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JP2016069072A - 輸液用包装材料及びそれよりなる輸液バッグ、並びにその製造方法 - Google Patents

輸液用包装材料及びそれよりなる輸液バッグ、並びにその製造方法 Download PDF

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JP2016069072A JP2014203605A JP2014203605A JP2016069072A JP 2016069072 A JP2016069072 A JP 2016069072A JP 2014203605 A JP2014203605 A JP 2014203605A JP 2014203605 A JP2014203605 A JP 2014203605A JP 2016069072 A JP2016069072 A JP 2016069072A
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Abstract

【課題】 透明性、ガスバリア性及びレトルト適性を保持し、且つ、低溶出性に優れ、さらには、高い層間接着強度を示し、加熱殺菌処理後もこれを維持してデラミネーションの発生が防止される輸液用包装材料、及びそれよりなる輸液バッグ、並びにその製造方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも、透明ガスバリア性フィルム層、接着層およびヒートシール性樹脂層をこの順に有し、該接着層は、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物からなることを特徴とする輸液用包装材料。
【選択図】図1

Description

本発明は、輸液用包装材料及びそれよりなる輸液バッグ、並びにその製造方法に関し、より詳細には、高い層間接着強度及び低溶出性を示し、加熱殺菌処理後もこれを維持する輸液用包装材料及びそれよりなる輸液バッグ、並びにその製造方法に関するものである。
従来、医薬品、飲食品、化成品等を充填包装する包装材料としては、内容物の変質や変色を防止し、且つ、内容物の状態を視認するために、酸素ガスや水蒸気の透過を遮断する種々の透明ガスバリア性包装材料が開発され、提案されている。
このような透明ガスバリア性包装材料としては、透明ガスバリア性フィルムとヒートシール性樹脂フィルムとを、ドライラミネート用接着剤を介して積層した透明ガスバリア性包装材料がある(特許文献1、特許文献2)。これらの包装材料は、温度80〜135℃、圧力1〜3Paの高温高圧下で行われるレトルト殺菌処理に付されると、包装材料中に含まれる低分子量成分や残留溶媒等が溶出し、内容物を汚染するという問題がある。
したがって、特に、リンゲル液や輸血液等の輸液を包装するためには、ガスバリア性を有しない透明プラスチックフィルムからなる輸液バッグ中に輸液を1次包装し、これを、透明ガスバリア性包装材料からなる外装袋で2次包装することが行われている。
しかしながら、このような包装は、容器を2つ使用するため、包装工程及び開封作業が煩雑となり、また使用後の廃棄量も増加する。そのため、1次包装のみで、透明性、ガスバリア性及びレトルト適性が確保され、且つ、包装材料から残留溶媒等の溶出が抑制され、すなわち低溶出性に優れ、内容物である輸液の汚染を回避し得る輸液用包装材料の開発が望まれる。
特開平10−722号公報 特開2004−106443号公報
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、透明性、ガスバリア性及びレトルト適性を保持し、且つ、包装材料から残留溶媒等が溶出せず、すなわち低溶出性に優れ、さらには、高い層間接着強度を示し、加熱殺菌処理後もこれを維持してデラミネーションの発生が防止される輸液用包装材料、及びそれよりなる輸液バッグ、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、種々研究の結果、少なくとも、透明ガスバリア性フィルム層、接着層およびヒートシール性樹脂層をこの順に有し、該接着層は、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物からなることを特徴とする輸液用包装材料が、上記の目的を達成することを見出した。
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
(1)少なくとも、透明ガスバリア性フィルム層、接着層およびヒートシール性樹脂層をこの順に有し、該接着層は、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物からなることを特徴とする、輸液用包装材料。
(2)前記透明ガスバリア性フィルム層が、プラスチックフィルム上に酸化珪素蒸着膜を
設けてなる蒸着フィルムからなる層であることを特徴とする、上記(1)に記載の輸液用包装材料。
(3)前記蒸着フィルムが、前記酸化珪素蒸着膜上に、さらに、ガスバリア性塗布膜を設けてなり、該ガスバリア性塗布膜は、一般式R1 nM(OR2m(式中、Mは金属原子を表し、R1、R2は炭素数1〜8の有機基を表し、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ならびに、ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールを含んでなる組成物を、ゾルゲル法によって重縮合して得るアルコキシドの加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物であることを特徴とする、上記(2)に記載の輸液用包装材料。(4)前記接着性樹脂組成物における不飽和カルボン酸成分量が、0.05質量%以上、1.0質量%未満であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の輸液用包装材料。
(5)前記接着性樹脂組成物における(メタ)アクリル酸エステル成分量が、5〜40質量%であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の輸液用包装材料。(6)前記ヒートシール性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂からなる層であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の輸液用包装材料。
(7)前記ヒートシール性樹脂層が、水冷式インフレーション法により製膜したポリプロピレン系樹脂フィルムからなる層であることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の輸液用包装材料。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の輸液用包装材料を、そのヒートシール性樹脂層同士が対向するように重ねあわせ、その端部をヒートシールしてなる輸液バッグであって、保存のための外装袋を必要としないことを特徴とする輸液バッグ。
