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JP2017202580A - ヒートシール用積層体 - Google Patents

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JP2017202580A JP2016093979A JP2016093979A JP2017202580A JP 2017202580 A JP2017202580 A JP 2017202580A JP 2016093979 A JP2016093979 A JP 2016093979A JP 2016093979 A JP2016093979 A JP 2016093979A JP 2017202580 A JP2017202580 A JP 2017202580A
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Abstract

【課題】酸素吸収性及び非吸着性を兼ね備えた、ヒートシール用積層体を提供する。【解決手段】酸素吸収層2、及び酸素吸収層の一方又は両方の面に存在している非吸着性層4を具備しており、酸素吸収層が、酸素吸収剤及びバインダー樹脂を含有しており、かつ非吸着性層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している、ヒートシール用積層体10a、10b。【選択図】図1

Description

本発明は、ヒートシール用積層体に関する。
食品、薬剤、医薬品、化粧品、電子部品等のための包装材料には、包装体内の酸素による酸化によって内容物の品質が低下しないよう、酸素吸収性フィルムが用いられている。この酸素吸収性フィルムとしては、種々の態様のものが提案されている。
特許文献1では、ベンゼントリオール、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、及び随意の遷移金属化合物を含有している、酸素吸収性フィルムが開示されている。
また、香気を発する食品や各種の薬剤、医薬品等の包装材料には、有効成分を吸着しない非吸着性フィルムが用いられる場合がある。この非吸着性フィルムとしては、例えば特許文献2で、82〜90重量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と10〜18重量%の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とからなるシーラントフィルムが提案されている。
国際公開第2015/122461号 特開2013−28732号公報
包装体の内容物によっては、包装材料に酸素吸収性と非吸着性の両方が求められる場合がある。例えば、医薬品を包装する場合においては、医薬品の酸化劣化防止及び薬効成分の吸着防止が可能であることが必要となる。
また、これらの包装体は、内容物を封入後にシールをして密封するために、ヒートシール性が必要である。包装体では、内部に酸素が侵入しないよう、酸素吸収性と非吸着性を有する層が内側になるようにガスバリアフィルムと積層させて用いられる。そのため、酸素吸収性と非吸着性を有する層に、さらにヒートシール性を付与することが求められる。
したがって、酸素吸収性及び非吸着性を兼ね備えた、ヒートシール用積層体を提供する必要性が存在する。
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈1〉 酸素吸収層、及び上記酸素吸収層の一方又は両方の面に存在している非吸着性層を具備しており、
上記酸素吸収層が、酸素吸収剤及びバインダー樹脂を含有しており、かつ
上記非吸着性層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している、
ヒートシール用積層体。
〈2〉 上記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、上記〈1〉項に記載のヒートシール用積層体。
〈3〉 上記非吸着性層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体75〜95質量%及び酸変性ポリオレフィン系樹脂5〜25質量%を含有している、上記〈1〉又は〈2〉項に記載のヒートシール用積層体。
〈4〉 上記非吸着性層が、上記酸素吸収層の両側に積層されている、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体。
〈5〉 上記酸素吸収剤が、有機系酸素吸収剤である、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体。
〈6〉 上記バインダー樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有している、上記〈1〉〜〈5〉項のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体。
〈7〉 上記バインダー樹脂が、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している、上記〈1〉〜〈6〉項のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体。
