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JP2016033107A - 相分離ガラス膜の製造方法、多孔質ガラス膜の製造方法、ガラス部材、撮像装置 - Google Patents

相分離ガラス膜の製造方法、多孔質ガラス膜の製造方法、ガラス部材、撮像装置 Download PDF

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JP2016033107A JP2015097399A JP2015097399A JP2016033107A JP 2016033107 A JP2016033107 A JP 2016033107A JP 2015097399 A JP2015097399 A JP 2015097399A JP 2015097399 A JP2015097399 A JP 2015097399A JP 2016033107 A JP2016033107 A JP 2016033107A
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直行 纐纈
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Abstract

【課題】基材の両面に同質な多孔質ガラス膜を同時に形成するための相分離ガラス膜の製造方法を提供する。【解決手段】基材10の両面にガラス粉体12を含む膜11を成膜する成膜工程と、膜11を焼成し、基材10の両面(10a、10b)に相分離ガラス膜1を同時に形成する焼成工程と、相分離ガラス膜1をエッチング処理して基材10の両面に多孔質ガラス膜2を同時に形成する工程と、を有し、前記焼成工程が、膜(11a、11b)が成膜されていない部分にて基材10が支持されることで、基材10の面内方向が重力方向に対して垂直になるように基材10が設置される状態で行う工程であり、前記焼成工程において、基材10よりも熱伝導性が高い部材(熱伝導性部材21)が、基材10の下方であって膜11に接触しないように設置されている【選択図】図1

Description

本発明は、相分離ガラス膜の製造方法及び多孔質ガラス膜の製造方法、並びにガラス部材及び撮像装置に関する。
近年、多孔質ガラスに注目が集まっており、その優れた特徴を生かし、例えば、吸着剤、マイクロキャリア担体、分離膜、光学材料等の工業的利用が期待されている。しかしながら多孔質ガラスは、表面強度、空孔率、空孔径の均一性など多くの課題が存在している。特に、光学材料として多孔質ガラスを利用する場合は、光の散乱、反射を抑える目的で多孔質の空孔率制御をより一層詳細に制御する必要がある。
多孔質ガラスを比較的容易に製造する方法として、ガラス自体の相分離現象を利用する方法がある。特に、ガラスのスピノーダル型相分離現象を利用して製造される多孔質ガラスは、網目状に均一に制御された特徴的な連続多孔構造を有し、他の多孔質材料と比較して、高い空孔率を有するという特徴を有する。このため、スピノーダル型多孔質構造を有する多孔質ガラスは、工業的な利用という観点で期待が大きい部材である。
ところで、相分離現象を利用する多孔質ガラスの母材としては、シリカ、酸化ホウ素、アルカリ金属酸化物等を原料としたホウケイ酸塩ガラスが一般的である。成型されたホウケイ酸塩ガラスは、一定温度で保持する処理(熱処理)を行うことにより相分離現象が発生する。以下、上記処理(熱処理)を相分離熱処理と呼ぶことにする。この相分離熱処理をしたホウケイ酸ガラスは、酸性溶液によるエッチングにより、酸に可溶な成分である非シリカリッチ相が溶出される。このため、多孔質ガラスを構成する骨格は主にシリカ(シリカリッチ相)である。このようにして得られる多孔質ガラスの骨格径、細孔径及び空孔率は、相分離熱処理前のガラスの組成、相分離熱処理温度や時間に大きく影響される。さらに多孔質ガラスの骨格・細孔径や空孔率は光学特性にも大きく影響する。
一方で、相分離現象は、ナノサイズの極微細な三次元構造を形成する現象であるため、ガラス内部までの選択エッチングを達成することは非常に困難であり、均一な細孔を得ることが困難である。選択エッチングを十分に進行させ、均一な細孔を得る手段の一つとしては、ガラスの薄片化が挙げられる。しかしながら、薄片化した母体ガラスに対して熱処理による相分離を行うと、相分離時の構成元素の動きによって、ガラスの面精度が悪化し、優れた多孔質ガラス薄層を得ることは困難であることがわかった。尚、ガラスを薄片化することでガラス内部までの選択エッチングが良好に進行するものの、その一方で構造体の構造体の強度が低下する課題も存在している。
そこでスピノーダル相分離多孔質材料の独特の表面特性を利用する一つの手法として、薄膜状の多孔質ガラスを基材上に形成することが考えられる。薄膜状の多孔質ガラスを基材上に形成する手段として、例えば、印刷法が挙げられる。具体的には、母材であるホウケイ酸塩ガラスを粉砕し粉末を形成し、樹脂と混合することでペーストを形成する。そのペーストを基材に印刷し、熱処理をすることでガラス膜を基材上に形成する。その後、相分離熱処理をすることで、シリカリッチ相と非シリカリッチ相とを分離し、非シリカリッチ相をエッチングにより除去することで、基材上に多孔質膜を形成することができる(特許文献1)。
特開2013−33188号公報
