以下、本発明にかかる車両用入力装置(以下、入力装置と呼ぶ)の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両の室内のうち運転席および助手席の前方には、インパネ11が設置されている。インパネ11は、ステアリングホイール12に対して車両前方、かつ、フロントウインドシールド13の下方に位置する。インパネ11のうち車両左右方向の中央部分11aには、以下に詳述する入力装置14が取り付けられている。
図2に示すように、入力装置14は、ベース部材20、支持部30、タッチパネル40(タッチ入力部)、押ボタン51、52、53、および回転体ユニット60を備える。これら支持部30、タッチパネル40、押ボタン51〜53および回転体ユニット60は、ベース部材20に保持されている。
ベース部材20は、樹脂製であり、以下に説明するベース部21、保持部22、パネル保持部23および凹部24を、一体に樹脂成形して構成されている。ベース部材20は、インパネ11に形成された開口部11bに組み付けられている。ベース部21は、保持部22の下方に隣接し、インパネ11の表面に沿って湾曲しながら上下方向に延びる板状である。
保持部22は、支持部30および押ボタン51〜53を保持する。支持部30は、運転席に着座している乗員が、着座した状態のまま手を伸ばすと届く位置に配置されている。図1の例では右ハンドル車両であるため、左手を伸ばして届く位置に支持部30は配置されている。支持部30の表面は、伸ばした左手の手首を支持するための支持面30aとして機能する。支持面30aは平坦形状であり、水平面Lに対する支持面30aの仰角を支持面仰角θ1と呼ぶ(図3参照)。図3の例では、支持面仰角θ1が45度未満に設定されている。支持部30は、図4の符号30bに示す高さ分だけ、板状のベース部21の表面から隆起した形状である。なお、図4および図3中の上下前後を示す矢印は、入力装置14を車両に搭載した状態における上下方向と車両前後方向の向きを示す。
押ボタン51〜53は、保持部22のうち支持面30aの上方部分に配置されている。押ボタン51〜53の表面は支持面30aと同一平面上に位置する。押ボタン51〜53は、図示しないスプリングの弾性力に抗して運転者の指先で押し下げられる機械式のボタンである。複数(図3の例では3つ)の押ボタン51〜53は、車両左右方向に並べて配置されている。押ボタン51〜53を押動操作することにより、各々の押ボタン51〜53に割り当てられたコマンドの実行と実行停止が指令される。
具体的には、押ボタン51〜53の各々には、タッチパネル40の表示内容を切り替えるためのコマンドが設定されている。すなわち、一つの押ボタン51には空調装置に関連するコマンドが割り当てられている。この押ボタン51をオン操作すると、空調装置に関連する情報がタッチパネル40に表示されるとともに、タッチパネル40には、空調装置の設定を入力するためのアイコン画像G1、G2、G3、G4(図2および図7参照)が表示される。アイコン画像G1〜G4へのタッチ操作に応じて、助手席側の設定温度、空調風の吹出口、空調風の送風量、運転席側の設定温度等の設定が入力される。
別の押ボタン52にはオーディオ装置に関連するコマンドが割り当てられている。この押ボタン52をオン操作すると、オーディオ装置に関連する情報がタッチパネル40に表示されるとともに、タッチパネル40には、オーディオ装置の設定を入力するためのアイコン画像G5、G6、G7、G8(図10参照)が表示される。アイコン画像G5〜G8へのタッチ操作に応じて、音量や音源等の設定が入力される。
別の押ボタン53には車両の運転状態に関連するコマンドが割り当てられている。この押ボタン53をオン操作すると、例えば内燃機関や走行用モータ等の走行駆動源の運転状態に関連する情報がタッチパネル40に表示されるとともに、タッチパネル40には、走行駆動源の設定を入力するためのアイコン画像が表示される。
保持部22は、支持部30を振動させる振動アクチュエータ31(図4および図7参照)を保持する。振動アクチュエータ31の具体例としては、通電により振動する圧電素子や振動モータが挙げられる。振動アクチュエータ31により支持部30を振動させることで、支持部30に置かれた操作者の手に振動を付与させることができる。
パネル保持部23は、保持部22の上方に配置されてタッチパネル40を保持する。タッチパネル40は、運転席に着座している乗員が、着座した状態のまま手を伸ばすと届く位置に配置されている。また、支持部30に手首を支持させた状態のまま、支持部30に置かれた手の指先でタッチ操作が可能となる位置に、タッチパネル40および支持部30は配置されている。タッチパネル40は、液晶表示器の手前側に透明電極を有して構成されており、透明電極は、操作者の指先の接触位置を検出する。したがって、タッチパネル40は、液晶表示器による表示機能および透明電極によるタッチ入力機能を有する。
