JP2017195373A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】陽極3と陰極4との間に、少なくとも第一発光層51及び第二発光層52を備える有機エレクトロルミネッセンス素子1であって、前記第一発光層51は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、前記第二発光層52は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子1。
【選択図】図1
Description
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、下記式(N−4)を満たすことを特徴とする。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
ただし、前記式(N−4)において、μ(e)H1は前記第一ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。
AfH2≧AfH3 (N−1)
μ(e)H2>μ(e)H3 (N−2)
Eg(S)H2<Eg(S)H3 (N−3)
ただし、前記式(N−1)において、AfH2は前記第二ホスト材料のアフィニティであり、AfH3は前記第三ホスト材料のアフィニティである。また、前記式(N−2)において、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。前記式(N−3)において、Eg(S)H2は前記第二ホスト材料の一重項エネルギーであり、Eg(S)H3は前記第三ホスト材料の一重項エネルギーである。
ΔEg(S)=Eg(S)H3−Eg(S)H2>0.2〔eV〕 (N−31)
IpH1<IpH3 (N−5)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二ホスト材料の三重項エネルギーは、前記第一ホスト材料の三重項エネルギーよりも大きいことが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、さらに第三発光層を備えることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第三発光層は、前記第一発光層及び前記第二発光層よりも陽極側に設けられることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第三発光層は、前記第一発光層及び前記第二発光層よりも陰極側に設けられることが好ましい。
以下、本発明に係る有機EL素子の素子構成について説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機化合物層を備える。この有機化合物層は、有機化合物で構成される複数の層を有する。有機化合物層は、無機化合物を含んでいてもよい。
有機化合物層は、少なくとも第一発光層、及び第二発光層を含む複数の発光層を有する。第二発光層に対して第三発光層が隣接してもよい。
その他、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔障壁層、電子障壁層、スペース層等の公知の有機EL素子で採用される層を有していてもよい。
(a)陽極/第一発光層/第二発光層/陰極
(b)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/陰極
(c)陽極/第一発光層/第二発光層/電子注入・輸送層/陰極
(d)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/電子注入・輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/障壁層/第二発光層/電子注入・輸送層/陰極
(f)陽極/第一発光層/第二発光層/第三発光層/陰極
(g)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/第三発光層/陰極
(h)陽極/第三発光層/第一発光層/第二発光層/電子注入・輸送層/陰極
(i)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/第三発光層/電子注入・輸送層/陰極
(j)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/障壁層/電子注入・輸送層/陰極
(k)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/障壁層/第三発光層/電子注入・輸送層/陰極
などの構造を挙げることができる。
なお、上記「発光層」とは、一般的にドーピングシステムが採用されており、ホスト材料とドーパント材料を含む有機層である。ホスト材料は、一般的に電子と正孔の再結合を促し、再結合により生じた励起エネルギーをドーパント材料に伝達させる。ドーパント材料としては、量子収率の高い化合物が好まれ、ホスト材料から励起エネルギーを受け取ったドーパント材料は、高い発光性能を示す。
また、上記「正孔注入・輸送層」は「正孔注入層および正孔輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味し、「電子注入・輸送層」は「電子注入層および電子輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味する。ここで、正孔注入層および正孔輸送層を有する場合には、陽極側に正孔注入層が設けられていることが好ましい。また、電子注入層および電子輸送層を有する場合には、陰極側に電子注入層が設けられていることが好ましい。
また、本発明において電子輸送層といった場合には、発光層と陰極との間に存在する電子注入輸送層のうち、最も電子移動度の高い有機層をいう。電子注入輸送層が一層で構成されている場合には、当該層が電子輸送層である。また、燐光素子においては、構成(i)に示すように発光層で生成された励起エネルギーの拡散を防ぐ目的で必ずしも電子移動度が高くない障壁層を発光層と電子輸送層との間に採用することがあり、発光層に隣接する有機層が電子輸送層に必ずしも該当しない。
