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JP2017071708A - 熱硬化性エポキシ樹脂組成物及び光半導体装置 - Google Patents

熱硬化性エポキシ樹脂組成物及び光半導体装置 Download PDF

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JP2017071708A
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紀仁 ▲高▼松
Norihito Takamatsu
吉弘 堤
Yoshihiro Tsutsumi
吉弘 堤
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Shin Etsu Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】耐クラック性が良好で、強度が高く、バリの長さや線熱膨張係数が小さい熱硬化性エポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】
(A)1分子中にエポキシ基を1個以上及び脂環構造を1個以上有する脂環式エポキシ化合物と(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物とが反応したプレポリマー、(C)無機充填材(ただし下記(D)白色顔料を除く)、(D)白色顔料、(E)(メタ)アクリルブロック共重合体、及び、(F)硬化促進剤を含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物及び該組成物の硬化物で成形した光半導体装置に関する。
近年、LED(Light Emitting Diode)等の光半導体素子は、液晶バックライト、信号機、電光掲示板など幅広い用途で利用されている。特に、白色LEDは、消費電力が少ないことから、白熱電球に替わる新たな照明器具として急速に開発が進んでいる。
LED等の半導体・電子機器装置は、LEDチップから放出される光の取り出し効率を高めるため、白色リフレクター材料を含有する。このようなリフレクター材料としては現在、高耐熱性、高耐光性及び高強度のトリアジン誘導体エポキシ樹脂であるトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートがよく用いられている(特許文献1参照)。しかしながら、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートは結晶性が高いため、溶解性が悪くハンドリング性も悪い。さらにトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートは毒性を有するため、欧州の環境規制候補物質にリスト化されており、今後使用が困難になる懸念がある。このため、新たなポリマー骨格を有する白色リフレクター材用エポキシ樹脂開発が望まれている。
脂環式エポキシ基を含有する種々の構造のエポキシ樹脂及びそれを用いた光半導体ケース用樹脂組成物が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、脂環式エポキシ樹脂は、線熱膨張係数が大きく、成型した基板に大きな反りが生じてしまう。また、クラックが生じやすいという問題点もある。
脂環式エポキシ樹脂にシリコーンゲルを添加した光半導体ケース用樹脂組成物が開示されている(特許文献3参照)。しかし、該発明によると、耐熱性は向上しているが、耐クラック性や線熱膨張係数は改善されていない。
また、脂環式エポキシ樹脂にウィスカーを添加したエポキシ樹脂組成物が開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、該発明によると、耐クラック性が向上しているが、成型時の流動性が低下し、成型性が悪化している。
WO2007/015427号公報 WO2011/078322号公報 特開2014−162877号公報 特開2014−156591号公報
従って、本発明は、耐クラック性が良好で、強度が高く、バリの長さや線熱膨張係数が小さい熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の脂環式エポキシ樹脂と(メタ)アクリルブロック共重合体を含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、流動性があり、硬化物の耐クラック性が良好で、強度が高く、バリの長さや線熱膨張係数が小さいことを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、下記の熱硬化性樹脂組成物及び光半導体装置を提供するものである。
[1]
(A)1分子中にエポキシ基を1個以上及び脂環構造を1個以上有する脂環式エポキシ化合物と(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物とが反応したプレポリマー、
(C)無機充填材(ただし下記(D)白色顔料を除く)、
(D)白色顔料、
(E)(メタ)アクリルブロック共重合体 及び
(F)硬化促進剤
を含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
[2]
前記(A)成分の脂環式エポキシ化合物が、25℃で固体状である[1]に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
[3]
前記(A)成分の脂環式エポキシ化合物が下記式(1)で表されるものである[1]又は[2]に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
Figure 2017071708
(式(1)中、Rはm価のアルコールからm個の水酸基を除いた炭素数1〜30の飽和炭化水素基を示す。mは1〜30の数を示す。nは1〜100の数を示す。Rは独立して水素原子、炭素数1〜30の飽和炭化水素基、炭素数2〜30の不飽和炭化水素基又は炭素数2〜30のエポキシ基から選択される基を示すが、Rの少なくとも1つはエポキシ基である。)
