(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる無線装置のハードウェア構成例を示す図である。図1に示す無線装置100は、携帯電話網を介して無線通信を行うスマートフォンなどの携帯電話機に適用した例を示す。
無線装置100は、ベースバンド部101、送信部102、受信部103、デュプレクサ104、アンテナ105、カプラ106、整合部107、VSWR測定部108、パワーアンプ(PA)109、を含む。
送信時の無線通信は、ベースバンド部101からの信号(送信信号SD)を送信部102で送信波に変え、PA109で必要な電力まで増幅され、デュプレクサ104を通して、アンテナ105から送信される。
この送信時、後述する送信スケジュール等に基づく所定の無線通信プロトコル(プロトコルと略称する)の送信、およびプロトコル以外の送信の進行波および反射波をカプラ106で分岐し、VSWR測定部108でVSWR測定する。ベースバンド部101は、VSWR測定結果に基づいて、整合部107を制御し、インピーダンスマッチング(インピーダンス調整によるアンテナ整合)をとる。
無線通信の受信時には、アンテナ105〜デュプレクサ104を介して受信部103により受信信号RDがベースバンド部101に入力される。
図2は、実施の形態1にかかる無線装置のベースバンド部の機能構成例を示すブロック図である。ベースバンド部101は、主として通信を担うモデム制御部201と、主としてアプリケーション動作を担うアプリケーション制御部(アプリ制御部)202とを含む。
これらモデム制御部201と、アプリケーション制御部202は、それぞれCPU等のプロセッサを用いて構成できる。各CPUが不図示のメモリ、例えば、ROMに格納されたプログラムを実行し、RAMを作業領域に用いることで、図2に示す各機能を実現することができる。
アプリケーション制御部202は、無線通信により通話を行う通話機能部211と、所定のブラウザを用いてインターネット等のウェブサイトにアクセスするウェブブラウズ機能部212と、を含む。
モデム制御部201は、プロトコル機能部221と、アンテナ整合調整機能部222と、RF機能部223と、を含む。プロトコル機能部221は、プロトコルに基づく無線送信のスケジュール等を作成し、このスケジュールにしたがって例えば定期的に送信を行う。
アンテナ整合調整機能部222では、プロトコル機能部221による送信以外の時期での送信を行う。アンテナ整合調整機能部222によるプロトコル以外の送信と、プロトコル機能部221による送信が行われることになる。
RF機能部223は、送受信機能部231と、送信リソース管理機能部232と、PA制御機能部233と、VSWR測定部制御機能部234と、整合部制御機能部235と、を含む。送受信機能部231は、送受信するデータを無線装置100のRF(無線)処理部に入出力する。送信リソース管理機能部232は、プロトコル機能部221が生成した送信スケジュールに従った送信リソースの確保および開放(リリース)等のリソース管理を行う。
PA制御機能部233は、PA109に対する送信電力の制御を行う。VSWR測定部制御機能部234は、VSWR測定部108に対するVSWR測定の制御を行い、VSWR測定結果を取得する。整合部制御機能部235は、VSWR測定結果に基づき、整合部107によるインピーダンス調整を制御する。
そして、データ送信時、RF機能部223のVSWR測定部制御機能部234は、VSWR測定部108から進行波および反射波の電圧を取得し、VSWR同様に反射率を示す指標S11を算出する。S11は、反射波の進行波に対する比率を示し、下記式で変換可能である。
S11=20*log(Γ)
Γ=(VSWR−1)/(VSWR+1)
アンテナ整合調整機能部222は、RF機能部223の整合部制御機能部235を通して、整合部107の負荷の値を変更しながらスキャンし、S11が最少となる負荷値を求め、求めた負荷値を整合部107に設定する。
アンテナ整合調整機能部222は、プロトコル機能部221がプロトコルに基づく送信のタイミング以外の送信発生のタイミングを周期的に発生させる(例えば1秒毎)。このプロトコル以外の送信は、無線装置、特に、小型化が必要な携帯機器では、同一の送信部102でプロトコルに基づく送信と、プロトコル以外の送信とをいずれも実現する必要がある。実施の形態1では、プロトコルの送信を邪魔しないようコンフリクトを防いで、プロトコルに基づく送信タイミング以外のタイミングで送信を行う。