しかしながら、上記の方法で基材の片方の面(表面)に多孔質膜を形成した後、もう片方の面(裏面)に同様のプロセスにより多孔質膜を形成しようとすると、プロセスの中で行われる熱処理が高温であるため、先に形成した多孔質ガラス膜の骨格同士が結合し空孔がなくなるという現象が見られた。従って、基材の両面に多孔質ガラス膜を形成する場合は、両面で同時に形成することが求められているが、その製造プロセスは確立されていない。
また基材の両面に多孔質ガラス膜を同時に形成するためには、基材の両面に母体ガラスを含む膜を塗布し、これら膜を熱処理する方法が考えられる。しかしながら、基材を立てた状態で熱処理を行うと、当該膜に含まれるガラスが溶融した際にこのガラスが流れてしまい均一な膜が形成されないという課題があった。また基材を立てた状態では、台座と接している基材の部分が少ないため、膜内で熱ムラが発生してしまう課題も存在した。
本発明は、上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、基材の両面に同質な多孔質ガラス膜を同時に形成するための相分離ガラス膜の製造方法を提供することにある。
本発明の相分離ガラス膜の製造方法は、基材の両面にガラス粉体を含む膜を成膜する成膜工程と、
前記膜を焼成し、前記基材の両面に相分離ガラス膜を同時に形成する焼成工程と、を有し、
前記焼成工程が、前記膜が成膜されていない部分にて前記基材が支持されることで、前記基材の面内方向が重力方向に対して垂直になるように前記基材が設置される状態で行う工程であり、
前記焼成工程において、前記基材よりも熱伝導性が高い部材が、前記基材の下方であって前記膜に接触しないように設置されていることを特徴とする。
本発明によれば、基材の両面に同質な多孔質ガラス膜を同時に形成するための相分離ガラス膜の製造方法を提供することができる。
本発明の多孔質ガラス膜の製造方法における実施形態の例を示す断面模式図である。 スピノーダル型多孔質構造をとる多孔質ガラス膜の画像濃度ごとの頻度を示す図である。 多孔質ガラス膜が有する細孔の細孔径及び細孔間の骨格の骨格径の定義の具体例を示す図である。 本発明の製造方法で得られた多孔質ガラス膜を有する光学部材が搭載された撮像装置の例を示す断面模式図である。 (a)は、実施例1にて作製したサンプルの断面図であり、(b)は、基材の表面側の多孔質ガラス膜のSEM像であり、(c)は、基材の裏面側の多孔質ガラス膜のSEM像である。 実施例1で作製した光学部材の透過率を示す図である。
本発明の相分離ガラス膜の製造方法は、下記(1)及び(2)の工程を有する。
(1)基材の両面にガラス粉体を含む膜を成膜する成膜工程
(2)膜を焼成し、基材の両面に相分離ガラス膜を同時に形成する焼成工程
また本発明の多孔質ガラス膜の製造方法も、上記(1)及び(2)の工程を有し、さらに下記(3)の工程を有する。
(3)相分離ガラス膜をエッチング処理して前記基材の両面に多孔質ガラス膜を同時に形成するエッチング工程
本発明において、焼成工程は、上記膜が成膜されていない部分にて基材が支持されることで、基材の面内方向が重力方向に対して垂直になるように基材が設置される状態で行う工程である。またこの焼成工程においては、基材よりも熱伝導性が高い部材が、基材の下方であって膜に接触しないように設置されている。
本発明の製造方法では、基材は、その両面にガラス粉体を含む膜が形成されており、支持体により所定の設置位置にて重力方向に対して垂直に設置されている。基材を重力方向に対して垂直に設置することでガラス粉体を加熱しガラス膜を成膜する際に、軟化したガラスが重力の影響によって偏ることを抑制し、均一な膜を作製することができる。また基材は、その両面に設けられている膜が、支持体や熱伝導性の高い基材下方に設置してある部材とは接触しないように設置される。ガラス粉体を加熱により融着させるため、基材以外の部材と接触した状態でガラス膜を成膜するのは好ましくない。しかし焼成工程において、基材を支持する部材のみを使用するのでは膜内の熱ムラが発生しやすく、均質な膜を作製することが難しくなる。そこで、基材よりも熱伝導性が高い部材が基材の下方であって膜に接触しないように設置されている状態で基材に形成されている膜を加熱する。これにより均質なガラス膜が両面に形成される。次いで相分離熱処理を行うことで相分離ガラス膜が、さらにエッチング処理を行うことで多孔質ガラス膜が、基材の両面に形成される。これにより連続した孔であるスピノーダル型の相分離由来の多孔質構造(スピノーダル構造)を有する多孔質ガラス膜を両面に形成することができる。このように本発明においては、基材の両面にそれぞれ設けられる多孔質ガラス膜を同じ条件で作製することができるため、膜の熱膨張の違いによる基材のソリが少なく、かつ高い透過率を示す光学部材を得ることが可能となる。
以下、図面を適宜参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また図面において特に図示されなかった部分や以下の説明において特に記載がなかった部分に関しては、当該技術分野の周知又は公知の技術を適用することができる。
[相分離ガラス膜及び多孔質ガラス膜の製造方法]
図1は、本発明の多孔質ガラス膜の製造方法における実施形態の例を示す断面模式図である。ここで、本発明の多孔質ガラス膜(図1(e)の符号2)は、図1(d)の相分離ガラス膜1を経て製造されるため、図1は、本発明の相分離ガラス膜の製造方法における実施形態の例を示す図でもある。
