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JP2016208683A - 太陽光発電システムの診断方法及び監視装置 - Google Patents

太陽光発電システムの診断方法及び監視装置 Download PDF

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JP2016208683A JP2015088192A JP2015088192A JP2016208683A JP 2016208683 A JP2016208683 A JP 2016208683A JP 2015088192 A JP2015088192 A JP 2015088192A JP 2015088192 A JP2015088192 A JP 2015088192A JP 2016208683 A JP2016208683 A JP 2016208683A
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Abstract

【課題】太陽光発電システムにおける太陽電池モジュールの故障による損失と全体劣化を高精度に切り分ける。
【解決手段】太陽光発電システムの診断方法であって、太陽電池アレイが出力する電圧及び電流の計測値を保持し、第1時間帯と、それより日射量が少ない第2時間帯と、を特定する手順と、第1時間帯における前記計測値に基づいて、故障している太陽電池セルの数を算出する手順と、第2時間帯における前記計測値に基づいて、故障している太陽電池セルの数を算出する手順と、第1時間帯について算出された故障している太陽電池セルの数と、第2時間帯について算出された故障している太陽電池セルの数と、を比較し、その結果に基づいて、各太陽電池セルの直列抵抗値と、太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値と、を特定する手順と、を含む。
【選択図】図8A

Description

本発明は、多数の太陽電池モジュールで構成される太陽光発電システムにおいて、太陽電池モジュールの故障を診断する故障診断技術に関する。
太陽光発電システムの故障診断に関して、特開2012−114108号公報(特許文献1)、特開2012−54401号公報(特許文献2)及び特開2014−45073号公報(特許文献3)に記載の技術がある。
特許文献1には、「発電量を取得し、この発電量を記憶しておき、サンプル期間の評価時間帯における発電量を算出し、これらのうちで上位の発電量を抽出し、その平均値を基準値とする。また、評価期間の評価時間帯における発電量を算出し、これらのうちで上位の発電量を抽出し、その平均値を評価値とする。そして、基準値と評価値との差分に基づき、システムの故障を判断する」と記載されている。
特許文献2には、「発電情報、日射情報及び温度情報を取得し、これらの情報を記憶しておき、診断時間帯におけるシステム出力係数を算出し、診断時間帯における気温と共に蓄積する。診断対象となる日以前のシステム出力係数から予測式を導出し、当該予測式を用い、診断対象となる日の診断時間帯の気温から、予測システム出力係数を算出する。また、診断対象となる日のシステム出力係数を実績システム出力係数として読み出す。そして、予測システム出力係数と実績システム出力係数との差分が一定以上になると、太陽光発電システムが故障したと診断して表示する」と記載されている。
特許文献3には、「太陽電池アレイの状態に合わせて、短絡電流と動作電流の比である所定の係数を更新しながら、日射量を算出し、検出部によって計測された動作電流と動作電圧からなる計測データを用いることによって、動作温度と太陽電池アレイ内の太陽電池モジュールの故障数を算出する」と記載されている。
特開2012−114108号公報 特開2012−54401号公報 特開2014−45073号公報
メガソーラーに代表される大規模な太陽光発電システムでは、200〜300Wクラスの太陽電池モジュールが一箇所の発電サイトに配置される。それぞれの太陽電池モジュールは、経年劣化によって、同じ日射量、温度条件における出力が徐々に低下する。出力が徐々に低下する現象を全体劣化と呼ぶ。一方、一部のモジュールは、製造上の品質又は物理的な損傷によって、出力が急激に低下する。出力が急激に低下した状態を故障と呼ぶ。
太陽電池モジュールの故障を検出する方法として、目視による検査、サーモメーターによる発熱の検査、及びテスターによる電気的特性又は過渡応答の検査が行われているが、これらの検査は、太陽電池モジュール、又は、太陽電池ストリング(太陽電池モジュールを直列にした単位)1つ1つに対して行われるので、メガソーラーサイト内では、検査に要する労力とコストが増大するという課題がある。さらに、太陽電池モジュール毎又はストリング毎に計測手段と通信手段を設置することによる自動化された検査方法も一般的に用いられているが、計測手段の信頼性も含め、コストの増大を解決するまでには至っていない。
特許文献1〜3の技術を用いることによって、上記の課題のうち、計測手段及び通信手段を新たに追加せず、太陽光発電システムの故障判定を行うという課題は解決するが、特許文献1のような基準値と評価値の比較では、日射及び温度条件が異なるため、判定の精度が向上しないという問題があった。メガソーラーサイトでは、日射計及び気温計が各1箇所、多くても数箇所と限定されるため、特許文献2のような日射情報及び温度情報を用いる手法も計測精度が向上しないという問題があった。特許文献3では、計測対象となる太陽電池アレイ自身を日射計、温度計と見立て、フィードバックしながら故障情報を抽出するため、精度は高いが、全体劣化と故障を判別することができないという問題があった。
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、大規模な太陽光発電システムにおいて、余分な計測手段及び通信手段を付加せずに、精度の高い故障検出を維持し、さらに全体劣化と故障の切り分けを実現する診断方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一形態は、プロセッサと、前記プロセッサに接続される記憶装置と、を有する計算機システムが実行する太陽光発電システムの診断方法であって、前記太陽光発電システムは、相互に接続された複数の太陽電池セルを含む太陽電池アレイを有し、前記記憶装置は、前記太陽電池アレイが出力する電圧及び電流の計測値を保持し、前記太陽光発電システムの診断方法は、前記プロセッサが、第1時間帯と、前記第1時間帯より前記太陽電池アレイへの日射量が少ない第2時間帯と、を特定する第1手順と、前記プロセッサが、前記第1時間帯における前記計測値に基づいて、故障している前記太陽電池セルの数を算出する第2手順と、前記プロセッサが、前記第2時間帯における前記計測値に基づいて、故障している前記太陽電池セルの数を算出する第3手順と、前記プロセッサが、前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、を比較し、その結果に基づいて、前記各太陽電池セルの直列抵抗値と、前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値と、を特定する第4手順と、を含むことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、大規模な太陽光発電システムにおいて、余分な計測手段と通信手段、日射計、温度計を付加せずに、太陽電池アレイ内に存在する太陽電池モジュールの故障情報と全体劣化の情報を高精度に把握することが可能となる。上記した以外の課題、構成、および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
