少してしまい、減速度抜けが発生するおそれがある。また、駆動輪(前輪2L,2R)から従動輪(3L,3R)に制動量が移動するために、前後輪に急激な荷重移動が発生する。この場合、旋回時にアンダーステアが発生して、車両挙動が不安定になるおそれがある。
そのため、スリップが早期に収束するように回生制動量を減少させるためには、タイヤにかかる力がグリップ限界となるように回生制動量を減少させた後、回生制動量を保持させる。そして、電動倍力装置17が電動アクチュエータ21を作動させて所望の液圧を発生するまでの応答遅れによる減速度変動を防止する。さらに、スリップが収束しない場合には、再度減速度変動が発生しない回生制動量の減少と保持とを繰り返し行うことで、減速度変動を抑制しながら早期にスリップを抑制するよう、回生制動量を減少させる必要がある。
また、図3に示すように、旋回制動時には、縦方向(制動力)と横方向(横力)との合力がタイヤにかかっている。直進制動時と旋回制動時とで同じ回生制動量を発生させた場合には、直進制動時に対して旋回制動時にはタイヤに横力が加わることから、車両のスリップを抑制するために必要な回生制動量を横力分だけ大きく設定する必要がある。即ち、図3に示すように、旋回制動時に必要な回生制動量の減少量は、直進制動時に必要な回生制動量の減少量よりも差分量ΔCだけ大きくなる。この差分量ΔCの大きさは、横力(横G)の大きさに基づき可変に設定される。
そこで、本実施の形態では、駆動輪となる前輪2L,2Rのスリップ量を検出した場合に、車両の旋回量によって回生制動量の減少量を可変としている。即ち、旋回制動時にタイヤに加わる横力分に対応する回生制動量の減少量を、直進制動時の回生制動量の減少量よりも大きく設定している。これにより、旋回制動時においても直進制動時と同様に早期にスリップを収束させ、車両挙動の変化の抑制とアンチロックブレーキ制御の早期介入の抑制とを図れるようにしている。このために、第2のECU35には、車両に設けられた車輪2L,2R,3L,3Rのスリップ量を検出するスリップ量検出手段としてのスリップ量検出器56と、旋回量検出器57とが接続されている。
スリップ量検出器56は、例えば、各車輪2L,2R,3L,3Rの回転速度を検出する車輪速センサにより構成することができる。この場合は、駆動輪となる前輪2L,2Rの回転速度と従動輪となる後輪3L,3Rの回転速度との差に基づいて、駆動輪となる前輪2L,2Rのスリップ量を算出することができる。また、スリップ量検出器56は、例えば、駆動輪となる前輪2L,2Rの回転速度を検出する車輪速センサとトランスミッションの回転軸の回転速度を検出する車速センサとにより構成することもできる。この場合には、車輪速センサにより検出される車輪速と車速センサにより検出される車速(車体速度、車両速度)との差に基づいて、駆動輪となる前輪2L,2Rのスリップ量を算出することができる。なお、図1,2においては、説明の便宜上、スリップ量検出器56とESC33の第2のECU35と別に記載しているが、第2のECU35にスリップ量検出機能を組み込むようにしてもよい。この場合には、第2のECU35に各車輪2L,2R,3L,3Rの回転速度を検出する車輪速センサが接続されることになる。
旋回量検出器57は、例えば車両の横Gを検出する加速度センサにより構成することができる。この場合は、加速度センサにより検出される横Gに基づいて車両が旋回しているか否かを判断することができる。また、旋回量検出器57は、例えば車輪の回転速度を検出する車輪速センサと運転者のステアリング舵角を検知する舵角センサとにより構成することもできる。この場合は、車輪速センサにより検出される車速と舵角センサから検知される舵角とにより発生する横Gを算出することができる。
一方、例えば、第1のECU27は、モータ・ジェネレータ55による回生制動中に、第2のECU35、車両データバス29を介して受信するスリップ量検出器56の検出値により、車輪(具体的には駆動輪となる前輪2L,2R)がスリップしていることが検出されたときに、モータ・ジェネレータ55の回生制動量を減少させる回生スリップ制御手段(後述する図4の処理)を有している。この回生スリップ制御手段は、モータ・ジェネレータ55による回生制動中に、スリップ量検出器56の検出値に基づいて駆動輪となる前輪2L,2Rがスリップしていることが検出されている間、モータ・ジェネレータ55の回生制動量を所定量減少させたのち、減少させた回生制動量を所定時間保持するスリップ抑制制御を繰り返して行うものである。