以下、各製造プロセスについて説明する。
(1)成膜工程(図1(a))
本発明の多孔質ガラス膜を製造するには、まず基材10の上にガラス粉体12を含む膜11を形成する(図1(a))。
(1−1)基材
ガラス粉体を含む膜を設ける基材10としては、目的に応じて任意の材料の基材を使用することができる。例えば、石英ガラス、クォーツ、サファイア等が挙げられる。
(1−2)ガラス粉体
ガラス粉体12は、一般的な粉状ガラスの製造方法を用いて作製することができる。ガラス粉体の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化ケイ素系ガラスI(母体ガラス組成:酸化ケイ素−酸化ホウ素−アルカリ金属酸化物)、酸化ケイ素系ガラスII(母体ガラス組成:酸化ケイ素−酸化ホウ素−アルカリ金属酸化物−(アルカリ土類金属酸化物,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム))、酸化チタン系ガラス(母体ガラス組成:酸化ケイ素−酸化ホウ素−酸化カルシウム−酸化マグネシウム−酸化アルミニウム−酸化チタン)等が挙げられる。それらの中でも、酸化ケイ素−酸化ホウ素−アルカリ金属酸化物のホウケイ酸系ガラスが好ましい。尚、基材10として石英ガラスを用いる場合は、ボレートガラスを用いてもよい。
ホウケイ酸系ガラスからなるガラス粉体12を用いる場合、ガラス粉体12を構成するガラスに含まれる酸化ケイ素の割合は、55.0重量%以上95.0重量%以下が好ましく、60.0重量%以上85.0重量%以下が特に好ましい。ガラスに含まれる酸化ケイ素の割合を上記範囲に制御することで、骨格強度が高い相分離ガラス膜及び多孔質ガラス膜を得やすい傾向にあり、ガラス膜自体の強度が必要とされる場合に有用である。またガラス粉体12を構成するガラスに含まれるホウ素とアルカリ成分とのモル比について、下記式(α)が満たされることが好ましい。
0.25<[Na/B]<0.4 (α)
式(α)が満たされないと、エッチング工程を行う際に膜自体の膨張又は収縮により膜の破壊が発生してしまうことがある。
本発明において、母体ガラスは、粉体状で使用されるものであるが、母体ガラスを粉体状にする具体的方法においては、後述する。
一方、ガラス紛体12を構成するガラスとしてボレートガラスを使用する場合、次の焼成工程において酸化ナトリウムと、ホウ酸と、基材10を構成する酸化ケイ素と、が反応することで、形成される母体ガラス膜14の組成は相分離ガラスの組成になる。
(1−3)母体ガラス粉体を含む膜の塗布・成膜
ガラス粉体12を含む膜11を形成する方法として、例えば、印刷法、スピンコート法、ディップコート法等が挙げられる。以下、膜11を形成する具体的な方法として、一般的なスクリーン印刷法を用いた方法を説明する。
スクリーン印刷法では、スクリーン印刷機を使用して、ガラス粉体を含むペースト状物質を基材等に印刷させる方法であるため、当該ペースト状物質の調製が必須である。
上記ペースト状物質を調製する前提として、上記(1−2)のガラスを粉体化してガラス粉体にする。粉体化の方法としては、特に限定されるものではなく、公知の粉体化方法が使用可能である。粉体化方法の一例として、ビーズミルに代表される液相での粉砕方法や、ジェットミル等に代表される気相での粉砕方法が挙げられる。
粉砕されたガラスの粒径は、スクリーン印刷で用いられる版の大きさや設計膜厚により適宜制御される。ただし、粒径が大きいとペースト化した時の沈降が速く均一性が保ちにくい。また、印刷された膜を均一に形成することが難しくなる事情があるため、ガラスの粒径は20μm以下にするのが好ましい。また本発明においては、粉砕したガラス粉体12の平均粒径は、10μm以下であることが特に好ましい。これは次の工程(焼成工程)で行われる熱処理の際に、バインダー13の分解からガラス粉体12bの軟化による基材10とガラス紛体12b、又はガラス粉体12b同士の融着に至る過程で、ガラス粉体12bの基材10からの脱落を防ぐことができる。具体的には、ガラス転移温度とバインダーの分解温度との差が300℃以下であるため、この温度差に応じて、ガラス粉体の粒径を設定する。本発明の一般条件として、バインダー13の除去温度は300℃乃至400℃であり、ガラスの転移温度は450℃乃至550℃である。またガラスの融着温度は600℃乃至700℃である。このときガラス紛体(12a、12b)の粒径を10μm以下にすれば、基材10に対するガラス紛体(12a、12b)の付着力が十分に発現され、ガラス粉体(12a、12b)の脱落を抑制することが可能となるので、特に好ましい。
ガラス粉体を含む膜(塗布膜)を形成する際には、上記ガラス粉体を含有するペーストを調製する必要がある。このペーストには、上記ガラス粉体と共に、熱可塑性樹脂、可塑剤、溶剤等を含有させる。
ペーストを調製する際にペーストに含有させる母体ガラス粉体の割合は、ペーストの総重量を基準として、望ましくは、30.0重量%以上90.0重量%以下であり、好ましくは、35.0重量%以上70.0重量%以下である。
