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JP2017141388A - インクジェット記録用インク - Google Patents

インクジェット記録用インク Download PDF

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JP2017141388A
JP2017141388A JP2016024503A JP2016024503A JP2017141388A JP 2017141388 A JP2017141388 A JP 2017141388A JP 2016024503 A JP2016024503 A JP 2016024503A JP 2016024503 A JP2016024503 A JP 2016024503A JP 2017141388 A JP2017141388 A JP 2017141388A
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伊藤 弘
Hiroshi Ito
弘 伊藤
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Seiko Epson Corp
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Abstract

【課題】保存安定性及び印刷物の耐水性が良好で、かつ吐出安定性が良好なインクジェット記録用インクを提供すること。
【解決手段】色材と、水−オクタノール分配係数が2.0以上5.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる消泡剤と、水−オクタノール分配係数が0.0以上2.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる第1溶剤と、第1溶剤とは異なるグリコール系の第2溶剤と、ゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であり、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する樹脂粒子と、を含む、インクジェット記録用インク。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用インクに関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出して、記録媒体に付着させて記録を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で記録できるという特徴を有する。
インクジェット記録方法においては、用いるインクの性質、記録における安定性、得られる画像の品質をはじめとして、非常に多くの検討要素があり、インクジェット記録装置のみならず、用いるインクに対する研究も盛んである。
例えば、特許文献1には、反応性界面活性剤を共有結合し、架橋剤を含むラテックス粒子を含んだインクジェットインクが開示されており、インク液滴を安定に射出させることにより記録媒体に良好な画像を形成させることが試みられている。
また、特許文献2では、反応性分散剤で分子発色体を分散させ、それに続いて樹脂を重合した色材/樹脂複合粒子を含む水性インクが開示され、形成される画像の発色性、光沢性、定着性の向上、及びインクの吐出安定性の向上が試みられている。
さらに、特許文献3には、反応性界面活性剤の存在下で乳化重合したポリマー粒子とlogP値(有機化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値)が−1〜11の水不溶性有機化合物を含むインクジェット記録用水分散体が開示され、印字濃度、及び耐マーカー性の向上が試みられている。
特表2006−520405号公報 特開2003−128976号公報 特開2006−282989号公報
上記特許文献1〜3に記載された技術では、反応性界面活性剤又は反応性分散剤を用いて、乳化重合によってラテックス粒子、色材/樹脂複合粒子又はポリマー粒子を作成している。係る粒子は、記録する画像の定着性を向上させる機能を有する。しかしながら、これらのラテックス粒子又は色材/樹脂複合粒子を用いてインクを形成する際には消泡剤を添加していない。
ここで、乳化重合法では重合時に乳化剤が必須であり、重合後に係る乳化剤が系に残るため、得られる水系分散体は泡立ちやすい性質となる。そうすると、間欠的に液滴を吐出(噴射)するインクジェット記録用のインクにこのような水系分散体を使用した場合には、例えば、クリーニング動作などによってインクが起泡しやすく、生じた気泡も解消しにくいものとなる。そのため微少な気泡が記録ヘッド等の流路へ取り込まれやすく、インクの吐出性が悪化する場合がある。
気泡を生じにくくする手法としては、樹脂粒子の重合の際の乳化剤の量を減らすことが考えられる。しかしこのように乳化重合の際の乳化剤の添加量を小さくすると、樹脂粒子の分散性が不十分となり、インクに用いたときの保存安定性が得られにくくなる。
また、乳化剤を減らすことなく気泡を生じにくくする手法としては、反応時に乳化剤として機能し得る反応性の界面活性剤を採用し、重合後に粒子に乳化剤を取り込ませることが考えられる。しかし、残存する乳化剤を減らすためには、未反応(遊離)の反応性界面活性剤の量を減らすことが必要であるが、反応性界面活性剤の重合における反応収率(転化率)を100%とすることは未だ難しい。
このような状況の下、未反応の反応性界面活性剤や、添加された乳化剤を減らすことなく気泡を生じにくくし、生じた気泡を破壊しやすくする手法として、消泡剤を用いることが考えられる。消泡剤は、多くの種類が存在し、その材質や消泡メカニズムは、多岐にわたっている。消泡剤は、多くの場合に疎水性が高く、組み合わせによっては水中に分散している樹脂粒子の分散状態を破壊して凝集物を発生させる場合もある。そのような消泡剤を用いると、凝集物が一定サイズ以上になって記録ヘッドやインクの流路を詰まらせ、吐出不良の原因になることがある。また、消泡剤の種類によっては印刷面のはじきを生じることもあるため、インク中の他の材料との組み合わせを考慮せずに消泡剤を選定すると不具合を生じることが多い。
上記特許文献2には、消泡剤を用いることが記載されているが、具体的な材料やその組み合わせの示唆はなく、特にインクジェット記録用のインクにおいて、特許文献2に記載されたようなlogP値が−1〜11程度の水不溶性有機化合物を消泡剤として用いることは、疎水性の高い消泡剤と同様に、インク中の他の材料との組み合わせより樹脂粒子や色材を凝集させることが懸念される。
このように、インクジェット記録用インクの保存安定性、吐出安定性を考えるだけでも、非常に多くの検討要素が存在する。その上、得られる画像の品質の向上も含めたバランスのよいインクジェット記録用インクが求められている。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、保存安定性及び印刷物の耐水性が良好で、かつ吐出安定性が良好なインクジェット記録用インクを提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本発明に係るインクジェット記録用インクの一態様は、
色材と、
水−オクタノール分配係数が2.0以上5.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる消泡剤と、
水−オクタノール分配係数が0.0以上2.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる第1溶剤と、
前記第1溶剤とは異なるグリコール系の第2溶剤と、
ゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であり、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する樹脂粒子と、
を含む。
