以下、本発明の実施形態をより具体的に説明する。
(実施形態1)
図面を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。リアクトル1は、巻線2wを巻回してなる一つのコイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3とを具える。リアクトル1の特徴とするところは、磁性コア3の構成材料にある。以下、各構成を詳細に説明する。
[コイル2]
コイル2は、1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる筒状体である。巻線2wは、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を具える被覆線が好適である。導体は、横断面形状が長方形である平角線、円形状である丸線、多角形状である異形線などの種々の形状のものを利用できる。絶縁被覆を構成する絶縁性材料は、ポリアミドイミドといったエナメル材料が代表的である。絶縁被覆は厚いほど絶縁性を高められる。具体的な厚さは、20μm以上100μm以下が挙げられる。巻線2wの断面積、巻き数(ターン数)は所望の特性となるように適宜選択することができる。コイル2の端面形状は、図2に示す円環状や楕円状といった外形が曲線のみで構成される形状、レーストラック状や角丸めの長方形状などの外形が曲線と直線とで構成される扁平形状が挙げられる。端面が円環状の円筒コイルは、巻線を巻回し易く、形成し易い。
ここでは、コイル2は、横断面形状が長方形状の銅平角線からなる導体と、エナメルからなる絶縁被覆とを具える被覆平角線をエッジワイズ巻きにして形成されたエッジワイズコイルであり、端面形状が円環状である。
コイル2を形成する巻線2wの両端部は、ターンから適宜引き延ばされて磁性コア3(外側コア部32)の外部に引き出され、絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、銅やアルミニウムなどの導電性材料からなる端子部材(図示せず)が溶接(例えば、TIG溶接)や圧着などを利用して接続される。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示せず)が接続される。
この例に示すリアクトル1では、コイル2と磁性コア3との組合体が有底筒状のケース4に収納されており、コイル2は、その軸方向がケース4の底面に直交するように収納された形態(以下、縦型と呼ぶ)である。縦型形態は、冷却台といったリアクトル1を設置する設置対象に対するリアクトル1の設置面積を小さくすることができる。
[磁性コア3]
磁性コア3は、コイル2を励磁した際に閉磁路を形成する部材である。この磁性コア3は、図1(B)に示すように少なくとも一部がコイル2の内側に配置されて、コイル2に覆われる柱状の内側コア部31と、コイル2外に配置されて、内側コア部31の一部及びコイル2の筒状の外周面を実質的に覆うように形成された外側コア部32とを具える。この例では、内側コア部31の構成材料と、外側コア部32の構成材料とが異なっており、内側コア部31は圧粉成形体で構成されて、外側コア部32は、磁性体粉末と、この粉末を分散した状態で内包する樹脂とを含有する複合材料(成形硬化体)で構成されている。そして、リアクトル1では、この複合材料に含有される磁性体粉末が、比透磁率が異なる複数の粉末からなることを最大の特徴とする。
《内側コア部》
内側コア部31は、ここでは、コイル2の内周形状に沿った円柱状体である。内側コア部31の断面形状や外形は、適宜選択することができ、コイルの内周形状に沿って、例えば、直方体状などの角柱状、楕円体状などとしてもよいし、コイルの内周形状と非相似な形状としてもよい。また、内側コア部31は、ここでは、アルミナ板といったギャップ材やエアギャップが介在していない中実体としているが、圧粉成形体や複合材料よりも透磁率が低い材料、代表的には非磁性材料からなるギャップ材やエアギャップが介在した形態としてもよい。
圧粉成形体は、代表的には、磁性体粒子とその表面にシリコーン樹脂などからなる絶縁被膜とを具える磁性粉末や、この磁性粉末に加えて適宜結合剤を混合した混合粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。圧粉成形体の作製にあたり、上記磁性体粒子の材質や、磁性粉末と結合剤との混合比、絶縁被膜を含む種々の被膜の量などを調整したり、成形圧力を調整したりすることで、圧粉成形体の磁気特性を容易に変化できる。例えば、飽和磁束密度の高い粉末を用いたり、結合剤の配合量を低減して磁性成分の割合を高めたり、成形圧力を高くしたりすることで、飽和磁束密度が高い圧粉成形体が得られる。
上記磁性体粒子の材質は、Fe,Co,Niなどの鉄族金属(例えば、Fe及び不可避的不純物からなる純鉄)、Feを主成分とする鉄合金(例えばFe-Si系合金,Fe-Ni系合金,Fe-Al系合金,Fe-Co系合金,Fe-Cr系合金,Fe-Si-Al系合金など)といった鉄基材料、希土類金属、フェライトなどの軟磁性材料が挙げられる。特に、鉄基材料は、フェライトよりも飽和磁束密度が高い圧粉成形体を得易い。磁性体粒子に形成される絶縁被膜の構成材料は、例えば、燐酸化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、硼素化合物などが挙げられる。絶縁被覆は、磁性体粒子が上記鉄族金属や鉄合金などの金属からなる場合に具えると渦電流損を低減できて好ましく、フェライトといった絶縁物からなる場合には具えていなくてもよい。結合剤は、例えば、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、高級脂肪酸が挙げられる。この結合剤は、上述の焼成により消失したり、シリカなどの絶縁物に変化したりする。圧粉成形体は、磁性体粒子間に絶縁被膜などの絶縁物が存在することで、磁性体粒子同士が絶縁されて渦電流損失を低減できる。従って、コイルに高周波の電力が通電される場合であっても、上述の損失が低い。また、圧粉成形体は、比較的複雑な三次元形状であっても、容易に成形でき、製造性に優れる。圧粉成形体は、公知のものを利用することができる。ここでは、内側コア部31を構成する圧粉成形体は、絶縁被膜などの被膜を具える軟磁性粉末からなる。
図1に示す例では、内側コア部31におけるコイル2の軸方向に沿った長さ(以下、単に長さと呼ぶ)がコイル2の長さよりも長い。また、この例では、内側コア部31の一端面(図1(B)においてケース4の開口側に配置される面)がコイル2の一端面にほぼ面一であり、他端面(図1(B)においてケース4の底面側に配置される面)及びその近傍がコイル2の他端面から突出するように、内側コア部31がケース4内に収納されている。従って、リアクトル1では、磁性コア3のうち、筒状のコイル2の内側に配置される箇所が内側コア部31の一部を構成する圧粉成形体で形成され、コイル2外に配置される箇所が内側コア部31の他部を構成する圧粉成形体と、外側コア部32を構成する複合材料(後述)とで形成されている。
