[実施形態]
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本発明に係る乗員情報取得システム1の概要を説明するための概念図である。図1に示すように乗員情報取得システム1は、複数のユーザによって利用される車両Vに搭載された車載器100と、車両Vに対する固有のキーとしての機能を備えた車両用携帯機200と、を備える。
ここでのユーザとは、車両Vのユーザとして予め車載器100に登録されている人物である。ここでは一例として、車両Vのユーザとしては4人の人物A〜Dが登録されているものとする。もちろん、ユーザとして登録されている人物の数は何人であってもよい。図中に示す300は、複数のユーザのそれぞれが所有している携帯端末300を表している。各携帯端末300は、例えばスマートフォンといった、後述の近距離通信を実施する機能を備える通信装置である。
<乗員情報取得システム1の概略的な構成について>
車載器100と車両用携帯機200はそれぞれ、互いに所定の周波数帯の電波を用いた無線通信を実施することで、周知のスマートエントリーシステムを実現するための機能を有している。
具体的には、車載器100は、車室内及び車両V周辺の所定範囲(以降、無線通信エリア)に向けて所定のLF(Low Frequency)帯の信号を送信する機能と、車両用携帯機200から送信される所定のRF(Radio Frequency)帯の信号を受信する機能を有する。また、車両用携帯機200は、車載器100から送信されるLF帯の信号を受信する機能と、車載器100に対して所定のRF帯の信号を返送する機能を有する。
ここでは一例として、LF帯は、20kHzから200kHzまでの周波数とする。また、RF帯は、300MHzから500MHzまでの周波数とする。LF帯、RF帯が指す周波数の範囲は適宜設計されれば良い。もちろん、車載器100から車両用携帯機200への信号送信に、LF帯以外の周波数帯の電波を用いても良い。同様に、RF帯以外の周波数帯の電波を、車両用携帯機200から車載器100への信号送信に用いても良い。
このような構成において車載器100は、車両用携帯機200が無線通信エリアに存在する場合、車両用携帯機200と無線通信による認証処理を実施し、認証が成立したことに基づいて、ドアの施開錠やエンジン始動等を実施するための種々の制御を実行する。
なお、ここでの認証処理とは、車載器100が、自分自身と無線通信を実施している通信端末(以降、通信対象)が、当該車載器100と対応付けられている車両用携帯機200(つまり、正規の車両用携帯機200)であることを確認する処理である。
車載器100が無線通信によって車両用携帯機200を認証することにより、車両用携帯機200を携帯したユーザは、キーとしての車両用携帯機200を操作すること無く、ドアの施錠/開錠、エンジンの始動/停止などを実現することができる。
なお、車載器100が形成する無線通信エリアは、適宜設計されればよく、例えば、車室外における無線通信エリアは、車両Vから数メートル以内の範囲とする。また、車載器100と車両用携帯機200のそれぞれには、車載器100又は車両用携帯機200固有の識別番号である車両IDが格納されている。前述の認証処理による車両用携帯機200の認証は、この車両IDから生成されるIDコードを用いて実現される。認証処理の詳細は別途後述する。
また、車両用携帯機200は、ユーザによって操作されるスイッチ240を備えており、ユーザによって操作されたスイッチに応じた信号を車載器100に送信することで、車両ドアの施錠/開錠等の制御を実行する、いわゆるリモートキーレスエントリーシステムを提供する。このように車両用携帯機200は車両Vのキーとして機能する。
携帯端末300は、通信範囲が例えば最大でも数十メートル程度となる所定の近距離無線通信規格に準拠した通信(以降、近距離通信とする)を実施する機能を備えた通信デバイスである。携帯端末300は、上述の近距離通信機能を備えていればよく、例えばスマートフォン等の携帯電話機を携帯端末300として用いることができる。もちろん、携帯端末300は、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、携帯用音楽プレーヤ、携帯用ゲーム機等であってもよい。
ここでの近距離無線通信規格としては、例えばBluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)や、Wi−Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を採用することができる。近距離通信が請求項に記載の近距離無線通信に相当する。
車両用携帯機200もまた、上述の近距離通信機能を備えており、車両用携帯機200周辺に存在する携帯端末300を検出し、その検出した携帯端末300と近距離通信を行う。ここでの車両用携帯機200周辺とは、車両用携帯機200が近距離通信可能な範囲(以降、近距離通信範囲とする)を指す。
携帯端末300は、自身に割り当てられた固有の端末識別子(以降、端末IDとする)を含む通知信号を、定期的に、又は車両用携帯機200からの要求に基づいて送信することで、車両用携帯機200に対して自身の存在を通知する。
ここでは一例として、車両用携帯機200が、携帯端末300にとってのマスターとして振る舞い、携帯端末300は、車両用携帯機200にとってのスレーブとして振る舞うものとする。また、携帯端末300は、通知信号を所定の周期(以降、通知周期とする)で定期的に送信することで、車両用携帯機200に対して自身の存在を通知する。
<乗員情報取得システム1の作動の概略>
本実施形態における乗員情報取得システム1は、概略的に次のように作動する。まず、車両用携帯機200は、自機周辺に存在する携帯端末300から受信する信号の受信信号強度に基づいて、当該車両用携帯機200を携帯しているユーザ(以降、携帯機保持者)が携帯している携帯端末300を特定する。ここでの自機とは、車両用携帯機200自分自身を指す。
便宜上、以降では、携帯機保持者が携帯している携帯端末300を保持者端末とも記載する。また、車両用携帯機200によって実施される、保持者端末を特定するための処理を保持者端末特定処理とする。
そして、車両用携帯機200は、保持者端末であると特定した携帯端末300の端末IDから定まる保持者情報を、車載器100に送信する。保持者情報とは、携帯機保持者としてのユーザを車載器100が特定又は認識するための情報である。ここでは一例として、保持者情報は、保持者端末であると特定した携帯端末300の端末IDとする。
一方、車載器100には予め、各ユーザが保有する携帯端末300の端末IDと、ユーザ独自の設定(例えば座席位置等)を示す車両設定データと、を対応付けたユーザ管理データである。なお、車両Vのユーザは、ユーザ毎に個別に付与されるユーザIDによって区別されればよい。
車載器100は、車両用携帯機200から保持者情報を取得すると、ユーザ管理データを参照し、取得した保持者情報に含まれる端末IDに対応するユーザを特定する。また、車載器100は上述した処理とは独立して、車両Vに対する車両用携帯機200の位置を特定するための処理を実施する。
車載器100は、車両用携帯機200の現在位置を特定できている場合には、その位置情報から、保持者情報に特定したユーザの着座位置を特定する。例えば、保持者情報を受信したときの車両用携帯機200の現在位置が助手席用のドア付近である場合には、当該携帯機保持者としてのユーザの着座位置は助手席であると判定する。また、保持者情報を受信したときの車両用携帯機200の現在位置が運転席用のドア付近である場合には、当該携帯機保持者としてのユーザの着座位置は運転席であると判定する。
そして、ユーザの着座位置を特定すると、そのユーザに対応する車両設定データを参照し、例えば座席位置等の車室内環境を、ユーザの好みに応じた車室内環境へと自動的に設定変更する。
なお、ユーザの着座位置は運転席であると判定するということは、当該ユーザが、今回のトリップにおいてドライバとしての役割を担うユーザであると判定することに相当する。ここでのトリップとは、車両Vが走行を開始してから駐車されるまでの一連の走行を指す。以下、各要素の具体的な構成及び作動について述べる。
<車載器100の構成>
車載器100は、車両Vに搭載されてあって、図2に示すように車両内に構築されているネットワーク400を介して、ECU(Electronic Control Unit)を含む種々のデバイスと相互通信可能に接続されている。例えば車載器100は、エンジンECU500、ボディECU600、及びディスプレイ700のそれぞれと相互通信可能に接続されている。
エンジンECU500は、車両Vに搭載されたエンジンの動作を制御するECUである。なお、ここでは一例として車両Vは、エンジンを動力源として備える車両とするがこれに限らない。車両Vは、電気自動車やハイブリッド車であってもよい。
ボディECU600は、車両Vに搭載された種々のアクチュエータを制御するECUであり、種々のアクチュエータやセンサと通信可能に接続されている。例えばボディECU600は、各車両ドアに設けられたドアロックモータ601に所定の制御信号を出力することで各ドアを施錠したり開錠したりする。また、各座席に設けられた、座席位置を調整するためのアクチュエータ602に、所定の駆動信号を出力することで、各座席の位置を変更する。
さらに、ボディECU600は、ドア毎に配置されているカーテシスイッチ603や、座席ごとに設けられている乗員検知センサ604などとも接続されている。なお、カーテシスイッチ603は、ドアの開閉を検出するセンサであり、乗員検知センサ604は、運転席に乗員が存在することを検知するセンサである。乗員検知センサ604は、圧力センサなどを用いて実現することができる。
ディスプレイ700は、車載器100等から入力されたデータに対応する画像を表示する。ディスプレイ700は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを用いて実現されればよい。なお、ディスプレイ700はヘッドアップディスプレイでもよい。
車載器100は、より細かい構成要素として、車両側制御部110、UHF受信部120、UHFアンテナ121、及びLF制御部130を備える。UHF受信部120及びLF制御部130はそれぞれ車両側制御部110と相互通信可能に接続されている。また、車載器100は、LFアンテナ131、タッチセンサ140、及び始動ボタン150のそれぞれとも電気的に接続されている。
UHFアンテナ121は、UHF帯の電波を電気信号に変換してUHF受信部120に出力する。UHFアンテナ121が請求項に記載の受信用アンテナに相当する。なお、本実施形態では一例として車載器100がUHFアンテナ121を備える態様とするが、これに限らない。UHFアンテナ121は、車載器100の外部に設けられてあって、車載器100と電気的に接続されている態様としてもよい。
UHF受信部120は、UHFアンテナ121から入力される信号を復調して車両側制御部110に提供する。UHF受信部120が請求項に記載の車両側受信部に相当する。
LFアンテナ131は、LF制御部130から入力された信号をLF帯の電波に変換して空間へ放射する。このLFアンテナ131は、車両Vにおいて所望の送信エリアを形成するように、適宜設計される箇所に複数設けられている。なお、LFアンテナ131の送信エリアとは、そのLFアンテナ131から送信された信号を車両用携帯機200が受信可能な(換言すれば復号可能な)信号レベルを保って到達するエリアである。
本実施形態では一例として、車両VにはLFアンテナ131として、図3に示すように、DF側アンテナ131A、DR側アンテナ131B、PF側アンテナ131C、PR側アンテナ131D、及び車室内アンテナ131Eを備えるものとする。
DF側アンテナ131Aは、運転席用ドアのハンドル付近(ハンドル内部も含む)に設けられたLFアンテナ131である。DF側アンテナ131Aは、車室外において運転席用のドアから一定範囲内となるエリアが送信エリアとなるように設計されている。図3中のZAは、DF側アンテナ131Aの送信エリアを概念的に表している。DF側アンテナ131Aは、運転席に対応するLFアンテナ131に相当する。なお、本実施形態において車両Vの運転席は、前部座席の右側に設けられているものとする。
DR側アンテナ131Bは、運転席側の後部座席用のドアハンドル付近に設けられたLFアンテナ131である。DR側アンテナ131Bは、車室外のうち、運転席側後部座席用のドアから一定範囲内となるエリアが送信エリアとなるように設計されている。図3中のZBは、DR側アンテナ131Bの送信エリアを概念的に表している。DR側アンテナ131Bは、後部座席、特に運転席側の後部座席に対応するLFアンテナ131に相当する。
PF側アンテナ131Cは、助手席用ドアのハンドル付近に設けられたLFアンテナ131である。PF側アンテナ131Cは、車室外のうち、助手席用のドアから一定範囲内となるエリアが送信エリアとなるように設計されている。図3中のZCは、PF側アンテナ131Cの送信エリアを概念的に表している。PF側アンテナ131Cは、助手席に対応するLFアンテナ131に相当する。
PR側アンテナ131Dは、助手席側の後部座席用のドアハンドル付近に設けられたLFアンテナ131である。PR側アンテナ131Dは、車室外のうち、助手席側後部座席用のドアから一定範囲内となるエリアが送信エリアとなるように設計されている。図3中のZDは、PR側アンテナ131Dの送信エリアを概念的に表している。PR側アンテナ131Dは、後部座席、特に助手席側の後部座席に対応するLFアンテナ131に相当する。
車室内アンテナ131Eは、車室内全域を送信エリアとするLFアンテナである。ここでは車室内アンテナ131Eを1つしか図示していないが、車室内アンテナ131Eは複数設けられていてもよい。図3では、車室内アンテナ131Eの送信エリアの図示は省略している。
なお、車両Vに搭載されるLFアンテナ131の設置位置や送信エリアは上述した態様に限らない。LFアンテナ131の設置位置等は、所望の送信エリアを形成するように適宜設計されればよい。また、車両Vには、上述したLF以外にも、トランク内部を送信エリアとするLFアンテナ131や、トランクドア付近を送信エリアとするLFアンテナ131が設けられていてもよい。
LFアンテナ131が請求項に記載の送信用アンテナに相当する。また、DF側アンテナ131A、DR側アンテナ131B、PF側アンテナ131C、PR側アンテナ131Dが請求項に記載の車室外用アンテナに相当し、車室内アンテナ131Eが請求項に記載の車室内用アンテナに相当する。DF側アンテナ131Aが請求項に記載の運転席用アンテナに相当し、PF側アンテナ131Cが請求項に記載の助手席用アンテナに相当する。
なお、本実施形態では一例として、LFアンテナ131から送信された信号が、車両用携帯機200にとって復号可能な信号レベルを保って到達する範囲を、そのLFアンテナ131の送信エリアとして採用しているが、これに限らない。他の態様として送信エリアは、車両用携帯機200での受信信号強度が所定のエリア判定閾値以上となる信号レベルで伝搬する範囲としてもよい。ここで用いるエリア判定閾値は、復号可能な信号レベルの下限値(つまり復号限界値)よりも大きい値のうち、設計者によって適宜設計された値である。そのような態様においては、車両用携帯機200は、車載器100からの信号を復号可能な受信信号強度で受信した場合であっても、その受信信号強度がエリア判定閾値以下となっている場合には送信エリア外に存在すると判定し、応答を返さないものとする。
タッチセンサ140は、車両Vの各ドアハンドルに装備されており、ユーザがそのドアハンドルを触れていることを検出する。各タッチセンサ140の検出結果は、車両側制御部110に逐次出力される。始動ボタン150は、ユーザがエンジンを始動させるためのプッシュスイッチである。始動ボタン150は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す制御信号を車両側制御部110に出力する。
LF制御部130は、車両側制御部110から入力されたデータを搬送波信号に変調した信号を生成する。そして、その変調した信号を、複数のLFアンテナ131のうち、任意のLFアンテナ131に出力し、電波として空間に放射させる。信号の出力先とするLFアンテナ131は、車両側制御部110によって指示される。
例えばLF制御部130は、各LFアンテナ131の送信タイミングが重複しないように各LFアンテナ131に信号を順番に出力し、各LFアンテナ131から順番に送信させる。各LFアンテナ131から電波の送信させるタイミングをずらすことで、或るLFアンテナ131から送信された信号が、他のLFアンテナ131から送信された信号と混信することを防ぐことができる。LF制御部130が請求項に記載の車両側送信部に相当する。
車両側制御部110は、通常のコンピュータとして構成されており、CPU111、RAM112、フラッシュメモリ113、I/O114、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。
CPU111は、種々の演算処理を実行する電子回路モジュールであって、マイクロプロセッサ等を用いて実現される。RAM112は揮発性のメモリであり、フラッシュメモリ113は不揮発性のメモリである。フラッシュメモリ113には、通常のコンピュータを車両側制御部110として機能させるためのプログラム(以降、車両制御プログラム)等が格納されている。
I/O114は、車両側制御部110が、例えばボディECU600や、UHF受信部120、LF制御部130などといった種々のデバイスと、データの入出力をするためのインターフェースとして機能する。I/O114は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
車両側制御部110は、フラッシュメモリ113に格納されている車両制御プログラムを実行することで、種々の機能を提供する。この車両側制御部110が提供する機能の詳細は後述する。なお、車両制御プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。CPU111が車両制御プログラムを実行することは、車両制御プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