上記インクジェット記録用インクは、疎水性の比較的高い(水−オクタノール分配係数(logP)が2.0以上5.0以下である)消泡剤と、疎水性の比較的低い(水−オクタノール分配係数が0.0以上2.0以下である)グリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる第1溶剤と、を含むので、消泡剤の可溶化が良好であるとともに、気泡が抑制され、吐出安定性が良好である。また、上記インクジェット記録用インクは、樹脂粒子のゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であり、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する。そのため、ゼータ電位による分散安定性と、ポリオキシエチレン鎖と親和性の高い第2溶剤による分散安定性と、を有する。これにより、樹脂粒子が凝集しにくく保存安定性が良好である。さらに、上記インクジェット記録用インクは、樹脂粒子に対して少なくともポリオキシエチレン鎖が共有結合によって結合しているので、記録物における定着性及び耐水性が良好である。
本発明に係るインクジェット記録用インクにおいて、
前記第1溶剤を、0.5質量%以上15質量%以下含有してもよい。
このようなインクジェット記録用インクは、消泡剤をさらに可溶化することができ、インクジェット記録用としてさらに適している。
本発明に係るインクジェット記録用インクにおいて、
前記消泡剤を、0.005質量%以上0.5質量%以下含有してもよい。
このようなインクジェット記録用インクは、消泡剤による消泡効果を十分に得ることができる。
本発明に係るインクジェット記録用インクにおいて、
前記第2溶剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール及びその多量体から選ばれてもよい。
このようなインクジェット記録用インクによれば、第2溶媒が、樹脂粒子のポリオキシエチレン鎖と親和性が高く、さらに保存安定性が良好である。
本発明に係るインクジェット記録用インクにおいて、
前記第2溶剤を、2質量%以上30質量%以下含有してもよい。
このようなインクジェット記録用インクは、さらに保存安定性が良好で、インクジェット記録用としてさらに適している。
本発明に係るインクジェット記録用インクにおいて、
前記樹脂粒子は、アニオン性官能基を有してもよい。
このようなインクジェット記録用インクによれば、樹脂粒子が、アニオン性官能基とポリオキシエチレン鎖の2種を有するため、水分が多い状態ではアニオン性官能基によって分散が安定し、水分が乾燥して溶剤濃度が上がった状態ではポリオキシエチレン鎖と、グリコール系の第2溶剤との親和性によって、分散が安定する。これにより、例えば、記録ヘッドのノズル付近でインクジェット記録用インクが乾燥した場合でも、固化しにくく、クリーニング動作等による再吐出が容易である。また、印刷後は、第2溶剤は、記録媒体に浸透あるいは蒸発・揮散して樹脂粒子と分離するため、記録物の耐水性が悪化することが抑制される。
本発明に係るインクジェット記録用インクにおいて、
加熱乾燥方式のインクジェット記録装置に使用されてもよい。
このようなインクジェット記録用インクによれば、記録ヘッドのノズル付近でインクジェット記録用インクが乾燥しやすいインクジェット記録装置において、記録ヘッドのノズル付近でインクジェット記録用インクが乾燥した場合でも、固化しにくく、クリーニング動作等による再吐出が容易であるという効果が顕著である。
本発明に係るインクジェット記録用インクにおいて、
前記樹脂粒子は、アニオン性の反応性乳化剤を含むモノマーを用いた乳化重合と、これに続くポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤を含むモノマーを用いた乳化重合と、を含む重合方法により合成されてもよい。
このようなインクジェット記録用インクによれば、樹脂粒子のポリオキシエチレン鎖が、樹脂粒子の外殻に富化されるため、ポリオキシエチレン鎖と構造的に類似するグリコール系の第2溶剤が、さらに樹脂粒子のポリオキシエチレン鎖と親和しやすく、さらに保存安定性が良好である。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクジェット記録用インク
本実施形態に係るインクジェット記録用インクは、色材と、消泡剤と、第1溶剤と、第2溶剤と、樹脂粒子と、を含む。
1.1.色材
本実施の形態に係るインクジェット記録用インクは、色材を含む。色材としては、水系溶媒に不溶あるいは難溶の色材として有機顔料、カーボンブラック、油溶染料、分散染料等を挙げることができる。発色が良好であること、比重が小さいために沈降しにくいことから、カーボンブラック、有機顔料、油溶染料、分散染料がより好ましい。本実施形態のインクジェット記録用インクでは、色材が分散樹脂により分散されていてもよい。また、色材としては、水溶解系の酸性染料、直接染料、反応性染料及び塩基性染料等を用いてもよい。
カーボンブラックの具体例としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等を用いることができる。また、カーボンブラックとしては、三菱化学株式会社製のNo.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等が挙げられる。デグサ社製のカラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等が挙げられる。コロンビアカーボン社製のコンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等が挙げられる。キャボット社製のリガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等が挙げられる。なお、これらは好適なカーボンブラックの一例の記載であり、これらによって本発明が限定されるものではない。これらのカーボンブラックは一種又は二種以上の混合物として用いてよい。
有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料等が挙げられる。
また、油溶染料、分散染料としては、インクビヒクル中で溶解せずに分散する色材であればいずれも用いることができ、アゾ系、金属錯塩アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系等が挙げられる。
インクジェット記録用インクに用いられる有機顔料の具体例としては下記のものが挙げられる。
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
イエローインクジェット記録用インクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
オレンジインクジェット記録用インクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36若しくは43又はこれらの混合物が挙げられ、。グリーンインクジェット記録用インクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7若しくは36又はこれらの混合物が挙げられる。
本実施形態のインクジェット記録用インクに使用し得る染料としては、分散染料、油溶染料等が挙げられる。より具体的には、分散染料としては、例えば、C.I.ディスパースレッド 60、82、86、86:1、167:1、279、C.I.ディスパースイエロー 64、71、86、114、153、233、245、C.I.ディスパースブルー27、60、73、77、77:1、87、257、367、C.I.ディスパースバイオレット 26、33、36、57、C.I.ディスパースオレンジ 30、41、61等、油溶染料としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー 16、21、25、29、33、51、56、82、88、89、150、163、C.I.ソルベントレッド 7、8、18、24、27、49、109、122、125、127、130、132、135、218、225、230、C.I.ソルベントブルー 14、25、35、38、48、67、68、70、132、C.I.ソルベントブラック 3、5、7、27、28、29、34等が挙げられる。