内側コア部の突出長さは適宜選択することができる。ここでは、内側コア部31の他端面側のみがコイル2の他端面から突出された形態であるが、内側コア部31の各端面がコイル2の各端面から突出された形態とすることができる。このとき、突出長さが等しい形態、異なる形態のいずれも採用できる。また、内側コア部の長さとコイルの長さとが等しい形態、即ち、内側コア部の各端面とコイルの各端面とが面一である形態とすることができる。例えば、磁性コアにおいてコイル内に配置される箇所のみが圧粉成形体で構成され、コイル外に配置される箇所の全体が複合材料で構成された形態が挙げられる。上述のいずれの形態も、コイル2を励磁したときに閉磁路が形成されるように後述する複合材料を具える。
《外側コア部》
外側コア部32は、ここでは、その全体が、磁性体粉末と樹脂との複合材料により構成され、内側コア部31と同様にギャップ材やエアギャップを介在していない。上記樹脂により、外側コア部32と、ケース4に収納された内側コア部31とが接着剤を介在することなく接合され、一体の磁性コア3を構成する。
この例では、外側コア部32は、コイル2の両端面及び外周面、内側コア部31の一端面及び他端面側の外周面を覆うように形成され、図1(B)に示すようにコイル2の軸方向に沿って切断した断面形状が門型である。外側コア部32の形状は、閉磁路が形成できればよく、特に問わない。例えば、コイル2の外周の一部が外側コア部32を構成する複合材料により覆われていない形態とすることができる。後述する横型形態(実施形態4)では、コイル2の外周の一部を複合材料から露出させた形態を形成し易い。
上記複合材料中の磁性体粉末は、比透磁率が異なる複数の材質からなる粉末を含有する。これらの粉末は、上述した軟磁性粉末からなるものが好ましく、特に、Feを含む組成であって、異なる組成からなる粉末が好適に利用できる。Feを含む組成は、Fe及び不可避的不純物からなる純鉄、Feと添加元素と不可避的不純物からなる鉄合金が挙げられる。
純鉄は、例えば、99.5質量%以上Feからなるものが挙げられる。純鉄粉を含有すると、飽和磁束密度が高い複合材料となり、純鉄粉の含有割合が高いほど、飽和磁束密度が高いコア(複合材料)を得易い。特に、純鉄粉は、純鉄からなる鉄粒子と、この鉄粒子の外周を覆う絶縁被覆とを具える被覆粉末であると、鉄粒子間に介在する絶縁被覆により鉄粒子間が絶縁されることで、渦電流損を低減できる。そのため、上記被覆粉末を含有する形態は、飽和磁束密度が高く、低損失なコアを得易い。絶縁被覆を構成する絶縁材料は、例えば、燐酸塩、シリコーン樹脂、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、燐酸金属塩化合物、ホウ酸金属塩化合物、珪酸金属塩化合物などが挙げられる。上述の酸化物などや金属塩化合物などの化合物における金属元素は、例えば、Fe,Al,Ca,Mn,Zn,Mg,V,Cr,Y,Ba,Sr,希土類元素(Yを除く)などが挙げられる。後述する鉄合金からなる粒子も、上記絶縁被覆を具える形態とすると、低損失のコアを得易い。
鉄合金を含有すると、渦電流損を低減して低損失な複合材料となる。従って、上記純鉄粉に加えて、鉄合金粉を含有する形態は、飽和磁束密度が高く、低損失なコアを得易い。この形態では、純鉄粉の含有量が多いほど、飽和磁束密度が高められる。従って、飽和磁束密度の向上を望む場合、磁性体粉末のうち、過半数が純鉄粉であることが好ましく、純鉄粉を最も多く含有することがより好ましい。
或いは、上記純鉄粉を含有せず、複合材料中の磁性体粉末が、異なる組成の鉄合金粉からなる形態とすることができる。この形態では、磁性体粉末が全て鉄合金粉であることから、渦電流損が小さく低損失である上に、組成を調整することで、飽和磁束密度を高められる。
鉄合金は、添加元素として、Si,Ni,Al,Co,及びCrから選択される1種以上の元素を合計1.0質量%〜20.0質量%含有する合金が挙げられる。より具体的には、Fe-Si系合金,Fe-Ni系合金,Fe-Al系合金,Fe-Co系合金,Fe-Cr系合金,Fe-Si-Al系合金が挙げられる。特に、Fe-Si系合金やFe-Si-Al系合金(センダスト)といったSiを含有する鉄合金は、電気抵抗率が高く、渦電流損を低減し易い上に、ヒステリシス損も小さく、低損失のコアを得易い。
上記複合材料を構成する磁性体粉末は、上述した内側コア部31を構成する圧粉成形体の磁性体粉末と同種の粉末を含有していてもよいし、全てが異種の粉末であってもよい。また、上記複合材料を構成する磁性体粉末は、適宜な表面処理を予め施すと、凝集の防止、樹脂中の沈降抑制といった効果が期待できる。例えば、シランカップリング剤などで予め表面処理すると、磁性体粉末と樹脂との密着性を改善でき、未硬化の樹脂中における磁性体粉末の沈降を抑制できる。同種(同組成)の磁性体粒子同士が凝集し難いように、組成ごとに異なる処理剤を用いて表面処理を施すと、異種の磁性体粒子が複合材料の全体に均一的に分散することができて好ましい。この表面処理剤には、各種の界面活性剤が利用でき、例えば、純鉄粉に疎水性のもの、鉄合金粉に親水性のものを利用することが挙げられる。これらの表面処理は、順次行ってもよいし、同時に行うこともできる。なお、磁性体粉末と樹脂との混合時に上記沈降を防止する表面処理剤を混合することもできるが、混合前に表面処理を施す方が沈降防止効果が高い傾向にある。
上記磁性体粉末を構成する各材質の粒子は、球状、非球状(例えば、板状、針状、棒状など、その他異形状)など、任意の形状を取り得る。つまり、上記複合材料の製造にあたり、原料に任意の形状の粒子からなる粉末を利用でき、原料に使用可能な磁性体粉末の形状の自由度が大きい。なお、複合材料中の磁性体粒子の形状や大きさは、原料に用いた粉末を構成する粒子の形状や大きさを実質的に維持する。従って、原料に非球状の磁性体粉末を用いれば、複合材料中の磁性体粒子も非球状となる。
特に、球形に近い粒子であると、粒子間の隙間に当該粒子よりも微細な粒子が介在可能な隙間を十分に確保できることから、充填率を高め易い上に、損失が小さい傾向にある。そこで、上記複合材料の製造方法として、原料粉末を構成する粒子の円形度が、1.0以上2.0以下を満たすものを利用することが挙げられる。
上記円形度は、最大径/円相当径とする。円相当径とは、磁性体粉末を構成する粒子の輪郭を特定し、その輪郭で囲まれる面積Sと同一の面積を有する円の径とする。つまり、円相当径=2×{上記輪郭内の面積S/π}1/2で表される。また、最大径は、上記輪郭を有する粒子の最大長さとする。上記面積Sは、例えば、原料粉末を樹脂などで固めたサンプルを作製し、このサンプルの断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡:SEMなどで観察して求めることが挙げられる。得られた断面の観察画像を画像処理(例えば、二値化処理)などして粒子の輪郭を抽出し、輪郭内の面積Sを算出するとよい。最大径は、抽出した粒子の輪郭から、粒子の最大長さを抽出することが挙げられる。SEMを利用する場合、測定条件は、断面数:50個以上(一断面につき一視野)、倍率:50倍〜1000倍、一視野あたりの測定粒子数:10個以上、合計粒子数:1000個以上が挙げられる。