また、フラッシュメモリ113には、車両Vのユーザと、そのユーザが保有する携帯端末300の端末IDと、車両Vに対するユーザ独自の設定を示す車両設定データと、を対応付けたデータであるユーザ管理データが格納されている。
ユーザ独自の設定の対象となる項目とは、例えば座席位置や、車室内ミラー及びサイドミラーの角度、空調温度等といった車室内環境を構成する項目である。また車両Vが、ドライバの搭乗又は搭乗準備動作の検出をトリガとして車室内外に設けられた照明を点灯させる機能(いわゆるウェルカム照明機能)を備えている場合には、その照明の色などもユーザによって設定可能な項目としてもよい。さらに、図示しない車載ナビゲーションシステムに対しても、ユーザ毎に異なる設定が登録されていても良い。
<車両側制御部110の機能について>
車両側制御部110は、上述した車両制御プログラムを実行することで、図4に示す種々の機能ブロックに対応する処理を実行する。すなわち、車両側制御部110は機能ブロックとして、送信処理部F1、受信処理部F2、車両情報取得部F3、認証処理部F4、携帯機位置特定部F5、乗員情報取得部F6、表示処理部F7、及びユーザ設定反映部F8を備えている。なお、車両側制御部110が実行する機能の一部又は全部は、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に実現されてもよい。
送信処理部F1は、各LFアンテナ131から送信させるための信号を生成し、当該信号の出力先とするLFアンテナ131を指定してLF制御部130に出力する。これにより、所望の各LFアンテナ131から所望の信号を電波として送信させる。送信信号としては、車両用携帯機200を認証するために所定の応答信号の返送を要求する信号(以降、認証用信号)や、後述するスキャン処理の開始を指示する信号(以降、スキャン指示信号)、保持者端末特定処理の結果の報告を指示する信号(以降、報告指示信号)などが該当する。
ここでの認証用信号とは、車両用携帯機200に対して、所定の規則によって生成されるIDコードを返送するように要求する信号である。なお、認証処理は、機密レベルが異なる複数種類の認証用信号を順次送信していくことで段階的に認証を進めていく態様としてもよい。つまり、複数種類の信号を認証用信号として用いる構成としても良い。認証用信号もスキャン指示信号も、車両用携帯機200に対して、その信号の内容に応じた応答信号を返送するように要求する信号である。
受信処理部F2は、UHFアンテナ121が受信し、かつ、UHF受信部120が復調したデータを取得する。車両情報取得部F3は、タッチセンサ140や、始動ボタン150、エンジンECU500、ボディECU600、ディスプレイ700などの車両Vに搭載されたセンサやECUから、車両の状態を示す種々の情報(以降、車両情報)を取得する。
車両情報としては、例えば、ドアの開閉状態や、各ドアの施錠/開錠状態、乗員検知センサ604の検出結果、タッチセンサ140、始動ボタン150の押下の有無等が該当する。なお、車両情報に含まれる情報は、上述したものに限らない。図示しないシフトポジションセンサが検出するシフトポジションや、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキセンサの検出結果なども車両情報に含まれる。
車両情報取得部F3が取得する車両情報は、認証処理部F4等が車両Vの現在の状態を認識するために用いられる。例えば、認証処理部F4は、エンジンがオフであり、全てのドアが施錠されている場合に、車両Vは駐車されていると判定する。もちろん、車両Vが駐車されていると判定する条件は適宜設計されればよく、周知の判定条件等を適用することができる。
認証処理部F4は、車両用携帯機200との無線通信による認証処理を実施する。この認証処理の手順は、周知であるためここではその詳細な説明は省略する。認証処理部F4は、車両情報取得部F3が取得した車両情報に基づいて、認証処理を実施する所定の条件が充足されたことを検出した場合に、認証処理を開始する。例えば、認証処理部F4は、車両用携帯機200が車両通信範囲に進入したことを検知した時や、始動ボタン150がプッシュされた時などに認証処理を実施する。
なお、車両用携帯機200が車両通信範囲に進入したか否かは、例えば、各LFアンテナ131から定期的にポーリング信号を送信し、当該ポーリング信号に対する車両用携帯機200からの応答信号を受信できたか否かに基づいて判定すればよい。つまり、ポーリング信号に対する車両用携帯機200からの応答信号を受信していない状態が継続している状態において、車両用携帯機200からの応答信号を受信した場合に、車両用携帯機200が車両通信範囲に進入したと判定すればよい。
なお、ポーリング信号は、車両用携帯機200に対して応答を要求する信号であればよい。ポーリング信号は、車両用携帯機200が車両通信範囲に存在することを検出するための専用的な信号であってもよいし、他の目的に供される信号であってもよい。認証用信号であってもよいし、スキャン指示信号であってもよい。また、その他の目的に対応する信号であってもよい。
携帯機位置特定部F5は、LFアンテナ131から送信した信号に対する車両用携帯機200からの応答信号を受信することで、車両Vに対する車両用携帯機200の位置(以降、携帯機位置とする)を特定する。具体的には、本実施形態では一例として次のようにして、携帯機位置を特定するものとする。
携帯機位置特定部F5は、送信処理部F1と協働して、各LFアンテナ131から順番に、車両用携帯機200に対して応答を要求する信号(例えばポーリング信号)を送信する。便宜上、携帯機位置の特定に供される信号を位置特定用信号とも記載する。位置特定用信号は、前述の通り、認証用信号等のように他の目的を達成するための信号であってもよいし、携帯機位置を特定するためだけに供される信号であってもよい。
ここでは一例として、図5に示すようにDF側アンテナ131A、DR側アンテナ131B、PF側アンテナ131C、PR側アンテナ131D、車室内アンテナ131Eの順に、一定時間間隔で位置特定用信号を送信していくものとする。
上述のようにLF制御部130は、複数のLFアンテナ131からそれぞれ異なるタイミングで位置特定用信号を送信する。そのため、携帯機位置特定部F5は、位置特定用信号に対する応答信号を受信したタイミングから、車両用携帯機200が応答した位置特定用信号を送信したLFアンテナ131を一意に特定できる。例えば、図5に示すようにPF側アンテナ131Cから位置特定用信号を送信した時点から一定時間以内に応答信号を受信した場合には、車両用携帯機200は、PF側アンテナ131Cから送信した位置特定用信号に対して応答したことがわかる。
また、あるLFアンテナ131から送信した信号に対して車両用携帯機200が応答信号を返してきたということは、車両用携帯機200はそのLFアンテナ131の送信エリア内に存在することを意味する。したがって、携帯機位置特定部F5は、応答信号が返ってきたLFアンテナ131の送信エリア内に車両用携帯機200が存在すると判定する。
なお、DF側アンテナ131Aの送信エリアは、運転席用ドアから一定範囲内となるように設定されているため、DF側アンテナ131Aの送信エリア内に存在すると判定することは、運転席用ドアの周辺に存在すると判定することに相当する。他のドアに設けられているLFアンテナ131の送信エリアに車両用携帯機200が存在すると判定した場合についても同様である。
なお、携帯機位置を特定する方法は、上述した方法に限らない。上述した方法以外にも公知となっている種々の方法を適用することができる。
乗員情報取得部F6は、車両用携帯機200から送信される保持者情報に基づいて車両用携帯機200を保持しているユーザを特定する。具体的には、保持者情報に示される端末IDに対応するユーザを携帯機保持者として認識する。また、乗員情報取得部F6は、携帯機位置特定部F5によって特定されている携帯機位置から、携帯機保持者が着座しようとしている座席(換言すれば着座位置)を特定する。
具体的には、乗員情報取得部F6は、携帯機位置特定部F5によって特定されている携帯機位置を送信エリアとするLFアンテナ131が対応している座席を、着座位置とみなす。例えば、携帯機位置が、PF側アンテナ131Cの送信エリアである場合、携帯機保持者の着座位置は助手席であると判定する。
これは、本実施形態における車室外用の各LFアンテナ131は、図3に示すように車両Vの周辺のうち、各座席に対応するドア付近に限定されているためである。例えば、携帯機位置が助手席用のドアの付近となっている場合には、当該携帯機保持者の着座位置は助手席である可能性が高い。そのため、携帯機位置特定部F5によって特定される携帯機位置は、車両Vが備える座席のうち、携帯機保持者が着座しようとしている座席に対応する。
表示処理部F7は、ディスプレイ700に表示する画像データを生成して、ディスプレイ700に出力する。これにより、生成した画像データに対応する画像をディスプレイ700に表示させる。つまり、表示処理部F7はディスプレイ700の表示画面を制御する。この表示処理部F7が表示させる画像の具体例については別途後述する。
ユーザ設定反映部F8は、乗員情報取得部F6が取得したユーザの着座位置に基づいて、車室内環境を当該ユーザの好みに応じた環境へと設定変更(いわゆるカスタマイズ)する。例えばユーザ設定反映部F8は、ユーザが着座する座席の位置を、当該ユーザによって予め設定されている位置まで移動させる。なお、座席位置の調整は、ボディECU600と協働して実現されればよい。例えばボディECU600は、ユーザ設定反映部F8からの指示に基づいて、所定の座席に設けられているアクチュエータを駆動し、座席位置を目標位置まで移動させる。
<車両用携帯機200の構成>
車両用携帯機200は、図6に示すように、携帯機側制御部210、車両用通信部220、近距離通信部230、スイッチ240、及び加速度センサ250を備える。携帯機側制御部210は、車両用通信部220、近距離通信部230、スイッチ240、及び加速度センサ250のそれぞれと通信可能に接続されている。
携帯機側制御部210は、車両用携帯機200の動作を制御するモジュールであって、通常のコンピュータとして構成されている。すなわち、CPU211、RAM212、フラッシュメモリ213、I/O214、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。
フラッシュメモリ213には、通常のコンピュータを携帯機側制御部210として機能させるためのプログラム(以降、携帯機制御プログラム)や、車両Vとの認証を行うために車両用携帯機200に割り当てられている車両IDが格納されている。
また、フラッシュメモリ213には、車両Vのユーザが保有する携帯端末300の端末IDが、その携帯端末300を保有しているユーザの情報(例えばユーザID)と対応付けられて保存されていることが好ましい。便宜上、ユーザIDと端末IDとの対応関係を示すデータを端末管理データと記載する。なお、1人のユーザが複数の携帯端末300を所有している場合には、それぞれの携帯端末300を当該ユーザと対応付けて保存しておけばよい。これは前述のユーザ管理データも同様である。
車両用通信部220は、車載器100と通信を行うための通信モジュールであり、より細かい要素として、LFアンテナ221、LF受信部222、UHF送信部223、及びUHFアンテナ224を備える。
LFアンテナ221は、LF帯の電波を電気信号に変換してLF受信部222に出力する。LF受信部222は、LFアンテナ221から入力される信号を復調したデータを生成する。LF受信部222は、受信信号を復調したデータを携帯機側制御部210に提供する。
UHF送信部223は、携帯機側制御部210から入力されたデータを電気的な搬送波信号に変調して、UHFアンテナ224に出力する。UHFアンテナ224は、UHF送信部223から入力された電気信号を、UHF帯の電波に変換して空間へ放射する。車両用通信部220が請求項に記載の第1通信部に相当する。
近距離通信部230は、携帯端末300と近距離通信を行うためのモジュールであり、より細かい要素として、近距離通信用アンテナ231と、近距離通信制御部232と、を備える。
近距離通信用アンテナ231は、近距離通信に用いられる周波数帯(例えば2.4GHz帯)の電波を送受信するためのアンテナである。近距離通信制御部232は、近距離通信用アンテナ231で受信した信号を復調して携帯機側制御部210に提供するとともに、携帯機側制御部210から入力された信号を変調して、近距離通信用アンテナ231に出力し、送信させる。
近距離通信制御部232は、さらに、近距離通信用アンテナ231で受信した信号の受信信号強度を検出する受信信号強度検出部233を備え、近距離通信制御部232は、受信信号を復調したデータと、その受信信号強度とを対応付けて携帯機側制御部210に提供する。近距離通信部230が請求項に記載の第2通信部に相当する。
スイッチ240は、車両用携帯機200に対するユーザ操作を受け付けるためのスイッチであって、例えばプッシュスイッチとする。例えば、ユーザはスイッチ240を操作(ここではプッシュ)することで、車両Vのドアの開錠/施錠を実施させるリモートキーレスエントリー機能を利用することができる。スイッチ240は、複数備えられていてもよい。ここでは、一例として、スイッチ240として、車両Vのドアを施錠するためのスイッチ240と、車両Vのドアを開錠するためのスイッチ240を備えているものとする。
加速度センサ250は、車両用携帯機200に作用している加速度を検知するためのセンサである。加速度センサ250は、車両用携帯機200に作用している加速度を示す信号を携帯機側制御部210に出力する。
<携帯機側制御部210の機能について>
携帯機側制御部210は、携帯機制御プログラムを実行することで実現される機能ブロックとして、図7に示すように車両用通信処理部G1、電源管理部G2、近距離通信処理部G3、保持者端末特定部G4、操作受付部G5、及び振動情報取得部G6を備える。なお、上述した機能ブロックの一部又は全部は、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に実現されてもよい。
車両用通信処理部G1は、LFアンテナ221を介してLF受信部222が受信したデータを取得する。また、車両用通信処理部G1は、UHFアンテナ224から送信させるための信号を生成し、UHF送信部223に出力する。つまり、車両用通信処理部G1は、車載器100との通信に関わるソフトウェア処理を実施する。
具体的には、次に例示するように、車両用通信処理部G1は車載器100から受信した信号に対する応答信号を生成し、当該応答信号をUHFアンテナ224から送信させる。例えば車両用通信処理部G1は、IDコードの返送を要求する認証用信号を受信した場合には、フラッシュメモリ213に格納されている車両IDを所定の規則に則って暗号化したIDコードを生成し、当該IDコードを含む信号を送信させる。また、スキャン指示信号を受信した場合には、保持者端末特定処理を開始する旨の応答信号を生成し、送信させる。報告指示信号を受信した場合には、保持者情報を含む保持者情報信号を生成し、送信させる。
電源管理部G2は、車両用携帯機200が備える電源から各部への電力の供給を制御する。例えば、電源管理部G2は、携帯端末300との近距離通信を実施する必要がない場合には、近距離通信部230を、近距離通信部230での消費電力を抑制するための低消費電力モードに設定する。近距離通信部230は低消費電力モードとなっている場合、携帯端末300との近距離通信を実施しない。低消費電力モードは、近距離通信部230全体への電力供給を停止する態様としてもよいし、電力を供給する部分を限定的にすることで消費電力を抑制する態様としてもよい。近距離通信部230における消費電力を抑制するための技術は、周知の技術を適用すればよい。便宜上、近距離通信部230が携帯端末300と近距離通信が可能な状態をアクティブモードと称する。
近距離通信処理部G3は、近距離通信制御部232が受信したデータ、及び、その受信信号強度を取得する。また、近距離通信処理部G3は、携帯端末300へ送信するべき信号を生成し、近距離通信制御部232に出力する。
また、この近距離通信処理部G3は、自機周辺に存在する携帯端末300を検出する処理(以降、スキャン処理)を実施する。例えば、近距離通信処理部G3はスキャン処理において、通知周期に応じた時間だけ、近距離通信部230を携帯端末300からの信号を受信できる状態(つまりアクティブモード)にする。
そして、当該時間内において携帯端末300から送信される通知信号を受信することで、自機周辺に存在する携帯端末300を検出する。例えば、ユーザA〜Dのうち、ユーザA、Bだけが車両用携帯機200から近距離通信可能な範囲内に存在する場合には、近距離通信処理部G3はスキャン処理によってユーザA、Bのそれぞれが携帯する携帯端末300を検出する。もちろん、ユーザA〜D全員が車両用携帯機200から近距離通信可能な範囲内に存在する場合には、近距離通信処理部G3はスキャン処理によってユーザA〜Dのそれぞれが携帯する携帯端末300を検出する。
なお、スキャン処理は、車両Vのユーザの携帯端末として登録されている携帯端末300に限らず、自機周辺に存在する全ての近距離通信機能を備えた通信端末を検出する態様としてもよい。
スキャン処理によって検出された携帯端末300についての情報(例えば端末ID)は、その携帯端末300からの信号の受信信号強度と対応付けられて、例えばリスト形式で管理される。すなわち、近距離通信処理部G3は、検出した携帯端末300を、その携帯端末300から受信した通知信号に含まれる端末IDによって識別する。スキャン処理の結果は、RAM212に格納される。
保持者端末特定部G4は、保持者端末を特定するための処理を実行する。保持者端末特定部G4は、まず、車両用通信処理部G1が車載器100からのスキャン指示信号を受信した場合に、近距離通信処理部G3に対してサンプリング処理を開始するように要求する。サンプリング処理は、所定の時間間隔(例えば50ミリ秒)で逐次、スキャン処理を実施する処理である。
その後、保持者端末特定部G4は、車両用通信処理部G1が報告要求信号を受信すると、スキャン指示信号を受信してから報告指示信号を受信するまで収集した、携帯端末300毎の受信信号強度から、携帯端末300毎の受信信号強度の経時的な変化度合い(以降、変動量)を算出する。
