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JP2005154549A - 水性インク組成物及びそれを用いたインクジェット記録方法、並びに記録物 - Google Patents

水性インク組成物及びそれを用いたインクジェット記録方法、並びに記録物 Download PDF

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JP2005154549A JP2003393958A JP2003393958A JP2005154549A JP 2005154549 A JP2005154549 A JP 2005154549A JP 2003393958 A JP2003393958 A JP 2003393958A JP 2003393958 A JP2003393958 A JP 2003393958A JP 2005154549 A JP2005154549 A JP 2005154549A
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Abstract

【課題】 長期・高温放置時での保存安定性が高く、インクジェットプリンタ使用時での吐出安定性が高い水性インク組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の水性インクは、着色剤を包含した分散樹脂からなる色材分散体、アセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体、水に対する溶解度が20℃において0.5wt%以上でC1〜C5の1価アルコール化合物、保湿剤、及び水を含んでなる水性インク組成物であって、前記分散樹脂が単独では水に不溶な樹脂からなり、前記アルコールおよび保湿剤とアセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体が相互溶解する少なくとも一種類の組み合わせでインクを作成することにより、保存安定性と吐出安定性を両立した水性インク組成物を提供することが可能となった。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水性インク組成物、インクジェット記録方法及び記録物に関する。
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行なう印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速で印刷可能であるという特徴を有する。
インクジェット記録方法に使用されるインク組成物は、水を主成分とし、これに着色剤及び目詰まり防止等の目的でグリセリン等の保湿剤を含有したものが一般的である。インクジェット記録用インク組成物に用いられる着色剤としては、色剤の彩度の高さ、利用できる色剤の種類の豊富さ、水への溶解性等の理由から水溶性染料が数多く使用されている。
しかし、染料は耐光性及び耐水性等の諸特性に劣ることがあり、よって染料系のインク組成物により印刷された印刷物は、耐光性及び耐水性に劣ることになる。耐水性については、インク吸収層を有するインクジェット専用記録媒体によって改善されているが、普通紙については未だ充分とは言い難い。
それに対して、顔料は染料に比べて耐光性及び耐水性に優れており、近年、耐光性及び耐水性を改善する目的でインクジェット記録用インク組成物の着色剤としての利用が検討されている。ここで、顔料は一般に水には不溶であるため、顔料を水系インク組成物に利用する場合には、顔料を水溶性樹脂等の分散剤と共に混合し、水に安定分散させた後にインク組成物として調製する必要がある。
顔料が水系に安定的に分散するためには、顔料の種類、粒径、用いる分散剤の種類、及び分散手段等を検討する必要があり、これまで多くの分散方法及びインクジェット記録用インクが提案されている。例えば、カーボンブラックを界面活性剤や高分子分散剤で分散した水性顔料インクが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
また、水、スチレン−マレイン酸共重合体、ε−カプロラクタム、及び顔料からなるインク組成物が提案されている(特許文献3参照)。
また、水性媒体、スチレン−マレイン酸共重合体、及び銅フタロシアニン顔料を含有するインク組成物が提案されている(特許文献4参照)。
また、分散樹脂の酸基の60モル%以上がアルカリ性の中和剤で中和された樹脂を用いた水性インクが提案されている(特許文献5、特許文献6参照)。
さらに、インクにアセチレングリコール型界面活性剤、アルコール化合物を用いたインク組成物が提案されている(特許文献7、特許文献8参照)。
特開昭64−6074号公報 特開昭64−31881号公報 特開平3−252467号公報 特開平3−79680号公報 特開平8−183920号公報 特開平9−40895号公報 特開平4−239068号公報 特開平6−322307号公報
上述の様に顔料をインクジェット記録用インク組成物に用いるためには、水中に安定的に分散させて長期間それを保持することが重要であるが、上記の従来技術(特許文献1〜特許文献4)は満足いくものではなかった。
また、インクジェット記録方法に用いるインクには、着色剤以外にインクジェット記録方法における種々の特性を最適化するために各種の添加剤、特には水溶性有機溶剤が添加される。その水溶性有機溶剤としては、乾燥を防止する保湿剤、インク組成物の表面張力を下げて記録媒体への浸透性を制御する浸透溶剤や界面活性剤、インク組成物のpHを調整する有機アミン等がある。これらの溶剤の中には分散している着色剤に影響してその分散性を阻害し、インク組成物の保存安定性を阻害する場合がある。特に、疎水性表面を有する顔料表面や分散樹脂中の疎水性部分に対して親和性の強い溶剤でこれらの影響が出やすいという問題があった。また、このような影響が出た場合、顔料表面から分散剤である分散樹脂が遊離してインク中に溶解してしまい、これをインクジェット記録用インクとして用いた場合にプリンタヘッドからのインク吐出が不安定となってしまうという問題点があった。
上記の従来技術(特許文献5、特許文献6)に記載された、分散樹脂の酸基の60モル%以上がアルカリ性の中和剤で中和された樹脂を用いた水性インクでは、使用する水溶性有機溶剤の種類によっては、分散樹脂と水溶性有機溶剤とが影響し合うことによって、インクの保存安定性・吐出安定性が低下することが問題であった。