上記測定方法により、円形度が1である粒子は、真球に該当する。原料粉末の円形度が1に近いほど、損失の低減や比透磁率が大きくなり過ぎることの抑制、充填率の向上や良好な流動性といった効果を得易いことから、原料粉末の円形度は1.0以上1.5以下、特に1.0以上1.3以下を満たすことが好ましい。球状の粒子であると、粒子同士が隣接しても、実質的に点接触するだけであり、面接触することがほとんどない。ここで、複合材料において樹脂中に分散される磁性体粒子同士が接触した箇所が多くなると、複合材料の比透磁率が大きくなり過ぎたり、磁性体粒子が金属からなる場合には粒子間に渦電流が流れ得る。上記粒子同士の過度の接触による比透磁率の増大や渦電流の発生・増大を低減するためには、特に磁性体粒子が金属からなる場合、磁性体粉末が、上述の被覆粉末のような、非磁性材料からなる絶縁被覆を有する磁性体粉末であることが挙げられる。一方、原料粉末に、上述の円形度を満たすような真球に近い形状の粒子を用いれば、絶縁被覆のない磁性体粒子であっても、当該粒子同士が過度に接触することを抑制でき、複合材料の比透磁率を低く抑えられる。従って、上述の円形度を満たす原料粉末を用いることは、0.6T以上の高い飽和磁束密度を有すると同時に、比透磁率が20以下と比較的低い値をとる複合材料とするための有効な構成の1つに挙げられる。
円形度が上記範囲を満たす粉末を得るには、例えば、不活性ガスを冷却媒体に用いたガスアトマイズ法で粉末を作製したり、水アトマイズ法などで形成した異形状の粉末(円形度が上記範囲外の粉末)を研磨などの丸め処理を施したりすることが挙げられる。研磨する場合、砥粒の粒度を適宜選択することで、原料粉末の円形度を調整することができる。また、原料粉末に粗大粉末を含有する場合でも、球形に近い粉末、即ち、円形度が1.0に近い粉末であると、複合材料の損失が小さくなる場合がある。なお、本発明複合材料は、比較的低圧で成形するため、複合材料中の磁性体粉末を構成する各粒子の円形度は、原料粉末を構成する各粒子の円形度に実質的に同一になる。本発明複合材料の円形度の測定には、例えば、当該複合材料の断面をとり、上述のようにこの断面の顕微鏡観察による観察画像を用いることが挙げられる。
複合材料中の磁性体粒子の粒度分布をとったとき、この粒度分布は、複数のピークが存在する形態とすることができる。この形態は、ある小さい粒径の粒子及びある大きい粒径の粒子のいずれもがある程度高頻度に存在する形態であり、これら粗大な粒子間につくられる隙間に微細な粒子が介在できる。そのため、この複合材料は、磁性体粉末の充填率を高め易く、磁性成分の割合が高い。
上記ピーク数は、二つでも三つ以上でもよいが、粒径によっては二つのピークが存在すれば、充填率を十分に高められる。例えば、上記粒度分布において第一ピークをとる粒径をr1、第二ピークをとる粒径をr2とするとき、r1≦(1/2)×r2を満たす二つのピークが存在する形態が挙げられる。粒径r2の粗大な粒子の半分以下の粒径である、粒径r1の微細な粒子は、上記粗大な粒子間の隙間に十分に介在でき、充填率を高められる。粒径r1と粒径r2の粒径差が大きいほど、上記隙間を効率よく埋められ、充填率を高め易い傾向にあるため、粒径r1は、r1≦(1/3)×r2を満たすことがより好ましい。但し、粒径r1が小さ過ぎると、原料粉末も微細粉末となって取り扱い難く作業性の低下を招き易くなるため、r1≧(1/10)×r2を満たすことが好ましい。
上記複数のピークをもつ磁性体粉末が同種(同組成)の材質からなる形態としてもよいが、上記複数のピークをもつ磁性体粉末が異種の材質からなる形態が好ましい。具体的には、一方のピークが純鉄粉のピークであり、他方のピークが鉄合金粉のピークである形態、各ピークが組成の異なる鉄合金粉である形態が挙げられる。
純鉄粉と鉄合金粉とを含む形態において、最小の粒径におけるピークをとる粉末が純鉄粉である場合、即ち、上記粒径r1が純鉄粉、粒径r2が鉄合金粉である場合、微細な純鉄粉を高頻度に含むことで、純鉄粉を含有していても渦電流損を低減できる。従って、この形態は、高頻度な純鉄粉により飽和磁束密度が高く、かつ微細な純鉄粉と鉄合金粉との混合含有により、低損失である。また、この形態は、粗大な鉄合金粒子の周囲に微細で飽和磁束密度が高い純鉄粒子が連続的に存在し易いことで、磁束が均一的に通過し易い。
一方、純鉄粉と鉄合金粉とを含む形態において、最小の粒径におけるピークをとる粉末が鉄合金粉である場合、即ち、上記粒径r1が鉄合金粉、粒径r2が純鉄粉である場合、微細な鉄合金粉を高頻度に含むことで、渦電流損をより低減できる。従って、この形態は、純鉄粉の含有により飽和磁束密度が高く、微細な鉄合金粉により、更に低損失である。
鉄合金粉のみを含む形態では、最小の粒径におけるピークをとる粉末の特性に応じて、例えば、飽和磁束密度がより高い形態やより低損失な形態とすることができる。
具体的な粒径は、第一ピークが純鉄粉である場合、粒径r1:50μm以上100μm以下、特に粒径r1:50μm〜70μmが好ましい。高頻度に存在する最も微細な粒子の粒径が50μm以上であることで、50μm未満の非常に微細な粒子が少なく、当該粒子が純鉄からなる場合でも、原料粉末を取り扱い易い。一方、第一ピークが鉄合金粉である場合、鉄合金は50μm以下でも取り扱い易いことから、上記粒径r1が50μm以下、例えば、粒径r1が10μm以上30μm以下である形態が挙げられる。この形態は、粒径r1がより小さく、かつ鉄合金で構成されていることで、(1)渦電流損を更に低減して低損失な複合材料になり易い、(2)充填率を更に高め易いため、鉄合金から構成されているもののある程度飽和磁束密度も高い、という効果を奏する。また、鉄合金では、粒径が50μm以下といった比較的微細である方が球形の粒子を形成し易く、微細で球形の粉末の製造性にも優れる。粒径r1は、上記範囲で小さいほど、損失の低減を図ることができ、大きいほど取り扱い易い。
第二ピークが純鉄粉である場合、粒径r2:100μm以上200μm以下、特に粒径r2:140μm〜200μmが挙げられる(好ましくはr1≦(1/2)×r2))。また、第一ピーク及び第二ピークをとる粉末がいずれも組成が異なる鉄合金粉である場合、粒径r2は、30μm以上200μm以下(但しr1<r2)、更に40μm以上150μm以下とすることができる。50μm〜100μm、或いは50μm以下といった十分に微細な粒子(粒径r1の粒子)に対して、十分に大きな粒子(粒径r2の粒子)を高頻度に含有することで、この複合材料は、充填率を高められて磁性成分の割合が高くなることから飽和磁束密度が高い上に、渦電流損を低減できる。また、粒径r2が上記範囲を満たすことで、粒径r1と粒径r2との粒径差が大きく、上述のように充填率を高め易い上に、粒径r2が200μm以下であることで、渦電流損を低減し易い。
外側コア部32を構成する複合材料中の磁性体粉末の粒度分布を測定するには、例えば、樹脂成分を除去して磁性体粉末を抽出し、得られた磁性体粉末を、粒度分析計を用いて分析することが挙げられる。磁性体粉末の組成ごとに粒度分布を測定した後、これらの粒度分布を合成してもよい。複合材料が後述する非磁性体粉末を含有する場合、磁石により、磁性体粉末と非磁性体粉末とを選別するとよい。或いは、X線回折、エネルギー分散X線分光法:EDXなどを利用して成分分析を行って選別してもよい。粒度分析計は、市販のものを利用できる。この手法は、樹脂成分が存在しないため、磁性体粉末の粒度分布を高精度に測定できる。
