JP2017042724A - 分離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フェノール樹脂の製造工程から排出されるフェノールを含む液体の分離処理において、使用に伴う透過流束の低下を抑制するゼオライト膜を用いる分離方法の提供。【解決手段】水およびフェノールを含む廃液より水を分離してフェノールを濃縮する膜分離プロセスにおいて、フェノールの濃度を所定範囲に限定して分離処理を継続する、すなわち水及びフェノールを少なくとも含む液体をゼオライト膜を用いて分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度が55mol%以下の範囲となるように分離処理する方法。前記ゼオライト膜としてDDR型ゼオライト膜で分離工程がフィードアンドブリード式分離方法、回分式分離法、又は流通式の分離方法のいずれかの分離方法。【選択図】なし
Description
本発明は、分離方法に関する。
従来、フェノール樹脂の製造工程などにおいて排出される廃液から膜分離によりフェノールを分離、回収することが検討されている。例えば、フェノール含有排水を減圧下で蒸発、凝縮させ、ついで凝縮した排水を浸透気化膜を備えた分離装置に供給して減圧側の透過液からフェノールを分離、回収することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ゼオライト膜を利用したパーベーパレーション法によりフェノールを回収する際に、ゼオライト膜に吸着した低分子量のフェノール樹脂縮合物を、フェノールを含有する水溶液を用いて洗浄、除去する工程を設けることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、フェノール含有排水に凝集剤を添加して不純物を凝集除去した後、残液をメンブランフィルターで濾過し、濾液をパーベーパレーション膜で処理することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
ところで、上述した膜分離プロセスでは、分離処理を継続すると、ゼオライト膜の透過流束が低下し、分離を継続することができない場合があった。このため、水及びフェノールを含む廃液の膜分離処理において、使用に伴う透過流束の低下を抑制することが望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、フェノールを含む液体の分離処理において、使用に伴う透過流束の低下を抑制することができる分離方法を提供することを主目的とする。
上述した主目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、水およびフェノールを含む廃液より水を分離してフェノールを濃縮する膜分離プロセスにおいて、フェノールの濃度を所定範囲に限定して分離処理を継続すると、使用に伴う透過流束の低下を抑制することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の分離方法は、
水及びフェノールを少なくとも含む液体をゼオライト膜を用いて分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度が55mol%以下の範囲となるよう分離処理する分離工程、を含むものである。
水及びフェノールを少なくとも含む液体をゼオライト膜を用いて分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度が55mol%以下の範囲となるよう分離処理する分離工程、を含むものである。
本発明の分離方法では、フェノールを含む液体の分離処理において、使用に伴う透過流束の低下を抑制することができる。こうした効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、ゼオライト膜を用いて分離処理する際に、廃液中のフェノールの濃縮濃度が所定値を超えて高くなると、ゼオライト膜の表面にフェノールが急激に堆積するなどの特異的な現象によって水の透過が阻害されると推察される。ここでは、フェノールの濃縮濃度を所定値以下の範囲とすることにより、透過流束の低下を抑制することができる。ここで、透過流束とは、単位時間あたりに単位面積の膜を透過した液体の量である透過量(kg/m2h)である。