(9)加熱殺菌処理前の層間接着強度に対して、110℃で30分間加熱殺菌処理した後の層間接着強度が、60%以上、さらに好ましくは70%以上保持されることを特徴とする、上記(8)に記載の輸液バッグ。
(10)加熱殺菌処理前の層間接着強度に対して、121℃で30分間加熱殺菌処理した後の層間接着強度が、60%以上、さらに好ましくは70%以上保持されることを特徴とする、上記(8)または(9)に記載の輸液バッグ。
(11)日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法の溶出物試験の規格を満たすことを特徴とする、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の輸液バッグ。
(12)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の輸液用包装材料の製造方法であって、透明ガスバリア性フィルム層と、ヒートシール性樹脂層とを、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む溶融した接着性樹脂組成物を介して、サンドイッチラミネート法によって積層することを特徴とする、上記製造方法。
本発明の輸液用包装材料は、透明性、ガスバリア性及びレトルト適性を有しながら、優れた低溶出性を示し、且つ、極めて高い層間接着強度を達成することができる。さらに、本発明の輸液用包装材料は、ボイル処理またはレトルト処理等の加熱殺菌処理に付した後も、高い層間接着強度を維持することができ、デラミネーションを起こさない。したがって、本発明の包装材料は、高い低溶出性及び層間接着強度が要求される輸液用包装容器等として好適に用いることができる。
本発明の輸液用包装材料の層構成の一例を示した模式断面図である。 本発明の輸液用包装材料の層構成の他の例を示した模式断面図である。 本発明の輸液用包装材料の層構成の他の例を示した模式断面図である。
本発明について以下に更に詳しく説明する。以下、本発明において使用される樹脂名は
、業界において慣用されるものが用いられる。
<1>本発明の輸液用包装材料の層構成
本発明の輸液用包装材料について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜3は、本発明の輸液用包装材料の層構成の一例を示す概略的断面図である。
本発明の輸液用包装材料は、図1に示すように、透明ガスバリア性フィルム層1とヒートシール性樹脂層3とを、接着層2を介して積層してなる構成を基本構造とするものである。ここで、接着層2は、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物からなる層である。
本発明の包装材料において、透明ガスバリア性フィルム層1は、単層であっても複層であってもよい。例えば、プラスチックフィルム4上に酸化珪素蒸着膜5を設けた蒸着フィルムからなる層であってよい。また、図2に示すように、酸化珪素蒸着膜5上にさらにガスバリア性塗布膜6を設けてもよい。
さらに、図3に示すように、本発明の輸液用包装材料において、ヒートシール性樹脂層3は、インフレーション法により製膜されたチューブ状であってもよい。このチューブ状ヒートシール性樹脂フィルムを用いて、本発明の包装材料を積層するには、まず、インフレーション法で作製したチューブ状ヒートシール性樹脂フィルムを平面状に押しつぶし、該押しつぶされたチューブ状ヒートシール性樹脂フィルムの両外面に、接着層2を介して透明ガスバリア性フィルム層1を積層する。チューブ状ヒートシール性フィルムを用いて製造される本発明の包装材料は、チューブ内面に微生物等の汚染や異物の付着・混入がないため、衛生性に優れる。
本発明の包装材料は、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物を、透明ガスバリア性フィルム層1と、ヒートシール性樹脂層3を構成するフィルムとの間に、溶融押出することにより、すなわちサンドイッチラミネート法により積層することができる。
あるいは、溶融したアルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物を、透明ガスバリア性フィルム層1を構成するフィルム上に、溶融したヒートシール性樹脂と共に、共押出コーティングすることによって積層してもよい。
適宜必要に応じて、透明ガスバリア性フィルム層1の外側に、印刷層や補強層等のさらなる層を設けることもできる。
次に、本発明の積層体を構成する材料等について説明する。
<2>透明ガスバリア性フィルム層
本発明の包装材料において、基材層として、透明ガスバリア性フィルムが用いられる。なお、本発明において、透明であるとは、内容物である輸液の状態等を確認するのに十分な透明性を有する必要があり、無色または有色で透明なものも含まれるが、例えば、JIS−K6714に準拠した操作により測定されるヘイズ値が15以下、より好ましくは13以下であり、かつ、可視光域380〜780nmにおける平均光透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上ある場合を言う。なお、光透過率の測定は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いる。
本発明において使用される透明ガスバリア性フィルムは、輸液用包装材料として好適には、例えば、酸素透過率が1.3cc/m2/day・atm以下、さらに好ましくは1cc/m2/day・atm以下であり、水蒸気透過率が1g/m2/day以下、さらに好ましくは0.9g/m2/day以下である。なお、本願において、酸素透過率は、JIS
K7126 等圧法に準拠して、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製 OX−T
RAN 2/20)を用いて、温度23℃、湿度90%RHの条件で測定される値である。また、水蒸気透過率は、JIS K7129 B法に準拠して、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN−W 3/31)を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される値である。
このような透明ガスバリア性フィルムとしては、酸化珪素蒸着フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、MXD6フィルム、またはこれらを2層以上積層した多層フィルム等が挙げられる。多層フィルムである場合、各層は、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。ただし、透明ガスバリア性フィルムとして、アルミニウムを使用するフィルム、例えば酸化アルミニウム蒸着フィルムは、アルミニウムの溶出によるアルツハイマー発症の危険性も懸念されるため、本発明において使用するのは好ましくない。