そして、保持者端末特定部G4は、携帯端末300毎に算出した受信信号強度の変動量に基づいて、自機周辺に存在する携帯端末300の中から、保持者端末を決定する。具体的には、保持者端末特定部G4は、携帯端末300毎に、複数の時点においてその携帯端末300から受信した信号の受信信号強度の分散値を、前述の変動量として算出する。本明細書での分散値とは統計学において用いられる分散と同様のものである。
そして、変動量としての分散値が最も小さい携帯端末300を保持者端末に決定する。複数の携帯端末300のうち、受信信号強度の変動量が最も小さい携帯端末300を保持者端末とする理由は次の理由による。
一般的に近距離通信には2.4GHzなどの周波数が用いられる。このような高周波の電波は、人体等によって大きく減衰される。したがって、車両用携帯機200と、携帯機保持者の携帯端末300との間に携帯機保持者の体が存在する場合など、同一人物が保持している場合であっても、その位置関係によって受信信号強度は大幅に減衰する。また、高周波の電波は車体などの金属板等で反射されやすい性質を有する。そのため、受信信号強度の高い携帯端末が最も近い携帯端末とは限らない。携帯端末300の出力レベルや、携帯端末300及び車両用携帯機200のアンテナ指向性、周辺環境により、同一人物によって携帯されている携帯端末300よりも、他のユーザが保持している携帯端末300のほうが、受信信号強度が高くなる場合もある。
一方、携帯機保持者による車両用携帯機200と携帯端末300の位置関係が変わらなければ、受信信号強度の変化率は小さいことが期待される。また、携帯機保持者以外の人が所持する携帯端末300からの受信信号強度は、携帯機保持者及びそのユーザとの位置関係や体の向きなどによって大幅に変化する可能性が高い。
つまり、受信信号強度の変動量が最も小さい携帯端末300は保持者端末で可能性が高い。本実施形態における保持者端末特定部G4は当該思想に基づいて、受信信号強度の変動量が最も小さい携帯端末300を保持者端末と判定する。また、以上で述べた理由により、受信信号強度の大小ではなく、受信信号強度の変動量に基づいて保持者端末を特定する態様とすることで、より精度良く保持者端末を特定できる。
なお、ここでは一例として、複数時点において検出された受信信号強度を母集団として定まる分散値を変動量として採用する態様とするが、これに限らない。変動量は、複数時点において検出された受信信号強度の最大値と最小値の差であっても良い。また、例えば標準偏差等といった、ばらつきを評価するための他の指標を、変動量として採用してもよい。
なお、自機周辺に存在する携帯端末300が1台しか存在しない場合であって、かつ、その携帯端末300からの受信信号強度が所定の受信強度閾値以上である場合には、その携帯端末300を保持者端末に決定すればよい。ここでの受信強度閾値は、車両用携帯機200と、その検出された携帯端末300との距離が一定距離(例えば10m)以上離れているか否かを識別するための閾値である。また、自機周辺に、受信信号強度が受信強度閾値以上となっている携帯端末300が1台も存在しない場合には、保持者端末は存在しないと判定すればよい。なお、ここで用いる受信強度閾値は、携帯端末300からの信号を車両用携帯機200が受信可能な信号レベルの下限値に相当するものであってもよい。
保持者端末特定部G4は保持者端末を決定すると、その保持者端末の端末IDを車両用通信処理部G1に提供する。車両用通信処理部G1は、報告指示信号を受信すると、保持者端末の端末IDから定まる保持者情報を含む保持者情報信号を車載器100に送信する。本実施形態における保持者情報とは、前述の通り、保持者端末の端末IDである。また、車両用通信処理部G1は、保持者端末特定部G4が保持者端末は存在しないと判定している場合には、その旨を示す保持者情報信号を車載器100に送信する。なお、他の態様として、車両用携帯機200は、保持者端末の端末IDと対応付けられているユーザIDを保持者情報として送信する態様としてもよい。
便宜上、以降では、変動量の算出に用いられる複数時点における受信信号強度を、特定用受信強度データと称し、特定用受信強度データとしての受信信号強度を収集する期間をサンプリング期間と称する。本実施形態においては、スキャン指示信号を開始してから報告指示信号を受信するまでがサンプリング期間に相当する。
なお、本実施形態ではスキャン指示信号を受信してから報告指示信号を受信するまでに取得した受信信号強度を特定用受信強度データとして採用する態様とするが、これに限らない。例えば、スキャン指示信号を受信してから所定のサンプリング時間経過するまでに収集した受信信号強度を特定用受信強度データとして採用してもよい。サンプリング時間は、携帯機保持者と携帯機保持者以外のユーザとの位置関係等、近距離通信用の電波の伝搬環境が変化しうる長さとすることが好ましい。例えば、サンプリング時間は、数秒から10秒程度とすればよい。さらに、変形例5として後述するように、サンプリング期間は、スキャン指示信号を受信してから報告指示信号を受信するまでの期間に限らない。
なお、本実施形態では消費電力抑制の観点から、報告指示信号を受信した場合にはサンプリング処理を打ち切り、近距離通信部230を低消費電力モードに移行させるものとする。もちろん、他の態様として、報告指示信号を受信した後もサンプリング処理を継続させても良い。
操作受付部G5は、スイッチ240から入力される制御信号に基づいて、スイッチ240に対するユーザ操作を特定し、その操作内容を他の機能部に提供する。そして、各部は、操作受付部G5が特定したユーザ操作の内容に応じた処理を実施する。例えば、操作受付部G5が、車両Vのドアを開錠するためのスイッチ240がユーザによってプッシュされたことを検出した場合には、車両用通信処理部G1は、ドアの開錠を指示する信号を車載器100に送信する。振動情報取得部G6は、加速度センサ250から提供される車両用携帯機200に作用している加速度を取得する。
<携帯端末300の構成>
携帯端末300は、前述の通り、近距離通信を実施するための機能を備えていればよく、スマートフォン等といった種々の携帯型の通信装置を、本実施形態における携帯端末300として採用することができる。携帯端末300の概略的な構成を図8に示す。図8に示すように、携帯端末300は、端末側制御部310と、近距離通信部320とを備える。
端末側制御部310は、CPU、RAM、フラッシュメモリ、I/O等を備えるコンピュータとして構成されてあって、フラッシュメモリに格納された携帯端末用プログラムを実行することで各種の処理を実行する。なお、端末側制御部310が実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
端末側制御部310は、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体を用いて実現される記憶部311を備える。記憶部311には、携帯端末300固有の端末IDや、種々のソフトウェアが格納されている。
近距離通信部320は、携帯端末300が車両用携帯機200と近距離通信を実施するための通信モジュールであって、その構成は、車両用携帯機200が備える近距離通信部230と同様である。
<保持者特定関連処理>
次に、車載器100が、車両用携帯機200を保持しているユーザ、及び、そのユーザの着座位置を特定するために、車載器100の車両側制御部110、車両用携帯機200の携帯機側制御部210のそれぞれが実施する処理について説明する。便宜上、車両側制御部110が実施する処理を車両側処理と称し、車両用携帯機200の携帯機側制御部210が実施する処理を携帯機側処理と称する。車両側処理と携帯機側処理とをまとめて保持者特定関連処理と称する。
<車両側処理>
まずは、図9に示すフローチャートを用いて車両側処理について説明する。この車両側処理は、例えば、車両Vが駐車されている状態において、車載器100と車両用携帯機200との間の無線通信による認証が成立した時点において開始される。つまり、車室外に存在する車両用携帯機200との認証が成功した場合に開始される。もちろん、車両側処理を開始するための条件は適宜設計されればよい。例えば車両用携帯機200が車両通信範囲に進入したことを検知した場合としてもよい。
まず、ステップS101では送信処理部F1が、特定のLFアンテナ131(例えばDF側アンテナ131A)から位置特定用信号を送信させ、ステップS102に移る。ステップS102では受信処理部F2が、ステップS101で送信した位置特定用信号に対する応答信号を受信したか否かを判定する。
応答信号を受信した場合には、ステップS102が肯定判定されてステップS103に移る。一方、ステップS101を実施してから一定時間経過しても、応答信号を受信できなかった場合にはステップS101に戻り、前回位置特定用信号を送信させたLFアンテナ131とは別のLFアンテナ131から位置特定用信号を送信させる。つまり、ステップS101〜S102は、複数のLFアンテナ131から順番に位置特定用信号を送信する処理である。なお、複数のLFアンテナ131において位置特定用信号を送信させる順番は適宜設計されれば良い。また、全てのLFアンテナ131から位置特定用信号を送信しても応答信号が得られなかった場合には、再度認証処理からやり直してもよい。
ステップS103では携帯機位置特定部F5が、応答信号が得られた位置特定用信号を送信したLFアンテナ131(以降、応答取得アンテナ)の送信エリアに基づいて、携帯機位置を特定してステップS104に移る。
ステップS104では送信処理部F1が、LF制御部130を介して所定のLFアンテナ131からスキャン指示信号を送信させてステップS105に移る。なお、スキャン指示信号は、全てのLFアンテナ131から順に送信させてもよいし、ステップS102において応答信号が得られた位置特定用信号を送信したLFアンテナ131のみから送信させてもよい。
ステップS105では送信処理部F1が、報告指示信号を送信させてステップS106に移る。報告指示信号を送信させるLFアンテナ131も、スキャン指示信号を送信させるLFアンテナ131と同様である。報告指示信号を送信するタイミングは、ステップS104においてスキャン指示信号を送信してからサンプリング時間経過したタイミングとすればよい。
ステップS106では、車両用携帯機200から送信される保持者情報信号を受信してステップS107に移る。ステップS107では、保持者情報信号に含まれる保持者情報としての端末IDと、フラッシュメモリ113に格納されているユーザ管理データに基づいて、携帯機保持者としてのユーザを特定する。つまり、ユーザ管理データを参照し、保持者情報としての端末IDと対応付けられているユーザを携帯機保持者として認識する。
ステップS108では乗員情報取得部F6が、ステップS104で携帯機位置特定部F5が特定した携帯機位置に基づいて、携帯機保持者としてのユーザの着座位置を特定してステップS109に移る。ステップS109では、ユーザ設定反映部F8が、ステップS109で特定した座席の位置や空調の目標温度や風量などといった車室内環境を、ステップS108で特定した携帯機保持者に相当するユーザの好みに応じた環境となるように設定変更して、本フローを終了する。
<携帯機側処理>
次に、図10に示すフローチャートを用いて、携帯機側処理について説明する。携帯機側処理を開始する条件は適宜設計されればよい。ここでは車両側処理と同様に、車載器100と車両用携帯機200との間の無線通信による認証が成立した場合とする。なお、本フロー開始時点において、近距離通信部230は低消費電力モードとなっているものとする。
まず、ステップS201では車両用通信処理部G1が、位置特定用信号を受信したか否かを判定する。位置特定用信号を受信した場合にはステップS201が肯定判定されてステップS202に移る。一方、位置特定用信号を受信していない場合には、ステップS201が否定判定されてステップS201を繰り返す。なお、本フローを開始してから、換言すれば認証処理が完了してから一定時間経過しても位置特定用信号を受信しなかった場合には、再度、認証処理からやり直してもよい。
ステップS202では、ステップS201で受信した位置特定用信号に対する応答信号を返送して、ステップS203に移る。ステップS203では、スキャン指示信号を受信したか否かを判定する。スキャン指示信号を受信した場合にはステップS203を肯定判定してステップS204に移る。一方、ステップS202で応答信号を返送してから一定時間待機してもスキャン指示信号を受信しなかった場合には、ステップS203が否定判定してステップS201に戻る。
ステップS204では車両用通信処理部G1が、スキャン指示信号を正常に受信できた旨を示す応答信号を返送してステップS205に移る。ステップS205では電源管理部G2が、近距離通信部230を低消費電力モードからアクティブモードへと移行させ、ステップS206に移る。
ステップS206では近距離通信処理部G3がサンプリング処理を開始してステップS207に移る。ステップS207では車両用通信処理部G1が報告指示信号を受信したか否かを判定する。報告指示信号を受信した場合にはステップS207が肯定判定されてステップS208に移る。報告指示信号を受信するまでは、ステップS207の判定を逐次実施すればよい。
ステップS208では、近距離通信処理部G3がサンプリング処理を終了し、保持者端末特定部G4が、ステップS205において収集した携帯端末300毎の受信信号強度に基づいて、携帯端末300毎の受信信号強度の変動量を算出する。そして、変動量が最も小さい携帯端末300を保持者端末に決定してステップS209に移る。なお、電源管理部G2は、サンプリング処理の完了に伴って近距離通信部230は低消費電力モードへと移行させる。
ステップS209では車両用通信処理部G1が、保持者情報信号を、車載器100へ送信して本フローを終了する。
なお、本実施形態では一例として、車載器100が報告指示信号を送信し、車両用携帯機200は報告指示信号の受信をトリガとして保持者情報信号を送信する態様とするが、これに限らない。車載器100は報告指示信号を送信しない態様としてもよい。その場合には車両用携帯機200は、保持者端末特定部G4による保持者端末の特定が完了した場合に、保持者情報信号を送信する態様とすれば良い。
<本実施形態のまとめ>
車両用携帯機200は、スキャン処理を実施することによって自機周辺に存在する携帯端末300を検出するとともに、各携帯端末300から送信される信号の受信信号強度を取得する。さらに、各携帯端末300から送信されてくる信号の受信信号強度の変動量に基づいて保持者端末を決定し、当該保持者端末の端末IDを含む保持者情報信号を車載器100に返送する。また、車両用携帯機200は、車載器100から送信されてくる位置特定用信号を受信した場合には、位置特定用信号に対する応答信号を返送する。
一方、車載器100は、車両用携帯機200から送信されてくる保持者情報信号に基づいて車両用携帯機200を保持しているユーザを特定する。また、車載器100は、位置特定用信号に対する車両用携帯機200からの応答信号を受信することで携帯機位置を特定し、さらに、その特定した携帯機位置から携帯機保持者の着座位置を特定する。そして、特定済みの着座位置と、携帯機保持者としてのユーザとを対応付けることで、携帯機保持者としてのユーザの着座位置を特定する。
このような態様によれば、車両を利用するユーザの着座位置を推定するために、車両Vに携帯端末300と近距離通信を実施するための受信機を複数配置する必要はない。車両用携帯機200が、携帯端末300と近距離通信を実施する機能を備えていれば良い。したがって、携帯端末300と近距離通信を実施するための受信機の数を低減する事ができ、それに伴いユーザの着座位置を特定するシステム(つまり乗員情報取得システム)の導入コストを低減することができる。
特に、本実施形態の構成によれば、既存のスマートエントリーシステム用の設備を用いて実現することができる。そのため、乗員情報取得システムの導入コストをより一層低減することができる。また、乗員情報取得システムの導入に伴う既存システムの設計変更を抑制することもできる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。また、下記の種々の変形例を適宜複数組み合わせて実施することができる。
なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[変形例1:車両用携帯機が応答したLFアンテナの特定方法の変形例]
上述した実施形態では、複数のLFアンテナ131から位置特定用信号を送信するタイミングをずらすことで、車両用携帯機200が何れのLFアンテナ131から送信した位置特定用信号に応答したかを特定する態様を例示したが、これに限らない。
例えば、複数のLFアンテナ131の送信エリアが互いに重ならないように(換言すれば互いに混信しないように)設計されている場合には、図11の最上段に示すように、全てのLFアンテナ131から位置特定用信号を一斉送信してもよい。
ただし、その場合に各LFアンテナ131から送信する位置特定用信号には、LFアンテナ131毎に異なる返送タイミングが指定されているものとする。例えば、DF側アンテナ131Aから送信する位置特定用信号には受信してから所定の第1待機時間T1経過したタイミングで返送するように、返送のタイミングが指定されているものとする。図中のT2〜T5も、同様に、LFアンテナ131毎の返送タイミングを指定する待機時間を概念的に表している。
送信タイミングが同時であっても、上述したようにLFアンテナ131毎に返送タイミングを異ならせることで、車載器100は車両用携帯機から応答信号が返ってきたタイミングに基づき、送信元アンテナを特定することができる。
例えば、車載器100は、位置特定用信号を一斉送信してから第3待機時間T3経過後に応答信号を受信した場合には、車両用携帯機200が応答した位置特定用信号の送信元はPF側アンテナ131Cであると判定する。
この変形例1で述べた態様によっても送信元アンテナを特定することができる。また、各LFアンテナ131から一斉に位置特定用信号を送信するため、携帯機位置の特定に要する時間の最悪値を抑制することができる。
[変形例2:LFアンテナの送信エリアの変形例]
