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JP2017201779A - 素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 寄生発振を低減できる素子を提供する。
【解決手段】 テラヘルツ波の発振又は共振に用いる素子であって、第1の導体102と、第2の導体105と、第1の導体と第2の導体との間に配置されている誘電体104と、第1の導体と第2の導体との間に互いに並列に接続されている第1の負性抵抗素子101a及び第2の負性抵抗素子101bと、を有する共振部108と、第1の負性抵抗素子及び第2の負性抵抗素子のそれぞれにバイアス電圧を供給するバイアス回路120と、バイアス回路と共振部とを接続する線路103と、を有し、第1の負性抵抗素子と第2の負性抵抗素子との正位相の相互注入同期が不安定で、第1の負性抵抗素子と第2の負性抵抗素子との逆位相の相互注入同期が安定になるように構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、テラヘルツ波の発振又は検出に用いる素子に関する。
ミリ波帯からテラヘルツ帯まで(30GHz以上30THz以下)の周波数領域の電磁波(以下、「テラヘルツ波」とよぶ)を発生する電流注入型の光源として、負性抵抗素子にアンテナを集積した発振器がある。具体的には、負性抵抗素子である2重障壁型の共鳴トンネルダイオード(RTD:Resonant Tunneling Diode)とマイクロストリップアンテナとを同一基板上に集積したテラヘルツ波を発振可能な素子がある。
特許文献1には、複数の負性抵抗素子にアンテナを集積した発振器において、複数の負性抵抗素子を正位相又は逆位相で同期させることにより、テラヘルツ波の発振出力を向上することが記載されている。
負性抵抗素子を用いた素子は、負性抵抗素子のバイアス電圧を調整するための電源と配線とを含むバイアス回路に起因した寄生発振を生じることがある。寄生発振は、所望の周波数と異なる低周波側の周波数帯における寄生的な発振のことを指し、所望の周波数における発振出力を低下させる。
特許文献2には、負性抵抗素子から低インピーダンス回路を構成するシャント抵抗までの距離を、周波数fLC=1/2π√LCの等価波長の1/4より大きくする構成が記載されている。なお、周波数fLCは、配線構造のストリップ導体のインダクタンスをL、マイクロストリップアンテナの容量をCとする。特許文献2に記載の構成によれば、インダクタンスLを大きくして共振周波数fLCを下げることで、周波数fLCにおける抵抗性損失を増大させて給電構造に起因した寄生発振を低減する。
特開2013−168928号公報 特開2014−14072号公報
特許文献2の構成によれば、パッチアンテナ等のマイクロストリップアンテナを用いた発振器における寄生発振を低減できる。しかしながら、ストリップ線の外側に低インピーダンス回路を配置する構成であるため、配線構造に起因した比較的高周波帯(3GHzより大きい)の寄生発振が発生する恐れがある。また、特許文献1には、給電構造などに起因した寄生発振を抑制する方法については記載されていない。
本発明は上記課題に鑑み、従来よりも高周波帯の寄生発振を低減できる素子を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての素子は、テラヘルツ波の発振又は検出に用いる素子であって、第1の導体と、第2の導体と、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置されている誘電体と、前記第1の導体と前記第2の導体との間に互いに並列に接続されている第1の負性抵抗素子及び第2の負性抵抗素子と、を有する共振部と、前記第1の負性抵抗素子及び第2の負性抵抗素子のそれぞれにバイアス電圧を供給するバイアス回路と、前記バイアス回路と前記共振部とを接続する線路と、を有し、前記第1の負性抵抗素子と前記第2の負性抵抗素子との正位相の相互注入同期が不安定で、前記第1の負性抵抗素子と前記第2の負性抵抗素子との逆位相の相互注入同期が安定になるように構成されていることを特徴とする。
本発明の一側面としての素子によれば、従来よりも高周波帯の寄生発振を低減できる。
実施形態の素子の構成を説明する図。 実施形態の素子の構成を説明する図。 第1の実施例の素子のアドミタンス特性を説明する図。 第1の実施例の素子の特性を説明する図。 第1の実施例の素子の特性を説明する図。 第2の実施例の素子の構成を説明する図。 第3の実施例の素子の構成を説明する図。 第3の実施例の素子の特性を説明する図。
(実施形態)
本実施形態に係る素子100について、図1を用いて説明する。素子100は、発振周波数fTHzの電磁波を発振する発振素子(発振器)である。図1(a)は、本実施形態に係る素子100の外観を示す斜視図であり、図1(b)はそのA−A断面図の模式図である。なお、素子100は、以降「発振器100」と呼ぶ。
まず、発振器100の構成について説明する。発振器100は、共振部(アンテナ)108と、線路103と、バイアス回路120と、を有する。アンテナ108は、上導体(第1の導体)102、第2の導体105、上導体102と第2の導体105との間に配置されている誘電体104、及び上導体102及び第2の導体105との間に電気的に接続された2つの負性抵抗素子101a、101bを有する。第2の導体105及び誘電体104は、アンテナ108の周囲の領域にも配置されている。2つの負性抵抗素子101a、101bの一方を第1の負性抵抗素子101aとよび、他方を第2の負性抵抗素子101bと呼ぶ。
アンテナ108における上導体102と第2の導体105との二導体で誘電体104を挟む構成は、有限な長さのマイクロストリップラインなどを用いたマイクロストリップ共振器である。本実施形態では、テラヘルツ波の共振器としてマイクロストリップ共振器の一種であるパッチアンテナを用いている。
アンテナ108は、テラヘルツ波の電磁波利得を有する2つの負性抵抗素子101a、101bとテラヘルツ波帯の共振器とが集積されたアクティブアンテナである。第1の負性抵抗素子101a及び第2の負性抵抗素子101bのそれぞれは、電流電圧特性において、電圧の増加に伴って電流が減少する領域、すなわち負の抵抗をもつ領域(微分負性抵抗領域)が現れる素子である。第1の負性抵抗素子101aと第2の負性抵抗素子101bとは、互いに電気的に並列であり、上導体102と第2の導体105との間に電気的に接続されている。また、第1の負性抵抗素子101aの利得と、第2の負性抵抗素子101bの利得とは、等しいことが望ましい。ここで、「利得が等しい」とは、第1の負性抵抗素子101aの利得が、第2の負性抵抗素子101bの利得の0.5倍以上1.5倍以下の範囲にあればよく、例えば、半導体加工技術の加工精度で基準とされる±10%の範囲であれば十分許容される。
第1の負性抵抗素子101a及び第2の負性抵抗素子101bとしては、具体的には、RTDやエサキダイオード、ガンダイオード、一端子を終端したトランジスタなどの高周波素子を用いるのが好適である。また、タンネットダイオード、インパットダイオード、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)、化合物半導体系電FET、高電子移動度トランジスタ(HEMT)などを用いてもよい。また、超伝導体を用いたジョセフソン素子の微分負性抵抗を用いてもよい。本実施形態では、テラヘルツ波帯で動作する代表的な微分負性抵抗素子である共鳴トンネルダイオード(RTD:Resonant Tunneling Diode)を2つの負性抵抗素子101a、101bに用いた場合を例にして説明する。なお、第1の負性抵抗素子101aが発振する電磁波の周波数帯域は、第2の負性抵抗素子101bが発振する電磁波の周波数帯域と少なくとも一部が重なっていることが好ましく、より好ましくは一致している。
アンテナ108は、発生した電磁波が共振する共振部であり、共振器と放射器の役割を有する。そのため、誘電体中の電磁波の実効波長をλとすると、アンテナ108は、アンテナ108のパッチ導体である上導体102のA−A方向(共振方向)の幅がλ/2共振器となるように設定される。ここで、本明細書における「誘電体」は、導電性よりも誘電性が優位な物質で、直流電圧に対しては電気を通さない絶縁体或いは高抵抗体としてふるまう材料である。典型的には抵抗率が1kΩ・m以上の材料が好適である。具体例としては、樹脂、プラスティック、セラミック、酸化シリコン、窒化シリコンなどがある。
