以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、第1実施形態に係る溶接電源装置A1を説明するための図である。
溶接電源装置A1は、溶接トーチの先端から突出するワイヤ電極の先端と、被加工物との間にアークを発生させ、アークに電力を供給するものである。図1においては、アークを負荷Lとして示している。図1に示すように、溶接電源装置A1は、直流電源1、インバータ回路2、変圧器3、電力変換回路4、平滑用リアクトル5、入力側電圧センサ6、出力側電流センサ7、および、制御回路8を備えている。
直流電源1は、直流電流を出力するものであり、例えば、電力系統から入力される交流電流を整流する整流回路と、平滑する平滑コンデンサとを備えている。なお、直流電源1は、交流電流を直流電流に変換して出力するものに限られない。例えば、燃料電池、蓄電池、太陽電池などの直流電流を出力するものであってもよく、インバータ回路2に直流電流を出力するものであればよい。
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電流を高周波電流に変換して、変圧器3に出力する。インバータ回路2は、単相フルブリッジ型のインバータであり、4個のスイッチング素子21〜24を備えている。本実施形態では、スイッチング素子21〜24としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)を使用している。なお、スイッチング素子21〜24はIGBTに限定されず、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタなどであってもよい。
スイッチング素子21とスイッチング素子22とは、スイッチング素子21のエミッタ端子とスイッチング素子22のコレクタ端子とが接続されて、直列接続されている。スイッチング素子21のコレクタ端子は直流電源1の正極側に接続され、スイッチング素子22のエミッタ端子は直流電源1の負極側に接続されて、ブリッジ構造を形成している。同様に、スイッチング素子23とスイッチング素子24とが直列接続されてブリッジ構造を形成している。スイッチング素子21とスイッチング素子22の接続点には出力ラインが接続され、スイッチング素子23とスイッチング素子24の接続点にも出力ラインが接続されている。これら2つの出力ラインの間に、変圧器3の一次側巻線31が接続されている。各スイッチング素子21〜24には、それぞれ逆並列にフライホイールダイオードが接続されている。各スイッチング素子21〜24のゲート端子には、駆動信号が入力される。各スイッチング素子21〜24は、それぞれ駆動信号に基づいて、オン状態とオフ状態とを切り替えられる。これにより、直流電流が交流電流に変換される。
溶接電源装置A1の出力制御は電力変換回路4で行われるので、インバータ回路2は出力制御を行わない。インバータ回路2は、直流電流を所定の周波数の高周波電流に変換するだけなので、所定の周波数で所定のデューティ比を有するパルス信号が、駆動信号として、インバータ回路2に入力される。なお、図1においては、インバータ回路2に駆動信号を入力する構成の記載を省略している。また、インバータ回路2は、これに限られない。
変圧器3は、インバータ回路2が出力する高周波電圧を変圧して、電力変換回路4に出力する。変圧器3は、一次側巻線31の2つの端子に電圧を印加され、一次側巻線31と二次側巻線32の巻き数比に応じた電圧に変圧して、二次側巻線32の2つの端子から出力する。変圧器3は、インバータ回路2が出力する高周波を入力されるので、高周波用の変圧器とすることができる。高周波用の変圧器は、低周波用に比べて軽量で小さいので、溶接電源装置A1を小型軽量化することができる。
電力変換回路4は、変圧器3より入力される高周波電力を、制御回路8より入力される駆動信号に応じて変換して、出力する。電力変換回路4は、2つの入力端子a,bと、2つの出力端子u,vを備えている。入力端子aは、変圧器3の二次側巻線32の一方の端子に接続され、入力端子bは、変圧器3の二次側巻線32の他方の端子に接続されている。また、出力端子uは、平滑用リアクトル5を介して、溶接電源装置A1の一方の出力端子dに接続され、出力端子vは、溶接電源装置A1の他方の出力端子eに接続されている。
電力変換回路4は、4つの双方向スイッチ41〜44を備えている。各双方向スイッチ41〜44は、交流電流を流すことができるスイッチであり、本実施形態では、2つのIGBTを逆直列接続したものを用いている。2つのIGBTはエミッタ端子同士が接続されており、各IGBTのコレクタ端子とエミッタ端子との間には、それぞれダイオードが逆並列に接続されている。2つのIGBTのゲート端子には、制御回路8より駆動信号が入力される。駆動信号がオン信号の場合、2つのIGBTのゲート端子がオンになる。この場合、一方の方向に流れる電流は、一方のIGBTと、他方のIGBTに接続されたダイオードとを流れ、他方の方向に流れる電流は、他方のIGBTと、一方のIGBTに接続されたダイオードとを流れる。つまり、双方向に電流を流すことができるので、交流電流を流すことができる。また、駆動信号がオフ信号の場合、2つのIGBTのゲート端子がオフになる。この場合、どちらの方向の電流も流れなくなる。つまり、双方向スイッチ41〜44は、入力される駆動信号に応じて、交流電流が流れる状態と、流れない状態とを切り替えることができる。なお、双方向スイッチ41〜44の構成は限定されず、交流電流が流れる状態と、流れない状態とを切り替えることができるものであればよい。例えば、2つのIGBTのコレクタ端子同士を接続するようにしてもよい。