タッチパネル40の表面は、接触入力面40aとして機能する。接触入力面40aは平坦形状であり、水平面Lに対する接触入力面40aの仰角を入力面仰角θ2と呼ぶ(図3参照)。図3の例では、入力面仰角θ2が45度以上に設定されている。そして、支持面仰角θ1が入力面仰角θ2よりも小さくなるように支持部30は配置されている。
接触入力面40aに対する指先でのタッチ操作には、先述したフリック操作、スライド操作およびタップ操作の他にも、ピンチ操作等の種々のタッチ操作が挙げられる。なお、ピンチ操作とは、接触入力面40a上を指でつまむようにして画面を拡大縮小させる操作である。図2の表示状態では、4つのアイコン画像G1、G2、G3、G4と、ナビゲーション装置による地図情報画像Gmが表示されている。例えば、地図情報画像Gm上でピンチ操作を実施すると、地図情報画像Gmが拡大縮小表示される。また、アイコン画像G1〜G4上でタップ操作すると、アイコン画像G1〜G4の各々に割り当てられたコマンドが実行される。
図4に示すように、凹部24は、保持部22とパネル保持部23の間に配置されており、保持部22およびパネル保持部23と隣接して繋がっている。凹部24は、回転体63の前方において、回転体63の仮想軸Kが延びる方向(仮想軸方向)と交差する方向に位置する所定容積の空間(操作スペース24a)を内部に形成する。凹部24は、支持面30aよりも下方に凹む形状であり、回転体63を回転操作する指先の操作スペース24aを内部に形成している。凹部24は、開口部24bを有する袋形状である。開口部24bの下側部分は支持面30aに位置し、開口部24bの上側部分は接触入力面40aに位置する。
回転体ユニット60は、図14等を用いて後に詳述する回転体63を有する。回転体63は、回転可能な状態で凹部24に配置されており、乗員の指先により回転操作される。回転体63の回転中心線(仮想軸K)が延びる向きは車両左右方向(水平方向)である。回転体63は、仮想軸方向に延びる円筒形状である。回転体63の仮想軸方向の長さは、回転体63の直径よりも長い。回転体63は、凹部24のうち車両後方側に位置する壁面24c(図4参照)に対向して配置されている。回転体63は開口部24bの下方に位置し、回転体63の全体が操作スペース24aに位置する。
図5および図6は、運転席に着座した乗員が、ステアリングホイール12を右手で持ったまま左手を伸ばして入力装置14を操作している状態を示す。図5は、左手の手首を支持部30の支持面30aに置き、その置いた手の人差し指の指先でタッチパネル40をタッチ操作している状態を示す。図6は、左手の手首を支持部30の支持面30aに置き、その置いた手の中指の指先で回転体63を回転操作している状態を示す。図6に示す例では、回転体63を回転操作する中指と、それ以外の指(人差指および薬指)を、操作スペース24aに入れた状態で回転操作している。このように、手首を支持部30に置いて支持させた状態で、タッチ操作、回転操作またはスライド操作が可能となる位置に、タッチパネル40、回転体63および支持部30は配置されている。
回転体63の外周面は、指先を接触させながら、仮想軸方向へスライドさせるスライド操作が可能なスライド操作面63aを提供する。スライド操作する指先のスライド位置は位置センサにより検出される。位置センサは、図12に示す電極フィルム61により提供される。電極フィルム61は、回転体63の内部に取り付けられた複数の電極61b(図12参照)を有し、スライド操作している指先と電極61bとの間における静電容量の変化に応じた検出信号を出力する。例えば、スライド操作面63aの任意の位置に指先を接触させると、その任意の位置に対応する電極61bから出力される検出信号が変化する。これにより、指先を接触させている位置が検出される。
詳細には、電子制御ユニット(ECU80)が有するマイクロコンピュータ(マイコン)が、電極フィルム61(位置センサ)から出力される検出信号に基づきスライド操作位置を演算する。さらに上記マイコンは、演算されたスライド操作位置の変化に基づき、タッチ操作の内容が、所定時間以上同じ位置に指先を接触させる長押し操作、先述したフリック操作およびスライド操作のいずれであるかを判定する。また、フリック操作およびスライド操作であると判定された場合には、その操作方向が左右のいずれであるかを判定する。
さらにECU80には、回転センサ68により検出された回転量の情報や、押ボタン51〜53およびタッチパネル40に入力された操作内容の情報も入力される。
ECU80は、これらの情報に基づき、通信線85を通じて他のECUへ指令信号を出力する。例えば、タッチパネル40への入力操作により空調装置の設定温度が変更された場合、その旨の指令信号を、空調装置を制御する空調ECUへ出力する。その結果、変更後の設定温度に基づき空調装置の作動を空調ECUが制御することとなる。さらにECU80は、上述した各種の情報に基づき、タッチパネル40の表示内容を制御するとともに振動アクチュエータ31の作動を制御する。
