JP2017088931A - 固体高分子型燃料電池用チタン合金、それを用いたチタン材、およびそれを用いた固体高分子型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性に優れた、固体高分子型燃料電池用のチタン材を提供する。【解決手段】質量%で、白金族元素:0.005%〜0.15%、および希土類元素:0.001〜0.06%を含有し、残部がTiおよび不純物からなるチタン合金。このチタン合金は、α相の平均結晶粒径が、5〜25μmであり、α相中にβ相を、面積率で0.1〜10%含有する。このチタン合金は、Tiの一部に代えて、Ni:1.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下、Cr:0.5%以下、およびW:0.5%以下の1種または2種以上を含有してもよい。【選択図】図1B
Description
本発明は、固体高分子型燃料電池に用いるチタン合金、それを用いたチタン材、およびそれを用いた固体高分子型燃料電池に関する。チタン材は、より詳細には、固体高分子型燃料電池のセパレータに用いられる。
燃料電池は、水素と酸素との結合反応の際に発生するエネルギーを利用するため、省エネルギーと環境対策との両面から、その導入および普及が期待されている。燃料電池には、固体電解質型、溶融炭酸塩型、リン酸型、固体高分子型などの種類がある。
これらのうち、固体高分子型燃料電池は、出力密度が高く小型化が可能であり、また、他のタイプの燃料電池より低温で作動し、起動および停止が容易である。このような利点から、固体高分子型燃料電池は、自動車、家庭用の小型コジェネレーション等への利用が期待されており、近年、特に注目を集めている。
図1Aは、固体高分子型燃料電池(以下、単に「燃料電池」ともいう。)の斜視図であり、図1Bは、燃料電池に用いられる単セルの分解斜視図である。
図1Aに示すように、燃料電池1は、単セルの集合体(スタック)である。単セルでは、図1Bに示すように、固体高分子電解質膜2の一面に、アノード側ガス拡散電極膜(「燃料電極膜」とも呼ばれる;以下、「アノード」という。)3が、他面に、カソード側ガス拡散電極膜(「酸化剤電極膜」とも呼ばれる;以下、「カソード」という。)4が、それぞれ積層されている。その積層体の両面に、セパレータ(バイポーラプレート)5a、5bが重ねられている。
燃料電池には、隣接する2つの単セルの間、または数個の単セルごとに、冷却水の流通路を持つセパレータを配したものがある。本発明は、そのような水冷型燃料電池のセパレータに用いるチタン材も対象とする。
固体高分子電解質膜2としては、水素イオン(プロトン)交換基を有するふっ素系プロトン伝導膜が主として用いられている。
アノード3、およびカソード4は、いずれも、導電性を有する炭素繊維をシート状にしたカーボンシート(または、カーボンシートより薄いカーボンペーパー、もしくはさらに薄いカーボンクロス)を主体とする。アノード3およびカソード4には、粒子状の白金触媒、黒鉛粉、および必要に応じて水素イオン(プロトン)交換基を有するふっ素樹脂からなる触媒層が設けられている場合もある。
セパレータ5aには、アノード3側の面に、溝状の流路6aが形成されている。流路6aには、燃料ガス(水素または水素含有ガス)Aが流されて、アノード3に水素が供給される。また、セパレータ5bには、カソード4側の面に、溝状の流路6bが形成されている。流路6bには、空気等の酸化性ガスBが流され、カソード4に酸素が供給される。これらガスの供給により、電気化学反応が生じて直流電力が発生する。アノード3およびカソード4に触媒層が設けられている場合は、燃料ガスまたは酸化性ガスとこの触媒層とが接触して反応が促進される。
固体高分子型燃料電池のセパレータに求められる主な機能は、次の通りである。
(1)燃料ガス、または酸化性ガスを、電池面内に均一に供給する「流路」としての機能
(2)カソード側で生成した水を、反応後の空気、酸素等のキャリアガスとともに、燃料電池から効率的に系外に排出する「流路」としての機能
(3)電極膜(アノード3、カソード4)と接触して電気の通り道となり、さらに、隣接する2つの単セル間の電気的「コネクタ」となる機能
(4)隣り合うセル間で、一方のセルのアノード室と他方のセルのカソード室との「隔壁」としての機能
(5)水冷型燃料電池では、冷却水流路とこれに隣接するセルとの「隔壁」としての機能
(1)燃料ガス、または酸化性ガスを、電池面内に均一に供給する「流路」としての機能
(2)カソード側で生成した水を、反応後の空気、酸素等のキャリアガスとともに、燃料電池から効率的に系外に排出する「流路」としての機能
(3)電極膜(アノード3、カソード4)と接触して電気の通り道となり、さらに、隣接する2つの単セル間の電気的「コネクタ」となる機能
(4)隣り合うセル間で、一方のセルのアノード室と他方のセルのカソード室との「隔壁」としての機能
(5)水冷型燃料電池では、冷却水流路とこれに隣接するセルとの「隔壁」としての機能
固体高分子型燃料電池に用いられるセパレータの基材材料は、このような機能を果たすことができるものである必要がある。基材材料には、大きく分けて、金属系材料と炭素系材料とがある。
炭素系材料は、比重が小さいことにより、セパレータの軽量化を図れるという利点があるが、ガス透過性を有するという問題、および機械的強度が低いといった問題がある。