ペーストを調製する際にペーストに含有させる熱可塑性樹脂は、ペーストが乾燥することで形成される膜の強度を高め、また当該膜に柔軟性を付与する成分である。熱可塑性樹脂として、ポリブチルメタアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート、エチルセルロース等が使用可能である。これら熱可塑性樹脂は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。尚、ペーストに含有させる熱可塑性樹脂は、図1(a)に示される膜11を構成するバインダー(13a、13b)として機能するものである。
ペーストに含有される熱可塑性樹脂の含有量は、ペーストの総重量を基準として、0.1重量%以上30.0重量%以下が好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が0.1重量%よりも小さい場合は、ペーストが乾燥することで形成される膜の強度が弱くなる傾向にある。一方、熱可塑性樹脂の含有量が30.0重量%よりも大きい場合は、ガラス膜を形成する際に当該ガラス膜中に樹脂の残存成分が残りやすくなるため、好ましくない。
本発明において、ペーストには可塑剤を適宜含ませてもよい。可塑剤を添加することで、ペーストの乾燥速度をコントロールすることができる。またペーストの乾燥により形成される膜に柔軟性を与えることができる。ペーストに含ませる可塑剤として、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。これら可塑剤は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
ペーストに可塑剤を含ませる場合、その含有量は、ペーストの総重量を基準として、10.0重量%以下が好ましい。
ところで、ペーストを調製する際には、熱可塑性樹脂と共に溶媒が適宜使用される。ペーストに含ませる溶剤として、ターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート等が挙げられる。これら溶剤は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
ペーストに含ませる溶剤の含有量は、ペーストの総重量を基準として、10.0重量%以上90.0重量%以下が好ましい。10.0重量%よりも小さいと均一な膜が得難くなる傾向にある。また、90.0重量%を超えても同様に均一な膜が得難くなる傾向にある。
ペーストの調製する際は、上述した材料を所定の割合で混練することにより行うことができる。
本工程は、まず基材10のいずれかの面(例えば、表面10a)に、ペーストをスクリーン印刷により塗布する。この後、ペーストの溶媒成分を乾燥・除去する。次に、基材10のもう一方の面(例えば、裏面10b)に、ペーストをスクリーン印刷により塗布し、ペーストの溶媒成分を乾燥・除去する。これにより、図1(a)に示される母体ガラス粉体(12a、12b)を含有する膜(11a、11b)を、基材10の両面(10a、10b)に形成することができる。また膜(11a、11b)の膜厚を、目的とする厚さにするために、母体ガラス含有ペーストを任意の回数分重ねて塗布、乾燥してもよい。
(2)焼成工程(図1(b)乃至(d))
次に、基材10の両面(10a、10b)に塗布・形成されたガラス粉体(12a、12b)を含む膜(11a、11b)を焼成して相分離ガラス膜1を形成する。本工程は、具体的には、下記工程(2−1)及び(2−2)の工程を有する。
(2−1)熱処理による母体ガラス膜14の形成工程(第1の熱処理工程、図1(b)、(c))
(2−2)熱処理による相分離ガラス膜1の形成工程(第2の熱処理工程、図1(d))
(2−1)第1の熱処理工程(図1(b)、(c))
第1の熱処理工程を行う際は、図1(b)に示すような形態で熱処理する。具体的には、基材10を、重力方向に対し垂直にし、かつ膜(11a、11b)が形成されていない部分で支持されるように、支持材22の上に基材10を設置する。そして、この支持材22によって、少なくとも基材10の下方に石英ガラスより熱伝導性の高い部材(熱伝導性部材21)を設置した状態で熱処理を行う。これにより、基材10の両面に母体ガラス膜14が、両面とも均一な状態で形成される。また図1(b)に示されるように、重力方向に対して垂直になるように基材10を設置することで、本工程で生じ得る溶融したガラスの偏りを防ぐことができる。
本工程において、基材10の面方向と重力方向とでなす角度は、80°乃至100°が望ましく、直角(90°)であることが好ましい。特に、熱処理温度が高温になると、ガラスの粘度が低下するため傾きにより膜の偏りが生じやすくなるため、上記角度は直角であることが好ましい。また、基材と熱伝導性部材とは平行になるように設置されることが望ましい。平行になるように設置されることで、基材と熱伝導部材との距離と一定にすることができ、その結果、熱ムラを抑制することができる。
本工程において、基材10と熱伝導性部材21との距離は、望ましくは、1mm乃至100mmであり、好ましくは、2mm乃至50mmである。基材10と熱伝導性部材21との距離を50mm以下にすることで、基材10の裏面10b側の塗布面に熱伝導性部材21から生じた熱が均一に伝わる。その結果、基材10の裏面側10b側の温度の分布が小さくなるため、基材10の裏面側10bにおいて均一なガラス膜が得られる。また基材10と熱伝導性部材21との距離を1mm以上とすることで、ガラスの融液と熱伝導性部材21との接触を防ぐことができる。