通常、基材層を形成する透明ガスバリア性フィルムの厚さは、ガスバリア性や透明性の観点から、好ましくは0.01〜500μmであり、より好ましくは1〜300μmの範囲である。そして、この透明ガスバリア性フィルムは、その少なくともいずれかの表面に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の濡れ性を高める表面処理を行ってもよい。
優れたガスバリア性及び透明性を有し、且つ、後述の本発明の接着性樹脂組成物と高い層間接着強度を発揮することから、本発明においては、プラスチックフィルム上に酸化珪素の蒸着膜を設けてなる蒸着フィルムが特に好適に使用される。
蒸着フィルムを形成するプラスチックフィルムとしては、化学的ないし物理的強度に優れ、蒸着膜を形成する条件等に耐え、蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持できるプラスチックフィルムを使用することができる。
このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム等の各種の樹脂からなるフィルムないしシートを使用することができる。
プラスチックフィルムは、蒸着膜を設ける前に、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガスなどを用いて低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品などを用いて処理する酸化処理等の前処理を任意に施すことができる。また、上記表面前処理は、プラスチックフィルムと蒸着膜との密着性を改善するための方法として実施するものであるが、上記の密着性を改善する方法として、例えば、プラスチックフィルムの表面に、あらかじめ、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、あるいは、アンカーコート剤層等を任意に形成することもできる。
蒸着膜を形成する材料としては、透明性、ガスバリア性、生産効率及び接着層との接着強度の観点から、酸化珪素が好適に用いられる。
蒸着膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等の製膜法が挙げられる。
また、蒸着膜は、1回の蒸着工程により形成される単層からなっていてもよく、又は蒸着工程を複数回繰り返すことにより形成される多層構造であってもよい。
蒸着膜の層厚としては、層全体の厚さとして、1〜200nm、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは1〜30nmの範囲で適宜設定することができる。この範囲であれば、良好なフレキシビリティ性が得られ、製膜後に折り曲げ、引っ張り等の外力でも、蒸着膜に亀裂を生じにくく、透明性が低下しにくい。また
、材料自身の応力が大きくなったり、着色したりすることを防ぐことができる。
以下、本発明の好ましい態様として、酸化珪素の蒸着膜についてさらに詳細に説明する。酸化珪素の蒸着膜(薄膜)は、一般式:SiOx(式中、xは、0〜2の数を表す)で表され、xの値は1.3〜1.9が好ましい。また、酸化珪素薄膜は、酸化珪素を主体とし、さらに、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有してもよい。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。上記の化合物が酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。また、酸化珪素薄膜が上記化合物を含有する場合、化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。
これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、プラスチックフィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないためにプラスチックフィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
上記のような炭素を含有する酸化珪素の蒸着膜を形成する場合に、原料として使用される有機珪素化合物としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を使用することができる。
本発明においては、上記蒸着膜上に、さらに以下で説明するようなガスバリア性塗布膜を設けることによって、一層優れたガスバリア性が得られるだけでなく、後述の接着層との密接着性が高まる。
本発明において、ガスバリア性塗布膜とは、アルコキシドと水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布し乾燥させた膜である。
該ガスバリア性組成物において用いるアルコキシドとしては、一般式R1 nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドを挙げることができる。
また、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂若しくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれか又はその両方を好ましく用いることができる。
本発明において、一般式R1 nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、金属原子Mとして、珪素、ジルコニウム、チタン等を使用することができる。また、本発明において、単独又は二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うことができる。
また、上記の一般式R1 nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基その他のアルキル基を挙げることができる。
また、上記の一般式R1 nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基その他を挙げることができる。
尚、本発明において、同一分子中において、これらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
本発明において、上記の一般式R1 nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、例えば、MがSiであるアルコキシシランを使用することができ、アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン Si(OCH34、テトラエトキシシラン Si(OC254、テトラプロポキシシラン Si(OC374、テトラブトキシシラン Si(OC494等が挙げられる。
また、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であることが好ましい。上記の範囲であれば、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性及び耐侯性について、良好な性質が得られる。
