以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る電池パック及び電池パックの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、電池パックの一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す電池パックの断面図である。図1及び図2に示す電池パック1は、例えばフォークリフトなどの産業車両のバッテリとして構成されている。
電池パック1は、筐体2内に複数の電池モジュールMを収容して構成されている。電池モジュールMは、例えば複数の電池セルが配列された配列体と、配列体に対して電池セルの配列方向に拘束荷重を付加する拘束部材とを含んで構成されている。電池セルは、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電界質二次電池である。
筐体2は、例えば略直方体の箱状をなしている。筐体2を形成する材料は、例えば鉄などの金属材料である。電池パック1がフォークリフトに搭載される場合、筐体2の外側面にウエイト部材を設けることにより、フォークリフトのカウンタウエイトとしての機能を付加する場合もある。筐体2は、一面側が開口する本体部3と、本体部3の開口Kを塞ぐようにボルト5によって本体部3に締結された蓋部4とによって構成されている。本実施形態では、本体部3の内面3aに3体、蓋部4の内面4aに4体、計7体の電池モジュールMがマトリクス状に固定されている(図1参照)。本体部3及び蓋部4への電池モジュールMの固定には、ブラケットを介したボルト締結などの公知の手法が用いられる。
本体部3は、ベース板6と、ベース板6の各辺に立設された4枚の側板7とを有している。側板7の基端部は、例えば溶接によってベース板6の縁部に固定されている。本体部3の開口Kは、4枚の側板7によってベース板6の反対面側に断面矩形に画成されている。本体部3の開口縁部8(すなわち、4枚の側板7の先端部)には、図1及び図3に示すように、ボルト5を螺合させるボルト用ネジ孔9と、本体部3と蓋部4との位置決めに用いられるピン10とが設けられている。ボルト用ネジ孔9は、開口縁部8の四隅にそれぞれ設けられている。ピン10は、開口縁部8の一辺と、当該一辺と対向する他辺とにおいて、ボルト用ネジ孔9よりも内側の位置にそれぞれ2箇所ずつ、計4箇所に設けられている。
ピン10は、例えば円筒形状をなしている。ピン10の基端側には、図2に示すように、例えばネジ溝10aが設けられている。ピン10は、開口縁部8に形成されたピン用ネジ孔11にネジ溝10aを螺合することにより、開口縁部8から突出するように固定されている。開口縁部8からのピン10の先端側の突出量は、例えば1mm〜数mm程度となっている。
また、ピン10の先端側の略中央部分には、図1及び図3に示すように、凹部10bが形成されている。凹部10bは、例えば六角レンチが挿入される深さ数mm程度の六角孔である。凹部10bは、六角レンチによるピン用ネジ孔11へのピン10の螺合に用いられる。また、凹部10bは、本体部3と蓋部4との位置決めを行う際のアライメントマークAとして機能する。
蓋部4は、ベース板6と略同形の矩形の板状をなしている。蓋部4には、図1及び図4に示すように、ボルト5を挿通させるボルト用貫通孔12と、ピン10を挿通させるピン用貫通孔13とが設けられている。ボルト用貫通孔12は、本体部3側のボルト用ネジ孔9の位置と対応するように、蓋部4の四隅にそれぞれ設けられている。また、ピン用貫通孔13は、本体部3側のピン10の位置と対応するように、ボルト用ネジ孔9よりも内側の位置に計4箇所に設けられている。ピン用貫通孔13の内径は、後述のシール部材14と干渉しない範囲で、例えばピン10の外径よりも1mm〜2mm程度大径となっている。
また、本体部3と蓋部4との間には、筐体2を気密に封止するシール部材14が配置されている。シール部材14は、図1及び図3に示すように、ピン10及びピン用貫通孔13よりも内側(開口K側)に位置するように、開口縁部8の縁に沿って矩形の環状に配置されている。なお、シール部材14は、ピン10及びピン用貫通孔13と開口Kとの間の領域を通るように配置されていれば、開口縁部8の縁に接していてもよく、開口縁部8の縁から離間していてもよい。
以上の構成を有する本体部3及び蓋部4には、図2に示すように、本体部3側の各ピン10が蓋部4側の各ピン用貫通孔13にそれぞれ挿入された状態で位置決めされている。そして、本体部3及び蓋部4は、蓋部4の外面側からボルト用貫通孔12に挿通されたボルト5を本体部3における開口縁部8のボルト用ネジ孔9に螺合することにより互いに強固に固定され、筐体2を形成している。