なお、上述した実施形態では、DF側アンテナ131Aなどの、各座席に対応するLFアンテナ131の送信エリアは、図3に示すように車室外においてその座席に対応するドア付近としたが、これに限らない。変形例2として図12に示すように、DF側アンテナ131A、DR側アンテナ131B、PF側アンテナ131C、及びPR側アンテナ131Dのそれぞれの送信エリアは、車室内において、そのLFアンテナ131が対応する座席付近の空間を含むように設定されていても良い。なお、図12では、車室内アンテナ131E、及びその送信エリアの図示は省略している。
[変形例3:携帯機位置の特定方法の変形例]
また、携帯機位置の特定方法は上述した方法に限らない。変形例3として以下に示す構成を用いて、携帯機位置を特定する態様としてもよい。まず、変形例3では各LFアンテナ131の電波到達距離を、数メートルから10メートル程度に設定し、各LFアンテナ131の送信エリアが、他のLFアンテナ131の送信エリアの大部分と重なるように設計する。
図13は、この変形例3における各LFアンテナ131の送信エリアを概念的に表している。なお、図13では便宜上、車室内アンテナ131E及びその送信エリアの図示は省略しているが、車室内アンテナ131Eについても同様に、車室外を送信エリアに含むほど十分に大きい送信エリアを形成するように設計されているものとする。そして、車両側制御部110は、前述の実施形態と同様に、複数のLFアンテナ131から順番にタイミングをずらして位置特定用信号を送信させる。
車両用携帯機200は、位置特定用信号を受信した場合、その受信信号強度を示す情報(以降、受信強度情報とする)を含む応答信号を返送する。なお、前提として車両用携帯機200の車両用通信部220には、LF帯の信号の受信信号強度を検出する回路が実装されているものとする。
携帯機位置特定部F5は、応答信号に含まれる受信強度情報から、送信元アンテナと車両用携帯機200との距離を推定する。そして、携帯機位置特定部F5は、設置位置がそれぞれ異なる3つのLFアンテナ131からの距離と、それら3つのLFアンテナ131の車両Vにおける設置位置から、携帯機位置を特定する。
なお、一般的に無線信号は空間を伝播する過程において減衰していくため、車両用携帯機200とLFアンテナ131との距離が大きい程、その受信信号強度は小さい値となる。したがって、携帯機位置特定部F5は、位置特定用信号に対して返送されてくる応答信号に含まれる受信強度情報から、その位置特定用信号を送信したLFアンテナ131と車両用携帯機200との距離を求めることができる。
例えば、携帯機位置特定部F5は、LFアンテナ131と車両用携帯機200との距離と、受信信号強度との対応関係を表す距離変換データに基づいて、位置特定用信号の受信信号強度から、その位置特定用信号を送信したLFアンテナ131と車両用携帯機200との距離を特定する。距離変換データは、種々の試験によって生成され、予め車両制御プログラムの一部としてフラッシュメモリ113に登録しておけば良い。
このような態様によれば、携帯機位置特定部F5は、少なくとも3つのLFアンテナ131から送信した位置特定用信号に対する応答信号を受信できた場合、車両Vに対する車両用携帯機200の位置を特定することができる。
なお、車両VにおけるLFアンテナ131の設置位置は、車両Vの任意の位置を中心とし、路面に平行な2次元座標上の点として表されていれば良い。例えば2次元座標系を形成するX軸は車両の前後方向に平行とし、Y軸は車幅方向に平行な軸とすればよい。2次元座標系の中心は、例えば、後輪車軸の中心などとすればよい。なお、このような車両VにおけるLFアンテナ131などの設置位置を示すデータを車体設定データと称する。車体設定データは、各座席が設けられている位置を含む。車体設定データは、フラッシュメモリ113や、ボディECU600に格納されていれば良い。
特定した携帯機位置もまた、上述の2次元座標系上の点として表されれば良い。そして、乗員情報取得部F6は、携帯機位置特定部F5が特定した携帯機位置から最も近い座席を、現在の携帯機位置に対応する座席と見なす。つまり、携帯機位置特定部F5が特定した携帯機位置から最も近い座席を、携帯機保持者の着座位置と判定する。
このような態様によっても携帯機位置の特定、及び、携帯機保持者の着座位置の特定を実施することができる。
[変形例4:スキャン指示信号の送信タイミングの変形例]
スキャン指示信号を送信する条件(以降、スキャン指示条件)は、適宜設計されれば良い。例えば、車両用携帯機200が車載器100の通信範囲に進入したことを検出した場合や、車両用携帯機200との認証が成立した場合、認証が成立している状態においてユーザがタッチセンサ140にタッチした場合、車両Vのドアが開かれたことをカーテシスイッチ603が検出した場合などとすればよい。また、車両用携帯機200が車両の車室内に存在することを検出した場合や、運転席にユーザが着座したことを乗員検知センサ604が検知した場合、運転席用のドアが閉められたことを検出した場合、シートベルトが装着されたことを検出した場合、始動ボタン150が押下された場合などをスキャン指示条件として採用してもよい。さらに、スキャン指示条件は、上述した種々の条件を組み合わせたものとしてもよい。
つまり、スキャン指示条件、換言すればスキャン指示信号を送信するタイミングは、適宜設計されればよい。なお、スキャン指示条件が充足されたか否かは、車両情報取得部F3が取得する車両情報に基づいて送信処理部F1が判定すればよい。
[変形例5:サンプリング期間の変形例]
以上では一例として、保持者端末特定部G4は、スキャン指示信号の受信をトリガとして近距離通信処理部G3にサンプリング処理を開始させる態様とするが、これに限らない。他の態様として、保持者端末特定部G4は、ポーリング信号や認証用信号等といった、別の目的に供される信号の受信をトリガとして、サンプリング処理を開始させてもよい。
また、保持者端末特定部G4は、操作受付部G5がユーザによってスイッチ240がプッシュ操作されたことを検出した場合や、加速度センサ250から所定の閾値以上の加速度を示す信号が入力された場合に、サンプリング処理を開始させてもよい。なお、逐次実施されるスキャン処理の結果は、少なくともサンプリング時間は、RAM212等に保存されるものとする。
そして、そのように車両用携帯機200においてスキャン指示信号の受信以外のイベントをサンプリング処理開始のトリガとする場合には、車載器100は、スキャン指示信号を送信せずに、所定の報告指示条件が充足された場合に報告指示信号を送信する態様とすればよい。
このような態様によれば、車両用携帯機200は報告指示信号を受信した場合に、その受信時点よりも過去サンプリング時間以内に実施したスキャン処理の結果から、携帯端末300毎の受信信号強度の変動量を算出し、保持者端末を特定できる。この変形例5は、図14に示すように、報告指示信号を受信した時点から過去サンプリング時間以内となる期間を、サンプリング期間として採用することに相当する。
また、図15に示すように、報告指示信号を受信した時点の前後一定時間において実施した、複数回のスキャン処理の結果に基づいて、保持者端末を決定してもよい。換言すれば、サンプリング期間は、報告指示信号を受信した時点の前後にまたがるように設定されても良い。なお、車両用携帯機200は、報告指示信号の受信に伴って保持者情報信号を返送した後も、サンプリング処理を継続する態様としてもよい。
以上では種々のサンプリング期間の設定態様を例示したが、いずれにしてもスキャン指示信号及び報告指示信号の少なくとも何れか一方を受信した時点を基準として、サンプリング期間として用いる時間帯は定まる。したがって、スキャン指示信号及び報告指示信号のそれぞれが請求項に記載のコマンド信号に相当する。
[変形例6:ドライバ候補の提示]
携帯機保持者の着座位置が運転席以外であると判定している場合、表示処理部F7は、携帯機保持者以外のユーザのリストであって、ドライバとしてのユーザをユーザが入力するための画面をディスプレイ700に表示してもよい。例えばユーザA〜Dのうち、ユーザAを携帯機保持者として判定し、かつ、ユーザAの着座位置を運転席以外の座席であると判定した場合、表示処理部F7は、ユーザB〜Dの中からドライバとしてのユーザを選択するための画面をディスプレイ700に表示させる。
このような態様によれば、ドライバとしての役割を担うユーザ以外のユーザが、車両用携帯機200を携帯している場合であっても、車載器100はドライバとしてのユーザを認識することができる。
なお、携帯機保持者の着座位置が運転席以外であると判定している場合とは、換言すれば、ドライバとしてのユーザを特定できていない場合の一例に相当する。携帯機保持者の着座位置が運転席以外であると判定している場合に限らず、運転席に着座するユーザを特定できていない場合にも、表示処理部F7は、ディスプレイ700に上述した画面を表示させることが好ましい。例えば、携帯機保持者の着座位置を特定できていない場合に、表示処理部F7は、ディスプレイ700に上述した画面を表示させてもよい。上述した処理を実施する表示処理部F7が請求項に記載のドライバ候補提示処理部に相当する。
[変形例7:携帯機保持者以外の乗員についての情報も送信]
車両用携帯機200は、保持者情報だけでなく、自機周辺に存在するユーザの一覧を示す乗員情報を車載器100送信してもよい。乗員情報は、サンプリング処理にて検出した携帯端末300の端末IDのリストとしてもよいし、それらの端末IDから定まるユーザIDのリストであっても良い。端末IDからユーザIDへの変換は、フラッシュメモリ213に格納されている端末管理データを参照することで実施すれば良い。
そして、車両用携帯機200は、保持者情報に加えて乗員情報を含む保持者情報信号を送信する態様とすればよい。なお、乗員情報は保持者情報信号とは別の信号として車載器100に送信する態様としてもよい。
このような態様によれば車載器100は、全ユーザのうち、今回のトリップにおいて乗車するユーザを認識することができる。つまり、携帯機保持者以外の乗員としてのユーザも認識することができる。例えば乗員情報としてユーザA、Bの端末IDを取得した場合には、ユーザA、Bが乗車すると判定する。
また、そのような状況において仮にユーザAを携帯機保持者と判定しており、その着座位置が助手席と判定している場合には、残る乗員としてのユーザBの着座位置は、助手席以外であると判定することができる。
なお、この変形例7は、上述の変形例6と組み合わせることで、ドライバとしての役割を担うユーザ以外のユーザが、車両用携帯機200を携帯している場合におけるユーザの利便性を高めることができる。つまり、表示処理部F7は、携帯機保持者以外のユーザのリストであって、ドライバとしてのユーザをユーザが入力するための画面をディスプレイ700に表示してもよい。
[変形例8:車両用携帯機200が複数存在する場合]
以上では、車両Vに対応付けられている車両用携帯機200が1つの場合を例示したが、これに限らない。車両Vに対応付けられている車両用携帯機200が2つ以上場合にも、それぞれの車両用携帯機200に対して同様の処理を実施すればよい。
なお、この変形例8において、複数の車両用携帯機200は、それぞれ固有の携帯機IDを含む信号を送信し、車載器100は、受信した信号に含まれる携帯機IDに基づいて通信相手を識別するものとする。この場合、車載器100と車両用携帯機200との認証処理は、車両IDに代わりに携帯機IDを用いて実施する態様としてもよい。
[変形例9:ユーザ設定データの取得元の変形例]
上述した実施形態では、ユーザ毎の車両設定情報が車載器100に登録されている態様としたが、これに限らない。ユーザ毎の車両設定情報は、携帯端末300に保存されてあって、車両用携帯機200が保持者端末と判定している携帯端末300から取得し、さらに車載器100に転送する態様としてもよい。このような態様を、ユーザ設定転送方式と称する。
また、他の態様として、制御対象となりうるアクチュエータや電子機器に対応する各ECUが、そのECUに関連する範囲におけるユーザ毎の車両設定を記憶しておき、車載器100は、携帯機保持者を示すユーザIDを各ECUに通知する態様としてもよい。そのような態様においては各ECUが、車載器100から通知されたユーザIDに応じた車両設定を読み出して設定変更を実施する。
例えば、座席位置に対するユーザ毎の設定はボディECU600が備え、ナビゲーション装置に対するユーザ毎の設定はナビゲーションECUが備え、車室内温度等の空調設定は空調システムを制御する空調ECUが備える態様とすればよい。そして、種々のECUは、車載器100から通知されるユーザIDに対応する設定を読み出して、ユーザ設定を反映させる。なお、このユーザID通知方式を採用する場合、車載器100は車両Vのユーザを示すユーザIDを保持しておけば良い。もちろん、車両用携帯機200が保持者情報として端末IDを送信する場合には、ユーザIDと端末IDとを対応付けて保持しておけば良い。
このように、車載器100はユーザIDを各ECUに通知するだけであって、各ECUが通知されたユーザIDに対応する設定を反映させる方式(以降、ユーザID通知方式)においても、上述の実施形態等と同様の効果を奏する。また、このユーザID通知方式によれば、どういった設定を適用するべきかを各ECUが個別に判断できる。
さらに、ユーザID通知方式によれば、ユーザ毎の好みを設定可能なサービスが新たに登場した場合であっても、ユーザや設計者、ディーラ等が、そのサービスを提供するECUにユーザ毎の設定を登録すれば、ユーザはそのサービスを利用できるようになる。換言すれば、新たなサービスが登場するたびに、その新たなサービスを利用できるように車載器100のソフトウェアを書き換えたりする必要はない。ユーザID通知方式によれば、車両に追加される新たな機能に柔軟に対応することができる。なお、この変形例9の冒頭で言及したユーザ設定転送方式によっても、車両に追加される新たな機能に柔軟に対応することができる。
[変形例10:携帯機保持者の特定方法]
車両Vが駐車されている状態において、車両Vを利用しようとしている携帯機保持者としてのユーザを特定する方法は、実施形態として例示した方法に限らない。以下の方法によっても、携帯機保持者を特定することができる。なお、この変形例10に対しても、矛盾が生じない範囲において、前述の実施形態に対する種々の変形例を適用できるものとする。
この変形例10における携帯機保持者を特定するための処理は、車両側制御部110が実施する処理(以降、保持者情報取得処理)と、車両用携帯機200が実施する処理(以降、保持者情報提供処理)とを含む。保持者情報提供処理は、車両側制御部110が実施する保持者情報取得処理に対応する処理である。以下、それぞれの処理について説明する。
<保持者情報取得処理>
まずは、図16に示すフローチャートを用いて、車両側制御部110が実施する保持者情報取得処理について説明する。保持者情報取得処理は、保持者情報を取得するための処理である。この乗員情報取得処理は、車両Vが駐車されていることを認証処理部F4が検出した場合に開始されれば良い。
まずステップS301では送信処理部F1が、認証処理部F4からの要求に基づいて所定のLFアンテナ131からポーリング信号を送信させる。なお、保持者情報を取得するという観点においては、携帯機位置を特定する必要はない。そのため、ポーリング信号や認証用信号などは各LFアンテナ131から同時に送信してもよい。もちろん、実施形態と同様に、送信タイミングはLFアンテナ131毎にずらしても良い。所定のLFアンテナ131からポーリング信号を送信させると、ステップS302に移る。
ステップS302では受信処理部F2が、ステップS301で送信したポーリング信号に対する応答信号を受信したか否かを判定する。応答信号を受信した場合にはステップS302が肯定判定されてステップS303に移る。一方、ステップS301でのポーリング信号の送信から一定時間経過しても応答信号を受信しなかった場合にはステップS302が否定判定されてステップS301に戻る。これにより、ポーリング信号に対する応答信号を受信するまで、車載器100は所定の時間間隔でポーリング信号を定期的に送信し続ける。
ステップS303では送信処理部F1が、認証処理部F4からの要求に基づき、認証用信号をLFアンテナ131から送信させてステップS304に移る。ステップS304では、車両用携帯機200の認証に成功したか否かを判定する。
具体的には、ステップS303で送信した認証用信号に対する応答信号を受信し、かつ、その受信信号に示されているIDコードが車載器100に登録されている車両IDと所定の関係を充足する場合に認証が成功したと判定する。一方、認証用信号を送信してから一定時間以内に応答信号を受信できなかった場合や、返送されてきた応答信号に示されるIDコードが、車両IDと所定の関係を充足しなかった場合には、認証失敗と判定する。
認証が成功した場合にはステップS304が肯定判定されてステップS305に移る。また、認証が成功した場合、認証処理部F4は、車両に設けられている各ドアを開錠準備状態に設定する。開錠準備状態は、ユーザがドアのタッチセンサ140に触れるだけでドアを開錠することができる状態である。一方、認証が失敗した場合にはステップS304が否定判定されてステップS301に戻る。
ステップS305では車両情報取得部F3が、タッチセンサ140から入力される信号に基づいて、ユーザがドアハンドル(厳密にはタッチセンサ140)にタッチしたか否かを判定する。タッチセンサ140から、ユーザによってタッチされたことを示す信号が入力された場合には、ユーザがドアハンドルにタッチしたと判定してステップS306に移る。なお、タッチセンサ140から、ユーザによってタッチされたことを示す信号が入力されるまでは、ステップS305の判定処理を逐次実施する。ただし、一定時間経過してもタッチされたことを検出しなかった場合にはステップS301に戻ればよい。
ステップS306では認証処理部F4が、ボディECU600と協働して車両ドアを開錠する。また、送信処理部F1が、認証処理部F4からの要求に基づき、報告指示信号を送信してステップS307に移る。ステップS307では受信処理部F2が、車両用携帯機200から返送されてくる保持者情報信号を受信してステップS308に移る。
なお、詳細は後述するように、このステップS307の時点で返送されてくる保持者情報は、車両用携帯機200において携帯機保持者が特定できておらず、保持者不明となっている場合もある。つまり、保持者端末が不明である旨の保持者情報を返送されてくる場合がある。もちろん、保持者端末を特定できている場合にはその携帯端末300の端末IDを示した保持者情報が返送されてくる。
