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JP2016181472A - 全固体二次電池 - Google Patents

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JP2016181472A
JP2016181472A JP2015062298A JP2015062298A JP2016181472A JP 2016181472 A JP2016181472 A JP 2016181472A JP 2015062298 A JP2015062298 A JP 2015062298A JP 2015062298 A JP2015062298 A JP 2015062298A JP 2016181472 A JP2016181472 A JP 2016181472A
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negative electrode
solid
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JP2015062298A
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耕一郎 前田
Koichiro Maeda
耕一郎 前田
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Zeon Corp
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Nippon Zeon Co Ltd
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Abstract

【課題】 電池特性の良い全固体二次電池を提供する。【解決手段】 正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極と、これらの正負極活物質層間に固体電解質層とを有する全固体二次電池であって、前記固体電解質層の厚さは、2〜20μmであり、前記固体電解質層は、平均粒子径が0.1〜1μmである粒子状ポリマーを含むバインダーを含有する。【選択図】 なし

Description

本発明は、全固体リチウムイオン二次電池等の全固体二次電池に関する。
近年、リチウムイオン電池等の二次電池は、携帯情報端末や携帯電子機器などの携帯端末に加えて、家庭用小型電力貯蔵装置、電動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車など、様々な用途での需要が増加している。
用途が広がるに伴い、二次電池の更なる安全性の向上が要求されている。安全性を確保するために、液漏れを防止する方法や、可燃性の有機溶媒電解質に代えて、固体電解質を用いる方法が有効である。
固体電解質としては、ポリエチレンオキサイドなどを用いる高分子固体電解質が知られている(特許文献1)が、高分子固体電解質は可燃性材料である。固体電解質として、無機材料からなる無機固体電解質も提案されている(特許文献2など)。高分子固体電解質に比べ、無機固体電解質は、無機物からなる固体電解質であって不燃性物質であり、通常使用される有機溶媒電解質と比較し安全性が非常に高い。特許文献2に記載されているように、無機固体電解質を用いた高い安全性を備えた全固体二次電池の開発が進んでいる。
全固体二次電池は、正極及び負極の間に、電解質層として無機固体電解質層を有する。特許文献3及び特許文献4には、固体電解質粒子と溶媒とを含む固体電解質層用スラリー組成物を、正極又は負極の上に塗布し乾燥することにより固体電解質層を形成した全固体リチウム二次電池が記載されている。塗布法で電極や電解質層を形成する場合には、活物質や電解質を含むスラリー組成物の粘度や、流動性が塗布可能な条件の範囲にあることが必要である。一方、スラリー組成物を塗布したのち溶剤を乾燥してなる電極および電解質層には、電池としての特性を発現させるために活物質や電解質以外のバインダーなどの添加剤が重要である。そのために、特許文献5では、アクリレート系ポリマーをバインダーに使用することが提案されている。
特許第4134617号公報 特開昭59−151770号公報 特開2009−176484号公報 特開2009−211950号公報 国際公開第2011/105574号
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献3や4に記載の全固体リチウム二次電池では、固体電解質層内部や、活物質層内部のイオン伝導性が十分ではないために、電池の容量特性やサイクル特性が不十分な場合があり、また、特許文献5では電池特性の良好な全固体二次電池が提案されているが、より特性の高い電池が求められている。
本発明は、電池特性の良い全固体二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の粒子径を有する粒子状ポリマーを含むバインダーを用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、
(1) 正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極と、これらの正負極活物質層間に固体電解質層とを有する全固体二次電池であって、前記固体電解質層の厚さは、2〜20μmであり、前記固体電解質層は、平均粒子径が0.1〜1μmである粒子状ポリマーを含むバインダーを含有する、全固体二次電池、
(2) 前記バインダーは、前記粒子状ポリマーを10〜90wt%含む(1)に記載の全固体二次電池、
(3) 前記粒子状ポリマーが、(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含むアクリレート系ポリマーである(1)または(2)に記載の全固体二次電池、
