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JP2017165603A - 多孔質炭素材料、およびその製造方法 - Google Patents

多孔質炭素材料、およびその製造方法 Download PDF

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JP2017165603A JP2016050261A JP2016050261A JP2017165603A JP 2017165603 A JP2017165603 A JP 2017165603A JP 2016050261 A JP2016050261 A JP 2016050261A JP 2016050261 A JP2016050261 A JP 2016050261A JP 2017165603 A JP2017165603 A JP 2017165603A
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貴文 岩佐
大矢 修生
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Abstract

【課題】特定範囲の孔径分布を有する細孔が形成された、多孔質炭素材料を提供する。【解決手段】本発明の多孔質炭素材料の製造方法は、フェノール樹脂組成物を調製する調製工程と、調製された前記フェノール樹脂組成物を、400〜600℃の範囲の温度で熱処理して炭化前駆体を得る熱処理工程と、前記炭化前駆体を、粉砕して粉末状に加工して炭化前駆体粉末を得る粉末加工工程と、前記炭化前駆体粉末を、不活性ガス雰囲気下、700〜1100℃の範囲の温度で炭素化処理して炭素粉末を得る炭素化工程と、前記炭素粉末を、空気雰囲気下、400〜600℃の範囲の温度で焼成を行う後処理工程と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は多孔質炭素材料及びその製造方法に関し、特に特定範囲の孔径を有する多孔質炭素材料の製造方法に関するものである。
多孔質炭素材料は無数の細孔を有しており、その吸着能力を活かして、ガス分離や、気体中、或いは液体中の有害物質などの被吸着物を除去するための吸着材として利用されている。近年では、多孔質炭素材料は、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタの分極性電極材などの電子材料としても利用されるなど、その適用分野も多岐にわたる。
多孔質炭素材料の製造方法としては、ヤシ殻等のセルロース質や、リグニン等の植物性原料、石炭または石油系のタールやピッチといった鉱物性原料、更にはフェノール樹脂やポリアクリロニトリル等の合成樹脂等を原料とし、これを水蒸気や二酸化炭素などのガス類や、塩化亜鉛、塩化カルシウムなどの塩化物、水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物等の薬剤で処理して賦活化する方法が知られている。
特に、水酸化カリウムなどの薬剤による賦活では、高機能な多孔質炭素材料が得られる反面、装置にかかる負担が大きくなりやすい、残留する金属のコンタミによる性能低下、賦活過程で生成した金属カリウムによる発火の危険性等で工業プロセスにしにくいなどの問題があった。
そこで、特許文献1、2に記載されたように、フェノール樹脂を焼成することにより、所望する炭素材料を形成することが試みられている。フェノール樹脂を焼成することによって作製された炭素材料では上述のアルカリ賦活で発生する問題を回避することができ、かつ製造設備にかかる負担も減らすことができる。
特開2001−089119号公報 特開2004−026954号公報
しかしながら、特許文献1および2で開示されている炭素材料に形成された細孔は、半径が数nm〜数百nmの比較的広い分布を有する孔構造であり、とりわけ直径が0.7nm〜1.2nmの比較的狭い孔径分布が必要とされるガス分離や電気二重層キャパシタなどに用いる場合は、無駄になる細孔が多く、このために炭素材料の体積をコンパクトにできないという問題があった。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、特定範囲に高い孔径分布を有する細孔が形成された多孔質炭素材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、フェノール樹脂組成物を特定の手順および条件下で焼成することにより、具体的には、フェノール樹脂組成物を原料として、不活性ガス雰囲気下で炭化し、さらに後処理として空気焼成することにより、特定範囲に高い孔径分布を有する細孔が形成された多孔質炭素材料を創製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下[1]〜[11]の特徴を有するものである:
