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JP2016129529A - 吸収性物品 - Google Patents

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JP2016129529A JP2015003803A JP2015003803A JP2016129529A JP 2016129529 A JP2016129529 A JP 2016129529A JP 2015003803 A JP2015003803 A JP 2015003803A JP 2015003803 A JP2015003803 A JP 2015003803A JP 2016129529 A JP2016129529 A JP 2016129529A
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Abstract

【課題】複数層の吸収体を有する吸収性物品の吸収能力,液拡散性,及び捕集能力を高める。【解決手段】本発明の吸収性物品は,肌対向面側に位置する液透過性のトップシート10と,肌非対向面側に位置する液不透過性のバックシート20と,トップシート10とバックシート20の間に介在し厚み方向に重ねられた複数の吸収体と,を備える。複数の吸収体は,少なくとも,トップシート10側に位置する上層吸収体30と,バックシート20側に位置する下層吸収体40とを含む。上層吸収体30は,長手方向に延び所定の長さ及び幅を持つ上側開口部31を有し,下層吸収体40は,長手方向に延び上側開口部31よりも短い長さ及び幅を持つ下側開口部41を有する。上側開口部31と下側開口部41は,少なくとも部分的に厚み方向に重なっている。【選択図】図2

Description

本発明は,着用者の股下に装着され,尿などの液体を吸収し保持するための吸収性物品に関する。
従来から,排泄された体液を吸収保持することを目的として,着用者の股下に装着される吸収性物品が知られている。吸収性物品の例は,使い捨ておむつ,吸収性パッド,及び生理用ナプキンである。また,使い捨ておむつとしては,例えば,前身頃と後身頃の左右両側部が接合されているパンツ型のものや,後身頃に取り付けられた止着テープを前身頃に取り付けて着用されるテープ型ものが知られている。
また,一般的な吸収性物品は,液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に,吸収性繊維と高吸水性ポリマー(SAP)などによって構成された吸収体が設けられている。このような吸収性物品は,吸収体の肌対向面をトップシートによって被覆し,吸収体の肌非対向面をバックシートによって被覆した構成となっている。このため,着用者が排泄した尿などの液体は,トップシートを透過して吸収体に吸収し保持される。また,吸収体に保持されている液体は,吸収体の裏面側に配置された液不透過性のバックシートによって外部に漏洩することが防止されている。
ところで,従来から,吸収性物品を構成する吸収体に,厚み方向に貫通する開口部(スリット)を形成する技術が知られている(特許文献1,特許文献2,特許文献3)。このようなスリットは,液体の拡散性を高めることや,着用者の身体に対するフィット性を高めること,便などの固形物が着用者の肌に長時間触れるのを防止すること,吸収体を屈曲させやすくすることなどの種々の目的で吸収体に形成されている。
例えば,特許文献1には,単層の吸収体に対して,Y字型の開口部を形成する技術が開示されている。また,特許文献2及び特許文献3には,複数の吸収体を厚み方向に重ねて,それぞれの吸収体に開口部を形成する技術が開示されている。特に,特許文献2の吸収性物品は,上層吸収体に上貫通孔を形成するとともに,下層吸収体に下貫通孔を形成し,この上貫通孔と下貫通孔を非重畳的に配置することとしている。また,特許文献3の吸収性物品は,肌対向面側に位置する第1層と肌非対向面側に位置する第2層を設け,第1層には,左右両側にサイドスリットを形成し,第2層には,中央に位置する中央開口とその左右両側に位置するサイドスリットとを形成している。ここで,第1層のサイドスリットと第2層のサイドスリットは,ほぼ同じ長さと同じ幅を有しており,互いに重ねて設けられている。
特開2012−090818号公報 特開2010−200968号公報 特開2014−014726号公報
上記特許文献1から特許文献3に示されるように,吸収体に開口部(スリット)を形成することで,尿などの液体と接触する吸収体の表面積が拡大するため,吸収体の吸収力が向上する。また,液体が吸収体の開口部に沿って拡散するため,吸収体に開口部を設けることで吸収体の液拡散性を向上させることが可能である。また,特許文献2及び特許文献3の吸収性物品のように,吸収体を2層以上に重ねて,上層の吸収体に開口部を設けておくことで,排泄された液体が,上層の吸収体の開口部を通じて,下層の吸収体へと導かれる。これにより,上層の吸収体と下層の吸収体の両方の吸収能力を活用することができると考えられる。従って,開口が形成された複数の吸収体を積層することは,液体の吸収力や液拡散性を高めるという観点において好ましいといえる。
しかしながら,特許文献2の吸収性物品は,上層吸収体の貫通孔と下層吸収体の貫通孔とが非重畳的に配置されおり,着用者によって排泄された液体が上層吸収体の貫通孔を通過しても,下層吸収体の貫通孔に流れ込むような構成にはなっていない。このため,特許文献2の吸収性物品は,下層吸収体の貫通孔が,液体の吸収力向上や液拡散性の向上に寄与するものではなかった。
また,特許文献3の吸収性物品は,吸収体の第1層のサイドスリットと第2層のサイドスリットとを重ねて設けている。このため,特許文献3の吸収性物品においては,着用者によって排泄された液体が,第1層のサイドスリットを通過して,さらに第2層のサイドスリットへと到達する可能性があり,吸収力の向上が期待される。しかしながら,一般的な吸収性物品は,着用者の両脚部の間に挟まれるようにして股下に装着されるものであり,着用者の股下に装着された状態において,幅方向に圧縮されることとなる。この場合に,特許文献3の吸収性物品のように,上層の吸収体の開口と下層の吸収体の開口がほぼ同じ長さ及び幅で形成されていると,着用者の股下に装着されたときに,幅方向への圧縮を受けて,上層と下層の開口部の両方が同時に潰れてしまうおそれがあった。このように,開口部を形成するための空間が潰れてしまうと,上層の吸収体の開口部から下層の吸収体へと液体が流れ落ちにくくなり,下層の吸収体の吸収能力を十分に活かすことができないという問題がある。また,上層の吸収体の開口部が潰れてしまうと,この開口部に沿って液体が拡散しにくくなるため,吸収体全体として液拡散性が低下するという問題がある。