〈8〉 上記酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有率が、上記バインダー樹脂の質量に対して10〜50質量%である、上記〈7〉項に記載のヒートシール用積層体。
〈9〉 基材、及び
上記基材に積層されている、上記〈1〉〜〈8〉項のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体
を具備しており、かつ
上記ヒートシール用積層体の上記非吸着性層が、最外層である、
包装用積層体。
〈10〉 上記〈9〉項に記載の包装用積層体、及び内容物を具備しており、かつ
上記包装用積層体の非吸着性層が、上記内容物と接触する側に配置されている、
包装体。
本発明によれば、酸素吸収性及び非吸着性を兼ね備えた、ヒートシール用積層体を提供することができる。
図1は、本発明のヒートシール積層体の層構成を示す側面断面図である。
《ヒートシール用積層体》
図1(a)及び(b)に示すように、本発明のヒートシール用積層体(10a、10b)は、酸素吸収層(2)、及び酸素吸収層(2)の一方又は両方の面に存在している非吸着性層(4)を具備している。この酸素吸収層は、酸素吸収剤及びバインダー樹脂を含有している。また、この非吸着性層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している。
本発明者らは、酸素吸収層の一方又は両方の面に上記の非吸着性層が存在している構成とすることにより、予想外にも酸素吸収性及び非吸着性を両立できることを見出した。理論に拘束されることを望まないが、これは、非吸着性層のエチレン−ビニルアルコール共重合体が海状に、かつ酸変性ポリオレフィン系樹脂が島状に分散しており、この島状の部分においては、酸素のように小さな分子は通過できる一方で、l−メントール等の嵩高いアウトガスは通過しにくいことに起因すると考えられる。
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
〈酸素吸収層〉
酸素吸収層は、酸素吸収剤及びバインダー樹脂を含有している。
本発明のヒートシール用積層体における酸素吸収層では、酸素吸収層全体に対して、バインダー樹脂を、好ましくは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上含み、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、89.7質量%以下、又は85質量%以下で含む。
酸素吸収層の厚さは、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であることができ、また300μm以下、200μm以下、100μm以下、80μm以下、又は50μm以下であることができる。
{酸素吸収剤}
酸素吸収剤としては、有機系酸素吸収剤、又は無機系酸素吸収剤を用いることができるが、異物検査のための金属探知機に反応せず、電子レンジで使用しても発火の恐れがない等の観点から、有機系酸素吸収剤、特にベンゼントリオールを用いることが好ましい。
有機系酸素吸収剤としては、ベンゼントリオール、多価フェノール化合物、アスコルビン酸等、及びこれらの混合物が挙げられる。
ベンゼントリオールとしては、ピロガロール、ヒドロキシキノール、及びフロログルシノール、並びにこれらの混合物が挙げられる。
多価フェノール化合物としては、フェノール、カテコール、没食子酸、レゾルシノール、ヒドロキノン、クレゾール、タンニン酸等が挙げられる。
無機系酸素吸収剤としては、ゼオライト、酸素欠損を有する二酸化チタン、酸化亜鉛、鉄粉等が挙げられる。
{バインダー樹脂}
本発明のヒートシール用積層体における酸素吸収層で用いられるバインダー樹脂としては、随意の熱可塑性樹脂を用いることができる。
バインダー樹脂が酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している場合、酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有率は、酸素吸収層と非吸着性層との間の十分な密着性を得る観点から、バインダー樹脂の質量に対して、10質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であることが好ましく、また製膜性を損なわない観点から、50質量%以下、48質量%以下、又は45質量%以下であることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
本発明に関して、ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーを有するポリマーを意味するものであり、したがってオレフィン系モノマーのみからなるポリマー(ポリオレフィン)だけでなく、オレフィン系モノマーと、(メタ)アクリル酸、アクリレートモノマー、酢酸ビニル等の他のモノマーから構成されるポリマーも意味する。また、ポリオレフィン系樹脂は、酸変性されていても、酸変性されていなくてもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、特にポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、アイオノマー、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