(4) 前記粒子状ポリマーが有機溶媒に分散してなるバインダー組成物を用いることにより得られる(1)〜(3)の何れかに記載の全固体二次電池が提供される。
本発明によれば、特定の粒子径を有する粒子状ポリマーをバインダーとして用いることにより、充放電性能の良い固体電解質電池を得ることができる。これは、特定の粒子径のバインダーを用いることで、固体電解質粒子同士の接触点の数や接触面積が増加し、その結果内部抵抗の小さい全固体二次電池を提供することができるためであると思われる。
(全固体二次電池)
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極と、これらの正負極活物質層間に固体電解質層とを有する。また、固体電解質層の厚さは、2〜20μmであり、固体電解質層は、平均粒子径が0.1〜1μmである粒子状ポリマーを含むバインダーを含有する。正極は集電体上に正極活物質層を有し、負極は集電体上に負極活物質層を有する。以下において、(1)固体電解質層、(2)正極活物質層、(3)負極活物質層の順に説明する。
(1)固体電解質層
固体電解質層は、固体電解質粒子及びバインダーを含む固体電解質層用スラリー組成物を、後述する正極活物質層または負極活物質層の上に塗布し、乾燥することにより形成される。ここで、バインダーは平均粒子径が0.1〜1μmである粒子状ポリマーを含む。固体電解質層用スラリー組成物は、固体電解質粒子、バインダー、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合することにより製造される。
(固体電解質粒子)
固体電解質は粉砕工程を経たものを用いるため粒子状であるが、完全な球形ではなく不定形である。一般に微粒子の大きさは、レーザー光を粒子に照射し散乱光を測定する方法などにより測定されるが、この場合の粒子径は1個の粒子としては形状を球形と仮定した値である。複数の粒子をまとめて測定した場合、相当する粒子径の粒子の存在割合を粒度分布としてあらわすことができる。固体電解質層を形成する固体電解質粒子は、この方法で測定した値で、平均粒子径として示されることが多い。
固体電解質粒子の平均粒子径は、分散性及び塗工性の良好な固体電解質層用スラリー組成物を得ることができる観点から、好ましくは0.3〜1.3μmである。なお、固体電解質粒子の平均粒子径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる個数平均粒子径である。
固体電解質粒子は、リチウムイオンの伝導性を有していれば特に限定されないが、結晶性の無機リチウムイオン伝導体、又は非晶性の無機リチウムイオン伝導体を含むことが好ましい。
結晶性の無機リチウムイオン伝導体としては、Li3N、LISICON(Li14Zn(GeO44)、ペロブスカイト型Li0.5La0.5TiO3、LIPON(Li3+yPO4-xx)、Thio−LISICON(Li3.25Ge0.250.754)などが挙げられる。
非晶性の無機リチウムイオン伝導体としては、S(硫黄原子)を含有し、かつ、イオン伝導性を有するもの(硫化物固体電解質材料)であれば特に限定されるものではない。ここで、本発明における全固体二次電池が、全固体リチウム二次電池である場合、用いられる硫化物固体電解質材料として、Li2Sと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。このような原料組成物を用いて硫化物固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。メカニカルミリング法によれば、常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
上記第13族〜第15族の元素としては、例えばAl、Si、Ge、P、As、Sb等を挙げることができる。また、第13族〜第15族の元素の硫化物としては、具体的には、Al23、SiS2、GeS2、P23、P25、As23、Sb23等を挙げることができる。中でも、本発明においては、第14族または第15族の硫化物を用いることが好ましい。特に、本発明においては、Li2Sと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質材料は、Li2S−P25材料、Li2S−SiS2材料、Li2S−GeS2材料またはLi2S−Al23材料であることが好ましく、Li2S−P25材料であることがより好ましい。これらは、Liイオン伝導性が優れているからである。
また、本発明における硫化物固体電解質材料は、架橋硫黄を有することが好ましい。架橋硫黄を有することで、イオン伝導性が高くなるからである。さらに、硫化物固体電解質材料が架橋硫黄を有する場合、通常、正極活物質との反応性が高く、高抵抗層が生じやすい。しかし、本発明においては、特定の粒子径を有する粒子状ポリマーを含むバインダーを用いるため、高抵抗層の発生を抑制できるという本発明の効果を充分に発揮することができる。なお、「架橋硫黄を有する」ことは、例えば、ラマン分光スペクトルによる測定結果、原料組成比、NMRによる測定結果等を考慮することでも判断することができる。
Li2S−P25材料またはLi2S−Al23材料におけるLi2Sのモル分率は、より確実に架橋硫黄を有する硫化物固体電解質材料を得ることができる観点から、例えば50〜74%の範囲内、中でも60〜74%の範囲内であることが好ましい。
また、本発明における硫化物固体電解質材料は、硫化物ガラスであっても良く、その硫化物ガラスを熱処理して得られる結晶化硫化物ガラスであっても良い。硫化物ガラスは、例えば、上述した非晶質化法により得ることができる。結晶化硫化物ガラスは、例えば、硫化物ガラスを熱処理することにより得ることができる。