熱伝導性部材21の構成材料としては、熱伝導性の高い材料、具体的には、基材10より高い熱伝導率を持つ材料であれば用いることができる。基材10に石英ガラスを用いた場合、熱伝導性部材21の構成材料として具体的には、Si、SiC、Al23等が挙げられる。ここで、石英ガラスの熱伝導率は10W/m・k以下であるのに対して、Al23は15W/m・k乃至40W/m・kであり、Siは150W/m・k乃至170W/m・kであり、SiCは100W/m・k乃至350W/m・kである。このため、Si、SiC及びAl23のいずれも石英ガラスより高い熱伝導率を示す部材である。その中でも、熱源(不図示)から放出される熱線を吸収する性質を有するSi基板やSiC基板を用いると、熱伝導性部材21から基材10へ熱が伝わるため伝熱を良くすることができる。
本工程(第1の熱処理工程)は、例えば、700℃乃至1000℃の範囲で、5分乃至1時間の範囲で行われる。
(2−2)第2の熱処理工程(相分離工程、図1(d))
第1の熱処理工程により平坦化された母体ガラス膜14を形成した後、第2の熱処理工程を行う(図1(d))。尚、この第2の熱処理工程は、相分離加熱処理とも呼ばれる。
本工程により、母体ガラス膜14の相分離を促して、シリカリッチ相と非シリカリッチ相とに分かれた層(相分離ガラス膜1)が形成される。
本発明において、第2の熱処理工程は、第1の熱処理工程よりは低い温度で行われるものであり、好ましくは、500℃乃至700℃で行われる。また第2の熱処理工程は、通常1時間乃至100時間の範囲内で行われる。ただし、得ようとする非シリカリッチ相の大きさ(多孔質ガラス膜2が有する細孔の細孔径に相当)等に応じて本工程の温度条件や時間的条件は適宜設定することができる。ここで後述する工程を経て得られる多孔質ガラス膜2の光の散乱を抑えるためには、多孔質ガラス膜2が有する細孔の細孔径を50nm以下にする必要があり、これを実現するように相分離熱処理の条件を適宜調整することが必要である。
また、本工程を行う際の温度設定は、所定の温度で一定にさせる必要はなく、上述した好適範囲内において設定温度を連続的及び/又は段階的に変化させてもよい。
また既に述べたように、本工程は、第1の熱処理工程よりは低い温度で行われるものである。このため、本工程は、第1の熱処理工程を行った後で行われる系内の冷却の過程で行ってもよいし、第1の熱処理工程の後で基材10を、例えば、常温まで冷却した後で再度加熱して行ってもよい。
(3)エッチング工程(図1(e))
第2の熱処理工程により、本発明の相分離ガラス膜1が得られるが、この相分離ガラス膜1から多孔質ガラス膜2を得るには、以下に説明するエッチング処理を行う必要がある。このエッチング処理は、具体的には、相分離ガラス膜1が有する非シリカリッチ相を水溶液で処理して除去する工程である。本工程により、シリカリッチ相のみからなる多孔質ガラス膜2を得ることができる(図1(e))。
本工程で行われるエッチング処理(非シリカリッチ相を除去するエッチング処理)は、一般的には、水溶液に接触させることで水に可溶な相である非シリカリッチ相を溶出させる処理である。水溶液をガラスに接触させる手段としては、水溶液中にガラスを浸漬させる手段が一般的であるが、ガラスに水溶液を塗布する等、ガラスと水溶液とが接触する手段であれば何ら限定されない。エッチング処理に必要な水溶液としては、水、酸性溶液、アルカリ性溶液等、非シリカリッチ相を溶出可能な既存の溶液を使用することが可能である。また、用途に応じてこれらの水溶液に接触させる工程を複数種類選択してもよい。
相分離ガラス膜1のエッチングを行う際は、一般的には、非可溶相(シリカリッチ相)部分への負荷が小さいことと選択エッチングの度合いとの観点から、酸性水溶液を用いた処理が好適に用いられる。酸性の水溶液を相分離ガラス膜1に接触させることによって、酸に可溶な成分である非シリカリッチ相が溶出除去される一方で、シリカリッチ相の侵食は比較的小さいため、高い選択エッチング性でもって本工程を行うことができる。
本工程で用いられる酸性の水溶液として、例えば、塩酸、硝酸等の無機酸が好ましい。また本工程で用いられる酸性水溶液は、通常、水(溶媒)で適宜希釈した状態(水溶液)で用いるのが好ましい。酸溶液の濃度は、通常は0.1mol/L乃至2.0mol/Lの範囲内で適宜設定するのが好ましい。また本工程において、酸性水溶液の温度は、好ましくは、室温乃至100℃の範囲とすることが可能であり、また本工程の所要時間(処理時間)は、好ましくは、1時間乃至500時間程度とすることができる。
尚、相分離ガラス膜1のガラス組成によるが、第2の熱処理工程で得られる相分離ガラス膜1の表面には、エッチングを阻害するシリカ層(シリカリッチ相)が数百ナノメートル程度発生する場合がある。係る場合、相分離ガラス膜1の表面に存在するシリカ層を研磨やアルカリ処理等で除去してもよい。
(4)水洗浄処理
エッチング工程を終えた後、最後に、基材10を水で洗浄するのが好ましい。水による洗浄を施すことで、多孔質ガラス膜2を構成する骨格への残存成分の付着を抑制することができ、より多孔度の高い多孔質ガラス膜2が得られる傾向にある。水による洗浄を行う際に用いられる洗浄水の温度は、一般的には室温から100℃の範囲内とすればよい。また水による洗浄の時間は、対象となる多孔質ガラス膜2の組成、大きさ等に応じて適宜定めることができるが、通常は1時間乃至50時間程度が好ましい。
