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JP2016033658A - 防眩フィルム - Google Patents

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JP2016033658A
JP2016033658A JP2015148351A JP2015148351A JP2016033658A JP 2016033658 A JP2016033658 A JP 2016033658A JP 2015148351 A JP2015148351 A JP 2015148351A JP 2015148351 A JP2015148351 A JP 2015148351A JP 2016033658 A JP2016033658 A JP 2016033658A
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山口 智之
Tomoyuki Yamaguchi
智之 山口
仁之 福井
Hitoshi Fukui
仁之 福井
勉 古谷
Tsutomu Furuya
勉 古谷
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】低ヘイズでありながら、広い観察角度において優れた防眩性を有し、画像表示装置に配置したときに、白ちゃけ及びギラツキの発生を十分に抑制し得る防眩フィルムを提供する。【解決手段】透明支持体と、その上に形成された微細な表面凹凸形状を有する防眩層とを備え、全ヘイズが0.1%以上3%以下であり、表面ヘイズが0.1%以上2%以下であり、表面凹凸形状の傾斜角度の平均値が0.2?以上1.2?以下であり、傾斜角度の標準偏差が0.1?以上0.8?以下であり、表面凹凸形状の凸部の頂点を母点26としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形27の面積の平均値が50μm2以上150μm2以下であり、かつ、その多角形27の面積の変動係数が40%以上80%以下である。【選択図】図3

Description

本発明は、防眩性に優れた防眩(アンチグレア)フィルムに関する。
液晶ディスプレイや、プラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むことによる視認性の悪化を避けるために、当該表示面に防眩フィルムが配置されている。
防眩フィルムとしては、表面凹凸形状を備えた透明フィルムが主に検討されている。かかる防眩フィルムは、その表面凹凸形状で外光を散乱反射させること(外光散乱光)により映り込みを低減させ、防眩性を発現する。しかしながら、外光散乱光が強い場合には、画像表示装置の表示面全体が白っぽくなったり、表示が濁った色になったりする、いわゆる「白ちゃけ」が発生することがある。また、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸とが干渉して、輝度分布が発生して見えにくくなる、いわゆる「ギラツキ」も発生することがある。以上のことから、防眩フィルムには、優れた防眩性を確保しつつ、これらの「白ちゃけ」や「ギラツキ」の発生を十分に防止することが要望されている。
そこで、例えば特許文献1には、高精細な画像表示装置に配置したときにもギラツキが発生せず、白ちゃけの発生も十分に防止された防眩フィルムとして、透明基材上に微細な表面凹凸形状が形成されており、その表面凹凸形状の任意の断面曲線における平均長さPSmが12μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPaと平均長さPSmの比Pa/PSmが0.005以上0.012以下であり、その表面凹凸形状における傾斜角度が2°以下である面の割合が50%以下であり、傾斜角度が6°以下である面の割合が90%以上である防眩フィルムが開示されている。
特許文献1に開示された防眩フィルムは、任意の断面曲線における平均長さPSmを非常に小さくすることで、ギラツキを発生させやすくする50μm付近の周期を持つ表面凹凸形状をなくし、当該ギラツキを効果的に抑制することができる。しかしながら、特許文献1に開示された防眩フィルムは、ヘイズをさらに小さくしようとすると(低ヘイズにしようとすると)、この防眩フィルムを配置した画像表示装置の表示面を斜めから観察したときの防眩性が低下する場合があった。したがって、特許文献1に開示された防眩フィルムは、広い観察角度における防眩性の点では改良の余地が残されていた。
特開2007−187952号公報
本発明は、低ヘイズでありながら、広い観察角度において優れた防眩性を有し、画像表示装置に配置したときに、白ちゃけ及びギラツキの発生を十分に抑制し得る防眩フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、透明支持体と、その上に形成された微細な表面凹凸形状を有する防眩層とを備える防眩フィルムであって、
全ヘイズが0.1%以上3%以下であり、
表面ヘイズが0.1%以上2%以下であり、
上記表面凹凸形状の傾斜角度の平均値が0.2°以上1.2°以下であり、傾斜角度の標準偏差が0.1°以上0.8°以下であり、
上記表面凹凸形状の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の面積の平均値が50μm2以上150μm2以下であり、かつ、その多角形の面積の変動係数が40%以上80%以下である防眩フィルムを提供する。
この防眩フィルムにおいては、
遮光部分と透過部分の幅がそれぞれ0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである5種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の和Tcが375%以上であり、
遮光部分と透過部分の幅がそれぞれ0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて光の入射角45°で測定される反射鮮明度の和Rc(45)が180%以下であり、
遮光部分と透過部分の幅がそれぞれ0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて光の入射角60°で測定される反射鮮明度の和Rc(60)が240%以下であることが好ましい。
本発明によれば、低ヘイズでありながら、広い観察角度において十分な防眩性を有し、画像表示装置に配置したときに、白ちゃけ及びギラツキの発生が十分に抑制された防眩フィルムを提供することができる。
防眩フィルムの表面凹凸形状の傾斜角度を説明するための模式図である。 防眩フィルムの表面の傾斜角度の測定方法を説明するための模式図である。 ボロノイ分割の例を示すボロノイ図である。 防眩フィルムの凸部判定のアルゴリズムを模式的に示す斜視図である。 金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。 金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。 防眩フィルムを製造する際に好適に用いられる装置の配置例を模式的に示す図である。 防眩フィルムを製造する際の好適な予備硬化工程を模式的に示す図である。 ギラツキ評価のためのユニットセルを模式的に示す平面図である。 ギラツキ評価の装置を模式的に示す断面図である。 実施例1〜3及び比較例1で用いたパターンの一部を表す図である。 実施例4で用いたパターンの一部を表す図である。 実施例5で用いたパターンの一部を表す図である。 比較例2で用いたパターンの一部を表す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を必要に応じて図面を参照して説明するが、当該図面に示す寸法などは、見やすさのために任意になっている。
本発明の防眩フィルムは、表面凹凸形状の傾斜角度の平均値が0.2°以上1.2°以下であり、傾斜角度の標準偏差が0.1°以上0.8°以下であり、表面凹凸形状の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の面積の平均値が50μm2以上150μm2以下であり、かつ、その多角形の面積の変動係数が40%以上80%以下である。
まずは、本発明の防眩フィルムに関し、傾斜角度の平均値及び標準偏差、表面凹凸形状の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の面積の求め方について説明する。
[傾斜角度の平均値及び標準偏差]
防眩フィルムを適用した画像表示装置において、優れた防眩性能を与え、かつ白ちゃけを効果的に防止するうえで、その防眩フィルムの表面凹凸が特定の傾斜角度分布を示すようにするのが有効である。そこで本発明の防眩フィルムでは、表面凹凸形状の傾斜角度の平均値が0.2°以上1.2°以下となり、傾斜角度の標準偏差が0.1°以上0.8°以下となるようにする。当該傾斜角度の平均値が0.2°を下回る場合には、表面の凹凸が略平坦な面となり、十分な防眩性能を発現できないおそれがある。一方でその平均値が1.2°を上回る場合には、個々の傾斜角度が急峻になって、周囲からの光を集光しやすくなるため、そのような防眩フィルムを備えた画像表示装置は、白ちゃけが発生しやすくなる。また、傾斜角度の標準偏差が0.1°を下回る場合には、表面凹凸形状が均一となり、十分な防眩性能を発現しない可能性がある。一方でその標準偏差が0.8°を上回る場合には、平均値が所定の範囲内であったとしても表面凹凸形状に傾斜角度の急峻な領域が存在することとなり、そのような防眩フィルムを備えた画像表示装置は、白ちゃけが発生しやすくなる。表面凹凸形状の傾斜角度の平均値は、好ましくは0.5°以上1.2°以下であり、傾斜角度の標準偏差は、好ましくは0.3°以上0.7°以下である。
傾斜角度の平均値及び標準偏差の求め方について説明する。図1に、防眩フィルムの表面を模式的な斜視図で示した。この図を参照して、防眩フィルム1は、その表面に微細な凹凸2が形成されたものである。本発明でいう「表面凹凸形状の傾斜角度」とは、図1に示す防眩フィルム1表面の任意の点Pにおいて、フィルムの主法線方向5、すなわち、フィルムの平均面での法線に対する、局所的な法線6のなす角度ψを意味する。この局所的な法線6のなす角度ψは、点Pにおける凹凸の影響を加味する。図1には、フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、またフィルム全体の面を投影面3で表示している。表面凹凸形状の傾斜角度は、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。
図2は、表面凹凸形状の傾斜角度の測定方法を説明するための模式図である。具体的な傾斜角度の決定方法を説明すると、図2に示すように、フィルム平均面1に点線で示される仮想的な平面FGHI上の着目点Aを決定し、そこを通るx軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点B及びDを、また点Aを通るy軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点C及びEをとり、これらの点B,C,D,Eに対応するフィルム面上の点Q,R,S,Tを決定する。なお図2では、フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、フィルム厚み方向の座標をzで表示している。平面FGHIは、y軸上の点Cを通るx軸に平行な直線、及び、同じくy軸上の点Eを通るx軸に平行な直線と、x軸上の点Bを通るy軸に平行な直線、及び、同じくx軸上の点Dを通るy軸に平行な直線とのそれぞれの交点F,G,H,Iによって形成される面である。また図2では、フィルム平均面1内の平面FGHIに対して、実際のフィルム面の位置が上方にくるように描かれているが、着目点Aのとる位置によって当然ながら、実際のフィルム面の位置が、フィルム平均面1内の平面FGHIより上方にくることもあるし、下方にくることもある。
そして、得られる表面形状データの傾斜角度は、着目点Aに対応する実際のフィルム面上の点Pと、その近傍にとられた4点B,C,D,Eに対応する実際のフィルム面上の点Q,R,S,Tの合計5点により張られるポリゴン4平面、すなわち、四つの三角形PQR,PRS,PST,PTQの各法線ベクトル6a,6b,6c,6dを平均して得られる平均法線ベクトル6の極角を求めることにより得られる。このようにして各測定点について傾斜角度を求めた後、傾斜角度の平均値と標準偏差が計算される。
微粒子を分散させた樹脂溶液を透明支持体上に塗布し、微粒子を塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸を透明支持体上に形成する方法によって防眩フィルムを製造する場合、表面凹凸形状の傾斜角度の平均値が0.2°以上1.2°以下であり、傾斜角度の標準偏差が0.1°以上0.8°以下である防眩フィルムを得るためには、微粒子の粒径及び分散状態と塗布膜の膜厚を調整すればよい。一般的に微粒子の粒径が一定であれば、塗布膜の膜厚を増加させることによって、傾斜角度の平均値は小さくなる。また、微粒子の分散状態が良好、すなわち微粒子が均一に透明支持体上に配置されているほど、傾斜角度の標準偏差は小さくなる。
