JP2017087501A - 表面処理鋼板 - Google Patents
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Abstract
Description
また、従来の表面処理鋼板では、表面外観品位を低下させる原因となる干渉模様が表面に発生する場合があった。
また、従来の表面に皮膜を有する亜鉛めっき鋼板では、より一層耐食性を向上させることが要求されていた。
その結果、亜鉛系めっき鋼板上に、平均粒径20〜200nmのポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む樹脂成分と、PとTiとVとSiとを含み、皮膜の断面における前記樹脂成分の面積率と、皮膜中のP含有量と、鋼板の表面粗さ(Ra)とが所定の範囲であり、樹脂粒子が略均一に配置された皮膜を形成すればよいことを見出し、本発明を想到した。
本発明の要旨は以下のとおりである。
前記皮膜が、平均粒径20〜200nmのポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む樹脂成分と、PとTiとVとSiとを含み、
前記皮膜の断面における前記樹脂成分の面積率が35〜80%であり、
前記皮膜中にPをリン酸換算で2.5〜7.5質量%含み、前記鋼板の表面粗さ(Ra)が0.1〜2μmであり、前記皮膜中に前記樹脂粒子が分散していることを特徴とする表面処理鋼板。
[3] 前記皮膜の表面粗さ(Ra)が1〜10nmであることを特徴とする[1]または[2]に記載の表面処理鋼板。
[4] 前記皮膜の厚みが150〜900nmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の表面処理鋼板。
[5] 前記めっき層がアンチモンを含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の表面処理鋼板。
[7] 前記皮膜中にSiをSiO2換算で10〜40質量%、
Tiを1.7〜2.4質量%、
Vを0.70〜0.90質量%含み、
TiとVとの質量比(Ti/V)が2.1〜2.9であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の表面処理鋼板。
「表面処理鋼板」
図1は、本実施形態の表面処理鋼板の断面構造の一例を説明するための模式図である。
図1に示す表面処理鋼板10は、鋼板1と、鋼板1の表面1aに形成された亜鉛を含むめっき層2と、めっき層2上に形成された皮膜3とを有する。
図1に示す表面処理鋼板10では、鋼板1の片面の表面1a側のみにめっき層2および皮膜3が形成されている場合を例に挙げて説明するが、本発明の表面処理鋼板は、鋼板の両面にめっき層および皮膜が形成されていてもよい。また、めっき層2が、鋼板1の両面に形成されている場合、皮膜3は片面にのみ形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。
本実施形態において、表面1aにめっき層2の形成される鋼板1としては、特に限定されるものではない。例えば、鋼板1として、極低C型(フェライト主体組織)、Al−k型(フェライト中にパーライトを含む組織)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等、いずれの型の鋼板を用いても良い。
鋼板1の表面粗さ(Ra−S)(試験長:1インチ)とは、鋼板1の表面1aにめっき層2および皮膜3が形成されている表面処理鋼板10の皮膜3表面における表面粗さ(Ra)とする。
めっき層2は、亜鉛を含むものであり、鋼板1の片面または両面の表面に形成されている。亜鉛を含むめっき層とは、純亜鉛系めっき層と、亜鉛含有量が40質量%以上の亜鉛合金めっき層とを包含する意味である。亜鉛合金めっき層としては、例えば、55%Al−Zn合金めっき層、5%Al−Zn合金めっき層、Al−Mg−Zn合金めっき層、Ni−Zn合金めっき層などが挙げられる。
めっき層2のめっき付着量は特に制限されず、従来の一般的な範囲内でよい。
皮膜3は、めっき層2上に形成されたものである。