上記粒度分布を有する複合材料を製造するには、原料に、r10<r20(好ましくはr10≦(1/2)×r20)を満たす粒径r10,r20の粒子をそれぞれ高頻度に含有する所望の組成の磁性体粉末を利用することが挙げられる。市販の粉末を用いる場合、粒度分布を調べて、上述のような特定の粒度分布を満たすものを利用するとよい。所望の粒径を満たすように、篩などを用いて分級してもよい。原料粉末は、代表的にはアトマイズ法(ガスアトマイズ法、水アトマイズ法など)により製造することができる。特に、ガスアトマイズ法により製造した粉末を利用すると、損失が小さい複合材料が得られる傾向にある。粗大な粉末を適宜粉砕などして、所望の粒径となるようにしてもよい。また、原料粉末に、上述のように所望の組成の複数の粉末を用意すると共に、上述した円形度を満たすものを利用すると、より低損失で飽和磁束密度が高い複合材料を得易い。
なお、原料に粒径差が小さい磁性体粉末を用いると、複合材料中の磁性体粉末の粒度分布は、ピークが一つのみ存在することがあり得る。また、本発明複合材料の製造にあたり、原料に、同じ粒度分布を有し、かつ組成が異なる磁性体粉末を用いてもよい。この場合も、複合材料中の磁性体粉末の粒度分布は、ブロードなピーク又は急峻なピークが一つのみ存在する。
磁性体粉末の合計含有量は、複合材料全体に対して、30体積%以上70体積%以下であると、磁性成分の割合が十分に高く、飽和磁束密度が高い複合材料とすることができる。また、磁性体粉末の合計含有量が70体積%以下であると、複合材料の製造に当たり、原料の磁性体粉末と未硬化の樹脂との混合物が流動性に優れるため、当該混合物を成形用金型に良好に充填でき、複合材料の製造性に優れる。特に、40体積%以上65体積%以下が利用し易い。所望の含有量となるように、原料粉末を準備する。複合材料中の磁性体粉末の含有量は、樹脂成分を除去して磁性成分の体積を求めたり、上述のように断面の顕微鏡写真を画像処理して、断面における磁性成分の面積割合から体積割合を換算したりすることで求められる。
上記複合材料においてバインダとなる樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に利用できる。熱硬化性樹脂を用いた場合、成形用金型に充填した混合物を加熱して樹脂を熱硬化する。或いは、バインダとなる樹脂に常温硬化性樹脂、或いは低温硬化性樹脂を用いることができる。この場合、成形用金型に充填した混合物を常温〜比較的低温に放置して樹脂を硬化する。或いは、バインダとなる樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂が利用できる。
上記複合材料は、一般に非磁性材料である樹脂が比較的多く存在するため、この複合材料からなる外側コア部32は、内側コア部31を構成する圧粉成形体よりも飽和磁束密度が低く、かつ比透磁率も低くなり易い。磁性体粉末の材質や上述した絶縁被覆の厚さ、樹脂量などを調整することで、複合材料の磁気特性を容易に変化できる。
上記複合材料は、代表的には、射出成形、注型成形により形成できる。射出成形は、磁性体粉末と流動性のある状態の樹脂(液状の樹脂。一般に粘性を有する)とを混合し、この混合物(スラリー状混合物)を、所定の圧力をかけて、所定の形状の成形用金型に流し込んで成形した後、上記樹脂を硬化する。注型成形は、射出成形と同様の混合物を得た後、この混合物を、圧力をかけることなく成形用金型に注入して成形・硬化する。実施形態1ではケース4を成形用金型に利用することができ、この場合、所望の形状の複合材料(ここでは外側コア部32)を容易に成形できる。所望の形状の成形体を複数作製して組み合せて、所望の形状の磁性コアを形成することもできる。
ここでは、外側コア部32は、純鉄粉の表面に絶縁被覆を具える被覆粉末と、鉄合金粉と、エポキシ樹脂との複合材料から構成されている。また、この複合材料は鉄粉末(被覆粉末)を鉄合金粉よりも多く含有する。
《磁気特性》
磁性コア3は、部分的に磁気特性が異なる。この例では、内側コア部31は、外側コア部32よりも飽和磁束密度が高く、外側コア部32は、内側コア部31よりも比透磁率が低い。
ここでは、内側コア部31の飽和磁束密度は1.6T以上、比透磁率は100〜500である。また、内側コア部31の飽和磁束密度は外側コア部32よりも1.2倍以上高い。ここで、一定の磁束を得る場合、内側コア部31のうち少なくともコイル2に覆われる部分の飽和磁束密度の絶対値が高いほど、また、当該部分の飽和磁束密度が外側コア部32よりも相対的に大きいほど、少なくとも当該部分の断面積を小さくできる。そのため、内側コア部31の飽和磁束密度が高いリアクトル1は、小型にできる(容積を小さくできる)。内側コア部31のうち少なくともコイル2に覆われる部分の飽和磁束密度は、1.8T以上、更に2T以上、外側コア部32の飽和磁束密度の1.5倍以上、更に1.8倍以上が好ましく、いずれも上限は設けない。なお、内側コア部31の構成材料を圧粉成形体に代えて、珪素鋼板に代表される電磁鋼板の積層体を利用すると、内側コア部31の飽和磁束密度を更に高め易い。
ここでは、外側コア部32の飽和磁束密度は0.6T以上である。外側コア部32の飽和磁束密度は高いほど好ましく、0.8T以上、更に1T以上が好ましい。但し、ここでは、内側コア部31の飽和磁束密度未満とする。
外側コア部32の比透磁率は1を超え、かつ20以下であることが好ましい。ここでは、外側コア部32の比透磁率は5〜20であり、5〜18、更に5〜15が好ましい。外側コア部32の比透磁率が内側コア部31よりも低いことで、内側コア部31に磁束が通過し易い。
上記磁気特性を有する内側コア部31と外側コア部32とで構成される磁性コア3全体の比透磁率は10〜100である。磁性コア3は、全体の比透磁率が比較的低いことで、その全体に亘ってアルミナ板などのギャップ材やエアギャプを介することなく一体化されたギャップレス構造とすることができる。勿論、磁性コア3の一部にギャップを適宜介在させた形態とすることができる。
[ケース]
ケース4は、ここでは、矩形状の底面と、底面から立設される四つの側壁とで構成される直方体状の箱体であり、底面との対向面が開口している。このケース4は、コイル2と磁性コア3との組合体を収納する容器として利用され、コイル2や磁性コア3の環境からの保護及び機械的保護を図ると共に、冷却台といった設置対象にリアクトル1が固定されたときに放熱経路に利用される。従って、ケース4の構成材料は、熱伝導性に優れる材料、好ましくは鉄などの磁性体粉末よりも熱伝導率が高い材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金といった金属を好適に利用できる。これらアルミニウムやマグネシウム、その合金は、軽量であることから、軽量化が望まれる自動車部品の構成材料にも好適である。また、これらアルミニウムやマグネシウム、その合金は、非磁性材料で、かつ導電性材料でもあることから、ケース4外部への漏れ磁束も効果的に防止できる。ここでは、ケース4は、アルミニウム合金からなる。
図1に示す例では、ケース4は、リアクトル1を設置対象に固定するための取付部41が一体に形成されている。取付部41はボルト孔を有しており、ボルトによりリアクトル1を設置対象に容易に固定できる。その他、ケース4は、コイル2や内側コア部31を所定の位置に位置決めする位置決め部を具えると、ケース4の適切な位置にコイル2や内側コア部31を配置できる。ここでは、図1(B)に示すようにコイル2がケース4の中央部に配置されるように、ケース4は位置決め部(図示せず)を具える。また、ケース4と同様にアルミニウムなどの導電性材料で構成した蓋を具えると、漏れ磁束の防止、外側コア部32の環境からの保護や機械的保護を図ることができる。この蓋には、コイル2を構成する巻線2wの端部が引き出せるように切欠や貫通孔を設けておく。或いは、樹脂を充填して蓋を形成してもよい。