一方、後述する本発明の防眩フィルムを製造するのに好ましい方法であるUVエンボス法を採用する場合は、金型を製造する第2エッチング工程のエッチング量を調整することによって、本発明の要件を満たす防眩フィルムを得ることができる。第2エッチング工程のエッチング量を増加させることによって、傾斜角度の平均値及び標準偏差を小さくすることができる。
[凸部頂点を母点として凹凸表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の面積]
防眩フィルムの表面凹凸形状に関し、凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の面積について説明する。まず、ボロノイ分割について説明すると、平面上にいくつかの点(母点という)が配置されているとき、その平面内の任意の点がどの母点に最も近いかによってその平面を分割してできる図をボロノイ図といい、その分割をボロノイ分割という。図3に、防眩フィルムの表面における凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割した例を示す。この図において、四角の点26,26が母点であり、一つの母点を含む個々の多角形27,27が、ボロノイ分割により形成される領域であって、ボロノイ領域とかボロノイ多角形とか呼ばれるものであるが、以下ではボロノイ多角形と呼ぶ。この図において、周囲の薄く塗りつぶしてある部分28,28については、後で説明する。ボロノイ図においては、母点の数とボロノイ多角形の数は一致する。表面凹凸形状の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の面積とは、このボロノイ多角形の面積である。
防眩フィルム表面の凸部の頂点を母点としたボロノイ分割を行うことにより得られるボロノイ多角形の面積の平均値と変動係数を求めるにあたっては、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により表面形状を測定し、防眩フィルム表面の各点の三次元的な座標値を求めてから、以下に示すアルゴリズムによりボロノイ分割を行い、ボロノイ多角形の面積の平均値と変動係数を計算する。表面形状の測定に際しては、防眩フィルムの微細凹凸表面を精度よく測定し、かつ誤差を少なくするために、測定領域は150μm×150μm以上であり、500μm×500μm以下であることが好ましい。また、3点以上の領域を測定し、その平均値をもって測定値とすることが好ましい。
防眩フィルムの微細凹凸表面の凸部の頂点を母点としたボロノイ分割の方法について、具体的に説明する。まず、その微細凹凸表面の凸部の頂点を求める。すなわち、防眩フィルム表面の任意の点に着目したときに、その点の周囲において、着目した点よりも標高の高い点が存在しない場合に、その点が凸部の頂点であるとし、そのようにして求めた凸部の頂点を母点としてボロノイ分割を行う。より具体的には、図4に示すように、防眩フィルム表面の任意の点21に着目し、その点21を中心として、防眩フィルム基準面23に平行な半径2.5μmの円を描いたとき、その円の投影面24内に含まれる防眩フィルム表面22上の点の中に、着目した点21よりも標高の高い点が存在しない場合に、その点21が凸部の頂点であると判定する。ここで、標高を比較する範囲を半径2.5μmの円24の範囲内としたのは、防眩フィルムの防眩性やギラツキにほとんど寄与しない高周波の表面凹凸形状の影響を除去するためである。
次に、防眩フィルム基準面23に、求めた凸部の頂点を投影する。その後、表面形状の測定によって得られた三次元座標全てをその基準面に投影し、それら投影された全ての点を最近接の母点に帰属させることによってボロノイ分割を行い、分割されて得られる多角形の面積を求めることにより、ボロノイ多角形の面積の平均値と変動係数を求める。ここで、変動係数は、ボロノイ多角形の面積の標準偏差をその平均値で除した値の百分率として算出される。ボロノイ多角形の面積のばらつきを評価する指標として、標準偏差ではなく変動係数を採用した理由は、ボロノイ多角形の面積の平均値の大小による影響を除外して、ばらつきを評価するためである。
先に一部説明したとおり、図3は、防眩フィルムの凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割した例を示すボロノイ図である。多数ある母点26,26は、防眩フィルムの凸部の頂点であって、ボロノイ分割により、一つの母点26に対して一つのボロノイ多角形27が割り当てられている。この図において、薄く塗りつぶされているボノイ多角形28,28は、視野の境界に接しているボロノイ多角形である。この視野の境界に接しているボロノイ多角形は、母点である凸部の頂点のみで決定されているわけではないため、ボロノイ多角形の面積の平均値と変動係数を計算する際には使用しない。なお、この図においては、一部の母点及びボロノイ多角形に対してのみ引き出し線と符号が付されているが、母点とボロノイ多角形が多数存在することは、以上の説明とこの図から容易に理解されるであろう。
本発明の防眩フィルムは、上述したボロノイ多角形の面積の平均値と変動係数をそれぞれ所定の範囲にすることで、後述するヘイズ、上述した傾斜角度の平均値及び標準偏差との相乗効果により、白ちゃけ及びギラツキの発生を良好に防止しつつ、優れた防眩性を発現する。かかる効果を有効に発現させるために、ボロノイ多角形の面積の平均値は、50μm2以上150μm2以下となるようにする。この面積の平均値は、75μm2以上125μm2以下であるのがより好ましい。同様の理由から、ボロノイ多角形の面積の変動係数は、40%以上80%以下となるようにする。この変動係数は、50%以上70%以下であるのがより好ましく、50%以上60%以下であるのがさらに好ましい。
ボロノイ多角形の面積の平均値が前記範囲を下回る場合には、防眩フィルムの微細凹凸表面の凸部が密に配置されすぎていることとなり、十分な防眩性が得られにくい。一方、ボロノイ多角形の面積の平均値が前記範囲を上回る場合には、防眩フィルムの微細凹凸表面の凸部が疎に配置されすぎていることとなり、画像表示装置に配置したときにギラツキが発生する。
ボロノイ多角形の面積の変動係数が前記範囲を下回る場合には、ボロノイ多角形の面積分布が十分な広がりを有していないこととなり、50μm以上の間隔を有する凸部の配置が不足し、広い観察角度からの十分な防眩性が得られにくい。一方、ボロノイ多角形の面積の変動係数が前記範囲を上回る場合には、ボロノイ多角形の面積分布が広すぎることとなり、密な凸部の配置が得られず、ギラツキが発生する。
[全ヘイズ及び表面ヘイズ]
本発明の防眩フィルムは、防眩性を発現し、白ちゃけを防止するために、垂直入射光に対する全ヘイズが0.1%以上3%以下の範囲にあり、表面ヘイズが0.1%以上2%以下の範囲にあるものとする。防眩フィルムの全ヘイズは、JIS K7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に規定される方法に準じて測定することができる。全ヘイズ又は表面ヘイズが0.1%を下回る防眩フィルムは、それを配置した画像表示装置が十分な防眩性を発現しないため、好ましくない。また、全ヘイズが3%を上回るか、又は表面ヘイズが2%を上回る防眩フィルムは、それを配置した画像表示装置が白ちゃけを発生するものとなるため、好ましくない。かかる画像表示装置はまた、そのコントラストも不十分になるといった不都合もある。
全ヘイズから表面ヘイズを差し引いて求められる内部ヘイズは低いほど好ましい。当該内部ヘイズが2.5%を上回る防眩フィルムを配置した画像表示装置は、そのコントラストが低下する傾向がある。
[透過鮮明度Tc、反射鮮明度Rc(45)及び反射鮮明度Rc(60)]
本発明の防眩フィルムは、以下の方法で求められる透過鮮明度の和Tcが375%以上であることが好ましい。すなわち、透過鮮明度の和Tcは、JIS K7374:2007「プラスチック−像鮮明度の求め方」に規定される方法により、所定幅の光学くしを用いて透過法による像鮮明度をそれぞれ測定し、それらの合計値として求められる。具体的には、遮光部分と透過部分との比が1:1で、その幅が0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである5種類の光学くしを用いて透過法による像鮮明度をそれぞれ測定し、それらの合計を求めて、Tcとする。Tcが375%を下回る防眩フィルムは、より高精細な画像表示装置に配置した場合に、ギラツキが発生しやすくなることがある。Tcの上限は、その最大値である500%以下の範囲で選ばれるが、このTcが大きすぎると、正面からの防眩性が必ずしも良好でない画像表示装置になりやすいため、例えば450%以下であることが好ましく、410%以下であることがより好ましい。
本発明の防眩フィルムは、入射角45°の入射光で測定される反射鮮明度Rc(45)が180%以下であることが好ましく、160%以下であることがより好ましい。反射鮮明度Rc(45)は、上記Tcと同様に、JIS K7374:2007に規定の方法で測定されるが、ここでは、上記5種類の光学くしのうち、その幅が0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて反射法により入射角45°の像鮮明度をそれぞれ測定し、それらの合計を求めて、Rc(45)とする。JISでは上述のとおり5種類の光学くしが規定され、それらの全てを用いるか又は必要に応じた幅を選択するとされているが、本発明で規定する防眩フィルムにおいては、幅が0.125mmの光学くしを用いた場合の反射鮮明度は、値自体が小さく、したがって測定誤差が大きくなるため、それを除いた上記4種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和をもって反射鮮明度とする。Rc(45)が180%以下であると、その防眩フィルムを配置した画像表示装置は、正面及び斜めから観察したときの防眩性が良好となるので、好ましく、160%以下であると、より良好となるので好ましい。Rc(45)の下限は特に制限されないが、白ちゃけやギラツキの発生を良好に抑制するためには、例えば80%以上であることが好ましい。
また、本発明の防眩フィルムは、入射角60°の入射光で測定される反射鮮明度Rc(60)が240%以下であることが好ましく、220%以下であることがより好ましい。反射鮮明度Rc(60)は、入射角を変更する以外は、上記の反射鮮明度Rc(45)と同じJIS K7374:2007に準拠する方法で測定される。Rc(60)が240%以下であると、その防眩フィルムを配置した画像表示装置は、斜めから観察したときの防眩性が良好となるので、好ましく、220%以下であるとより良好となるので好ましい。Rc(60)の下限は特に制限されないが、白ちゃけやギラツキの発生を良好に抑制するためには、例えば150%以上であることが好ましい。
[防眩フィルムの製造方法全般]
本発明の防眩フィルムは、例えば以下のようにして製造される。第1の方法は、所定のパターンに基づいた表面凹凸形状が成形表面に形成された微細凹凸形成用金型を準備し、当該金型の凹凸面の形状を透明支持体に転写した後、凹凸面の形状が転写された透明支持体を金型から剥がすという方法である。第2の方法は、微粒子、バインダー樹脂及び溶剤を含み、その微粒子が樹脂溶液に分散した組成物を準備し、当該組成物を透明支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥することで形成された微粒子を含む塗布膜を硬化するという方法である。第2の方法では、塗布膜厚や微粒子の凝集状態を、前記組成物の組成や前記塗布膜の乾燥条件などによって調整することで、微粒子を塗布膜の表面に露出させ、ランダムな凹凸を透明支持体上に形成する。防眩フィルムの生産安定性及び生産再現性の観点からは、第1の方法により本発明の防眩フィルムを製造することが好ましい。
ここでは、本発明の防眩フィルムの製造方法として好ましい第1の方法について詳述する。上述のような特性を有する表面凹凸形状の防眩層を精度よく形成するためには、準備する微細凹凸形成用金型(以下、「金型」と略記することがある)が重要である。より具体的には、金型が有する表面凹凸形状(以下、「金型凹凸表面」と呼ぶことがある)が所定のパターンに基づいて形成されており、この所定パターンが、その一次元パワースペクトルから計算される平均周波数が0.075μm-1以上0.105μm-1以下であり、標準偏差が0.095μm-1以上0.125μm-1以下であるものを用いるのが好ましい。
ここで「パターン」とは、防眩フィルムが有する防眩層の表面凹凸形状を形成するための画像データや透光部と遮光部を有するマスクなどを意味し、以下、「パターン」と略記することとする。
まずは、本発明の防眩フィルムが有する防眩層の表面凹凸形状を形成するためのパターンを定める方法について説明する。
パターンの二次元パワースペクトルの求め方を、例えば当該パターンが画像データである場合について示す。まず、当該画像データを2階調の二値化画像データに変換した後、その階調を二次元関数g(x,y)で表す。得られた二次元関数g(x,y)を、下記式(1)のようにフーリエ変換して二次元関数G(fx,fy)を計算し、下記式(2)に示すように、得られた二次元関数G(fx,fy)の絶対値を二乗することによって、二次元パワースペクトルΓ(fx,fy)を求める。ここで、x及びyは画像データ面内の直交座標を表す。また、fx及びfyはそれぞれ、x方向及びy方向の周波数を表しており、長さの逆数の次元を持つ。
Figure 2016033658
式(1)中のπは円周率、iは虚数単位であり、〈g〉は二次元関数g(x,y)の平均値である。