一方、上記の従来技術(特許文献7、8)では、アセチレンアルコールおよびその誘導体と脂肪族アルコールを用いることが記載されているが、インクの吐出安定性は十分ではなかった。
従って、本発明は上述の問題点を解決し、インクの保存安定性が高く、かつ吐出安定性を両立した水性インク組成物を提供することを目的としている。
本発明の水性インク組成物は、着色剤を包含した分散樹脂からなる色材分散体、アセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体、水に対する溶解度が20℃において0.5wt%以上でC1〜C5の1価アルコール化合物、保湿剤、及び水を含んでなる水性インク組成物であって、前記分散樹脂が単独では水に不溶な樹脂からなり、前記アルコールおよび保湿剤とアセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体が相互溶解する少なくとも一種類の組み合わせを含んでいることを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、着色剤を包含した分散樹脂からなる色材分散体、アセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体、水に対する溶解度が20℃において0.5wt%以上でC1〜C5の1価アルコール化合物、保湿剤、浸透性有機溶剤、及び水を含んでなる水性インク組成物であって、前記分散樹脂が単独では水に不溶な樹脂からなり、前記アルコール、保湿剤、浸透性有機溶剤とアセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体が相互溶解する少なくとも一種類の組み合わせを含んでいることを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、さらに水溶性及び/あるいは水分散性の添加樹脂を含んでなることを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、前記浸透性有機溶剤が、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、1,2−アルキルジオール類、1,3−プロパンジオール骨格を有する誘導体からなる群から選ばれることを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、前記着色剤が、カーボンブラックであることを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、前記着色剤が、有機顔料であることを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、前記着色剤が、油溶染料、分散染料から選ばれることを特徴とする。
さらに弱アルカリ化剤を含んでなり、アルカリ性であることを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、前記弱アルカリ化剤が、有機アミン、有機酸塩及び有機緩衝剤から選ばれる少なくともいずれかの化合物を含んでなることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、上述に記載の水性インク組成物の液滴を吐出して、前記液滴を記録媒体に付着させて記録を行なうことを特徴とする。
本発明の記録物は、上述に記載の水性インク組成物をインクジェット記録方法にて印刷したことを特徴とする。
以下に本発明の水性インク組成物の構成要素を説明する。
[色材分散体]
本発明に水性インク組成物に用いる色材分散体は、着色剤をその内部に包含した分散樹脂からなる分散粒子である。さらにその分散樹脂は単独の遊離状態では水に不溶であるが、着色剤を包含した状態は分散して、着色剤をインク中に保持している。
[分散樹脂]
本発明の水性インク組成物における分散樹脂は、単独では水に不溶で、後に実施例で述べる色材分散体の製造方法で用いる有機溶剤、好ましくはアセトンやメチルエチルケトン等の親水性有機溶剤に可溶なポリマーであれば特に制限は無いが、そのポリマー構造として疎水性部分と親水性部分とを併せ持つことが必須である。
ここで、疎水性部分とは、アルキル基、シクロアルキル基、芳香環、あるいは未中和基を有する繰り返し単位を示す。未中和基とは、中和剤により中和され得る基であり、酸基、アルカリ性基を挙げることができる。未中和基としては、具体的にはカルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
また親水性部分としては、中和基を有する繰り返し単位を示す。中和基とは、未中和基が中和されてなる基であり、イオン基であることが好ましい。未中和基及び中和基は、アニオン性基であることが好ましく、特に、未中和基がカルボン酸基、中和基がカルボン酸アニオン基(カルボン酸塩の基)である場合を好適に例示できる。カルボン酸塩としては、カルボン酸リチウム塩、カルボン酸ナトリウム塩、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩等を挙げることができる。
分散樹脂が上述の構造を持つことで、疎水性部分で後述する着色剤の疎水的表面に強固に吸着して着色剤を包含できる。さらに、親水性部分で水になじむことができるため、水中で安定的に分散する色材分散体となることができる。
アニオン性基を有する分散樹脂は、例えば、アニオン性基を有するモノマー(以下、アニオン性基含有モノマーという)と、さらに必要に応じてこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有モノマーとしては、カルボン酸基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー等が挙げられる。
カルボン酸基を有するモノマーとしては、繰り返し単位中にカルボン酸基を一つもしくは二つ含んだアクリルモノマーが好ましい。
カルボン酸基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸またはメタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