双方向スイッチ41と双方向スイッチ42とは直列接続され、直列回路4aを構成し、双方向スイッチ43と双方向スイッチ44とは直列接続され、直列回路4bを構成している。直列回路4aおよび直列回路4bは、それぞれ、出力端子u,v間に並列接続されている。また、双方向スイッチ41と双方向スイッチ42との接続点は、入力端子aに接続され、双方向スイッチ43と双方向スイッチ44との接続点は、入力端子bに接続されている。
平滑用リアクトル5は、電力変換回路4の出力端子uと溶接電源装置A1の出力端子dとの間に直列接続されており、出力電流を安定させる。なお、平滑用リアクトル5は、電力変換回路4の出力端子vと溶接電源装置A1の出力端子eとの間に直列接続されていてもよい。出力端子d,eより出力される電流が、溶接電流として、負荷L(アーク)に流れる。
入力側電圧センサ6は、電力変換回路4の入力端子a,b間に配置されており、電力変換回路4の入力電圧(線間電圧)の瞬時値を検出する。入力側電圧センサ6は、検出した電圧信号Viを、制御回路8に入力する。制御回路8は、電圧信号Viをデジタル信号に変換して、入力電圧判別部86に入力する。本実施形態では、入力端子bの電位を基準としている。したがって、デジタル化された電圧信号Viは、入力端子aの電位が入力端子bの電位より高い場合に正の値になり、入力端子aの電位が入力端子bの電位より低い場合に負の値になる。電力変換回路4の入力電圧は交流電圧なので、デジタル化された電圧信号Viは、正の値の場合と負の値の場合がある。
出力側電流センサ7は、電力変換回路4の出力端子vと、溶接電源装置A1の出力端子eとの間の接続線に配置されており、電力変換回路4の出力電流の瞬時値を検出する。出力側電流センサ7は、検出した電流信号Ioを、制御回路8に入力する。制御回路8は、電流信号Ioをデジタル信号に変換して、減算部82に入力する。本実施形態では、電流の方向を、出力端子eから出力端子vに流れる場合を正の方向とし、逆に流れる場合を負の方向としている。したがって、デジタル化された電流信号Ioは、出力端子eから出力端子vの方向に流れている場合は正の値となり、出力端子vから出力端子eの方向に流れている場合は負の値となる。電力変換回路4の出力電流が交流電流の場合、デジタル化された電流信号Ioは、正の値と負の値の両方の値を取り得る。一方、電力変換回路4の出力電流が直流電流の場合、デジタル化された電流信号Ioは、正の値または負の値のいずれか一方の値となる。なお、出力側電流センサ7は、平滑用リアクトル5と溶接電源装置A1の出力端子dとの間(または、平滑用リアクトル5と電力変換回路4の出力端子uとの間)の接続線に配置してもよく、電力変換回路4の出力電流の瞬時値を検出できればよい。
制御回路8は、溶接電源装置A1を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路8は、フィードバック制御を行っており、本実施形態においては、出力電流を制御している。制御回路8は、電力変換回路4を制御するための駆動信号を生成して、電力変換回路4に出力する。実際には、制御回路8が生成した駆動信号は、ドライブ回路によって増幅されて、電力変換回路4に出力されるが、図1においては、ドライブ回路の記載を省略している。制御回路8は、出力電流設定部81、減算部82、補償信号生成部83、キャリア信号生成部84、PWM信号生成部85、入力電圧判別部86、および、駆動信号生成部87を備えている。
出力電流設定部81は、溶接電源装置A1の出力電流の目標信号I*を設定するものであり、設定された目標信号I*を減算部82に出力する。目標信号I*は、図示しない操作装置を操作者が操作することで設定される。なお、あらかじめ複数の目標信号I*を登録しておいて、操作装置の操作によって、選択するようにしてもよい。出力電流を直流電流とする場合は、目標信号I*を所望の直流信号とすればよく、出力電流を交流電流とする場合は、目標信号I*を所望の周波数の交流信号とすればよい。また、出力電流を急減させる場合は、目標信号I*を急減すればよい。
減算部82は、出力側電流センサ7より入力される電流信号Ioと、出力電流設定部81より入力される目標信号I*との偏差ΔI(=I*−Io)を算出して、補償信号生成部83に出力する。補償信号生成部83は、減算部82より入力される偏差ΔIに基づいて、例えばPI制御(比例積分制御)による補償信号を算出し、PWM信号生成部85に出力する。なお、補償信号生成部83は、例えばPID制御(比例積分微分制御)などの他の制御を行うようにしてもよい。キャリア信号生成部84は、例えば三角波などのキャリア信号を生成し、PWM信号生成部85に出力する。本実施形態においては、キャリア信号を、「0」を中心として正の値と負の値とで変化する信号としている。