ピン10の先端は、蓋部4の外面4bと面一又はピン用貫通孔13内に位置している。すなわち、ピン10の先端は、ピン用貫通孔13から蓋部4の外面側には突出しない状態となっている。本体部3と蓋部4との間には、ピン10及びピン用貫通孔13よりも内側に配置されたシール部材14が厚さ方向に圧縮された状態で介在しており、ピン用貫通孔13内におけるピン10の先端位置にかかわらず、筐体2内の気密性が確保されている。
続いて、上述した電池パック1の製造工程について説明する。
電池パック1の製造工程には、一面側が開口する本体部3と、本体部3の開口Kを塞ぐ蓋部4とを結合し、筐体2を形成する筐体形成工程が含まれている。筐体形成工程は、上述した本体部3及び蓋部4を準備する工程と、本体部3の開口Kに対面するように蓋部4を配置し、ピン用貫通孔13からピン10のアライメントマークAが見通せるように本体部3に対して蓋部4を位置決めする工程と、ピン用貫通孔13からアライメントマークAが見通せる状態を維持しながら、ピン10をピン用貫通孔13に挿通させる工程と、を有している。
筐体形成工程に先立って、本体部3の内面3a及び蓋部4の内面4aには、ブラケットなどを介して予め所定の位置に電池モジュールMを固定する。また、本体部3における開口縁部8のピン用ネジ孔11には、予めピン10を螺合すると共に、開口縁部8に沿ってピン10の内側にシール部材14を配置する。
本実施形態では、本体部3に対する蓋部4の位置決めを行う位置決め装置21を用いた筐体形成工程を例示する。位置決め装置21は、図5に示すように、本体部3を載置するステージ22と、蓋部4を把持する一対のアーム23,23と、本体部3及び蓋部4を撮像する撮像部24と、撮像部24で得られた画像データを解析する解析部25と、解析部25による画像データの解析結果に基づいてアーム23,23を制御するコントローラ26とによって構成されている。
位置決め装置21を用いて筐体形成工程を場合、開口Kを上方に向けた状態で本体部3をステージ22上に載置する。また、内面4aを本体部3側に向けた状態で蓋部4を本体部3の上方に配置する。蓋部4の支持は、例えば一対のアーム23,23で蓋部4の縁部を把持することによって実施する。蓋部4の上方には、撮像面が蓋部4向きとなるように撮像部24を設置する。
撮像部24は、例えばデジタルカメラであり、有線又は無線によって解析部25と情報通信可能に接続されている。撮像部24は、蓋部4の外面4b側から本体部3及び蓋部4を撮像し、取得した画像データを解析部25に随時出力する。
解析部25は、物理的には、CPU、ROM、RAM、通信インタフェイス、ハードディスクなどを備えたコンピュータシステムである。解析部25は、有線又は無線によって解析部25と情報通信可能に接続されている。解析部25は、撮像部24から取得した画像データに基づいて、ピン用貫通孔13から見通されるピン10の位置及びピン10の先端のアライメントマークAの位置の解析を行う。解析部25は、解析結果を示す情報をコントローラ26に随時出力する。
コントローラ26は、物理的には、CPU、ROM、RAM、通信インタフェイスなどを備えて構成されている。コントローラ26は、解析部25から取得した情報に基づいて、アーム23,23を水平面方向に駆動する。このとき、コントローラ26は、まず、例えば図6に示すように、各ピン10のアライメントマークAが各ピン用貫通孔13から見通されるように、本体部3に対する蓋部4の位置を大まかに合わせる。次に、コントローラ26は、例えば図7に示すように、全てのピン10の断面形状の全体が各ピン用貫通孔13から見通されるように、本体部3に対する蓋部4の位置を精密に調整する。
本体部3に対する蓋部4の位置を調整した後、コントローラ26は、ピン10がピン用貫通孔13から見通せる状態を維持したままアーム23,23を下降させ、全てのピン10の少なくとも先端が各ピン用貫通孔13内に進入した位置でアーム23,23を蓋部4から外す。その後は自重によって、図8に示すように、開口Kを塞ぐように蓋部4が本体部3の開口縁部8上に配置される。この後、蓋部4の外面側からボルト用貫通孔12にボルト5を挿通し、本体部3における開口縁部8のボルト用ネジ孔9にボルト5を螺合する。これにより、本体部3と蓋部4とが互いに強固に固定され、内部に電池モジュールMを収容した筐体2が得られる。
以上説明したように、この電池パック1及びその製造方法では、本体部3側にピン10が設けられ、蓋部4側にピン10に対応するピン用貫通孔13が設けられている。また、ピン10の先端側には、アライメントマークAが設けられている。これにより、本体部3と蓋部4とをボルト5によって締結する際に、ピン用貫通孔13からピン10のアライメントマークAを見通すことで、本体部3と蓋部4とを容易に位置決めできる。したがって、筐体2の組み立て作業性を良好に確保できる。
