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JP2017129650A - 走査用ミラー - Google Patents

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裕 工藤
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Abstract

【課題】駆動時におけるミラー基材の撓みを抑え、集光特性の向上を図った走査用ミラーを提供すること。
【解決手段】本実施形態の走査用ミラー14は、ミラー本体16と、ミラー本体16上に形成された反射膜17と、を有する。ミラー本体16は、ヤング率[GPa]と密度[g/cm]で規定される比剛性の値が少なくとも100[GPa・cm/g]以上の非金属材料から形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、走査用ミラーに関する。
一般に、レーザー走査型の共焦点顕微鏡等では、走査用ミラーを有するガルバノスキャナやレゾナントスキャナ等のスキャナ装置を用いている。また、半導体デバイスの製造工程において、レーザー光線を照射してビアホールを形成することが行われており、高速に多数のビアホールを形成するために、走査用ミラーをスキャナ装置の軸周りに高速に駆動(励振)させ、レーザー光線の向きを高速に偏向しつつ穿孔を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の走査用ミラーは、従来、ミラー基材として石英ガラスを用いており、反射膜としてアルミ等の金属薄膜または誘電体多層膜がミラー基材上に形成されている。
特開2008−068270号公報
ところで、スキャナ装置において、走査用ミラーを軸周りに高速(例えば、10kHz以上の高周波)に駆動させる技術が要望されている。走査用ミラーを高速に駆動させるためには、走査用ミラーの慣性モーメントを小さくする必要がある。しかしながら、慣性モーメントを小さくするために有効反射範囲の小さい走査用ミラーを用いると、実際に走査するレーザー光線を細いビーム径にする必要があり、該走査用ミラーに導光するためのミラーやレンズ等の光学素子に対して、熱レンズ効果やダメージの蓄積による短寿命化といった悪影響を与えるおそれがある。また、レーザー光線のビーム径が細くなるほど、開口数(NA)が低くなるため、エネルギー密度を高めること、及び、広い領域に照射すること、が困難になるという問題もある。
走査用ミラーの有効反射範囲を大きく、かつ、慣性モーメントを小さくするために、密度の軽い材料を用いて、ミラー基材を薄く作ることが模索されている。従来の石英ガラスは、十分な剛性を有する材料でないため、高速で駆動した際にミラー基材に撓みが生じ、集光特性が低下する問題が生じるおそれがある。この問題点は、走査用ミラーの有効反射範囲が大きくなるほど、また、走査用ミラーを高速に、かつ、広角に駆動するほどより顕著になる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、駆動時におけるミラー基材の撓みを抑え、集光特性の向上を図った走査用ミラーを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の走査用ミラーは、ミラー基材と、ミラー基材上に形成された反射膜と、を有し、ミラー基材は、ヤング率と密度で規定される比剛性の値が少なくとも100[GPa・cm/g]以上の非金属材料からなることを特徴とする。
この構成によれば、高速(例えば10kHz以上)で駆動した際のミラー基材の撓みを抑え、集光特性の向上を図ることができる。このため、高速での駆動に伴う走査用ミラーの小型化を抑制することができ、レーザー加工を行うために十分な太さのビーム径の加工レーザー光を用いることができる。その結果として、導光用光学素子の設計自由度の向上や低コスト化、加工点において高NA(開口数)化による高エネルギー密度化、微細加工や広範囲の加工が可能となる。
この構成において、ミラー基材を駆動する励振周波数[kHz]をf、該ミラー基材の機械振れ角[rad]をθとした場合、f・θの値が873[krad/s]以上の領域で駆動されることが好ましい。
また、非金属材料は、ダイヤモンドまたは炭化シリコンであることが好ましい。
また、ミラー基材は、共振スキャナまたはガルバノスキャナとして用いられることが好ましい。
また、本発明のスキャナ装置は、レーザー光線を反射する走査用ミラーと、走査用ミラーを軸周りに駆動する駆動部とを備え、走査用ミラーは、ミラー基材と、ミラー基材上に形成された反射膜と、を有し、ミラー基材は、ヤング率と密度で規定される比剛性の値が少なくとも100[GPa・cm/g]以上の非金属材料からなることを特徴とする。
この構成において、走査用ミラーを駆動する励振周波数[kHz]をf、該走査用ミラーの機械振れ角[rad]をθとした場合、駆動部は、f・θの値が873[krad/s]以上の領域で走査用ミラーを駆動することが好ましい。