PWM信号生成部85は、2つのPWM信号を生成するものである。PWM信号生成部85は、補償信号生成部83より入力される補償信号に「−1」を乗算することで、補償信号を反転させた反転信号を生成する。そして、補償信号と、キャリア信号生成部84より入力されるキャリア信号とを比較することでu相用のPWM信号を生成する。例えば、補償信号がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、補償信号がキャリア信号以下の場合にローレベルとなるパルス信号が、u相用のPWM信号として生成される。また、PWM信号生成部85は、反転信号とキャリア信号とを比較することで、v相用のPWM信号を生成する。u相用のPWM信号およびv相用のPWM信号が、本発明の「第1PWM信号」および「第2PWM信号」に相当する。各PWM信号には、デッドタイムが設けられる。PWM信号生成部85は、生成した各PWM信号を、駆動信号生成部87に出力する。出力電流設定部81、減算部82、補償信号生成部83、キャリア信号生成部84およびPWM信号生成部85が、本発明の「PWM制御部」に相当する。
入力電圧判別部86は、入力電圧の正負を判別する。入力電圧判別部86は、入力側電圧センサ6によって検出され、デジタル化された電圧信号Viを入力され、電圧信号Viが正の値であるか負の値であるかを判別する。具体的には、電圧信号Viが「0」以上であるか否かを判別する。入力電圧判別部86は、判別結果を判別信号として、駆動信号生成部87に出力する。入力電圧判別部86は、電圧信号Viが正の値である場合に、例えばハイレベル信号の判別信号を出力し、電圧信号Viが負の値である場合に、ローレベル信号の判別信号を出力する。入力側電圧センサ6および入力電圧判別部86が、本発明の「判別手段」に相当する。
駆動信号生成部87は、PWM信号生成部85より入力されるu相用のPWM信号およびv相用のPWM信号と、入力電圧判別部86より入力される判別信号とに基づいて、駆動信号を生成する。駆動信号生成部87は、電圧信号Viが正の値であることを示す判別信号(ハイレベル信号)が入力されている間はu相用のPWM信号となり、電圧信号Viが負の値であることを示す判別信号(ローレベル信号)が入力されている間はu相用のPWM信号を反転させた信号となる第1の駆動信号を生成する。そして、当該第1の駆動信号を、双方向スイッチ41に出力する。同様に、駆動信号生成部87は、判別信号(ハイレベル信号)が入力されている間はv相用のPWM信号となり、判別信号(ローレベル信号)が入力されている間はv相用のPWM信号を反転させた信号となる第2の駆動信号を生成する。そして、当該第2の駆動信号を、双方向スイッチ42に出力する。また、駆動信号生成部87は、判別信号(ハイレベル信号)が入力されている間はu相用のPWM信号を反転させた信号となり、判別信号(ローレベル信号)が入力されている間はu相用のPWM信号となる第3の駆動信号を生成する。そして、当該第3の駆動信号を、双方向スイッチ43に出力する。同様に、駆動信号生成部87は、判別信号(ハイレベル信号)が入力されている間はv相用のPWM信号を反転させた信号となり、判別信号(ローレベル信号)が入力されている間はv相用のPWM信号となる第4の駆動信号を生成する。そして、当該第4の駆動信号を、双方向スイッチ44に出力する。
図2は、駆動信号生成部87が行う駆動信号生成処理を説明するためのフローチャートである。当該駆動信号生成処理は、所定のタイミング毎に実施される。
まず、駆動信号生成部87は、入力電圧判別部86より判別信号を受信し、PWM信号生成部85よりu相用のPWM信号およびv相用のPWM信号を受信する(S1)。次に、判別信号に基づいて、電圧信号Viが正の値であるか否かを判別する(S2)。具体的には、判別信号がハイレベル信号であるかローレベル信号であるかを判別する。
電圧信号Viが正の値である場合(S2:YES)、駆動信号生成部87は、双方向スイッチ41にu相用のPWM信号を出力し、双方向スイッチ42にv相用のPWM信号を出力する(S3)。そして、双方向スイッチ43にu相用のPWM信号を反転させた信号を出力し、双方向スイッチ44にv相用のPWM信号を反転させた信号を出力する(S4)。一方、電圧信号Viが負の値である場合(S2:NO)、駆動信号生成部87は、双方向スイッチ41にu相用のPWM信号を反転させた信号を出力し、双方向スイッチ42にv相用のPWM信号を反転させた信号を出力する(S5)。そして、双方向スイッチ43にu相用のPWM信号を出力し、双方向スイッチ44にv相用のPWM信号を出力する(S6)。
所定のタイミング毎に、駆動信号生成処理が実施されることにより、双方向スイッチ41〜44には、それぞれ、第1〜第4の駆動信号が入力される。
図3は、駆動信号生成部87が出力する駆動信号を説明するための図である。
図3(a)は、入力電圧判別部86より入力される判別信号を示しており、高周波電圧である電力変換回路4の入力電圧(電圧信号Vi)の1周期分の波形が示されている。判別信号は、電圧信号Viが正の値の間はハイレベルとなり、電圧信号Viが負の値の間はローレベルとなっている。図3(b)は、PWM信号生成部85より入力されるu相用のPWM信号を示している。図3(c)は、PWM信号生成部85より入力されるv相用のPWM信号を示している。