[その他の構成]
コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高めるために、コイル2の外周を絶縁性樹脂で被覆した形態、コイル2の外周を絶縁紙や絶縁シート、絶縁テープといった絶縁材で覆った形態とすることができる。絶縁性樹脂は、エポキシ樹脂やウレタン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。また、内側コア部31とコイル2と間の絶縁性を高めるために、内側コア部31の外周に絶縁性ボビンを具える形態とすることができる。このボビンは、内側コア部31の外周に配置される筒状部と、この筒状部の両端に設けられた環状のフランジ部とを具える形態が挙げられる。特に、ボビンは、複数の分割片を組み合せて一体となる形態とすると、内側コア部31に容易に配置できる。ボビンの構成材料は、PPS樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などが挙げられる。その他、内側コア部31の外周を熱収縮チューブなどの絶縁チューブで覆ってもよい。更に、コイル2がケース4に接する場合、コイル2とケース4との間の絶縁性を高めるために上述の絶縁材を介在させた形態とすることができる。巻線2wの引出箇所において磁性コア3との接触部分も上述の絶縁性樹脂や絶縁材、その他熱収縮チューブなどで覆うと、絶縁性を高められる。
或いは、ケースを省略した形態とすることができる。ケースを省略することで、リアクトルの小型化、軽量化を図ることができる。磁性コア3の外周面が外側コア部32を構成する複合材料からなる場合、樹脂成分を含有しているため、磁性コア3が露出した形態でもよいが、磁性コア3の外周を上述の絶縁性樹脂で覆った形態とすると、磁性コア3の環境からの保護や機械的保護を図ることができる。上記絶縁性樹脂として、熱伝導率が高いセラミックスなどからなるフィラーなどを含有したものとすると、放熱性に優れて好ましい。この樹脂よる被覆部に上述した取付部を一体に成形してもよい。
[用途]
上記構成を具えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。
[リアクトルの製造方法]
リアクトル1は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、コイル2、及び圧粉成形体からなる内側コア部31を用意し、図2に示すようにコイル2内に内側コア部31を挿入して、コイル2と内側コア部31との組物を作製する。そして、組物をケース4内に収納する。
外側コア部32(図1)を構成する複数種の磁性体粉末と未硬化の樹脂との混合物を用意する。原料の組成が異なる磁性体粉末が均一的に分散されるように十分に混合してから、成形用金型としても機能するケース4内に流し込む。このとき、混合物中における磁性体粉末の合計含有量を70体積%以下とすることで、当該混合物は流動性に優れ、コイル2や内側コア部31が存在することで複雑な形状の空間となったケース4内に十分に充填できる。充填後、上記混合物の樹脂を硬化することで、複合材料からなる外側コア部32を形成することができる。また、ここでは、図1(B)に示すように内側コア部31の一端面と、内側コア部31の他端面側の外周面とに接するように外側コア部32が形成されることで、コイル2が励磁されたときに閉磁路を形成する磁性コア3を形成することができる。従って、外側コア部32の形成と同時に、リアクトル1(図1)が得られる。
[効果]
磁性コア3の一部(ここでは外側コア部32)を構成する複合材料中の磁性体粉末は、比透磁率が異なる複数種の材質からなる粉末の混合粉により構成されている。磁性体粉末中に材質が異なる粉末を含有することで、この複合材料は高い飽和磁束密度と、低損失とを兼ね備えることができる。
リアクトル1は、上記特定の組成の磁性体粉末と樹脂との複合材料からなる外側コア部32を具えることで、飽和磁束密度が高く、かつ、低損失である。特に、リアクトル1では、内側コア部31が圧粉成形体から構成されることで、内側コア部31も飽和磁束密度が高いため、磁性コア3全体の飽和磁束密度(磁性コア3の飽和磁束密度を平均化した値)が、磁性コアの全体が上記複合材料から構成された形態よりも高い。
また、材質が異なることに加えて、粒径も異なる磁性体粉末を含有する形態の複合材料とすることで、飽和磁束密度の更なる向上、或いは渦電流損の更なる低減による低損失化を図ることができる。その他、微粗混合粉末を含有する形態では、以下の効果が得られる。
(1) 製造時、磁性体粉末を取り扱い易く、製造性に優れる。
(2) 磁性体粉末を過度に多くしなくても、この複合材料は磁性成分の割合がある程度高いため、製造時、磁性体粉末と樹脂との混合物が流動性に優れる。この点からも製造性に優れる。
(3) 上記混合物が流動性に優れることで、複雑な形状の複合材料(ここでは外側コア部32)であっても、精度良く形成できる。
更に、リアクトル1では、外側コア部32を複合材料で構成することで、(1)磁気特性を容易に変更できる、(2)樹脂成分を有するため、コイル2や内側コア部31を覆うことで、これらの環境からの保護及び機械的保護を図ることができる、(3)樹脂成分を内側コア部31との接合材に利用できる、(4)外側コア部32の形成と同時にリアクトル1を形成でき、製造性に優れる、という効果を奏する。
その他、リアクトル1は、内側コア部31の飽和磁束密度が外側コア部32よりも高いことで、単一の材質から構成されたコア(コア全体の飽和磁束密度が均一的なコア)と同じ磁束を得る場合、内側コア部31(特にコイル2に覆われる部分)の断面積(磁束が通過する箇所の面積)を小さくできる。内側コア部31の小型化により、コイル2も小さくできる。また、リアクトル1は、ギャップレス構造としたことでコイル2と内側コア部31とを近付けて配置できる。これらのことにより、リアクトル1は小型である。コイル2の小型化により、リアクトル1は、軽量化も図ることができる。更に、リアクトル1は、ギャップレス構造としたことでギャップ材の接合工程が不要であり、この点からも製造性に優れる。
[試験例1]
磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料を作製し、得られた複合材料の磁気特性を調べた。
原料の磁性体粉末として、純鉄粉(Fe:99.5質量%以上)、Fe-Si合金粉(Si:6.5質量%、残部Fe及び不可避不純物)を用意した。また、バインダとなる樹脂は、いずれの試料も、エポキシ樹脂を用いた。
(試料No.1-1〜1-3,1-100,1-200:純鉄粉<鉄合金粉)