皮膜3は、図1に示すように、平均粒径20〜200nmのポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む第1成分31(樹脂成分)と、第1成分31を除く第2成分32とからなる。皮膜3の断面における第1成分31の面積率は35〜80%である。第2成分32は、りん(P)とチタン(Ti)とバナジウム(V)とシリコン(Si)とを含む。皮膜3中にはPがリン酸換算で2.5〜7.5質量%含まれている。皮膜3中には、第1成分31および第2成分32が略均一に分散している。
第1成分31は、平均粒径20〜200nmのポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む。ポリウレタン樹脂は、抗張力と伸びのバランスが良好な皮膜を形成する。このため、ポリウレタン樹脂を含む第1成分31を含む皮膜3は、バリア性および密着性に優れる。よって、本実施形態の表面処理鋼板10は、優れた耐食性を有する。
本発明者が検討した結果、上記の方法により算出したポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子の平均粒径の結果は、水系表面処理薬剤の材料として用いたポリウレタン樹脂の平均粒径と略一致することが確認できた。したがって、皮膜中のポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子の平均粒径は、水系表面処理薬剤の材料として用いたポリウレタン樹脂の平均粒径と同じと見なすことができる。
オレフィン系ワックスは、必要に応じて含有されるものであり、含まれていなくてもよい。オレフィン系ワックスは、皮膜3に潤滑性を付与するために、樹脂成分中に含まれていることが好ましい。オレフィン系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等が挙げられる。オレフィン系ワックスは、平均粒径20〜200nmの樹脂粒子であることが好ましい。
第2成分32は、PとTiとVとSiとを含む。
第2成分32に含まれるりん(P)は、皮膜3中で白錆原因となる亜鉛がめっき層2から溶出するのを抑制し、白錆の発生を抑制する。
皮膜3中のSi含有量は、SiO2換算で10〜40質量%であることが好ましい。皮膜3中のSi含有量が、SiO2換算で10質量%以上、好ましくは20質量%以上である皮膜3は、十分にSiを含む水系表面処理薬剤を用いて形成される。このため、水系表面処理薬剤を塗布して乾燥させることにより、シロキサン結合による三次元架橋が形成されたバリア性に優れる皮膜3となる。その結果、より一層優れた耐食性向上効果を有する皮膜3か得られる。皮膜3中のSi含有量が、SiO2換算で40質量%以下、好ましくは30質量%以下であると、その他の成分の含有量を十分に確保できるため、より優れた耐食性が得られる。
次に、本実施形態の表面処理鋼板を製造する方法について、例を挙げて説明する。
まず、鋼板1を用意し、鋼板1の片面または両面の表面に従来公知の方法により、亜鉛を含むめっき層2を形成する。
次に、本実施形態では、上記の皮膜3に含まれる各成分を所定の割合で含む水系表面処理薬剤を、めっき層2上に塗布して乾燥させることにより、めっき層2上に皮膜3を形成する方法について説明する。
本実施形態では、例えば、水系表面処理薬剤として、ポリウレタン樹脂(A)と、フェノール樹脂(B)と、シランカップリング剤(C)と、チタンのアセチルアセトン錯体(D)と、バナジウム化合物(E)と、オレフィン系ワックス(F)と、酢酸成分(G)と、りん酸成分(H)と、水とを含むものを用いる。
水系表面処理薬剤に含まれるポリウレタン樹脂(A)は、水に分散された平均粒径20〜200nmの水分散性樹脂粒子(ディスパージョン)として存在している。ポリウレタン樹脂(A)としては、カチオン性ポリウレタン樹脂が好ましい。カチオン性ポリウレタン樹脂としては、樹脂粒子の表面をアミン変性したものが好ましい。アミンによる変性は、3級以下のアミンによる変性であることが好ましい。4級アミンによる変性の場合、水系表面処理薬剤を塗布して乾燥することにより形成した皮膜3中に存在するプラス電荷によって、耐水性が劣化する。アミンによる変性は、皮膜3中における樹脂粒子の分散性と皮膜3の耐水性との両立の観点から、3級アミンによる変性であることが好ましい。
フェノール樹脂(B)は、必要に応じて水系表面処理薬剤中に含有されるものであり、含まれていなくてもよい。水系表面処理薬剤中に、フェノール樹脂(B)が含まれていると、水系表面処理薬剤の安定性が向上する。
シランカップリング剤(C)は、水系表面処理薬剤を塗布して形成した塗膜を乾燥(焼付け)させる過程で、加水分解によりシラノール化し、シロキサン結合により三次元架橋したシロキサン型の皮膜を形成する。