スルホン酸基を有するモノマーの具体例としては、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スルホブチルメタクリレート、アリルスルホン酸等が好ましい。さらに、樹脂を重合した後、硫酸、発煙硫酸、スルファミン酸等のスルホン化剤によりスルホン化することも好ましい。
アニオン性基含有モノマーと共重合し得る他のモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル等のような(メタ)アクリル酸エステル;ステアリン酸とグリシジルメタクリレートの付加反応物等のような油脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応物;炭素原子数3以上のアルキル基を含むオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のようなスチレン系モノマー;イタコン酸ベンジル等のようなイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチル等のようなマレイン酸エステル;フマール酸ジメチル等のようなフマール酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、アクリル酸アミノエチルアミド、アクリル酸アミノプロピルアミド、アクリル酸メチルアミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノプロピルアミド、アクリル酸エチルアミノエチルアミド、アクリル酸エチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸アミノエチルアミド、メタクリル酸アミノプロピルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸エチルアミノエチルアミド、メタクリル酸エチルアミノプロピルアミド、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等が挙げられる。
これらの分散樹脂は、数平均分子量が1,000〜200,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜150,000の範囲程度のものが特に好ましい。分散樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、着色剤における被覆膜として、または水性インク組成物における塗膜としての機能を充分に発揮することができる。
アニオン性基を有する分散樹脂の未中和基の一部を中和するアルカリ性化合物としては、有機アミンやアルカリ金属塩化合物等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリンの如き揮発性アミン化合物との塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等の揮発しにくい高沸点の有機アミン等の塩が挙げられる。アルカリ金属塩化合物の具体例としては、アルカリ金属としてリチウム、ナトリウム、カリウムを有する化合物、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属塩、より好ましくは水酸化カリウムが挙げられる。
なお、後述の弱アルカリ化剤にも用いることができる有機アミンは、最終的なインク配合時に含まれる弱アルカリ化剤の一部もしくは全部を、分散樹脂の中和時に予め添加しておくことも可能である。
分散樹脂において疎水性部分と親水性部分の比率はアニオン性基の量で代用すると、酸価換算で30KOHmg/g程度以上の親水性部分の含有が好ましく、さらに50〜250KOHmg/g程度の範囲がより好ましい。
[着色剤]
着色剤としては、水媒体に不溶あるいは難溶の着色剤として有機顔料、カーボンブラック、油溶染料、分散染料等を挙げることができる。発色が良好であること、比重が小さいために分散時に沈降しにくいことより、特に、カーボンブラック、有機顔料、油溶染料、分散染料が好ましい。
本発明の水性インク組成物では、このような着色剤が、前記分散樹脂(好ましくは、アニオン性基を有するポリマー)により分散されている。
本発明で好ましいカーボンブラックの具体例としては、三菱化学株式会社製のカーボンブラックとして、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等が挙げられる。デグサ社製のカーボンブラックとして、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等が挙げられる。コロンビアカーボン社製のカーボンブラックとして、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等が挙げられる。キャボット社製のカーボンブラックとして、キャボット社製のリガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等が挙げられる。なお、これらは本発明に好適なカーボンブラックの一例の記載であり、これらによって本発明が限定されるものではない。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いてよい。また、これらの顔料は水性インク組成物全量に対して0.5重量%〜15重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の添加が好ましい。
本発明で好ましい有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料等が挙げられる。
また、本発明で好ましい油溶染料、分散染料としては、インクビヒクル中で溶解せずに分散する色材であればいずれも用いることができ、アゾ系、金属錯塩アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系等が挙げられる。
本発明による水性インク組成物に用いられる有機顔料の具体例としては下記のものが挙げられる。
シアンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はシアンインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%、好ましくは1重量%〜10重量%で含有してなる。
マゼンタインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はマゼンタインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
イエローインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はイエローインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
オレンジインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36もしくは43またはこれらの混合物である。また、これらの顔料はオレンジインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
グリーンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7もしくは36またはこれらの混合物である。また、これらの顔料はグリーンインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
本発明の水性インク組成物において、着色剤と分散樹脂の比率は10:1〜1:10が好ましく、4:1〜1:3がより好ましい。また、分散時の着色剤の粒径は、動的光散乱法で計測した場合の最大粒径が500nm未満で平均粒径が300nm以下であり、より好ましくは平均粒径が200nm以下である。
[アセチレングリコール系界面活性剤]
本発明による水性インク組成物は、アセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体からなる界面活性剤を含んでいる。アセチレングリコール系界面活性剤は、記録媒体へのインク浸透性を速めるために用いている。また、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤は、起泡性が少ない、あるいは無い特性を持ち、本発明の水性インク組成物をインクジェット記録方法により用いる際に特に有用である。本発明において好ましいアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤の具体例としては、Air Products and Chemicals. Inc.社製のサーフィノール61、82、104、440、465、485、またはTG、日信化学工業株式会社製のオルフィンSTG、オルフィンE1010等、川崎ファインケミカル株式会社製のアセチレノールE00、アセチレノールE00P、アセチレノールE40、アセチレノールE100等が挙げられる。
アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤の添加量は所望のインク乾燥時間で適宜決定されてよいが、水性インク組成物全量に対して0.01重量%〜10重量%が好ましい。
[1価アルコール化合物]
本発明による水性インク組成物は、1価アルコール化合物を含んでいる。ここで1価アルコールとは、水に対する溶解度が20℃で0.5wt%以上で、C1〜C5のアルコール化合物を指す。1価アルコールは、記録媒体へのインク浸透性を速めるために用いている。
本発明に好ましい1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンタノールなどがあげられ、インク組成物に対して0.5重量%〜10重量%の範囲で添加することが好ましい。また1価アルコール化合物は、後述の保湿剤と組み合わせで添加して、上述のアセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体を溶解する少なくとも一種の組み合わせで用いることが好ましい。
[保湿剤]
本発明による水性インク組成物は保湿剤を含んでおり、保湿剤は水性インク組成物の乾燥を抑制するため、プリンタヘッドノズル先端の乾燥による水分蒸発を抑制して、水性インク組成物の凝集・固化を防止するために添加される。
保湿剤は、水溶性で吸湿性の高い材料から選ばれ、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクラム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類を用いることができる。
さらに、上述の保湿性有機溶剤の能力を補助する目的で、水溶性の固体保湿剤を併用、添加することも可能である。詳しくは、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等、ε−カプロラクタム等のラクタム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素誘導体、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類及びこれらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖、酸化糖、アミノ酸、チオ糖等が挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビット等が挙げられる。
これらの保湿剤の添加量は、単独あるいは複数混合して、水性インク組成物全量に対して1重量%〜40重量%が好ましく、より好ましくは1重量%〜30重量%である。これらの保湿剤は、他のインク添加剤と合わせてインク粘度が25℃で25cPs以下になる添加量で加えることができる。
なお、保湿剤は上述の1価アルコール化合物と組み合わせで添加して、上述のアセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体を溶解する少なくとも一種の組み合わせで用いることが好ましい。
[浸透性有機溶剤]
本発明による水性インク組成物は、アセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体が相互溶解する浸透性有機溶剤を含んでいる。さらに、浸透性有機溶剤として、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、1,2−アルキルジオール類、1,3−プロパンジオール骨格を有する誘導体から選ばれることがより好ましい。