この場合、回生スリップ制御手段においては、駆動輪(前輪2L,2R)がスリップしていることが検出されたときの回生制動量の減少量として、旋回量検出器57の検出値に基づいて回生制動量の減少量を可変としており、旋回量に応じて回生制動量を所定量減少させたのち、回生制動量を所定時間保持する。この場合、例えば図5に示す特性線58のように、横Gに対応する旋回制動時の回生制動量の減少量(1回目の所定減少量)のマップが第1のECU27に記憶されている。なお、図5に示す旋回制動用の特性線58は、線形特性(リニア特性)としているが、タイヤと路面との抵抗によって、横力(横G)と回生制動量の減少量との関係が非線形特性(非リニア特性)となる場合もある。即ち、旋回制動用の特性線は、予め実験、計算、シミュレーション等に基づいて設定される。
そして、その後もスリップが発生する間は、回生制動量を減少させる。この場合、回生制動量の減少量(例えば、2回目の所定減少量)は、減速度変動が発生しないように、スリップ検知後に設定された初回の所定減少量と比較して小さい値が設定されている。即ち、図6に示すように、回生スリップ制御手段は、駆動輪(前輪2L,2R)のスリップ量がスリップ閾値以上となると、モータ・ジェネレータ55の回生制動量を減少させることにより、駆動輪制動量を段階的に減少させる。これにより、直進制動時と旋回制動時とにおいて、電動倍力装置17が電動アクチュエータ21を作動させ、所望の液圧を発生するまでの応答遅れによる減速度変動を防止しながら、早期にスリップの抑制が実現でき、車両挙動を安定に保つことができる。なお、第1のECU27により実行される図4の処理については、後述する。
本実施の形態によるブレーキ制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、車両の運転者がブレーキペダル7を踏込み操作すると、これにより入力ロッド20が矢示A方向に押込まれると共に、操作量検出センサ8からの検出信号が第1のECU27に入力される。第1のECU27は、その検出値に応じて電動倍力装置17の電動アクチュエータ21を作動制御する。即ち、第1のECU27は、操作量検出センサ8からの検出信号に基づいて、電動モータ22への給電を行い、該電動モータ22を回転駆動する。この場合、第1のECU27は、ブレーキペダル7のストローク量に応じた運転者が意図する制動力(車両全体としての制動力)からモータ・ジェネレータ55の回生による制動力(回生制動力)を差引いた、摩擦制動装置6で発生すべき制動力(摩擦制動力)を演算し、この制動力を得るために必要な液圧となるように、電動モータ22への給電を行い、該電動モータ22を回転駆動する。
電動モータ22の回転は、減速機構24を介して筒状回転体23に伝えられると共に、筒状回転体23の回転は、直動機構25によりブースタピストン19の軸方向変位に変換される。これにより、電動倍力装置17のブースタピストン19は、マスタシリンダ9のシリンダ本体10内に向けて前進方向に変位し、ブレーキペダル7から入力ロッド20に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ21からブースタピストン19に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ9の第1,第2の液圧室12A,12B内に発生する。
次に、各車輪(前輪2L,2Rおよび後輪3L,3R)側のホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rとマスタシリンダ9との間に設けられたESC33は、電動倍力装置17によりマスタシリンダ9(第1,第2の液圧室12A,12B)内に発生したマスタシリンダ圧としての液圧を、シリンダ側液圧配管16A,16BからESC33内の液圧系統36,36′およびブレーキ側配管部34A,34B,34C,34Dを介してホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rへと可変に制御しつつ、車輪毎のホイールシリンダ圧として分配して供給する。これにより、車両の車輪(各前輪2L,2R、各後輪3L,3R)毎にホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rを介して適正な制動力が付与される。