尚、本発明の製造方法を用いて多孔質ガラス膜を製造する場合、例えば、上述した製造方法で製造された相分離ガラス膜を準備し、その相分離ガラス膜をエッチング処理して多孔質ガラス膜を作製する。ここで相分離ガラス膜を準備する方法としては、上述した製造方法で相分離ガラス膜を製造する方法に限られず、上述した製造方法で製造された相分離ガラス膜が形成された基材を購入する等の譲渡によって取得する方法も含まれる。
[多孔質ガラス膜]
以下、本発明の製造方法によって製造される多孔質ガラス膜2について説明する。
相分離には、スピノーダル型とバイノーダル型がある。スピノーダル型の相分離により得られる多孔質ガラス膜2の細孔(相分離ガラス膜1が有する非シリカリッチ相)は、表面から内部にまで連結した貫通孔である。より具体的には、スピノーダル型の相分離由来の構造、即ち、スピノーダル構造は、3次元的に孔が絡み合うような「アリの巣」状の構造であり、酸化ケイ素による骨格が「巣」で、貫通孔が「巣穴」にあたる。一方、バイノーダル型の相分離により得られる多孔質ガラス膜2は、球形に近い閉曲面で囲まれた孔である独立孔が不連続に酸化ケイ素による骨格の中に存在している構造である。スピノーダル型の相分離由来の孔とバイノーダル型の相分離由来の孔は、電子顕微鏡による形態観察結果より判断・区別され得る。また、母体ガラス粉体12の組成や第2の熱処理工程を行う際の温度条件を適宜制御することで、相分離の態様をスピノーダル型かバイノーダル型かに制御することができる。
多孔質ガラス膜2の厚さは特に制限されないが、好ましくは、200nm以上50.0μm以下であり、より好ましくは、500nm以上20.0μm以下であり、さらに好ましくは、1.5μm以上10.0μm以下である。特に好ましくは、2μm以上10μm以下である。多孔質ガラス膜2の厚さが200nmより小さいと、反射率の波長依存性抑制効果を持った高い表面強度と高い空孔率(低屈折率)を備えた多孔質ガラス膜2が得られないことがある。一方、多孔質ガラス膜2の厚さが50.0μmよりも大きいと、ヘイズの影響が大きくなり光学部材として扱いにくくなる。
多孔質ガラス膜2の厚さは、具体的には、走査電子顕微鏡(FE−SEMS−4800、日立製作所製)を用いて、例えば、加速電圧5.0kVに設定することで、SEMの像(電子顕微鏡写真)を撮影することで求めることができる。より具体的には、撮影した画像から基材10の上に設けられる多孔質ガラス膜2の厚さを30点以上で計測し、その平均値を用いる。
多孔質ガラス膜2が有する空孔の割合、即ち、空孔率は、特に制限はされないが、好ましくは、30体積%以上70体積%以下であり、より好ましくは、40体積%以上60体積%以下である。空孔率が30体積%よりも小さいと多孔質の利点を十分に活かすことができず、また、空孔率が70体積%よりも大きいと、表面強度が低下する傾向にあるため好ましくない。また多孔質ガラス膜2の空孔率は、基材10から多孔質ガラス膜2の表面側に向かって連続的に大きくなっていることが望ましい。
空孔率の算出方法として、例えば、電子顕微鏡写真の画像を骨格部分と孔部分とで2値化する処理を行う。具体的には、走査電子顕微鏡(FE−SEM S−4800、日立製作所製)を用いて加速電圧5.0kVにて骨格の濃淡観察が容易な10万倍(場合によっては5万倍)の倍率で多孔質ガラス膜2の表面観察を行う。そして観察された像を画像として保存し、画像解析ソフトを使用して、SEM画象を画像濃度ごとの頻度でグラフ化することで空孔率が求まる。図2は、スピノーダル型多孔質構造をとる多孔質ガラス膜2の画像濃度ごとの頻度を示す図である。図2中の画像濃度の下向き矢印で示したピーク部分(A地点)は、前面に位置する骨格部分を示している。
図2を用いて空孔率を求める際は、ピーク位置に近い変曲点を閾値にして明部(骨格部分)と暗部(孔部分)とを、白と黒とを用いて2値化する。そして黒色部分の面積の全体部分の面積(白色部分と黒色部分との面積の和)に対する割合について全画像の平均値を取る。そして得られた平均値を空孔率とする。
多孔質ガラス膜2の細孔径は、好ましくは、1nm以上200nm以下であり、より好ましくは、5nm以上100nm以下である。細孔径が1nmよりも小さいと多孔質の構造の特徴を十分に活かすことができず、細孔径が100nmよりも大きいと、表面強度が低下する傾向にあるためいずれも好ましくない。ただし、多孔質ガラス膜2の厚さよりも細孔径が小さいことが好ましい。
尚、ここでいう細孔径とは、多孔質ガラス膜2の表面側に現れる細孔を複数の楕円で近似し、近似したそれぞれの楕円における短径の平均値であると定義される。図3は、多孔質ガラス膜2が有する細孔の細孔径及び細孔間の骨格の骨格径の定義の具体例を示す図である。例えば、図3(a)に示されるように、多孔質ガラス膜2の表面側を撮影した電子顕微鏡写真を用い、細孔21を複数の楕円22で近似し、それぞれの楕円における短径23の平均値を求めることで得られる。少なくとも30点以上の細孔21を計測し、その平均値を求める。
多孔質ガラス膜2の骨格径は、1nm以上50nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。骨格径が50nmよりも大きい場合は光の散乱が目立ち、透過率が大きく下がってしまう。また、平均骨格径が1nmよりも小さいと多孔質ガラス膜2の強度が小さくなる傾向にある。