本発明の実施例1の太陽電池ストリングの構成例の説明図である。 本発明の実施例1の太陽電池アレイの構成の一例を示す説明図である。 本発明の実施例1のパワーコンディショナの構成及び動作を説明するためのブロック図である。 本発明の実施例1の太陽電池モジュールに故障が発生した場合の電流経路の説明図である。 本発明の実施例1のパワーコンディショナ3に接続されている太陽電池アレイが全体劣化した時の特性の変化の一例を示す説明図である。 本発明の実施例1の太陽光発電システムにおける1日の日射量の観測値の一例を示す説明図である。 本発明の実施例1の太陽電池アレイの初期特性の推定、日射量の算出及び想定温度の算出の説明図である。 本発明の実施例1の太陽光発電システムにおける故障数と直列抵抗を算出する処理全体の演算アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。 本発明の実施例1の太陽光発電システムにおける想定日射量及び想定温度を算出する処理の一例を示すフローチャートである。 本発明の実施例2の太陽光発電システムにおける故障数と直列抵抗を算出する処理全体の演算アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。 本発明の実施例1の太陽光発電システムにおいて表示される画面の一例の説明図である。
以下、本発明の種々の実施の形態を図面に従い説明する。
実施例1は、選択された2つの時間帯において、全体劣化の要因パラメータである直列抵抗を可変しながら、太陽電池アレイの動作電流と動作電圧から、太陽電池アレイに照射される日射強度を求め、動作電圧と日射強度を用いて太陽電池アレイの動作温度と故障数を算出し、各時間帯において算出される故障数が一致するまで演算を繰り返すことによって、太陽電池アレイ内に存在する故障モジュールによる損失と全体劣化による損失を切り分ける太陽光発電システムの診断方法に関する実施例である。
実施例の説明に先立ち、実施例が適用されるメガソーラー発電サイトにおける太陽光発電システム及び太陽電池の特性について説明する。
図1は、本発明の実施例1の太陽電池ストリングの構成の一例を示す説明図である。
図1に示すように、太陽電池モジュール1gは、太陽電池セル1fを複数枚直列に並べ、バイパスダイオード1eに区切られたものとして表すことができる。このバイパスダイオード1eは、太陽電池モジュール1gに逆バイアスが掛かった時、逆方向電流が流れるのを防止するために取り付けられている。さらに、太陽電池モジュール1gを複数枚直列に並べたものを太陽電池ストリング1hと呼ぶ。太陽電池セル1fは、電流源1a、pn接合ダイオード1b、シャント抵抗1c、及び直列抵抗(Rs)1dから成る等価回路で表すことができる。日射量に比例した電流が、電流源1aから供給される。
図2は、本発明の実施例1の太陽電池アレイの構成の一例を示す説明図である。
図2に示すように、太陽電池アレイ2aは、太陽電池ストリング1hを接続箱2bにおいて並列接続することによって構成される。接続箱2bには、各ストリング1hに逆方向の電流が流れ込むのを防止するための逆流防止ダイオード21bが取り付けられている。スイッチ22bを選択することによって、各ストリング1hの電流経路を選択することも可能である。複数の接続箱は、さらに集電ラック2cにおいて並列接続される。これによって、複数の太陽電池アレイ2aが並列接続されるに至る。集電ラック2cにおいてもスイッチ21cが設置され、各アレイ2aの電流経路を選択することが可能である。並列接続された複数の太陽電池アレイ2aの正極2dと負極2eは、パワーコンディショナ3(図3参照)に接続される。
図3は、本発明の実施例1のパワーコンディショナ3の構成及び動作を説明するためのブロック図である。
集電ラック2cに接続された複数の太陽電池アレイ2aから最大電力を取り出せるよう制御することをMPPT制御(Maximum Power Point Tracking)と呼ぶ。このMPPT制御は、パワーコンディショナ3内部の電流計3aと電圧計3bによって計測された直流電力を用い、制御部3fがDC/DCコンバータ回路3cの動作を制御することによって達成されるものである。直流昇圧コンバータであるDC/DCコンバータ回路3cは、太陽電池アレイからの直流電圧を昇圧して、DC/ACインバータ部3dに供給し、交流電圧を外部に供給する。
一般に、大規模太陽光発電システムにおいて、MPPT制御中に計測される直流電圧及び直流電流は、サンプリング処理部3eでサンプリング処理された後、信号変換伝送装置3iを介して、監視装置3jに送信される。日射計3gによって計測された日射強度、即ち、単位面積当たりの日射量(kW/m)は、トランスデューサ3hにおいて気象信号として統一され、信号変換伝送装置3iを介して監視装置3jに送信される。
監視装置3jは、例えば、通常のコンピュータによって構成される。例えば、監視装置3jは、インターフェイス部31j、インターフェイス部31jに接続された内部バス35j、内部バス35jに接続された記憶部であるメモリ32j、処理部である中央処理部(Central Processing Unit:CPU)34j、及び、記憶部であるハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)33j等から構成される。CPU34jはメモリ32j中に記憶された、各種のプログラムを実行することによって、信号変換伝送装置3iから入力されるデータを解析して、監視を行う。解析されたデータ等は、HDD33jに蓄積され、あるいは、図示を省略したネットワークインターフェイスを介して、外部に伝送することも可能となっている。
