以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。ここでは、本発明を丸鋸及びジグソーに適用した場合を例に、説明を行う。尚、各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、各実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、各実施の形態に記載されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本質的なものであるとは限らない。
まず、本発明の実施の形態に係る丸鋸の構成について、図1乃至図4に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る丸鋸100の外観図である。また、図2、図3及び図4は、それぞれ、丸鋸100の側面図、正面図、平面図である。本発明の実施の形態に係る丸鋸100は、コードレスの電動丸鋸であり、ベース1と、本体2とを備えている。
ベース1は、例えばアルミ等の金属製の略矩形の板材である。ベース1の長手方向は、丸鋸1の切断方向、すなわち図2に示す前後方向に一致する。ベース1の底面は、被削材との摺動面である。本体2は、ベース1に前後2箇所で連結され、ベース1に対して回動可能且つ左右に傾動可能である。
本体2は、モータハウジング3と、ハンドル部4と、ギヤカバー5と、ソーカバー6と、保護カバー7と、鋸刃8とを含んでいる。モータハウジング3、ハンドル部4、ギヤカバー5、ソーカバー6及び保護カバー7は、本発明のハウジングに相当し、ハンドル部4は、本発明のハンドルに相当する。
モータハウジング3は、例えば樹脂製であり、図4に示されるように、モータ9を内蔵する。モータ9は、鋸刃8を回転駆動する駆動源であり、本実施の形態ではブラシレスモータである。モータ9は、図4に示されるように、回転軸9aを有し、当該回転軸9aの軸方向が左右方向と一致するように配置される。
鋸刃8は、ディスク状に形成され、モータ9の回転軸9aと同軸に回転可能に支持される。鋸刃8の下側部分は、ベース1の底面から下方に突出する。鋸刃8は、本発明の切断刃に相当する。
ハンドル部4は、モータハウジング3と同材質であり、モータハウジング3の上方において前後方向に延びる。ハンドル部4は、切断作業時に作業者が把持する部分であり、作業者がモータ9の駆動をオンオフするためのメイントリガスイッチ18が設けられる。
ハンドル部4の後端下部には、電池パック取付部4aと制御回路基板収納部4bとが一体に設けられる。電池パック取付部4aの下部には、後方からスライドさせることにより電池パック20を着脱自在に装着可能である。電池パック20は、電池パック取付部4aに装着された状態で、モータ9に駆動電力を供給する。電池パック20は、本発明の供給手段に相当する。制御回路基板収納部4bは、電池パック20の右側に設けられ、制御回路基板21を収納保持する。制御回路基板21は、基板平面が鋸刃8の回転面に略平行に、すなわち、モータ9の回転軸9a及び鋸刃8の回転軸に略垂直となるように配置され、モータ9の動作を制御する制御部(後述)を搭載している。
ハンドル部4の下側であって電池パック取付部4a及び制御回路基板収納部4bの上面には、操作表示部16が設けられる。図5に、操作表示部16の構成を示す。操作表示部16は、モード切替スイッチ16a、モード表示LED16b及び電池残量表示LED16cを備える。モード切替スイッチ16aは、モータ9の制御モードを切り替えるためのスイッチであり、本発明の切替手段に相当する。作業者は、モード切替スイッチ16aを操作して、制御モードの切り替えを指示可能である。モード表示LED16bは、モータ9の制御モードを報知するための表示部である。モータ9の制御モードが切り替えられると、モード表示LED16bが点灯或いは消灯して、制御モードの切り替えが報知される。電池残量表示LED16cは、電池パック20の電池残容量を作業者に報知するための表示部である。
ギヤカバー5は、ハンドル部4の右側に設けられる。ギヤカバー5は、例えば金属製であり、モータ9の回転を鋸刃8に伝達するための回転伝達機構(不図示)を内蔵する。ここで、回転伝達機構は、周知の減速機構等から構成される。ソーカバー6は、ギヤカバー5に取付けられ、ギヤカバー5と共に鋸刃8の上側部分を覆う。ソーカバー6は、ギヤカバー5と同材質且つ一体に形成されても良い。ギヤカバー5及びソーカバー6の前端部は、後述する回動支持部14によって回動自在に連結される。
保護カバー7は、例えば樹脂製であり、ギヤカバー5の後方側に、ギヤカバー5及びソーカバー6の外縁に沿って回動可能に設けられる。ギヤカバー5と保護カバー7との間には図示せぬバネが存在する。このバネは、ギヤカバー5に対して保護カバー7を、ギヤカバー5及びソーカバー6の円周方向であって鋸刃8の下側を覆う方向(図2中、反時計回り)に付勢する。これにより、切断作業を行っていない状態では、保護カバー7は、鋸刃8の下側部分、すなわちベース1の底面から下方に突出した部分を、前方の一部を除いて覆う。
ベース1の前方には、べベルプレート12が立設される。べベルプレート12は、切断方向と略直交する短手方向に直立する。べベルプレート12には長孔13が設けられる。長孔13は、切断方向に延びる第1傾動軸部15aを中心とし、かつ第1傾動軸部15aと直交する円弧状に形成される。長孔13には、傾斜角度調整レバー11が係合される。回動支持部14は、第1傾動軸部15aを中心としてベース1に対して左右に傾動可能に支持される。回動支持部14の傾動位置は、傾斜角度調整レバー11を緩めた状態で調整し、傾斜角度調整レバー11を締めつけることで固定する。回動支持部14は、モータ9及び鋸刃8の回転軸と平行な軸で、ソーカバー6の前端部を回動可能に支持する。
図3において、傾斜角度調整レバー11は長孔13の最下部で固定され、鋸刃8はベース1の底面に対して略90°の角度をなしており、鋸刃8の回転軸はベース1の底面に対して略平行となっている。この状態における丸鋸100の傾動角を90°と記す。