[4]
(D)白色顔料が二酸化チタン、希土類酸化物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び硫酸バリウムから選択される1種又は2種以上である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
[5]
更に(G)酸化防止剤として、フェノール系、リン系及び硫黄系酸化防止剤から選択される1種又は2種以上を含有する[1]〜[4]のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
[6]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物からなる光半導体素子ケース。
[7]
[6]に記載の光半導体素子ケースを備える光半導体装置。
[8]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物を備える半導体装置。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、成型物の強度、耐クラック性及び基板に対する成型性が高く、バリの長さ、線熱膨張係数及び反りも小さい。従って、これらの特徴を有する組成物は、光半導体素子ケース及びこれを備える光半導体装置に極めて有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(A)脂環式エポキシ化合物
本発明で用いられる(A)脂環式エポキシ化合物は、脂環構造とエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、1分子中にエポキシ基を1個以上、及び脂環構造を1個以上有することを特徴とする。なお、3,4−エポキシシクロヘキシル基のように、シクロアルキル基とオキシラン環が縮合環を形成したようなエポキシ基の場合は、エポキシ基と脂環構造を1個ずつ有しているとみなす。
該エポキシ化合物は、後述する炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物を硬化剤としてエポキシ樹脂組成物となる。また、脂環式エポキシ化合物には、脂環構造に単結合又はアルキレン基のような2価の有機基を介してエポキシ基が結合している構造を有するエポキシ樹脂を含む。
このような脂環式エポキシ化合物としては、特に限定されないが、水添型ビスフェノールA型エポキシ化合物、シクロへキセンオキシド型エポキシ化合物、ノルボルネンオキシド型エポキシ化合物、アダマンタン骨格含有エポキシ化合物、アルコール付加型エポキシ化合物等が挙げられる。具体的には、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシルや1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン及びこれらのジエポキシドと多価アルコールとの付加物、2,4−ジ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,4,6,6,8,8−ヘキサメチル−シクロテトラシロキサン、4,8−ジ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,2,4,6,6,8−ヘキサメチル−シクロテトラシロキサン、2,4−ジ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−6,8−ジプロピル−2,4,6,8−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、4,8−ジ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,6−ジプロピル−2,4,6,8−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、2,4,8−トリ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,4,6,6,8−ペンタメチル−シクロテトラシロキサン、2,4,8−トリ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−6−プロピル−2,4,6,8−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,4,6,8−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、エポキシ基を有するシルセスキオキサン等の分子内に2個以上のエポキシ基を有する環状ポリシロキサン化合物、下記式(1)、(2)及び(I−1)〜(I−9)で示されるエポキシ化合物などが挙げられる。中でも、1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサンや3’,4’−エポキシシクロへキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、及び下記式(1)で表される化合物などが好ましく、中でも下記式(1)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 2017071708
式(1)中、Rはm価のアルコールからm個の水酸基を除いた炭素数が、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜7の飽和炭化水素基を示す。mは好ましくは1〜30、より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜6の数を示す。ただし、mはRで示される基の炭素数を超えない。nは好ましくは1〜100、より好ましくは1〜30の数を示す。Rは独立して水素原子、炭素数1〜30の飽和炭化水素基、炭素数2〜30の不飽和炭化水素基、炭素数2〜30のエポキシ基から選ばれる基を示す。ただし、Rの少なくとも1つはエポキシ基である。
Figure 2017071708
(式(2)中、pは1〜100の数を示す。)
Figure 2017071708
