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JP2016050363A - Cu−Gaスパッタリングターゲット及びCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

Cu−Gaスパッタリングターゲット及びCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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JP2016050363A JP2015167676A JP2015167676A JP2016050363A JP 2016050363 A JP2016050363 A JP 2016050363A JP 2015167676 A JP2015167676 A JP 2015167676A JP 2015167676 A JP2015167676 A JP 2015167676A JP 2016050363 A JP2016050363 A JP 2016050363A
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Abstract

【課題】アルカリ金属化合物を比較的多く含有し、均一な組成のCu−Ga膜を安定して成膜することが可能なCu−Gaスパッタリングターゲット、及び、このCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法を提供する。【解決手段】フッ素を除く金属成分として、Ga:5原子%以上60原子%以下、K:0.01原子%以上5原子%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、波長分離型X線検出器による原子マッピング像において、CuとGaとKとFとを含有する領域が存在する。【選択図】図2

Description

本発明は、例えばCIGS太陽電池の光吸収層となるCu−In−Ga−Se四元系合金薄膜を形成する際に用いられるCu−Gaスパッタリングターゲット、及び、このCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
従来、化合物半導体からなる薄膜太陽電池として、Cu−In−Ga−Se四元系合金薄膜からなる光吸収層を備えたCIGS系太陽電池が提供されている。
ここで、Cu−In−Ga−Se四元系合金薄膜からなる光吸収層を形成する方法として、蒸着法により成膜する方法が知られている。蒸着法によって成膜された光吸収層を備えた太陽電池は、エネルギー交換効率が高いといった利点を有しているものの、大面積化に不向きであり、生産効率が低いといった問題があった。
そこで、スパッタ法により、Cu−In−Ga−Se四元系合金薄膜からなる光吸収層を形成する方法が提案されている。
スパッタ法においては、まず、Inターゲットを用いてIn膜を成膜し、このIn膜の上にCu−Gaスパッタリングターゲットを用いてCu−Ga膜を成膜して、In膜とCu−Ga膜との積層膜を形成し、この積層膜をSe雰囲気中で熱処理して、上述の積層膜をセレン化することにより、Cu−In−Ga−Se四元系合金薄膜を形成する。
ここで、光吸収層となるCu−In−Ga−Se四元系合金薄膜においては、ナトリウム等のアルカリ金属を添加することにより、太陽電池の変換効率が向上することが知られている。
そこで、Cu−In−Ga−Se四元系合金薄膜にアルカリ金属を添加する手段として、例えば特許文献1,2には、Cu−Ga膜を成膜する際に用いられるCu−Gaスパッタリングターゲットにアルカリ金属を添加する方法が開示されている。
アルカリ金属は、元素単体では反応性が非常に高く不安定であることから、特許文献1、2に記載されたCu−Gaスパッタリングターゲットにおいては、アルカリ金属化合物として添加されている。具体的には、特許文献1では、Li2O、Na2O、K2O、Li2S、Na2S、K2S、Li2Se、Na2Se、K2Seを添加しており、特に、Se化合物を添加することが好ましいとされている。また、特許文献2では、NaFの状態で添加することが記載されている。
再公表WO2011/083647号公報 特許第4793504号公報
ところで、最近では、太陽電池における変換効率のさらなる向上が求められており、光吸収層となるCu−In−Ga−Se四元系合金薄膜に対して、アルカリ金属を従来よりも高濃度で含有させる必要がある。すなわち、特許文献1,2に記載されたCu−Gaスパッタリングターゲットでは、アルカリ金属の含有量が少なく、変換効率の向上が不十分であった。