パワーコンディショナ3のサンプリング処理部3eは、MPPT制御中に計測される直流電圧及び直流電流を、スイッチング制御の周波数の2倍の周波数(ナイキスト周波数)以上の間隔でサンプリングし、さらに、サンプリングされた複数の計測値を平均することで計測精度を確保している。例えば、スイッチング周波数が4kHzであった場合、サンプリング処理部3eは、125μsec間隔でサンプリングし、1msec中にサンプリングされた8点の計測値を平均化する。この場合、標本化定理に従って再現された計測値の計測誤差は(1/√8)=(1/2.828)に抑制されており、短期間での高精度計測が実現されていることになる。
日射量を計測する日射計3gは、通常、発電サイトに1つ設置される。大規模な太陽光発電システムの場合、広大な面積の土地にシステムが配置されるため、日射分布が発生し、必ずしも計測した日射量が、ある区画の太陽電池アレイに照射されている日射量と同じになるとは限らない。以上のことから、大規模な発電サイトの故障診断を実現するための高精度な計測を行うためには、MPPT制御中にパワーコンディショナ3で計測される直流電圧、直流電流を活用することが有効である。
なお、図3では一つのパワーコンディショナ3のみを示したが、実際には一つの監視装置3jに複数のパワーコンディショナ3が接続され、それぞれに一つ又は複数の太陽電池アレイ2aが接続されてもよい。
図4は、本発明の実施例1の太陽電池モジュールに故障が発生した場合の電流経路の説明図である。
正常状態からホットスポットを持った太陽電池セル41bなどが発生すると、図4(a)に示すような電流経路4aから図4(b)に示すような電流経路4bへ移行する。正常状態の電流経路4aが各太陽電池モジュール1g内の各太陽電池セル1fを経由するのに対して、電流経路4bは、ホットスポットを持った太陽電池セル41bを含む太陽電池モジュール1gにおいてバイパスダイオード1eを経由する。ホットスポットとは、異常状態になった太陽電池セルが周囲に比べて高温になる現象のことであり、サーモカメラ等を用いた故障診断が一般的な手法として用いられている。ホットスポットを有する太陽電池セル41bの電流駆動能力は著しく低下し、ある地点から電流はバイパスダイオード1eを経由して流れる。
本実施例において、太陽電池モジュール1gの故障とは、当該太陽電池モジュール1g内のバイパスダイオード1eがオンしている(すなわち電流が当該太陽電池モジュール1g内の太陽電池セル1fではなくバイパスダイオード1eを流れている)状態を意味する。例えば太陽電池モジュール1g内の断線等によってこのような状態が発生する。図1に示すように、各太陽電池モジュール1gは複数の太陽電池セル1fを含むため、バイパスダイオード1eがオンしている太陽電池モジュール1gに含まれる全ての太陽電池セル1fが故障しているものとして扱われる。このため、例えば各太陽電池モジュール1gがN個の太陽電池セル1fを含む場合、以下の説明において記述された太陽電池モジュール1gの数は、それをN倍することによって、太陽電池セル1fの数に置き換えることができる。例えば、太陽電池アレイ2aにおける全太陽電池モジュール1gの数に対する故障している太陽電池モジュール1gの数の比率は、その太陽電池アレイ2aにおける全太陽電池セル1fの数に対する故障している太陽電池セル1fの数の比率と同じである。
一方、劣化とは、各太陽電池セル1f内の直列抵抗1dの増加による電力の損失の増加を意味する。通常、太陽電池アレイ2aを構成する各太陽電池セル1fの直列抵抗1dが徐々に増加してゆく。このように直列抵抗1dの値が増加しているがバイパスダイオード1eはオンしていない状態が劣化している状態である。仮に、ある太陽電池セル1fの直列抵抗1dが極端に増加した結果、その太陽電池セル1fを含む太陽電池モジュール1gのバイパスダイオード1eがオンした場合、その太陽電池モジュール1gが(すなわちその太陽電池モジュール1gに含まれる全ての太陽電池セル1fが)故障したものとして扱われる。
ここで、太陽電池アレイの演算方法について記述する。セル数がNcellで構成される太陽電池モジュールの式は、I:出力電流[A]、Is:逆方向飽和電流[A]、V:出力電圧[V]、Isc:短絡電流[A]、T:太陽電池素子絶対温度[K]、k:ボルツマン定数[J/K]、Rs:配線抵抗[Ω]、q:電子の電荷量[C]、Rsh:並列抵抗[Ω]、nf:接合定数、p:日射量[kW/m]のパラメータを用いて、式(1)で表すことができる。
I=Isc・p-Is・{exp(q・(V/(Ncell)+Rs・I)/(nf・k・T))}-(V/(Ncell)+Rs・I)/Rsh
・・・(1)
続いて、太陽電池アレイ2aの電流−電圧特性を計算する方法を示す。本明細書において、このアレイの計算をアレイ演算と記載する。アレイ演算は、ストリング解析とアレイ解析の組み合わせによって実現される。ストリング解析を行うときは、複数のモジュールに流れる電流は共通であるので、ある電流Iが流れている場合における各太陽電池のモジュール電圧:V[1]、V[2]、V[3]、・・・V[N−1]、V[N]を式(1)から求め、その和Vstringを求める。式(1)から電圧を計算する場合、逆関数となるが、ニュートン法などの繰り返し演算を適用することで簡単に求めることが可能である。電流がバイパスダイオード1eを経由して流れている場合は、モジュール電圧≒0として計算される。
アレイ解析を行うときは、複数の太陽電池ストリング1hに係る電圧は共通であるので、ある電圧Vが掛かっている場合における各ストリングから取り出される電流:I[1]、I[2]・・・I[N]を式(1)から求め、その和:Iarrayを求めればよい。つまりアレイ演算は、ストリング解析とアレイ解析の組み合わせによって太陽電池アレイの電流−電圧特性を求める演算である。
図5は、本発明の実施例1のパワーコンディショナ3に接続されている太陽電池アレイが全体劣化した時の特性の変化の一例を示す説明図である。
一般に太陽電池モジュール1gの劣化の要因としては、太陽電池モジュール1gの隣接するセル1f間を接続するインターコネクタ部のはんだ付けが、徐々に剥がれてくることが知られている。このような劣化は太陽電池アレイ2a全体で発生するため、太陽電池アレイ2aを構成する太陽電池セル1f全般において、図1における直列抵抗1dが大きくなる。
図5(a)は、高い日射条件における電流−電圧特性である。初期状態は、曲線51aに示すような特性を示し、パワーコンディショナ3にMPPT制御されることによって、動作電流Iop1が得られる。ここで、徐々に太陽電池アレイ2aが劣化し、太陽電池アレイ単位で見た直列抵抗がRs0になったとすると、Rs0×Iop1分の電圧降下が発生し、曲線52aに示すような特性へ移行する。
低い日射条件においても同様に、図5(b)に示すように、初期状態を示す曲線51bから曲線52bに示すような特性へ移行することによって、動作電圧Vop2から、Rs0×Iop2分の電圧降下が発生する。Iop1>Iop2であるため、高日射条件による電圧降下の方が大きく損失量も大きい。