本発明の走査用ミラーは、ミラー基材と、ミラー基材上に形成された反射膜とを有し、ミラー基材は、ヤング率と密度で規定される比剛性の値が少なくとも100[GPa・cm/g]以上の非金属材料からなるため、高速(例えば10kHz以上)で駆動した際のミラー基材の撓みを抑え、集光特性の向上を図ることができる。このため、高速での駆動に伴う走査用ミラーの小型化を抑制することができ、レーザー加工を行うために十分な太さのビーム径の加工レーザー光を用いることができる。その結果として、導光用光学素子の設計自由度の向上や低コスト化、加工点において高NA(開口数)化による高エネルギー密度化、微細加工や広範囲の加工が可能となる。
図1は、本実施形態に係る走査用ミラーを備えたレゾナントスキャナの構成例を示す斜視図である。 図2は、レゾナントスキャナの駆動部の構成例を示す概略図である。 図3は、レゾナントスキャナを駆動させた際の走査用ミラーの機械振れ角を示す図である。 図4は、従来の走査用ミラーが駆動の際に撓む様子を示す斜視図である。 図5は、試験体のヤング率、密度、及び比剛性を示す図表である。 図6は、実験結果(シミュレーション結果)をまとめた図表である。 図7は、レゾナントスキャナを適用したレーザー光線照射装置の構成例を示す図である。 図8は、レーザー光線照射装置により出射したレーザー光線が被加工物を穿孔する状態を示す断面図である。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
図1は、本実施形態に係る走査用ミラーを備えたレゾナントスキャナの構成例を示す斜視図である。図2は、レゾナントスキャナの駆動部の構成例を示す概略図である。図3は、レゾナントスキャナを駆動させた際の走査用ミラーの機械振れ角を示す図である。レゾナントスキャナ(スキャナ装置)1は、図1に示すように、ベース部11と、このベース部11に固定されるシャフト12と、このシャフト12の先端部に台座13を介して支持される走査用ミラー14と、を備える。レゾナントスキャナ1は、一般的に共振スキャナと呼ばれ、走査用ミラー14をシャフト12の軸周りに共振運動させることにより走査を行う。
ベース部11は、シャフト12及び走査用ミラー14を保持するものであり、所定の設置箇所に固定可能に構成されている。シャフト12は、ベース部11に立てた状態で固着されている。シャフト12は、該シャフト12の軸心Qに直交する方向に延びる腕部15を備える。この腕部15は、軸心Qを挟んで一直線上に位置する先端部15a,15bを備え、各先端部15a,15bは、それぞれ軸心Qから等距離の位置に設けられている。
走査用ミラー14は、円板状(板状)に形成されたミラー本体(ミラー基材)16と、このミラー本体16の一方の面に形成された反射膜17とを備える。反射膜17は、アルミニウムなどの金属薄膜や誘電体多層膜で形成される。ミラー本体16は、直径(軸心Qに直交する幅方向の最大長さ)Dが5〜15mm(本実施形態では10mm)、厚みtが0.5m〜2.0m(本実施形態では1.0mm)の円板状に形成されている。また、ミラー本体16の材質については後述する。走査用ミラー14は、例えば、シャフト12の先端部に固定される一対の台座13で挟まれることにより、または接着により支持される。
また、レゾナントスキャナ1は、シャフト12を介して、走査用ミラー14を軸心Q周りに共振運動させる駆動部30を備えている。駆動部30は、図2に示すように、上記した腕部15にそれぞれ空間を空けて巻き付けられるコイル31a,31bと、これらコイル31a,31bに交流電力を印加する電源部32と、腕部15の先端部15a,15bにそれぞれ配置される磁石32a,32bとを備えて構成される。コイル31a,31bは、軸心Qを挟んで延びる腕部15にそれぞれ1本の電線を巻き付けて構成される。
電源部32は、コイル31a,31bに所定周波数(励振周波数)の交流電力を印加する。コイル31a,31bには、上記した所定周波数で電流の流れ方向が切り換えられることにより、この電流の向きに応じた磁場が生じる。このため、コイル31a,31bの巻かれた腕部15の先端部15a,15bは、それぞれ所定周波数に応じて磁極がS極からN極へと交互に切り換えられる。磁石32a,32bは、複数(本実施形態では3つ)の磁石を組み合わせて構成される。磁石32aは、腕部15の先端部15aを挟んでN極32aNとS極32aSとが対向するように配置される。また、磁石32bは、腕部15の先端部15bを挟んでN極32bNとS極32bSとが対向するように配置される。これらN極32aN,32bNは、それぞれ腕部15により区切られた空間の同じ側に位置し、S極32aS,32bSは、それぞれN極32aN,32bNとは反対側に位置している。
