JP2018162073A - 蓋材用無延伸共押出積層フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
包装材では、食品の賞味期限を延長する包装材や包装方法を提供することで、上記取り組みに寄与しており、例えば、食品の劣化の要因となる酸素流入や雑菌繁殖を抑制する手段が活用されている。
酸素流入や雑菌繁殖の抑制方法としては、密封包装での加熱殺菌や無菌室での密封包装が行われており、その効果をさらに高める方法として、ガスバリア性包材での真空パックやガス置換包装が用いられている。
特に、精肉や鮮魚、惣菜等の賞味期限の短い食品は、従来、発泡ポリスチレンやポリプロピレンのシートを成形した樹脂トレーにラップフィルムを巻き付けたものや、樹脂トレーに嵌め合わせの蓋をしただけのものが主流であり、これらの包装食品は、賞味期限が短い上に販売量が多いため、廃棄ロス削減が喫緊の課題となっている。
しかしながら、従来のガス置換包装体(ガスパック)用蓋材は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されているような、ポリアミド樹脂層とエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂層とヒートシール性ポリオレフィン樹脂層を有する共押出多層フィルムと、二軸延伸ポリエステルフィルム、無延伸ポリエステルシート(APET)やポリ塩化ビニルシート、ポリスチレンシートなどの基材とをドライラミネートした、総厚およそ100〜300μmの厚い積層体であり、既存のラップフィルムのような柔軟性と張りが求められるトレー蓋材には用いることができない。また、生鮮食品や惣菜からの水分により蓋材内面が曇ることを防ぎ、包装体の内容物視認性を維持するための防曇性が不十分である。
ガスバリア性と防曇性を付与した蓋材としては、例えば特許文献3や特許文献4を挙げることができる。しかし、これらはポリビニルアルコール樹脂フィルムと防曇剤を塗布したポリオレフィン樹脂フィルムを積層したものであり、防曇剤塗布層が内容物に接触して部分的に欠落することにより、防曇性が不十分になるか、あるいは外観が損なわれ、また防曇剤層によりフィルムが固着してしまうという課題があった。さらに、フィルムの吸湿によってガスバリア性が大きく低減するといった課題もある。
また、上記特許文献に開示されたいずれの技術には、フィルム同士を2次加工で積層する工程が含まれるため、製造費用と製造時間を要するといった別の課題もある。
本発明のフィルムの製造方法は、公知の方法を用いて行うことができ、例えば、共押出インフレーション法および共押出Tダイ法等を用いることができる。
本発明のフィルムは、外層にポリプロピレン系樹脂(以下、PPと略記することがある。)とポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂(以下、PS−POと略記することがある。)とを含む層、またはポリプロピレン系樹脂を含む層とポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂を含む層とをそれぞれ1層以上配する。
なお、外層にポリプロピレン系樹脂とポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂の両方を含む層として設けても、外層にポリプロピレン系樹脂を含む層とポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂を含む層をそれぞれ1層以上設けてもかまわない。
また、外層にポリプロピレン系樹脂を含む層とポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂を含む層を設ける場合は、ヒートシール時に熱板との融着を防ぐ観点から、ポリプロピレン系樹脂を含む層をポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂を含む層より外層側に設けたほうが好ましい。
重合体ブロック(a)の水素添加ブロック共重合体中に占める割合または重合体ブロック(a)と重合体ブロック(c)のビニル芳香族化合物の含量の和は、通常3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%である。重合体ブロック(a)の割合または重合体ブロック(a)と重合体ブロック(c)のビニル芳香族化合物の含量の和が3質量%未満の場合には、得られる組成異物の機械的強度が劣る傾向となる。また、重合体ブロック(a)の割合または重合体ブロック(a)と重合体ブロック(c)のビニル芳香族化合物の含量の和が30質量%を超える場合は、組成物の柔軟性および透明性が劣る傾向がある。
本発明のフィルムは、内容物の食品の腐敗を防ぐ目的で、酸素ガスバリア層を中間層に配する。