図1に、本発明の第一実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透光性の基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット5を備え、発光ユニット5は、陽極3側から順に正孔輸送層6、第一発光層51、第二発光層52、及び電子輸送層7を備える。
本実施形態の有機EL素子1において、第一発光層51は、第一ホスト材料および第一ドーパント材料を含んでいる。第二発光層52は、第二ホスト材料、第三ホスト材料および第二ドーパント材料を含んでいる。
〔第一ホスト材料〕
第一ホスト材料は、モノアミン化合物、ジアミン化合物、トリアミン化合物、テトラミン化合物、カルバゾール基で置換されたアミン化合物などのアミン誘導体、および縮合芳香族環を有する化合物から選ばれることが好ましい。中でも、カルバゾール基で置換されたアミン化合物または縮合芳香族環を有する化合物が好ましい。
アミン誘導体としては、下記式(1)〜(7)で示される化合物が好ましい。
この芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、9,9’−ジメチルフルオレン基、フェナントレン基などが挙げられる。
芳香族複素環基としては、チオフェンの一価残基、ベンゾチオフェンの一価残基、ジベンゾチオフェンの一価残基、フランの一価残基、ベンゾフランの一価残基、ジベンゾフランの一価残基などが挙げられる。
式(2)〜(7)中、Ar5〜Ar16は、それぞれ置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40の芳香族複素環基である。置換基として芳香族アミノ基を有し、さらに置換基を有していてもよい環形成炭素数8〜40の芳香族炭化水素基、及び、置換基として芳香族複素環基を有し、さらに置換基を有していてもよい環形成原子数8〜40の芳香族炭化水素基のいずれかであっても好ましい。
式(1)〜(7)中、r1,r6〜r8,r11,r12,r19,r20,r23は、1〜4の整数を表し、r9,r10,r13〜r15,r18,r21,r22は1〜3の整数を表す。
そして、式(1)〜(7)中、Ar1〜Ar16は、ラダー型フラン基でも良い。
また、式(1)〜(7)中、Ar1とAr2、Ar3とAr4、Ar5とAr6、Ar8とAr9、Ar10とAr11、Ar12とAr13、Ar15とAr16は互いに結合し、環を形成しても良い。
式(2)、(4)、(6)、(7)中、L1〜L7は、単結合または炭素数1〜30の連結基である。
ここで、例えば、L1が単結合の場合とは、N原子とフェニレン環が直接結合した構造である。
式(4)、(6)、(7)中、X1〜X6は、それぞれ硫黄原子、酸素原子、及びモノ芳香族炭化水素基により置換されたN原子のうちのいずれかである。
式(1)において、Ar1及びAr2に直接結合するN原子に直接結合されるフェニレン基は、さらに、Ar1またはAr2と直接結合されていてもよい。また、式(1)において、Ar3及びAr4に直接結合するN原子に直接結合されるフェニレン基は、さらに、Ar3またはAr4と直接結合されていてもよい。
そして、式(1)において、Ar2及びAr3は環形成炭素数6〜40の縮合芳香族炭化水素であることが好ましい。Ar2及びAr3はさらに、ナフチル基であることが好ましい。
式(2)において、Ar5及びAr6に直接結合するN原子にL1を介して結合されるフェニレン基は、さらにAr5またはAr6と直接結合されていてもよい。
また、「芳香族炭化水素基」には、特に指定しない限り、非縮合芳香族炭化水素基だけでなく、縮合芳香族炭化水素基も含む。「芳香族複素環基」には、特に指定しない限り、非縮合芳香族複素環基だけでなく、縮合芳香族複素環基も含む。
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子が置換したことを意味する。
以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
本発明において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、三重水素(tritium)、を包含する。
このような縮合芳香族環を有する化合物としては、例えば、下記式(10A)、(10B)及び(10C)で表される多環芳香族化合物からなる群から選ばれる化合物が好ましい。
Ra−Ar101−Ar102−Rb ・・・(10B)
Ra−Ar101−Ar102−Ar103−Rb ・・・(10C)
置換もしくは無置換のベンゼン環、
置換もしくは無置換のナフタレン環、
置換もしくは無置換のクリセン環、
置換もしくは無置換のフルオランテン環、
置換もしくは無置換のフェナントレン環、
置換もしくは無置換のベンゾフェナントレン環、
置換もしくは無置換のジベンゾフェナントレン環、
置換もしくは無置換のトリフェニレン環、
置換もしくは無置換のベンゾ[a]トリフェニレン環、
置換もしくは無置換のベンゾクリセン環、
置換もしくは無置換のベンゾ[b]フルオランテン環、
置換もしくは無置換のフルオレン環、及び、
置換もしくは無置換のピセン環から選択される多環芳香族骨格部を表すことが好ましい。
さらにRa及びRbの置換基は芳香族炭化水素基ではないものが好ましく、Ar101,Ar102,Ar103,Ra及びRbが同時に置換もしくは無置換のベンゼン環でないものが好ましい。
縮合芳香族複素環としては、例えば、カルバゾール環およびジベンゾフラン環が挙げられる。
一方、第一ホスト材料の三重項エネルギー(Eg(T))は、第一発光層51に隣接する正孔輸送層6の正孔輸送材料の三重項エネルギー(Eg(T))より小さいことが好ましい。これにより、第一発光層51に隣接する正孔輸送層6に三重項エネルギーが拡散することを避けることができ、発光効率等を向上させることができる。
なお、本発明において、三重項エネルギーとは、最低励起三重項状態と基底状態とのエネルギー差をいう。
第一ドーパント材料は、燐光発光性材料であり、金属錯体であることが好ましく、当該金属錯体は、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)のうちの少なくともいずれかの金属を含むことが好ましい。当該金属錯体は、さらに好ましくは、式(20)で示すオルトメタル化錯体である。