(式(I−4)及び(I−6)中、l及びmはそれぞれ1〜30の数、Rは炭素数1〜8のアルキレン基を示す。)
Figure 2017071708
(式(I−8)及び(I−9)中、n1〜n6はそれぞれ1〜30の数を示す。)
本発明の脂環式エポキシ化合物の性状は、固体状、液状など特に限定されないが、バリの抑制や取扱いの容易さなどの観点から、25℃において固体状であることが好ましい。また、該脂環式エポキシ化合物は、1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物は、該組成物中に(A)成分を、1〜95質量%含有することが好ましく、3〜40質量%含有することがより好ましく、5〜20質量%含有することがさらに好ましい。
(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物
本発明で用いられる(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物は、硬化剤として使用される。該酸無水物としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物などの脂環式酸無水物系、コハク酸無水物、2−メチルコハク酸無水物、2,3−ジメチルコハク酸無水物などの脂式酸無水物系が挙げられ、これらの中でも、脂環式系酸無水物を用いるのが好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いるのが特に好ましい。これらの酸無水物系硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
本発明では、(A)成分及び(B)成分は予め混合し反応させて、プレポリマー化したものを用いる。本発明において、「プレポリマー化した」とは、JIS Z 8803:2011の規格に準拠してコーンプレート粘度計で測定した120℃での粘度が0.01Pa・s以上であれば、軟化点が30〜100℃、好ましくは40〜80℃であるような25℃で固体の生成物を得ることができ、反応を追跡し前記粘度であればプレポリマー化されたとみなすことができる。(A)成分及び(B)成分の配合比としては、(B)成分の酸無水物1モルに対して、(A)成分のエポキシ基が0.8〜2.5モルとなるように配合するのが好ましい。
プレポリマー化の条件としては、攪拌機を備えたフラスコなどの装置を用いて(A)成分と(B)成分を予備混合し、温度:50〜200℃、好ましくは70〜120℃、更に好ましくは80〜100℃で、時間:0.05〜300時間、好ましくは0.05〜10時間、更に好ましくは0.5〜4時間反応させることによってプレポリマー化する。その後、該プレポリマーを室温まで冷却し、室温で固形のプレポリマーを粉砕して、熱硬化性エポキシ樹脂組成物に配合する。
(C)無機充填材
本発明で用いられる(C)無機充填材としては、通常エポキシ樹脂組成物やシリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。ただし、後述する(D)白色顔料は(C)成分として用いない。(C)成分の無機充填材の例としては、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ系微粉末や中空シリカというケイ素系充填材、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどのアルミニウム系充填材、窒化珪素、ボロンナイトライドなどの金属窒化物系充填材、更にガラス繊維、ウォラステナイトなどの繊維状充填材、三酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中でもケイ素系充填材を用いるのが好ましく、溶融シリカを用いるのが特に好ましい。これら無機充填材は1種類を単独で使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。また、充填材の平均粒径や形状は特に限定されないが、流動性の観点から、球状のものが好ましい。
上記無機充填材は、樹脂と無機充填材との結合強度を強くするため、シランカップリング剤(例えば、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基等の官能性基で置換された1価炭化水素基を含有するアルコキシシラン及び/又はこれらの部分加水分解縮合物)、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。これらのカップリング剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を用いても良い。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。なお、前述のシランカップリング剤は後述のその他の添加剤の(I)成分として添加されてもよい。
(C)成分の無機充填材の配合量は、(A)脂環式エポキシ化合物及び(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物の合計100質量部に対し、50〜2,500質量部とすることが好ましく、200〜1,500質量部とすることが特に好ましい。
(D)白色顔料
本発明で用いられる(D)白色顔料としては、二酸化チタン、希土類酸化物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどを用いることができ、中でも二酸化チタンを用いることが好ましい。二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型のどちらを用いてもよい。また、平均粒径や形状も特に限定されない。上記二酸化チタンは、樹脂や無機充填材との相溶性、分散性を高めるため、AlやSiなどの含水酸化物等で予め表面処理することができる。二酸化チタンの充填量は、組成物全体の2〜30質量%が好ましく、特に5〜20質量%が好ましい。2質量%未満では十分な白色度が得られず、30質量%を超えると未充填やボイド等の成形性の低下が生じる虞がある。
(E)(メタ)アクリルブロック共重合体