ガスバリア層としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、EVOHと略記することがある)層、またはポリメタキシレンとアジピン酸からなるポリメタキシリレンアジパミド樹脂(以下、MXDと略記することがある)を含む層を少なくとも1層備えることで、賞味期限の延長に必要な酸素バリア性を付与し易い。より高いガスバリア性の効果の点では、EVOH層を配することがより好ましく、耐熱性・耐水性を兼ね備える点においては、MXD層を配することが好ましい。
ガスバリア層の厚さを1μm以上とすることにより、本発明の目的に十分な酸素バリア性を付与することができ、且つ安定した製膜が可能となる。また、該厚さを8μm以下とすることにより、経済性に優れる他、耐ピンホール性の低下が避けられる。
本発明のフィルムは、内層に防曇剤を含有したポリオレフィン樹脂からなるヒートシール層を少なくとも1層有することで、収容物の食品等からの水分による蓋材内面の曇り抑制と、底材等の被着体とのヒートシール性の機能を付与できる。
中でも、EVAは、透明性や柔軟性を付与する観点で好ましい。また、LLDPEは、ヒートシール可能温度域が広く、表面の強度、滑り性が良好である観点で好ましい。
本発明のフィルムの内層(ヒートシール層)には、防曇剤とポリオレフィン系樹脂を含むヒートシール層を配する。防曇剤は、ポリオレフィン系樹脂と混合して含有され、防曇剤と樹脂との混合は、マスターバッチで混練ペレットを作製する方法、樹脂と防曇剤をフィルム製膜押出機へ供給し押出機内で混合する方法、等が挙げられる。マスターバッチの防曇剤濃度は特に限定されず、フィルム内層における防曇剤含有濃度が後述の濃度範囲となるよう調整すればよい。
防曇剤をポリオレフィン樹脂と混合してフィルム内層を形成することで、塗布法で防曇剤層を形成する場合に比べ、フィルム成形、包装体成形、収容物接触を経ても、フィルム表面の防曇剤量が低減することなく、防曇効果を安定して維持できる。また、ガスバリア層の存在により、防曇剤のフィルム外層側、包装体外側への移行拡散が抑制され、防曇剤がフィルム内層表面へ効果的に析出し、効率的に防曇性を発現し得る。更に、外層側への移行抑制により、蓋材フィルムの外層側が接触する包装機熱板への防曇剤付着汚れが発生することもない。
防曇剤含有濃度は、フィルム内層に対して、下限は0.020質量%以上が好ましく、0.025質量%以上がより好ましく、0.030質量%以上がさらに好ましい。上限は0.100質量%以下が好ましく、0.090質量%以下がより好ましく、0.080質量%以下がさらに好ましい。
0.020質量%以上により良好な防曇性効果を発現でき、0.100質量%以下により防曇剤の内層表面への過剰な析出を抑制し、フィルム表面のベタつきや粉末の発生を抑制することができる。
本発明のフィルムは、内層(ヒートシール層)の中間層側に、ヒートシール層と隣接するイージーピール層を更に設けることもできる。底材(トレー)とヒートシールし密封後、蓋材を大きな力で引っ張らなくとも手で容易に引き開封することが可能になる。
イージーピール層は、2種類以上の互いに非相溶性のポリオレフィン系樹脂の混合によって構成することで凝集破壊性を有する、開封時にこの層の内部で凝集破壊が生じて容易に開封が可能となる。その開封時、蓋材フィルムの開口部周辺のヒートシール層は、トレー側に残る。
また、副成分には、イージーピール層に使用される樹脂の主成分と相溶性が低く、均等に分散可能な樹脂1種以上を選択すると、良好な凝集破壊性が得られるので好ましい。例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレン共重合体、ポリブテン(PB)、ポリスチレン(PS)等が好ましい。
中でも、主成分と副成分の組合せとして、LDPEとPB、LLDPEとPBの組合せが、安定した開封性と層間接着強度の両立の点でより好ましい。
イージーピール層に使用される副成分は、イージーピール層全体に対し、下限は20質量%以上、好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、上限は50質量%以下、好ましくは45質量%以下である。下限の20質量%より少ないと、開封時イージーピール層の凝集破壊性が小さくなり開封し難くなり好ましくなく、上限の50質量%を超えると、イージーピール層の凝集破壊性が大きくなるため好ましくない。
イージーピール層の厚さは、透明性と開封性の点から薄く形成することが望ましく、上限は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。上限の10μmを透明性が低下することと、開封性が低下するため好ましくない。特に下限は1μm以上が好ましく、2μm以下がより好ましい。下限の1μmより少ないと、製膜安定性や厚さ精度の観点から好ましくない場合がある。