このため、アンテナ整合調整機能部222は、プロトコル機能から送信スケジュールの情報を受け、プロトコルに基づく送信タイミングと排他になる(重ならない)ように送信動作させる。プロトコル以外での送信は、アンテナ整合調整機能部222がプロトコル機能部221から送信スケジュールを受け取り、この送信スケジュールに基づいてコンフリクトさせないよう送信タイミングを決定する。この際、RF機能部223において送信リソースのチェックを行い、使用している場合はこの整合動作を中止する。ここで、プロトコル機能部221とRF機能部223は別機能であるため、それぞれが送信状態のチェックを行う。
また、プロトコル以外の送信の場合、上記の負荷スキャンの前後で最短となるように、送信リソースの取得、解放を行う。このように、アンテナ整合調整機能部222は、プロトコル機能部221から送信スケジュールの入手、RF機能部223での送信リソースのチェック、最短での送信リソースの管理を行う。これにより、アンテナ整合調整機能部222は、プロトコル機能部221と同一ハードウェア(CPU)を用いて、プロトコル以外の送信とプロトコルの送信を排他で使用できるようになる。
また、アンテナ整合調整機能部222は、プロトコル以外の送信の場合は、基本的にはPA109の送信電力をOFFにして行う。これにより、プロトコル以外の送信を行っても消費電流を減らすことができる。また、プロトコル以外の送信の時にPA109をOFFにすることで、例えば、従来のインピーダンス整合で必要とされた、PA109を送信状態までにするためのウォームアップ期間が不必要となり、スケジューリングの自由度を増す効果も得ることができる。なお、ウォームアップ期間は通常数百μsec程度必要である。
また、この周期的なプロトコル以外の送信は、アンテナ整合調整機能部222がアプリ制御部202からウェブブラウズの動作情報や通話の動作情報を入手し、これらウェブブラウズや通話の動作の期間のみ周期的な整合動作を行う。この際、アンテナ整合調整機能部222は、アプリ制御部202の通話機能部211やウェブブラウズ機能部212の動作開始のトリガを取得する。このように、ウェブブラウズの動作情報や通話の動作情報を入手することで、プロトコルの待ち受け動作時等に処理を行うことを防ぎ、インピーダンス整合調整が不要な時期での動作や電流消費の増大を防ぐことができる。
また、アンテナ整合調整機能部222は、アプリ制御部202の通話およびウェブブラウズ機能終了時には、周期的な整合調整機能を終了する。この終了時には整合調整用の負荷を初期値にリセットし、次回開始時には平均的な負荷状態でスタートさせる。この処理は次回スタート時の異常な不整合を防ぐために行う。
このほか、アンテナ整合調整機能部222は、プロトコル機能部221から受信感度レベル情報を入手し、受信感度レベルが下がったところでプロトコル以外の送信動作を開始させるようにしても良い、この機能を加えることで、さらに必要時のみインピーダンス整合調整を実施できるようになり、電流消費をより低減化できる。
また、アンテナ整合調整機能部222が行うプロトコル以外の送信は、プロトコルの送信との干渉を最少とするために、その時のプロトコルの送信波と同一タイプの送信波としても良い。これにより、RF機能部223の再設定の時間がないため、送信が重合(コンフリクト)するリスクを低下できる。
また、実施の形態1では、プロトコル以外の送信をアンテナ整合調整機能部222が実施することとしたが、アンテナ整合調整機能部222がプロトコル機能部221の機能を使用して実現することもできる。
図3は、実施の形態1にかかる無線装置の整合調整機能部の処理例を示すフローチャートである。アンテナ整合調整機能部222のCPUが実施するプロトコルに基づく送信タイミング以外での送信処理およびインピーダンス整合調整の処理内容を示す。
はじめに、アンテナ整合調整機能部222のCPUは、アプリ制御部201からの情報取得により、無線装置が通話状態またはウェブブラウズ状態となるまで待機する(ステップS301:Noのループ)。無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態となると(ステップS301:Yes)、CPUは、プロトコル以外の送信タイミングとして所定周期(例えば1秒毎)での送信を行うためのタイマ(1秒タイマ)の処理を開始する(ステップS302)。