さらに,特許文献3の吸収性物品のように,上側と下側の開口部がほぼ同じ長さ及び幅で形成されていると,上層の開口部に流れ込んだ液体が,下層の吸収体によって捕集されずに,下層の開口部をそのまま通過してバックシートに到達することがある。このような場合,下層の吸収体によって,着用者が排泄した液体を効率的に捕集することができないという問題があった。
このため,現在では,開口部が形成された複数層の吸収体を有する吸収性物品において,各層の吸収体の吸収能力,液拡散性,及び捕集能力を効率的に活用するための技術が求められている。
本発明の発明者らは,従来の課題の解決手段について鋭意検討した結果,開口部が形成された複数層の吸収体を有する吸収性物品において,上層吸収体の開口部を下層吸収体の開口部よりも大きく形成し,且つ,上層と下層の開口部を重畳的に配置することとした。このように,比較的大きい上層の開口部と比較的小さい下層の開口部を少なくとも部分的に重ねて配置することで,各層の吸収体の吸収能力,液拡散性,及び捕集能力を効率的に活用することができるという知見を得た。そして,本発明者らは,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
本発明は,使い捨ておむつや吸収性パッドなどの吸収性物品に関する。
本発明の吸収性物品は,装着時において着用者の腹側に位置する前身頃1と着用者の背側に位置する後身頃2の間に位置する股下部3を有している。
本発明の吸収性物品は,肌対向面側に位置する液透過性のトップシート10と,肌非対向面側に位置する液不透過性のバックシート20と,これらのトップシート10とバックシート20の間に介在して厚み方向に重ねられた複数の吸収体と,を備える。
ここで,複数の吸収体は,少なくとも,トップシート10側に位置する上層吸収体30と,バックシート20側に位置する下層吸収体40と,を含む。
上層吸収体30は,長手方向に延び,所定の長さ及び幅を持つ上側開口部31を有している。また,下層吸収体40は,長手方向に延び,上側開口部31よりも短い長さ及び幅を持つ下側開口部41を有している。
そして,上側開口部31と下側開口部41は,少なくとも部分的に厚み方向に重なっている。
上記構成のように,上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41とを重ねることにより,着用者の排泄した液体が,上側開口部31を通じて下側開口部41へと導かれるため,各吸収体の広い範囲で液体を吸収することが可能となる。また,上側開口部31を下側開口部41よりも大きく形成することで,吸収性物品の装着時に,上層吸収体30と下層吸収体40とが幅方向に圧縮されて下側開口部41が塞がってしまう場合でも,上側開口部31を広げておくことができる。これにより,吸収性物品が装着された状態であっても,上側開口部31を通じて,尿などの液体を下層吸収体40へと導くことができるため,吸収性物品の吸収能力を向上させることができる。また,尿などの液体は上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41に沿って拡散されるため,吸収性物品全体の液拡散性を高めることができる。さらに,上層吸収体30の上側開口部31よりも下層吸収体40の下側開口部41を小さくしておくことで,上側開口部31を抜けた液体が,下層吸収体40によって捕集されやすくなる。つまり,排泄された液体が,上側開口部31と下側開口部41の両方を抜けて,吸収体によって捕集されずにバックシート20へと到達する可能性を低く抑えることができる。従って,上記構成によれば,吸収性物品の吸収能力,液拡散性,及び捕集能力を向上させることができる。
本発明の吸収性物品において,上層吸収体30と下層吸収体40の間には,液拡散性シートが配置されていることが好ましい。特に,この液拡散性シートは,上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41の間に位置していることが好ましい。
上記構成のように,開口部31,41が形成された各吸収体30,40の間に液拡散性シートを配置しておくことで,上層吸収体30によって吸収された液体や上側開口部31を通過した液体が,液拡散性シートによって広い範囲に拡散される。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40が持つ吸収能力を効率良く活用することが可能になる。
本発明の吸収性物品は,SAP層50をさらに備えることが好ましい。このSAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に複数の高吸水性ポリマー(SAP)が配置されることにより形成された層である。
この場合に,SAP層50は,少なくとも,下側開口部41の幅方向の左右両側に形成されていることが好ましい。
上記構成のように,上層吸収体30と下層吸収体40の間にSAP層50を設けておくことで,液拡散性シートによって拡散された液体を迅速に吸収することができる。また,SAP層50を,上層吸収体30と下層吸収体40の間に配置することで,液体を吸収して体積が膨張しても,その感触が着用者に伝わりにくくなる。
本発明の吸収性物品において,SAP層50は,下側開口部41の幅方向の左右両側であって,上側開口部31と厚み方向に重ならない領域に形成されていることが好ましい。
上記構成のように,SAP層50を上層吸収体30の上側開口部31と重ならない位置に配置することで,このSAP層50を上層吸収体30と下層吸収体40とによって挟み込んで固定することができる。このため,吸収性物品の着用者が動いたりしても,SAP層50を構成する高吸水性ポリマーが,上側開口部31や下側開口部41の中に入り込むことを防止できる。すなわち,高吸水性ポリマーが開口部31,41の中に入り込むと,このポリマーが液体を吸収したときに開口部31,41を塞いでしまい,吸収体30,40の液拡散性を損なうおそれがある。また,これらの開口部31,41には吸収体30,40を構成する繊維材料などが配置されていないため,高吸水性ポリマーが開口部31,41に入り込むと,高吸水性ポリマーのざらざらとした感触が着用者に伝わってしまい,肌触りが良くないものとなる。従って,高吸水性ポリマーが開口部31,41内に脱落することを防止するために,SAP層50を上層吸収体30の上側開口部31と重ならない位置に配置することが好ましい。