ステップS308では、ステップS307で受信した保持者情報信号に示されている保持者情報を参照し、車両用携帯機200が保持者端末を特定できているか否かを判定する。保持者端末を特定できている場合にはステップS308が肯定判定されてステップS313に移る。一方、保持者端末を特定できていない場合には、ステップS308が否定判定されてステップS309に移る。
ステップS309では、携帯機保持者が車両Vに搭乗したか否かを判定する。車両Vに搭乗したと判定するための条件は適宜設計されればよい。ここでは一例として、車室内アンテナ131Eから認証用信号を送信し、車両用携帯機200の認証に成功した場合に、携帯機保持者が搭乗したと判定するものとする。
なお、他の態様として、車両Vのドアが一旦開かれた後に閉じられたことを検出した場合に携帯機保持者が搭乗したと判定してもよい。また、車室内アンテナ131Eからポーリング信号を送信し、応答信号が返送されてきたことに基づいて携帯機保持者が搭乗したと判定してもよい。
携帯機保持者が車両Vに搭乗したと判定するための条件が充足された場合にはステップS309が肯定判定されてステップS310に移る。また、携帯機保持者が車両Vに搭乗したと判定するための条件が充足されるまでは、ステップS309の判定処理を逐次実施する。ただし、一定時間経過しても携帯機保持者が搭乗したと判定するための条件が充足しなかった場合にはステップS301に戻るなどの例外処理を実行するものとする。
ステップS310では送信処理部F1が、車両用携帯機200は車室内に存在することを通知する車室内通知信号を、車室内アンテナ131Eから送信させてステップS310に移る。
ステップS311では送信処理部F1が報告指示信号を送信してステップS312に移る。なお、ステップS311での報告指示信号の送信は、車室内通知信号を送信してから所定の第2サンプリング時間(例えば1秒)経過したタイミングとする。車室内通知信号を送信してから報告指示信号を送信するまでの間隔としての第2サンプリング時間は、携帯機側制御部210が後述する第2保持者端末特定処理が実施できるように適宜設計されば良い。
ステップS312では受信処理部F2が、車両用携帯機200から返送されてくる保持者情報信号を受信してステップS313に移る。ステップS313では乗員情報取得部F6が、保持者情報信号に示されている保持者情報に基づいて携帯機保持者としてのユーザを特定する。携帯機保持者としてのユーザを特定した後の処理は、前述の実施形態などと同様である。
<保持者情報提供処理>
次に図17に示すフローチャートを用いて、携帯機側制御部210が実施する保持者情報提供処理について述べる。この携帯機側制御部210は、車両用通信処理部G1がポーリング信号を受信した場合に開始されれば良い。
なお、前提として車両用携帯機200の周辺には複数の携帯端末300(換言すればユーザ)が存在するものとする。一例として、車両用携帯機200の周辺に存在する携帯端末300は、携帯機保持者の携帯端末300と、携帯機保持者とは同行しないユーザの携帯端末300であって、家の中に配置されている携帯端末300のそれぞれからの信号を受信しているものとする。
まず、ステップS401では車両用通信処理部G1がポーリング信号への応答信号を送信してステップS402に移る。ステップS402では車両用通信処理部G1が、認証用信号を受信したか否かを判定する。認証用信号を受信した場合にはステップS402が肯定判定されてステップS403に移る。一方、ステップS401で応答信号を送信してから一定時間経過しても認証用信号を受信しなかった場合には、ステップS402が否定判定されて本フローを終了するものとする。その場合には、再度ポーリング信号を受信したことに基づいて本フローを開始すれば良い。
ステップS403では、ステップS402で受信した認証用信号に対する応答信号を返送してステップS404に移る。ステップS404では電源管理部G2が、近距離通信部230を低消費電力モードからアクティブモードへと移行させる。そして、近距離通信処理部G3が、保持者端末特定部G4からの要求に基づきサンプリング処理を開始してステップS405に移る。
なお、本実施形態の保持者端末特定部G4は、認証用信号の受信をトリガとして近距離通信処理部G3にサンプリング処理を開始させるものとする。これにより、車載器100と車両用携帯機200との間との信号の送受信の回数を低減させることができる。
また、本実施形態の近距離通信処理部G3は、スキャン処理を実施する度に、携帯端末300毎に直近N回分の検出結果を母集団として移動平均値を算出し、最新の受信信号強度と対応付けてRAM212に保存する。スキャン処理による受信信号強度の取得と、その最新の受信信号強度を用いた移動平均値の算出が、本実施形態におけるサンプリング処理に相当する。
移動平均値は、たとえは、直近N回分の検出結果の平均値(いわゆる単純移動平均)として算出されれば良い。Nは、10や50など、適宜設計されれば良い。なお、移動平均値は、加重移動平均法や、指数移動平均法等、周知の方法によって定まる値であっても良い。
ステップS405では車両用通信処理部G1が、報告指示信号を受信したか否かを判定する。報告指示信号を受信した場合にはステップS405が肯定判定されてステップS406に移る。報告指示信号を受信するまでは、ステップS405の判定を逐次実施すればよい。なお、所定の時間経過しても報告指示信号を受信しなかった場合には、例外処理として本フローを終了すれば良い。
ステップS406では保持者端末特定部G4が、RAM212に格納されている携帯端末300毎の受信信号強度に基づいて、携帯端末300毎の受信信号強度の変動量を算出してステップS407に移る。なお、変動量の算出に用いる受信信号強度は、直近M回分の受信信号強度としてもよい。Mは適宜設計さればよく、例えば30や50などとすればよい。また、他の態様として、受信信号強度に代わりに移動平均値を用いて変動量を算出してもよい。
ステップS407では、第1保持者端末特定処理を実施してステップS408に移る。この第1保持車端末特定処理については別途図18に示すフローチャートを用いて説明する。第1保持者端末特定処理は、図18に示すようにステップS501〜S507を備える。
まず、ステップS501では、ステップS406で算出した、自機周辺に存在する携帯端末300毎の受信信号強度の変動量のうち、最も小さい値α1を特定してステップS502に移る。ステップS502では、携帯端末300毎の受信信号強度の変動量のうち、2番目に小さい値α2を特定してステップS503に移る。
ステップS503では、α2からα1を差し引いた値である乖離量βを算出してステップS504に移る。ステップS504では、乖離量βが所定の乖離閾値THb以上であるか否かを判定する。ここで用いる閾値は、携帯機保持者が携帯している携帯端末300と、携帯機保持者以外のユーザが携帯している携帯端末300とを識別可能なほど、変動量に差が生じているか否かを判定するための閾値である。
携帯機保持者が携帯している携帯端末300の受信信号強度の変動量と、携帯機保持者以外のユーザが携帯している携帯端末300の受信信号強度の変動量とが同程度となっている場合、変動量が最も小さい携帯端末300が保持者端末である可能性は低減されてしまう。
変動量が最も小さい携帯端末300が保持者端末であると判定する過程において、乖離量βが所定の乖離閾値THb以上であることを考慮することで、保持者端末を誤判定してしまう恐れを低減できる。なお、乖離閾値THbの具体的な値は適宜設計されればよい。
乖離量βが乖離閾値THb以上となっている場合にはステップS504が肯定判定されてステップS505に移る。一方、乖離量βが乖離閾値THb未満となっている場合にはステップS504が否定判定されてステップS507に移る。
ステップS505では、変動量の最小値α1が所定の閾値THa以下となっているか否かを判定する。このステップS505の判定処理もまた、保持者端末を誤判定してしまう恐れを低減するためのステップである。変動量が最も小さい携帯端末300は、保持者端末である可能性が高い。しかし、その変動量が大きいほど、その携帯端末300が真に保持者端末である可能性は低減される。したがって、変動量の最小値α1が、或る設計値よりも大きい場合には、変動量が最小の携帯端末300を保持者端末と判定しないほうが好ましい。
なお、保持者端末の受信信号強度の変動量が相対的に大きくなってしまう場合とは、例えば、車両用携帯機200はズボンの右後ろ側に設けられたポケットに収容されており、かつ、携帯端末300はジャケットの左胸ポケットに収容されている場合等、携帯端末300の位置が、携帯端末300から車両用携帯機200への信号が携帯機保持者の体によって減衰して伝搬する位置となっている場合である。そのような位置関係となっている場合、車両用携帯機200は、保持者端末から送信された信号の反射波を主体的に受信することなる。当然、反射波の受信信号強度はばらつきが大きいため、変動量も相対的に大きくなる。なお、以降では、携帯端末300から車両用携帯機200への信号が携帯機保持者の体によって減衰して伝搬するような位置関係を間接伝搬パターンと記載する。
ステップS505の判定処理は、上述した思想に基づいて導入された判定処理であって、閾値THaの具体的な値は適宜試験等によって設計されれば良い。最小値α1が閾値THa以下となっている場合にはステップS505が肯定判定されてステップS506に移る。一方、最小値α1が閾値THaよりも大きい場合にはステップS505が否定判定されてステップS507に移る。なお、ステップS505の処理は省略してもよい。
ステップS506では、複数の携帯端末300のうち、変動量が最も小さい携帯端末300を保持者端末と判定して本フローを終了する。ステップS507では、保持者端末は不明であると判定して本フローを終了する。本フローが終了した場合には、図17に示す保持者情報提供処理のステップS408に移る。
ステップS408では車両用通信処理部G1が、ステップS407での第1保持者端末特定処理の結果を示す保持者情報信号を生成して、車載器100に送信してステップS409に移る。ステップS409では、ステップS407での第1保持者端末特定処理の結果、保持者端末を特定できたか否かを判定する。第1保持者端末特定処理の結果、保持者端末を特定できている場合にはステップS409が肯定判定されて本フローを終了する。一方、第1保持者端末特定処理の結果、保持者端末を特定できていない場合には、ステップS409が否定判定されてステップS410に移る。
ステップS410では車両用通信処理部G1が、車室内通知信号を受信したか否かを判定する。車室内通知信号を受信した場合にはステップS410が肯定判定されてステップS411に移る。車室内通知信号を受信するまでは、ステップS410の判定を逐次実施すればよい。ステップS410に移ってから一定時間経過しても車室内通知信号を受信しなかった場合には、本フローを終了すればよい。
携帯機側制御部210は、車室内通知信号を受信した場合、車両用携帯機200は車室内に存在すると判定し、車室内通知信号を受信していない場合には、車両用携帯機200は車室外に存在すると判定する。車室内に存在するという判定結果は、車室内通知信号を受信してから一定時間保持されるものとする。
なお、本変形例10では一例として、携帯機側制御部210は、車室内通知信号を受信したか否かによって車両用携帯機200が車室内に存在するか否かを識別(換言すれば判定)する態様とするがこれに限らない。変形例11で例示するように、他の方法によって識別してもよい。
ステップS411では、サンプリング処理の結果得られるデータの保存先を、それまでに収集したデータとは区別可能な記憶領域に変更してステップS411に移る。なお、この保存先の変更は論理的に実現されればよく、例えば、保存するデータに車室内で取得したデータであることを示すラベルを付与することで、保存先の変更を論理的に実現してもよい。
便宜上、RAM212が備える記憶領域のうち、車室内通知信号を受信するまでに収集したデータを記憶している領域を車室外収集データ記憶部M1として図19に示す。また、車室内通知信号の受信以降に収集したデータを記憶している領域を車室内収集データ記憶部M2とする。なお、収集したデータとは、携帯端末300毎の端末IDや、受信信号強度、移動平均値などを指す。
車室内通知信号を受信するまでに収集したデータが請求項に記載の車室外受信強度情報に相当し、車室内通知信号の受信以降に収集したデータが請求項に記載の車室内受信強度情報に相当する。車室外収集データ記憶部M1が請求項に記載の車室外受信強度記憶部に相当し、車室内収集データ記憶部M2が請求項に記載の車室内受信強度記憶部に相当する。
ステップS412では車両用通信処理部G1が、報告指示信号を受信したか否かを判定する。報告指示信号を受信した場合にはステップS412が肯定判定されてステップS413に移る。報告指示信号を受信するまでは、ステップS412の判定を逐次実施すればよい。なお、ステップS412に移ってから一定時間経過しても報告指示信号を受信しなかった場合には、本フローを終了すればよい。
ステップS413では保持者端末特定部G4が、第2保持者端末特定処理を実施してステップS414に移る。この第2保持車端末特定処理については別途図20に示すフローチャートを用いて説明する。第2保持者端末特定処理は、図20に示すようにステップS601〜S604を備える。
まず、ステップS601では、携帯端末300毎の車室外代表値を特定してステップS602に移る。ここでの車室外代表値とは、車両用携帯機200が車室外に存在した時点での受信信号強度を代表的に表す値であって、ここでは一例として、ステップS406を実行した時点の移動平均値とする。
なお、車室外代表値として採用する値は適宜設計されればよく、これに限らない。例えば車室内通知信号を受信する一定時間(例えば3秒)前に受信した移動平均値としてもよい。また、車室内通知信号を受信した時点から過去一定時間内における移動平均値を母集団として定まる平均値や中央値としてもよい。さらに、車両用携帯機200が車室外に存在している所定の時点において取得した受信信号強度を車室外代表値としてもよい。車室外代表値は、車室外収集データ記憶部M1が記憶しているデータを用いて決定されれば良い。車室外代表値は、携帯端末300毎に決定される。
ステップS602では、携帯端末300毎の車室内代表値を特定してステップS603に移る。ここでの車室内代表値とは、車両用携帯機200が車室内に存在した時点での受信信号強度を代表的に表す値であって、ここでは一例として、ステップS412での報告指示信号を受信した時点での移動平均値とする。もちろん、車室内代表値として採用する値は、車室外代表値と同様に、適宜設計されればよい。例えば、一定時間内に取得した移動平均値を母集団として定まる平均値や中央値であってもよい。
ステップS603では、携帯端末300毎に車室内外変化量γを算出して、ステップS604に移る。ここでの或る携帯端末300についての車室内外変化量とは、その携帯端末300の車室内代表値から車室外代表値を減算した値である。車室外代表値よりも車室内代表値のほうが大きい場合、車室内外変化量γは正の値となる。つまり、車室内外変化量γが正となる携帯端末300とは換言すれば、車両用携帯機200が車室内に存在する場合のほうが、受信信号強度が大きくなる携帯端末300である。
ステップS604では、車室内外変化量γが正となっている携帯端末300を保持者端末と判定する。また、車室内外変化量γが正となっている携帯端末300が複数存在する場合には、車室内外変化量γが最も大きい携帯端末300を保持者端末と判定する。
このように車室内外変化量γが正となっている携帯端末300、換言すれば、車両用携帯機200が車室外に存在する場合よりも車室内に存在する場合のほうが受信信号強度が大きくなる携帯端末300を保持者端末として採用する理由は次の通りである。
まず、この第2保持者端末特定処理を実施する場合とは第1保持者端末特定処理において保持者端末を特定できなかった場合である。第1保持者端末特定処理において保持者端末を特定できなかった場合とは、保持者端末に相当する携帯端末と他の携帯端末300受信信号強度の変動量に乖離閾値THb以上の差が生じていなかったり、何れの携帯端末300の変動量も所定の閾値THa以上であったりした場合等である。
そのように第1保持者端末特定処理で保持者端末を特定できない場合とは、携帯機保持者による携帯端末300と車両用携帯機200の位置関係が前述の間接伝搬パターンとなっている場合である。そのような場合、車両用携帯機200が検出する、保持者端末である携帯端末300からの信号の受信信号強度は、直接波ではなく、他の物体で反射されて到来する反射波の受信信号強度となっている可能性が高い。
また、そのように携帯端末300と車両用携帯機200の位置関係が間接伝搬パターンとなっている場合であって、かつ、車両用携帯機200が車室外に存在する場合では、保持者端末からの受信信号強度は相対的に低い値となる。しかし、車室内は車両ボディに囲まれた狭い空間のため、携帯機保持者が車室内に存在する場合においては反射波を受信しやすくなり、受信信号強度が車室外時に比べて上昇する傾向にある。一方、家の中に配置されている携帯端末300からの信号の受信信号強度は、車両ボディの効果により低減する。
したがって、以上の方法によって保持者端末を特定することで、今回のトリップに同行しないユーザの携帯端末300からの信号を捕捉している場合において、当該同行しないユーザの携帯端末300を保持者端末と誤判定してしまう恐れを低減することができる。
[変形例11]
なお、上述の変形例10では、車載器100が車室内アンテナ131Eから車室内通知信号を送信し、車両用携帯機200は車室内通知信号を受信することで、携帯機側制御部210は、車両用携帯機200が車室内に存在するのか車室外に存在するのかを識別する態様としたが、これに限らない。
例えば、LFアンテナ131から送信させる信号には、車室外に向けて送信している信号であるのか、車室内に向けて送信している信号であるのかを示す識別情報を含ませる態様としてもよい。つまり、車室外を送信エリアとするLFアンテナ131(例えばDF側アンテナ131A)からは、車室外に向けて送信している信号であることを示す識別情報を含む信号を送信する。また、車室内を送信エリアとするLFアンテナ131(例えば車室内アンテナ131E)からは、車室内に向けて送信している信号であることを示す識別情報を含む信号を送信する。