次に、CPUは、プロトコル機能部221から送信スケジュールを入手する(ステップS303)。そして、CPUは、送信スケジュール以外の送信のタイミングが送信スケジュールのタイミングと重複していないか判断する(ステップS304)。判断の結果、重複していなければ(ステップS304:Yes)、送信スケジュール以外の送信(測定用送信と称す)を行う(ステップS305)。この測定用送信ではPA109をONにせず、OFFのまま行う。
次に、CPUは、RF機能部223の送信リソースはプロトコル(プロトコル機能部221)で使用されていないか確認する(ステップS306)。確認結果、送信リソースがプロトコル上で使用されていなければ(ステップS306:Yes)、ステップS307に移行し、送信リソースがプロトコル上で使用されていれば(ステップS306:No)、ステップS303に戻る。
ステップS307では、CPUは、送信リソースを確保し(ステップS307)、整合部107に対する負荷レベルを変更しながらスキャンを行う(ステップS308)。このスキャンにより、VSWR測定部108から進行波と反射波のレベルを読み出す(ステップS309)。この後、CPUは、送信リソースをリリース(開放)し(ステップS310)、ステップS313に移行する。
一方、ステップS304にて、送信スケジュール以外の測定用送信のタイミングが送信スケジュールのタイミングと重複していれば(ステップS304:No)、CPUは、整合部107に対する負荷レベルを変更しながらスキャンを行う(ステップS311)。そして、CPUは、VSWR測定部108から進行波と反射波のレベルを読み出し(ステップS312)、ステップS313に移行する。
ステップS313では、CPUは、VSWR測定部234によりS11を算出する(ステップS313)。この後、CPUは、S11が最低となる負荷値を算出し(ステップS314)、算出した負荷値に変更する(ステップS315)。
この後、CPUは、無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態であるか再度判断する(ステップS316)。無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態であれば(ステップS316:Yes)、タイマ周期分待った後に(1秒wait、ステップS317)、ステップS303に戻る。一方、無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態のいずれでもなければ(ステップS316:No)、負荷値を初期化し(ステップS318)、以上の処理を終了する(ステップS301に戻る)。
図4は、既存の無線装置による送信動作を示すタイミングチャートである。実施の形態1(図5)との対比例として用いている。横軸は時間であり、縦軸には、アプリケーションの動作期間、プロトコルの送信(TX)、受信(RX)、無線装置(スマートフォン)100の保持状態を記載している。既存の技術では、プロトコルにのみ基づいて、送信(TX)時のみアンテナ整合を行う。
この場合、ユーザが無線装置100のアンテナを覆うような左手(L)持ちの状態で送信(TX)動作を行いインピーダンス整合が行われたとする(時期t1)。そしてこの直後に、ユーザがアンテナを覆わない右手(R)持ちに切り替えたとする。このとき、アンテナ特性が変化しインピーダンスは不整合となるが、その後のプロトコルの送信(TX)動作が発生する時期t2まで整合動作が行われない未対応期間NGが続く。このように、既存の技術では、通信プロトコルが要求する送信時にしかVSWR測定ができないので、送信するタイミング直後にアンテナの状態が変わった時に、次にプロトコルの送信動作が発生するまでアンテナ整合ができない。
図5は、実施の形態1にかかる無線装置の送信動作を示すタイミングチャートである。横軸は時間である。実施の形態1によれば、アンテナ整合調整機能部222は、プロトコル以外の送信(測定用送信TX+)により周期的な整合調整動作を行う。プロトコルの送信動作終了(時期t1)後も、所定周期tp(例えば、上記1秒間隔)時期t11のときに比較的短い時間でアンテナを整合できる。これにより、常に受信感度を最適にしておくことができる。例えば、図示のように、継続するウェブブラウジング中でもアンテナをインピーダンス整合して受信感度を高めることができるようになる。