図7〜図10は、回転体63に対する回転操作およびスライド操作に基づき、ECU80がタッチパネル40の表示内容を制御して、各種の設定を入力する一例を示す。
図7に示す例では、押ボタン51をオン操作したことに伴い、空調装置の設定に関するアイコン画像G1〜G4がタッチパネル40に表示されている。この時、スライド操作面63aの左右方向における接触位置範囲を、複数のアイコン画像G1〜G4に対応する複数の範囲63a1、63a2、63a3、63a4(図8参照)に分割するよう、ECU80は設定する。そして、スライド操作面63aに指先を接触させると、その接触位置の領域に対応するアイコン画像が選択される。
図7の例では、スライド操作面63aの左端部分の範囲63a1に指先を接触させているので、その範囲63a1に対応するアイコン画像、つまり左右方向に並ぶ複数のアイコン画像G1〜G4のうち左端に位置するアイコン画像G1が選択されている。換言すると、ECU80は、位置センサにより検出された接触位置に対応するアイコン画像G1を強調表示させるように、タッチパネル40の表示内容を制御する。
詳細には、スライド操作面63aの左端部分の範囲63a1が所定時間以上継続して接触された場合に、アイコン画像G1が選択されたと判定する。そして、アイコン画像G1を強調表示させるとともに、振動アクチュエータ31を所定時間(例えば0.5秒)だけ作動させる。そして、タッチパネル40のうち選択されたアイコン画像G1の下方部分に、アイコン画像G1に関連する設定画像G1aを表示させる。図7の例では、アイコン画像G1が助手席の設定温度を入力するアイコンであるため、現状の設定温度(27℃)が設定画像G1aとして表示されている。
なお、上述の如くスライド操作面63aの接触位置範囲を、複数のアイコン画像G1〜G4に対応する複数の範囲63a1、63a2、63a3、63a4に分割して設定することを実現させるため、回転体63を十分に長く形成している。具体的には、左右方向に並ぶ複数のアイコン画像G1〜G4の左右両端に位置するアイコン画像G1、G4に対応する位置まで、回転体63は左右方向に延びる形状である。これに伴い、凹部24による操作スペース24aも左右方向に十分に長い形状に形成されている。具体的には、回転体63の左右方向長さ以上となるように、操作スペース24aの左右方向長さは設定されている。
図8に示す例では、図7に示すタッチ選択操作の後に、回転体63を手前側から奥側に向けて回転操作させている。これにより、設定画像G1aとして表示されている設定温度が増大するように変更される。なお、回転体63を奥側から手前側に向けて回転操作させた場合には、設定温度が低下するように変更される。後に詳述するボールプランジャ71(図23参照)により1回のクリック感が付与される毎に、設定温度を所定温度ずつ設定変更させることが望ましい。
図9に示す例では、図7および図8での接触位置である左端部分の範囲63a1から、その右隣の範囲63a2に指先をスライド移動させている。その結果、その接触位置の範囲63a2に対応するアイコン画像G2が選択される。詳細には、スライド操作面63aのうち符号63a2に示す範囲が所定時間以上継続して接触された場合に、アイコン画像G2が選択されたと判定する。そして、アイコン画像G2を強調表示させるとともに、振動アクチュエータ31を所定時間(例えば0.5秒)だけ作動させる。そして、タッチパネル40のうち選択されたアイコン画像G2の下方部分に、アイコン画像G2に関連する設定画像G2aを表示させる。図9の例では、アイコン画像G2が空調風の吹出口を選択するアイコンであるため、現状の吹出口(フェイス吹出口)が設定画像G2aとして表示されている。このように、スライド操作面63aをスライド操作することで、選択されていたアイコンが変更される。なお、スライド操作しなくとも、各アイコン画像に対応する位置の操作面に直接指を接触させて各アイコン画像を選択することも可能である。
図10に示す例では、図7および図8での接触位置である左端部分の範囲63a1から、右方向にフリック操作している。その結果、オーディオ装置に関連するアイコン画像G5〜G8がタッチパネル40に表示されている。これらのアイコン画像G5〜G8に対しても、空調装置に関連するアイコン画像G1〜G4と同様にして、スライド操作に応じて選択され、回転操作に応じて選択された項目の設定が変更される。
要するに、位置センサにより検出される接触位置に基づき、複数の設定項目から所望の設定項目が選択される。つまり、図7に示す接触位置では、複数のアイコン画像G1〜G4から温度設定するアイコン画像G1が選択され、図9に示す接触位置では、吹出口モードを設定するアイコン画像G2が選択される。そして、回転センサ68により検出される回転量に基づき、選択されている設定項目に関する内容が設定される。つまり、図8に示す回転操作による回転量に基づき、設定温度が変更される。回転量に基づき設定温度(物理量)を変更するにあたり、物理量の上昇と下降は回転体63の回転方向に基づき判別される。