太陽電池アレイ2aの全太陽電池セル1fの直列抵抗1dによって消費される電力と、太陽電池アレイ2aに接続される負荷によって消費される電力との合計に対する、太陽電池アレイ2aの全太陽電池セル1fの直列抵抗1dによって消費される電力の比率を、太陽電池アレイ2aが出力する電力の劣化による損失と定義すると、日射量が多くなり、太陽電池アレイ2aが出力する電流が大きくなるほど、劣化による損失は大きくなる。
これに対して、バイパスダイオード1eがオンする故障の場合、バイパスダイオード1eの消費電力は無視できる程度に小さい。このため、全太陽電池モジュール1gの数に対する、発電に無効な(すなわち故障のためバイパスダイオード1eがオンしている)太陽電池モジュール1gの数の比率を、太陽電池アレイ2aが出力する電力の故障による損失と定義すると、日射量によらず、故障による損失は一定となる。
本実施例の監視装置3jは、上記のように、日射量の変動に対する劣化による損失の変動と故障による損失の変動が異なることを利用して、日射量の異なる二つの時間帯に計測された太陽電池アレイ2aの電圧と電流との組のいずれとも整合する直列抵抗1dの値及び太陽電池モジュール1gの故障数を推定することによって、劣化による損失と故障による損失を切り分ける。
以下、本実施例の太陽光発電システムの診断方法において、パワーコンディショナ3での計測値から、太陽電池アレイ2aの全体劣化率と故障による損失を高精度に切り分ける方法を説明する。
図6は、本発明の実施例1の太陽光発電システムにおける1日の日射量の観測値の一例を示す説明図である。
具体的には、図6(a)及び図6(b)に、それぞれ、ある快晴の日における日射変化量及び日射量の観測値が示されている。例えば、所定の間隔で(例えば5秒ごとに)観測された日射量の観測値が図6(b)に示され、それぞれの観測値とその直前の(例えば5秒前の)観測値との差が日射変化量として図6(a)に示される。監視装置3jは、まず、日射変化量が所定の値(例えば±0.15kW/m)未満になるような状態が所定の時間(例えば30分)続いた状態を安定な時間帯と定義する。図6では、安定な時間帯が5つ選択されている。監視装置3jは、選択された時間帯のうち、最も大きい日射量の時間帯6aを開始時刻(1)の時間帯と定義し、最も小さい日射量の時間帯6bを開始時刻(2)の時間帯と定義する。ここで、監視装置3jは、開始時刻(1)の時間帯と開始時刻(2)の時間帯の平均日射量の差分が所定の値よりも小さい場合は、診断を行わず、所定の値よりも大きい場合のみ診断を行うこととする。
なお、上記のように日射量が安定している時間帯を選択するのは、以下に説明する計算はMPPT制御が行われていることが前提となっているが、日射量が不安定であると、パワーコンディショナ3の制御が日射量の変動に追随できないために、太陽電池アレイ2aが出力する電力が最大とならない電圧及び電流が計測される可能性があるためである。このため、パワーコンディショナ3の性能及び後述する計算の結果に要求される精度に応じて、日射量の安定性に対する要求は異なる。例えばパワーコンディショナ3が十分に高性能である場合、又は、計算の結果に要求される精度がそれほど高くない場合には、日射量にそれほど高い安定性が要求されないこともあり得る。
また、本実施例では上記のように日射量の変動に対する劣化による損失の変動と故障による損失の変動が異なることを利用するため、二つの時間帯の日射量が異なっていれば、以下に説明する計算を行うことができる。ただし、日射量の差が大きいほど劣化による損失と故障による損失の差が大きく表れることで両者の切り分けの精度が高くなることが期待できるため、所定の期間(例えば1日)の日射量が安定している時間帯のうち日射量が最大の時間帯と最小の時間帯を選択することが望ましい。
上記で選択した2つの時間帯それぞれについて、太陽電池アレイ2aの初期特性の推定、太陽電池アレイ2aに照射される日射量の算出、及び、太陽電池アレイ2aの想定温度の算出の3つの動作を行う。
図7は、本発明の実施例1の太陽電池アレイの初期特性の推定、日射量の算出及び想定温度の算出の説明図である。
まず、監視装置3jは、図7(a)に示すように、パワーコンディショナ3に制御されることによって得られる曲線71a上の動作電圧Vop1及び動作電流Iop1から、所定の直列抵抗Rsを設定し、Vop1に(Iop1×Rs)を加え、動作電圧V’op1を設定することで、太陽電池アレイ2aの初期特性72aを推定する。
想定日射量を算出するために、監視装置3jは、動作電流と短絡電流の比Jを用いる。この定数Jについては、大規模な太陽光発電システムを構成する数万枚におよぶ100〜200Wクラスの太陽電池モジュールの評価から、太陽電池モジュールの製造ばらつき及び種類によらず、動作電流と短絡電流の相関が非常に高いことが確認されている。さらに、MPPT制御が行われる日射量0.1〜1.0kW/mの範囲及び実使用上の温度範囲においても、動作電流と短絡電流の比Jはほぼ一定に保たれることも確認されている。図7(b)にて、初期状態と推定された曲線71bの動作電流Iop1に対して、標準状態である日射量1.0kW/m、25℃におけるリファレンス特性72b上の短絡電流及び最大動作電流をそれぞれIsc0及びIop0と定義すると、曲線71bの短絡電流I’sc1は式(2)及び式(3)によって求められ、動作温度Tbとした時、想定日射量pbは、短絡電流の温度係数αを用いて、式(4)及び式(5)によって求められる。
J=Iop0/Isc0 ・・・(2)
I’sc1=Iop1/J ・・・(3)
Isc0 [Tb]=Isc0+α・(Tb-25) ・・・(4)
pb=(I’sc1)/Isc0 [Tb] ・・・(5)
通常、温度センサには、熱電対といったものが用いられるが、一般的に、計測精度が低い。したがって、本実施例の診断方法においては、動作温度に関しても監視装置3jが動作電流Iop1及び動作電圧V’op1から想定温度として算出する。図7(c)に示すように、短絡電流がI’sc1である場合の、常温におけるリファレンス特性72cを基準とする。求めたい想定温度Tbに対して、開放電圧の温度係数β[V/℃]として、推定された初期特性71cの開放電圧:V’oc1は、常温:25℃における開放電圧をVoc01とすると、式(6)のように表すことができる。
V’oc1=Voc01+β・(Tb−25) ・・・(6)
常温:25℃における開放電圧Voc01は、式(1)に日射量p=pb、温度T=25℃、電流I=0Aを代入して求めることができる。次に、前述の係数Jを用いると、同様に動作温度:Tbの条件において、式(7)が成立する。
Ipmax_b=J・Isc_b・pb ・・・(7)
ここで、Isc_bは、温度Tb、日射量1.0kW/mにおける短絡電流である。
動作電圧V’op1、開放電圧V’oc1は、それぞれ式(8)式(9)で表される。
V’op1=Ncell・(nf・k・Tb)/q・ln{(Isc_b・pb-Ipmax_b)/Is} ・・・(8)
V’oc1=Ncell・(nf・k・Tb)/q・ln{(Isc_b・pb)/Is} ・・・(9)