金属系材料としては、たとえば、チタンが用いられる。金属系材料からなるセパレータは、金属系材料の素材をプレス加工等により成形して得られる。金属系材料は、金属特有の性質として加工性に優れる。金属系材料からなるセパレータは、厚さを薄くすることができ、セパレータの軽量化が図れるという利点を有する。しかし、セパレータ表面の酸化によりセパレータの電気伝導性が低下し、セパレータと電極膜との接触抵抗が上昇し得るという問題がある。この問題に対して、以下の方策が提案されている。
特許文献1では、耐食性(耐酸化性)を向上させるために、チタン製のセパレータにおいて電極と接する面から不動態皮膜を除去し、その後、その面にめっき等により、金(Au)等の貴金属からなる薄膜層を形成することが提案されている。しかし、金等の貴金属を自動車等の移動体用燃料電池または定置用燃料電池に多量に使用することは、経済性、および資源量の観点から問題がある。このため、特許文献1で提案されるチタン製セパレータは普及していない。
特許文献2では、金等の貴金属を用いることなく、チタン製セパレータの耐食性(耐酸化性)を高くすることが試みられている。具体的には、特許文献2では、炭素からなる導電接点層が表面に形成されたチタン製セパレータが提案されている。導電接点層は、蒸着により形成される。しかし、蒸着により、このような導電接点層を形成するには、長時間を要するので、生産性が低下する。また、蒸着には、特殊な装置を要するため、設備コストが上昇する。このため、特許文献2で提案されるチタン製セパレータは、現状では、積極的には採用されていない。
特許文献3には、チタン製セパレータの表面に、導電性セラミックスが分散された金属被膜を形成することにより、表面の酸化による接触抵抗の上昇を低減することが提案されている。しかし、この金属被膜が形成された板材をプレス成形してセパレータを得ようとすると、金属被膜に分散されたセラミックスが成形を阻害し、加工時に、板材に割れまたは貫通孔が発生する場合がある。また、セラミックスがプレス金型を摩耗させるため、プレス金型を超硬合金のような高価な材質のものに変更する必要が生じる。このため、特許文献3で提案されるチタン製セパレータは、実用化には至っていない。
特許文献4には、白金族元素を含有するチタン合金基材を、非酸化性酸および酸化性酸を含む溶液に浸漬して酸洗することにより、その表面に白金族元素を濃化させ、その後、低酸素濃度雰囲気での熱処理を施すプロセスにより、セパレータ用チタン材を製造する方法が開示されている。このプロセスにより、セパレータ用チタン材の表面に白金族元素とチタン酸化物との混合層が形成される。この混合層により、チタン材に、5kgf/cm2(4.9×105Pa)の荷重を付加した状態で7.4mAの電流を流したときのチタン材の接触抵抗は、10mΩ・cm2以下と低くなるとされている。この技術は、非特許文献1にも記載されている。
特許文献4では、酸洗のため基材を溶液に浸漬する時間は、実施例で10分または30分とされている。このように、特許文献4で提案されるセパレータ用チタン材の製造方法では、酸洗に時間を要するとともに、熱処理の雰囲気が所定の条件を満たすように調整するために時間を要することから、生産性が低くなる。
特許文献5には、白金族元素を含有するチタン合金基材を、非酸化性酸を含む酸に浸漬して酸洗することにより、その表面に白金族元素が濃化した層を形成したセパレータ用チタン材が提案されている。特許文献5では、酸洗のため基材を溶液に浸漬する時間は、実施例では、いずれも、5分以上とされている。このため、酸洗は、連続的に行うことは困難であり、バッチ式で行う必要がある。
また、特許文献5では、酸洗後に表面に濃化した白金族元素成分とマトリックスとの密着性向上を目的として、真空雰囲気(低酸素濃度雰囲気)で350〜600℃に加熱する熱処理を行うことが好ましいとされている。このように、特許文献5で提案されるセパレータ用チタン材は、酸洗に時間を要するとともに、熱処理の雰囲気が所定の条件満たすように調整するのに時間を要することから、連続生産することは困難であり、生産性が低くなる。
特許文献6には、白金族元素と希土類元素とを含有する、固体高分子型燃料電池のセパレータ用チタン材が開示されている。このチタン材は、希土類元素を含有することにより、短時間の酸洗処理で白金族元素が表面に濃化し、真空(低酸素濃度雰囲気)での熱処理を行わなくても、チタン材の初期の接触抵抗が低減するとされている。また、このチタン材では、白金族元素含有率が0.005質量%と極めて小さい場合でも、酸洗により白金族元素を表面に濃化させて、初期の接触抵抗を低減する効果が得られるとされている。
すなわち、特許文献1〜5の技術を基準として、特許文献6のチタン材では、下記(1)〜(3)の効果が得られる。
(1)表面処理時間の短縮
(2)チタン材の白金族元素含有率の低減
(3)真空(低酸素濃度雰囲気)での熱処理の省略を可能とすること
(1)表面処理時間の短縮
(2)チタン材の白金族元素含有率の低減
(3)真空(低酸素濃度雰囲気)での熱処理の省略を可能とすること
佐藤俊樹外3名、R&D 神戸製鋼技報、vol.55、No.3(2005)、p.48-51
しかし、特許文献6のチタン材は、成形時に肌荒れ(表面粗さの増大)が生じやすい。チタン材を用いたセパレータと他の部材との密着性を確保するため、チタン材の表面は平坦であることが必要である。このため、特許文献6のチタン材は、セパレータに適用できないことがある。
