以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由が無い限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
(第1の実施形態)
〔構成〕
まず、本発明の第1の実施形態に係る識別装置1の構成について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る識別装置1のブロック図である。識別装置1は、格納部12と、撮像部13と、特徴量抽出部14と、照合判定部15とを備える。
格納部12は、複数工程を含む基板製造ラインにおいて、登録対象の基板(以下、対象基板)の表面状態に基づいた特徴量を、その対象基板を一意に特定するための個体識別情報として格納する。格納部12は、基板の表面状態に基づいた特徴量(以下、単に特徴量と呼ぶ)と、その特徴量を有する対象基板の基板情報とを関連付けて格納する。格納部12は、対象基板が工程を経過するごとに、抽出された特徴量を基板情報と関連付けて追加して登録する。
これ以降、格納部12に登録された基板を登録基板と呼ぶ。また、格納部12に登録された登録基板に関して、互いに関連付けられた特徴量と基板情報とを登録情報と呼ぶ。格納部12は、各工程で得られた特徴量を製品ごとにまとめて管理してもよいし、工程ごとに別々に管理してもよい。
基板の特徴量とは、基板表面にあらわれる模様に基づいた情報である。例えば、対象基板の特徴量は、部品実装面(主面)や側面などを含む基板表面から抽出される。また、基板情報とは、基板の製品名や製品番号(ID:Identification)などを含む情報であり、それぞれの基板を特定するための情報である。
基板の特徴量は、基板の主面および側面のうち少なくともいずれかを用いればよい。基板の主面から特徴量を抽出する場合は、部品を実装しない箇所から特徴量を抽出するように設定すればよい。また、基板の側面は製造工程で変化が少ないため、特徴量を抽出する箇所を任意に設定しやすい。基板の表面状態が変わりやすい製造環境においては、基板の主面および側面の両方から特徴量を抽出しておき、状況に応じて少なくともいずれかの表面の特徴量を用いるように設定すればよい。
一般的な有機配線基板等の基板は、プラスチックなどの有機材料を素材とする基材中に、ガラス繊維を折ることで形成したガラスクロスなどの補強材を含む構造を有する。一般的な基板は、例えば、ガラスクロスなどの補強材や基材が層状に積層された構造を有している。そのため、基板の表面には、人の指紋のように基板ごとに異なった模様があらわれる。基板ごとに固有の模様を用いることによって、個々の基板を識別することができる。
ここで、識別装置1が登録・照合対象とする基板について、図2を用いて説明する。なお、図2には、対象基板100の表面状態として基板側面を用いる例を示すが、基板の部品実装面(主面)やその他の基板表面を用いて登録・照合を行ってもよい。
図2の上図は、登録・照合対象の基板(以下、対象基板100)の側面を示す概念図である。図2の対象基板100では、細長く変形した楕円状のガラス繊維102が基材101中に積層している様子を示す。ガラス繊維102の積層状態によって、それぞれの基板の側面には固有の模様があらわれる。
ところで、図2の下図は、製造工程を経て、対象基板100の側面に汚れ111や傷112が付着した様子を示す。経時変化や汚れ111、傷112によって対象基板100の側面の模様が変化すると、基板投入前に抽出された特徴量を用いて基板を照合することができなくなる可能性がある。そのため、本実施形態においては、対象基板100と同一の特徴量をもつ基板が登録されていない場合、その対象基板100の特徴量と一致率が高い特徴量をもつ登録基板が対象基板であると判定する。
撮像部13は、対象基板100の表面状態を含む画像を取得する。撮像部13は、撮像された画像データから対象基板100の表面状態を取得する。例えば、撮像部13は、SMTラインを構成する装置の付近に配置されたセンサによって対象基板100が搬送されてきたことが検知された際に撮像制御すればよい。
例えば、撮像部13は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサが内蔵されたカメラに接続される。カメラは、SMTラインを構成する装置の入口や出口付近に配置すればよい。なお、撮像部13がカメラを備える構成としてもよい。その場合、撮像部13は、複数の工程を分担する複数の処理装置20の入口および出口のうち少なくともいずれかにおいて対象基板100の表面を撮像するカメラを有する。
図3〜図5は、SMT(Surface Mount Technology)ラインを構成する複数の処理装置20(20−1、2、・・・、n)にカメラ131を配置する例である(nは任意の自然数)。対象基板100は、搬送器110に搬送されて処理装置20間を移動する。
カメラ131は、対象基板100の表面の模様を取得可能な解像度および倍率をもつ。カメラ131は、対象基板100の表面状態を撮像できるように、対象基板100の位置に合わせて適切な焦点距離の位置に配置する。また、カメラ131の適切な焦点位置に対象基板100を設置するように構成してもよい。なお、図3〜図5のカメラ131の配置は一例であり、カメラ131の配置位置や配置数は任意に設定することができる。
図3の例は、SMTラインを構成する全ての処理装置20の入口にカメラ131を配置する例である。図4の例は、第1〜第n工程のうち少なくとも2つの処理装置20にカメラ131を配置する例である。
例えば、識別装置1は、第1工程処理装置20−1に対象基板100を搬入する際に取得された画像データから、その対象基板100の特徴量を抽出する。そして、識別装置1は、抽出した特徴量をその対象基板100の基板情報と関連付けて登録する。識別装置1は、第2工程処理装置20−2以降に対象基板100を搬入する際に取得された画像データから抽出された特徴量と、登録された特徴量とを照合することによって対象基板100を識別することができる。
また、識別装置1は、いずれかの処理装置20内または工程間で汚れや傷が付着した対象基板100については、その対象基板100から抽出された特徴量と一致率が高い特徴量を有する登録基板であると識別する。