また、回転体63の回転操作による設定内容には、タッチパネル40のタッチ操作の場合には複数回の操作を要する設定内容が割り当てられている。例えば、回転量に基づき設定される内容は、音量、温度、電波周波数等、所定の物理量の大きさである。
図7〜図10では、回転体63によるスライド操作および回転操作による表示内容の例を説明したが、これらのスライド操作および回転操作は、タッチパネル40上におけるタッチ操作でも代用できる。例えば、所望のアイコン画像上でタッチパネル40をタップ操作すると、そのアイコン画像が選択される。
ECU80は、回転体63による操作内容に応じて振動アクチュエータ31を作動させることに加え、タッチパネル40による操作内容に応じても振動アクチュエータ31を作動させる。例えば、所望のアイコン画像上でタッチパネル40を長押しした場合に、振動アクチュエータ31を作動させて、長押し操作を受け付けたことを操作者に知らせる。
次に、回転体ユニット60の構造について図11〜図24を用いて説明する。
図11に示すように、回転体ユニット60は、電極フィルム61、固定軸62、回転体63、主動ギア64、軸受部材65、支持部材66、従動ギア67および回転センサ68を有する。さらに回転体ユニット60は、センサ支持部材69、台座70、ボールプランジャ71、回路基板72および基板支持部材73を有する。
図12に示すように、電極フィルム61は、絶縁フィルム61a、電極61b、送信電極61c、配線61d、端子61eを有する。絶縁フィルム61aは、回転体63の仮想軸Kが延びる方向(仮想軸方向)に延びる形状である。電極61b、送信電極61cおよび配線61dは、絶縁フィルム61aに設けられた電導性を有するものであり、絶縁フィルム61aに印刷、接着または蒸着により設けられている。電極61bは、仮想軸方向(図12の左右方向)に複数並べて配置されている。送信電極61cは、複数の電極61bを取り囲む形状であり、かつ、電極61bとは所定量だけ離間して配置されている。
配線61dは仮想軸方向に延びる形状であり、配線61dの一端は送信電極61cおよび電極61bの各々に電気接続されており、配線61dの他端は端子61eに電気接続されている。以下の説明では、電極フィルム61のうち、仮想軸方向において電極61bが配置される領域を本体部と呼び、本体部からさらに仮想軸方向に延びる領域の部分を延出部61pと呼ぶ。
図13に示すように、固定軸62は、仮想軸方向に延びる円筒または円柱形状であり、樹脂製である。電極フィルム61は、固定軸62の外周面上に取り付けられている。具体的には、電極フィルム61の本体部が、接着等の手段により固定軸62の外周面上に取り付けられている。固定軸62の両端には、樹脂製の軸受部材65(図16参照)と嵌合する嵌合部62aが設けられている。嵌合部62aには、固定軸62の径方向に突出する係止部62bが形成されている。
図14に示すように、回転体63は、仮想軸方向に延びる円筒形状であり、樹脂製である。回転体63の外周面は、先述したスライド操作面63aを提供する。スライド操作面63aは周方向に波打つ形状である。すなわち、スライド操作面63aは、仮想軸方向に延びる凸部と凹部が周方向に交互に並んで配置された形状である。回転体63の一端には主動ギア64が固定されている。回転体63の他端からは、電極フィルム61が貼り付けられた状態の固定軸62が挿入される。
主動ギア64の回転中心は回転体63の回転中心と一致しており、主動ギア64は回転体63と一体的に回転する。主動ギア64の外周面には、従動ギア67(図18参照)と係合するギア部が形成されている。なお、嵌合部62aは、主動ギア64の中心に設けられた貫通穴に挿入されている。
図15に示すように、固定軸62の両端に設けられた嵌合部62aには軸受部材65が嵌合する。図16に示すように、円盤形状である樹脂製の軸受部材65は、回転体63の内部に挿入配置されており、軸受部材65の外周面65cが回転体63の内周面63bに接触している。軸受部材65には、嵌合部62aが嵌合する貫通穴65a、係止部62bが嵌合する係止溝65d、および延出部61pが挿入配置される貫通穴65bが形成されている。係止溝65dおよび貫通穴65bは、貫通穴65aと連通しており、貫通穴65aから軸受部材65の径方向に拡張した形状である。このように係止部62bが係止溝65dに嵌合することで、固定軸62および軸受部材65は互いに相対回転できないように固定される。
図17に示すように、回転体63の内部に挿入された状態の固定軸62の両端(嵌合部62a)は、支持部材66に固定されている。具体的には、嵌合部62aが嵌合する貫通穴66a、および延出部61pが挿入配置される取出穴66bが支持部材66に形成されている。嵌合部62aが貫通穴66aに挿入され、かつ、延出部61pが取出穴66bに挿入された状態で、締結手段により嵌合部62aは支持部材66に回転不能に固定されている。締結手段は、ボルトBTまたはタッピングスクリュウにより提供される。