また、染料としては、酸性染料としてC.I.アシッドイエロー17、23、42、44、79、142、C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289、C.I.アシッドブルー9、45、249、C.I.アシッドブラック1、2、24、94等、直接染料としてC.I.ダイレクトイエロー1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173、C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、227、C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、199、202、C.I.ダイレクトブラック19、38、51、71、154、168、195、C.I.ダイレクトブルー2、3、8、10、12、31、35、63、116、130、149、199、230、231等、反応性染料としてC.I.リアクティブイエロー2、7、15、22、37、42、57、69、76、81、95、102、125、135、C.I.リアクティブレッド2、14、24、32、55、79、106、111、124、C.I.リアクティブブルー2、13、21、38、41、50、69、72、109、120、143、C.I.リアクティブブラック3、4、5、8、13、14、31、34、35、39等、塩基性染料としてC.I.ベーシックイエロー1、2、13、19、21、25、32、36、40、51、C.I.ベーシックレッド1、5、12、19、22、29、37、39、92、C.I.ベーシックブルー1、3、9、11、16、17、24、28、41、45、54、65、66、C.I.ベーシックブラック2、8等が挙げられる。
本実施形態のインクジェット記録用インクにおいて、色材を分散樹脂により分散させる場合には、色材と分散樹脂との比率は10:1〜1:10が好ましく、4:1〜1:3がより好ましい。また、分散時の色材の体積平均粒子径は、動的光散乱法で計測した場合の最大粒径が500nm未満で平均粒径が300nm以下であり、より好ましくは平均粒径が200nm以下である。
なお、上記色材は、水溶性樹脂、水分散性樹脂や界面活性剤から選ばれる分散剤を用いて顔料分散して用いてもよく、あるいはオゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、色材表面を酸化、あるいはスルホン化して自己分散顔料として用いてもよい。
色材は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、染料と顔料を混合して用いてもよい。
色材の含有量は、用途に応じて適宜調整することができるが、好ましくは0.10質量%以上20.0質量%以下であり、より好ましくは0.20質量%以上15.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下である。
1.2.消泡剤
本実施形態のインクジェット記録用インクは、消泡剤を含む。本実施形態では、消泡剤は、水−オクタノール分配係数(logP値)が2.0以上5.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる。消泡効果の高さと、インク中での溶解性の高さのバランスの観点から、消泡剤のlogP値は、2.3以上4.5以下がより好ましく、2.5以上4.2以下がさらに好ましい。
ここで、水−オクタノール分配係数、つまりlogP値とは、OECD Test Guideline 107で定義される値をいう。logP値は、高いほど疎水性が高く、低いほど親水性が高いことを示す。
本実施形態における消泡剤の機能の一つとしては、インクジェット記録用インクが、インク収容容器や記録ヘッド内で、例えば振とうされた場合に、気泡を生じにくくさせることが挙げられる。また、消泡剤の機能の一つとしては、インクジェット記録用インクに気泡が生じた場合に、気泡を解消し易くすることが挙げられる。本明細書では、これらの機能・作用のことを、消泡効果と称することがある。消泡剤の消泡効果により、インクジェット記録用インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、例えば、記録ヘッド等のインクの流路を詰まりにくくしたり、インクジェット記録用インクに対して加えられる圧力の損失を抑えることができ、記録ヘッドからのインクジェット記録用インクの吐出安定性を高めることができる。
消泡剤としては、水−オクタノール分配係数(logP値)が2.0以上5.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる限り、限定されないが、具体例として、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール(logP:2.53)、3−メンチルオキシ−1,2−プロパンジオール(logP:2.60)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(logP:3.11)、及び、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール(logP:4.18)等が挙げられる(括弧内にlogP値を記載した。)。また、消泡剤は、複数種を混合して用いてもよい。
なお、グリコール系の化合物とは、脂肪族炭化水素又は環式脂肪族炭化水素の2つの炭素原子に1つずつ2つの水酸基(ヒドロキシ基)を有する化合物、又は、当該化合物の水素原子の少なくとも一つが結合となった基を有する化合物である。グリコール系の化合物のヒドロキシ基の数は3個以上であってもよい。
また、グリコールエーテル系の化合物とは、グリコール系の化合物のヒドロキシ基が、同種又は他種のグリコール系の化合物のヒドロキシ基と脱水縮合したエーテル構造を有する化合物である。グリコールエーテル系の化合物のエーテル基(エーテル構造)の個数は特に限定されない。
消泡剤の配合量は、インクジェット記録用インクの全量に対して、0.001質量%以上1質量%以下、好ましくは0.003質量%以上0.8質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下である。消泡剤の配合量がこの範囲であれば、インクジェット記録用インクにおける消泡効果を十分に得ることができる。
1.3.第1溶剤
本実施形態のインクジェット記録用インクは、第1溶剤を含有する。第1溶剤は、水−オクタノール分配係数が0.0以上2.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる。第1溶剤のlogP値は、0.01以上1.9以下がより好ましく、0.02以上1.7以下がさらに好ましい。
第1溶剤の機能の一つとしては、消泡剤を可溶化することが挙げられる。上述の消泡剤は、logP値が2.0以上5.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物であり、疎水性が比較的高い。一方、第1溶剤は、logP値が0.0以上2.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物であり、logP値が示すとおり、消泡剤と比較して疎水性が低くより水溶性である。本実施形態のインクジェット記録用インクでは、比較的高い疎水性により比較的溶解しにくい消泡剤を、比較的疎水性の低い第1溶剤によって溶解し易くさせている。すなわち、第1溶剤は、消泡剤と水とを親和させる機能を有している。したがって第1溶剤は、インクジェット記録用インクへの消泡剤の添加量を高める機能をも有している。さらに、本実施形態では、第1溶剤がグリコール系及びグリコールエーテル系化合物であるため、樹脂粒子(後述)のポリオキシエチレン鎖との親和性が高く、第1溶剤は、樹脂粒子の凝集を抑制する機能も有している。