酸素吸収層と非吸着性層との間の密着性を向上させる観点から、バインダー樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有していることが好ましい。また、酸素吸収層と非吸着性層との間の密着性を更に向上させる観点から、バインダー樹脂は、酸変性ポリオレフィン系樹脂を更に含有していることが好ましい。
10℃/分の昇温速度で常温から昇温させていった場合に、示差走査熱量計(DSC)によって測定される吸熱ピークで定義される、バインダー樹脂の融点は、50℃以上、60℃以上、70℃以上、又は80℃以上であってもよく、120℃以下、110℃以下、又は100℃以下であってもよい。バインダー樹脂の融点は、酸素吸収剤の融点よりも低いことが好ましい。その場合、酸素吸収層の成形時に酸素吸収剤が融解せず、安定的に成形することができる。
本発明のヒートシール用積層体における酸素吸収層においては、バインダー樹脂が40体積%以上となるように他の物質が配合され、好ましくはバインダー樹脂は組成物中で50体積%以上となり、より好ましくは60体積%以上となる。
バインダー樹脂の熱特性としては、例えば、そのメルトマスフローレート(MFR)が、JIS K7210に準拠して測定した場合に、0.01g/10min以上、0.05g/10min以上、0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であってもよく、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、20g/10min以下、又は15g/10min以下、10g/10min以下、8g/10min以下、又は5.0g/10min以下であってもよい。
酸素吸収剤の樹脂組成物への混練及び機械の汚染低減の両立の観点から、バインダー樹脂のMFRが、0.1g/10min以上、5.0g/10min以下、又は0.5g/10min以上、3.0g/10min以下でることが好ましい。
本発明のヒートシール用積層体における酸素吸収層で用いられるバインダー樹脂は、好ましくは酸素透過性が高い。本発明で用いられるバインダー樹脂を、25μmの厚みのフィルムに成形した場合、そのフィルムの酸素透過性は、JIS K 7126−2に準拠して測定して、好ましくは20cc/m/hr/atm以上、50cc/m/hr/atm以上、又は100cc/m/hr/atm以上である。
(エチレン−酢酸ビニル共重合体)
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとを少なくとも含むモノマーから重合して得られる共重合体である。エチレン−酢酸ビニル共重合体を製造する際に、エチレン及び酢酸ビニル以外の他の化合物がモノマーとしてさらに用いられていてもよい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、カルボン酸変性等されていてもよい。
酸素吸収層に含まれるバインダー樹脂の質量に対して、酢酸ビニル含有率は、4.0質量%以上、4.5質量%以上、6.0質量%以上、8.0質量%以上、又は10.0質量%以上であってよく、40.0質量%以下、35.0質量%以下、33.0質量%以下、30.0質量%以下、25.0質量%以下、又は20.0質量%以下であってよい。酢酸ビニル含有率は、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体のみが用いられる場合には、酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量に対する割合であり、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体と他の樹脂との混合物が用いられる場合には、全ての酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、その混合物の質量に対する割合である。
酸素吸収剤の樹脂組成物への混練及び機械の汚染低減の両立の観点から、バインダー樹脂の酢酸ビニル含有率が、10.0質量%以上、30.0質量%以下、又は10.0質量%以上、20.0質量%以下であることが好ましい。
(酸変性ポリオレフィン系樹脂)
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、酸を、ポリオレフィン系樹脂にグラフト重合したものである。酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば無水マレイン酸変性ポリオレフィン等が用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては、上記のポリオレフィン系樹脂、中でもポリオレフィンが好適に用いられる。これらの酸変性ポリオレフィン系樹脂を複数種組み合わせて用いてもよい。