図4の例は、第1工程処理装置20−1および第n工程処理装置20−nの入口にカメラ131を配置する例である。図4の例は、SMTラインを構成する処理装置20のうちいずれかにはカメラ131を配置しない例であると表現することができる。例えば、SMTラインを構成する複数工程のうち、汚れや傷が付着しやすい工程を通過した対象基板100を次の工程で登録する場合は、図4のような構成とすればよい。
図5の例は、第1〜第n工程の処理装置20の入口にカメラ131を配置するとともに、いずれかの処理装置20の出口にもカメラ131を配置する例である。例えば、SMTラインを構成する複数工程のうち、汚れや傷が付着しやすい工程を通過した対象基板100を出口側で登録するような場合は、図5のような構成とすればよい。図5の構成にすれば、汚れや傷が付着した対象基板100が次の工程に進む際に、汚れや傷が付着した対象基板100の特徴量が既に登録されているため、より確実に基板を照合することができる。
図6は、個々の登録基板の登録情報を管理する管理テーブル120である。管理テーブル120は、個々の登録基板に関して、基板情報と特徴量とを関連付けて格納する。管理テーブル120は、対象基板100から抽出された複数の工程ごとの特徴量を基板情報に関連付けて管理するためのテーブルである。なお、管理テーブル120は、識別装置1が管理する登録情報の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
図6の管理テーブル120において、基板IDが001の登録基板は、製品名がX01−000001、製品番号がX001の基板である。また、基板IDが002の登録基板は、製品名がX01−000001、製品番号がX002の基板である。同じ製品であれば製品名が同じになることはあるが、製品番号は登録基板ごとに異なる。そのため、同一製品に関しては、製品番号を基板IDとして用いてもよい。
このように、識別装置1は、それぞれの登録基板に関して、その登録基板に相当する対象基板が工程を通過した際に、工程ごとに抽出された特徴量を登録情報に追加していく。そのため、SMT工程内で特徴量が変化した基板に関してもトレーサビリティを得ることができる。
特徴量抽出部14は、撮像部13が取得した画像データに含まれる対象基板100の表面状態に関する情報からその対象基板100の特徴量を抽出する。例えば、特徴量抽出部14は、対象基板100の表面にあらわれる模様の外形情報、色相情報および輝度情報のうち少なくとも一つを特徴量として抽出する。なお、特徴量抽出部14が抽出する特徴量に関しては、後程詳細に説明する。
照合判定部15は、任意の工程において、照合対象基板から新たに抽出された特徴量と、格納部12に登録された特徴量とを照合することによって、照合対象基板の特徴量を有する基板が格納部12に格納されているか否かを判定する。言い換えると、照合判定部15は、いずれかの工程において任意の基板から抽出された特徴量と格納部12に格納された特徴量とを照合し、任意の基板から抽出された特徴量と格納部12に格納された特徴量との一致条件に基づいて任意の基板を識別する。
照合判定部15は、照合対象基板の特徴量と一致する特徴量が格納部12に格納されている場合、照合対象基板はその登録基板であると判定する。一方、照合判定部15は、照合対象基板の特徴量と一致する特徴量が格納部12に格納されていない場合、照合対象基板は、照合対象基板の特徴量と一致率が最も高い特徴量を有する登録基板であると判定する。照合判定部15によるこれらの判定は、任意の基板から抽出された特徴量と格納部12に格納された特徴量との一致条件に基づいて任意の基板を識別することを実現する一例である。
そして、照合判定部15は、工程ごとに、登録基板の基板情報と、照合対象基板から抽出された特徴量とを関連付けて格納部12に格納する。
以上が、本実施形態に係る識別装置1の構成についての説明である。なお、ここで説明した識別装置1は一例であって、種々の変更・追加・削除を加えることができる。
以上の構成要素間の関係については、以下のように表現できる。撮像部は、基板製造ラインを構成する複数の工程において基板の表撮面を撮像する。特徴量抽出部は、撮像部によって撮像された基板の表面の画像データから特徴量を抽出する。格納部は、特徴量抽出部によって抽出された特徴量を基板の基板情報と関連付けて格納する。そして、照合判定部は、いずれかの工程において任意の基板から抽出された特徴量と、格納部に格納された特徴量とを照合する。このとき、照合判定部は、任意の基板から抽出された特徴量が格納部に格納されている場合、任意の基板から抽出された特徴量を有する基板と任意の基板とが同一であると判定する。また、照合判定部は、任意の基板から抽出された特徴量が格納部に格納されていない場合、任意の基板から抽出された特徴量との一致率が最も高い特徴量を有する基板と任意の基板とが同一であると判定する。
〔特徴量〕
ここで、識別装置1が基板の識別に用いる特徴量について図面を参照しながら説明する。
図7は、基板の主面から特徴量を抽出する例について説明するための概念図である。
図7の上図は、基板の主面の画像データを示す。図7の上図には、主面にあらわれる基板の模様の一例を示している。主面には、矩形の角が崩れたような形状が並んでいる模様があらわれている。このような模様は、基板自体に由来しており、基板製造後のどの段階においても変化しない。
図7の下図は、主面の画像データを用いて、周辺部からエッジを検出するとともに、模様の外形から輪郭を検出する例を示す。図7の下図は、例えば、上図の画像データを一次微分(差分)することによって得ることができる。すなわち、図7の下図は、基板の主面の画像データを一次微分(差分)することによって、基板の周辺のエッジと主面の模様の外形(輪郭)とを検出する。
例えば、エッジおよび輪郭は、主面の画像データに対してソーベルフィルタを使用し、注目画素を中心とした上下左右の9つの画素値に対して空間一次微分などの演算をすることにより検出することができる。そして、例えば、左端のエッジから距離L1、上端のエッジから距離L2の範囲内における模様の輪郭を特徴量として用いればよい。