特に、本発明においては、硫化物固体電解質材料が、Li7311で表される結晶化硫化物ガラスであることが好ましい。Liイオン伝導度が特に優れているからである。Li7311を合成する方法としては、例えば、Li2SおよびP25を、モル比70:30で混合し、ボールミルで非晶質化することで、硫化物ガラスを合成し、得られた硫化物ガラスを150℃〜360℃で熱処理することにより、Li7311を合成することができる。
(バインダー)
バインダーは、固体電解質粒子同士を結着して固体電解質層を形成するためのものである。バインダーとしては、アクリレート系ポリマーが好適であることが特許文献5などで知られている。ここで、アクリレート系ポリマーをバインダーとして用いることが、耐電圧を高くでき、かつ全固体二次電池のエネルギー密度を高くすることができる点で好ましいが、より高性能化することが求められている。
アクリレート系ポリマーは溶液重合法あるいは乳化重合法などにより得ることができる。通常得られるポリマーは、直鎖状のポリマーであり、有機溶媒に可溶である。このようなポリマーをバインダーとして用いる場合は、有機溶媒に溶解させて用いる。
一般にバインダーは高い結着力を得るために、直鎖状のポリマーを用いている。しかし、固体電解質粒子表面をバインダーが完全に被覆してしまうと、接触点におけるイオン伝導性が低下してしまうため、本発明においては、粒子状ポリマーを含むバインダーを用いる。
バインダーに用いるポリマーの種類としては、アクリレート系ポリマーが好ましい。アクリレート系ポリマーは、アクリレートまたはメタクリレート(以降、「(メタ)アクリレート」と略記することがある)およびこれらの誘導体を重合して得られる繰り返し単位(重合単位)を含むポリマーであり、(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含むポリマーであり、具体的には、(メタ)アクリレートのホモポリマー、(メタ)アクリレートのコポリマー、並びに(メタ)アクリレートと該(メタ)アクリレートと共重合可能な他の単量体とのコポリマーが挙げられる。
(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エトキシエチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステル;アクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、アクリル酸2−(パーフルオロペンチル)エチルなどのアクリル酸2−(パーフルオロアルキル)エチル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、およびメタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、メタクリル酸2−(パーフルオロペンチル)エチルなどのメタクリル酸2−(パーフルオロアルキル)エチル;が挙げられる。これらの中でも、本発明においては固体電解質との密着性の高さからアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エトキシエチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましい。
アクリレート系ポリマーにおける(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位の含有割合は、通常40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。なお、アクレート系ポリマーにおける(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位の含有割合の上限は、通常100質量%以下、好ましくは95質量%以下である。
また、アクリレート系ポリマーとしては、(メタ)アクリレートと、該(メタ)アクリレートと共重合可能な単量体とのコポリマーとすることが可能である。前記共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物が挙げられる。その中でも、有機溶媒への溶解性の観点から、スチレン系単量体、アミド系単量体、α,β−不飽和ニトリル化合物が好ましい。アクリレート系ポリマーにおける、前記共重合可能な単量体単位の含有割合は、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
本発明の粒子状ポリマーとは、有機溶媒に分散した状態で粒子状であり、かつ乾燥時にも粒子状であるポリマーである。
粒子状ポリマーを得る方法としては、ポリマーを水系あるいは溶媒系で乳化重合または分散重合する際にモノマーを架橋剤とともに重合する方法がある。また、粒子状ポリマーを得るためには、重合する際に架橋剤を共重合させることが好ましい。
架橋剤としては、二重結合を複数個含むモノマーである。たとえば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレート化合物、ジビニルベンゼンなどの多官能芳香族化合物、があげられる。好ましくはジビニルベンゼンなどの多官能芳香族化合物である。
架橋剤の使用量は、その種類によって異なるが、モノマーの合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜8質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。
架橋剤の添加量が少ないと、基材上で乾燥させた際に、基材表面に半球状に広がり、付着部分の面積が粒径の10倍以上に広がり、固体電解質粒子表面を被覆するのと同じ状態になってしまうため、好ましくない。また架橋剤の添加量が多すぎると、ポリマーの密着力が低下しバインダーとしての機能を示さなくなる。