バイアス回路120は、2つの負性抵抗素子101a、101bのそれぞれにバイアス電圧を供給する。バイアス回路120は、2つの負性抵抗素子101a、101bのそれぞれと並列に接続されている抵抗110、抵抗110と並列に接続されている容量109、電源112、及び配線111を含む。配線111は、寄生的なインダクタンス成分を必ず伴うため、図1ではインダクタンスとして表示する。
電源112は、負性抵抗素子101aと101bの駆動に必要な電流を供給し、バイアス電圧を調整する。バイアス電圧は、典型的には、2つの負性抵抗素子101a、101bのそれぞれの微分負性抵抗領域から選択される。
バイアス回路120は、線路103を介してアンテナ108に接続され、負性抵抗素子101aと101bに電力を供給する。本実施形態における線路103は、マイクロストリップラインである。すなわち、線路103は、2つの導体と、該2つの導体の間に配置されている誘電体104とを有する構成である。
バイアス回路120の抵抗110及び容量109は、バイアス回路120に起因した比較的低周波な共振周波数fsp(fsp<fLC<fTHz、典型的にはDCから10GHzの周波数帯)の寄生発振を抑制している。ここで、周波数fLCは、線路103のインダクタンスLと、2つの負性抵抗素子101a、101bを含むアンテナ108のキャパシタンスCと、によるLC共振の周波数である。これについての詳細は後述する。
抵抗110の値は、負性抵抗素子101a、101bのそれぞれの微分負性抵抗領域における微分負性抵抗の合計の絶対値と等しいか少し小さい値が選択されることが好ましい。抵抗110は、負性抵抗素子101a、101bのそれぞれから距離d離れた位置に配置されている。抵抗110より外側のバイアス回路は、4×d以上の波長帯において負性抵抗素子101a、101bからみて低インピーダンス、すなわち、負性抵抗素子101a、101bの微分負性抵抗の絶対値を基準として低インピーダンスとなることが好ましい。これを換言すると、抵抗110は、fSP(fSP<fLC<fTHz)以下の周波数帯において、負性抵抗素子101aと101bからみて低インピーダンスとなるように設定されることが好ましい。
容量109は、容量109のインピーダンスが、2つの負性抵抗素子101a、101bのそれぞれの微分負性抵抗の合計の絶対値と等しいか、少し小さい値が選択されることが好ましい。一般的には、容量109は容量が大きいほうが好ましく、本実施形態では数十pF程度としている。容量109は、線路103であるマイクロストリップラインと直結されたデカップリング容量となっており、例えば、アンテナ108と基板(不図示)とを共にしたMIM(Metal−insulator−Metal)構造を利用してもよい。
アンテナ108の構造上、抵抗110及び容量109を含むバイアス回路120を、発振周波数fTHzの共振電界と干渉せずアンテナ108に直接接続することは容易ではない。このため、負性抵抗素子101a、101bのそれぞれへバイアス電圧を給電するためには、バイアス回路120とアンテナ108とを、給電線である線路103を介して接続する必要がある。よって、線路103は、バイアス回路120よりも負性抵抗素子101aと101bに近い位置に配置される。
そのため、従来の素子では、線路のインダクタンスLと負性抵抗素子及びアンテナのキャパシタンスCに起因した周波数fLC(fLC≒1/{2π√(LC))、fSP<fLC<fTHz)のLC共振による寄生発振が生じることがあった。特に、パッチアンテナなどのマイクロストリップアンテナは、2枚の導体で誘電体を挟んだ構造となり、構造上の容量Cが生じるため、このような寄生的な共振の低減が課題となる。
寄生発振の周波数fLCは、発振器100では、主に負性抵抗素子101a、101bそれぞれの容量、線路103の長さと幅、アンテナ108の面積(例えば、上導体102の面積)、誘電体104の厚さ、線路103及び抵抗110の配置や構造等で決まる。典型的には、周波数fLCは数GHz以上500GHz以下の範囲となる。例えば、線路103の長さをd、負性抵抗素子101aおよび101bと抵抗110までの距離をdとしたとき、周波数fLC付近の周波数帯は、波長に換算すると4×d以上4×d以下の波長帯である。
線路103の幅は、アンテナ108内の共振電界に干渉しない程度の寸法が好ましく、例えばλTHz/10以下が好適である。
ここで、λTHzは、発振周波数fTHzのテラヘルツ波の波長である。また、線路103は、アンテナ108に定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の電界の節(node)に配置し、該節の位置でアンテナ108と接続することが好ましい。このように配置すると、線路103は、発振周波数fTHz付近の周波数帯において、負性抵抗素子101a、101bのそれぞれの微分負性抵抗の絶対値よりインピーダンスが高い構成となる。そのため、線路103が、アンテナ108内の発振周波数fTHzの電界へ影響することが低減される。
ここで、「アンテナ108に定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の電界の節」は、アンテナ108内に定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の電界の実質的な節となる領域のことである。具体的には、アンテナ108に定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の電界強度が、アンテナ108に定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の最大電界強度より1桁程度低い領域のことである。より望ましくは、アンテナ108に定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の電界強度が、アンテナ108に定在する発振周波数fTHzのテラヘルツ波の最大電界強度の1/e(eは自然対数の底)以下となる位置が好適である。
ここで、本実施形態の発振器100の発振条件についてより詳細に説明する。一般的に、アンテナと微分負性抵抗素子が集積されたアクティブアンテナの発振周波数は、アンテナと微分負性抵抗素子のリアクタンスとを組み合わせた全並列共振回路の共振周波数として決定される。具体的には、Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.47,No.6,4375(2008)(非特許文献2)に記載のRTD発振器の等価回路から、RTDとアンテナのアドミタンスを組み合わせた共振回路について、発振周波数fTHzが決定される。具体的には、RTDとアンテナのアドミタンスを組み合わせた共振回路について、(2)式の振幅条件と(3)式の位相条件との二つの条件を満たす周波数が発振周波数fTHzとして決定される。
なお、Y11は第1の負性抵抗素子101aから見たアンテナ108を含む全構成のアドミタンス、YRTDは微分負性抵抗素子である第1の負性抵抗素子101a又は第2の負性抵抗素子101bのアドミタンスである。ここで、全構成とは、アンテナ108、線路103、バイアス回路120など発振器100を構成する全部材のことである。すなわち、Re(Y11)は第1の負性抵抗素子101aから見たアンテナ108を含む全構造のアドミタンスの実部、Im(Y11)は第1の負性抵抗素子101aから見たアンテナ108を含む全構造のアドミタンスの虚部である。また、Re(YRTD)は第1の負性抵抗素子101a又は第2の負性抵抗素子101bのアドミタンスの実部、Im(YRTD)は第1の負性抵抗素子101a又は第2の負性抵抗素子101bのアドミタンスの虚部である。Re[YRTD]は負の値を有す。
Re(YRTD)+Re(Y11)≦0 (2)
Im(YRTD)+Im(Y11)=0 (3)
本実施形態のアンテナ108は、第1の負性抵抗素子101aと第2の負性抵抗素子101bとの少なくとも二つ以上の負性抵抗素子を含む集積アンテナである。このような場合、図2に示したように、アンテナ108を、第1の負性抵抗素子101aが集積された第1のアンテナ部108aと、第2の負性抵抗素子101bが集積された第2のアンテナ部108bとが、結合部107で結合されているとみなすことができる。この場合、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bと結合部107とは、アンテナ108におけるテラヘルツ波の共振方向に沿って並んで配置されている。