本発明のフィルムは、各層の層間剥離強度を高める目的で、必要に応じて接着層を設けることができる。接着層は1層であっても良いし、複数層であっても良い。
接着層として使用可能な接着性樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、などのポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が例示でき、その他、変性ポリオレフィン系樹脂、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体もしくはエチレン系エラストマーに、アクリル酸もしくはメタアクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、またはマレイン酸、フマール酸もしくはイタコン酸等の二塩基性脂肪酸の無水物を化学的に結合させたものを例示できる。中でも、ポリエチレンまたはポリプロピレンをベースとした接着性樹脂を用いることが好ましい。
本発明のフィルムの層構成は、外層にポリプロピレン樹脂とポリスチレン−ポリオレフィン樹脂との混合層、またはポリプロピレン樹脂層とポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂層との積層、中間層にエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物またはポリメタキシリレンアジパミド樹脂からなるガスバリア層、内層に防曇剤含有ヒートシール層を有した構成であれば、特に制限はなく、各層間に接着樹脂層等の他の層を配しても良い。
本発明のフィルムの総厚は、フィルム製膜性、フィルムの剛性や強度、ヒートシール性と熱板非融着性、ガスバリア性、復元性、経済性などを良好に兼ね備える観点から、フィルム総厚の下限は20μm以上が好ましい。また、フィルム総厚の上限は60μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは45μm以下である。フィルム総厚が20μm未満であると、フィルム製膜性、フィルムの剛性や強度の観点で好ましくなく、フィルム総厚が、60μmをこえると、製造コストの面で好ましくない。
本発明のフィルムは、各種包装体への使用に好適である。本発明のフィルムは、ガスバリア性が良く、トレー(トレイ)等との密封シール性と充分な防曇性と継続的な防曇性能を兼ね備え、特に、包装時に包装体を変形させず張りよく包装が可能なため、段積み、運搬、保管、陳列の際の痕残り(転写)が起き難く、ガス置換包装(ガスパック)等の深絞り包装体や、ブリスターパック、トレー(トレイ)包装体などの蓋材としての用途に有用である。
内層(ヒートシール層)への防曇剤の含有は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)に対し防曇剤15質量%の比率で配合し混練したマスターバッチを用い、更に当該マスターバッチをLLDPEと混合し、内層における防曇剤含有濃度を0.075質量%とした。実施例4,5については、更にイージーピール層とイージーピール層より内側にポリオレフィン系樹脂層を設けた。イージーピール層は、樹脂成分を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)とポリブテン樹脂(PB)を70/30の質量割合で配合し、内層へ添加したのと同じ防曇剤のマスターバッチを使用し、防曇剤の含有濃度を0.075質量%となるように添加した。イージーピール層より内側のポリオレフィン系樹脂層は、内層(ヒートシール層)と同様に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)に対し、同じ防曇剤マスターバッチを用い、防曇剤含有濃度を0.075質量%とした。
比較例3においては、無延伸共押出積層フィルムを作製後、延伸機に投入し延伸倍率縦横各1.5倍、熱固定なしで延伸を行い、熱収縮性フィルムを得た。
底材フィルムを底面10cm角、深さ5cmの略直方体の深絞り形状に真空成型し、水50mlを収容し、底材のフランジ部と蓋材フィルムとを重ね、その周縁部を140℃、2秒間、0.5MPaの設定条件でヒートシールすると共に、窒素ガスを圧力300kPa、流量8Lの条件で封入し、ガス置換包装体(ガスパック)を作製した。尚、ヒートシール熱板は、蓋材の外層側に位置する。
PP; ポリプロピレン単独重合体、融点160℃
PS−PO;ポリスチレン−ポリオレフィン共重合体
Ny; ナイロン6単独重合体
EVOH;エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物 32モル%
MXD;ポリメタキシリレンジアジパミド樹脂
PE; 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
PB; ポリブテン樹脂