粒子状ポリマーの平均粒子径は、0.1〜1μm、好ましくは0.15〜0.70μmである。粒子状ポリマーの平均粒子径が上記範囲にあることにより、充放電性能の良い固体電解質電池を得ることができる。これは、上記範囲の平均粒子径を有する粒子状ポリマーを用いることにより、固体電解質粒子同士の接触点の数や接触面積が増加し、その結果内部抵抗が小さくなるためであると考えられる。なお、粒子状ポリマーの平均粒子径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる個数平均粒子径である。
また、本発明に用いるバインダーは、粒子状ポリマー以外の結着成分を含んでいてもよい。本発明に用いるバインダー中における粒子状ポリマーの含有量は、充放電性能の良い固体電解質電池が得られる観点から、好ましくは10〜90wt%、より好ましくは20〜80wt%である。
アクリレート系ポリマーの製造方法は、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などの分散系で重合する方法のいずれの方法も用いることができる。重合方法としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いることができる。重合に用いる重合開始剤としては、たとえば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、または過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどがあげられる。
バインダーのガラス転移温度(Tg)は、優れた強度と柔軟性を有し、高い出力特性の全固体二次電池を得ることができる観点から、好ましくは−50〜25℃、より好ましくは−45〜15℃、特に好ましくは−40〜5℃である。なお、バインダーのガラス転移温度は、様々な単量体を組み合わせることによって調製可能である。
固体電解質層用スラリー組成物中のバインダーの含有量は、固体電解質粒子同士の結着性を維持しながら、リチウムの移動を阻害して固体電解質層の抵抗が増大することを抑制できる観点から、固体電解質粒子100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。
(有機溶媒)
有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、などのエステル類が挙げられる。これらの溶媒は、単独または2種以上を混合して、乾燥速度や環境上の観点から適宜選択して用いることができ、中でも、本発明においては固体電解質粒子との反応性の観点から、エーテル類が好ましい。
固体電解質層用スラリー組成物中の有機溶媒の含有量は、固体電解質層用スラリー組成物中の固体電解質粒子の分散性を保持しながら、良好な塗料特性を得ることができる観点から、固体電解質粒子100質量部に対して、好ましくは10〜700質量部、より好ましくは30〜500質量部である。
固体電解質層用スラリー組成物は、上記成分の他に、必要に応じて添加される他の成分として、分散剤、レベリング剤及び消泡剤の機能を有する成分を含んでいてもよい。これらの成分は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば、特に制限されない。
(分散剤)
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が例示される。分散剤は、用いる固体電解質粒子に応じて選択される。固体電解質層用スラリー組成物中の分散剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、固体電解質粒子100質量部に対して10質量部以下である。
(レベリング剤)
レベリング剤としてはアルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤を混合することにより、固体電解質層用スラリー組成物を後述する正極活物質層又は負極活物質層の表面に塗工する際に発生するはじきを防止でき、正負極の平滑性を向上させることができる。固体電解質層用スラリー組成物中のレベリング剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、固体電解質粒子100質量部に対して10質量部以下である。
(消泡剤)
消泡剤としてはミネラルオイル系消泡剤、シリコーン系消泡剤、ポリマー系消泡剤が例示される。消泡剤は、用いる固体電解質粒子に応じて選択される。固体電解質層用スラリー組成物中の消泡剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、固体電解質粒子100質量部に対して10質量部以下である。
(2)正極活物質層
正極活物質層は、正極活物質、固体電解質粒子及び正極用バインダーを含む正極活物質層用スラリー組成物を、後述する集電体表面に塗布し、乾燥することにより形成される。正極活物質層用スラリー組成物は、正極活物質、固体電解質粒子、正極用バインダー、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合することにより製造される。
(正極活物質)
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な化合物である。正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、LiFePO4、LiFeVO4などのリチウム含有複合金属酸化物;TiS2、TiS3、非晶質MoS2等の遷移金属硫化物;Cu223、非晶質V2O−P25、MoO3、V25、V613などの遷移金属酸化物が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩などが挙げられる。正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