すなわち、アンテナ108を、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとが結合部107で結合されている集積アンテナとして捉えて、発振器100の発振条件を考えることができる。具体的には、非特許文献3(J.Appl.Phys.,Vol.103,124514(2008))に開示された2つの個別のRTD発振器を結合した構成における相互の注入同期(相互注入同期)を考えることで発振周波数fTHzを決定する。
ここで、相互注入同期とは、複数の自励発振器の全てが、相互作用により引き込み同期して発振することである。
ここで、近似のため、第1の負性抵抗素子101aのアドミタンスと第2の負性抵抗素子101bのアドミタンスとは、等しいと仮定した。この時、正位相の相互注入同期と逆位相の相互注入同期との二つの発振モードが生じる。正位相の相互注入同期の発振モード(evenモード)の発振条件は(4)式及び(5)式で表され、逆位相の相互注入同期の発振モード(oddモード)の発振条件は(6)式及び(7)式で表される。
正位相(evenモード):周波数f=feven
even=Y11+Y12+YRTDRe(Yeven)≦0 (4)
Im(Yeven)=0 (5)
逆位相(oddモード):f=fodd
odd=Y11−Y12+YRTDRe(Yodd)≦0 (6)
Im(Yodd)=0 (7)
ここで、Y12は負性抵抗素子101aと負性抵抗素子101bとの間の相互アドミタンスである。
例えば、図1(b)示したように、アンテナ108は、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとが、結合部107により強結合であるDC結合で結合された構成とみなすことができる。第1のアンテナ部108a及び第2のアンテナ部108bは、パッチアンテナの構造を有する。
なお、本明細書における「強結合」とは、第1のアンテナ部と第2のアンテナ部との結合係数kの実部Re(k)で定義することができる。すなわち、本明細書における「強結合」とは、Re(k)の絶対値が1/3より大きくなることである。本実施形態では、Re(k)の絶対値が1/3より大きくなるように、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとが結合している。
具体的には、第1のアンテナ部108aは、第1の導体層102a、第2の導体105、誘電体104、及び第1の導体層102aと第2の導体105との間に接続される第1の負性抵抗素子101aを有する。第1のアンテナ部108aは、誘電体104が第1の導体層102aと第2の導体105との間に配置されているパッチアンテナである。
また、第2のアンテナ部108bは、第2の導体層102b、第2の導体105、誘電体104、及び第2の導体層102bと第2の導体105との間に接続される第2の負性抵抗素子101bを有する。第2のアンテナ部108bは、誘電体104が第2の導体層102bと第2の導体105との間に配置されているパッチアンテナである。
結合部107は、第3の導体層102c、第2の導体105、及び第3の導体層102cと第2の導体105との間に配置された誘電体104、を有する。
上導体102は、第1の導体層102aと第2の導体層102bとが、第3の導体層102cで接続されている。すなわち、第3の導体層102cは、第1の導体層102aと第2の導体層102bとを接続する接続部である。第1の導体層102aと第2の導体層102bとは、重なることなく、誘電体104上に並んで配置される。
ここで、第2の導体105は接地導体で、本実施形態では、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bと結合部107とで、共通の導体層を使用した。しかし、これに限らず、例えば、第2の導体105を、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bと結合部107とで異なる導体層を用いて構成してもよい。
また、本実施形態では、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bと結合部107で共通の誘電体層として誘電体104を使用した。しかし、これに限らず、例えば、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bと結合部107とで異なる誘電体を用いて構成してもよい。本実施形態の構成では、上導体102は、第1の導体層102aと第2の導体層102bとを、接続部である第3の導体層102cとで接続する構成となっている。
第2のアンテナ部108bは、結合部107を通り上導体102と第2の導体105の積層方向と垂直な面を基準として、鏡像対称の構造を有することが好ましい。すなわち、第2のアンテナ部は、第1のアンテナ部108aを共振器とした場合、放射端の一方を軸123としたとき、軸123で反転した鏡像対称の構造を有することが好ましい。ここで、放射端とは、パッチアンテナの共振周波数の電磁界の共振方向におけるアンテナの両端である。放射端では、パッチアンテナの共振周波数における電磁界の電流が最小化し、電圧が最大化し、電波が放射される部分である。
なお、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとは、完全に鏡像対称である必要はなく、鏡像対称とみなせる範囲であればよい。例えば、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとが鏡像対称であるとして設計を行った場合、設計段階で予想した特性を示す範囲内であれば実際に作成したものも鏡像対称になっているとみなしてよい。
第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとが、軸123に配置された結合部107により、電気的に結合されてアンテナ108が構成される。この時、第1の負性抵抗素子101aと第2の負性抵抗素子101bとは、互いに並列接続された構成となっている。
なお、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとを電気的に結合する方法として、DC結合又はAC結合があり、本実施形態では、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとを結合部107でDC結合している。この場合、第1のアンテナ部108aの第1の導体層102aと第2のアンテナ部108bの第2の導体層102bと、結合部107の第3の導体層(接続部)102cと、は、1枚の導体層として一体成型されている。
なお、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとを結合部107でAC結合した場合については、後述する。
図1に開示した本実施形態の発振器100の構成は、DC結合で、かつ、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bと結合部107とのそれぞれの、A−A方向と直交する水平方向における幅が同じである。すなわち、アンテナ部108a、108bを結合部107で電気的に結合したアンテナは、上導体102と第2の導体105とで誘電体104を挟んだパッチアンテナと負性抵抗素子101a、101bとを集積したアンテナ108と本質的に同じである。上導体102は、第1の導体層102a、第2の導体層102b及び第3の導体層102cを含む。
上述の2つのRTD発振器を結合した構成において相互注入同期する条件を考えると、正位相と逆位相の二つの発振モードが生じる。図2(a)に正位相の相互注入同期の発振モード(以下、「正位相のモード」と呼ぶ)の概念図を示し、図2(b)に逆位相の相互注入同期の発振モード(以下、「逆位相のモード」と呼ぶ)の概念図を示した。また、図3に発振器100のアドミタンス特性を示した。
図2(a)に示したように、正位相のモードの場合、周波数fevenで素子内に定在する電磁波は、位相差が0又は2πで負性抵抗素子101a、101bのそれぞれに注入される。従って、第1の負性抵抗素子101aの位相と第2の負性抵抗素子101bの位相との位相差は0又は2πとなり、共振周波数における電磁界の大きさ及び極性はほぼ同じとなる。図3の解析結果からも分かるように、アンテナ108の容量Cと線路103のインダクタンスLに起因する周波数fLCのLC共振で正位相の同期による発振条件が満たされるため、正位相のモードでは周波数feven=fLCの寄生発振が生じる。この場合、LC共振の節(node)は、線路103とバイアス回路120の接続部分付近に生じる。