本構成では、コイル31a,31bに所定周波数(励振周波数)の交流電力を印加すると、腕部15の先端部15a,15bに生じた磁極と磁石32a,32bの磁力とにより、シャフト12は軸心Qを中心に周方向(矢印K方向)に共振(励振)する。このため、シャフト12に固定されている走査用ミラー14は、図3に示すように、走査用ミラー14の幅方向に延びる基準線Sが右回り方向限度線SRと左回り方向限度線SLとの間で、軸心Qを中心に共振(励振)する。ここで、走査用ミラー14が共振する右回り方向限度線SRと左回り方向限度線SLとの間の角度を機械振れ角θという。また、本実施形態では、駆動部30は、腕部15の先端部15a,15bにそれぞれ磁石32a,32bを配置した構成としたが、磁石32a,32bに替えて鉄芯を配置する構成としてもよい。
ところで、上記した構成のレゾナントスキャナ1では、走査用ミラー14は印加される励振周波数に応じて共振(励振)する。この構成で、高周波(例えば、10kHz以上)の励振周波数を印加することで、走査用ミラー14を高速で駆動させる場合、走査用ミラー14には共振に伴う慣性モーメントが作用するため、この慣性モーメントを小さく抑える必要がある。しかしながら、慣性モーメントを小さくするために、走査用ミラー14(ミラー本体16)の直径D(幅方向の最大長さ)を小さくすると、その分、有効反射範囲が小さくなるため、実際に走査するレーザー光線を細いビーム径にする必要がある。この場合、走査用ミラー14にレーザー光線を導光するためのミラーやレンズ等の光学素子に対して、熱レンズ効果やダメージの蓄積による短寿命化といった悪影響を与えるおそれがある。また、レーザー光線のビーム径が細くなるほど、開口数(NA)が低くなるため、エネルギー密度を高めること、及び、広い領域に照射することが困難になるという問題もある。
このため、走査用ミラー14(ミラー本体16)の有効反射範囲の小型化を抑制しつつ、慣性モーメントの増大を防止する構成が模索されている。従来の走査用ミラーは、ミラー本体が主として石英ガラスで形成されていたが、石英ガラスは、十分な剛性を有する材料でない。このため、従来の走査用ミラー14Aを高速で駆動した場合、図4に示すように、ミラー本体16Aに撓みが生じ、集光特性が低下する問題が生じるおそれがある。この問題点は、ミラー本体16(16A)の直径Dが大きくなるほど、また、走査用ミラー14(14A)を高速に、かつ、機械振れ角θ(図3参照)を広角に駆動するほどより顕著になる。
本構成では、走査用ミラー14は、直径D10mm、厚みt1.0mmの円板状のミラー本体16と、このミラー本体16の一面にアルミニウム薄膜により形成された反射膜17とを備えて構成される。反射膜17の厚みはミラー本体16の厚みに比べて無視できる程度に小さい。走査用ミラー14は、励振周波数f[kHz]及び走査用ミラー14の機械振れ角θ[rad]が、f・θ≧873[krad/s]を満たす領域で駆動(励振)される。このf・θの値は、加速度の係数に相当し、走査用ミラー14を高速に、かつ、機械振れ角θを広角に駆動させる際の指標となる。また、この873[krad/s]は、励振周波数fを10[kHz]、機械振れ角θを0.5度、すなわちπ/360[rad]で励振した際の値であり、従来の構成の走査用ミラーでは撓みが生じる領域である。本構成では、f・θ≧873[krad/s]以上の領域で駆動しても走査用ミラー14の撓みを抑えることを目的としている。
発明者は、ミラー本体16の材質に着目して鋭意研究を行った結果、ヤング率[GPa]と密度[g/cm]で規定される比剛性[GPa・cm/g]の値が重要であることが判明した。本実施形態では、試験体として、ダイヤモンド(試験体1)、ダイヤ焼結体(試験体2)、炭化シリコン(SiC;試験体3)、サファイア(試験体4)、石英ガラス(試験体5)の非金属材料を選び、これらの非金属材料を用いてミラー本体16を形成する。
図5は、各試験体のヤング率、密度、及び比剛性を示す図表である。この図5では、所定温度条件下(例えば、25℃近傍)での値を示している。ダイヤモンドは、炭素の同素体の1つであり、単結晶でも多結晶でもよい。ダイヤ焼結体は、ダイヤモンド粒子を焼結して密着させたものである。炭化シリコンは、炭素とケイ素との化合物であり、半導体基板の材料に広く用いられている。サファイアは、酸化アルミニウムの結晶である。石英ガラスは、二酸化ケイ素(SiO)から作成されるガラスである。図5に示すように、試験体1〜5は、比剛性の値が順次小さくなっている。試験体1〜3は、比剛性の値が100[GPa・cm/g]以上となり、試験体4、5は比剛性の値が100[GPa・cm/g]未満となる。なお、図5において、試験体4のサファイアは、製法や組成等により、比剛性の値が100[GPa・cm/g]以上となるものが存在し、100[GPa・cm/g]未満のものも存在する。
次に、実施例及び従来例について説明する。上記した各試験体1〜5の材料により、直径D10mm、厚みt1.0mmの円板状のミラー本体16を形成し、このミラー本体16を所定条件下で励振した際の撓み量をシミュレーション実験により算出する。ここで、撓み量は、ミラー本体16の中心直径5mmの領域における最大撓み量であり、SOLID WORKS(登録商標)を用いてシミュレーション実験を行った。