そこで、Cu−Gaスパッタリングターゲットに対して、アルカリ金属化合物を従来よりも多く添加することが考えられる。しかしながら、アルカリ金属化合物は、基本的に絶縁体であることから、単純に含有量を増加させた場合には、異常放電の原因となり、安定してCu−Ga膜を成膜することができなくなるおそれがあった。また、成膜されたCu−Ga膜内にアルカリ金属が均一に分散されなくなるおそれがあった。このため、アルカリ金属を多く含むCu−In−Ga−Se四元系合金薄膜を形成することは困難であった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、アルカリ金属化合物を比較的多く含有し、アルカリ金属が均一に分散した組成のCu−Ga膜を安定して成膜することが可能なCu−Gaスパッタリングターゲット、及び、このCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットは、フッ素を除く金属成分として、Ga:5原子%以上60原子%以下、K:0.01原子%以上5原子%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、波長分離型X線検出器による原子マッピング像において、CuとGaとKとFとを含有する領域(以下、「Cu−Ga−K−F領域」とも称する)が存在することを特徴としている。
ここでCu−Ga−K−F領域とは、単相の結晶粒または粒界であって、CuとGaとKとFの存在が波長分離型X線検出器による原子マッピング像から確認される領域である。波長分離型X線検出器では、CuとGaとKとFの存在を、特性X線により検出する。
Cu、Ga、K、およびFのそれぞれ原子について、「含有している」とは、ZAF補正法を用いて作成した定量マップ像から、Cuの場合5質量%以上、Gaの場合5質量%以上、Kの場合5質量%以上、Fの場合5質量%以上、検出していることを意味する。なお、定量マップ作成時には、構成元素としてC,O,F,K,Cu,Gaを選択した。
このような構成とされた本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットにおいては、フッ素を除く金属成分として、Ga:5原子%以上60原子%以下、K:0.01原子%以上5原子%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有しているので、アルカリ金属であるKを比較的多く含むCu−Ga膜を成膜することができる。
そして、アルカリ金属であるKの少なくとも一部が、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域が存在しているのでスパッタ時の異常放電を抑制することができる上に、アルカリ金属であるKが均一に分散されたCu−Ga膜を安定して成膜することができる。
ここで、本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットにおいては、前記CuとGaとKとFとを含有する領域は、KとCu及びGaの一方又は両方とFとの化合物相で存在することが好ましい。
この場合、前記CuとGaとKとFとを含有する領域中のKが金属との化合物相として存在するため、Cu−Ga−K−F領域の電気伝導度が増加し、スパッタ時の異常放電を低減させることができる。
また、本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットにおいては、前記CuとGaとKとFとを含有する領域は、Cu−Ga母相の結晶粒界に分散していることが好ましい。
この場合、前記CuとGaとKとFとを含有する領域が、Cu−Gaスパッタリングターゲット全体に広く分散することになり、アルカリ金属であるKが均一に分散されたCu−Ga膜を確実に成膜することができる。
さらに、本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットにおいては、Cu−Ga母相中にKF単体相が存在し、スパッタリングターゲット中に存在する全KF量に対する前記KF単体相の存在割合X、すなわち、KF単体相/(KF単体相+Cu−Ga−K−F領域)×100の値が、0%<X≦70%であることが好ましい。
この場合、KF単体相の存在割合が70%以下に抑えられているので、高出力の電力下においても成膜時における異常放電を低減することができ、安定してアルカリ金属であるKが均一に分散されたCu−Ga膜を確実に成膜することができる。
本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法は、上述のCu−Gaスパッタリングターゲットを製造するCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法であって、原料粉を加熱して焼結する焼結工程を有し、前記原料粉は、前記焼結工程において液相成分が発生する第1Cu−Ga合金粉と、KF原料粉と、前記焼結工程において液相成分が発生しない第2Cu−Ga合金粉及びCu粉のうちの少なくとも一方又は両方とを、フッ素を除く金属成分として、Ga:5原子%以上60原子%以下、K:0.01原子%以上5原子%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成となるように混合した混合粉とされており、前記焼結工程において、前記原料粉の一部を液相焼結させることにより、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を形成することを特徴としている。