[1]フェノール樹脂組成物を調製する調製工程と、調製された前記フェノール樹脂組成物を、400〜600℃の範囲の温度で熱処理して炭化前駆体を得る熱処理工程と、前記炭化前駆体を、粉砕して粉末状に加工して炭化前駆体粉末を得る粉末加工工程と、前記炭化前駆体粉末を、不活性ガス雰囲気下、700〜1100℃の範囲の温度で炭素化処理して炭素粉末を得る炭素化工程と、前記炭素粉末を、空気雰囲気下、400〜600℃の範囲の温度で焼成を行う後処理工程と、を有することを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
[2]前記炭素化工程で使用する不活性ガス雰囲気中に、酸素を含めることを特徴とする[1]に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
[3]前記炭化前駆体粉末の粒径を、略5〜50μmとすることを特徴とする[1]または[2]に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
[4]前記炭素化工程を、700〜1000℃で2〜40時間保持して行うことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一つに記載の多孔質炭素材料の製造方法。
[5]前記後処理工程を、500〜600℃で5〜30分間保持して行うことを特徴とする[4]に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
[6]前記フェノール樹脂組成物として、ポリアミック酸が含まれるものを用いることを特徴とすることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一つに記載の多孔質炭素材料の製造方法。
[7]前記フェノール樹脂組成物に含めるフェノール樹脂を、ノボラック型フェノール樹脂とすることを特徴とする[6]に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
[8]前記ポリアミック酸として、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンからなるものを用いることを特徴とする[6]に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
[9]前記フェノール樹脂組成物として、フェノール樹脂に対して重量比1〜50%のポリアミック酸を反応させることにより得られる変性フェノール樹脂を用いることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一つに記載の多孔質炭素材料の製造方法。
[10]窒素吸着等温線からDFT法により求めた細孔分布曲線において、細孔径が0.7nm以上、1.3nm以下の範囲にピークを有し、該ピークを中心とする半値幅が0.8nm以下であることを特徴とする多孔質炭素材料。
[11]0.7nmより大きい孔径を有する細孔からなる比表面積が、0.7nmより小さい孔径を有する細孔からなる比表面積より大きいことを特徴とする[10]に記載の多孔質炭素材料。
本発明の多孔質炭素材料の製造方法によれば、特定範囲の孔径、具体的には0.8〜1.2nmの範囲の細孔を多く有し、かつ比表面積の比較的大きな多孔質炭素材料を形成することができる。本発明によって得られる多孔質炭素材料では、上記範囲外の孔径の細孔含有率が低く、上記範囲内の孔径の細孔が、従来の多孔質炭素材料に比べて狭い範囲に密集して分布している。そのため、本発明の多孔質炭素材料は、上記範囲外の孔径の細孔を含まない分、従来の多孔質炭素材料よりも体積を小さくすることができる。
本発明の多孔質炭素材料は、窒素吸着等温線からDFT法により求めた細孔分布曲線において、細孔径が0.8〜1.2nmの範囲にピークを有し、該ピークを中心とする半値幅が0.3nm以上、1.0nm以下であり、かつ比表面積が1000m/g以上の比較的大きい構造を有する。
なお、本発明において「ピークにおける半値幅」とは、図3を参照して説明すると、細孔分布曲線において、比表面積のピーク値(図3中の符号P)が半分となる比表面積における最小細孔径から最大細孔径までの幅(図3中の符号W)をいう。
本発明の多孔質炭素材料は、含有する細孔の多くが上記範囲の孔径を有するため、これを例えば電気二重層キャパシタに適用した場合、大きな静電容量を得ることができる。したがって、燃料電池自動車の補助電源、夜間の余った電力を蓄える貯蔵庫等に活用することができる。なお、本発明の多孔質炭素材料は、一般的には難しいとされている、エネルギー源となる水素の貯蔵を行う手段としても活用することができる。
