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JP2017049251A - 包埋媒体内に組織サンプルを包埋する方法及び自動装置 - Google Patents

包埋媒体内に組織サンプルを包埋する方法及び自動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】自動化された様式で実行可能であり、組織サンプルが予め定義された配向を示す包埋ブロックの信頼できる作製が可能な方法を提供する。【解決手段】組織サンプルは、容器の座部に対して組織サンプルを押し付ける保持要素によって、容器内で意図した配向で保持される。64℃を上回る温度、特に65℃〜67℃の範囲内、又は66℃の温度を有する液状包埋媒体が、容器内へ注入され、そして容器の座部が冷却される。組織サンプルと保持要素とが互いに離れるような移動によって隔離動作が実行され、ここで該隔離動作の間に保持要素が移動する包埋媒体の層が隔離動作の間に、54℃〜64℃の範囲、特に60℃の温度を有し、及び/又は、保持要素に対して直接的に隣接する包埋媒体の部分が、隔離動作の間に、54℃〜64℃の範囲、特に60℃の温度を有する。【選択図】図6

Description

本発明は、包埋媒体内に組織サンプルを包埋する方法に関する。
本発明は、更に、そのような方法を実行する自動装置、そして、座部を有する容器及び座部上の少なくとも1つの組織サンプルを保持する保持要素を含む組織カセットのそのような方法の実行における使用に関連する。
組織学的な検査のために生物学的な組織サンプルを処理する仕方が知られている。先ず、組織サンプルのトリミング及びカセット内への導入が達成される。次に、サンプルは、顕微鏡検査のために複数の化学的処理によって調製される。この文脈において、サンプルは先ず固定媒体(メディウム)を用いて固定され、サンプル中に存在する水が除去され、そして、更に任意的に処理ステップが完遂される。サンプル内への浸潤媒体、通常はパラフィンの浸潤はこのマルチステップ処理の最後に来る。
その後に、サンプルは、通常手動で包埋媒体、例えばパラフィン内に包埋される。このために、サンプルはモールド(型枠)内に置かれ、モールドには最初に液状包埋媒体が充填される。包埋媒体は、この時に硬化する。結果として包埋ブロックが形成され、その中でサンプルが包埋媒体によって定位置的に包囲及び固定される。
包埋媒体の硬化後には、サンプルを含む包埋ブロックはミクロトームを用いて個々の薄いサンプル切片へと切片化することができ、その後のステップにおいて染色され、そして、顕微鏡を用いて検査することができる。この目的のため、特に適切な切片化を確実にするため、及び組織サンプルを組織サンプルのための目的のサンプル層に沿って切片化できることを確実にするために、組織サンプルが包埋ブロック内で特定の配向を有することは重要である。
包埋プロセスを自動化するためには、包埋作業の間に包埋容器に対して相対的な意図した配向で組織サンプルを維持する必要がある。組織サンプルをその配向で保持する保持要素を使用する場合には、保持要素が必然的に組織サンプルと一緒に包埋されるという問題点が存在し、その後のサンプル切片の作製を妨害し、及び/又はミクロトームブレードにダメージを与えることすらある。
EP2 322 938 B1は、組織サンプルを包埋するように構成される自動装置を開示するが、組織サンプルは非常に特別な担体上に配置しなければならない。該担体は、包埋されるサンプルと一緒にミクロトームによって切片化されることに適する。該装置はいくつかの不動のホルダを含み、各ホルダは、包埋作業の全期間にわたって、1つの特別な担体を保持するように構成される。一度サンプルが実装された担体がホルダに位置すると、担体にはディスペンサから給送された包埋媒体が充填される。次に、追加の機能を実行するための冷却ユニットとしても構成されるホルダによって、担体が冷却される。
切片化可能な担体の代わりに、DE10 2013 204 651 A1から知られるものなどの特別な組織カセットを使用することも可能である。この文献は、特別な切片化可能な担体が必要でない包埋プロセスを開示する。この包埋プロセスにおいて、パラフィンが組織カセットに注入され、次に組織カセットは、組織カセットの底におけるパラフィンが冷却され始めるように冷却面に対して保持される。この領域におけるパラフィンの冷却の結果として、固体化パラフィンの第1の薄層が組織サンプルを座部に付着させる。残りのパラフィンが融解している間に、引戻要素(Aufbewahrungsbauteil)が組織サンプルから第1の組織係合面を引き離す。
