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JP2017101950A - レーザ式ガス分析計 - Google Patents

レーザ式ガス分析計 Download PDF

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JP2017101950A
JP2017101950A JP2015233343A JP2015233343A JP2017101950A JP 2017101950 A JP2017101950 A JP 2017101950A JP 2015233343 A JP2015233343 A JP 2015233343A JP 2015233343 A JP2015233343 A JP 2015233343A JP 2017101950 A JP2017101950 A JP 2017101950A
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雅哉 田原
Masaya Tahara
雅哉 田原
和裕 小泉
Kazuhiro Koizumi
和裕 小泉
英之 小西
Hideyuki Konishi
英之 小西
貴誌 乾
Takashi Inui
貴誌 乾
秀夫 金井
Hideo Kanai
秀夫 金井
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Fuji Electric Co Ltd
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Abstract

【課題】QCLのように発熱量の大きい中赤外レーザ素子を有し、さらに周囲温度が変化する環境にあっても、パルス駆動と波長スキャンを組み合わせることで、中赤外レーザ素子発熱抑制と中赤外レーザ素子温度制御を両立してレーザ光の発振波長を一定にし、正確なガス濃度測定を可能としたレーザ式ガス分析計を提供する。【解決手段】波長スキャン波形の信号成分から測定対象ガスによる光吸収の影響を受けた逆ピークを検出し、逆ピークの変化に基づいて中赤外レーザ素子を基準温度へ近づけるように制御し、また、パルス駆動波形の信号成分から測定対象ガスによる光吸収の影響を受けたパルス波高の変化量を算出し、パルス波高の変化量から測定対象ガスのガス濃度を演算するレーザ式ガス分析計とした。【選択図】図5

Description

本発明は、測定対象ガスのガス濃度をレーザ光により測定するレーザ式ガス分析計に関するものである。
ガスの分子・原子には、それぞれ固有の光吸収スペクトルがあることが知られている。例えば、図8はアンモニア(NH)の光吸収スペクトルの例であり、グラフの横軸は波長を示し、縦軸は光吸収強度を示している。
レーザ式ガス分析計は、このような光吸収スペクトルを利用して各種ガスのガス濃度を検出する。レーザ式ガス分析計は、測定対象ガスの光吸収スペクトルの波長を含む発光波長領域を有する半導体レーザ光源からレーザ光を測定対象ガスに照射する。この際に測定対象ガスの分子・原子によりレーザ光の吸収が起こる。
ここで、光吸収スペクトルの中心波長λにおける減衰量は、ガス濃度に比例する。したがって、中心波長λの発振波長を持つレーザ光をガスに照射し、その減衰量を測定して適当な係数を掛けることでガス濃度を推定することができる。
このレーザ光を用いたガス分析による濃度計測方法は、大別して、差分吸収方式と周波数変調方式がある。通常、差分吸収方式は、比較的簡単な構成でガス濃度の測定が可能である。一方、周波数変調方式は、信号処理が複雑になるが高感度なガス濃度測定が可能である。
差分吸収方式によりガス濃度を測定する装置は、例えば特許文献1(特開平7−151681号公報、発明の名称「ガス濃度測定装置」)に記載されている。このガス濃度測定装置は、特許文献1の図8で示すように、2波長式半導体レーザ、ガスセル、受光レンズ、受光部、ガス濃度測定装置を備えた装置である。