本発明で用いる正極活物質の平均粒子径は、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点、また、充放電容量が大きい全固体二次電池を得ることができ、かつ正極活物質層用スラリー組成物の取扱い、および正極を製造する際の取扱いが容易である観点から、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μmである。平均粒子径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる。
(固体電解質粒子)
固体電解質粒子は、固体電解質層において例示したものと同じものを用いることができる。
正極活物質と固体電解質粒子との重量比率は、好ましくは正極活物質:固体電解質粒子=90:10〜50:50、より好ましくは正極活物質:固体電解質粒子=60:40〜80:20である。正極活物質の重量比率が少なすぎると、電池内の正極活物質量が低減し、電池としての容量低下につながる。また、固体電解質粒子の重量比率が少なすぎると、導電性が十分に得られず、正極活物質を有効に利用することができない為、電池としての容量低下につながる。
(正極用バインダー)
正極用バインダーとしては、固体電解質層で例示したものを用いることができる。
正極活物質層用スラリー組成物中の正極用バインダーの含有量は、電池反応を阻害せずに、電極から正極活物質が脱落するのを防ぐことができる観点から、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜4質量部である。
正極活物質層用スラリー組成物中の有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分は、上記の固体電解質層で例示するものと同様のものを用いることができる。正極活物質層用スラリー組成物中の有機溶媒の含有量は、固体電解質の分散性を保持しながら、良好な塗料特性を得ることができる観点から、正極活物質100質量部に対して、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは30〜70質量部である。
正極活物質層用スラリー組成物は、上記成分の他に、必要に応じて添加される他の成分として、導電剤、補強材などの各種の機能を発現する添加剤を含んでいてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
(導電剤)
導電剤は、導電性を付与できるものであれば特に制限されないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などが挙げられる。
(補強材)
補強材としては、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。
(3)負極活物質層
負極活物質層は負極活物質を含む。
(負極活物質)
負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素の同素体が挙げられる。前記炭素の同素体からなる負極活物質は、金属、金属塩、酸化物などとの混合体や被覆体の形態で利用することも出来る。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコン等を使用できる。金属材料の場合は金属箔または金属板をそのまま電極として用いることができるが、粒子状でも良い。
この場合、負極活物質層は、負極活物質、固体電解質粒子及び負極用バインダーを含む負極活物質層用スラリー組成物を、後述する集電体表面に塗布し、乾燥することにより形成される。負極活物質層用スラリー組成物は、負極活物質、固体電解質粒子、負極用バインダー、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合することにより製造される。なお、負極活物質層用スラリー組成物中の固体電解質粒子、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分は、上記の正極活物質層で例示するものと同様のものを用いることができる。
負極活物質が粒子状の場合、負極活物質の平均粒子径は、初期効率、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常1〜50μm、好ましくは15〜30μmである。
負極活物質と固体電解質粒子との重量比率は、好ましくは負極活物質:固体電解質粒子=90:10〜50:50、より好ましくは負極活物質:固体電解質粒子=60:40〜80:20である。負極活物質の重量比率が少なすぎると、電池内の負極活物質量が低減し、電池としての容量低下につながる。また、固体電解質粒子の重量比率が少なすぎると、導電性が十分に得られず、負極活物質を有効に利用することができない為、電池としての容量低下につながる。
(負極用バインダー)
負極活物質が粒子状の場合、負極用バインダーとしては、固体電解質層で例示したものを用いることができる。
負極活物質が粒子状の場合、負極活物質層用スラリー組成物中の負極用バインダーの含有量は、電池反応を阻害せずに、電極から電極活物質が脱落するのを防ぐ観点から、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜4質量部である。
(集電体)
正極活物質層及び負極活物質層の形成に用いる集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有する観点から、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が好ましい。中でも、正極用としてはアルミニウムが特に好ましく、負極用としては銅が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、上述した正・負極活物質層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、集電体と正・負極活物質層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