シランカップリング剤(C)としては、2以上、好ましくは3以上のアルコキシ基を有するアルコキシシランを用いることが好ましい。シランカップリング剤(C)としては、上記アルコキシシランの部分加水分解物を使用してもよい。
ポリウレタン樹脂(A)及びフェノール樹脂(B)とシランカップリング剤(C)との反応の種類は、重合反応、縮合反応、付加反応等でよく、特に制限されない。
水系表面処理薬剤中のチタンのアセチルアセトン錯体(D)は、水系表面処理薬剤を塗布して形成した塗膜を乾燥(焼付け)させる過程でめっき層2と反応し、チタン化合物として皮膜3中に析出する。なお、皮膜3中にチタンのアセチルアセトン錯体(D)に起因するアセチルアセトナトおよびアセチルアセトンが存在していても、これらはイオン性が弱いため、結露白化性に悪影響を与えない。チタンのアセチルアセトン錯体(D)としては、例えば、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンテトラキスアセチルアセトネートなどが挙げられる。
バナジウム化合物(E)としては、強電解質が含まれない化合物または揮発性酸との塩を用いることが好ましい。強電解質が含まれないバナジウム化合物(E)としては、五酸化バナジウム、メタバナジン酸及びその塩(例えば、メタバナジン酸アンモニウム)、三酸化バナジウム、二酸化バナジウム、バナジウムオキシアセチルアセトナト、バナジウムアセチルアセトナト等が挙げられる。揮発性酸との塩としては、酢酸バナジウム等が挙げられる。耐食性向上効果を考慮すると、上記のバナジウム化合物(E)の中でも特に、バナジウムアセチルアセトナト、バナジウムオキシアセチルアセトナト等のバナジウムのアセチルアセトン錯体を用いることが好ましい。
オレフィン系ワックス(F)は、必要に応じて水系表面処理薬剤中に含有されるものであり、含まれていなくてもよい。オレフィン系ワックス(F)は、皮膜3に潤滑性を付与するために、水系表面処理薬剤中に含まれていることが好ましい。
オレフィン系ワックス(F)としては、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
酢酸成分(G)は、水系表面処理薬剤の安定性を向上させる。この効果は、酢酸成分(G)のpH緩衝作用によって水系表面処理薬剤のpHが3.5〜4.0で安定し、シラノール化したシランカップリング剤(C)の分散安定性が高まって、シランカップリング剤(C)の縮合反応が遅くなることによるものと推測される。なお、本発明者らの検討により、シランカップリング剤(C)の縮合反応が最も遅くなるpHは3.5〜4.0であることがわかっている。
りん酸成分(H)としては、例えば、りん酸、りん酸アンモニウム、りん酸カリウム、りん酸ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム等の無機りん酸化合物が挙げられる。これらの中でも特に、耐スタック白化性および耐フィラメントテープ性を向上させるとともに、第1成分31および第2成分32がより均一に配置された皮膜3が得られる効果を考慮すると、りん酸成分(H)として、りん酸を用いることが好ましい。
(1)水系表面処理薬剤の固形分(V)の質量に対する、前記シランカップリング剤(C)のSiO2換算による質量との比(NC)/(NV)が0.10〜0.40
(2)固形分(V)の質量に対する、前記チタンのアセチルアセトン錯体(D)のTi換算による質量(ND)との比(ND)/(NV)が0.017〜0.024
(3)固形分(V)の質量に対する、前記バナジウム化合物(E)のV換算による質量(NE)との比(NE)/(NV)が0.007〜0.009
(4)固形分(V)の質量に対する、前記オレフィン系ワックス(F)の質量との比(NF)/(NV)が0.035〜0.060
(5)固形分(V)の質量に対する、前記酢酸成分(G)の質量との比(NG)/(NV)が0.04〜0.14
(6)固形分(V)の質量に対する、前記りん酸成分(H)の質量との比(NH)/(NV)が0.025〜0.075
(7)バナジウム化合物(E)のV換算による質量に対する、前記チタンのアセチルアセトン錯体(D)のTi換算による質量との比(ND)/(NE)が2.1〜2.9
(8)酢酸成分(G)の質量に対する、前記りん酸成分(H)の質量との比(NH)/(NG)が0.25〜1.1