また、本発明の多孔質炭素材料は、吸着剤としての機能を有している。そのため、例えば、試験対象の特定の物質を選別して吸着固定するステージとして、あるいは、流体を流す際に、有害物質等の特定の物質のみを吸着して堰き止めるフィルターとして用いることもできる。なお、多孔質炭素材料の吸着剤としての機能は、吸着式ヒートポンプを構成する熱交換器として活用することもできる。
本発明の実施例1により製造した多孔質炭素材料におけるミクロ孔の細孔の分布を示す図である。 本発明の実施例2により製造した多孔質炭素材料におけるミクロ孔の細孔分布を示す図である。 本発明における半値幅を定義するための説明図である。
本発明の多孔質炭素材料は、窒素吸着等温線からDFT法により求めた細孔分布曲線において、細孔径が0.7nm以上、1.3nm以下の範囲にピークを有し、このピークにおける半値幅が0.8nm以下であることを特徴とする。
また、本発明の多孔質炭素材料は、0.7nmより大きい孔径を有する細孔からなる比表面積が、0.7nmより小さい孔径を有する細孔からなる比表面積より大きいことを特徴とする。
本発明の多孔質炭素材料は、フェノール樹脂溶液、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸溶液、架橋剤溶液を混合して調製されたフェノール樹脂組成物を原料として使用するものである。
ここでいうフェノール樹脂とは、ノボラック型フェノール樹脂であり、フェノール性水酸基構造を基本骨格とするもの全てを含むことができる。具体的にはフェノール、クレゾール、ナフトールなどを基本骨格としたノボラック型フェノール樹脂であり、これらの基本骨格は単独または2種以上含まれていてもよく、ノボラック型フェノール樹脂は単独または2種以上の混合物として使用できる。
フェノール樹脂溶液の溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではなく、2種以上を混合して使用してもよい。
ポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、溶媒存在下、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンを反応させることにより得られる。
芳香族酸二水和物としては、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニル−3,3‘,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,4‘−オキシジフタル酸二無水物、4,4‘−オキシジフタル酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
芳香族ジアミンとしては、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、3,3‘−ジアミノジフェニルメタン、3,4‘−ジアミノジフェニルメタン、4,4‘−ジアミノジフェニルメタン、3,4‘−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4‘−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−p−テルフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
ポリアミック酸溶液の溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を混合して使用してもよい。
架橋剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を混合して使用してもよい。
架橋剤の溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を混合して使用してもよい。
(調製工程)
フェノール樹脂溶液、ポリアミック酸溶液、架橋剤溶液を混合して調製された溶液は、フェノール樹脂に対するポリアミック酸、および架橋剤の重量比が、それぞれ1〜50%、さらに好ましくは5〜20%となるように混合溶液を調製するのが好ましい。
前記混合溶液を段階的に温度を上げ300〜350℃で10分〜1時間処理することにより、フェノール樹脂にポリアミック酸を化学結合させた変性フェノール樹脂(フェノール樹脂組成物)を得る。
(熱処理工程)
調製工程を経て得られた変性フェノール樹脂を、不活性ガス下、400〜600℃の範囲の温度で1〜5時間の熱処理を行い、固形化された炭化前駆体を得る。
(粉末加工工程)