そこで、本発明の目的は、上記(1)〜(3)の効果を維持しつつ、成形性に優れた、固体高分子型燃料電池用のチタン材を提供することである。本発明の他の目的は、酸洗により、上記チタン材を容易に得ることができるチタン合金を提供することである。本発明のさらに他の目的は、上記チタン材を含む固体高分子型燃料電池を提供することである。
本発明は、下記(I)のチタン合金、下記(II)のチタン材、および下記(III)の固体高分子型燃料電池を要旨とする。
(I)質量%で、
白金族元素:0.005%〜0.15%、および
希土類元素:0.001〜0.06%
を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
α相の平均結晶粒径が、5〜25μmであり、
α相中にβ相を、面積率で0.1〜10%含有する、固体高分子型燃料電池用チタン合金。
白金族元素:0.005%〜0.15%、および
希土類元素:0.001〜0.06%
を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
α相の平均結晶粒径が、5〜25μmであり、
α相中にβ相を、面積率で0.1〜10%含有する、固体高分子型燃料電池用チタン合金。
(II)前記(I)のチタン合金からなる母材と、
前記母材の表面に形成され、チタン酸化物、および白金族元素を主体とし、厚さが50nm以下である白金族元素濃化皮膜とを備えた、固体高分子型燃料電池用チタン材。
前記母材の表面に形成され、チタン酸化物、および白金族元素を主体とし、厚さが50nm以下である白金族元素濃化皮膜とを備えた、固体高分子型燃料電池用チタン材。
(III)セパレータを介して積層された複数の単位電池を含み、
前記セパレータが、前記(II)に記載のチタン材を含む、固体高分子型燃料電池。
前記セパレータが、前記(II)に記載のチタン材を含む、固体高分子型燃料電池。
本発明のチタン材の成形性は良好であり、成形時に、チタン材の表面に肌荒れが生じ難い。このため、このチタン材は、固体高分子型燃料電池のセパレータに適用したときに、アノード、カソード等の他の部材との密着性が良好である。また、このチタン材は、白金族元素濃化皮膜を備えていることにより、接触抵抗が低い。白金族元素濃化皮膜は、耐食性に優れるので、固体高分子型燃料電池内環境で、チタン材の接触抵抗は低く維持される。
本発明のチタン合金は、適切な条件で酸洗することによって、短時間で表面に白金族元素を濃化させて、白金族元素濃化皮膜を形成することができる。すなわち、本発明のチタン合金を適切な条件で酸洗することより、本発明のチタン材を容易に得ることができる。
本発明の固体高分子型燃料電池は、本発明のチタン材を含むセパレータを備えているので、本発明のチタン材による上記効果が得られる。
以下、本発明のチタン合金、チタン材、および固体高分子型燃料電池について詳細に説明する。以下の記載で、化学組成についての「%」は、質量%をいうものとする。
本発明のチタン材は、本発明のチタン合金からなる母材と、母材の表面に形成された白金族元素濃化皮膜とを含む。
1.本発明のチタン合金
1−1.化学組成
1-1-1.白金族元素
本発明において、白金族元素とは、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、およびPtの1種または2種以上をいう。白金族元素は、Tiより低い電気抵抗率を有し、固体高分子型燃料電池の運転環境において酸化および腐食が生じず電気抵抗率が上昇しない元素である。また、白金族元素は、後述するように、チタン合金中で微細なβ相の析出を促進して、母相であるα相の結晶粒径を小さくするように作用する。
1−1.化学組成
1-1-1.白金族元素
本発明において、白金族元素とは、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、およびPtの1種または2種以上をいう。白金族元素は、Tiより低い電気抵抗率を有し、固体高分子型燃料電池の運転環境において酸化および腐食が生じず電気抵抗率が上昇しない元素である。また、白金族元素は、後述するように、チタン合金中で微細なβ相の析出を促進して、母相であるα相の結晶粒径を小さくするように作用する。
本発明のチタン合金は、上述の白金族元素を1種または2種以上を含有する。チタン合金の白金族元素含有率は、0.005〜0.15%である。ここで、「白金族元素含有率」とは、母材が実質的に1種のみの白金族元素を含有する場合は、その含有率をいうものとし、母材が2種以上の白金族元素を含有する場合は、各白金族元素の含有率の合計をいうものとする。
白金族元素含有率が0.005%未満であると、接触抵抗を低減し結晶粒を微細化することができない。一方、白金族元素含有率が0.15%より大きいと、原料コストが多大となる。経済性と耐食性とのバランスを考慮すると、白金族元素含有率は、0.01〜0.05%とすることが好ましい。
本発明において白金族元素の種類は、特に限定しないが、Pd、RuおよびIrは、他の白金族元素に比して、安価であり、かつ単位含有率あたりの接触抵抗低減効果が大きいため好ましい。一方、Rh、OsおよびPtは非常に高価であるため、経済性の観点から好ましくない。
1-1-2.希土類元素