(実施例1)
実施例1では、ミラー本体16の材料として、比剛性が283.6[GPa・cm/g]のダイヤモンドを用いた。このミラー本体16を、励振周波数7[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振し、このミラー本体16に波長λが632[nm]のHe−Neレーザー光線を照射した際の撓み量を求めた。この場合のf・θの値は、427[krad/s]となる。また、撓み量に基づく判定は、撓み量が所定の基準値(He−Neレーザー光線の波長λ)未満であれば、レーザー光線の走査を阻害しないため可(○)とし、基準値(波長λ)以上の場合には不可(×)とした。この基準値は、一般に光学素子の面精度の測定がHe−Neレーザーの干渉により行われていることに基づき規定されている。
(実施例2)
実施例2では、ミラー本体16の材料として、比剛性が189.3[GPa・cm/g]の焼結ダイヤを用いた。この他の条件は、実施例1と同様である。
(実施例3)
実施例3では、ミラー本体16の材料として、比剛性が112.5[GPa・cm/g]の炭化シリコンを用いた。この他の条件は、実施例1と同様である。
(実施例4)
実施例4では、ミラー本体16の材料として、比剛性が87.5[GPa・cm/g]のサファイアを用いた。この他の条件は、実施例1と同様である。
(従来例1)
従来例1では、ミラー本体16の材料として、比剛性が32.7[GPa・cm/g]の石英ガラスを用いた。この他の条件は、実施例1と同様である。
(実施例5)
実施例5では、ミラー本体16を、励振周波数10[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、873[krad/s]となる。この他の条件は、実施例1と同様である。
(実施例6)
実施例6では、ミラー本体16を、励振周波数10[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、873[krad/s]となる。この他の条件は、実施例2と同様である。
(実施例7)
実施例7では、ミラー本体16を、励振周波数10[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、873[krad/s]となる。この他の条件は、実施例3と同様である。
(実施例8)
実施例8では、ミラー本体16を、励振周波数10[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、873[krad/s]となる。この他の条件は、実施例4と同様である。
(従来例2)
従来例2では、ミラー本体16を、励振周波数10[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、873[krad/s]となる。この他の条件は、従来例1と同様である。
(実施例9)
実施例9では、ミラー本体16を、励振周波数14[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、1710[krad/s]となる。この他の条件は、実施例1と同様である。
(実施例10)
実施例10では、ミラー本体16を、励振周波数14[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、1710[krad/s]となる。この他の条件は、実施例2と同様である。
(実施例11)
実施例11では、ミラー本体16を、励振周波数14[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、1710[krad/s]となる。この他の条件は、実施例3と同様である。
(実施例12)
実施例12では、ミラー本体16を、励振周波数14[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、1710[krad/s]となる。この他の条件は、実施例4と同様である。
(従来例3)
従来例3では、ミラー本体16を、励振周波数14[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振した。この場合のf・θの値は、1710[krad/s]となる。この他の条件は、従来例1と同様である。