欧州特許公開EP2 322 938 B1 独国特許公開DE10 2013 204 651 A1
以下の分析は、本発明者により与えられる。
DE10 2013 204 651 A1は、第1の組織係合面を有する支持要素と少なくとも1つのプレロード要素(Vorspannelement)を含む、組織サンプルを保持するための組織カセットを具体的に開示する。第1の組織係合面は、プレロード要素のおかげで移動可能に支持要素に固定される。座部は第2の組織係合面を含み、内部スペース領域を画成するために支持要素に係合するように構成される。ここに第1及び第2の組織係合面は互いに対向する。プレロード要素は、内部スペース領域において第1の組織係合面と第2の組織係合面の間に組織サンプルを保持するために、第1の組織係合面が第2の組織係合面に対して付勢されるように構成される。引戻要素は、支持要素に対して結合され、組織サンプルと第1の組織係合面又は第2の組織係合面の何れかとの間隙を形成するために、第1の組織係合面を引き戻して、プレロード要素を圧縮するように構成される。
しかしながら、この種類の組織カセットの使用は、組織サンプルを実際に使用不可能にし得る多数の阻害事象も生じ得るので実施の上で容易ではない。例えば、引戻動作の中で組織サンプルが不注意に移動する又はダメージを受けることも起こり得るし、あるいは、組織係合面を十分に又は全く引き戻せないことすらある。
従って、本発明の目的は、自動化された様式で実行可能であり、組織サンプルが予め定義された配向を示す包埋ブロックの信頼できる作製が可能な方法を提供することである。
第1の視点において、以下のステップを含むことを特徴とする方法が提供される:
a.容器の座部に対して組織サンプルを押し付ける保持要素によって、容器内において組織サンプルを意図した配向で保持すること、
b.64℃を上回る温度、特に65℃〜67℃の範囲内、又は66℃の温度の液状包埋媒体を容器内へ注入すること、
c.容器の座部を冷却すること、
d.組織サンプルと保持要素とが互いに離れるような移動による隔離動作を実行すること、ここで該隔離動作の間に保持要素が移動する包埋媒体の層(複数)が、隔離動作の間に、54℃〜64℃の範囲、特に60℃の温度を有する、及び/又は、保持要素に対して直接的に隣接する包埋媒体の部分(複数)が、隔離動作の間に、54℃〜64℃の範囲、特に60℃の温度を有する。
該方法において、隔離動作を実行する間に、包埋媒体が平均54℃〜64℃の範囲、特に60℃の温度を有することが好ましい。
また、包埋媒体がパラフィンであるか、包埋媒体がパラフィンを含むか、又は包埋媒体が主にパラフィンを含むことが好ましい。
また、a.包埋媒体が、注入の際に、64℃を上回る温度及び/又は65〜67℃の範囲の温度及び/又は66℃の温度を有し、及び/又は、
b.包埋媒体が、注入の際に、包埋媒体の滴下点よりも少なくとも4℃高い温度を有する及び/又は包埋媒体の滴下点よりも5〜7℃高い温度を有する及び/又は包埋媒体の滴下点よりも6℃高い温度を有することが好ましい。
また、a.包埋媒体又は容器又は保持要素が、予め定義された又は予め定義可能な活動化温度に到達したときに隔離動作が開始され、及び/又は、
b.包埋媒体又は容器又は保持要素が、予め定義された又は予め定義可能な活動化温度に到達したときに隔離動作が自動的に開始されることが好ましい。
また、a.包埋媒体又は容器又は保持要素の温度が温度センサを用いて測定されるか、又は
b.包埋媒体又は容器又は保持要素の温度が温度センサを用いて測定され、かつ、測定された温度が活動化温度に到達するとすぐに隔離動作が、特に自動的に、開始されることが好ましい。
また、保持要素を移動させる保持機構がなくとも1つの形状記憶要素を含むことが好ましい。
また、a.隔離動作が、冷却の開始後に、予め定義された又は予め定義可能な期間が経過するとすぐに開始される、及び/又は
b.隔離動作が、冷却の開始後に、予め定義された又は予め定義可能な期間が経過するとすぐに自動的に開始されることが好ましい。
また、冷却の開始と隔離動作の開始の間の期間が1秒〜4秒の範囲内、又は2秒〜3秒の範囲であることが好ましい。
また、隔離動作が、予め定義された又は予め定義可能な時間窓の中で開始され、及び/又は予め定義された又は予め定義可能な期間にわたって継続することが好ましい。
また、時間窓が17〜20秒の長さであり、及び/又は期間が17〜20秒間継続することが好ましい。