本発明の吸収性物品において,上層吸収体30と下層吸収体40の両方又はいずれか一方は,低密度領域71と高密度領域72を有するものであることが好ましい。低密度領域71とは,上側開口部31又は下側開口部41の幅方向の左右両側において,吸収体を構成する繊維の密度が比較的低くなっている領域である。高密度領域72とは,低密度領域71の幅方向の左右外側において,吸収体を構成する繊維の密度が比較的高くなっている領域である。
上記構成のように,上層吸収体30や下層吸収体40の幅方向の外側に高密度領域72を形成することで,吸収体30,40の保型性が高まる。このため,上層吸収体30や下層吸収体40を積み重ねても,各吸収体30,40が位置ずれを起こしにくくすることができる。また,着用時には吸収体は着用者の両脚に挟まれる事により圧縮され,さらに前後方向に動かされることになるが,吸収体の保型性を高くすることでマットが割れる現象を起こりにくくすることができる。ただし,吸収体30,40の全体の繊維密度を高くしてしまうと,吸収体30,40の吸収能力や液拡散性が低下するおそれがある。そこで,本発明の好ましい形態では,上側開口部31や下側開口部41が形成されている幅方向の中央付近において,上層吸収体30や下層吸収体40の繊維密度を低くし,吸収能力や液拡散性を維持している。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40の吸収性能と保型性を両立させることができる。
本発明によれば,開口部が形成された複数層の吸収体を有する吸収性物品において,各層の吸収体の吸収能力,液拡散性,及び捕集能力を効率的に活用することができる。
図1は,第1の実施形態に係る吸収性物品を示した平面図である。 図2は,図1に示したX1−X1線における断面図である。 図3は,第2の実施形態に係る吸収性物品を示した平面図である。 図4は,図3に示したX2−X2線における断面図である。 図5は,第3の実施形態に係る吸収性物品の断面図である。
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
また,本願明細書において,「長手方向」とは,吸収性物品のうち,着用者の腹部側に位置する前身頃と着用者の背部側に位置する後身頃とを結ぶ方向を意味する。また,「幅方向」とは,吸収性物品の長手方向に平面的に直交する方向を意味する。本願の図において,吸収性物品の長手方向はY軸で示されており,吸収性物品の幅方向はX軸で示されている。
また,本願明細書において,「肌対向面」とは,吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向する面を意味する。また,「肌非対向面」とは,吸収性物品の着用時において着用者の肌に対向しない面を意味している。
[1.第1の実施形態]
まず,図1及び図2を参照して,本発明に係る吸収性物品100の第1の実施形態について説明する。図1は,第1の実施形態に係る吸収性物品100を示した平面図である。また,図2は,図1に示したX1−X1線における吸収性物品100の断面構造を模式的に示した断面図である。なお,図2の断面図において,吸収性物品100の構成を分かりやすく示すために,各種の構成部材の間に隙間を設けて描画しているが,実際には構成部材の間には隙間はほとんど形成されない。
本実施形態に係る吸収性物品100は,吸収性パッドに関する。吸収性パッドは,単独でも使用することもできるし,パンツ型やテープ型の使い捨ておむつの内面側に重ねて使用することも可能である。図1に示されるように,吸収性物品100は,着用者の腹部側に位置する前身頃1と,着用者の背部側に位置する後身頃2と,これらの間に位置する股下部3とに,長手方向に区分することができる。具体的に説明すると,吸収性物品100は,その平面視において,ひょうたん型若しくは砂時計型と表現することのできる形状となっている。すなわち,吸収性物品100は,股下部3に,吸収性物品100の横幅が最も狭くなった部位であるくびれ部が存在する。他方で,吸収性物品100の前身頃1と後身頃2には,股下部3のくびれ部よりも幅方向の左右外側に延出する部位であるサイドフラップが存在する。つまり,サイドフラップが形成された部分において,前身頃1と後身頃2の横幅は,股下部3のくびれ部における横幅よりも広く形成されている。このように,吸収性物品100はひょうたん型(砂時計型)とすることができる。ただし,吸収性物品100の形状は適宜変更することができ,例えば単純な矩形状とすることも可能である。
また,図1及び図2に示されるように,吸収性物品100は,基本的に,液透過性のトップシート10と,液不透過性のバックシート20と,これらの間に介在する複数の吸収体30,40を有している。図2の断面図に示されるように,複数の吸収体30,40は厚み方向に重ねられている。また,トップシート10は,積層された吸収体30,40の肌対向面側を被覆しており,バックシート20は,積層された吸収体30,40の肌非対向面側を被覆している。図1及び図2に示されるように,吸収体30,40の周囲においては,トップシート10とバックシート20が互いに接合されている。これにより,吸収体30,40は,トップシート10とバックシート20の接合部によって周囲を囲われたものとなる。
トップシート10は,着用者の股下の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体30,40へ透過させるためのシート状の部材である。このため,トップシート10は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。トップシート10を構成する液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。不織布としては,エアスルー不織布,ポイントボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブロー不織布などを挙げることができる。