固定軸62および軸受部材65は相対回転不能に固定されていることは先述した通りである。したがって、上述の如く嵌合部62aが支持部材66に回転不能に固定されると、軸受部材65も支持部材66に回転不能な状態で固定されることとなる。これに対し、回転体63は、支持部材66に固定されることにはならず、軸受部材65により回転可能な状態で支持されることとなる。すなわち、回転体63の内周面63bが軸受部材65の外周面65cに摺動しながら回転体63は回転する(図24参照)。
図18に示すように、従動ギア67の回転軸67aの一端は、支持部材66の軸受穴66cに挿入され、従動ギア67の回転軸67aの他端は、センサ支持部材69の軸受穴69aに挿入される(図20参照)。よって、従動ギア67は、支持部材66およびセンサ支持部材69により回転可能な状態で支持される。
図19に示すように、従動ギア67は、主動ギア64と係合するギア部67b、回転センサ68により検出される被検出部67c、および先述した回転軸67aを有する。これらは樹脂にて一体に形成されている。被検出部67cは、回転軸67aの延出方向に突出する形状であり、回転軸67aの回転方向に所定ピッチで複数並べて配置されている。
図20に示すように、センサ支持部材69には回転センサ68が取り付けられている。回転センサ68は、当該回転センサ68に対向する位置に被検出部67cが存在するか否かを検出する。具体的には、回転センサ68は発光部と受光部を有し、発光部から射出された光が受光部で検知される。但し、発光部と受光部の間に被検出部67cが位置すると、受光部で検知されなくなるので、被検出部67cが対向位置に存在していることが検出される。つまり、受光部での光の検知有無に基づき、被検出部67cの有無を検出する。そして、従動ギア67が回転すると被検出部67cが回転センサ68により複数回検出されることとなる。この検出回数に基づき、従動ギア67の回転量、および単位時間当たりの回転量(つまり回転速度)を算出できる。
また、回転センサ68は従動ギア67の回転方向も検出することができる。具体的には、回転センサ68は1つの発光部に対して2つの受光部を備えており、いずれの受光部が先に光を検知するかに応じて回転方向を検出できる。
図21に示すように、支持部材66およびセンサ支持部材69は、台座70にボルトBTで固定されている。なお、台座70は、図2〜図4に示すベース部材20に固定されている。図22に示すように、支持部材66の取付穴66dにはボールプランジャ71がナットNTで取り付けられている。図23に示すように、ボールプランジャ71は、本体部71aに形成された収容穴71bにボール71cおよび弾性部材71dを収容して構成されている。従動ギア67の側面には、ボール71cが嵌り込む凹部67d(図20参照)が回転方向に複数並べて所定間隔で形成されている。弾性部材71dの弾性力によりボール71cは従動ギア67の側面に押し付けられており、従動ギア67の回転に伴い、ボール71cが凹部67dへの出入りを繰り返す。これにより、ボールプランジャ71は、回転体63の回転に抗する力を、所定の回転量だけ回転する毎に間欠的に付与する。つまり、回転体63を回転操作する指先にクリック感を付与する。
次に、上述した回転体ユニット60の作動について説明する。
図24に示すように、軸受部材65は固定軸62に対して相対回転不能に固定されており、固定軸62は支持部材66に固定されている。したがって、軸受部材65は回転不能に支持されている。これに対し、回転体63は軸受部材65に対して相対回転可能に支持されている。具体的には、回転体63の内周面63bが軸受部材65の外周面65cに摺動しながら回転体63は回転する。
電極フィルム61は、回転不能に支持された固定軸62に取り付けられている。電極フィルム61の延出部61pは、軸受部材65の貫通穴65bおよび支持部材66の取出穴66bを通じて、支持部材66の内側(回転体63の側)から外側に引き出されている。したがって、電極フィルム61の電極61bは、回転体63とともに回転しない状態で、回転体63の内部に配置される。そして、電極フィルム61の配線61dは、回転体63とともには回転してねじれることなく、回転体63の内部から外部に引き出される。
回転体63が乗員の指先により回転操作されると、回転体63は軸受部材65に対して摺動しながら回転する。すると、回転体63とともに主動ギア64が回転して従動ギア67が回転する。これにより、回転センサ68から出力される検出信号が、従動ギア67の回転量、ひいては回転体63の回転量に応じて変化する。すなわち、回転センサ68の受光部での光の検知回数を検出信号として出力する。また、回転体63の回転方向に応じて、2つの受光部の検出信号の位相差が逆転することとなる。