例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィン100質量部に対して、無水マレイン酸を0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、又は1.0質量部以上で、50質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、又は5.0質量部以下でグラフト重合したものを用いることができる。このような無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、特開平9−278956号公報に記載のものを挙げることができる。
{他の成分:アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩}
酸素吸収剤として有機系酸素吸収剤、特にベンゼントリオールを用いる場合においては、酸素吸収層は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を更に含有していることが、酸素吸収層の酸素吸収性能を高め、かつ有機系酸素吸収剤を酸素吸収層内に保持する観点から好ましい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩としては、特許文献1に開示されている塩を、開示されている量で用いることができる。
{他の成分:遷移金属化合物}
酸素吸収剤として有機系酸素吸収剤、特にベンゼントリオールを用いる場合においては、本発明の酸素吸収層は、遷移金属化合物を更に含有していることが好ましい。遷移金属化合物は、有機系酸素吸収剤が、酸素と反応する際の触媒としての機能を有しており、遷移金属化合物は、本発明の酸素吸収層に高い酸素吸収性を与えることができると考えられる。遷移金属化合物としては、特許文献1に開示されている化合物を、開示されている量で用いることができる。
〈非吸着性層〉
非吸着性層は、l−メントール、d−リモネン、サルチル酸メチル、カンファー、トコフェロール等の揮発成分、わさび、からし、マスタード等の食品の香気成分の吸着が少なく、特に実質的に吸着せず、包装容器内部の香気成分等を維持することができる層である。より具体的には、非吸着性層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している。
非吸着性層において、EVOHの含有量は、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は82質量%以上であることができ、また95質量%以下、93質量%以下、又は90質量%以下であることができる。無水マレイン酸変性ポリオレフィンの含有量は、5質量%以上、7質量%以上、又は10質量%以上であることができ、また40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は18質量%以下であることができる。
良好な非吸着性能を確保する観点から、EVOHの含有量は、75質量%以上であることが好ましい。また、非吸着性層のヒートシール強さ及び酸素の透過性を良好なものとする観点から、酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有量は、7質量%以上であることが好ましい。
非吸着性層の厚さは、3μm以上、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であることができ、また100μm以下、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であることができる。
非吸着性層は、図1(a)に示すように酸素吸収層の片側のみに配置されていてもよく、また図1(b)に示すように酸素吸収層の両側に配置されていてもよい。好ましくは、製膜後のカールの発生を抑制する観点から、非吸着性層は酸素吸収層の両側に配置されている。
非吸着性層が酸素吸収層の両側に配置されている場合、それぞれの非吸着性層は同一であっても異なっていてもよい。
(エチレン−ビニルアルコール共重合体)
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物であり、エチレン単位の含有量は特に制限はないが、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、又は25モル%以上であることができ、また70モル%以下、60モル%以下、又は55モル%以下であることができる。また、EVOHのビニルエステル単位のケン化度としては90モル%以上、95モル%以上、99モル%以上、又は100モル%であることができる。ケン化度が高いと、結晶化しやすく、非吸着性も高まる。そして、溶融時の熱安定性も安定するため、ケン化度は高い方が好ましい。ここでビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表例として挙げられるが、その他にプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルも挙げられる。これらのビニルエステルは1種又は2種以上混合して使用してもよい。またEVOHはエチレン含有量、ケン化度、重合度の内の少なくとも一つが異なるEVOHを混合して使用してもよい。EVOHには本発明の目的が阻害されない範囲で他の共重合成分を含有させてもよい。これらのEVOHを複数種組み合わせて用いてもよい。