(固体電解質層用スラリー組成物の製造)
固体電解質層用スラリー組成物は、上述した固体電解質粒子、バインダー、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合して得られる。
(正極活物質層用スラリー組成物の製造)
正極活物質層用スラリー組成物は、上述した正極活物質、固体電解質粒子、正極用バインダー、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合して得られる。
(負極活物質層用スラリー組成物の製造)
負極活物質層用スラリー組成物は、上述した負極活物質、固体電解質粒子、負極用バインダー、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合して得られる。
上記のスラリー組成物の混合法は特に限定はされないが、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。また、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、サンドミル、ロールミル、および遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられ、固体電解質粒子の凝集を抑制できるという観点からプラネタリーミキサー、ボールミル又はビーズミルを使用した方法が好ましい。
(全固体二次電池)
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極と、これらの正負極活物質層間に固体電解質層とを有する。固体電解質層の厚さが2〜20μm、好ましくは3〜15μm、より好ましくは5〜12μmである。固体電解質層の厚さが上記範囲にあることで、全固体二次電池の内部抵抗を小さくすることができる。固体電解質層の厚さが薄すぎると、全固体二次電池がショートしやすくなる。また、固体電解質層の厚さが厚すぎると、電池の内部抵抗が大きくなる。
本発明の全固体二次電池における正極は、上記の正極活物質層用スラリー組成物を集電体上に塗布、乾燥して正極活物質層を形成して製造される。また、本発明の全固体二次電池における負極は、金属箔を用いる場合はそのまま用いることができる。負極活物質が粒子状である場合は、上記の負極活物質層用スラリー組成物を、正極の集電体とは別の集電体上に塗布、乾燥して負極活物質層を形成して製造される。次いで、形成した正極活物質層または負極活物質層の上に、固体電解質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥して固体電解質層を形成する。そして、固体電解質層を形成しなかった電極と、上記の固体電解質層を形成した電極とを貼り合わせることで、全固体二次電池素子を製造する。
正極活物質層用スラリー組成物および負極活物質層用スラリー組成物の集電体への塗布方法は特に限定されず、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗りなどによって塗布される。塗布する量も特に制限されないが、有機溶媒を除去した後に形成される活物質層の厚さが通常5〜300μm、好ましくは10〜250μmになる程度の量である。乾燥方法も特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥が挙げられる。乾燥条件は、通常は応力集中が起こって活物質層に亀裂が入ったり、活物質層が集電体から剥離しない程度の速度範囲の中で、できるだけ早く有機溶媒が揮発するように調整する。更に、乾燥後の電極をプレスすることによ
り電極を安定させてもよい。プレス方法は、金型プレスやカレンダープレスなどの方法が挙げられるが、限定されるものではない。
乾燥温度は、有機溶媒が十分に揮発する温度で行う。具体的には、正・負極用バインダーの熱分解なく良好な活物質層を形成することが可能となる観点から、50〜250℃が好ましく、さらには80〜200℃が好ましい。乾燥時間については、特に限定されることはないが、通常10〜60分の範囲で行われる。
固体電解質層用スラリー組成物を、正極活物質層又は負極活物質層へ塗布する方法は特に限定されず、上述した正極活物質層用スラリー組成物および負極活物質層用スラリー組成物の集電体への塗布方法と同様の方法により行われるが、薄膜の固体電解質層を形成できるという観点からグラビア法が好ましい。塗布する量も特に制限されないが、有機溶媒を除去した後に形成される固体電解質層の厚さが通常2〜20μm、好ましくは3〜15μmになる程度の量である。乾燥方法、乾燥条件及び乾燥温度も、上述の正極活物質層用スラリー組成物および負極活物質層用スラリー組成物と同様である。
更に、上記の固体電解質層を形成した電極と固体電解質層を形成しなかった電極とを貼り合わせた積層体を、加圧してもよい。加圧方法としては特に限定されず、例えば、平板プレス、ロールプレス、CIP(Cold Isostatic Press)などが挙げられる。加圧プレスする圧力としては、電極と固体電解質層との各界面における抵抗、更には各層内の粒子間の接触抵抗が低くなり良好な電池特性を示す観点から、好ましくは5〜700MPa、より好ましくは7〜500MPaである。なお、プレスにより固体電解質層および活物質層は圧縮され、プレス前よりも厚みが薄くなることがある。プレスを行う場合、本発明における固体電解質層および活物質層の厚みは、プレス後の厚みが前記範囲にあればよい。
正極活物質層または負極活物質層のどちらに固体電解質層用スラリー組成物を塗布するかは特に限定されないが、使用する電極活物質の粒子径が大きい方の活物質層に固体電解質層用スラリー組成物を塗布することが好ましい。電極活物質の粒子径が大きいと、活物質層表面に凹凸が形成されるため、スラリー組成物を塗布することで、活物質層表面の凹凸を緩和することができる。そのため、固体電解質層を形成した電極と固体電解質層を形成しなかった電極とを貼り合わせて積層する際に、固体電解質層と電極との接触面積が大きくなり、界面抵抗を抑制することができる。