本発明において、希土類元素とは、Sc、Y、軽希土類元素(La〜Eu)、および重希土類元素(Gd〜Lu)の1種または2種以上をいう。上記の希土類元素のいずれか1種または2種以上を母材としてのチタン合金に含有させることによって、母材の表面に白金族元素を濃化させて、チタン材の接触抵抗を低減することができる。2種以上の希土類元素を母材に含有させる場合は、分離精製前の混合希土類元素(ミッシュメタル;以下、「Mm」と記す。)、およびジジム合金(NdおよびPrからなる合金)のような希土類元素の混合物または合金を用いることができる。Mmおよびジジム合金は、市中で入手できるものであれば、含有される希土類元素の種類および含有率によらず、本発明のチタン合金の材料として用いることができる。
本発明において、希土類元素とは、Sc、Y、軽希土類元素(La〜Eu)、および重希土類元素(Gd〜Lu)の1種または2種以上をいう。上記の希土類元素のいずれか1種または2種以上を母材としてのチタン合金に含有させることによって、母材の表面に白金族元素を濃化させて、チタン材の接触抵抗を低減することができる。2種以上の希土類元素を母材に含有させる場合は、分離精製前の混合希土類元素(ミッシュメタル;以下、「Mm」と記す。)、およびジジム合金(NdおよびPrからなる合金)のような希土類元素の混合物または合金を用いることができる。Mmおよびジジム合金は、市中で入手できるものであれば、含有される希土類元素の種類および含有率によらず、本発明のチタン合金の材料として用いることができる。
本発明のチタン合金の希土類元素含有率は、0.001〜0.06%である。ここで、「希土類元素含有率」とは、チタン合金が実質的に1種のみの希土類元素を含有する場合は、その希土類元素の含有率をいうものとし、チタン合金が2種以上の希土類元素を含有する場合は、各希土類元素の含有率の合計をいうものとする。
チタン合金が白金族元素および希土類元素を含有することにより、このチタン合金の活性態域でTiと希土類元素とを同時に非酸化性酸を含む水溶液中に溶解させ、チタン合金表面への白金族元素の析出を促進させることができる。希土類元素含有率が0.001%以上であれば、この効果が十分に得られる。
希土類元素含有率を0.06%以下とすることにより、チタン合金中に、Tiと希土類元素との化合物が生成することを抑制することができる。この化合物は、非酸化性酸の水溶液中では優先的に溶解するので、このような溶解により、チタン合金にピット状の腐食が発生する。この場合は、チタン合金の表面で均一に白金族元素の濃化が生じないことから、表面で均一に接触抵抗を低減することができない。また、この化合物に起因して、セパレータとしての使用中に、チタン材が腐食して、接触抵抗が上昇する。このため、本発明のチタン合金における希土類元素含有率は、α−Tiに対するその希土類元素の固溶限度以下であることが好ましい。
1-1-3.任意添加元素
本願発明のチタン合金は、Tiの一部に代えて、Ni、Mo、V、CrおよびWの1種または2種以上を含有してもよい。これらの元素を含有させることにより、希土類元素との相乗効果によって、チタン合金の表面に白金族元素を濃化させて、優れた耐隙間腐食性を有するチタン材を得ることができる。これらの元素を含有させる場合、その含有率は、Ni:1.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下、Cr:0.5%以下、W:0.5%以下である。
本願発明のチタン合金は、Tiの一部に代えて、Ni、Mo、V、CrおよびWの1種または2種以上を含有してもよい。これらの元素を含有させることにより、希土類元素との相乗効果によって、チタン合金の表面に白金族元素を濃化させて、優れた耐隙間腐食性を有するチタン材を得ることができる。これらの元素を含有させる場合、その含有率は、Ni:1.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下、Cr:0.5%以下、W:0.5%以下である。
1-1-4.不純物元素
チタン合金の不純物元素としては、原料、溶解電極、および環境から導入されるFe、O、C、H、N等、およびスクラップ等を原料とする場合に、その原料から導入されるAl、Cr、Zr、Nb、Si、Sn、Mn、Cu等が挙げられる。これらの不純物元素は、本発明の効果を阻害しない含有率である限り、チタン合金に含有されてもよい。本発明の効果を阻害しない含有率とは、具体的には、Fe:0.3%以下、O:0.35%以下、C:0.18%以下、H:0.015%以下、N:0.03%以下、Al:0.3%以下、Cr:0.2%以下、Zr:0.2%以下、Nb:0.2%以下、Si:0.02%以下、Sn:0.2%以下、Mn:0.01%以下、Cu:0.1%以下であり、これらの元素の含有率の合計で0.6%以下である。
チタン合金の不純物元素としては、原料、溶解電極、および環境から導入されるFe、O、C、H、N等、およびスクラップ等を原料とする場合に、その原料から導入されるAl、Cr、Zr、Nb、Si、Sn、Mn、Cu等が挙げられる。これらの不純物元素は、本発明の効果を阻害しない含有率である限り、チタン合金に含有されてもよい。本発明の効果を阻害しない含有率とは、具体的には、Fe:0.3%以下、O:0.35%以下、C:0.18%以下、H:0.015%以下、N:0.03%以下、Al:0.3%以下、Cr:0.2%以下、Zr:0.2%以下、Nb:0.2%以下、Si:0.02%以下、Sn:0.2%以下、Mn:0.01%以下、Cu:0.1%以下であり、これらの元素の含有率の合計で0.6%以下である。