Figure 2016033658
得られる二次元パワースペクトルΓ(fx,fy)は、パターンの空間周波数分布を表している。通常、防眩フィルムは等方的であることが求められるため、本発明の防眩フィルム製造用のパターンも等方的となる。そのため、パターンの二次元パワースペクトルを表す二次元関数Γ(fx,fy)は、原点(0,0)からの距離fのみに依存する一次元関数Γ(f)で表すことができる。
次に、二次元関数Γ(fx,fy)から一次元関数Γ(f)を求める方法を説明する。まず、パターンの階調の二次元パワースペクトルである二次元関数Γ(fx,fy)を、下式(3)のように極座標で表示する。
Figure 2016033658
ここで、θはフーリエ空間中の偏角である。一次元関数Γ(f)は、極座標表示した二次元関数Γ(fcosθ,fsinθ)の回転平均を下式(4)のように計算することにより、求めることができる。パターンの階調の二次元パワースペクトルである二次元関数Γ(fx,fy)の回転平均から求められる一次元関数Γ(f)を、以下では一次元パワースペクトルΓ(f)ともいう。
Figure 2016033658
本発明の防眩フィルムを精度良く得るためには、パターンの一次元パワースペクトルから計算される平均周波数〈f〉が0.075μm-1以上0.105μm-1以下であり、標準偏差σfが0.095μm-1以上0.125μm-1以下であることが好ましい。ここで、パターンの一次元パワースペクトルから計算される平均周波数〈f〉及び標準偏差σfは、それぞれ下式(5)及び(6)で定義される。
Figure 2016033658
Figure 2016033658
パターンの二次元パワースペクトルを求める場合には、階調の二次元関数g(x,y)は通常、離散関数として得られる。その場合は、離散フーリエ変換によって二次元パワースペクトルを計算すればよい。パターンの一次元パワースペクトルは、パターンの二次元パワースペクトルから同様にして求められる。
また、得られる表面凹凸形状を均一で連続的な曲面とするために、二次元関数g(x,y)の平均値は、二次元関数g(x,y)の最大値と、二次元関数g(x,y)の最小値との差の30〜70%であることが好ましい。金型凹凸表面をリソグラフィー法により製造する場合には、この二次元関数g(x,y)はパターンの開口率となる。金型凹凸表面をリソグラフィー法により製造する場合について、ここでいうパターンの開口率を定義しておく。リソグラフィー法に用いるレジストがポジ型である場合の開口率は、当該ポジ型レジストの塗布膜に画像データを描画したとき、当該塗布膜の全表面領域に対する、露光される領域の割合を意味する。一方、リソグラフィー法に用いるレジストがネガ型である場合の開口率は、当該ネガ型レジストの塗布膜に画像データを描画するとき、当該塗布膜の全表面領域に対する、露光されない領域の割合を意味する。リソグラフィー法が一括露光である場合の開口率は、透光部と遮光部を有するマスクの透光部の割合を意味する。
本発明の防眩フィルムは、パターンの一次元パワースペクトルから計算される平均周波数〈f〉と標準偏差σfをそれぞれ前記の範囲として、所望の金型を製造し、当該金型を用いて前記第1の方法により製造することができる。
このような強度比を有する一次元パワースペクトルのパターンを作成するためには、ドットをランダムに配置して作成したパターンや乱数若しくは計算機によって生成された疑似乱数により濃淡を決定したランダムな明度分布を有するパターン(予備パターン)を予め作成し、当該予備パターンから特定の空間周波数範囲の成分を除去する。この特定の空間周波数範囲の成分除去には、前記予備パターンをバンドパスフィルターに通過させればよい。
所定パターンに基づいた表面凹凸形状が形成された防眩層を有する防眩フィルムを製造するため、当該所定パターンに基づいて形成された表面凹凸形状を透明支持体に転写するための凹凸表面を有する金型を製造する。かかる金型を用いる前記第1の方法は、防眩層を透明支持体上に作製するエンボス法となる。
このエンボス法をさらに分類すると、光硬化性樹脂を用いる光エンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法などがある。なかでも、生産性の観点から、光エンボス法が好ましい。
光エンボス法は、透明支持体上(透明支持体の表面)に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸表面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸表面の形状を、光硬化性樹脂層に転写する方法である。具体的には、透明支持体上に光硬化性樹脂を塗布して形成した光硬化性樹脂層を、金型の凹凸表面に密着させた状態で、透明支持体側から光(当該光は光硬化性樹脂が硬化し得るものを用いる)を照射して、光硬化性樹脂層を硬化させ、その後、光硬化性樹脂の硬化層が形成された透明支持体を金型から剥離する。このような方法により得られる防眩フィルムでは、光硬化性樹脂の硬化層が防眩層となる。なお、製造の容易さからみれば、光硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂が好ましく、当該紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、照射する光は紫外線を用いる。光硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いるエンボス法を、以下「UVエンボス法」という。偏光フィルムと一体化した防眩フィルムを製造するためには、透明支持体として偏光フィルムを用い、ここで説明したエンボス法において、透明支持体を偏光フィルムに置き換えて実施すればよい。
UVエンボス法に用いる紫外線硬化性樹脂の種類は特に限定されず、市販されている樹脂の中から、用いる透明支持体の種類や紫外線の種類に応じて適宜のものを用いることができる。ここでいう紫外線硬化性樹脂は、紫外線照射により光重合するモノマー(多官能モノマー)、オリゴマー及びポリマー、並びにそれらの混合物を含む概念である。また、紫外線硬化性樹脂の種類に応じて適宜、選択された光開始剤を組み合わせて用いることにより、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることもできる。この紫外線硬化性樹脂の好適例などは、後で説明する。
UVエンボス法に用いる透明支持体としては、例えば、ガラスやプラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムは、適度の透明性及び機械強度を有していれば使用可能である。具体的には、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロースアセテート系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などからなる透明樹脂フィルムが挙げられる。これらの透明樹脂フィルムは、溶剤キャストフィルムであっても、押出フィルムであってもよい。
透明支持体の厚みは、例えば10〜500μmであり、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜60μmである。透明支持体の厚みがこの範囲であると、十分な機械強度を有する防眩フィルムが得られやすい傾向にあり、当該防眩フィルムを備えた画像表示装置が、より一層ギラツキを発生しにくいものとなる。
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂で形成された透明樹脂フィルムを、加熱して軟化させた状態で金型の凹凸表面に押し付け、当該金型の表面凹凸形状を透明樹脂フィルムに転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明樹脂フィルムも、実質的に光学的に透明なものであればいかなるものであってもよく、具体的には、UVエンボス法に用いる透明樹脂フィルムとして上に例示したものを挙げることができる。
[金型の製造方法]
続いて、エンボス法に用いる金型を製造する方法について説明する。金型の製造方法については、当該金型の成形面が、上述した所定パターンに基づいて形成された表面凹凸形状を透明支持体上に転写できる(所定パターンに基づいて形成された表面凹凸形状の防眩層を形成できる)ようになる範囲で、特に制限されないが、当該表面凹凸形状の防眩層を精度よく、かつ再現性よく製造するために、リソグラフィー法が好ましい。さらに、当該リソグラフィー法は、〔1〕第1めっき工程、〔2〕第1研磨工程、〔3〕感光性樹脂膜形成工程、〔4〕露光工程、〔5〕現像工程、〔6〕第1エッチング工程、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程、〔8〕第2エッチング工程、〔9〕第2めっき工程、及び〔10〕保護皮膜形成工程をこの順に含むことが好ましい。
図5は、金型の製造方法の前半部分(上記〔5〕の現像工程まで)の好ましい一例を模式的に示す図である。この図では、各工程における金型の断面を模式的に示している。以下、図5を参照しながら、防眩フィルム製造用の金型の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
〔1〕第1めっき工程
まず、金型製造に用いる基材(金型用基材)を準備し、当該金型用基材の表面に、銅めっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきを施すことにより、後述の第2めっき工程におけるニッケルめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。銅めっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成することができる。そのため、このようにして銅めっきを金型用基材表面に施すことで、後述する第2めっき工程においてニッケルめっきを施した後に、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因して発生する可能性のある表面荒れが解消される。したがって、所定パターンに基づいた表面凹凸形状(微細凹凸表面形状)を金型用基材成形面に形成した後に、微小な凹凸や鬆等の下地(金型用基材)表面の影響によるずれを十分に防止することができる。
第1めっき工程の銅めっきに用いられる銅は、銅の純金属でも、銅を主成分とする合金(銅合金)でもよい。したがって、銅めっきに用いられる「銅」は、銅及び銅合金を含む概念である。銅めっきは、電解めっきであっても、無電解めっきであってもよいが、第1めっき工程の銅めっきには、電解めっきを用いることが好ましい。さらに、第1めっき工程における好ましいめっき層は、銅めっき層からなるもののみならず、銅めっき層と、銅以外の金属からなるめっき層とが積層されたものであってもよい。
金型用基材の表面に銅めっきを施して形成されるめっき層があまり薄いと、下地表面の影響(微小な凹凸や鬆、クラックなど)を排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であることが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどを考慮した場合には、500μm程度以下であるのが好ましい。
金型用基材は金属材料であるが、コストの観点からは、当該金属材料の材質として、アルミニウム、鉄などが好ましい。さらに金型用基材の取扱いの利便性からみれば、軽量なアルミニウムからなる基材が金型用基材として特に好ましい。なお、ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属である必要はなく、アルミニウム又は鉄を主成分とする合金であってもよい。
金型用基材の形状は、防眩フィルムの製造方法に応じて適宜のものであればよい。具体的には、平板状の基材、円柱状又は円筒状(ロール形状)の基材などから選択される。防眩フィルムを連続的に製造する場合には、金型はロール形状であることが好ましい。このような金型は、ロール形状の金型用基材から製造される。
〔2〕第1研磨工程
続く第1研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきが施された金型用基材の表面(めっき層)を研磨する。防眩フィルムの製造に用いる金型の製造においては、当該第1研磨工程を経て、金型用基材表面を鏡面に近い状態にまで研磨することが好ましい。
金型用基材として用いる平板状基材やロール形状基材の市販品は、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより表面には微細な加工目が残っている。そのため、第1めっき工程により銅めっき層を形成しても、上記の加工目が残ることがある。また、第1めっき工程において銅めっきを施しても、金型用基材の表面が完全に平滑になるとは限らない。すなわち、このような深い加工目などが残った表面を有する金型用基材に対し、後述する〔3〕〜〔10〕の工程を施しても、得られる金型表面の凹凸形状が所定パターンに基づくものとは異なることがあったり、加工目などに由来する凹凸が含まれることがあったりする。加工目などの影響が残っている金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、目的とする防眩性などの光学特性が十分発現できず、予期できない影響を及ぼすおそれがある。