式(8)と式(9)を纏めることで式(10)が得られ、そこに式(6)を代入することによって式(11)が得られる。
V’op1‐V’oc1=Ncell・((nf・k・Tb)/q)・ln(1-J) ・・・(10)
Tb=(V’op1‐Voc01‐β・25)/(Ncell・(nf・k/q)・ln(1-J)+β) ・・・(11)
つまり、1次方程式を解くことによって、パワーコンディショナ3で計測された動作電圧Vop1から初期特性として推定した電圧V’op1と常温時の開放電圧から、動作温度Tbを算出することが可能である。
以上詳述したように、本実施例の診断方法においては、選択した2つの時間帯におけるパワーコンディショナ3の計測値から、日射強度である単位面積当たりの日射量を計算する方法、動作温度を計算する方法、及びアレイ演算を活用することで、太陽電池アレイ2a内に存在する太陽電池モジュール1gの故障情報としての故障数と、全体劣化情報としての直列抵抗1dの値と、が求められる。
図8Aは、本発明の実施例1の太陽光発電システムにおける故障数と直列抵抗を算出する処理全体の演算アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
監視装置3jは、パワーコンディショナ3の電圧計3b及び電流計3aによって計測され、サンプリング処理部3eによってサンプリングされた電圧及び電流801(以下、それぞれ、PCS(Power Conditioner System)電圧及びPCS電流とも記載する)を、信号変換伝送装置3iを経由して受信すると、図8Aの処理を実行する。詳細には、インターフェイス部31jが受信したPCS電圧及びPCS電流801が監視装置3j内の記憶装置(例えばメモリ32j又はHDD33j)に格納され、CPU34jがメモリ32jに格納されたプログラムに従って図8Aの処理を実行する。後述する図8B及び図9の処理についても同様である。
まず、監視装置3jは、演算部810において、PCS電流から開始時刻を抽出する。詳細には、監視装置3jは、PCS電流から太陽電池アレイ2aに照射されている日射量(想定日射量)を算出し(ステップ811)、想定日射量を用いて、図6で説明した方法によって開始時刻を抽出する(ステップ812)。さらに、監視装置3jは、図6で説明した方法によって診断可否を決定し、診断可の場合は、開始時刻(1)から始まる時間帯と開始時刻(2)から始まる時間帯を設定する。
なお、図6に示す方法による開始時刻の抽出及び診断可否の判定を行うためには、それぞれの時刻の日射量の絶対値が分かる必要はなく、計測された日射量間の差の大きさが分かれば十分である。このため、ステップ811では、後述するステップ821等と同様の方法で想定日射量を算出する必要はなく、例えばPCS電流の値そのものを想定日射量として使用してもよい。あるいは、想定日射量の代わりに、日射計3gで計測された日射量を用いても良い。
次に、監視装置3jは、開始時刻(1)の時間帯におけるPCS電圧及びPCS電流の平均値、すなわちVop1及びIop1と、所定値に設定した直列抵抗Rsと、を用いて、開始時刻(1)の時間帯の太陽電池アレイ2aの初期状態における動作電圧V’op1を求める(ステップ803)。この計算は、図7(a)に示す方法で行われる。監視装置3jは、開始時刻(2)の時間帯についても同様に、PCS電圧及びPCS電流の平均値、すなわちVop2及びIop2と所定値に設定した直列抵抗Rsと、を用いて、開始時刻(2)の時間帯の太陽電池アレイ2aの初期状態における動作電圧V’op2を求める(ステップ804)。なお、上記の計算における直列抵抗Rsの初期値は例えば0であり、後述するステップ806において少しずつ増加してもよい。
次に、監視装置3jは、開始時刻(1)の時間帯については、演算部820を実行し、開始時刻(2)の時間帯については、演算部830を実行する。監視装置3jは、演算部820において、開始時刻(1)の時間帯における太陽電池アレイ2aの想定日射量1及び想定温度1を計算し(ステップ821)、演算部830において、開始時刻(2)の時間帯における太陽電池アレイ2aの想定日射量2及び想定温度2を計算する(ステップ831)。これらの処理の詳細について、図8Bを参照して説明する。
図8Bは、本発明の実施例1の太陽光発電システムにおける想定日射量及び想定温度を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
以下、ステップ821の詳細を説明するが、Vop1、Iop1、想定日射量1及び想定温度1をそれぞれVop2、Iop2、想定日射量2及び想定温度2に置き換えることによって、以下の説明をステップ831にも適用できる。
最初に、監視装置3jは、動作温度Tb=25℃として、式(4)及び式(5)を用いて、想定日射量1を計算する(ステップ841)。その後、監視装置3jは、式(11)を用いて、PCS電圧Vop1から想定温度1を計算する(ステップ842)。その後、監視装置3jは、式(2)及び式(3)を用いて想定日射量1の温度補正を行う(ステップ843)。
その後、監視装置3jは、再びPCS電圧Vop1から想定温度1を計算する(ステップ844)。監視装置3jは、ステップ843及び844の繰り返し回数が所定の回数(例えば3回)に達したか否かを判定し(ステップ845)、達していない場合には達するまでステップ843及び844を繰り返し実行する。ステップ845において繰り返し回数が所定の回数に達したと判定された場合、想定日射量1及び想定温度1が十分に収束したと考えられるため、監視装置3jは、ステップ821の処理を終了してステップ822に進む。
なお、ステップ845は、想定日射量1及び想定温度1の収束を判定するステップであり、その具体的な方法は上記のものに限定されない。すなわち、監視装置3jは、上記のように繰り返し回数に基づいて収束を判定してもよいし、例えば前回の想定日射量1及び想定温度1と今回の想定日射量1及び想定温度1とを比較して、それらの差が所定の値以下となった場合にそれらが収束したと判定してもよい。
想定日射量と想定温度が収束した後、監視装置3jは、開始時刻(1)の時間帯に関して、ステップ821で求められた想定日射量1及び想定温度1の条件のもとで、動作電圧V’op1におけるPCS想定電流を式(1)及びアレイ演算を用いて算出し(ステップ822)、算出されたPCS想定電流をPCS電流Iop1と比較する(ステップ823)。計測値であるPCS電流Iop1が、計算値であるPCS想定電流よりも小さい場合は、監視装置3jは、故障数1の設定を所定の数(例えば1)だけ増やし(ステップ824)、ステップ821に戻る。つまり、監視装置3jは、PCS電流Iop1が、PCS想定電流と同一になるまで、故障数1を増やしながら、演算部820を繰り返し実行する。これによって、PCS電流Iop1がPCS想定電流と同一になるような故障数1が設定される。なお、監視装置3jは、PCS電流Iop1とPCS想定電流との差が所定の値より小さくなった場合に、両者が同一であると判定してもよい。