試料No.1-1〜1-3,1-100,1-200の複合材料の作製にあたり、純鉄粉(ここでは燐酸塩からなる絶縁被覆を有する被覆粉末)及びFe-Si合金粉(ここでは絶縁被覆を有しない粉末)として、粒径の異なるものを用意した。レーザ回折・散乱法を用いた市販の装置(日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300)を用いて、各粉末の粒度分布を調べた。得られた粒度分布のヒストグラムにおいて、純鉄粉は、最頻値:54μm、高頻度の粒径:48μm〜57μmであり、Fe-Si合金粉は、最頻値:141μm、高頻度の粒径:125μm〜176μmである。なお、絶縁被覆の厚さは0.1μm程度以下であり非常に薄いことから、被覆粉末の粒径に実質的に影響しないため、上記被覆粉末の粒径は、磁性体粉末の粒径として扱う。複合材料全体に対する各粉末の含有量が表1に示す量(体積%)となるように、かつ、後述するサンプルが十分に作製可能な程度の大きさの複合材料が得られるように、純鉄粉、Fe-Si合金粉、及び樹脂(複合材料中の含有量:50体積%)を用意した。なお、各粉末の断面の顕微鏡観察画像を用いて上述のように円形度(最大径/円相当径)を調べたところ(測定粒子数:1000個以上)、純鉄粉は、1.9、Fe-Si合金粉は、1.1であった。
(試料No.1-11,1-12,1-110,1-210:鉄合金粉<純鉄粉)
試料No.1-11,1-12,1-110,1-210の複合材料の作製にあたり、上記試料No.1-1などと粒径が異なる純鉄粉及びFe-Si合金粉(ここでは、いずれも絶縁被覆を有していない粉末)を用意した。上記試料No.1-1などと同様にして、各粉末の粒度分布、及び円形度を調べた。純鉄粉は、最頻値:65μm、高頻度の粒径:62μm〜74μm、円形度:1.5であり、Fe-Si合金粉は、最頻値:30μm、高頻度の粒径:26μm〜34μm、円形度:1.4である。複合材料全体に対する各粉末の含有量が表2に示す量(体積%)となるように、かつ、上記試料No.1-1などと同様の大きさの複合材料が得られるように、純鉄粉、Fe-Si合金粉、及び樹脂(複合材料中の含有量:50体積%)を用意した。
用意した磁性体粉末と樹脂とを混合して混合物を作製し、この混合物を所定の形状の成形用金型に充填した後、樹脂を硬化して複合材料を得た。ここでは、磁気特性を測定するサンプルとして、外径:φ34mm、内径:φ20mm、厚さ:5mmのリング状サンプル、放熱性を測定するサンプルとして、直径:φ50mm、厚さ:5mmの円盤状サンプルを作製した。
得られた各複合材料について、飽和磁束密度、比透磁率、鉄損を測定した。飽和磁束密度は、電磁石によって10000(Oe)(=795.8kA/m)の磁界をリング状の複合材料に印加し、十分に磁気飽和させたときの磁束密度とする。比透磁率は、以下のようにして測定した。リング状の各複合材料に、一次側:300巻き、二次側:20巻きの巻線を施し、B-H初磁化曲線をH=0(Oe)〜100(Oe)の範囲で測定し、このB-H初磁化曲線のB/Hの最大値を求め、この最大値を比透磁率μとした。なお、ここでの磁化曲線とは、いわゆる直流磁化曲線である。鉄損は、リング状の複合材料を用いて、以下のようにして測定した。BHカーブトレーサを用いて、励起磁束密度Bm:1kG(=0.1T)、測定周波数:10kHzにおけるヒステリシス損Wh(W/m3)及び渦電流損We(W/m3)を測定し、ヒステリシス損Wh+渦電流損Weにより鉄損(W/m3)を算出した。その他、得られた円盤状の各複合材料の熱伝導率を温度傾斜法により測定した。これらの結果を表1,表2に示す。
得られた試料No.1-1〜1-3,1-11,1-12の複合材料から、樹脂成分を除去して磁性体粉末を抽出し、得られた磁性体粉末の粒度分析を上述と同様にレーザ回折・散乱法により行ったところ、ヒストグラムにおいて試料No.1-1〜1-3は、54μm及び141μmの地点、試料No.1-11,1-12は、30μm及び65μmの地点にピークを有していた。即ち、この複合材料中の磁性体粉末の粒度分布は、複数のピークを有しており、原料に用いた粉末の粒度分布を実質的に維持している。
表1,表2に示すように、比透磁率が異なる複数の磁性体粉末を含有する試料No.1-1〜1-3,1-11,1-12の複合材料は、単一の材質の磁性体粉末のみを含有する試料No.1-100,1-110,1-200,1-210と比較して、高い飽和磁束密度と低損失とを両立していることが分かる。特に、比透磁率が異なる複数の磁性体粉末を含有する試料No.1-1は、微細な純鉄粉のみの試料No.1-100と同程度の飽和磁束密度を有し、かつ試料No.1-100よりも低損失である。このように試料No.1-1の飽和磁束密度が高くなった理由は定かではないが、試料No.1-1は、複数種の磁性体粉末を含有すると共に、微細な粉末と粗大な粉末との双方が混在することで、反磁場係数が変化したのではないか、と考えられる。また、この試験から、純鉄粉が鉄合金粉よりも多い(好ましくは最も多い)と飽和磁束密度がより高められること、純鉄粉が最小の粒径におけるピークをとると損失を低減できること、絶縁被覆を具える被覆粉末を含有することで損失を低減できること、鉄合金粉が純鉄粉よりも多いと損失を低減できること、円形度が1.0に近い原料粉末を用いると低損失で比透磁率が比較的小さくなり易いことなどが分かる。
なお、この試験例では、純鉄粉と鉄合金粉との双方を含有する形態であるが、組成の異なる鉄合金粉を含有する形態でも同様な結果が得られる。特に、組成の異なる鉄合金粉を用いると、鉄損をより低減できる。
(実施形態2)
上記実施形態1では、磁性コアの一部が、磁性体粉末と樹脂との複合材料で構成された形態としたが、磁性コアの少なくとも一部を磁性体粉末と非磁性体粉末と樹脂との複合材料で構成された形態とすることができる。非磁性体粉末の機能として、複合材料の製造時、磁性体粉末の沈降を抑制することが挙げられる。
非磁性体粉末は、上記沈降の抑制効果を十分に得るために、磁性体粉末よりも比重が小さいものが好ましい。このような材質として、SiO2、Al2O3、Fe2O3、BN、AlN、ZnO、TiO2といったセラミックス、シリコン(Si)などの無機材料、シリコーン樹脂などの有機材料が挙げられる。特に、SiO2(シリカ)は、樹脂にチクソトロピー性を付与することができ、磁性体粉末の沈降を抑制し易い。SiO2、Al2O3、BN、AlNといった熱伝導率が高い材料からなる非磁性体粉末を含有すると、複合材料の放熱性を高められるため、この複合材料を利用することで、放熱性に優れるリアクトル用コアやリアクトルとすることができる。シリコーン樹脂からなる粉末を含有すると、複合材料にクラックが発生することを抑制できる。従って、この複合材料を利用することで、高強度なリアクトル用コアやリアクトルとすることができる。1種の材質からなる非磁性体粉末を含有する形態、複数種の異なる材質からなる非磁性体粉末を含有する形態のいずれでもよい。
非磁性体粉末を構成する粒子の形状は、球状、非球状(例えば、板状、針状、棒状など)などが挙げられる。特に、球状であると、磁性体粒子間につくられる隙間に充填され易い、流動性に優れる、といった利点を有する。また、非磁性体粒子は、中実体でも中空体でもよく、中空体の場合、複合材料の軽量化を図ることができる。非磁性体粉末は、市販の粉末を利用することができる。1種の形状からなる非磁性体粉末を含む形態、複数種の異なる形状からなる非磁性体粉末を含む形態のいずれでもよい。