また、ESC33を制御する第2のECU35は、信号線28を通じて受け取る操作量検出センサ8からの検出信号等に基づいて、電動モータ48に給電して液圧ポンプ47,47′を作動し、各制御弁40,40′,41,41′,42,42′,45,45′,46,46′,53,53′を選択的に開,閉弁する。これにより、制動力配分制御、アンチロックブレーキ制御、車両安定化制御、坂道発進補助制御、トラクション制御、車両追従制御、車線逸脱回避制御、障害物回避制御等を実行することができる。特に、アンチロックブレーキ制御においては、スリップ量検出器56で検出される車輪2L,2R,3L,3Rのスリップ量が所定時間継続してアンチロックスリップ閾値を越えた時に、各制御弁40,40′,41,41′,42,42′,45,45′,46,46′,53,53′を選択的に開,閉弁してホイールシリンダ4L,4R、5L,5Rのブレーキ圧を減圧、保持、増圧することで車輪2L,2R,3L,3Rのスリップ(ロック)を抑制するようにしている。
ところで、前述の特許文献1による従来技術では、車体速と車輪速から回生制動によって発生する車両のスリップを検知している。そして、発生したスリップを抑制するために、回生制動量を予め設定された値で減少させている。これにより、タイヤにかかる力をタイヤにかかる荷重と路面との抵抗によって決定する摩擦力(グリップ限界)以内となるように駆動輪の制動力を減少させている。
ここで、直進制動時にタイヤにかかる力は、縦方向(制動力)のみであるが、旋回制動時にタイヤにかかる力は、制動力にさらに横方向(横力)が加算された力となる。即ち、旋回制動時にタイヤにかかる力は、縦方向(制動力)と横方向(横力)の合力である。そのため、旋回制動時におけるタイヤにかかる力をタイヤのグリップ限界以内とするためには、横力分を考慮して回生制動量を減少させる必要がある。
しかし、従来技術では、予め設定された回生制動量を減少させる構成となっている。従って、旋回制動時にスリップを抑制させるために減少させるべき回生制動量は、直進制動時にスリップを抑制させるために減少させる回生制動量よりも横力分小さくなるおそれがある。その結果、タイヤにかかる力がグリップ限界まで減少する時間が長くなるので、スリップの収束が遅くなり、車両挙動が不安定となったり、制動距離が長くなったりするという問題がある。
そこで、本実施の形態では、駆動輪となる前輪2L,2Rがスリップしていると検出されたときに、減少させる回生制動量を旋回量検出器57の検出値に基づいて可変としている。これにより、旋回制動時には、直進制動時に対してタイヤにかかる横力分を増加させた回生制動量の減少量を設定することができる。その結果、旋回制動時においても直進制動時と同様にスリップを抑制することができ、車両挙動を安定に保つことができる。
次に、第1のECU27で行われる回生制御処理(回生スリップ抑制処理)について、図4の流れ図を用いて説明する。なお、図4の処理は、第1のECU27に通電している間、第1のECU27により所定の制御時間毎に(所定の制御周期で)繰り返し実行される。
第1のECU27に通電が開始される(または、運転者が車両走行中にブレーキペダル7を操作する)ことにより、図4の処理動作がスタートすると、第1のECU27は、ステップ1で、駆動輪となる前輪2L,2Rのスリップ量の算出を行う。このスリップ量は、スリップ量検出器56の検出値に基づいて行う。例えば、スリップ量検出器56を各車輪2L,2R,3L,3Rの回転速度を検出する車輪速センサにより構成した場合は、駆動輪となる前輪2L,2Rの回転速度と従動輪となる後輪3L,3Rの回転速度との差に基づいて、駆動輪となる前輪2L,2Rのスリップ量を算出することができる。また、スリップ量は、車輪速センサにより検出される車輪速と車速センサにより検出される車速(車体速度、車両速度)との差に基づいて算出することもできる。