第1研磨工程において適用する研磨方法は特に制限されず、研磨対象となる金型用基材の形状及び性状に応じた方法が選択される。第1研磨工程に適用できる研磨方法を具体的に例示すると、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。これらのうち、機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング法、流体研磨法、バフ研磨法などのいずれも使用できる。また、研磨工程において切削工具を用いて鏡面切削することにより、金型用基材の表面を鏡面としてもよい。この場合の切削工具は、金型用基材の材質(金属材料の種類)に応じて、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイトなどを使用することができるが、加工精度の観点からはダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。研磨後の表面粗度は、JIS B0601:2013「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」に準拠する中心線平均粗さRaで表して、0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的に得られる金型の凹凸表面に、表面粗度の影響が残るおそれがある。また、中心線平均粗さRaの下限は特に制限されず、第1研磨工程における加工時間(研磨時間)や加工コストの観点から、下限を定めればよい。
〔3〕感光性樹脂膜形成工程
続いて、感光性樹脂膜形成工程につき、図5を参照して説明する。図5(a)は、金型用基材40の表面が、上の第1めっき工程及び第1研磨工程を経て、研磨されためっき面41となった状態を示している。感光性樹脂膜形成工程では、上述した第1研磨工程によって得られた金型用基材40の研磨されためっき面41に、感光性樹脂を溶剤に溶解した溶液(感光性樹脂溶液)を塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜(レジスト膜)を形成する。図5(b)には、金型用基材40の研磨されためっき面41に感光性樹脂膜50が形成された状態を模式的に示した。
感光性樹脂としては従来公知のものを用いることができるし、また、レジストとして市販されているものをそのまま用いることもできるし、必要に応じてそれをろ過等で精製してから用いることもできる。例えば、感光部分が硬化する性質を持つネガ型の感光性樹脂としては、分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナメート系化合物などを用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質を持つポジ型の感光性樹脂としては、フェノール樹脂系やノボラック樹脂系などを用いることができる。このようなポジ型又はネガ型の感光性樹脂は、ポジ型レジストやネガ型レジストとして市場から容易に入手することもできる。また、感光性樹脂溶液は、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤などの各種添加剤が配合されていてもよく、このような添加剤を市販のレジストに混合したものを感光性樹脂溶液として用いることもできる。
これらの感光性樹脂溶液を金型用基材40の研磨されためっき面41に塗布するためには、平滑な感光性樹脂膜を形成するうえで最適な溶剤を選択し、かかる溶剤に感光性樹脂を溶解・希釈して得られる感光性樹脂溶液を用いることが好ましい。このような溶剤は、感光性樹脂の種類及びその溶解性によって選択される。具体的には、例えば、セロソルブ系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、高極性溶剤などから選択される。市販のレジストを用いる場合、当該レジストに含まれる溶剤の種類に応じて、又は、適当な予備実験を行って、最適なレジストを選択し、感光性樹脂溶液として用いてもよい。
金型用基材の研磨されためっき面41に感光性樹脂溶液を塗布する方法は、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、リングコートなどの公知の方法のなかから、当該金型用基材の形状などに応じて選択される。塗布後の感光性樹脂膜の厚さは、乾燥後で1〜10μmの範囲とすることが好ましく、6〜9μmの範囲とすることがより好ましい。
〔4〕露光工程
続く露光工程は、上述した感光性樹脂膜形成工程で形成された感光性樹脂膜50に目的とするパターンを露光することで、当該パターンを感光性樹脂膜50に転写する工程である。露光工程で用いる光源は、感光性樹脂膜に含まれる感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、例えば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)又はi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nmなど)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F2エキシマレーザ(波長:157nm)などを用いることができる。露光方式は、目的とするパターンに対応したマスクを用いて一括露光する方式でもよいし、描画方式でもよい。目的とするパターンとは、すでに説明したとおり、パターンの一次元パワースペクトルから計算される平均周波数〈f〉及び標準偏差σfがそれぞれ所定の好ましい範囲とされたものである。
金型の製造において、当該金型の表面凹凸形状を精度よく形成するためには、感光性樹脂膜50上に、目的とするパターンを精密に制御された状態で露光することが好ましい。
このような状態で露光するためには、コンピュータ上で目的のパターンを画像データとして作成し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって感光性樹脂膜上に描画(レーザ描画)することが好ましい。
レーザ描画には、例えば印刷版作製などで汎用されている装置を使用することができる。
このようなレーザ描画装置の市販品としては、例えば、Laser Stream FX〔(株)シンク・ラボラトリー製〕などが挙げられる。
図5(c)は、同(b)における感光性樹脂膜50にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜50にネガ型の感光性樹脂が含まれる場合(具体的には感光性樹脂溶液としてネガ型レジストを用いた場合)には、露光された領域51は、露光エネルギーを受けて感光性樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、露光されていない領域52が現像工程において現像液に溶解し、露光された領域51のみが基材表面上に残り、マスク60となる〔図5(d)参照〕。一方、感光性樹脂膜50にポジ型の感光性樹脂が含まれる場合(具体的には感光性樹脂溶液としてポジ型レジストを用いた場合)には、露光された領域51は、露光エネルギーを受けて感光性樹脂の結合が切断されるなどにより、後述する現像液に溶解されやすくなる。よって、露光された領域51が現像工程において現像液に溶解し、露光されていない領域52のみが基材表面上に残り、マスク60となる。
〔5〕現像工程
現像工程においては、感光性樹脂膜50にネガ型の感光性樹脂が含まれる場合には、露光されていない領域52が現像液に溶解し、露光された領域51が金型用基材上に残存して、マスク60となる。一方、感光性樹脂膜50にポジ型の感光性樹脂が含まれる場合には、露光された領域51が現像液に溶解し、露光されていない領域52が金型用基材上に残存して、マスク60となる。所定のパターンを感光性樹脂膜として形成せしめた金型用基材は、後述の第1エッチング工程において、金型用基材上に残存する感光性樹脂膜がマスクとして作用する。
現像工程で用いる現像液については、従来公知のもののなかから、用いた感光性樹脂の種類に応じて適切なものを選択することができる。当該現像液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水の如き無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンの如き第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンの如き第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミンの如き第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンの如きアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドの如き第四級アンモニウム化合物;ピロール、ピペリジンの如き環状アミン類などが溶解されているアルカリ性水溶液;キシレン、トルエンの如き有機溶剤などが挙げられる。
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像などを用いることができる。
図5(d)は、感光性樹脂としてネガ型のものを用い、現像工程を行った後の状態を模式的に示している。図5(c)において露光されていない領域52が現像液に溶解し、露光された領域51のみが基材表面に残り、この領域の感光性樹脂膜が図5(d)におけるマスク60となる。図5(e)は、感光性樹脂としてポジ型のものを用い、現像工程を行った後の状態を模式的に示している。図5(c)において露光された領域51が現像液に溶解し、露光されていない領域52のみが基材表面に残り、この領域の感光性樹脂膜が図5(e)におけるマスク60となる。
〔6〕第1エッチング工程
第1エッチング工程は、上述した現像工程後に金型用基材表面に残存した感光性樹脂膜をマスクとして、金型用基材表面のうち、主にマスクのない領域にあるめっき層をエッチングする工程である。
図6は、金型の製造方法の後半部分(上記した〔6〕の第1エッチング工程以降)の好ましい一例を模式的に示す図である。図6(a)は、エッチング工程によって主にマスクのない領域のめっき層がエッチングされた後の状態を模式的に示している。マスク60の下部のめっき層は感光性樹脂膜がマスク60として働くことでエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクのない領域45からのエッチングが進行する。よって、マスク60のある領域と、マスクのない領域45の境界付近では、マスク60の下部にあるめっき層もエッチングされることになる。このように、マスク60のある領域と、マスクのない領域45の境界付近において、マスク60の下部のめっき層もエッチングされることをサイドエッチングと呼ぶ。
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)水溶液、塩化第二銅(CuCl2)水溶液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)などのエッチング液を用いて、金型用基材表面のうち、主としてマスク60のない領域のめっき層(金属表面)を腐食させることにより行われる。当該エッチング処理においては、塩酸や硫酸などの強酸をエッチング液として用いることもできるし、第1めっき工程を電解めっきにより行った場合には、電解めっきのときと逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを採用することもできる。エッチング処理を施すことにより金型用基材に形成される表面凹凸形状は、金型用基材の構成材料(金属材料)又はめっき層の種類、感光性樹脂膜の種類及び、エッチング工程におけるエッチング処理の種類などにより異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に接触する金型用基材表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られるめっき層の厚みである。
第1エッチング工程におけるエッチング量は、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは3〜12μm、さらに好ましくは5〜8μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金型に表面凹凸形状がほとんど形成されず、ほぼ平坦な表面を有するものとなるため、当該金型を用いて防眩フィルムを製造しても、表面凹凸形状をほとんど有しないものとなる。このような防眩フィルムを配置した画像表示装置では、十分な防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が大きすぎる場合には、最終的に得られる金型の凹凸表面が、大きい高低差を有するものとなりやすい。このような金型から製造される防眩フィルムは、画像表示装置に適用したときに、白ちゃけの発生を十分防止できないことがある。エッチング工程は、1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。ここでエッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜20μmとなるようにすることが好ましい。