そして、図9の差分吸収方式による濃度測定原理でも示すように、吸収線の中心波長λを発振波長とするレーザ光と、吸収線のない中心波長λを発振波長とするレーザ光と、という2種のレーザ光をガスに照射し、それぞれの受光部が出力する信号の強度を差分して得た信号強度差に適当な比例定数を乗じて濃度に換算する、というものである。
また、周波数変調方式によりガス濃度を測定する装置も、例えば先に述べた特許文献1に記載されている。このガス濃度測定装置は、特許文献1の図7で示すように、周波数変調式半導体レーザ、ガスセル、受光レンズ、受光部、ガス濃度測定装置を備えた装置である。
そして、図10の周波数変調方式による濃度測定原理で示すように、中心波長λ、変調周波数fで半導体レーザの出力を周波数変調し、対象となる測定対象ガスに照射する。ガスの吸収線は周波数に対してほぼ2次関数となっているので、この吸収線が弁別器の役割を果たし受光部では変調周波数fの2倍の周波数の信号(2倍波)が得られる。そして、受光部でエンベロープ検波を行うことで振幅変調による基本波を推定でき、この基本波の振幅と前記2倍波の振幅の比を同期させることで、受光光量に関係なくガス濃度に比例した値を得る、というものである。
そして、レーザ光を用いたガス分析計の従来技術としては、例えば、図11に示すレーザ式ガス分析計が知られている。なお、このレーザ式ガス分析計は、特許文献2(特開2009−47677号公報、発明の名称「レーザ式ガス分析計」)に記載されているものである。
図11において、101a,101bは測定対象ガスが流れる煙道壁である。これらの煙道壁101a,101bには、発光部フランジ201a、受光部フランジ201bが対向した位置にそれぞれ配置されている。
発光部フランジ201aには、取付金具202aを介して発光部ケース203aが取り付けられている。この発光部ケース203aには、レーザ光源204とコリメートレンズ205等の光学部品が内蔵されている。受光部フランジ201bには、取付金具202bを介して受光部ケース203bが取り付けられている。この受光部ケース203bには、レンズ206、受光素子207、及び受光素子207の出力信号を処理する受光部回路基板208が内蔵されている。
上記構成において、レーザ光源204から出射されたレーザ光は測定対象空間である煙道内部に照射され、レーザ光源204に対向して配置された受光部ケース203b内の受光素子207へ照射される。
この受光により、煙道内部に測定対象ガスが存在する場合にはレーザ光が吸収されるので、この光吸収が測定対象ガスの濃度と関連性を有することを利用して、受光部回路基板208上の受光信号処理回路が測定対象ガス濃度を演算する。受光信号処理回路では、例えば図9に示すような受光信号波形が得られ、信号の最大値と最小値の差である信号強度差からガス濃度を演算することができる。
これらレーザ式ガス分析計は煙道内部の排ガスの測定にも用いられている。このような排ガスにはSOガスが含まれる。SOガスの分光特性は図12に示すように中赤外領域の光を吸収する。そこで中赤外領域のレーザ光を照射する必要がある。この中赤外光を発光するレーザ素子として、量子カスケードレーザ(QCL)がある。特許文献3(特開2010−266303号公報、発明の名称「レーザ式ガス分析計」)にはSOガスの分析を行うため、QCLを用いて中赤外領域のレーザ光を照射するレーザ式ガス分析計が開示されている。
QCLは、他のレーザ素子に比べて、駆動電流及び駆動電圧が高く、消費電力が大きいため、発熱量も大きい。従来のレーザ素子は100mA×5V=0.5W程度の消費電力である。一方、QCLは1A×10V=10Wであり、約20倍の消費電力である。
先に特許文献1を引用して説明した周波数変調方式では非常に高精度なガス濃度検出が可能であるが、レーザ素子を長時間点灯する必要がある。QCLの場合、発熱量が大きいため、レーザ式ガス分析計が設置されるような高温環境において長時間駆動すると、オーバーヒートを起こし、レーザ素子が破壊されるおそれがある。
このオーバーヒート対策の一般的な方法として、短縮パルス駆動によるガス濃度検知方法がある。この方法では、QCLにパルス駆動電流を与える。パルス幅はQCLがオーバーヒートを起こさないように、デューティ比を比較的自由に設定することができる。