尚、ここでいう骨格径とは、多孔質ガラス膜2の表面側を撮影した際に観察できる骨格を複数の楕円で近似し、近似したそれぞれの楕円における短径の平均値であると定義される。例えば、図3(b)に示されるように、多孔質ガラス膜2の表面側を撮影した際に得られる電子顕微鏡写真を用い、骨格24を複数の楕円25で近似し、それぞれの楕円における短径26の平均値を求めることで得られる。少なくとも30点以上の骨格24を計測し、その平均値を求める。
多孔質ガラス膜2の細孔径や骨格径は、原料となる材料やスピノーダル型の相分離させる際の熱処理条件(第2の熱処理工程を行う際の諸条件)等によって適宜制御することができる。
本発明の方法により作製された多孔質ガラス膜2は、光学部材あるいは光学部材を構成する一部材として用いることができる。またこの多孔質ガラス膜2を有する光学部材は、例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラのような撮像装置に搭載させることができる。
図4は、本発明の製造方法で得られた多孔質ガラス膜を有するガラス部材を光学部材として搭載した撮像装置の例を示す断面模式図である。尚、図4の撮像装置3は、カメラ、具体的には、レンズ32からの被写体像を、光学フィルタ33を通して撮像素子36上に結像させるための撮像装置である。図4の撮像装置3は、本体31と、取り外し可能なレンズ32と、を備えている。図4の撮像装置3がデジタル一眼レフカメラ等の撮像装置である場合、撮影に使用する撮影レンズ(レンズ32)を焦点距離の異なるレンズに交換することにより、様々な画角の撮影画面を得ることができる。図4の撮像装置3を構成する本体31は、撮像素子36と、赤外線カットフィルタ35と、ローパスフィルタ33と、光学部材34と、を有している。ここで光学部材34は、本発明の製造方法で作製された多孔質ガラス膜2を備えている。また光学部材34は、基材10を有するため、ローパスフィルタ33と兼用することは可能である。
図4の撮像装置3を構成する撮像素子36は、パッケージ(不図示)に収納されており、このパッケージはカバーガラス(不図示)にて撮像素子36を密閉状態で保持している。またこの撮像素子36は、画像処理回路37に接続されており、撮像素子37が受像した影像に関する情報は画像処理回路37によってデータ化される。尚、撮像素子36としては、CMOS素子やCCD素子を用いることができる。
またローパスフィルタ33や赤外線カットフィルタ35等の光学フィルタと、カバーガラス(不図示)との間は、両面テープ等の密封部材にて密封構造となっている(不図示)。尚、図4では、光学フィルタとして、ローパスフィルタ33及び赤外線カットフィルタ35の両方を備える例を示しているが、いずれか一方を省略してもよい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下に説明する実施例によって制限されるものではない。
[実施例1]光学部材の作製
図1に示される製造プロセスにより、基材10と、基材10の両面に設けられる多孔質ガラス膜2と、からなる光学部材を作製した。
(1)使用した材料等
(1−1)基材
基材10として、石英ガラス基材(株式会社飯山特殊硝子社製、軟化点1700℃、ヤング率72GPa)を用いた。尚、使用した基材10は、厚さ0.5mmの板状部材を50mm×50mmの大きさに切断し、かつ鏡面研磨したものである。
(1−2)ガラス粉体の作製
仕込み組成が、以下の通りになるように、酸化ホウ素、酸化ナトリウム、及びアルミナの混合粉体を白金るつぼに投入し、このるつぼ内で、1500℃24時間溶融した。
23:79重量%
Na2O:18重量%
Al23:3重量%
次に、溶融したガラスを1300℃に冷却してから、グラファイトの型に流し込んだ。この後、型に流し込んだガラスを、空気中で約20分間放冷した後、500℃の徐冷炉に5時間保持した。次に、24時間かけて冷却させることでブロック状のボレートガラスを得た。次に、このボレートガラスを、ジェットミルを使用して平均粒径が4.5μmになるまで粉砕を行うことにより、ガラス粉体を得た。この組成のガラス転移温度は約480℃であった。
(1−3)ガラスペーストの作製
上記原材料を撹拌混合することにより、ガラスペーストを得た。
ガラス粉体:60.0質量部
α−ターピネオール:44.0質量部
エチルセルロース(登録商標;ETHOCEL Std 200(ダウ・ケミカル社製)):2.0質量部
(2)成膜工程(図1(a))
スクリーン印刷により、基材10の一方の面(表面10a)に、ガラス紛体12と、バインダー13と、を含むガラスペーストを塗布して、膜11aを成膜した。本工程を行う際、印刷機として、マイクロテック社製、MT−320TVを使用し、印刷で使用する版として、#500の40mm×40mmのベタ画像を使用した。次いで、膜11aが成膜されている基材10を、100℃の乾燥炉に10分間静置し、溶剤分を蒸発させた。次に、同様の方法(スクリーン印刷法)で基材10のもう一方の面(裏面10b)にガラスペーストを塗布することで膜11bを成膜した後、100℃の乾燥炉に10分間静置し、膜11bに含まれる溶剤分を蒸発させた。以上により、基材10の両面(10a、10b)に、それぞれ膜(11a、11b)が形成されたサンプルを作製した(図1(a))。