一方、図2(b)に示したように、逆位相のモードの場合、周波数foddで素子内に定在する電磁波は、位相差がπで負性抵抗素子101a、101bのそれぞれに注入される。従って、共振周波数における第1の負性抵抗素子101aの電磁界の極性と第2の負性抵抗素子101bの電磁界の極性とは、反転する。この電磁界分布は、アンテナ108から負性抵抗素子101a、101bを除いたパッチアンテナの共振周波数における電磁界分布とほぼ一致する。
なお、本明細書における「第1の負性抵抗素子101aと第2の負性抵抗素子101bとが逆位相」とは、第1の負性抵抗素子101aと第2の負性抵抗素子101bとの位相差が、完全に逆位相となる位相差πから±π/8以下の範囲である。すなわち、本明細書における「第1の負性抵抗素子101aと第2の負性抵抗素子101bとが逆位相」とは、具体的には、第1の負性抵抗素子101aと第2の負性抵抗素子101bとの位相差が、7π/8以上9π/8以下であると定義する。
図3のアドミタンス特性でも明らかなように、逆位相のモードの場合は、パッチアンテナのλ/2の共振周波数で規定される所望の周波数fTHzで発振条件が満たされるため、fodd=fTHzのテラヘルツ波の発振が生じる。定性的には、逆位相の場合は、負性抵抗素子101a、101bのそれぞれにおける電磁界の極性が反転するため、パッチアンテナの容量Cがキャンセルされ、LC共振点が生じないと考えることもできる。
この場合、λ/2の共振周波数で規定される所望の周波数fTHzの電磁界の節(node)は、第1の導体102において、アンテナ108の第1の導体102の重心を通る中心線付近となる。なお、本明細書における「中心線」とは、第1の導体102において、第1の導体102の重心を通り、且つ電磁波の共振方向及び第1の導体102と第2の導体105との積層方向と垂直な直線である。
本実施形態で説明した強結合のDC結合の例であれば、結合部107を極限まで小さくした場合、軸123と周波数fTHzの電磁界の節(node)とが一致する。従って、第2のアンテナ部108bは、アンテナ108のλ/2の共振周波数の電磁波がアンテナ108に定在する場合の電磁界分布の節(node)において、第1のアンテナ部108aを反転した鏡像対称の構造であるともいえる。また、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとは、結合部107により電気的に結合されて、アンテナ108が構成される。結合部107は、アンテナ108に定在するアンテナ108のλ/2の共振周波数の電磁波の電磁界分布の節(node)に配置される。
本実施形態は、複数の負性抵抗素子が電気的に接続されているアンテナを有する発振素子において、マイクロストリップアンテナに負性抵抗素子を集積した際の特有の課題である、線路のインダクタンスに起因する寄生発振の低減を目的とするものである。
従来技術では、アンテナと、アンテナと電気的に直列に且つ互いに並列に接続された複数の負性抵抗素子とを有する発振器において、複数の負性抵抗素子のそれぞれを、各負性抵抗素子からの電磁波の位相が互いに正位相又は逆位相となる位置に配置している。しかし、このような構成の従来の発振器において、上述のようにアンテナ108を2つのアンテナ部を結合したアレイアンテナとして考えた場合、正位相と逆位相の二つの発振モードが生じる恐れがある。一般的には、低い周波数の方が安定化して発振しやすく、低周波側の正位相が安定化して同期すると、LC共振による低周波発振やマルチ発振が生じて発振出力が低下するおそれがあった。
ここで、逆位相の発振モードが安定であるとは、多数の共振点が存在する系において、逆位相の共振周波数におけるモード発振以外のモードによる発振が低減され、逆位相の共振周波数におけるモード発振がほぼ単一で得られることを意味する。具体的には、逆位相の発振モード以外のモードによって発振する電磁波の電界強度が、逆位相の共振周波数においてモード発振したテラヘルツ波の最大電界強度より1桁程度以下小さくなることである。望ましくは、逆位相の発振モード以外の発振モードによる電磁波の電界強度が、逆位相の発振周波数のテラヘルツ波の最大電界強度の1/e以下(eは自然対数の底)となる。
それに対し、本実施形態の発振器100は、正位相のモードを不安定化して、逆位相のモードを安定化するように構成することにより、寄生発振による低周波数の電磁波の発振を低減している。
非特許文献3によれば、複数のRTD発振器を結合したアンテナアレイにおける相互注入同期において、正位相を不安定化する条件は、正位相の周波数fevenにおいて(8)式を満たすことである。
Re(k)=−Re(Y12)×[G−Re(Y11)]−1<−1/3 (8)
ここで、kは、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとの結合係数である。Gは負性抵抗素子101a、101bの一方の利得で、Re(YRTD)の絶対値(|Re(YRTD)|)と一致する。
これを変換すると、発振器100は、(1)式を満たすことが好ましい。(1)式を満たすことにより、正位相のモードを不安定化し、逆位相のモードを安定化することができる。
Figure 2017201779
図4に、発振器100について、結合係数kを解析した結果を示す。なお、発振器100の詳細な構成は、実施例1にて説明する。
図4は、正位相のモードの場合(f=feven=fLCで発振する場合)と逆位相のモードの場合(f=fodd=fTHzで発振する場合)の結合係数Re(k)の周波数特性を解析例である。負性抵抗素子101a、101bであるRTDのメサの直径(メサ径)を変更して解析しており、d2メサ径が2μm、d3はメサ径が3μm、d4はメサ径が4μmの場合の結果である。ここで、RTDのメサの面積(ダイオードの面積、又はヘテロ接合面の面積等)はメサ径に依存するため、メサ径は、注入電力とダイオード容量を制御する設計パラメータであり、利得Gと発振周波数fに寄与する。
図4から、メサ径を増やすとGが大きくなるため、Re(k)<−1/3を満たさなくなり、(1)式を満たさないため正位相が安定化する。そのため、f=feven=fLCの電磁波が発振する。一方、メサ径を3μmより小さくすると、Re(k)<−1/3を満たし、(1)式を満たすため正位相が不安定化する。そのため、逆位相の周波数の高いf=fodd=fTHzでの発振が得られる。
このように、複数の負性抵抗素子101a、101bを備えたアンテナ108において、負性抵抗素子101a、101bのメサ径を調整することにより、選択的に正位相(feven=fLC)を不安定化し、逆位相(fodd=fTHz)を安定化できる。
本実施形態で説明したように、RTDのメサ径で利得Gを制御するのは一つの有効な手段となる。
アンテナ108において、f=feven=fLCにおける正位相の同期を選択的に不安定化する(すなわち(1)式を満たす)構成としては、以下が好適である。
まず、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとの二つのアンテナ部同士の結合係数Y12を大きくする。そのためには、本実施形態のように、強結合のDC結合で結合することが好適である。である。ただし強結合の場合は、マルチモードが生じるリスクが高いため、その抑制のために、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとが、結合部107を通り積層方向と平行な面を基準とした鏡像対称の構造であることが好ましい。
なお、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとをAC結合で結合してもよい。そのような場合でも、図6に示したように結合係数Y12が大きい比較的強結合で、かつ、マルチモードが抑制される鏡像対称の構造が好ましい。
正位相を不安定化する方法として、アンテナ108の負荷(すなわちRe(Y11))を増やす構造も好適である。なお、この場合、逆位相で安定化するf=fodd=fTHzが発振条件を満たす様な構造であることも必要な条件である。
図5に、第1の負性抵抗素子101aと第2の負性抵抗素子101bとのそれぞれの給電位置で入力インピーダンスを変えてアンテナ108の負荷の調整する場合の結合係数Re(k)の解析結果を示す。ここで、offは負性抵抗素子101a、101bの給電位置を表し、xはアンテナ108の第1の導体102の重心から放射端までのA−A方向(共振方向)における距離、Lはアンテナ108の共振器長とし、off=x/Lである。なお、図5は、後述の実施例1の発振器100においてRTDのメサ径が3μmの場合の結合係数Re(k)について解析した結果である。