本発明で用いられる(E)(メタ)アクリルブロック共重合体は、(メタ)アクリルモノマーを重合してできる(メタ)アクリルポリマーをセグメントとして複数個有するブロック共重合体である。重合に用いるモノマーとしては例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(t−ブチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、などの(メタ)アクリル酸誘導体;無水マレイン酸、シトラコン酸、無水ハイミック酸等の環状(メタ)アクリル酸無水物等が挙げられる。また各(メタ)アクリルポリマーセグメントは、これらのモノマーを2種類以上重合してできるものを用いてもよく、アクリル酸系モノマーとメタクリル酸系モノマーとを併用し、共重合させてもよい。
ブロック共重合体としては、AB型のジブロック共重合体のみならず、ABC型、ABA型などのトリブロック共重合体、さらに多くのセグメントを有するブロック共重合体等を使用することができる。中でも、強度や耐クラック性の観点から、AB型ジブロック共重合体やABA型トリブロック共重合体を用いるのが好ましい。また、(A)セグメントを構成するモノマーの主成分が、メタクリル酸エステル類であることが好ましく、中でもメタクリル酸メチルモノマーであることが特に好ましい。また、(A)セグメントを構成するモノマーは、主成分のメタクリル酸エステル類に加えて、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリルアミドなどの極性基を有した(メタ)アクリル酸系モノマーも含有していることがさらに好ましい。また、(B)セグメントを構成するモノマーの主成分が、アクリル酸エステル類であることが好ましく、中でもアクリル酸n−ブチルモノマーであることが特に好ましい。さらに(メタ)アクリルブロック共重合体全体の(B)セグメント割合は、特に限定されないが、20〜90質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることが特に好ましい。
これらの(メタ)アクリルブロック共重合体は、1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。また、本発明の(メタ)アクリルブロック共重合体は、公知慣用の方法で製造されたものを用いることができ、商品名「Nanostrength M52N」、「Nanostrength D51N」(以上アルケマ社製)などの市販品を使用することもできる。
これらのアクリルブロック共重合体の配合量は、組成物全体の0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%の範囲内で配合することが好ましい。配合量が0.05質量%未満だと、耐クラック性能が不十分となり、10質量%を超えるとTgが低下してしまう虞がある。
(F)硬化促進剤
本発明で用いられる(F)硬化促進剤としては、エポキシ樹脂組成物の硬化促進剤として公知のものが使用でき、特に限定されない。(F)成分の硬化促進剤は、例えば、第三級アミン類、イミダゾール類、それらの有機カルボン酸塩、有機カルボン酸金属塩、金属−有機キレート化合物、芳香族スルホニウム塩、有機ホスフィン化合物類、ホスホニウム化合物類等のリン系硬化促進剤、これらの塩類等が挙がられる。これらの硬化促進剤は1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ホスホニウム化合物の塩類が好ましく、第四級ホスホニウムブロマイドが特に好ましい。また、硬化促進剤の使用量は、組成物全体の0.05〜5質量%、特に0.1〜2質量%の範囲内で配合することが好ましい。
その他の添加剤
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。該添加剤としては、例えば、酸化防止剤、シランカップリング剤、低応力剤、離型剤、ハロゲントラップ剤等が挙げられる。
(G)酸化防止剤
本発明のエポキシ樹脂組成物には、酸化防止剤を配合することができる。この酸化防止剤は、フェノール系、リン系及び硫黄系酸化防止剤の何れでも使用でき、具体例としては、以下のような酸化防止剤が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられ、中でも3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチルが好ましい。
リン系酸化防止剤としては、亜リン酸トリイソデシル、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルアルキル、亜リン酸フェニルジアルキル、亜リン酸トリ(ノニルフェニル)、亜リン酸トリラウリル、亜リン酸トリオクタデシル、トリフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホネート等が挙げられ、中でもジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトが好ましい。
また、硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。酸化防止剤の配合量は、通常、(A)脂環式エポキシ化合物及び(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物の合計100質量部に対して10質量部以下(0〜10質量部)程度とすればよいが、(A)脂環式エポキシ化合物及び(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部、特に0.03〜5質量部とすることが好ましい。配合量が0.01質量部未満であると、酸化防止効果が得られず、配合量が10質量部を超えると、硬化阻害を起こし、十分な硬化性、強度を得ることができない虞がある。
(H)離型剤