多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体としては、特にアルキルの炭素数は3以上の多価アルコールの誘導体が好ましい。具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体の添加量は、水性インク組成物全量に対して0.5重量%〜15重量%の範囲で添加することが好ましい。
1,2−アルキルジオール類としては、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール等の炭素数が4〜8の1,2−アルキルジオールが好ましい。炭素数6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が強く、特に好ましい。これら1,2−アルキルジオールの添加量は、水性インク組成物全量に対して0.25重量%〜15重量%の範囲で添加することが好ましい。
1,3−プロパンジオール骨格を有する誘導体としては、2−(2,2−ジエトキシエチル)−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス[2−エチル−1,3−プロパンジオール]等が特に好ましい。これら1,3−プロパンジオール骨格を有する誘導体の添加量は、水性インク組成物全量に対して0.25重量%〜15重量%の範囲で添加することが好ましい。
[添加樹脂]
添加樹脂は、分散樹脂とは別に水性インク組成物に添加することができる樹脂である。本発明で用いる着色剤はその表面が疎水的なために、水中で安定的に分散するために界面活性剤や水性樹脂等の分散剤が必須であるが、本発明の着色剤は予め上述した分散樹脂を用いて分散しているために、後から加える添加樹脂には分散能は不要である。従って、上述の分散樹脂を樹脂単体の樹脂エマルジョンとして添加することも、あるいは分散能がない水溶性樹脂及び/あるいは水分散性樹脂を用いることができる。
水溶性樹脂及び/あるいは水分散性樹脂としては、上述の分散樹脂及び分散樹脂原料のモノマーを含む水性樹脂、及びポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン4級塩、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリ乳酸、セラック、変性ロジン、フェノール樹脂・アルカリ塩等、及びこれらの共重合体が挙げられる。
さらに、分子中に水溶性基を有さない油性樹脂を、酸化、スルホン酸付加等により親水化した樹脂を用いることもできる。
添加樹脂のインクへの添加量は、水性インク組成物全量に対して0.5重量%〜20重量%の範囲で添加することが好ましい。
[弱アルカリ化剤]
インクジェット記録装置において、インク組成物の流路に金属が用いられている場合は、インク組成物が酸性であると金属の腐食が生じることがあるので、本発明の水性インク組成物は中性又はアルカリ性に調整されていることが望ましい。
中性又はアルカリ性に調整するためには、水性インク組成物はさらに弱アルカリ化剤を含有することが好ましい。ここで、水性インク組成物を中性又はアルカリ性に調整するために水酸化ナトリウム等の強アルカリ性化合物を用いると、未中和基が酸基(カルボン酸基、スルホン酸基等)である場合、酸基の中和が進んでしまう恐れがある。本発明では弱アルカリ化剤を用いることで、前記分散樹脂の中和率を大きく変えずに水性インク組成物を中性又はアルカリ性に保つことができ、より信頼性の高い水性インク組成物を提供することができる。
前記弱アルカリ化剤としては、有機酸塩及び有機緩衝剤から選ばれる化合物が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、プロピオン酸塩等のアルキルカルボン酸の塩類、乳酸塩、グリコール酸塩、グリセリン酸塩等のヒドロキシ酸の塩類が好ましい。中でも、アルキルカルボン酸類のアルカリ金属塩であり、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等がより好ましい。有機緩衝剤としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス−塩酸塩、トリス−マレイン酸、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン等が好ましい。
弱アルカリ化剤の添加量は、所望のインクpHに合わせて適宜設定することができ、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
[水]
水は、本発明の水性インク組成物の中心となる媒体であり、好ましい水は、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
また、紫外線照射、又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、水性インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
[その他の成分]
本発明の水性インク組成物は、さらに必要に応じてインクジェット記録用インクに通常用いられる添加物を加えることもできる。
必要に応じて加える添加物としては、界面活性剤、ヒドロトロピー剤、酸化防止剤・紫外線吸収剤、防腐剤・防かび剤等が挙げられる。
界面活性剤は、記録媒体へのインク浸透性を速めるための添加剤である。
好適な材料として、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、燐系界面活性剤、硼素系界面活性剤等を用いることができる。
シリコン系界面活性剤として、BYK−307、BYK−331、BYK−333、BYK−348(商品名、以上いずれもビックケミー株式会社製)等を挙げることができる
ヒドロトロピー剤は、インクの保存安定性や耐目詰まり性を改良するために加えるもので、尿素、チオ尿素、アルキル尿素等を用いることができる。