第1溶剤としては、logP値が0.0以上2.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる限り限定されないが、1,2−ペンタンジオール(logP:0.01)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)(logP:0.02)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)(logP:0.56)、ジプロピレングリコ−ルモノプロピルエーテル(logP:0.60)、1,2−ヘキサンジオール(logP:0.70)、1,2−ヘプタンジオール(logP:1.0)、2−メチル−3−フェノキシ−1,2−プロパンジオール(logP:1.10)、3−(3−メチルフェノキシ)−1,2−プロパンジオール(logP:1.21)、3−ヘキシルオキシ−1,2−プロパンジオール(logP:1.36)、及び、2−ヒドロキシメチル−2−フェノキシメチル−1,3−プロパンジオール(logP:1.69)等が挙げられる(括弧内にlogP値を記載した。)。また、第1溶剤は、複数種を混合して用いてもよい。
第1溶剤の配合量は、インクジェット記録用インクの全量に対して、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。第1溶剤の配合量がこの範囲であれば、消泡剤を十分に可溶化することができるとともに、樹脂粒子の凝集を抑制することができ、インクジェット記録用インクをインクジェット記録装置にさらに適するものとすることができる。
1.4.第2溶剤
本実施形態のインクジェット記録用インクは、第2溶剤を含む。第2溶剤は、上述の第1溶剤とは異なるグリコール系の化合物である。すなわち、第2溶剤は、グリコール系の化合物であって、logP値が0.0未満、好ましくは0.01未満、より好ましくは0.02未満の化合物、又は、2.0を越え、好ましくは1.9を越え、より好ましくは1.7を越える化合物である。第2溶剤は、グリコール系の化合物であって、水への溶解性の観点から、logP値が0.02未満の化合物であることがより好ましい。
第2溶剤の機能の一つとしては、第1溶剤と水とを親和させることが挙げられる。また、本実施形態のインクジェット記録用インクは、第2溶剤を含有することにより第1溶剤の配合量を高めることができ、さらに、消泡剤の配合量も高めることができる。さらに、本実施形態では、第2溶剤がグリコール系化合物であるため、樹脂粒子(後述)のポリオキシエチレン鎖との親和性が高く、第2溶剤は、樹脂粒子の凝集を抑制する機能も有している。
第2溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類が挙げられる。これらの中でも第2溶剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール及びその多量体(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなど)から選ばれることが好ましい。第2溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2溶剤の配合量は、インクジェット記録用インクの全量に対して、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。第1溶剤の配合量がこの範囲であれば、第1溶剤の溶解性を高めることができ、これにより消泡剤をさらに十分に可溶化することができるとともに、樹脂粒子の凝集を抑制することができる。
1.5.樹脂粒子
本実施形態のインクジェット記録用インクは、樹脂粒子を含有する。樹脂粒子は、ゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であり、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する。樹脂粒子の分散性(凝集抑制性)及びこれらに伴うインクの保存安定性の観点から、ゼータ電位は、−60mV以上−20mV以下がより好ましく、−55mV以上−25mV以下がさらに好ましい。
ここで、ゼータ電位とは、界面動電電位のことを指し、樹脂粒子と媒体との界面におけれう電位差を示す指標である。ゼータ電位は電気浸透や電気泳動などの方法によりしく呈することができる。ゼータ電位は、例えば、ゼータサイザー ナノZS(商品名:Malven Instruments Ltd.社製)等の市販の測定装置により測定することができる。
樹脂粒子の機能の一つとしては、色材を記録媒体に固定する(定着させる)ことが挙げられる。樹脂粒子は、インクジェット記録用インク中で、粒子状の形態となっており、これにより、溶液として定着用樹脂を配合する場合に比較して、インクジェット記録用インクの粘度を低く抑えることができる。
樹脂粒子は、付加重合系モノマーを使った乳化重合や懸濁重合により、分散体として直接合成することができる。係る乳化重合や懸濁重合の態様は、特に限定されず、重合に用いるモノマーを全て混合して乳化状態のモノマー組成物を作成し、これを開始剤溶液に滴下する方法、重合に用いるモノマーの種類及び/又は量を複数に分けて、乳化状態の複数のモノマー組成物を作成し、これを開始剤溶液に滴下する方法などとすることができる。重合反応によって、モノマーは互いに共有結合して重合体(高分子)となり、粒子状の形態となる。
重合に用いるモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、スチレン、メチルスチレン、塩化ビニル、無水マレイン酸、ジビニルベンゼンなどの炭素炭素二重結合を有する化合物を用いることができる。
また、本実施形態の樹脂粒子のポリオキシエチレン鎖は、ポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤をモノマーとして用いることにより導入される。ポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤としては、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート、アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート等のポリオキシエチレン鎖及び炭素炭素二重結合を含む化合物が挙げられる。反応性乳化剤の具体例としては、ラテムルPD−420、ラテムルPD−430、ラテムルPD−430S(以上商品名:花王株式会社製)、アクアロンRN(商品名:第一工業製薬株式会社製)、アントックスLMA−10、アントックスLMA−20、アントックスLMA−27(以上商品名:日本乳化剤株式会社製)等を挙げることができる。
また、本実施形態の樹脂粒子は、−65mV以上−15mV以下のゼータ電位を有するが、このようなゼータ電位は、樹脂粒子が負に帯電していることを示している。
このようなゼータ電位を樹脂粒子に付与する手法としては、アニオン性の基を樹脂粒子に結合することが挙げられる。係るアニオン性の基としては特に限定されず、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
アニオン性の基を樹脂粒子に結合させる手法としては、アニオン性の基及び炭素炭素二重結合を含む化合物をモノマーとして配合して乳化重合を行うことが挙げられる。このようなモノマーとしては特に限定されず、アクリル酸、メタアクリル酸及びそれらの塩などが挙げられる。さらに、アニオン性の基を樹脂粒子に結合させる手法として、アニオン性の反応性乳化剤をモノマーとして配合してもよい。