ここで、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が好ましい。
芳香族複素環基としては、チエニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が好ましい。
芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に置換される置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロアルキル基、シアノ基等が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子等が好ましい。
炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が好ましい。
アルケニル基としては、ビニル基等が好ましい。
炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が好ましい。
炭素数1〜30のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が好ましい。
ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が好ましい。
アシル基としては、アセチル基等が好ましい。
ハロアルキル基としては、トリフルオロメチル基等が好ましい。
A32は、A31に結合する芳香族複素環基であり、芳香族複素環基を形成する原子として窒素を含み置換基を有していてもよい。
芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジン基、トリアジン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリン基、フェナントリジン基等が好ましい。
A32に置換される置換基としては、A31に置換される置換基と同様である。
A31を含む環とA32を含む環は、さらに環の他の部位同士で結合して環構造を結合して、一つの縮合環や不飽和構造を有する環を形成してもよい。このような縮合環としては、例えば、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
Qは、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、及び白金(Pt)のうちのいずれかである。
Lは、2座型の配位子である。2座型の配位子としては、アセチルアセトナート等のβ−ジケト型の配位子又はピロメリット酸等が好ましい。
式(20)中、m及びnは整数を表し、Qが2価金属の場合は、n=2かつm=0であり、Qが3価金属の場合は、n=3かつm=0、又はn=2かつm=1である。
第二発光層は、第二ホスト材料と、第三ホスト材料と、第二ドーパント材料とを含む。
第一発光層と第二発光層の両方から発光を得るためには、第二発光層の第二ホスト材料に電子輸送性のホスト材料を用いることが好ましい。
また、第二ホスト材料は、第一ホスト材料よりもアフィニティとイオン化ポテンシャルとが大きいことが好ましい。第二ホスト材料が、第一ホスト材料よりもアフィニティが大きい場合、そのアフィニティの差分により、第一発光層51を電子障壁層として機能させることができる。第二ホスト材料が、第一ホスト材料よりもイオン化ポテンシャルが大きい場合、そのイオン化ポテンシャルの差分により、第二発光層52を正孔障壁層としても機能させることができる。
その結果、第一発光層51と第二発光層52との界面付近で励起子を良好に生成させることができ、輝度を上昇させたとしても色ずれを抑制することができる。
子に電子を一つ与えた時に放出または吸収されるエネルギーをいい、放出の場合は正、吸収の場合は負と定義する。
アフィニティは、イオン化ポテンシャル(Ip)と一重項エネルギー(Eg(S):最低励起一重項状態と基底状態とのエネルギー差)とにより次のように規定する。
Af=Ip−Eg(S)
ここで、イオン化ポテンシャル(Ip)は、ホスト材料の化合物から電子を取り去ってイオン化するために要するエネルギーを意味し、例えば、紫外線光電子分光分析装置(AC−3、理研(株)計器)で測定した値である。
一重項エネルギー(Eg(S))は、伝導レベルと価電子レベルとの光学エネルギー差をいい、例えば、各ホスト材料のトルエン希薄溶液の吸収スペクトルの長波長側接線とベースライン(吸収ゼロ)との交点の波長値をエネルギーに換算して求める。
第二ホスト材料と第三ホスト材料とは、下記式(N−1)を満たし、かつ下記式(N−2)および(N−3)の少なくともいずれかを満たすことが好ましい。
AfH2≧AfH3 (N−1)
μ(e)H2>μ(e)H3 (N−2)
Eg(S)H2<Eg(S)H3 (N−3)
ただし、前記式(N−1)において、AfH2は前記第二ホスト材料のアフィニティであり、AfH3は前記第三ホスト材料のアフィニティである。また、前記式(N−2)において、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。前記式(N−3)において、Eg(S)H2は前記第二ホスト材料の一重項エネルギーであり、Eg(S)H3は前記第三ホスト材料の一重項エネルギーである。
例えば、第一発光層の発光強度を低下させ、第二発光層の強度を増加させるためには、正孔と電子との再結合領域を第二発光層側に移動させる必要がある。再結合領域の第二発光層側への移動は、第二発光層の電子注入を弱めることにより可能となる。
本実施形態の第二発光層において、第三ホスト材料のアフィニティAfH3は、前記式(N−1)に示すように、第二ホスト材料のアフィニティAfH2以下であることが好ましい。すなわち、第三ホスト材料は、第二ホスト材料に対して電子注入を抑制することが好ましい。
ΔEg(S)=Eg(S)H3−Eg(S)H2>0.2〔eV〕 (N−31)
また、第二ホスト材料の電子移動度μ(e)H2と、第三ホスト材料の電子移動度μ(e)H3とは、下記式(N−21)を満たすことが好ましい。
Δμ(e)=μ(e)H2/μ(e)H3>102cm2/Vs (N−21)
移動度=(測定対象材料層の膜厚)2/(応答時間×電圧)