防曇; 防曇剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル
AD; 不飽和カルボン酸変性ポリエチレン系接着樹脂
[PP60wt%+PS−PO40wt%](10μm)/AD(2μm)/EVOH(2μm)/AD(4μm)/PE+防曇(22μm)、総厚40μm
PP(2μm)/PS−PO(8μm)/AD(2μm)/EVOH(2μm)/AD(4μm)/[PE+防曇](22μm)、総厚40μm
PP(2μm)/PS−PO(8μm)/AD(2μm)/PA(2μm)/EVOH(2μm)/AD(4μm)/[PE+防曇](20μm)、総厚40μm
PP(2μm)/PS−PO(8μm)/AD(2μm)/PA(2μm)/EVOH(2μm)/AD(4μm)/[PE+防曇](16μm)/[(PE/PB=70/30)+防曇](2μm)/[PE+防曇](2μm)、総厚40μm
PP(2μm)/PS−PO(8μm)/AD(2μm)/PA(2μm)/MXD(2μm)/AD(4μm)/[PE+防曇](16μm)/[(PE/PB=70/30)+防曇](2μm)/[PE+防曇](2μm)、総厚40μm
PP(10μm)/AD(2μm)/EVOH(2μm)/AD(4μm)/[PE+防曇](22μm)、総厚40μm
PS−PO(10μm)/AD(2μm)/EVOH(2μm)/AD(4μm)/[PE+防曇](22μm)、総厚40μm
Ny(16μm)/EVOH(2μm)/AD(2μm)/[PE+防曇](20μm)、総厚40μm
<熱板融着>
ヒートシールの際に、蓋材フィルムが熱板に融着しなかったものを「○」、したものを「×」と評価した。
水平台上のガス置換包装体の蓋材の中央部に、8cm角、300gの金属板を載せ、5℃、24時間静置保管した。その後、金属板を降ろして包装体の蓋材を観察し、金属板を載せた箇所に凹み痕が5分以内に消えたものを「○」、10分以内に消えたものを「△」、10分以内に消えなかったものを「×」とした。
ガス置換包装体を作製直後に水平台上に静置し、水平面に対し、ヒートシール部(フランジ部)の反り返りが2mm未満だったのものを「○」、2mm以上だったものを「×」とした。
ガス置換包装体を作製後、本発明の積層フィルム(蓋材フィルム)を剥離し、積層フィルムに層間剥離が発生するかどうかを評価した。10パック剥離し、層間剥離が0パックだったものを「○」、層間剥離が1〜3パックだったものを「△」、4パック以上層間剥離したものを「×」とした。
ガス置換包装体を作製後、本発明の積層フィルム(蓋材フィルム)を剥離した際、剥離強度が15N/15mm幅未満のものを「○」、15N/15mm幅以上のものを「×」とした。
一方、比較例1は、外層にポリプロピレン系樹脂層のみを配しているので復元性が良くなく、比較例2は、外層にポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂層のみを配しているため、ヒートシール時に熱板への融着が発生した。比較例3の熱収縮性フィルムは、底材変形や接着強度に問題があった。
さらに、実施例4および実施例5については、イージーピール層を設けたため、易開封性(イージーピール性)が、良好な結果となった。
2;底材、トレー
3;蓋材と底材とのヒートシール密着部(トップシール部)
4;生鮮食品等の収容物
5;不活性ガス充填部
10;深絞り包装体
Claims (6)
- 少なくとも外層、中間層、および内層を有する積層フィルムであって、前記外層が、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂とを含む層、またはポリプロピレン系樹脂を含む層とポリスチレン−ポリオレフィン共重合体樹脂を含む層とをそれぞれ1層以上有し、前記中間層がエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物またはポリメタキシリレンアジパミド系樹脂を含むガスバリア層を有し、前記内層が防曇剤とポリオレフィン系樹脂とを含むヒートシール層を有し、かつ、フィルムの総厚が20μm以上60μm以下である、蓋材用無延伸共押出積層フィルム。
- 前記積層フィルムの中間層と内層との間にポリアミド系樹脂を含む層を有する、請求項1に記載の蓋材用無延伸共押出積層フィルム。
- 前記積層フィルムのヒートシール層の中間層側に該ヒートシール層と隣接するイージーピール層を有する、請求項1又は請求項2に記載の蓋材用無延伸共押出積層フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の蓋材用無延伸共押出積層フィルムを用いた深絞り包装体用蓋材。
- 請求項4に記載の蓋材と、深絞り包装体用底材とからなる深絞り包装体。
- ガス置換深絞り包装体である、請求項5に記載の深絞り包装体。
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