図8は、基板の側面から特徴量を抽出する例について説明するための概念図である。
図8の上図は、基板の側面の画像データを示す。図7の上図には、側面にあらわれる基板の模様の一例を示している。側面には、細長い楕円形が並んでいる模様があらわれている。このような模様は、基板自体に由来しており、基板製造後のどの段階においても変化しない。
図8の下図は、側面の画像データを用いて、周辺部からエッジを検出するとともに、模様の外形から輪郭を検出する例を示す。図8の下図は、主面を用いた場合と同様に、上図の画像データを一次微分(差分)することによって得ることができる。すなわち、図8の下図は、基板の側面の画像データを一次微分(差分)することによって、基板の周辺のエッジと主面の模様の外形(輪郭)とを検出する。
例えば、エッジおよび輪郭は、図7と同様に、側面の画像データに対してソーベルフィルタを使用し、注目画素を中心とした上下左右の9つの画素値に対して空間一次微分などの演算をすることにより検出することができる。そして、例えば、左端のエッジから距離L3、上端のエッジから距離L4の範囲内における模様の輪郭を特徴量として用いればよい。
図7や図8のように、基板の主面や側面にあらわれる模様から抽出した特徴量を用いれば、基板製造工程においてトレーサビリティを得ることができる。
図9は、図8に示した対象基板100の側面の左端を抜き出した図である。図9は、対象基板100の側面の画像データに関して、対象基板100の左端から距離L5だけ離れた箇所を対象基板100の下側から上側に向けて厚さ方向に走査することを示す。
図10は、図9のように対象基板100を厚さ方向に走査した際に得られる色相値の波形を示す。図10において、横軸は厚さ方向の位置、縦軸は色相値を示す。図10のような色相値の波形を特徴量として用いることができる。
色相値は、RGB(赤、緑、青)のいずれか一つ以上を用いてもよい(R:Red、G:Green、B:Blue)。また、HSV(色相、彩度、明度)の三つの成分からなる色空間などの別の色空間へ変換して色相値を求めてもよい(H:Hue、S:Saturation、V:Value)。
図11は、図9のように対象基板100を厚さ方向に走査した際に得られる輝度値の波形を示す。図10において、横軸は厚さ方向の位置、縦軸は輝度値を示す。図10のような輝度値の波形を特徴量として用いることができる。
輝度値は、モノクロモード取得された画像データから求めてもよい。また、輝度値は、(輝度(Y)と色差(輝度と青の差=U、輝度と赤の差=V)の組であるYUVなどの別の色空間へ変換して求めてもよい。
撮像部13の設置場所等の撮像環境によっては、その色相値方向や輝度値方向の値は変化するが、同じ基板であれば、色相値方向や輝度値方向の値を正規化することによって、図10や図11の波形の全体形状は同じになる。そのため、基板の側面から抽出した色相値や輝度値の波形を特徴量として用いれば、基板製造工程においてトレーサビリティを得ることができる。
図12は、図9と同様に、対象基板100の側面の左端を抜き出した図である。図12は、汚れ111の付着した対象基板100の側面の画像データに関して、対象基板100の左端から距離L5だけ離れた箇所を対象基板100の下側から上側に向けて厚さ方向に走査することを示す。
図13は、図12のように対象基板100を厚さ方向に走査した際に得られる色相値の波形を示す。対象基板100に汚れ111が付着していない場合(図10)と比較すると、対象基板100に汚れ111が付着している場合(図13)、汚れ111の付着範囲の色相値が全体的に小さくなっている。なお、汚れ111が付着した際に、色相値の替わりに輝度値を用いて特徴量を抽出してもよい。
図14は、汚れ111の付着前後の特徴量から、汚れ111の付着前後の共通特徴部位を取り出した例である。汚れ111の付着前には特徴量A1が抽出され、汚れ111の付着後には特徴量A2が抽出される。特徴量A1と特徴量A2との差異は、汚れ111の付着範囲のみにあらわれる。すなわち、特徴量A1と特徴量A2とは、汚れ111の付着範囲以外は、同じ特徴を有する共通特徴部位を有することになる。
ある工程において共通特徴部位の波形を特徴量AXとして抽出して登録しておけば、それよりも後の工程では、この特徴量AXを用いて照合を行えばよい。
また、共通特徴部位が特定されていれば、全体波形同士を照合した場合の波形の一致率を特定できるので、波形の一致率を用いて基板を識別することも可能となる。例えば、走査範囲(基板の厚さ)がDであり、汚れの付着範囲がpであるとき、波形の一致率が(1−p)/Dであれば同一の基板であると判定できる。言い換えると、波形の不一致率がp/Dであれば同一の基板であると判定できる。
図15は、汚れ111の付着前後の特徴量から、汚れ11の付着前後の差分を取り出した例である。特徴量A1と特徴量A2との差異は、汚れ111の付着範囲のみにあらわれる。すなわち、特徴量A1と特徴量A2とは、汚れ111の付着範囲のみで異なる特徴量AYを有することになる。
図16は、汚れ111の付着後の特徴量A2に、汚れ111が付着する前後の差分の特徴量AYを組み合わせることによって、汚れ111の付着前の特徴量A1を復元する例である。なお、図14に示す共通特徴部位の特徴量AXと、差分の特徴量AYとを組み合わせることによって、汚れ111の付着前の特徴量A1を復元することもできる。
図16のように、ある工程において汚れが基板に付着した際に、汚れが付着する前の特徴量を復元することができれば、その工程よりも前の特徴量と、復元した特徴量とを直接照合することができるため、より高精度で基板の識別を行うことができる。また、ある工程で基板の表面に付着した汚れが後の工程までの間に取れる場合も想定されるため、汚れが付着する前の特徴量を復元することは有用である。さらに、装置内部の汚れが基板に付着する場合、異なる基板に同じ特徴をもつ汚れが付着することも想定される。そのような場合、汚れ自体の特徴量を抽出してパターン化しておけば、装置内部にどのような汚れが発生しているのかを汚れの特徴量から推定することもできる。
図17は、隣接した画素領域間における模様の色相値や輝度値の差を特徴量として抽出する例である。なお、画素領域は、単一の画素であってもよいし、いくつかの画素のまとまりであってもよい。