図6は、丸鋸100の傾動状態を示す正面図である。図6において、傾斜角度調整レバー11は長孔13の最上部で固定され、鋸刃8はベース1に対して略45°の角度をなしている。この状態における丸鋸100の傾動角を45°と記す。丸鋸100は、傾動角が90°から45°の範囲で傾動可能である。
ベース1の後方には、リンク10が、ギヤカバー5の左側面に沿って、第1傾動軸部15aと同軸の傾動軸部15bを中心に回動可能に設けられる。リンク10は、例えばアルミ等の金属製である。また、ベース1の後方には、切込み深さ調整レバー19が設けられる。リンク10及びギヤカバー5は、切込み深さ調整レバー19を緩めた状態では、相互にスライド可能であり、ベース1に対するソーカバー6の回動位置、すなわち切込み深さを調整することができる。そして、切込み深さ調整レバー19を締め付けることで、ギヤカバー5の回動位置を固定できる。図2において、ソーカバー6は回動しておらず、切込み深さは最大となっている。
図7は、実施の形態に係る丸鋸100の最小切込み状態を示す側面図である。図7において、ソーカバー6は最大に回動しており、切込み深さは最小となっている。例えば、窓抜き作業や穴あけ作業時、作業者は、切込み深さを最小に設定し、ハンドル部4を把持して丸鋸100の後方を持ち上げ、ベース1の先端部分を被削材に当接させた状態で、切断作業を開始する。このとき、ベース1の底面は、被削材の表面とある角度をなすこととなる。ここで、ベース1の底面前後方向と、被削材の表面とがなす角度を、切込み角度と記すこととする。ベース1の底面全体を被削材に当接させた状態で切断作業を行う場合、切込み角度は0°である。
次に、丸鋸100の回路構成について、図8に基づき説明する。図8は、本発明の実施の形態に係る丸鋸100の電気的構成を示す回路図である。丸鋸100は、図6に示されるように、モータ9、電池パック20、インバータ回路部22、制御部23を含んで構成される。
モータ9は、本実施の形態では3相のブラシレスモータから構成され、回転軸9a(図4)及び複数の永久磁石を備えるロータ9bと、当該ロータ9bと対向する位置に配置され複数のコイルを備えるステータ9cとを含んで構成される。
ロータ9bの近傍には、3つの磁気センサ24が配置されている。磁気センサ24は、例えばホール素子であり、ロータ9bの回転位置を検出し、検出信号を出力する。
インバータ回路部22は、3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子22aが基板上に搭載されて構成される。ここで、スイッチング素子22aは、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。インバータ回路部22には、電池パック20からの電圧が入力される。インバータ回路部22は、この入力電圧を交流電圧に変換して、モータ9に供給する。
電池パック20とインバータ回路部22との間には、モータ9の駆動電流の経路上に検出抵抗25が接続される。
制御部23は、図4に示される制御回路基板21に搭載され、インバータ回路部22の駆動制御や、モード表示LED16b及び電池残量表示LED16cの点灯制御等、各種制御を行う。制御部23は、図6に示されるように、モータ電流検出回路26、スイッチ操作検出回路27、回転子位置検出回路29、モータ回転数検出回路30、加速度センサ31、演算部32及び制御信号出力回路33を含んで構成される。
モータ電流検出回路26は、検出抵抗25の端子電圧に基づき、モータ9の駆動電流を検出する。モータ9の駆動電流は、モータ9の負荷に相当し、モータ電流検出回路26は、本発明の負荷検出手段に相当する。
スイッチ操作検出回路27は、作業者によるメイントリガスイッチ18の操作を検出する。回転子位置検出回路29は、磁気センサ24からの検出信号に基づいて、モータ9の回転位置を検出する。モータ回転数検出回路30は、回転子位置検出回路29からの検出信号に基づいて、モータ9の回転数を検出する。
加速度センサ31は、制御回路基板21上に搭載され、丸鋸100の本体2の加速度を検知する。図9は、本実施の形態における加速度センサ31の構成を示す図である。本実施の形態では、加速度センサ31は3軸加速度センサであり、3つの軸、すなわちX軸、Y軸及びZ軸方向の加速度をそれぞれ検知し、電圧値Vx、Vy及びVzとして出力する。加速度センサ31は、X軸及びY軸が制御回路基板21に平行となり、Z軸が制御回路基板21に垂直となるように配置される。制御回路基板21は、前述したように、鋸刃8の回転軸に略垂直に配置される。本実施の形態では、加速度センサ31は、Z軸が鋸刃8の回転軸に略平行となり、X軸及びY軸が鋸刃8の回転軸に略垂直となるように配置される。加速度センサ31は、丸鋸100の本体2の姿勢を検知する本発明の姿勢検知手段に相当する。
図8に戻り、演算部32は、モード切替スイッチ16aからの信号に基づき制御モードの切り替えを行う。本実施の形態では、丸鋸100には2つの制御モード、すなわちパワーモード及びサイレントモードが設定されている。
パワーモードは、モータ9に供給する駆動電力のデューティ比を所定値に設定して定デューティ制御を行う制御モードである。本実施の形態の丸鋸100では、パワーモードの場合、モータ9に供給する駆動電力のデューティ比は100%に設定される。つまり、パワーモードは、鋸刃8を高速で回転させる制御モードである。
サイレントモードは、モータ9の駆動電流が所定値以下の場合、鋸刃8の回転速度を所定値に設定する定速度制御を行い、駆動電流が所定値を超えると、モータ9に供給する駆動電力のデューティ比を所定値に設定する定デューティ制御を行う制御モードである。本実施の形態に係る丸鋸100では、モータ9の駆動電流が上昇中には、駆動電流が17A以下の場合、鋸刃8の回転速度を3000rpm(回転/分)に設定し、駆動電流が17Aを超えると、モータ9に供給する駆動電力のデューティ比を100%に設定する。また、モータ9の駆動電流が下降中には、駆動電流が14A以上の場合、モータ9に供給する駆動電力のデューティ比を100%に設定し、駆動電流が14Aより小さくなると、鋸刃8の回転速度を3000rpmに設定する。つまり、サイレントモードは、鋸刃8を低速で回転させる制御モードである。駆動電流はモータ9の負荷に相当し、17A及び14Aはそれぞれ、第1の負荷及び第2の負荷に相当する。