回転体63のスライド操作面63aに指先を接触させる接触操作が為されると、複数の電極61bのうち接触位置に応じた電極61bと送信電極61cとの間で生じる静電容量が変化する。つまり、送信電極61cにはパルス電圧が所定周期で繰返し印加されている。そして、パルス電圧に応じて複数の電極61bの各々から出力されている信号が、指先と電極61bとの間に形成される静電容量の大きさに応じて変化する。この変化に基づき、スライド操作面63aにおける接触位置が検出される。接触位置検出の分解能は電極61bの数で決まる。なお、隣り合う電極61bのいずれにおいても出力信号が所定以上変化している場合には、これら両電極61bの中間位置が接触位置であると検出される。
次に、回転体63の操作に応じた、ECU80のマイコンが実行する処理手順の一例を説明する。
先ず、図25のステップS10において、回転体63のスライド操作面63aへの接触有無を判定する。具体的には、電極61bから出力される信号、つまり電極61bの電位が所定の閾値を超えている場合に接触していると判定する。接触有りと判定された場合、続くステップS11において、スライド操作面63aに対するタッチ座標を算出する。タッチ座標とは、スライド操作面63aのうち仮想軸方向における接触位置を表したものであり、タッチパネル40の表示内容、つまりアイコン画像G1〜G4の配置に対応して設定されている。
例えば、図7に示すようにアイコン画像G1〜G4が左右方向(仮想軸方向)に4つ並べて配置されている場合には、スライド操作面63aを左右方向に4分割してタッチ座標は設定される。そして、接触位置がいずれのアイコン画像G1〜G4に対応した位置であるかをステップS11では算出する。要するに、タッチ座標の分解能は、アイコン画像G1〜G4の左右方向における数と一致するように設定される。
続くステップS12では、スライド操作面63aへの接触操作により指定されたアイコンの表示を拡大または強調させるよう、タッチパネル40の表示内容を制御する。例えば、図7に示すようにアイコン画像G1に対応する位置に指先を接触させると、アイコン画像G1が強調表示される。また、指定されたアイコンの設定内容を表す設定画像G1aを表示させている。
続くステップS13では、回転体63の回転操作有無を判定する。具体的には、回転センサ68から出力される信号に変化が生じた場合に、回転操作有りと判定する。回転操作有りと判定された場合には、続くステップS14において、回転センサ68の出力信号に基づき、回転体63の回転方向と回転量を算出する。
続くステップS15では、接触操作により指定されたアイコンの設定値表示である設定画像G1aを、回転操作された方向と回転量に応じて変更する。例えば、図8に示すように上側に回転させると、設定温度の表示が回転量に応じて大きくなる。これにより、設定温度が変更される。要するに、スライド操作により設定変更したい項目が選択され、回転操作により、選択された項目の設定内容が変更される。
続くステップS16では、回転体63から指先をリリースする操作が有ったか否かを判定する。リリース操作が有ったと判定されれば図25の処理を一旦終了し、リリース操作が無いと判定されれば処理はステップS11に戻る。
次に、図26のステップS20において、メニュースイッチである押ボタン51、52、53のいずれが押し下げられたかを判定する。先述した通り、押ボタン51には空調装置に関連するコマンドが、押ボタン52にはオーディオ装置に関連するコマンドが、押ボタン53には車両の運転状態に関連するコマンドが割り当てられている。押ボタン51が操作されている場合、或いはいずれの押ボタン51〜53も操作されていない場合、ステップS21において、エアコン設定画面(図7〜図9参照)を表示させるようにタッチパネル40を制御する。押ボタン52が操作されている場合、ステップS22において、オーディオ設定画面(図10参照)を表示させるようにタッチパネル40を制御する。押ボタン53が操作されている場合、ステップS23において、車両設定画面を表示させるようにタッチパネル40を制御する。
ステップS21、S22、S23により設定画面を表示させた状態で、ステップS24にて回転体63の操作が無いと判定されれば、処理はステップS20に戻る。一方、回転体63の操作が有ると判定されれば、図26の処理を一旦終了し、図25の処理にしたがってタッチパネル40の表示内容を制御する。
以上により、本実施形態に係る入力装置14では、回転体63の外周面がスライド操作面63aを提供するので、平坦な面を指先で接触操作する場合に比べ、指先が所望の接触位置からずれにくくなる。したがって、所定方向(仮想軸方向)の操作、および所定方向に対して垂直な方向の操作の両方を可能にしつつ、車両振動により所望の接触位置から指先がずれて誤操作することを抑制できる。
そして、回転体63の水平方向(仮想軸方向)については、スライド操作面63aに指先を軽く置き、その指先をスライド操作面63aに沿って水平方向へスライドさせるスライド操作により良好な操作性を提供できる。一方、水平方向に垂直な方向(上下方向)については、回転体63の回転操作により入力を可能にすることでスライド操作を不要にしている。したがって、上下方向への操作性が悪いといったタッチパネル40の欠点を回転操作で補いつつ、スライド操作による軽快なタッチ入力が可能となる。