図17の上図は、対象基板100の表面の画像データにおいて、隣接した画素領域間における模様の色相値や輝度値の差が所定の閾値以上となる箇所(以下、特徴領域)を円で囲んで示している。すなわち、特徴領域においては、色相値や輝度値の差が大きい。
図17の下図は、対象基板100の左下を原点とし、主面に平行な方向をX方向、厚さ方向をY方向と定義したXY平面上に、特徴領域をプロットしたものである。なお、図17のした図においては、特徴領域の中心点をプロットしている。
図17の下図のように、対象基板100の表面から抽出された複数の特徴領域は、対象基板100ごとに固有の位置関係を示す。そのため、抽出された複数の特徴領域のうちいずれかを線で結んだ図形や、複数の特徴領域の位置関係そのものを対象基板100に固有の特徴量として用いることができる。
以上が、識別装置1が基板の識別に用いる特徴量についての説明である。
本実施形態においては、使用する特徴量を1つに限定せず、上述の特徴量のうちいずれか2つ以上を使用してもよい。なお、本実施形態においては、基板製造における各工程間で発生した基板の表面状態の変化に応じて、表面状態の情報で示す模様の外形(輪郭)情報や色相情報、輝度情報のうちいずれか1つ以上を選択して用いればよい。また、基板表面を撮影する際の照明の具合や、基板表面の模様から得られる特徴量の抽出のしやすさに合わせて、適切な特徴量を選択したり、組み合わせたりしてもよい。
〔動作〕
次に、本実施形態に係る識別装置1の動作について説明する。図18および図19は、識別装置1の動作について説明するためのフローチャートである。
〔登録処理〕
まず、図18のフローチャートに沿って識別装置1の動作について説明する。図18は、SMTラインにおいて、対象基板100を登録する処理(以下、登録処理と呼ぶ)の動作に関する。登録処理は、第1工程処理装置の入口に搬送された対象基板100について行えばよい。なお、登録処理は、第2工程以降で行うように構成してもよい。
図18において、まず、撮像部13は、搬送されてきた対象基板100の表面を撮像する(ステップS111)。なお、登録処理においては、対象基板100の基板情報を識別装置側で受信するものとする。
次に、特徴量抽出部14は、撮像部13が撮像した画像から特徴量を抽出する(ステップS112)。
そして、格納部12は、対象基板100から抽出された特徴量を、その対象基板100の基板情報と関連付けて登録する(ステップS113)。なお、ステップS113の動作主体は、特徴量抽出部14や照合判定部15であってもよい。
以上が登録処理についての説明である。
〔照合処理〕
次に、図19のフローチャートに沿って識別装置1の動作について説明する。図19は、搬送されてきた対象基板100と、格納部12に登録されている登録基板とを照合する処理(以下、照合処理)である。照合処理においては、対象基板100と同一と判定された登録基板の登録情報に、その対象基板100の特徴量を追加して登録する。
図19において、まず、撮像部13は、搬送されてきた対象基板100の表面を撮像する(ステップS121)。
次に、特徴量抽出部14は、撮像部13が撮像した画像から特徴量を抽出する(ステップS122)。
次に、照合判定部15は、対象基板100から抽出された特徴量と、格納部12に格納されている登録基板の特徴量とを照合する(ステップS123)。
対象基板100から抽出された特徴量と同一の特徴量をもつ登録基板が格納部12に登録されている場合(ステップS124でYes)、照合判定部15は、その登録基板と対象基板100とが同一であると判定する(ステップS125)。
一方、対象基板100から抽出された特徴量と同一の特徴量をもつ登録基板が格納部12に登録されていない場合(ステップS124でNo)、照合判定部15は、ステップS125とは異なる動作をする。この場合、照合判定部15は、対象基板100の特徴量と一致率の高い特徴量をもつ登録基板を抽出し、対象基板100はその登録基板と同一であると判定する(ステップS126)。
そして、特徴量抽出部14は、対象基板100から抽出された特徴量を、対象基板100と同一であると判定された登録基板の登録情報に追加して登録する(ステップS127)。なお、ステップS127の動作主体は、特徴量抽出部14や照合判定部15であってもよい。
以上が照合処理についての説明である。
以上のように、本実施形態に係る識別装置は、SMTラインなどの基板製造工程を構成する複数の工程のいずれかにおいて、所望の基板の特徴量(個体識別情報)を工程ごとに登録しておく。
そして、本実施形態に係る識別装置は、搬送されてきた対象基板の表面を撮像し、撮像された画像に含まれる表面状態の情報から特徴量(個体識別情報)を抽出する。
さらに、本実施形態に係る識別装置は、搬送されてきた対象基板と、すでに格納されている登録基板との一致条件に基づいてその対象基板を識別する。すなわち、本実施形態に係る識別装置は、抽出された特徴量をもつ登録基板が格納されている場合、その登録基板が対象基板であると判定し、抽出した特徴量をその登録基板の登録情報に追加して登録する。一方、本実施形態に係る識別装置は、抽出された特徴量をもつ登録基板が格納されていない場合、格納された登録基板と対象基板との一致率に基づいて、その対象基板を識別し、抽出した特徴量を識別された登録基板の登録情報に追加して登録する。
そのため、本実施形態によれば、基板製造工程に投入した後に汚れや傷、経時劣化が基板表面に発生した場合に、少なくとも一つ前の工程で抽出された特徴量と照合することによって、基板の識別精度が低下することを防ぐことができる。すなわち、本実施形態によれば、基板製造工程において基板の表面状態が変化した場合であっても、個体識別情報を基板に付与することなしに個々の基板を識別することができる。
(第2の実施形態)
〔構成〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る識別装置2の構成について図面を用いて説明する。図20は、本実施形態に係る識別装置2のブロック図である。本実施形態に係る識別装置2は、第1の実施形態に係る識別装置1に制御部16を加えた構成をもつ。制御部16は、対象基板100が検出されたことを示す検出信号に応じて撮像部13に撮像させる制御をする。