1−2.α相の平均結晶粒径
チタン合金のα相(母相)の結晶粒径が小さいほど、このチタン合金を母材として含むチタン材の加工後の肌荒れが抑制される。α相の平均結晶粒径が25μm以下であれば、十分に肌荒れを抑制して、加工後のチタン材表面の平坦性を実用的なレベルにすることができる。このため、α相の平均結晶粒径は、25μm以下とする。一方、α相の平均結晶粒径を5μm未満にするためには、チタン材の製造工程を、既存のものから大幅に変更する必要があり、この場合、コストが増大する。このため、α相の平均結晶粒径は、5μm以上とする。
チタン合金のα相(母相)の結晶粒径が小さいほど、このチタン合金を母材として含むチタン材の加工後の肌荒れが抑制される。α相の平均結晶粒径が25μm以下であれば、十分に肌荒れを抑制して、加工後のチタン材表面の平坦性を実用的なレベルにすることができる。このため、α相の平均結晶粒径は、25μm以下とする。一方、α相の平均結晶粒径を5μm未満にするためには、チタン材の製造工程を、既存のものから大幅に変更する必要があり、この場合、コストが増大する。このため、α相の平均結晶粒径は、5μm以上とする。
α相の平均結晶粒径は、好ましくは、6〜23μmであり、より好ましくは、8〜20μmである。α相の平均結晶粒径が20μm以下であれば、肌荒れは実質的に発生しない。
後述のように、α相の平均結晶粒径は、圧延条件、熱処理(焼鈍)条件等により制御することができる。チタン合金に焼鈍を施す場合は、α相の平均結晶粒径は、焼鈍後のチタン合金の表面を研磨することなく、JIS−G 0551に規定される方法により測定する。α相の平均結晶粒径は、このチタン合金(チタン材)の切断面で測定してもよい。この場合でも、焼鈍後のチタン合金の表面を研磨することなく測定した場合と、実質的に同じ値が得られる。α相とβ相とが混在する場合は、β相を測定対象から除外して、平均結晶粒径を求める。
1−3.β相の面積率
β相の面積率は、チタン合金の表面において、β相の面積を、α相の面積とβ相の面積との合計で除したものである。測定対象の表面は、チタン合金の切断面としてもよい。チタン合金の製造時に、α相中にβ相が析出することで、α相の平均結晶粒径を小さくすることができる。これは、β相がα相の粒成長を阻害する(ピン止めする)ためである。この効果を得るには、β相の面積率が0.1%以上になるようにβ相を析出させる必要がある。β相の面積率が0.1%未満であると、β相析出によるピン止め効果が得られない。一方、β相の面積率が10%を超えると、β相の結晶粒径が大きくなり、チタン材の延性が低下する。このため、β相の面積率は、0.1〜10%とし、好ましくは、0.5〜7%とする。
β相の面積率は、チタン合金の表面において、β相の面積を、α相の面積とβ相の面積との合計で除したものである。測定対象の表面は、チタン合金の切断面としてもよい。チタン合金の製造時に、α相中にβ相が析出することで、α相の平均結晶粒径を小さくすることができる。これは、β相がα相の粒成長を阻害する(ピン止めする)ためである。この効果を得るには、β相の面積率が0.1%以上になるようにβ相を析出させる必要がある。β相の面積率が0.1%未満であると、β相析出によるピン止め効果が得られない。一方、β相の面積率が10%を超えると、β相の結晶粒径が大きくなり、チタン材の延性が低下する。このため、β相の面積率は、0.1〜10%とし、好ましくは、0.5〜7%とする。
β相の面積率を求める方法は、以下の通りとする。チタン合金の切断面について、硝ふっ酸でエッチングした後に、この面について、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡により1000倍に拡大した像を得る。そして、この像のコントラストを二値化することで、α相とβ相とを識別する。α相とβ相との濃淡は、光学顕微鏡で観察する場合は、β相がα相に比べて濃く(暗く)見え、走査型電子顕微鏡で観察する場合は、β相がα相に比べて薄く(明るく)見える。この二値化した像に基づき、3つの領域について、β相の面積率を求める。各領域は、光学顕微鏡で観察する場合は、たとえば、一辺が500μmの正方形とし、走査型電子顕微鏡で観察する場合は、たとえば、一辺が100μmの正方形とする。得られたβ相の面積率の値を平均して、チタン合金のβ相の面積率とする。
2.本発明のチタン材
本発明のチタン材は、上記チタン合金からなる母材と、この母材の表面に形成された白金族元素濃化皮膜を含む。白金族元素濃化皮膜は、チタン酸化物、および白金族元素を主体とする。ここで、「チタン酸化物、および白金族元素を主体とする」とは、白金族元素濃化皮膜に占めるチタン酸化物および白金族元素の割合が、90%質量以上であることをいう。白金族元素濃化皮膜中の白金族元素は、金属として存在して、母材と白金族元素濃化皮膜の表面との間の通電経路を形成していると考えられる。
本発明のチタン材は、上記チタン合金からなる母材と、この母材の表面に形成された白金族元素濃化皮膜を含む。白金族元素濃化皮膜は、チタン酸化物、および白金族元素を主体とする。ここで、「チタン酸化物、および白金族元素を主体とする」とは、白金族元素濃化皮膜に占めるチタン酸化物および白金族元素の割合が、90%質量以上であることをいう。白金族元素濃化皮膜中の白金族元素は、金属として存在して、母材と白金族元素濃化皮膜の表面との間の通電経路を形成していると考えられる。