図3(d)は双方向スイッチ41に入力される第1の駆動信号を示しており、図3(e)は双方向スイッチ42に入力される第2の駆動信号を示しており、図3(f)は双方向スイッチ43に入力される第3の駆動信号を示しており、図3(g)は双方向スイッチ44に入力される第4の駆動信号を示している。第1の駆動信号は、判別信号がハイレベルの間はu相用のPWM信号(図3(b)参照)と同じ波形であり、判別信号がローレベルの間はu相用のPWM信号を反転させた信号と同じ波形になっている。第2の駆動信号は、判別信号がハイレベルの間はv相用のPWM信号(図3(c)参照)と同じ波形であり、判別信号がローレベルの間はv相用のPWM信号を反転させた信号と同じ波形になっている。第3の駆動信号は、判別信号がハイレベルの間はu相用のPWM信号を反転させた信号と同じ波形であり、判別信号がローレベルの間はu相用のPWM信号と同じ波形になっている。第4の駆動信号は、判別信号がハイレベルの間はv相用のPWM信号を反転させた信号と同じ波形であり、判別信号がローレベルの間はv相用のPWM信号と同じ波形になっている。
図3(h)は、電力変換回路4の出力電圧を示している(出力端子uの電位が出力端子vの電位より高い場合を「正」とする)。電力変換回路4の入力電圧は、インバータ回路2のスイッチングに応じて、正の固定値と負の固定値とで切り替わるパルス状となる。入力電圧が正の固定値の場合、判別信号がハイレベルになる。この場合、第1の駆動信号と第4の駆動信号とがオンで第2の駆動信号と第3の駆動信号とがオフのときに、電力変換回路4の入力電圧が出力され、出力端子uの電位が出力端子vの電位より高くなる。また、第2の駆動信号と第3の駆動信号とがオンで第1の駆動信号と第4の駆動信号とがオフのときに、電力変換回路4の入力電圧の逆極性の電圧が出力され、出力端子uの電位が出力端子vの電位より低くなる。第1の駆動信号と第2の駆動信号とがオンで第3の駆動信号と第4の駆動信号とがオフのとき、および、第3の駆動信号と第4の駆動信号とがオンで第1の駆動信号と第2の駆動信号とがオフのときは、電力変換回路4の入力電圧は出力されず、出力端子uの電位が出力端子vの電位と同電位になる。つまり、u相用のPWM信号とv相用のPWM信号とに応じた電圧が出力される。
一方、入力電圧が負の固定値の場合、判別信号がローレベルになる。この場合、第3の駆動信号がu相のPWM信号となり、第4の駆動信号がv相のPWM信号となる。また、第1の駆動信号がu相用のPWM信号を反転した信号となり、第2の駆動信号がv相用のPWM信号を反転した信号となる。したがって、電位が高い入力端子bに接続された側の双方向スイッチ43に入力される第3の駆動信号がu相のPWM信号となり、双方向スイッチ44に入力される第4の駆動信号がv相のPWM信号となって、u相用のPWM信号とv相用のPWM信号とに応じた電圧が出力される。したがって、入力電圧の正負に関係なく、u相用のPWM信号とv相用のPWM信号とに応じて、電圧を出力することができる。
図4〜図6は、溶接電源装置A1の構成でシミュレーションを行った時の各波形を示している。各図(a),(b)とも、最上段は出力電流設定部81で設定された目標信号I*の波形を示しており、2段目は溶接電源装置A1(電力変換回路4)の出力電流を示す電流信号Ioの波形を示している。また、3段目は電力変換回路4への入力電圧を示す電圧信号Viの波形を示しており、最下段は電力変換回路4からの出力電圧の波形を示している。各図(b)は、それぞれ、各図(a)に示す波形を、時間軸を拡大して示したものである。いずれの場合も、電圧信号Viは周波数20kHzのパルス信号(各図(b)3段目参照)であり、キャリア信号の周波数も20kHzとしている。
図4は、目標信号I*として周波数が200Hzの正弦波を設定して、シミュレーションを行ったものである。この場合、出力電圧の波形(最下段参照)は、5mSの周期で、周波数が20kHzの正のパルスと負のパルスとが繰り返されるものとなっている。また、出力電流の波形(2段目参照)は、周波数が200Hzの正弦波になっていることが確認できる。
図5は、目標信号I*として周波数が200Hzの鋸歯状波を設定して、シミュレーションを行ったものである。この場合、出力電圧の波形(最下段参照)は、周波数が20kHzの正のパルスが続き、5mSの周期で、短い時間だけ負のパルスが現れる波形となっている。また、出力電流の波形(2段目参照)は、周波数が200Hzの鋸歯状波になっていることが確認できる。さらに、出力電流を急減させることができることも確認できた。
図6は、目標信号I*として周波数が200Hzの矩形波を設定して、シミュレーションを行ったものである。この場合、出力電圧の波形(最下段参照)は、周波数が20kHzの正のパルスが続き、5mSの周期で、短い時間だけ負のパルスが現れる波形となっている。また、出力電流の波形(2段目参照)は、周波数が200Hzの矩形波になっていることが確認できる。
いずれの場合も、目標信号I*として設定した波形と同様の電流波形を出力することができた。