アニオン性の反応性乳化剤の例としては、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート型アンモニウム、リン酸エステル、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル、2−ソジウムスルホエチルメタクリレート、アルコキシポリエチレングリコールマレイン酸エステル、及びそれらの塩などが挙げられる。
アニオン性の反応性乳化剤の具体例としては、ラテムルPD−104、ラテムルPD−105(以上商品名:花王株式会社製)、アクアロンKH、アクアロンHS、アクアロンBC(以上商品名:第一工業製薬株式会社製)、エレミノールJS−20、エレミノールRS−3000(以上商品名:三洋化成工業株式会社製)、アデカリアソープSR−10、アデカリアソープSR−20、アデカリアソープSE−10N、アデカリアソープPP−70(以上商品名:株式会社ADEKA製)、アントックスMS−60、アントックスMS−2N、アントックスEMH−20(以上商品名:日本乳化剤株式会社製)などを挙げることができる。
なお、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムのような、アニオン性の官能基及びポリオキシエチレン鎖の両者を有する反応性乳化剤をモノマーとして用いる場合には、樹脂粒子にポリオキシエチレン鎖及びアニオン性官能基の両者を一の重合により導入することができ、ゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であり、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する樹脂粒子をより容易に合成することができる場合がある。
乳化重合又は懸濁重合のための重合開始剤としては、特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル等の水溶性重合開始剤が好ましい。
このように、樹脂粒子がアニオン性官能基を有する場合、アニオン性官能基とポリオキシエチレン鎖の2種の官能基を有することになるため、水分が多い状態ではアニオン性官能基によって分散が安定し、水分が乾燥して溶剤濃度が上がった状態ではポリオキシエチレン鎖と、グリコール系の第2溶剤との親和性によって、分散が安定する。これにより、例えば、記録ヘッドのノズル付近でインクジェット記録用インクが乾燥した場合でも、固化しにくく、クリーニング動作等による再吐出が容易である。また、印刷後は、第2溶剤は、記録媒体に浸透あるいは蒸発・揮散して樹脂粒子と分離するため、記録物の耐水性が悪化することが抑制される。
一般に、乳化重合又は懸濁重合においては、モノマーを乳化又は懸濁するために、反応性を有しない乳化剤(界面活性剤)が添加される。その場合、重合反応の終了後には、乳化剤が遊離の状態で系中に残ることになる。これにより形成された乳化液又は懸濁液は、泡立ちやすい性状となることが多い。
これに対して、乳化重合又は懸濁重合において、上述の反応性乳化剤を用いると、重合前及び重合中に乳化又は懸濁することができる上に、重合反応が進むにつれて、乳化剤として機能する化合物(反応性乳化剤)が減少することになる。したがって、重合反応が終了したときに、遊離の状態で系中に残る乳化剤(反応性乳化剤)の量を十分に少なくすることができる。これにより形成された乳化液又は懸濁液は、気泡を生じにくくなる。なお、乳化剤として機能する基は、樹脂粒子に結合しており、系中に残る乳化剤(反応性乳化剤)の量が少なくても、樹脂粒子の分散性が大きく損なわれることがない。なお、反応性乳化剤をモノマーとして用いる場合であっても、乳化力を補うために非反応性乳化剤を共存させて重合することもでき、その場合には、乳化剤の量を低減することができる。さらに、乳化重合又は懸濁重合において、連鎖移動剤、オリゴマー、マクロマーの共存下で重合することもできる。
このように、樹脂粒子は、アニオン性の反応性乳化剤及びポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤の両者を含むモノマーを用いた乳化重合により合成されてもよい。また、樹脂粒子は、アニオン性の反応性乳化剤を含むモノマー組成物を用いた乳化重合と、ポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤を含むモノマー組成物を用いた乳化重合と、を逐次的に行って合成されてもよい。
係る逐次的な重合により樹脂粒子を合成する場合には、先行してアニオン性の反応性乳化剤を含むモノマー組成物を用いた乳化重合を行うこと、その後にポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤を含むモノマー組成物を用いた乳化重合を行うこと、を含む重合方法により合成されてもよい。
樹脂粒子が、このような重合方法によって形成されると、樹脂粒子のポリオキシエチレン鎖が、樹脂粒子の外殻に富化されやすい。そのため、ポリオキシエチレン鎖と構造的に類似するグリコール系の第2溶剤が、樹脂粒子のポリオキシエチレン鎖と親和しやすく、さらにインクジェット記録用インクの保存安定性を良好にすることができる。
逐次的な重合により樹脂粒子を合成する場合、先行するアニオン性の反応性乳化剤を含むモノマーを用いた乳化重合が転化率100%まで進行した後にポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤を含むモノマーを用いた乳化重合を行ってもよいし、先行するアニオン性の反応性乳化剤を含むモノマーを用いた乳化重合が転化率100%に達する前に、後続するポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤を含むモノマーを用いた乳化重合を行ってもよい。先行するアニオン性の反応性乳化剤を含むモノマーを用いた乳化重合を転化率100%にすることは、反応時間を要したり困難である場合がある。そのため後続するポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤を含むモノマーを用いた乳化重合の開始時点では、系中のモノマーには、アニオン性の反応性乳化剤及びポリオキシエチレン鎖を有する反応性乳化剤の両者が共存してもよい。このような逐次的な乳化重合を行うことにより、樹脂粒子のポリオキシエチレン鎖が樹脂粒子の表面側に濃化させることができる。
樹脂粒子を合成する際の反応性乳化剤の配合量としては、全モノマーを100質量%とした場合に、0.5質量%以上5質量%以下、好ましくは1質量%以上4質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上2.5質量%以下である。また、逐次的な重合を行う場合であっても、樹脂粒子を合成する際の反応性乳化剤の配合量は、各重合反応に使用するモノマーの合計において、上記範囲とすることが好ましい。
また、インクジェット記録用インクにおける樹脂粒子の配合量(固形分)は、複数種を用いる場合も含め、合計量として、インクジェット記録用インクの全質量に対して、0.5質量%以上20質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上15質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下とすることがさらに好ましい。樹脂粒子の含有量が0.5質量%以上であることで、インクジェット記録用インクの記録媒体との密着性が一層良好となる。また、樹脂粒子の含有量が20質量%以下であることで、インクジェット記録用インクの記録ヘッドからの吐出性が良好になる傾向にある。
また、本実施形態の樹脂粒子の体積基準の平均粒子径は、100nm以上500nm以下、好ましくは150nm以上400nm以下、より好ましくは200nm以上300nm以下である。このような粒子径は、例えば、乳化重合時の諸条件(撹拌条件、温度等)により適宜に設定することができる。樹脂粒子の体積基準の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)が挙げられる。
1.6.水