制御モードを切り替える場合、作業者は、モード切替スイッチ16aをオンする。このオン操作に基づき、モード切替スイッチ16aからオン操作が行われたことを示す信号が入力される。演算部32は、モード切替スイッチ16aからの信号に基づき、デューティ比や回転速度の設定を行う。
また、演算部32は、モータ回転数検出回路30により検出されたモータ9の回転数と、モータ9及び鋸刃8の減速比とに基づいて、鋸刃8の回転速度を演算して検出する。演算部32は、選択された制御モードや、回転子位置検出回路29により検出されたモータ9の回転位置、モータ回転数検出回路30の検出結果に基づき検出された鋸刃8の回転速度等に基づき、制御信号出力回路33を駆動し、インバータ回路部22の各スイッチング素子22aをスイッチング制御する。演算部32は、更に、加速度センサ31からの出力に基づいて、本体2の姿勢が安定及び不安定の何れであるかを判定する。
制御部23は、モード表示LED16b及び電池残量表示LED16cの点灯制御を行う。制御部23は、サイレントモードが設定された場合に、モード表示LED16bを点灯し、パワーモードが設定された場合に、モード表示LED16bを消灯する。更に、制御部23は、電池パック20の電池残容量に応じて、電池残量表示LED16cの点灯及び消灯を行う。
また、制御部23は、設定された制御モードや、演算部32による姿勢の判定に使用する閾値(後述)等を記憶するための図示せぬメモリを有する。
電池パック20及び制御部23の間には、制御回路電圧供給回路34が接続される。制御回路電圧供給回路34は、電池パック20の電圧を制御部23の動作に適した電圧に変換して、制御部23に供給する。
次に、本実施の形態の加速度センサ31及び制御部23による姿勢の判定について、更に詳しく説明する。
加速度センサ31の出力電圧値Vは、本実施の形態では、V=1.65+0.66g(V)と表される。ここで、gは、軸方向が重力の方向、すなわち鉛直方向下向きに一致するときは+1の値をとり、鉛直方向上向きに一致するときは−1の値をとり、水平方向に一致するときは0となるパラメータである。以下、鉛直方向下向きにかかる重力を1gと記し、鉛直方向上向きにかかる重力を−1gと記すこととする。また、水平方向にかかる重力を0gと記す。
図10は、加速度センサ31の出力電圧値の一例を示す説明図である。各図において、紙面上下方向が鉛直方向に対応し、下側が地面の方向である。また、紙面左右方向及び表裏方向が水平方向に対応している。
図10(a)は、定常時の取付状態における加速度センサ31の出力電圧値を示す。括弧内は、各軸方向にかかる重力を表す。定常時とは、図2及び図4に示されるように、丸鋸100の傾動角が0°であり、ベース1が水平であるとともに、本体2がベース1に対して鉛直方向上側に位置する時である。これは、例えば床等の水平な面を傾動角0°で平行切断する場合に対応している。このとき、加速度センサ31は、X軸方向が鉛直方向下向きに一致し、Y軸方向及びZ軸方向が水平方向に一致している。この場合の加速度センサ31の出力値Vx、Vy及びVzはそれぞれ、2.31V、1.65V及び1.65Vである。
図10(b)は、加速度センサ31のY軸方向が鉛直方向下向きに一致し、Z軸方向及びX軸方向が水平方向に一致する場合に対応する。このとき、加速度センサ31の出力値Vx、Vy及びVzはそれぞれ、1.65V、2.31V及び1.65Vである。
図10(c)は、加速度センサ31のZ軸方向が鉛直方向上向きに一致し、X軸方向及びY軸方向が水平方向に一致する場合に対応する。このとき、加速度センサ31の出力値Vx、Vy及びVzはそれぞれ、1.65V、1.65V及び0.99Vである。
図10(d)は、加速度センサ31のY軸方向が鉛直方向上向きに一致し、Z軸方向及びX軸方向が水平方向に一致する場合に対応する。このとき、加速度センサ31の出力値Vx、Vy及びVzはそれぞれ、1.65V、0.99V及び1.65Vである。
図10(e)は、加速度センサ31のX軸方向が鉛直方向上向きに一致し、Y軸方向及びZ軸方向が水平方向に一致する場合に対応する。このとき、加速度センサ31の出力値Vx、Vy及びVzはそれぞれ、0.99V、1.65V及び1.65Vである。
図10(f)は、加速度センサ31のZ軸方向が鉛直方向下向きに一致し、X軸方向及びY軸方向が水平方向に一致する場合に対応する。このとき、加速度センサ31の出力値Vx、Vy及びVzはそれぞれ、1.65V、1.65V及び2.31Vである。
演算部32は、加速度センサ31からの出力に基づいて、本体2の姿勢が安定及び不安定の何れであるかを判定する。本実施の形態では、演算部32は、加速度センサ31からの3つの出力電圧値Vx、Vy及びVzのうち、X軸方向の出力電圧値Vxのみに基づき姿勢の判定を行う。演算部32は、予め設定した閾値Vthを記憶し、加速度センサ31の出力電圧値Vxと閾値Vthとを比較する。そして、出力電圧値Vxが閾値Vth以下の場合、本体2の姿勢が不安定であると判定する。また、出力電圧値Vxが閾値Vthよりも大きい場合、本体2の姿勢が安定であると判定する。
図11は、各切断条件における加速度センサ31のX軸にかかる重力と出力電圧値Vxとを示す説明図である。「平行切断」は、床等の水平な面を切断する場合の切断作業であり、「壁切断」は、壁等の鉛直な面を切断する場合の切断作業に相当する。また「天井切断」は、天井等の作業者の上方に位置する水平な面を、ベース1を上側に、本体2を下側に配置させて切断する場合の切断作業である。それぞれの切断作業に対し、切込み深さが最大の場合(図2)及び最小の場合(図7)に対応する出力電圧値Vxを示す。
まず、平行切断の場合について、説明する。図11において、「直角切り」は、傾動角が90°の場合(図3)に対応し、「傾斜切り」は、傾動角が45°の場合(図6)に対応する。切込み深さが最大で傾動角が90°の直角切りの場合、加速度センサ31のX軸は鉛直方向下向きに一致しており、X軸方向にかかる重力は1gである。このとき、出力電圧値Vxは2.31Vとなる。また、切込み深さが最大で傾動角が45°の傾斜切りの場合、本体2が傾動するため、加速度センサ31のX軸方向も鉛直方向から45°ずれることとなる。このとき、加速度センサ31のX軸方向にかかる重力は0.71gであり、出力電圧値Vxは2.12Vとなる。