また、容器が座部おいて専ら冷却される(応力ひび割れ:Spannungsrisse)に、及び/又は、容器を冷却要素に対して熱伝導性の接触をさせることによって座部が冷却されることが好ましい。
また、保持要素が、包埋媒体の中に位置したままで隔離動作が終了する、及び/又は、保持要素も組織サンプルと一緒に包埋されることが好ましい。
また、第2の視点において、組織サンプルを処理する方法であって、
組織サンプルを容器内に導入し、そして、容器内に位置したままで組織サンプルを少なくとも1つの固定剤を用いて固定し、及び/又は、浸潤媒体、特にパラフィンが浸潤し、
固定及び/又は浸潤の後に組織サンプルが容器内に残り、そして上記のいずれかの方法によってブロック包埋される、
ことを特徴とする方法、が提供される。
また、第3の視点において、組織カセットの使用であって、
組織カセットが座部を有する容器を含み、かつ、座部上で少なくとも1つの組織サンプルを保持する保持要素を含むことを特徴とする、上記のいずれかの方法を実行する上での組織カセットの使用、が提供される。
また、第4の視点において、上記のいずれかの方法を実行する自動装置が提供される。
本発明によれば、自動化された様式で実行可能であり、組織サンプルが予め定義された配向を示す包埋ブロックの信頼できる作製が可能な方法が提供される。
図1は、本発明の実施形態の一例のステップを示す。 図2は、本発明の実施形態の一例のステップを示す。 図3は、本発明の実施形態の一例のステップを示す。 図4は、本発明の実施形態の一例のステップを示す。 図5は、本発明の実施形態の一例のステップを示す。 図6は、容器の中へ注入される包埋媒体の温度の経時的な変化を示し、本発明の方法の一例を実行する文脈における適切な期間を示す。
以下にさらに図面を参照しつつ実施例について詳述する。なお、本願の特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるための補助であり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
本発明は、一方では容器に対して相対的な配向での組織サンプルの1側面の支持が常に確保され、そして、他方では、組織サンプルの位置を変えることなく、又は、組織サンプルにダメージを与えることすらなく、保持要素を包埋媒体内に固定せずに除去できることが同時に保証される、という非常に特異的な利点を有する。
本発明によれば、保持要素の位置における包埋媒体の温度が、54℃〜64℃の範囲内、特に60℃のままである場合には、保持要素を組織サンプルから除去できるように、冷却された座部に隣接する包埋媒体の部分が既に十分に固化されて、組織サンプルをその位置においてかつ意図した配向で保持することが認められている。この温度範囲では、組織サンプルを破壊せずに、特に、組織サンプルの位置又は配向に対して影響を及ぼすことなく、又は組織サンプルに対してダメージを与えることなく、又は硬化プロセスの質にネガティブな影響を与えることなく、保持要素を除去できるように、包埋媒体は十分に液状のままである。特に、隔離動作を実行する間に包埋媒体が平均54℃〜64℃の範囲、特に60℃の温度を有するという条件が特に有利であり得る。
上記の温度での個々の方法ステップの実行は、特に、包埋媒体としてパラフィンを使用する場合に、特にパラフィンが50℃〜60℃の滴下点(Tropfpunkten)を有する場合に有利である。異なる滴下点を有する包埋媒体を使用する場合には、個々の方法ステップを実行する温度は、それらに適合するものを採用することができる。
特に、座部に対して直接的に隣接する包埋媒体の層が52℃の温度に到達すると直ぐに、隔離動作が特に自動的に開始される、という条件は有利であり得る。本発明によれば、これは保持要素の位置における包埋媒体の温度が54℃〜64℃の範囲、特に60℃の場合であると認識されている。
一度隔離動作を完全に実行すると、完全に硬化するまで包埋媒体を更に冷却することができ、そして、結果として生じた包埋ブロックを容器から取り出すことができる。
特に有利な実施形態において、保持要素は、包埋媒体から完全には取り出されない。むしろ、保持要素が包埋媒体内に位置したままの間に隔離動作を終了することは有利であり得る。つまり、保持要素も包埋される。この種類の実施形態は、包埋媒体を冷却することによって結果的に生じる包埋ブロックに対して保持要素が追加の力学的(メカニカル)な安定性を付与する、という非常に特異的な利点を有する。この結果は、その後のクランプ処理及び/又はミクロトームを用いた切片化処理の際に、包埋ブロックの意図しない変形が防止されるという点で有利である。クランプ処理のために、保持要素に対して連結され、包埋ブロックから突出する突起物を使用することも可能である。しかしながら、隔離動作によって組織サンプルから遠ざかるように保持要素が移動されているということは、組織切片を作製するときに安定化のための保持要素を切断する必要がないという点でも同時に有利である。