酸化防止剤・紫外線吸収剤としては、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレット等のビウレット類等、L−アスコルビン酸及びその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024等、あるいはランタニドの酸化物等が用いられる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等の中から選ぶことができる。
[着色剤の分散方法]
本発明で、着色剤を分散樹脂により分散させる好適な方法は、アニオン性基を含有するポリマーを有機アミンやアルカリ金属塩化合物等のアルカリ性化合物を含有するアルカリ水に溶解、あるいは分散させ、この液と着色剤を混合して、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の分散機を用いて分散することができる。より好ましくは、着色剤と文案ポリマーをより強固に接着して分散安定するために、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、特開平11−43636号、または、特開2001−247810号の各公報に開示されている方法によって製造することもできる。これら公開公報に開示されている製造方法について、以下に概説する。
特開2001−247810号、特開平9−151342号及び特開平10−140065号各公報には、「転相法」と「酸析法」とが開示されている。
a)「転相法」
本発明において、「転相法」とは、基本的には、自己分散能または溶解能を有するポリマーと顔料との混合溶融物を水に分散させる、自己分散(転相乳化)化方法をいう。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、また溶解して混合した状態、またはこれら両者のいずれの状態をも含むものをいう。
一つの具体例として、
(1)分散樹脂前駆体(前記したアニオン性基を含有するポリマー等)/溶剤溶液に、顔料、中和剤、少量の水を加えて、溶剤ベースのスラリーを作製する工程、
(2)スラリーを多量の水に加えながら分散し、水ベースのスラリーを作製する工程、
(3)水ベースのスラリーから、ポリマーを溶解するのに用いた溶剤を除去して、水分散性ポリマーで顔料を包含した顔料含有ポリマー粒子色材分散体を作製する工程を含んでなるものである。
b)「酸析法」
本発明において、「酸析法」とは、ポリマーと顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、ポリマーが含有してなる未中和基の一部を中和剤で中和することによって、着色剤を製造する方法をいう。
未中和基がアニオン性の酸基であり、中和剤が塩基性化合物である場合には、具体的には、例えば、
(1)ポリマーと顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、また、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程、(2)pHを中性または酸性にすることによってポリマーを疎水化して、ポリマーを顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過及び水洗を行なって、含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、ポリマーが含有してなるアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物にて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ないポリマーのゲル化を図る工程とを含んでなるものである。
上記の、「転相法」及び「酸析法」のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号公報、及び特開平10−140065号公報に開示されているものと同様であってよい。
さらに、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号公報には、着色剤の製造方法が開示されている。この製法の概要は、基本的には次の製造工程からなる。
(1)アニオン性基を有するポリマーまたはそれを有機溶剤に溶解した溶液と塩基性化合物とを混合して中和することと、(2)この混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得ることと、(3)必要に応じて、溶剤を蒸留して除くことと、(4)酸性化合物を加えてアニオン性基を有するポリマーを析出させることによって、顔料をアニオン性基を有するポリマーで被覆することと、(5)必要に応じて、濾過及び水洗を行なうことと、(6)塩基性化合物を加えてアニオン性基を有するポリマーのアニオン性基を中和して水性媒体中に分散させて水性色材分散体を得ること、とを含んでなるものである。
また、特開平11−2096722号公報及び特開平11−172180号公報に開示されているものと同様であってよい。
以上のようにして得られる着色剤の水性分散液に、前記した2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び水、さらに必要に応じて前記した水溶性有機溶剤、弱アルカリ剤、その他の成分を添加することによって、水性インク組成物を好適に製造できる。
[インクジェット記録方法及び記録物]
本発明のインクジェット記録方法は、上述の水性インク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に付着させる方式であればいかなる方法も使用することができる。その幾つかを説明すると、先ず静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印可し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式がある。
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第三の方法は圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
以上の様な種々のインクジェット記録方式の内、特に10m/s以下の比較的低速のインク吐出速度での印刷方法と本発明の水性インク組成物を組み合わせることで、吐出ノズルへのインク付着を防止して安定にインクジェット記録を行なうことができ、好ましい。
