JP2018085968A - 小麦ふすま加工品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、小麦ふすまはリパーゼ活性の阻害作用を有することが知られている。腸内においてリパーゼ活性を阻害すると脂肪の吸収が抑えられるため、肥満の抑制に繋がるとされる。それ故、小麦ふすまを、リパーゼ活性阻害作用がより高められた形態へと改質できれば、生活習慣病の予防ないし改善に効果的な機能性食材として、付加価値を高めることができる。
上記知見を踏まえ、本発明者らは上述した課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、小麦ふすまに対して特定の酵素処理と機械的せん断処理とを組合せて施すことにより、当該小麦ふすまをセルラーゼ吸着能が効果的に高められた形態へと改質できること、また、小麦ふすまが有するリパーゼ活性阻害作用を効果的に高めることができることを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
(A)ペクチナーゼによる酵素処理、又は、ペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理、
(B)せん断処理。
但し、本発明において前記(A)がペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理である場合、酵素処理時間を120分間未満とする。
また本発明は、上記の製造方法により得られる小麦ふすま加工品を提供するものである。
本発明の小麦ふすま加工品は、小麦ふすまを特定の酵素処理に付し、さらにせん断処理に付すことにより、セルラーゼ吸着能が高められ、且つリパーゼ活性抑制作用がより高められた、従来物とは異なる新しい特性を有するものである。しかし、上記せん断処理による粒度分布については特定することができる場合があるとしても、上記の酵素処理によって、小麦ふすま粒子あるいはその構成成分、分子等のどこに、どの程度の分解が生じているのか、詳細に、一義的に規定するのは事実上困難性がある。そこで、従来技術による物との相違を明示して発明を明確化すべく、小麦ふすま加工品の発明においては製造方法を発明特定事項としている。
(A)ペクチナーゼによる酵素処理、又は、ペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理、
(B)せん断処理。
上記処理(A)及び(B)について順に説明する。
また、上記(A)がペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理である場合、ペクチナーゼの使用量は、原料として用いる小麦ふすま1g当たり90〜1100PGとすることが好ましく、150〜700PGとすることがより好ましく、150〜500PGとすることがさらに好ましく、150〜300PGとすることが特に好ましい。
上記(A)の酵素処理時間は5分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましい。
上記(A)がペクチナーゼによる酵素処理の場合、酵素処理時間の上限に特に制限されず、通常は120分間以内とする。他方、前記(A)がペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理の場合、酵素処理時間は120分未満であり、セルラーゼ吸着能をより高める観点から、60分間以下が好ましく、40分間以下がより好ましく、30分間以下がさらに好ましい。
小麦ふすまと水性液とを混合してなる上記スラリー中、水不溶性固形分の割合は1〜10質量%とすることが好ましく、2〜5質量%とすることがより好ましい。ここでいう「水不溶性固形分」は、後述する実施例に記載の乾燥水不溶性固形分を意味する。
上記「水性液」としては、水又は水溶液が好ましく、より好ましくは水である。水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水等を特に制限なく用いることができる。また、水性液が水溶液である場合、この水性液中に含まれる水以外の成分としては、例えば、pH調製剤、粘度調製剤、防腐剤、防カビ剤、調味料、香料等が挙げられる。