また、アンテナ整合調整機能部222は、プロトコルの送信のタイミングに、測定用送信のタイミングが重合するときには(図中点線で示す測定用信号)、プロトコルの送信を優先させて測定用信号の送信を禁止している。
ここで、アンテナ整合調整機能部222は、無線装置100で使用中のアプリケーションの種別に基づき、長時間通信を行うアプリケーションを判別して整合の制御を行うこともできる。この場合、プロトコル以外の測定用送信を減らすことができ、消費電流を下げることができる。
図6は、実施の形態1にかかる無線装置のVSWR測定部の内部構成例を示す図である。図1に示したVSWR測定部108の内部構成例を示す。VSWR測定部108は、スイッチ601と、ダイオード等を用いた検出部602と、A/D変換部603と、を含む。
スイッチ601は、一対で設けられ、一対のスイッチ601a,601bは逆のスイッチ動作を行う。スイッチ601aが「閉」のとき、スイッチ601bが「開」となり、カプラ106の出力(進行波)がそのままポート611からベースバンド部101に出力される。ベースバンド部101は、この出力を送信電力制御のために用いる。
スイッチ601aが「開」のとき、スイッチ601bが「閉」となり、カプラ106の出力(進行波)が進行波検出部602aに供給され、A/D変換部603aでAD変換され、ポート611aから進行波のVSWRがベースバンド部101に出力される。
また、カプラ106の出力(反射波)は、反射波検出部602bに供給され、A/D変換部603bでAD変換され、ポート611bから反射波のVSWRがベースバンド部101に出力される。A/D変換部603でA/D変換された電圧値は、データとしてベースバンド部101が取得する。
図6には、A/D変換器603を2つ設ける構成としたが、1つのA/D変換器603を時分割(タイムシェアリング)で使用してもよい。
図7は、実施の形態1にかかる無線装置の整合部の内部構成例を示す回路図である。図1に示す整合部107は、複数のインダクタンス(L)とコンデンサ(C)とを含む。ベースバンド部101からの制御出力に応じて、D/A変換部701が発生(出力)する電圧をLR回路に印加することで、可変コンデンサC1の容量が変化し、全体の負荷値が変更し、アンテナ105のインピーダンス整合を調整可能である。
以上説明した実施の形態1によれば、プロトコルに基づく送信時以外の期間に周期的に測定用送信を行い、VSWR測定を行うことで、無線装置の保持状態の変化等があっても常にインピーダンス調整をきめ細かに行えるようになる。
また、プロトコル以外の測定用送信についてプロトコルに基づく送信スケジュールを取得することで、プロトコルによる送信と、プロトコル以外の測定用送信とのコンフリクトを防止できる。
プロトコルによる通信以外の周期的な測定用送信を追加することで、基本的には、電力消費量が増える。しかし、プロトコルによる送信時は、プロトコルの送信を利用してVSWR測定を行い、このプロトコルによる送信期間およびプロトコル以外の測定用送信を行うことで、プロトコル以外の通信量を減らすことができる。さらには、プロトコル以外の測定用送信を行うときにPAをOFFすることで、消費電流を大幅に下げることができる。
また、ウェブブラウジング動作や、通話動作の情報に基づきプロトコル以外の測定用送信回数を減らす決定を行ってもよく、これにより消費電流を低減できる。また、受信感度の情報に基づき電波が弱い時にのみ適用することで消費電流を下げることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、上述した実施の形態1の負荷値のスキャン時間を短縮する例について説明する。
図8は、実施の形態2にかかる無線装置の各保持状態での負荷値のS11の特性を示す図表である。横軸は負荷、縦軸はS11の値を示す。アンテナ整合調整機能部222は、無線装置100の出荷前の段階で、無線装置100について(1)ハンズフリー、(2)左手持ち、(3)左手+頭に接近、の3つの通話時の保持状態における負荷に対するS11の特性を測定しておき、メモリに格納しておく。