本発明は、各ケースにおいて単一の組織サンプルを包埋する場合に限定されない。その代わりに、記載した様式において、同一の容器の中でいくつかの組織サンプルを同時に包埋することも可能である。この出願の文脈において、「組織サンプル(単数)」が包埋されると記載される場合には、この記載は本発明の説明を単に簡潔化するためのものであり、該記載によるいずれかの限定との関連を意図するものではない。
包埋媒体は、例えば、パラフィンであり得るし、又は、特に主にパラフィンを含むことができる。
本発明の方法のとりわけ非常に有利な実施形態において、特にパラフィンが50℃〜60℃の範囲の滴下点を有する場合に、包埋媒体は、注入の際に64℃を上回る温度を有する。このことは、容器内の利用可能なスペース全体へ、包埋媒体を、その冷却の前に充填することを確実にする。注入温度は65〜67℃の範囲の温度、特に66℃の温度であることが特に有利である。そのような温度は、組織サンプルの全ての側面が確実に包埋媒体によって取り囲まれることを保証する。更に、座部の領域における包埋媒体の硬化に必要な時間間隔、及びその後に残りの領域における硬化が完了するのに必要な時間間隔は、特に短い。それによって高いスループット速度が達成され、例えば単位時間あたりに自動装置によって特に多数の組織サンプルを包埋することができる。
滴下点は、異なるタイプの包埋媒体毎に異なり得る。例えば、DE10 2009 035 019A1に記載される、52℃〜58℃の範囲の滴下点を有する包埋媒体が存在する。従って、注入の際に、包埋媒体は、包埋媒体の滴下点を少なくとも4℃上回る温度を有する場合に、非常に一般的に有利である。特に、注入の際に包埋媒体の滴下点を5〜7℃上回る及び/又は包埋媒体の滴下点を6℃上回る温度を包埋媒体が有する、という条件は有利であり得る。例えば、例えば、55℃の滴下点を有する包埋媒体は、特に、61℃の温度で注入することが有利であり得る。
以下の例によって説明されるように、隔離動作をどのように、特に、いつ開始することができるかに関しては種々の発展可能性が存在する。
例えば、包埋媒体、容器又は保持要素が予め定義された又は予め定義可能な活動化温度に到達した時に、隔離動作が特に自動的に開始されるという条件は、有利であり得る。この目的のためには、例えば、温度センサを用いて直接的に温度を測定することが可能である。あるいは、他のパラメータを介して温度を推定し、それによって活動化温度に到達しているか否かを確認することも可能である。特に、座部における冷却操作の開始からの時間間隔によって包埋媒体、容器又は保持要素の温度を推定することが可能である。特に、ここでは、どれくらいの期間の後に活動化温度が存在するかを確認するために、本発明の方法を実行する前に見積もり測定をしておくことができる。該期間の長さは、容器の性質及びサイズ、そして包埋媒体の性質に依存し得る。
保持要素を移動させる保持機構は、少なくとも1つの形状記憶要素を含むこともできる。形状記憶要素は、形状記憶要素が活動化温度になると直ぐに保持要素を自動的に引き戻す仕様において、特に有利である。
保持要素は、例えば、篩として構成することが有利であり得る。この仕様に構成される保持要素は、隔離動作の間に、包埋媒体が篩の開口部を通り抜けることができるという利点を有する。その有利な結果は、組織サンプルの配向に対してネガティブな影響をもたらし得た包埋媒体の乱流(Turbulenzen)が、隔離動作の間に大いに回避されることである。この種類の実施形態は、さらに、より少ない抵抗性が隔離動作に対して存在すること、及び保持要素が固定されるリスクが減少するという更なる利点を有する。
保持要素は、隔離動作を実行するために多種多様な仕方で移動させることができる。例えば、磁石によって保持要素に対して力を作用させることが可能である。この目的のために、保持要素を、少なくとも一部分が磁性材料によって作製することができる。把持部によって保持要素を水平に及び/又は垂直に移動させることも可能である。把持部は、例えば、隔離動作の実行のために保持要素に引っ掛けられるフックとして構成することができる。上述のように、隔離動作の実行のために、例えば、形状記憶ポリマーをベースとする形状記憶要素を含む保持機構が保持要素を移動させるという条件も付与することができる。