バックシート20は,トップシート10透過して吸収体30,40に吸収された液体が,おむつの外部へ漏出することを防止するためのシート状の部材である。このため,バックシート20は,液不透過性材料によって構成される。バックシート20を構成する液不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,バックシート20としては,液不透過性を維持しつつ通気性を確保するために,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
吸収体30,40は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体30,40は,液透過性のトップシート10と,液不透過性のバックシート20の間に配置される。本実施形態に係る吸収性物品100は,トップシート10側に位置する上層吸収体30とバックシート20側に位置する下層吸収体40との2つの吸収体を備えている。上層吸収体30と下層吸収体40は,それぞれ,公知の吸収性材料により構成することができる。吸収性材料としては,例えば,針葉樹などの繊維材料を解砕してなるフラッフパルプや,高吸水性ポリマー(SAP),親水性シートを用いることとしてもよい。また,吸収性材料には,フラッフパルプ,高吸水性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を組合せて併用することとしてもよい。
本実施形態において,上層吸収体30は,フラッフパルプと高吸水性ポリマーを組み合わせたものであり,複数の粒状の高吸水性ポリマーがフラッフパルプによって担持された構成となっている。他方で,下層吸収体40は,フラッフパルプのみからなり,高吸水性ポリマーは分布していない。このように,複数の吸収体のうち,少なくとも着用者の肌に近い位置に位置する上層吸収体30に高吸水性ポリマーを含有させるとともに,この高吸水性ポリマーを含有しない下層吸収体40を設けることが,本発明の好ましい形態である。上層吸収体30が高吸水性ポリマーを含むものであることにより,尿などの液体をこの上層吸収体30によって迅速に吸収することができるため,吸収性物品100の表面がサラサラし,着用者に不快感を与えることを回避できる。他方,下層吸収体40においては,上層吸収体30によって吸収しきれなかった液体を吸収することになる。このとき,下層吸収体40に高吸水性ポリマーを設けて吸収速度を高めるよりは,むしろ高吸水性ポリマーを設けずに下層吸収体40の広い範囲で液体を吸収する方が,液体の吸収量を向上させるという観点において効果的である。このため,本実施形態では,上層吸収体30にのみ高吸水性ポリマーを散布し,下層吸収体40には敢えて高吸水性ポリマーを散布しない構成となっている。
図1及び図2に示されるように,本発明において,上層吸収体30には上側開口部31が形成されている。上側開口部31は,上層吸収体30の厚み方向に貫通した孔(スリット)である。上側開口部31は,少なくとも,上層吸収体30のうち,着用者が排泄した尿に最初に直接触れやすい部位に形成される。具体的には,図1に示されるように,上側開口部31は股下部3に形成される。例えば,上側開口部31は,股下部3内の一部分に形成されたものであってもよいし,股下部3を超えて前身頃1及び後身頃2の両方又はいずれか一方にまで延出するように形成されていてもよい。また,上側開口部31は,股下部3の幅方向の中心部分に位置していることが好ましい。例えば,股下部3を,幅方向に,左部分,中央部分,及び右部分の3つの領域に等分した場合に,上側開口部31は,この股下部3の中央部分に位置していることが好ましい。
上記のように,上層吸収体30の股下部3に上側開口部31を形成することで,着用者によって排泄された尿が,この上側開口部31に沿って長手方向に拡散する。また,上側開口部31を形成することで上層吸収体30の表面積が増えるため,尿などの液体を迅速に吸収することができる。さらに,上層吸収体30上に排泄された尿などの液体を,上側開口部31を通じて,下層吸収体40へと導くことができる。これにより,上層吸収体30と下層吸収体40の両方によって,液体を効率的に吸収することが可能になる。
図1及び図2に示されるように,上側開口部31は,所定の長さL1(最大値)と所定の横幅W1(最大値)を有している。上側開口部31の長さL1と横幅W1は,吸収性物品100の大きさに合わせて適宜調節すればよい。例えば,吸収性物品100が大人用の吸収性パッドである場合,上側開口部31の長さL1は,100mm〜300mm,又は150mm〜250mmとすればよい。また,上側開口部31の横幅W1は,少なくとも長さL1よりも短いものであって,例えば,5mm〜35mm,又は10mm〜30mmとすればよい。このように,上側開口部31は,長手方向に長い形状となる。図1に示された例において,上側開口部31は,長手方向に延びる長方形状に形成されている。ただし,上側開口部31の形状は,図示されたものに限られず,例えば三角形や,五角形,その他の多角形,円形など種々の形状を採用することも可能である。
また,図1及び図2に示されるように,本発明において,下層吸収体40には下側開口部41が形成されている。下側開口部41は,下層吸収体40の厚み方向に貫通した孔(スリット)である。下側開口部41は,所定の長さL2(最大値)と所定の横幅W2(最大値)を有している。ここで,図に示されるように,下層吸収体40の下側開口部41の長さL2と横幅W2は,それぞれ,上層吸収体30の上側開口部31の長さL1と横幅W1よりも短くなっている(L2<L1,W2<W1)。例えば,下側開口部41の長さL2は,上側開口部31の長さL1に対して,40%〜95%,又は50%〜90%であることが好ましい。また,下側開口部41の横幅W2は,上側開口部31の横幅W1に対して,30%〜95%,又は40%〜90%であることが好ましい。このように,下側開口部41の長さ及び横幅が上側開口部31の長さ及び横幅よりも短いため,基本的に,下側開口部41の開口面積は,上側開口部31の開口面積よりも小さくなる。図1に示されるように,下側開口部41の形状は,上側開口部31と相似となる長方形状であることが好ましい。ただし,下側開口部41の形状は,上側開口部31と相似形でなくてもよく,三角形や,五角形,その他の多角形,円形など種々の形状を採用することができる。