白金族元素濃化皮膜の厚さが50nmを超える場合は、固体高分子型燃料電池内の環境で、酸化物(白金族元素の酸化物を含む。)等の腐食生成物が多く形成されて、表面接触抵抗が低下するおそれがある。このため、白金族元素濃化皮膜の厚さは、50nm以下とし、好ましくは、20nm以下とし、より好ましくは10nm以下とする。一方、白金族元素濃化皮膜が薄過ぎると、耐食性が低下するおそれがある。このため、白金族元素濃化皮膜の厚さは、0.1nm以上とし、好ましくは、0.15nm以上とし、より好ましくは、0.2nm以上とする。
白金族元素濃化皮膜の厚さは、チタン材を厚さ方向に切断し、その切断面を電子顕微鏡(たとえば、TEM)により観察して、任意の10箇所の厚さ(母材と白金族元素濃化皮膜との境界から白金族元素濃化皮膜の表面までの距離)を測定し、その測定値を平均することにより求めるものとする。母材と白金族元素濃化皮膜とは、電子顕微鏡像でコントラストの差により、識別することができる。
3.本発明のチタン材を製造する方法
所望の形状を有するチタン材は、たとえば、溶解、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、酸洗等の工程を実施して、得ることができる。
所望の形状を有するチタン材は、たとえば、溶解、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、酸洗等の工程を実施して、得ることができる。
白金族元素濃化皮膜の形成方法は、特に限定されないが、たとえば、母材を非酸化性酸で酸洗し、母材表面に白金族元素を濃化させることにより形成することができる。白金族元素は、母材から溶出し、母材の表面に再析出することにより濃化する。非酸化性酸として、たとえば、塩酸、硫酸等を採用できる。ふっ酸は、非酸化性酸であるが、母材に対する溶解力が強く、白金族元素の再析出効率が、塩酸、硫酸等に比して劣る。また、ふっ酸を用いると、酸洗時の水素の発生量が多く、母材に水素が吸収されやすくなる。このため、ふっ酸を用いて酸洗する場合は、ふっ酸の濃度、処理時間、処理温度等を十分に管理する必要がある。酸洗には、塩酸、硫酸、ふっ酸等、複数種類の酸を混合して使用してもよい。
酸洗に酸化性酸を用いる場合は、酸洗により発生した水素が母材の内部へ進入して吸収されることを防止できる。一方、酸洗に酸化性酸を使用すると、母材の表層部に酸化層が厚く形成され、白金族元素濃化皮膜を形成し難くなる。このため、母材内部への水素の吸収を防止する目的で酸洗に酸化性酸を使用する場合であっても、酸化性酸は可能な限り低濃度で使用することが好ましい。
白金族元素濃化皮膜を形成した後、母材と、白金族元素濃化皮膜との密着性を向上させるために、熱処理を施すことが好ましい。白金族元素濃化皮膜は、チタン酸化物、および白金族元素を主体とするため、このチタン材を、酸化性雰囲気中で熱処理しても、表層部の酸化はほとんど進行しない。したがって、本発明のチタン材の製造時に、真空(低酸素濃度雰囲気)での熱処理を省略することができる。熱処理に用いる炉として、たとえば、オンラインの光輝焼鈍設備、またはバッチ式焼鈍炉を用いることができる。
圧下率等の圧延条件、および熱処理温度を適切に設定することにより、α相の結晶粒径が5〜25μmの範囲内に入るようにすることができる。α相の結晶粒径は、特に、熱処理温度に強く依存し、上記範囲内にするためには、通常の焼鈍温度より50℃程度低くすることが好ましい。
4.固体高分子型燃料電池
本発明の固体高分子型燃料電池は、セパレータを介して積層された複数の単位電池を含み、セパレータは、本発明のチタン材を含む。各単位電池は、固体高分子電解質膜の一方表面および他方表面に、それぞれ、アノード(燃料電極膜)およびカソード(酸化剤電極膜)を重ねあわせたものとすることができる。各単位電池のアノードおよびカソードに、それぞれ、燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給することにより、固体高分子型燃料電池は、直流電力を発生する。
本発明の固体高分子型燃料電池は、セパレータを介して積層された複数の単位電池を含み、セパレータは、本発明のチタン材を含む。各単位電池は、固体高分子電解質膜の一方表面および他方表面に、それぞれ、アノード(燃料電極膜)およびカソード(酸化剤電極膜)を重ねあわせたものとすることができる。各単位電池のアノードおよびカソードに、それぞれ、燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給することにより、固体高分子型燃料電池は、直流電力を発生する。
本発明のチタン材は、上述のとおり、成形性が良好であるので、セパレータの形状に成形したときに、肌荒れが生じ難い。したがって、本発明の固体高分子型燃料電池において、セパレータと、他の部材(たとえば、アノード、およびカソード)との密着性を高くすることができる。
また、チタン材の表面に白金族元素濃化皮膜が設けられているので、このチタン材を用いたセパレータは、初期の接触抵抗が低いとともに、固体高分子型燃料電池内環境において、優れた耐食性を示し、低い接触抵抗が維持される。したがって、このセパレータを用いた固体高分子型燃料電池は、初期電圧が高く、かつ、電圧の経時的な低下が小さい。
本発明の効果を確認するため、以下の方法によりチタン材の試料を作製し、評価した。
1.チタン材の作製