そして、複合材料に存在する非磁性体粉末と磁性体粉末とを合わせた混合粉末の粒度分布をとったとき、非磁性体粉末においてピークをとる最大の粒径:rnmaxが、磁性体粉末においてピークをとる最小の粒径rmminよりも小さい形態が好ましい。この形態は、非磁性体粒子よりも粒径が大きい磁性体粒子が高頻度に存在する。そのため、磁性体粒子間につくられる隙間に微細な非磁性体粒子が存在でき、非磁性体粉末の含有に伴って磁性体粉末の充填率を低下させ難い、或いは実質的に低下させない。磁性体粒子と非磁性体粒子との粒径差が大きいほど、上記効果が得易いことから、rnmax≦(1/3)×rmmin及びrnmax≦20μmの少なくとも一方を満たすことが好ましい。非磁性体粉末が小さいほど、上記隙間を効率よく埋められる上に、磁性体粒子の周囲に均一的に行き渡り易い。また、磁性体粒子間に微細な非磁性体粒子が存在することで複合材料の比透磁率を低く抑えられる。従って、rnmax≦(1/5)×rmmin、rnmax≦10μmがより好ましい。例えば、粒径が1μm〜10μm程度の非磁性体粉末や1μm未満の微細な非磁性体粉末を利用することができる。具体的な形態として、上記混合粉末の粒度分布において磁性体粉末の第一ピークの粒径r1、第二ピークの粒径r2、非磁性体粉末のピークをとる粒径rnが、r2=2r1,rn=(1/3)×r1を満たす複合材料が挙げられる。1種の粒径からなる非磁性体粉末を含有する形態(即ち、非磁性体粉末のピークが一つである形態)、複数種の異なる粒径からなる非磁性体粉末を含有する形態(即ち、非磁性体粉末のピークが複数存在する形態)のいずれでもよい。後者の場合、磁性体粉末及び非磁性体粉末の双方が複数のピークを有する形態とすることができる。
非磁性体粉末の含有量は、複合材料全体に対して0.2質量%以上であると、磁性体粉末の周囲に十分に行き渡って、磁性体粉末の沈降を効果的に抑制できる。非磁性体粉末が熱伝導性に優れる材質からなる場合、0.2質量%以上含有すると、非磁性体粉末が十分に存在するため、複合材料の放熱性をより高められる上に、上述のように非磁性体粉末が均一的に存在することで、この複合材料は、均一的な放熱性を有することができる。非磁性体粉末が多いほど、上記効果が得られるため、複合材料全体に対して合計含有量は0.3質量%以上、更に0.5質量%以上が好ましい。但し、非磁性体粉末が多過ぎると、磁性成分の割合の低下を招くことから、非磁性体粉末の合計含有量は20質量%以下、更に15質量%以下、特に10質量%以下が好ましい。
非磁性体粒子を含有する複合材料は、製造時、磁性体粉末が未硬化の樹脂中に沈降することを効果的に防止でき、当該樹脂中に磁性体粒子を均一的に分散させ易い。磁性体粉末の沈降が抑制されることで、磁性体粉末と非磁性体粉末と樹脂との混合物は流動性に優れ、成形用金型(実施形態1ではケース4)に十分に充填できる。従って、複雑な形状の複合材料であっても、高精度に製造できる。また、磁性体粉末が均一的に分散された状態で樹脂を硬化することで、磁性体粉末や非磁性体粉末が均一的に分散した複合材料が得られる。そのため、この複合材料は磁性体粉末が偏在して損失が高くなる箇所が生じ難く、その結果、複合材料全体の損失も低減できる。また、この複合材料はその全体に亘って磁気特性や上述した熱特性が均一的であり、信頼性が高い。
[試験例2]
磁性体粉末と樹脂と非磁性体粉末とを含有する複合材料を作製し、得られた複合材料の磁気特性を調べた。
この試験では、原料の磁性体粉末として、試験例1の試料No.1-2と同様の粉末(純鉄粉(被覆粉末)-最頻値:54μm、円形度:1.9、Fe-Si合金粉(被覆無し)-最頻値:141μm、円形度:1.1)、及び試験例1と同様の樹脂を用意し、更に、非磁性体粉末:シリカフィラー(粒径:5nm〜50nm、粒径12nm≦20μm)を用意した。非磁性体粉末は、複合材料全体に対する含有量が0.3質量%(≧0.2質量%)となるように用意した。
用意した磁性体粉末と樹脂と非磁性体粉末とを混合して混合物を作製し、この混合物により試験例1と同様にして複合材料を得た(試料No.2-2)。得られた複合材料について、飽和磁束密度、鉄損、熱伝導率、比透磁率を試験例1と同様にして測定した。その結果を表3に示す。また、得られた試料No.2-2の複合材料に対して、試験例1と同様に樹脂成分を除去して、当該複合材料中の粒度分布を調べたところ、12nm、54μm、141μmの地点にピークを有しており、ピークをとる最小の粒径は非磁性体粉末である。
上記混合物から細長い柱状のサンプル(長さ:60mm)を作製し、サンプルの一方の端面(成形用金型の底面に接していた面)を含む試験片、及びこの一方の端面に対向配置される他方の端面(上面)を含む試験片をそれぞれ切り出して、各試験片の密度を求め、その差(最大密度差)を調べた。その結果も表3に示す。密度差(%)は、{(底面側の試験片の密度−上面側の試験片の密度)/底面側の試験片の密度}×100とする。密度は、アルキメデスの原理を用い、水の密度≫空気の密度から近似して、密度ρ≒(水の密度×空気中での質量)/(空気中での質量−水中での質量)により求めた。
表3に示すように、非磁性体粉末を含有することで、細長い形状とした場合でも密度差が小さい複合材料が得られることが分かる。この理由は、非磁性体粉末の存在により、複合材料の製造中に磁性体粉末の沈降が抑制されたため、と考えられる。また、非磁性体粉末を含有する試料No.2-2は、より低損失で、比透磁率が小さいことが分かる。この理由は、複合材料中に磁性体粉末及び非磁性体粉末が均一的に存在して、磁性体粉末が局所的に多く存在する箇所が実質的に存在しなかったため、と考えられる。
(実施形態3)
上記実施形態1では、磁性コアの一部のみが本発明複合材料で構成された形態としたが、磁性コアの全てが本発明複合材料で構成された形態、即ち、コイル2の内外が本発明複合材料により覆われた形態とすることができる。この形態のリアクトルは、例えば、実施形態1で説明したケース4の適宜な位置にコイル2を配置し、このケース4に磁性体粉末と樹脂とを含む混合物を充填した後、当該樹脂を硬化することで製造でき、生産性に優れる。得られたリアクトルは、磁性コアの全体が本発明複合材料により構成されることで、一様な飽和磁束密度及び比透磁率を有する。また、この磁性コアは透磁率を比較的低くすると、ギャップレス構造とすることができ、この場合、上述のように小型化・軽量化を図ることができる。
或いは、実施形態1で説明した内側コア部として、本発明複合材料により別途作製した柱状の成形体を用いてもよい。この場合、内側コア部に利用する磁性体粉末の組成と、外側コア部に利用する磁性体粉末の組成とが異なるように原料の磁性体粉末を用意することで、磁性コアの磁気特性が部分的に異なる形態、例えば、実施形態1と同様に内側コア部の飽和磁束密度が外側コア部よりも高い形態とすることができる。
或いは、実施形態1の構成とは逆に、上述の複合材料からなる柱状の成形体を内側コア部とし、外側コア部が圧粉成形体から構成された形態とすることができる。この外側コア部は、例えば、コイルの外周に配置される筒状部と、コイルの各端面に配置される板状部とを具える。この形態では、樹脂成分を含む内側コア部の透磁率を外側コア部よりも低く、圧粉成形体からなる外側コア部の飽和磁束密度を内側コア部よりも高くすることができる。この構成により、外側コア部から外部への漏れ磁束を低減でき、当該漏れ磁束による損失を低減できる。
(実施形態4)
上記実施形態1では、縦型形態としたが、コイルの軸方向がケース4の底面に平行するようにコイル2が収納された形態(以下、横型と呼ぶ)とすることができる。横型形態は、コイルの外周面からケースの底面までの距離が短くなることで放熱性を高められる。