この事前測定により、それぞれの場合のピークの候補の負荷の範囲を知ることができる。実際のデータ送信時にS11測定を行う場合、負荷値がとりうる範囲をすべてスキャン(図中のフルスキャン)すると消費電流も時間もかかる。
これを防ぐため、アンテナ整合調整機能部222は、VSWR測定部108に対し、第1段階として、(1)〜(3)の各特性のピーク値付近(例えばガウス分布と近似して平均値からの±1σの範囲)の負荷値のみを分割してスキャンする。そして、アンテナ整合調整機能部222は、この分割スキャン時のS11が特定の値以上(例えば20dB以上)であった場合、(1)〜(3)の範囲のピークで全体のピークを検出できていると判断する。これにより、大幅に測定時間を低減することができる。
S11が所望の値以下であった場合、アンテナ整合調整機能部222は、第2段階として、負荷値の全範囲のフルスキャンを行い、ピークを求める。フルスキャン後は再度分割スキャンから開始する。この交互動作のために、アンテナ整合調整機能部222は、処理実施中には、分割スキャンを示すフラグを用いる。
図9A,図9Bは、実施の形態2にかかる無線装置の整合調整機能部の処理例を示すフローチャートである。図8を用いて説明した負荷値の事前設定に基づき、アンテナ整合調整機能部222のCPUが実施するプロトコルに基づく送信タイミング以外での送信処理およびインピーダンス整合調整の処理内容を示す。
はじめに、アンテナ整合調整機能部222のCPUは、アプリ制御部201からの情報取得により、無線装置が通話状態またはウェブブラウズ状態となるまで待機する(ステップS901:Noのループ)。無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態となると(ステップS901:Yes)、CPUは、プロトコル以外の測定用送信タイミングとして所定周期(例えば1秒毎)での送信を行うためのタイマ(1秒タイマ)の処理を開始する(ステップS902)。
次に、CPUは、プロトコル機能部221から送信スケジュールを入手する(ステップS903)。そして、CPUは、送信スケジュール以外の測定用送信のタイミングが送信スケジュールのタイミングと重複していないか判断する(ステップS904)。判断の結果、重複していなければ(ステップS904:Yes)、送信スケジュール以外の測定用送信(測定用送信)を行う(ステップS905)。この測定用送信ではPA109をONにせず、OFFのまま行う。
次に、CPUは、RF機能部223の送信リソースはプロトコル(プロトコル機能部221)で使用されていないか確認する(ステップS906)。確認結果、送信リソースがプロトコル上で使用されていなければ(ステップS906:Yes)、ステップS907に移行し、送信リソースがプロトコル上で使用されていれば(ステップS906:No)、ステップS903に戻る。
ステップS907では、CPUは、分割スキャンフラグがFALSEであるか否かを判断する(ステップS907)。分割スキャンフラグがTRUEであれば(ステップS907:No)、負荷全体の一部に対する分割スキャンを行うために、ステップS908以下の処理に移行する。分割スキャンフラグがFALSEであれば(ステップS907:Yes)、負荷全体に対するフルスキャンを行うために、ステップS916以下の処理に移行する。
ステップS908では、CPUは、送信リソースを確保し(ステップS908)、整合部107に対する負荷レベルを変更しながら分割スキャンを行う(ステップS909)。この分割スキャンにより、VSWR測定部108から進行波と反射波のレベルを読み出す(ステップS910)。この後、CPUは、送信リソースをリリース(開放)し(ステップS911)、CPUは、VSWR測定部234によりS11を算出する(ステップS912)。この後、CPUは、S11が最低となる負荷値を算出する(ステップS913)。
この後、CPUは、S11が所定値(例えば20dB以上)であるか判断する(ステップS914)。S11が所定値以上であれば(ステップS914:Yes)、分割スキャンフラグをFALSEとし(ステップS915)、ステップS926に移行する。また、ステップS914において、S11が所定値未満(例えば20dB未満)であれば(ステップS914:No)、ステップS922に移行する。