識別装置2は、格納部12と、撮像部13と、特徴量抽出部14と、照合判定部15と、制御部16とを備える。格納部12、撮像部13、特徴量抽出部14および照合判定部15の機能構成は、第1の実施形態に係る識別装置1と基本的に同様であるため、詳細な説明は省略する。
制御部16は、撮影指示信号(指示信号とも呼ぶ)に応じて撮像部13を制御する。撮影指示信号は、撮像部13が撮像した対象基板に関して、対象基板の特徴量を新規に登録する基板登録指示信号と、対象基板の特徴量を格納部12に格納された既知の特徴量と照合する基板照合指示信号とを含む。
制御部16は、例えば操作部(図示しない)の基板撮影スイッチの押下によって生成された撮影指示信号を検出し、検出した撮影指示信号の種別を格納部12の一時保持エリアに格納する。例えば、撮影指示信号の種別は、対象基板を格納部12に登録するための基板登録指示信号、格納部12に登録された基板と対象基板を照合するための基板照合指示信号を含む。
制御部16は、対象基板を格納部12に登録する際には、撮像部13によって対象基板を撮像させる。このとき、制御部16は、操作部や外部のシステム(例えば上位システム)から対象基板の情報(以下基板情報)を受信し、受信した基板情報を格納部12の一時保持エリアに格納する。例えば、基板情報は、基板の製品名や製品番号等を含む。製品番号は、製品に一意に付与されたID(Identifier)とみなすこともできる。
制御部16は、格納部12の一時保持エリアに格納しておいた基板情報に登録日時(現在の日時)を加えた新たな基板情報と、特徴量抽出部14が抽出した特徴量と組み合わせた登録情報を格納部12のデータ蓄積エリアに格納する。図21には、基板情報と特徴量とを関連付けた登録情報を登録する管理テーブル220を示す。管理テーブル220には、各工程で抽出された特徴量に加えて、その特徴量が登録された時刻(登録時刻)が格納される。すなわち、格納部12は、対象基板100から抽出された複数の工程ごとの特徴量が登録された時刻を基板情報に関連付けて管理テーブル220に格納する。なお、制御部16は、管理テーブル220とは異なる形式で登録情報を格納してもよい。
以下に、対象基板の基板情報と特徴量とを関連付けた登録情報を格納部12に格納する方法を示す。なお、制御部16は、撮像指示信号として基板登録信号を受信した際に、対象基板の基板情報と特徴量とを含む登録情報を格納部12に格納する。
まず、制御部16は、撮像指示信号に応じて、対象基板を撮像させるように撮像部13を制御する。撮像部13は、制御部16の制御を受けて、対象基板上の表面の画像を撮像する。
特徴量抽出部14は、撮像部13が撮像した画像に含まれる基板の表面状態の情報からその基板の特徴量を抽出する。
カメラ131は、撮像指示信号に応じた制御部16の制御に基づいて、基板の表面を撮影できる位置に設置する。また、カメラ131は、撮像指示信号に応じた制御部16の制御に基づいて、基板の表面を撮影する方向にレンズを向けるように構成してもよい。
特徴量抽出部14は、撮像部13が取得した画像データから基板のエッジを検出し、そのエッジを基準とした所定の範囲から特徴量を抽出する。
また、特徴量抽出部14は、画像データ上の隣接した画素領域間における模様の色相値(輝度値)の差が所定の閾値以上である場合、その色相値(輝度値)を示す位置同士の関係情報を特徴量としてもよい。
そして、特徴量抽出部14は、基板登録指示信号を受信していた場合、特徴量抽出部14が抽出した特徴量を格納部12の一次保持エリアに格納する。このとき、制御部16は、一次保持エリアに格納された対象基板の基板情報と特徴量とを組み合わせて格納部12のデータ蓄積エリアに格納する。
以上が、基板情報と特徴量とを関連付けた登録情報を格納部12に格納する方法についての説明である。
〔動作〕
次に、本実施形態に係る識別装置2の動作について説明する。図22は、識別装置2の動作について説明するためのフローチャートである。なお、図22の動作においては、搬送されてきた対象基板に対応する登録基板の登録情報が格納部12に格納されていない場合、その対象基板の基板情報を上位システムから受信できるものとする。
図22において、まず、撮像部13は、撮影指示信号を受信すると(ステップS201でYes)、対象基板100の表面を撮像するようにカメラ131を制御し、カメラ131に撮像された画像データを取得する(ステップS202)。撮影指示信号を受信していない場合(ステップS201でNo)は待機する。
特徴量抽出部14は、撮像部13によって取得された画像データから特徴量を抽出する(ステップS203)。
照合判定部15は、特徴量抽出部14が抽出した特徴量をもつ登録基板が格納部12に登録されているか否かを判定する(ステップS204)。
特徴量抽出部14が抽出した特徴量をもつ登録基板が格納部12に登録されている場合(ステップS204でYes)、照合判定部15は、その登録基板は対象基板と同一であると判定する(ステップS205)。そして、特徴量抽出部14は、この特徴量に対応する基板情報を格納部12のデータ蓄積エリアから取得する。
格納部12は、抽出された特徴量を基板情報に関連付けて格納する(ステップS206)。ステップS206において、特徴量抽出部14は、特徴量抽出部14が抽出された特徴量を格納部12のデータ蓄積エリアに格納する。このとき、制御部16は、格納部12の一時保存エリアに格納された基板情報に登録日時(現在の日時)を追加し、追加した登録日時と特徴量とを関連付けて格納部12のデータ蓄積エリアに格納する。
そして、識別装置2は、照合対象の対象基板が格納部12に登録されたいずれかの登録基板であるのかを示す情報とともに、その対象基板の基板情報を図示しない表示部に表示させる(ステップS207)。
一方、特徴量抽出部14が抽出した特徴量をもつ登録基板が格納部12に登録されていない場合(ステップS204でNo)、照合判定部15は、その対象基板と同一の特徴量をもつ登録基板は登録されていないと判定する(ステップS208)。ここで、特徴量抽出部14は、この特徴量に対応する基板情報を上位システムから取得する。