水系表面処理薬剤の固形分(V)の質量に対する、シランカップリング剤(C)のSiO2換算による質量との比(NC)/(NV)は、0.10〜0.40であることが好ましく、より好ましくは0.16〜0.19である。(NC)/(NV)が0.40以下であると、その他の成分の含有量を十分に確保できるため、その他の成分による耐食性向上効果が十分に得られる。(NC)/(NV)が0.10以上であると、シロキサン結合による三次元架橋が十分に形成され、優れた耐食性を有する皮膜3が得られる。
上記固形分(V)の質量に対する、チタンのアセチルアセトン錯体(D)のTi換算による質量(ND)との比(ND)/(NV)は、0.017〜0.024であり、好ましくは0.019〜0.023である。(ND)/(NV)が0.017以上であると、チタン化合物(D)による耐食性向上効果が十分に得られる皮膜3となる。(ND)/(NV)が0.024以下であると、その他の成分の含有量を十分に確保できるため、その他の成分による耐食性向上効果が十分に得られる。
上記固形分(V)の質量に対する、バナジウム化合物(E)のV換算による質量(NE)との比(NE)/(NV)は、0.0070〜0.0090であり、好ましくは0.0075〜0.0090である。(NE)/(NV)が0.0070以上であると、バナジウム化合物(E)による耐食性向上効果が十分に得られる皮膜3となる。(NE)/(NV)が0.0090以下であると、その他の成分の含有量を十分に確保できるため、その他の成分による耐食性向上効果が十分に得られる。
上記固形分(V)の質量に対する、オレフィン系ワックス(F)の質量との比(NF)/(NV)は、0.035〜0.060であり、好ましくは0.040〜0.055である。(NF)/(NV)が0.035以上であると、十分な潤滑性を有する皮膜3が得られ、加工性の良好な表面処理鋼板10が得られる。また、(NF)/(NV)が0.060以下であると、取扱い性の良好な表面処理鋼板10が得られる。
上記固形分(V)の質量に対する、酢酸成分(G)の質量との比(NG)/(NV)は、0.04〜0.14であり、好ましくは0.05〜0.13であり、より好ましくは0.06〜0.12である。(NG)/(NV)が0.04以上であると、水系表面処理薬剤の安定性がより一層良好となる。(NG)/(NV)が0.14以下であると、皮膜3中に酢酸成分(G)が残留することによる耐結露白化性の低下を防止できる。
上記固形分(V)の質量に対する、りん酸成分(H)の質量との比(NH)/(NV)は、0.025〜0.075であり、好ましくは0.030〜0.070であり、より好ましくは0.035〜0.065である。(NH)/(NV)が0.025以上であるので、めっき層2からの亜鉛の溶出を抑制できる。また、めっき層2上に水系表面処理薬剤を塗布した段階で、水系表面処理薬剤中のりん酸成分(H)がめっき層2の表面に沈着して、めっき層2の表面エネルギーが適正となり、第1成分31が自己整合的に略均一に分散された塗膜が形成される。(NH)/(NV)が0.075以下であると、その他の成分の含有量を十分に確保できるため、その他の成分による耐食性向上効果が十分に得られる。
バナジウム化合物(E)のV換算による質量に対する、チタンのアセチルアセトン錯体(D)のTi換算による質量との比(ND)/(NE)は、2.1〜2.9であり、好ましくは2.2〜2.8であり、より好ましくは2.3〜2.7である。(ND)/(NE)が2.1以上であると、チタン化合物(D)による耐食性向上効果が十分に得られる皮膜3となる。(ND)/(NE)が2.9以下であると、バナジウム化合物(E)による耐食性向上効果が十分に得られる皮膜3となる。(ND)/(NE)が2.1〜2.9であると、TiとVとの相乗効果により様々な腐食環境下での腐食を抑制でき、より優れた耐食性を有する皮膜3となる。
酢酸成分(G)の質量に対する、りん酸成分(H)の質量との比(NH)/(NG)は、0.25〜1.1であり、0.30〜1.0であることが好ましく、0.35〜0.9であることがより好ましい。(NH)/(NG)が0.25〜1.1であると、酢酸成分(G)による水系表面処理薬剤の安定性向上効果が十分に得られるとともに、皮膜3中に酢酸成分(G)が残留することによる耐結露白化性低下およびフィラメンテープの密着性低下を抑制できる。