本実施形態によると、PWM信号生成部85は、出力側電流センサ7より入力される電流信号Ioと、出力電流設定部81に設定された目標信号I*との偏差ΔIに基づいて、u相用のPWM信号およびv相用のPWM信号を生成する。そして、駆動信号生成部87は、PWM信号生成部85より入力されるu相用のPWM信号およびv相用のPWM信号と、入力電圧判別部86より入力される判別信号(入力電圧の正負を示す)とに基づいて、第1〜第4駆動信号を生成する。第1〜第4駆動信号は、電力変換回路4の入力電圧の正負に応じて反転する信号になる。電力変換回路4の各双方向スイッチ41〜44は、駆動信号生成部87より入力される第1〜第4駆動信号に基づいてスイッチングを行う。これにより、溶接電源装置A1の出力電流は、目標信号I*に応じて、フィードバック制御される。したがって、溶接電源装置A1は、目標信号I*として、直流電流を示す信号を設定すれば、直流電力を出力し、目標信号I*として、所望の周波数の交流信号を設定すれば、当該周波数の交流電力を出力する。つまり、溶接電源装置A1は、目標信号I*を変更するだけで、直流電力も交流電力も出力することができる。また、溶接電源装置A1は、目標信号I*を急減させることで、出力電流を急減させることができる。つまり、目標信号I*の変化だけで、低スパッタ回路と同じ機能を果たすことができる。以上のように、溶接電源装置A1は、様々な電源仕様に対応することができる。したがって、溶接の電源仕様に応じて、複数の溶接電源装置を用意する必要がない。
また、交流電力を出力する一般的な溶接電源装置は、変圧器の二次側に整流回路とインバータ回路とを備える必要があるが、溶接電源装置A1は、整流回路を備える必要がない。したがって、その分、小型化を図ることができるし、製造コストを抑制することができる。また、低スパッタ回路を備えていなくても、同じ機能を果たすことができるので、その分、小型化を図ることができるし、製造コストを抑制することができる。また、直流用、交流用、低スパッタ用のそれぞれの回路をすべて設ける場合と比べて、大型化および高額化を抑制することができる。
さらに、溶接電源装置A1は、同じハードウエアを用いて、目標信号I*を変更するだけで、直流用の溶接電源装置とすることができ、交流用の溶接電源装置とすることができ、また、低スパッタ回路を備えた溶接電源装置とすることもできる。したがって、それぞれ異なるハードウエアとして溶接電源装置を製造する場合と比べて、製造コストや評価コストを低減することができる。
なお、本実施形態においては、双方向スイッチ41〜44として、2つのIGBTを逆直列接続したものを用いた場合について説明したが、これに限られない。例えば、図7に示す各双方向スイッチを用いるようにしてもよい。
図7(a)は、2つのIGBTを逆並列接続したものである。各IGBTのエミッタ端子にはそれぞれダイオードが直列接続されている。これらのダイオードは、IGBTに逆バイアスがかからないようにしている。2つのIGBTのゲート端子がオンの場合、一方の方向に流れる電流は、一方のIGBTとこれに直列接続されたダイオードとを流れ、他方の方向に流れる電流は、他方のIGBTとこれに直列接続されたダイオードとを流れる。つまり、双方向に電流を流すことができるので、交流電流を流すことができる。また、2つのIGBTのゲート端子がオフの場合、どちらの方向の電流も流れなくなる。つまり、ゲート端子に入力される駆動信号に応じて、交流電流が流れる状態と、流れない状態とを切り替えることができる。
用いるIGBTが、逆バイアスに対して十分な耐性を有する逆阻止型のIGBTの場合、図7(b)のように、ダイオードを省略した構成とすることができる。この場合、ダイオードによる電圧降下が抑制されるので、電力変換効率を向上させることができる。また、図7(c)のように、1つのIGBTと4つのダイオードを用いた双方向スイッチを用いるようにしてもよい。この場合、1つのIGBTだけで双方向スイッチを構成できるので、IGBTとその駆動回路の使用個数を削減することができる。
また、双方向スイッチ41〜44を、MOSFETやバイポーラトランジスタなど、他のスイッチング素子を用いたものとしてもよい。また、1つのスイッチング素子で交流電流のオンオフを制御できるものを用いてもよい。双方向スイッチ41〜44を、MOSFETを用いたものとした場合を第2実施形態として、以下に説明する。
図8は、第2実施形態に係る溶接電源装置A2を説明するための図である。図8において、第1実施形態に係る溶接電源装置A1(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図8に示す溶接電源装置A2は、双方向スイッチ41〜44に代えて、MOSFETを用いた双方向スイッチ41’〜44’を備えている点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。