続くステップ2では、ステップ1で算出したスリップ量がスリップ閾値以上であるか否かを判定する。ここで、スリップ閾値は、駆動輪(前輪2L,2R)の制動量がタイヤにかかる荷重と路面との抵抗によって決定する摩擦力(グリップ限界)よりも過多となったために、駆動輪の制動力を減少させて早期にスリップを抑制する必要があるか否かを判定するための判定値(閾値)となるものである。このスリップ閾値は、タイヤにかかる荷重と路面との摩擦の大きさによって決定する判定値であり、予め実験、計算、シミュレーション等に基づいてその値が設定されている。この場合、駆動輪にかかる荷重を、例えば加速度センサから車両のロール角、ピッチ角を検知することで、スリップ閾値に制限をかけるもしくは加算する等の補正を行ってもよい。
ステップ2で、「YES」、即ち、ステップ1で算出したスリップ量がスリップ閾値以上であると判定された場合は、スリップ量が大きく制動距離の増加、制動時にアンダーステアが発生することによる車両挙動の悪化、早期のアンチロックブレーキ制御介入に繋がるおそれがあるため、ステップ3に進む。一方、ステップ2で、「NO」、即ち、ステップ1で算出したスリップ量がスリップ閾値未満であると判定された場合は、ステップ7に進む。
ステップ3では、旋回量(横G)の算出を行う。旋回量は、旋回量検出器57としての加速度センサから横Gを検出することにより算出される。なお、車輪の回転速度を検出する車輪速センサにより検出される車速と運転者のステアリング舵角を検知する舵角センサからの検出値に基づき、車両に発生する横Gを算出してもよい。
次のステップ4では、ステップ3で算出した旋回量に基づき、回生制動量の減少量と保持時間とを設定する。この場合、直進制動時(即ち、ステップ3で横Gがゼロのとき)に設定する回生制動量の減少量は、ステップ2でスリップ量がスリップ閾値以上であると判定した後に回生制動量を減少させるまでに増加する回生制動量と、タイヤがスリップを開始したときに路面との抵抗が静摩擦から動摩擦に切り替わることで低下したグリップ限界分とを補填するように設定する必要がある。従って、直進制動時に設定される回生制動量の減少量は、タイヤと路面との抵抗に左右されることになり、予め実験、計算、シミュレーション等に基づいてその値が設定される。
一方、図3に示すように、旋回制動時(即ち、ステップ3で横Gが発生しているとき)に設定する回生制動量の減少量は、直進制動時に対して横力分の差分量ΔC分だけ増加させる必要がある。横力は、算出された横Gに駆動輪にかかる荷重を積算することで算出することができる。この場合、駆動輪にかかる荷重は、例えば加速度センサから車両のロール角、ピッチ角を検知することにより推定算出してもよい。そして、図5に示すように、旋回制動時には、直進制動時の減少量に横G分の回生制動量の減少量が加算されて設定される。
また、保持時間は、電動倍力装置17が電動アクチュエータ21を作動させて所望の液圧を発生するまでの応答遅れによって減速度低下の発生を抑制するために設定される。この保持時間の設定は、例えば所望の液圧を発生するまでの応答遅れによって減速度低下が発生しないように、回生制動量の減少量に対応させて可変に設定してもよい。
次のステップ5では、回生制動量を設定された減少量にて減少させる。即ち、ステップ4で設定された回生制動量の減少量に基づき、回生制動量を減少させ、次のステップ6に進む。
ステップ6では、回生制動量を減少後、設定された保持時間が経過したか否かを判定する。即ち、ステップ4で設定された減少後の回生制動量が設定された保持時間継続したか否かを判定する。そして、ステップ6で、「YES」、即ち、設定された保持時間が経過したと判定された場合には、リターンする。一方、ステップ6で、「NO」、即ち、設定された保持時間が経過していないと判定された場合には、設定された保持時間が経過するまで監視する。これにより、電動倍力装置17が電動アクチュエータ21を作動させて所望の液圧を発生するまでの応答遅れによる減速度低下を防止することができる。
一方、ステップ2で「NO」と判定された場合のステップ7では、スリップ量が目標スリップ量以上か否かを判定する。即ち、ステップ1で算出したスリップ量が十分に低く収束しているか否かを判定する。ここで、目標スリップ量は、具体的には駆動輪(前輪2L,2R)の制動量のスリップを収束させるために、続けて回生制動量を減少させる必要があるか否かを判定するための判定値となっている。目標スリップ量は、ステップ2においてスリップ閾値にて回生制動量を減少させる必要がないと判断された際に、発生しているスリップ量によって停止距離の増加、旋回時のアンダーステア等の車両挙動への悪影響が発生しない範囲で、予め実験、計算、シミュレーション等に基づいてその値が設定される。