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂として、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製PVA110(ケン化度=98〜99%、重合度=1100)、PVA117(ケン化度=98〜99%、重合度=1700)、PVA124(ケン化度=98〜99%、重合度=2400)、PVA135H(ケン化度=99.7%以上、重合度=3500)、同社製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1400)及びゴーセノールNH−18(ケン化度=98〜99%、重合度=1700)等を使用することができる。
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。このようなケン化物には、酢酸基が数十モル%残存する部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないか又は酢酸基が全く残存していない完全ケン化物までが包含される。特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、ケン化度が80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であるものを使用することが望ましい。また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%であるものを使用することが好ましい。
上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
本発明において、本発明に係るガスバリア性塗布膜を形成するガスバリア性組成物を調製するには、シランカップリング剤等も添加することができる。好適に用いられるシランカップリング剤としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−
イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
本発明において用いられるガスバリア性組成物は、アルコキシドと水溶性高分子とを、酸、水及び有機溶剤の存在下で、ゾルゲル法によって加水分解及び、重縮合することにより調製することができる。
ガスバリア性塗布膜は、ガスバリア性組成物を上記蒸着膜の上に塗布し、20〜200℃、好ましくは140℃以上、且つ基材層を構成するプラスチックフィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理することにより形成することができる。
また、上記のガスバリア性組成物の調製において用いられる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、並びに酢酸、酒石酸等の有機酸その他を使用することができる。更に、有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等を用いることができる。
更に、上記のガスバリア性組成物に関して、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤等を含む塗工液中で溶解した状態にあることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択される。本発明において、溶剤中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(日本合成化学社製)として市販されているものを使用することができる。
上記のガスバリア性組成物を、蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、透明なガスバリア性塗布膜が形成される。
更に、加水分解によって生じた水酸基や、シランカップリング剤由来のシラノール基が蒸着膜の表面の水酸基と結合する為、該蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密接着性等が良好なものとなる。
上述のように形成されることにより、本発明のガスバリア性塗布膜は、結晶性を有する直鎖状ポリマーを含み、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造を取る。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高いため、良好なガスバリア性を示す。
本発明においては、蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合による化学結合、水素結合、或いは、配位結合等を形成し、これら2層間の密着性が向上し、相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得るものである。
本発明において、上記のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、ディッピング、刷毛、バーコート、アプリケータ等の塗布手段により、1回或いは複数回の塗布で、乾燥膜厚が0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μmのガスバリア性塗布膜を形成することができる。乾燥膜厚が100μmを超えると、クラックが発生し易い。
また、本発明において、より高いガスバリア性を得るために、ガスバリア性塗布膜を設けた後で、さらに蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを、この順序で、交互に1回又はそれ以上繰り返し積層し、好ましくはガスバリア性塗布膜が最外層となるように形成して、透明ガスバリア性フィルムとしてもよい。
<3>接着層
本発明において、上記透明ガスバリア性フィルム層と、ヒートシール性樹脂層との間に位置する接着層は、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物(以下「本発明の接着性樹脂組成物」と呼ぶ)からなる。
この本発明の接着性樹脂組成物は、押出コーティング法によって透明ガスバリア性フィルム層上に積層することにより、これらと高い層間接着強度を示す。ここで、透明ガスバリア性フィルム層は、上述のいかなる材料からなるものであってよく、例えば蒸着フィルムや各種ガスバリア性樹脂からなるフィルムであってよい。
特に、酸化珪素の蒸着膜からなる表面や、上述のガスバリア性塗布膜からなる表面上に、本発明の接着性樹脂組成物を押出コーティングすることによって、極めて高い層間接着強度が発揮され、且つ、加熱殺菌処理後も高い層間接着強度が維持される。
上記本発明の接着性樹脂組成物は、カルボキシル基等の官能基を有することにより、透明ガスバリア性フィルム層の表面及びヒートシール性樹脂層の表面の反応基と化学的に結合し、層間のラミネート強度を向上させることができる。