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程は、第1エッチング工程でマスク60として作用し、金型用基材上に残存した感光性樹脂膜を除去する工程であり、この工程において、金型用基材上に残存した感光性樹脂膜を完全に除去することが好ましい。感光性樹脂膜剥離工程では、剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解することが好ましい。剥離液としては、現像液として例示したものを、その濃度やpHなどを変更して用いることができる。あるいは、現像工程で用いた現像液と同じものを用い、現像工程とは温度や浸漬時間などを変えることで感光性樹脂膜を剥離することもできる。感光性樹脂膜剥離工程において、剥離液と金型用基材との接触方法(剥離方法)は特に制限されず、浸漬剥離、スプレー剥離、ブラシ剥離、超音波剥離などを用いることができる。
図6(b)は、第1エッチング工程でマスク60として使用した感光性樹脂膜を、感光性樹脂膜剥離工程において完全に溶解し、除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜によるマスク60と、エッチング処理とによって、第1の表面凹凸形状46が金型用基材の表面に形成される。
〔8〕第2エッチング工程
第2エッチング工程は、第1エッチング工程で形成された第1の表面凹凸形状46を、さらなるエッチング処理(第2エッチング処理)によって鈍らせるための工程である。この第2エッチング処理により、第1エッチング処理で形成された第1の表面凹凸形状46における、表面傾斜が急峻な部分がなくなる(以下、このように表面凹凸形状のなかで、表面傾斜が急峻な部分を鈍らせることを「形状鈍化」という)。図6(c)には、第2エッチング処理によって、金型用基材40の第1の表面凹凸形状46を形状鈍化させることで表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状47が形成された状態が示されている。このように、第2エッチング処理により形状鈍化して得られる金型は、当該金型を用いて製造される防眩フィルムの光学特性をより好ましいものにするという効果がある。
第2エッチング工程においても、第1エッチング工程と同様のエッチング液を用いるエッチング処理や逆電解エッチングを用いることができる。第2エッチング処理後の形状鈍化の度合い(第1エッチング工程後の表面凹凸形状における表面傾斜が急峻な部分の消失度合い)は、金型用基材の材質、第2エッチング処理の手段、及び第1エッチング工程により得られた表面凹凸形状にある凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合(形状鈍化の度合い)を制御するうえで最も大きな因子は、第2エッチング処理におけるエッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程の場合と同様に、第2エッチング処理により削られる基材の厚みで表す。第2エッチング処理のエッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた表面凹凸形状の形状鈍化に関する効果が不十分となる。したがって、形状鈍化が不十分な金型を用いて製造される防眩フィルムは、表面凹凸形状の傾斜角度の平均値及び標準偏差が、本発明で規定する範囲を上回りやすくなり、結果として白ちゃけが発生することがある。一方で、第2エッチング処理におけるエッチング量が大きすぎると、第1エッチング工程により形成された表面凹凸形状がほとんどなくなり、ほぼ平坦な表面を有する金型となってしまうことがある。このようなほぼ平坦な表面を有する金型を用いて製造される防眩フィルムは、表面凹凸形状の傾斜角度の平均値及び標準偏差が、本発明で規定する範囲を下回りやすくなり、結果として防眩性が不十分となることが多い。そこで、第2エッチング処理におけるエッチング量は、1〜50μmの範囲内であることが好ましく、さらには4〜20μmの範囲内、とりわけ9〜12μmの範囲内であることが一層好ましい。第2エッチング工程も、第1エッチング工程と同様、1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜50μmの範囲となるようにすることが好ましい。
〔9〕第2めっき工程
第2めっき工程では、前記〔6〕第1エッチング工程及び〔7〕感光性樹脂膜剥離工程を経た金型用基材、好ましくはさらに前記〔8〕第2エッチング工程を経た金型用基材の表面に、めっき(好ましくは、後述の光沢ニッケルめっき)を施す。第2めっき工程を行うことにより、金型用基材の表面凹凸形状47をさらに鈍らせるとともに、当該めっきによって金型表面を保護することができる。図6(d)は、上述したように第2エッチング処理によって形成された第2の表面凹凸形状47上にニッケルめっき層71を形成することで、表面凹凸が形状鈍化して最終的な金型凹凸表面70となった状態を示している。
第2めっき工程で形成するめっき層は、光沢があって耐食性にも優れるニッケルめっきとするのが好ましい。ニッケルめっきのなかでも、光沢ニッケルめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するニッケルめっきが特に好ましい。ニッケルめっきは、電解めっきにより行っても、無電解めっきにより行ってもよい。電解めっきを採用する場合、そのめっき浴としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル及びホウ酸を含む水溶液が好ましく用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、ニッケルめっき層の厚みを制御することができる。無電解めっきを採用する場合、そのめっき浴としては、ニッケル塩(硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル等)、還元剤(次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸カルシウム、ジメチルアミノホウ素、ジエチルアミノホウ素、水酸化ホウ素ナトリウム等)、錯化剤(エチレンジアミン等のアミン化合物類、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸類、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸等のジカルボン酸類、クエン酸等のトリカルボン酸類、又はそれらカルボン酸類のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等のカルボン酸塩類)、安定剤(Pb、Bi、Tl、In、Sn等の重金属系安定剤;プロパルギルアルコール、チオエーテル化合物、チオシアン化合物、チオン酸、チオン酸塩等の有機系安定剤)などを含む水溶液が好ましく用いられる。めっき液の濃度や温度、処理時間などを調節することにより、ニッケルめっき層の厚みを制御することができる。
第2エッチング処理後の金型用基材表面にある凹凸形状にニッケルめっきを施すことにより、一層の形状鈍化ができるとともに、表面硬度が高められた金型が得られる。この場合の形状鈍化の度合いを制御するうえで最も大きな因子は、ニッケルめっき層の厚みである。ニッケルめっき層が薄いと、形状鈍化の度合いが不十分になり、そのような金型から得られる防眩フィルムは、白ちゃけを発生させることがある。一方、ニッケルめっき層が厚すぎると、防眩性が不十分になる。白ちゃけの発生を十分に防止し、優れた防眩性を有する画像表示装置を与える防眩フィルムとするためには、ニッケルめっき層の厚みが所定の範囲となるように金型を製造するのが有効であることを見出している。すなわち、ニッケルめっき層の厚みは2〜12μmの範囲内にあるのが好ましく、5〜10μmの範囲内にあるのがより好ましい。
〔10〕保護皮膜形成工程
金型製造の最後の段階は、上述した第2めっき工程にてニッケルめっきが施された金型用基材の表面(ニッケルめっき層)に保護皮膜を形成する保護皮膜形成工程である。ニッケルめっきは光沢があって、耐食性に優れているが、硬度が十分ではないため、そのままで防眩フィルムを製造し続けると、表面が摩耗したり損傷したりする可能性がある。そこで、保護皮膜形成工程を設けて、ニッケルめっき上に、硬度が高くて摩擦係数が小さく、良好な離型性を与える保護皮膜を形成することが好ましい。
保護皮膜形成工程において形成する皮膜としては炭素膜が好ましく、例えば、ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド状炭素膜、水素化アモルファス炭素膜(ダイヤモンド・ライク・カーボン膜を略してDLC膜とも呼ばれる)などが挙げられる。かかる炭素膜の形成には各種の蒸着法が用いられ、例えばダイヤモンド薄膜は、マイクロ波プラズマCVD法、熱フィラメントCVD法、プラズマジェット法、ECRプラズマCVD法などにより、またダイヤモンド状炭素膜及びDLC膜は、プラズマCVD法、イオンビーム・スパッタ法、イオンビーム蒸着法、プラズマ・スパッタ法などにより形成される。これらの炭素膜形成に際し、不活性ガス、窒素及び炭素から選ばれる少なくとも一種のイオンを成膜と同時に注入するIBM(イオンビームミキシング)、あるいは注入する金型用基材にパルスバイアスをかけて行うPBII(プラズマ・ベースド・イオン・インプランテーション)を組み合わせることにより、膜と金型用基材との間に明瞭な界面がなくなり、密着性を向上させることができる。これらの炭素膜の厚みは、0.1〜5μmの範囲内であることが好ましく、0.5〜3μmの範囲内であることがより好ましい。炭素膜が薄すぎると、金型としての耐久性が不十分になる可能性がある。一方で、炭素膜が厚すぎると、生産性が悪くなるため、好ましくない。
[金型を用いた防眩フィルムの製造]
以下では、本発明の防眩フィルムを製造するための方法として好ましい前記光エンボス法について説明する。すでに述べたとおり、UVエンボス法が光エンボス法として特に好ましいが、ここでは活性エネルギー線硬化性樹脂を用いるエンボス法について、具体的に説明する。
防眩フィルムを光エンボス法によって連続的に製造する場合は、以下の各工程のうち、少なくとも〔P1〕の塗工工程と〔P3〕の本硬化工程とをこの順に備えることが好ましい。また、両工程の間に、〔P2〕の予備硬化工程を備えることが一層好ましい。
〔P1〕連続して搬送される透明支持体上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する塗工液を塗布して、塗工層を形成する塗工工程、
〔P2〕塗工工程で形成された塗工層の幅方向の両方の端部領域に活性エネルギー線を照射する予備硬化工程、及び
〔P3〕塗工層の表面に、金型の表面を押し当てた状態で、透明支持体側から活性エネルギー線を照射する本硬化工程。
以下、図面を参照しながら各工程について詳細に説明する。図7は、防眩フィルムを連続的に製造する場合に好適に用いられる装置の配置例を模式的に示す図である。図7中、直線矢印はフィルムの搬送方向を表し、曲線矢印はロールの回転方向を表す。
〔P1〕塗工工程
塗工工程では、透明支持体上に活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する塗工液を塗布して、塗工層を形成する。塗工工程は、例えば図7に示されるように、送り出しロール80から繰り出される透明支持体81に対し、塗工ゾーン83で活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する塗工液が塗布される。
塗工液の透明支持体81上への塗布は、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法などによって行うことができる。
(透明支持体)
透明支持体81は透光性のものであればよく、例えば、ガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムは、適度の透明性及び機械強度を有していればよい。具体的には、先にUVエンボス法に用いる透明支持体として例示したものがいずれも使用可能であり、さらに光エンボス法により連続的に防眩フィルムを製造するために、適度な可とう性を有するものが選択される。
塗工性の改良や、透明支持体と塗工層との接着性の改良を目的として、透明支持体81の表面(塗工液が塗布される表面)には、各種表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸表面処理、アルカリ表面処理、紫外線照射処理などが挙げられる。また透明支持体81上に、例えばプライマー層等の他の層を形成し、当該他の層の上に、塗工液を塗布するようにしてもよい。
さらに、防眩フィルムを偏光フィルムに貼り合わせて防眩性偏光板とすることを目的とする場合には、透明支持体と偏光フィルムとの接着性を向上させるために、透明支持体の表面(塗工液が塗布される面とは反対側の表面)を、各種表面処理によって親水化しておくことが好ましい。この表面処理は、防眩フィルムの製造後に行ってもよい。
(塗工液)
塗工液は、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有し、通常は、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)をさらに含有する。必要に応じて、透光性微粒子、有機溶剤等の溶剤、レベリング剤、分散剤、帯電防止剤、防汚剤、界面活性剤などの各種添加剤を含んでもよい。