このような構成とされた本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法においては、焼結工程において液相成分が発生する第1Cu−Ga合金粉と、KF原料粉と、焼結工程において液相成分が発生しない第2Cu−Ga合金粉及びCu粉のうちの少なくとも一方又は両方と、を混合した混合粉を原料粉としており、焼結工程において、原料粉の一部を液相焼結させているので、液相のCu−Ga合金とKF原料粉とを反応させて、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を形成することが可能となる。よって、上述のように、スパッタ時の異常放電を低減することが可能で、アルカリ金属であるKが均一に分散されたCu−Ga膜を安定して成膜することが可能なCu−Gaスパッタリングターゲットを得ることができる。
ここで、本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法においては、前記第1Cu−Ga合金粉は、その酸素濃度が1000ppm以下とされていることが好ましい。
この場合、第1Cu−Ga合金粉の酸素濃度が1000ppm以下に抑制されているので、第1Cu−Ga合金粉を溶融させて確実に液相を生じさせることができ、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を確実に形成することが可能となる。
また、本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法においては、前記原料粉における前記第1Cu−Ga合金粉の平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内とされ、前記KF原料粉の平均粒径が5μm以上500μm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、第1Cu−Ga合金粉の平均粒径及びKF原料粉の平均粒径が、それぞれ上述の範囲内に規定されているので、第1Cu−Ga合金粉から生成した液相とKF原料粉とを確実に反応させて、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を形成することができる。
さらに、本発明のCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法においては、前記焼結工程では、前記第1Cu−Ga合金粉から液相が発生する温度で15分以上保持することが好ましい。
この場合、第1Cu−Ga合金粉から生成した液相とKF原料粉とが接触して反応する時間を確保することができ、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を確実に形成することができる。
以上のように、本発明によれば、アルカリ金属化合物を比較的多く含有し、均一な組成のCu−Ga膜を安定して成膜することが可能なCu−Gaスパッタリングターゲット、及び、このCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法を示すフロー図である。 本発明の実施例において観察されたCu−GaスパッタリングターゲットのCu、Ga、K、Fの元素マッピングの一例である。
以下に、本発明の実施形態であるCu−Gaスパッタリングターゲット、及び、Cu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態に係るCu−Gaスパッタリングターゲットは、例えばCIGS系薄膜太陽電池においてCu−In−Ga−Se四元系合金薄膜からなる光吸収層を形成するために、Cu−Ga薄膜をスパッタによって成膜する際に用いられるものである。
本実施形態に係るCu−Gaスパッタリングターゲットは、Cu−Ga合金にKF(フッ化カリウム)が添加されたものであり、フッ素を除く金属成分として、Ga:5原子%以上60原子%以下、K:0.01原子%以上5原子%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有している。
ここで、アルカリ金属であるKは、Cu−Gaスパッタリングターゲットによって成膜されたCu−Ga薄膜中に含有され、CIGS系薄膜太陽電池の変換効率を向上させる作用を有する元素である。本実施形態では、このKを0.01原子%以上5原子%以下と比比較的多く含んでいる。
そして、このCu−Gaスパッタリングターゲットは、Cu−Ga母相と、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域と、KF単体相と、を有している。
Cu−Ga−K−F領域は、KFがCu及びGaと反応することによって形成されたものである。本実施形態では、Cu−Ga−K−F領域は、KとCu及びGaのいずれか一方又は両方とFとの化合物相で存在し、Cu−Ga母相の結晶粒界に分散している。