本発明においては、透明ガスバリア性フィルム層上に、通常の押出コーティングの際に予め設けられるアンカーコート剤層等を必ずしも必要としない。また、本発明の接着性樹脂組成物は、有機溶媒を含有しない。したがって、本願発明によれば、アンカーコート剤や有機溶媒に由来する、残留溶媒や低分子量物質の溶出を防ぐことができる。また、接着層の経時劣化によるラミネート強度の低下という問題がなく、多種多様な用途に適用することができる。特に、本発明の接着性樹脂組成物は、耐熱性に優れ、高温高圧下で加熱殺菌処理に付した後も高いラミネート強度を長期にわたって維持することができ、さらに、耐内容物性に優れ、内容物の浸食による接着層の劣化を防ぐことができるため、輸液バッグとして、好適に使用することができる。
本発明の接着性樹脂組成物は、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体のみからなるものであってよい。
別の態様において、本発明の接着性樹脂組成物は、上記三元共重合体に加えてさらに、所望に応じて、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の改質用樹脂等を含むことができる。ただし、組成物中の不飽和カルボン酸成分量及び(メタ)アクリル酸エステル成分量は、後述の規定の範囲内となるように調整する。
上記三元共重合体の製造において、コモノマーとなるアルケンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン等が挙げられ、特に、エチレン及びプロピレン等のαオレフィンが好適に使用される。
また、コモノマーとなる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸エチル−2−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが好ましく、より好ましくはアクリル酸メチルである。
また、コモノマーとなる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、これらの誘導体、例えばこれらの酸無水物、エステル、アミド、イミド等、例えばマレイン酸モノメチル、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。特に、不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等を好適に使用することができる。これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
上記三元共重合体は、上記アルケン、(メタ)アクリル酸エステル、及び不飽和カルボン酸がグラフト重合または三元共重合されているものである。三元共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外のコモノマーを含んでいてもよい。例えば、エチレン
−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸の三元共重合体樹脂を好適に使用することができる。
本発明において、吸湿性を抑えて良好なハンドリングを得るために、各成分の好適な配合比としては、接着性樹脂組成物の全質量に対して、(メタ)アクリル酸エステル由来成分(残基)が5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。
また、不飽和カルボン酸由来成分(残基)が0.05〜3.0質量%、より好ましくは0.05〜1.0質量%未満含まれているものであり、残りがアルケン由来成分(残基)、及び改質用樹脂等となっているものである。
本発明の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物における不飽和カルボン酸成分量が上記範囲より多いと、積層体の酸含有量が多くなるため、吸湿性が高くなり、押出コーティング時に発泡する可能性がある。また、接着層から不飽和カルボン酸の残留モノマーが溶出するため、衛生性が懸念される。さらに、耐屈曲性に劣る。またさらに、金属に対する腐食性が強いため、製造工程において問題が生じやすい。
また、不飽和カルボン酸成分量が少なすぎると、透明ガスバリア性フィルムやヒートシール性樹脂との化学的相互作用が発生しにくくなるため、層間接着強度の低下を引き起こし得る。
(メタ)アクリル酸エステル由来成分の含有量が上記範囲より多い場合は、樹脂自体が液状化しやすく、ハンドリングが悪くなる。また、(メタ)アクリル酸エステル由来成分の含有量が上記範囲より少ない場合は、アクリレートの反応による接着が発生しにくくなり、ポリプロピレンやPET等からなる層との接着強度が低下する。
本発明の接着性樹脂組成物のMFRは、190℃において3〜100g/10分であることが好ましく、より好ましくは5〜20g/10分である。MFRが上記範囲外では、押出が困難になる問題がある。
また、接着性樹脂組成物からなる接着層の厚みは、0.1〜200μmであることが好ましく、より好ましくは1〜100μmである。上記範囲より薄い膜厚では容易に押し出すことが困難であり、かつ接着力が発揮されない。範囲より厚い膜厚である場合は、接着強度などの問題は解決されるが過剰に樹脂を使用することによる包材コストの上昇をまねく。
本発明の接着性樹脂組成物からなる接着層の接着機構としては、接着性樹脂組成物の柔軟性で接着する機構、樹脂との相溶化で接着する機構、相手基材表面と不飽和カルボン酸との化学的相互作用で接着する機構、相手基材表面に対する不飽和カルボン酸とアクリレートの化学的相互作用により接着する機構、及び、高温で押出することによるラジカル発生により接着する機構がある。
本発明の接着性樹脂組成物からなる接着層は、必ずしも一つの接着機構で接着しているわけではなく、上記反応を少なくとも2つ以上利用して接着をしている。例えば、ポリエチレンやエチレンコポリマー等に対しては、主にアルケン部分に起因する相溶性が結合に寄与する。また、ガスバリア性フィルムの蒸着膜や金属に対しては、不飽和カルボン酸と相手基材との極性基間の反応が結合に寄与する。また、ポリプロピレンまたはPETからなる層に対しては、アクリレートと不飽和カルボン酸との化学的相互作用が結合に寄与する。
本発明において、接着層は、本発明の接着性樹脂組成物からなる層と、ヒートシール性樹脂層とを、透明ガスバリア性フィルム層上に、この順に共押出コーティングしてなる層であってもよい。この順に、すなわち、本発明の接着性樹脂組成物からなる層を介して、
透明ガスバリア性フィルム層とヒートシール性樹脂層とを積層することにより、高い層間接着強度が得られる。
<4>ヒートシール性樹脂層
本発明のヒートシール性樹脂層は、熱によって溶融し相互に融着し得るヒートシール性樹脂からなる層である。
本発明において好適に使用されるヒートシール性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)等の1種ないしそれ以上からなる樹脂を挙げることができる。