一方、切込み深さが最小の場合、丸鋸100の後方が持ち上げられ、ベース1の先端部分が被削材に当接した状態で、切断作業が実施される。図11には、ベース1の底面前後方向と水平方向とのなす角度、すなわち切込み角度が30°の場合の出力電圧値Vxを示す。傾動角が90°の直角切りの場合、本体2は前後方向にのみ傾き、加速度センサ31のX軸方向にかかる重力は0.87gとなる。この場合、加速度センサ31の出力電圧値Vxは2.22Vである。また、傾動角が45°の傾斜切りの場合、本体2は前後方向及び左右方向の何れにも傾き、加速度センサ31のX軸方向にかかる重力は0、61gとなる。この場合、加速度センサ31の出力電圧値Vxは2.05Vである。
次に、壁切断の場合について、説明する。切込み深さが最大で傾動角が90°の直角切りの場合、丸鋸100のベース1の底面は鉛直方向に一致し、加速度センサ31のX軸方向は水平方向に一致することとなる。このとき、加速度センサ31のX軸方向にかかる重力は0gとなり、出力電圧値Vxは1.65Vである。一方、切込み深さが最小で切込み角度が30°、傾動角が90°の直角切りの場合、加速度センサ31のX軸方向にかかる重力は切断方向に応じて異なり、−0.5gから+0.5gの間の値をとることとなる。例えば、切断方向が鉛直方向上向きの場合、X軸方向にかかる重力は0.5gであり、出力電圧値Vxは1.98Vである。また、切断方向が鉛直方向下向きの場合、X軸方向にかかる重力はー0.5gであり、出力電圧値Vxは1.32Vである。
続いて、天井切断の場合について、説明する。切込み深さが最大で傾動角が90°の直角切りの場合、丸鋸100のベース1の底面は水平方向に一致し、加速度センサ31のX軸方向は鉛直方向上向きに一致することとなる。このとき、加速度センサ31のX軸方向にかかる重力は−1gとなり、出力電圧値Vxは0.99Vである。一方、切込み深さが最小で切込み角度が30°、傾動角が90°の直角切りの場合、加速度センサ31のX軸方向にかかる重力は−0.87gとなり、出力電圧値Vxは1.08Vである。
図11に示される各切断条件での出力電圧値Vxを踏まえ、本実施の形態の丸鋸100では、本体2の姿勢の判定に使用する閾値Vthを2.00Vに設定する。これにより、傾動角や切込み角度の大小にかかわらず、平行切断の場合は姿勢が安定であると判定し、壁切断及び天井切断の場合は姿勢が不安定であると判定することが可能となる。
続いて、第1の実施の形態に係る丸鋸100の動作について、図12に基づき詳細に説明する。図12は、第1の実施の形態に係る丸鋸100の動作を示すフローチャートである。丸鋸100は、本実施の形態では、モータ9の駆動開始時及びパワーモードでの動作中に、姿勢の検出及び判定を行う。
なお、図12に示されるフローチャートは、作業者の操作によりメイントリガスイッチ18がオンされたことを契機に開始され、メイントリガスイッチ18がオフされると終了する。
メイントリガスイッチ18がオンされると、演算部32は、図示せぬメモリから制御モードを読み出す(ステップS101)。メモリには、前回設定された制御モードが記憶されており、演算部32は、この制御モードを読み出す。
また、演算部32は、加速度センサ31からの出力電圧値Vxに基づき、丸鋸100の本体2の姿勢が不安定であるか否かを判定する(ステップS102)。平行切断の場合、加速度センサ31からの出力電圧値Vxは、図11に示されるように、閾値Vth=2.00Vよりも大きな値となる。演算部32は、出力電圧値Vxと閾値Vthとを比較して、出力電圧値Vxが閾値Vthよりも大きい場合、本体2の姿勢が不安定ではないと判定する(ステップS102:No)。続いて、演算部32は、メモリから読み出した制御モードがパワーモードであるか否かを判断する(ステップS103)。
ステップS102において、壁切断や天井切断の場合、加速度センサ31からの出力電圧値Vxは、図11に示されるように、閾値Vth=2.00Vよりも小さな値となる。演算部32は、出力電圧値Vxが閾値Vth未満である場合、本体2の姿勢が不安定であると判定する(ステップS102:Yes)。この場合、演算部32は、メモリから読み出した制御モードがパワーモード及びサイレントモードの何れであるかの判断を行わず、サイレントモードを設定する。演算部32は、メモリにサイレントモードを記憶させる。
メモリにサイレントモードが設定されていた場合(ステップS103:No)、或いは本体2の姿勢が不安定であると判定された場合(ステップS102:Yes)、制御部23は、サイレントモードでの制御を行う。演算部32は、モータ回転数検出回路30からの信号に基づき鋸刃8の回転速度を検出し、検出された回転速度が3500rpm未満であるか否かを判断する(ステップS104)。駆動開始時は、鋸刃8の回転速度は0であるので、3500rpm未満であると判断される(ステップS104:Yes)。続いて、制御部23が、サイレントモードでの運転を報知すべく、モード表示LED16bを点灯する(ステップS105)。そして、制御部23は、鋸刃8の回転速度を3000rpmまで上昇させて維持すべく、定速度制御を行う(ステップS106)。
ステップS104において、鋸刃8の回転速度が3500rpm以上である場合(ステップS104:No)、演算部32は、ソフトスタート制御により、回転速度を3000rpmまで下降させるソフト立下げを行う(ステップS113)。そして、回転速度が3000rpmに達すると、制御部23が、モード表示LED16bを点灯し(ステップS105)、鋸刃8の回転速度を3000rpmで維持すべく、定速度制御を行う(ステップS106)。
モード切替スイッチ16aがオフされることなく(ステップS107:No)、サイレントモードでの動作が継続されると、制御部23は、定速度制御を継続する。このとき、切断作業の状況に応じて、負荷が変動し、モータ9に流れる駆動電流が変動することとなる。演算部32は、モータ電流検出回路26により検出される駆動電流の数値を監視し、駆動電流が17A以下である場合(ステップS108:No)、鋸刃8の回転速度を3000rpmに維持する(ステップS106)。