ステップS916では、CPUは、送信リソースを確保し(ステップS916)、整合部107に対する負荷レベルを変更しながらフルスキャンを行う(ステップS917)。このフルスキャンにより、VSWR測定部108から進行波と反射波のレベルを読み出す(ステップS918)。この後、CPUは、送信リソースをリリース(開放)し(ステップS919)、CPUは、VSWR測定部234によりS11を算出する(ステップS920)。この後、CPUは、S11が最低となる負荷値を算出する(ステップS921)。
この後、CPUは、負荷値を変更し(ステップS922)、分割スキャンフラグをTRUEとし(ステップS923)、ステップS926に移行する。
また、上記ステップS904にて、送信スケジュール以外の測定用送信のタイミングが送信スケジュールのタイミングと重複していれば(ステップS904:No)、CPUは、整合部107に対する負荷レベルを変更しながらスキャンを行う(ステップS924)。そして、CPUは、VSWR測定部108から進行波と反射波のレベルを読み出し(ステップS925)、ステップS920に移行する。
ステップS926では、CPUは、無線装置100が無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態であるか再度判断する(ステップS926)。無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態であれば(ステップS926:Yes)、タイマ周期分待った後に(1秒wait、ステップS927)、ステップS903に戻る。一方、無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態のいずれでもなければ(ステップS926:No)、負荷値を初期化し(ステップS928)、以上の処理を終了する(ステップS901に戻る)。
このほか、詳細は以下の実施の形態3を用いて説明するがCA(キャリア・アグリゲーション)等において、送受信兼用アンテナと受信専用アンテナの複数のアンテナの構成を採ることがある。この受信専用アンテナに対して、切り替えスイッチを用いて、インピーダンス整合用のプロトコル以外の送信波を出すようにしても良い。この場合、受信専用アンテナに対しても、プロトコル以外の測定用送信を行うことで、整合を行うことができる。このようなCA等の複数のアンテナを使用する場合、上述したプロトコルとプロトコル以外の測定用送信のコンフリクトの可能性が高まるので、実施の形態2の分割スキャンによるコンフリクト回避がより有効に働くことになる。
このような複数のアンテナを有する無線装置において、送受信アンテナの分割スキャン後に受信専用アンテナの分割スキャンを行う場合、無線装置の保持状態が変わらないとして、送受信アンテナの分割スキャンで判定した負荷値と同じ保持状態時の範囲(例えば図8(2)の左手持ち)のみを分割スキャンするようにしても良い。この場合、受信専用アンテナのスキャン範囲が狭くなるので、スキャン時間を更に短縮できる。分割スキャンの測定を複数のアンテナに対して順次行い、25%以上の測定結果が送受信アンテナと同じ状態(例えば左手持ち)に該当しない、と判断したところで送受信アンテナから全部のアンテナに対して、フルスキャンを実行するようにしても良い。例えば、アンテナ4本中の1本が該当しないだけなら図8(2)の左手持ち状態と判断して、2本以上は不明状態と判断してフルスキャンすればよい。
以上説明した実施の形態2によれば、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、実施の形態2のように負荷値の分割スキャンを実施することにより、インピーダンス調整にかかる時間を短縮できる。そして、実施の形態1よりもさらに、消費電力の低減と、プロトコルの送信とプロトコル以外の測定用送信のコンフリクトの可能性を低減できる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、CA(キャリア・アグリゲーション)等における複数の受信アンテナに対応する場合のインピーダンス整合について説明する。
図10は、実施の形態3にかかる無線装置の送信動作を示すタイミングチャートである。実施の形態3では、図10に示すように第1の送受信兼用アンテナのスキャン(SCAN1)の後に、第2の受信専用のアンテナ(SCAN2)のスキャンを連続して行う。この場合、インピーダンス整合の未対応期間は、プロトコルに基づく送信(時期t1)後からプロトコル以外による受信専用アンテナの送信終了(時期t21)までの間となる。