これらのヒートシール性樹脂からなるフィルムないしシートを使用し、所望に応じて、その表面にコロナ処理、フレーム処理、オゾン処理等を施してもよい。
ヒートシール性樹脂層の厚みは特に限定されないが、好ましくは5〜500μm、より好ましくは10〜250μmである。5μmより薄いと、ヒートシールしても充分なラミネート強度が得られず、包装容器として機能しない。500μmより厚いと、コスト高になるとともに、フィルムが硬くなり作業性が悪くなる。
特に、輸液バッグに求められる高い透明性を得るために、水冷インフレーションで作製したヒートシール性樹脂フィルム、特にポリプロピレン系樹脂フィルムを用いることが好ましい。水冷式インフレーション法によって、インフレーション工程において管状に成形された溶融樹脂(いわゆるバブル)の外面を、冷却水により冷却固化させることにより、溶融樹脂を素早く冷却固化させることができる。これにより、膜厚が厚い場合であっても、高い透明性を有するヒートシール性樹脂フィルムを製造することができる。
また、衛生性を高めるためには、インフレーション法で成膜したチューブ状のヒートシール性樹脂フィルムを用いて、これを平面状に押しつぶし、該押しつぶされたチューブ状のヒートシール性樹脂フィルムの両外面上に、接着層を介して透明ガスバリア性フィルムをラミネートしてもよい。これにより、内容物を充填するまで、チューブ内面の衛生性を保持することができる。
特に、透明性及び衛生性に関して厳しい制限のある輸液バッグ用途に適用するために、水冷インフレーションで作製したポリプロピレンまたはポリエチレンチューブフィルムを用いることが好ましい。
<5>補強層
本発明の包装材料において、任意の位置、例えば透明ガスバリア性フィルム層の外側等に、所望に応じて補強層等の更なる層を設けることができる。
補強層は、所望の物理的及び化学的特性を付与する任意の機能層であってよい。例えば、積層体の柔軟性、強靭性、屈曲性および耐突き刺し性を向上させるために、2軸延伸ナイロンフィルムやポリアミド系樹脂からなる層を補強層として設けることができる。ここで好適に使用されるポリアミド系樹脂としては、メタキシリデンジアジパミド(MXD−6)系ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等が挙げられる。
<6>積層
上記透明ガスバリア性フィルム層とヒートシール性樹脂層を積層することにより、本発
明の輸液用包装材料が得られる。
透明ガスバリア性フィルム層とヒートシール性樹脂層とは、本発明の接着性樹脂組成物を介して、サンドイッチラミネートすることにより積層される。
本発明の接着性樹脂組成物を介するサンドイッチラミネートは、ラミネートするフィルムのそれぞれを一定速度で繰り出し、繰り出されるフィルムの間に、加熱溶融された本発明の接着性樹脂組成物を薄膜状に押し出して、冷却ロールや圧着ロール等を用いてフィルムを貼り合わせることにより行われる。
別の態様において、基材層またはバリア層を構成するフィルム上に、本願発明の接着性樹脂組成物と、ヒートシール性樹脂とを、共押出コーティング法によって積層してもよい。
本発明の接着性樹脂組成物は、フィルムの積層面に対して高い結合力を発揮するため、積層面に予めアンカーコート剤を塗布する必要がない。必要に応じて、フィルムの積層面に予め表面処理、例えばコロナ処理等を施してもよい。
本発明の接着性樹脂組成物の押出温度は、280〜330℃、より好ましくは290〜320℃の範囲である。樹脂温度が280℃より低いと、接着層においてラジカルの発生が起きづらく、十分な層間接着強度が発揮されない。また、330℃より高いと、三元共重合体の熱分解が発生してくるために、十分な層間接着強度が得られないため好ましくない。
ヒートシール性樹脂層として、チューブ状のヒートシール性樹脂フィルムを使用する場合は、インフレーション法により製膜したチューブ状のヒートシール性樹脂フィルムを平面状に押しつぶし、この両外面に、透明ガスバリア性フィルムを、接着層を介してサンドイッチラミネートする。
上記の製造方法により得られる包装材料は、ヒートシール性樹脂フィルムの製膜時から、製袋を完了するまで、チューブの内面となるヒートシール面を外気に晒すことがない。したがって、微生物等の汚染や異物の付着を防止することができ、衛生性に優れるものである。また、外観、バリア性、生産性、コストパフォーマンス等に優れるものである。
上記のように製造した本発明の包装材料を、そのヒートシール性樹脂層同士が対向するように重ねあわせ、その端部をヒートシールしてシール部を設けることにより、輸液バッグを製造することができる。
本発明の包装材料からなる輸液バッグは、上記構成により、加熱加圧条件下での耐層間剥離性等の耐熱性に優れる。このため、温度80〜135℃、圧力1〜3Paで60分間程度もの殺菌工程に付しても、高い層間接着強度を維持し、デラミネーションの発生が防止される。
また、本発明の包装材料は、ガスバリア性を有しながら、低溶出性に優れ、包装材料から内容物中への低分子量物質や残留溶剤等の溶出が防止される。したがって、本発明の包装材料からなる輸液バッグは、輸液を充填包装後に、ガスバリア性を有する輸液バッグ外装袋でさらに包装する必要がない。
次に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
片面をコロナ処理した厚さ12μmの2軸延伸PETフィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、そのコロナ処理面に、有機珪素化合物であるヘキサメチルジシロキサンを原料として、厚さ200nmの酸化珪素蒸着膜を形成した。次いで、この蒸着膜面にプラズマ処理を行った。
一方、下記の表1に示す組成に従って、組成a.のEVOH(エチレン共重合比率29%)をイソプロピルアルコール及びイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に
、予め調整した組成b.のエチルシリケート40、イソプロピルアルコール、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて撹拌し、更に予め調整した組成c.のポリビニルアルコール水溶液、シランカップリング剤(エポキシシリカSH6040)、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液を加えて撹拌し、無色透明のバリア塗工液を得た。
Figure 2016069072
次に、蒸着膜面上のプラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性組成物をコーティングし、100℃で30秒間加熱処理して、厚さ0.4g/m2 (乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成した。