負荷が大きくなり、駆動電流が17Aを超えると(ステップS108:Yes)、制御部23は、鋸刃8の回転速度を3000rpmに維持する定速度制御から、モータ9に供給する駆動電力のデューティ比を100%とする定デューティ制御に移行する。演算部32は、ソフトスタート制御により、デューティ比を100%に向けて徐々に上昇させるソフト立上げを行う(ステップS109)。そして、デューティ比が100%に達すると、定デューティ制御によりモータ9の動作を継続させる(ステップS110)。演算部32は、駆動電流の数値を監視し、駆動電流が14A以上である場合(ステップS111:No)、定デューティ制御を継続する(ステップS110)。
負荷が小さくなり、駆動電流が14A未満に下がると(ステップS111:Yes)、制御部23は、デューティ比100%の定デューティ制御から、鋸刃8の回転速度を3000rpmに維持する定速度制御に移行する。演算部32は、ソフトスタート制御により、回転速度を3000rpmまで下降させるソフト立下げを行う(ステップS112)。そして、回転速度が3000rpmに達すると、定速度制御によりモータ9の動作を継続させる(ステップS106)。
サイレントモードでの定速度制御の継続中(ステップS106)、モード切替スイッチ16aがオンされると(ステップS107:Yes)、演算部32は、メモリにパワーモードを記憶させるとともに、ソフトスタート制御により、デューティ比を100%に向けて徐々に上昇させるソフト立上げを行う(ステップS114)。
また、演算部32は、加速度センサ31からの出力電圧値Vxに基づき、本体2の姿勢が不安定であるか否かを判定する(ステップS102)。不安定であると判定されると(ステップS102:Yes)、制御部23は、制御モードをサイレントモードからパワーモードに切り替えることなく、サイレントモードでの制御を継続する(ステップS104〜S112)。
モード切替スイッチ16aがオンされた(ステップS108:Yes)後、本体2の姿勢が不安定でないと判定されると(ステップS102:No)、演算部32は、メモリに記憶されたパワーモードに基づき、パワーモードに制御を切り替える(ステップS103:Yes)。
起動開始時にメモリにパワーモードが設定されていた場合或いは定速度制御中にパワーモードに切り替えられた場合(ステップS103:Yes)、制御部23は、モード表示LED16bを消灯する(ステップS115)。そして、駆動電力のデューティ比を100%とする定デューティ制御を行う(ステップS116)。演算部32は、ソフトスタート制御により、デューティ比を100%に向けて徐々に上昇させるソフト立上げを行い、デューティ比が100%に達すると、定デューティ制御によりモータ9の動作を継続させる(ステップS116)。
モード切替スイッチがオンされることなく(ステップS117:No)、パワーモードでの動作が継続されると、演算部32は、常時、加速度センサ31からの出力電圧値Vxに基づき、本体2の姿勢が不安定であるか否かの判定を行う(ステップS102)。姿勢が不安定でない場合(ステップS102:No)、制御部23は、パワーモードでの定デューティ制御を継続する(ステップS115〜S117)。
パワーモードでの動作の継続中、本体2の姿勢が不安定であると判定されると(ステップS102:Yes)、演算部32は、メモリにサイレントモードを記憶させ、制御モードをパワーモードからサイレントモードに移行する。そして、制御部23は、サイレントモードでの制御を行う(ステップS104〜S112)。
パワーモードでの動作の継続中、モード切替スイッチ16aがオンされると(ステップS117:Yes)、演算部32は、モード切替スイッチ16aからの信号に基づき、制御モードをパワーモードからサイレントモードに切り替え、メモリにサイレントモードを記憶させる。また、制御部23は、モード表示LED16bを点灯する(ステップS118)。そして、演算部32は、ソフトスタート制御により、鋸刃8の回転速度を3000rpmまで徐々に下げるソフト立下げを行う(ステップS119)。回転速度が3000rpmに達すると、定速度制御によりモータ9の動作を継続させる(ステップS106)。
上記のように、モータ9の駆動開始時に本体2の姿勢が不安定であると判定された場合、強制的にサイレントモードが選択される。また、パワーモードでの動作中は、常時、姿勢の判定が行われ、不安定であると判定されると、直ちにサイレントモードへの切り替えが行われる。
図13は、モータ9の駆動電流に対する鋸刃8の回転速度の特性を示す説明図である。図13において、実線は、サイレントモードが設定されている場合の特性曲線を示し、一点鎖線は、パワーモードが設定されている場合の特性曲線を示す。また、点線は、鋸刃8の回転速度を3000rpmに保つ定速度制御が行われている場合に対応する。
丸鋸100において、サイレントモードが設定されている場合、モータ9の駆動電流が17A以下では、定速度制御が行われ、鋸刃8の回転速度は3000rpmに維持される。そして、駆動電流が17Aを超えると、回転速度にかかわらず、モータ9の駆動電力のデューティ比を100%まで緩やかに大きくしていくソフト立上げを行い、デューティ比を100%に維持する。こうした制御により、鋸刃8の回転速度は、定速度制御時の3000rpmから約3800rpmに上昇する。このとき、鋸刃8の回転速度及びモータ9の駆動電流は、パワーモードの特性曲線上に位置する。その後、駆動電流の上昇に伴い、鋸刃8の回転速度は下降することとなる。
以上のように、本実施の形態に係る丸鋸100では、モータ9の駆動開始時に本体2の姿勢が不安定であると判定された場合、強制的にサイレントモードが選択されるので、壁切断や天井切断等、不安定な体勢での切断作業時には、負荷が小さい時も、鋸刃8の回転速度を3000rpm以下に抑えることが可能となる。したがって、切断面の歪みの発生等が抑止され、良好な作業性が確保される。また、電池パック20の電力消費を抑制可能となり、一回の充電での作業量を増やすことが可能となる。