本発明の組成物には、成形時の離型性を高めるために離型剤を配合することができる。離型剤としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、ステアリルステアレート、グリセリンモノオレートなどの脂肪酸エステル系離型剤;PTFEパウダー、ETFEパウダーなどのフッ素ポリマー系離型剤;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィン系離型剤;カルナバワックス、パラフィンワックスなどの天然品離型剤などが挙げられる。これらの離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。離型剤の配合量は、通常、(A)脂環式エポキシ化合物と(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物の合計100質量部に対して6質量部以下(0〜6量部)程度が好ましい。
(I)シランカップリング剤
本発明の組成物には、接着性の向上を目的として、シランカップリング剤を配合することができる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。シランカップリング剤の配合量は、通常、(A)脂環式エポキシ化合物と(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物の合計100質量部に対して2質量部以下(0〜2質量部)程度が好ましい。
組成物の調製方法及び成形方法
本発明のエポキシ樹脂組成物を成形材料として調製する場合の方法としては、該(A)成分と(B)成分を混合し反応させてプレポリマー化したものに、(C)〜(F)成分の各成分、その他の添加物を所定の組成比で加え、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕してエポキシ樹脂組成物の成形材料とする方法が挙げられる。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて成形を行う場合、トランスファー成形、インジェクション成形、圧縮成形などが挙げられるが、最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられる。なお、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の成形温度は150〜185℃が好ましく、時間は通常30〜240秒でよい。必要に応じて、後硬化(ポストキュアー)を行ってもよく、その場合の温度は150〜185℃が好ましく、時間は2〜24時間でよい。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
本願実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
(A)エポキシ樹脂
(A−1)脂環式エポキシ化合物
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(商品名:EHPE−3150、ダイセル(株)、エポキシ当量180)
(A−2)トリアジン誘導体エポキシ樹脂
トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(商品名:TEPIC−s、日産化学(株)、エポキシ当量100)
(B)酸無水物
(B−1)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物系硬化剤
メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名:リカシッドMH、新日本理化(株))
(B−2)芳香族系酸無水物系硬化剤
無水フタル酸(新日鉄住金化学(株))
(C)無機充填材
(C−1)シリカ
球状溶融シリカ(商品名:RS−8225/53C、(株)龍森)
(D)白色顔料
(D−1)二酸化チタン
二酸化チタン(ルチル型)(商品名:CR−95、石原産業(株))
(E)アクリルブロック共重合体
(E−1)(メタ)アクリルブロック共重合体
修飾トリアクリルブロック共重合体(商品名:Nanostrength M52N、アルケマ社)
(F)硬化促進剤
(F−1)リン系硬化促進剤
第四級ホスホニウムブロマイド(商品名:U−CAT5003、サンアプロ(株))
その他の添加剤
(G)酸化防止剤
(G−1)ホスファイト系酸化防止剤
ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:PEP−8、ADEKA(株))
(G−2)フェノール系酸化防止剤
オクチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロ肉桂酸(商品名:IRGANOX 1135、BAFS社)
(H)離型剤
(H−1)脂肪酸エステル系離型剤
プロピレングリコールモノベヘネート(商品名:PB−100、理研ビタミン(株))
(H−2)脂肪酸エステル系離型剤
ステリアルステアレート(商品名:SL−900A、理研ビタミン(株))
(H−3)フッ素ポリマー系離型剤
フッ素ポリマー系離型剤(商品名:ダイフリーFB962、ダイキン(株))
(I)シランカップリング剤
(I−1)メルカプト官能性アルコキシシラン
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−803P、信越化学工業(株))
(I−2)エポキシ基含有アルコキシシラン
2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン(商品名:KBM−303、信越化学工業(株))
(I−3)メタクリル基含有アルコキシシラン
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−503、信越化学工業(株))
実施例1〜7及び比較例1〜5
表1及び2に示す配合(質量部)で、まず、(A)成分及び(B)成分を加熱混合してプレポリマーを調製する。該プレポリマーを室温で粉砕し、熱二本ロールにてその他の成分と混合し、冷却、粉砕して熱硬化性エポキシ樹脂組成物(実施例1〜7及び比較例2〜5)を得た。比較例1については、プレポリマー化を行わず、直接他の成分と熱二本ロールにて混合し、冷却、粉砕して熱硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物につき、下記方法で諸特性を測定した。