本実施形態に係るCu−Gaスパッタリングターゲットの任意の切断面で得られる波長分離型X線検出器による原子マッピング像において、好ましいCu−Ga−K−F領域の面積比率は、5%から80%である。より好ましいCu−Ga−K−F領域の面積比率は、10%から50%である。さらにより好ましいCu−Ga−K−F領域の面積比率は、20%から30%である。ここでCu−Ga−K−F領域の面積比率は、観察領域の全域に対するCu−Ga−K−F領域の占める面積割合を意味する。
また、本実施形態であるCu−Gaスパッタリングターゲットにおいては、スパッタリングターゲット中に存在する全KF量に対するKF単体相の存在割合Xを、0%<X≦70%の範囲内としている。
アルカリ金属であるKを比較的多く含む場合において異常放電の発生を抑制するために、KF単体相の存在割合を70%以下に制限しているのである。
次に、本実施形態に係るCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法について、図1のフロー図を参照して説明する。
本実施形態に係るCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法は、図1に示すように、後述する第1Cu−Ga合金粉及び第2Cu−Ga合金粉を作製するCu−Ga合金作製工程S01と、第1Cu−Ga合金粉、第2Cu−Ga合金粉、KF原料粉、Cu粉を混合粉砕して原料粉を得る混合粉砕工程S02と、原料粉を加熱して焼結させる焼結工程S03と、得られた焼結体を加工する加工工程S04と、を備えている。
原料粉は、KF原料粉と、焼結工程における焼結温度(本実施形態では250℃以上300℃以下)において液相成分が発生する第1Cu−Ga合金粉と、上述の焼結工程において液相成分が発生しない第2Cu−Ga合金粉及びCu粉のうちの少なくとも一方又は両方と、を混合した混合粉とされている。
KF原料粉は、純度が99.9質量%以上とされており、平均粒径が5μm以上500μm以下の範囲内とされている。
第1Cu−Ga合金粉は、Gaの含有量が43原子%以上66原子%以下、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有するアトマイズ粉とされており、平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内とされている。
また、この第1Cu−Ga合金粉においては、その酸素濃度が、質量比で1000ppm以下とされており、好ましくは200ppm以下とされている。
第2Cu−Ga合金粉は、Gaの含有量が0原子%超え43原子%未満、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有するアトマイズ粉とされており、平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内とされている。
また、Cu粉は、純度が99.9質量%以上とされており、平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内とされている。
(Cu−Ga合金粉作製工程S01)
上述の第1Cu−Ga合金粉及び第2Cu−Ga合金粉は、以下のような手順で作製される。
まず、塊状のCu原料及びGa原料を所定の組成となるように秤量し、カーボン製のるつぼに入れてガスアトマイズ装置にセットする。真空排気を行って1000℃以上1200℃の温度条件で1分以上30分以下保持して原料を溶解した後、孔径1mm以上3mm以下のノズルから溶湯を落下させながら、噴射ガス圧10kgf/cm2以上50kgf/cm2以下の条件でArガスを噴射させ、ガスアトマイズ粉を作製する。冷却後、得られたガスアトマイズ粉を90〜500μmのふるいで分級することにより、所定の粒径の第1Cu−Ga合金粉及び第2Cu−Ga合金粉を得る。
ここで、第1Cu−Ga合金粉を製造する際には、真空排気の際に真空度を1Pa以下とすることにより、酸素濃度を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下にまで低減している。
また、Cu及びGaの組成比によっては、噴射温度が高いために、溶湯が凝固して粉になる前にチャンバーに到達してしまうおそれがある。その場合は、噴射温度を加熱保持温度から100〜400℃程度下げて行うことが好ましい。
(混合粉砕工程S02)
次に、上述のKF原料粉、第1Cu−Ga合金粉、第2Cu−Ga合金粉、Cu粉を、所定の組成になるように秤量し、混合粉砕装置を用いて混合粉砕し、原料粉を得る。ここで、混合粉砕装置としてボールミルを用いる場合には、例えばAr等の不活性ガスを充填した10Lポットに対してφ5mmのジルコニア製ボール5kg,原料粉末(KF原料粉、第1Cu−Ga合金粉、第2Cu−Ga合金粉、Cu粉)を合計で3kg投入し、85rpmで運転時間16時間とすることが好ましい。また、混合粉砕装置としてヘンシェルミルを用いる場合には、例えばAr等の不活性ガス雰囲気下で回転数2800rpm,運転時間5分間とすることが好ましい。なお、V型混合機やロッキングミキサー等の混合を主体とする混合粉砕装置は、KF原料粉の粉砕が不十分となるおそれがあるため、好ましくない。