次に、上記で形成した透明ガスバリア性フィルムを押出ラミネート機にセットし、そのガスバリア性塗布膜の面に、ダイスから、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸三元共重合体からなる接着性樹脂組成物(アルケマ(株)製Lotader(R)4503、無水マレイン酸成分量:0.3質量%、アクリル酸メチル成分量:19質量%)を、310℃で厚さ20μmとなるように溶融押出し、それと同時に厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを繰り出し、サンドイッチラミネートにより積層した。得られた本発明の包装材料を、55℃で3日間エージングして、後述の試験に用いた。
[実施例2]
ヒートシール性樹脂層として、LLDPEフィルムの代わりに、片面をコロナ処理した厚さ70μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レフィルム加工(株)製Z
K99S)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の包装材料を得た。
[実施例3]
実施例1と同様に作製した透明ガスバリア性フィルムを、押出タンデムラミネート機の1次給紙部及び3次給紙部にセットし、水冷インフレーションで作製して平面状に押し潰したチューブ状のCPPフィルム(押し潰した状態の厚さ320μm)を2次給紙部にセットした。
次いで、ダイス1から、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸三元共重合体からなる接着性樹脂組成物(アルケマ(株)製Lotader(R)4503)を310℃で厚さ20μmとなるように溶融押出し、透明ガスバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜の面と、平面状に押し潰したCPPチューブフィルムの片面とをサンドイッチラミネートにより積層した。
次いで、得られた積層フィルムにおける、CPPチューブフィルムの非ラミネート面上に、ダイス2から、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸三元共重合体からなる接着性樹脂組成物(アルケマ(株)製Lotader(R)4503)を310℃で厚さ20μmとなるように溶融押出し、それと同時に3次給紙部から透明ガスバリア性フィルムを繰り出し、サンドイッチラミネートにより積層した。得られたチューブ状の本発明の包装材料を、55℃で3日間エージングして、後述の試験に用いた。
[実施例4]
ヒートシール性樹脂層として、チューブ状のCPPフィルムの代わりに、チューブ状の低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム(押し潰した状態の厚さ440μm)を用いた以外は、実施例3と同様にして、本発明の包装材料を得た。
[実施例5]
接着性樹脂組成物として、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸三元共重合体(アルケマ(株)製Lotader(R)4503)を、エチレン−アクリル酸メチル(アルケマ(株)LOTRYL 18MA02、アクリル酸メチル成分量18質量%で3.75倍希釈して、接着性樹脂組成物中の不飽和カルボン酸成分量を0.08質量%、アクリル酸エステル成分量を19質量%とした接着性樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の包装材料を得た。
[実施例6]
接着性樹脂組成物として、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸三元共重合体(アルケマ(株)製Lotader(R)4210、不飽和カルボン酸3.6質量%、アクリル酸エステル成分量4.5質量%)を、エチレン−アクリル酸メチル(アルケマ(株)LOTRYL 18MA02)で4.5倍希釈して、接着性樹脂組成物中の不飽和カルボン酸成分量を0.8質量%、アクリル酸エステル成分量を15質量%とした接着性樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の包装材料を得た。
[比較例1]
積層方法として、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸三元共重合体からなる接着性樹脂組成物を溶融押出してサンドイッチラミネートにより積層する代わりに、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤RU004/硬化剤H1、ロックペイント(株)製)を用いてドライラミネートにより積層した以外は、実施例1と同様にして、包装材料を得た。
[比較例2]
積層方法として、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸三元共重合体からなる接着性樹脂組成物を溶融押出してサンドイッチラミネートにより積層する代わりに、2液硬化型ウレタン接着剤(主剤RU004/硬化剤H1、ロックペイント(株)製)を用いてドラ
イラミネートにより積層した以外は、実施例2と同様にして、包装材料を得た。
[評価試験]
(層間接着強度試験)
実施例及び比較例の包装材料を用いて、ヒートシール性樹脂層同士を重ね合せ、10cm×10cmの三方製袋体を作製した。得られた三方製袋体に水100mLを封入し、このパウチを、110℃で30分間(実施例1、4及び比較例1)または121℃で30分間(実施例2、3及び比較例2)のレトルト加熱処理に付した。加熱処理後のパウチから、幅15mmの短冊状の試験片を切り出し、JISK6854に従って、テンシロン引張試験機を用いて、透明ガスバリア性フィルム層とヒートシール性樹脂層との接着部を、25℃雰囲気下、引張速度を50mm/分として90度方向に剥がし、層間接着強度(加熱処理後)を測定し、加熱処理前(初期)の層間接着強度と比較した。
結果を以下の表2に示す。
Figure 2016069072
(溶出試験)
実施例及び比較例の包装材料を用いて、ヒートシール性樹脂層同士を重ね合せ、内面の表面積が1200cm2となるようにシールして、三方製袋体を作製した。実施例3〜4の場合は、チューブフィルムの内面の表面積が1200cm2となるようにシールして、三方製袋体を作製した。得られた三方製袋体について、日本薬局方のプラスチック製医薬品容器試験法の溶出試験に準じた試験法で、クリーン水200mlを封入し、このパウチを、121℃で1時間(実施例2、3及び比較例2)または100℃で2時間(実施例1、4及び比較例1)蒸気滅菌に付した。パウチを開封し、回収した試験液について、泡立ち、pH、過マンガン酸カリウム還元性物質、紫外線吸収スペクトル及び蒸発残留物を以下のとおりに調べた。
(泡立ち)
試験液5mLを内径15mm、長さ200mmの共栓試験管に入れ、3分間激しく振り混ぜ、生じた泡が消失するまでの時間を測定した。
(pH)
試験液及びクリーン水(コントロール)各20mLに、1g/L塩化カリウム水溶液1
mLを加えてpHを測定し、コントロールとの差を求めた。
(過マンガン酸カリウム還元性物質)