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものを好ましく用いることができる。多官能(メタ)アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例を挙げると、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物などがある。
上記のエステル化合物の形成に用いられる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2′−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールが挙げられる。
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物として、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に複数個のイソシアナト基(−N=C=O)を有するポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体とのウレタン化反応生成物であることができる。1分子中に複数個のイソシアナト基を有するポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアナト基を有するジイソシアネート、それらジイソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性又はビウレット変性した1分子中に3個のイソシアナト基を有するトリイソシアネートなどが挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレート化合物として好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる化合物である。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールと、カルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物とのエステル化反応によって得られる化合物である。多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。また、多価アルコール以外にも、ビスフェノールA等の多価フェノール類も使用できる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸などが挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物などが挙げられる。
以上のような多官能(メタ)アクリレート化合物のなかでも、その硬化物の強度向上や入手の容易性の観点から、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエステル化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体、アダクト変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体、ビウレット変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体等のウレタン(メタ)アクリレート化合物が好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物のほかに、1分子中に重合性炭素−炭素二重結合を1個だけ有する単官能化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物は単官能化合物の代表的なもので、具体例を挙げると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどがある。また、アクリロイルモルフォリンやN−ビニルピロリドンなども単官能化合物となりうる。これらの単官能化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、硬化物の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーは、例えば、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレートの、2量体や3量体などであることができる。
その他の重合性オリゴマーとして、分子中に少なくとも2個のイソシアナト基を有するポリイソシアネートと、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有する化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。そのために用いるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられ、また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有する化合物は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、多価アルコールのアルコール性水酸基の一部が(メタ)アクリル酸とエステル化反応しているとともに、アルコール性水酸基の一部が分子中に残存するものである。ここで用いる多価アルコールは、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどであることができる。
さらに、その他の重合性オリゴマーの例として、複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物と、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有する化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。そのために用いる複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物としては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物において挙げたものと同様のものが例示できる。また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有する化合物としては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおいて挙げたものと同様のものが例示できる。
以上のような重合性オリゴマーに加え、別のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの例として、水酸基含有ポリエステル、水酸基含有ポリエーテル又は水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基に、イソシアネート類を反応させて得られる化合物が挙げられる。このために好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物のエステル化反応によって得られる。多価アルコール並びに、複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物としては、それぞれ、先に多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物において挙げたものと同様のものが例示できる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエーテルは、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド及び/又はε−カプロラクトンを付加することによって得られる。多価アルコールは、上記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものであってよい。好ましく用いられる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、重合性オリゴマーのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおいて挙げたものと同様のものが例示できる。イソシアネート類は、分子中に少なくとも1個のイソシアナト基を有する化合物であればよいが、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
これらの重合性オリゴマーは、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(2)光重合開始剤
光重合開始剤は、防眩フィルムの製造に適用する活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択できる。また、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、光重合開始剤を含有しない塗工液を防眩フィルムの製造に用いることもある。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキサジアゾール系光重合開始剤などが用いられる。また、光重合開始剤として例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物なども用いることができる。光重合開始剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。
(3)塗工液を構成するその他の任意成分
塗工液は、透明支持体に対する塗工性を改良するために、有機溶剤を含むこともある。
有機溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類などから、粘度等を考慮して選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工液が溶剤を含む場合には、塗工後にその溶剤を蒸発させる必要がある。
そのため溶剤は、60℃〜160℃の範囲の沸点を有するものであることが望ましい。また、その20℃における飽和蒸気圧は、0.1kPa〜20kPaの範囲にあることが好ましい。
(塗工工程に任意に設けられるその他の工程及び塗工工程のまとめ)
塗工液が溶剤を含む場合、上記塗工工程の後、本硬化工程の前、また予備硬化工程を設ける場合はその前に、溶剤を蒸発させて乾燥を行う乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は、例えば図7に示される例のように、塗工層が形成された後の透明支持体81を、乾燥ゾーン84内を通過させることによって行うことができる。乾燥温度は、使用する溶剤や透明支持体の種類により適宜選択される。一般に20℃〜120℃の範囲であるが、これに限定されない。また、乾燥炉が複数ある場合は、乾燥炉毎に温度を変えてもよい。乾燥後の塗工層の厚みは、1〜30μmであることが好ましい。
以上説明したような塗工工程、必要に応じてさらに乾燥工程を経て、透明支持体上に塗工層が積層された積層体が形成される。
〔P2〕予備硬化工程
予備硬化工程は、後述する本硬化工程に先立って、塗工層の透明支持体幅方向両端部領域に活性エネルギー線を照射し、この両端部領域を予備硬化させる工程である。図8は、予備硬化工程を模式的に示す断面図である。図8において、塗工層の幅方向(搬送方向と直交する方向)の両端に存在する端部領域82bは、塗工層の端部を含んで端部から所定の幅となる領域である。
予備硬化工程において、両端部領域を予め硬化させておくことにより、その部分における透明支持体81との密着性を一段と高めて、その後の本硬化工程やそれに続く工程において、硬化樹脂の一部が剥がれて落下し、工程が汚染されるのを防止することができる。
端部領域82bは、塗工層82の端部から、例えば、5mm以上50mm以下の領域とすることができる。
塗工層の端部領域への活性エネルギー線の照射は、図7及び図8を参照して、例えば、塗工ゾーン83(乾燥を行う場合は、さらに乾燥ゾーン84)を通過した塗工層82を有する透明支持体81に対して、塗工層82側の両端部近傍にそれぞれ設置された紫外線照射装置等の活性エネルギー線照射装置85を用いて、活性エネルギー線を照射することにより行うことができる。活性エネルギー線照射装置85は、塗工層82の端部領域82bに活性エネルギー線を照射できるものであればよく、透明支持体81側に設置されていてもよい。
活性エネルギー線の種類及び光源については、後述する本硬化工程と同様である。活性エネルギー線が紫外線である場合、紫外線のUVA(波長400〜315nm)における積算光量は、10mJ/cm2以上400mJ/cm2以下であることが好ましく、50mJ/cm2以上400mJ/cm2以下であることがより好ましい。積算光量が50mJ/cm2以上となるように照射すれば、引き続く本硬化工程における変形をより効果的に防止することができる。一方でその積算光量が400mJ/cm2を超えると、硬化反応が過度に進行する結果、硬化部分と未硬化部分との境界において、膜厚差や内部応力の歪みに起因して樹脂剥がれが生じることがある。
〔P3〕本硬化工程