図11は、実施の形態3にかかる無線装置のハードウェア構成例を示す図である。実施の形態1と同様の構成部には同じ符号を付してある。
図11に示す例では、受信部1(103a)と送信部102のアンテナ(送受信アンテナ)105aを送受信兼用とし、さらに受信部2(103b)用の受信専用アンテナ105bを有している。このような送受信(アンテナ)構成に対応する場合は、受信部2(103b)のための受信専用アンテナ105bのスキャンを行う期間、受信部2(103b)のために、送受信アンテナ105aを割り当てる。
このアンテナ切り替え動作により、受信専用アンテナ105bのスキャンを行う期間においても受信部2(103b)で受信を継続することができる。この際、図11に示すように、整合部107の前段にアンテナスイッチ1101を配置し、アンテナスイッチ1101内の実線で示した経路と、破線で示した経路で系統を入れ変えればよい。
図12A,図12Bは、実施の形態3にかかる無線装置の整合調整機能部の処理例を示すフローチャートである。アンテナ整合調整機能部222のCPUが実施するプロトコルに基づく送信タイミング以外での送信処理およびインピーダンス整合調整の処理内容を示す。
初期状態でアンテナスイッチ1101は、図11の実線で示す接続を行っているとする。はじめに、アンテナ整合調整機能部222のCPUは、アプリ制御部201からの情報取得により、無線装置が通話状態またはウェブブラウズ状態となるまで待機する(ステップS1201:Noのループ)。無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態となると(ステップS1201:Yes)、CPUは、プロトコル以外の送信タイミングとして所定周期(例えば1秒毎)での送信を行うためのタイマ(1秒タイマ)の処理を開始する(ステップS1202)。
次に、CPUは、プロトコル機能部221から送信スケジュールを入手する(ステップS1203)。そして、CPUは、送信スケジュール以外の送信のタイミングが送信スケジュールのタイミングと重複していないか判断する(ステップS1204)。判断の結果、重複していなければ(ステップS1204:Yes)、送信スケジュール以外の送信(測定用送信)を行う(ステップS1205)。この測定用送信ではPA109をONにせず、OFFのまま行う。
次に、CPUは、RF機能部223の送信リソースはプロトコル(プロトコル機能部221)で使用されていないか確認する(ステップS1206)。確認結果、送信リソースがプロトコル上で使用されていなければ(ステップS1206:Yes)、ステップS1207に移行し、送信リソースがプロトコル上で使用されていれば(ステップS1206:No)、ステップS1203に戻る。
ステップS1207では、CPUは、送信リソースを確保し(ステップS1207)、整合部107に対する負荷レベルを変更しながらスキャンを行う(ステップS1208)。このスキャンにより、VSWR測定部108から進行波と反射波のレベルを読み出す(ステップS1209)。
この後、CPUは、アンテナスイッチ1101を切り替え(図11の点線に切り替え、ステップS1210)、整合部2(107b)で受信専用の受信専用アンテナ105bの負荷レベルを変更しながらスキャンする(ステップS1211)。このスキャンにより、VSWR測定部108から進行波と反射波のレベルを読み出す(ステップS1212)。
次に、CPUは、アンテナスイッチ1101を元に戻し(ステップS1213)、送信リソースをリリース(開放)し(ステップS1214)、ステップS1217に移行する。
一方、ステップS1204にて、送信スケジュール以外の送信のタイミングが送信スケジュールのタイミングと重複していれば(ステップS1204:No)、CPUは、整合部107に対する負荷レベルを変更しながらスキャンを行う(ステップS1215)。そして、CPUは、VSWR測定部108から進行波と反射波のレベルを読み出し(ステップS1216)、ステップS1217に移行する。
ステップS1217では、CPUは、VSWR測定部234によりS11を算出する(ステップS1217)。この後、CPUは、S11が最低となる負荷値を算出し(ステップS1218)、算出した負荷値に変更する(ステップS1219)。