このパルス駆動電流は、測定対象ガスの吸収がある波長を発光するように精密に制御されている。そして、測定対象ガスがないときは受光光量が最大であり、測定対象ガスがあるときは受光光量が低下する。測定対象ガスの濃度によって、受光光量の低下の度合が変化するので、この変化量を検出することで、ガス濃度を測定することができる。
特開平7−151681号公報(段落[0004],[0030]、図6,図7等) 特開2009−47677号公報(段落[0029]〜[0038]、図1〜図7等) 特開2010−266303号公報(段落[0033]、図1等)
排ガスを分析するレーザ式ガス分析計は、煙道近傍に設置されることが多い。煙道は高温な排ガスが流通していることもあり、煙道周囲は高温環境となる。さらに通常煙道は、外気に曝されていることが多く、レーザ式ガス分析計も外気に曝されることになる。この場合、風等の外気の影響によりにレーザ式ガス分析計の周囲の温度が安定せずに常に変化する。
従来技術としてオーバーヒート対策の一般的な方法である短縮パルス駆動によるガス濃度検知について説明したが、電流値が精密に制御されていても、QCLの発熱量が大きい点に加え、煙道周囲は不安定な高温環境であり、周囲温度の影響により、QCLの発振波長も影響を受ける。所望の波長が発振できず、正確なガス濃度の測定が困難になるという課題が知見された。
また、特許文献3の方法では、波長走査と高周波変調を組み合わせた方式であるため、点灯時間をパルス状にしても、パルスの出現周波数を変調周波数よりも大きくする必要、つまり停止時間よりも発光時間を長くする必要があり、例えば、高温のガスが流通するような周囲温度が高い環境では、適用することができないという課題が知見された。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、QCLのように発熱量の大きい中赤外レーザ素子を有し、さらに周囲温度が変化する環境にあっても、パルス駆動と波長スキャンを組み合わせることで、中赤外レーザ素子発熱抑制と中赤外レーザ素子温度制御を両立してレーザ光の発振波長を一定にし、正確なガス濃度測定を可能としたレーザ式ガス分析計を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、
測定対象ガスの光吸収スペクトルの中心波長を含む中赤外領域の波長のレーザ光を出射する中赤外レーザ素子と、測定対象ガスの光吸収スペクトルの中心波長と略一致する波長のレーザ光を出射する基準温度となるように前記中赤外レーザ素子の温度調節を行う温度調節部と、を有する中赤外レーザ発光部と、
前記中赤外レーザ素子が前記基準温度となるように前記温度調節部を制御する温度制御部と、パルス状のパルス駆動波形、および、波長を連続的に変化させる波長スキャン波形をともに含むようなレーザ駆動信号を前記中赤外レーザ発光部へ出力する発光駆動部と、を有する中赤外レーザ駆動部と、
前記中赤外レーザ発光部より出射されたレーザ光をコリメートして測定対象ガスを含むガスが存在する測定対象空間に照射する発光側光学部と、
前記発光側光学部より照射されたレーザ光を集光する受光側光学部と、
前記受光側光学部より集光されたレーザ光を受光して電気的な中赤外受光信号として出力する中赤外受光部と、
前記中赤外受光部より出力された前記中赤外受光信号から前記波長スキャン波形の信号成分を抽出し、前記波長スキャン波形の信号成分から測定対象ガスによる光吸収の影響を受けた逆ピークを検出し、前記逆ピークの変化に基づいて前記中赤外レーザ素子を基準温度へ近づける修正温度信号を前記温度制御部へ送信する温度修正演算部と、
前記中赤外受光部より出力された前記中赤外受光信号から前記パルス駆動波形の信号成分を抽出し、前記パルス駆動波形の信号成分から測定対象ガスによる光吸収の影響を受けたパルス波高の変化量を算出し、前記パルス波高の変化量から測定対象ガスのガス濃度を演算するガス濃度演算部と、
を備えることを特徴とするレーザ式ガス分析計とした。
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載のレーザ式ガス分析計において、