しかも本実施形態によれば、回転体63の外周面によりスライド操作面63aが構成されるので、回転操作とスライド操作の切り替えをスムーズにできる。具体的には、回転操作していた指をそのままスライド移動させるだけで、スライド操作による入力が可能になる。或いは、スライド操作させていた指をそのまま曲げ伸ばしするだけで、回転操作による入力が可能になる。
さらに本実施形態では、電極61bおよび送信電極61cが、回転体63とともに回転しない状態で、回転体63の内部に配置されている。そのため、複雑な配線構造を要することなく、電極61bおよび送信電極61cに接続される配線61dがねじれて断線する懸念を解消できる。また、電極61bは回転しない状態で回転体63の内部に配置されているので、回転体63の周方向のうち、接触操作されることが想定される部分に電極61bを配置すれば十分であり、周方向の全体に亘って電極61bを配置することを不要にできる。
さらに本実施形態では、回転体63の両端を回転可能に支持する軸受部材65と、電極61bを保持する固定軸62(保持部材)と、を備え、固定軸62は、軸受部材65に固定されていることを特徴とする。
ここで、軸受部材65は回転体63とともに回転しない。よって、そのような軸受部材65に固定軸62を固定する本実施形態によれば、回転体63とともに回転しない状態で回転体63の内部に固定軸62を配置することを、簡素な構造で容易に実現できる。そして、本実施形態ではそのような固定軸62に電極61bを保持させるので、回転しない状態で回転体63の内部に電極61bを配置させることを、簡素な構造で容易に実現できる。
さらに本実施形態では、電極フィルム61(位置センサ)は、電極61bに接続された配線61dを有しており、軸受部材65には、配線61dが挿入配置される貫通穴65bが形成されていることを特徴とする。
これによれば、電極61bを保持した状態の固定軸62を軸受部材65に固定した構造を採用しつつ、配線61dを回転体63の内部から外部に取り出すことを、簡素な構造で容易に実現できる。
さらに本実施形態では、軸受部材65の外周面65c上を回転体63の内周面63bが摺動することにより、軸受部材65は回転体63を回転可能に支持することを特徴とする。
これによれば、軸受部材65が回転体63の内部に嵌り込む構造になる。一方、電極61bも回転体63の内部に配置されている。したがって、軸受部材65、固定軸62および電極61bの全てが回転体63の内部に配置されることになる。よって、軸受部材65に固定軸62を固定させ、その固定された固定軸62に電極61bを保持させる構成を、回転体63の内部で実現できるので、その構成を簡素にできる。
さらに本実施形態では、主動ギア64、従動ギア67および被検出部67cを備えることを特徴とする。主動ギア64は、回転体63とともに回転し、該回転体63と回転中心を同じくする。従動ギア67は、主動ギア64と係合し、該係合により伝達される主動ギア64の回転力により回転する。被検出部67cは、従動ギア67とともに回転し、回転センサ68により検出される。
これによれば、本実施形態に反して被検出部67cを主動ギア64に設けた場合に比べて、回転センサ68の配置レイアウトの自由度を向上できる。特に本実施形態では、主動ギア64の内側、つまり主動ギア64に対して仮想軸方向における回転体63の側に回転センサ68を配置するので、回転体ユニット60の仮想軸方向における体格を小型化できる。
さらに本実施形態では、操作者にクリック感を付与するボールプランジャ71を備えるので、回転体63の回転量に応じて各種設定を変更して調整するにあたり、調整量を操作する操作性を向上できる。また、ボールプランジャ71は、回転操作に抗する向きに作用する反力を回転体63に付与するので、例えば回転体63を勢い良く回転操作した場合に、意図に反して回転体63が過剰に回転することを抑止できる。
さらに本実施形態では、電極フィルム61(位置センサ)により検出される接触位置に基づき、複数の設定項目から所望の設定項目が選択され、回転センサ68により検出される回転量に基づき、選択されている設定項目に関する内容が設定される。そのため、設定項目を選択する第1操作を行った後、その設定項目に関する内容を設定する第2操作を行う場合、第1操作および第2操作の一方をスライド操作、他方を回転操作で行うことができる。そして、これらのスライド操作および回転操作は、上述したように切り替えをスムーズにできるので、設定項目を選択する第1操作の後、その内容を設定する第2操作を行うにあたり、これらの選択および設定の入力をスムーズにできる。
さらに本実施形態では、回転体63を保持するベース部材20が、回転操作時の指先の操作スペース24aを内部に形成する凹部24を有する。これによれば、回転体63を操作する手の指を、操作スペース24aに位置させた状態で回転操作できる。よって、回転操作する手の指がベース部材20に干渉して回転操作しにくくなることを回避できる。