各双方向スイッチ41’〜44’は、2つのMOSFETを逆直列接続したものを用いている。2つのMOSFETはソース端子同士が接続されており、各MOSFETのドレイン端子とソース端子との間には、それぞれダイオードが逆並列に接続されている。2つのMOSFETのゲート端子には、制御回路8より駆動信号が入力される。駆動信号がオン信号の場合、2つのMOSFETのゲート端子がオンになる。この場合、2つのMOSFETが電流経路となって、双方向に電流を流すことができるので、交流電流を流すことができる。また、駆動信号がオフ信号の場合、2つのMOSFETのゲート端子がオフになる。この場合、どちらの方向の電流も流れなくなる。つまり、双方向スイッチ41’〜44’は、入力される駆動信号に応じて、交流電流が流れる状態と、流れない状態とを切り替えることができる。なお、2つのMOSFETのドレイン端子同士を接続するようにしてもよい。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、各双方向スイッチ41’〜44’は、2つのMOSFETのゲート端子がオンの場合、2つのMOSFETが電流経路となるので、ダイオードを流れる場合より、電力の損失を低減することができる。特に、溶接に用いられる電力は、低電圧、大電流となるので、オン抵抗が低いMOSFETを用いることにより、電力損失をより低減することができる。
なお、第2実施形態においては、双方向スイッチ41’〜44’として、2つのMOSFETを逆直列接続したものを用いた場合について説明したが、これに限られない。例えば、図9に示す各双方向スイッチを用いるようにしてもよい。
上記第1および第2実施形態においては、出力電流制御を行う場合について説明したが、これに限られない。出力電圧制御や出力電力制御を行うようにしてもよい。出力電圧制御を行う場合を第3実施形態として、以下に説明する。
図10は、第3実施形態に係る溶接電源装置A3を説明するための図である。図10において、第1実施形態に係る溶接電源装置A1(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図10に示す溶接電源装置A3は、出力側電流センサ7に代えて、出力側電圧センサ7’を備えている点と、制御回路8が、検出した電圧信号に基づいて駆動信号を生成する点とで、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。
出力側電圧センサ7’は、溶接電源装置A3の出力端子d,e間に配置されており、電力変換回路4の出力電圧(線間電圧)の瞬時値を検出する。出力側電圧センサ7’は、検出した電圧信号Voを、制御回路8に入力する。制御回路8は、電圧信号Voをデジタル信号に変換して、減算部82に入力する。本実施形態では、入力端子eの電位を基準としている。したがって、デジタル化された電圧信号Voは、入力端子dの電位が入力端子eの電位より高い場合に正の値になり、入力端子dの電位が入力端子eの電位より低い場合に負の値になる。電力変換回路4の出力電圧が交流電圧の場合、デジタル化された電圧信号Voは、正の値と負の値の両方の値を取り得る。一方、電力変換回路4の出力電圧が直流電圧の場合、デジタル化された電圧信号Voは、正の値または負の値のいずれか一方の値となる。
出力電圧設定部81’は、溶接電源装置A3の出力電圧の目標信号V*を設定するものであり、設定された目標信号V*を減算部82に出力する。目標信号V*は、図示しない操作装置を操作者が操作することで設定される。なお、あらかじめ複数の目標信号V*を登録しておいて、操作装置の操作によって、選択するようにしてもよい。出力電圧を直流電圧とする場合は、目標信号V*を所望の直流信号とすればよく、出力電圧を交流電圧とする場合は、目標信号V*を所望の周波数の交流信号とすればよい。また、出力電圧を急減させる場合は、目標信号V*を急減すればよい。
減算部82は、出力側電圧センサ7’より入力される電圧信号Voと、出力電圧設定部81’より入力される目標信号V*との偏差ΔV(=V*−Vo)を算出して、補償信号生成部83に出力する。補償信号生成部83は、減算部82より入力される偏差ΔVに基づいて、例えばPI制御(比例積分制御)による補償信号を算出し、PWM信号生成部85に出力する。なお、補償信号生成部83は、例えばPID制御(比例積分微分制御)などの他の制御を行うようにしてもよい。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態においては、出力電圧制御を行うことができる。
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、インバータ回路2の出力電圧を正弦波交流電圧とし、インバータ回路2の発振周波数と電力変換回路4の変調周波数とを同一にすることで、電力変換回路4の双方向スイッチ41〜44の一部をゼロ電圧ターンオンまたはゼロ電圧ターンオフできるようにしたものである。
図11は、第4実施形態に係る溶接電源装置A4を説明するための図である。図11において、第1実施形態に係る溶接電源装置A1(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図11に示す溶接電源装置A4は、変圧器3の一次側巻線31に直列接続された共振コンデンサ33を備えている点と、制御回路8が初期位相切替部88を備えている点とで、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。