例えば、監視装置3jは、演算部820を最初に実行するときに故障数1を「0」と設定し、その後、故障数1を1ずつ増加させながら演算部820を繰り返し実行してもよい。例えば故障数1が故障している太陽電池モジュール1gの数であり、太陽電池モジュール1gがN個の太陽電池セル1fを含む場合、故障数1を一つ増加させることで、上記の数式におけるNcellがN個減少するため、ステップ821及び822の計算結果が変化する。
監視装置3jは、ステップ804の後、演算部830において、開始時刻(2)の時間帯について演算部820と同様の計算を行い、故障数2を算出する。演算部830のステップ831〜834は、それぞれ、演算部820のステップ821〜824と同様であるため、説明を省略する。
最後に、監視装置3jは、故障数1と故障数2とを比較する(ステップ805)。直列抵抗Rsが真の値から遠ければ、故障数1と故障数2に乖離が生じるので、例えば、監視装置3jは、故障数1と故障数2との差が所定の閾値より大きい場合、その時点で設定されている直列抵抗Rsが真の値と異なると判定し、直列抵抗Rsの値を変化させ(ステップ806)、太陽電池アレイの初期状態における動作電圧V’op1及びV’op2を求めるステップ803及び804まで戻る。つまり、監視装置3jは、故障数1と故障数2が一致、又はそれらの差分が閾値以内という条件が満たされるまで、Rsの値を変更しながら、ステップ803、804、演算部820及び830を繰り返す。
故障数1と故障数2とが一致するか、又はそれらの差分が閾値以内であれば、それらの故障数1、2及びその時点で設定されている直列抵抗Rsが真の値に十分に近いと判定され、図8の処理が終了する。図8の処理が終了した時点で設定されている故障数1の値(故障数2の値と同等である)が故障による損失の程度を示す値として得られ、その時点で設定されているRsの値が劣化の程度を示す値として得られる。これらの値は、メモリ32jに格納される。さらに、監視装置3jは、上記の処理による推定の結果を、太陽光発電システムの管理者に提示するために出力してもよい。具体的には、監視装置3jは、例えば推定された故障数及びRsの値そのものを出力してもよいし、それらの値から故障による損失及び劣化による損失等を算出し、その結果を出力してもよい(図10参照)。
図10は、本発明の実施例1の太陽光発電システムにおいて表示される画面の一例の説明図である。
図10(a)は、電圧及び電流の計測単位であるパワーコンディショナ3ごとの太陽電池アレイ2aの診断結果の表示例である。この例では、パワーコンディショナ3ごとに、診断が行われた(すなわち診断の対象となるPCS電圧及びPCS電流が計測された)日時と、診断結果として得られた故障による損失と、劣化による損失(劣化率)とが表示される。この例では、各診断結果について、さらに「5秒データ表示」の選択を受け付ける欄があり、管理者がこの欄を操作(例えばクリック)すると、図10(b)に示すように、その診断結果を得るために使用された開始時刻(1)の時間帯と開始時刻(2)の時間帯の5秒ごとのPCS電圧及びPCS電流が並列に表示される。
以上、詳述した処理フローから、本実施例の太陽光発電システムでは、通常の太陽光発電システムで使用されている計測手段及び通信手段等を利用することで、それ以外の計測手段、通信手段、日射計又は温度計等を付加することなく、太陽電池アレイに照射されている日射量と動作温度を精度よく把握しながら、太陽電池アレイに存在するモジュール故障数及び直列抵抗の値を高い精度で検出し、故障による損失と劣化による損失とを切り分けることが可能になる。
次に、太陽光発電システムの診断方法の第2の実施例を説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例2のシステムの各部は、図1〜図8Bに示された実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
実施例2の監視装置3jは、選択した2つの時間帯それぞれについて、太陽電池アレイの初期特性の推定を行わないで、まず、太陽電池アレイに照射される日射量の算出、太陽電池アレイの想定温度の算出の2つの処理を行い、全体劣化分(直列抵抗起因の損失)を包括した故障数を求め、故障数1と故障数2の違いから直列抵抗を算出する。以下、それらの処理の詳細を説明する。
図5に示したように、直列抵抗に起因して損失が発生する場合は、Rs×Iop1の電圧降下とRs×Iop2の関係から、高日射条件による損失量が大きくなる。これに対し、バイパスダイオード1eがオンするような断線故障の場合は、発電に無効な太陽電池モジュール数と有効な太陽電池モジュール数の比が損失となるため、日射の高低によらず、損失は一定となる。
この関係を利用し、監視装置3jは、まず、開始時刻(1)の時間帯で、想定日射量、想定温度を求めながら算出された故障数1について、式(12)によって損失1を計算する。
損失1=故障数1/全モジュール数 ・・・(12)
ここで、損失1の成分が全て、直列抵抗によるものだと仮定すると、式(13)が成立する。
損失1=故障数1/全モジュール数
=Rs×Iop1/(Vop1+Rs×Iop1) ・・・(13)
同様に、監視装置3jは、開始時刻(2)の時間帯について、式(14)によって損失2を計算する。
損失2=故障数2/全モジュール数
=Rs×Iop2/(Vop2+Rs×Iop2) ・・・(14)
つまり、損失1=損失2となる場合は、式(13)と式(14)の連立方程式から、Rs=0となり、損失は全て、故障モジュールによる損失分と見てよく、損失1>損失2となる場合は、式(13)と式(14)から直列抵抗Rsが求まり、全体劣化による損失分が定量化される。
図9は、本発明の実施例2の太陽光発電システムにおける故障数と直列抵抗を算出する処理全体の演算アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図9に示す処理は、ステップ803及び804が省略され、ステップ805及び806がステップ901〜904によって置き換えられている点を除いて、図8に示す処理と同様である。ステップ803及び804が省略されているのは、本実施例の演算部820及び830ではRs=0と設定されている(すなわちV’op1=Vop1、V’op2=Vop2が成立する)ためである。ステップ805及び806がステップ901〜904によって置き換えられた結果、ステップ806から演算部820及び830の前のステップに戻るループも図9では削除されている。
演算部820及び830においてそれぞれ故障数1及び故障数2が算出されると、監視装置3jは、それらをそれぞれ太陽電池アレイを構成するモジュール数で割り、故障数1による損失及び故障数2による損失を計算し、両者を比較する(ステップ901)。