実施例1の発振器100は、L=200μmなので、off40の場合はx=80μmの位置に負性抵抗素子101a、101bが配置される。この場合、Re(k)>−1/3となるため正位相が安定化し、feven=fLCにおける正位相の同期によりLC発振が生じる。一方、off30、off20となるに従い、負性抵抗素子101a、101bの位置はパッチアンテナの中心に近づき、Re(k)<−1/3の条件を満たすため、正位相は不安定化し、逆位相の同期が生じてfodd=fTHzの発振が得られる。
このように、負性抵抗素子101a、101bの入力インピーダンスを変えてアンテナ108の負荷を調整することで、Re(k)のRe(Y11)を調整して安定化の選択をおこなうことができる。
また、アンテナ108より外の構造でRe(Y11)を調整して安定化の選択を行うこともできる。例えば、負性抵抗素子101a、101bからみた線路103のインピーダンスが低くなるように設計してfeven=fLCにおけるRe(Y11)を調整することで、(1)式を満たし、正位相のモードの不安定化を選択的に行うこともできる。この場合、線路103の低インピーダンス構造が、負性抵抗素子101a、101b及びアンテナ108に近いほど正位相のモードの不安定化に効果がある。具体的には、負性抵抗素子101a、101bからλTHz以下の距離に配置されることが好ましい。なお、λTHzは、発振周波数fTHzのテラヘルツ波の波長である。
アンテナ108としては、マイクロストリップアンテナのような容量性のCと、アンテナ108と直接接続された給電線に起因した誘導性のLに起因する周波数fLCの発振が発生し得る構造であれば本実施形態を適用することができる。例えば、アンテナ108としては、一般的なダイボールアンテナ、スロットアンテナ、パッチアンテナ、カゼクレインアンテナ、パラボラアンテナのような平面アンテナや立体型のアンテナを用いることができる。上述の各種アンテナであっても、集積化したアンテナの構造上生じる容量性のCと、給電構造により生じる誘導性のLに起因する発振が課題となる場合は、本実施形態を適用することができる。
本実施形態の発振器100は、パッチアンテナなどを含むマイクロストリップ型共振器における課題であった、配線構造に起因した寄生発振を起こりにくくする。具体的には、負性抵抗素子を2つ以上備えたアンテナ108を有する発振器において、選択的に正位相を不安定化し、逆位相のモードの相互注入同期を安定化するように構成する。このような構成にすることにより、アンテナ108の容量とバイアス給電線のインダクタンスに起因するLC共振を低減する。
これにより、本実施形態の発振器100によれば、DC以上fTHz未満の周波数領域の比較的高周波の寄生発振を低減又は抑制することができる。その結果、発振器100の所望の発振周波数fTHzのテラヘルツ波をより安定して取得できる。
発振周波数fTHzのテラヘルツ波が安定して得られることにより、マイクロストリップ型共振器における所望の発振周波数fTHzのテラヘルツ波がより高出力で得ることができる。具体的には、低周波発振やマルチ発振を抑制出来るので、所望の発振周波数fTHzにおいて発振出力が一桁以上増加することが可能となる。
(実施例1)
本実施例では、実施形態の発振器100の構成について説明する。本実施例の発振器100は、発振周波数fTHz=0.42THzを発振させる発振素子である。
本実施例では、負性抵抗素子101aと101bとして共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いている。以下、第1の負性抵抗素子101aを第1のRTD101a、第2の負性抵抗素子101bを第2のRTD101bと呼ぶことがある。本実施例で用いた第1のRTD101a及び第2のRTD101bは、InP基板(不図示)上のInGaAs/InAlAs、InGaAs/AlAsによる多重量子井戸構造とn−InGaAsによる電気的接点層を伴って構成される。
多重量子井戸構造としては、例えば三重障壁構造を用いる。より具体的には、AlAs(1.3nm)/InGaAs(7.6nm)/InAlAs(2.6nm)/InGaAs(5.6nm)/AlAs(1.3nm)の半導体多層膜構造で構成する。このうち、InGaAsは井戸層で、格子整合するInAlAsや非整合のAlAsは障壁層である。これらの層は意図的にキャリアドープを行わないアンドープ層としておく。
この様な多重量子井戸構造は、電子濃度が2×1018cm−3のn−InGaAsによる電気的接点層に挟まれる。こうした電気的接点層間の構造の電流電圧I(V)特性において、ピーク電流密度は280kA/cmであり、約0.7Vから約0.9Vまでが微分負性抵抗領域となる。例えば、第1のRTD101aが約2μmφのメサ構造の場合、ピーク電流10mA、微分負性抵抗−20Ωが得られる。
アンテナ108は、上導体(パッチ導体)102、接地導体である第2の導体105及び誘電体104を有するパッチアンテナと、第1のRTD101aと、第2のRTD101bとを有する。アンテナ108は、上導体102の一辺が200μmの正方形のパッチアンテナを含む。上導体102と第2の導体105との間には、誘電体104として3μm厚のBCB(ベンゾシクロブテン、ダウケミカル社製、ε=2.4)及び0.1μm厚の窒化シリコンが配置されている。
上導体102と第2の導体105との間には、直径2μmの第1のRTD101aと第2のRTD101bとが接続される。第1のRTD101aは、上導体102において、上導体102の重心から共振方向に80μmシフトした位置に配置されている。また、第2のRTD101bは、上導体102の重心から共振方向に−80μmシフトした位置に配置されている。すなわち、第1のRTD101aと第2のRTD101bとは、上導体102の重心を通り且つ共振方向及び積層方向と垂直な直線(中心線)を軸として線対称となる位置に配置される。これを換言すると、第2のRTD101bは、上導体102において、中心線を軸に第1のRTD101aが配置されている位置と線対称の位置に配置されている。
なお、第1のRTD101aと第2のRTD101bとは、完全に線対称の位置に配置されていなくてもよく、線対称とみなせる範囲であればよい。例えば、第1のRTD101aと第2のRTD101bとが線対称の位置に配置されているものとして設計を行った場合、設計段階で予想した特性を示す範囲内であれば線対称になっているとみなしてよい。
パッチアンテナの単独の共振周波数は、約0.48THzである。本実施例の発振器100は、図2示したアドミタンス特性を有し、正位相のモードと逆位相のモードの二つの同期モードが存在する。負性抵抗素子である第1及び第2のRTD101a、101bのリアクタンスを考慮すると、逆位相で相互注入同期した場合の発振器100の発振周波数(共振周波数)fTHzは約0.42THzとなる。
なお、本実施例の構造の場合、図4にも示した通り、RTD101a、101bのメサ径が2.5μm以下であれば、正位相が不安定化し、逆位相で相互注入同期する。また、本実施例の構造の場合、図5にも示した通り、RTDメサの直径が3μmの場合、off=30%以下(すなわち、x=60μm以下)であれば、(1)式を満たし、正位相のモードが不安定化し、逆位相のモードが安定化して逆位相で相互注入同期する。
上導体102は、線路103であるマイクロストリップラインと接続されている。これにより、アンテナ108は、線路103を介して容量109と接続される。このような構成にすることにより、線路103は、バイアス回路120とアンテナ108とを接続する。線路103の幅(共振方向における長さ)は約6μm、共振方向及び積層方向と垂直方向における長さは約100μmとした。
容量109はMIM容量であり、その容量の大きさは、本実施例では100pFとした。抵抗110は、シャント抵抗であり、第1及び第2のRTD101a、101bの合成負性抵抗の絶対値より小さい値とするために、5Ωとなるようなビスマスの構造を集積した。容量109には、ワイヤーボンディングを含む配線111が接続され、電源112により第1及び第2のRTD101a、101bのバイアス電圧が調整される。本構造において、正位相のモードで発振する際の共振周波数は、線路103であるマイクロストリップラインのインダクタンスLと集積アンテナ108の容量Cとで形成されるLC共振の周波数fLCで、約0.05THzとなる。
