JP2017036488A - 超硬工具及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
第1群:Al、V及びSi
第2群:Cr、Mo及びZr
第1群:Al、V及びSi
第2群:Cr、Mo及びZr
図1は本実施形態による超硬工具の断面図である。図1を参照して、超硬工具1は焼結体2からなる。焼結体2は、表層に窒化層3を備える。窒化層3は、焼結体2に対して窒化処理を実施することにより形成される。窒化層3は、表層に加工硬化層4を備える。加工硬化層4は、窒化層3を備えた焼結体2に対してショットピーニング処理を実施することにより形成される。
焼結体2は、超硬合金成分と、窒化物生成成分とを含有する。
超硬合金成分は、WC、Co、TiC及びTaCからなる群から選択される2種以上からなり、少なくともWC及びCoを含有する。
窒化物生成成分は、下記第1群及び第2群から選択される2種以上からなり、少なくとも第1群から選択される1種及び第2群から選択される1種を含有する。
第1群:Al、V及びSi
第2群:Cr、Mo及びZr
第1群のアルミニウム(Al)、バナジウム(V)及びシリコン(Si)は、Nとの親和力が大きい。そのため、焼結体2を窒化処理した場合に、第1群の元素は安定な窒化物を形成する。第1群の元素の窒化物は優れた硬さを有するため、焼結体2を窒化処理すれば、表層に形成される窒化層3の硬さが高まる。第1群の元素の窒化物は、焼結体2の最表層、具体的には、表面から数10nm〜数10μmの厚みの範囲に特に生成する。
第2群のクロム(Cr)、モリブデン(Mo)及びジルコニウム(Zr)も、Nとの親和力が大きい。そのため、第2群の元素も、安定な窒化物を形成する。第2群の元素の窒化物も優れた硬さを有する。第2群の元素の窒化物は、第1群の元素の窒化物よりも、表面から深い範囲に生成しやすい。具体的には、第2群の元素の窒化物は、焼結体2の表面から100μm深さの範囲に生成する。
超硬合金成分を100質量%とした場合の窒化物生成成分の総含有量は、2.0〜5.0質量%である。窒化物生成成分の総含有量が低すぎれば、窒化処理により生成される窒化物が少なすぎる。この場合、窒化層3の硬度が低い。一方、窒化物生成成分の総含有量が高すぎれば、窒化物が過剰に生成される。この場合、焼結体2に含まれる窒化物が過剰に表面に析出するため、窒化層3の表面粗さが粗くなる。表面粗さが粗ければ、摩擦係数が高くなり、潤滑性が低下する。したがって、窒化物生成成分の総含有量は2.0〜5.0質量%である。
焼結体2は、窒化層3を表層に備える。窒化層3は焼結体2の一部である。窒化層3は、焼結体2を窒化処理することにより形成される。上述のとおり、窒化層3は、窒化物生成成分の窒化物を含有する。そのため、窒化層3は優れた硬さを有する。
窒化層3は、加工硬化層4を表層に備える。加工硬化層4は窒化層3の一部である。加工硬化層4は、窒化層3を備えた焼結体2をショットピーニング処理することにより形成される。加工硬化層4は、窒化層3の表層に圧縮応力が付与されることで窒化層3の表層に形成された、緻密な層である。加工硬化層4は、上述の窒化物生成成分の窒化物を含有し、かつ、ショットピーニング処理により硬度が高められている。したがって、加工硬化層4の硬度は、窒化層3の硬度よりもさらに高い。窒化層3の潤滑性は高いため、加工硬化層4においても潤滑性は高い。さらに、窒化層3には過剰な窒化物が析出しないため、加工硬化層4においても表面粗さは小さい。加工硬化層4を形成することにより、超硬工具1の工具寿命がさらに向上する。
図2は、図1とは異なる他の超硬工具10の断面図である。図2の超硬工具10は、図1の超硬工具1と比較して、硬質保護層5を加工硬化層4上に備える。超硬工具10のその他の構成は、超硬工具1と同じである。
本実施形態の超硬工具1の製造方法の一例を説明する。本実施形態の超硬工具1の製造方法は、準備工程、窒化処理工程、及び、加工硬化処理工程を備える。超硬工具1が硬質保護層5を備える場合はさらに、成膜工程を備える。以下、各工程を詳述する。
初めに、焼結体2を製造する。焼結体2の製造方法は特に限定されない。たとえば、上述の超硬合金成分及び窒化物生成成分を含有した原料の炭化物及び金属粉末を、整粒及び混合して混合原料を製造する。混合原料を所定形状の金型で加圧成形して打ち抜きする。得られた成形体を真空中で焼成して、焼結体2を製造する。