さらに本実施形態では、回転体63に対して車両後方側に配置され、車両の運転席または助手席に着座している乗員の手首が支持される支持部30を備える。そして、支持部30に手首を支持させた状態のまま、支持部30に置かれた手の指先で回転体63を操作できる位置に、支持部30が配置されている。これによれば、支持部30に手首を置いて支持させた状態で、回転体63に対する回転操作またはスライド操作が可能になる。よって、これらの回転体63に対する操作を安定して行うことができる。
さらに本実施形態では、支持部30に手首を支持させた状態のまま、支持部30に置かれた手の指先でタッチパネル40への入力が可能となる位置に、支持部30が配置されている。そのため、手首を支持部30に支持させた状態で、タッチパネル40へのタッチ入力ができるようになるので、安定したタッチ入力が可能になる。
さらに本実施形態では、支持部30を振動させる振動アクチュエータ31と、タッチパネル40へのタッチ入力またはスライド操作面63aへのスライド操作による操作内容に応じて振動アクチュエータ31を駆動させるECU80と、を備える。そのため、支持部30に支持されている手首に振動を伝えることとなるので、手首へ十分に振動を伝えることができ、操作に応じて操作者に報知する機能を向上できる。
さらに本実施形態では、支持部30のうち手首が置かれる支持面30aの仰角(支持面仰角θ1)が、タッチパネル40の接触入力面40aの仰角(入力面仰角θ2)よりも小さくなるよう、支持部30は配置されている。これによれば、支持面仰角θ1が小さいので、支持部30に手首を支持した状態でタッチパネル40をタッチ操作するにあたり、手首を反り返らせて曲げる量を小さくできる。よって、楽な姿勢で支持部30に手首を支持した状態でタッチ操作するようにでき、操作性を向上できる。
ここで、タッチパネル40をタッチ操作して入力する例としては、空調装置のオンオフを操作する場合や、設定温度等の物理量の大きさを設定する場合が挙げられる。上記オンオフの操作ではタッチ操作の回数が1回で済むのに対し、物理量の大きさを設定する場合には、タッチ操作を複数回行わなければならない。特に、物理量の設定を大きく変更する場合には、タッチ操作回数が多くなり、設定変更の操作性が悪い。この点を鑑みた本実施形態では、回転センサ68により検出される回転量に基づき、所定の物理量の大きさを設定することができる。そのため、タッチ操作を複数回行うことを、回転体63の回転操作に代替できるので、物理量の大きさを設定変更する際の操作性を向上できる。
(他の実施形態)
以上、発明の好ましい実施形態について説明したが、発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、以下に例示するように種々変形して実施することが可能である。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
図12に示す電極フィルム61では、電極61bおよび送信電極61cの間で形成される静電容量が、電極61bと指先の間で形成される静電容量に応じて変化することを利用して、指先の接触有無を検出している。つまり、相互容量式の静電容量センサを採用している。これに対し、送信電極61cを廃止した自己容量式の静電容量センサを採用してもよい。
図1に示す実施形態では、固定軸62は軸受部材65に支持されているが、軸受部材65とは別の部材に支持されていてもよい。特に、軸受部材65が回転体63の外周面を摺動可能に支持するものである場合には、軸受部材65が回転体63の外部に位置することとなるので、軸受部材65とは別の部材に固定軸62支持させることが望ましい。
図1に示す実施形態では、入力装置14がインパネ11に搭載されているが、例えば車室内のセンターコンソールやドアに搭載されていてもよい。図1に示す実施形態では、仮想軸方向が水平方向となる向きに回転体63が搭載されているが、仮想軸方向が水平方向に対して傾くように回転体63が搭載されていてもよい。
図15に示す実施形態では、固定軸62および軸受部材65は、それぞれ別体に樹脂成形されて組み付けられている。これに対し、固定軸62および軸受部材65を一体に樹脂成形してもよい。
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えばボールプランジャ71を廃止してクリック感を付与しないようにしてもよい。振動アクチュエータ31を廃止して、支持部30から手首に振動を付与させることを廃止してもよい。支持部30を廃止して、手首を支持させずに回転体63またはタッチパネル40をタッチ操作するように入力装置14を構成してもよい。押ボタン51〜53を廃止してもよい。
図7〜図9に示す実施形態では、スライド操作による接触位置に基づき設定項目が選択され、回転操作による回転量に基づき、選択されている設定項目の内容が設定される。これに対し、回転操作により設定項目が選択され、スライド操作により設定項目の内容が設定されるように構成されていてもよい。