上記(A)の酵素処理は、撹拌しながら行うことが好ましい。また、本発明の製造方法は、上記(A)の後、酵素を失活させるために、酵素処理物を熱処理することを含むことが好ましい。熱処理条件は酵素が完全に失活する条件とすることが好ましい。例えば、熱処理温度を80℃以上とすることができ、90℃以上とすることがより好ましい。また、熱処理温度は通常は98℃以下である。また熱処理時間は通常は3〜5分間とすることが好ましい。
上記(B)のせん断処理は、小麦ふすまと水性液とを混合してスラリーの状態としたものを調製し、このスラリーをせん断処理に付すことが好ましい。この「水性液」は上述した通りである。上記(B)のせん断処理を、上記(A)の酵素処理の後に行う形態においては、上記(A)の酵素処理後のスラリー(必要により酵素失活処理(熱処理)したもの)を、直接、せん断処理に付すことができる。
せん断処理の温度に特に制限はなく、通常は20〜50℃とする。
本発明の製造方法が上記(A)後に(B)を行う形態である場合、上述のように上記(A)の酵素処理物(スラリー)をそのまま(B)のせん断処理に付してもよいし、上記(A)の酵素処理物(スラリー)に別の処理(例えば、遠心分離、ろ過等による不溶分の回収、再分散等)を施した後、(B)のせん断処理を行ってもよい。
また、本発明の製造方法が上記(B)後に(A)を行う形態である場合、上述のように上記(B)のせん断処理物(スラリー)をそのまま(A)の酵素処理に用いてもよいし、上記(B)の酵素処理物(スラリー)に別の処理(例えば、遠心分離、ろ過等による不溶分の回収、再分散等)を施した後、(A)の酵素処理を行ってもよい。
すなわち、上記(A)と(B)の処理は連続的に行ってもよいし、別の処理を介して行ってもよい。
また、本発明の製造方法により得られる小麦ふすま加工品は、腸内短鎖脂肪酸の産生促進、腸内細菌業の改善、腸内環境の改善、内臓脂肪の蓄積抑制、肥満の予防又は改善等をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した食品となり得、また、当該食品に配合して使用される素材又は製剤になり得る。
<粒径の測定>
試料の粒径の測定には、レーザー回析・散乱法粒径分布測定装置(LA−920、(株)堀場製作所製)を用いた。フローセルを使用し水を溶媒として体積基準の粒度分布を測定した。
平均粒径は、上記で得られた粒度分布より、LA−920付属のソフトウェアを用いて求めたメジアン径(累積50%に相当する粒径)とした。
下記(i)及び(ii)に基づき、処理前の原料小麦ふすまの乾燥水不溶性固形分1g当たりの最大セルラーゼ吸着量を決定した。
後述する実施例ないし比較例で得られたスラリー状小麦ふすま加工品(比較例1についてはスラリー状未処理小麦ふすま、以下同様。)15gを、超純水100gを用いて希釈し、撹拌した後、吸引ろ過(ろ紙:H020A090C ADVANTEC製)して水不溶性固形分を得た。得られた水不溶性固形分を、乾熱器を用いて105℃で12時間以上乾燥させ、得られた乾燥水不溶性固形分の質量を測定した。
後述する実施例ないし比較例で得られたスラリー状小麦ふすま加工品15gに、下記に示す人工胃液10gを添加し、37℃で1時間振とうした。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーのpHを6.5に調整し、次いで、下記に示す人工腸液22.5gを添加し、さらに37℃で4時間振とうした。その後、酵素を失活させるために95℃で5分間加熱し、人工消化液処理液を得た。
−人工胃液−
第十四版改正日本薬局方に準拠した崩壊試験第1液(pH1.2)1000gと、ペプシン(和光純薬工業社製、3.2g)との混合液
−人工腸液−
空腹時人工腸液*1(FaSSIF、pH6.5)22.5gと、パンクレアチン(シグマアルドリッチ社製)2.2mgと、RIA抽出液(ラット小腸抽出液、シグマアルドリッチ社製)1.76mgとの混合液(*1:E.Galia et al.,Pharm Res、1998年5月、第15巻第5号、p.698−705)
上記で得られた人工消化液処理液を低温恒温器中で1℃に冷却した後、セルラーゼ(ノボザイムズ社製)を添加し、1℃において15分間振とうし、セルラーゼを吸着させた。その後速やかに遠心分離(15000r/min、1℃、5分間)し、上清を回収した。
回収した上清のタンパク量をプロテイン測定キット(Quick Startプロテインアッセイ、バイオラット社製)を用いて決定した。セルラーゼの添加量を振って、同様にして上清のタンパク量を決定し、得られたタンパク量に基づきラングミュアの吸着等温式より、小麦ふすま加工品の乾燥水不溶性固形分1g当たりの最大セルラーゼ吸着量(mg−セルラーゼ/g−乾燥水不溶性固形分)を算出した。