このような態様によれば、携帯機側制御部210は、受信した信号に含まれる識別情報を参照することで、車両用携帯機200が車両Vの車室外に存在しているのか車室内に存在しているのかを識別することができる。
[変形例12]
上述の変形例10では、第1保持者端末特定処理で保持者端末を特定できなかった場合に、車室内外変化量γの比較によって保持者端末を特定する態様を例示したが、これに限らない。保持者情報提供処理として携帯機側制御部210は、第1保持者端末特定処理を実施せずに、車室内外変化量γの比較のみによって保持者端末を特定する態様としてもよい。その場合には、保持者情報取得処理の処理手順も適宜変更し、例えばステップS306での報告指示信号の送信等を省略する態様とすればよい。
[変形例13]
また、変形例10において、車室内外変化量γの比較によって保持者端末を特定する場合とは、第1保持者端末特定処理で保持者端末を特定できなかった場合に限らない。例えば、何れの携帯端末300の車室外代表値も、実施形態で述べた受信強度閾値以下となっている場合に、車室内外変化量γの比較によって保持者端末を特定する態様としてもよい。
この場合、携帯端末300毎の車室外代表値は、車両用携帯機200が車室外に存在してあって、かつ、例えば報告指示信号を受信した場合に算出すればよい。何れの携帯端末300の車室外代表値も、受信強度閾値以下となっている場合には保持者端末は不明であるとして、S408以降の処理を実施すればよい。
[変形例14]
変形例10における第1保持者端末特定処理の内容は次の内容としてもよい。まず、保持者端末特定部G4は、携帯端末300毎の車室外代表値を算出し、携帯端末300毎の車室外代表値が所定の直接所持閾値となっている携帯端末300を、保持者端末の候補として抽出する。そして、抽出された携帯端末300毎に変動量を算出し、変動量が最も小さい携帯端末300を保持者端末として採用する。
通常、携帯機保持者の携帯端末300と車両用携帯機200の位置関係が間接伝搬パターンではない場合、車両用携帯機200は保持者端末からの信号を直接的に受信することが期待できる。そのため、車室外代表値もまた、十分に大きい値以上となる可能性が高い。上述した直接所持閾値は、車両用携帯機200は保持者端末からの信号を直接的に受信している場合に観測される受信信号強度の想定値である。
つまり、直接所持閾値は、携帯機保持者の所持形態が、車両用携帯機200は保持者端末からの信号を直接的に受信する所持形態となっているか否かを判定するための閾値として機能する。この変形例10の構成によっても、保持者端末の所持形態に由来して、保持者端末ではない携帯端末300を保持者端末と誤判定してしまう恐れを低減できる。
[変形例15]
また、携帯機保持者としてのユーザを車両用携帯機200が特定する方法は、実施形態や変形例10(以降、実施形態等)で例示した方法に限らない。上述した実施形態等では、携帯機保持者が携帯する携帯端末300の受信信号強度(以降、RSSI:Received Signal Strength Indication)の変動量が、同乗者の携帯端末300(以降、同乗者端末)のRSSIの変動量よりも小さくなることを前提として保持者端末を特定する。
しかしながら、発明者らは種々の試験の結果、携帯機保持者による車両用携帯機200と携帯端末300の所持形態の組み合わせによっては(換言すればそれらの位置関係によっては)、保持者端末のRSSIの変動量が、同乗者端末のRSSI変動量よりも大きい値となるケースが存在することが分かった。
例えば、携帯機保持者が、ユーザの上肢(つまり手)の動きに連動した加速度が、車両用携帯機200に作用する態様(以降、上肢連動所持形態)で車両用携帯機200を所持してあって、かつ、携帯端末300を衣服のポケットに収容している場合には、歩行に伴う手振りによってそれらの位置関係が変わり、RSSI変動量が大きくなりやすい。携帯機保持者が、携帯端末300を上肢連動所持形態で所持しており、かつ、車両用携帯機200を衣服のポケットに収容している場合も同様である。
なお、車両用携帯機200の所持形態が上肢連動所持形態に該当する場合とは、携帯機保持者が携帯機200を直接手に持っている場合や、携帯機保持者の手に持たれた収容物(例えば手提げ鞄)に車両用携帯機200が収容されている場合である。携帯端末300の所持形態が上肢連動所持形態に該当する場合も同様である。
また、携帯機保持者が、携帯端末(つまり保持者端末)300をズボンのポケットに収容している場合には、歩行時と停止時とで、ポケット内における保持者端末の位置(姿勢を含む)が変化しうる。車両用携帯機200についても同様である。したがって、携帯端末300と車両用携帯機200の少なくとも何れか一方がズボンのポケットに収容されている場合には、歩行時と停止時とで、それらの位置関係が変化しうる。
前述の通り、保持者端末と車両用携帯機200の位置関係が変われば、保持者端末から車両用携帯機200までの信号の伝搬経路が変化し、RSSIも変化する。つまり、歩行時のRSSIは、停止時のRSSIとは異なるレベルで推移しやすい。
そのため、RSSIの変動量を算出するための母集団に、歩行時と停止時の両方の状況で採取されたRSSIが含まれている場合には、RSSI変動量は相対的に大きくなってしまう。その結果、保持者端末のRSSI変動量が、同乗者端末のRSSI変動量よりも大きくなる場合が発生する。なお、保持者端末のRSSI変動量とは、車両用携帯機200における保持者端末からの信号のRSSIの変動量を指し、同乗者端末のRSSI変動量とは、車両用携帯機200における同乗者端末からの信号のRSSIの変動量を指す。
変形例15として以下に開示する車両用携帯機200は、上述したようなケースに対応する判定アルゴリズムを取り入れたものである。なお、この変形例15に対しても、矛盾が生じない範囲において、前述の実施形態や、種々の変形例を適用することができる。
変形例15におけるLF受信部222は、図21に示すように、LFアンテナ221で受信した信号の強度(つまりRSSI)を検出するLF強度検出部2221を備える。LF強度検出部2221は、周知の回路構成を用いて実現されれば良い。LF強度検出部2221が検出したRSSIを示すデータは、携帯機側制御部210に逐次提供される。なお、LF強度検出部2221が検出するRSSIは、LF信号のRSSIである。そのため、以降では便宜上、LF強度検出部2221が検出するRSSIを、LF_RSSIとも記載する。LF強度検出部が請求項に記載の車両信号強度検出部に相当する。
また、変形例15の携帯機側制御部210は、LF強度検出部2221から現在のLF_RSSIを示すデータを取得すると、当該データに検出時刻を示すタイムスタンプを付与してRAM212に一定時間保存する。
なお、前述の通り、サンプリング処理によって得られる携帯端末300毎のRSSIの検出結果もまた、RAM212に保存される。携帯端末300毎のRSSIは、RAM212において時系列順にソートされて保存されれば良い。以降では、或る携帯端末300からの信号のRSSIを時系列順に並べたデータを、その携帯端末300についてのRSSI時系列データと称する。或る携帯端末300についてのRSSI時系列データは、その携帯端末300のRSSIの経時的な変化を示す波形データとして機能する。
さらに、この変形例15における携帯機側制御部210は、図22に示すように、周波数特性解析部G7と、歩行判定部G8と、を備える。周波数特性解析部G7及び歩行判定部G8は、それぞれCPUが携帯端末用プログラムを実行することで実現されても良いし、IC等のハードウェア部材を用いて実現されても良い。
周波数特性解析部G7は、FFT(Fast Fourier Transform)を用いて、RAM212に保存されている携帯端末300毎のRSSI時系列データから、携帯端末300毎のRSSIの周波数特性を解析する処理(以降、周波数特性解析処理)を実行する。なお、周波数特性を解析することは、換言すればRSSI時系列データが示すRSSIの時変動パターンの周期性を特定することに相当する。
具体的には周波数特性解析部G7は、図23に示すように、或る携帯端末300についてのRSSI時系列データに示される直近一定時間以内のRSSIを、第1〜3のデータ区間に分割し、データ区間毎にFFT処理を実行する。FFT処理は、対象とする信号系列に対して周知のFFTを実行する処理であり、その具体的な方法は周知であるためここでは説明を省略する。なお、図23は、携帯機保持者が、車両用携帯機200を上肢連動所持形態で所持しており、かつ、携帯端末300をズボンのポケットに収容している状態で歩行している場合のRSSIの波形を模式的に表している。
本変形例におけるFFT処理では、予め設計された周波数成分の強度(換言すれば振幅)が特定されれば良い。ここでは一例として、周波数特性解析部G7は8つの周波数fq1、fq2、…、fq8における強度を特定するものとする。解析対象としての周波数fq1〜fq8は、人間が歩行時に手を振る周波数の平均値や中央値に基づいて適宜設計されれば良い。つまり、様々な人物の歩行時における手振り動作の周波数(以降、スウィング周波数)に対応するように、周波数fq1、fq2、…、fq8は決定されれば良い。スウィング周波数が取りうる範囲(以降、スウィング周波数領域)は、試験等によって決定されればよい。
ここでは一例として、fq1=0.3Hz、fq2=0.6Hz、fq3=0.9Hz、fq4=1.2Hz、fq5=1.5Hz、fq6=1.8Hz、fq7=2.1Hz、fq8=2.4Hzに設定されているものとする。
なお、発明者らは、様々な体格、年齢の人物のスウィング周波数を試験によって測定し、その試験結果に基づいて、スウィング周波数の平均値は0.8Hzであり、歩行時のスウィング周波数は0.6Hzから1.3Hzまでに分布するという知見を得た。したがって、本明細書ではそのような知見に基づいて、周波数fq2、fq3、fq4をスウィング周波数領域に属する周波数として取り扱うとともに、他の周波数fq1、fq5、fq6、fq7、fq8はノイズ成分を表す周波数として取り扱う。
なお、ここでは特定の8つの周波数成分を抽出する態様を開示しているが、これに限らない。解析対象とする周波数の数は4でも6でも10以上でもよい。スウィング周波数領域に属する周波数が解析対象とする周波数に含まれていれば良い。
図24は、図23に示すRSSI時系列データの第1データ区間に対する周波数特性解析部G7の解析結果を表している。仮に携帯機保持者が、車両用携帯機200を上肢連動所持形態で所持しており、かつ、携帯端末300をズボンのポケットに収容している状態で歩行している場合には、図24に示すようにスウィング周波数領域に属するfq2、fq3、fq4のいずれかにピークが表れる。
周波数特性解析部G7は、3つのデータ区間のそれぞれに対してFFT処理を実施し、図24に示すような、周波数分布を示すデータ(以降、周波数特性データ)を生成する。なお、1つのデータ区間の長さは、所望の周波数分解能が得られるように適宜設計されればよい。また、本変形例では、3つのデータ区間を互いに重ならないように設定しているがこれに限らない。第1データ区間と第2データ区間、第2データ区間と第3データ区間が重なるように各データ区間を設定してもよい。もちろん、その結果、第1データ区間と第3データ区間とが重なっても良い。さらに本変形例では一例として、3つのデータ区間を設定するものとするが、データ区間の設定数は1つでも2つでも、4つ以上でもよい。
歩行判定部G8は、LF強度検出部2221から提供されるLF_RSSIに基づいて、携帯機保持者が歩行中であるか否かを判定する。具体的には、歩行判定部G8は、図25に示すように、LF_RSSIが変化している場合には携帯機保持者は歩行中であると判定し、LF_RSSIが変化していない場合には携帯機保持者が停止中であると判定する。一般的に、LF帯の電波は、アンテナからの距離と受信強度の減衰カーブが外乱の影響を受けにくいため、車両Vに対する携帯機保持者の位置の変化がLF_RSSIの変化として表れるためである。
LF_RSSIが変化しているか否かは、例えば、一定時間前(例えば100ミリ秒前)の値と、現在の値とを比較して、両者の間に所定の閾値以上の差が存在する場合に、LF_RSSIが変化していると判定すれば良い。ここで用いる閾値は、固定値であっても良いし、一定時間前の値に所定の比率(例えば0.1)を乗じた値であっても良い。
歩行中であるか否かの判定に用いるLF_RSSIは、車両Vから送信された信号にLF_RSSIとすることが好ましい。そのため、本変形例における送信処理部F1は、より好ましい態様として車両Vが駐車されている間、所定の周期で(例えば50ミリ秒毎)に全ての車室外用のLFアンテナ131から信号を送信させるものとする。ここで定期的に送信する信号は、車両Vから送信された信号であることを車両用携帯機200が認識可能な情報を含む信号であればよい。そして、携帯機側制御部210は、車両Vから送信された信号についてのLF_RSSIのみRAM212に保存していく。
便宜上以降では、歩行判定部G8による携帯機保持者が歩行中であるか否かを判定する処理を歩行判定処理と称する。なお、他の態様として加速度センサ250が所定の閾値以上の値を出力している場合に、携帯機保持者が歩行中であると判定してもよい。歩行判定部G8が請求項に記載の位置変化判定部に相当する。
<保持者端末特定処理>
次に、図26、図27に示すフローチャートを用いて、変形例15の携帯機側制御部210が携帯機保持者を特定するために実施する一連の処理(以降、保持者端末特定処理)について説明する。この保持者端末特定処理は、例えば、車載器100と車両用携帯機200との間の無線通信による認証が成立した時点において開始されればよい。もちろん、当該処理を開始する条件はこれに限らず、適宜設計されればよい。
まず、ステップS701では近距離通信処理部G3がサンプリング処理を開始してステップS702に移る。これにより、逐次スキャン処理が実施される。ステップS702では歩行判定部G8が、LF強度検出部2221から逐次提供されるLF_RSSIに基づいた歩行判定処理を開始する。この歩行判定処理は以降においても所定の間隔で(例えば100ミリ秒毎に)逐次実行される。なお、本フローの終了に伴って歩行判定処理の定期的な実行も停止されればよい。
ステップS703では保持者端末特定部G4が、スキャン処理の結果(換言すれば近距離通信部230の通信状況)に基づいて、自機周辺に存在する携帯端末300の数を特定する。そして、自機周辺に存在する携帯端末300の数が1台だけである場合にはステップS703が肯定判定されてステップS704に移る。ステップS704では保持者端末特定部G4が、検出されているただ1つの携帯端末300を保持者端末であると判定して本フローを終了する。
一方、自機周辺に存在する携帯端末300の数が2台以上である場合にはステップS703が否定判定されてステップS705に移る。なお、携帯端末300を1台も検出できなかった場合には、本フローを終了すればよい。その場合には、一定時間後に再度ステップS701を実施するなど、適宜設計されるべき例外処理を実行するものとする。
ステップS705では保持者端末特定部G4が、RSSIが所定の確定用閾値P1以上となっている携帯端末300が存在するか否かを判定する。RSSIが確定用閾値P1以上となっている携帯端末300が存在する場合にはステップS705が肯定判定されてステップS704に移り、当該携帯端末300を保持者端末に決定する。
ここで導入する確定用閾値P1は、RSSIから保持者端末を決定するための閾値であって、十分に大きい値に設定されている。例えば確定用閾値は、車両用携帯機200と携帯端末300とが見通し内0.5m以内に存在している場合に観測されうるRSSIの最小値や平均値とすればよい。
一方、RSSIが確定用閾値P1以上となっている携帯端末300が存在しない場合にはステップS705が否定判定されてステップS706に移る。ステップS706では保持者端末特定部G4が、RSSIが所定の除外用閾値P2未満となっている携帯端末300が存在するか否かを判定する。
ここで導入する除外用閾値P2は、携帯機保持者以外の人物(つまり同乗者)によって保持されている携帯端末300を特定するためにRSSIに対して設定される閾値である。換言すれば、車両用携帯機200の周辺に存在する携帯端末300のうち、保持者端末である可能性が低い携帯端末300を除外するための閾値である。
RSSIが十分に大きい場合には、当該携帯端末300が保持者端末である可能性が高い一方、RSSIが小さいほど、その携帯端末300が保持者端末である可能性が小さくなる。そのため、RSSIが所定の値未満となっている携帯端末300は、同乗者が保持している携帯端末(以降、同乗者端末)と見なすことができる。除外用閾値P2の具体的な値は適宜設計されれば良い。除外用閾値P2は、携帯端末300と車両用携帯機200との位置関係が間接伝搬パターンとなっている場合に観測されるRSSIよりも小さい値に設定されていることが好ましい。
RSSIが所定の除外用閾値P2未満となっている携帯端末300が存在する場合には、ステップS706が肯定判定されてステップS707に移る。一方、RSSIが除外用閾値P2未満となっている携帯端末300が存在しない場合には、ステップS706が否定判定されてステップS709に移る。
ステップS708では、当該携帯端末300を同乗者端末に決定してステップS708に移る。ステップS708では、同乗者端末を決定した結果、残っている携帯端末300が1台だけであるか否かを判定する。残っている携帯端末300が1台だけである場合には、ステップS708が肯定判定されてステップS704に移り、当該残っている携帯端末300を保持者端末に決定して本フローを終了する。一方、残っている携帯端末300が2台以上である場合にはステップS708が否定判定されてステップS709に移る。
ステップS709では周波数特性解析部G7が、RAM212に保存されている携帯端末300毎のRSSI時系列データに基づいて、携帯端末300毎の周波数特性データを生成して、ステップS710に移る。周波数特性データは、1つの携帯端末300に対してデータ区間毎に生成する。つまり、1つの携帯端末300に対してFFT処理を3回実施し、その結果として3つの周波数特性データを生成する。
図28は、車両用携帯機200の周辺に携帯端末300A、300Bの2台の携帯端末300が存在する場合のステップS709の実行結果の一例を概念的に表している。携帯端末300Aは、ユーザAが携帯している携帯端末300であり、携帯端末300Bは、ユーザBが携帯している携帯端末300Bである。