さらに、この炭化前駆体を、1〜50μm、好ましくは5〜20μmに粉砕して粉末状に加工することにより、炭化前駆体粉末を得る。
(炭素化工程)
次に、炭化前駆体粉末を電気炉などの熱処理炉に入れ、炉内を5〜20Paまで減圧後、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを導入することにより、常圧に戻す。続いて、不活性ガスの対流の影響によって炉内に滞留する酸素原子、炉内の水分由来の酸素原子等の微量酸素の存在下で、室温から約5℃/minで、700〜1100℃、好ましくは700〜1000℃の範囲の温度まで昇温し、その温度で2〜40時間保持し、炭素化処理して炭素粉末を得る。
本発明において「炭素化」とは、有機物質である炭化前駆体を熱処理して、炭素質物質(ほぼ炭素原子のみからなる物質)に変換することを意味する(例えば、JIS M0104−1984参照)。
(後処理工程)
この被炭素化処理体を400〜600℃、好ましくは500〜600℃で5〜30分間、空気焼成(後処理)することにより、特定の細孔径範囲にシャープな細孔径分布を有する多孔質炭素材料が得られる。ここでの空気焼成は、空気または空気と同等の組成の雰囲気下で行う焼成を意味している。
本実施形態に係る多孔質炭素材料の細孔形成のメカニズムは、明確ではないが、フェノール樹脂をさらに分解温度の高いポリイミド前駆体であるポリアミック酸により化学結合させた変性フェノール樹脂を原料として用い、この変性フェノール樹脂を700〜1100℃で一旦炭化した後、空気焼成により後処理することで特定の細孔構造が形成されるものと考えられる。
また、本実施形態に係る多孔質炭素材料の製造方法によれば、窒素吸着等温線からDFT法により求めた細孔分布曲線において、細孔径が0.7nm以上1.3nm以下、好ましくは0.8nm以上1.2nm以下の範囲にピークを有し、該ピークを中心とする半値幅が0.8nm以下であり、好ましくは0.7nmであり、より好ましくは0、6nmであり、さらに好ましくは0.5nmであり、かつ比表面積が1000m/g以上の比較的大きな多孔質炭素材料を形成することができる。半値幅の下限に制限はないが、目安を言えば、0.2nm、0.3nm、0.4nm程度である。
また、本実施形態に係る多孔質炭素材料の製造方法によれば、上記細孔分布曲線において、0.7nmより大きい孔径を有する細孔からなる比表面積が、0.7nmより小さい孔径を有する細孔からなる比表面積より大きくなる。
このように、本実施形態によって得られる多孔質炭素材料では、上記範囲外の孔径の細孔含有率が低く、上記範囲内の孔径の細孔が、従来の多孔質炭素材料に比べて狭い範囲に密集して分布している。そのため、本発明の多孔質炭素材料は、上記範囲外の孔径の細孔を含まない分、従来の多孔質炭素材料よりも体積を小さくすることができる。
本実施形態により得られた多孔質炭素材料は、公知の電極の作製方法を用いて電気二重層キャパシタ電極等とすることができる。また、本実施形態の多孔質炭素材料は、含有する細孔の多くが上記範囲の孔径を有するため、これを例えば電気二重層キャパシタに適用した場合、大きな静電容量を得ることができる。したがって、燃料電池自動車の補助電源、夜間の余った電力を蓄える貯蔵庫等に活用することができる。なお、一般的には難しいとされている、エネルギー源となる水素の貯蔵を行う手段としても活用することができる。
また、本実施形態の多孔質炭素材料は、吸着剤としての機能を有している。そのため、例えば、試験対象の特定の物質を選別して吸着固定するステージとして、あるいは、流体を流す際に、有害物質等の特定の物質のみを吸着して堰き止めるフィルターとして用いることもできる。なお、多孔質炭素材料の吸着剤としての機能は、吸着式ヒートポンプを構成する熱交換器として活用することもできる。
以下、実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(変性フェノール樹脂の合成)
窒素雰囲気下で、セパラブルフラスコに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(12.244g,61.1mmol)、1−メチル−2−ピロリドン170gを加え、攪拌することにより溶解させた。この溶液に、段階的にジフェニル−3,3‘,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(17.816g、60.6mmol)を加え、攪拌しながら反応させることにより15wt%ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液の粘度は、380poiseであった。
次に、空気雰囲気下で、フェノール樹脂(明和化成株式会社製:FT−001−01)15gに1−メチル−2−ピロリドン45gを加え、攪拌することにより溶解させ、25wt%フェノール樹脂溶液を得た。