(酸変性ポリオレフィン系樹脂)
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、酸素吸収層に関して挙げた酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
(他の成分)
非吸着性層は、本発明の目的を損なわない範囲で、随意の添加物を含有していてもよい。添加物としては、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、帯電防止剤、核剤、充填剤、顔料、染料、難燃剤、アンチブロッキング剤等の添加物が挙げられる。
《ヒートシール用積層体の製造方法》
ヒートシール用積層体の製造方法は、混練工程、非吸着性層及び酸素吸収層を製膜する製膜工程、並びに非吸着性層及び酸素吸収層を積層させる積層工程を含む。
〈混練工程〉
非吸着性層のEVOH及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を、2.2MJ/Kg以上の比エネルギーで溶融混合する。ここで、溶融混合時の比エネルギーの範囲は、好ましくは、2.7MJ/Kg以上12.1MJ/Kg以下である。2.2MJ/Kg以上の比エネルギーで、これらを溶融混合することで、得られる樹脂の混合状態が好適となる。比エネルギーが、12.5MJ/Kg以下である場合には、樹脂が劣化する等の問題が発生しにくい。
比エネルギーとは、溶融混練する際に、単位重量当り(1kg)の樹脂に溶融混練設備から与えられるエネルギーをいい、以下の式により求められる値であり、数値が大きいほど、練りの効果が高いことになる。
Figure 2017202580
ここで、トルク、混練機回転数、樹脂押出量は、以下を意味する。
トルク:混練機のスクリューを回転させるのに必要な力
混練機回転数:単位時間当たりの混練機のスクリューを回転させるのに必要な混練機モータの回転数
樹脂押出量:単位時間当たりに混練機から押し出される樹脂の量
EVOHと酸変性ポリオレフィン系樹脂との溶融混合は、二軸以上のスクリュー混練機で行うことができる。二軸以上のスクリュー混練機においては、スクリュー形状と樹脂押出量が比エネルギーに影響する。スクリュー形状は、フライト部のみの汎用のスクリューを用いたもの(以下、フルフライト型という。)より、フライト部にニーディング部、逆フライト部及び/又はミキシング部を組み合わせて練りの効果を大きくしたもの(以下、高剪断型という。)を用いることが好ましい。更に好ましくは、高剪断型の二軸押出機を使用する。
スクリューは、形状がフライトスクリューとパイナップル、ニーディングディスクからなるスクリューを単独又は組み合わせて使用することができる。
酸素吸収層がポリオレフィン及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含む場合には、上記と同様にしてこれらを混練してもよい。
〈製膜工程〉
製膜工程は、非吸着性層及び酸素吸収層を製膜する工程である。製膜は、例えば多層インフレーション法、多層Tダイ法、多層キャスト法等の共押出法により行うことができる。
《包装用積層体》
本発明の包装用積層体は、基材、及び基材に積層されている本発明のヒートシール用積層体を具備しており、かつ非吸着性層が最外層である。包装用積層体を用いて包装体を構成する場合、この非吸着性層を内容物側に配置することができる。
基材と本発明のヒートシール用積層体との積層は、ヒートシールにより行ってもよく、又は接着層を介して行ってもよい。接着層としては、例えば、ドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
〈基材〉
基材は、包装体において本発明のヒートシール用積層体を積層させる基材である。この基材は、ヒートシール用積層体に適度なコシ及び外部からの水分や酸素等の浸入を防止するバリア性を付与できることが好ましい。
このような基材としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、飽和又は不飽和ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等、及びこれらの組合せで作られた基材を使用することができる。これらの材料で作られた基材は単層で使用してもよく、また積層させて使用してもよい。さらにバリア性を高める目的で、純アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、又はアルミナ若しくはシリカ蒸着フィルム等のバリア層を積層させてもよい。
《包装体》
本発明の包装体は、本発明の包装用積層体、及び内容物を具備しており、かつ包装用積層体の非吸着性層が、内容物と接触する側に配置されている。
本発明の包装体では、本発明の包装用積層体は、内容物を収容するようにして、例えば非吸着性層が互いに対向してヒートシールされていてもよく、又は他の包装用の層若しくは積層体と対向させてヒートシールされていてもよい。
包装体の形態としては、袋、チューブ、ブリスター容器等の他、カップ容器等の密封できる成形容器が挙げられる。