本実施形態に係るインクジェット記録用インクは、水を含んでいる。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インクジェット記録用インクを長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
水の含有量は、インクジェット記録用インクの総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なおインクジェット記録用インク中の水というときには、例えば、原料として用いる顔料分散液、樹脂粒子分散液、添加する水を含むものとする。水の含有量が30質量%以上であることにより、インクジェット記録用インクを比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、インクジェット記録用インクの総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。なお、本明細書において「水系インク」という場合には、インクの全質量(100質量%)に対して、水を30質量%以上含有するインクのことを指す。
1.7.その他の成分
本実施形態のインクジェット記録用インクは、保湿剤、表面張力調整剤、pH調整剤等の成分を含有してもよい。
1.7.1.保湿剤
本実施形態のインクジェット記録用インクは、保湿剤を含有してもよい。保湿剤としては、一般にインクジェットインクジェット記録用インクに用いられるものであれば特に限定されず使用可能である。保湿剤の沸点は、好ましくは180℃以上であり、200℃以上がより好ましい。沸点が上記範囲内であることにより、インクジェット記録用インクに良好な保水性及び湿潤性を付与することができる。
保湿剤の具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、メソエリスリトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ヒドロキシエチルピロリドン等のラクタム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素誘導体、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類及びこれらの糖類の誘導体、グリシン、トリメチルグリシンのベタイン類などが挙げられる。
なお、上記例示した保湿剤のうち、ポリオール類(グリコール系化合物)であって、既述した第1溶剤と異なるものは第2溶剤に分類されるものとする。
本実施形態のインクジェット記録用インクに保湿剤を配合する場合の配合量としては、インクジェット記録用インクの全量に対して、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
1.7.2.表面張力調整剤
本実施形態のインクジェット記録用インクは、表面張力調整剤を含有してもよい。表面張力調整剤としては、水溶解時に表面張力を低下させインクの印刷用基材や吐出流路に対する濡れ性を調整するために用いられ、低表面張力性の水溶性溶剤及び界面活性剤から選ばれる。水溶性溶剤系としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、ブチレングリコール、1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールモノエーテル類が挙げられる。
なお、上記例示した水溶性溶剤系の表面張力調整剤のうち、ジオール類(グリコール系化合物)又はグリコールモノエーテル類(グリコールエーテル系化合物)であって、logP値が0.0以上2.0以下のものは、第1溶剤に分類され、ジオール類(グリコール系化合物)であって、既述した第1溶剤と異なるものは第2溶剤に分類されるものとする。
界面活性剤系としては、例えばノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤から適宜選択できる。またこれらのうち界面活性が高く気泡性の少ないアセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、オルフィンE1004、E1010、E1020、PD−001、PD−002W、PD−004、PD−005、EXP.4200、EXP.4123、EXP.4300(以上商品名:日信化学工業株式会社製)、サーフィノール440、465、485、CT111、CT121、TG、GA、ダイノール604、607(以上商品名:エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製)、アセチレノールE40、E60、E100(以上商品名:川研ファインケミカル株式会社製)、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(商品名:エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製)、サーフィノール465(商品名:日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製)などが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名:ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、(以上商品名:信越化学株式会社製)、シルフェイスSAG002、005、503A、008(以上商品名:日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
1.7.3.pH調整剤
本実施形態のインクジェット記録用インクは、そのpHを調整する目的で、pH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等、有機塩基としてトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、有機酸としてアジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸等が挙げられる。
1.7.4.その他の成分
本実施形態に係るインクジェット記録用インクは、その保存安定性及びヘッドからの吐出安定性を良好に維持したり、目詰まり改善のために、又はインクジェット記録用インクの劣化を防止するために、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することができる。
1.8.作用効果
本実施形態に係るインクジェット記録用インクは、疎水性の比較的高い(水−オクタノール分配係数(logP)が2.0以上5.0以下である)消泡剤と、疎水性の比較的低い(水−オクタノール分配係数が0.0以上2.0以下である)グリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる第1溶剤と、を含むので、消泡剤の可溶化が良好であるとともに、気泡が抑制され、吐出安定性が良好である。また、本実施形態のインクジェット記録用インクは、樹脂粒子のゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であり、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する。そのため、ゼータ電位による分散安定性と、ポリオキシエチレン鎖と親和性の高い第2溶剤による分散安定性と、を有する。これにより、樹脂粒子が凝集しにくく保存安定性が良好である。さらに、本実施形態のインクジェット記録用インクは、樹脂粒子に対して少なくともポリオキシエチレン鎖が共有結合によって結合しているので、記録物における定着性及び耐水性が良好である。
2.インクジェット記録装置