更に、駆動開始時には姿勢が不安定ではなかった場合も、パワーモードでの動作中は、姿勢の判定が常時行われ、不安定であると判定されると直ちにサイレントモードへの切り替えが行われるので、パワーモードによる平行切断から壁切断へと作業が連続的に移行した場合も、作業者がモード切替スイッチ16aを操作せずとも、制御モードが切り替えられ、鋸刃8の回転速度が低速に変更されるので、良好な作業性の維持が可能となる。
また、サイレントモードでの動作中も、駆動電流が17Aを超えると、定速度制御から定デューティ制御に切り替えられるので、負荷に追従して駆動電力を上げることが可能となり、更なる作業性の向上が実現される。そして、駆動電流が14A以下に下がると、定デューティ制御から定速度制御へと切り替えられるので、負荷が小さい時の電力消費を抑制可能となる。このとき、駆動電流の上昇中と下降中とで異なる閾値が用いられるので、制御モードの切り替えが頻繁に起こることを防止可能となり、安定した作業の実施が可能となる。
次に、第2の実施の形態に係る丸鋸について、説明する。本実施の形態に係る丸鋸の構成は、第1の実施の形態に係る丸鋸100の構成と同一であるので、説明を省略する。ここでは、第2の実施の形態に係る丸鋸の動作について、図14に基づき説明する。図14は、第2の実施の形態に係る丸鋸の動作を示すフローチャートである。本実施の形態では、メイントリガスイッチ18をオンした時にのみ、本体2の姿勢の判定を行う点が、第1の実施の形態と異なる。
図14に示されるフローチャートは、メイントリガスイッチ18がオンされたことを契機に開始され、オフされると終了する。メイントリガスイッチ18がオンされると、演算部32は、メモリから制御モードを読み出す(ステップS101)とともに、加速度センサ31からの出力電圧値Vxに基づき、本体2の姿勢が不安定であるか否かを判定する(ステップS102)。
本体2の姿勢が不安定ではないと判定した場合(ステップS102:No)、演算部32は、メモリから読み出した制御モードを設定する(ステップS103)。また、本体2の姿勢が不安定であると判定した場合(ステップS102:Yes)、演算部32はサイレントモードを設定し、制御部23がモード表示LED16bを点灯させる(ステップS105)。
サイレントモードが設定されると、制御部23は、鋸刃8の回転速度を300rpmまで上昇させて維持すべく、定速度制御を行う(ステップS106)。そして、第1の実施の形態の丸鋸100と同様に、サイレントモードに基づく制御が実施される(ステップS107〜S112)。
起動時に本体2の姿勢が不安定ではないと判定され(ステップS102:No)、パワーモードが設定された場合(ステップS103:Yes)及びサイレントモードでの動作中にモード切替スイッチ16aがオンされた場合(ステップS107:Yes)、制御部23は、パワーモードに基づく制御を行う(ステップS115〜ステップS119)。パワーモード設定後は、姿勢の判定を行うことなく、モータ9の駆動を継続する。
以上のように、第2の実施の形態に係る丸鋸では、モータ9の駆動開始時にのみ本体2の姿勢の判定が行われ、駆動開始後はモード切替スイッチ16aの操作にのみ応じて制御モードの切り替えが実施されるので、不安定な体勢における高速での切断作業の開始を防止可能となるとともに、駆動後の切断作業に伴う振動で姿勢が誤判定され、意図せぬ制御モードの切り替えが発生することを防止可能となる。また、駆動後に切断作業に伴う姿勢変更の度に制御モードの切り替えが発生することを防止可能となる。したがって、良好な作業性が確保されるとともに、作業者の所望の制御モードでの切断作業継続が可能となり、利便性が向上される。
次に、第3の実施の形態に係る丸鋸について、説明する。本実施の形態に係る丸鋸の構成は、第1の実施の形態に係る丸鋸100の構成と同一であるので、説明を省略する。ここでは、第3の実施の形態に係る丸鋸の動作について、図15に基づき説明する。図15は、第3の実施の形態に係る丸鋸の動作を示すフローチャートである。本実施の形態では、メイントリガスイッチ18をオンした時にのみ、本体2の姿勢の判定を行う点は、第2の実施の形態に係る丸鋸と同一であり、不安定姿勢を検出した場合に、モード表示LED16bを点滅させて定速度制御のみを行う点が、第2の実施の形態と異なる。
図15に示されるフローチャートは、メイントリガスイッチ18がオンされたことを契機に開始され、オフされると終了する。メイントリガスイッチ18がオンされると、演算部32は、メモリから制御モードを読み出す(ステップS101)とともに、加速度センサ31からの出力電圧値Vxに基づき、本体2の姿勢が不安定であるか否かを判定する(ステップS102)。
本体2の姿勢が不安定ではないと判定された場合(ステップS102:No)、その後の動作は第2の実施の形態と同一である(ステップS103〜S119)。
本体2の姿勢が不安定であると判定された場合、制御部23は、モード表示LED16bを点滅させる(ステップS201)。そして、演算部32は、鋸刃8の回転速度を3000rpmで維持すべく、定速度制御を行う(ステップS202)。
なお、図13に点線で示される速度制御は、本実施の形態の丸鋸において、本体2の不安定姿勢が検出された場合の定速度制御(図15のステップS202)に対応する。
以上のように、第3の実施の形態に係る丸鋸では、第2の実施の形態と同様に、モータ9の駆動開始時にのみ本体2の姿勢の判定が行われ、駆動開始後はモード切替スイッチ16aの操作にのみ応じて制御モードの切り替えが実施されるので、良好な作業性が確保されるとともに、作業者の所望の制御モードでの切断作業継続が可能となり、利便性が向上される。また、姿勢が不安定であると判定された場合には、負荷の大小に関わらず定速度制御のみを行うため、良好な作業性が維持される。また、モード表示LED16bを点滅させるので、不安定な体勢であること及び定速度制御での運転中であることを作業者に確実に報知可能となり、利便性が向上される。
次に、第4の実施の形態について、説明する。本実施の形態では、本発明をジグソーに適用した場合を例に、説明を行う。