上述のように、冷却の開始時刻を時間ベース(基準時)として利用して、冷却の開始後に予め定義された又は予め定義可能な期間が経過した後に直ぐに隔離動作を開始する、及び/又は冷却の開始後に予め定義された又は予め定義可能な期間が経過した後に直ぐに隔離動作を自動的に開始する、という条件は有利であり得る。冷却の開始と隔離動作の開始との間の期間が1秒〜4秒の範囲内、又は2秒〜3秒の範囲内である場合に、特に良好な結果が達成される。
特に、保持要素が意図せずに停止しないことを確実にするために、隔離動作が完了する前に、包埋媒体を冷却して、ますます固体化させる中で、隔離動作を、予め定義された又は予め定義可能な時間窓の中で実行するべきであり、及び/又は、予め定義された又は予め定義可能な期間にわたって継続するべきである。時間窓が17〜20秒の長さである時に、及び/又は該期間が17〜20秒間継続する時に、特に良好な結果が達成される。
容器の座部の冷却は、例えば、容器を冷却要素に対して熱伝導性の接触をさせることによって有利に影響を与えることができる。冷却要素は、例えば、容器が置かれる冷却プレートであり得る。
本発明の方法を実行するために、例えば、先ず、容器の中に包埋媒体を注入すること、そして次に、例えば、冷却プレートとの接触による影響を与えることによって容器の座部を冷却することが可能である。そのような実施形態において、接触が影響される瞬間は、その経過後に隔離動作が開始される期間についての開始時刻として利用することができる。あるいは、先ず、冷却プレートとの接触に影響を与えることによって、座部上で容器を冷却し、次に、包埋媒体の中に注入することもできる。このケースでは、注入時刻、特に、注入操作が終了する時刻は、その経過後に隔離動作が開始される期間についての開始時刻として利用することができる。
非常に特異的な有利な実施形態において、容器は専ら座部において冷却される。そのような実施形態は、冷却された包埋媒体の中でのひび割れ(Spannungsrisse)が効果的に回避されるという非常に特異的な利点を有する。
上述のように、本発明の方法は、特に、組織サンプルの自動化された処理に使用することができる。特に、組織サンプルがそれらのそれぞれのターゲット配向へ保持される複数の容器の中に保持される複数の組織サンプルに関するこの文脈においては、同時に包埋することができる。この文脈において、例えば、いくつかの容器は、それぞれ、例えばマトリックス様式で、及び1平面上での共通平面の様式で、共通のホルダにおいてそれぞれ保持することができる。そのようなホルダは、例えば、いくつかの容器がそれぞれそれらの座部において同時に冷却されるように、冷却プレート上に容易に置くことができる。しかしながら、例えば、容器が積み重ね様式で配置されるホルダを使用することもできる。そのような実施形態では、個々の容器をそれらの座部において下からそれぞれ冷却するために、例えば、容器(複数)の間の隙間に係合するいくつかの冷却フィンガーを提供することができた。いくつかの容器のためのホルダの使用は、共通のホルダを操作することによって、自動装置は、同時に、いくつかの容器を運搬して、包埋媒体をそれらに充填し、そしてそれらを冷却することができるという利点を有し、このことは、スループット速度を増加させる。
本発明の方法は、特に、包埋に加えて更なる処理ステップもその前、又はその後に実行される、1の組織サンプル又はいくつかの組織サンプルを処理するより高いオーダーの方法を構成することもできる。更なる処理ステップは、特に、包埋の前に、少なくとも1つの固定剤を用いて組織サンプルを固定すること、及び/又は少なくとも1つの浸潤媒体、特にパラフィンの中に組織サンプルを湿潤させることを含むことができる。ここでは、特に、容器の中でその意図した配向で組織サンプルが配された後において更なる処理ステップも実行するという条件が可能である。従って、包埋の間に、及び少なくとも1つの上述の処理ステップの間に、組織サンプルは、それが完全に包埋されるまで同一の容器内に残る。
本発明の方法を実行するために、座部を有する容器を含み、そして座部上で少なくとも1つの組織サンプルを保持するための保持要素を含む組織カセットを使用することは特に有利である。
本発明は、模式的及び例示的に図面に記載され、以下に図面を参照しつつ記載される。同一の、又は同様に機能する要素は、通常、同一の参照符号でラベルされる。