図6は、実験結果(シミュレーション結果)をまとめた図表である。この図6に示すように、比剛性が100以上となる試験体1〜3を用いた実施例では、f・θの値が873[krad/s]よりも小さい領域だけでなく、873[krad/s]以上の領域において、撓み量を基準値(He−Neレーザー光線の波長λ)よりも小さく抑えることができ、良好な判定結果を得た。さらに、図6には記載していないが、ダイヤモンド及びダイヤモンド焼結体により形成されたミラー本体16を、励振周波数15[kHz]及び機械振れ角π/360[rad]で励振させた(f・θの値は、1963[krad/s])場合においても、撓み量を基準値よりも小さく抑えることができた。具体的には、ダイヤモンドの場合における撓み量は300nm(1/2λ)、ダイヤモンド焼結体の場合における撓み量は500nm(4/5λ)となり、いずれの場合も撓み量が基準値よりも小さく抑えられた。一方、比剛性が100未満となる試験体4、5を用いた実施例及び従来例では、f・θの値が873[krad/s]以上の領域でミラー本体16に撓みが生じ、良好な判定結果を得ることができなかった。特に、試験体4(サファイア)を用いた実施例では、f・θの値が比較的小さな領域(f・θ≦427[krad/s])では、撓み量を基準値よりも小さく抑えることができるが、f・θの値が873[krad/s]以上の領域では、撓み量が基準値を超えてしまった。
この結果によれば、ミラー本体16の撓み量は、ヤング率の大きさだけでなく、比剛性の大きさによって異なり、比剛性が100以上であれば、撓み量が所定の基準値以下となることが判明した。すなわち、ダイヤモンド、ダイヤ焼結体、及び、炭化シリコンをミラー本体16の材料に用いることで、駆動した際のミラー本体16の撓みを抑え、集光特性の向上を図ることができる。このため、f・θの値が873[krad/s]以上となる高速での駆動に伴う走査用ミラー14の小型化を抑制することができ、レーザー加工を行うために十分な太さのビーム径のレーザー光線を用いることができる。
本構成では、比剛性の値は、100以上350以下が好ましい。比剛性の値が350を超える材料ではミラー本体への加工が難しくなるためである。
次に、上記したレゾナントスキャナの適用例を説明する。図7は、レゾナントスキャナを適用したレーザー光線照射装置の構成例を示す図である。図8は、レーザー光線照射装置により出射したレーザー光線が被加工物を穿孔する状態を示す断面図である。レーザー光線照射装置20は、例えば、被加工物としてのウエーハWを穿孔するレーザー加工装置(不図示)に設けられる。ウエーハWは、例えば、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。
レーザー光線照射装置20は、図7に示すように、レーザー発振器22(レーザー光線発振手段)と、集光レンズ23と、第1の光軸偏心手段60と、第2の光軸偏心手段70と、ミラー24と、制御部100とを備える。レーザー発振器22は、ウエーハWが吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザー光線Lを発振する。集光レンズ23は、チャックテーブル10の保持面10aに対向して設けられている。集光レンズ23は、レーザー発振器22から発振されたレーザー光線Lを集光してチャックテーブル10に保持されたウエーハWに集光するものである。なお、本構成では、レーザー光線Lとして、ナノ秒レーザー光線またはピコ秒レーザー光線を用いることができるが、加工跡をより綺麗にするためにピコ秒レーザー光線を用いることが好ましい。
第1の光軸偏心手段60は、図7に示すように、レーザー発振器22のレーザー光線Lの進行方向下流に配設され、集光レンズ23の中心軸P(図7に示す)に対してレーザー光線Lの光軸LAXをY軸方向(第1軸方向に相当)に往復振動させる一対の第1軸レゾナントスキャナ61(上記したレゾナントスキャナ1に相当)を有する。一対の第1軸レゾナントスキャナ61は、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。第1軸レゾナントスキャナ61は、X軸方向と平行な軸心Qx周りに回転自在に設けられた平板状のミラー62(上記した走査用ミラー14に相当)と、ミラー62を共振運動により軸心Qx周りに回転させる走査部63(上記した走査用ミラー14に相当)とを備える。
一方の第1軸レゾナントスキャナ61a(以下、符号61aで示す)のミラー62には、レーザー発振器22が発振したレーザー光線Lが、レーザー発振器22と第1の光軸偏心手段60との間に配設されたミラー24を介して入射する。一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62は、レーザー光線Lを他方の第1軸レゾナントスキャナ61b(以下、符号61bで示す)に向けて反射する。他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62は、レーザー光線Lを第2の光軸偏心手段70に向けて反射する。
第2の光軸偏心手段70は、図7に示すように、第1の光軸偏心手段60と集光レンズ23との間に配設され、集光レンズ23の中心軸Pに対してレーザー光線Lの光軸LAXをX軸方向(第2軸方向に相当)に往復振動させる一対の第2軸レゾナントスキャナ71(上記したレゾナントスキャナ1に相当)を有する。一対の第2軸レゾナントスキャナ71は、X軸方向に間隔をあけて配置されている。第2軸レゾナントスキャナ71は、Y軸方向と平行な軸心Qy周りに回転自在に設けられた平板状のミラー72(上記した走査用ミラー14に相当)と、ミラー72を共振運動により軸心Qy周りに回転させる走査部73(上記した走査用ミラー14に相当)とを備える。