共振コンデンサ33は、変圧器3の一次側巻線31の一方の端子に直列接続されており、一次側巻線31とで直列共振回路を構成する。共振コンデンサ33と一次側巻線31とは、共振周波数がインバータ回路2の発振周波数f0と一致するように設計される。すなわち、一次側巻線31の自己インダクタンスLと共振コンデンサ33のキャパシタンスCとが、下記(1)式の関係になるように設計される。これにより、インバータ回路2の出力電圧を正弦波交流電圧とすることができ、電力変換回路4への入力電圧を正弦波交流電圧とすることができる。なお、共振コンデンサ33を、変圧器3の一次側巻線31の2つの端子間に並列接続して、一次側巻線31とで並列共振回路を構成するようにしてもよい。
キャリア信号生成部84は、インバータ回路2の発振周波数f0と同じ周波数のキャリア信号を生成する。これにより、電力変換回路4の変調周波数が、インバータ回路2の発振周波数f0と同じ周波数になる。電力変換回路4への入力電圧が正弦波交流電圧となり、電力変換回路4の変調周波数がインバータ回路2の発振周波数f0と一致するので、電力変換回路4を構成する各双方向スイッチ41〜44を、ゼロ電圧ターンオフまたはゼロ電圧ターンオンとすることができる。キャリア信号生成部84が生成するキャリア信号と同期したキャリア信号(周波数および位相が同じ信号であって、同じキャリア信号であってもよい)を用いて、インバータ回路2の駆動信号を生成することで、インバータ回路2と電力変換装置4とを同期させてもよい。
図12は、溶接電源装置A4の構成でシミュレーションを行った時の、双方向スイッチ41の電圧および電流と、双方向スイッチ42の電圧および電流の波形を示している。図12(a)は、双方向スイッチ41の端子間に印加される電圧を示しており、図12(b)は、双方向スイッチ41に流れる電流を示している。図12(c)は、双方向スイッチ42の端子間に印加される電圧を示しており、図12(d)は、双方向スイッチ42に流れる電流を示している。
例えば時刻t1において、双方向スイッチ41は、端子間電圧が「0」のときにターンオフしている(ゼロ電圧ターンオフ)。また、双方向スイッチ42は、端子間電圧が「0」のときにターンオンしている(ゼロ電圧ターンオン)。
図12に示すように、双方向スイッチ41は、ゼロ電圧ターンオフになるが、ゼロ電圧ターンオンにならない。一方、双方向スイッチ42は、ゼロ電圧ターンオンになるが、ゼロ電圧ターンオフにならない。ゼロ電圧ターンオフによる電力損失の低減効果と、ゼロ電圧ターンオンによる電力損失の低減効果とには差がある場合がある。一般的には、ゼロ電圧ターンオフによる電力損失の低減効果の方が大きい。したがって、ゼロ電圧ターンオンになるスイッチの方が、ゼロ電圧ターンオフになるスイッチより、電力損失により発生する発熱量が大きくなる。図12の場合、双方向スイッチ42の方が、双方向スイッチ41より発熱量が大きくなるので、熱によって素子の寿命が短くなってしまう。これを避けるために、本実施形態では、電力変換回路4の変調用キャリア信号の初期位相を定期的に変更することで、ゼロ電圧ターンオフになる時間と、ゼロ電圧ターンオンになる時間とが同等となるようにしている。
初期位相切替部88は、キャリア信号生成部84が生成するキャリア信号の初期位相を、定期的に切り替えて、キャリア信号生成部84に出力する。キャリア信号生成部84は、初期位相切替部88より入力された初期位相を用いて、キャリア信号を生成する。初期位相切替部88は、2種類の初期位相(例えば0[rad]とπ[rad])を設定されており、所定のタイミング(例えば、10分毎)で切り替えて出力する。なお、切替のタイミングは限定されない。また、設定される初期位相も限定されない。なお、キャリア信号生成部84および初期位相切替部88の構成は限定されない。キャリア信号生成部84が生成するキャリア信号の位相を定期的に変更して、各双方向スイッチ41〜44のゼロ電圧ターンオフになる時間とゼロ電圧ターンオンになる時間とが同等となればよい。
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態においては、共振コンデンサ33と変圧器3の一次側巻線31とが直列共振回路を構成するので、インバータ回路2の出力電圧が正弦波交流電圧となり、電力変換回路4への入力電圧が正弦波交流電圧となる。また、電力変換回路4の変調周波数は、インバータ回路2の発振周波数f0と一致する。したがって、電力変換回路4を構成する各双方向スイッチ41〜44を、ゼロ電圧ターンオフまたはゼロ電圧ターンオンとすることができる。これにより、各双方向スイッチ41〜44のターンオン時またはターンオフ時の電力損失を低減することができる。さらに、第4実施形態においては、キャリア信号生成部84が生成するキャリア信号の初期位相を、初期位相切替部88が定期的に変更する。したがって、各双方向スイッチ41〜44のゼロ電圧ターンオフになる時間と、ゼロ電圧ターンオンになる時間とが同等となる。これにより、各双方向スイッチ41〜44の発熱による素子の寿命のばらつきを低減することができる。
上記第1〜第4実施形態においては、入力側電圧センサ6によって検出された電圧信号Viに基づいて、入力電圧の正負を判別したが、これに限られない。他の手法でも、入力電圧の正負を判別することができればよい。インバータ回路2を駆動するための信号に基づいて入力電圧の正負を判別する場合を第5実施形態として、以下に説明する。