また、本発明の記録物は、上記した水性インク組成物をインクジェット記録方法にて印刷して得られる。
以下の実施例により本発明の内容を明確に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。また、本発明の水性インク組成物に用いられる分散液を以下に示す方法で調製した。
<分散液の作製>
(1)分散液K1
カーボンブラックとしてMA100(商品名、三菱化学株式会社製) 75g、アニオン性基としてカルボン酸基を有するスチレン−アクリル酸系分散樹脂としてジョンクリル611(商品名、ジョンソンポリマー株式会社、平均分子量8,100、酸価53KOHmg/g) 25g、水酸化カリウム 1.0g、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水 250gを混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除き、超純水で顔料濃度15重量%まで希釈して分散樹脂で分散した分散液K1を調製した。
(2)分散液C1
分散液K1に対して、カーボンブラックを有機顔料のC.I.Pigment Blue 15:3 65gに、分散樹脂の添加量を35gに、水酸化カリウムの添加量を1.70gに代える以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液C1とする。
(3)分散液M1
[分散樹脂の合成]
攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた反応容器を窒素置換した後、スチレン25g、n−ドデシルメタクリレート30g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート20g、ブチルメタクリレート15.5g、メタクリル酸9.3gをメチルエチルケトン100gに溶解して、窒素ガス置換を行った。
滴下ロートにも同様のモノマー/メチルエチルケトン溶液を入れ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−イソメチルバレロニトリル)0.2gを加えて窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、65℃に加温して滴下ロートの溶液を3時間かけて加えながら重合反応を行った。得られた共重合体溶液を減圧乾燥とメチルエチルケトン溶解、濾過を繰り返して精製した後、樹脂の固形分が50重量%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈した。酸価が約70KOHmg/g、平均分子量50,000の樹脂溶液Aを得た。
[分散液の調製]
顔料を有機顔料のC.I.Pigment Red 122 200g、上述の樹脂溶液A 100gを混合・撹拌してスラリーを作製した。このスラリーに10重量%水酸化カリウム水溶液39.5gを加え、超高圧ホモジナイザーにて分散を行った。
続いてこの分散溶液を撹拌している純水400gに徐々に加え、さらに減圧・60℃にてメチルエチルケトンの全部と水の一部を除去して、さらに顔料濃度が15重量%になるように超純水を加え、分散液M1を得た。
(4)分散液Y1
分散液M1に対して、顔料を有機顔料のC.I.Pigment Yellow 74 150gとし、10重量%水酸化カリウム水溶液の添加量を39.5gに代える以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液Y1とする。
(5)分散液C2
分散液M1に対して、顔料を有機顔料のC.I.Pigment Blue 15:4 50gとし、10重量%水酸化カリウム水溶液の添加量を47.5gに代える以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液C2とする。
(6)分散液M3
分散液K1に対して、分散染料のC.I.Disperse Red 4 70gに、分散樹脂の添加量を35gに、水酸化カリウムの添加量を1.70gに代える以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液M3とする。
(7)分散液C3
分散液M1に対して、油溶染料のC.I.Solvent Blue 25 50gとし、10重量%水酸化カリウム水溶液の添加量を47.5gに代える以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液C3とする。
(8)分散液K3
カーボンブラックとしてMA100(商品名、三菱化学株式会社製) 75g、アニオン性基としてカルボン酸基を有するスチレン−アクリル酸系水溶性樹脂としてジョンクリル678(商品名、ジョンソンポリマー株式会社、平均分子量8,500、酸価215KOHmg/g) 25g、中和率100%を超える量の水酸化カリウム 3.60g、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水 250gを混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除き、超純水で顔料濃度15重量%まで希釈して水溶性樹脂で分散した分散液K3を調製した。
(9)分散液C4
分散液K3に対して、カーボンブラックを有機顔料のC.I.Pigment Blue 15:4 40gに、樹脂の添加量を40g、中和率100%を超える量の水酸化カリウムの添加量を8.0gに代える以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液C4とする。
<水性インクの調製>
〔実施例1〕
上述の材料・方法で得た分散液K1を46g、アセチレングリコールとしてサーフィノール104を1gおよびサーフィノール465(以上2種共に商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)を1g、1価アルコール化合物で、かつアセチレングリコールの溶解剤として2−ブタノールを5g、保湿剤としてトリエチレングリコールを20g、2−ピロリドンを4g、さらに超純水を加えて全量を100gとして2時間攪拌、孔径約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)にて濾過して水性インク組成物を調製した。