前記温度修正演算部の修正温度信号は、前記波長スキャン波形の開始時間から、測定対象ガスによる光吸収の影響を受けた逆ピークのボトムが出現するまでの時間を、波長スキャンのスキャン時間の半分の時間へ近づけるようにして、前記中赤外レーザ素子を基準温度へ近づける信号とすることを特徴とするレーザ式ガス分析計とした。
本発明によれば、QCLのように発熱量の大きい中赤外レーザ素子を有し、さらに周囲温度が変化する環境にあっても、パルス駆動と波長スキャンを組み合わせることで、中赤外レーザ素子発熱抑制と中赤外レーザ素子温度制御を両立してレーザ光の発振波長を一定にし、正確なガス濃度測定を可能としたレーザ式ガス分析計を提供することができる。
本発明を実施するための第1の形態に係るレーザ式ガス分析計の構成図である。 中赤外レーザ発光部および中赤外レーザ駆動部のブロック図である。 レーザ駆動信号の説明図である。 中赤外受光部および信号処理・駆動部のブロック図である。 中赤外受光信号の説明図である。 スキャン波形を用いる温度修正の説明図であり、図6(a)は温度上昇時の温度修正の説明図、図6(b)は温度下降時の温度修正の説明図である。 本発明を実施するための第2の形態に係るレーザ式ガス分析計の構成図である。 アンモニア(NH)の光吸収スペクトルを示す図である。 差分吸収方式による濃度測定原理を示す図である。 周波数変調方式による濃度測定原理を示す図である。 特許文献2に記載された従来技術のレーザ式ガス分析計の構成図である。 二酸化硫黄(SO)の光吸収スペクトルを示す図である。 特許文献3に記載された従来技術のQCL発熱量低減のための、レーザ素子に対する駆動信号を示す図である。
以下、図に沿って本発明を実施するための第1の形態について説明する。図1は本形態に係るレーザ式ガス分析計の全体的な構成を示している。レーザ式ガス分析計1は、発光部10、受光部20、通信線30を備える。このうち発光部10、受光部20は煙道に固定されている。
発光部10は、さらに発光部ケース11、中赤外レーザ発光部12、発光側光学部13、発光部ウィンドウ14、中赤外レーザ駆動部15を備えている。受光部20は、さらに受光部ケース21、中赤外受光部22、受光側光学部23、受光部ウィンドウ24、信号処理・駆動部25を少なくとも備え、出力部26によりガス濃度を通知する。
図1において、発光部フランジ201a、受光部フランジ201bは、例えば、測定対象ガスが内部を通過する煙道等の煙道壁101a,101bに、溶接等によってそれぞれ固定されている。
発光部フランジ201aには取付金具202aを介して発光部ケース11が取り付けられており、発光部ケース11の内部には、中赤外レーザ光を出射する中赤外レーザ発光部12、レンズである発光側光学部13が配置されている。そして、中赤外領域の波長の光を透過する発光部ウィンドウ14を配置することにより、発光部ケース11内部の気密が確保されている。
中赤外レーザ発光部12には、中赤外レーザ駆動部15が接続されている。この中赤外レーザ駆動部15から中赤外レーザ発光部12へ電流信号が送られて中赤外レーザ発光部12が中赤外光を出射するように構成されている。
中赤外レーザ発光部12からの出射光は、レンズである発光側光学部13によりコリメートされて平行光となり、発光部フランジ201aの中心を通って中赤外レーザ光40として煙道内部300に照射される。この中赤外レーザ光40は、煙道内部300に存在する測定対象ガスによる光吸収の影響を受ける。
一方、受光部フランジ201bには、取付金具202bを介して、受光部ケース21が取り付けられている。煙道内部300を通過した中赤外レーザ光40は、受光部ケース21の内部に気密に配置された受光側光学部23により集光されて中赤外受光部22により受光される。中赤外領域の波長の光を透過するウィンドウ24を配置することにより、受光部ケース21内部の気密が確保されている。