チタン材の素材とするチタンインゴットを用意した。表1に、チタンインゴット(素材)の化学組成を示す。これらのチタンインゴットは、実験室レベルで原料を融解および凝固して得た。素材1〜3は、白金族元素および希土類元素の少なくとも一方を実質的に含有していない点で、本発明の母材の要件を満たしていなかった。素材4〜13は、本発明の母材の要件のうち、化学組成についての要件を満たしていた。
1.チタン材の作製
チタン材の素材とするチタンインゴットを用意した。表1に、チタンインゴット(素材)の化学組成を示す。これらのチタンインゴットは、実験室レベルで原料を融解および凝固して得た。素材1〜3は、白金族元素および希土類元素の少なくとも一方を実質的に含有していない点で、本発明の母材の要件を満たしていなかった。素材4〜13は、本発明の母材の要件のうち、化学組成についての要件を満たしていた。
これらのインゴットに対して、熱間圧延、冷間圧延、および熱処理(焼鈍)を施し、0.1mmの厚さを有するチタン板に仕上げた。これらのチタン板について、焼鈍後の表面を研磨することなく、JIS−G 0551に規定される方法により、平均結晶粒径を測定した。また、チタン板の表面を走査型電子顕微鏡で観察して、α相とβ相とを識別し、β相の面積率を求めた。
次に、酸液として、下記(a)〜(c)のいずれかの水溶液に、上記チタン板を浸漬することにより、酸洗を行った。
(a)塩酸濃度が7.5質量%である水溶液
(b)硫酸濃度が25質量%である水溶液
(c)硝酸濃度が4質量%で、ふっ酸濃度が1.5質量%である水溶液
(a)塩酸濃度が7.5質量%である水溶液
(b)硫酸濃度が25質量%である水溶液
(c)硝酸濃度が4質量%で、ふっ酸濃度が1.5質量%である水溶液
酸洗の際、酸液の温度は45〜70℃とし、チタン板の酸液への浸漬時間は0.1〜5分とした。これにより、チタン板の表面に酸化皮膜が形成された。この酸化皮膜が、チタン酸化物、および白金族元素を主体とするもの(白金族元素濃化皮膜)であることを、TEM−EDXで分析することにより確認した。また、この酸化皮膜の厚さを、TEM像より求めた。
このチタン板の両面(図1Bのセパレータ5a、5bのアノード側、およびカソード側に対応)に、幅2mm、深さ1mmの溝状のガス流路を、プレス加工により形成し、セパレータとして用いることができる形態にした。
2.チタン材の評価
(1)加工による肌荒れの評価
上記プレス加工とは別に、酸洗後のチタン板(以下、「チタン材」という。)について、JIS Z 2247に規定されるエリクセン試験を行い、そのチタン材の側面を50倍に拡大して観察し、皺(凹凸)の有無を確認した。これを、加工による肌荒れの評価とした。肌荒れは、観察した視野に、皺が認められなかった場合を、「無」とし、1つでも皺が認められた場合を、「有」とした。
(1)加工による肌荒れの評価
上記プレス加工とは別に、酸洗後のチタン板(以下、「チタン材」という。)について、JIS Z 2247に規定されるエリクセン試験を行い、そのチタン材の側面を50倍に拡大して観察し、皺(凹凸)の有無を確認した。これを、加工による肌荒れの評価とした。肌荒れは、観察した視野に、皺が認められなかった場合を、「無」とし、1つでも皺が認められた場合を、「有」とした。
(2)初期接触抵抗の測定方法
図2は、接触抵抗の測定方法を説明するための図である。セパレータ形状に加工したチタン材(以下、「セパレータ」という。)21を、1対のカーボンペーパー(東レ(株)製 TGP−H−90)22で狭持し、これを1対の金めっきした電極23で挟んだ。カーボンペーパー22は、ガス拡散層(図1Bのアノード3、およびカソード4)に使用されるものであり、その面積は1cm2であった。
図2は、接触抵抗の測定方法を説明するための図である。セパレータ形状に加工したチタン材(以下、「セパレータ」という。)21を、1対のカーボンペーパー(東レ(株)製 TGP−H−90)22で狭持し、これを1対の金めっきした電極23で挟んだ。カーボンペーパー22は、ガス拡散層(図1Bのアノード3、およびカソード4)に使用されるものであり、その面積は1cm2であった。
次に、1対の金めっき電極23の間に荷重を加え、この状態で、この1対の金めっき電極23間に一定の電流を流して、このとき生じるカーボンペーパー22とセパレータ21との間の電圧降下を測定し、この結果に基づいて抵抗値を求めた。荷重は、20kgf/cm2(1.96×106Pa)とした。得られた抵抗値は、セパレータ21の両面の接触抵抗を合算した値となるため、これを2で除して、セパレータ21の片面あたりの接触抵抗値(初期接触抵抗)とした。
(3)燃料電池運転後の接触抵抗の測定
次に、初期接触抵抗を測定済みのセパレータを用いて、単セルの固体高分子型燃料電池を作製し、この燃料電池の運転後の接触抵抗を測定した。すなわち、セパレータを組み込んで運転する燃料電池は、単セルを積層した多セルの燃料電池とはしなかった。その理由は、単セルを積層した状態では、積層状態の差異が評価結果に反映され、測定値の再現性が低くなるためである。セルには、固体高分子電解質膜を含む膜電極接合体(MEA)として、(株)東陽テクニカ製PFEC用スタンダードMEAであるFC50−MEA(イオン交換膜として、ナフィオン(登録商標)−1135を使用)を用いた。