(焼結工程S03)
次に、上述のようにして得られた原料粉(混合粉)を、真空又は不活性ガス雰囲気中又は還元雰囲気中で焼結を行う。焼結工程における焼結温度は、製造するCu−Ga合金の融点Tmに応じて設定することが好ましく、具体的には、(Tm−70)℃以上(Tm−20)℃以下の範囲内とすることが好ましい。また、焼結時の温度プロファイルにおいて、第1Cu−Ga合金粉が溶融して液相が生成する温度(第1Cu−Ga合金粉の液相温度)である250℃以上300℃以下の温度域で15分以上保持することが好ましい。
この焼結工程S03において、第1Cu−Ga合金粉の一部が溶融して液相が生じ、この液相がKF原料粉と反応することにより、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域が形成される。
なお、焼結工程S03においては、焼結方法として、常圧焼結、ホットプレス、熱間静水圧プレスを適用することが可能である。
常圧焼結を適用する場合には、還元ガスとして、一酸化炭素(CO)や水素、アンモニアクラッキングガス等を用いることが焼結に有利であり、雰囲気中の還元ガスの含有量は1体積%以上であることが好ましい。
また、ホットプレス及び熱間静水圧プレスを適用する場合には、圧力条件が焼結体の密度に影響を及ぼすことから、圧力条件を10MPa以上60MPa以下の範囲内とすることが好ましい。なお、加圧は、昇温開始前に行ってもよいし、一定の温度に到達してから行ってもよい。
(加工工程S04)
焼結工程S03で得られた焼結体に対して切削加工又は研削加工を施すことにより、所定形状のスパッタリングターゲットに加工する。
なお、KFは水に溶解することから、加工工程S04においては、冷却液を使用しない乾式法を適用することが好ましい。
以上のような工程により、本実施形態であるCu−Gaスパッタリングターゲットが製造される。このCu−Gaスパッタリングターゲットは、Inをはんだとして、Cu又はSUS(ステンレス)又はその他の金属(例えばMo)からなるバッキングプレートにボンディングして使用される。
以上のような構成とされた本実施形態であるCu−Gaスパッタリングターゲットによれば、Cu−Ga合金にKF(フッ化カリウム)が添加されており、フッ素を除く金属成分として、Ga:5原子%以上60原子%以下、K:0.01原子%以上5原子%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有しているので、アルカリ金属であるKを含有したCu−Ga膜を成膜することができる。よって、変換効率に優れた高品質なCIGS系薄膜太陽電池を構成することが可能となる。
そして、本実施形態であるCu−Gaスパッタリングターゲットにおいては、アルカリ金属であるKの少なくとも一部が、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域の形で含有されているので、スパッタ時の異常放電を抑制することができ、Cu−Ga膜を安定して成膜することができる。
本実施形態であるCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法においては、焼結工程S03において、第1Cu−Ga合金粉の少なくとも一部を溶融して液相を生じさせているので、液相のCu−Ga合金とKF原料粉とが反応し、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を形成することが可能となる。よって、上述のように、アルカリ金属であるKが均一に分散されたCu−Ga膜を安定して成膜することが可能なCu−Gaスパッタリングターゲットを得ることができる。
また、本実施形態においては、第1Cu−Ga合金粉の酸素濃度が1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に抑制されているので、第1Cu−Ga合金粉の少なくとも一部を確実に溶融させて液相を生じさせることができ、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を確実に形成することが可能となる。
さらに、本実施形態においては、焼結工程S03における温度プロファイルにおいて、第1Cu−Ga合金粉から液相が発生する温度で15分以上保持しているので、第1Cu−Ga合金粉から生成した液相とKF原料粉とが接触して反応する時間を確保することができ、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を確実に形成することができる。