<光反射率>
成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で、直径50mm、厚さ0.35mmの円形の硬化物を作製し、成形直後及び175℃×3時間保管後の反射率をエス・デイ・ジー(株)製 X−rite8200を使用して450nmの光反射率を測定した。
<室温での曲げ強度>
JIS K6911:2006規格に準じた金型を使用して、成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で成形し、175℃で3時間ポストキュアーした。ポストキュアーした試験片を室温(25℃)にて、曲げ強度を測定した。
<スパイラルフロー>
EMMI規格に準じた金型を使用して、成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で成形し、樹脂が流れる長さ(単位:inch)を測定した。
<バリ長さ>
バリ測定用金型を使用して、成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で成形し、厚さ30μmのスリットに出た樹脂の長さ(単位:mm)を測定した。
<ガラス転移温度(Tg)、Tg未満の膨張係数(CTE−1)、Tgを超える膨張係数(CTE−2)>
成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で5mm×5mm×15mmの硬化物を成形し、180℃で3時間ポストキュアーした。ポストキュアーした試験片を、TMA(熱機械分析装置)により5℃/分の速度で昇温した際の値を測定した。上記ガラス転移温度の測定において、50〜100℃の温度範囲でCTE−1を、220〜270℃の温度範囲でCTE−2を求めた。
<反りの大きさ>
成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で厚み0.2mmの銀基板の上に45mm×45mm×0.6mmの硬化物を成形し、180℃で3時間ポストキュアーした。ポストキュアーした後の基板の、硬化物の対角線における反りの大きさを測定した。
<300℃高温保管試験>
成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で、5mm×5mm×15mmの硬化物を作製した後、300℃×30分の条件で保管し、成形硬化片のクラック発生有無を確認した。そして、クラックのないものを「○」とし、クラックのあるものを「×」として耐熱性を評価した。
Figure 2017071708
Figure 2017071708
表1の実施例1から、脂環式エポキシ樹脂、酸無水物硬化剤、アクリルナノブロック共重合体をレジンとして用いたエポキシ樹脂組成物は、成型時の流動性を損ねることなく、成型物の耐クラック性が向上したことが分かる。さらに、LED基板の反りに大きな影響を与えるCTE1の値が小さくなった。また、Tg及び曲げ強度は大きく低下していなかった。
さらに表2より、脂環式エポキシ樹脂、酸無水物硬化剤、アクリルナノブロック共重合体をレジンとして用いたエポキシ樹脂組成物は、実施例7のように(A)成分、(B)成分、及び(E)成分の合計100質量部に対し、(C)成分を1,280質量部配合しているフィラー量の割合が92.8%という高充填の条件でも、成型性を維持することができることが分かった。一方、比較例5ではトリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ化合物を用いて(A)成分、(B)成分、及び(E)成分の合計100質量部に対し、(C)成分を990質量部配合した条件でエポキシ樹脂組成物を製造し、成型を行ったが、成型不能であった。このため、実施例6や7と比較して、高充填の条件での成型性が劣る。

Claims (8)

  1. (A)1分子中にエポキシ基を1個以上及び脂環構造を1個以上有する脂環式エポキシ化合物と(B)炭素−炭素二重結合を有さない酸無水物とが反応したプレポリマー、
    (C)無機充填材(ただし下記(D)白色顔料を除く)、
    (D)白色顔料、
    (E)(メタ)アクリルブロック共重合体 及び
    (F)硬化促進剤
    を含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
  2. (A)成分の脂環式エポキシ化合物が、25℃で固体状である請求項1に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
  3. (A)成分の脂環式エポキシ化合物が下記式(1)で表されるものである請求項1又は2に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2017071708
    (式(1)中、Rはm価のアルコールからm個の水酸基を除いた炭素数1〜30の飽和炭化水素基を示す。mは1〜30の数を示す。nは1〜100の数を示す。Rは独立して水素原子、炭素数1〜30の飽和炭化水素基、炭素数2〜30の不飽和炭化水素基又は炭素数2〜30のエポキシ基から選択される基を示すが、Rの少なくとも1つはエポキシ基である。)
  4. (D)白色顔料が二酸化チタン、希土類酸化物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び硫酸バリウムから選択される1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
  5. 更に(G)酸化防止剤として、フェノール系、リン系及び硫黄系酸化防止剤から選択される1種又は2種以上を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物からなる光半導体素子ケース。
  7. 請求項6に記載の光半導体素子ケースを備える光半導体装置。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物を備える半導体装置。


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