図28に示すように周波数特性解析部G7は2つの携帯端末300のそれぞれのRSSI時系列データに対して第1、第2、第3データ区間を設定し、各データ区間における周波数特性を解析する。なお、図28の(A)段は、RSSI時系列データを、(B1)〜(B3)は各データ区間における周波数特性を表している。
ステップS710では保持者端末特定部G4が、自機周辺に存在する携帯端末300の中に、所定の保持者端末条件を充足する携帯端末300が存在するか否かを判定する。ここでの保持者端末条件は、RSSIの経時的な変化パターンが備える周期性から、保持者端末を決定するための条件である。本変形例では一例として、第1、第2、第3データ区間の何れかで、保持者スウィング周波数に対応する周波数fq2、fq3、fq4の何れかにピークが存在し、かつ、そのピークの高さが所定のピーク検出閾値以上となっている周波数特性データが得られていることを保持者端末条件として採用する。
つまり、第1、第2、第3データ区間の何れかで、保持者スウィング周波数に対応する周波数fq2、fq3、fq4の何れかにピークが存在し、かつ、そのピークの高さがピーク検出閾値以上となっているという解析結果が得られた携帯端末300が存在する場合には、ステップS704に移り、当該携帯端末300を保持者端末に決定する。なお、ピーク検出閾値の具体的な値は、試験等によって決定されればよい。保持者端末条件を充足する携帯端末300とは、歩行時の手振り動作に対応する周期でRSSIが振動している携帯端末300に相当する。
また、周期性評価処理の結果、上記の保持者端末条件を充足する携帯端末300が複数存在する場合には、第1、第2、第3データ区間に対応する3回の解析処理の結果として、上記保持者端末条件を充足している回数が最も多い携帯端末300を保持者端末に決定する。例えば図28に示すように、携帯端末300Aが第1、第2データ区間の2つのデータ区間において保持者端末条件を充足しており、携帯端末300Bが第2データ区間においてのみ保持者端末条件を充足していた場合には、携帯端末300Aを保持者端末に決定する。
ステップS710の結果、保持者端末を特定できなかった場合にはステップS711に移る。ステップS711では保持者端末特定部G4が、RAM212に保存されている各携帯端末300のRSSI時系列データから、歩行判定部G8によって歩行中であると判定されている期間に取得したRSSIを抽出して、ステップS712に移る。
ステップS712では保持者端末特定部G4が、ステップS712で抽出した携帯端末300毎のRSSIを用いて、各携帯端末300のRSSI変動量を算出してステップS713に移る。つまり、保持者端末特定部G4は、サンプリング処理によって逐次取得する携帯端末300毎のRSSIのうち、歩行判定部G8によって携帯機保持者は歩行中であると判定されている間に取得したRSSIだけを用いて各携帯端末300についてのRSSI変動量を算出する。
ステップS713では保持者端末特定部G4が、RSSI変動量が最も小さい携帯端末300を保持者端末に決定してステップS714に移る。ステップS714では、残っている携帯端末300を同乗者端末に決定して本フローを終了する。以上の処理によって特定された、乗員に関する情報(例えば保持者端末情報など)は、所定のタイミングで車両Vに送信されれば良い。
なお、本変形例では携帯機保持者が停止中となっている間に採取したRSSIは用いずに、歩行中となっている間に採取したRSSIを用いて、携帯端末300のRSSI変動量を算出する態様を例示したが、これに限らない。逆に、携帯機保持者が歩行中となっている間に採取したRSSIは用いずに、停止中となっている間に採取したRSSIを用いてRSSI変動量を算出してもよい。
しかしながら、他の携帯端末300との位置関係が変化しやすい状態とは、携帯機保持者が歩行中となっている状態である。したがって、上述した態様のように歩行中となっている間に採取したRSSIを用いて算出したほうが、停止中となっている間に採取したRSSIを用いてRSSI変動量を算出する場合よりも、より精度よく保持者端末を特定できる。
ところで、車室外に向けて信号を送信するためのLFアンテナ131は、ドアハンドル内に搭載される場合が多い。LFアンテナ131がドアハンドル内に搭載されている場合、当該LFアンテナ131から送信された信号が、車両用携帯機200で同じ強度で受信される地点を接続した線(つまり受信強度の等高線)は、LFアンテナ131の設置位置を中心とする略円形状となる。
そのような構成において、携帯機保持者がLF_RSSIが一定となる地点を沿うように(つまりドアハンドルを中心とする円弧状に)車両周辺を歩いた場合、LF_RSSIに所定の閾値以上の変化が生じない。そのため、実際には携帯機保持者が歩行しているにも関わらず、歩行判定部G8は、携帯機保持者は停止していると判定することがある。その結果、その判定が維持されている間に採取したRSSIがステップS712においてRSSI変動量を算出するための母集団から除外されることがある。
一方、ユーザが車両に乗り込むためには、ドアハンドルを握りドアを開けて乗り込むといった一連の操作が必要であるため、携帯機保持者は必ずドアハンドルに近づくことになる。その結果、LF_RSSIに所定の閾値以上の変化が生じるため、歩行判定部G8による判定結果は歩行中へと移行し、RSSI変動量を算出するためのRSSIが収集される。つまり、携帯機保持者がドアハンドルを中心とする円弧状に移動した場合であっても車両用携帯機200は上述したように問題なく作動し、上記効果を得ることができる。
<変形例15のまとめ>
以上の構成では、携帯端末300毎のRSSIの変化の周期性を、FFTを用いて特定し、スウィング周波数に対応する周期性を有する携帯端末300を保持者端末と判定する。このような構成によれば、携帯機保持者が、車両用携帯機200と携帯端末300の何れか一方を上肢連動所持携帯で所持しており、かつ、他方を衣服のポケットに収容して所持している場合における保持者端末の特定精度を向上させることができる。
また、歩行時のみのRSSIのみを用いてRSSI変動量を算出することで、歩行時と停止時によるRSSIのばらつきを抑制することができる。その結果、より精度良く保持者端末を特定することができる。
[変形例16]
以上では、車両用携帯機200が携帯端末300から受信する信号のRSSIを用いて保持者端末等を特定する方法を開示したが、保持者端末等を特定する方法はこれに限らない。例えば、車両用携帯機200と携帯端末300のそれぞれに作用する加速度の情報を用いて、保持者端末等を特定することもできる。以下、そのような思想に基づく実施の形態について、変形例16として開示する。
変形例16における各携帯端末300は、図29に示すように、加速度センサ330を備える。加速度センサ330は、自分自身に作用する加速度を逐次検出するセンサである。ここでは一例として加速度センサ330は、互いに直交する3つの検出軸を備え、各軸方向に作用する加速度を計測するセンサ(つまり3軸加速度センサ)とする。もちろん、他の態様として加速度センサ330は2軸加速度センサや1軸加速度センサなどであっても良い。
加速度センサ330の検出結果は、端末側制御部310に逐次提供される。加速度センサ330が検出結果を出力する間隔(以降、サンプリング間隔)は、例えば100ミリ秒毎とする。もちろん、サンプリング間隔は50ミリ秒や200ミリ秒などであってもよい。なお、加速度センサ330は、3つの軸方向毎の加速度(Ax,Ay,Az)が示すデータを、1回分の検出結果として出力する。
端末側制御部310は、加速度センサ330の検出結果を示すデータ(以降、加速度データ)を取得すると、当該加速度データに検出時刻を示すタイムスタンプを付与してRAM312に一定時間保存する。逐次取得する加速度のデータは、時系列順にソートされてRAM312に保存されれば良い。加速度データは、RAM312に一定時間保存された後に順次削除されていけば良い。
以降では便宜上、携帯端末300に作用する直近一定時間分の加速度データを時系列に並べた1まとまりのデータのことを加速度履歴データと称する。加速度履歴データは、携帯端末300に作用する加速度の経時変化を示すデータとして機能する。前述の一定時間の長さは適宜設計されれば良く、例えば数秒などとすればよい。加速度履歴データを構成する加速度データの数は、前述の一定時間をサンプリング間隔で除算した値に相当する。加速度履歴データは、現時点から一定時間内における携帯端末300を携帯しているユーザの挙動の履歴を表すデータとして機能する。
そして、各携帯端末300は、RAM312に保存されている加速度履歴データを含む通信パケット(以降、挙動通知パケット)を、近距離通信によって車両用携帯機200に送信する。もちろん、挙動通知パケットには送信元を示す情報(例えば端末ID)が含まれている。端末側制御部310は、挙動通知パケットの送信を定期的に実行するように構成されていても良いし、車両用携帯機200からの要求に応じて実行するように構成されていても良い。挙動通知パケットに収容されている加速度履歴データが請求項に記載の挙動通知データ、特に状態量履歴データに相当する。
また、変形例16における車両用携帯機200の振動情報取得部G6は、加速度センサ250から車両用携帯機200に作用している加速度を示すデータを取得すると、当該データに検出時刻を示すタイムスタンプを付与してRAM212に一定時間保存する。RAM212における加速度データの取り扱いは、端末側制御部310と同様とすればよい。つまり、RAM212には、自機に作用する加速度を構成要素とした加速度履歴データが保存される。振動情報取得部G6が請求項に記載の状態量取得部、特に加速度情報取得部に相当する。
また、近距離通信処理部G3は、近距離通信部230と協働し、自機周辺に存在する携帯端末300から送信されてくる挙動通知パケットを受信する。そして、その受信した挙動通知パケットに示される端末IDと加速度履歴データとを対応付けてRAM212に保存する。
本変形例における保持者端末特定部G4は、RAM212に保存されている自機についての加速度履歴データ(以降、自機加速度データ)と、自機周辺に存在する携帯端末300の加速度履歴データとを用いて、保持者端末を特定する。以降では便宜上、ユーザAが携帯機保持者であって、ユーザAの周辺にはユーザBのみが存在している場合を例にとって、本変形例16における保持者端末特定部G4の作動態様について説明する。なお、前述の通り、ユーザA、Bのそれぞれは、自分の携帯端末300A、Bを所持しているものとする。携帯端末300と車両用携帯機200とを区別しない場合には単に通信端末と記載する。
本変形例における保持者端末特定部G4は、1つの作動態様として、自機加速度データから携帯機保持者の歩行リズムを特定するとともに、各携帯端末300の加速度履歴データから各携帯端末300を携帯している人物の歩行リズムを特定する。そして、携帯機保持者の歩行リズムと一致度合いが最も高い歩行リズムとなっている携帯端末300を、保持者端末に決定する。歩行リズムが請求項に記載の指標状態量に相当する。
携帯機保持者の歩行リズムは、例えば、自機加速度データに基づいて3軸合成加速度の経時変化を示すデータを生成し、3軸合成加速度のピークの発生間隔の平均値を歩行リズムとして採用すればよい。なお、3軸合成加速度とは、軸方向毎の検出値の二乗和を0.5乗した(つまり平方根をとった)値である。また、他の態様として、軸方向毎の検出値から重力作用方向(換言すれば垂直方向)を特定し、垂直方向に作用する加速度のピークの発生間隔を歩行リズムとして採用してもよい。
垂直方向は、車両用携帯機200が静止している時点における軸方向毎の加速度の合成ベクトル(以降、合成加速度ベクトル)が向く方向とすればよい。静止時点は、例えば3軸合成加速度が重力加速度(つまり9.8[m/sec^2])と一致する時点とすればよい。つまり、重力加速度のみが車両用携帯機200に作用している時点を静止時点とみなせばよい。なお、他の態様として、ジャイロセンサや地磁気センサの検出結果を用いて垂直方向を特定してもよい。
以上では、自機加速度データに基づいて携帯機保持者の歩行リズムを特定する方法について述べたが、各携帯端末300を携帯しているユーザの歩行リズムも、同様の方法によって特定すればよい。
図30は、各通信端末の加速度履歴データに対応する歩行リズムの特定結果を概念的に表したものである。図30が備える種々のグラフの縦軸は3軸合成加速度を表しており、横軸は時間を表している。Tfob、TmA、TmBは、各グラフのピーク間隔の平均値(以降、平均ピーク間隔)を表している。つまり、平均ピーク間隔Tfobは携帯機保持者の歩行リズムを表しており、平均ピーク間隔TmAは、携帯端末300Aを保持している人物(つまりユーザA)の歩行リズムを表している。また、平均ピーク間隔TmBは、携帯端末300Bを保持している人物(つまりユーザB)の歩行リズムを表している。
図30に示すような結果が得られた場合には、保持者端末特定部G4は、携帯端末300Aを保持者端末に決定する。携帯端末300Aの平均ピーク間隔TmAのほうが、携帯端末300Bの平均ピーク間隔TmBよりも、車両用携帯機200の平均ピーク間隔Tfobと近い値となっているためである。
また、保持者端末特定部G4は、1つの作動態様として、自機加速度データから車両用携帯機200の移動速度を特定するとともに、各携帯端末300の加速度履歴データから各携帯端末300の移動速度を特定する。そして、携帯機保持者の移動速度と最も近い移動速度となっている携帯端末300を、保持者端末に決定する。なお、車両用携帯機200の移動速度は携帯機保持者の歩行速度に相当し、携帯端末300の移動速度が当該携帯端末300を携帯している人物の歩行速度に相当する。移動速度もまた、請求項に記載の指標状態量の一例に相当する。
車両用携帯機200の或る時点(以降、対象時点)における移動速度は、その対象時点から1秒以内に検出された複数時点における加速度データを用いて算出することができる。例えば、対象時点から1秒に検出された加速度データに基づいて、各検出時点において水平方向に作用している加速度の大きさ(つまり水平方向成分)を特定する。そして、各検出時点における水平方法成分にサンプリング間隔を乗じた値を足し合わせた値を、対象時点における移動速度として採用する。つまり、水平方向に作用している加速度を時間積分することで求めればよい。なお、水平方向成分は、垂直方向と直交する平面(つまり水平面)へ3軸合成加速度ベクトルを射影した成分に相当する。
また、本変形例ではより好ましい態様として、加速度履歴データを構成する複数の加速度データの取得時点(換言すれば検出時点)のそれぞれを対象時点として、同様の演算処理を実施する。これにより、保持者端末特定部G4は、各検出時点における移動速度を示すデータ(以降、速度履歴データ)を生成する。
以上では車両用携帯機200の移動速度を算出する方法について述べたが、携帯端末300の各検出時点における移動速度も、車両用携帯機200の移動速度を求める方法と同様の方法で算出すればよい。また、携帯端末300の速度履歴データも、加速度履歴データから同様の方法で生成する。
ところで、各通信端末の速度履歴データは、図31に示すように、移動速度の経時変化のパターン(以降、速度変化パターン)を示すデータとして機能する。なお、図31における実線は車両用携帯機200の移動速度を表しており、一点鎖線は携帯端末300Aの移動速度を表している。また、二点鎖線は携帯端末300Bの移動速度を表している。
本変形例における保持者端末特定部G4は、保持者端末を特定するために、自機周辺に存在する携帯端末300毎の速度変化パターンと、車両用携帯機200の速度変化パターンとを比較する。そして、複数の携帯端末300のうち、車両用携帯機200の速度変化パターンと一致度合いが最も大きい速度変化パターンとなっている携帯端末300を保持者端末に決定するものとする。速度変化パターンの一致度合いの算出は、周知のパターンマッチング手法を用いて実施すればよい。
もちろん、他の態様として保持者端末特定部G4は、通信端末毎に、最新の検出時点を起算時点として定まる移動速度を算出し、各携帯端末300のうち、車両用携帯機200の移動速度に最も近い移動速度となっている携帯端末300を保持者端末に決定してもよい。
さらに、保持者端末特定部G4は、1つの作動態様として、自機加速度データに基づいて携帯機保持者の歩幅を特定する。また、各携帯端末300の加速度履歴データに基づいて、各携帯端末300を携帯している人物の歩幅を特定する。そして、携帯機保持者の歩幅と最も近い歩幅の人物によって所持されている携帯端末300を、保持者端末に決定する。歩幅もまた、請求項に記載の指標状態量の一例に相当する。
携帯機保持者の歩幅の特定は、例えば、次のような方法によって特定されれば良い。まず、携帯機保持者の移動速度の推移を示すデータ(つまり速度履歴データ)を、上述した方法によって生成する。次に、歩行リズムの特定方法と同様の方法によって、或る一歩から次の一歩へと切り替わる節目となる時刻を特定する。つまり、1歩分の時間区間を特定する。そして、一歩分の時間区間に含まれる各時点の移動速度にサンプリング間隔を乗じた値を足し合わせることで、一歩分の移動距離(すなわち歩幅)を算出する。以上では携帯機保持者の歩幅を特定する手順について例示したが、携帯端末300を所持している人物の歩幅の特定も同様の手順で実施すればよい。
図32は、携帯機保持者と、携帯端末300Aを所持している人物(つまりユーザA)と、携帯端末300Bを所持している人物(つまりユーザB)の、それぞれの人物の歩幅の経時変化を概念的に表した図である。図中の丸型マークは携帯機保持者の歩幅を表しており、三角型マークはユーザAの歩幅を表している。また、菱型マークはユーザBの歩幅を表している。各時点の歩幅は上述した方法によって特定されれば良い。時間軸における各マークの間隔は、歩行リズムを表す。
図32に示すような結果が得られている場合、保持者端末特定部G4は、携帯端末300Aを保持者端末に決定する。ユーザAの歩幅のほうが、ユーザBの歩幅よりも、携帯機保持者の歩幅に近いためである。なお、ここでは一例として、或る通信端末を携帯している人物の歩幅を複数回算出して、それらの平均値や中央値を当該人物の歩幅として採用するものとする。他の態様として、例えば保持者端末特定部G4は、通信端末の携帯者毎に最新の歩幅のみを算出し、その最新の歩幅同士を比較することによって保持者端末を特定してもよい。