本発明の分離方法は、水及びフェノールを少なくとも含む液体をゼオライト膜を用いて分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度が55mol%以下の範囲となるよう分離処理する分離工程を含む。この濃度範囲で分離処理を行うと、ゼオライト膜における透過流束の低下を抑制することができる。この分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度は、45mol%以下の範囲であることがより好ましい。この範囲では、透過流束の低下が起こらないため、より好ましい。この分離工程で用いるゼオライト膜は、詳しくは後述するが、DDR型ゼオライト膜であることが好ましい。
分離工程で用いる処理対象液は、水及びフェノールを含む混合液体である。この処理対象液は、水及びフェノール以外の第3成分が含まれていてもよい。第3成分としては、例えば、メタノールやエタノール、2−プロパノールなどのアルコール類や、メチルエチルケトンなどのケトン類、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類などが挙げられる。処理対象液は、初期濃度は特に限定されず、第3成分の濃度が15mol%以下であるものとしてもよく、10mol%以下であるものとしてもよい。なお、透過流束の低下を抑制可能なフェノール濃度は、分離後のフェノール濃度により決まっており、第3成分の濃度の影響を受けない。
この分離工程では、浸透気化法(パーベーパレーション(PV)法)、蒸気透過法(ベーパーパーミエーション(VP)法)のいずれでも行うことができるが、浸透気化法であれば処理対象液をゼオライト膜へ液体で供給し、透過側空間を減圧しゼオライト膜から水を透過させるため、処理対象液を高温に加熱することなく水を減じることができる。この分離工程では、50℃以上130℃以下で分離処理を行うことが好ましく、55℃以上110℃以下がより好ましい。こうした温度では、膜分離の効率がよい。この分離工程において、透過側空間の真空度(2次圧)は、1.3kPa(10Torr)以上13kPa(100Torr)以下が好ましく、4.0kPa(30Torr)以上9.3kPa(70Torr)以下がより好ましい。
この分離工程では、フィードアンドブリード式の分離処理、回分式の分離処理及び流通式の分離処理のうちいずれかを行うものとしてもよい。また、これらの分離処理を組み合わせるものとしてもよい。フィードアンドブリード式分離処理は、回分式分離処理と流通式分離処理とを組み合わせた分離方式である。この分離処理では、収容部(原液タンク)に貯留された処理対象液をポンプによってゼオライト膜に供給し、ゼオライト膜を透過した透過流体を系外に取り出す。また、ゼオライト膜を透過しなかった非透過液は、その一部が分離処理後の液体として系外に取り出されると共に、その残りが収容部に戻され、循環経路を循環する。このとき、系外に送出された流体量と略同量の処理対象液が収容部に連続的に供給される。回分式分離処理は、収容部に貯留された処理対象液をポンプによってゼオライト膜に供給し、ゼオライト膜を透過した透過流体を系外に取り出すとともにゼオライト膜を透過しなかった非透過液を収容部に戻し、非透過液を系内で循環させる分離方式である(後述図1参照)。流通式分離処理は、処理対象液をポンプにより連続的にゼオライト膜に供給し、連続的に透過流体と非透過液とを得る分離方式である。本発明の分離方法では、分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度が55mol%以下の範囲とすれば、上記いずれの分離方式でも採用することができる。
この分離工程において、ゼオライト膜を透過した透過流体は、その水濃度が99質量%以上であることが好ましい。また、透過流体の水に含まれるフェノールは、その濃度が1質量%以下であることが好ましい。この透過流体におけるフェノールの濃度は、1000ppm以下であることがより好ましい。また、分離工程では、pHが8.0以下、より好ましくは7.0以下の処理対象液を透過流体と非透過液とに分離するものとしてもよい。例えば、DDR型のゼオライト膜を用いる場合に、その耐酸性、耐有機溶媒性などが高いため、このようなpHの処理対象液に対しても、分離した水の濃度を高く維持しながら分離処理を継続することができる。即ち、分離精度が低下しにくい。
本発明の分離方法は、上述した分離工程ののち、ゼオライト膜を回復する回復工程を含むものとしてもよい。この回復工程では、分離工程で用いたゼオライト膜を水及びフェノールを少なくとも含む液体、又は水で洗浄し、ゼオライト膜の透過流束を回復する処理を行う。この回復工程は、ゼオライト膜の透過流束の低下に応じたタイミングで適宜行うものとしてもよい。水及びフェノールを少なくとも含む液体は、処理対象液としてもよい。
次に、上述した処理対象液を分離する分離装置の一実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、分離装置20の構成の概略を示す説明図である。図2は、ゼオライト膜45を備えた膜フィルタ41の構成の概略を示す説明図である。