そして、ステップ7で、「NO」、即ち、スリップ量が目標スリップ量未満であると判定された場合には、スリップ量が十分に小さく車両挙動に悪影響が発生しない範囲であるので回生制動量を制限することなくリターンする。一方、ステップ7で、「YES」、即ち、スリップ量が目標スリップ量以上であると判定された場合には、ステップ8に進む。
ステップ8では、目標スリップ追従用の回生制動量の減少量、保持時間を設定する。この場合、目標スリップ量までスリップ量を減少させるための回生制動量の減少量は、ステップ4での回生制動量の減少量よりも小さい値が設定される。具体的には、目標スリップ量までスリップ量を減少させるための回生制動量の減少量(目標スリップ追従用の回生制動量の減少量)は、減速度変動が発生しないような値に設定されている。また、保持時間は、設定された回生制動量の減少量に対して電動倍力装置17が電動アクチュエータ21を作動させ、所望の液圧を発生するまでの応答時間に設定される。
次のステップ5では、回生制動量を設定された減少量にて減少させる。即ち、ステップ8で設定された回生制動量の減少量に基づき、回生制動量を減少させ、次のステップ6に進む。
ステップ6では、回生制動量を減少後、設定された保持時間が経過したか否かを判定する。即ち、ステップ8で設定された減少後の回生制動量が設定された保持時間継続したか否かを判定する。そして、ステップ6で、「YES」、即ち、設定された保持時間が経過したと判定された場合には、リターンする。一方、ステップ6で、「NO」、即ち、設定された保持時間が経過していないと判定された場合には、設定された保持時間が経過するまで監視する。これにより、電動倍力装置17が電動アクチュエータ21を作動させて所望の液圧を発生するまでの応答遅れによる減速度低下を防止することができる。
次に、回生制動量の減少量の設定について、図3、図5、図6を用いて説明する。
まず、図6に示すように、直進制動時には、駆動輪(前輪2L,2R)のスリップ量がスリップ閾値以上となったときに、最初の回生制動量(第1の回生制動量)を直進制動時でのグリップ限界となる制動量以下に減少させる。この場合、直進制動時には、旋回量がゼロであるので、予め設定された回生制動量の減少量(図5参照)が設定される。
その後、スリップ量が目標スリップ量以下になるまで、回生制動量の減少と保持とを段階的に繰り返す。この場合、第2の回生制動の所定減少量は、第1の回生制動の所定減少量よりも小さく設定されている。これにより、過剰な制動量が継続することを抑制することができるので、車両挙動を安定に保つことができる。また、保持時間を設けることで、車両の減速度低下を抑制することができる。
次に、図6に示すように、旋回制動時には、駆動輪(前輪2L,2R)のスリップ量がスリップ閾値以上となったときに、最初の回生制動量(第1の回生制動量)を旋回制動時でのグリップ限界となる制動量以下に減少させる。この場合、図3に示すように、旋回制動時に必要な回生制動量の減少量は、旋回制動時にタイヤにかかる横力の分だけ直進制動時に必要な回生制動量よりも差分量ΔCだけ大きくする。
そこで、車体1には、車両の横Gを検出する旋回量検出器57が設けられている。そして、第1のECU27は、旋回量検出器57により検出された横Gに基づいて、図5に示す特性線58に従って旋回制動用の回生制動量の減少量を算出する。この場合、直進制動用の回生制動量と旋回制動用の回生制動量の減少量との差分量(ΔC)を算出して、予め設定された直進制動時の回生制動量の減少量に差分量(ΔC)を加算して旋回制動用の回生制動量の減少量を算出してもよい。また、実験等により予め設定された計算式を用いて旋回制動用の回生制動量の減少量を算出してもよい。