図1は、本発明の方法の実施形態の一例を実行する第1のステップにおけるシチュエーションを示す。組織サンプル1は、容器2の座部4に対して組織サンプル1を押し付ける保持要素3によって、容器の中で意図した配向で保持される。保持要素3は、例えば、バネで付勢した篩として構成することができる。組織サンプル1が保持要素3と座部4の間にクランプされるということは、組織サンプル1をその意図した配向で保持することを確実にする。
続くステップにおいて、図2に示すように、液状包埋媒体5(特にパラフィンであり得るし、64℃を上回る温度、特に65℃〜67℃の範囲内又は66℃の温度を有する)が容器に注入される。このステップの間に、保持要素3は、組織サンプル1をその位置においてかつ意図した配向で持続的に保持する。
続くステップにおいて、容器2の座部4の冷却が、座部4を冷却要素6と接触されることによって行われる。これは図3に示される。この例において、冷却要素6は、容器2が置かれる冷却プレートとして構成される。このステップの間に、同様に、保持要素3は組織サンプル1をその位置においてかつ意図した配向で持続的に保持する。
保持要素3が位置する包埋媒体5の層が、54℃〜64℃の範囲、特に60℃の温度を有すると直ぐに、組織サンプル1と保持要素3とが互いに離れるように移動させることによる隔離動作が開始される。このことは図4に示される。このシチュエーションにおいて、座部の領域内の包埋媒体5は既に冷却されており、それによって組織サンプル1をその位置においてかつ意図した配向で保持するのに十分な程度に硬化し、そのため保持要素3による保持が不必要になっている。包埋媒体5を冷却し、徐々に固化させる過程において隔離動作が完了する前に保持要素3が固定されないことを確実にするために、予め定義された17〜20秒の時間窓の中で隔離動作を完了させる。
その後、包埋媒体5が完全に硬化して、結果として包埋ブロックが生じるまで、冷却し続けることができる。包埋媒体5は、包埋される組織サンプル1と一緒に容器2から取り出すことができる。
図6は、座部4の冷却の開始(t=0)後の保持要素3の領域において最初に66℃の温度を有する包埋媒体5の経時的な温度の変化を示し、そして、本発明の方法の実施形態の一例を実行する上での適切な期間を示す。
この実施形態の例において、隔離動作は、冷却の開始(t=0)後、第1の期間t1が経過するとすぐに開始される。第1の期間t1が1秒〜4秒の範囲内又は2秒〜3秒の範囲内であるときに、特に良好な結果が達成される。
特に、包埋媒体5を冷却し、徐々に固化させる過程において隔離動作が完了する前に保持要素3が意図せずに固定されないことを確実にするために、第1の期間t1の直後の第2の期間t2の間に隔離動作を実行し、そして完了するべきである。第2の期間が17〜20秒の長さである時に特に良好な結果が達成される。
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。なお、数値範囲の記載は明示が無い場合であっても、その間に存在する任意の数値(小数点以下も含む)ないし部分数値範囲を代表するものとする。
1 組織サンプル
2 容器
3 保持要素
4 座部
5 包埋媒体
6 冷却要素
t1 第1の期間
t2 第2の期間

Claims (16)

  1. 組織サンプル(1)を包埋媒体内に包埋する方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする方法:
    a.容器(2)の座部(4)に対して組織サンプル(1)を押し付ける保持要素(3)によって、容器(2)内において組織サンプル(1)を意図した配向で保持すること、
    b.64℃を上回る温度又は66℃の温度の液状包埋媒体(5)を容器(2)内へ注入すること、
    c.容器(2)の座部(4)を冷却すること、
    d.組織サンプル(1)と保持要素(3)とが互いに離れるような移動による隔離動作を実行すること、ここで該隔離動作の間に保持要素(3)が移動する包埋媒体(5)の層(複数)が、隔離動作の間に、54℃〜64℃の範囲の温度を有する、及び/又は、保持要素(3)に対して直接的に隣接する包埋媒体(5)の部分(複数)が、隔離動作の間に、54℃〜64℃の範囲の温度を有すること。
  2. 隔離動作を実行する間に、包埋媒体(5)が平均54℃〜64℃の範囲の温度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 包埋媒体(5)がパラフィンであるか、包埋媒体(5)がパラフィンを含むか、又は包埋媒体(5)が主にパラフィンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. a.包埋媒体(5)が、注入の際に、64℃を上回る温度及び/又は65〜67℃の範囲の温度及び/又は66℃の温度を有し、及び/又は、