上記本実施形態のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録装置に好適に用いることができる。インクジェット記録装置は、上述のインクジェット記録用インクを収容するインク収容容器(カートリッジ、タンク等)及びこれに接続される記録ヘッドを少なくとも有し、上述のインクジェット記録用インクを記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を形成することができれば、特に限定されない。
本実施形態のインクジェット記録装置としては、シリアル型およびライン型のいずれでも使用することができる。これらの型のインクジェット記録装置には、記録ヘッドが搭載されており、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させながら、記録ヘッドのノズル孔からインクジェット記録用インクの液滴を所定のタイミングで(間欠的に)かつ所定の体積(質量)で吐出させ、記録媒体にインクジェット記録用インクを付着させて所定の画像を形成することができる。
ここで一般に、シリアル型のインクジェット記録装置では、記録媒体の搬送方向と、記録ヘッドの往復動作の方向が交差しており、記録ヘッドの往復動作と記録媒体の搬送動作(往復動作も含む)との組み合わせによって、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。またこの場合、一般的には、記録ヘッドには複数のノズル孔(インクジェット記録用インクを吐出する孔)が配置され、記録媒体の搬送方向に沿ってノズル孔の列(ノズル列)が形成されている。また、記録ヘッドには、インクジェット記録用インクの種類や数に応じて、複数のノズル列が形成される場合もある。
また、一般に、ライン型のインクジェット記録装置では、記録ヘッドは往復動作を行わず、記録媒体の搬送によって記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させて、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。この場合においても、一般的には、記録ヘッドには、ノズル孔が複数配置され、記録媒体の搬送方向に交差する方向に沿って該ノズル孔の列(ノズル列)が形成されている。
インクジェット記録方式は、上述したようなシリアル型またはライン型のインクジェット記録装置を用いるものであるが、方式としては、インクジェット記録用インクを微細なノズル孔より液滴として吐出して該液滴を記録媒体に付着させることができれば、特に制限されない。例えば、インクジェット記録方式としては、静電吸引方式、ポンプ圧力によりインク滴を噴射させる方式、圧電素子を用いる方式、インク液を微小電極で加熱発泡させインク滴を噴射させる方式、などを挙げることができる。
本実施形態で用いられるインクジェット記録装置には、例えば、加熱ユニット、乾燥ユニット、ロールユニット、巻き取り装置などの公知の構成を制限無く採用することができる。
インクジェット記録装置が、加熱ユニットを有する態様では、加熱ユニットは、画像形成時及び画像形成後の少なくとも一方において、記録ヘッド内、記録媒体及び/又は記録媒体上のインクジェット記録用インク(画像)を加熱することができる。これにより、記録媒体上に付着させたインクジェット記録用インク中に含有される液媒体(具体的には、水、アルキルポリオール、グリコールエーテルなど)を速やかに蒸発させることができる。これにより、記録媒体上においても高画質な画像を短時間で得ることができる。また、加熱ユニットとしては、インクジェット記録用インクの粘度を下げる目的で、記録ヘッド内のインクジェット記録用インクを加熱するものであってもよい。これにより、インクジェット記録用インクの粘度を下げて吐出性を向上させる態様であってもよい。具体的な加熱手段としては、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。
上記本実施形態のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録装置に好適に用いることができるが、特に、加熱ユニットを含む(加熱乾燥方式の)インクジェット記録装置において、非常に優れた効果を奏する。
すなわち、インクジェット記録装置が加熱ユニットを含む場合、記録ヘッドや記録媒体を加熱することで、記録ヘッドのノズル孔の付近のインクジェット記録用インクも乾燥させてしまう場合がある。そうすると通常はインクジェット記録用インクが樹脂の凝集等により高粘度化あるいは固化してノズル孔を詰まらせることになる。
これに対して、上記実施形態のインクジェット記録用インクでは、樹脂粒子のゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であって、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する。そのため、水分が多い状態では主として特定範囲のゼータ電位の効果によって樹脂粒子の分散性を安定させ、水分が乾燥して溶剤の濃度が上がった状態では主としてポリオキシエチレン鎖と第2溶剤との親和性によって樹脂粒子の分散性を安定させることができる。これにより、ある程度までは乾燥が進行しても樹脂の凝集を生じにくく、ノズル孔からのインクジェット記録用インクの再吐出が容易となる。なお、印刷後は、第2溶剤が記録媒体に浸透あるいは蒸発・揮散して樹脂粒子と分離するため、記録物の耐水性、定着性は十分に確保される。
3.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
3.1.樹脂粒子分散液の調製
3.1.1.樹脂粒子分散液1
モノマーとしてメタクリル酸メチル50g、メタクリル酸−2−エチルヘキシル100g、アニオン性反応性乳化剤としてエレミノールRS−3000(商品名:三洋化成工業株式会社製)3.5g、イオン交換水100gをホモミキサーで混合してモノマー乳濁液1を調製した。
モノマーとしてメタクリル酸メチル100g、メタクリル酸−2−エチルヘキシル50g、メタクリル酸1g、ポリオキシエチレン系反応性剤乳化剤としてアントックスLMA−10(商品名:日本乳化剤株式会社製)3.5g、イオン交換水100gをホモミキサーで混合してモノマー乳濁液2を調製した。
重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5gをイオン交換水20gに溶解した開始剤溶液を調製した。
次に撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロート3ヶを備えた反応器に、イオン交換水150g、炭酸水素ナトリウム0.2gとモノマー乳濁液1を50gを投入し、窒素を通気しながら80℃で30分撹拌を行った。続いて開始剤溶液を滴下ロートから15分かけて投入、さらにモノマー乳濁液1の残り全量を滴下ロートから1.5時間かけて投入、続けてモノマー乳濁液2の全量を滴下ロートから2時間かけて投入して重合を行った。熟成のため3時間おいてから冷却し、イオン交換水の追加とアンモニア水でpHを7.5に調整して固形分濃度40%の樹脂粒子分散液1を調整した。
得られた樹脂粒子の粒子径をマイクロトラックUPA(日機装株式会社製)をもちいて測定したところ、250nmであった。また、この樹脂粒子を0.1wt%となるように水で希釈してゼータサイザー ナノ ZS(商品名:Malvern Instruments Ltd.社製)にてゼータ電位を測定した結果、−45mVであった。さらに化学分解ガスクロマトグラフィー法にてポリオキシエチレン鎖の定性分析を行った。樹脂粒子をヨウ化水素酸で分解し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、ポリオキシエチレン部分の分解物であるヨウ化エチルが検出され、樹脂中にポリオキシエチレン鎖が含まれることを確認できた。なお、化学分解ガスクロマトグラフィー法は、文献「The TRC News No.115 pp.35−38」に記載の手法に準じて行った。
3.1.2.樹脂粒子分散液2〜4
反応性乳化剤、重合開始剤の量及び種類を表1に示したように変更した以外は、上記樹脂粒子分散液1の調製と同様にして、樹脂粒子分散液2及び3を調製した。各樹脂粒子の平均粒子径は、表1に記載した。また、樹脂粒子分散液2、3、4の樹脂粒子のゼータ電位は、それぞれ、−55mV、−50mV、−60mV、であった。