その後、スリップ量が目標スリップ量以下になるまで、回生制動量の減少と保持とを段階的に繰り返す。この場合、第2の回生制動の所定減少量は、第1の回生制動の所定減少量よりも小さく設定されている。これにより、過剰な制動量が継続することを抑制することができるので、車両挙動を安定に保つことができる。また、保持時間を設けることで、車両の減速度低下を抑制することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、駆動輪となる前輪2L,2Rにスリップ量を検出した場合に、モータ・ジェネレータ55の回生制動量を減少させることにより、大きな減速度変動を発生させることなく前輪2L,2Rにかかる回生制動力を早期に減少することができる。そして、前輪2L,2Rがスリップしていることが検出されたときの第1の回生制動の所定減少量を、その後の所定保持時間経過時のスリップ抑制制御での第2の回生制動の所定減少量よりも大きく、かつ、車両の旋回量に応じて変化させて設定している。
これにより、旋回制動時においても直進制動時と同様に、駆動輪に過剰な回生制動量がかかる状態が継続するのを抑制することができる。その後は、電動倍力装置17が電動アクチュエータ21を作動させて所望の液圧を発生するまでの応答遅れによる減速度変動が発生しないように、回生制動量を保持してスリップ量が目標スリップ量未満となるまで回生制動量の減少と保持とを段階的に繰り返す。これにより、早期にスリップを収束させ、制動距離の増加の抑制、旋回時に発生するアンダーステアの抑制、およびアンチロックブレーキ制御の早期介入の抑制を図ることができる。
次に、図7は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第1の回生制動の所定減少量を複数に分割したことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
旋回量が大きいときには、横力が大きくなるので、旋回制動時でのグリップ限界となる制動量以下まで回生制動量を減少させる第1の回生制動の減少量も大きくなる。この場合、早期にスリップを抑制するために、第1の回生制動の減少量を大きくすると、駆動輪(前輪2L,2R)から従動輪(後輪3L,3R)へ急激に制動力が移動することになる。これにより、前輪2L,2R側と後輪3L,3R側との間で急激な荷重(輪荷重)移動が発生するので、車両挙動が不安定になるおそれがある。
そこで、第1の回生制動の所定減少量が制限値以上となる場合には、第1の回生制動の所定減少量を複数(2段階)に分割する構成としている。この制限値は、回生制動量を減少させたときの前後輪間の荷重移動により、駆動輪(前輪2L,2R)にかかる荷重が減少することで、グリップ限界が急激に減少することに伴いアンダーステアが発生しない範囲で設定する。この場合、前後輪間の荷重移動に基づく前記制限値は、タイヤのグリップ限界がタイヤと路面との抵抗によって左右されることから、予め実験、計算、シミュレーション等に基づいて設定される。なお、前後輪間の荷重移動は、例えば前後方向の加速度センサで検出してもよく、前後輪側の車高センサによる検出信号によっても求めることができる。また、車両のピッチセンサ等でも検出することができる。
かくして、第2の実施の形態についても第1の実施の形態と同様に、車両挙動を安定に保つと共に制動距離を短くすることができる。特に、第2の実施の形態では、回生制動量の減少量に制限値を設け、駆動輪から従動輪へ一度に移動する制動量を制限し、保持時間を分割して荷重移動を抑制する。これにより、急激な荷重移動を防止しながら、制動距離の増加の抑制、旋回時に発生するアンダーステアの抑制、およびアンチロックブレーキ制御の早期介入の抑制を図ることができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、図4に示す制御処理を第1のECU27で行う場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば図4に示す制御処理を第3のECU54または第2のECU35で行う構成としてもよい。また、それ以外の車両に配置されているECUで行う構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、スリップ量検出器56と旋回量検出器57とを第2のECU35に接続する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、スリップ量検出器56と旋回量検出器57とを、例えば第1のECU27または第3のECU54に接続する構成としてもよい。また、それ以外の車両に配置されているECUに接続する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、上述した第2の実施の形態では、第1の回生制動の所定減少量を2段階に分割する構成としている。しかし、本実施の形態は、これに限らず、例えば第1の回生制動の所定減少量を3段階以上に分割してもよい。