分離装置20は、水及びフェノールを含む処理対象液を分離する装置であり、図1に示すように、回分式の分離処理を行うよう構成されている。この分離装置20は、処理対象液を収容する収容部19と、収容部19から供給された処理対象液を分離する分離部21とを備えている。分離部21は、水を選択的に透過させるゼオライト膜45(図2参照)が形成された膜フィルタ41を備えている。また、分離部21には、図示しない圧力センサが接続されており、この圧力センサによって膜フィルタ41を収容した容器内の圧力や透過側空間の圧力などが検出される。
分離装置20は、処理対象液を収容部19に供給する供給経路11と、収容部19から膜フィルタ41を介して収容部19へ液体を循環する循環経路12と、循環経路12を循環する液体の一部を系外へ流通させる液体経路14と、ゼオライト膜45を透過した透過流体を流通する流体経路13とを備えている。なお、ここでは、循環経路12を流通して膜フィルタ41に供給される液体を、非透過液も含め、循環液と称する。循環経路12には、循環液を流通させる循環ポンプ22と、循環経路12を流通する循環液の温度を膜分離に適した温度となるように加熱する加熱器23とが配設されている。液体経路14には、液体経路14を流通する液体の量を調節する電磁弁であるバルブ29と、液体を流通させる流通ポンプ32と、液体経路14を流通する液体を冷却する冷却器33とが配設されている。流体経路13には、流体経路13を流通する透過流体を冷却する冷却器24と、透過側空間(流体経路13)を減圧する真空ポンプ25とが配設されている。
分離部21では、セル42の内部を液体が流通する供給側空間と、膜フィルタ41から流体経路13へ分離された透過流体が流通する透過側空間とにゼオライト膜45及び多孔質基材44により隔てられている。分離部21では、真空ポンプ25で流体経路13(透過側空間)を減圧することにより、セル42からゼオライト膜45を経て流体経路13側へ透過流体(水)が透過し、冷却器24で冷却して外部に送液する。このとき、透過側空間の真空度(2次圧)は、1.3kPa(10Torr)以上13kPa(100Torr)以下が好ましく、4.0kPa(30Torr)以上9.3kPa(70Torr)以下がより好ましい。また、分離部21への処理対象液の供給流量速度は、循環ポンプ22などにより、セル42内での流量が、1.5m/s以上3.0m/s以下の範囲とすることが好ましい。あるいは、分離部21への処理対象液の供給流量速度は、レイノルズ数が2000以上10000以下となるように調整されることが好ましい。また、この分離部21では、50℃以上130℃以下で分離処理を行うことが好ましく、55℃以上110℃以下がより好ましい。こうした温度では、膜分離の効率がよい。
膜フィルタ41は、図2に示すように、処理対象液の流路となる複数のセル42を形成する基材としての多孔質基材44と、多孔質基材44の内表面に設けられ処理対象液の分離機能を有するゼオライト膜45とを備えている。このように、ゼオライト膜45が多孔質基材44の表面に形成されることにより、ゼオライト膜45を薄膜としても、多孔質基材44に支えられてその形状を維持し破損等を防止することができる。この膜フィルタ41では、入口側からセル42へ入った処理対象液のうち、ゼオライト膜45を透過可能な分子サイズを有する水が、ゼオライト膜45及び多孔質基材44を透過し、膜フィルタ41の側面から送出される。一方、ゼオライト膜45を透過できない非透過液(主としてフェノール)は、セル42の流路に沿って流通し、セル42の出口側から送出される。多孔質基材44は、複数のセル42を備えたモノリス構造を有しているものとしてもよいし、1つのセルを備えたチューブラー構造を有しているものとしてもよい。その外形は、特に限定されないが、円柱状、楕円柱状、四角柱状、六角柱状などの形状とすることができる。あるいは、多孔質基材44は、断面多角形の管状としてもよい。この多孔質基材44は、気孔径の大きな粗粒部44aの表面に気孔径の小さな細粒部44bが形成された二層以上の多層構造を有しているものとしてもよい。粗粒部44aの気孔径は、例えば、0.1μm〜数100μm程度とすることができる。細粒部44bの気孔径は、粗粒部44aの気孔径に比して小さければよく、例えば、気孔径が0.001〜1μm程度のものとすることができる。こうすれば、多孔質基材44の透過抵抗を低減することができる。多孔質基材44を構成する材料としては、アルミナ(α−アルミナ、γ−アルミナ、陽極酸化アルミナ等)、ジルコニア等のセラミックスやステンレスなどの金属等を挙げることができ、基材の作製、入手の容易さの点から、アルミナが好ましい。アルミナとしては、平均粒径0.001〜30μmのアルミナ粒子を原料として成形、焼結させたものが好ましい。