図16は、本発明の第4の実施の形態に係るジグソーの部分断面側面図である。ジグソー200は、ベース201と、本体202とを備えている。
ベース201は、例えばアルミ等の金属製の略矩形の板材である。ベース201の長手方向は、ジグソー200の切断方向、すなわち図16に示す前後方向に一致する。ベース201の底面は、被削材との摺動面である。
本体202は、モータハウジング203と、ハンドルハウジング204と、ギヤハウジング205と、ブレード208とを含んでいる。モータハウジング203、ハンドルハウジング204及びギヤハウジング205は、本発明のハウジングに相当し、ハンドルハウジング204及びギヤハウジング205は、本発明の切断刃ハウジングに相当する。
モータハウジング203は、例えば樹脂製であり、図16に示されるように、モータ209及び制御部223を内蔵するとともに、電源ケーブル203aを備えている。電源ケーブル203aは、モータハウジング203の後部から後方に延出しており、図示せぬ外部電源に接続することにより、ジグソー200に電源が供給される。なお、本実施の形態のジグソー200は、外部電源に接続して使用されるが、本発明はこれに限定されない。電池パックを電源として使用するコードレスのジグソーにも適用可能である。この場合、電池パックが本発明の供給手段に相当する。
モータ209は、ブレード208を駆動する駆動源であり、本実施の形態ではブラシレスモータである。モータ209は、図16に示されるように、回転軸209aを有し、当該回転軸209aの軸方向が前後方向と一致するように配置される。
制御部223は、図示せぬ加速度センサを備え、本体202の姿勢を検知し、不安定であるか否かを判定する。また、制御部223は、モータ209の速度制御を行う。
ハンドルハウジング204は、モータハウジング203と同材質であり、モータハウジング203の後部とギヤハウジング205の上部とを接続している。ハンドルハウジング204は、切断作業時に作業者が把持する部分であり、メイントリガスイッチ218、スイッチ機構217及び設定機構227を備えている。また、ハンドルハウジング204の前側上部には、前後方向に延びる長孔204aが形成されている。
メイントリガスイッチ218は、ハンドルハウジング204の前部下側に設けられており、作業者がハンドルハウジング204を把持した状態で操作可能に構成されている。スイッチ機構217は、ハンドルハウジング204の内部に収容されており、メイントリガスイッチ218及び制御部223と接続されている。スイッチ機構217は、メイントリガスイッチ218がオンされたことを検出して、制御部223に信号を出力する。
設定機構227は、モータ209の回転速度を設定するための機構であり、ハンドルハウジング204の内部においてスイッチ機構217の前方に収容されている。設定機構227は、作業者によって手動操作可能な速度ダイヤル216と、速度ダイヤル216の回動位置を検出する位置検出部228とを備えている。設定機構227は、本発明の設定手段に相当する。
速度ダイヤル216は、ディスク状をなし、側面に6つの数字「1」〜「6」が刻印されている。これらの数字は、モータ209の回転速度を選択する際に使用される。数字「1」は、選択される回転速度が最も小さい、すなわち低速であることを示す数字であり、数字「6」は、選択される回転速度が最も大きい、すなわち高速であることを示す数字である。
速度ダイヤル216に刻印された数字は、ハンドルハウジング204の長孔204aから1つずつ視認可能である。作業者は、速度ダイヤル216を回動させて、長孔204aから視認可能な数字を変更することにより、所望の回転速度を選択する。以下、長孔204aから視認可能な数字を、速度ダイヤル216の選択値と記す。例えば、速度ダイヤル216の選択値が「1」の場合、選択されたモータ209の回転速度は最も低速であり、速度ダイヤル216の選択値が「6」の場合、選択されたモータ209の回転速度は最も高速である。以下、それぞれの選択値に基づき選択されるモータ209の回転速度を、回転速度「1」、回転速度「2」のように記載することとする。
例えば、回転速度「1」を選択する場合、作業者は、長孔204aに位置する数字が「1」になるように、速度ダイヤル216を回動させる。位置検出部228は、速度ダイヤル216が回動すると、その回動位置を検出し、設定機構227に信号を出力する。設定機構227は、位置検出部228からの信号に基づき、速度ダイヤル216の選択値「1」を検出して、回転速度「1」を設定し、制御部223に信号を出力する。
ギヤハウジング205は、モータハウジング203の前側に上下方向に延びるように形成されており、その内部には運動変換機構206と、プランジャ207とを備えている。また、ギヤハウジング205の上側であってハンドルハウジング204の下側には、回転速度「3」以下の低回転速度での速度制御を報知するための図示せぬLEDが設けられる。更に、ギヤハウジング205の下側にはベース201が取付けられる。
運動変換機構206は、支持軸261と、ギヤ部262と、係合ピン263とを備えている。支持軸261は、ギヤハウジング205内部の上下方向略中央に前後方向に延びるように設けられている。ギヤ部262は、支持軸261によってギヤハウジング205に回転可能に支承されている。係合ピン263は、ギヤ部262と共に支持軸261を中心に回転する。係合ピン263は、モータ209の回転軸209aと異軸且つ平行な状態で前方に向けて突出している。
プランジャ207は、略円柱形状をなし、モータ209の回転軸209aと直交する方向、すなわち上下方向に延び、本体2に上下方向に往復動可能に支持されている。プランジャ207は、ピン受け部207A及びブレード保持部207Bを備えている。
ピン受け部207Aは、プランジャ207の上下方向略中央に設けられ、側面視略コ字状をなし、コ字状の開口が後方を向くように配置されている。ピン受け部207Aは、左右方向(図16の紙面表裏方向)に延出していて、係合ピン263が挿入されている。係合ピン263は、ピン受け部207Aの溝内で左右方向の動きは許容され、上下方向の動きが規制されているため、ピン受け部207Aは係合ピン263の動きに応じて上下動のみを行う。これにより、運動変換機構206は、モータ9の回転軸209aの回転運動を上下動に変換することができる。