〔実施例2〜15〕
実施例1に対して、表1の組成に変更する以外は同様な方法でインクを作製した。
実施例6、8には、添加樹脂1としてモビニール742N(商品名、クラリアントポリマー株式会社製)を用いた。実施例7、13、14、15には添加樹脂2として樹脂溶液Aを用い、分散液M1に対して、C.I.Pigment Red 122を添加しない以外は同様な方法で樹脂単体30wt%の樹脂エマルジョンを作成した。
(比較例1)
実施例1に対して、酸価が高くかつ100%を超えた中和率でアルカリ成分を添加して分散することで分散樹脂自身が水に可溶な分散液K3を用いる以外は、同様な方法でインクを作成した。
(比較例2)
実施例2に対して、酸価が高くかつ100%を超えた中和率でアルカリ成分を添加して分散することで分散樹脂自身が水に可溶な分散液C4を用いる以外は、同様な方法でインクを作成した。
実施例1〜15および比較例1、2の組成を表1にまとめて示す。
Figure 2005154549



<評価方法>
(保存安定性)
実施例1〜15および比較例1、2の水性インク組成物を60℃で2週間放置と1ヶ月放置、及び凍結で1週間放置して、インク調製直後の粘度と放置後の値を比較した。判定基準は以下の通りである。
判定 A:変動幅が±6%未満
B:変動幅が±6%以上、±10%未満
C:変動幅が±10%以上
(吐出安定性)
実施例1〜15および比較例1、2の水性インク組成物をインクジェットプリンタであるPX−V700(商品名、セイコーエプソン株式会社製)に搭載した。25℃/40%RHの環境下で文字・塗りつぶしが混在する画像を連続的に印刷して、印刷中の画像に飛行曲がりや抜け等の不具合の有無を目視にて測定した。判定基準は以下の通りである。
判定AA:200枚まで連続印刷しても、飛行曲がり・抜けが発生しない
A:100枚までの連続印刷で、飛行曲がり・抜けが発生しない
B:100枚までの連続印刷で、飛行曲がり・抜けが発生したが10箇所未満である
上記実施例および比較例の評価結果を表2にまとめて示す。
Figure 2005154549
表2に示した様に、本発明の実施例1から15のインクは、比較例1,2のインクに対していずれも吐出安定性が良好であり、インクの保存安定性と吐出安定性を両立したインク組成物を供給することが可能になった。
さらに、浸透性有機溶剤として、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、1,2−アルキルジオール類、1,3−プロパンジオール骨格を有する誘導体を併用した実施例3、4、5、7、11、12、13、14、15は、特に優れた吐出安定性が得られた。
なお、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本発明の水性インク組成物は保存安定性・吐出安定性が高く、特にインクジェット記録用インクとして用いるのに適している。

Claims (11)

  1. 着色剤を包含した分散樹脂からなる色材分散体、アセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体、水に対する溶解度が20℃において0.5wt%以上でC1〜C5の1価アルコール化合物、保湿剤、及び水を含んでなる水性インク組成物であって、前記分散樹脂が単独では水に不溶な樹脂からなり、前記アルコールおよび保湿剤とアセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体が相互溶解する少なくとも一種類の組み合わせを含んでいることを特徴とする水性インク組成物。
  2. 着色剤を包含した分散樹脂からなる色材分散体、アセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体、水に対する溶解度が20℃において0.5wt%以上でC1〜C5の1価アルコール化合物、保湿剤、浸透性有機溶剤、及び水を含んでなる水性インク組成物であって、前記分散樹脂が単独では水に不溶な樹脂からなり、前記アルコール、保湿剤、浸透性有機溶剤とアセチレングリコールあるいはそのエーテル誘導体が相互溶解する少なくとも一種類の組み合わせを含んでいることを特徴とする水性インク組成物。
  3. さらに水溶性及び/あるいは水分散性の添加樹脂を含んでなることを特徴とする請求の範囲第1項から第2項のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  4. 前記浸透性有機溶剤が、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、1,2−アルキルジオール類、1,3−プロパンジオール骨格を有する誘導体からなる群から選ばれることを特徴とする請求の範囲第1項から第3項のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  5. 前記着色剤が、カーボンブラックであることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  6. 前記着色剤が、有機顔料であることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  7. 前記着色剤が、油溶染料、分散染料から選ばれることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  8. さらに弱アルカリ化剤を含んでなり、アルカリ性であることを特徴とする請求の範囲第1項から第7項のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  9. 前記弱アルカリ化剤が、有機アミン、有機酸塩及び有機緩衝剤から選ばれる少なくともいずれかの化合物を含んでなることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の水性インク組成物。
  10. 請求の範囲第1項から第9項のいずれか一項に記載の水性インク組成物の液滴を吐出して、前記液滴を記録媒体に付着させて記録を行なうインクジェット記録方法。
  11. 請求の範囲第1項から第10項のいずれか一項に記載の水性インク組成物をインクジェット記録方法にて印刷した、記録物。
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