試験液20mLに、0.002mol/L過マンガン酸カリウム液20mL及び希硫酸1mLを加え、3分間煮沸後に冷却した。その後、ヨウ化カリウム0.1gを加え10分間放置した。放置後、0.001mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定した(指示薬:デンプン試薬)。試験液とコントロール(クリーン水)とに対する0.002mol/L過マンガン酸カリウム液の消費量の差を求めた。
(紫外線吸収スペクトル)
試験液及びコントロール(クリーン水)について、紫外可視吸光度測定法により、波長220〜240nmの区間、及び241〜350nmの区間のそれぞれで最大吸光度を測定した。
(蒸発残留物)
試験液各20mLを水浴上で蒸発乾固し、残留物を105℃で1時間乾燥し、その質量を測定した。
結果を以下の表3に示す。なお、表中の規格は、日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法の溶出物試験の規格を指す。
Figure 2016069072
(ガスバリア性試験)
酸素透過率は、JIS K7126 等圧法に準拠して、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製 OX−TRAN 2/20)を用いて、温度23℃、湿度90%RHの条件で測定した。また、水蒸気透過率は、JIS K7129 B法に準拠して、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN−W 3/31)を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定した。
結果を以下の表4に示す。
Figure 2016069072
(ヘイズの評価)
実施例及び比較例の包装材料を用いて、ヒートシール性樹脂層同士を重ね合せ、10cm×10cmの三方製袋体を作製した。得られた三方製袋体に蒸留水50mLを封入し、このパウチを、110℃で30分間(実施例1、4及び比較例1)または121℃で30分間(実施例2、3及び比較例2)の条件下で、高圧蒸気滅菌に付した。その後、速やかに開封して検体フィルムを切り出し、23℃、50%RHの温湿度の環境下において24時間の常態調節を行なった。この検体フィルムを、JIS−K6714に準拠した操作によりヘイズを測定し、加熱処理前(初期)のヘイズと比較した。
Figure 2016069072
上記の結果より、本発明の包装材料は、多様な樹脂フィルム、蒸着フィルム、金属箔に適用することができ、いずれにおいても安定して、十分に高い層間接着強度を示した。また、輸液バッグとして、外装袋なしで使用するのに十分な5N/15mm以上の層間接着強度を、熱処理後も維持することができた。さらには、有機物等の包装材由来成分が内容物中に移行せず、日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法の溶出物試験の規格を十分に満たすものであった。また、従来は輸液バッグの外装袋が担うべき優れたガスバリア性も発揮し、同時に良好な透明性を有するものであった。
1.透明ガスバリア性フィルム層
2.接着層
3.ヒートシール性樹脂層
4.プラスチックフィルム
5.酸化珪素蒸着膜
6.ガスバリア性塗布膜

Claims (12)

  1. 少なくとも、透明ガスバリア性フィルム層、接着層およびヒートシール性樹脂層をこの順に有し、
    該接着層は、アルケン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む接着性樹脂組成物からなることを特徴とする、輸液用包装材料。
  2. 前記透明ガスバリア性フィルム層が、プラスチックフィルム上に酸化珪素蒸着膜を設けてなる蒸着フィルムからなる層であることを特徴とする、請求項1に記載の輸液用包装材料。
  3. 前記蒸着フィルムが、前記酸化珪素蒸着膜上に、さらに、ガスバリア性塗布膜を設けてなり、
    該ガスバリア性塗布膜は、一般式R1 nM(OR2m(式中、Mは金属原子を表し、R1、R2は炭素数1〜8の有機基を表し、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ならびに、ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールを含んでなる組成物を、ゾルゲル法によって重縮合して得るアルコキシドの加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物であることを特徴とする、請求項2に記載の輸液用包装材料。
  4. 前記接着性樹脂組成物における不飽和カルボン酸成分量が、0.05質量%以上、1.0質量%未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の輸液用包装材料。
  5. 前記接着性樹脂組成物における(メタ)アクリル酸エステル成分量が、5〜40質量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の輸液用包装材料。
  6. 前記ヒートシール性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂からなる層であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の輸液用包装材料。
  7. 前記ヒートシール性樹脂層が、水冷式インフレーション法により製膜したポリプロピレン系樹脂フィルムからなる層であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の輸液用包装材料。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の輸液用包装材料を、そのヒートシール性樹脂層同士が対向するように重ねあわせ、その端部をヒートシールしてなる輸液バッグであって、保存のための外装袋を必要としないことを特徴とする輸液バッグ。
  9. 加熱殺菌処理前の層間接着強度に対して、110℃で30分間加熱殺菌処理した後の層間接着強度が、60%以上保持されることを特徴とする、請求項8に記載の輸液バッグ。
  10. 加熱殺菌処理前の層間接着強度に対して、121℃で30分間加熱殺菌処理した後の層間接着強度が、60%以上保持されることを特徴とする、請求項8または9に記載の輸液バッグ。
  11. 日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法の溶出物試験の規格を満たすことを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の輸液バッグ。
  12. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の輸液用包装材料の製造方法であって、透明ガスバリア性フィルム層と、ヒートシール性樹脂層とを、アルケン−(メタ)アクリル酸エステ
    ル−不飽和カルボン酸の三元共重合体を含む溶融した接着性樹脂組成物を介して、サンドイッチラミネート法によって積層することを特徴とする、上記製造方法。
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