上記の計算において設定されていたRsの値が真のRsの値と一致する場合には、計算された故障数1による損失と故障数2による損失が等しくなるはずである。このため、例えば、監視装置3jは、ステップ901において故障数1による損失と故障数2による損失の差が所定の閾値より小さい場合に両者が等しいと判定して、故障数1による損失を故障による損失として検出する(ステップ904)。この場合、設定されたRsによる損失が全体劣化による損失として検出される。上記の例のようにRs=0と設定されている場合には、全体劣化による損失は0と推定される。
一方、上記の計算において設定されていたRsの値が真のRsの値と一致しない場合には、故障数1による損失と故障数2による損失が等しくならない。例えば、演算部820及び830においてRs=0と設定されていたが、実際には劣化によってRsが0ではない値となっていた場合には、計算された故障数1による損失が故障数2による損失よりも大きくなる。この場合、監視装置3jは、式(13)と式(14)の連立方程式から直列抵抗Rsを求め、全体劣化による損失分を計算する(ステップ902)。最後に、監視装置3jは、故障数1による損失から全体劣化による損失分を引いた値を、故障による損失分として検出する(ステップ903)。
以上、詳述した処理フローから、本実施例の太陽光発電システムでは、太陽電池アレイに照射されている日射量と動作温度を精度よく把握しながら、太陽電池アレイに存在するモジュール故障数及び直列抵抗の値を高い精度で検出し、故障による損失と劣化による損失を切り分けることが可能になる。監視装置3jは、上記のように切り分けた損失を、実施例1と同様の態様で出力することができる(例えば図10参照)。
以上詳述した本発明によれば、計測手段や通信手段を付加しない低コスト故障診断が、大規模太陽電池システムにおいて可能になり、利用可能性が極めて大きい。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1a 電流源
1b pn接合ダイオード
1c シャント抵抗
1d 直列抵抗
1e バイパスダイオード
1f 太陽電池セル
1g 太陽電池モジュール
1h 太陽電池ストリング
2a 太陽電池アレイ
2b 接続箱
2c 集電ラック
3 パワーコンディショナ
3j 監視装置

Claims (12)

  1. プロセッサと、前記プロセッサに接続される記憶装置と、を有する計算機システムが実行する太陽光発電システムの診断方法であって、
    前記太陽光発電システムは、相互に接続された複数の太陽電池セルを含む太陽電池アレイを有し、
    前記記憶装置は、前記太陽電池アレイが出力する電圧及び電流の計測値を保持し、
    前記太陽光発電システムの診断方法は、
    前記プロセッサが、第1時間帯と、前記第1時間帯より前記太陽電池アレイへの日射量が少ない第2時間帯と、を特定する第1手順と、
    前記プロセッサが、前記第1時間帯における前記計測値に基づいて、故障している前記太陽電池セルの数を算出する第2手順と、
    前記プロセッサが、前記第2時間帯における前記計測値に基づいて、故障している前記太陽電池セルの数を算出する第3手順と、
    前記プロセッサが、前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、を比較し、その結果に基づいて、前記各太陽電池セルの直列抵抗値と、前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値と、を特定する第4手順と、を含むことを特徴とする太陽光発電システムの診断方法。
  2. 請求項1に記載の太陽光発電システムの診断方法であって、
    前記第2手順において、前記プロセッサは、
    前記各太陽電池アレイの基準状態における特性と、前記計測値と、設定された前記各太陽電池セルの直列抵抗値と、設定された前記故障している太陽電池セルの数と、に基づいて、前記第1時間帯における前記太陽電池アレイへの日射量及び前記太陽電池アレイの動作温度を算出し、
    前記算出された日射量及び動作温度から前記第1時間帯における前記太陽電池アレイの想定電流を算出し、
    前記第1時間帯における太陽電池アレイの想定電流と前記第1時間帯において前記太陽電池アレイが出力する電流の計測値とが一致するように、前記故障している太陽電池セルの数を設定し、
    前記第3手順において、前記プロセッサは、
    前記各太陽電池アレイの基準状態における特性と、前記計測値と、設定された前記各太陽電池セルの直列抵抗値と、設定された前記故障している太陽電池セルの数と、に基づいて、前記第2時間帯における前記太陽電池アレイへの日射量及び前記太陽電池アレイの動作温度を算出し、
    前記算出された日射量及び動作温度から前記第2時間帯における前記太陽電池アレイの想定電流を算出し、
    前記第2時間帯における太陽電池アレイの想定電流と前記第2時間帯において前記太陽電池アレイが出力する電流の計測値とが一致するように、前記故障している太陽電池セルの数を設定することを特徴とする太陽光発電システムの診断方法。
  3. 請求項2に記載の太陽光発電システムの診断方法であって、
    前記プロセッサは、前記第4手順で前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一であると判定されるまで、前記第2手順から前記第4手順を繰り返し実行し、
    前記第4手順において、前記プロセッサは、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一でない場合、前記設定された各太陽電池セルの直列抵抗値を変更し、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一である場合、前記設定された各太陽電池セルの直列抵抗値を、前記各太陽電池セルの直列抵抗値として特定し、前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数を、前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値として特定することを特徴とする太陽光発電システムの診断方法。
  4. 請求項2に記載の太陽光発電システムの診断方法であって、
    前記第4手順において、前記プロセッサは、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一でない場合、前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、の差に基づいて前記各太陽電池セルの直列抵抗値を算出し、前記第1時間帯について算出された数の前記太陽電池セルの故障による損失から前記算出された直列抵抗値に基づく損失を減算した値を前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値として算出し、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一である場合、前記第1時間帯について算出された数の前記太陽電池セルの故障による損失を、前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値として算出することを特徴とする太陽光発電システムの診断方法。