上導体102は、発振周波数fTHz(=0.42THz)でアンテナ108に定在する高周波電界の節で線路103と接続されており、線路103と発振周波数fTHzのテラヘルツ波の共振電界との干渉を抑制している。
本実施例による発振器100は、以下のように作製される。まず、InP基板上に、分子ビームエピタキシー(MBE)法や有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法などによって、次の層をエピタキシャル成長する。すなわち、InP基板上に、順に、n−InP/n−InGaAs、InGaAs/InAlAsによる共鳴トンネルダイオード(RTD)101a、101bをエピタキシャル成長する。InP基板としてn型の導電性基板を選択する場合は、n−InGaAsからエピタキシャル成長すればよい。
次に、第1のRTD101aと第2のRTD101bとを、その直径が2umとなるような円弧形状のメサ状にエッチングを行う。エッチングにはEB(電子線)リソグラフィとICP(誘導性結合プラズマ)によるドライエッチングを用いる。フォトリソグラフィを用いてもよい。続いて、エッチングされた面に、リフトオフ法により接地導体としての第2の導体105を形成する。RTD101aと101bの側壁保護膜として0.1μmの窒化シリコン膜を全面に成膜する。
さらに、スピンコート法とドライエッチングを用いて誘電体104であるBCBによる埋め込みを行い、リフトオフ法によりTi/Pd/Auの上導体102、線路103の上部導体層、及びMIM容量109の上部電極層を形成する。最後に、リフトオフ法により、抵抗110となる部分にBiパターンを形成し、第2の導体105と容量109との上部の電極を接続し、ワイヤーボンディングなどで配線111及び電源112と接続することで発振器100が形成できる。発振器100への電力の供給はバイアス回路120から行われ、微分負性抵抗領域となるバイアス電圧を印加してバイアス電流を供給すると、発振器として動作する。
本実施形態の発振器100は、パッチアンテナなどを含むマイクロストリップ型共振器における課題であった、配線構造に起因した寄生発振を起こりにくくする。具体的には、負性抵抗素子を2つ以上備えたアンテナ108を有する発振器において、選択的に正位相を不安定化し、逆位相のモードの相互注入同期を安定化するように構成する。このような構成にすることにより、アンテナ108の容量とバイアス給電線のインダクタンスに起因するLC共振を低減する。
これにより、本実施形態の発振器100によれば、DC以上fTHz未満の周波数領域の比較的高周波の寄生発振を低減又は抑制することができる。その結果、発振器100の所望の発振周波数fTHzのテラヘルツ波をより安定して取得できる。
発振周波数fTHzのテラヘルツ波が安定して得られることにより、マイクロストリップ型共振器における所望の発振周波数fTHzのテラヘルツ波がより高出力で得ることができる。具体的には、低周波発振やマルチ発振を抑制出来るので、所望の発振周波数fTHzにおいて発振出力が一桁以上増加することが可能となる。
(実施例2)
本実施例の発振器200について、図6を参照して説明する。図6(a)は、発振器200の構成を説明する斜視図であり、図6(b)はそのB−B断面図である。なお、実施形態及び実施例1と同じ構成については、図6において同じ符番を付し、詳細な説明は省略する。
発振器200は、発振周波数fTHz=0.42THzを発振させる発振素子である。本実施例においても、負性抵抗素子101a、101bは、実施例1と同じで共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いており、以下、第1のRTD101aと第2のRTD101bとして説明する。発振器200は、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとを結合部207でAC結合した構成のアンテナ(共振部)208を備えたテラヘルツ波の発振素子である。
第1のアンテナ部108aは、パッチアンテナであり、第1の導体層102aと接地導体である第2の導体105とで誘電体104と第1のRTD101aとを挟んだ構造を有する。第2のアンテナ部108bは、パッチアンテナであり、第2の導体層102bと接地導体である第2の導体105とで誘電体104と第2のRTD101bとを挟んだ構造を有する。
第1のアンテナ部108aは、第1の導体層102aが200μm×98μmの長方形パッチアンテナであり、第1の導体層102aの長辺の端(すなわち放射端)から共振方向に20μmの位置に第1のRTD101aが埋め込まれている。第2のアンテナ部108bは、第2の導体層102bが200μm×98μmの長方形パッチアンテナであり、第2の導体102bの長辺の端(すなわち放射端)から共振方向に20μmの位置に第2のRTD101bが埋め込まれている。
第2のアンテナ部108bは、結合部207を軸として反転した鏡像対称の構造を有している。結合部207は、中心線を含む位置に配置されており、結合部207の中心位置と中心線とが一致するように配置されている。すなわち、第2のアンテナ部108bは、アンテナ208の重心を通る中心線に対して、第1のアンテナ部108aを反転した鏡像対称の構造を有している。従って、第1のRTD101aは、アンテナ208の重心から共振方向に80μmシフトした位置に配置されている。また、第2のRTD101bは、アンテナ208の重心から共振方向に−80μmシフトした位置に配置されている。
第1のアンテナ部108aの第1の導体層102aと第2のアンテナ部108bの第2の導体層102bとの間には、4μmの間隔があり、電気的にDCでは直接接続されていない。誘電体104は、実施例1と同様に、3μm厚のBCB(ベンゾシクロブテン、ダウケミカル社製、ε=2.4)を配置した。
第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとは、結合部207でAC結合されている。具体的には、アンテナ208の第1の導体(上導体)102は、第1の導体層102a、第2の導体層102bと、第1の導体層102aと第2の導体層102bとを接続する接続部とを有する。本実施例では、接続部は結合部207である。
結合部207は、Ti/Au=5/100nmを含む上電極218と100nmの窒化シリコン膜を含む誘電体層217とを有する。誘電体層217及び上電極218は、第1の導体層102a及び第2の導体層102bの上に配置されている。結合部207は、上電極218と第1の導体層102a及び第2の導体層102bとで、誘電体層217を挟んだ容量構造であり、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとを強結合のAC結合で結合し、アンテナ208を構成している。
また、本実施例の発振器200は、(1)式を満たすように構成されている。発振器200も同様に、正位相と逆位相の二つの同期モードが存在する。第1のRTD101aのリアクタンスと第2のRTD101bのリアクタンスとを考慮すると、逆位相で相互注入同期した場合の発振器200の発振周波数(共振周波数)fTHzは約0.42THzとなる。なお、本実施例の構造の場合においても、(1)式を満たす構成とすることにより、RTDのメサ径や配置により正位相が不安定化し、逆位相のモードで発振する、すなわち逆位相で相互注入同期することができる。
第1の導体層102aは、第1の線路203aであるマイクロストリップラインと接続され、第2の導体102bは、第2の線路203bであるマイクロストリップラインと接続される。これにより、第1のアンテナ部108aと第2のアンテナ部108bとは、バイアス回路220と接続される。第1の線路203a、第2の線路203bは、幅は約6μm、長さは約100μmであり、第1の線路203aと第2の線路203bとの間の間隔は4μmである。その他、バイアス回路220の構成は実施例1と同じである。
本実施例の発振器200によれば、複数の負性抵抗素子を配置されているアンテナを有する発振素子において、負性抵抗素子を逆位相における同期を安定化することで、給電構造により生じる比較的高周波の寄生発振を低減することができる。その結果、発振器200の所望の発振周波数fTHzのテラヘルツ波をより安定して取得できる。発振周波数fTHzのテラヘルツ波が安定して得られることにより、マイクロストリップ型共振器における所望の発振周波数fTHzのテラヘルツ波の発振出力を高めることができる。
(実施例3)