水系表面処理薬剤に使用する水系溶媒は、水のみとすることができる。水系表面処理薬剤に使用する水系溶媒には、水系表面処理薬剤を塗布して形成した塗膜の乾燥性を改善するなどの目的で、強電解質が含まれない水溶性有機溶媒(例えば、アルコール類)を、例えば、水系溶媒全体の30質量%以下の含有量で含有させてもよい。
水系表面処理薬剤のpHは、2.0〜6.5であることが好ましい。水系表面処理薬剤のpHが6.5以下であると、シランカップリング剤(c)の分散安定性が良好となる。水系表面処理薬剤のpHが2.0以上であると、水系表面処理薬剤の取扱いが容易であるとともに、水系表面処理薬剤が設備にダメージを与えることを防止でき、好ましい。水系表面処理薬剤のpHは、例えば、酢酸、ギ酸等の揮発性の酸を水系表面処理薬剤に添加することにより、調整できる。
水系表面処理薬剤には、必要に応じて、フッ化物イオンを含む成分が含まれていてもよい。フッ化物イオンを含む成分は、皮膜3となる各成分を、水系表面処理薬剤中に水溶性化または可溶化するために使用される。
水系表面処理薬剤に含有されるフッ化物イオンを含む成分としては、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、チタンフッ化水素酸、ジルコンフッ化水素酸などが挙げられる。
以上の工程により、本実施形態の表面処理鋼板が得られる。
[ポリウレタン樹脂(A)]
A1:ポリウレタン樹脂(平均粒径60nm)
A2:ポリウレタン樹脂(平均粒径10nm)
A3:ポリウレタン樹脂(平均粒径300nm)
B1:カチオン性フェノール樹脂
一般式(2)の反復単位の平均重合度n=5、一般式(2)のX=−CH2N(CH3)2、一般式(2)のY=H、一般式(2)のZ置換度=0.5
C1:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
C2:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
C3:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
D1:チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート
D2:チタンテトラキスアセチルアセトネート
D3:チタンフッ化水素酸(フッ化物イオンを含む成分)
[バナジウム化合物(E)]
E1:バナジウムアセチルアセトナト
F1:平均粒径0.05μmのオレフィン系ワックス
F2:平均粒径0.05μmであり、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)で表面修飾されたオレフィン系ワックス。オレフィン系ワックス中に含まれるシランカップリング剤の含有量[シランカップリング剤の質量/オレフィン系ワックスの質量]=0.030
G1:酢酸
[りん酸成分(H)]
H1:りん酸
「EG」
NSジンコート(登録商標)、新日鐵住金株式会社製、電気亜鉛めっき鋼板、板厚0.8mm、片面のめっき付着量20g/m2
「GI」
NSシルバージンク(登録商標)、新日鐵住金株式会社製、溶融亜鉛めっき鋼板、板厚0.8mm、片面のめっき付着量60g/m2
「GI(Sb)」
NSシルバージンク(登録商標)、新日鐵住金株式会社製、アンチモン含有溶融亜鉛めっき鋼板、板厚0.8mm、片面のめっき付着量60g/m2
NSシルバーアロイ(登録商標)、新日鐵住金株式会社製、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、板厚0.8mm、片面のめっき付着量60g/m2
「SD」
スーパーダイマ(登録商標)、新日鐵住金株式会社製、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコン合金めっき鋼板、板厚0.8mm、片面のめっき付着量60g/m2
「ZL」
NSジンクライト(登録商標)、新日鐵住金株式会社製、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、板厚0.8mm、片面のめっき付着量20g/m2、めっき層中のニッケル含有量12質量%
以上の工程により、実施例および比較例の表面処理鋼板を得た。