また、反応性乳化剤のかわりに、非反応性乳化剤として、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩(ニューコールB4−SN:日本乳化剤株式会社製)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(ニューコール2330:日本乳化剤株式会社製)を用い、重合開始剤の量及び種類を表1に示したように変更した以外は、上記樹脂粒子分散液1の調製と同様にして、樹脂粒子分散液4を調製した。樹脂粒子の平均粒子径は、表1に記載した。
Figure 2017141388
3.2.インクの調製
別に調製したシアン顔料分散液(顔料濃度15質量%)を1020g、消泡剤としてサーフィノールDF110D(商品名:エアプロダクツジャパン株式会社製)(2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール)(logP=4.18)(アセチレングリコール系)を0.2g、第1溶剤としての1,2−ヘキサンジオール(logP=0.7)を5g、第2溶剤としてのポリエチレングリコール200を5g、樹脂粒子分散液1を25g、保湿剤としてグリセリンを15g、表面張力調整剤としてシルフェイスSAG503A(商品名:日信化学工業株式会社製)を0.5g、pH調整剤としてトリイソプロパノールアミンを0.4g混合して、イオン交換水を加えて全量を100gとし十分に撹拌した。その後、孔径1.2μmのメンブレンフィルターで濾過を行って、実施例1のインクを調製した。
消泡剤、第1溶剤、第2溶剤、樹脂粒子分散液、保湿剤及び表面張力調整剤の種類及び量を表2に示すように変更し、上記と同様にして実施例2−6のインク、及び比較例1−3のインクをそれぞれ作成した。
Figure 2017141388
表2中、「KS−66」は、シリコーン系消泡剤であり、信越化学工業株式会社から入手した。「BYK−348」は、表面張力調整剤であり、ビックケミー・ジャパン株式会社から入手した。また、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのlogP(水−オクタノール分配係数)は3.11、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールのlogPは2.53である。ブチルトリグリコールのlogPは0.02である。さらに、プロピオン酸は、logPが0.25でありlogPが0.0−2.0の範囲である化合物ではあるが、構造がグリコール及び/又はグリコールエーテル系ではない化合物である。
3.3.インクの評価
3.3.1.保存安定性
実施例及び比較例の各インクをサンプル瓶に入れ、60℃及び−20℃の二水準でそれぞれ1週間保存し、その後各インクを濾過して析出物を集めた。二水準の合計の析出物の個数及び外観により、保存安定性を評価した。評価基準を以下に示す。
A:析出物が50個/1mL未満
B:析出物が50個/1mL以上200個/1mL未満
C:析出物が200個/1mL以上
D:インクに分離あり
3.3.2.消泡性
実施例及び比較例の各インクをサンプル瓶に、サンプル瓶の1/10の高さまで入れ、1分間撹拌してそのまま静置し、10分後に残っている泡の高さで消泡性を評価した。評価基準を以下に示す。
A:インク高さの10%未満
B:インク高さの10%以上100%未満
C:インク高さの100%以上500%未満
D:インク高さの500%以上
3.3.3.吐出安定性
インクジェット方式のプリンターEM−930C(商品名:セイコーエプソン株式会社製)に実施例及び比較例の各インクをそれぞれ充填し、クリーニングを3回繰り返した直後に全ノズルを吐出しながら20頁連続印刷して、印刷抜け、曲がりのノズル本数を以下の基準に基づいて判定した。
A:抜け、曲がりが0ノズル
B:抜け、曲がりが1〜5ノズル
C:抜け、曲がりが6ノズル以上
3.4.評価結果
以上の評価結果を表2に併記した。評価結果をみると、水−オクタノール分配係数が2.0以上5.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる消泡剤と、水−オクタノール分配係数が0.0以上2.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる第1溶剤と、グリコール系の第2溶剤と、ゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であり、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する樹脂粒子と、を含む、各実施例のインクは、保存安定性、消泡性及び吐出安定性のいずれも非常に良好な結果となった。この結果は、少なくとも、消泡剤が第1溶剤によって十分に可溶化されていること、樹脂粒子の凝集が生じていないこと、及び十分な消泡性とこれによる吐出安定性が得られていることを裏付けている。
一方、反応性乳化剤を用いずに製造した樹脂粒子分散液4を用いた比較例1のインクでは、消泡性及び吐出安定性が不十分な結果となった。これは、消泡剤は可溶化されるものの、非反応性乳化剤が樹脂粒子分散液4中に残存したことによる起泡性が高まったことで、消泡効果が小さくなったことによると考えられる。
また、消泡剤をシリコーン系の化合物とした比較例2では、保存安定性が不十分であった。これは、消泡剤を十分に可溶化できなかったことに起因していると考えられる。さらに、グリコール系及びグリコールエーテル系化合物でないプロピオン酸を第1溶剤とした比較例3のインクでは、保存安定性、消泡性及び吐出安定性のいずれも劣っていた。これは、プロピオン酸が、logPが0.0−2.0の範囲内であっても、グリコール系及びグリコールエーテル系化合物の消泡剤との構造上の違いにより、消泡剤を十分に可溶化できなかったことに起因すると考えられる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (7)

  1. 色材と、
    水−オクタノール分配係数が2.0以上5.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる消泡剤と、
    水−オクタノール分配係数が0.0以上2.0以下のグリコール系及びグリコールエーテル系化合物から選ばれる第1溶剤と、
    前記第1溶剤とは異なるグリコール系の第2溶剤と、
    ゼータ電位が−65mV以上−15mV以下であり、かつ、ポリオキシエチレン鎖を有する樹脂粒子と、
    を含む、インクジェット記録用インク。
  2. 請求項1において、
    前記第1溶剤を、0.5質量%以上15質量%以下含有する、インクジェット記録用インク。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記消泡剤を、0.005質量%以上0.5質量%以下含有する、インクジェット記録用インク。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記第2溶剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール及びその多量体から選ばれた、インクジェット記録用インク。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記第2溶剤を、2質量%以上30質量%以下含有する、インクジェット記録用インク。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記樹脂粒子は、アニオン性官能基を有する、インクジェット記録用インク。
  7. 請求項6において、
    加熱乾燥方式のインクジェット記録装置に使用される、インクジェット記録用インク。
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