ゼオライト膜45は、処理対象液から選択的に水を透過して分離するものであり、その膜厚が0.5μm以上2μm以下の範囲で形成されているものとしてもよい。膜厚が0.5μm以上では、分離時の選択性を十分確保することができ、2μm以下では、透過抵抗をより低減することができる。このゼオライト膜の膜厚は、ゼオライト膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して求めるものとする。ここで、「水を選択的に分離する」とは、処理対象液から純度100%の水を分離して取り出すだけでなく、処理対象液の組成と比較して水の含有率が高くなった溶液または気体を分離して取り出すことも含む。例えば、純度90%以上の水や純度95%以上の水を分離して取り出すものとしてもよい。また、「脱水」というときは、水を選択的に分離することをいう。また、このゼオライト膜45は、酸素8員環を有し、フレームワーク密度が17以上であるゼオライトを含むことが好ましい。このようなゼオライトとしては、DDR型ゼオライト(DDR)が挙げられる。DDRは、主成分がシリカからなる結晶であり、その細孔は酸素8員環を含む多面体によって形成されている。この酸素8員環の細孔径は、4.4×3.6Åであることが知られている。DDRは、シリカアルミナ比が大きく、例えばシリカアルミナ比が200以上、より好ましくは無限大である。このため、耐酸性に優れている。耐酸性に関しては、例えばA型ゼオライトは、シリカアルミナ比が約2であり、アルミナの含有率が高いため、DDRより耐酸性が低い。T型ゼオライトは、A型と比較するとシリカの含有率が若干高いものの、シリカアルミナ比が6〜8と低いためDDRより耐酸性が低い。また、MOR型ゼオライトは、シリカ含有率が更に高いが、シリカ/アルミナ比が40以下程度であるためDDRより耐酸性が低い。また、DDRは、強い親水性により水を選択的に透過させるA型ゼオライト膜などと異なり、分子篩効果によって混合物中の水を透過させるため、A型ゼオライト膜などに比して耐水性が高い。このDDR型ゼオライトは、耐酸性、耐有機溶剤性が高く、広範囲の処理対象液の分離を行うことができる。
DDR型ゼオライト膜の製造方法は、例えば、特開2003−159518号公報に記載のDDR型ゼオライト膜の製造方法のように、1−アダマンタンアミンとシリカとの含有割合(1−アダマンタンアミン/シリカ)がモル比で0.03〜0.4、水とシリカとの含有割合(水/シリカ)がモル比で20〜500、さらにエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンとの含有割合(エチレンジアミン/1−アダマンタンアミン)がモル比で5〜32である原料溶液と、種結晶となるDDR型ゼオライト粉末とを用いて、水熱合成するものとしてもよい。
以上説明した本実施形態の分離方法では、ゼオライト膜を用いて分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度が55mol%以下の範囲となるよう分離処理することにより、使用に伴う透過流束の低下を抑制することができる。この効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、ゼオライト膜を用いて分離処理する際に、フェノールの濃縮濃度が所定値を超えて高くなると、ゼオライト膜の表面にフェノールが急激に堆積するなどの特異的な現象によって水の透過が阻害されると推察される。ここでは、フェノールの濃縮濃度を所定値以下の範囲とすることにより、透過流束の低下を抑制することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下では、本発明の分離方法により、水とフェノールとを含む処理対象液を分離した具体例について、実験例として説明する。ここでは、実験例1〜4が本発明の実施例に相当し、実験例5〜10が比較例に相当する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[処理対象液の準備]
フェノール濃度が39〜56mol%(77〜87質量%)、水が38〜61mol%(12〜23質量%)、第3成分としてメタノールが0〜15mol%(0〜9質量%)の範囲で含む混合溶液を調整し、これを処理対象液とした。具体的な濃縮濃度を表1に示した。
フェノール濃度が39〜56mol%(77〜87質量%)、水が38〜61mol%(12〜23質量%)、第3成分としてメタノールが0〜15mol%(0〜9質量%)の範囲で含む混合溶液を調整し、これを処理対象液とした。具体的な濃縮濃度を表1に示した。
(膜フィルタの作製)