この後、CPUは、無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態であるか再度判断する(ステップS1220)。無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態であれば(ステップS1220:Yes)、タイマ周期分待った後に(1秒wait、ステップS1221)、ステップS1203に戻る。一方、無線装置100が通話状態またはウェブブラウズ状態のいずれでもなければ(ステップS1220:No)、負荷値を初期化し(ステップS1222)、以上の処理を終了する(ステップS1201に戻る)。
実施の形態3によれば、実施の形態1の効果を有する。さらに、実施の形態3では、プロトコルの送信に対しては送受信アンテナのスキャンのみを行い、プロトコル以外の測定用送信の場合に送受信アンテナと受信専用アンテナのスキャンを行う。すなわち、プロトコルに基づく送信を送受信アンテナ以外から送信させない。したがって、プロトコルの送信時に受信専用アンテナの整合は行わないが、送受信アンテナの性能確認を、この送受信アンテナ一つに対してだけ処理実施すればよく、複数のアンテナを有する場合でも簡単に短時間でインピーダンス調整できるようになる。
上記の説明では、無線装置のアンテナを2本の例としたが、2本以上の構成でも同様な処理でき、アンテナスイッチで整合対象の受信専用アンテナと送受信アンテナを切り替えればよい。また、アンテナを送受信アンテナとして説明したが、送信と受信のアンテナが異なる構成に対しても本発明は同様に適用可能である。
また、実施の形態1〜3を適宜組み合わせることもでき、この場合、各実施の形態の効果を同時に得ることができるようになる。
以上説明した実施の形態の無線装置は、対象機器としてスマートフォンに限らずタブレット等の他の携帯型の無線装置にも同様に適用できる。
なお、本実施の形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムを対象機器(上記無線装置等)等のコンピュータ(CPU等のプロセッサ)で実行することにより実現することができる。本制御プログラムは、磁気ディスク、光ディスク、USB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)無線通信プロトコルに基づく送信スケジュールの空き期間に、測定用信号を送信部から送信させ、前記測定用信号の進行波と反射波の割合の算出に基づき、アンテナのインピーダンス調整を行うベースバンド部を有することを特徴とする無線装置。
(付記2)前記ベースバンド部は、前記無線通信プロトコルの送信スケジュールでの送信と、前記測定用信号の送信とが重複しない制御を行うことを特徴とする付記1に記載の無線装置。
(付記3)前記ベースバンド部は、前記測定用信号の送信時にパワーアンプをOFFにすることを特徴とする付記1または2に記載の無線装置。
(付記4)前記ベースバンド部は、装置本体が有するウェブブラウジングおよび通話アプリケーションの動作情報に基づき、前記測定用信号の送信周期を決定することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の無線装置。
(付記5)前記ベースバンド部は、あらかじめ装置本体の使用状態別の前記反射波のピーク値をメモリに設定保持し、前記測定用信号の送信時に前記メモリを参照して、前記ピーク値の領域を部分的に測定することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の無線装置。
(付記6)前記アンテナは、送受信を行う送受信アンテナと、受信専用アンテナとを含み、
前記ベースバンド部は、前記測定用信号を送信する期間、前記送受信アンテナと、前記受信専用アンテナを切り替えてそれぞれの前記割合を算出することを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の無線装置。
(付記7)コンピュータに、
無線通信プロトコルに基づく送信スケジュールの空き期間に、測定用信号を送信部から送信させ、
前記測定用信号の進行波と反射波の割合の算出に基づき、アンテナのインピーダンス調整を行わせる、
処理を実行させることを特徴とする無線制御プログラム。