第一発光層の第一ホスト材料の電子移動度μ(e)H1に対し、第二ホスト材料の電子移動度μ(e)H2および第三ホスト材料の電子移動度μ(e)H3は、下記式(N−4)を満たすことが好ましい。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
IpH1<IpH3 (N−5)
この場合、第一ホスト材料の正孔輸送性が高いため、第三ホスト材料に要求される性能は正孔輸送能の制御と考えられる。一方で、第二ホスト材料に対しては正孔輸送性を有することが望ましい。
正孔移動度μ(h)H1が10−6cm2/Vs以上である第一ホスト材料としては、例えば、前述したアミン誘導体が挙げられる。
AfH1>AfH3 (N−6)
この場合、第三ホスト材料に要求される性能は、第二ホスト材料から第一ホスト材料への電子を制御することにある。このため、第三ホスト材料は、電子ブロック性、すなわち、アフィニティの小さい化合物が望ましい。
正孔移動度μ(h)H1が10−6cm2/Vsより小さい第一ホスト材料としては、例えば、前述した縮合芳香族環を有する化合物が挙げられる。
本実施形態において、第二ホスト材料は、アジン誘導体であることが好ましい。アジン誘導体とは、環を形成する原子として1個以上の窒素原子を含む六員環を含む化合物(含窒素六員環複素環基、ともいう)であり、モノアジン誘導体、ジアジン誘導体、及びトリアジン誘導体のうちのいずれかであることが好ましい。
第二ホスト材料がモノアジン誘導体、ジアジン誘導体、及びトリアジン誘導体のうちのいずれかであるため、電子輸送層7から第一発光層51への電子輸送性が優れる。
第二ホスト材料としては、例えば、式(21)〜(26)で示される化合物であることが好ましい。
芳香族炭化水素基に置換される置換基としては、環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数5〜30の複素環基、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
複素環基に置換される置換基としては、環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数5〜30の複素環基、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい
カルバゾール骨格を有する第二ホスト材料としては、例えば、下記式(27)または(28)で示される化合物であることが好ましい。
R110及びR111は、上記R1と同様である。
n1およびn2は、1〜4の整数のうちのいずれかであり、mは、1〜4の整数のうちのいずれかである。mは、好ましくは、1〜3の整数のうちのいずれかであり、さらに、好ましくは、1又は2である。なお、n2とmの和(n2+m)は、2≦(n2+m)≦5の関係である。
式(12)、(12A)中、Xは、N原子又はCHであり、N原子の数は1〜4である。
式(12)中、R121〜R128は、それぞれ水素原子、芳香族炭化水素基、アルキル基、及び式(12A)の骨格が連結されている構造のいずれかである。
R121〜R128に式(12A)の骨格が連結されている構造は、R121とR122、R122とR123、R123とR124、R125とR126、R126とR127、及びR127とR128のうちの少なくともいずれかが式(12A)の骨格に結合した構造である。
式(12A)中、R129は、水素原子、芳香族炭化水素基、及びアルキル基のうちのいずれかである。
A2は、置換もしくは無置換の環形成炭素数が6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の含窒素複素環基である。
L10は、単結合または連結基である。
連結基としては、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、または
これらの基が互いに2〜5個連結した基のいずれかから誘導される基である。
なお、互いに結合した基は、互いに同一、または異なる。
X1,X2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基のいずかである。
なお、X1が単結合の場合とは、X1に隣接する「A1」と「N」とが直接結合している場合であり、X2が単結合の場合とは、X2に隣接する「A2」と「N」とが直接結合している場合である。
Y1〜Y4は、それぞれ互いに独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基のいずれかである。なお、隣接するY1〜Y4同士が互いに結合を形成し、環構造を形成しても良い。
p,qはそれぞれ1〜4の整数のうちのいずれかであり、r,sはそれぞれ1〜3の整数のうちのいずれかである。
なお、p,qがそれぞれ2〜4の整数のうちのいずれか、r,sが2又は3の整数のいずれかの場合、複数のY1〜Y4はそれぞれ同一でも異なっても良い。
A1,A2,X1,X2,及びY1〜Y4のうちの少なくともいずれかは、モノアジン誘導体、ジアジン誘導体、及びトリアジン誘導体のうちのいずれかから誘導される基である。
Ar22又はAr23はXを含む環と縮合環を形成してもよい。
本実施形態の第三ホスト材料としては、前述した第二ホスト材料との関係を満たすもの、すなわち式(N−1)を満たし、かつ、式(N−2)または(N−3)の少なくともいずれかを満たすものであればよい。例えば、第一ホスト材料で説明した材料や第二ホスト材料で説明した材料のうち、前述した第二ホスト材料との関係を満たすものを挙げることができる。第三ホスト材料は、分子内に五員環構造を含む化合物が好ましい。また、下記一般式(130)で表される骨格を有する化合物でも好ましい。
R130〜R132は、互いに独立して置換もしくは無置換の環形成炭素数が6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。R131およびR132の一部が結合して環構造を形成していてもよい。
本実施形態の第二ドーパント材料は、燐光発光性の金属錯体が好ましい。本実施形態の第二ドーパント材料としては、上記第一ドーパント材料で説明したものと同様のものを用いることができる。具体的には、上記(K−1)〜(K−10)、(K−12)〜(K−14)、(K−23)〜(K−26)、およびIr(Ph−ppy)3が好ましい。