また,下層吸収体40の下側開口部41は,上層吸収体30の上側開口部31と少なくとも部分的に重畳する位置に形成されている。特に,図1に示されるように,下側開口部41は,その全体が,上側開口部31に重なっていることが好ましい。ただし,下側開口部41は,上側開口部31と重ならない部分を有していてもよい。例えば,下側開口部41の全体の面積を100%とした場合に,下側開口部41は,その面積の50%〜100%又は90%〜100%が,上側開口部31と重なるものであることが好ましい。このように,下側開口部41の一部又は全部を上側開口部31と重ねることで,これらの2つの開口部31,41が連通するようになる。
上記のように,上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41とを連通させることで,着用者の排泄した液体が,上側開口部31を通じて下側開口部41へと導かれるため,各吸収体30,40の広い範囲で液体を吸収することができる。また,吸収性物品100が着用者の股下に装着されると,各吸収体30,40が幅方向に圧縮されると考えられる。このとき,上側開口部31を下側開口部41よりも大きく形成しておくことで,各吸収体30,40が幅方向に圧縮されて下側開口部41が塞がってしまった場合であっても,上側開口部31の空間を維持することができる。これにより,吸収性物品の装着時にも,上側開口部31を通じて,尿などの液体を下層吸収体40へと導くことができ,吸収性物品の吸収能力を向上させることができる。また,尿などの液体は上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41に沿って拡散されるため,吸収性物品全体の液拡散性を高めることができる。さらに,上層吸収体30の上側開口部31よりも下層吸収体40の下側開口部41を小さくしておくことで,上側開口部31を抜けた液体を,下層吸収体40によって捕集しやすくなる。
図1及び図2に示されるように,本実施形態において,上層吸収体30と下層吸収体40の形状は異なっている。つまり,上層吸収体30は,いわゆるひょうたん型又は砂時計型に成型されているのに対し,下層吸収体40は,長方形状に成型されている。このように,上層吸収体30と下層吸収体40の形状を異ならせることもできる。特に,上層吸収体30は,下層吸収体40上に重ねたときに,前身頃1及び後身頃2において,この下層吸収体40よりも幅方向外側に向かって広がる延出部32を有している。従って,本実施形態において,上層吸収体30は,延出部32の分だけ,下層吸収体40よりも大きく形成されている。このように,上層吸収体30のサイズを大きくすることで,尿などが排泄されたときに,この上層吸収体30の広い範囲で迅速に吸収することができるため,尿漏れの防止に繋がる。また,上層吸収体30の下方に配置する下層吸収体40も,上層吸収体30と同様に,ひょうたん型に成型することも考えられるが,吸収性物品100の着用感が低下するおそれがあるため,あまり好ましくはない。そこで,本実施形態のように,下層吸収体40の形状は上層吸収体30よりも小さい長方形状としておくことで,吸収性物品100全体の吸収量を増加させるととともに,着用感を良好に維持することができる。
図2の断面図に示されるように,本実施形態に係る吸収性物品100は,第1拡散シート61,第2拡散シート62,及び第3拡散シート63を,さらに備えている。図2に示されるように,第1拡散シート61は,トップシート10と上層吸収体30の間に配置されている。また,第2拡散シート62は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に配置されている。また,第3拡散シート63は,下層吸収体40とバックシート20の間に配置されている。本実施形態において,第2拡散シート62と第3拡散シート63は,一枚のシート部材から構成されたものあり,両者は,下層吸収体40の周囲を被包するように一体的に繋がったものとなっている。このように,各拡散シート61〜63は,それぞれ別々のシート部材から構成されたものであってもよいし,繋がったシート部材から構成されていてもよい。
第1拡散シート61,第2拡散シート62,及び第3拡散シート63は,液体を吸収して拡散可能な液拡散性を有するシート状の部材である。各拡散シート61〜63は,例えば,ティッシュペーパのような薄葉紙であってもよいし,不織布であってもよい。不織布としては,エアスルー不織布,ポイントボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブロー不織布などを挙げることができる。
図2に示されるように,第1拡散シート61は,上層吸収体30の上側開口部31を肌対向面側から被覆している。また,第2拡散シート62は,上層吸収体30の上側開口部31を肌非対向面側から被覆するとともに,下層吸収体40の下側開口部41を肌対向面側から被覆している。さらに,第3拡散シート63は,下層吸収体40の下側開口部41を肌非対向面側から被覆している。このように,それぞれの開口部31,41を含めて,各吸収体30,40を液拡散性のシート部材によって被覆することで,開口部31,41に流れ込む液体を効率的に拡散させることができる。これにより,2つの吸収体30,40の広い範囲で液体が吸収されるため,2つの吸収体30,40の吸収能力を効果的に活用することができる。特に,上層吸収体30と下層吸収体40の隙間には液体が浸透しにくい。そこで,上層吸収体30と下層吸収体40の隙間に第2拡散シート62を設けることで,通常であれば液体を吸収しにくいとされる上層吸収体30と下層吸収体40の隙間の領域にも液体を浸透させることができる。
図2の断面図に示されるように,本実施形態に係る吸収性物品100は,さらに,SAP層50を有する。このSAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に形成されている。SAP層50は,複数の粒状の高吸水性ポリマー(SAP)が集まることによって形成された層である。SAP層50は,複数の高吸水性ポリマーが上層吸収体30と下層吸収体40によって挟み込まれることで,これらの吸収体30,40の間に保持されている。高吸水性ポリマー(SAP)としては公知の素材を用いればよい。例えば,高吸水性ポリマーは,自重の100倍〜1000倍程度の液体を吸収する。高吸水性ポリマーとしては,例えば,液体の吸収前の乾燥状態において0.1mm〜0.5mm程度の直径を有するものを採用すればよい。