続いて各部の動作の詳細について説明する。中赤外レーザ発光部12は、詳しくは図2で示すように、中赤外レーザ素子12a、温度検出部(サーミスタ)12b、加温・冷却部(ペルチェ素子)12cを備える。本願発明の温度調節部は、本形態では温度検出部(サーミスタ)12bおよび加温・冷却部(ペルチェ素子)12cを合わせたものである。
中赤外レーザ素子12aは、詳しくは量子カスケードレーザ(QCL)素子である。本形態では測定対象ガスの具体例として二酸化硫黄ガス(SOガス)を測定する。量子カスケードレーザ(QCL)素子は、測定対象ガス(SOガス)の光吸収スペクトルを含む中赤外領域の波長3〜10μmの中赤外レーザ光を出射する。
また、中赤外レーザ駆動部15は、さらに指令信号発生部15a、レーザ駆動信号発生部15b、温度制御部15cを備える。本願発明の発光駆動部は、本形態では指令信号発生部15aおよびレーザ駆動信号発生部15bを組み合わせたものである。
中赤外レーザ駆動部15は、温度によって中赤外レーザ光の発光波長を可変とすることができる。図2において、中赤外レーザ素子12aの温度は、サーミスタ等の温度検出部12bを用いて検出される。この温度検出部12bは、中赤外レーザ駆動部15の温度制御部15cに接続されている。
この温度制御部15cは、中赤外レーザ素子12aの発光波長の安定化および発光波長の調節のため、サーミスタ等の温度検出部12bから得られる抵抗値が一定になるようにPID制御等を行ってペルチェ素子等の加温・冷却部12cの温度制御を行い、中赤外レーザ素子12aの温度を調節することで、発光波長を制御する。
また、中赤外レーザ駆動部15は、レーザ駆動信号により中赤外レーザ光の発光波長を可変とすることができる。中赤外レーザ駆動部15は、中赤外領域の波長を発光するため、電流によるレーザ駆動信号を制御して、発光波長が測定対象ガス(SOガス)の吸光特性に一致する波長およびその周辺領域の波長にてスキャンするように中赤外レーザ発光部12を発光させる。
続いて、このレーザ駆動信号の駆動波形を決定する指令信号発生部15aについて述べる。指令信号発生部15aでは図3のような指令信号を生成する。この指令信号では、パルス状のパルス駆動波形、および、波長を連続的に変化させる波長スキャン波形を含む。
図3に示すレーザ駆動信号のうち、パルス状のパルス駆動波形では、同じ波長のパルスが複数連続して出力される波形である。このパルス駆動波形の波長は、測定対象ガス(SOガス)のガス吸収が最も強い波長となるように調整する。
また、波長を連続的に変化させる波長スキャン波形は、測定対象ガス(SOガス)による吸収が無い部分も含めて波長スキャンを行う。このスキャン波形では、波長スキャン時間が時間Tであるときに半分の時間(T/2)の波長(図3のA点)と、測定対象ガス(SOガス)の吸光特性に一致する中心波長と、が一致するようにスキャン幅が調整されている。
このような指令信号を一定周期ごとに繰り返しレーザ駆動信号発生部15bへ入力すると、レーザ駆動信号発生部15bが、この指令信号をV/I変換してパルス状のパルス駆動波形、および、波長を連続的に変化させる波長スキャン波形をともに含むような電流のレーザ駆動信号として中赤外レーザ素子12aに供給する。レーザ素子12aは、図3で示すような波長の中赤外レーザ光40を出力する。
続いて、本発明の中赤外受光部22について説明する。図4に示すように、測定対象ガス(SOガス)が存在する空間を介して伝播され、ガス吸収を受けた中赤外レーザ光40は受光側光学部23により集光されてから中赤外受光部22により受光される。中赤外受光部22は、受光量に応じて電気信号による中赤外受光信号を出力する。
中赤外受光部22は中赤外領域の波長に感度を持つMCT(Mercury Cadmium Tellurium)光導電素子等であり、中赤外受光部22が出力した中赤外受光信号は、信号処理・駆動部25へ入力される。信号処理・駆動部25は、中赤外受光部22の中赤外受光信号を信号処理し、測定対象ガスの光吸収による信号変化成分を抽出して、測定対象ガスのガス濃度を算出し、また、中赤外レーザ素子の発熱抑制と発振波長安定化の制御も行う。