さらに、空気雰囲気下で、架橋剤(ヘキサメチレンテトラミン)2gにメタノール20gを加え、攪拌することにより溶解させ、9.1wt%架橋剤溶液を得た。
空気雰囲気下で、上記のように作製した15wt%ポリアミック酸溶液9.45gに、25wt%フェノール樹脂溶液57.3gを加え、均一状態となるまで攪拌した。次に、この溶液に9.1wt%架橋剤溶液15.8gを加え、一晩攪拌することにより、均一な混合溶液を得た。この混合溶液42gをプラスチック容器に入れ、80℃で2時間、さらに110℃で4時間、熱処理を行った。この熱処理物をアルミナ製るつぼに移し、130℃で1時間、180℃で2時間、さらに330℃で30分間、熱処理を行うことにより、変性フェノール樹脂9.3gを得た。
(炭化前駆体の合成)
上記の手順により得られた変性フェノール樹脂9.3gを、高温雰囲気炉(アドバンテック東洋株式会社製KA−1702S、発熱体:二珪化モリブデン、断熱材:アルミナファイバーボード、炉内容積:約9L)に入れ、炉内を5〜20Paまで減圧した後、窒素ガスを導入することによって常圧に戻し、1L/minの窒素気流中、室温から10℃/minで500℃まで昇温し、この温度で2時間保持し、冷却することにより、炭化前駆体6.2gを得た。この炭化前駆体を遊星ボールミルにより粉砕し、平均粒子径8〜10μmの粉末を得た。
(実施例1)
上記の手順により得られた炭化前駆体粉末を高温雰囲気炉に入れ、炉内を20Paまで減圧した後、窒素ガスを導入することにより常圧に戻し、1L/minの窒素気流中、室温から5℃/minで600℃まで昇温し、この温度で2時間保持後、さらに5℃/minで900℃まで昇温し、この温度で20時間保持し冷却することにより、BET比表面積1174m/gの炭素粉末を得た。この炭素粉末を、後処理として、室温から10℃/minで500℃まで昇温し、この温度で10分間空気焼成することにより、表1に示す細孔特性を有する多孔質炭素材料を得た。
得られた多孔質炭素材料について、カンタクローム社製ガス吸着量測定装置(オートソーブ1−MP)で、77Kにおける窒素吸脱着測定を行った。得られた吸着等温線から、窒素BET法を用いて多孔質炭素材料の比表面積(BET比表面積)を算出した。
窒素BET法は、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより窒素吸着等温線を測定し、測定したデータを下記(1)式で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。より具体的には、液体窒素温度(77K)下で、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料)に対する窒素ガスの吸着等温線の傾きおよび切片から、下記(1)式を用いてVを算出し、さらに下記(2)式を用いて、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料)の比表面積Sを計算する方法である。なお、吸着等温線は、横軸にP/P、縦軸にP/{V(P−P)}を取ってプロットして得られる曲線(BETプロット)である。
P/{V(P−P)}=1/VC+{(C−1)/VC}P/P (1)
=V・N・A (2)
V:窒素ガスの容積
:第一層に吸着したガスの容積
P:窒素の平衡時の圧力
:窒素の飽和蒸気圧
C:吸着分子の凝縮係数
N:アボガドロ数
:窒素ガス1分子の占める面積
また、全細孔容積のうち、BJH法から2〜50nmのメソ孔容積を、DFT法から2nm未満のミクロ孔容積を算出した。
BJH法によるメソ孔容積の算出は、次の手順によって行うことができる。
まず、吸着剤に対する窒素ガスの脱着等温線を求める。この脱着等温線に基づいて、細孔が窒素分子で満たされた状態から窒素分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さt、および、その際に生じた孔の内径rを求め、それらを足して細孔内径rを算出する。そして、下記(3)、(4)式を用いて、細孔容積Vpnを算出する。
そして、細孔半径および細孔容積から細孔径2rに対する細孔容積変化率(dV/dr)をプロットすることにより、細孔分布曲線が得られる。最後に、この細孔分布曲線をメソ孔径の範囲で積分することにより、メソ孔容積が求められる。
pn=R・dV−R・dt・c・ΣApj (3)
=rpn /(rkn−1+dt (4)
k:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dVn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積の変化量
dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量
kn:窒素の第n回目の着脱が生じたときのコア半径
c:固定値
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
ΣApj:n回分の細孔の壁面の積算値
DFT法によるミクロ孔容積の算出は、予め、様々な細孔の孔径に対応する吸着等温線をシミュレーションによって算出しておき、それらのうち、測定データをフィッティングできた吸着等温線について解析して行う。
図1に、窒素吸着等温線からDFT法によって求めたミクロ孔の細孔分布曲線を示す。この細孔分布は、所定の細孔径に対応する圧力としたときの吸着等温線の傾きおよび切片から、上記BET法の手順によって比表面積を算出し、細孔径と比表面積との関係をプロットしたものである。
得られた多孔質炭素材料の電気二重層キャパシタとしての特性評価を行うため、多孔質炭素材料、アセチレンブラック、および60%PTFE水溶液を、多孔質炭素材料/アセチレンブラック(導電助剤)/PTFE(バインダー)の重量比が80/10/10となるように混合した。得られた混合物を、メノウ乳鉢で混練後、ロールプレスすることにより、膜厚150〜200μmのシート状に加工し、シート状電極とした。このシート状電極から、直径が16mmの円板状になるように2枚カットし、150℃、3時間真空乾燥することにより、ディスク状電極を得た。
次に、アルゴン雰囲気下で、得られたディスク状電極を、1M濃度のテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを電解質塩として含むプロピレンカーボネート溶液(電解液)に30分間浸漬した後、タクミ技研社製2032型コイン電池に組み込み、電気二重層キャパシタの容量評価を行った。
コイン電池の組み立ては、次の手順により行った。まず、SUS製正極ボディ上に、Al集電体(直径16mm、膜厚50μm)−正極側電極(直径16mm)−セパレータ(PP(ポリプロピレン製)不織布;直径18mm、膜厚25μm×2枚)−PP製ガスケット−負極側電極(直径16mm)−Al集電体(直径16mm、50μm)の順に重ねた。これに電解液を注入し、さらにSUS製スペーサー(直径16mm、膜厚0.5mm)およびSUS製ウェーブワッシャーを重ねた。最後にSUS製負極ボディを載せ、カシメ機でかしめた。得られたコイン電池をビー・エー・エス社製電気化学アナライザー660Bにて、20〜25℃の室温下で、50mA/gの定電流での充放電を繰り返し行い、その3サイクル目の電圧変化から、公知の手法により体積当りの静電容量を算出した。
(実施例2)
炭素化工程において、炭化前駆体粉末の仕込量を変えた以外は、実施例1と同様の手順で、BET比表面積1606m/gの炭素粉末を得た。後処理についても、実施例1と同様の手順で行った。後処理を行って得られた多孔質炭素材料に対して、実施例1と同様に、ガス吸着量測定、および電気二重層キャパシタの容量評価を行った。その結果を表1に示す。また、図2にミクロ孔の細孔分布を示す。この細孔分布も、実施例1と同様の手順でプロットしたものである。
(比較例1)
実施例1において、後処理として500℃で10分間空気焼成しない点以外は、実施例1と同様の手順で多孔質炭素材料を得た。この多孔質炭素材料に対して、実施例1と同様に、ガス吸着量測定、および電気二重層キャパシタの容量評価を行った。その結果を表1に示す。また、図1にミクロ孔の細孔分布を示す。この細孔分布も、実施例1と同様の手順でプロットしたものである。
(比較例2)
実施例2において、後処理として500℃で10分間空気焼成しない点以外、実施例1と同様の手順で多孔質炭素材料を得た。この多孔質炭素材料に対して、実施例1と同様に、ガス吸着量測定、および電気二重層キャパシタの容量評価を行った。その結果を表1に示す。また、図1にミクロ孔の細孔分布を示す。この細孔分布も、実施例1と同様の手順でプロットしたものである。
Figure 2017165603
表1に示すように、空気焼成を実施しなかった比較例1に対し、空気焼成を実施した実施例1では、孔径が0.7nmより小さい細孔からなる比表面積が減少し、孔径が0.7nmより大きい細孔からなる比表面積が増加した。また、表1に示すように、空気焼成を実施しなかった比較例2に対し、空気焼成を実施した実施例2では、径が0.7nmより小さい細孔からなる比表面積が減少し、径が0.7nmより大きい細孔からなる比表面積が増加した。実施例1、2では、0.7nmより大きい孔径を有する細孔からなる比表面積が、0.7nmより小さい孔径を有する細孔からなる比表面積より大きくなった。
また、実施例1、2で得られた多孔質炭素材料では、含有する全細孔の容積に対するミクロ孔の容積の割合が、いずれも87%程度となった。