また、電池パック1では、本体部3と蓋部4との間において、ピン10及びピン用貫通孔13よりも内側にシール部材14が配置されている。シール部材14の配置により、筐体2内の気密性を確保できる。シール部材14の位置をピン10及びピン用貫通孔13よりも内側とすることで、ピン用貫通孔13によって気密性が損なわれることを回避できる。
また、電池パック1では、ピン10の先端に設けられた凹部10bがアライメントマークAとなっている。これにより、アライメントマークAの視認性を十分に確保できる。本実施形態では、六角レンチが挿入される六角孔をアライメントマークAとして利用している。このため、ピン10の構成が複雑化することもない。
また、電池パック1では、ピン10の先端が蓋部4の外面4bと面一又はピン用貫通孔13内に位置している。これにより、ピン10の先端が筐体2の蓋部4の外面から突出しないため、電池パック1の配置の自由度を確保できる。また、上述したように、シール部材14がピン10及びピン用貫通孔13よりも内側に位置しているため、ピン用貫通孔13内におけるピン10の先端の位置に関わらず、筐体2の気密性は維持される。ピン用貫通孔13の外面4b側を塞ぐ必要もないので、電池パック1の構成が複雑化することもない。
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、ピン10及びピン用貫通孔13を4箇所に設けているが、ピン10及びピン用貫通孔13は、少なくとも開口縁部8を挟んで2箇所に対角に設けられていればよく、その範囲で設置数を適宜変更してもよい。また、ピン10は、ネジ溝10aをピン用ネジ孔11に螺合して開口縁部8に固定する形態に限られず、溶接等によって開口縁部8に固定する形態であってもよい。
ピン10及びアライメントマークAは、種々の変形を採り得る。例えば図9(a)に示すように、開口縁部8からのピン10の突出部分を円錐台状に形成してもよい。ピン10を先細り状とすることにより、ピン用貫通孔13に対してピン10を挿通させ易くなり、筐体2の組み立て作業性を一層良好に確保できる。ピン10の突出部分の全体を先細り状とする形態に限られず、ピン10の突出部分の先端側のみを先細り状としてもよい。
アライメントマークAは、凹部10bに限られず、例えば図9(b)に示すように、ピン10の先端に形成した凸部10cであってもよい。凹部10b及び凸部10cの平面形状は、円形、楕円形、多角形といった種々の形状であってよい。また、アライメントマークAは、例えば図9(c)に示すように、ピン10の先端に塗料などを塗装することによって形成された塗装部10dであってもよい。これらのアライメントマークAの形態においても、ピン用貫通孔13からの視認性を十分に確保できる。
また、上記実施形態では、筐体形成工程において、位置決め装置21を用いて本体部3に対する蓋部4の位置決めを自動化した例を示したが、ピン用貫通孔13に対するアライメントマークAの位置を肉眼で確認し、本体部3に対する蓋部4の位置決めを手動で実施してもよい。
また、上記実施形態では、ベース板6と略同形の矩形の板状をなす蓋部4を例示したが、図10に示す電池パック1Aのように、本体部3と略同形に一面側が開口する蓋部31を用いて筐体2を構成してもよい。蓋部31は、本体部3と同様に、ベース板32と、ベース板32の各辺に立設された4枚の側板33とを有している。蓋部31の開口Lは、4枚の側板33によってベース板32の反対面側に断面矩形に画成されている。
図10の例では、本体部3における側板7の先端外側にフランジ部34が設けられ、蓋部31における側板33の先端外側にフランジ部34に対応するフランジ部35が設けられている。フランジ部34には、ピン用ネジ孔11が設けられ、ピン10が螺合されている。フランジ部35には、フランジ部34側のピン10の位置と対応するようにピン用貫通孔13が設けられている。本体部3及び蓋部31は、フランジ部34,35が対面するように配置され、本体部3側の各ピン10が蓋部4側の各ピン用貫通孔13にそれぞれ挿入された状態で位置決めされている。
このような形態においても、本体部3と蓋部31とを締結する際に、ピン用貫通孔13からピン10のアライメントマークAを見通すことで、本体部3と蓋部31とを容易に位置決めできる。したがって、筐体2の組み立て作業性を良好に確保できる。なお、シール部材14は、ピン10及びピン用貫通孔13よりも内側(開口K側)であれば、側板7,33間に位置していてもよく、フランジ部34,35間に位置していてもよい。