上記のように,上層吸収体30と下層吸収体40の間にSAP層50を設けておくことで,第2拡散シート62によって上層吸収体30と下層吸収体40の間に導かれた液体を,このSAP層50によって迅速に吸収することができる。従って,上層吸収体30の上側開口部31に流れ込んだ液体を,第2拡散シート62によって広い範囲に拡散させながら,SAP層50によって確実に捕集できる。これにより,上層吸収体30の中央部分や上側開口部31の中に大量の液体が排出されても,その液体が外部に漏洩することを防止することが可能である。また,SAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間に配置されているため,このSAP層50が大量の液体を吸収して体積が膨張しても,その感触が着用者に伝わりにくい。従って,液体の排泄前と排泄後とで変わらない良好な装着感を,着用者に提供できる。
また,SAP層50は,少なくとも,下側開口部41の幅方向の左右両側に形成されている。特に,SAP層50は,下側開口部41の幅方向の左右両側であって,且つ,上側開口部31の幅方向の左右両側に形成されていることが好ましい。このように,SAP層50を上側開口部31と下側開口部41の両方に重ならない範囲に設けることで,SAP層50全体を完全に上層吸収体30と下層吸収体40とによって挟み込むことができる。このため,吸収性物品の着用者が大きく動いたような場合であっても,SAP層50を構成する高吸水性ポリマーが,上側開口部31や下側開口部41の中に脱落することを防止できる。高吸水性ポリマーが開口部31,41の中に脱落すると,このポリマーが液体を吸収したときに開口部31,41を塞いでしまうおそれや,高吸水性ポリマーのざらざらとした感触が着用者に伝わるおそれがある。この点,SAP層50を上側開口部31と下側開口部41の両方に重ならない範囲に設けることで,高吸水性ポリマーが開口部31,41内に脱落することをより確実に防止できる。なお,図示は省略するが,SAP層50は,上側開口部31や下側開口部41の長手方向の前後両側に形成されていてもよい。
また,図2に示されるように,SAP層50は,上層吸収体30と下層吸収体40の間であって,且つ,第2拡散シート62と下層吸収体40の間に形成されていることが好ましい。特に,本実施形態において,下層吸収体40は,第2拡散シート62と第3拡散シート63を連結してなる一枚のシート部材の内部に封入されている。このような場合に,第2拡散シート62と第3拡散シート63から構成される一枚のシート部材の中に,下層吸収体40と共に,SAP層50を封入しておくことが好ましい。これにより,万が一,SAP層50を構成する高吸水性ポリマーが,下層吸収体40の下側開口部41内に脱落した場合であっても,その高吸水性ポリマーが周りに散乱してしまうという事態を回避できる。また,第2拡散シート62の下方にSAP層50を形成しておくことで,第2拡散シート62に浸透した液体がSAP層50に移りやすくなるため,より効率的にSAP層50によって液体を吸収することが可能となる。
また,図2に示されるように,本実施形態において,上層吸収体30と下層吸収体40の間に位置する第2拡散シート62は,部分的に2重に重なっている。この場合に,第2拡散シート62の重畳部分が,上側開口部31の肌非対向面側と,下側開口部41の肌対向面側を被覆していることが好ましい。このように,上側開口部31及び下側開口部41が形成されている部位において,第2拡散シート62を部分的に重ねて厚くしておくことで,各開口部31,41に流れ込んだ液体をより効率的に拡散させることができる。
[2.第2の実施形態]
続いて,図3及び図4を参照して,本発明に係る吸収性物品100の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態については,上述した第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し,第1の実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。図3は,図1と同様に,吸収性物品100の平面図を示している。また,図4は,図2と同様に,図3に示したX2−X2線における断面図を示している。図3及び図4に示されるように,第2の実施形態に係る吸収性物品100は,上層吸収体30と下層吸収体40とが,低密度領域71と高密度領域72とを有している点において,上述した第1の実施形態と異なっている。
図3及び図4に示されるように,上層吸収体30と下層吸収体40うち,少なくとも股下部3に低密度領域71が形成され,この低密度領域71以外の領域が高密度領域72となっている。低密度領域71は,各吸収体30,40を構成する繊維の密度が高密度領域72よりも低い領域である。また,高密度領域72は,各吸収体30,40を構成する繊維の密度が低密度領域71よりも高い領域である。
具体的に説明すると,本実施形態において,低密度領域71は,各吸収体30,40の幅方向の中央部分に形成されている。また,低密度領域71は,股下部3を中心に前身頃1及び後身頃2にかけて,各吸収体30,40の長手方向全体に亘って形成されている。このように,低密度領域71は,少なくとも,股下部3の幅方向中央部分に形成されている。また,上層吸収体30の低密度領域71には上側開口部31が形成され,下層吸収体40の低密度領域71には下側開口部41が形成されている。
このように,本発明の好ましい実施形態では,各吸収体30,40の幅方向の中央部分に低密度領域71を形成し,この低密度領域71に各開口部31,41を形成する。これにより,着用者が排泄した尿などの液体を,各吸収体30,40の低密度領域71において迅速に吸収することができる。しかも,この低密度領域71には長手方向に延びる開口部31,41が形成されているため,低密度領域71全体に液体を拡散させることができる。