第二ドーパント材料としては、570nm未満の発光ピークを示すことが好ましく、565nm以下の発光ピークを示すことがさらに好ましい。570nm未満の発光ピークを示す発光色としては、例えば、緑色である。
本実施形態の有機EL素子1は、透光性の基板2上に作製する。この透光性の基板2は、有機EL素子を構成する陽極、有機化合物層、陰極等を支持する基板であり、400nm以上700nm以下の可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。
透光性の基板としては、ガラス板やポリマー板などが挙げられる。
ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などを原料として用いてなるものを挙げられる。
またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォンなどを原料として用いてなるものを挙げることができる。
有機EL素子の陽極は、正孔を発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。
陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅などが挙げられる。
発光層からの発光を陽極側から取り出す場合、陽極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□(Ω/sq。オーム・パー・スクウェア。)以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm以上1μm以下、好ましくは10nm以上200nm以下の範囲で選択される。
陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金などが使用できる。
陰極も、陽極と同様に、蒸着法などの方法で、例えば、電子輸送層や電子注入層上に薄膜を形成できる。また、陰極側から、発光層からの発光を取り出す態様を採用することもできる。発光層からの発光を陰極側から取り出す場合、陰極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。
陰極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。
陰極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm以上1μm以下、好ましくは50nm以上200nm以下の範囲で選択される。
正孔注入・輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが小さい化合物が用いられる。
正孔注入・輸送層を形成する材料としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、例えば、芳香族アミン化合物が好適に用いられる。
電子注入・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい化合物が用いられる。
電子注入・輸送層に用いられる化合物としては、例えば、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。含窒素環誘導体としては、含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する複素環化合物が好ましい。
本実施形態の有機EL素子の各層の形成方法としては、上記で特に言及した以外には制限されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法、イオンプレーティング法などの乾式成膜法や、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法、インクジェット法などの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。
本発明の有機EL素子、すなわち、色度の調整をし易い有機EL素子を製造するにあたっては、上述したように、まず、陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を設け、第一発光層には、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料とを成膜し、第二発光層には、第二ホスト材料と、上記式(N−1)を満たし、かつ、上記式(N−2)および(N−3)の少なくともいずれかを満たす第三ホスト材料と、第二ドーパント材料とを成膜すればよい。この際、第二発光層における第二ホスト材料と第三ホスト材料との合計質量に対する第三ホスト材料の濃度は、所望する有機EL素子の色度により決定すればよい。
次に、第二実施形態における有機EL素子について説明する。
図2に示すように、第二実施形態の有機EL素子1Aは、発光ユニット5Aにおいて、第二発光層52と電子輸送層7との間に、電荷障壁層8及び第三発光層53をさらに備えた点が第一実施形態と異なる。
電荷障壁層8は、第二発光層52の陰極4側に連続して形成されている。第三発光層53は、電荷障壁層8及び電子輸送層7間に連続して形成されている。
電荷障壁層8とは、隣接する第二発光層52及び第三発光層53間でHOMOレベル、LUMOレベルのエネルギー障壁を設けることにより、第二発光層52及び第三発光層53への電荷(正孔又は電子)注入を調整し、第二発光層52及び第三発光層53に注入される電荷のバランスを調整するための層である。
第三発光層53は、例えば、青色の蛍光発光を示す層であり、ピーク波長は450〜500nmである。第三発光層53は、第四ホスト材料と、第四ドーパント材料とを含有する。
第四ホスト材料としては、例えば、アントラセン中心骨格を有する下記式(41)に示す構造を有する化合物が挙げられる。
R41〜R48は、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のヘテロ芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、及びヒドロキシル基のうちのいずれかである。
従って、有機EL素子1Aは、照明やバックライトなどの面光源として好適に利用できる。