焼結体2に対して窒化処理を実施する。これにより、上述の窒化物生成成分の窒化物を含有する窒化層3を、焼結体2の表層に形成する。窒化処理は周知の方法を採用できる。たとえば、電気炉内に焼結体2、NH3ガス、N2ガス及び必要に応じてCO2ガスを導入する。電気炉内を500〜550℃に加熱して窒化処理を実施する。加熱時間は0.5〜2時間程度が好ましい。加熱により、NH3ガスからN原子が乖離し、焼結体2内部に窒化物が生成する。これにより、焼結体2の表層に、窒化物を含有する窒化層3が形成される。CO2ガスを炉内へ導入した場合は、C原子が乖離する。乖離したC原子は窒化物の生成領域を拡げる。C原子により、窒化層3の安定形成が促進される。
窒化層3を備えた焼結体2に対してショットピーニング処理を実施する。ショットピーニング処理には、FPB(Fine Particle Bombarding)法を適用できる。これにより、上述の窒化物生成成分の窒化物を含有し窒化層3よりも高い硬度を有する加工硬化層4を、窒化層3の表層に形成する。ショットピーニング処理は周知の方法を採用できる。たとえば、窒化層3を備えた焼結体2を装置内のテーブルに固定する。鉄又は非鉄金属の球状投射材(ショット)を、窒化層3の表面に衝突させる。投射速度はたとえば、約200m/秒である。ショットの直径はたとえば、数10μm程度である。投射方法は、遠心力又は空気圧を利用した投射方法(エアノズル式又はインペラー式)を採用できる。投射材はたとえば、鉄鋼ショット、セラミックショット、アルミナショット及び超硬ショットが利用できる。以上の工程により、本実施形態の超硬工具1を製造できる。
さらに、加工硬化層4上に硬質保護層5を形成する場合、成膜工程を実施する。具体的には、窒化層3及び加工硬化層4を備えた焼結体2に対して、周知の成膜工程を実施する。たとえば、物理蒸着法、化学蒸着法及び溶融塩浴処理法のいずれかを実施する。物理蒸着は、たとえば以下の方法で行うことができる。硬質保護層5を構成する金属元素を用いた混合粉末を、円板形状に加圧成形して成形体を製造する。成形体を真空焼結後、スパッタ法又はアークイオンプレーテイング法を用いて、金属成分から金属イオンを電磁気的に励起させる。その後、装置気相中に窒素ガス等を充填させる。充填された窒素ガスは分解して窒素イオンとなる。励起した金属イオンは、直流バイアス電源制御により負に帯電した焼結体2の表面に引き付けられる。窒素イオンと金属イオンとが焼結体2の表面で化学結合することにより、加工硬化層4の表面に硬質保護層5が形成される。
2種類の基材を作製した。基材Aは、超硬合金成分として、WC:85質量%、Co:10質量%、TiC:3質量%、TaC:2質量%を混合した。基材Bは、超硬合金成分として、WC:90質量%、Co:10質量%を混合した。基材A又はBに、表1に示す窒化物生成成分を添加し、各試験番号の混合原料を製造した。
加工硬化層が形成された各超硬工具に対して、ビッカース硬さを測定した。ビッカース硬さはJIS規格Z2244(2009)に基づいて実施し、試験荷重は9.80N(1kgf)とした。測定結果を表1に示す。試験番号19及び試験番号20においては、加工硬化層を形成しなかったため、窒化層に対してビッカース硬さ試験を実施した。
各試験番号の加工硬化層の表面粗さを測定した。具体的には、株式会社ミツトヨ製、Surf Scan、SV−600型表面粗さ測定器を用いて評価した。表面粗さ触針(ダイアモンド製;外径25μm)を用い、室温、荷重;0.1N、測定速度;0.5mm/秒として、加工硬化層の任意表面を試験片の長手方向及び長手方向と直交する方向の双方10mm長で計測し、双方向の平均値を以て表面粗さとした。表面粗さは、JIS規格B0601(1994)に定める「算術平均粗さ;Ra」を採用した。測定結果を表1に示す。試験番号19及び試験番号20においては、加工硬化層を形成しなかったため、窒化層の表面粗さを測定した。
各試験番号の超硬工具の加工硬化層上に硬質保護層を成膜した。成膜工程として物理蒸着法(PVD)を用いた。Ti及びAlを用いた混合粉末を、円板形状に加圧成形して成形体を製造した。成形体を真空焼結後、スパッタ法を用いて、金属成分を電気的に励起させた。その後、装置気相中に窒素ガスを充填させた。励起させた金属成分と焼結体の成分とを、窒化層の表面上にて化学結合させて、TiAl−Nからなる硬質保護層を3.0μm厚で成膜した。試験番号19及び試験番号20においては、窒化層上に硬質保護膜を成膜した。