本実施例の発振器300について、図7および図8を参照して説明する。図7(a)は、発振器300の構成を説明する斜視図であり、図7(b)はそのC−C断面図である。図8は、発振器300の特性を説明する図である。発振器300は、実施形態及び実施例1で説明した発振器100を用いたテラヘルツ波光源を実現するために必要なより具体的な構成を提案するものである。上述の各実施形態及び各実施例と同じ構成、構造については、詳細な説明を省略する。
発振器300は、発振周波数fTHz=0.5THzを発振する半導体発振素子が集積化された半導体デバイスである。本実施例においても、負性抵抗素子には実施例1と同じく共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いている。以下、二つの負性抵抗素子を第1のRTD301aと第2のRTD301bとして説明する。
本実施例で用いた第1のRTD301a及び第2のRTD301bは、InP基板上に成膜されたInGaAs/AlAsなどからなる二重障壁構造のRTDで構成される。第1のRTD301a及び第2のRTDRTD301bの半導体ヘテロ構造の構成は、J Infrared Milli Terahz Waves,(2014),35,p.425〜431に開示された二重障壁RTDとほぼ同じ構成を用いている。第1のRTD301a及び第2のRTD301bの電流電圧特性は、測定値でピーク電流密度は9mA/um、単位面積当たりの微分負性コンダクタンスは26mS/umである。本実施例における第1のRTD301a及び第2のRTD301bのメサ構造の直径は1μmであり、微分負性抵抗の大きさはダイオード1個当たり約−50Ωである。
アンテナ308は、InP基板317の上側(表面側)に配置されたパッチ導体302、基板側に配置され且つ接地されている接地導体305、誘電体、第1のRTD301a、及び第2のRTD301bを有する。誘電体は、パッチ導体302と接地導体305との間に配置されている。パッチ導体302及び接地導体305は、抵抗率の低いAu薄膜(300nm厚)を用いた。アンテナ308は、パッチ導体302の一辺が170umの正方形のパッチアンテナであり、アンテナの共振器長(L)はL=170umとなる。
パッチ導体302と接地導体305との間には、誘電体として、5.5μm厚のBCB(ベンゾシクロブテン、ダウケミカル社製、ε=2.4)からなる誘電体304と0.5μm厚の窒化シリコン層316(ε=7)とが配置されている。第1のRTD301aと第2のRTD301bのアノード側には、パッチ導体302が接続される。また、第1のRTD301aと第2のRTD301bのカソード側は、それぞれn型にドーピングされたInP(リン化インジウム)からなるポスト315a、315bを介して接地導体305に接続されている。
第1のRTD301a及び第2のRTD301bは、パッチ導体302の中心から共振方向に距離x及び−xだけシフトした位置に配置されている。第1のRTD301a、第2のRTD301bのそれぞれの位置はoffset=100*X/Lで表わされる。RTDからパッチアンテナに高周波を給電する際の入力インピーダンスを決定する。第1のRTD301aと第2のRTD301bとは、パッチ導体302の中心を通り且つ共振方向及び積層方向と垂直な直線(中心線)を軸として線対称となる位置に配置される。
パッチ導体302は、マイクロストリップライン303を介してMIM容量構造309(MIM:Metal Insulator Metal)と接続される。マイクロストリップライン303は、パッチ導体302に接続された導体303と接地導体305とで、窒化シリコン層316を含む誘電体を挟んだ構造である。マイクロストリップライン303は、その幅(共振方向における長さ)を約6um、共振方向及び積層方向に垂直な垂直方向における長さを約85μmとした。また、MIM容量構造309は、導体318と接地導体305とで窒化シリコン層316を含む誘電体を挟んだ構造であり、20pF以上の容量が確保される構成となっている。マイクロストリップライン303及びMIM容量構造309の導体318には抵抗率の低いAu薄膜(1000nm厚)を用いた。
MIM容量構造309は、ビスマス薄膜から構成されるシャント抵抗310を介してカソード電極319と接続されている。シャント抵抗は、第1のRTD301a及び第2のRTD301bの合成負性抵抗の絶対値より小さい値とするために、約15Ωとなるようなビスマス薄膜の抵抗構造(200um×100um×0.5um厚)を基板317に集積した。カソード電極319は、接地導体305と接続され、接地導体と同電位となっている。
基板317は、電源基板320にダイボンディングされている。カソード電極319の導体には抵抗率の低いAu薄膜(1000nm厚)を用いた。カソード電極319は、ワイヤーボンディングを含む配線311bで電源312の接地に接続される。また、MIM容量構造309はアノード電極を兼ねており、ワイヤーボンディングを含む配線311aを介しての導体318と電源312とが接続される。電源312により、所望の発振特性となるように第1のRTD301a及び第2のRTD301bのバイアス電圧とバイアス電流が調整される。
図8は、第1のRTD301a及び第2のRTD301bのメサ直径が1umの発振器300の発振周波数及び発振パワーのoffset依存性の解析結果である。本実施例におけるパッチアンテナ単独の共振周波数は、約0.5THzであるが、前述した通り、第1のRTD301a及び第2のRTD301bのリアクタンスによって、逆位相の同期モードおける発振周波数は約0.4〜0.5THzとなる。また、正位相の同期モード(マイクロストリップ線路303のインダクタンスとアンテナ308のキャパシタンスによる共振)の発振周波数は、offset依存性はほとんど無く約0.1THzと見積られる(不図示)。ここで、発振出力の解析には、IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron. 19 (2013) 8500108.に開示された解析方法を用いており、式(6)及び(7)に示した逆位相(oddモード)の発振条件におけるアンテナとRTDのアドミタンスから周波数とパワーを計算した。
図8から、本実施例の構造の場合、offsetを12%以上40%以下の間で調整することで、逆位相でモード同期した発振が得られており、発振周波数0.4THz以上0.5THz以下、発振パワー0mW以上0.2mW以下の間で任意に調整可能である。なお、本実施例の構成であれば、第1のRTD301a及び第2のRTD301bのメサ径が1.5μm以下であれば、offset=12%以上の構造で正位相が不安定化するため、図8に示したような特性が得られる。
一方、第1のRTD301a及び第2のRTD302bのそれぞれのメサの直径が2μm以上にした場合は、正位相のモードが安定化するため、低周波発振(0.1THz)と多モード発振及び放射効率減によるパワー低下(<0.01mW)が生じる。このように、本実施例の発振器によれば、発振周波数fTHzのテラヘルツ波が従来よりも安定して得られる。これにより、マイクロストリップ型共振器における所望の発振周波数fTHzのテラヘルツ波がより高出力で得ることができる。具体的には、低周波発振やマルチ発振を低減することができるので、所望の発振周波数fTHzにおいて発振出力が一桁以上増加することが可能となる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上述の各実施例では、第1のRTD101a及び第2のRTD101bとして、InP基板上に成長したn−InP/n−InGaAs、InGaAs/InAlAsを含む共鳴トンネルダイオードについて説明した。しかし、これらの構造や材料系に限られることなく、他の構造や材料の組み合わせであっても本発明の発振素子を提供することができる。例えば、2重障壁量子井戸構造を有する共鳴トンネルダイオードを用いてもよいし、3重以上の多重障壁量子井戸を有する共鳴トンネルダイオードを用いてもよい。
また、その材料としては、以下の組み合わせのそれぞれを用いてもよい。
・GaAs基板上に形成したGaAs/AlGaAs/及びGaAs/AlAs、InGaAs/GaAs/AlAs
・InP基板上に形成したInGaAs/AlGaAsSb
・InAs基板上に形成したInAs/AlAsSb及びInAs/AlSb
・Si基板上に形成したSiGe/SiGe
上述の構造と材料は、所望の周波数などに応じて適宜選定すればよい。