多孔質基材として、直径30mm長さ160mmのモノリス形状でアルミナ製の多孔質基材を用意した。この多孔質基材の表面に以下のようにDDR型ゼオライト膜(水を選択的に透過させる浸透気化膜)を形成し、膜フィルタを作製した。
多孔質基材として、直径30mm長さ160mmのモノリス形状でアルミナ製の多孔質基材を用意した。この多孔質基材の表面に以下のようにDDR型ゼオライト膜(水を選択的に透過させる浸透気化膜)を形成し、膜フィルタを作製した。
まず、フッ素樹脂製の広口瓶に18.63gのエチレンジアミン(和光純薬工業製)を入れた後、2.94gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ社製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別のビーカーに161.61gの水を入れ、66.00gの30質量%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学社製)を加えて軽く撹拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜた。その後、その広口瓶をシェーカーにセットし、500rpmでさらに1時間振り混ぜ、成膜ゾルを作製した。成膜ゾルの、1−アダマンタンアミン/シリカ比は0.0589、水/シリカ比は35、エチレンジアミン/1−アダマンタンアミン比は16であった(いずれもモル比)。
次に、多孔質基材にDDR型ゼオライト微粉末を塗布し、フッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器内に配置した。その後、成膜ゾルを耐圧容器に注ぎ、150℃で加熱処理(水熱合成)を行った。加熱処理後、この基材表面にDDR型ゼオライト膜が形成されていた。断面をSEM観察して求めたゼオライト膜の膜厚は、1μmであった。水洗、乾燥した後、大気中、電気炉で0.1℃/minの速度で750℃まで昇温して4時間保持後、1℃/minの速度で室温まで冷却した。
[膜試験]
上記作製した膜フィルタを用いて、図1の分離装置20を作製し、以下のように膜試験を行った。分離処理は、PV法により行った。まず、膜フィルタ41のセル42内に処理対象液を1.7m/sの流速で流通させた。処理対象液から水を分離する分離温度は、分離部40の入り口で測定し、その温度を70℃又は80℃とした。膜フィルタ41の側面から50Torrの真空度で減圧し、膜フィルタ41の側面からの透過蒸気を冷却器24で冷却して捕集した。膜フィルタ41を透過せずに通過した非透過液をサンプリングして組成分析を行った。また、捕集した透過蒸気について液体物の質量から透過流束を算出した。脱水初期の透過流束と5h運転した時点での透過流束の比を算出し、透過流束の低下度合いを調べた。組成分析はガスクロマトグラフィーによって行った。フェノール濃度が39〜56mol%(77〜87質量%)、水が31〜72mol%(12〜23質量%)、第3成分としてメタノールが0〜15mol%(0〜9質量%)の範囲で分離処理を行った。各実験例の具体的な濃縮濃度を表1に示した。なお、膜試験の評価は、透過流束比が1.00以下0.95以上を「◎」、0.95未満0.7以上を「○」、0.7未満を「×」とした。
上記作製した膜フィルタを用いて、図1の分離装置20を作製し、以下のように膜試験を行った。分離処理は、PV法により行った。まず、膜フィルタ41のセル42内に処理対象液を1.7m/sの流速で流通させた。処理対象液から水を分離する分離温度は、分離部40の入り口で測定し、その温度を70℃又は80℃とした。膜フィルタ41の側面から50Torrの真空度で減圧し、膜フィルタ41の側面からの透過蒸気を冷却器24で冷却して捕集した。膜フィルタ41を透過せずに通過した非透過液をサンプリングして組成分析を行った。また、捕集した透過蒸気について液体物の質量から透過流束を算出した。脱水初期の透過流束と5h運転した時点での透過流束の比を算出し、透過流束の低下度合いを調べた。組成分析はガスクロマトグラフィーによって行った。フェノール濃度が39〜56mol%(77〜87質量%)、水が31〜72mol%(12〜23質量%)、第3成分としてメタノールが0〜15mol%(0〜9質量%)の範囲で分離処理を行った。各実験例の具体的な濃縮濃度を表1に示した。なお、膜試験の評価は、透過流束比が1.00以下0.95以上を「◎」、0.95未満0.7以上を「○」、0.7未満を「×」とした。
[実験結果]