実施例4と、比較例3と、比較例4について、上述した皮膜断面を観察する方法を用いて皮膜中のポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子の平均粒径を測定した。その結果は、水系表面処理薬剤の材料として用いたポリウレタン樹脂の平均粒径(実施例4:60nm、比較例3:10nm、比較例4:300nm)と同等であった。したがって、実施例1〜3、実施例5〜45、比較例1、2、5〜12のポリウレタン樹脂の平均粒径も、水系表面処理薬剤の材料として用いたポリウレタン樹脂の平均粒径と同等とみなす。
皮膜中のP(リン酸換算)、Ti、V、Si(SiO2換算)の含有量(質量%)は、表2に示す水系表面処理薬剤の全固形分に対する質量比を百分率で示したものとみなす。
各表面処理鋼板から切り出した100mm×200mmのサンプルを20組用意した。次に、各サンプルをそれぞれ、60℃、100mLの水に10分間浸漬した。次いで、サンプルを浸漬した水2000mLを回収し、エバポレータで濃縮して、イオンクロマトグラフにより分析した。その結果を用いて、皮膜中のフッ化物イオンの含有量(mg・m−2)を算出した。その結果を表2に示す。
鋼板外観を十分に明るい蛍光灯の下で目視確認し、以下のように評価した(2以上が実用性能である。)。
1:正面から見て干渉模様がはっきり見える。
2:正面から見て干渉模様が見えない。
3:斜めから見て干渉模様が見えない。
鋼板の表面に保護膜として炭素膜を蒸着し、さらにFIB(集束イオンビーム加工装置、SMI3050SE:日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、数μmの炭素膜を成膜した。その後、FIBを用いて加速電圧30kV(仕上げ加工;5kV)でマイクロサンプリングを実施し、これを薄膜化して皮膜断面の試料とした。得られた試料を、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を有するTEMまたはSEMを用いて観察した。各鋼板の皮膜について、3箇所の断面のEDS分析(元素マッピング)を行って、C、P、Ti、V、Siの各元素マップを得た。得られた元素マップを100マス(10×10)に分割し、Cとそれ以外の元素について二値化して、皮膜の断面における樹脂成分(C)の面積率を算出し、以下のように評価した。
1:35%未満、80%超
2:35%以上80%以下
3:40%以上60%以下
その結果、表2に示す水系表面処理薬剤X1〜X42の含有量に対応する結果が得られた。
原子間力顕微鏡(AFM)により、めっき層を有する鋼板上に形成した皮膜表面の任意の場所において、1μm×1μmの測定範囲で表面粗さ(Ra)を測定し、以下のように評価した。
1:10nm超
2:1nm以上、10nm以下
(2)皮膜の断面における樹脂成分の面積率で観察した各皮膜の3箇所の断面において、互いに隣接し、かつ互いに接触していない樹脂粒子の重心間距離(各樹脂粒子の断面形状を円形とみなした場合の中心間距離)の最大値を算出し、3箇所の断面から得た値の平均値を求め、樹脂粒子の重心間距離の最大値とした。得られた樹脂粒子の重心間距離の最大値を、平均粒径の倍数を用いて下記のように評価した。なお、樹脂粒子内の比重は、一定と見なした。
1:3.0倍超
2:2.0倍超3.0倍以下
3:2.0倍以下
試験板に、無加工のもの(平面部)、NTカッターで素地到達までクロスカットしたもの(クロスカット部)、エリクセン7mm押し出し加工したもの(加工部)について、耐食性試験を行った。評価方法は次の通りである。
塩水噴霧試験法JIS−Z−2371に基づき、塩水噴霧から72時間後の白錆発生面積率を求め評価した。評価基準を以下に示す(△以上が実用性能である。)。
◎:白錆発生面積率が10%未満
○:白錆発生面積率が10%以上、30%未満
△:白錆発生面積率が30%以上、60%未満
×:白錆発生面積率が60%以上
塩水噴霧試験法JIS−Z−2371に基づき、塩水噴霧から72時間後の白錆発生状況を肉眼で評価した。評価基準を以下に示す(△以上が実用性能である。)。
◎:錆発生がほとんどなし
○:錆発生が僅かに認められる
△:錆発生が認められる
×:錆発生が著しい
塩水噴霧試験法JIS−Z−2371に基づき、塩水噴霧から72時間後の白錆発生状況を肉眼で評価した。評価基準を以下に示す(△以上が実用性能である。)。
◎:錆発生がほとんどなし
○:錆発生が僅かに認められる
△:錆発生が認められる
×:錆発生が著しい
ファインクリーナーE6406(日本パーカライジング(株)製)を20g/Lに建浴し、65℃に調整した脱脂剤水溶液に試験板を2分間浸漬し、水洗した後、80℃で乾燥した。この板について、上記(5)−1に記載した平面部耐食性の条件及び評価方法で、耐食性を評価した。