    b.包埋媒体(5)が、注入の際に、包埋媒体の滴下点よりも少なくとも4℃高い温度を有する及び/又は包埋媒体の滴下点よりも5〜7℃高い温度を有する及び/又は包埋媒体の滴下点よりも6℃高い温度を有する、
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. a.包埋媒体(5)又は容器(2)又は保持要素(3)が、予め定義された又は予め定義可能な活動化温度に到達したときに隔離動作が開始され、及び/又は、
    b.包埋媒体(5)又は容器(2)又は保持要素(3)が、予め定義された又は予め定義可能な活動化温度に到達したときに隔離動作が自動的に開始される、
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. a.包埋媒体(5)又は容器(2)又は保持要素(3)の温度が温度センサを用いて測定されるか、又は
    b.包埋媒体(5)又は容器(2)又は保持要素(3)の温度が温度センサを用いて測定され、かつ、測定された温度が活動化温度に到達するとすぐに隔離動作が、特に自動的に、開始される、
    ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 保持要素(3)を移動させる保持機構がなくとも1つの形状記憶要素を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
  8. a.隔離動作が、冷却の開始後に、予め定義された又は予め定義可能な期間(t1)が経過するとすぐに開始される、及び/又は
    b.隔離動作が、冷却の開始後に、予め定義された又は予め定義可能な期間(t1)が経過するとすぐに自動的に開始される、
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 冷却の開始と隔離動作の開始の間の期間が1秒〜4秒の範囲内、又は2秒〜3秒の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 隔離動作が、予め定義された又は予め定義可能な時間窓の中で開始され、及び/又は予め定義された又は予め定義可能な期間(t2)にわたって継続することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 時間窓が17〜20秒の長さであり、及び/又は期間(t2)が17〜20秒間継続することを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 容器(2)が座部(4)において専ら冷却される(応力ひび割れ:Spannungsrisse)、及び/又は、容器(2)を冷却要素に対して熱伝導性の接触をさせることによって座部(4)が冷却されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 保持要素が、包埋媒体の中に位置したままで隔離動作が終了する、及び/又は、保持要素も組織サンプルと一緒に包埋されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 組織サンプル(1)を処理する方法であって、
    組織サンプル(1)を容器(2)内に導入し、そして、容器(2)内に位置したままで組織サンプル(1)を少なくとも1つの固定剤を用いて固定し、及び/又は、浸潤媒体が浸潤し、
    固定及び/又は浸潤の後に組織サンプル(1)が容器(2)内に残り、そして請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法によってブロック包埋される、
    ことを特徴とする方法。
  15. 組織カセットの使用であって、
    組織カセットが座部(4)を有する容器(2)を含み、かつ、座部(4)上で少なくとも1つの組織サンプル(1)を保持する保持要素を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法を実行する上での組織カセットの使用。
  16. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法を実行する自動装置。
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