得られた全固体二次電池素子を、電池形状に応じてそのままの状態又は巻く、折るなどして電池容器に入れ、封口して全固体二次電池が得られる。また、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを電池容器に入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。各特性は、以下の方法により評価する。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」および「質量%」である。
<固体電解質層の厚さ測定>
JIS K5600−1−7:1999に準じて、プレス後の全固体二次電池固体電解質層断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクフィールディング社製 S−4700)を用いて5000倍で電解質層膜厚をランダムに10点計測し、その平均値から算出した。
<粒子径測定>
JIS Z8825−1:2001に準じて、レーザー解析装置(島津製作所社製 レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−3100)により累積粒度分布の微粒側からの累積50%の粒子径(個数平均粒子径)を測定した。
<電池特性:出力特性>
5セルの全固体二次電池を0.1Cの定電流法によって4.3Vまで充電しその後0.1Cにて3.0Vまで放電し、0.1C放電容量aを求めた。その後0.1Cにて4.3Vまで充電しその後5Cにて3.0Vまで放電し、5C放電容量bを求めた。5セルの平均値を測定値とし、5C放電容量bと0.1C放電容量aの電気容量の比(b/a(%))で表される容量保持率を求めた。
<電池特性:充放電サイクル特性>
得られた全固体二次電池を用いて、それぞれ25℃で0.5Cの定電流定電圧充電法という方式で、4.2Vになるまで定電流で充電、その後定電圧で充電し、また0.5Cの定電流で3.0Vまで放電する充放電サイクルを行った。充放電サイクルは50サイクルまで行い、初期放電容量に対する50サイクル目の放電容量の比を容量維持率として求めた。この値が大きいほど繰り返し充放電による容量減が少ない、すなわち、内部抵抗が小さいことにより活物質、バインダーの劣化が抑制でき、充放電サイクル特性に優れることを示す。
(実施例1)
<粒子状ポリマーの製造>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、エチルアクリレート30部、ブチルアクリレート70部、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、イオン交換水150部、および、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を添加し、十分に攪拌した後、70℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却を開始し反応を停止して、粒子状ポリマーの水分散液を得た。平均粒子径は0.24μmであった。
そして、得られた水分散液に10wt%のNaOH水溶液を用いてpHを7に調整した。
得られた粒子状ポリマーの水分散液の固形分濃度は38wt%であった。得られた水分散液100質量部に、シクロペンチルメチルエーテルを500質量部添加し、ロータリーエバポレーターで、ウオーターバスの温度を80℃で減圧し、溶媒交換及び脱水操作を行った。
脱水操作により、水分濃度38ppm、固形分濃度7.5wt%の粒子状ポリマーの有機溶媒分散液を得た。
<正極活物質層用スラリー組成物の製造>
正極活物質としてコバルト酸リチウム(平均粒子径:11.5μm)100部と、固体電解質粒子としてLi2SとP25とからなる硫化物ガラス(Li2S/P25=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.4μm)150部と、導電剤としてアセチレンブラック13部と、粒子状ポリマーのシクロペンチルメチルエーテル分散液を固形分相当で3部、ブチルアクリレートとエチルアクリレートを60/40で共重合したMw=150000のポリマー1部とを加え、さらに有機溶媒としてシクロペンチルメチルエーテルで固形分濃度78%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分混合した。さらにシクロペンチルメチルエーテルで固形分濃度74%に調整した後に10分間混合して正極活物質層用スラリー組成物を調製した。
<負極活物質層用スラリー組成物の製造>
負極活物質としてグラファイト(平均粒子径:20μm)100部と、固体電解質粒子としてLi2SとP25とからなる硫化物ガラス(Li2S/P25=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.4μm)50部と、粒子状ポリマーのシクロペンチルメチルエーテル分散液を固形分相当で3部、ブチルアクリレートとエチルアクリレートを60/40で共重合したMw=150000のポリマー1部を混合し、さらに有機溶媒としてシクロペンチルメチルエーテルを加えて固形分濃度60%に調整した後にプラネタリーミキサーで混合して負極活物質層用スラリー組成物を調製した。
<固体電解質層用スラリー組成物の製造>
固体電解質粒子としてLi2SとP25とからなる硫化物ガラス(Li2S/P25=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:1.2μm、累積90%の粒子径:2.1μm)100部と、粒子状ポリマーのシクロペンチルメチルエーテル分散液を固形分相当で3部と、ブチルアクリレートとエチルアクリレートを60/40で共重合したMw=150000のポリマー1部とを混合し、さらに有機溶媒としてシクロペンチルメチルエーテルを加えて固形分濃度30%に調整した後にプラネタリーミキサーで混合して固体電解質層用スラリー組成物を調製した。