試験板に対して下記条件で塗装を施し、塗膜密着性試験を行った。
(塗装条件)
塗装条件塗料:関西ペイント(株)社製アミラック#1000(登録商標)(白塗料)
塗装法:バーコート法
焼付け乾燥条件:140℃、20分間
塗膜厚:25μm
評価方法は、以下の通りである。
試験板に対し、1mm角、100個の碁盤目をNTカッターで切り入れ、粘着テープによる剥離テストを行い、塗膜の剥離個数にて評価した。評価基準を以下に示す(△以上が実用性能である。)。
なお、ここでいう「剥離個数」とは、各碁盤目の半分以上が剥離したものの個数を意味する(以下に記載する「剥離個数」も同様の意味である)。
◎:剥離個数が1個未満
○:剥離個数が1個以上、10個未満
△:剥離個数が10個以上、50個未満
×:剥離個数が50個以上
試験板を沸騰水に2時間浸漬し、一昼夜放置後、1mm角、100個の碁盤目をNTカッターで切り入れ、粘着テープによる剥離テストを行い、塗膜剥離個数にて評価した。評価基準を以下に示す(△以上が実用性能である。)。
◎:剥離個数が1個未満
○:剥離個数が1個以上、10個未満
△:剥離個数が10個以上、50個未満
×:剥離個数が50個以上
ファインクリーナーE6406(日本パーカライジング(株)製)を20g/Lに建浴し、65℃に調整した脱脂剤水溶液に試験板を2分間浸漬し、水洗した後、80℃で乾燥した。この板について試験板に対し下記条件で塗装を施し、塗膜密着性試験を行った。
(塗装条件)
塗料:関西ペイント(株)社製アミラック#1000(登録商標)(白塗料)
塗装法:バーコート法
焼付け乾燥条件:140℃、20分間
塗膜厚:25μm
評価方法は、以下の通りである。
試験板に対し、1mm角、100個の碁盤目をNTカッターで切り入れ、粘着テープによる剥離テストを行い、塗膜剥離個数にて評価した。評価基準を以下に示す(△以上が実用性能である。)。
◎:剥離個数が1個未満
○:剥離個数が1個以上、10個未満
△:剥離個数が10個以上、50個未満
×:剥離個数が50個以上
回転台上に試験板を固定し、回転台を回転速度100mm/sで回転させ、試験片にピンオンディスクスライダ(f5工具鋼)を押付け荷重30Nで押し付け、発生する摩擦を測定するピンオンディスク試験を行った。この試験に従って、無塗油の試験片の摩擦係数(0.1秒毎に測定した摩擦係数6個の測定平均)の極小値(動摩擦係数)及び摩擦係数が0.20を初めて超える周回数(焼付き発生摺動回数)にて評価した。
なお、本評価は、オレフィン系ワックス(F)を含有する処理薬剤のみで実施した。評価基準を以下に示す(△以上が実用性能である。)。
○ :動摩擦係数が0.16未満、かつ焼付き発生摺動回数が20回以上25回未満、または、動摩擦係数が0.16以上0.18未満、かつ焼付発生摺動回数が25回以上
○−:動摩擦係数が0.16以上0.18未満、かつ焼付き発生摺動回数が20回以上25回未満
△ :動摩擦係数が0.18以上、かつ焼付き発生摺動回数が20回以上、または、動摩擦係数が0.18未満、かつ焼付き発生回数が20回未満
× :動摩擦係数が0.18以上、かつ焼付き発生摺動回数が20回未満
試験板を、70℃の温度で、かつ80%の相対湿度の湿潤箱内に6日間保持した後、取り出して、試験板の黒変状況を目視にて判定した。なお、評価基準は次の通りである(△以上が実用性能である。)。
◎ :黒変した箇所の面積率が1%未満(黒変なし)
○ :黒変した箇所の面積率が1%以上、5%未満
○−:黒変した箇所の面積率が5%以上、25%未満
△ :黒変した箇所の面積率が25%以上、50%未満
× :黒変した箇所の面積率が50%以上
2つの試験板の塗装面が向き合うように対面させ1対としたものを、5〜10対重ねて、角の4箇所をボルト締めにして、トルクレンチで、5.7N・mの目盛りまで荷重をかけた。そして、70℃の温度で、かつ80%の相対湿度の湿潤箱内に6日間保持した後、取り出して、重ね合わせ部の白変状況を目視にて判定した。なお、評価基準は次の通りである(△以上が実用性能である。)。
◎ :白変した箇所の面積率が1%未満(白変なし)
○ :白変した箇所の面積率が1%以上、5%未満
○−:白変した箇所の面積率が5%以上、25%未満
△ :白変した箇所の面積率が25%以上、50%未満
× :白変した箇所の面積率が50%以上