また、上述の実施形態及び実施例では、キャリアが電子である場合を想定して説明しているが、これに限定されるものではなく、正孔(ホール)を用いたものであってもよい。また、基板や誘電体の材料は用途に応じて選定すればよく、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムヒ素、ガリウムリンなどの半導体や、ガラス、セラミック、テフロン(登録商標)、リエチレンテレフタラートなどの樹脂を用いることができる。
さらに、上述の実施形態及び実施例では、テラヘルツ波の共振器として正方形パッチを用いているが、共振器の形状はこれに限られたものではなく、例えば、矩形及び三角形等の多角形、円形、楕円形等のパッチ導体を用いた構造の共振器等を用いてもよい。
また、発振器に集積する微分負性抵抗素子の数は、1つに限るものではなく、微分負性抵抗素子を複数有する共振器としてもよい。線路の数も1つに限定されず、複数の線路を設ける構成でもよい。
上述の実施形態及び実施例で記載した発振素子は、テラヘルツ波を検出する検出素子として使用することも可能である。例えば、素子100は、RTD101a、101bの電流電圧特性において電圧変化に伴い電流の非線形性が生じる領域を用いてテラヘルツ波の検出器として動作させることも出来る。また、上述の実施形態及び実施例で記載した発振素子を用いて、テラヘルツ波の発振及び検出を行うこともできる。

Claims (16)

  1. テラヘルツ波の発振又は検出に用いる素子であって、
    第1の導体と、第2の導体と、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置されている誘電体と、前記第1の導体と前記第2の導体との間に互いに並列に接続されている第1の負性抵抗素子及び第2の負性抵抗素子と、を有する共振部と、
    前記第1の負性抵抗素子及び前記第2の負性抵抗素子のそれぞれにバイアス電圧を供給するバイアス回路と、
    前記バイアス回路と前記共振部とを接続する線路と、を有し、
    前記第1の負性抵抗素子と前記第2の負性抵抗素子との正位相の相互注入同期が不安定で、前記第1の負性抵抗素子と前記第2の負性抵抗素子との逆位相の相互注入同期が安定になるように構成されている
    ことを特徴とする素子。
  2. テラヘルツ波の発振又は検出に用いる素子であって、
    第1の導体と、第2の導体と、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置されている誘電体と、前記第1の導体と前記第2の導体との間に互いに並列に接続されている第1の負性抵抗素子及び第2の負性抵抗素子と、を有する共振部と、
    前記第1の負性抵抗素子及び前記第2の負性抵抗素子のそれぞれにバイアス電圧を供給するバイアス回路と、
    前記バイアス回路と前記共振部とを接続する線路と、を有し、
    下記(1)式を満たすことを特徴とする素子。
    Figure 2017201779

    Re(Y12)は、前記第1の負性抵抗素子と前記第2の負性抵抗素子との間の相互アドミタンスの実部。
    Gは、前記第1の負性抵抗素子又は前記第2の負性抵抗素子の利得。
    Re(Y11)は、前記第1の負性抵抗素子からみた前記アンテナを含む全構成のアドミタンスの実部。
  3. 前記第2の負性抵抗素子は、前記第1の導体において、前記第1の導体の重心を通り且つ前記アンテナにおける電磁波の共振方向及び前記第1の導体層と前記第2の導体層との積層方向と垂直な直線を軸として前記第1の負性抵抗素子が配置されている位置と線対称の位置に配置されている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の素子。
  4. 第1の負性抵抗素子を含む第1のアンテナ部、第2の負性抵抗素子を含む第2のアンテナ部、及び前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とを強結合する結合部、を有し、テラへルツ波が共振する共振部と、
    前記第1の負性抵抗素子及び前記第2の負性抵抗素子にバイアス電圧を供給するバイアス回路と、
    前記バイアス回路と前記共振部とを接続する線路と、を有し、
    前記共振部は、前記線路のインダクタンスと前記共振部の容量とによる共振の周波数における前記第1の負性抵抗素子と前記第2の負性抵抗素子との正位相の相互注入同期が不安定で、前記テラヘルツ波の周波数における逆位相の相互注入同期が安定になるように構成されている
    ことを特徴とする素子。
  5. 第1の負性抵抗素子を含む第1のアンテナ部、第2の負性抵抗素子を含む第2のアンテナ部、及び前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とを強結合する結合部、を有し、テラへルツ波が共振する共振部と、
    前記第1の負性抵抗素子及び前記第2の負性抵抗素子にバイアス電圧を供給するバイアス回路と、
    前記バイアス回路と前記アンテナとを接続する線路と、を有し、
    下記(1)式を満たす
    ことを特徴とする素子。
    Figure 2017201779

    Re(Y12)は、前記第1の負性抵抗素子と前記第2の負性抵抗素子との間の相互アドミタンスの実部。
    Gは、前記第1の負性抵抗素子又は前記第2の負性抵抗素子の利得。
    Re(Y11)は、前記第1の負性抵抗素子からみた前記アンテナを含む全構成のアドミタンスの実部。
  6. 前記第1のアンテナ部は、第1の導体層、導体、前記第1の導体層と前記導体との間に配置されている誘電体、及び前記第1の導体層と前記導体との間に電気的に接続されている前記第1の負性抵抗素子、を有し、
    前記第2のアンテナ部は、第2の導体層、前記導体、前記第2の導体層と前記導体との間に配置されている誘電体、及び前記第2の導体層と前記導体との間に電気的に接続されている前記第2の負性抵抗素子、を有する
    ことを特徴とする請求項4又は5に記載の素子。
  7. 前記結合部は、前記第1の導体層と前記第2の導体層とを接続する接続部、前記導体、及び前記接続部と前記導体との間に配置されている前記誘電体、を有する
    ことを特徴とする請求項6に記載の素子。
  8. 前記第1の導体層と前記第2の導体層と前記接続部とは、1つの導体で形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の素子。
  9. 前記導体は、前記第1のアンテナ部に含まれる導体と、前記第2のアンテナ部に含まれる導体と、前記結合部に含まれる導体と、を有する
    ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の素子。
  10. 前記接続部は、前記共振器に定在する前記テラヘルツ波の電界の節となる位置に配置されている
    ことを特徴とする請求項4乃至9のいずれか一項に記載の素子。
  11. 前記結合部は、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とをDC結合する
    ことを特徴とする請求項4乃至10のいずれか一項に記載の素子。
  12. 前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とは、前記結合部を軸に鏡像対称である
    ことを特徴とする請求項4乃至11のいずれか一項に記載の素子。
  13. 前記第1の負性抵抗素子の利得と前記第2の負性抵抗素子の利得とが、等しい
    ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の素子。
  14. 前記線路は、前記アンテナの前記共振部に定在する前記テラヘルツ波の電界の節となる位置で前記共振部と接続している
    ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の素子。
  15. 前記アンテナは、パッチアンテナである
    ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の素子。
  16. 前記第1の負性抵抗素子が発振する電磁波の周波数帯域は、前記第2の負性抵抗素子が発振する電磁波の周波数帯域と重なっている
    ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の素子。
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