続いて、信号処理・駆動部25の詳細について説明する。信号処理・駆動部25は、図4で示すように、I/V変換部25a、フィルタ部25b、初期設定記憶部25c、演算部25dを備える。初期設定記憶部25cでは、工場出荷時や校正時において登録したものであって、最大受光光量Pmax,スパン校正値GAが記憶されている。最大受光光量Pmaxは、測定対象空間において測定対象ガスがないときに図3で示すような波長の中赤外レーザ光40を受光したときのパルスの最大波高を表す。
中赤外受光部22から信号処理・駆動部25へ入力された中赤外受光信号は、I/V変換部25aによって電流信号から電圧信号に変換される。そしてフィルタ25bによりノイズ除去された電圧信号が演算部25dに入力される。この電圧信号は、図5に示すような出力波形を有する。この演算部25dにおいて測定対象ガスのガス濃度が演算され、また、発熱抑制と発振波長安定化の制御が行われる。
続いて、このようなレーザ式ガス分析計における演算部25dによる処理について説明する。まず演算部25dが、中赤外レーザ素子12aに対する発熱抑制と発振波長安定化の制御のため、本発明の温度修正演算部として機能する。
演算部25dは、中赤外受光部22より出力され、フィルタ25bによりノイズ除去された図5の中赤外受光信号から波長スキャン波形の信号成分を抽出する。例えば、演算部25dが内蔵するメモリに波長スキャン波形を表すデジタルデータを登録する。ある時間における波高を表すデータであり、スキャン幅に含まれる期間の多数のデータが登録される。
演算部25dは、波長スキャン波形の信号成分から測定対象ガスによる光吸収の影響を受けた逆ピークを検出する。詳しくは登録したデジタルデータから逆ピークのボトムが出現するまでの時間を選択する。この時間は、図6(a)で示すTや図6(b)で示すTのようにスキャン波形の始まりから逆ピークの中心が出現するまでの時間となる。
演算部25dは、逆ピークの変化に基づいて中赤外レーザ素子が基準温度となるように温度制御部を制御する。例えば、図6(a)で示すように、中赤外レーザ素子12aの温度上昇時のスキャン波形は、矢印aのように上側へずれるため、測定対象ガス(SOガス)が吸収する中心波長に速く到達して、時間Tで逆ピークが出現する。そこで、時間的に速く逆ピークが出現したならば、中赤外レーザ素子12aの温度を下げるような温度修正信号を、通信線30を介して温度制御部15cへ送信すると、温度制御部15cは中赤外レーザ素子12aの温度を下げるように加温・冷却部12cを駆動する。時間Tが少ないほど、温度を多く下げるようにする。例えば、(T/2−T)に係数を乗じて下げる温度を算出しても良い。この冷却により中赤外レーザ素子12aの温度が下がって、スキャン波形も矢印bのように通常時に戻って、逆ピークの出現時間はT/2へもどる。
また、図6(b)で示すように、中赤外レーザ素子12aの温度下降時のスキャン波形は、矢印bのように下側へずれるため、測定対象ガス(SOガス)が吸収する中心波長に遅く到達して、時間Tで逆ピークが出現する。そこで、時間的に遅く逆ピークが出現したならば、中赤外レーザ素子12aの温度を上げるような温度修正信号を、通信線30を介して温度制御部15cへ送信すると、温度制御部15cは中赤外レーザ素子12aの温度を上げるように加温・冷却部12cを駆動する。時間Tが多いほど、温度を多く上げるようにする。例えば、(T−T/2)に係数を乗じて上げる温度を算出しても良い。加温により中赤外レーザ素子12aの温度が上がって、スキャン波形も矢印aのように通常時に戻って、逆ピークの出現時間はT/2へもどる。このようにしてガス濃度の測定に影響のない範囲に収まるように中赤外レーザ素子12aの温度を調節する。
これらのような温度修正信号は、波長スキャン波形の開始時間から、測定対象ガスによる光吸収の影響を受けた逆ピークのボトムが出現するまでの時間を、波長スキャンのスキャン時間の半分の時間へ近づけるようにして加温・冷却を行う信号となる。このような温度修正を、スキャン波形を取得する毎に行うことで、中赤外線レーザ素子は常に基準温度に維持され、発光波長が一定に維持される。これにより中赤外線レーザ素子の温度による発振波長制御を実現する。
続いて演算部25dが本発明のガス濃度演算部として機能する。