本硬化工程は、塗工層の表面に、所望の表面凹凸形状を有する金型表面(成形面)を押し当てた状態で、透明支持体側から活性エネルギー線を照射し、塗工層を硬化させることにより、透明支持体上に硬化された樹脂層を形成する工程である。これにより、塗工層が硬化されるとともに、金型表面の凹凸形状が塗工層表面に転写される。ここで用いる金型は、防眩フィルムを長尺物として連続的に製造する場合は、ロール形状のものであり、すでに説明した金型製造方法においてロール形状の金型用基材を用いることにより製造されるものである。
本工程は、例えば図7に示されるように、塗工ゾーン83(乾燥工程を行う場合にはさらに乾燥ゾーン84、また、上で説明した予備硬化工程を行う場合にはさらに活性エネルギー線照射装置85による照射がなされる予備硬化ゾーン)を通過した後の、塗工層を有する積層体に対して、透明支持体81側に配置された紫外線照射装置等の活性エネルギー線照射装置86を用いて、活性エネルギー線を照射することにより行われる。
まず、塗工層が形成された積層体の塗工層の表面に、ニップロール88等の圧着手段を用いてロール形状の金型87を押し当て、この状態で、透明支持体81側に配置された活性エネルギー線照射装置86から活性エネルギー線を照射し、塗工層を硬化させる。ここで、「塗工層を硬化させる」とは、塗工層に含まれる活性エネルギー線硬化性樹脂が活性エネルギー線のエネルギーを受けて硬化反応を生じることをいう。ニップロール88の使用は、積層体の塗工層と金型との間に気泡が混入するのを防止するうえで有効である。活性エネルギー線照射装置86は、1機又は複数機を使用することができる。
活性エネルギー線の照射後、積層体は、出口側のニップロール89を支点として、金型87から剥離される。得られる透明支持体と硬化した塗工層とからなる積層体は、当該硬化した塗工層を防眩層とする防眩フィルムになる。得られる防眩フィルムは通常、フィルム巻き取り装置90によって巻き取られる。この際、防眩層を保護する目的で、再剥離性を有する粘着剤層を介して、防眩層表面にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどからなる保護フィルムを貼着しながら巻き取ってもよい。ここでは、用いる金型がロール形状である場合について説明したが、ロール形状以外の金型を用いることもできる。また、金型から剥離された後に、追加の活性エネルギー線照射を行ってもよい。
本工程で用いる活性エネルギー線としては、塗工液に含まれる活性エネルギー線硬化性樹脂の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、これらのなかで紫外線及び電子線が好ましく、取り扱いが簡便で高エネルギーが得られることから、紫外線が特に好ましい。そこで上述のとおり、光エンボス法としてはUVエンボス法が好ましい。
紫外線の光源としては例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプなどを用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光なども用いることができる。これらのなかでも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、無電極ランプ、キセノンアークランプ、メタルハライドランプが好ましく用いられる。
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
活性エネルギー線が紫外線である場合、紫外線のUVA(波長400〜315nm)における積算光量は、好ましくは100mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であり、より好ましくは200mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下である。また、透明支持体が短波長側の紫外線を吸収する場合もあるので、当該吸収を抑制する目的で、可視光を含む波長領域の紫外線UVV(波長395〜445nm)の積算光量が好ましい値となるようにして照射量を調整することもある。この場合のUVVにおける積算光量は、100mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であることが好ましく、200mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下であることがより好ましい。積算光量が100mJ/cm2未満であると、塗工層の硬化が不十分になり、得られる防眩層の硬度が低くなったり、未硬化の樹脂がガイドロール等に付着し、工程汚染の原因となったりする傾向がある。また、積算光量が3000mJ/cm2を超えると、紫外線照射装置から放射される熱により、透明支持体が収縮して皺の原因になることがある。
[防眩フィルムの用途]
以上のようにして得られる本発明の防眩フィルムは、画像表示装置などに用いられるものであり、通常、視認側偏光板の視認側保護フィルムとして、偏光フィルムに貼合して用いられる。すなわち、この防眩フィルムを貼合した偏光板は、画像表示装置の表面に配置される。また、すでに述べたとおり、透明支持体として偏光フィルムを用いた場合には、偏光フィルム一体型の防眩フィルムが得られるので、かかる偏光フィルム一体型の防眩フィルムを画像表示装置に適用することもできる。本発明の防眩フィルムを備えた画像表示装置は、広い観察角度において十分な防眩性を有し、さらに白ちゃけ及びギラツキの発生をともに良好に防止することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。以下の例における金型又は防眩フィルムの評価方法は、次のとおりである。なお、本発明の防眩フィルムは、下記の評価方法と同じ方法によって評価される。
〔1〕防眩フィルムの表面形状の測定
(表面凹凸形状の傾斜角度)
三次元顕微鏡“PLμ2300”(Sensofar社製)を用いて、防眩フィルムの表面の標高を測定した。測定サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用い、測定サンプルの防眩層とは反対側の面をガラス基板に貼合してから、測定に供した。
測定時の対物レンズの倍率は50倍とした。水平分解能Δx及びΔyはともに0.332μmであり、測定面積は255μm×191μmであった。得られた測定データから、前述のアルゴリズムに基づいて表面凹凸形状の傾斜角度の平均値を求め、さらにそれから標準偏差を求めた。
〔ボロノイ多角形の面積の平均値と変動係数〕
三次元顕微鏡“PLμ2300”(Sensofar社製)を用いて、防眩フィルムの表面形状を測定した。サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は50倍とした。水平分解能Δx及びΔyはともに0.332μmであり、測定面積は255μm×191μmであった。得られた測定データから前述のアルゴリズムを用いて、微細凹凸表面の凸部を頂点としたボロノイ分割を行い、ボロノイ多角形の面積の平均値と標準偏差を求め、それらから変動係数=(標準偏差/平均値)×100(%)を求めた。
〔2〕防眩フィルムの光学特性の測定
〔ヘイズ〕
防眩フィルムの全ヘイズは、光学的に透明な粘着剤を用い、測定サンプルの防眩層とは反対側の面をガラス基板に貼合し、そのガラス基板に貼合された防眩フィルムについて、ガラス基板側から光を入射し、前掲のJIS K7136:2000に準拠して、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター“HM−150”型を用いて測定した。表面ヘイズは、防眩フィルムの内部ヘイズを求め、次式
表面ヘイズ=全ヘイズ−内部ヘイズ
によって全ヘイズから内部ヘイズを差し引くことにより求めた。内部ヘイズは、全ヘイズを測定した後の測定サンプルの防眩層面に、ヘイズがほぼ0のトリアセチルセルロースフィルムをグリセリンで貼り付けた後、全ヘイズと同様にして測定した。
〔透過鮮明度〕
前掲のJIS K7374:2007に準拠して、スガ試験機(株)製の写像性測定器“ICM−1DP”を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、測定サンプルの防眩層とは反対側の面をガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス基板側から光を入射し、測定を行った。ここでの測定値は、遮光部分と透過部分の幅がそれぞれ0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである5種類の光学くしを用いてそれぞれ測定された値の合計値である。
〔光の入射角45°で測定される反射鮮明度〕
前掲のJIS K7374:2007に準拠して、スガ試験機(株)製の写像性測定器“ICM−1DP”を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止し、併せて裏面からの反射を防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、測定サンプルの防眩層とは反対側の面を黒色アクリル樹脂基板に貼合してから、測定に供した。この状態で防眩層面側から光を45°で入射し、測定を行った。ここでの測定値は、遮光部分と透過部分の幅がそれぞれ0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いてそれぞれ測定された値の合計値である。
〔光の入射角60°で測定される反射鮮明度〕
光の入射角を60°に変更する以外は、上の光の入射角45°で測定される反射鮮明度と同じ方法で測定した。
〔3〕防眩フィルムの防眩性能の評価
〔映り込み、白ちゃけの目視評価〕
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、粘着剤を用いて測定サンプルの防眩層とは反対側の面を黒色アクリル樹脂基板に貼合し、この状態で、蛍光灯のついた明るい室内で防眩層側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの程度、及び白ちゃけの程度を評価した。映り込みに関しては、防眩フィルムを正面から観察したときと斜め30°から観察したときのそれぞれを評価した。映り込み及び白ちゃけは、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
映り込み 1:映り込みが観察されない。
2:映り込みが少し観察される。
3:映り込みが明瞭に観察される。
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない。
2:白ちゃけが少し観察される。
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
〔ギラツキの評価〕
ギラツキは以下の手順で評価した。すなわち、まず図9に平面図で示すユニットセルのパターンを有するフォトマスクを用意した。この図において、ユニットセル100は、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターン101が形成され、そのクロム遮光パターン101の形成されていない部分が開口部102となっている。ここでは、ユニットセルの寸法が211μm×70μm(図の縦×横)、したがって開口部の寸法が201μm×60μm(図の縦×横)のものを用いた。図示するユニットセルが縦横に多数並んで、フォトマスクを形成する。
そして図10に模式的な断面図で示すように、フォトマスク113のガラス基板112上に形成されたクロム遮光パターン111を上にして、ライトボックス115の光拡散板120上に置き、ガラス板117に粘着剤で防眩フィルム110をその防眩層が表面となるように貼合したサンプルをフォトマスク113上に置く。ライトボックス115の中には光源116が配置されている。この状態で、サンプルから約30cm離れた位置119で目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した。レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル4はごくわずかにギラツキが観察される状態である。
〔コントラストの評価〕
市販の液晶テレビ〔ソニー(株)製の“KDL-32EX550”〕 から表裏両面の偏光板を剥離した。それらオリジナル偏光板の代わりに、背面側及び表示面側とも、住友化学(株)製の偏光板“スミカラン SRDB831E” を、それぞれの吸収軸がオリジナルの偏光板の吸収軸と一致するように粘着剤を介して貼合し、さらに表示面側偏光板の上には、以下の各例に示す防眩フィルムを凹凸面が表面となるように粘着剤を介して貼合した。こうして得られた液晶テレビを暗室内で起動し、(株)トプコン製の輝度計“BM5A”型を用いて、黒表示状態及び白表示状態における輝度を測定し、コントラストを算出した。ここでコントラストは、黒表示状態の輝度に対する白表示状態の輝度の比で表される。一方、上の構成から防眩フィルムを除いた構成(表示面側偏光板に防眩フィルムを貼合しない状態)で同様にコントラストを求め、結果は、防眩フィルムを貼合しない状態で測定したコントラストに対する防眩フィルムを貼合した状態で測定したコントラストの比(%)で示した。
〔4〕防眩フィルム製造用のパターンの評価
作成したパターンデータを2階調の二値化画像データとし、階調を二次元の離散関数g(x,y)で表した。離散関数g(x,y)の水平分解能Δx及びΔyはともに、2μmとした。得られた二次元関数g(x,y)を離散フーリエ変換して二次元関数G(fx,fy)を求めた。二次元関数G(fx,fy)の絶対値を二乗して二次元パワースペクトルの二次元関数Γ(fx,fy)を計算し、原点からの距離fの関数である一次元パワースペクトルの一次元関数Γ(f)を計算し、平均周波数〈f〉と標準偏差σfを計算した。