(3)焼成工程(図1(b)乃至(d))
次いで、膜(11a、11b)が成膜されている基材10を、Siからなる熱伝導部材21の上に設けられている支持材22の上に載置した。このとき図1(b)に示されるように、支持材22が膜(11a、11b)に接触しない態様で基材10を支持するように、基材10の位置を調整した。尚、図1(b)中の複数の支持材22は、それぞれ高さが均一に調整されているため、基材10は、膜11bと熱伝導部材21との間隔を5mmほど空けた状態で、熱伝導部材21に対して水平に載置した。次に、熱伝導部材21を、基材10ごとマッフル炉内にセットした。次に、昇温速度を10℃/minに設定して、炉内を900℃まで昇温した後、この温度(900℃)で1時間熱処理することで、母体ガラス膜14を得た(図1(c))。続いて、炉内を室温まで冷却した後、550℃で50時間相分離熱処理を行った。そして、基材10の両面に設けられている膜の両表面を研磨することにより、基材10の両面に相分離ガラス膜1を形成した(図1(d))。
(4)エッチング工程(図1(e))
次に、相分離ガラス膜1が形成されている基材10を、80℃に加熱した1.0mol/Lの硝酸水溶液中に浸漬し、この温度(80℃)で24時間静置した。次いで、80℃に加熱した蒸留水中に浸漬し、24時間静置した。次に、蒸留水中から基材10を取り出して、室温にて12時間乾燥することにより、基材10の両面に多孔質ガラス膜2を有する光学部材のサンプルを得た(図1(e))。
(5)光学部材の評価
得られたサンプル(光学部材)について、走査電子顕微鏡(FE−SEMS−4800、日立製作所製)を用いて加速電圧5.0kVにて、SEMの像(電子顕微鏡写真)を撮影した。撮影したSEM像より、基材10の両面に膜厚が4.0μmの多孔質ガラス膜2が形成されていることが確認できた。図5の(a)は、本実施例にて作製したサンプルの断面図であり、(b)は、基材の表面10a側の多孔質ガラス膜2aのSEM像であり、(c)は、基材の裏面10b側の多孔質ガラス膜2bのSEM像である。図5(b)及び(c)より、基材10の両面(10a、10b)には、同質の多孔質ガラス膜(2a、2b)が形成されていることが分かる。
次に、得られたサンプルの透過率の測定を行った。測定装置として、分光光度計(日本分光株式会社製、紫外可視分光光度計V−570および自動絶対反射率測定装置ARM−500N)を使用した。図6は、本実施例で作製した光学部材の透過率を示す図である。尚、図6には、比較対象として、基材10の一方の面にのみ多孔質ガラス膜2を形成してなる比較サンプルの測定結果も併せて示してある。図6より、本実施例で作製した光学部材は、波長による透過率の変動が少なく、基材10の片面のみに多孔質ガラス膜2を形成した比較サンプルより高い透過率を示していることが分かる。
1:相分離ガラス膜、2(2a、2b):多孔質ガラス膜、10:基材、11a(11b):膜、12a(12b):ガラス紛体、13a(13b):バインダー、14:母体ガラス膜、21:熱伝導性部材、22:支持材

Claims (8)

  1. 基材の両面にガラス粉体を含む膜を成膜する成膜工程と、
    前記膜を焼成し、前記基材の両面に相分離ガラス膜を同時に形成する焼成工程と、を有し、
    前記焼成工程が、前記膜が成膜されていない部分にて前記基材が支持されることで、前記基材の面内方向が重力方向に対して垂直になるように前記基材が設置される状態で行う工程であり、
    前記焼成工程において、前記基材よりも熱伝導性が高い部材が、前記基材の下方であって前記膜に接触しないように設置されていることを特徴とする、相分離ガラス膜の製造方法。
  2. 前記ガラス紛体の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の相分離ガラス膜の製造方法。
  3. 前記基材よりも熱伝導性が高い部材が、Al23、Si又はSiCであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の相分離ガラス膜の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の相分離ガラス膜の製造方法で製造された相分離ガラス膜を準備する工程と、
    前記相分離ガラス膜をエッチング処理して前記基材の両面に多孔質ガラス膜を同時に形成するエッチング工程と、を有することを特徴とする、多孔質ガラス膜の製造方法。
  5. 基材と、前記基材の両面に設けられる多孔質ガラス膜と、を有し、
    前記多孔質ガラス膜がスピノーダル構造を有することを特徴とする、ガラス部材。
  6. 前記多孔質ガラス膜の厚さが2μm以上10μm以下であることを特徴とする、請求項5に記載のガラス部材。
  7. 前記スピノーダル構造を形成する骨格の骨格径が5nm以上50nm以下であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のガラス部材。
  8. 請求項5乃至7のいずれか1項に記載のガラス部材と、撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
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