〈内容物〉
本発明の包装体の内容物としては、随意の内容物であってよいが、香気成分を有する食品や、揮発性の有効成分(揮発成分)を含む湿布薬等の医薬品、化粧品等が内容物である場合に、本発明の包装体が特に有用となる。
《包装体の製造方法》
包装体の製造方法は、ヒートシール用積層体を基材に積層させ、ヒートシール用積層体の非吸着性層を互いに対向させてヒートシールすることを含む。
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
《包装用積層体の作製》
〈実施例1〉
Tダイでの多層押出成形にて、酸素吸収層が中間層となり、非吸着性層が内層及び外層となるように2種3層のフィルム状のヒートシール用積層体を作製した。非吸着性層としては、EVOH及び無水マレイン酸変性ポリエチレンを質量比95:5で高せん断の二軸押出機で混練して作製した樹脂を使用し、酸素吸収層としては、EVA及び酸素吸収剤を質量比95:5で混練して作製した樹脂を使用した。酸素吸収剤としては、ピロガロール:炭酸カリウム:ステアリン酸鉄を、質量比1:0.5:0.05で混合した酸素吸収剤を使用した。非吸着性層の厚さはそれぞれ10μm、酸素吸収層の厚さは30μmとした。
〈実施例2〜6〉
非吸着性層のEVOH及び無水マレイン酸変性ポリエチレンの質量比を、表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2〜6のヒートシール用積層体を作製した。
〈実施例7〜9〉
酸素吸収層のEVA及び酸素吸収剤の質量比を、表1に示すように変更したことを除き、実施例5と同様にして、実施例7〜9のヒートシール用積層体を作製した。
〈実施例10〜12〉
酸素吸収層として、無水マレイン酸変性ポリエチレン、EVA、及び酸素吸収剤を、表1に示す質量比で混練して作製した樹脂を使用したことを除き、実施例5と同様にして、実施例10〜12のヒートシール用積層体を作製した。
〈実施例13〉
酸素吸収層のEVAの代わりに、LDPEを用いたことを除き、実施例5と同様にして、実施例13のヒートシール用積層体を作製した。
〈比較例1〜3〉
非吸着性層として、EVOHのみを用いたことを除き、実施例1、10、及び13と同様にして、比較例1〜3のヒートシール用積層体を作製した。
〈比較例4〉
非吸着性層として、LLDPEを用いたことを除き、実施例1と同様にして、比較例4のヒートシール用積層体を作製した。
《評価》
〈ヒートシール強さ〉
PET/アルミニウム箔の層構成を有する基材のアルミニウム箔面に各実施例及び比較例のヒートシール用積層体をドライラミネートし、積層体の非吸着層同士を合わせて、150℃、0.2MPa、0.5secの条件でヒートシールした。ヒートシール部分の15mm幅の接着強度を、JIS Z 0238に基づきT型剥離試験で測定した。
〈非吸着性〉
各実施例と各比較例のヒートシール用積層体(100mm×100mm)を40℃で発生させたl−メントール蒸気に一週間曝露した。ヒートシール用積層体に吸着したl−メントールをメチルエチルケトンで抽出し、ガスクロマトグラフィーによりl−メントールの濃度を測定し、単位面積当たりの吸着量を算出した。
〈酸素吸収能〉
各実施例と各比較例のヒートシール用積層体(50mm×50mm)を、PET/アルミニウム箔/ポリエチレンの層構成を有するアルミニウムラミネート包装袋に入れ、包装袋の容積(空気量)が15mLになるように四面体型にヒートシールして密封した。常温で30日間保存後の包装内の空気中の酸素濃度を測定し、大気中の酸素濃度との差からヒートシール用積層体1cm辺りの酸素吸収量を算出した。包装内の酸素濃度は、隔膜計ガルバニ電池式酸素センサー(パックマスターRO−103、飯島電子工業株式会社)の測定針を袋内に刺して測定した。
〈製膜性〉
各実施例と各比較例のヒートシール用積層体の作製時に、Tダイから樹脂混合物が出てくるときに幅方向に均一に押し出されず、縞状の模様のフィルムが形成された場合には×とし、このような問題がなかった場合を○とした。
〈密着性〉
{試験1}
幅18mmのポリエステルテープ No.5511(ニチバン株式会社、粘着力:2.81N/10mm)を、接着部長さが50mm以上となるようヒートシール用積層体の表面に貼り付け、1分後にテープの一方を持ってフィルム表面に対して直角の方向に瞬間的に引き剥がす。テープ側に何も付着しなかった場合には○、テープを付着させた領域の1/3未満の領域に酸素吸収層と非吸着層の間で剥がれが生じた場合を△とし、テープを付着させた領域の1/3以上の領域に酸素吸収層と非吸着層の間で剥がれが生じた場合を×とした。
{試験2}
幅18mmのセロテープ(登録商標) No.405(ニチバン株式会社、粘着力:3.93N/10mm)を、接着部長さが50mm以上となるようヒートシール用積層体の表面に貼り付け、1分後にテープの一方を持ってフィルム表面に対して直角の方向に瞬間的に引き剥がす。テープ側に何も付着しなかった場合には○、テープを付着させた領域の1/3未満の領域に酸素吸収層と非吸着層の間で剥がれが生じた場合を△とし、テープを付着させた領域の1/3以上の領域に酸素吸収層と非吸着層の間で剥がれが生じた場合を×とした。