上記の、小麦ふすま加工品の乾燥水不溶性固形分1g当たりの最大セルラーゼ吸着量に、試料としたスラリー状の小麦ふすま加工品15g当たりの乾燥水不溶性固形分量を乗じ、得られた値を小麦ふすま加工品15gの最大セルラーゼ吸着量とした。算出された小麦ふすま加工品の最大セルラーゼ吸着量を、処理前の原料小麦ふすまの乾燥水不溶性固形分(小麦ふすま加工品15gを得るのに用いた原料小麦ふすまを、超純水100gを用いて希釈し、撹拌した後、吸引ろ過(ろ紙:H020A090C ADVANTEC製)して水不溶性固形分を得、得られた水不溶性固形分を、乾熱器を用いて105℃で12時間以上乾燥させたもの)で除することにより、処理前の原料小麦ふすまの乾燥水不溶性固形分1gあたりの最大セルラーゼ吸着量(mg)を算出した。この最大セルラーゼ吸着量(mg/g)を表1に示す。
リパーゼ活性阻害作用の評価にはリパーゼキットS(DSファーマバイオメディカ社製)を用いた。
上記人工胃液4.2gと上記人工腸液9.5gの混合液(以下、「人工消化液」という。)500μlにイオン交換水300μlを加え、そこにリパーゼキットSに付属の緩衝液(100μl)とエステラーゼ阻害剤(20μl)と発色液(100μl)とを添加し混合した。その後リパーゼを添加し、30℃で5分間インキュベートした。インキュベート後、基質(100μl)を添加し、30℃で30分間反応させ、次いで反応停止液(2ml)を添加して酵素反応を停止させた。この試料をろ過し、ろ液の吸光度(412nm)を測定した。
後述する実施例ないし比較例で得られたスラリー状小麦ふすま加工品を凍結乾燥することで、小麦ふすま加工品の粉末を得た。前記粉末をイオン交換水に再分散させ、濃度の異なる小麦ふすま凍結乾燥品分散物(スラリー状小麦ふすま加工品)を得た。各濃度のスラリー状小麦ふすま加工品を人工消化液により処理し(その際、スラリー状小麦ふすま加工品と人工消化液との合計量を500μLとした。)、これを遠心分離して上清を回収した。この上清500μlにイオン交換水300μlを加え、そこにリパーゼキットSに付属の緩衝液(100μl)とエステラーゼ阻害剤(20μl)と発色液(100μl)とを添加し混合した。その後リパーゼを添加し、30℃で5分間インキュベートした。インキュベート後、基質(100μl)を添加し、30℃で30分間反応させ、次いで反応停止液(2ml)を添加して酵素反応を停止させた。この試料をろ過し、ろ液の吸光度(412nm)を測定した。
後述する実施例ないし比較例で得られたスラリー状小麦ふすま加工品を凍結乾燥することで、小麦ふすま加工品の粉末を得た。前記粉末をイオン交換水に再分散させ、前記Rbの場合と同様に、濃度の異なる小麦ふすま凍結乾燥品分散物(スラリー状小麦ふすま加工品)を得た。各濃度のスラリー状小麦ふすま加工品を人工消化液により処理し(その際、スラリー状小麦ふすま加工品と人工消化液との合計量を500μLとした。)、得られた検体500μlにイオン交換水300μlを加え、そこにリパーゼキットSに付属している緩衝液(100μl)とエステラーゼ阻害剤(20μl)と発色液(100μl)とを添加し混合した。その後リパーゼを添加し、30℃で5分間インキュベートした。インキュベート後、基質(100μl)を添加し、30℃で30分間反応させ、次いで反応停止液(2ml)を添加して酵素反応を停止させた。この試料をろ過し、ろ液の吸光度(412nm)を測定した。
リパーゼ活性阻害率%(IRL)=100×(Rs−Rb)/Rc
各小麦ふすま加工品の濃度に対するIRLを求め、加工小麦ふすま濃度とIRLのグラフを作成し、リパーゼ活性阻害率50%を与える加工小麦ふすま凍結乾燥品分散物における小麦ふすま凍結乾燥品濃度(IC50)を求めた。
小麦ふすま(商品名:ウィートブランDF、フレッシュ・フード・サービス社製、以下同様。)とイオン交換水とを混合し、スラリー(100g中の水不溶性固形分2.94g)を得た。このスラリー液に下表に示す量のペクチナーゼ(ノボザイムズ社製)を添加し、30℃において10分間、アンカー翼を用いて100rpm/minで撹拌しながら酵素処理した。その後95℃まで急速加熱した後、3分間保持することにより酵素を完全に失活させた。