他方,低密度領域71以外の領域は,高密度領域72となっている。本実施形態において,高密度領域72は,低密度領域71の幅方向の左右両側に形成されており,低密度領域71を挟んで2つの領域に分かれている。すなわち,左右の高密度領域72は,それぞれ,各吸収体30,40の長手方向全体に亘って形成されている。本実施形態において,上層吸収体30の上側開口部31と下層吸収体40の下側開口部41は,低密度領域71にのみ形成されており,高密度領域72には形成されていない。ただし,各開口部31,41を,低密度領域71と高密度領域72の両方に亘って形成することも可能である。
高密度領域72は,例えば,上層吸収体30と下層吸収体40を押圧することによって形成することができる。各吸収体30,40の押圧には,公知のプレスローラなどのプレス装置を用いることができる。このように,各吸収体30,40を押圧することにより,各吸収体30,40の厚みが小さくなるため,その分,各吸収体30,40を構成する繊維の密度が高まる。これにより,各吸収体30,40うち,押圧された領域(又は強く押圧された領域)が高密度領域72となり,押圧されていない領域(又は弱く押圧された領域)が低密度領域71となる。
また,図4に示されるように,本実施形態において,上層吸収体30の低密度領域71及び高密度領域72が形成された位置と,下層吸収体40の低密度領域71及び高密度領域72が形成された位置は,揃っていることが好ましい。つまり,上層吸収体30の低密度領域71は,下層吸収体40の低密度領域71と厚み方向に重なり,さらに上層吸収体30の高密度領域72は,下層吸収体40の高密度領域72と厚み方向に重なることとなる。このようにするためには,例えば,上層吸収体30と下層吸収体40とを重ねた後,これらの吸収体30,40を同時に押圧して高密度領域72及び低密度領域71を形成することが効率的である。
上記のように,上層吸収体30と下層吸収体40に高密度領域72を形成することで,各吸収体30,40の保型性を高めることができ,着用時においても各吸収体30,40が型崩れしにくくなる。特に,本実施形態のように,低密度領域71の左右両側に高密度領域72を形成しておくことで,各吸収体30,40が幅方向に圧縮された場合であっても,この低密度領域71に形成された上側開口部31と下側開口部41が塞がれにくくなる。これにより,着用時においても,各吸収体30,40の吸収能力及び液拡散性を維持することができる。
また,本発明では,上層吸収体30と下層吸収体40とを重ねることとしている。この場合に,高密度領域72が重なるように各吸収体30,40を配置することで,着用時において,各吸収体30,40の位置がずれることを防止できる。特に,本実施形態では,上層吸収体30と下層吸収体40とを重ねた後に,各吸収体30,40を同時に押圧して,高密度領域72を形成することとしている。このようにすることで,各吸収体30,40の高密度領域72がより密着するため,各吸収体30,40の層間の位置ずれを効果的に防止することができる。
図4に示された例において,上層吸収体30の低密度領域71の厚さが,符号T1で示され,上層吸収体30の高密度領域72の厚さが,符号T2で示されている。図4に示されるように,高密度領域72の厚さT2は,低密度領域71の厚さT1よりも薄くなっている(T2<T1)。例えば,高密度領域72の厚さT2は,低密度領域71の厚さT1に対して,10%〜90%であることが好ましく,10%〜50%であることが特に好ましい。例えば,低密度領域71の厚さは,10mm〜20mmとすればよい。また,高密度領域72の厚さは,5mm〜15mmであって,低密度領域71よりも薄いものとすればよい。なお,下層吸収体40の低密度領域71と高密度領域72の厚さの関係性も,上述した上層吸収体30の低密度領域71と高密度領域72と同様とすることができる。
また,上層吸収体30において,低密度領域71を構成する繊維の密度は,高密度領域72を構成する繊維の密度に対して,10%〜90%であることが好ましく,10%〜50%であることが特に好ましい。なお,低密度領域71と高密度領域72の密度を比較する際には,同じ体積の低密度領域71と高密度領域72の試験片を用意し,それぞれの試験片の重量を比較すればよい。このため,密度の単位は,重量(mg)/体積(cm)となる。例えば,低密度領域71の密度は,5〜50mg/cmであることが好ましい。また,高密度領域72の密度は,20〜150mg/cmであって,低密度領域71の密度よりも高い範囲であることが好ましい。なお,下層吸収体40の低密度領域71と高密度領域72の密度の関係性も,上述した上層吸収体30の低密度領域71と高密度領域72と同様とすることができる。
また,上層吸収体30において,低密度領域71の横幅B1は,上層吸収体30の全幅(最大値)に対して,例えば,20%〜80%,又は30%〜70%であることが好ましい。なお,上層吸収体30は,低密度領域71以外の領域が,高密度領域72となる。また,下層吸収体40の低密度領域71の横幅は,上層吸収体30の低密度領域71の横幅と一致させることが好ましい。また,下層吸収体40は,低密度領域71以外の領域が,高密度領域72となる。
また,図3及び図4に示されるように,上層吸収体30において,上側開口部31は,低密度領域71内に形成されていることが好ましい。図4の断面図に示されるように,上側開口部31の横幅W1は,低密度領域71の横幅B1に対して,10%〜90%とすればよく,50%〜90%であることが好ましい。なお,上述したとおり,下層吸収体40の下側開口部41の横幅は,上層吸収体30の上側開口部31の横幅よりも狭くなる。このため,下層吸収体40の下側開口部41も,下層吸収体40の低密度領域71内に収まることとなる。
なお,第2の実施形態において,上層吸収体30と下層吸収体40の両方に低密度領域71と高密度領域72を形成することとしているが,低密度領域71と高密度領域72は,上層吸収体30と下層吸収体40のいずれか一方にのみ形成することもできる。また,第2の実施形態において,低密度領域71は1つの繋がった領域となっているが,低密度領域71は2つ以上の領域に区分されていてもよい。また,低密度領域71は,少なくとも股下部3に形成されていればよく,前身頃1や後身頃2には形成されていなくてもよい。
[3.第3の実施形態]
続いて,図5を参照して,本発明に係る吸収性物品100の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態については,上述した第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し,第1の実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。図5は,図2と同様に,吸収性物品100の断面図を示している。図5に示されるように,第3の実施形態に係る吸収性物品100は,上層吸収体30と下層吸収体40の他に,第2下層吸収体80を備えている。