結果を表1に示す。なお、表1中の「吸着量」に関し、「未検出」は、l−メントールの存在を示すピークが見られなかったことを意味するものであるのに対し、「0.00」は、当該ピークは観測されたものの、吸着量が0.004mg/100cmに満たなかったことを意味するものである。
Figure 2017202580
酸素吸収剤の含有量が同じである実施例1〜6及び比較例1〜3を比較すると、実施例1〜6のヒートシール用積層体は、比較例1〜3のヒートシール用積層体と比較して、ヒートシール性、酸素吸収能及び密着性のいずれにおいても良好な結果を示していることが理解されよう。中でも、ヒートシール性に関しては、酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有量が8質量%以上である実施例2〜6が優れており、吸着量に関しては、酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有量が25質量%以下である実施例1〜5が優れており、また酸素吸収能に関しては、酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有量が12質量%以上である実施例3〜6が特に優れていた。
また、実施例1〜6と比較例4を比較すると、実施例1〜6のヒートシール用積層体は、比較例4と比較して、いずれも吸着量が大きく低下していること、及び酸素吸収能が大きく下回っていないことが理解されよう。
実施例5と、酸素吸収剤の含有量を変化させた実施例7〜9を比較すると、吸着剤の含有量に比例して酸素吸収能が大きくなっていること、及び酸素吸収剤の含有量の変化により、ヒートシール性、吸着量、酸素吸収能、製膜性、及び密着性のいずれも損なわれていないことが理解できよう。
実施例5と、酸素吸収層に酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している実施例10〜12を比較すると、酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有量が、バインダー樹脂の質量に対して10〜50質量%の範囲内である実施例10及び11は、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有していない実施例5と比較して、密着性が向上していること、並びにヒートシール性、吸着量、及び酸素吸収能のいずれも損なわれていないことが理解されよう。
実施例5と実施例13とを比較すると、実施例13は、実施例5と比較して、密着性は良好ではないものの、ヒートシール性、吸着量、酸素吸収能、及び製膜性については実施例5と同等の結果が得られていることが理解できよう。
2 酸素吸収層
4 非吸着性層
10a、10b ヒートシール用積層体

Claims (10)

  1. 酸素吸収層、及び前記酸素吸収層の一方又は両方の面に存在している非吸着性層を具備しており、
    前記酸素吸収層が、酸素吸収剤及びバインダー樹脂を含有しており、かつ
    前記非吸着性層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している、
    ヒートシール用積層体。
  2. 前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、請求項1に記載のヒートシール用積層体。
  3. 前記非吸着性層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体75〜95質量%及び酸変性ポリオレフィン系樹脂5〜25質量%を含有している、請求項1又は2に記載のヒートシール用積層体。
  4. 前記非吸着性層が、前記酸素吸収層の両側に積層されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体。
  5. 前記酸素吸収剤が、有機系酸素吸収剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体。
  6. 前記バインダー樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体。
  7. 前記バインダー樹脂が、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している、請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体。
  8. 前記酸変性ポリオレフィンの含有率が、前記バインダー樹脂の質量に対して10〜50質量%である、請求項7に記載のヒートシール用積層体。
  9. 基材、及び
    前記基材に積層されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のヒートシール用積層体
    を具備しており、かつ
    前記ヒートシール用積層体の前記非吸着性層が、最外層である、
    包装用積層体。
  10. 請求項9に記載の包装用積層体、及び内容物を具備しており、かつ
    前記包装用積層体の非吸着性層が、前記内容物と接触する側に配置されている、
    包装体。
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