ブレード保持部207Bは、プランジャ207の下端部に設けられ、ブレード208を着脱可能に保持している。
ブレード208は、ブレード保持部207Bに保持され、ベース201の底面から下方に突出する。ブレード208の前部には、上下方向に延びた刃部208Aが形成されている。ブレード208は、本発明の切断刃に相当する。
続いて、本実施の形態に係るジグソー200の動作について、図17に基づき説明する。図17は、第4の実施の形態に係るジグソー200の動作を示すフローチャートである。
図17に示されるフローチャートは、メイントリガスイッチ218がオンされたことを契機に開始され、オフされると終了する。メイントリガスイッチ218がオンされると、制御部223は、設定機構227からの信号に基づき、速度ダイヤル216の選択値が「3」より大きいか否かを判断する(ステップS301)。
選択値が「1」、「2」、「3」の何れかである場合(ステップS301:No)、制御部223は、選択値に対応する回転速度を設定回転速度として、モータ209の速度制御を行う(ステップS310)。
選択値が「4」、「5」、「6」の何れかである場合(ステップS301:Yes)、制御部223は、加速度センサからの出力に基づき、本体202の姿勢が不安定であるか否かを判定する(ステップS302)。
本体202の姿勢が不安定ではないと判定した場合(ステップS302:No)、制御部223は、選択値に対応する回転速度を設定回転速度として、モータ209の速度制御を行う(ステップS310)。
本体202の姿勢が不安定であると判定した場合(ステップS302:Yes)、制御部223は、図示せぬLEDを点灯させる(ステップS303)。また、制御部223は、「3」に対応する回転速度を設定回転速度として、モータ209の速度制御を行う(ステップS304)。
LEDを点灯させてモータ209の速度制御中に、作業者により速度ダイヤル216が操作され、選択値が変更されると(ステップS305:Yes)、制御部223は、LEDを消灯する(ステップS306)。
続いて、制御部223は、選択値に対応する回転速度と回転速度との差が予め設定された閾値より大きいか否かを判断する(ステップS307)。
閾値よりも大きいと判断された場合(ステップS307:Yes)、制御部223は、回転速度を徐々に上昇させるソフト立上げを行う(ステップS308)。そして、選択された回転速度に達すると、当該回転速度を設定回転速度として、モータ209の速度制御を行う(ステップS309)。
ステップS307において閾値以下であると判断された場合(ステップS307:No)、制御部223は、ソフト立上げを行うことなく、選択された回転速度を設定回転速度として、モータ209の速度制御を行う(ステップS309)。
上記のように、モータ209の駆動開始時に速度ダイヤル216の選択値が4以上である場合にのみ、本体202の姿勢の判定が行われ、姿勢が不安定であると判定された場合には、低回転速度での速度制御が実施される。また、駆動中に速度ダイヤル216の選択値が変更された場合には、低回転速度での速度制御は解除され、速度ダイヤル216の選択値に応じた速度制御に切り替えられる。
図18は、速度ダイヤル216の選択値及びモータ209の設定回転速度の相関を示す説明図である。本体202の姿勢が不安定ではないと判定された場合、モータ209の設定回転速度は、破線で示されるように、選択値が大きくなるにつれて大きく、すなわち高速となる。一方、本体202の姿勢が不安定であると判定された場合、実線で示されるように、選択値が「1」から「3」までは、選択値に応じた回転速度が設定されるが、選択値が「4」以上になると、選択値「3」に対応する回転速度に固定されることとなる。
以上のように、第4の実施の形態に係るジグソーでは、モータ209の駆動開始時にのみ、本体202の姿勢の判定が行われるので、ブレード208の駆動に伴い本体202が振動する場合も、姿勢の誤判定に基づく意図せぬ回転速度への切り替えが発生することを防止可能となる。また、姿勢が不安定であると判定された場合には、回転速度が「3」に設定されるので、不安定な体勢における高速での切断作業の開始を防止可能となり、切断面の歪みの発生等を防止して、良好な作業性の確保が可能となる。また、姿勢の判定は、速度ダイヤル216の選択値が「4」以上の場合にのみ実施されるので、回転速度を変更する必要のない低回転速度の設定時には、不要な判定動作を行なわず、円滑な作業の開始が可能となる。
更に、姿勢が不安定であると判定され、低回転速度での速度制御中は、LEDが点灯されるので、作業者への報知が可能となり利便性が向上される。また低回転速度での速度制御中に、作業者の操作により速度ダイヤル216の選択値が変更された場合には、低回転速度での速度制御は解除され、選択値に応じた回転速度に設定が変更されるので、切断作業中に不安定な姿勢が改善された場合、モータ209の駆動をオフせずとも、作業状況に応じて回転速度を高速に変更することが可能となるので、利便性が向上される。
以上、本発明の実施の形態に基づき説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
また、上記した実施の形態では、不安定な姿勢であると判断した場合には、自動的に制御モードや回転速度を切り替える制御を行っているが、本発明はこれに限定されない。例えば、加速度センサからの出力に基づき、不安定な姿勢が解除されたことを検知した場合には、定デューティ制御や高回転速度に制御を変更するようにしても良い。この場合、モータの回転速度が変動を繰り返さないように、不安定な姿勢の解除が所定時間連続して検出された場合にのみ、モードの変更を切り替えることが望ましい。
また、上記した実施の形態では、不安定な姿勢の場合は低回転速度での定速度制御を行っているが、本発明はこれに限定されない。例えば、不安定な姿勢が検出された場合はモータに供給する駆動電力のデューティ比を低く設定し、不安定でない場合はデューティ比を高く変更するようにしても良い。