硬質保護層のナノ硬度を測定した。ナノ硬度の測定には、ナノインデンター(Agilent Technologies社製、XP/DCM)を用いた。押込圧子;ダイアモンド製バーコビッチ型を用いて、以下の条件で測定した。押込方法;連続剛性方式、荷重;200μN、振動周波数;45Hz、振動振幅幅;2nm、最大押込深さ;1.5μm、室温、測定15箇所(間隔は70μm)。押込深さ1.0μm地点のナノ硬度を、硬質保護層のナノ硬度と定義した。結果を表1に示す。
硬質保護層が形成された超硬工具に対して、表面粗さを測定した。表面粗さ測定試験は、上述の表面粗さ測定試験と同様に行った。結果を表1に示す。
硬質保護層の加工硬化層に対する密着力を測定した。密着力の測定には、CSM Instruments社製、Revetest Scratch Tester、N27−486型のスクラッチ式試験機を使用した。ダイアモンド製触針;外径200μm(N2−4996型)を荷重;0〜100N間で、室温、走査速度10mm/分、荷重速度100N/分で走査させた。異常振動信号が検出された荷重値と、走査動画写真にて硬質保護層の剥離もしくは破壊が確認された時点の荷重値とを比較して、低い方の荷重値を密着力として定義した。測定結果を表1に示す。試験番号19及び試験番号20においては、加工硬化層を形成しなかったため、硬質保護層の窒化層に対する密着力を測定した。
評価結果を表1に示す。表1を参照して、試験番号1〜試験番号12の超硬工具の窒化物生成成分の総含有量は適切であり、その製造方法は適切であった。そのため、加工硬化処理後において、試験番号1〜試験番号12の超硬工具のビッカース硬さは2000以上であり、優れた硬度を示した。さらに、試験番号1〜試験番号12の超硬工具の加工硬化処理後の表面粗さRaは0.30μm以下であり、優れた潤滑性を示した。
2 焼結体
3 窒化層
4 加工硬化層
5 硬質保護層
Claims (4)
- 超硬工具であって、
WC、Co、TiC及びTaCからなる群から選択される2種以上からなり、少なくともWC及びCoを含有する超硬合金成分と、第1群及び第2群から選択される2種以上からなり、少なくとも前記第1群から選択される1種及び前記第2群から選択される1種を含有し、前記超硬合金成分を100質量%とした場合の総含有量が2.0〜5.0質量%である窒化物生成成分とを含有する焼結体を備え、
前記焼結体は、前記窒化物生成成分の窒化物を含有する窒化層を表層に備え、
前記窒化層は、前記窒化物生成成分の窒化物を含有する加工硬化層を表層に備える、超硬工具。
第1群:Al、V及びSi
第2群:Cr、Mo及びZr - 請求項1に記載の超硬工具であってさらに、
金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物及び金属酸化物からなる群から選択される1種以上を含有する硬質保護層を前記加工硬化層上に備える、超硬工具。 - 超硬工具の製造方法であって、
WC、Co、TiC及びTaCからなる群から選択される2種以上からなり、少なくともWC及びCoを含有する超硬合金成分と、第1群及び第2群から選択される2種以上からなり、少なくとも前記第1群から選択される1種及び前記第2群から選択される1種を含有し、前記超硬合金成分を100質量%とした場合の総含有量が2.0〜5.0質量%である窒化物生成成分とを含有する焼結体を準備する工程と、
前記焼結体を窒化処理して、前記窒化物生成成分の窒化物を含有する前記窒化層を前記焼結体の表層に形成する工程と、
前記窒化層を形成する工程の後に、前記窒化層を備えた前記焼結体をショットピーニング処理して、前記窒化物生成成分の窒化物を含有する加工硬化層を前記窒化層の表層に形成する工程とを備える、超硬工具の製造方法。
第1群:Al、V及びSi
第2群:Cr、Mo及びZr - 請求項3に記載の超硬工具の製造方法であってさらに、
前記加工硬化層を形成する工程の後に、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物及び金属酸化物からなる群から選択される1種以上を含有する硬質保護層を前記加工硬化層上に形成する工程を備える、超硬工具の製造方法。
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