一方の第2軸レゾナントスキャナ71(以下、符号71aで示す)のミラー72には、他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62が反射したレーザー光線Lが入射する。一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72は、レーザー光線Lを他方の第2軸レゾナントスキャナ71(以下、符号71bで示す)に向けて反射する。他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72は、レーザー光線Lを集光レンズ23に向けて反射する。
レーザー光線照射装置20は、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bと第2軸レゾナントスキャナ71a,71bとを所定の位相差(90°)に固定して励振させることにより、図8に示すように、ウエーハWの表面WSにおけるボンディングパッドPDが形成された位置の裏面WRからボンディングパッドPDに達するビアホールVHを形成する。レーザー光線照射装置20は、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62と、第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72とが走査部63,73により軸心Qx,Qy周りに駆動されることで、レーザー光線Lを偏心させることができ、ウエーハWの表面WSの所望の箇所にビアホールVHを形成することができる。
以上、説明したように、本実施形態の走査用ミラー14は、ミラー本体16と、ミラー本体16上に形成された反射膜17と、を有し、ミラー本体16は、ヤング率と密度で規定される比剛性の値が少なくとも100[GPa・cm/g]以上の非金属材料から形成されているため、走査用ミラー14を、例えば10kHz以上の高周波で駆動した際のミラー本体16の撓みを抑え、集光特性の向上を図ることができる。
したがって、高速での駆動に伴う走査用ミラー14の小型化を抑制することができ、レーザー加工を行うために十分な太さのビーム径のレーザー光線を用いることができる。その結果として、集光レンズ23やミラー24などの導光用光学素子の設計自由度の向上や低コスト化を図ることができる。また、レーザー光線のビーム径を十分な太さにできるため、加工点において高NA(開口数)化による高エネルギー密度化、微細加工や広範囲の加工が可能となる。
また、本実施形態の走査用ミラー14は、励振周波数[kHz]をf、ミラー本体16の機械振れ角[rad]をθとした場合、f・θの値が873[krad/s]以上の領域で駆動されるため、従来の構成よりもより高速な領域においても、ミラー本体16の撓みを抑え、集光特性の向上を図ることができる。
また、非金属材料は、ダイヤモンドまたは炭化シリコンであるため、ミラー本体16の形成を容易に行うことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記した実施形態では、走査用ミラー14をレゾナントスキャナ1に設けた構成について説明したが、走査用ミラー14を高周波で励振されるものであればガルバノスキャナに設けることもできる。
また、上記した実施形態では、レゾナントスキャナ1を適用したレーザー光線照射装置20では、ビアホールVHを形成したが、ビアホールVHに限らず、溝などを形成するなどの他の形状に被加工物を加工してもよい。
1 レゾナントスキャナ(スキャナ装置)
11 ベース部
12 シャフト
13 台座
14 走査用ミラー
15 腕部
15a,15b 先端部
16 ミラー本体(ミラー基材)
17 反射膜
20 レーザー光線照射装置
30 駆動部
31a,31b コイル
32 電源部
32a,32b 磁石
D 直径(幅方向の長さ)
L レーザー光線
Q 軸心
f 励振周波数
θ 機械振れ角

Claims (4)

  1. ミラー基材と、
    前記ミラー基材上に形成された反射膜と、を有し、
    前記ミラー基材は、ヤング率と密度で規定される比剛性の値が少なくとも100[GPa・cm/g]以上の非金属材料からなる走査用ミラー。
  2. 前記ミラー基材を駆動する励振周波数[kHz]をf、該ミラー基材の機械振れ角[rad]をθとした場合、f・θの値が873[krad/s]以上の領域で駆動される請求項1に記載の走査用ミラー。
  3. 前記非金属材料は、ダイヤモンドまたは炭化シリコンである請求項1または2に記載の走査用ミラー。
  4. 前記ミラー基材は、共振スキャナまたはガルバノスキャナとして用いられる請求項1から3のいずれか一項に記載の走査用ミラー。
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