本発明の有機EL素子は、発光ユニットを少なくとも2つ有するタンデム素子構成とすることができる。このようなタンデム素子構成では、2つの発光ユニットの間に中間層が介在する。
中間層は、発光ユニットに電子又は正孔を注入する供給源となる層であり、中間導電層又は電荷発生層から構成される。一対の電極から注入される電荷に加えて、中間層から供給される電荷が発光ユニット内に注入されることになるので、中間層を設けることによって、注入した電流に対する発光効率(電流効率)が向上する。
本発明の有機EL素子の具体例を以下に示す。
(14)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/陰極
(15)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/中間層/第三発光ユニット/陰極
有機EL素子1Bは、陽極3と、第一発光ユニット5B1と、中間層9と、第二発光ユニット5B2と、陰極4とを順に備える。
第一発光ユニット5B1は、陽極3から順に、正孔輸送帯域6と、第三発光層53と、電子輸送帯域7とを備える。
正孔輸送帯域6は、第一正孔注入層61と、第一正孔輸送層62とを備える。
第三発光層53は、ホスト材料と、主ピーク波長が550nm以下の蛍光発光を示すドーパント材料とを含む。
電子輸送帯域7は、第三発光層53に隣接した障壁層71と、第一電子輸送層72を有する。
第二発光ユニット5B2は、第一実施形態の発光ユニットと同様であり、陽極3側から順に第二正孔輸送層63と、第一発光層51と、第二発光層52と、第二電子輸送層73とを備える。
第三発光層53のドーパント材料の3重項エネルギー(ETd)は、ホスト材料の3重項エネルギー(ETh)より大きく、障壁層71の三重項エネルギー(ETb)は、EThよりも大きいことが好ましい。3重項励起子が第三発光層53内に閉じ込められ、TTF現象(二つの3重項励起子の衝突融合により1重項励起子が生成する現象)を効率的に起こして蛍光素子の高効率を奏することが可能となる。
ここで、障壁層71は、三重項エネルギーに対する障壁機能を有する層をいう。従って、正孔障壁層や電荷障壁層とはその機能が異なるものである。
なお、3重項エネルギーは市販の装置F−4500(日立社製)を用いて測定できる。三重項エネルギーETの換算式は以下の通りである。
換算式 ET(eV)=1239.85/λedge
「λedge」とは、縦軸に燐光強度、横軸に波長をとって、燐光スペクトルを表したときに、燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸の交点の波長値を意味する(単位:nm)。
中間層9としては、金属、金属酸化物、金属酸化物の混合物、複合酸化物、電子受容性有機化合物が挙げられる。金属としては、Mg、Al、MgやAgの共蒸着膜等が好ましい。金属酸化物としては、ZnO、WO3、MoO3、MoO2が挙げられる。金属酸化物の混合物としては、ITOやIZO、ZnO:Al等が挙げられる。電子受容性有機化合物としては、CN基を置換基に持つ有機化合物が挙げられる。CN基を含む有機化合物としては、トリフェニレン誘導体やテトラシアノキノジメタン誘導体、インデノフルオレン誘導体等が好ましい。トリフェニレン誘導体としては、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(HAT)が好ましい。テトラシアノキノジメタン誘導体としてはテトラフルオロキノジメタン、ジシアノキノジメタンが好ましい。インデノフルオレン誘導体としては国際公開第2009/011327号、国際公開第2009/069717号又は国際公開第2010/064655号に示されるような化合物が好ましい。なお、電子受容性物質は単独物質でも、他の有機化合物と混合されたものでもよい。
本発明のタンデム素子構成における、電子輸送帯域、ホスト材料、ドーパント材料、障壁層に使用できる化合物の具体例として、特許出願番号PCT/JP2010/003431の公報に記載の化合物が挙げられる。正孔輸送帯域に使用できる化合物としては、第一実施形態の正孔輸送層の材料と同様のものが挙げられる。
また、中間層9が電荷発生層の場合、第三発光層53が電荷発生層から電子を容易に受け取れるようにするため、電子輸送帯域7における電荷発生層界面近傍にアルカリ金属で代表されるドナーをドープすることが好ましい。ドナーとしては、ドナー性金属、ドナー性金属化合物及びドナー性金属錯体のうち少なくとも一種を選ぶことができる。このようなドナー性金属、ドナー性金属化合物及びドナー性金属錯体に使用できる化合物の具体例として、特許出願番号PCT/JP2010/003434の公報に記載の化合物が挙げられる。
なお、本発明は、上記の説明に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更は本発明に含まれる。
第一実施形態、第二実施形態では、陽極に連続して正孔輸送層を形成する構成を示したが、陽極及び正孔輸送層間に正孔注入層をさらに形成してもよい。
このような正孔注入層の材料としては、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物またはスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、特に、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(HAT)などの芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンを用いる場合、陽極と正孔輸送層との密着性を向上させて、耐久性を向上させることができる。
さらに、陽極と第一発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層とを設けることで、陽極から第一発光層に直接正孔を輸送する場合と比較し、正孔輸送性を向上させることができる。
すなわち、正孔注入層と正孔輸送層とを設けることにより、陽極と正孔注入層とのイオン化ポテンシャルのエネルギー差、正孔注入層と正孔輸送層とのイオン化ポテンシャルのエネルギー差、正孔輸送層と第一発光層とのイオン化ポテンシャルのエネルギー差をそれぞれ小さくすることができる。これにより、正孔が各層に移動する際のエネルギー障壁を小さくできるので、正孔輸送性が向上し、さらに発光効率等を向上させることができる。