<実施例1>
〔防眩フィルム製造用の金型の作製〕
直径300mmのアルミニウムロール(JISによるA6063)の表面に銅バラードめっきが施されたものを準備した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは約200μmであった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布し、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。次いで、図11に示すパターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、現像した。レーザ光による露光及び現像は、Laser Stream FX〔(株)シンク・ラボラトリー製〕を用いて行った。感光性樹脂としてはポジ型のものを使用した。図11に示すパターンは、ランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであって、開口率は45%、パターンの一次元パワースペクトルから計算される平均周波数〈f〉と標準偏差σfは、それぞれ0.091μm-1と0.102μm-1である。
そして、図中の黒い部分が露光部、白い部分が非露光部となるようにレーザ露光した。露光部と非露光部の関係は、以降の図12〜図14においても同様である。
その後、塩化第二銅水溶液で第1エッチング処理を行った。その際のエッチング量は5μmとなるように設定した。第1エッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度塩化第二銅水溶液で第2エッチング処理を行った。その際のエッチング量は10μmとなるように設定した。次いで、めっき厚みが6μmとなるように設定して、ニッケルめっき加工を行った。ニッケルめっきが施されたロールに、スパッタ法により保護膜としてDLC膜を形成し、金型を作製した。このときのDLC膜の厚みは0.5μmであった。
(防眩フィルムの作製)
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す膜を形成し得る紫外線硬化性樹脂組成物を準備した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
多官能ウレタン化アクリレート 40部
(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド 5部
この紫外線硬化性樹脂組成物を、厚み60μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に乾燥後の塗布層の厚みが5μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に示した金型の成形面(凹凸形状を有する面)に、乾燥後の塗工層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算の積算光量で200mJ/cm2となるように照射し、塗工層を硬化させて、防眩層を形成した。こうしてTACフィルム上に防眩層が形成されたフィルムを金型から剥離して、透明な防眩フィルムを得た。これを防眩フィルムAとする。
<実施例2>
第2エッチング工程におけるエッチング量を9μmとなるように設定したこと以外は、実施例1における金型の作製と同様にして、金型を作製した。この金型を用いる以外は、実施例1における防眩フィルムの作製と同様の方法で防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムを防眩フィルムBとする。
<実施例3>
第2エッチング工程におけるエッチング量を11μmとなるように設定したこと以外は、実施例1における金型の作製と同様にして、金型を作製した。この金型を用いる以外は、実施例1における防眩フィルムの作製と同様の方法で防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムを防眩フィルムCとする。
<実施例4>
図12に示すパターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は、実施例1における金型の作製と同様にして、金型を作製した。この金型を用いる以外は、実施例1における防眩フィルムの作製と同様の方法で防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムを防眩フィルムDとする。図12に示すパターンは、ランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであって、開口率は45%、パターンの一次元パワースペクトルから計算される平均周波数〈f〉と標準偏差σfは、それぞれ0.088μm-1と0.101μm-1である。
<実施例5>
図13に示すパターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は、実施例1における金型の作製と同様にして、金型を作製した。この金型を用いる以外は、実施例1における防眩フィルムの作製と同様の方法で防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムを防眩フィルムEとする。図13に示すパターンは、ランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであって、開口率は45%、パターンの一次元パワースペクトルから計算される平均周波数〈f〉と標準偏差σfは、それぞれ0.092μm-1と0.107μm-1である。
<比較例1>
第2エッチング工程におけるエッチング量を8μmとなるように設定したこと以外は、実施例1における金型の作製と同様にして、金型Fを作製した。この金型を用いる以外は、実施例1における防眩フィルムの作製と同様の方法で防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムを防眩フィルムFとする。
<比較例2>
直径200mmのアルミニウムロール(JISによるA6063)の表面に、めっき層全体の厚みが約200μmとなるように銅バラードめっきが施されたものを準備した。この銅バラードめっき付きアルミニウムロールを用い、図14に示すパターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は、実施例1における金型の作製と同様にして、金型を作製した。この金型を用いる以外は、実施例1における防眩フィルムの作製と同様の方法で防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムを防眩フィルムGとする。図14に示すパターンは、ランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであって、開口率は45%、パターンの一次元パワースペクトルから計算される平均周波数〈f〉と標準偏差σfは、それぞれ0.087μm-1と0.094μm-1である。
<比較例3>
直径300mmのアルミニウムロール(JISによるA5056)の表面を鏡面研磨した後、その研磨されたアルミニウム面にブラスト装置〔(株)不二製作所製〕を用いて、ジルコニアビーズ“TZ−SX−17”〔東ソー(株)製、平均粒径:20μm〕を、ブラスト圧力0.1MPa(ゲージ圧、以下同じ)、ビーズ使用量8g/cm2(ロールの表面積1cm2あたりの使用量、以下同じ)でブラストし、アルミニウムロール表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つきアルミニウムロールに対し、無電解ニッケルめっき加工を行い、金型を作製した。このとき、無電解ニッケルめっき厚みが15μmとなるように設定した。この金型を用いる以外は、実施例1における防眩フィルムの作製と同様の方法で防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムを防眩フィルムHとする。
<比較例4>
直径200mmのアルミニウムロール(JISによるA5056)の表面に、めっき層全体の厚みが約200μmとなるように銅バラードめっきが施されたものを準備した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、その研磨面に、ブラスト装置〔(株)不二製作所製〕を用いて、比較例3で用いたのと同じジルコニアビーズ“TZ−SX−17”を、ブラスト圧力0.05MPa、ビーズ使用量6g/cm2でブラストし、アルミニウムロール表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つき銅バラードめっきアルミニウムロールに、クロムめっき加工を行い、金型を作製した。このとき、クロムめっき厚みが6μmとなるように設定した。この金型を用いる以外は、実施例1における防眩フィルムの作製と同様の方法で防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムを防眩フィルムIとする。
[評価結果]
以上の実施例及び比較例で得られた防眩フィルムについて、評価結果を表1に示す。
Figure 2016033658
本発明の要件を満たす防眩フィルムA〜E(実施例1〜5)は、低ヘイズであるにも拘わらず、観察角度が正面であっても斜めであっても優れた防眩性を有し、白ちゃけ及びギラツキの抑制効果も十分なものであった。一方、防眩フィルムF(比較例1)は、白ちゃけが発生していた。防眩フィルムG(比較例2)は、斜めから観察したときの防眩性が不十分であった。防眩フィルムH(比較例3)は、ギラツキが発生しやすかった。防眩フィルムI(比較例4)は、斜めから観察したときの防眩性が不十分であり、白ちゃけも発生していた。
1…防眩フィルム(又はその平均面), 2…表面凹凸, 3…フィルムの投影面,
5…フィルムの主法線, 6…凹凸を加味した局所的な法線,
6a,6b,6c,6d…ポリゴン面の法線ベクトル,
21…防眩フィルム表面の任意の点, 22…防眩フィルム表面,
23…防眩フィルム基準面, 24…任意の点21を中心とする円の投影面,
26…ボロノイ分割の母点, 27…ボロノイ多角形,
28…平均値にカウントしないボロノイ多角形,
40…金型用基材,
41…第1めっき工程及び研磨工程を経て研磨されためっき面,
45…第1エッチング処理によってエッチングされるマスクのない領域,
46…第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状,
47…第2エッチング処理によって形状鈍化された第2の表面凹凸形状,
50…感光性樹脂膜, 51…露光された領域, 52…露光されていない領域,
60…マスク,
70…ニッケルめっきにより形状鈍化された最終的な金型凹凸表面,
71…ニッケルめっき層,
80…送り出しロール, 81…透明支持体,
82…塗工層, 82b…塗工層の端部領域, 83…塗工ゾーン,
84…乾燥ゾーン, 85…予備硬化のための活性エネルギー線照射装置,
86…活性エネルギー線照射装置, 87…ロール形状の金型,
88,89…ニップロール, 90…フィルム巻き取り装置,
100…ユニットセル, 101…遮光パターン, 102…開口部,
110…防眩フィルム, 111…遮光パターン, 112…ガラス基板,
113…フォトマスク, 115…ライトボックス, 116…光源,
117…ガラス板, 119…ギラツキの観察位置, 120…光拡散板。
本発明の防眩フィルムは、液晶ディスプレイなどの画像表示装置に有用である。

Claims (2)

  1. 透明支持体と、その上に形成された微細な表面凹凸形状を有する防眩層とを備える防眩フィルムであって、
    全ヘイズが0.1%以上3%以下であり、
    表面ヘイズが0.1%以上2%以下であり、
    前記表面凹凸形状の傾斜角度の平均値が0.2°以上1.2°以下であり、傾斜角度の標準偏差が0.1°以上0.8°以下であり、
    前記表面凹凸形状の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の面積の平均値が50μm2以上150μm2以下であり、かつ、前記多角形の面積の変動係数が40%以上80%以下であることを特徴とする防眩フィルム。
  2. 遮光部分と透過部分の幅がそれぞれ0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである5種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の和Tcが375%以上であり、
    遮光部分と透過部分の幅がそれぞれ0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて光の入射角45°で測定される反射鮮明度の和Rc(45)が180%以下であり、
    遮光部分と透過部分の幅がそれぞれ0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて光の入射角60°で測定される反射鮮明度の和Rc(60)が240%以下である請求項1に記載の防眩フィルム。
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