格納部12は、抽出された特徴量を基板情報に関連付けて格納する(ステップS209)。ステップS209において、特徴量抽出部14は、特徴量抽出部14が抽出された特徴量を格納部12のデータ蓄積エリアに格納する。このとき、制御部16は、格納部12の一時保存エリアに格納された基板情報に登録日時(現在の日時)を追加し、追加した登録日時と特徴量とを関連付けて格納部12のデータ蓄積エリアに格納する。
そして、識別装置2は、照合対象の対象基板が格納部12に登録されていないことを示す情報とともに、その対象基板の基板情報を図示しない表示部に表示させる(ステップS207)。
ステップS207またはステップS210の後、図22の処理を継続する場合(ステップS211でYes)はステップS201に戻り、処理を終了する場合(ステップS211でNo)は図22の処理終了とする。
以上が、本実施形態に係る識別装置2の動作についての説明である。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、基板製造工程において基板の表面状態が変化した場合であっても、個体識別情報を基板に付与することなしに個々の基板を識別することができる。
また、本実施形態においては、工程ごとに抽出された対象基板の特徴量を、その特徴量に対応する登録基板の登録情報に追加していく際に、その特徴量を追加した登録時刻を記録する。そのため、本実施形態によれば、対象基板の特徴量がどの工程や工程間で変化したのかを追跡することができる。さらに、対象基板の特徴量の変化が特定の工程かつ特定のパターンで発生した場合、特定の工程の装置内部に汚れがあると推定できる。その結果から、装置のメンテナンス時期を推定できる。
(第3の実施形態)
〔構成〕
次に、本発明の第3の実施形態に係るトレーサビリティシステム30について図面を用いて説明する。本実施形態においては、はんだ印刷装置、部品搭載装置およびリフロー装置で構成されたSMTラインにおける基板のトレーサビリティシステム30について説明する。
図23は、本実施形態に係るトレーサビリティシステム30のブロック図である。また、図24は、トレーサビリティシステム30の概念図である。
図23のように、トレーサビリティシステム30は、識別装置1、基板投入部31、複数の処理装置20(20−1〜3)、基板取出部33および生産履歴サーバ35を備える。また、図24のように、トレーサビリティシステム30は、各処理装置20に対象基板100を搬送する搬送器110、各処理装置20の入口で対象基板を撮像する撮像装置130を含む。
複数の処理装置20は、直列に接続された構成を有し、搬送されてきた対象基板に対して、はんだ印刷や部品搭載、リフローなどの処理を実行する装置である。本実施形態においては、第1工程処理装置20−1をはんだ印刷装置、第2工程処理装置20−2を部品搭載装置、第3工程処理装置20−3をリフロー装置として説明する。なお、図23においては、複数の処理装置20を3台の装置で構成しているが、4台以上の装置で構成してもよいし、2台の装置で構成してもよい。
はんだ印刷装置は、基板上の部品実装箇所にはんだペーストを塗布する装置である。部品搭載装置は、はんだペーストが印刷された部品実装箇所に電子部品を搭載するための装置である。リフロー装置は、プログラムされた温度条件下ではんだペーストを溶融・固化させることによって部品実装箇所に電子部品を実装するための装置である。
搬送器110は、複数の処理装置20を接続するように設置され、投入された対象基板100を処理装置20に上流側から下流側へ搬送するコンベアである。
撮像装置130は、搬送されてきた対象基板100を検知するセンサ132と、センサ132によって検知された対象基板100の表面を撮像するカメラとを含む。
カメラ131は、各処理装置20に搬送されてきた基板表面を撮像するために各処理装置20の入口に設置される。
センサ132は、搬送器110によって搬送されてきた対象基板100が到達したことを検知する。センサ132は、図22を用いて基板撮影スイッチに相当する。第1工程処理装置20−1の入口に設置されたセンサ132は基板登録用の基板撮影スイッチに相当し、それ以外の処理装置20の入口に設置されたセンサ132は基板照合用の基板撮影スイッチに相当する。また、第1工程処理装置20−1の入口に設置されたセンサ132から出力される第1の検出信号が基板登録用の基板撮影信号に相当し、それ以外のセンサから出力される検出信号が基板照合用の基板撮影信号に相当する。
生産履歴サーバ35は、対象基板100が処理装置20を通過した際の基板通過履歴と装置の稼働履歴とを登録する。生産履歴サーバ35は、複数の処理装置20および識別装置1とローカルエリアネットワークやインターネットによって接続される。なお、生産履歴サーバ35は、基板投入部31および基板取出部33と接続されていてもよい。
識別装置1は、複数の処理装置20に対応した複数のカメラ131に接続される。また、識別装置1は、処理装置20に搬送されてきた対象基板100を検知する複数のセンサ132に接続される。
また、トレーサビリティシステム30は、第2の実施形態に係る識別装置2を識別装置1の替わりに備えていてもよい。識別装置2を構成する場合、センサ132の検出信号を撮影指示信号として適用することができる。
識別装置1は、対象基板100が第1工程処理装置20−1の入口に到達したことを示す検出信号を受けると、第1工程処理装置20−1の入口に設置されたカメラ131によって対象基板100の表面を撮像させる。
識別装置1は、取得された対象基板100の表面の画像データから特徴量を抽出し、抽出した特徴量をその対象基板100の基板情報と関連付けた登録情報を格納部12に登録する。さらに、識別装置1は、対象基板100の通過日時または登録日時を格納部12に登録するとともに、それらの情報を生産履歴サーバ35に送信する。
そして、識別装置1は、対象基板100が第1工程より後の処理装置20に到達したことを示す検出信号を受けると、その工程の処理装置20の入口に設置されたカメラ131によって対象基板100の表面を撮像させる。
識別装置1は、取得された対象基板100の表面の画像データから特徴量を抽出する。識別装置1は、抽出された特徴量をもつ登録基板が格納部12に格納されている場合、対象基板100がその登録基板と照合されたと判定する。そして、識別装置1は、その工程の処理装置20の通過日時または登録日時を格納部12に登録するとともに、それらの情報を生産履歴サーバ35に送信する。