<全固体二次電池の製造>
集電体表面に上記正極活物質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(110℃、20分)させて厚さが50μmの正極活物質層を形成して正極を製造した。また、別の集電体表面に上記負極活物質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(110℃、20分)させて厚さが30μmの負極活物質層を形成して負極を製造した。
次いで、上記正極活物質層の表面に、上記固体電解質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(110℃、10分)させて厚さが18μmの固体電解質層を形成した。
正極活物質層の表面に積層された固体電解質層と、上記負極の負極活物質層とを貼り合わせ、プレスして全固体二次電池を得た。プレス後の全固体二次電池の固体電解質層の厚さは11μmであった。この電池を用いて出力特性及び充放電サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
下記の固体電解質粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に全固体二次電池を製造し、評価を行った。
実施例2においては、固体電解質粒子としてLi2SとP25とからなる硫化物ガラス(Li2S/P25=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.8μm、累積90%の粒子径:1.8μm)を用いた。プレス前の固体電解質層の厚さは20μmでありプレス後の厚さは13μmであった。
(実施例3)
粒子状ポリマーとして、以下のポリマーを用いたこと以外は、実施例1と同様に測定した。
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、ブチルアクリレート20部、2−エチルヘキシルアクリレート60部、スチレン20部、架橋剤としてのジビニルベンゼン(DVB)1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、イオン交換水150部、および、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を添加し、十分に攪拌した後、70℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却を開始し反応を停止して、粒子状ポリマーの水分散液を得た。平均粒子径は0.28μmであった。
そして、得られた水分散液に10wt%のNaOH水溶液を用いてpHを7に調整した。
得られた粒子状ポリマーの水分散液の固形分濃度は38wt%であった。得られた水分散液100質量部に、シクロペンチルメチルエーテルを500質量部添加し、ロータリーエバポレーターで、ウオーターバスの温度を80℃で減圧し、溶媒交換及び脱水操作を行った。
脱水操作により、水分濃度21ppm、固形分濃度8.5wt%の粒子状ポリマーの有機溶媒分散液を得た。
上記粒子状ポリマーを用い、実施例1と同様に固体電解質層を作製した。プレス前の固体電解質層の厚さは20μmでありプレス後の厚さは18μmであった。
(比較例1)
実施例1の粒子状ポリマーについて、架橋剤を添加しないで同様に重合した。得られた粒子状ポリマーの平均粒子径は0.32μmであった。この粒子状ポリマーをシクロペンチルメチルエーテルに溶媒交換し、粒子状ポリマーが溶解した、粒子を含まないポリマー溶液を得た。このポリマー溶液を用いて固体電解質層を作製した。プレス前の固体電解質層の厚さは33μmでありプレス後の厚さは25μmであった。上記ポリマーを用いて実施例1と同様に電池を作製し、試験を行った。
(比較例2)
実施例3の粒子状ポリマーについて、架橋剤を添加しないで同様に重合した。得られた粒子状ポリマーの平均粒子径は0.28μmであった。この粒子状ポリマーをシクロペンチルメチルエーテルに溶媒交換し、粒子状ポリマーが溶解した、粒子を含まないポリマー溶液を得た。このポリマー溶液を用いて固体電解質層を作製した。プレス前の固体電解質層の厚さは33μmでありプレス後の厚さは12μmであった。上記ポリマーを用いて実施例3と同様に電池を作製し、試験を行った。
Figure 2016181472
表1に示すように正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極と、これらの正負極活物質層間に固体電解質層とを有する全固体二次電池であって、前記固体電解質層の厚さは、2〜20μmであり、前記固体電解質層は、平均粒子径が0.1〜1μmである粒子状ポリマーを含むバインダーを含有する、全固体二次電池の出力特性および充放電サイクル特性は良好であった。

Claims (4)

  1. 正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極と、これらの正負極活物質層間に固体電解質層とを有する全固体二次電池であって、
    前記固体電解質層の厚さは、2〜20μmであり、
    前記固体電解質層は、平均粒子径が0.1〜1μmである粒子状ポリマーを含むバインダーを含有する、全固体二次電池。
  2. 前記バインダーは、前記粒子状ポリマーを10〜90wt%含む請求項1に記載の全固体二次電池。
  3. 前記粒子状ポリマーが、(メタ)アクリレートから導かれるモノマー単位を含むアクリレート系ポリマーである請求項1または2に記載の全固体二次電池。
  4. 前記粒子状ポリマーが有機溶媒に分散してなるバインダー組成物を用いることにより得られる請求項1〜3の何れかに記載の全固体二次電池。
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