また、保持者端末特定部G4は、1つの作動態様として、自機加速度データに基づいて車両用携帯機200の一定時間当り(例えば1秒当り)の移動距離の経時変化パターン(以降、距離変化パターン)を特定する。また、保持者端末特定部G4は、各携帯端末300の加速度履歴データから各携帯端末300の距離変化パターンも特定する。そして、携帯機保持者の距離変化パターンと、最も近い移動速度となっている携帯端末300を、保持者端末に決定する。
車両用携帯機200の一定時間(例えば1秒)当りの移動距離は、その時間帯における車両用携帯機200の移動速度を時間積分することで特定することができる。各検出時点の移動速度の算出方法は前述の通りである。保持者端末特定部G4は、各検出時点を対象時点として同様の演算処理を実施することで、一定時間当りの移動距離の経時変化を示すデータ(以降、距離変化パターンデータ)を生成する。以上では車両用携帯機200の距離変化パターンを特定する方法について述べたが、携帯端末300の距離変化パターンデータについても、同様の方法で生成することができる。
保持者端末特定部G4は、保持者端末を特定するために、自機周辺に存在する携帯端末300毎の距離変化パターンデータと、車両用携帯機200の距離変化パターンデータとを比較する。そして、各携帯端末300のうち、車両用携帯機200の距離変化パターンデータと一致度合いが最も大きい距離変化パターンデータを提供する携帯端末300を保持者端末に決定する。例えば、上述した処理の結果、図33に概念的に示す通信端末毎の距離変化パターンデータが得られた場合には、携帯端末300Aを保持者端末に決定する。
もちろん、他の態様として保持者端末特定部G4は、通信端末毎に、最新の検出時点を起算時点とする過去一定時間での移動距離を算出し、各携帯端末300のうち、車両用携帯機200の移動距離に最も近い移動距離となっている携帯端末300を保持者端末に決定してもよい。一定時間当りの移動距離もまた、請求項に記載の指標状態量の一例に相当する。
以上の処理によって特定された、乗員に関する情報(例えば保持者端末情報など)は、所定のタイミングで車両Vに送信されれば良い。もちろん、保持者端末を特定できた場合、保持者端末以外の携帯端末300は同乗者端末であることになる。そのため、変形例7で言及したように、乗員に関する情報として同乗者端末についての情報(例えば端末ID)を送信することが出来る。なお、車両側制御部が備える乗員情報取得部F6は、車両用携帯機200から送信されてくる乗員情報に基づいて、携帯機保持者に該当するユーザ等を特定する。つまり、本変形例によっても実施形態等と同様の効果を得ることができる。
なお、以上では各携帯端末300は加速度履歴データを車両用携帯機200に送信し、車両用携帯機200が、送信されてきたデータに基づいて各携帯端末300のユーザの歩幅等を特定する態様を開示したが、これに限らない。携帯端末300が自分自身のユーザの歩幅等を特定し、その特定結果を車両用携帯機200に通知する態様を採用してもよい。携帯端末300は、ユーザの歩幅等を、加速度センサ330の出力履歴(つまり加速度履歴データ)に対して上述した演算処理を実施することで特定できる。
そのような態様によれば、携帯機側制御部210での演算負荷を抑制することが出来る。また、車両用携帯機200と携帯端末300とで送受信されるデータ量も抑制することができる。なお、携帯端末300が送信する、自分自身のユーザの歩幅等を示すデータが請求項に記載の挙動通知データ、特に加工済み状態量データに相当する。
[変形例17]
また、保持者端末特定部G4は、各通信端末が向いている方向の経時的な変化パターンを用いて保持者端末を特定してもよい。以下、そのような思想に基づく実施の形態について、変形例17として開示する。
変形例17における各携帯端末300は、図34に示すように、地磁気センサ340を備える。地磁気センサ340は、磁界の向きを計測し、携帯端末300が向いている方位角を検出するセンサである。ここでは一例として地磁気センサ340は、地磁気を互いに直交する3つの軸方向成分に分解して検出する3軸地磁気センサとする。地磁気センサ340の検出結果は逐次、端末側制御部310に提供される。
なお、地磁気センサ340は、2軸地磁気センサであっても良い。方位角は、所定の方向を基準として0度から359度までの度数で表現されれば良い。ここでは一例として、北が0度、東が90度、南が18度、西が270度となるように、方位角を角度で表現するものとする。なお、基準方向(換言すれば0度とする方向)は、必ずしも真北である必要はない。地球の磁北極が存在する方向(いわゆる磁北)としてもよいし、その他、真東や真南などを基準方向として採用してもよい。
端末側制御部310は、地磁気センサ340の検出結果を示すデータ(以降、方位角データ)を取得すると、当該データに検出時刻を示すタイムスタンプを付与してRAM312に一定時間保存する。RAM312における方位角データの取り扱いは、加速度データと同様とすればよい。以降では、直近一定時間分の方位角データを時系列に並べた1まとまりのデータのことを方位角履歴データと称する。方位角履歴データは、加速度履歴データと同様に、現時点から一定時間内における携帯端末300を携帯しているユーザの挙動の履歴を表すデータとして機能する。方位角履歴データもまた、請求項に記載の状態量履歴データに相当する。
さらに、本変形例17における携帯端末300は、RAM312に保存されている加速度履歴データに加えて方位角履歴データを含む通信パケット(つまり挙動通知パケット)を、近距離通信によって車両用携帯機200に送信する。もちろん、挙動通知パケットには、変形例16で述べたように、送信元を示す情報(例えば端末ID)が含まれている。
変形例17における車両用携帯機200は、図35に示すように、地磁気センサ260を備えるとともに、携帯機側制御部210は、方位角情報取得部G9を備える。地磁気センサ260は、携帯端末300が備える地磁気センサ340と同様の機能を有するものである。
方位角情報取得部G9は、地磁気センサ260の検出結果を示すデータ(つまり方位角データ)を取得する。方位角情報取得部G9は、CPUが携帯端末用プログラムを実行することで実現されても良いし、IC等のハードウェア部材を用いて実現されても良い。方位角情報取得部G9は方位角データを取得すると、当該データに検出時刻を示すタイムスタンプを付与してRAM212に一定時間保存する。方位角情報取得部G9も請求項に記載の状態量取得部に相当する。
RAM212における方位角データの取り扱いは、加速度データと同様とすればよい。つまりRAM212には車両用携帯機200にとっての方位角履歴データ(以降、自機方位角データ)が保存される。自機方位角データは、自機加速度データと同様に、現時点から一定時間内における携帯機保持者の挙動の履歴を表すデータとして機能する。
また、近距離通信処理部G3は、自機周辺に存在する携帯端末300から送信されてくる挙動通知パケットを受信すると、その受信した挙動通知パケットに示される加速度履歴データ及び方位角履歴データのそれぞれを端末IDと対応付けてRAM212に保存する。
そして、保持者端末特定部G4は、RAM212に保存されている自機方位角データと、自機周辺に存在する携帯端末300の方位角履歴データとを用いて、保持者端末を特定する。以降では、変形例16と同様に、ユーザAが携帯機保持者であって、ユーザAの周辺にはユーザBのみが存在している場合を例にとって、本変形例17における保持者端末特定部G4の作動態様について説明する。
まず、保持者端末特定部G4は、変形例16で述べた手順によって、各通信端末の距離変化パターンデータを生成する。具体的には、車両用携帯機200の距離変化パターンデータと、携帯端末300Aについての距離変化パターンデータと、携帯端末300Bについての距離変化パターンデータを生成する。
次に、保持者端末特定部G4は、自機加速度データに基づいて車両用携帯機200の向きの単位時間当りの変化量(以降、方位角変化量)を特定するとともに、各携帯端末300の加速度履歴データに基づいて各携帯端末300の方位角変化量を特定する。
車両用携帯機200の或る時点における方位角変化量は、その時点の方位角を示す度数から、その時点よりも1秒前の時点における方位角を示す度数を減算した値とすればよい。つまり、方位角変化量は、最新の検出値と1秒間前の検出値の差とすれば良い。保持者端末特定部G4は、各検出時点に対して同様の演算処理を実施することで、方位角変化量の経時変化の軌跡を示すデータ(以降、方位角変化パターンデータ)を生成するものとする。保持者端末特定部G4は、携帯端末300の方位角変化パターンデータについても、車両用携帯機200の距離変化パターンデータを生成する方法と同様の方法で生成する。
そして、保持者端末特定部G4は、移動距離の変化パターンと方位角の変化パターンの両方を用いて、保持者端末の特定を行う。例えば、自機周辺に存在する携帯端末300毎の距離変化パターンと、車両用携帯機200の距離変化パターンとを比較し、車両用携帯機200の距離変化パターンと一致度合いが最も高い距離変化パターンデータを提供する携帯端末300と、2番目に一致度合いが高い距離変化パターンデータを提供する携帯端末300を特定する。
次に、それら2つの携帯端末300の方位角変化パターンデータのそれぞれを、車両用携帯機200の方位角変化パターンデータと比較し、車両用携帯機200の方位角変化パターンデータと一致度合いが高い方の携帯端末300を保持者端末に決定する。例えば図36に示すような結果が得られた場合には、保持者端末特定部G4は、携帯端末300Aを保持者端末に決定する。携帯端末300Aのほうが、携帯端末300Bよりも、車両用携帯機200の方位角変化パターンデータと一致度合いが高い方位角変化パターンデータを実現しているためである。
なお、以上では、移動距離の変化パターンと方位角の変化パターンの両方を用いて保持者端末を特定する態様を例示したが、これに限らない。方位角変化パターンデータのみを用いて、保持者端末を特定してもよい。その場合には、車両用携帯機200の方位角変化パターンと一致度合いが最も高い方位角変化パターンデータを提供する携帯端末300を保持者端末に決定すればよい。なお、移動距離の変化パターンと方位角の変化パターンの両方を用いて保持者端末を特定することは、移動ベクトルの経時変化を用いて保持者端末を特定することに相当する。
また、他の態様として保持者端末特定部G4は、通信端末毎に、最新の検出時点を起算時点として定まる方位角の変化量を算出し、各携帯端末300のうち、車両用携帯機200の方位角変化量に最も近い方位角変化量となっている携帯端末300を保持者端末に決定してもよい。なお、方位角の変化量は、ジャイロセンサを用いても算出することができる。したがって、ジャイロセンサの検出値も、請求項に記載の状態量として採用することができる。
以上の処理によって特定された乗員に関する情報(例えば保持者端末情報など)は、前述の変形例16と同様に、所定のタイミングで車両Vに送信されれば良い。そのような態様によれば、本変形例によっても実施形態等と同様の効果を得ることができる。
[変形例18]
また、保持者端末特定部G4は、各通信端末の位置情報を用いて保持者端末を特定することもできる。以下、そのような思想に基づく実施の形態について、変形例18として開示する。
変形例18における各携帯端末300は、図37に示すように、GNSS受信機350を備える。GNSS受信機350は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信された測位信号を受信することで、当該GNSS受信機350の現在位置を逐次(例えば100ミリ秒毎に)検出するデバイスである。GNSS受信機350の検出結果は逐次、端末側制御部310に提供される。なお、GNSS受信機350が検出する現在位置は、例えば、緯度と経度で表されればよい。
端末側制御部310は、GNSS受信機350が特定する現在位置を示すデータ(以降、位置データ)を取得すると、当該位置データに検出時刻を示すタイムスタンプを付与してRAM312に一定時間保存する。RAM312における位置データの取り扱いは、前述の加速度データ等と同様とすればよい。以降では、直近一定時間分の位置データを時系列に並べた1まとまりのデータのことを位置履歴データと称する。位置履歴データは、現時点から一定時間内における携帯端末300の移動軌跡を表すデータとして機能する。各時点における位置情報には、検出時刻を示すタイムスタンプが付与されている。
さらに、本変形例18における携帯端末300は、RAM312に保存されている位置履歴データを含む通信パケット(以降、位置情報パケット)を、近距離通信によって車両用携帯機200に送信する。もちろん、位置情報パケットには、送信元を示す情報(例えば端末ID)が含まれている。位置情報パケットに収容される位置履歴データも、請求項に記載の挙動通知データ、特に状態量履歴データの一例に相当する。
変形例18における車両用携帯機200は、図38に示すように、GNSS受信機270を備えるとともに、携帯機側制御部210は、位置情報取得部G10を備える。GNSS受信機270は、携帯端末300が備えるGNSS受信機350と同様の機能を有するものである。
位置情報取得部G10は、GNSS受信機270の検出結果を示すデータ(つまり位置データ)を取得する。位置情報取得部G10は、CPUが携帯端末用プログラムを実行することで実現されても良いし、IC等のハードウェア部材を用いて実現されても良い。位置情報取得部G10はGNSS受信機270から位置データを取得すると、当該データにタイムスタンプを付与してRAM212に一定時間保存する。
RAM212における位置データの取り扱いは、前述の加速度データ等と同様とすればよい。つまりRAM212には車両用携帯機200の位置履歴データが保存される。車両用携帯機200の位置履歴データは、現時点から一定時間内における車両用携帯機(換言すれば携帯機保持者)の移動軌跡を表すデータとして機能する。
また、近距離通信処理部G3は、近距離通信部230と協働し、自機周辺に存在する携帯端末300から送信されてくる位置情報パケットを受信する。そして、その受信した位置情報パケットに示される端末IDと位置履歴データとを対応付けてRAM212に保存する。
変形例18における保持者端末特定部G4は、RAM212に保存されている自機の位置履歴データと、自機周辺に存在する携帯端末300の位置履歴データとを用いて、保持者端末を特定する。以降では変形例16,17と同様に、ユーザAが携帯機保持者であって、ユーザAの周辺にはユーザBのみが存在している場合を例にとって、本変形例18における保持者端末特定部G4の作動態様について説明する。
保持者端末特定部G4は、1つの作動態様として、携帯端末300毎に、携帯端末300と自機との距離(以降、端末間距離)の推移を示す端末間距離推移データを生成する。なお、或る時刻における携帯端末300Aと車両用携帯機200との端末間距離とは、当該時刻における携帯端末300Aの位置と車両用携帯機200の位置の差である。保持者端末特定部G4は、自機の位置履歴データと携帯端末300Aの位置履歴データとにおいて、同一時刻におけるそれぞれの位置データを参照して、当該時点での端末間距離を算出する。そのような処理を複数時点の位置データに対して実行することで、携帯端末300Aについての端末間距離推移データを生成する。携帯端末300Bについての端末間距離推移データも同様の手順で生成する。
そして、保持者端末特定部G4は、携帯端末300Aについての端末間距離推移データと携帯端末300Bについての端末間距離推移データとを比較して、相対的に0付近を推移している方の携帯端末300を保持者端末に決定する。保持者端末は携帯機保持者によって携帯されているため、端末間距離は0〜1メートル未満で推移することが期待できるためである。例えば図39に示すような結果が得られた場合には、保持者端末特定部G4は携帯端末300Aを保持者端末に決定する。なお、判定に用いる推移レベルは、複数時点の端末間距離の平均値としてもよいし、中央値としてもよい。
なお、以上では複数時点での端末間距離を算出し、端末間距離の推移レベルに基づいて保持者端末を特定する態様を例示したが、位置データを用いた特定方法はこれに限らない。例えば、任意の或る時点において、車両用携帯機200から最も近い位置に存在する携帯端末300を保持者端末に決定してもよい。また、携帯端末300毎に、端末間距離の分散値を算出し、分散値が最も小さい携帯端末300を保持者端末に決定してもよい。
また、以上では各携帯端末300について車両用携帯機200の位置を基準とする端末間距離を算出し、当該端末間距離を用いて保持者端末を特定する態様を開示したが、保持者端末の特定方法はこれに限らない。
例えば、自機周辺に存在する携帯端末300毎の位置履歴データと、車両用携帯機200の位置履歴データを比較し、車両用携帯機200と移動軌跡と最も近い移動軌跡を提供している携帯端末300を保持者端末に決定してもよい。なお、各通信端末の移動軌跡は、位置履歴データが示している。
このような態様によっても保持者端末を特定する事ができる。もちろん、保持者端末を特定した場合、残りの携帯端末300については同乗者端末と判定すればよい。そして、以上の処理によって特定した乗員情報は、所定のタイミングで車載器100に送信されればよい。このような態様によっても上述した実施形態等と同様の効果を奏する。
[変形例19]
以上では、車両用携帯機200が、自機周辺に存在する携帯端末300と近距離通信を実施することによって保持者端末を特定する態様を開示したが、これに限らない。車両用携帯機200及び各携帯端末300が、近接場通信(Near Field Communication:NFC)を実施するための通信モジュールを備えている場合には、車両用携帯機200と近接場通信が確立した携帯端末300を保持者端末に決定してもよい。
ここでの近接場通信とは、近距離通信よりも通信可能な距離が十分に小さい通信方式による通信を指す。例えば、近接場通信は、通信可能な距離が数cmから数十cm程度となる通信を指す。すなわち、近接場通信は、ISO/IEC 14443やISO/IEC 18092などの規格に準拠した通信である。
また、車両用携帯機200及び各携帯端末300が、所定の通信規格に準拠した有線通信を実施するためのコネクタモジュールを備えている場合には、車両用携帯機200と有線接続している携帯端末300を保持者端末に決定してもよい。