図13は、第5実施形態に係る溶接電源装置A5を説明するための図である。図13において、第1実施形態に係る溶接電源装置A1(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図13に示す溶接電源装置A5は、入力側電圧センサ6を備えておらず、インバータ回路2を駆動するためのインバータ駆動信号に基づいて入力電圧の正負を判別する点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。
インバータ制御回路9は、インバータ回路2を駆動するための駆動信号を生成するものである。なお、図1,図8,図10,図11においては記載を省略している。インバータ回路2は出力制御を行わず、直流電流を所定の周波数の高周波電流に変換するだけなので、所定の周波数で所定のデューティ比を有するパルス信号が、駆動信号として生成される。インバータ制御回路9は、生成した駆動信号を、インバータ回路2のスイッチング素子21〜24に出力する。また、インバータ制御回路9は、例えば、スイッチング素子21に出力する駆動信号を入力電圧判別部86にも出力する。なお、他の駆動信号を入力電圧判別部86に出力するようにしてもよい。また、インバータ制御回路9を別途設けるのではなく、制御回路8が、インバータ回路2を駆動するための駆動信号も生成するようにしてもよい。
入力電圧判別部86は、インバータ制御回路9より入力される駆動信号に基づいて、電力変換回路3の入力電圧の正負を判別する。スイッチング素子21およびスイッチング素子24に入力される駆動信号がオンであり、スイッチング素子22およびスイッチング素子23に入力される駆動信号がオフの場合、インバータ回路2は、直流電源1の電圧を出力する。この場合、変圧器3を介して電力変換回路3に入力される電圧は正(入力端子aの電位が入力端子bの電位より高い)となる。一方、スイッチング素子21およびスイッチング素子24に入力される駆動信号がオフであり、スイッチング素子22およびスイッチング素子23に入力される駆動信号がオンの場合、インバータ回路2は、直流電源1の逆極性の電圧を出力する。この場合、変圧器3を介して電力変換回路3に入力される電圧は負(入力端子aの電位が入力端子bの電位より低い)となる。したがって、インバータ制御回路9より入力される駆動信号に基づいて、電力変換回路3の入力電圧の正負を判別することができる。例えば、インバータ制御回路9より、スイッチング素子21に出力する駆動信号を入力される場合、入力電圧判別部86は、当該駆動信号がオンの場合、入力電圧は正であると判別し、当該駆動信号がオフの場合、入力電圧は負であると判別する。
第5実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態においては、入力側電圧センサ6を備える必要がない。
なお、インバータ制御回路9が、インバータ回路2の駆動信号の代わりに、当該駆動信号を生成するためのキャリア信号を入力電圧判別部86に出力し、入力電圧判別部86が、当該キャリア信号に基づいて、電力変換回路3の入力電圧の正負を判別するようにしてもよい。また、インバータ制御回路9が、キャリア信号生成部84が生成するキャリア信号と同期したキャリア信号を用いてインバータ回路2の駆動信号を生成することで、インバータ回路2と電力変換装置4とが同期している場合は、入力電圧判別部86が、キャリア信号生成部84が生成するキャリア信号に基づいて、電力変換回路3の入力電圧の正負を判別するようにしてもよい。この場合、インバータ回路2の駆動信号を生成するためのキャリア信号が、本発明の「第2のキャリア信号」に相当する。
上記第1〜5実施形態においては、電力系統から入力される交流電力を直流電源1が直流電力に変換し、当該直流電力をインバータ回路2が高周波電力に変換して変圧器3の一次側に入力する場合について説明したが、これに限られない。電力系統から入力される交流電力を、そのまま、変圧器3の一次側に入力するようにしてもよい。この場合を第6実施形態として、以下に説明する。
図14は、第6実施形態に係る溶接電源装置A6を説明するための図である。図14において、第1実施形態に係る溶接電源装置A1(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図14に示す溶接電源装置A6は、直流電源1およびインバータ回路2を備えておらず、高周波用の変圧器3に代えて低周波用の変圧器3’を備えている点で、第1実施形態に係る溶接電源装置A1と異なる。
変圧器3’は、電力系統Bより入力される交流電圧を変圧して、電力変換回路4に出力する。電力変換回路4に入力される交流電力は、電力系統Bの系統周波数(例えば60Hz)の交流電力であるが、電力変換回路4によって、所望の電力に変換されて出力される。
第6実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、直流電源1およびインバータ回路2を備えていないので、構造を簡略化することができる。
本発明に係る溶接電源装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る溶接電源装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。