まず、演算部25dは、中赤外受光部22から受信した中赤外受光信号からパルス駆動波形の信号成分を抽出する。例えば、演算部25dが内蔵するメモリにデジタルデータとして登録する。このパルス駆動波形のパルス幅は十分に短いため、QCLなどのレーザ発光素子12aが発光したときの発熱抑制を実現している。
演算部25dは、パルス駆動波形の信号成分から測定対象ガスによる光吸収の影響を受けたパルス波高の変化量を算出する。パルス状であるから値の小さいデジタルデータと値の大きいデジタルデータが取得されるが、この中から値の大きいデジタルデータを選択する。この値の大きいデジタルデータは、一周期のパルス駆動波形で複数パルス分(図5では10パルス分)取得されるため、これらの平均値をパルス波高Pとする。そして、演算部25dは、初期設定記憶部25cに記憶されている最大受光光量Pmaxを読み出し、次式によりパルス波高の変化量を取得する。
[数1]
パルス波高の変化量=(Pmax−P)
演算部25dは、パルス波高Pの変化量から測定対象ガス濃度を演算する。この際、演算部25dは、初期設定記憶部25cに記憶されているスパン校正値GAを読み出し、次式によって光量を補正した値をガス濃度として出力する。
[数2]
測定対象ガス濃度(補正後)=(Pmax−P)×GA
この補正後の測定対象ガス濃度を出力部26へ送る。出力部26は、例えば、ディスプレイ装置や警報装置などであり、あるいは、他のコンピュータへ送信する送信装置などである。測定対象ガスの濃度の検出はこのように行われる。
本発明によれば、測定対象ガスの濃度を検出するためのパルス駆動波形と、発振波長を制御するための波長スキャン波形とを組み合わせ、周囲温度が大きく変化する環境下においてQCLのように発熱量が大きいレーザ素子を用いても、パルス駆動により発熱を少なくする駆動とし、また、波長スキャンにより発振波長が一定となるように制御することで、オーバーヒートすることがない。さらに、パルス駆動されるパルスの波長が、測定対象ガス(SOガス)が吸収する中心波長と一致するように制御され、中赤外領域に吸収をもつ測定対象ガス(SOガス)の濃度を正確に測定することが可能となる。
続いて本発明を実施するための第2の形態について図を参照しつつ説明する。まず、図7はこの第2の形態に係るレーザ式ガス分析計のブロック図を示している。このうち、レーザ式ガス分析計2は、発光部10’、受光部20’、通信線30を備える。発光部10’、受光部20’は煙道に固定されている。
発光部10’は、さらに発光部ケース11、中赤外レーザ発光部12、発光側光学部13’、発光部ウィンドウ14、中赤外レーザ駆動部15を備えている。受光部20’は、さらに受光部ケース21、中赤外受光部22、受光側光学部23’、受光部ウィンドウ24、信号処理・駆動部25を少なくとも備え、出力部26によりガス濃度を通知する。
このような第2の形態は、第1の形態と比較すると、発光部10’の発光側光学部13’と、受光部20’の受光側光学部23’と、のみが相違するが、他は同じ構成であり、同じ構成には同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。以下、相違点である発光部10’の発光側光学部13’と、受光部20’の受光側光学部23’について説明する。
本形態では、発光部10’の発光側光学部13’、および、受光部20’の受光側光学部23’はともに放物面鏡である。中赤外レーザ発光部12からの出射光は、発光側光学部13’としての放物面鏡によりコリメートされて平行光となり、発光部フランジ201aの中心を通って中赤外レーザ光40として煙道内部300に照射される。
この中赤外レーザ光40は、煙道内部300に存在する測定対象ガスによる光吸収の影響を受ける。そして、煙道内部300を通過した中赤外レーザ光40は、受光部20’の中の放物面鏡である受光側光学部23’より集光されて中赤外受光部22により受光される。以下の温度制御や濃度演算は第1の形態と同じである。本形態はこのようなものである。なお、この他にも、発光部の発光側光学部がレーザ光をコリメートし、および、受光部の受光側光学部が集光をする構成を採用しても本発明の実施は可能である。これら第1,第2の形態ではいずれも本発明の効果を奏しうる。