特に、図1および図2より、実施例1、2の多孔質炭素材料では、細孔径が0.8〜1.2nmの範囲にあるときに、比表面積がピーク値を示す、すなわち細孔径ピークを有することがわかる。
図1より、実施例1の多孔質炭素材料では、窒素吸着等温線からDFT法により求めた細孔分布曲線において、細孔径が0.8〜1.2nmの範囲にピークを有し、該ピークを中心とする半値幅が0.3nm以上、1.0nm以下であることが分かる。また、図2より、実施例2の多孔質炭素材料でも、窒素吸着等温線からDFT法により求めた細孔分布曲線において、細孔径が0.8〜1.2nmの範囲にピークを有し、該ピークを中心とする半値幅が0.3nm以上、1.0nm以下であることが分かる。
また、空気焼成した場合、空気焼成しなかった場合に比べ、1.1倍以上の高い静電容量が得られた。このように、後処理として空気焼成することにより、特定の細孔径ピークを有する性能の高い多孔質炭素材料が得られることがわかる。
本発明の方法によって製造された多孔質炭素材料は、電気二重層キャパシタ用途に適応した場合、高い静電容量が得られる。また、本発明の多孔質炭素材料は、ガス分離や吸着剤、その他にも用いることができる。

Claims (11)

  1. フェノール樹脂組成物を調製する調製工程と、
    調製された前記フェノール樹脂組成物を、400〜600℃の範囲の温度で熱処理して炭化前駆体を得る熱処理工程と、
    前記炭化前駆体を、粉砕して粉末状に加工して炭化前駆体粉末を得る粉末加工工程と、
    前記炭化前駆体粉末を、不活性ガス雰囲気下、700〜1100℃の範囲の温度で炭素化処理して炭素粉末を得る炭素化工程と、
    前記炭素粉末を、空気雰囲気下、400〜600℃の範囲の温度で焼成を行う後処理工程と、を有することを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
  2. 前記炭素化工程で使用する不活性ガス雰囲気中に、酸素を含めることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  3. 前記炭化前駆体粉末の粒径を、略5〜50μmとすることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  4. 前記炭素化工程を、700〜1000℃で2〜40時間保持して行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  5. 前記後処理工程を、500〜600℃で5〜30分間保持して行うことを特徴とする請求項4に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  6. 前記フェノール樹脂組成物として、ポリアミック酸が含まれるものを用いることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  7. 前記フェノール樹脂組成物に含めるフェノール樹脂を、ノボラック型フェノール樹脂とすることを特徴とする請求項6に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  8. 前記ポリアミック酸として、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンからなるものを用いることを特徴とする請求項6に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  9. 前記フェノール樹脂組成物として、フェノール樹脂に対して重量比1〜50%のポリアミック酸を反応させることにより得られる変性フェノール樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  10. 窒素吸着等温線からDFT法により求めた細孔分布曲線において、細孔径が0.7nm以上、1.3nm以下の範囲にピークを有し、該ピークにおける半値幅が0.8nm以下であることを特徴とする多孔質炭素材料。
  11. 0.7nmより大きい孔径を有する細孔からなる比表面積が、0.7nmより小さい孔径を有する細孔からなる比表面積より大きいことを特徴とする請求項10に記載の多孔質炭素材料。
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CN115535998A (zh) * 2022-10-08 2022-12-30 北京化工大学 一种用于钠离子电池的结构可调的酚醛树脂基球状硬炭负极材料及其制备方法

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