表1に、分離後のフェノール、水及びメタノールの濃縮濃度と、分離温度と、透過流束比とをまとめて示した。図3は、フェノール濃度に対する透過流束比の関係図である。表1及び図3に示すように、フェノール水溶液では、フェノール濃度が55mol%(87質量%)を超える範囲で分離処理を行うと、透過流束が極めて大きく低下することがわかった。このため、フェノール濃度が55mol%、より好ましくは45mol%以下の範囲で分離処理を行うものとすれば、分離低下が起こらず、分離処理をより長期間継続して行うことができることがわかった。この理由は、例えば、フェノール濃度が所定値を超えると、ゼオライト膜にフェノールが堆積するなどして水が透過しにくくなるためであると推察された。そして、フェノール濃度が55mol%以下の範囲で分離処理を行うことにより、ゼオライト膜の透過流束が低下しないため、分離装置に必要な膜の面積をより小さくすることができることがわかった。また、必要とする膜面積が小さくなるので、分離装置を小型にすることができることがわかった。なお、実験例によっては、メタノールを第3成分として添加したが、その濃度は透過流束比には影響していないものと思われた。
表1に、分離後のフェノール、水及びメタノールの濃縮濃度と、分離温度と、透過流束比とをまとめて示した。図3は、フェノール濃度に対する透過流束比の関係図である。表1及び図3に示すように、フェノール水溶液では、フェノール濃度が55mol%(87質量%)を超える範囲で分離処理を行うと、透過流束が極めて大きく低下することがわかった。このため、フェノール濃度が55mol%、より好ましくは45mol%以下の範囲で分離処理を行うものとすれば、分離低下が起こらず、分離処理をより長期間継続して行うことができることがわかった。この理由は、例えば、フェノール濃度が所定値を超えると、ゼオライト膜にフェノールが堆積するなどして水が透過しにくくなるためであると推察された。そして、フェノール濃度が55mol%以下の範囲で分離処理を行うことにより、ゼオライト膜の透過流束が低下しないため、分離装置に必要な膜の面積をより小さくすることができることがわかった。また、必要とする膜面積が小さくなるので、分離装置を小型にすることができることがわかった。なお、実験例によっては、メタノールを第3成分として添加したが、その濃度は透過流束比には影響していないものと思われた。
上記実験例12の濃縮液組成で透過流束が低下した膜を用い、水及び、フェノール水溶液(フェノール濃度5質量%水溶液)の流通によって回復処理を実施した。この実験例12の膜は、初期透過流速12.7kg/m2hが5時間後に8.7kg/m2hまで低下したものである。この洗浄時の洗浄温度は80℃とした。その結果、回復処理を実施すると、水の流通による洗浄では透過流束12.5kg/m2hまで回復した。また、フェノール水溶液の流通による洗浄では12.2kg/m2hまで回復した。このように、回復処理を実行すると、低下前と同等の透過流束が得られた。即ち、ゼオライト膜を回復できることがわかった。
本発明は、水処理やフェノールの濃縮の分野に利用可能である。
11 供給経路、12 循環経路、13 流体経路、14 液体経路、19 収容部、20 分離装置、21 分離部、22 循環ポンプ、23 加熱器、24 冷却器、25 真空ポンプ、29 バルブ、32 流通ポンプ、33 冷却器、41 膜フィルタ、42 セル、44 多孔質基材、44a 粗粒部、44b 細粒部、45 ゼオライト膜。
Claims (5)
- 水及びフェノールを少なくとも含む液体をゼオライト膜を用いて分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度が55mol%以下の範囲となるよう分離処理する分離工程、
を含む分離方法。 - 前記分離工程では、分離処理したあとの液体のフェノールの濃縮濃度が45mol%以下の範囲となるよう分離処理する、請求項1に記載の分離方法。
- 前記分離工程では、前記ゼオライト膜としてDDR型ゼオライト膜を用いる、請求項1又は2に記載の分離方法。
- 前記分離工程では、フィードアンドブリード式の分離処理、回分式の分離処理及び流通式の分離処理のうちいずれかを行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分離方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の分離方法であって、
前記分離工程で用いた前記ゼオライト膜を水及びフェノールを少なくとも含む液体、又は水で洗浄し、前記ゼオライト膜の透過流束を回復する回復工程、を含む分離方法。
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- 2015-08-27 JP JP2015167877A patent/JP2017042724A/ja active Pending
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