得られた酵素処理物を30℃まで冷却した後、ホモミキサー(T.K.ロボミックス プライミクス社製、以下同じ)を用いて15000r/minの回転数で、30℃、120分間のせん断処理に付した。こうして下表に示す粒度分布の小麦ふすま加工品(スラリー)を得た。
実施例1において、酵素処理時間を30分間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして下表に示す粒度分布の小麦ふすま加工品(スラリー)を得た。
実施例1において、酵素処理時間を240分間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして下表に示す粒度分布の小麦ふすま加工品(スラリー)を得た。
小麦ふすまとイオン交換水とを混合し、スラリー(100g中の水不溶性固形分2.94g)を得た。このスラリー液を、ホモミキサーを用いて15000r/minの回転数で、30℃、120分間のせん断処理に付した。
得られたせん断処理物に、下表に示す量のペクチナーゼを添加し、30℃において30分間、アンカー翼を用いて100r/minで撹拌しながら酵素処理をした。その後95℃まで急速加熱を行った後、3分間保持することにより酵素を完全に失活させた。こうして下表に示す粒度分布の小麦ふすま加工品(スラリー)を得た。
実施例2において、酵素処理に用いる酵素としてペクチナーゼ及びセルラーゼ(ノボザイムズ社製を下表に示す量で併用したこと以外は、実施例2と同様にして下表に示す粒度分布の小麦ふすま加工品(スラリー)を得た。
小麦ふすまとイオン交換水とを混合したスラリー液(100g中の水不溶性固形分2.94g)を比較例1の小麦ふすま未加工品(スラリー)とした。
実施例2において、酵素処理後にせん断処理を行わなかったもの(すなわち酵素処理物)を比較例2の小麦ふすま加工品(スラリー)とした。
実施例4において、せん断処理後に酵素処理を行わなかったもの(すなわちせん断処理物)を比較例3の小麦ふすま加工品(スラリー)とした。
実施例5において、酵素処理におけるセルラーゼ使用量ないし酵素処理時間を下表に示す通りに変更したこと以外は、実施例5と同様にして下表に示す粒度分布の小麦ふすま加工品(スラリー)を得た。
また、酵素処理においてペクチナーゼとセルラーゼを併用し、酵素処理時間を長時間(240分)行った比較例4〜6に係る小麦ふすま加工品は、セルラーゼ吸着能に劣る結果となった。
これに対し、本発明の製造方法で得られた小麦ふすま加工品はいずれも、セルラーゼ吸着能に優れ、且つ、リパーゼ阻害活性も効果的に高められていることがわかる。
Claims (7)
- 小麦ふすまに対して下記(A)及び(B)を施すことを含む、小麦ふすま加工品の製造方法:
(A)ペクチナーゼによる酵素処理、又は、ペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理、
(B)せん断処理。
但し、前記(A)がペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理である場合、酵素処理時間を120分間未満とする。 - 前記(B)により、前記小麦ふすまの粒度分布を下記(P)とする、請求項1記載の小麦ふすま加工品の製造方法。
(P):粒径55μm以下の粒子の割合が15質量%以上 - 前記(A)の酵素処理時間を5分以上とする、請求項1又は2記載の小麦ふすま加工品の製造方法。
- 前記(A)がペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理である場合、セルラーゼの使用量を、小麦ふすま1g当たり40EGU以下とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の小麦ふすま加工品の製造方法。
- 前記(A)がペクチナーゼとセルラーゼとを組合せた酵素処理である場合、酵素処理時間を30分以下とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の小麦ふすま加工品の製造方法。
- 前記(A)の後、前記(B)を行う、請求項1〜5のいずれか1項記載の小麦ふすま加工品の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法により得られる、小麦ふすま加工品。
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