また、本実施形態においては、原料粉における第1Cu−Ga合金粉の平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内とされ、KF原料粉の平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内とされているので、第1Cu−Ga合金粉から生成した液相とKF原料粉とを確実に反応させて、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を形成することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、原料粉として、第1Cu−Ga合金粉と、KF原料粉と、第2Cu−Ga合金粉と、Cu粉と、を混合した混合粉として説明したが、これに限定されることはなく、第2Cu−Ga合金粉及びCu粉は少なくともいずれか一方を含有していればよく、Cu−Gaスパッタリングターゲットの組成に応じて適宜選択することが好ましい。
以下に、本発明に係るCu−Gaスパッタリングターゲットの作用効果について評価した評価試験の結果について説明する。
<Cu−Gaスパッタリングターゲット>
まず、原料粉となるCu−Ga合金粉、Cu粉、KF原料粉を準備した。ここで、本発明例1−14及び比較例5においては、焼結工程において液相成分が発生する第1Cu−Ga合金粉を用いた。この第1Cu−Ga合金粉の製造方法を表1に示す。
原料粉の配合を表2に示すように設定し、表3に示す製造条件によって、表4に示す組成のCu−Gaスパッタリングターゲットを製造した。
得られたCu−Gaスパッタリングターゲットの組織観察を行うとともに、スパッタ時の異常放電について、以下のように評価した。評価結果を表4に示す。
<Cu−Ga−K−F領域及びKF単体相の特定>
原子マッピング像は、波長分離型X線検出器により得ることができる。本実施例では、以下に説明する方法で電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)装置を使用して、Cu−Gaスパッタリングターゲット断面の原子マッピング像を得た。
作製されたCu−Gaスパッタリングターゲットの加工表面に対してクロスセッションポリッシャ加工(CP加工)を行い、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)装置(日本電子株式会社製JXA−8500F)で、Cu、Ga、K、Fの元素マッピング像を得た。K、Fのみが存在している領域をKF単体相、Cu、Ga、K、Fが検出される領域をCu−Ga−K−F領域とした。Cu、Ga、K、Fの検出の判断方法としては、ZAF補正法を用いて作成した定量マップ像から、Cuの場合5質量%以上、Gaの場合5質量%以上、Kの場合5質量%以上、Fの場合5質量%以上の場合、検出されていると判断した。なお、定量マップ作成時には、構成元素としてC,O,F,K,Cu,Gaを選択した。元素マッピング像の一例を図2に示す。Cu−Ga−K−F領域の存在位置について、図2のようにCu−Ga−K−F領域がCuGa相の粒界に、あるいはCuGa相粒内と粒界にそれぞれ存在している場合に、存在位置を粒界とし、CuGa相の粒内のみに存在していた場合に、存在位置を粒内として表4に記載した。
EPMA装置における測定条件は以下の通りである。
測定倍率:500倍
ピクセルサイズ:1μm
サンプリング時間:10msec
電流:50nA
加速電圧:15kV
マッピングに用いた特性X線:C:Kα線,O:Kα線,F:Kα線,K:Kα線,Cu:Kα線、Ga:Lα線
マップ作成に用いたソフト:JXA−8500F vol.42
<KとCu及びGaのいずれか一方又は両方とFとの化合物相の特定>
前記Cu−Ga−K−F領域として、KとCu及びGaのいずれか一方又は両方とFとの化合物相が存在しているか否かを以下の手順で評価した。
作製されたCu−Gaスパッタリングターゲットの加工表面に対してクロスセッションポリッシャ加工(CP加工)を行い、X線光電子分光(XPS)装置(Physical Electronics社製)で、Arによる表面のエッチングを1分以上行った後のKの2p軌道のスペクトル、すなわち280から305eVのスペクトルを測定した。上記Kのスペクトルの296から297eVに検出されるピークが存在している場合に「有」、ピークが存在していない場合に「無」として表4に記載した。
XPS装置における測定条件は以下の通りである。
線源:Al Kα線、350W
測定範囲:φ800μm
パスエネルギー:187.85eV
測定間隔:0.8eV/step
試料面に対する光電子取り出し角:45deg
<KF単体相の存在割合>
上記の元素マッピング像のうちKのマッピング像について画像処理を行い、Cu−Ga−K−F領域及びKF単体相の面積をそれぞれ算出し、下記の式によって算出した。なお、画像処理ソフトとしては、例えばWinRoof(三谷商事株式会社製)等を用いることができる。
KF単体相の面積/(Cu−Ga−K−F領域の面積+KF単体相の面積)×100
<スパッタ膜中のK均一性測定>
作製されたCu−Gaスパッタリングターゲットを用いて下記の条件でスパッタによる成膜を行った。DCマグネトロンスパッタ装置により、スパッタガスとしてArガスを用いて、流量50sccm,圧力0.67Paとし、投入電力として2W/cm2で100x100mmの無アルカリガラス基板上に1μm成膜した。