また、第一実施形態〜第三実施形態では、陰極に連続して電子輸送層を形成する構成を示したが、陰極及び電子輸送層間に電子注入層をさらに形成してもよい。
そして、第三実施形態では、2つの発光ユニットを形成する構成を示したが、発光ユニットを3つ以上形成してもよい。その場合、各発光ユニット間に電荷発生層を設けてもよい。
また、第三実施形態の有機EL素子1Bは、図4に示す有機EL素子1Cとしてもよい。有機EL素子1Cは、陽極3と、第二発光ユニット5B2と、中間層9と、第一発光ユニット5B1と、陰極4とを順に備える。すなわち、第二発光ユニット5B2が陽極3側に設けられ、第一発光ユニット5B1が陰極4側に設けられている点で、有機EL素子1Bと異なっている。
また、第一実施形態〜第三実施形態の有機EL素子は、照明やバックライトなどの面光源の他、ディスプレイとして利用してもよい。
使用した化合物は、以下の通りである。
・合成例1(化合物H3の合成)
・合成例1−1−1(中間体1−1の合成)
反応液に上水を加えて室温まで昇温した後、析出した固体をろ過して取り出した。トルエンにて、得られた固体の再結晶を繰り返すことによって、中間体1−1(71g、収率65%)を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体1と同定した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体1−2(19g、収率58%)を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体1−2と同定した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3.6gの黄白色固体(H3)を得た。
得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)、トルエン溶液中の蛍光発光極大波長FL(PhMe, λex=325nm);λmaxを以下に示す。
FDMS, calcd for C47H30N4=650, found m/z=650 (M+)
FL(PhMe, λex=325nm);λmax, 471nm
まず、本実施例で使用した化合物H1,H2,H3の物性を測定した。測定方法および算出方法を以下に示すとともに、測定結果および算出結果を表1に示す。
大気下光電子分光装置(理研計器(株)社製:AC−1)を用いて測定した。具体的には、材料に光を照射し、その際に電荷分離によって生じる電子量を測定することにより測定した。
測定対象化合物を石英基板上に蒸着して試料を作製し、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトルを測定した。試料の膜厚は100nmとした。吸収スペクトルは、縦軸を吸光度、横軸を波長とした。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をEgSとした。
換算式:Eg(S)[eV]=1239.85/λedge
吸収スペクトルの測定には、(株)日立製の分光光度計U3310を用いた。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めなかった。
各化合物を、公知の燐光測定法(例えば、「光化学の世界」(日本化学会編・1993)50頁付近の記載の方法)により測定した。具体的には、各化合物を溶媒に溶解(試料10[μmol/リットル]、EPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比)、各溶媒は分光用グレード)し、燐光測定用試料とした。石英セルへ入れた燐光測定用試料を77[K]に冷却し、励起光を燐光測定用試料に照射し、波長を変えながら燐光強度を測定した。燐光スペクトルは、縦軸を燐光強度、横軸を波長とした。
この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をEgTとした。
換算式:Eg(T)[eV]=1239.85/λedge
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF−4500形分光蛍光光度計本体と低温測定用オプション備品を用いた。なお、測定装置はこの限りではなく、冷却装置及び低温用容器と、励起光源と、受光装置とを組み合わせることにより、測定してもよい。
イオン化ポテンシャルIpと一重項エネルギーEg(S)の測定値から算出した。算出式は、次のとおりである。
Af=Ip−Eg(S)
一重項エネルギーEg(S)は、ベンゼン中の吸収スペクトルの吸収端から測定した。具体的には、市販の可視・紫外分光光度計を用いて、吸収スペクトルを測定し、そのスペクトルが立ち上がり始める波長から算出した。
インピーダンス分光法を用いて移動度評価を行った。以下のような単キャリアデバイスを作製し、100mVの交流電圧を乗せたDC電圧を印加し複素モジュラスを測定した。モジュラスの虚部が最大となる周波数をfmax(Hz)としたとき、応答時間T(秒)をT=1/2/π/fmaxとして算出し、この値を用いて移動度の電界強度依存性を決定した。以下に、正孔移動度μ(h)および電子移動度μ(e)の測定に用いた単キャリアデバイスをそれぞれ記載する。
μ(e):ITO/HT(5)/測定対象化合物(100)/Al
(括弧内の数値は膜厚。単位:nm)。
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマテック(株)社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
まず、洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして、抵抗加熱蒸着により化合物HIを積層した。これにより、厚さ20nmの陽極に隣接する正孔注入層を形成した。
この正孔注入層上に、抵抗加熱蒸着により化合物HTを積層した。これにより、厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