以上本発明について説明したが、本発明は各種の変形形態が可能である。例えば、本発明のレーザ式ガス分析計によれば、測定対象ガスが、例示的に硫化酸素ガス(SO)であるものとして説明したが、これに限定される趣旨ではなく、中赤外領域の波長に光吸収スペクトルを持つCO、CO、CH、SO,NO,NO等のガスでもよい。その場合、他の成分のガスを検出できるような波長を有するレーザ発光部が採用され、この波長で検出できるように演算部の演算処理内容が変更されて用いられるというものである。
本発明のレーザ式酸素ガス分析計は、船舶排ガス測定用として最適である。その他、鉄鋼用ガス分析[高炉、転炉、熱処理炉、焼結(ペレット設備)、コークス炉]、青果貯蔵及び熟成、生化学(微生物)[発酵]、大気汚染[焼却炉、排煙脱硫・脱硝]、自動車排ガス(除テスタ)、防災[爆発性ガス検知、有毒ガス検知、新建築材燃焼ガス分析]、植物育成用、化学用分析[石油精製プラント、石油化学プラント、ガス発生プラント]、環境用[着地濃度、トンネル内濃度、駐車場、ビル管理]、理化学各種実験用などの分析計としても有用である。
1,2:レーザ式ガス分析計
10,10’:発光部
11:発光部ケース
12:中赤外レーザ発光部
13,13’:発光側光学部
14:発光部ウィンドウ
15:中赤外レーザ駆動部
20,20’:受光部
21:受光部ケース
22:中赤外受光部
23,23’:受光側光学部
24:受光部ウィンドウ
25:信号処理・駆動部
26:出力部
30:通信線
40:中赤外レーザ光
101a,101b:煙道壁
201a:発光部フランジ
201b:受光部フランジ
202a:取付金具
202b:取付金具
300:煙道内部(測定対象空間)

Claims (2)

  1. 測定対象ガスの光吸収スペクトルの中心波長を含む中赤外領域の波長のレーザ光を出射する中赤外レーザ素子と、測定対象ガスの光吸収スペクトルの中心波長と略一致する波長のレーザ光を出射する基準温度となるように前記中赤外レーザ素子の温度調節を行う温度調節部と、を有する中赤外レーザ発光部と、
    前記中赤外レーザ素子が前記基準温度となるように前記温度調節部を制御する温度制御部と、パルス状のパルス駆動波形、および、波長を連続的に変化させる波長スキャン波形をともに含むようなレーザ駆動信号を前記中赤外レーザ発光部へ出力する発光駆動部と、を有する中赤外レーザ駆動部と、
    前記中赤外レーザ発光部より出射されたレーザ光をコリメートして測定対象ガスを含むガスが存在する測定対象空間に照射する発光側光学部と、
    前記発光側光学部より照射されたレーザ光を集光する受光側光学部と、
    前記受光側光学部より集光されたレーザ光を受光して電気的な中赤外受光信号として出力する中赤外受光部と、
    前記中赤外受光部より出力された前記中赤外受光信号から前記波長スキャン波形の信号成分を抽出し、前記波長スキャン波形の信号成分から測定対象ガスによる光吸収の影響を受けた逆ピークを検出し、前記逆ピークの変化に基づいて前記中赤外レーザ素子を基準温度へ近づける修正温度信号を前記温度制御部へ送信する温度修正演算部と、
    前記中赤外受光部より出力された前記中赤外受光信号から前記パルス駆動波形の信号成分を抽出し、前記パルス駆動波形の信号成分から測定対象ガスによる光吸収の影響を受けたパルス波高の変化量を算出し、前記パルス波高の変化量から測定対象ガスのガス濃度を演算するガス濃度演算部と、
    を備えることを特徴とするレーザ式ガス分析計。
  2. 請求項1に記載のレーザ式ガス分析計において、
    前記温度修正演算部の修正温度信号は、前記波長スキャン波形の開始時間から、測定対象ガスによる光吸収の影響を受けた逆ピークのボトムが出現するまでの時間を、波長スキャンのスキャン時間の半分の時間へ近づけるようにして、前記中赤外レーザ素子を基準温度へ近づける信号とすることを特徴とするレーザ式ガス分析計。
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