図5に示された第3の実施形態のように,吸収性物品100は,トップシート10とバックシート20の間に,3層以上の吸収体を介在させた構成であってもよい。つまり,第3の実施形態に係る吸収性物品100は,上述した上層吸収体30と下層吸収体40のさらに下方(肌非対向面側)に,第2下層吸収体80を備えている。なお,以下では,上層吸収体30と第2下層吸収体80の間に位置する吸収体を,第1下層吸収体40と称する。また,この第1下層吸収体40に形成されている開口部を,第1下側開口部41と称する。
第2下層吸収体80は,基本的に,上述した第1下層吸収体40と同じ構成とすることができる。すなわち,図5に示されるように,第2下層吸収体80は,幅方向の中央部分に,第2下側開口部81を有していてもよい。この場合,第2下層吸収体80の第2下側開口部81は,上層吸収体30の上側開口部31や第1下層吸収体40の第1下側開口部41よりも,その長さ及び横幅が短く形成されることが好ましい。つまり,上側開口部31,第1下側開口部41,第2下側開口部81の順に,その長さ及び横幅が狭くなっていることが好ましい。
また,第1下層吸収体40と第2下層吸収体80の間には,第4拡散シート64が設けられている。また,第2下層吸収体80とバックシート20の間には,第5拡散シート65が設けられている。本実施形態において,第4拡散シート64と第5拡散シート65は一枚のシート部材から構成されており,第2下層吸収体80を被包している。ただし,第4拡散シート64と第5拡散シート65は別々のシート部材から構成されていてもよい。第4拡散シート64と第5拡散シート65は,例えば,ティッシュペーパのような薄葉紙であってもよいし,不織布であってもよい。
また,第1下層吸収体40と第2下層吸収体80の間には,第2SAP層90が形成されている。第2SAP層90は,複数の粒状の高吸水性ポリマー(SAP)が集まることによって形成された層である。具体的には,第2SAP層90は,第4拡散シート64と第2下層吸収体80の間に配置されていることが好ましい。第2SAP層90は,第2下層吸収体80の第2下側開口部81の幅方向外側に形成されている。特に,第2SAP層90は,第2下層吸収体80の第2下側開口部81の幅方向外側であって,且つ,第1下層吸収体40の第1下側開口部41の幅方向外側の領域に形成されていることが好ましい。これにより,第1下層吸収体40と第2下層吸収体80によって,第2SAP層90を挟み込んで保持することができ,この第2SAP層90を構成する高吸水性ポリマーが散乱することを防止できる。
以上のように,本発明に係る吸収性物品100は,吸収体を3段以上に積み重ねた構成とすることができる。また,図示は省略するが,吸収体は4段以上や5段以上に積層することも可能である。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
本発明は,使い捨ておむつや吸収性パッドなどの吸収性物品に関する。従って,本発明は,吸収性物品等の製造業において好適に利用することができる。
1…前身頃 2…後身頃 3…股下部
10…トップシート 20…バックシート 30…上層吸収体
31…上側開口部 40…下層吸収体 41…下側開口部
50…SAP層 61…第1拡散シート 62…第2拡散シート
63…第3拡散シート 64…第4拡散シート 65…第5拡散シート
71…低密度領域 72…高密度領域 80…第2下層吸収体
81…第2下側開口部 90…第2SAP層 100…吸収性物品

Claims (5)

  1. 装着時において着用者の腹側に位置する前身頃(1)と着用者の背側に位置する後身頃(2)の間に位置する股下部(3)を有する吸収性物品において,
    肌対向面側に位置する液透過性のトップシート(10)と,
    肌非対向面側に位置する液不透過性のバックシート(20)と,
    前記トップシート(10)と前記バックシート(20)の間に介在し,厚み方向に重ねられた複数の吸収体と,を備え,
    前記複数の吸収体は,少なくとも,
    前記トップシート(10)側に位置する上層吸収体(30)と,
    前記バックシート(20)側に位置する下層吸収体(40)と,を含み,
    前記上層吸収体(30)は,前記長手方向に延び,所定の長さ及び幅を持つ上側開口部(31)を有し,
    前記下層吸収体(40)は,前記長手方向に延び,前記上側開口部(31)よりも短い長さ及び幅を持つ下側開口部(41)を有し,
    前記上側開口部(31)と前記下側開口部(41)は,少なくとも部分的に厚み方向に重なっている
    吸収性物品。
  2. 前記上層吸収体(30)と前記下層吸収体(40)の間には,液拡散性シートが配置されている
    請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記上層吸収体(30)と前記下層吸収体(40)の間に,複数の高吸水性ポリマー(SAP)が配置されることにより形成されたSAP層(50)を,さらに備え,
    前記SAP層(50)は,少なくとも,前記下側開口部(41)の幅方向の左右両側に形成されている
    請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
  4. 前記SAP層(50)は,前記下側開口部(40)の幅方向の左右両側であって,前記上側開口部(31)と厚み方向に重ならない領域に形成されている
    請求項3に記載の吸収性物品。
  5. 前記上層吸収体(30)と前記下層吸収体(40)の両方又はいずれか一方は,
    前記上側開口部(31)又は前記下側開口部(41)の幅方向の左右両側において,前記吸収体を構成する繊維の密度が比較的低い低密度領域(71)と,
    前記低密度領域(71)の幅方向の左右外側において,前記吸収体を構成する繊維の密度が比較的高い高密度領域(72)と,を有する
    請求項1から請求項4のいずれかに記載の吸収性物品。
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