以上が、本実施形態に係るトレーサビリティシステム30の構成についての説明である。なお、ここで説明したトレーサビリティシステム30は一例であって、種々の変更・追加・削除を加えることができる。
以上の構成要素間の関係については、以下のように表現できる。複数の処理装置は、基板製造ラインを構成する複数の工程のいずれかの処理を実行する。搬送器は、複数の処理装置に接続され、複数の処理装置に基板を搬送する。識別装置は、複数の工程において基板の表面を撮像し、撮像された基板の表面の画像データから特徴量を抽出し、抽出された特徴量を基板の基板情報と関連付けて格納する。そして、識別装置は、いずれかの工程において任意の基板から抽出された特徴量と格納された特徴量とを照合し、任意の基板から抽出された特徴量が格納されている場合、任意の基板から抽出された特徴量を有する基板と任意の基板とが同一であると判定する。生産履歴サーバは、基板が複数の処理装置を通過した際の通過履歴と、複数の処理装置の稼働履歴とを基板情報に関連付けて登録する。
〔動作〕
次に、本実施形態に係るトレーサビリティシステム30の動作について説明する。
図25〜図28は、トレーサビリティシステム30の動作を説明するためのフローチャートである。
〔登録処理〕
図25は、識別装置1による対象基板100の登録処理である。
図25において、まず、識別装置1は、ユーザの操作によって基板投入部31から投入された対象基板100の基板情報を格納する(ステップS311)。なお、基板情報とは、対象基板100の製品名や製品番号(ID)などを含む情報である。
基板投入部31から投入された対象基板100は、搬送器110によって第1工程処理装置20−1に向けて搬送される。対象基板100が第1工程処理装置20−1の入口に到達すると、対象基板100を検知したことを示す第1の検出信号がセンサ132から出力される。
次に、識別装置1は、第1工程処理装置20−1の入口に設置されたセンサ132が出力した第1の検出信号を受信する(ステップS312)。
識別装置1は、第1の検出信号を受信すると、対象基板100の表面をカメラ131に撮像させる制御をし、対象基板100の表面の画像データを取得する(ステップS313)。
識別装置1は、取得された画像データから特徴量を抽出する(ステップS314)。
識別装置1は、ステップS311で格納しておいた基板情報に関連付けて、対象基板100が第1工程処理装置20−1を通過した通過日時や登録日時(現在の日時)と、抽出された特徴量とを含む新たな基板情報を格納部12に格納する(ステップS315)。
そして、識別装置1は、対象基板100の製品名や製品番号(ID)、通過日時(登録日時)を含む新たな基板情報を基板通過履歴として生産履歴サーバ35に送信する(ステップS316)。
以上が、識別装置1による対象基板100の登録処理に関する説明である。
〔照合処理〕
図26は、識別装置1による対象基板100の照合処理である。なお、第2工程および第3工程は同様の動作を行うため、第3工程については括弧内に示す。
対象基板100が第2工程処理装置20−2(第3工程処理装置20−3)の入口に到達すると、対象基板100を検知したことを示す第2の検出信号(第3の検出信号)がセンサ132から出力される。
図26において、まず、識別装置1は、第2工程処理装置20−2(第3工程処理装置20−3)の入口に設置されたセンサ132が出力した第2の検出信号(第3の検出信号)を受信する(ステップS321)。
識別装置1は、第2の検出信号(第3の検出信号)を受信すると、対象基板100の表面をカメラ131に撮像させる制御をし、対象基板100の表面の画像データを取得する(ステップS322)。
識別装置1は、取得された画像データから特徴量を抽出する(ステップS323)。
識別装置1は、抽出された特徴量と、自装置に格納されている特徴量とを照合し、対象基板100を識別する(ステップS324)。
識別装置1は、格納されている基板情報に関連付けて、新たな基板情報を格納部12に格納する(ステップS325)。新たな基板情報とは、対象基板100が第2工程処理装置20−2(第3工程処理装置20−3)を通過した通過日時や登録日時(現在の日時)と、抽出された特徴量とを含む。
そして、識別装置1は、対象基板100の製品名や製品番号(ID)、通過日時(登録日時)を含む新たな基板情報を基板通過履歴として生産履歴サーバ35に送信する(ステップS326)。
ここで、現在の工程が最後の工程ではない場合はステップS321に戻り、最後の工程である場合は一連の処理を終了とする(ステップS327)。
以上が、識別装置1による対象基板100の照合処理に関する説明である。
〔工程処理〕
図27は、各工程の処理装置20による工程処理である。なお、図27中のnは、工程処理の番号を示しており、第1工程では1、第2工程では2、第3工程では3である。
対象基板100が第n工程に搬送されると、第n工程処理装置20−nは、対象基板100に対して所定の工程処理を施す(ステップS331)。
第n工程処理装置20−nは、工程処理に関する情報を含む装置稼働履歴を生産履歴サーバ35に送信する(ステップS332)。装置稼働履歴とは、各工程における対象基板100に対する処理時間や処理内容を含む履歴である。例えば、はんだ印刷装置ならば、印刷開始から印刷終了までの処理時間やはんだの品種等が装置稼働履歴に含まれる。また、例えば、部品実装装置ならば、搭載部品の製造番号等が装置稼働履歴に含まれる。また、例えば、リフロー装置ならば、槽内の設定温度や温度プロファイル等が装置稼働履歴に含まれる。
ここで、現在の工程が最後の工程ではない場合はステップS331に戻り、最後の工程である場合は一連の処理を終了とする(ステップS333)。
以上が、各工程の処理装置20による工程処理に関する説明である。
〔生産履歴登録処理〕
図28は、生産履歴サーバ35が、識別装置1から送信されてきた対象基板100の通過履歴と、各工程の処理装置20から送信されてきた装置稼働履歴とを受信し、受信され通過履歴および装置稼働履歴を登録する生産履歴登録処理に関する。