また、上述した実施の形態では、車両走行用(車両駆動用)の電動機となるモータ・ジェネレータ55により前輪2L,2Rを駆動する構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、駆動輪が前輪2L,2Rの場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、モータ・ジェネレータ(電動機)により後輪を駆動する構成(駆動輪が後輪の構成)、または、前輪と後輪(四輪)を駆動する構成(駆動輪が前後輪の構成)としてもよい。
以上説明した実施態様に基づくブレーキ制御装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、車両に設けられる回生電動機の回生制動量を制御するとともに、各車輪に設けられ液圧を受けて移動する摩擦部材を有する摩擦制動装置を制御することにより前記車両を制動するブレーキ制御装置であって、前記車輪のスリップ量を検出するスリップ量検出手段と、前記回生電動機による回生制動中に、前記スリップ量検出手段の検出値がスリップ閾値を超えたときに、前記車輪がスリップしていると判断し、前記回生制動量を所定量減少させたのち、減少させた回生制動量を所定時間保持するスリップ抑制制御を繰り返して行う回生スリップ制御手段と、を有し、該回生スリップ制御手段は、前記車輪がスリップしていることが検出されたときの第1の回生制動の所定減少量を、その後の所定保持時間経過時の前記スリップ抑制制御での第2の回生制動の所定減少量よりも大きく、かつ、前記車両の旋回量に応じて変化させて設定されている。
第2の態様としては、第1の態様において、前記車輪がスリップしていることが検出されたときの前記第1の回生制動の所定減少量が制限値よりも大きくなる場合には、前記第1の回生制動の所定減少量を複数に分割して、前記所定保持時間経過時までに回生制動量を減少させる。
2L,2R 前輪
3L,3R 後輪
6 摩擦制動装置
7 ブレーキペダル
17 電動倍力装置
27 第1のECU
33 液圧供給装置(ESC)
35 第2のECU
54 第3のECU
55 モータ・ジェネレータ(回生電動機)
56 スリップ量検出器(スリップ量検出手段)
57 旋回量検出器

Claims (2)

  1. 車両に設けられる回生電動機の回生制動量を制御するとともに、各車輪に設けられ液圧を受けて移動する摩擦部材を有する摩擦制動装置を制御することにより前記車両を制動するブレーキ制御装置であって、
    前記車輪のスリップ量を検出するスリップ量検出手段と、
    前記回生電動機による回生制動中に、前記スリップ量検出手段の検出値がスリップ閾値を超えたときに、前記車輪がスリップしていると判断し、前記回生制動量を所定量減少させたのち、減少させた回生制動量を所定時間保持するスリップ抑制制御を繰り返して行う回生スリップ制御手段と、を有し、
    該回生スリップ制御手段は、前記車輪がスリップしていることが検出されたときの第1の回生制動の所定減少量を、その後の所定保持時間経過時の前記スリップ抑制制御での第2の回生制動の所定減少量よりも大きく、かつ、前記車両の旋回量に応じて変化させて設定することを特徴とするブレーキ制御装置。
  2. 前記車輪がスリップしていることが検出されたときの前記第1の回生制動の所定減少量が制限値よりも大きくなる場合には、前記第1の回生制動の所定減少量を複数に分割して、前記所定保持時間経過時までに回生制動量を減少させることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
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