  5. 請求項1に記載の太陽光発電システムの診断方法であって、
    前記第1手順は、前記プロセッサが、所定の期間のうち最も日射量が多い時間帯を前記第1時間帯として特定し、前記所定の期間のうち最も日射量が少ない時間帯を前記第2時間帯として特定する手順を含むことを特徴とする太陽光発電システムの診断方法。
  6. 請求項1に記載の太陽光発電システムの診断方法であって、
    前記第1手順は、前記プロセッサが、前記日射量の変化が所定の値より小さい時間帯を前記第1時間帯及び前記第2時間帯として特定する手順を含むことを特徴とする太陽光発電システムの診断方法。
  7. 太陽光発電システムの監視装置であって、
    前記監視装置は、プロセッサと、前記プロセッサに接続される記憶装置と、を有し、
    前記太陽光発電システムは、相互に接続された複数の太陽電池セルを含む太陽電池アレイを有し、
    前記記憶装置は、前記太陽電池アレイが出力する電圧及び電流の計測値を保持し、
    前記プロセッサは、
    第1時間帯と、前記第1時間帯より前記太陽電池アレイへの日射量が少ない第2時間帯と、を特定する第1手順と、
    前記第1時間帯における前記計測値に基づいて、故障している前記太陽電池セルの数を算出する第2手順と、
    前記第2時間帯における前記計測値に基づいて、故障している前記太陽電池セルの数を算出する第3手順と、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、を比較し、その結果に基づいて、前記各太陽電池セルの直列抵抗値と、前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値と、を特定する第4手順と、を実行することを特徴とする太陽光発電システムの監視装置。
  8. 請求項7に記載の太陽光発電システムの監視装置であって、
    前記第2手順において、前記プロセッサは、
    前記各太陽電池アレイの基準状態における特性と、前記計測値と、設定された前記各太陽電池セルの直列抵抗値と、設定された前記故障している太陽電池セルの数と、に基づいて、前記第1時間帯における前記太陽電池アレイへの日射量及び前記太陽電池アレイの動作温度を算出し、
    前記算出された日射量及び動作温度から前記第1時間帯における前記太陽電池アレイの想定電流を算出し、
    前記第1時間帯における太陽電池アレイの想定電流と前記第1時間帯において前記太陽電池アレイが出力する電流の計測値とが一致するように、前記故障している太陽電池セルの数を設定し、
    前記第3手順において、前記プロセッサは、
    前記各太陽電池アレイの基準状態における特性と、前記計測値と、設定された前記各太陽電池セルの直列抵抗値と、設定された前記故障している太陽電池セルの数と、に基づいて、前記第2時間帯における前記太陽電池アレイへの日射量及び前記太陽電池アレイの動作温度を算出し、
    前記算出された日射量及び動作温度から前記第2時間帯における前記太陽電池アレイの想定電流を算出し、
    前記第2時間帯における太陽電池アレイの想定電流と前記第2時間帯において前記太陽電池アレイが出力する電流の計測値とが一致するように、前記故障している太陽電池セルの数を設定することを特徴とする太陽光発電システムの監視装置。
  9. 請求項8に記載の太陽光発電システムの監視装置であって、
    前記プロセッサは、前記第4手順で前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一であると判定されるまで、前記第2手順から前記第4手順を繰り返し実行し、
    前記第4手順において、前記プロセッサは、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一でない場合、前記設定された各太陽電池セルの直列抵抗値を変更し、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一である場合、前記設定された各太陽電池セルの直列抵抗値を、前記各太陽電池セルの直列抵抗値として特定し、前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数を、前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値として特定することを特徴とする太陽光発電システムの監視装置。
  10. 請求項8に記載の太陽光発電システムの監視装置であって、
    前記第4手順において、前記プロセッサは、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一でない場合、前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、の差に基づいて前記各太陽電池セルの直列抵抗値を算出し、前記第1時間帯について算出された数の前記太陽電池セルの故障による損失から前記算出された直列抵抗値に基づく損失を減算した値を前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値として算出し、
    前記第1時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、前記第2時間帯について算出された前記故障している太陽電池セルの数と、が同一である場合、前記第1時間帯について算出された数の前記太陽電池セルの故障による損失を、前記太陽電池セルの故障による損失の程度を示す値として算出することを特徴とする太陽光発電システムの監視装置。
  11. 請求項7に記載の太陽光発電システムの監視装置であって、
    前記第1手順において、前記プロセッサは、所定の期間のうち最も日射量が多い時間帯を前記第1時間帯として特定し、前記所定の期間のうち最も日射量が少ない時間帯を前記第2時間帯として特定することを特徴とする太陽光発電システムの監視装置。
  12. 請求項1に記載の太陽光発電システムの監視装置であって、
    前記第1手順において、前記プロセッサは、前記日射量の変化が所定の値より小さい時間帯を前記第1時間帯及び前記第2時間帯として特定することを特徴とする太陽光発電システムの監視装置。
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