(実施形態5)
上記実施形態1では、コイルを一つ具える形態としたが、図3(A)に示すリアクトル15のように1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回して形成された一対のコイル素子2a,2bを有するコイル2と、これらコイル素子2a,2bが配置される環状の磁性コア3(図3(B))とを具える形態とすることができる。
コイル2は、各コイル素子2a,2bの軸方向が平行するように両コイル素子2a,2bが横並びに配置され、巻線2wの一部を折り返してなる連結部2rによって連結された形態が代表的である。その他、異なる2本の巻線により各コイル素子2a,2bが別個に形成され、各コイル素子2a,2bを構成する巻線の一端部同士が溶接や圧着、半田付けなどにより接合されて一体化された形態が挙げられる。コイル素子2a,2bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向であり、中空の筒状に形成されている。
この磁性コア3は、各コイル素子2a,2bの内側に配置される一対の柱状の内側コア部31,31と、コイル2外に配置されてコイル2から露出される一対の柱状の外側コア部32,32とを有する。磁性コア3は、図3(B)に示すように離隔して配置された両内側コア部31,31の一端面同士が一方の外側コア部32を介して連結され、両内側コア部31,31の他端面同士が他方の外側コア部32を介して連結されて環状に形成される。
その他、リアクトル15は、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高めるためのインシュレータ5を具える。このインシュレータ5は、柱状の内側コア部31の外周に配置される筒状部(図示せず)と、コイル2の端面(ターンが環状に見える面)に当接され、内側コア部31,31が挿通される二つの貫通孔(図示せず)を有する一対の枠板部52とを具える。インシュレータ5の構成材料には、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCPなどの絶縁性材料が利用できる。
上記コイル2を具えるリアクトル15のより具体的な形態としては、例えば、コイル素子2a,2bにそれぞれに挿入され、圧粉成形体から構成される内側コア部31,31と、上述の本発明複合材料からなる柱状の成形体から構成される外側コア部32,32とを具える内圧粉形態(即ち、磁性コアの一部が本発明複合材料で構成された形態)が挙げられる。別の内圧粉形態として、コイル素子2a,2bと圧粉成形体との組物が実施形態1のように上述の本発明複合材料により覆われた形態が挙げられる。或いは、各コイル素子2a,2bにそれぞれに挿入され、上述の本発明複合材料からなる柱状の成形体から構成される内側コア部31,31と、圧粉成形体から構成される外側コア部32,32とを具える外圧粉形態(即ち、磁性コアの一部が本発明複合材料で構成された形態)が挙げられる。或いは、コイル素子2a,2bの内外に配置される磁性コアが上述の本発明複合材料からなる形態(即ち、磁性コアの全てが本発明複合材料で構成された形態。以下、全複合材料形態と呼ぶ)が挙げられる。これら三つの形態のいずれにおいても各内側コア部31は、複合材料や圧粉成形体といった磁性材料のみから構成される形態、図3(B)に示すように上述の磁性材料からなるコア片31mと、コア片31mよりも透磁率が低い材料(代表的には非磁性材料)からなるギャップ材31gとを交互に積層した積層体から構成される形態にすることができる。各外側コア部32は、上述の磁性材料からなるコア片31mから構成される形態が挙げられる。
上述の内圧粉形態は、コイル素子2a,2b内に挿入される圧粉成形体からなる内側コア部31,31の飽和磁束密度を、樹脂を含有する複合材料からなる外側コア部32よりも高くし易い。内側コア部31の飽和磁束密度が高いことで、上述のように内側コア部31の断面を小さくできる。内側コア部31の小型化により、内圧粉形態は、(1)リアクトルの小型化、(2)巻線2wの短尺化によるリアクトルの軽量化、などを図ることができる。上述の外圧粉形態は、コイル素子2a,2b外に配置される外側コア部32の飽和磁束密度を内側コア部31より高め易いため、外側コア部から外部への漏れ磁束を低減できる。従って、外圧粉形態は、漏れ磁束に伴う損失を低減したり、コイル2が形成する磁束を十分に活用したりすることができる。上述の全複合材料形態は、磁性コア3全体を一様な材質とするとき、磁性コアを一つの成形体とする場合は勿論、複数のコア片によって構成する場合にも磁性コアを容易に製造でき、生産性に優れる。特に、実施形態1のようにケースを成形用金型とすると、複雑な形状であっても磁性コア3を容易に形成できる。また、全複合材料形態は、磁性体粉末の材質や含有量を調整して比較的低透磁率な複合材料とすると、ギャップレス構造とすることができ、ギャップ部分の漏れ磁束が生じ得ない上にギャップに伴うリアクトルの大型化を抑制できる。或いは、各コア片における磁性体粉末の材質や含有量を異ならせることで、内圧粉形態や外圧粉形態のように、全複合材料形態も、磁性コアの磁気特性を部分的に異ならせることができる。また、コイルの内外を複合材料によって覆う形態とすると、当該複合材料の樹脂成分によってコイルを保護できる。
(実施形態6)
上記実施形態1〜5のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを具える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、図4に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを具える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを具える。なお、図4では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを具える形態とすることができる。
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
コンバータ1110は、図5に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを具え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1〜5のリアクトルを具える。磁束密度が高く低損失なリアクトル1などを具えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は、低損失である。
なお、車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を具える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態1〜5のリアクトルなどと同様の構成を具え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1〜5のリアクトルなどを利用することもできる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明複合材料をモータ用コアなどに利用することができる。