図28において、まず、生産履歴サーバ35は、対象基板100の基板情報とともに、第1工程の通過履歴および装置稼働履歴を受信する(ステップS341)。
生産履歴サーバ35は、対象基板100の基板情報に関連付けて、第1工程の通過履歴および装置稼働履歴を登録する(ステップS342)。
例えば、製品番号(ID)がAである対象基板100(基板A)のはんだ印刷装置の通過時間が11月11日の10時00分00秒であったとする。また、第1工程処理(はんだ印刷処理)における基板Aの装置稼働履歴が、第1工程処理装置20−1の処理時間が11月11日の10時00分00秒から10時00分31秒であり、はんだの品種がQ品種であったとする。このとき、第1工程処理装置20−1の処理時間(11月11日の10時00分00秒)に第1工程処理装置20−1が処理したのは基板Aである。そのため、第1工程処理装置20−1の処理時間に、第1工程処理装置20−1にセットされたはんだの品種はQ品種である。すなわち、第1工程の通過履歴および装置稼働履歴に基づいて、基板Aに使われたはんだはQ品種であることが分かる。
そして、生産履歴サーバ35は、第2工程の通過履歴および装置稼働履歴を受信する(ステップS343)。
生産履歴サーバ35は、対象基板100の基板情報に関連付けて、第2工程の通過履歴および装置稼働履歴を登録する(ステップS344)
そして、生産履歴サーバ35は、第3工程の通過履歴および装置稼働履歴を受信する(ステップS345)。
生産履歴サーバ35は、対象基板100の基板情報に関連付けて、第3工程の通過履歴および装置稼働履歴を登録する(ステップS346)。
以上が、生産履歴サーバ35による生産履歴登録処理に関する説明である。
以上のように、本実施形態においては、基板の識別装置から送られてきた基板通過履歴と、各種の処理装置から送られてきた装置稼働履歴とを生産履歴サーバによって組み合わせて登録する。その結果、本実施形態によれば、基板製造工程のどの段階において基板の表面状態が変化してもトレーサビリティを得ることができる。
(ハードウェア)
最後に、本実施形態に係る識別装置を可能とするハードウェア構成について説明する。図29は、本発明の各実施形態に係る識別装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図29には、プロセッサ91、コンバータ93、主記憶装置95、入出力インターフェース96、画像処理回路97および記憶媒体98がバス99によって接続されたハードウェア構成を示す。なお、図29は、各実施形態に係る識別装置を実現するための一構成例であって、装置のスペックに合わせて任意の装置や回路を追加・削除してもよい。
プロセッサ91は、記憶媒体98等に格納されたプログラムを主記憶装置95等に展開し、展開されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサ91は、一般的な中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成すればよい。特徴量抽出部14や照合判定部15の機能の一部は、プロセッサ91に負わせればよい。
コンバータ93は、外部から入力されたアナログデータをデジタル変換する機能を有する回路である。コンバータ93は、アナログデータをデジタル変換するA/D(Analog/Digital)変換コンバータを有する。なお、コンバータ93は、内部で生成されたデジタルデータをアナログ変換する機能を有してもよい。
主記憶装置95は、プロセッサ91が扱うプログラムやデータを一時的に展開するための記憶領域を有する装置である。例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)を主記憶装置95として構成することができる。
入出力インターフェース96は、外部または内部の入出力機器との間のデータ授受を行うインターフェースである。例えば、入出力インターフェース96は、カメラ131やセンサ132と接続される。また、入出力インターフェース96は、図示しないキーボードやマウスなどの入力装置、図示しないディスプレイやプリンタなどの出力装置、外部のコンピュータやサーバなどに繋がるネットワークと接続されてもよい。
画像処理回路97は、画像データに対して種々の処理を行う回路である。画像処理回路97は、例えば、撮像データに対して、暗電流補正や補間演算、色空間変換、ガンマ補正、収差の補正、ノイズリダクション、画像圧縮などの画像処理を実行する集積回路である。なお、画像処理回路97は、上述の画像処理以外の処理を実行できるように構成してもよい。特徴量抽出部14が画像データを処理する際に画像処理を行う場合、その機能の一部を画像処理回路97に負わせればよい。
記憶媒体98は、プログラムやデータを記憶する媒体である。例えば、ハードディスクなどを記憶媒体98として用いることができる。また、ROM(Read Only Memory)を記憶媒体98として構成してもよい。格納部12の機能は、主記憶装置95に負わせればよい。記憶媒体98は、例えばSD(Secure Digital)カードやUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの半導体記録媒体などで実現してもよい。また、記憶媒体98は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体やその他の原理を用いた記録媒体によって実現してもよい。
以上が、本発明の実施形態に係る識別装置を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図29のハードウェア構成は、本実施形態に係る識別装置を可能とするためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、本実施形態に係る識別装置による処理をコンピュータに実行させる処理プログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、本発明の実施形態に係る処理プログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。