試験板に、日立マクセル製フィラメンテープ(登録商標)No.9514を貼り付け後、40℃の温度で、かつ80%の相対湿度の湿潤箱内に7日間保持した後に剥離し、外観評価を実施した。評価基準は次の通りである(△以上が実用性能である。)。
◎ :剥離箇所が、斜めから見ても全くわからない
○ :剥離箇所が、斜めから見て僅かにわかる
○−:剥離箇所が、斜めから見て明確にわかる
△ :剥離箇所が、正面から見て僅かにわかる
× :剥離箇所が、正面から見て明確にわかる
試験板の表面にイオン交換水を1滴滴下し、滴下面側に別の試験片を皮膜同士が対向するように重ね合せて2枚の試験片で水を挟んだ状態とした。次いで、試験片をラッピングし、四隅をクリップで留め、50℃の乾燥機に72時間保管した後の水滴滴下部分の白化有無を目視評価した。評価基準は次の通りである(△以上が実用性能である。)。
◎:目視にて白化なし、つやびけ(光沢低下)もなし
△:目視にて白化ないが、つやびけ(光沢低下)あり
×:目視にて白化あり、つやびけ(光沢低下)もあり
調製直後の処理薬剤200mlを密閉容器に入れて40℃に保持し、固化(ゲル化)状況を一定時間毎に観察し、固化までの期間を評価した。評価基準は以下の通りである(△以上が実用性能である。)。
◎:60日以上固化せず
○:30日以上、60日未満で固化
△:14日以上、30日未満で固化
×:14日未満で固化
25℃の処理薬剤300ml中に、溶融亜鉛めっき板(75×40mm)10枚を浸漬し、6時間後の処理薬剤中のZn量を評価した。評価基準は以下の通りである(△以上が実用性能である。)。
◎:Zn量が700mg/L未満
○:Zn量が700mg以上、850mg/L未満
△:Zn量が850mg以上、1000mg/L未満
×:Zn量が1000mg/L以上
また、ポリウレタン樹脂の平均粒径が200nmを超える比較例4では、(3)皮膜の表面粗さ(Ra−F)が10nm超であり、(4)樹脂粒子の重心間距離の最大値が平均粒径の3.0倍超となり、樹脂粒子の分散が不均一であるため、(5)耐食性が不十分となった。
(2)皮膜の断面における樹脂成分の面積率が80%超である比較例6では、TiとVとSiによる耐食性向上効果が十分に得られず、(5)耐食性が不十分となった。
Tiを含まない比較例8では、(5)耐食性が不十分となった。
Vを含まない比較例9では、(5)耐食性が不十分となった。
P含有量が多い比較例12では、(10)耐黒変性が実用性能を有していなかった。
Claims (7)
- 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された亜鉛を含むめっき層と、前記めっき層上に形成された皮膜とを有し、
前記皮膜が、平均粒径20〜200nmのポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子を含む樹脂成分と、PとTiとVとSiとを含み、
前記皮膜の断面における前記樹脂成分の面積率が35〜80%であり、
前記皮膜中にPをリン酸換算で2.5〜7.5質量%含み、前記鋼板の表面粗さ(Ra)が0.1〜2μmであり、前記皮膜中に前記樹脂粒子が分散していることを特徴とする表面処理鋼板。 - 前記樹脂粒子の重心間距離の最大値が、平均粒径の3.0倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板。
- 前記皮膜の表面粗さ(Ra)が1〜10nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理鋼板。
- 前記皮膜の厚みが150〜900nmであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
- 前記めっき層がアンチモンを含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
- 前記樹脂成分が、オレフィン系ワックスおよび/またはフェノール樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
- 前記皮膜中にSiをSiO2換算で10〜40質量%、
Tiを1.7〜2.4質量%、
Vを0.70〜0.90質量%含み、
TiとVとの質量比(Ti/V)が2.1〜2.9であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
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