次に、初期接触抵抗を測定済みのセパレータを用いて、単セルの固体高分子型燃料電池を作製し、この燃料電池の運転後の接触抵抗を測定した。すなわち、セパレータを組み込んで運転する燃料電池は、単セルを積層した多セルの燃料電池とはしなかった。その理由は、単セルを積層した状態では、積層状態の差異が評価結果に反映され、測定値の再現性が低くなるためである。セルには、固体高分子電解質膜を含む膜電極接合体(MEA)として、(株)東陽テクニカ製PFEC用スタンダードMEAであるFC50−MEA(イオン交換膜として、ナフィオン(登録商標)−1135を使用)を用いた。
この燃料電池に、アノード側燃料用ガスとして、純度が99.9999%の水素ガスを流し、カソード側ガスとして、空気を流した。水素ガス、および空気の燃料電池への導入ガス圧は0.04〜0.20bar(4000〜20000Pa)とした。燃料電池本体は、全体を70±2℃に保温するとともに、燃料電池内部の湿度制御は、入り側露点を70℃とすることで調整した。電池内部の圧力は、約1気圧(約1.01×105Pa)であった。
この燃料電池を、0.5A/cm2の定電流密度で運転した。出力電圧は、運転開始から20〜50時間で最も高くなった。この最も高い電圧に達した後に、500時間運転を続け、その後、燃料電池の運転を停止した。そして、セルを解体してセパレータを取り出し、上述した方法により接触抵抗を測定し、発電運転後の接触抵抗とした。
接触抵抗の測定、ならびに燃料電池の運転時における電流および電圧の測定には、デジタルマルチメータ((株)東陽テクニカ製 KEITHLEY 2001)を使用した。
3.評価結果
表2に、以上の評価結果を、母材の結晶粒径およびβ相の面積率、酸洗条件、ならびに酸化皮膜(白金族元素濃化皮膜)の厚さとともに示す。
表2に、以上の評価結果を、母材の結晶粒径およびβ相の面積率、酸洗条件、ならびに酸化皮膜(白金族元素濃化皮膜)の厚さとともに示す。
本発明例のチタン材(チタン材4、8〜13、および16〜18)は、いずれも肌荒れは発生せず、接触抵抗は、初期および発電運転後ともに、10mΩ・cm2以下と十分に低かった。
比較例であるチタン材1〜3では、接触抵抗、特に発電運転後の接触抵抗が大きかった。これは、チタン材1〜3に用いた母材1〜3が白金族元素および希土類元素の少なくとも一方を実質的に含有していないことにより、酸洗により、表面に十分に白金族元素が濃化した皮膜が形成されず、発電運転中に表面の腐食が進行したためと考えられる。
比較例であるチタン材5、6、14、および15では、いずれも加工により肌荒れが生じた。これは、これらのチタン材の母材が、下記(i)および(ii)の要件の少なくとも一方を満たしていなかったことと関係していると考えられる。
(i)α相の平均結晶粒径が5〜25μmであること
(ii)β相の面積率が0.1〜10%であること
(i)α相の平均結晶粒径が5〜25μmであること
(ii)β相の面積率が0.1〜10%であること
比較例であるチタン材7では、接触抵抗が大きかった。これは、チタン材の酸化皮膜が50nmを超えていたことと関係していると考えられる。
1:固体高分子型燃料電池、 5a、5b、21:セパレータ
Claims (4)
- 質量%で、
白金族元素:0.005%〜0.15%、および
希土類元素:0.001〜0.06%
を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
α相の平均結晶粒径が、5〜25μmであり、
α相中にβ相を、面積率で0.1〜10%含有する、固体高分子型燃料電池用チタン合金。 - 請求項1に記載のチタン合金であって、
Tiの一部に代えて、Ni:1.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下、Cr:0.5%以下、およびW:0.5%以下の1種または2種以上を含有する、チタン合金。 - 請求項1または2に記載のチタン合金からなる母材と、
前記母材の表面に形成され、チタン酸化物、および白金族元素を主体とし、厚さが50nm以下である白金族元素濃化皮膜とを備えた、固体高分子型燃料電池用チタン材。 - セパレータを介して積層された複数の単位電池を含み、
前記セパレータが、請求項3に記載のチタン材を含む、固体高分子型燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015217755A JP2017088931A (ja) | 2015-11-05 | 2015-11-05 | 固体高分子型燃料電池用チタン合金、それを用いたチタン材、およびそれを用いた固体高分子型燃料電池 |
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JPWO2017081950A1 (ja) * | 2015-11-10 | 2017-11-16 | 新日鐵住金株式会社 | チタン合金、チタン材、セパレータ、セル、および固体高分子型燃料電池 |
CN114555842A (zh) * | 2019-10-30 | 2022-05-27 | 日本制铁株式会社 | 钛合金 |
CN115976365A (zh) * | 2022-12-28 | 2023-04-18 | 上海交通大学 | 一种用于燃料电池双极板的钛合金及其制备方法和应用 |
-
2015
- 2015-11-05 JP JP2015217755A patent/JP2017088931A/ja active Pending
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