この正孔輸送層上に、第一ホスト材料としての化合物H1と、第一ドーパント材料としての化合物D1とを抵抗加熱で共蒸着した。これにより、赤発光を示す厚さ10nmの第一発光層を形成した。尚、化合物D1の濃度は、8質量%とした。
さらにこの第一発光層の上に、第二ホスト材料としての化合物H2と、第三ホスト材料としての化合物H3、第二ドーパント材料としての化合物D2とを抵抗加熱で共蒸着した。これにより、緑発光を示す厚さ30nmの第二発光層を形成した。尚、化合物D2の濃度は、15質量%とした。また、第二発光層における第二ホスト材料と第三ホスト材料との合計質量に対する第三ホスト材料の質量(濃度)は、5質量%とした。
この緑色発光層上に、抵抗加熱蒸着により化合物ETを積層した。これにより、厚さ35nmの電子輸送層を形成した。
さらに、電子輸送層上に、LiFを蒸着し、厚さ1nmの電子注入層を形成した。さらに、電子注入層上に、金属Alを蒸着し、厚さ80nmの陰極を形成した。
実施例2〜4および比較例1〜3は、実施例1において、第一発光層の膜厚、第二発光層の膜厚、第三ホスト材料、第三ホスト材料の濃度等を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1〜4および比較例1〜3において作製した有機EL素子において、電流密度を3.00mA/cm2とした場合の駆動電圧、CIE1931色度、電流効率L/J、電力効率η、及び寿命LT90の評価を行った。結果を表3に示す。
電流密度が3.00mA/cm2となるようにITOとAlとの間に通電したときの電圧(単位:V)を計測した。
電流密度が3.00mA/cm2となるように素子に電圧を印加した時のCIE1931色度座標(x、y)を分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)で計測した。
・電流効率L/J、及び電力効率η
電流密度が3.00mA/cm2となるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを上記分光放射輝度計で計測し、得られた分光放射輝度スペクトルから、電流効率(単位:cd/A)、及び電力効率η(単位:lm/W)を算出した。
・寿命LT90
電流密度が50mA/cm2となるように素子に電圧を印加し、初期輝度に対して輝度が90%となるまでの時間(単位:hr)を測定した。
2 基板
3 陽極
4 陰極
51 第一発光層(発光層)
52 第二発光層
6 正孔輸送層(正孔輸送帯域)
61 第一正孔注入層
62 第一正孔輸送層
63 第二正孔輸送層
7 電子輸送層(電子輸送帯域)
72 第一電子輸送層
73 第二電子輸送層
Claims (9)
- 陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第二ホスト材料が、含窒素六員環複素環基を含む化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一ホスト材料が、アミン誘導体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第二ホスト材料が、カルバゾール骨格を有する化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第二ホスト材料が、下記式(21)〜(26)のいずれかで表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(式(21)〜(26)中、R101〜R105は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環基、又はアルキル基を表す。) - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第三ホスト材料が、分子内に五員環構造を含む化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第三ホスト材料が、下記式(130)で表される骨格を有する化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(式(130)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、NR130またはCR131R132を表す。
R130〜R132は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。R131およびR132の一部が結合して環構造を形成していてもよい。) - 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第三ホスト材料が、下記式(16)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(式(16)中、
L10は、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、またはこれらの基が互いに2〜5個連結した基を表す。
X1、X2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。
Y1〜Y4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。なお、隣接するY1〜Y4同士が互いに結合を形成し、環構造を形成してもよい。
p、qは、それぞれ独立に、1〜4の整数のうちいずれかである。
r、sは、それぞれ独立に、1〜3の整数のうちいずれかである。
B1およびB2は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。) - 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一ドーパント材料は、570nm以上の発光ピークを示し、
前記第二ドーパント材料は、570nm未満の発光ピークを示すことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一発光層が、前記第二発光層よりも陽極側に設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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