得られた膜を蛍光X線分析(XRF)装置によって、基板の中心を(X=0,Y=0)とした場合の(−20mm,+20mm)、(+20mm,+20mm)、(−20mm,−20mm)、(+20mm,−20mm)、(0mm,0mm)、の5箇所についてCu,Ga,Kの測定を行った。なお、測定には、リガク社製のPrimusIIを用い、得られたKの値に対して5箇所の最大値から最小値を引いた値を算出した。
<スパッタ時の異常放電>
作製されたCu−Gaスパッタリングターゲットを用いて下記の条件でスパッタによる成膜を行った。DCマグネトロンスパッタ装置により、スパッタガスとしてArガスを用いて、流量50sccm,圧力0.67Paとし、投入電力として2W/cm2(低出力)及び5W/cm2(高出力)の2種類の電力にてそれぞれ30分間のスパッタを行い、DC電源装置に備えられているアークカウント機能により、異常放電の回数を計測した。なお、本実施例では、電源装置として、例えばRPG−50(mks社製)を使用した。
Cu−Ga−K−F領域が存在しない比較例1−5においては、異常放電回数が多く、安定してスパッタを行うことができなかった。特に、KF原料粉の粒径が大きく、かつ、K成分の高い比較例4,5では、高電力スパッタ時にスパッタ装置が停止した。また、比較例1,4,5においては、成膜したCu−Ga膜中のK成分の均一性が悪い。
これに対して、Cu−Ga−K−F領域が存在する本発明例1−13においては、異常放電回数が少なく、安定してスパッタを行うことができた。また、成膜したCu−Ga膜中のK成分の均一性が向上していることが確認された。
S03 焼結工程

Claims (8)

  1. フッ素を除く金属成分として、Ga:5原子%以上60原子%以下、K:0.01原子%以上5原子%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、
    波長分離型X線検出器による原子マッピング像において、CuとGaとKとFとを含有する領域が存在することを特徴とするCu−Gaスパッタリングターゲット。
  2. 前記CuとGaとKとFとを含有する領域は、KとCu及びGaの一方又は両方とFとの化合物相で存在することを特徴とする請求項1に記載のCu−Gaスパッタリングターゲット。
  3. 前記CuとGaとKとFとを含有する領域は、Cu−Ga母相の結晶粒界に分散していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCu−Gaスパッタリングターゲット。
  4. Cu−Ga母相中にKF単体相が存在し、スパッタリングターゲット中に存在する全KF量に対する前記KF単体相の存在割合Xが、0%<X≦70%であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のCu−Gaスパッタリングターゲット。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のCu−Gaスパッタリングターゲットを製造するCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法であって、
    原料粉を加熱して焼結する焼結工程を有し、
    前記原料粉は、前記焼結工程において液相成分が発生する第1Cu−Ga合金粉と、KF原料粉と、前記焼結工程において液相成分が発生しない第2Cu−Ga合金粉及びCu粉のうちの少なくとも一方又は両方とを、フッ素を除く金属成分として、Ga:5原子%以上60原子%以下、K:0.01原子%以上5原子%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成となるように混合した混合粉とされており、
    前記焼結工程において、前記原料粉の一部を液相焼結させることにより、CuとGaとKとFとを含有するCu−Ga−K−F領域を形成することを特徴とするCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法。
  6. 前記第1Cu−Ga合金粉は、その酸素濃度が1000ppm以下とされていることを特徴とする請求項5に記載のCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法。
  7. 前記原料粉における前記第1Cu−Ga合金粉の平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内とされ、前記KF原料粉の平均粒径が5μm以上500μm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法。
  8. 前記焼結工程では、前記第1Cu−Ga合金粉から液相が発生する温度で15分以上保持することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のCu−Gaスパッタリングターゲットの製造方法。
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